以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の麻酔システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における麻酔システムは図1に示すように、制御装置100と、作業台200とを有する。作業台200は、対象となる個体に対して作業者が所定の作業を行うための作業場である。制御装置100は、麻酔がかけられた個体に対する作業台200上での作業を支援する装置である。
図2は、図1に示した制御装置100の構成の一例を示す図である。図1に示した制御装置100は図2に示すように、複数の水槽110-1~110-3と、複数の個体移送部120-1~120-3と、制御部130とを有する。なお、図2には、図1に示した制御装置100が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示す。また、図2には、水槽および個体移送部がそれぞれ3つである場合を例に挙げて示しているが、それぞれ2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。これらの数は、作業対象となる個体の数や、作業者の人数に応じて設定可能である。
水槽110-1~110-3は、麻酔液が貯留された水槽である。また、水槽110-1~110-3には、作業対象となる個体が入れられる。この個体は、例えば、養殖魚である。また、水槽110-1~110-3それぞれに入れられる個体の数は限定しない(以下の説明について同じである)。また、麻酔液は、所定時間で対象物を麻酔できれば、特に限定されない。麻酔液は、例えば、FA100の麻酔剤を淡水または海水を用いて希釈した水溶液である。FA100は、対象物の種類(例えば、魚類か甲殻類か等)や、その大きさ、水温に応じて、希釈する濃度を変化させる必要がある。また、FA100は、フェノキシエタノールと比較して、麻酔時間の調整が容易ではないため、本発明のようなシステムにおいて効果を奏する。また、作業台200における作業は、例えば、麻酔がかけられた養殖魚に対して所定のワクチンを接種する作業である。個体、麻酔液および作業台200における作業については、以下の説明(第2および第3の実施の形態)において同じである。
個体移送部120-1~120-3それぞれは、水槽110-1~110-3それぞれに挿入(セット)可能である。個体移送部120-1~120-3それぞれは、水槽110-1~110-3に挿入されている状態で投入された個体を保持可能であり、水槽110-1~110-3から取り出された状態で、保持していた個体を作業台200へ移送する。個体移送部120-1~120-3は、個体を掬う網を用いて作成された籠から構成される。籠のフレーム部分は、筒状のパイプから構成される。網の部分の素材は、例えば、固く滑らかな素材を用いて作成されている。その素材は、例えば、ポリプロピレンが挙げられる。また、籠への網の張り方は、籠の形状に合わせて網を切断後、細いロープを用いて籠に編み込んでいく。網がポリプロピレン製等の固く滑らかな(滑る)材質であるため、化繊網の様にたるみが発生することはない。そのため、籠との間に隙間が出来ない様に細いロープを用いてきつく巻き留めていく。個体移送部120-1~120-3のサイズは、水槽110-1~110-3よりも小さなサイズであって、個体を水槽110-1~110-3から一括して掬うことができるサイズである。さらに、個体移送部120-1~120-3は後述するように、水槽110-1~110-3内に挿入された状態から、開放されている上面の一辺を回転軸として回転させて取り出されることができるサイズおよび形状である。
図3は、図2に示した水槽110-1および個体移送部120-1の外観の一例を示す斜視図である。図2に示した個体移送部120-1は図3に示すように、水槽110-1に挿入可能であり、上面が開放された籠型の形状となっており、上面の一辺にはハンドル部121-1が設けられている。ハンドル部121-1は、個体移送部120-1の上面に略垂直方向に延びた形状となっている。個体移送部120-1は図3に示した矢印方向に水槽110-1に挿入される。図2に示した水槽110-2~110-3および個体移送部120-2~120-3の外観についても同様である。
図4は、図3に示した個体移送部120-1が水槽110-1に挿入された様子の一例を示す斜視図である。図4に示すように、個体移送部120-1が水槽110-1に覆われるように挿入される。このように個体移送部120-1の少なくとも一部が水槽110-1に挿入された状態で、個体が水槽110-1に挿入されている個体移送部120-1に投入される。また、このとき水槽110-1には麻酔液が貯留されている。つまり、個体移送部120-1が挿入された水槽110-1には、麻酔液が貯留され、その中に個体が投入されている。個体移送部120-1のハンドル部121-1が設けられている側の一辺が回転軸部122-1となる。図2に示した水槽110-2~110-3および個体移送部120-2~120-3の外観についても同様である。
