細胞のゲノム内のヌクレオチド配列を修飾するための組成物および方法が提供される。本方法および組成物は、ヌクレオチド配列を修飾するため、および/または相同組換え修復の頻度を増加させるために、ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを利用する。本方法は、さらに任意の修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度を減少させるために使用できる。
相同組換え修復(HDR)および結果として標的化DNA切断の修復に基づく遺伝子編集に比して非相同末端結合(NHEJ)が優勢である、それらに限定されないが、例えば非従来型酵母、植物、動物などの多数の細胞型は、ポリヌクレオチド修飾鋳型に基づく精密な遺伝子編集に加えてNHEJ突然変異の高いバックグラウンドを有するであろう。本明細書では、精密な編集(ヌクレオチド修飾)をもたらすHDRの頻度を増加させる、および/または保護修飾鋳型のオフサイト組込みを減少させるために保護ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用する方法および組成物について記載する。
引用する全ての特許文献および非特許文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書の用語「細胞」は、原核細胞または真核細胞などの任意のタイプの細胞を意味する。真核細胞は、核および他の膜で包まれた構造(細胞小器官)を有するが、他方、原核細胞には核がない。所定の実施形態における細胞は、哺乳類細胞または非哺乳類細胞であってよい。非哺乳類細胞は、真核性であっても原核性であってもよい。例えば、本明細書の非哺乳類細胞は、微生物細胞、または例えば植物、昆虫、線虫、鳥類、両生類、爬虫類もしくは魚類などの非哺乳類多細胞生物の細胞を意味することができる。本明細書の微生物細胞は、例えば、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、原核細胞、原生生物細胞(例えば、藻類細胞)、鞭毛虫細胞、黄色植物細胞もしくは卵菌細胞を意味することができる。本明細書の原核細胞は、例えば、細菌細胞もしくは古細菌細胞を意味することができる。
本明細書の用語「酵母」は、主として単細胞の形態で存在する真菌種を意味する。または、酵母は、「酵母細胞」と呼ぶこともできる。本明細書の酵母は、例えば、従来型酵母または非従来型酵母のいずれかであると特徴付けることができる。
本明細書の用語「従来型酵母」(「モデル酵母」)は、一般に、サッカロミセス(Saccharomyces)属もしくはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母種を意味する。所定の実施形態における従来型酵母は、非相同末端結合(NHEJ)によって媒介される修復プロセスよりも相同組換え(HR)DNA修復プロセスを好む酵母である。
本明細書の用語「非従来型酵母」は、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、「出芽酵母」、「パン酵母」および/または「ビール酵母」としても公知であるS.セレビジエ(S.cerevisiae))もしくはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、分裂酵母としても公知であるS.ポンベ(S.pombe))などの「従来型」(「モデル」)酵母ではない任意の酵母を意味する。本明細書の所定の態様における非従来型酵母は、無性生殖(アナモルフィック)もしくは有性生殖(テレオモルフィック)で繁殖する酵母であってよい。本明細書の非従来型酵母は、典型的には、単細胞の形態で存在するが、これらの酵母の所定のタイプは、任意選択的に、仮性菌糸(出芽細胞が連結した糸)を形成することができる。なおさらに他の態様では、非従来型酵母は一倍体もしくは二倍体であってよい、および/またはこれらの倍数体形のいずれかで存在する能力を有していてよい。非従来型酵母は、参照により本明細書に組み込まれるNon-Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf,K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer-Verlag,Berlin,Germany,2003)およびSpencer et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.58:147-156)において記載されている。所定の実施形態における非従来型酵母は、追加して(あるいは)、HRによって媒介される修復プロセスよりもNHEJ DNA修復プロセスを好む酵母である可能性がある。この考えに沿った非従来型酵母の定義-HRよりもNHEJを好む傾向-は、参照により本明細書に組み込まれるChen et al.(PLoS ONE 8:e57952)によって詳細に開示されている。本明細書の好ましい非従来型酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)属の酵母(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))である。
CRISPR遺伝子座(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)(スペーサー散在性ダイレクトリピートとしても公知である)は、1ファミリーのDNA遺伝子座を構成する。CRISPR遺伝子座は、部分的に回文性である短鎖の高度に保存されたDNAリピート(典型的には、24~40bpであり、1~140回繰り返される-CRISPRリピートとも呼ばれる)からなる。反復配列(通常は種特異的)の隙間は、固定長の可変配列によって埋められる(典型的には、CRISPR遺伝子座に依存して、20~58bp(2007年3月1日に公開された国際公開第2007/025097号パンフレット))。細菌および古細菌は、短鎖RNAを使用して外来核酸の分解を指令するために、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系と呼ばれる適応的免疫防御を進化させてきた(((Horvath and Barrangou,Science 327:167-170;Karginov and Hannon,Mol.Cell 37:7-19)。2007年3月1日に公開された国際公開第2007/025097号パンフレット)。細菌由来のII型CRISPR/Cas系は、CasエンドヌクレアーゼをそのDNA標的に誘導するためにcrRNA(CRISPR RNA)およびtracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)を使用する。crRNAは、二本鎖DNAの1本のストランドに相補的な領域およびCasエンドヌクレアーゼにDNA標的を切断するように指令するRNA二本鎖を形成するtracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)と塩基対合する領域を含有する。
Cas遺伝子には、一般に、隣接CRISPR遺伝子座に結合した、関連した、もしくは近接する、または近傍にある遺伝子が含まれる。用語「Cas遺伝子」、「CRISPR関連(Cas)遺伝子」は、本明細書では互換的に使用される。Casタンパク質ファミリーの包括的総説は、Haft et al.(2005)Computational Biology,PLoS Comput Biol 1(6):e60。doi:10.1371/journal.pcbi.0010060に提示されている。本明細書に記載したように、4つの以前から公知の遺伝子ファミリーに加えて、41種のCRISPR関連(Cas)遺伝子ファミリーが記載されている。この文献は、CRISPR系が、様々な反復パターン、遺伝子セットおよび種の範囲を備える様々なクラスに属することを証明している。所定のCRISPR遺伝子座でのCas遺伝子の数は、種間で異なる可能性がある。
本明細書の用語「Casエンドヌクレアーゼ」は、Cas(CRISPR関連)遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。Casエンドヌクレアーゼは、好適なポリヌクレオチド成分と複合した場合は、特異的DNA標的配列の全部もしくは一部を認識する、結合するおよび任意選択的にニッキングもしくは切断することができる。
本明細書で使用する用語「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体」、「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系」、「ガイドポリヌクレオチド/Cas複合体」、「ガイドポリヌクレオチド/Cas系」、「誘導型Cas系」は、本明細書では互換的に使用され、複合体を形成することができる少なくとも1つのガイドポリヌクレオチドおよび少なくとも1つのCasエンドヌクレアーゼを意味しており、ここで前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する(一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)ことを指令することができる。本明細書のガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casタンパク質および例えばI型、II型もしくはIII型CRISPR系などの4つの公知のCRISPR系(Horvath and Barrangou,Science 327:167-170)のいずれかの好適なポリヌクレオチド成分を含むことができる。Casエンドヌクレアーゼは標的配列でDNA二本鎖を解き、およびCasタンパク質との複合体中にある(例えばcrRNAもしくはガイドRNAなどであるが、それらに限定されない)ポリヌクレオチドによる標的配列の認識によって媒介されるように、任意選択的に少なくとも1つのDNA鎖を切断する。Casエンドヌクレアーゼによる標的配列のそのような認識および切断は、典型的には、正確なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が、DNA標的配列の3’末端に、またはDNA標的配列の3’末端に隣接して位置する場合に発生する。または、本明細書のCasタンパク質には、DNA切断活性もしくはニッキング活性が欠如する可能性があるが、それでも好適なRNA成分と複合体化されると、DNA標的配列に特異的に結合する可能性がある。(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、DNA標的配列の一方または両方の鎖を切断することができる。DNA標的配列の両方の鎖を切断できるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、典型的には、そのエンドヌクレアーゼドメインの全てを機能的な状態で有するCasタンパク質(例えば、各エンドヌクレアーゼドメインにおける一部または全ての活性を保持する野生型エンドヌクレアーゼドメインもしくはその変異体)を含む。したがって、Casタンパク質の各エンドヌクレアーゼドメインの一部または全ての活性を保持する野生型Casタンパク質(例えば、本明細書において開示したCas9タンパク質)またはその変異体は、DNA標的配列の両方の鎖を切断することができるCasエンドヌクレアーゼの好適な例である。機能的RuvCおよびHNHヌクレアーゼドメインを含むCas9タンパク質は、DNA標的配列の両方の鎖を切断することができるCasタンパク質の例である。DNA標的配列の1本の鎖を切断することができるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、本明細書においてニッカーゼ活性(例えば、部分的切断能力)を有すると特徴付けることができる。Casニッカーゼは、典型的にはCasがDNA標的配列の1本の鎖だけを切断する(すなわち、ニックを作成する)ことを許容する1つの機能的エンドヌクレアーゼドメインを含む。例えば、Cas9ニッカーゼは、(i)突然変異による機能不全RuvCドメインおよび(ii)機能的HNHドメイン(例えば、野生型HNHドメイン)を含むことができる。また別の例として、Cas9ニッカーゼは、(i)機能的RuvCドメイン(例えば、野生型RuvCドメイン)および(ii)突然変異による機能不全HNHドメインを含むことができる。本明細書で使用するために好適なCas9ニッカーゼの非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれるGasiunas et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109:E2579-E2586)、Jinek et al.(Science 337:816-821)、Sapranauskas et al.(Nucleic Acids Res.39:9275-9282)および米国特許出願公開第2014/0189896号明細書によって開示されている。
DNAターゲティングの特異性を増加させるためには、一対のCas9ニッカーゼを使用することができる。一般に、これは、異なるガイド配列を備えるRNA成分と結び付けられることによって、所望のターゲティングのためにその領域内の逆鎖上のDNA配列を標的としてすぐ近くでニックを入れる2つのCas9ニッカーゼを提供することによって実施できる。各DNA鎖のそのような近隣の切断は、二本鎖切断(すなわち、一本鎖オーバーハングを備えるDSB)を作り出し、これは次に、非相同末端結合であるNHEJ(インデル形成をもたらす)または相同組換えであるHRのための基質として認識される。これらの実施形態における各ニックは、例えば、相互から少なくとも約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100(または5~100の間の任意の整数)塩基離れていてよい。本明細書の1つまたは2つのCas9ニッカーゼタンパク質は、Cas9ニッカーゼ対に使用することができる。例えば、突然変異RuvCドメインを備えるが、機能的HNHドメインを備えていないCas9ニッカーゼ(すなわち、Cas9 HNH+/RuvC-)を使用することができよう(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9 HNH+/RuvC-)。各Cas9ニッカーゼ(例えば、Cas9 HNH+/RuvC-)は、各ニッカーゼを各特定DNA部位にターゲットするガイドRNA配列を備える本明細書の好適なRNA成分を使用することによって、相互に近隣の(最大で100塩基対離れている)特定DNA部位に方向付けられるであろう。
