本発明に係る自覚式検眼装置1は、図1に示すように、被検者2の被検眼に提示する各種の視機能検査用の視標チャート3a-1を表示する視標提示装置3と、被検眼の視機能を矯正するための矯正装置(検眼器、フォロプタ装置)4とコントローラ装置5とを備える。
この自覚式検眼装置1は、従来からよく知られているように、図示を略す眼鏡を作成する際にこの眼鏡のレンズの屈折度数を定めるために用いられている。
各種の視標チャート3a-1は、その視標提示装置3の表示画面3aに表示される。その視標チャート3a-1は、コントローラ装置5の操作本体部6を操作することにより決定される。図示の視標チャート3a-1では、従来よく知られた文字「C」からなるランドルト環が表示されている。しかし、視標チャート3a-1はこれに限られず、乱視検査用の視標、クロスシリンダー検査用の視標、バランス検査用の指標、斜位検査用の指標(偏光十字、クロスリング、マドックス)、垂直または水平斜位測定(プリズム分離)用の指標、固視ずれテスト(固視点付き偏光十字)用の指標、R/G検査用の指標、スマートクロス検査用の指標などが表示されうる。
被検者2と視標提示装置3との間には、検眼テーブル7が配置されている。検眼テーブル7には、この検眼テーブル7からその上方へ伸びる支柱8が設けられている。支柱8の上部には横方向に伸びるアーム9が設けられている。矯正装置4はこのアーム9に取り付けられている。
矯正装置4は、左右方向に並べて配置された一対のフォロプタ10を備える。各フォロプタ10は、それぞれ検眼窓11aが形成されたハウジング11を備えている。各ハウジング11の内部には、従来と同様に、環状のレンズディスク(図示を略す)が回転可能に収納されている。
このレンズディスクには、互いに屈折力の異なる複数の光学素子であるレンズが周方向に沿って設けられている。その各レンズは、コントローラ装置5の制御によりレンズディスクの回転により各検眼窓11aに選択的にセットされる。
被検者2は、その一対のフォロプタ10の検眼窓11a、11aにセットされた光学素子を通じて視標チャート3a-1を視認するものである。
そのコントローラ装置5は、検眼テーブル7に載置されている。このコントローラ装置5は、例えば、図2に拡大して示すように、パーソナルコンピュータが用いられ、このコントローラ装置5は、図3に示すように、既述の操作本体部6とモニタ部12と演算制御回路部15と記憶部16とから概略構成されている。操作本体部6は、例えば、操作盤6aとマウス6bとマイク6cとから概略構成される。マウス6bの入力は、マイク6c、レバー、ボタンなどの他の入力手段と代替してもよい。特に、被検者2が視標提示装置3の内容を視認できない場合は、マイク6cによって各種の入力指示を行うとよい。
さらに、被検者2とは異なる検者がコントローラ装置5を遠隔操作できるよう、コントローラ装置5はネットワークで視標提示装置3と接続されていてもよい。操作本体部6のマウス6bは、他のデバイス(ポインティングデバイス、レバー、各種コントローラー等)でも良い。
図3に示すように、この記憶部16には、操作盤6aの手動操作、マウス6bの手動操作、またはマイク6cへの音声指示により入力された、右眼、左眼、または両眼に対応する光学素子の光学特性のパラメータを光学特性データとして記憶させたうえ、表示画面3aや表示画面12aに表示させることが可能である。操作本体部6の操作履歴やそれに伴う光学特性データの変更履歴を記憶部16に記憶させておき、モニタ部12やネットワークで接続されたパソコンなどで、これらの履歴に基づく検査状況の再生を行っても良い。こうすれば、検者自身が被検者になって自覚検査を行いつつ、光学特性データの変更指示に対する見え方の変化や光学素子パラメータの変化を把握することができる。また、光学素子の変更履歴を記憶しておくことで検者自身による自覚検査のプレイバックも可能である。したがって、検者に対する自覚検査のトレーニングや学習に有効である。
なお、右眼、左眼、または両眼のうちどれに対応する光学特性のパラメータを変更するかは、スクロールホイールのクリックなどにより切り替えることができる。例えば、デフォルトでは右眼、一回スクロールホイールのクリックで左眼、さらに一回スクロールホイールのクリックで両眼に対応する光学素子のパラメータ変更が可能となる。