図5は、図3に示した個体移送部120-1の詳細な形状の一例を示す図である。図5には、図3に示した個体移送部120-1をハンドル部121-1が配置された面側から見た正面図と、上側から見た平面図と、左側面から見た左側面図とを示す。個体移送部120-1は、パイプから構成されている。図3に示した個体移送部120-1の形状は一例として図4に示すように、水槽110-1に挿入が可能であり、且つ水槽110-1に挿入された状態から取り出しが可能な形状である。例えば、水槽110-1が上面が開放された直方体であるため、個体移送部120-1の上面および底面の一辺の長さは水槽110-1の対応する一辺の長さよりも短い。また、図4に示すように、個体移送部120-1の上面の一辺の長さよりも底面の一辺の長さの方が短いものであれば、水槽110-1への挿入および水槽110-1からの取り出しがより容易になる。
図6は、図3に示した個体移送部120-1が水槽110-1に挿入された様子の一例を示す左側面図である。図6に示すように、個体移送部120-1の少なくとも一部が水槽110-1の内側に挿入される。ここで、個体移送部120-1に設けられたハンドル部121-1は外部からの力を利用して図6の紙面に向かって右回り方向へ押し下げられることで、個体移送部120-1は回転軸部122-1を回転軸として回転して水槽110-1から取り出され、個体移送部120-1に保持されている個体を外部(作業台200)に移すことができる。
図7は、図3に示した個体移送部120-1が回転軸部122-1を回転軸として回転したときの様子の一例を示す図である。図6に示した状態から、図7に示すように、ハンドル部121-1を操作することで、個体移送部120-1が回転軸部122-1を回転軸として回転して水槽110-1から取り出され、個体移送部120-1に保持されていた個体を作業台200へ移動させることができる。
図8は、図6に示した破線で囲った回転軸部122-1の拡大図を示す。図8に示すように、水槽110-1の側壁面の上縁に円筒形金具801が溶接された金属板802が止め具803-1,803-2を用いて、ボルトナット止めされている。ハンドル部121-1を操作することで、円筒形金具801の内側で個体移送部120-1の回転軸部122-1のパイプが回転し、個体移送部120-1が回転できるような機構となっている。なお、図8においては、図6に示した水槽110-1および個体移送部120-1の一部を省略している。
図9は、図1に示した麻酔システムの外観の一例を示す図である。図9に示すように、水槽110-1~110-3は並べられてレール140の上に配置されている。水槽110-1~110-3のレール140の敷設方向と平行である辺の一方の辺側に作業台200が配置され、作業台200の近辺には流路300が設けられている。流路300は、作業が完了した個体を流す(移動させる)流路である。流路300は、作業台200の長手方向に沿って、一方の側に設けられる。
図10は、図9示したレール140の上に配置された水槽110-1~110-3の態様の一例を示す図である。水槽110-1~110-3は、レール140の敷設方向に並べて配置される。水槽110-1~110-3は、レール140上を移動可能である。水槽110-1~110-3は、3つ一体としてレール140を移動するものであっても良いし、それぞれ別個にレール140上を移動するものであっても良い。なお、図10に示した例では、水槽110-1~110-3に挿入された個体移送部120-1~120-3を省略している。
制御部130は、水槽110-1~110-3に挿入された個体移送部120-1~120-3に個体が入れられている時間である第1の時間と、作業台200に個体が移されてから経過した時間である第2の時間とに基づいて、個体を作業台200へ移送する水槽110-1~110-3および個体移送部120-1~120-3を制御する。具体的には、制御部130は、第1の時間と第2の時間とに基づいて、個体移送部120-1~120-3が個体を作業台200へ移送する水槽を複数の水槽110-1~110-3の中から決定する。制御部130は、レール140の上を水槽110-1~110-3を移動させて、個体移送部120-1~120-3が個体を作業台200へ移送する水槽110-1~110-3を所定の位置へ移動させる。この所定の位置は、作業台200に個体移送部120-1~120-3のいずれか1台から個体を移すことができる位置である。