Casタンパク質は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えば、Casタンパク質に加えて1つ、2つ、3つ以上のドメイン)を含む融合タンパク質の一部であってよい。そのような融合タンパク質は、任意の追加のタンパク質配列、および任意選択的に任意の2つのドメイン間に、例えばCasと第1異種ドメインとの間にリンカー配列を含む可能性がある。本明細書のCasタンパク質に融合させることのできるタンパク質ドメインの例としては、制限なく、エピトープタグ(例えば、ヒスチジン[His]、V5、FLAG、インフルエンザヘマグルチニン[HA]、myc、VSV-G、チオレドキシン[Trx])、レポーター(例えば、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ[GST]、ホースラディッシュペルオキシダーゼ[HRP]、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ[CAT]、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ[GUS]、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質[GFP]、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質[CFP]、黄色蛍光タンパク質[YFP]、青色蛍光タンパク質[BFP])、および以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性(例えば、VP16もしくはVP64)、転写抑制活性、転写遊離因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性の1つ以上を有するドメインが挙げられる。Casタンパク質は、さらにDNA分子もしくは他の分子、例えばマルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)、GAL4A DNA結合ドメインおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)VP16と結合するタンパク質と融合することができる。
本明細書のCasタンパク質は、下記の属:アエロピルム(Aeropyrum)属、ピロバクルム(Pyrobaculum)属、スルフォロブス(Sulfolobus)属、アルカエオグロブス(Archaeoglobus)属、ハロアーキュラ(Haloarcula)属、メタノバクテリウム(Methanobacteriumn)属、メタノコッカス(Methanococcus)属、メタノサルシーナ(Methanosarcina)属、メタノピルス(Methanopyrus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、ピクロフィルス(Picrophilus)属、サーニオプラスニア(Thernioplasnia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、アクゥイフルクス(Aquifrx)属、ポルフロモナス(Porphvromonas)属、クロロビウム(Chlorobium)属、サームス(Thermus)属、バチルス(Bacillus)属、リステリア(Listeria)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、クロストリディウム(Clostridium)属、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属、アザーカス(Azarcus)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、ナイセリア(Neisseria)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、デサルフォビブリオ(Desulfovibrio)属、ジオバクター(Geobacter)属、マイクロコッカス(Myrococcus)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エシェリキア(Escherichia)属、レジオネラ(Legionella)属、メチロコッカス(Methylococcus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、サルモネラ(Salmonella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、エルシニア(Yersinia)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、トレポネーマ(Treponema)属、フランシセラ(Francisella)属もしくはサーモトガ(Thermotoga)属のいずれか由来であってよい。または、本明細書のCasタンパク質は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0093617号明細書に開示された配列番号462~465、467~472、474~477、479~487、489~492、494~497、499~503、505~508、510~516または517~521のいずれかによってコードされてもよい。
所定の実施形態におけるガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列ではどの鎖も切断しない。そのような複合体は、そのヌクレアーゼドメインの全部が突然変異して機能不全であるCasタンパク質を含んでいてよい。例えば、DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列のいかなる鎖も切断しない本明細書のCas9タンパク質は、突然変異機能不全RuvCドメインおよび突然変異機能不全HNHドメインの両方を含むことができる。標的DNA配列に結合するがこれを切断しない本明細書のCasタンパク質は、例えば、遺伝子発現を調節するために使用することができ、その場合にはCasタンパク質は、転写因子(もしくはその一部)(例えば、本明細書に開示したいずれかなどのリプレッサーもしくは活性化因子)と融合させることができよう。
Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、例えば2007年3月1日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/025097号パンフレットの配列番号462、474、489、494、499、505および518に列挙されたCas9遺伝子を含むがそれらに限定されないII型Cas9エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子であってよい。Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Casコドン領域の上流のSV40核ターゲティングシグナルおよびCasコドン領域の下流の両方向性VirD2核局在化シグナル(Tinland et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7442-6)に機能的に結合することができる。本明細書の「Cas9」(以前は、Cas5、Csn1もしくはCsx12と呼ばれた)は、DNA標的配列の全てまたは一部を特異的に認識して切断するために、crヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドと、または単一ガイドポリヌクレオチドとの複合体を形成するII型CRISPR系のCasエンドヌクレアーゼを意味する。Cas9タンパク質は、それぞれが標的配列で1本のDNA鎖を切断することができるRuvCヌクレアーゼドメインおよびHNH(H-N-H)ヌクレアーゼドメインを含む(両方のドメインの協調活動は、DNA二本鎖の切断をもたらすが、他方一方のドメインの活性はニックをもたらす)。一般に、RuvCドメインは、サブドメインI、II、およびIIIを含むが、ここでドメインIは、Cas9のN末端の近くに位置し、サブドメインIIおよびIIIは、HNHドメインに隣接してタンパク質の中央に位置する(Hsu et al,Cell 157:1262-1278))。II型CRISPR系は、少なくとも1つのポリヌクレオチド成分との複合体中でCas9エンドヌクレアーゼを利用するDNA切断系を含む。例えば、Cas9は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と複合することができる。また別の例では、Cas9は、単一ガイドRNAと複合することができる。
本明細書に記載したCas9タンパク質ならびに本明細書の所定の他のCasタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ニューモニエ(S.pneumoniae)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.パラサングイニス(S.parasanguinis)、S.オラリス(S.oralis)、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.マカカエ(S.macacae)、S.ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)、S.アンギノサス(S.anginosus)、S.コンステラトゥス(S.constellatus)、S.シュードポルシヌス(S.pseudoporcinus)、S.ミュータンス(S.mutans))、リステリア(Listeria)属(例えば、L.イノキュア(L.innocua))、スピロプラズマ(Spiroplasma)属(例えば、S.アピス(S.apis)、S.シルフィディコーラ(S.syrphidicola))、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、アトポビウム(Atopobium)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属(例えば、P.カトニエ(P.catoniae))、プレボテーラ(Prevotella)属(例えば、P.インターメディア(P.intermedia)、ベイロネラ(Veillonella)属、トレポネーマ(Treponema)属(例えば、T.ソクランスキィ(T.socranskii)、T.デンティコラ(T.denticola))、カプノシトファガ(Capnocytophaga)属、フィネゴルディア(Finegoldia)属(例えば、F.マグナ(F.magna))、コリオバクテリア(Coriobacteriaceae)科(例えばC.バクテリウム(C.bacterium))、オルセネラ(Olsenella)属(例えば、O.プロフューザ(O.profusa))、ヘモフィルス(Haemophilus)属(例えば、H.スプトルム(H.sputorum)、H.ピットマニエ(H.pittmaniae))、パスツレラ(Pasteurella)属(例えば、P.ベッティエ(P.bettyae))、オリビバクター(Olivibacter)属(例えば、O.シティエンシス(O.sitiensis))、エピリソニモナス(Epilithonimonas)属(例えばE.テナックス(E.tenax))、メソニア(Mesonia)属(例えば、M.モビリス(M.mobilis))、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、バチルス(Bacillus)属(例えばB.セレウス(B.cereus))、アクイマリーナ(Aquimarina)属(例えば、A.ムエレリ(A.muelleri))、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)属(例えば、C.パルストレ(C.palustre))、バクテロイデス(Bacteroides)属(例えば、B.グラミニソルベンス(B.graminisolvens))、ナイセリア(Neisseria)属(例えば、N.メニンギティディス(N.meningitidis))、フランシセラ(Francisella)属(例えば、F.ノビシダ(F.novicida))またはフラボバクテリウム(Flavobacterium)属(例えば、F.フリギダリウム(F.frigidarium)、F.ソリ(F.soli))に由来してよい。本明細書の所定の態様では、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9が好ましい。また別の例として、Cas9タンパク質は、参照により本明細書に組み込まれるChylinski et al.(RNA Biology 10:726-737)の中に開示されたCas9タンパク質のいずれかであってよい。
したがって、本明細書のCas9タンパク質の配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号G3ECR1(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、WP_026709422、WP_027202655、WP_027318179、WP_027347504、WP_027376815、WP_027414302、WP_027821588、WP_027886314、WP_027963583、WP_028123848、WP_028298935、Q03JI6(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、EGP66723、EGS38969、EGV05092、EHI65578(S.シュードポルシヌス(S.pseudoporcinus))、EIC75614(S.オラリス(S.oralis))、EID22027(S.コンステラツス(S.constellatus))、EIJ69711、EJP22331(S.オラリス(S.oralis))、EJP26004(S.アンギノサス(S.anginosus))、EJP30321、EPZ44001(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、EPZ46028(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、EQL78043(S.ピオゲネス(S.pyogenes)、EQL78548(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、ERL10511、ERL12345、ERL19088(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、ESA57807(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、ESA59254(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、ESU85303(S.ピオゲネス(S.pyogenes))、ETS96804、UC75522、EGR87316(S.ディスガラクトシエ(S.dysgalactiae))、EGS33732、EGV01468(S.オラリス(S.oralis))、EHJ52063(S.マカカエ(S.macacae))、EID26207(S.オラリス(S.oralis))、EID33364、EIG27013(S.パラサングイニス(S.parasanguinis))、EJF37476、EJO19166(ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)BS35b)、EJU16049、EJU32481、YP_006298249、ERF61304、ERK04546、ETJ95568(S.アガラクティエ(S.agalactiae))、TS89875、ETS90967(ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)SR4)、ETS92439、EUB27844(ストレプトコッカス種(Streptococcus
