以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。なお、以下の説明中の左右方向は図2と図8に記載した「左」、「右」の矢線方向に対応しており、実施形態の車両用のリクライニングシート10とシートリクライニング装置15では右側が車外側、左側が車内側となる。また、内周側はシートリクライニング装置15の径方向の中心側(内径側)を意味し、外周側はシートリクライニング装置15の径方向の中心側とは反対側(外径側)を意味する。図3ないし図7、図10、図13、図14に記載した「上」、「下」の矢線方向は、図1のようにリクライニングシート10を車両床面上に据え付けた状態での上下方向に対応している。すなわち、車両が傾斜のない平坦な場所にある場合、図3ないし図7、図10、図13、図14中の「下」方向が、重力の作用する鉛直方向となる。
図1に示す車両用シートであるリクライニングシート10は、車両の進行方向に向かって右側の座席を構成するものであり、シートレールを介して車両の車内床面に支持されるシートクッション11と、シートクッション11の後部に対して傾動可能なシートバック12とを備えている。リクライニングシート10の内部には、シートクッション11をシートバック12に対して前方へ回転付勢する前倒付勢スプリング(不図示)が設けられている。
シートクッション11の内部には左右一対のシートクッション側フレーム(図示略)が設けられ、シートクッション11の後部には上方に突出する後部フレーム(図示略)が固定状態で設けられている。シートバック12の内部には左右一対のシートバック側フレーム(図示略)が設けられている。左右の後部フレームの間に左右のシートバック側フレームが位置し、左右のシートバック側フレームと左右の後部フレームがそれぞれ左右方向(車幅方向)に対向する。
リクライニングシート10の左側(車内側)では、後部フレームとシートバック側フレームは図示を省略した回転接続軸を介して回転可能に接続している。一方、図1に表れているリクライニングシート10の右側(車外側)では、後部フレームとシートバック側フレームの間には両者を左右方向の軸回りに回転可能に接続するシートリクライニング装置15が設けられている。シートバック12はシートクッション11に対して、当該回転接続軸及びシートリクライニング装置15を中心に回転可能である。
具体的には、シートバック12は図1に示す前傾位置12Aと後傾位置12Bとの間を傾動可能である。シートリクライニング装置15の構成については後述するが、図1に示す初段ロック位置12Cから後傾位置12Bまでは、シートリクライニング装置15がロック状態になることでシートバック12の角度保持が可能なロック範囲である。ロック範囲では、シートリクライニング装置15に対してアンロック操作を行うことで一時的にロック状態を解除して、シートバック12の角度調整を行うことができる。前傾位置12Aから初段ロック位置12Cの直前までは、シートリクライニング装置15がロック状態にならないアンロック範囲である。
続いて図2以下を参照してシートリクライニング装置15の詳しい構造について説明する。図2に示すように、シートリクライニング装置15は主要な構成要素として、ベースプレート(ベース部材)20、第1ポール30及び第2ポール31、回転カム40、レリーズプレート50、ラチェットプレート(ラチェット)60、ロックスプリング(付勢部材)70、押えリング80を具備している。
金属製の円盤部材であるベースプレート20はプレス成形品であり、図2、図10、図13に示すように、ベースプレート20の中心部には円形の軸挿通孔21が貫通孔として形成されている。ベースプレート20の左側面の周縁部には円形の大径環状フランジ22が突設され、大径環状フランジ22の内側に収納空間が形成されている。ベースプレート20の左側面には軸挿通孔21を中心とする周方向に等角度(120°)間隔で並んだ3つの溝形成用突部23が突設されている。
各溝形成用突部23はベースプレート20の内周側から外周側に進むにつれて周方向幅を大きくする略扇形状をなしており、各溝形成用突部23の外周面と大径環状フランジ22の間には円弧状の隙間が形成される(図2、図10参照)。各溝形成用突部23の両側には案内平面23a、23bが設けられている。隣り合う溝形成用突部23の案内平面23a、23bは互いに略平行であり、その間に案内溝24が形成される。すなわち、ベースプレート20には周方向に位置を異ならせて3つの案内溝24が形成されており、これらを第1ポール案内溝24Aと第2ポール案内溝24Bと第2ポール案内溝24Cとして区別する(図2、図10参照)。各溝形成用突部23には、案内平面23bの途中にバネ掛け凹部25が形成されている。
シートリクライニング装置15は、それぞれが金属板のプレス成形品である1つの第1ポール30と2つの第2ポール31を備えており、ベースプレート20の各案内溝24内に第1ポール30と第2ポール31が1つずつ配設されている。図11と図12に示すように、第1ポール30と第2ポール31は、互いの形状と配置が異なる保持突起(第1制限部)32と補助保持突起(第2制限部)33を有しており、それ以外は共通する構成を備えている。第1ポール30と第2ポール31で構成が共通する部分は同じ符号で示す。
図11と図12に示すように、第1ポール30と第2ポール31はいずれも周方向の両側に案内平面23a、23bに沿って摺動可能な面を有する。第1ポール30の左側面には保持突起32とカムフォロア34が設けられ、第2ポール31の左側面には補助保持突起33とカムフォロア34が設けられている。第1ポール30と第2ポール31のそれぞれの円弧状をなす外周面には外歯35が形成されている。第1ポール30と第2ポール31のそれぞれの内周部には、径方向内側に向けて突出する被抑制部36と被押圧部37が形成されている。