演算制御回路部15は、操作本体部6の操作指令に基づき、矯正装置4を制御する機能と、視標提示装置3とモニタ部12とを制御する機能とを有する。
そのモニタ部12の表示画面12aには、被検者2自ら(あるいは図示しない検者の操作)によって各種の画像、光学特性データ、操作情報等が表示可能である。
図4に示すように、モニタ部12の表示画面12aの下部には、視標提示装置3の表示画面3aに提示可能な視標チャート3a-1を示す複数の視標チャート画像の一覧を表示する一覧表示領域20等が設けられている。
主表示領域17は、検眼窓11a、11aにセットされている光学素子としてのレンズの球面度数、乱視度数及び軸角度等の光学特性である屈折力に対応する光学特性データを表示する領域である。
その主表示領域17には、ここでは、レンズの屈折力のうち球面度数、乱視度数、軸角度及び加入度数の各項目が表示され、被検者2の右眼と左眼とに対応して、現在、検眼窓11a、11aにセットされている光学特性データの数値が各項目毎に表示されている。
演算制御回路部15は、その一覧表示領域20等がホイール回転などで操作されると、この操作に対応する処理を実行し、この操作に対応する視標チャート3a-1が、視標提示装置3の表示画面3aに表示される。
図5に示すように、視標提示装置3の表示画面3aには、視標チャート3a-1と、光学特性データ表示領域3a-2と、ガイド表示領域3a-3とが重畳して表示される。
図5では一例として、レッドグリーン検査用の視標チャート3a-1に対応した光学特性データのパラメータの更新操作を案内するガイドとして、赤に対応するマウス6bの左クリックで加入度数を1単位上げること、および緑に対応するマウス6bの右クリックで加入度数を1単位下げることを案内している。
光学特性データ表示領域3a-2は、検眼窓11a、11aにセットされている光学素子としてのレンズの球面度数、乱視度数及び軸角度等の光学特性である屈折力に対応する光学特性データを表示する領域である。
その光学特性データ表示領域3a-2には、ここでは、レンズの屈折力のうち球面度数、乱視度数、軸角度及び加入度数の各項目が表示され、被検者2の右眼と左眼とに対応して、現在、検眼窓11a、11aにセットされている光学特性データの数値が各項目毎に表示されている。
演算制御回路部15は、この光学特性データ表示領域3a-2に表示されている光学特性データに対応する光学特性を有する光学素子が検眼窓11a、11aにセットされるように矯正装置4を制御するものである。
自覚検査は、その光学特性データ表示領域3a-2に表示されている光学特性データに対応する光学特性を有するレンズを用いて行われる。
ガイド表示領域3a-3は、光学特性データ表示領域3a-2に表示されている光学特性データのパラメータの更新操作を案内するガイドを表示する領域であり、被検者2自らの自覚検査作業の便宜のために設けられている領域である。なお、ガイド表示領域3a-3は、被検者自身による自覚検査を実施するための「セルフ自覚検査モード」がコントローラ装置5から選択された場合に限って表示されてもよく、通常の自覚検査を行うための「通常自覚検査モード」がコントローラ装置5から選択された場合は表示しなくてもよい。
演算制御回路部15は、ガイド表示領域3a-3のガイドに沿って被検者2自ら、操作本体部6を介して入力された光学特性データのパラメータ変更指示に従い、光学特性データ表示領域3a-2などに表示されている光学特性データを更新する制御を実行する機能も有する。
記憶部16は、更新前の光学特性データと更新後の光学特性データを記憶可能である。
例えば、被検者2などによってマウス6bが右クリック操作されると、演算制御回路部15は、光学特性データの1つである「球面」度数のパラメータを1単位だけインクリメントする。あるいは、被検者2などによってマウス6bが左クリック操作されると、演算制御回路部15は、光学特性データの1つである「球面」度数のパラメータを1単位だけデクリメントする。