sp.)BS21)、AFJ08616、EUC82735(ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)CM6)、EWC92088、EWC94390、EJP25691、YP_008027038、YP_008868573、AGM26527、AHK22391、AHB36273、Q927P4、G3ECR1もしくはQ99ZW2(S.ピオゲネス(S.pyogenes))に開示されたCas9アミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのCas9タンパク質配列のいずれの変異体を使用することができるが、本明細書のRNA成分と結び付けられた場合は、DNAに向かう特異的結合活性、および任意選択的にエンドヌクレアーゼ分解活性を有していなければならない。そのような変異体は、参照Cas9のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含んでいてよい。
または、本明細書のCas9タンパク質は、例えば、米国特許出願公開第2010/0093617号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示された、配列番号462(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、474(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、489(S.アガラクティエ(S.agalactiae))、494(S.アガラクティエ(S.agalactiae))、499(S.ミュータンス(S.mutans))、505(S.ピオゲネス(S.pyogenes))もしくは518(S.ピオゲネス(S.pyogenes))のいずれかによってコードされてもよい。または、さらに、Cas9タンパク質は、例えば、上記のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含んでいてよい。そのような変異Cas9タンパク質は、本明細書のRNA成分と結び付けられた場合は、DNAに向けた特異的な結合活性、および任意選択的に切断またはニッキング活性を有していなければならない。
本明細書で使用されるCasタンパク質(例えばCas9)の起源は、それにRNA成分が由来する同一種であってもよい、または異なる種由来であってもよい。例えば、ストレプトコッカス(Streptococcus)属種(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)もしくはS.サーモフィルス(S.thermophilus))に由来するCas9タンパク質を含むRGENは、同一ストレプトコッカス(Streptococcus)属種に由来する配列(例えば、crRNA反復配列、tracrRNA配列)を有する少なくとも1つのRNA成分と複合体化することができる。さらに、本明細書で使用されるCasタンパク質(例えば、Cas9)の起源は、それにRNA成分が由来するのとは異なる種であってよい(Casタンパク質およびRNA成分は、相互に異種であってよい);そのような異種起Cas/RNA成分RGENは、DNAターゲティング活性を有するはずである。
特定の標的DNA配列に向かう本明細書のCasタンパク質の結合活性および/またはエンドヌクレオチド鎖切断活性の決定は、例えば参照により本明細書に組み込まれる、例えば米国特許第8697359号明細書に開示されるような、当技術分野において公知の任意の好適なアッセイによって評価することができる。例えば、非従来型酵母中でCasタンパク質および好適なRNA成分を発現させ、その後にインデルの存在について予測DNA標的部位を試験することによって決定することができる(この特定のアッセイにおけるCasタンパク質は、完全なエンドヌクレオチド鎖切断活性[二本鎖切断活性]を有するであろう)。予測標的部位でのインデルの存在についての試験は、例えば、DNAシークエンシング法を介して、または標的配列の機能の消失についてアッセイすることによるインデル形成を推測することによって実施することができよう。また別の例では、Casタンパク質活性は、標的部位もしくは標的部位の近くにある配列に相同である配列を含むドナーDNAが提供されている非従来型酵母においてCasタンパク質および好適なRNA成分を発現させることによって決定することができる。標的部位でのドナーDNA配列(例えば、ドナーと標的配列との上首尾のHRによって予測されるであろう配列)の存在は、ターゲティングが発生したことを示すであろう。
例えばCas9などの本明細書のCasタンパク質は、典型的には、異種核局在化配列(NLS)をさらに含む。本明細書の異種NLSアミノ酸配列は、例えば、本明細書の酵母細胞の核内で検出可能な量のCasタンパク質の蓄積を駆動するために十分な強度の配列であってよい。NLSは、塩基性の正荷電残基(例えば、リシンおよび/またはアルギニン)の1つ(一方向性)もしくは複数(例えば、両方向性)の短鎖配列(例えば、2~20残基)を含んでいてよく、Casアミノ酸配列中のどこであってもよいが、タンパク質表面上で曝露させられるように位置していてよい。NLSは、例えば、本明細書のCasタンパク質のN末端もしくはC末端に機能的に結合させられてよい。2つ以上のNLS配列は、例えばCasタンパク質のN末端およびC末端の両方などで、Casタンパク質に結合させることができる。本明細書の好適なNLS配列の非限定的な例としては、参照によりどちらも本明細書に組み込まれる米国特許第6660830号明細書および同第7309576号明細書(例えば、その中の表1)に開示されたNLS配列が挙げられる。
Casエンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドの修飾形を含むことができる。Cas9ポリペプチドの修飾形は、Cas9タンパク質の天然型ヌクレアーゼ活性を減少させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入もしくは置換)を含むことができる。例えば、一部の態様では、Cas9タンパク質の修飾形は、対応する野生型Cas9ポリペプチドの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満もしくは1%未満のヌクレアーゼ活性を有する(2014年3月6日に公開された米国特許出願公開第20140068797A1号明細書)。一部の場合には、Cas9ポリペプチドの修飾形は、実質的なヌクレアーゼ活性を有しておらず、触媒的「不活性化Cas9」もしくは「非活性化cas9(dCas9)」と呼ばれる。触媒的不活性化Cas9変異体には、HNHおよびRuvCヌクレアーゼドメイン内で突然変異を含有するCas9変異体が含まれる。これらの触媒的不活性化Cas9変異体は、sgRNAと相互作用してin vivoの標的部位に結合することができるが、標的DNAのいずれかの鎖を切断することはできない。
触媒的不活性Cas9は、異種配列に融合することができる(2014年3月6日に公開された米国特許出願公開第20140068797A1号明細書)。好適な融合パートナーには、標的DNAと関連する標的DNAもしくはポリペプチド(例えば、ヒストンもしくは他のDNA結合タンパク質)に直接的に作用することによって転写を間接的に増加させる活性を提供するポリペプチドが含まれるがそれには限定されない。追加の好適な融合パートナーには、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性もしくは脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが含まれるがそれらに限定されない。また別の好適な融合パートナーには、標的核酸の転写の増加(例えば、転写活性化因子もしくはその断片、転写活性化因子、小分子/薬物応答転写調節因子などを動員するタンパク質もしくはその断片)を直接的に提供するポリペプチドが含まれるがそれには限定されない。触媒的不活性Cas9は、さらに二本鎖切断を生成するためにFokIヌクレアーゼに融合させることもできる(Guilinger et al.Nature biotechnology,volume 32,number 6,June 2014)。
本明細書に開示の方法では、任意の誘導型エンドヌクレアーゼを使用することができる。そのようなエンドヌクレアーゼには、限定はされないが、Cas9エンドヌクレアーゼおよびCpf1エンドヌクレアーゼが含まれるがそれらに限定されない。現在まで、特異的PAM配列を認識できる(例えば、2014年3月12日に出願された米国特許出願第14/772711号明細書およびZetsche B et al.2015.Cell 163,1013を参照されたい)および特定の位置で標的DNAを切断できる、多数のエンドヌクレアーゼが記載されてきた。誘導型Cas系を利用する本明細書に記載の方法および実施形態に基づくと、現在では、これらの方法が任意の誘導型エンドヌクレアーゼ系を利用できるようにこれらの方法を必要に合わせて調整することができると理解されている。
Casエンドヌクレアーゼの用語「機能的断片」、「機能的に同等である断片」および「機能的同等の断片」は、本明細書では互換的に使用され、標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する能力が保持されている(標的部位内に一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)本開示のCasエンドヌクレアーゼ配列の一部分もしくは部分配列を意味する。
Casエンドヌクレアーゼの用語「機能的変異体」、「機能的に同等である変異体」および「機能的同等の変異体」は、本明細書では互換的に使用され、標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する能力が保持されている(標的部位内に一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)本開示のCasエンドヌクレアーゼ配列の変異体を意味する。断片および変異体は、例えば部位特異的突然変異誘発法および合成構築法などの方法によって入手できる。
Casエンドヌクレアーゼ遺伝子には、原理上は標的とすることができるN(12-30)NGG形の任意のゲノム配列を認識できるヤロウィア(Yarrowia)コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9遺伝子またはブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)Mlc3、ラクトバチルス・ロシエ(Lactobacillus rossiae)DSM15814、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)SL4、ラクトバチルス・ノデンシス(Lactobacillus nodensis)JCM14932、スルフロスピリルム種(Sulfurospirillum sp.)SCADC、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)DSM20210、ロクタネラ・ベストフォルデンシス(Loktanella vestfoldensis)、スフィンゴモナス・サンキサニゲネンス(Sphingomonas sanxanigenens)NX02、エピリソニモナス・テナックス(Epilithonimonas tenax)DSM16811、スポロシトファガ・ミキソコッコイデス(Sporocytophaga myxococcoides)およびサイクロフレクス・トルキス(Psychroflexus torquis)ATCC700755からなる群から選択される生物を起源とするCas9エンドヌクレアーゼであってよいが、ここで前記Cas9エンドヌクレアーゼは、DNA標的配列の全部もしくは一部を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断することのできるガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を形成することができる。(米国仮特許出願第BB2475号明細書
Casエンドヌクレアーゼは、例えば、一過性導入法、トランスフェクションおよび/または局所適用法を含むがそれらに限定されない当技術分野において公知の任意の方法または組換え構築物によって間接的に細胞に提供することができる。
エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する酵素であり、塩基を損傷させずに特定部位でDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼを含む。制限エンドヌクレアーゼには、さらにサブタイプを含む、I型、II型、III型およびIV型エンドヌクレアーゼが含まれる。I型およびIII型形では、メチラーゼ活性および制限活性はどちらも単一複合体内に含有される。エンドヌクレアーゼにはさらに、制限エンドヌクレアーゼと同様に、特定認識部位で結合および切断するが、メガヌクレアーゼのための認識部位は典型的には長く、約18bp以上であるホーミングエンドヌクレアーゼ(HEase)としても公知であるメガヌクレアーゼが含まれる(2012年3月22日に出願された特許出願WO-PCT PCT/US12/30061号明細書)。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて4つのファミリーに分類されており、それらのファミリーはLAGLIDADG、GIY-YIG、H-N-HおよびHis-Cysボックスファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位およびホスホジエステル結合の加水分解に関与する。HEaseは、それらの長い認識部位およびそれらのDNA基質内の一部の配列多型を許容するために注目に値する。メガヌクレアーゼの命名規則は、他の制限エンドヌクレアーゼの命名規則と類似である。メガヌクレアーゼは、さらに独立ORF、イントロンおよびインテインそれぞれによってコードされた酵素に対して接頭辞F-、I-もしくはPI-によって特徴付けることができる。組換えプロセスにおける1つの工程は、認識部位もしくは認識部位の近くでポリヌクレオチド切断を含んでいる。この切断活性は、二本鎖切断を生成するために使用できる。部位特異的リコンビナーゼおよびそれらの認識部位の概説については、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol 5:521-7;およびSadowski(1993)FASEB 7:760-7を参照されたい。一部の例では、リコンビナーゼは、インテグラーゼもしくはリソルベースファミリー由来である。