図11と図13に示すように、第1ポール30の保持突起32は、周方向(ベースプレート20に対するラチェットプレート60の回転方向)に長手方向が向く突起であり、径方向外側に向く外側面32aと、径方向内側に向く内側面32bと、周方向の両側に位置する接続面32c及び接続面32dとを有している。外側面32aは緩やかに湾曲する凸状の円弧面であり、内側面32bは緩やかに湾曲する凹状の円弧面である。保持突起32は、周方向の中央を通りベースプレート20の半径方向に延びる中心線C1(図11)に関して略対称な形状である。そのため、接続面32cと接続面32dも中心線C1に関して略対称な形状である。
図12と図13に示すように、第2ポール31の補助保持突起33は、周方向(ベースプレート20に対するラチェットプレート60の回転方向)に長手方向が向く突起であり、径方向外側に向く外側面33aと、径方向内側に向く内側面33bと、周方向の両側に位置する接続面33c及び接続面33dとを有している。外側面33aは緩やかに湾曲する凸状の円弧面であり、内側面33bは緩やかに湾曲する凹状の円弧面である。補助保持突起33は、周方向の中央を通りベースプレート20の半径方向に延びる中心線C2(図12)に関して非対称な形状である。詳しくは、接続面33cは保持突起32の接続面32cと略同じ形状であり、外側面33aから接続面33cにかけて角張った部分が存在する。これに対して接続面33dは、周方向に突出する凸状の円弧面となっており、外側面33aと内側面33bのいずれに対しても湾曲しながら滑らかに接続している。
図11と図12に示すように、第1ポール30の保持突起32よりも第2ポール31の補助保持突起33の方が、径方向内側に位置している。より詳しくは、外歯35の歯先をつないだ仮想の歯先円を設定した場合、この歯先円から保持突起32の外側面32aまでの距離よりも、歯先円から補助保持突起33の外側面33aまでの距離の方が大きい。
側面視での第1ポール30の重心(質量中心)GP1を図11と図13に示し、側面視での第2ポール31の重心(質量中心)GP2を図12と図13に示している。
第1ポール30と第2ポール31は、図3ないし図7、図13に示した態様で各案内溝24内に配設されている。なお、図3ないし図7では、2つの第2ポール31のうち一方だけを図示しているが、図示を省略した他方の第2ポール31についても図示した第2ポール31と同様に案内溝24内に配設されて同様に動作する(図13参照)。第1ポール30と第2ポール31は、各案内溝24の底面(左側面)に対して面接触して支持されており、対応する案内溝24内を溝形成用突部23の案内平面23a、23bに沿ってベースプレート20の半径方向に移動可能である。
第1ポール30と第2ポール31は、後述する回転カム40とレリーズプレート50によって、ベースプレート20の軸挿通孔21から離れる径方向外側の噛合位置(図3、図13)と、軸挿通孔21に近づく径方向内側の噛合解除位置(図4)の間で半径方向に移動する。第1ポール30及び第2ポール31とその両側に位置する案内平面23a、23bとの間には、ベースプレート20の半径方向への各ポール30、31の円滑な摺動を可能にし、かつ各ポール30、31を大きくガタつかせることのない程度のクリアランスが確保されている。
回転カム40は金属板のプレス成形品であり、概ね各ポール30、31と同じ厚みを有している。図2ないし図7に示すように、回転カム40の中心部には非円形形状の中心非円形孔41が貫通孔として形成されている。回転カム40の外周部には、3つの抑制部42と3つの押圧部43がそれぞれ周方向に略等角度間隔で設けられている。回転カム40にはさらに周方向に等角度間隔で3つの回り止め突起44が形成されている。図2に示すように、回り止め突起44は左方に向けて突出している。回転カム40の中心非円形孔41内には、周方向に略等角度間隔で3つのバネ掛け凹部45が形成されている。回転カム40はベースプレート20の収納空間の中央部に配設されており、回転カム40の径方向外側に第1ポール30と第2ポール31が位置する(図3ないし図7参照)。
レリーズプレート50は金属板のプレス成形品であり、中央開口51の周囲に周方向に略等角度間隔で3つのカム孔52が貫通形成されている。図3ないし図7示すように、中央開口51は、回転カム40の中心非円形孔41よりも大きい。各カム孔52は、中央開口51からの距離が遠い径方向外側に位置するロック許容部52aと、中央開口51からの距離が近い径方向内側に位置するロック解除部52bとを有している。レリーズプレート50にはさらに、周方向に等角度間隔で3つの回り止め孔53が形成されている。
レリーズプレート50は、3つの回り止め孔53に3つの回り止め突起44を嵌合させて回転カム40と結合される。各回り止め突起44と各回り止め孔53の嵌合によって回転カム40とレリーズプレート50の相対回転が規制され、回転カム40とレリーズプレート50は一体的に回転する。また、レリーズプレート50の3つのカム孔52内に、第1ポール30と第2ポール31に設けたカムフォロア34がそれぞれ挿入される。図4に示す位置よりも径方向内側への第1ポール30と第2ポール31の移動は、カムフォロア34とロック解除部52bの係合によって規制される。
金属製の円盤部材であるラチェットプレート60はプレス成形品であり、その右側面の周縁部には円形の小径環状フランジ61が突設され、小径環状フランジ61の内側には収納空間が形成される。図2と図9に示すように、ラチェットプレート60の中心部には断面円形の軸挿通孔62が貫通孔として形成されている。ラチェットプレート60のうち軸挿通孔62に近い最も内周側の部分は円盤状のベース部63となっている。ベース部63と小径環状フランジ61の間の径方向位置には中間環状部64が形成されている。図8から分かるように、中間環状部64は小径環状フランジ61の一段左側に位置して小径環状フランジ61よりも小径であり、ベース部63は中間環状部64の一段左側に位置して中間環状部64よりも小径である。