このとき、制御部130は、水槽110-1~110-3それぞれにおける第1の時間が、個体に麻酔がかかる時間以上であって個体を麻酔液に入れておくことができる時間を超えないように、水槽の決定および個体の移送タイミングを制御する。個体に麻酔がかかる時間および個体を麻酔液に入れておくことができる時間は、麻酔液の種類や希釈度等に基づいてあらかじめ設定されている。また、制御部130は、個体移送部が作業台200に個体を移送してから、次の個体移送部が作業台200に個体を移送するまでの第2の時間が所定の時間とほぼ等しくなるように、水槽の決定および個体の移送タイミングを制御する。この所定の時間は、一度に作業台200に移送された個体について作業者が作業を完了させるために要する時間であって、作業者の人数や能力に応じてあらかじめ設定されている。制御部130は、第2の時間が所定の時間に近くなった、または所定の時間を超えた場合、第1の時間が個体に麻酔がかかる時間以上であって個体を麻酔液に入れておくことができる時間を超えないものである水槽を水槽110-1~110-3から選択して、選択した水槽からその水槽に挿入された個体移送部が個体を移送するように制御する。
制御部130は、第1の時間および第2の時間を測るためのタイマーを有する。制御部130は、水槽110-1~110-3それぞれに対応する3つの第1のタイマーを有し、麻酔液が貯留された水槽110-1~110-3それぞれに個体を入れてからの時間(第1の時間)を、個体が入れられた水槽110-1~110-3に対応する第1のタイマーを用いて測定する。また、制御部130は、水槽110-1~110-3から取り出された個体移送部120-1~120-3から個体が移送されると、個体が移送された個体移送部120-1~120-3が挿入されていた水槽110-1~110-3に対応する第1のタイマーをリセットする。また、制御部130は、個体移送部120-1~120-3が作業台200に個体を移送してからの時間(第2の時間)を第2のタイマーを用いて測定する。制御部130は、個体移送部120-1~120-3が作業台200に個体を移送したら、第2のタイマーをリセットしてスタートさせる。ここで、第2のタイマーが示す時間の差分を算出して第2の時間を測定する場合は、第2のタイマーをリセットする必要は無い。さらに、制御部130は、水槽110-1~110-3それぞれにおける第1の時間の複数が上述した条件を満たしている場合、第1の時間が長い水槽から順番に個体が移送されるように、個体を移送する個体移送部120-1~120-3が挿入されている水槽110-1~110-3を決定する。
なお、制御部130は、第2の時間を用いた制御を行わずに、外部から入力された情報に基づいて、制御を行うものであっても良い。具体的には、例えば、外部から所定の入力を受け付けた際、第1の時間が個体に麻酔がかかる時間以上であって個体を麻酔液に入れておくことができる時間を超えないものである水槽を水槽110-1~110-3から選択して、選択した水槽からその水槽に挿入された個体移送部が個体を移送するように制御するものであっても良い。この場合、所定の入力とは、例えば、作業者が作業台200への次の個体の投入を要求する入力である。
図11、図12、図13および図14は、図9に示した水槽110-1~110-3のレール140上の移動および処理の流れの一例を示す図である。なお、図11、図12、図13および図14では、水槽110-1~110-3に挿入されている個体移送部120-1~120-3を省略している。また、図11、図12、図13および図14では、それぞれの水槽110~110-3に投入、移送される個体である魚が1つずつ示しているが、実際にはそれぞれ複数の個体が投入、移送される。まず、水槽110-1~110-3には、水で希釈された麻酔液が貯留されている。図11に示すように、水槽110-1に投入されている魚に麻酔をかけている状態で、水槽110-2へワクチン未接種の魚(麻酔がかけられていない魚)が投入される。このとき、水槽110-1から作業台200へ魚を投入できる位置にレール140上を水槽110-1~110-3が移動されている。その後、所定の時間が経過すると図12に示すように、水槽110-1にて麻酔がかけられている魚が作業台200へ移送される。この水槽110-1から作業台200への魚の移動は上述したように、水槽110-1に挿入されている個体移送部120-1のハンドル部121-1が操作されて個体移送部120-1が回転軸部122-1を回転軸として回転して取り出されることで実現される。また、水槽110-3へのワクチン未接種の魚(麻酔がかけられていない魚)の投入が開始される。水槽110-1に投入されている魚のすべてが作業台200へ移送されると、図13に示すように、水槽110-2から作業台200へ魚を移送することができる位置にレール140上を水槽110-1~110-3が移動される。すると、水槽110-1に貯留されている水(麻酔液を含む)が排水機構171によって排水され、その後、注水機構170により水槽110-1への注水および新たな麻酔液の添加が行われる。この注水および麻酔液の添加は、専用のシステムを用いて行われるものであっても良いし、作業を行う作業者が行っても良い。その後、所定の時間が経過すると図14に示すように、水槽110-2にて麻酔がかけられている魚が作業台200へ移送される。この水槽110-2から作業台200への魚の移送は上述した水槽110-1から作業台200への魚の移送と同様である。また、水槽110-1へのワクチン未接種の魚(麻酔がかけられていない魚)の投入が開始される。このとき、水槽110-1は、個体移送部120-1が挿入されている状態である。