TALエフェクターヌクレアーゼは、非従来型酵母もしくは他の生物のゲノム内の特定標的配列で二本鎖切断を作成するために使用できる新規なクラスの配列特異的ヌクレアーゼである。(Miller et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143-148)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび二本鎖切断誘導物質ドメインを含む工学的二本鎖切断誘導物質である。認識部位特異性は、典型的には、例えばC2H2構造を有する2つ、3つもしくは4つのジンクフィンガーを含むジンクフィンガードメインによって与えられるが、他のジンクフィンガー構造は公知であり、工学的に作り出されている。ジンクフィンガードメインは、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドを設計するために適用できる。ZFNには、非特異的エンドヌクレアーゼドメイン、例えばFokIなどのIIs型エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインに結合した工学的DNA-結合ジンクフィンガードメインが含まれる。追加の機能性は、転写活性化因子ドメイン、転写抑制因子ドメインおよびメチラーゼを含むジンクフィンガー結合ドメインに融合させることができる。一部の例では、切断活性のためにはヌクレアーゼドメインの二量化が必要とされる。各ジンクフィンガーは、標的DNA内で3つの連続塩基対を認識する。例えば、3フィンガードメインは、ヌクレアーゼの二量化要件とともに9隣接ヌクレオチドの配列を認識し、18ヌクレオチド認識配列に結合するために2セットのジンクフィンガートリプレットが使用される。
本明細書で使用する用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、任意選択的に切断することを可能にするポリヌクレオチド配列を意味する。このガイドポリヌクレオチドは、単分子または二重分子であってよい。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列もしくはそれらの組合せ(RNA-DNA組合せ配列)であってよい。任意選択的に、ガイドポリヌクレオチドは、例えば、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdC、2,6-ジアミノプリン、2’-フルオロA、2’-フルオロU、2’-O-メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子との結合、ポリエチレングリコール分子との結合、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子との結合、または結果として環化をもたらす5’から3’への共有結合などであるがこれらに限定されない少なくとも1つのヌクレオチド、ホスホジエステル結合もしくは結合修飾を含む可能性がある。リボ核酸だけを含むガイドポリヌクレオチドは、「ガイドRNA」もしくは「gRNA」とも呼ばれる(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチドは、crヌクレオチド配列およびtracrヌクレオチド配列を含む二本鎖分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であってよい。crヌクレオチドには、標的DNA内のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる第1ヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインもしくはVTドメインと呼ばれる)およびCasエンドヌクレアーゼ認識(CER)ドメインの一部である第2ヌクレオチド配列(さらにtracrメイト配列とも呼ばれる)が含まれる。tracrメイト配列は、相補性領域に沿ってtracrヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができ、Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインもしくはCERドメインを一緒に形成することができる。CERドメインは、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用することができる。二本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドおよびtracrヌクレオチド配列は、RNA、DNAおよび/またはRNA-DNA組合せ配列であってよい。一部の実施形態では、二本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチド分子は(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合は)「crDNA」または(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合は)「crNNA」または(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組合せで構成される場合は)「crDNA-RNA」と呼ばれる。crヌクレオチドは、細菌および古細菌中で天然に存在するcRNAの断片を含む可能性がある。本明細書で開示するcrヌクレオチド中に存在する可能性がある細菌および古細菌中で天然に存在するcRNAの断片のサイズは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20ヌクレオチド以上から変動する可能性があるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、tracrヌクレオチド配列は(RNAヌクレオチドの連続ストレッチから構成される場合は)「tracrRNA」または(DNAヌクレオチドの連続ストレッチから構成される場合は)「tracrDNA」または(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組合せから構成される場合は)「tracrDNA-RNA」と呼ばれる。1つの実施形態では、RNA/Cas9エンドヌクレアーゼ複合体を誘導するRNAは、二本鎖crRNA-tracrRNAを含む二本鎖RNAである。
tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)は、5’-から-3’方向において(i)CRISPR II型crRNAの反復領域とアニーリングする配列、および(ii)ステムループ含有部分を含有する(Deltcheva et al.,Nature 471:602-607)。二本鎖ガイドポリヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるが、ここで前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体(ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系とも呼ばれる)は、Casエンドヌクレアーゼをゲノム標的部位に方向付けることができ、Casエンドヌクレアーゼが標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する(一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)ことを可能にする。(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチドは、tracrヌクレオチド配列に結合したcrヌクレオチド配列を含む単一分子(単一ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であってよい。単一ガイドポリヌクレオチドは、標的DNA内のヌクレオチド配列にハイブリダイズできる第1ヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインもしくはVTドメインと呼ばれる)およびCasエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するCasエンドヌクレアーゼ認識ドメイン(CERドメイン)を含む。「ドメイン」は、RNA、DNAおよび/またはRNA-DNA組合せ配列であってよいヌクレオチドの連続ストレッチを意味する。単一ガイドポリヌクレオチドのVTドメインおよび/またはCERドメインは、RNA配列、DNA配列またはRNA-DNA組合せ配列を含むことができる。crヌクレオチドおよびtracrヌクレオチド由来の配列で構成されている単一ガイドポリヌクレオチドは、(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合は)「単一ガイドRNA」または(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合は)「単一ガイドDNA」または(RNAおよびDNAヌクレオチドの組合せで構成される場合は)「単一ガイドRNA-DNA」と称することができる。単一ガイドポリヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるが、ここで前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体(ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系とも呼ばれる)は、Casエンドヌクレアーゼをゲノム標的部位に方向付けることができ、Casエンドヌクレアーゼが標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する(一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)ことを可能にする。(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)。
用語「可変ターゲティングドメイン」もしくは「VTドメイン」は、本明細書では互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の1本の鎖(ヌクレオチド配列)にハイブリダイズできる(相補的である)ヌクレオチド配列を含む。第1ヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の相補性率(%)は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%であってよい。可変ターゲティングドメインは、長さが少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチドであってよい。一部の実施形態では、可変ターゲティングドメインは、12~30ヌクレオチドの連続ストレッチを含む。可変ターゲティングドメインは、DNA配列、RNA配列、修飾DNA配列、修飾RNA配列またはこれらの任意の組合せから構成されてよい。
用語(ガイドポリヌクレオチドの)「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」もしくは「CERドメイン」は、本明細書では互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列を含む。CERドメインは、tracrヌクレオチドメイト配列を含み、その後にはtracrヌクレオチド配列が続く。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、修飾DNA配列、修飾RNA配列(例えば、参照により本明細書に組み込まれる2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)またはそれらの任意の組合せから構成されてよい。
単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドを結合するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列またはRNA-DNA組合せ配列を含むことができる。1つの実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドを結合するヌクレオチド配列は、長さが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100ヌクレオチドであってよい。また別の実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドおよびtracrヌクレオチドを結合するヌクレオチド配列は、限定されないがGAAAテトラループ配列などのテトラループ配列を含む可能性がある。
ガイドポリヌクレオチド、VTドメインおよび/またはCERドメインのヌクレオチド配列修飾は、5’キャップ、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列、安定性制御配列、dsRNA二本鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドを細胞内位置にターゲティングする修飾もしくは配列、トラッキングを提供する修飾もしくは配列、タンパク質のための結合部位を提供する修飾もしくは配列、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdCヌクレオチド、2,6-ジアミノプリンヌクレオチド、2’-フルオロAヌクレオチド、2’-フルオロUヌクレオチド;2’-O-メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への結合、ポリエチレングリコール分子への結合、スペーサー18分子への結合、5’から3’への共有結合またはこれらの任意の組合せからなる群から選択することができるがこれらに限定されない。これらの修飾は、少なくとも1種の追加の有益な特徴をもたらすことができるが、ここでこの追加の有益な特徴は、修飾もしくは調節された安定性、細胞内ターゲティング、トラッキング、蛍光標識、タンパク質もしくはタンパク質複合体のための結合部位、相補的標的配列に対する修飾結合親和性、細胞分解に対する修飾耐性および増加した細胞透過性の群から選択される。
ガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNAの用語「機能的断片」、「機能的に同等である断片」および「機能的同等断片」は、本明細書では互換的に使用され、ガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNAとしてそれぞれ機能する能力が保持されている、本開示のガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNAの一部分もしくは部分配列を意味する。
ガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNA(それぞれ)の用語「機能的変異体」、「機能的に同等である変異体」および「機能的同等変異体」は、本明細書では互換的に使用され、ガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNAとしてそれぞれ機能する能力が保持されている、本開示のガイドRNA、crRNAもしくはtracrRNAの変異体を意味する。
用語「単一ガイドRNA」および「sgRNA」は、本明細書では互換的に使用され、tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)に融合した(tracrRNAにハイブリダイズするtracrメイト配列に結合した)可変ターゲティングドメインを含むcrRNA(CRISPR RNA)である、2つのRNA分子の合成融合に関する。単一ガイドRNAは、II型Casエンドヌクレアーゼとの複合体を形成できるII型CRISPR/Cas系のcrRNAもしくはcrRNA断片およびtracrRNAもしくはtracrRNA断片を含むことができるが、ここで前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体はCasエンドヌクレアーゼをDNA標的配列に方向付けることができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する(一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)ことを可能にする。
用語「ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体」、「ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ系」、「ガイドRNA/Cas複合体」、「ガイドRNA/Cas系」、「gRNA/Cas複合体」、「gRNA/Cas系」、「RNA誘導型エンドヌクレアーゼ」、「RGEN」は、本明細書では互換的に使用され、複合体を形成することができる少なくとも1つのRNA成分および少なくとも1つのCasエンドヌクレアーゼを意味しており、ここで前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的部位へ方向付けることができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断する(一本鎖もしくは二本鎖切断を導入する)ことを可能にする。RGENのRNA成分は、DNA標的配列の1本の鎖に相補的であるリボヌクレオチド配列を含有する。この相補的RNA配列は、本明細書では「可変ターゲティングドメイン」配列とも呼ばれる。本明細書のガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、例えばI型、II型、またはIII型CRISPR系などの4種の既知のCRISPR系(Horvath and Barrangou,Science 327:167-170)のいずれかのCasタンパク質および好適なRNA成分を含むことができる。ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、II型Cas9エンドヌクレアーゼおよび少なくとも1つのRNA成分(例えば、crRNAおよびtracrRNAまたはgRNA)を含むことができる。(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書を参照されたい)。
ガイドポリヌクレオチドは、粒子衝突法、アグロバクテリウム(Agrobacteriumu)形質転換法もしくは局所適用法などであるがそれらに限定されない当技術分野において公知の任意の方法を使用して、一本鎖ポリヌクレオチドもしくは二本鎖ポリヌクレオチドとして一過性で細胞内に導入することができる。ガイドポリヌクレオチドは、さらに(粒子衝突法もしくはアグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換法などであるがそれらに限定されない方法によって)前記細胞内のガイドRNAを転写させることのできる特異的プロモーターに機能的に結合された、ガイドポリヌクレオチドをコードする異種核酸断片を含む組換えDNA分子を導入することによって細胞内に間接的に導入することもできる。特異的プロモーターは、精密に規定された未修飾の5’-および3’-末端を備えるRNAの転写を許容するRNAポリメラーゼIIIプロモーターであってよいがそれには限定されない(DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.41:4336-4343;Ma et al.,Mol.Ther.Nucleic Acids 3:e161)。
用語「標的部位」、「標的配列」、「標的部位配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」、「ゲノム標的遺伝子座」および「プロトスペーサー」は、本明細書では互換的に使用され、例えば、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体が認識する、結合する、および任意選択的にニッキングもしくは切断することができる、細胞のゲノム内の染色体、エピソームもしくは任意の他のDNA分子(染色体、葉緑体(choloroplastic)、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNAを含む)上のヌクレオチド配列などであるがそれらに限定されないポリヌクレオチド配列を意味する。標的部位は、細胞のゲノム内の内在性部位であってよい、または、標的部位は、その細胞に対して異種であってよく、それによりその細胞のゲノム内では天然型ではない、または標的部位は、それが天然で発生する場所に比較して異種ゲノム位置内で見いだすことができる。本明細書で使用する用語「内在性標的配列」および「天然標的配列」は、内在性もしくは細胞のゲノムにとって自然である、および細胞のゲノム内のその標的配列の内在性もしくは天然位置にある標的配列を意味するために本明細書では互換的に使用される。細胞には、ヒト、非ヒト、動物、細菌、古細菌、真菌、昆虫、酵母、非従来型酵母、植物細胞、植物、種子ならびに本明細書に記載した方法によって生成された微生物が含まれるがそれらに限定されない。「人工標的部位」もしくは「人工標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、細胞のゲノム内に導入されている標的配列を意味する。そのような人工標的配列は、細胞のゲノム内に、しかし細胞のゲノム内の異なる位置(すなわち、非内在性もしくは非天然位置)に位置している内在性もしくは天然標的配列と配列が同一であってよい。
「改変標的部位」、「改変標的配列」、「修飾標的部位」、「修飾標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、改変されていない標的配列と比較した場合に少なくとも1つの改変を含む本明細書に開示した標的配列を意味する。そのような「改変」には、例えば:(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換え、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入または(iv)(i)~(iii)のいずれかの組合せが含まれる。
標的DNA配列(標的部位)の長さは変動する可能性があり、例えば、長さが少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド以上である標的部位が含まれる。さらに、標的部位は回文構造であってよいことも考えられ、すなわち、一方の鎖上の配列は相補鎖上で反対方向に同一配列を読み取れる。ニック/切断部位は標的配列内に存在する可能性がある、またはニック/切断部位は標的配列の外側に存在する可能性があろう。また別の変形形態では、平滑末端を生成するために相互に直接対抗するヌクレオチド位置で発生する可能性がある、または、他の場合、切り込みが5’オーバーハングもしくは3’オーバーハングのいずれかであってよい、「付着末端」とも呼ばれる一本鎖オーバーハングを生成するためにギザギザ状であってよい。ゲノム標的部位の活性変異体もまた使用することができる。そのような活性変異体は、所定の標的部位に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を含むことができ、ここで活性変異体は生物学的活性を保持しており、したがってCasエンドヌクレアーゼが認識および切断することができる。エンドヌクレアーゼによる標的部位の一本鎖もしくは二本鎖切断を測定するためのアッセイは当技術分野で公知であり、一般には、認識部位を含有するDNA基質への作用物質の全体的活性および特異性を測定する。
本明細書の「エピソーム」は、酵母細胞の染色体は別として、酵母細胞内に自律的に存在できる(複製して娘細胞に進むことができる)DNA分子を意味する。エピソームDNAは、酵母細胞に対して天然であっても異種であってもよい。本明細書の天然エピソームの例には、ミトコンドリアDNA(mtDNA)が含まれる。本明細書の異種エピソームの例としては、プラスミドおよび酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。
本明細書の「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)は、本明細書に記載したガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系によって認識(標的化)される標的配列(プロトスペーサー)に隣接する短鎖ヌクレオチド配列を意味する。Casエンドヌクレアーゼは、標的DNA配列の後にPAM配列が続かない場合は、標的DNA配列を上首尾で認識することができない。本明細書のPAMの配列および長さは、使用されるCasタンパク質もしくはCasタンパク質複合体に依存して異なる可能性がある。PAM配列は、任意の長さの配列であってよいが、典型的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20ヌクレオチド長である。
用語「5’-キャップ」および「7-メチルグアニル酸(m7G)キャップ」は、本明細書では互換的に使用される。7-メチルグアニル酸残基は、真核細胞内のメッセンジャーRNA(mRNA)の5’末端上に位置する。RNAポリメラーゼII(Pol II)は、真核細胞内でmRNAを転写する。メッセンジャーRNAキャッピングは、一般には次のように発生する:mRNA転写産物の最末端5’リン酸基は、RNA末端ホスファターゼによって除去され、2つの末端リン酸基が残る。グアノシン一リン酸(GMP)は、グアニリルトランスフェラーゼによって転写物の末端リン酸基に加えられ、転写物末端に5’-5’三リン酸結合グアニンが残る。最後に、この末端グアニンの7-窒素が、メチルトランスフェラーゼによってメチル化される。
本明細書の専門用語「5’-キャップを有していない」は、5’-キャップの代わりに、例えば5’-ヒドロキシル基を有するRNAを意味するために使用される。そのようなRNAは、例えば、「脱キャップRNA」と呼ぶことができる。5’-キャップドRNAは核外輸送を受けるので、脱キャップRNAは、転写後には核内でより十分に蓄積することができる。本明細書の1つ以上のRNA成分は、脱キャップされている。
用語「リボザイム」および「リボ核酸酵素」は、本明細書では互換的に使用される。リボザイムは、特定部位でRNAを切断できる二次、三次および/または四次構造を形成する1つ以上のRNA配列を意味する。本明細書のリボザイムは、例えば、ハンマーヘッド(HH)リボザイム、デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイム、グループIイントロンリボザイム、RnasePリボザイムもしくはヘアピンリボザイムであってよい。リボザイムには、リボザイム配列に比較してシス部位でRNAを切断する(すなわち、自己触媒性もしくは自己切断型)ことができる「自己切断型リボザイム」が含まれる。リボザイムヌクレオチド分解活性の一般的性質は、記載されている(例えば、Lilley,Biochem.Soc.Trans.39:641-646)。本明細書の「ハンマーヘッドリボザイム」(HHR)は、3本の塩基対ステムおよび触媒反応に関係する高度に保存された非相補的ヌクレオチドのコアから作り上げられた小さな触媒的RNAモチーフを含むことができる。参照により本明細書に組み込まれるPley et al.(Nature 372:68-74)およびHammann et al.(RNA 18:871-885)は、ハンマーヘッドリボザイムの構造および活性について開示している。本明細書のリボザイムの他の非限定的な例としては、Varkudサテライト(VS)リボザイム、グルコサミン-6-リン酸活性化リボザイム(glmS)およびCPEB3リボザイムが挙げられる。Lilley(Biochem.Soc.Trans.39:641-646)は、リボザイム構造および活性に関する情報を開示している。本明細書で使用するために好適なはずであるリボザイムの例としては、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第0707638号明細書ならびに米国特許第6063566号明細書、同第5580967号明細書、同第5616459号明細書および同第5688670号明細書に開示されたリボザイムが挙げられる。
本明細書のハンマーヘッドリボザイムは、例えば、Scott et al.(Cell 81:991-1002、参照によって本明細書に組み込まれる)によって開示された「最小ハンマーヘッド」配列を含むことができる。ハンマーヘッドリボザイムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるHammann et al.(RNA 18:871-885)に開示されたI型、II型もしくはIII型ハンマーヘッドリボザイムであってよい。本明細書にしたがって利用できるハンマーヘッドリボザイムをコードするDNAを同定するための複数の手段は、Hammann et al.に開示されている。本明細書のハンマーヘッドリボザイムは、例えば、ウイルス、ウイロイド、植物ウイルスサテライトRNA、原核生物(例えば、古細菌、シアノバクテリア、アシドバクテリア)または例えば植物(例えば、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、カーネーション)、原生生物(例えば、アメーバ、ユーグレナ)、真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、Y.リポリティカ(Y.lipolytica))、両生類(例えば、イモリ、カエル)、住血吸虫、昆虫(例えば、コオロギ)、軟体動物、哺乳類(例えば、マウス、ヒト)または線虫由来であってよい。