図8と図9に示すように、ラチェットプレート60の小径環状フランジ61の内周面には内歯65が形成されている。中間環状部64の内周面には、周方向に位置を異ならせて、第1保持突部(第1ポール規制部)66と第2保持突部(第2ポール規制部)67と第3保持突部(第2ポール規制部)68が形成されている。第1保持突部66と第2保持突部67と第3保持突部68はいずれも中間環状部64から径方向内側に向けて突出する形状を有する。
図9に示すように、第1保持突部66は、周方向の一端に位置する段差面66aから周方向の他端に位置する第2保持突部67までの範囲に形成されており、段差面66aと第2保持突部67を接続する内周側の面である保持面66bを有する。保持面66bはラチェットプレート60の中心点を中心とする円弧面である。
図9に示すように、第2保持突部67は、第1保持突部66よりも周方向の長さが短く、周方向の一端と他端に段差面67aと立壁面67bを有する。段差面67aは第1保持突部66の保持面66bに接続する。段差面67aと立壁面67bは、ラチェットプレート60の径方向外側から径方向内側へ進むにつれて互いの間隔を小さくする傾斜を有しており、段差面67aよりも立壁面67bの方がラチェットプレート60の半径方向に対する傾きが大きい。第2保持突部67の内周側には、段差面67aと立壁面67bを接続する保持面67cが形成されている。中間環状部64に対する段差面67aと立壁面67bの径方向内側への突出形状によって、保持面67cは第1保持突部66の保持面66bよりも径方向内側に配置される。保持面67cはラチェットプレート60の中心点を中心とする凹状の円弧面である。
図9に示すように、第3保持突部68は第2保持突部67と略共通の形状であり、周方向の一端と他端に段差面68aと立壁面68bを有し、内周側に保持面68cを有している。段差面68a及び保持面68cは、第2保持突部67における段差面67a及び保持面67cと共通する形状である。立壁面68bは、ラチェットプレート60の半径方向に対する傾きは立壁面67bと同じであり、立壁面67bよりも径方向外側に向けて長く形成されている点のみが異なる。中間環状部64に対する段差面68aと立壁面68bの径方向内側への突出形状によって、保持面68cは第1保持突部66の保持面66bよりも径方向内側に配置される。
第1保持突部66の段差面66a、第2保持突部67の段差面67a、第3保持突部68の段差面68aは、周方向に略等角度(ラチェットプレート60の中心点を中心として略120°)の間隔で位置している。第1保持突部66は、段差面66aから段差面67aまでの周方向の長い範囲に亘って連続して形成されている。
ラチェットプレート60は、小径環状フランジ61を大径環状フランジ22の内周面と溝形成用突部23の外周面の隙間に挿入した状態でベースプレート20の左側面に被せられる(図8参照)。この状態で第1ポール30と第2ポール31のそれぞれに設けた外歯35とラチェットプレート60の内歯65が径方向に対向する。大径環状フランジ22の内周面及び溝形成用突部23の外周面と小径環状フランジ61との間には、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の円滑な回転を可能にさせるクリアランスが確保されている。
外歯35と内歯65が噛合しない(各ポール30、31が噛合解除位置にある)とき、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の相対回転が可能となる。大径環状フランジ22の内周面に対する小径環状フランジ61の外周面の摺接によって、ラチェットプレート60はベースプレート20に対して、左右方向(車幅方向)に延びる回転軸線RX(図10、図13、図14)を中心として回転することができる。回転軸線RXは、それぞれが円形をなす大径環状フランジ22の内周面や小径環状フランジ61の外周面の中心を通る仮想の軸線である。
外歯35と内歯65が噛合する(各ポール30、31が噛合位置にある)と、第1ポール30と第2ポール31に対するラチェットプレート60の回転が規制される。第1ポール30と第2ポール31はベースプレート20に対して回転軸線RXを中心とする回転が規制された(径方向のみに移動可能な)状態で支持されている。従って、外歯35と内歯65が噛合することにより、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の相対回転が規制される。
ラチェットプレート60とベースプレート20の間の空間に3つのロックスプリング70(図2、図14)が配設される。各ロックスプリング70は湾曲した金属線材からなり、一端を右方に曲げて第1係止部71が形成され、他端を右方に曲げて第2係止部72が形成されている。図3ないし図7、図14に示すように、各ロックスプリング70は、第1係止部71を回転カム40のバネ掛け凹部45に係止させ、第2係止部72をベースプレート20のバネ掛け凹部25に係止させて取り付けられる。このようにして各ロックスプリング70をベースプレート20と回転カム40に取り付けると、各ロックスプリング70は弾性変形して回転カム40を一方向に回転する付勢力を発生する。この付勢力は回転カム40を図3ないし図7、図14の反時計方向に回転させる力であり、回転カム40と回転方向に一体化されたレリーズプレート50に対しても同方向の付勢力が働く。