一般的に、麻酔液が貯留された水槽に魚を投入してから、その魚に麻酔がかかるまで所定の時間を要する。水槽が1つである場合、作業台での作業にかかる時間が、水槽に魚を投入してからその魚に麻酔がかかるまでの時間よりも短いと、作業台での作業が終了しても次の魚に麻酔がかかるまで待たなければならなくなり、効率的な作業を行うことができない。そこで、本形態においては、麻酔液が貯留された複数の水槽にそれぞれ挿入された複数の個体移送部それぞれに、互いに所定の時間差を持つタイミングで個体を投入し、制御部130が、水槽に挿入された個体移送部が個体を保持している第1の時間と、作業台に個体が移送されてからの第2の時間とに基づいて、個体を作業台へ移送する水槽および個体移送部を制御する。そのため、個体に麻酔をかける麻酔時間およびタイミングを適切に制御することができる。
(第2の実施の形態)
図15は、本発明の麻酔システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における麻酔システムは図15に示すように、制御装置101と、作業台200と、複数の流路301-1,301-2とを有する。作業台200は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。流路301-1,301-2は、作業台200における作業が終了した後の個体を流す(移動させる)流路である。制御装置101は、麻酔がかけられた個体に対する作業台200上での作業を支援する装置である。
図16は、図15に示した制御装置101の構成の一例を示す図である。図15に示した制御装置101は図16に示すように、複数の水槽110-1~110-3と、個体移送部120-1~120-3と、制御部130と、計数部151と、出力部161とを有する。なお、図16には、図15に示した制御装置101が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示す。また、図16には、水槽および個体移送部がそれぞれ3つである場合を例に挙げて示しているが、それぞれ2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。これらの数は、作業対象となる個体の数や、作業者の人数に応じて設定可能である。水槽110-1~110-3、個体移送部120-1~120-3および制御部130それぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
計数部151は、作業が終了した後の個体の数をカウントする。計数部151は、流路301-1,301-2を移動してきた個体の数をカウントする。計数部151は、流路301-1,301-2の上方から流路301-1,301-2の光を検知する機能を有する光学式センサや、流路301-1,301-2を移動してきた個体の近接を検知する機能を有する近接センサを用いて個体をカウントするものであっても良い。また、計数部151は、カメラと画像処理装置とから構成されるものであっても良い。この場合、計数部151は、カメラが撮像した画像について画像処理装置が画像解析を行い、その解析の結果、対象となる個体(例えば、魚)であると判定した個体をカウントする。
出力部161は、計数部151がカウントした値を出力する。出力部161は、計数部151がカウントした値をディスプレイに表示するものであっても良いし、印刷するものであっても良いし、計数部151がカウントした値を示す情報を他の装置へ送信するものであっても良い。
図17は、図15に示した麻酔システムの外観の一例を示す図である。図17に示すように、水槽110-1~110-3は並べられてレール140の上に配置されている。第1の実施の形態と同様に、水槽110-1~110-3のレール140の敷設方向と平行である辺の一方の辺側に作業台200が配置されている。また、作業台200の水槽110-1~110-3側からその対向側へかけての両辺それぞれに沿って流路301-1,301-2が設けられている。流路301-1,301-2はそれぞれ、個体を計数する計数部151が設置されている位置においても、互いに合流することなく別個の流路となっている。これにより、流路301-1,301-2それぞれを移動してきた個体が互いに重なり合ったり、計数部151よりも上流部分に滞留してしまったりすることを防止することができる。