本明細書のハンマーヘッドリボザイムは、典型的には、それぞれが保存配列の短鎖リンカーによって分離されたヘリックスI、IIおよびIIIと呼ばれる3本の塩基対ヘリックスを含んでいる。3つのタイプのハンマーヘッドリボザイム(I~III)は、一般にどのヘリックスがリボザイムの5’および3’末端に含まれているかに基づく。例えば、ハンマーヘッドリボザイム配列の5’および3’末端がステムIに寄与する場合、それはI型ハンマーヘッドリボザイムと呼ぶことができる。3つのこれらの可能性のあるトポロジー的タイプのうちでI型は原核生物、真核生物およびRNA植物病原体のゲノム内で見いだすことができるが、他方II型ハンマーヘッドリボザイムは、原核生物中でのみ記載されており、III型ハンマーヘッドリボザイムはほとんどが植物、植物病原体および原核生物中で見いだされる。所定の実施形態におけるハンマーヘッドリボザイムは、I型ハンマーヘッドリボザイムである。
ハンマーヘッドリボザイムをコードする配列は、少なくとも約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140もしくは150(または40~150の間の任意の整数)ヌクレオチド、40~100ヌクレオチドもしくは40~60ヌクレオチドを含むことができる。
本開示の1つの実施形態では、本方法は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)を非従来型酵母内の染色体もしくはエピソーム上の標的部位配列にターゲティングする方法であって、前記酵母にCasエンドヌクレアーゼをコードするDNA配列を含む第1組換えDNA構築物、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびRNA成分の上流でリボザイムをコードするDNA配列を含む少なくとも1つの第2組換えDNA構築物を提供する工程を含み、ここで前記第2組換えDNA構築物から転写されたRNAは前記RNA成分を生成するためにリボザイムを自己触媒性で除去し、ここでRNA成分およびCas9エンドヌクレアーゼは標的部位配列の全部もしくは一部に結合できるRGENを形成できる方法を含む。
所定の実施形態では、リボザイム-ガイドRNAカセットを含むDNAポリヌクレオチドは、ガイドRNA成分配列の下流にある好適な転写終結配列を含むことができよう。本明細書で有用な転写終結配列の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開2014/0186906号明細書に開示されている。例えば、S.セレビジエ(S.cerevisiae)Sup4遺伝子転写ターミネーター配列を使用できる。そのような実施形態は、典型的には、リボザイム-RNA成分カセットから下流に位置するリボザイム配列を含んでいない。さらに、そのような実施形態は、典型的には、ターミネーター配列の選択に依存して、RNA成分配列の末端に続いて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個以上の残基を含む。これらの追加の残基は、例えば、ターミネーター配列の選択に依存して、全てがU残基であってもよい、または少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%のU残基であってもよい。または、リボザイム配列(例えば、ハンマーヘッドもしくはHDVリボザイム)は、RNA成分配列(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のヌクレオチド)の3’であってよい;そのような実施形態におけるRNA成分配列は、上流および下流リボザイムに隣接されている。3’リボザイム配列は、それ自体をRNA成分配列から切断するように適宜にポジショニングできる;そのような切断は、転写物が、例えば、RNA成分配列の末端で正確に終結するか、または、RNA成分配列の末端に続いて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個以上の残基を備えるようにさせるであろう。
用語「ターゲティング」、「遺伝子ターゲティング」および「DNAターゲティング」は、本明細書で互換的に使用される。本明細書のDNAターゲティングは、例えば細胞の染色体もしくはエピソーム中などの、特定のDNA配列でのノックアウト、編集もしくはノックインの特異的な導入であってよい。一般に、DNAターゲティングは、本明細書では、好適なポリヌクレオチド成分と関連するCasタンパク質を含む細胞内の特定のDNA配列で一方もしくは両方の鎖を切断することによって実施することができる。そのようなDNA切断は、二本鎖切断(DSB)である場合は、標的部位での修飾をもたらすことができるNHEJもしくはHDRプロセスを刺激することができる。
用語「ノックアウト」、「遺伝子ノックアウト」および「遺伝的ノックアウト」は、本明細書では互換的に使用される。ノックアウトは、本明細書では、Casタンパク質によるターゲティングによって部分的もしくは完全に無効化されている細胞のDNA配列を表す;ノックアウト前のそのようなDNA配列は、アミノ酸配列をコードしていた可能性がある、または例えば調節機能(例えばプロモーター)を有していた可能性がある。ノックアウトは、インデル(NHEJを通しての標的DNA配列内のヌクレオチド塩基の挿入もしくは欠失)または標的化部位もしくは標的化部位の近くで配列の機能を減少させる、または完全に破壊する配列の特異的除去によって生成することができる。インデルは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の塩基であってよい。所定の実施形態におけるインデルは、いっそう大きく、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100塩基であってよい。インデルが遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に導入される場合は、インデルは多くの場合、フレームシフト突然変異を生じさせることによって、ORFによってコードされたタンパク質の野生型発現を崩壊させる。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系は、関心対象のゲノムヌクレオチド配列の編集(修飾)を可能にするために共送達ポリヌクレオチド修飾鋳型と組み合わせて使用することができる。(さらに、どちらも参照により全体として本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書および2015年2月26日に公開された国際公開第2015/026886A1号パンフレットを参照されたい)。
「修飾ヌクレオチド」もしくは「編集ヌクレオチド」は、それの非修飾ヌクレオチド配列と比較した場合に少なくとも1つの改変を含む関心対象のヌクレオチド配列を意味する。そのような「改変」には、例えば:(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換え、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入または(iv)(i)~(iii)のいずれかの組合せが含まれる。
用語「ポリヌクレオチド修飾鋳型」には、編集対象のヌクレオチド配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含むポリヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチド修飾は、少なくとも1つのヌクレオチド置換(少なくとも1つのヌクレオチドの置換え)、1つのヌクレオチド付加(少なくとも1つのヌクレオチドの挿入)、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失またはそれらの任意の組合せであってよい。任意選択的に、ポリヌクレオチド修飾鋳型は、さらに少なくとも1つのヌクレオチド修飾に隣接する同種ヌクレオチド配列を含むことができ、ここで隣接する同種ヌクレオチド配列は編集対象の所望のヌクレオチド配列に対して十分な相同性を提供する。その5’もしくは3’末端での保護を含まないポリヌクレオチド修飾鋳型は、「非保護ポリヌクレオチド修飾鋳型」と呼ばれる。
用語「保護ポリヌクレオチド修飾鋳型」もしくは「保護ポリヌクレオチド編集鋳型」は、本明細書では互換的に使用され、少なくとも1つの末端(その5’末端もしくはその3’末端またはその5’および3’末端)で少なくとも1つの修飾(保護もしくは保護分子と呼ばれる)を有するポリヌクレオチド修飾鋳型分子を含む。5’もしくは3’末端での保護には、増加したHDR、減少したNHEJもしくは減少したオフサイト組込みまたはそれらの任意の組合せによって証明されるように鋳型をより安定性(保護された)にさせるポリヌクレオチド修飾鋳型への任意の修飾が含まれる。保護分子(修飾)は、細胞内のエキソヌクレアーゼから鋳型を保護することによって鋳型安定性を改変する、および/または鋳型が非相同末端結合(NHEJ)のための基質として作用する能力を改変することができる。代替法として、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、非保護ポリヌクレオチド供与体と比較して、相同組換え修復のタンパク質とは良好に相互作用することができる、または非相同末端結合のタンパク質とはより不良にしか相互作用することができない。保護ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖線状もしくは環状分子であってよい。環状鋳型は、さらに典型的な5’リン酸基としての保護(修飾)末端も含有しており、線状DNA分子の3’水酸基は、環状分子内の隣の5’もしくは3’塩基へのホスホジエステル結合で置き換えられている。
一部の細胞では、ポリヌクレオチド修飾鋳型は、DNA損傷の他の自然位置内に(例えば、NHEJによって)組み込むことができる。NHEJによるDNAの断片の組込みは、DNA末端の5’リン酸基および3’水酸基が結合させられる最終DNAライゲーション工程を有する。保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の場合は、好適な5’リン酸基を利用できない、または修飾によって遮断され、それにより鋳型のオフサイト組込みが防止される。
本明細書で使用する用語「増加した」は、増加した量もしくは活性がそれに対して比較される量もしくは活性よりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%もしくは250%以上である量もしくは活性を意味することができる。用語「増加(した)」、「上昇(した)」、「強化(された)」、「超」、および「改善(した)」は、本明細書では互換的に使用される。用語「増加(した)」は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現を特徴付けるために使用することができ、このとき「増加した発現」は、「過剰発現」を意味することもできる。
保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の非限定的例は、環状DNAポリヌクレオチド修飾鋳型(利用可能な二本鎖末端を伴わない)、各鎖の5’末端上で3炭素アルカンスペーサーからなる少なくとも1つの保護分子を含む線状二本鎖DNAポリヌクレオチド修飾鋳型および各鎖上でホスホロチオエート結合と置き換えられた少なくとも1、2、3、4もしくは5つの5’最末端ホスホジエステル結合からなる少なくとも1つの保護分子を含む線状ポリヌクレオチド修飾鋳型である。保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の他の非限定的例には、アルカンスペーサー、蛍光体、NHSエステル、ジゴキシゲン、コレステリル-TEG、C6、C12、ヘキシニル、Oxtadiynyl dUTP、ビオチン、ジチオール、逆ジデオキシ-T修飾またはそれらの任意の1つの組合せなどであるがそれらに限定されない保護分子を含む鋳型が含まれる。
1つの実施形態では、本開示は、そのゲノム内に修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択するための方法であって:a)ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位で一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む工程;およびb)工程(a)から前記修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択する工程を含む方法について記載する。本方法は、前記細胞内の相同組換え修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)の頻度を決定する工程をさらに含む。
本明細書に記載した方法を使用すると、HDRの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、本明細書に記載した方法と同一の成分および工程全部を有するコントロール法に由来するHDRの頻度と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%もしくは250%増加させることができる。
本明細書に記載した方法を使用すると、NHEJの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、本明細書に記載した方法と同一の成分および工程全部を有するコントロール法に由来するNHEJの頻度と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%減少させることができる。
1つの実施形態では、本開示は、細胞のゲノム内のヌクレオチド配列を編集するための方法であって、ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型および少なくとも1つのCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここでCasエンドヌクレアーゼは前記細胞のゲノム内の標的部位で一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができ、前記ポリヌクレオチド修飾鋳型は前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む方法について記載する。編集対象のヌクレオチドは、Casエンドヌクレアーゼによって認識および切断される標的部位内もしくは標的部位外に位置する可能性がある。1つの実施形態では、少なくとも1つのヌクレオチド修飾は、Casエンドヌクレアーゼによって認識および切断される標的部位での修飾ではない。また別の実施形態では、編集対象の少なくとも1つのヌクレオチドとゲノム標的部位との間には少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、900もしくは1,000ヌクレオチドが存在する。