金属製の円環状部材である押えリング80は、図8に示すように、ベースプレート20の大径環状フランジ22の外周面と、ラチェットプレート60の小径環状フランジ61の左側面に対して嵌合する形で被せられ、ベースプレート20に対して固定される。この状態でベースプレート20と押えリング80の間にラチェットプレート60が挟まれて、ラチェットプレート60は、ベースプレート20及び押えリング80から脱落することなく、大径環状フランジ22の内周面に沿って回転軸線RXを中心として相対回転可能となる。
ベースプレート20はシートクッション11を構成する後部フレーム(図示略)に対して固定され、ラチェットプレート60はシートバック12を構成するシートバック側フレーム(図示略)に対して固定される。従って、ベースプレート20は回転軸線RX(図10、図13、図14)を中心とする回転を行わず、回転方向において常に一定の位置にある。一方、ラチェットプレート60は、シートバック12の傾動に伴って、回転軸線RX(図10、図13、図14)を中心として回転する。
後部フレームに固定されたベースプレート20では、図10に示すように、3つの案内溝24が、径方向の中心(回転軸線RX)から放射方向に延びている。より詳しくは、第1ポール案内溝24Aは、径方向の中心から上方に向けて直線状に延びている。第2ポール案内溝24Bと第2ポール案内溝24Cは、径方向の中心から斜め下方に向けて直線状に延びている。上方に延びる第1ポール案内溝24A内に第1ポール30が配置され、斜め下方に延びる第2ポール案内溝24B、24C内にそれぞれ第2ポール31が配置されている。
回転軸線RXを通り水平方向に延びる水平線LHと、回転軸線RXを通り上下方向に延びる垂直線LVとを図10、図13、図14に示した。図10に示すように、第1ポール案内溝24Aは、水平線LHの上方に位置して垂直線LVに沿って延びる溝である。第1ポール30は、重心GP1を含む全体が水平線LHの上方に位置して、上下方向へ移動可能に案内されている。
図10に示すように、第2ポール案内溝24B、24Cはそれぞれ、大部分が水平線LHの下方に位置し、垂直線LVに対して所定の角度で斜めに延びる溝である。従って、2つの第2ポール31はそれぞれ、大部分が水平線LHの下方に位置して、水平方向と垂直方向のいずれに対しても傾斜する方向へ移動可能に案内されている。より詳しくは、図13に示すように、2つの第2ポール31はそれぞれ、一部が水平線LHより上方に位置するが、重心GP2は水平線LHより下方に位置している。第2ポール案内溝24Bと第2ポール案内溝24Cは垂直線LVに関して略対称に配置されており、これに対応して、2つの第2ポール31は垂直線LVに関して略対称に動作する。
シートリクライニング装置15の側部(右側)には回転操作可能な操作レバー90(図1)が設けられる。シートリクライニング装置15の径方向の中心にはシャフト91(図1)が挿入されている。シャフト91の軸線はラチェットプレート60の回転中心である回転軸線RXと略一致しており、操作レバー90を回転操作すると、シャフト91がその軸線を中心として回転する。シャフト91は、軸挿通孔21、中心非円形孔41、中央開口51、軸挿通孔62を貫通しており、このうち中心非円形孔41に対して相対回転を規制された状態で嵌合している。そのため、シャフト91が回転すると回転カム40とレリーズプレート50が共に回転する。
操作レバー90は、図示を省略するレバー付勢スプリングによって図1に実線で示す位置(初期位置)の方向(図1中の時計方向)に付勢されている。レバー付勢スプリングが操作レバー90に及ぼす付勢力の方向は、ロックスプリング70が回転カム40に及ぼす付勢力の方向と同じである。すなわち、操作レバー90から手を離した状態において、ロックスプリング70と共にレバー付勢スプリングも、シートリクライニング装置15におけるロック方向への付勢部材として機能する。
主に図3から図7を参照してシートリクライニング装置15の作動を説明する。なお、図3から図7では、ラチェットプレート60に対して紙面奥側に位置するポール30、31や回転カム40を実線で示している。また、レリーズプレート50を一点鎖線で仮想的に図示している。図3から図7では2つの第2ポール31のうち1つのみを図示しており、図示されていない第2ポール31は、図示されている第2ポール31と同じ動作を行うものとする。
シートリクライニング装置15におけるラチェットプレート60(シートバック12)の回転動作範囲は、第1保持突部66が第1ポール30の保持突起32と径方向に対向しないロック範囲と、第1保持突部66が第1ポール30の保持突起32と径方向に対向するアンロック範囲に大きく分けられる。
ラチェットプレート60(シートバック12)のロック範囲において回転カム40とレリーズプレート50に対して操作力を加えていないとき、シートリクライニング装置15は図3に示すロック状態になる。このときの回転カム40とレリーズプレート50の位置をロック位置と呼ぶ。ロック状態では、回転カム40とレリーズプレート50はロックスプリング70の付勢力(図中の反時計方向に付勢している)によってロック位置に保持される。ロック位置にある回転カム40の押圧部43によって、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれの被押圧部37が径方向外側(噛合位置側)に押圧される。
ラチェットプレート60のロック範囲では、第1ポール30に設けた保持突起32は第1保持突部66に対して径方向に対向しない(周方向の位置が異なる)ため、第1ポール30は第1保持突部66に規制されずに噛合位置まで移動することができる。また、第2ポール31に設けた補助保持突起33は第1保持突部66に対して径方向に対向する位置にあるが、補助保持突起33が保持突起32よりも径方向内側に設けられているので、第2ポール31は第1保持突部66に規制されずに噛合位置まで移動することができる。こうして回転カム40により径方向外側へ押圧された第1ポール30と第2ポール31は、外歯35をラチェットプレート60の内歯65に噛合させた噛合位置に保持され、ベースプレート20とラチェットプレート60の相対回転が規制される。つまりシートクッション11に対するシートバック12の傾動が規制される。第1ポール30の噛合位置では、保持突起32の外側面32aが第1保持突部66の保持面66bよりも径方向外側に位置する。2つの第2ポール31の噛合位置では、それぞれの補助保持突起33の外側面33aが第2保持突部67の保持面67cと第3保持突部68の保持面68cよりも径方向外側に位置する。