被検者2がガイド表示領域3a-3を視認できない場合は、マウス6bのスクロールホイールの回転にて、ガイド表示領域3a-3の内容を音声にて案内する音声案内モードに切り替わる。演算制御回路部15は、マウス6bのスクロールホイールの回転にて音声案内モードへの変更が指示されると、ガイド表示領域3a-3に表示されている内容に相当する音声をスピーカ18にて出力する。例えば、レッドグリーン検査の場合は、「緑の方がよく見える場合は右クリックを、赤の方がよく見える場合は左クリックをしてください」との音声が出力される。被検者は音声に基づきマウス6bの操作を行う。煩雑さを避けるため、音声案内の内容は、ガイド表示領域3a-3の操作内容のような最小限度に留めるとよい。
マウス6bのスクロールホイールの回転方向と回転量でパラメータを変更してもよい。例えば、上方向の回転量に合わせてパラメータをインクリメントするか、下方向の回転量に合わせてパラメータをデクリメントしてもよい。
ここで、演算制御回路部15は、変更された光学特性データが被検者2の意図した内容であるか否かを、マイク6cへの発声内容によって確認してもよい。例えば、演算制御回路部15は、マイク6cへ「Yes」の音声入力がされたことを認識すると、パラメータ更新を確定し、マイク6cへ「No」の音声入力がされたことを認識すると、パラメータ更新をキャンセルする。このように、パラメータ更新内容を被検者2が口頭で返答し、その内容に応じてパラメータ更新を確定することで、被検者2自身のパラメータ更新指示の誤りの発声が大幅に減る。マイク6cとマウス6bとの間の入力の切り替えは、スクロールホイールで行われてもよい。
ついで、演算制御回路部15は、更新された光学特性データが光学特性データ表示領域3a-2に表示されるように、視標提示装置3を制御する。
また、この演算制御回路部15は、視標提示装置3に今まで表示されていた光学特性データに対応する光学素子を検眼窓11a、11aから退避させると共に、新たに光学特性データ表示領域3a-2に表示された光学特性データに対応する光学素子が検眼窓11a、11aにセットされるように入れ替え制御を実行する。
以上の処理を要約すると、図6のようになる。図6は、演算制御回路部15による処理の流れを示す。この処理を演算制御回路部15(CPUなどのプロセッサ)で実行させるためのプログラムは、記憶部16(ROM)などの非一時的有形媒体に記録されている。なおこの処理は、被験者の任意の指示により繰り返すことができる。
S1では、演算制御回路部15は、モニタ部12の表示画面12aの一覧表示領域20から、マウス6bを介して所望の視標の選択操作を受け付ける。
S2では、演算制御回路部15は、マウス6bを介して選択された視標チャート3a-1を、視標提示装置3の表示画面3aに表示させる。また演算制御回路部15は、視標チャート3a-1に対応した光学特性データのパラメータの更新操作を案内するガイドを表示する。
S3では、演算制御回路部15は、操作本体部6を介して被検者などから入力された光学特性データのパラメータ変更指示に従い、光学特性データ表示領域3a-2などに表示されている光学特性データを更新する。また、演算制御回路部15は、視標提示装置3に今まで表示されていた光学特性データに対応する光学素子を検眼窓11a、11aから退避させると共に、新たに光学特性データ表示領域3a-2に表示された光学特性データに対応する光学素子が検眼窓11a、11aにセットされるように入れ替え制御を実行する。
なお、図7ないし図9は、様々な光学特性データのパラメータの更新の操作を案内するガイドの表示例である。
以上のように、視標提示装置3の表示画面3aには、視標チャート3a-1とともに、光学特性データ表示領域3a-2が表示される。被検者2は自ら、表示画面3aの光学特性データ表示領域3a-2に表示されている光学特性データのパラメータの更新操作を案内するガイドを参照し、検眼窓11a、11aにセットされる様々な光学特性データのパラメータの更新の操作を行うことができる。このため、被検者2は、検眼窓11a、11aを覗きながら、視標チャート3a-1から視線をそらすことなく、マウス6bを操作して、光学特性データのパラメータの更新操作を行うことができる。これにより、セルフ式の自覚検査が可能となる。