細胞には、ヒト、非ヒト、動物、細菌、古細菌、真菌、微生物、昆虫、酵母、および植物細胞、植物、種子ならびに本明細書に記載した方法によって生成された微生物が含まれるがそれらに限定されない。本明細書の酵母の例としては、従来型酵母および非従来型酵母が挙げられる。所定の実施形態における従来型酵母は、非相同末端結合(NHEJ)によって媒介される修復プロセスよりも相同組換え(HR)DNA修復プロセスを好む酵母である。本明細書の従来型酵母の例としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、出芽酵母、パン酵母および/または醸造酵母としても知られるS.セレビジエ(S.cerevisiae);S.バヤヌス(S.bayanus);S.ボウラルディ(S.boulardii);S.ブルデリ(S.bulderi);S.カリオカヌス(S.cariocanus);S.カリオクス(S.cariocus);S.ケバリエリ(S.chevalieri);S.ダイレネンシス(S.dairenensis);S.エリプソイデウス(S.ellipsoideus);S.オイバヤヌス(S.eubayanus);S.エクシグウス(S.exiguus);S.フロレンティヌス(S.florentinus);S.クルイベリ(S.kluyveri);S.マルチニアエ(S.martiniae);S.モナセンシス(S.monacensis);S.ノルベンシス(S.norbensis);S.パラドクスス(S.paradoxus);S.パストリアヌス(S.pastorianus);S.スペンセロルム(S.spencerorum);S.ツリセンシス(S.turicensis);S.ユニスポルス(S.unisporus);S.ウバルム(S.uvarum);S.ゾナツス(S.zonatus)およびシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、分裂酵母としても知られるS.ポンベ(S.pombe);S.クリオフィルス(S.cryophilus);S.ヤポニクス(S.japonicus);S.オクトスポルス(S.octosporus))の種が挙げられる。植物細胞には、トウモロコシ、コメ、ソルガム、ライムギ、オオムギ、コムギ、アワ、カラスムギ、サトウキビ、芝草、もしくはスイッチグラス、ダイズ、カノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、綿、タバコ、ピーナッツ、ジャガイモ、タバコ、アラビドプシス(Arabidopsis)およびベニバナ細胞からなる群から選択される細胞が含まれる。
本明細書の非従来型酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、S.セレビジエ(S.cerevisiae))またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、S.ポンベ(S.pombe))の種などの従来型酵母ではない。所定の実施形態における非従来型酵母は、HRによって媒介される修復プロセスよりもNHEJ DNA修復プロセスを好む酵母である可能性がある。例えばS.セレビジエ(S.cerevisiae)およびS.ポンベ(S.pombe)などの従来型酵母は、典型的には、ルーチン的に70%を超える効率を備える短鎖隣接相同性アーム(30~50bp)を備えるドナーDNAの特異的組込みを示すが、他方ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびクルベイロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)などの非従来型酵母は通常は1%未満の効率で類似の構造のドナーDNAを備える特異的組込みを示す(Chen et al.,PLoS ONE 8:e57952)。したがって、HRプロセスの優先度は、例えば、酵母を適切なドナーDNAで形質転換し、ドナーDNAによって標的とされると予測されるゲノム部位と特異的に組み換えられる程度を決定することによって、測定することができる。NHEJに対する優先度(もしくはHRに対する低い優先度)は、例えば、そのようなアッセイが酵母ゲノム内へのドナーDNAの高度の無作為組込みを生成すると明らかになるであろう。酵母内のDNAの特異的(HR媒介性)および/または無作為(NHEJ媒介性)組込みの比率を決定するためのアッセイは当技術分野において公知である(例えば、Ferreira and Cooper,Genes Dev.18:2249-2254;Corrigan et al.,PLoS ONE 8:e69628;Weaver et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:6354-6358;Keeney and Boeke,Genetics 136:849-856)。
それらの低レベルのHR活性を前提にすると、本明細書の非従来型酵母は、(i)30~50bpの隣接相同性アームを有する適切なドナーDNAによる、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%もしくは8%未満の特異的なターゲティング率をすることができる、および/または(ii)前述のドナーDNAの、例えば、約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%もしくは75%超の無作為組込み率を示すことができる。これらの好適なドナーDNAの(i)特異的ターゲティング率および/または(ii)無作為組込み率は、本明細書に開示したRGENが提供される前から存在するために、非従来型酵母を特徴付けることができる。所定の実施形態において非従来型酵母にRGENを提供することの目的は、特定部位で酵母をHRに偏らせるための部位特異的DNA一本鎖切断(SSB)もしくは二本鎖切断(DSB)を生じさせることである。したがって、非従来型酵母における好適なRGENを提供する工程は、典型的には、酵母が特定のドナーDNAを備えるHRの増加率を示すことを許容するはずである。そのような増加した率は、好適なコントロール(例えば、好適なRGENが欠如すること以外は、同一ドナーDNAを用いて形質転換された同一の非従来型酵母)内のHR率よりも少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍もしくは10倍高い可能性がある。
本明細書に記載した方法および組成物は、ヌクレオチド配列を修飾するため、および/または相同組換え修復の頻度を増加させるために、ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを使用する。保護ポリヌクレオチド鋳型は、少なくとも1つの異種遺伝子発現カセットにより分離された2つの相同性アームを含む可能性がある。本方法は、さらに任意の修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度を減少させるために使用できる。
1つの実施形態では、本開示は、そのゲノム内に修飾ヌクレオチド配列を含む微生物細胞を選択するための方法であって:a)ガイドポリヌクレオチド、少なくとも1つの保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位で一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む工程;b)工程(a)から前記修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択する工程、および(c)前記細胞内の保護ポリヌクレオチド修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度をさらに決定する工程を含む方法について記載する。
前記細胞内の保護ポリヌクレオチド修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、本明細書に記載した方法と同一の成分全部を有するコントロール法に由来するオフサイト組込みの頻度と比較して、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%減少させることができる。
用語「ノックイン」、「遺伝子ノックイン」、「遺伝子挿入」および「遺伝的ノックイン」は、本明細書では互換的に使用される。ノックインは、Casタンパク質を用いたターゲティングによって(好適なドナーDNAポリヌクレオチドもまた使用される場合はHRによって)細胞内の特定のDNA配列でのDNA配列の置換えもしくは挿入を表す。ノックインの例は、遺伝子のコーディング領域内の異種アミノ酸コーディング配列の特異的挿入、または遺伝子座内の転写調節要素の特異的挿入である。
Casエンドヌクレアーゼに対する標的部位に挿入される関心対象のポリヌクレオチドを有する細胞もしくは生物を得るためには、様々な方法および組成物を使用することができる。そのような方法は、標的部位で関心対象のポリヌクレオチドの組込みを提供するために相同組換えを使用することができる。提供される1つの方法では、関心対象のポリヌクレオチドがドナーDNA構築物内の生物細胞に提供される。本明細書で使用する「ドナーDNA」もしくは「ドナーポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼの標的部位内に挿入される関心対象のポリヌクレオチドを含むDNA構築物である。ドナーDNA構築物は、さらに関心対象のポリヌクレオチドに隣接する第1および第2相同性領域を含むことができる。ドナーDNAの第1および第2相同性領域は、それぞれが細胞もしくは生物ゲノムの標的部位内に存在する、またはこの標的部位に隣接する第1および第2ゲノム領域に対する相同性を共有する。「相同性」は、類似するDNA配列を意味する。例えば、ドナーDNA上で見出される「ゲノム領域に対する相同性領域」とは、細胞もしくは生物ゲノム内の所定の「ゲノム領域」と類似する配列を有するDNAの領域である。相同性領域は、切断標的部位での相同組換えを促進するために十分な任意の長さであってよい。例えば、相同性領域は、相同性領域が、対応するゲノム領域との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有するように、長さが少なくとも5~10、5~15、5~20、5~25、5~30、5~35、5~40、5~45、5~50、5~55、5~60、5~65、5~70、5~75、5~80、5~85、5~90、5~95、5~100、5~200、5~300、5~400、5~500、5~600、5~700、5~800、5~900、5~1,000、5~1,100、5~1,200、5~1,300、5~1,400、5~1,500、5~1,600、5~1,700、5~1,800、5~1,900、5~2,000、5~2,100、5~2,200、5~2,300、5~2,400、5~2,500、5~2,600、5~2,700、5~2,800、5~2,900、5~3,000、5~3,100以上の塩基を含むことができる。「十分な相同性」は、2つのポリヌクレオチド配列が相同組換え反応のための基質として作用するために十分な構造的類似性を有することを示す。この構造的類似性は、各ポリヌクレオチド断片の全長とポリヌクレオチドの配列類似性とを含む。配列類似性は、配列の全長にわたる配列同一性率(%)および/または100%配列同一性を有する連続ヌクレオチドなどの局在化類似性を含む保存領域および配列の長さの一部分にわたる配列同一性率(%)によって記載することができる。
標的およびドナーポリヌクレオチドによって共有される相同性もしくは配列同一性の量は変動する可能性があり、約1~20bp、20~50bp、50~100bp、75~150bp、100~250bp、150~300bp、200~400bp、250~500bp、300~600bp、350~750bp、400~800bp、450~900bp、500~1,000bp、600~1,250bp、700~1,500bp、800~1,750bp、900~2,000bp、1~2.5kb、1.5~3kb、2~4kb、2.5~5kb、3~6kb、3.5~7kb、4~8kb、5~10kbの範囲内で単位整数値を有する全長および/または全領域を含む、または最大で標的部位の全長を含む。これらの範囲には、この範囲内の全ての整数が含まれ、例えば1~20bpの範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20bpが含まれる。相同性の量は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性率(%)を含む2種のポリヌクレオチドの完全にアラインメントされた長さ全体にわたる配列同一性率(%)によって記載することもできる。十分な相同性は、ポリヌクレオチドの長さと、全体的な配列同一性率(%)および任意選択的に連続ヌクレオチドの保存領域もしくは局所的配列同一性率(%)との任意の組合せを含み、例えば、十分な相同性は、標的遺伝子座の領域に対して少なくとも80%の配列同一性を有する75~150bpの領域であると記載することができる。十分な相同性は、さらにストリンジェンシー条件下で2つのポリヌクレオチドが特異的にハイブリダイズする予測された能力によっても説明することができ、例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,Eds(1994)Current Protocols,(Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.);およびTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes,(Elsevier,New York)を参照されたい。
ドナーDNAポリヌクレオチドは、標的部位で配列と非相同である配列によって分離された2つの相同配列を有する可能性がある。そのようなドナーポリヌクレオチドのこれら2つの相同配列は、非相同配列に隣接する「相同性アーム」と呼ぶことができる。標的部位と2つの相同性アームを備えるドナーポリヌクレオチドとの間のHRは、典型的には標的部位での配列とドナーポリヌクレオチドの非相同配列との置換えを生じさせる(ドナーポリヌクレオチドの相同性アームと相同であるDNA配列間に位置する標的部位配列は、ドナーポリヌクレオチドの非相同配列によって置き換えられる)。2つの相同性アームを備えるドナーポリヌクレオチドでは、アームは1つ以上のヌクレオチドによって分離されてよい(すなわち、ドナーポリヌクレオチド内の非相同配列は、長さが少なくとも1ヌクレオチドであってよい)。本明細書の非従来型酵母内で実施できる様々なHR手法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるDNA Recombination:Methods and Protocols:1st Edition(H.Tsubouchi,Ed.,Springer-Verlag,New York,2011)に開示されている。
本明細書で使用する「ゲノム領域」は、標的部位のいずれかの側に存在する、または、標的部位の一部分もさらに含む細胞のゲノム中の染色体のセグメントである。ゲノム領域は、そのゲノム領域が対応する相同性領域との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有するように、少なくとも5~10、5~15、5~20、5~25、5~30、5~35、5~40、5~45、5~50、5~55、5~60、5~65、5~70、5~75、5~80、5~85、5~90、5~95、5~100、5~200、5~300、5~400、5~500、5~600、5~700、5~800、5~900、5~1,000、5~1,100、5~1,200、5~1,300、5~1,400、5~1,500、5~1,600、5~1,700、5~1,800、5~1,900、5~2,000、5~2,100、5~2,200、5~2,300、5~2,400、5~2,500、5~2,600、5~2,700、5~2,800.5~2,900、5~3,000、5~3,100個以上の塩基を含むことができる。