レリーズプレート50のロック位置では、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれのカムフォロア34がカム孔52のロック許容部52aに位置しており、レリーズプレート50はポール30の位置設定には関与していない。また、第1ポール30と第2ポール31のロック位置への移動時、及びロック位置での保持状態において、通常は回転カム40の抑制部42は被抑制部36と当接せず、第1ポール30や第2ポール31が傾いた場合のみ抑制部42と被抑制部36が当接する。
ラチェットプレート60(シートバック12)のロック範囲において、レバー付勢スプリング(図示略)及び各ロックスプリング70の付勢力に抗して操作レバー90を図1の実線位置から二点鎖線位置へ回転させると、シャフト91(図1)を介して回転カム40とレリーズプレート50が図3の時計方向(アンロック方向)に回転する。レリーズプレート50がロック位置からアンロック方向に回転すると、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれのカムフォロア34がレリーズプレート50に形成したカム孔52内でロック許容部52aからロック解除部52bへ位置を変化させる。すると、カム孔52の内面によってカムフォロア34がベースプレート20の径方向内側へ押圧されて、第1ポール30と第2ポール31がそれぞれ案内溝24内を径方向内側へ移動する。このとき回転カム40は、第1ポール30と第2ポール31への押圧方向と逆側に押圧部43を移動させるので、レリーズプレート50による第1ポール30と第2ポール31の径方向内側への移動を妨げない。
回転カム40とレリーズプレート50が図4に示すアンロック位置まで回転すると、第1ポール30と第2ポール31が、それぞれの外歯35をラチェットプレート60の内歯65から完全に噛合を解除させた噛合解除位置に達する。外歯35と内歯65の噛合が解除されることで、ベースプレート20とラチェットプレート60の相対回転が可能になる。つまりシートクッション11に対するシートバック12の傾動が可能なアンロック状態になる。アンロック状態では、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれにおける被抑制部36と被押圧部37の間の凹部に回転カム40の抑制部42が収まり、隣接する各ポール30、31の間のスペースに回転カム40の押圧部43が収まり、回転カム40に妨げられることなく第1ポール30と第2ポール31を噛合解除位置まで移動させることができる。
図4に示すアンロック状態で操作レバー90に対する操作を解除すると、回転カム40及びレリーズプレート50が、レバー付勢スプリング(図示略)及び各ロックスプリング70の付勢力によってアンロック位置からロック位置(図3)へ向けて反時計方向に回転する。第1ポール30と第2ポール31は、回転カム40がロック方向へ回転すると押圧部43によって被押圧部37が適宜押圧されて、案内溝24内を外周側へ移動して噛合位置(図3)に達する。
ラチェットプレート60(シートバック12)のアンロック範囲では、図5に示すように、第1ポール30に形成した保持突起32とラチェットプレート60に形成した第1保持突部66が径方向に対向する位置関係にあるため、保持突起32の外側面32aが第1保持突部66の保持面66bに係合(当接)して径方向外側への第1ポール30の移動が規制される。つまり、図4のようにカム孔52でカムフォロア34を径方向内側に引きこんだ場合と同様に、保持突起32と第1保持突部66の当接によって、第1ポール30は外歯35が内歯65に噛合しない噛合解除位置に保持される。第1ポール30の移動が規制されることにより、ロック方向(第1ポール30を径方向外側に押圧する方向)への回転カム40の回転が規制され、回転カム40がロック方向へ回転しないため第2ポール31も図5に示す位置(外歯35が内歯65に噛合しない噛合解除位置)で停止する。このとき、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれのカムフォロア34は、対応するカム孔52の内面に当接しておらず、レリーズプレート50は第1ポール30と第2ポール31の位置設定には関与していない。
第1保持突部66の保持面66bに当接する保持突起32の外側面32aは、保持面66bと同心状の(すなわちラチェットプレート60の回転軸線RXを中心とする)円弧面である。そのため、図5の状態では、保持突起32の周方向の略全体の広い範囲が第1保持突部66と当接しており、第1ポール30の優れた安定性を得ることができる。また、同心状の円弧面の接触により、アンロック範囲でラチェットプレート60が回転するときの摺動の円滑性も得られる。
図5は、アンロック範囲のうちロック範囲から所定以上離れた位置にラチェットプレート60が位置する状態を示している。このとき、図5に示す第2ポール31と図5で図示を省略している第2ポール31のそれぞれの補助保持突起33が、ラチェットプレート60の第2保持突部67と第3保持突部68に対して径方向に対向しておらず(周方向に位置を異ならせており)、各補助保持突起33が第2保持突部67と第3保持突部68に対して当接していない。