図18は、図17に示した流路301-1のAの部分の外観の一例を示す斜視図である。図17に示した流路301-1のAの部分は図18に示すように、底面311と2つの側壁321,331とから構成される流路である。底面311の表面は、魚が移動しやすいように、例えば、エンボス加工が施されているものが好ましいが、これに限定しない。流路301-1の内側の素材は、錆びにくいステンレスや繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等が好ましい。流路301-1の幅、つまり、側壁321と側壁331との間の距離は、魚が底面311に触れながら移動できるサイズであって、1~100cm程度が好ましい。側壁321と側壁331との間の距離は、例えば、対象となる魚の体幅または体高と同等かそれ以上が好ましい。また、側壁321および側壁331の高さは、1~100cm程度が好ましい。側壁321および側壁331の高さは、例えば、対象となる魚の体幅または体高と同等かそれ以上が好ましい。そのため、側壁321および側壁331の高さは、対象となる魚の体幅または体高、形態に応じて適宜調整される。図17に示した流路301-2についても同様である。
図19は、図17に示した流路301-1をB方向から見た外観の一例を示す図である。図17に示した流路301-1は図19に示すように、流路301-1の底面に沿って個体(魚)が上流から下流への一方向へ滑って移動するように水平面401に対して所定の傾斜角度601で傾斜して配置されている。なお、この傾斜角度601は4~6度が好ましいが、魚の量や、底面の素材・加工・構造、流路301-1上を魚が滑りやすくするために魚とともに上流から下流へ流す水の量等に応じて、適宜設定(例えば、1~30度程度の範囲内で設定)されるものであっても良い。図17に示した流路301-2についても同様である。
また、流路301-1,301-2に整流機構となる整流部(暖簾)(後述する図20における整流部501)が設けられているものであっても良い。図20は、整流部501が設けられた麻酔システムの外観の一例を示す図である。図20に示すように、流路301-1,301-2の計数部151の上流側に整流部501を設ける。
図21は、図20に示した流路301-1の整流部501付近をD方向から見た外観の一例を示す図である。実際には、図20に示した流路301-1の整流部501付近をD方向から見ると、流路301-1の側面により流路301-1を移動している魚は見えないが、図21では流路301-1内を移動している魚の動きを説明する便宜上、流路301-1内を移動している魚を記載している。図21に示すように、整流部501は、整流板502と支持板503とから構成される。整流板502および支持板503の具体的な構造については後述する。整流板502は、計数部151が個体の数をカウントする際、個体が重ならないように、計数部151の上流に流路301-1を移動する個体が整流板502と接触する高さに設けられている。整流板502の素材は、例えば、塩化ビニール樹脂である。整流板502を、流路301-1を移動する個体が整流板502と接触する高さに設けることにより、上下に重なった魚のうち上側の個体を引き留め、下側の個体を早く前方に移動させる。また、この場合、流路301-1は、整流部501の上流の水平面401に対する傾斜角度601よりも下流の水平面401に対する傾斜角度611の方が大きい。傾斜角度は大きいほどその面を滑り落ちる個体の加速度が大きくなるため、個体それぞれの速度の互いの差が大きくなる。そのため、傾斜角度が大きいものほど、個体間の引き離しが発生する。これにより、計数部151が個体をカウントする際に、個体同士が上下に重なって移動することを防ぐことができ、計数部151が正確な個体数をカウントすることができる。図20に示した流路301-2についても同様である。なお、整流部501の直前までに側壁321と側壁331との間の距離を、少なくとも個体の(体幅から体幅+20%)または(体高から体幅+20%)程度に絞っておくことが好ましい。
図22は、図20に示した整流部501を流路301-1~301-2の上方向から見た図である。図20に示したように設けられた整流部501は図22に示すように、整流板502が2枚の支持板503に挟まれるようにして設置されている。支持板503は、整流板502の上部を流路301-1,301-2の上流側と下流側との双方から挟み、整流板502を固定している。なお、支持板503は、例えば木製のものであっても良い。また、支持板503は、固定部材504を用いて固定されている。