図5に示すアンロック範囲では、第1ポール30と第2ポール31の外歯35がラチェットプレート60の内歯65に噛合しておらず、ベースプレート20に対してラチェットプレート60が常時回転可能となる。すなわちアンロック操作を継続していなくてもシートバック12の傾動が可能である。図1に示すシートバック12の前傾位置12Aから初段ロック位置12Cの直前までがアンロック範囲になり、第1ポール30の保持突起32とラチェットプレート60の第1保持突部66は、このアンロック範囲の全体で径方向の対向関係を維持するように周方向長さと相対位置が設定されている。シートバック12を初段ロック位置12Cまで引き起こすと、アンロック保持状態(保持突起32と第1保持突部66の対向状態)が解除されて、ラチェットプレート60がアンロック範囲からロック範囲に切り替わる。
ラチェットプレート60のアンロック範囲のうち、ロック範囲との切り替え位置に近い特定範囲では、第1ポール30の保持突起32が第1保持突部66と径方向に対向することに加えて、2つの第2ポール31の補助保持突起33がそれぞれ第2保持突部67と第3保持突部68と径方向に対向する。
図6は、ラチェットプレート60がアンロック範囲における特定範囲にある状態を示したものである。図6の状態では、第1保持突部66の段差面66aが第1ポール30の保持突起32の近くまで達しているが、図5の状態に引き続いて保持突起32は外側面32aの全体が第1保持突部66の保持面66bに当接している。このとき第2ポール31の補助保持突起33とラチェットプレート60の第2保持突部67が径方向に対向しているが、補助保持突起33の外側面33aと第2保持突部67の保持面67cとの間にわずかなクリアランスがあって補助保持突起33と第2保持突部67が当接していない。図6では省略している第2ポール31の補助保持突起33と第3保持突部68も同様の位置関係にあり、外側面33aと保持面68cが互いの間にクリアランスを有しながら(当接せずに)径方向に対向した状態にある。
図7は、前記の特定範囲のうち、第1保持突部66が第1ポール30の保持突起32との当接を解除する直前(アンロック範囲からロック範囲に切り替わる直前)の位置までラチェットプレート60が回転した状態である。第1保持突部66の段差面66aが保持突起32の接続面32cの近くまで達しており、保持突起32の外側面32aと第1保持突部66の保持面66bが当接する面積が小さくなっている。補助保持突起33と第2保持突部67については、第2保持突部67の段差面67aが補助保持突起33の接続面33cの近くまで達して径方向に対向する範囲が図6の状態よりも小さくなっているが、図6の状態に引き続いて図7の状態でも、外側面33aと保持面67cが径方向に対向する関係にある。図7では省略している第2ポール31の補助保持突起33と第3保持突部68も同様の位置関係にあり、外側面33aと保持面68cが互いの間にクリアランスを有しながら(当接せずに)径方向に対向した状態を維持している。
図6と図7に示すラチェットプレート60の特定範囲では、第1ポール30と第2ポール31のそれぞれのカムフォロア34は対応するカム孔52の内面に当接しておらず、レリーズプレート50は第1ポール30と第2ポール31の位置設定には関与していない。
図5から図7に示すアンロック範囲では、第1ポール30の保持突起32が第1保持突部66に当接することで外歯35と内歯65が噛合しないアンロック状態が維持される。このアンロック範囲で、回転カム40をロック方向に回転させる力など、各ポール30、31を径方向外側に移動させようとする荷重が加わる場合がある。図5や図6のように保持突起32の外側面32aの全体が第1保持突部66の保持面66bに当接する状態では、互いの接触面積が広く耐荷重性が高いため、第1ポール30を径方向外側に押圧する大荷重が加わっても、保持突起32を含む第1ポール30や第1保持突部66を含むラチェットプレート60の変形が生じにくい。一方、アンロック範囲からロック範囲への切り替え直前状態を示す図7のように保持突起32と第1保持突部66の接触面積が小さくなると、第1ポール30を径方向外側に押圧する大荷重によって保持突起32周りや第1保持突部66周りに変形が生じる可能性がある。図7に示すように、この状態で第2ポール31の補助保持突起33が第2保持突部67(及び第3保持突部68)と径方向に対向するため、径方向外側に向けての大荷重によって第1ポール30又は第1保持突部66に変形が生じた場合、同じく径方向外側への荷重を受けた第2ポール31の補助保持突起33が第2保持突部67や第3保持突部68に当接して、径方向外側への第2ポール31の移動を規制する(すなわちアンロック状態を維持させる)ことができる。
ところで、シートリクライニング装置15では、部品の精度誤差や組み付け誤差を見込んで各所にクリアランスが設定されており、ベースプレート20とラチェットプレート60の間にも所定のクリアランスがある。そのため、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の径方向の位置精度の確保を考慮する必要がある。特に、ラチェットプレート60はシートバック12全体の重さを受ける部分なので、シートバック12の自重によって下方に移動しやすい。
図3のようなロック状態では、1つの第1ポール30と2つの第2ポール31がそれぞれ径方向外側への付勢力によってラチェットプレート60を押圧しながら内歯65に噛合するので、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の偏心が起こりにくい。一方、ラチェットプレート60がアンロック範囲にあるときは、内歯65に対する各ポール30、31の押し付けが解除される。本実施形態では、アンロック範囲において、第1ポール30の保持突起32とラチェットプレート60の第1保持突部66との当接関係によって、ラチェットプレート60の偏心を抑制している。
先に述べたように、ベースプレート20に形成され上下方向に延びる(垂直線LVに沿う)第1ポール案内溝24A内に第1ポール30が配置されており、第1ポール30は重心GP1を含む全体が水平線LHの上方に位置している。当該位置に配置された第1ポール30は、第1ポール案内溝24A内で上方に進むと噛合位置、下方に進むと噛合解除位置になる。そして、レバー付勢スプリング(図示略)及びロックスプリング70から回転カム40に伝わる付勢力により、第1ポール30は第1ポール案内溝24A内で上方に向けて付勢されている。
図5及び図14に示すように、アンロック範囲では、上方に向けて移動付勢される第1ポール30の保持突起32が、ラチェットプレート60の第1保持突部66の保持面66bに対して下方から当接する。各ポール30、31の外歯35との噛合が解除された直後にラチェットプレート60は、ベースプレート20との間に存在するクリアランスの分、重力によって下方に移動してしまうが、アンロック範囲で操作レバー90の操作(図1中の二点鎖線位置への引き上げ操作)を解除すると、第1ポール30の保持突起32が、第1保持突部66に対して上方への付勢力を伴って下方から当接する。このとき第1ポール30に対する付勢力は、ロックスプリング70からの付勢力に加えて、操作レバー90を初期位置(図1の実線位置)に戻すレバー付勢スプリング(図示略)の付勢力との合計値となるため、ラチェットプレート60及びシートバック12の重さに抗する十分な力を有する。そのため、第1保持突部66に対して下方から当接する保持突起32に作用している付勢力によって、下方へのラチェットプレート60の落ち込み移動が規制され、ラチェットプレート60がベースプレート20に対する通常位置(中央位置)に保たれる。
このとき、各第2ポール31の補助保持突起33は、アンロック範囲において第2保持突部67や第3保持突部68よりも回転軸線RX側(径方向内側)に位置するので、ラチェットプレート60に対して上方から当接することがない。
すなわち、アンロック範囲において、第1ポール30を噛合位置へ付勢する力を用いてラチェットプレート60を下支えして、ラチェットプレート60の位置を高精度に保つことができる。具体的には、ベースプレート20に対するラチェットプレート60の偏心を抑制して、各ポール30、31の外歯35とラチェットプレート60の内歯65との間隔に偏りが生じにくくなる。
このようなアンロック範囲でのラチェットプレート60の位置精度向上の効果は、第1ポール30(特に重心GP1)が水平線LHよりも上方に位置していることによって得られる。水平線LHよりも上方に位置する第1ポール30は、噛合解除位置から噛合位置への移動方向が上方に向かうものとなる。そのため、ロックスプリング70やレバー付勢スプリング(図示略)から回転カム40を経て第1ポール30に伝わる付勢力も上方へ押し上げるものとなり、重力に抗してラチェットプレート60を支えることが可能となる。
本実施形態では、第1ポール30の移動方向が、垂直線LVに沿う上下方向への直線移動である。そのため、第1保持突部66に対する保持突起32の当接箇所において、上下方向以外への余計な分力を発生させずに、ロックスプリング70やレバー付勢スプリングからの付勢力を最も効率的にラチェットプレート60に伝えて支持することができる。
なお、本実施形態とは異なり、第1ポール30の移動方向が上下方向(垂直線LV)に対して所定の傾きを有する構成でも、アンロック範囲においてラチェットプレート60の下方への移動を抑制する効果を得ることが可能である。
すなわち、本発明において、第1ポールを「上方に向けて」押圧する付勢力は、水平方向に対して垂直な方向への押圧力に限定されるものではなく、少なくとも第1ポールを上方へ押し上げる成分の力を含んでいればよい。
また、第1ポール30とラチェットプレート60の当接箇所である保持突起32の外側面32aと第1保持突部66の保持面66bは、ラチェットプレート60の回転軸線RXを中心とする円弧面である。そのため、第1ポール30がラチェットプレート60を支える際の安定性に優れている。
仮に、本実施形態の構成を適用せずに、アンロック範囲でラチェットプレート60がベースプレート20に対して下方に大きく偏心すると、各ポール30、31のうち、上側に位置するものは内歯65に対する外歯35の間隔が小さくなり、下側に位置するものは内歯65に対する外歯35の間隔が大きくなる。このように各ポール30、31とラチェットプレート60の歯間距離がばらついた状態でアンロック範囲からロック範囲に移行すると、ラチェットプレート60に対する各ポール30、31の噛合タイミングに大きなズレが生じてしまうおそれがある。
本実施形態のシートリクライニング装置15によれば、このような問題が生じず、アンロック範囲におけるラチェットプレート60の位置を適正に保ち、ラチェットプレート60がロック範囲に回転したときに円滑で精度の高いロック動作を行わせることができる。
第1ポール30とは逆に、各第2ポール31は、ロックスプリング70やレバー付勢スプリング(図示略)によって、水平線HLよりも下方に向けて(より詳しくは、水平線HLと垂直線VLの間の斜め下方に向けて)付勢される。そして、図6や図7に示すアンロック範囲中の特定範囲では、各第2ポール31の補助保持突起33は、第2保持突部67や第3保持突部68に対して上方から当接可能に対向する。