図23は、図20に示した整流部501を流路301-1~301-2における個体の流れる方向から見た図である。図20に示したように設けられた整流部501は図23に示すように、整流板502の上部が支持板503を用いて固定されている。また、本実施の形態においては、整流板502には、流路301-1~301-2の壁面と重なる高さにおいて、複数のスリットが設けられている。整流板502および支持板503の寸法の一例を図23に示す。なお、整流板502の厚さは、例えば2mmである。また、支持板503は、固定部材504を用いて固定されている。図23に示すように、固定部材504は、支持板503および流路301-1に取り付けられている。取り付けの方法は、支持板503および流路301-1の側面に対して、ビスを用いるものであっても良いし、接着剤を用いるものであっても良い。このように、固定部材504を支持板503および流路301-1に固定することで、支持板503を含む整流部501が流路301-1~301-2に対して位置が固定される。
このように、本形態においては、複数の個体移送部が挿入され、麻酔液が貯留された複数の水槽に挿入された個体移送部に個体を投入し、個体が個体移送部に保持されている第1の時間と、作業台に個体が移送されてからの第2の時間とに基づいて、個体を作業台へ移送する水槽および個体移送部を制御する。さらに、移送された個体が作業台において作業が行われた後に移動する複数の流路に、個体が上流から下流へ移動するように傾斜を設け、その個体の個数をカウントする。加えて、個体をカウントする機構の上流に個体が接触する高さに整流部501を設け、整流部501の上流の流路の傾斜角度よりも整流部501の下流の流路の傾斜角度の方を大きくすることで、整流部501による引き離し効果および急傾斜による引き離し効果によって、整流部501よりも下流に配置された計数部が個体をカウントする際の個体の重なりを防ぐ。そのため、個体に麻酔をかける麻酔時間およびタイミングを制御することができ、さらに個体の個数を正確にカウントすることができる。
(第3の実施の形態)
図24は、本発明の麻酔システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態における麻酔システムは図24に示すように、制御装置102と、作業台200と、複数の流路302-1,302-2とを有する。作業台200は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。流路302-1,302-2は、作業台200における作業が終了した後の個体を流す(移動させる)流路である。制御装置102は、麻酔がかけられた個体に対する作業台200上での作業を支援する装置である。
図25は、図24に示した制御装置102の内部構成の一例を示す図である。図24に示した制御装置102は図25に示すように、複数の水槽110-1~110-3と、個体移送部120-1~120-3と、制御部130と、複数の計数部152-1~152-4と、出力部162とを有する。なお、図25には、図24に示した制御装置102が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示す。また、図25には、水槽および個体移送部がそれぞれ3つである場合を例に挙げて示しているが、それぞれ2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。水槽110-1~110-3、個体移送部120-1~120-3および制御部130それぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
計数部152-1~152-4は、作業が終了した後の個体の数をカウントする。計数部152-1~152-4は、作業が終了した後の個体が投入され、投入された個体の数をカウントする機構を有する。
出力部162は、計数部152-1~152-4がカウントした値を出力する。出力部162は、計数部152-1~152-4がカウントした値をディスプレイに表示するものであっても良いし、印刷するものであっても良いし、計数部152-1~152-4がカウントした値を示す情報を他の装置へ送信するものであっても良い。また、計数部152-1~152-4と出力部162との間は、有線または無線を用いて接続されている。また、出力部162におけるカウント値の表示方法については、特に限定しない。
図26は、図24に示した麻酔システムの外観の一例を示す図である。図26に示すように、水槽110-1~110-3は並べられてレール140の上に配置されている。第1の実施の形態と同様に、水槽110-1~110-3のレール140の敷設方向と平行である辺の一方の辺側に作業台200が配置されている。また、作業台200の水槽110-1~110-3側からその対向側へかけての両辺それぞれの所定の位置に計数部152-1~152-4が設けられている。また、作業台200の水槽110-1~110-3側からその対向側へかけての両辺それぞれに沿った下部に流路302-1,302-2が設けられている。流路302-1,302-2の素材は、耐塩耐腐食性の金属や、プラスチック製、FRPであっても良い。流路302-1,302-2は、上流(水槽110-1~110-3側)から下流へ向けて、水平面(図19に示した水平面401と同様)に対して傾斜しており、個体が上流から下流へ移動できるように配置されている。流路302-1,302-2は、その下流で1つの流路となり、1つの流路から個体が生簀へ投入できる構造となっている。
図27は、図26に示した計数部152-1を鉛直上方向から見た図である。図26に示した計数部152-1は図27に示すように、投入口153と、導管154と、接触センサ158とを有する。なお、図27に示した投入口153は、図26に示した作業台200に沿った位置に配置され、図26に示した形態の鉛直上方向から見える位置に配置される。また、導管154および接触センサ158は作業台200の下部に配置され、図26に示した形態の鉛直上方向から見えない位置に配置される。投入口153は、作業者が作業台200における作業が終了した個体を投入するための口である。本実施の形態において投入口153は、その開口部が鉛直上方向に開口しており、作業者が投入口153の上部から個体を投入できる形態を有する。導管154は、投入口153に投入された個体を排出口(後述する図28に示す排出口155)へ導く管である。導管154のサイズは、内部を個体が通過できるサイズである。接触センサ158は、導管154を移動してきた個体が扉156に接触して扉156を開くことで、個体を検知するセンサである。接触センサ158は、扉156と、支柱181と、支持体182と、後述する図29に示す受信部157と、接近体183とを有する。
図28は、図27に示した計数部152-1をAの方向から見た側面図である。図27に示した計数部152-1は図28に示すように、本実施の形態において導管154は、一端に投入口153が設けられ、他端に排出口155が設けられ、投入口153よりも排出口155の方が低くなるように配置されている。その理由は、導管154が投入口153から排出口155へ重力を用いて個体を移動させる通路であるからである。排出口155は、導管154を移動してきた個体を流路302-1へ放出する口である。扉156は支柱181を用いて支持体182に取り付けられ、排出口155に設けられ、個体が通過しない状態では閉じており、個体が通過するときにその個体により押圧されることで開く。受信部157は、扉156が開いた際に、扉156および支柱181と連動する接近体(後述する図30に示す接近体183)の接近を検知する。接触センサ158は、扉156の開閉を検知し、開状態から閉状態へ変化した回数または閉状態から開状態へ変化した回数をカウントする。例えば、接触センサ158は、個体が排出口155を通過するときにその個体により押圧されることで扉156が開いた後に、扉156が自重によって閉じることで、1回カウントする。そのため、接触センサ158が検知した回数が、扉156が開いた回数、つまり、排出口155を通過した個体の数となる。接触センサ158は、第2の実施の形態における計数部151のような、対象物と接触をせずに対象物を検知する光学式センサや近接センサとは異なり、このような接触センサ158を構成する構成要素の少なくとも一部が検知対象となる対象物と接触し、その接触を検知する機構を有するものである。計数部152-1の少なくとも投入口153、導管154、排出口155および扉156の材質は、ステンレスであり、個体が接する面にエンボス加工が施されている。個体に傷がつかず、十分に流れる表面であれば、当該加工形状に限定されない。これにより、計数部152-1の錆防止および個体の表面滑性向上を実現することができる。なお、図26に示した計数部152-2~152-4の構造についても同様である。
図29および図30は、図28に示した計数部152-1の破線で囲んだ部分の詳細を示す図である。図29は、扉156が閉じた状態を示し、図30は、扉156が開いた状態を示す。図29に示すように、計数部152-1の接触センサ158は、扉156と、軸159と、支柱181と、受信部157と、支持体182とを有する。さらに、計数部152-1の接触センサ158は、図30に示すように、接近体183と、構造体184と、バネ185とを有する。軸159は、扉156が開閉するときに支柱181が回転する軸となるような位置に設けられている。受信部157は、例えば磁器センサであって、接近体183は例えば磁性体であって、受信部157は接近体183の接近を検知する。図29に示すように、個体が導管154を移動してこないときは、扉156が排出口155を閉じた状態となる。図30に示すように、個体が導管154を移動してくると、排出口155から個体(魚)が排出される際、個体(魚)の重さで扉156が外側に押され、扉156を支持する支柱181が軸159を回転軸として回転し、扉156が開く。