以上のように、シートリクライニング装置15では、ラチェットプレート60の第1保持突部66と第1ポール30の保持突起32が径方向に対向する位置関係にある状態(図5ないし図7、図14)がアンロック範囲となる。アンロック範囲のうちロック範囲との境界に近い(保持突起32と第1保持突部66の接触面積が小さくなる)特定範囲で、第2ポール31の補助保持突起33が第2保持突部67と第3保持突部68に対向して、耐荷重性を高めることができる。第2ポール31の補助保持突起33は、ロック範囲(図3、図4)において第1保持突部66に対して径方向に対向するが、補助保持突起33を保持突起32よりも径方向内側に設けたことにより、第2ポール31は第1保持突部66に規制されずに噛合位置まで移動することができる。つまり、第1保持突部66の周方向長さがラチェットプレート60のアンロック範囲に対応しており、この第1保持突部66の周方向長さは、第2ポール31の補助保持突起33との干渉を考慮せずに設定することができる。その結果、複数のポール30、31に径方向の移動規制用の保持突起32や補助保持突起33を備えて強度を向上させつつ、ラチェットプレート60の回転方向の可動範囲(シートバック12の動作量)を拡大させることができる。
その上で、アンロック範囲で第1保持突部66と保持突起32の当接によって噛合位置への移動規制を受ける第1ポール30が、噛合位置に向けての付勢力を利用して、下方からラチェットプレート60を支えてベースプレート20に対する偏心を抑制する。これにより、ラチェットプレート60がアンロック範囲からロック範囲に回転したときに、各ポール30、31の噛合タイミングにズレが生じにくく、確実で高精度なロック動作を実現できる。
以上、本発明を図示実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
先に述べたように、ベースプレート20に対する第1ポール30の移動方向は、水平線HLに対して垂直な方向(垂直線VL)に限定されるものではなく、垂直方向に対する所定の傾きを有してもよい。
上記実施形態の第1ポール30に設けた保持突起32は、ラチェットプレート60の回転方向に長手方向を向けており、第1保持突部66の保持面66bに沿う円弧形状の外側面32aを有している。この構成によって、アンロック範囲での第1ポール30とラチェットプレート60の相対的な安定性向上に寄与しているが、保持突起32の構成を異ならせることも可能である。
例えば、保持突起32の長手方向の向きを、ラチェットプレート60(ベースプレート20)の周方向から径方向に変更することも可能である。あるいは、特定の長手方向を有さない円柱形状などに保持突起32を設定することも可能である。保持突起32は、少なくとも、第1保持突部66の保持面66bに対して下方から当接して、噛合位置への第1ポール30の移動を規制すると共にラチェットプレート60を支えることが可能な形状であればよい。
上記実施形態では、回転カム40をロック方向に付勢するロックスプリング70の付勢力と、操作レバー90を初期位置に付勢するレバー付勢スプリング(図示略)の付勢力との合計値で、第1ポール30を水平線HLよりも上方に向けて付勢している。これと異なり、ロックスプリング70の付勢力のみによって第1ポール30を上方に向けて付勢するような構成も適用可能である。このように本発明では、上記実施形態の構成以外にも様々な形態の付勢部材を用いることができる。
上記実施形態では2つの第2ポール31を備えているが、本発明における第2ポールの数は2つ以外でもよい。一例として、上記実施形態の第1ポール30と上下対称に動作する第2ポールを1つのみ備えるように構成してもよい。この場合、第2ポールを案内する第2ポール案内溝は、垂直線LV(図10、図13、図14)に沿って上下に延びるものとする。
上記実施形態では、ラチェットプレート60における第2保持突部67と第3保持突部68の径方向位置を同じにしているが、第2保持突部67と第3保持突部68の径方向位置を異ならせることも可能である。例えば、第3保持突部68を第2保持突部67よりも径方向内側への突出量を大きくさせ、第1保持突部66と第2保持突部67と第3保持突部68が径方向位置(径方向内側を向く保持面66b、67c及び68cの位置)を3段階に異ならせる構成にしてもよい。この場合、第3保持突部68の径方向位置に応じて、2つある第2ポール31の一方で補助保持突起33の位置を径方向内側に変化させる。この構成によっても、シートリクライニング装置15における前記の効果を得ることができる。
本発明における各ポールの径方向移動は直線的な移動に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における第1ポール30と第2ポール31はベースプレート20に対して径方向に直線的に移動する構成であるが、径方向の移動成分と周方向の移動成分を含む円弧状の軌跡で各ポールが移動する構成などにも本発明を適用することが可能である。
上記実施形態のシートリクライニング装置15では、回転カム40とレリーズプレート50の組み合わせによって第1ポール30と第2ポール31を噛合位置と噛合解除位置に移動させているが、回転カム40とレリーズプレート50以外の駆動部材によって各ポール30、31を駆動してもよい。スペース効率や駆動効率の点から、回転カム40とレリーズプレート50のようにラチェットプレート60と同じ回転中心で回転する部材を用いることが好ましいが、直進移動など異なる動作形態の部材を用いることも可能である。また、回転カム40とレリーズプレート50を一体化した駆動部材を用いることも可能である。
また、上記実施形態ではシートクッション11とシートバック12のそれぞれを構成する左右のフレームうち車両の進行方向に向かって右側のフレームの間をシートリクライニング装置15で接続しているが、進行方向に向かって左側のフレームの間をシートリクライニング装置15で接続してもよい。さらに左右両方のフレームの間をシートリクライニング装置15で接続し、左右のシートリクライニング装置15の回転カム40同士を連結パイプ等で接続して、左右のシートリクライニング装置15の動きを連動させるようにしてもよい。