そのとき、支持体182で支柱181と連動する接近体183が受信部157に接近し、その接近した回数が受信部157にてカウントされる。この扉156の開閉は、1つの個体が通過するごとに開いて閉じる動作を1回繰り返す機構であって、例えば、回転軸、板およびゴムやばねを用いたものであっても良い。この機構は、扉156にゴムやバネ185の一方を取り付け、他方を支持体182に固定されている構造体184と接続し、扉156が閉じる方向へ適度な力を働かせることにより、閉時に扉156と枠とが勢い余って開方向に再度開いてしまう、いわゆるバウンディングを接触センサ158が誤検知しないようにする機構である。この機構は、対象となる個体のサイズや重量等に応じて適宜調整される。図30に示した例は、この機構にバネ185を用いた例である。バネ185の一端が導管154に固定された支柱186に取り付けられ、バネ185の他端が支柱181に取り付けられている。これにより、扉156が閉じる方向に支柱181に力が働き、扉156が開いた状態から閉じた状態になった後に、扉156が排出口155にバウンドした勢いで再度開いてしまうことを防ぐ。バネ185の代わりにゴム等の弾性体を用いる場合も同様である。
図26に示すように、計数部152-1,152-2が配置されている側の作業台200の下側に設けられた流路302-1は、計数部152-1,152-2それぞれの排出口155から排出された個体が下流へ移動する流路となる。流路302-1には、計数部152-1または計数部152-2を通過していない個体は流入しない。計数部152-3,152-4が配置されている側の作業台200の下側に設けられた流路302-2は、計数部152-3,152-4それぞれの排出口155から排出された個体が下流へ移動する流路となる。流路302-2には、計数部152-3または計数部152-4を通過していない個体は流入しない。図26に示すように計数部152-1~152-4を配置した場合、少なくとも4人の作業者が互いに並行して作業を行うように運用し、その作業者それぞれが計数部152-1~152-4をそれぞれ使用すれば、効率的に計数部152-1~152-4を用いた個体の計数を行うことができる。図26に示すように、計数部152-1~152-4それぞれを2人ずつ(合計8人)の作業者700-1~700-8が使用しても良いことは言うまでもない。計数部の数は、作業者の数や作業台のサイズに応じて設定されるものであって、ここでは特に規定しない。
図31は、図25に示した出力部162におけるカウント値の表示態様の一例を示す図である。図25に示した出力部162は図31に示すように、計数部152-1~152-4がカウントした個体の数を表示する。図25に示すように、出力部162は、計数部152-1(カウンタ1)~152-4(カウンタ4)ごとに、そのカウンタ値を表示し、さらにそれらの合計値を表示するものであっても良いし、計数部152-1~152-4がカウントした値の合計値のみを表示するものであっても良い。また、出力部162は、計数部152-1~152-4がカウントしている値をリアルタイムで表示するものであっても良いし、所定のタイミングでの計数部152-1~152-4における累計値を表示するものであっても良い。なお、計数部152-1~152-4と、出力部162との間は、有線または無線を用いて接続されている。
このように、本形態においては、複数の個体移送部が挿入され、麻酔液が貯留された複数の水槽に挿入されている個体移送部に個体を投入し、個体が個体移送部に保持されている第1の時間と、作業台に個体が移送されてからの第2の時間とに基づいて、個体を作業台へ移送する水槽および個体移送部を制御する。さらに、移送された個体が作業台において作業が行われた後に作業者が個体を投入する投入口を具備する計数部を設ける。投入された個体の数を計数部がカウントする。そのため、個体に麻酔をかける麻酔時間およびタイミングを制御することができ、さらに個体の個数を正確にカウントすることができる。加えて、作業者が作業後に投入口に個体を投入したらその個体がカウントされるため、個体の重なりによる誤ったカウントの発生を低減することができ、個体数計測の精度をさらに向上させることができる。
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。
上述した制御部130が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を制御部130を具備した装置(以下、情報処理装置と称する)にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。なお、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて上述した論理回路を実現するものであっても良い。