関心対象のポリヌクレオチドおよび/または形質は、どちらの出願も参照により本明細書に組み込まれる2013年10月3日に公開された米国特許出願公開第2013-0263324A1号明細書および2013年1月24日に公開されたPCT/US13/22891号明細書に記載されたように、複合形質遺伝子座内で一緒に積み重ねることができる。本明細書に記載したガイドポリヌクレオチド/Cas9エンドヌクレアーゼ系は、二本鎖切断を生成するための効率的な系を提供し、形質が複合形質遺伝子座内で積み重ねられることを可能にする。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系は、1つ以上のガイドポリヌクレオチド、1つ以上のCasエンドヌクレアーゼおよび任意選択的に1つ以上のドナーDNAを細胞に提供する工程によって、1つ以上の関心対象のポリヌクレオチドもしくは1つ以上の関心対象の形質を1つ以上の標的部位内に導入するために使用できる。((参照により本明細書に組み込まれる2014年8月20日に出願された米国特許出願第14/463,687号明細書に記載されたように
所定のゲノム領域とドナーDNA上で見出される対応する相同性領域との間の構造的類似性は、相同組換えが発生することを可能にする任意の程度の配列同一性であってよい。例えば、ドナーDNAの「相同性領域」および生物ゲノムの「ゲノム領域」によって共有される相同性もしくは配列同一性の量は、それらの配列が相同組換えを受けるように、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性であってよい。
ドナーDNA上の相同性領域は、標的部位に隣接する任意の配列に対する相同性を有する可能性がある。一部の実施形態では、相同性領域は、標的部位に直接隣接するゲノム配列に対して有意な配列相同性を共有するが、相同領域は、標的部位に対してさらに5’もしくは3’であってよい領域に対して十分な相同性を有するように設計できることは認識されている。さらに他の実施形態では、相同性領域は、下流ゲノム領域に沿って標的部位の断片との相同性も有する可能性がある。1つの実施形態では、第1相同性領域は、標的部位の第1断片をさらに含み、第2相同性領域は標的部位の第2断片を含むが、ここで第1および第2断片は異なる。
本明細書で使用する「相同組換え」には、相同性部位で2つのDNA分子間のDNA断片の交換が含まれる。相同組換えの頻度は、多数の因子によって影響を受ける。様々な生物は相同組換えの量および相同組換え対非相同組換えの相対比率に関して変動する。一般に、相同性の領域の長さは、相同組換え事象の頻度に影響を及ぼす:相同性領域が長いほど頻度は高くなる。相同組換えを観察するために必要とされる相同性領域の長さは、さらに種変動性でもある。多くの場合に、少なくとも5kbの相同性が利用されてきたが、25~50bpと小さい相同性を用いた相同組換えが観察されている。例えば、Singer et al.,(1982)Cell 31:25-33;Shen and Huang,(1986)Genetics 112:441-57;Watt et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4768-72、Sugawara and Haber,(1992)Mol Cell Biol 12:563-75、Rubnitz and Subramani,(1984)Mol Cell Biol 4:2253-8;Ayares et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5199-203;Liskay et al.,(1987)Genetics 115:161-7を参照されたい。
相同組換え修復(HDR)は、細胞内の二本鎖および一本鎖DNA切断を修復する機構である。相同組換え修復には、相同組換え(HR)および一本鎖アニーリング(SSA)が含まれる(Lieber.2010 Annu.Rev.Biochem.79:181-211)。HDRの最も一般的な形態は、ドナーとアクセプターDNAとの間の最長配列相同性要件を有する相同組換え(HR)と呼ばれる。HDRの他の形態には、一本鎖アニーリング(SSA)および切断誘導性複製が含まれ、これらはHRに比較してより短い配列相同性を必要とする。ニックでの相同組換え修復(一本鎖切断)は、二本鎖切断でHDRとは異なる機序によって発生する可能性がある(Davis and Maizels.PNAS(0027-8424),111(10),p.E924-E932)。
例えば、相同組換え(HR)を介しての細胞のゲノムの改変は、遺伝子組換えのための強力なツールである。植物における相同組換えのためのパラメーターは、導入され、短縮された選択可能マーカー遺伝子をレスキューすることによって主として調査されてきた。これらの実験では、相同性DNA断片は、典型的には0.3kb~2kbであった。相同組換えの観察された頻度は、約10-4~10-5であった。例えば、Halfter et al.,(1992)Mol Gen Genet 231:186-93;Offringa et al.,(1990)EMBO J 9:3077-84;Offringa et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7346-50;Paszkowski et al.,(1988)EMBO J 7:4021-6;Hourda and Paszkowski,(1994)Mol Gen Genet 243:106-11;およびRisseeuw et
al.,(1995)Plant J 7:109-19を参照されたい。
相同組換えは、昆虫において証明されている。ショウジョウバエでは、Dray and Gloorは、3kbという小さな全鋳型を見いだした:標的相同性は、合理的な効率で標的内にDNAの大きな非相同セグメントをコピーするために十分であった(Dray and Gloor,(1997)Genetics 147:689-99)。ショウジョウバエにおける標的FRTでのFLP媒介性DNA組込みを使用して、Golicらは、ドナーおよび標的が1.1kbの相同性と比較して4.1kbの相同性を共有した場合には組込みがおよそ10倍効率的であることを証明した(Golic et al.,(1997)Nucleic Acids Res 25:3665)。ショウジョウバエからのデータは、2~4kbの相同性が効率的ターゲティングのために十分であることを示しているが、約30bp~約100bpでははるかに低い相同性で十分であるという幾つかの証拠が存在する(Nassif and Engels,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1262-6;Keeler and Gloor,(1997)Mol Cell Biol 17:627-34)。
相同組換えは、さらに他の生物においても実施されてきた。例えば、寄生原虫であるリーシュマニア(Leishmania)属における相同組換えのためには、少なくとも150~200bpの相同性が必要とされた(Papadopoulou and Dumas,(1997)Nucleic Acids Res 25:4278-86)。糸状菌のアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)では、遺伝子置換えは50bpと少ない隣接相同性を用いて達成されている(Chaveroche et al.,(2000)Nucleic Acids Res 28:e97)。標的化遺伝子置換えは、さらに繊毛虫類であるテトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)においても証明されている(Gaertig et al.,(1994)Nucleic Acids Res 22:5391-8)。哺乳類では、相同組換えは、培養中で増殖させ、形質転換させ、選択し、マウス胚中に導入することのできる多能性幹細胞系(ES)を使用して、マウスにおいて最も上首尾が得られた。挿入されたトランスジェニックES細胞を有する胚は、遺伝的子孫として発達する。同胞種を異種交配することによって、選択された遺伝子を有するホモ接合型マウスを得ることができる。このプロセスについての概説は、Watson et al.,(1992)Recombinant DNA,2nd Ed.,(Scientific American Books distributed by WH Freeman & Co.);Capecchi,(1989)Trends Genet 5:70-6;およびBronson,(1994)J Biol Chem 269:27155-8に提供されている。マウス以外の哺乳類における相同組換えは、卵母細胞に移植できる、または胚を発生させることのできる幹細胞の欠如によって限定されている。しかし、McCreath et al.,Nature 405:1066-9(2000)は、一次胚線維芽細胞内での形質転換および選択によるヒツジにおける上首尾の相同組換えについて報告した。
エラープローンDNA修復機構は、二本鎖切断部位で突然変異を作り出すことができる。非相同末端結合(NHEJ)経路は、切断された末端を1つに接合する最も一般的な修復機構である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1-12)。染色体の構造的完全性は、典型的には修復によって維持されるが、欠失、挿入または他の再配列が可能である。1つの二本鎖切断の2つの末端は、NHEJの最も優勢な基質であるが(Kirik et al.,(2000)EMBO J 19:5562-6)、しかし2つの異なる二本鎖切断が発生すると、異なる切断からの自由端はライゲーションすることができ、染色体欠失(Siebert and Puchta,(2002)Plant Cell 14:1121-31)または異なる染色体間の染色体転座(Pacher et al.,(2007)Genetics 175:21-9)を生じさせる可能性がある。
エピソームDNA分子は、さらに二本鎖切断内にライゲーションする、例えば、染色体二本鎖切断内へT-DNAを組み込むことができる(Chilton and Que,(2003)Plant Physiol 133:956-65;Salomon and Puchta,(1998)EMBO J 17:6086-95)。二本鎖切断の周囲の配列が、例えば、二本鎖切断の成熟に関係するエキソヌクレアーゼ活性によって改変されると、遺伝子変換経路は、例えば非分割性体細胞もしくはDNA複製後の姉妹染色分体などの相同配列を利用できる場合は原初の構造を取り戻すことができる(Molinier et al.,(2004)Plant Cell 16:342-52)。異所性および/または後成的DNA配列もまた相同組換えのためのDNA修復鋳型として機能することができる(Puchta,(1999)Genetics 152:1173-81)。
二本鎖切断がDNA内に導入されると、細胞のDNA修復機構は、切断を修復するように活性化される。エラープローンDNA修復機構は、二本鎖切断部位で突然変異を作り出すことができる。破損した末端を1つに結合させるための最も一般的な修復機構は非相同末端結合(NHEJ)経路である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1-12)。染色体の構造的完全性は、典型的には、修復により維持されるが、欠失、挿入またはその他の再配列も考えられる(Siebert and Puchta,(2002)Plant Cell 14:1121-31;Pacher et al.,(2007)Genetics 175:21-9)。
または、二本鎖切断は、相同DNA配列間の相同組換えによって修復することができる。二本鎖切断の周囲の配列が、例えば、二本鎖切断の成熟に関係しているエキソヌクレアーゼ活性によって改変されると、遺伝子変換経路は、例えば非分割性体細胞もしくはDNA複製後の姉妹染色分体などの相同配列を利用できる場合は原初の構造を取り戻すことができる(Molinier et al.,(2004)Plant Cell 16:342-52)。異所性および/または後成的DNA配列もまた相同組換えのためのDNA修復鋳型として機能することができる(Puchta,(1999)Genetics 152:1173-81)。
DNA二本鎖切断は、相同組換え経路を刺激するための効果的因子であると思われる(Puchta et al.,(1995)Plant Mol Biol 28:281-92;Tzfira and White,(2005)Trends Biotechnol 23:567-9;Puchta,(2005)J Exp Bot 56:1-14)。DNA切断剤を使用すると、植物において人工的に構築された相同DNA反復配列間で相同組換えの2~9倍の増加が観察された(Puchta et al.,(1995)Plant Mol Biol 28:281-92)。トウモロコシプロトプラスト内において、線状DNA分子を用いた実験は、プラスミド間の強化された相同組換えを証明した(Lyznik et al.,(1991)Mol Gen Genet 230:209-18)。
ドナーDNAは、当技術分野において公知の任意の手段によって導入することができる。ドナーDNAは、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性形質転換もしくはバイオリスティック粒子衝突法を含む当技術分野において公知の任意の形質転換法によって提供することができる。ドナーDNAは、細胞内で一過性で存在する可能性がある、またはウイルスレプリコンを介して導入することができよう。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ系についてのさらなる使用は記載されており(例えば、それらの全部が参照により本明細書に組み込まれる2015年3月19日に公開された米国特許出願公開第2015-0082478A1号明細書、2015年2月26日に公開された国際公開第2015/026886A1号パンフレット、2015年2月26日に公開された米国特許出願公開第2015-0059010A1号明細書、2014年7月7日に出願された米国特許出願第62/023246号明細書および2014年8月13日に出願された米国特許出願第62/036,652号明細書を参照されたい)、関心対象のヌクレオチド配列(例えば調節要素)を修飾もしくは置き換える方法、関心対象のポリヌクレオチドの挿入、遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、スプライシング部位の修飾および/またはまた別のスプライシング部位の導入、関心対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の修飾、アミノ酸および/またはタンパク質融合ならびに関心対象の遺伝子内へ逆反復配列を発現することによる遺伝子サイレンシングが含まれる。
本開示の1つの実施形態では、本方法は、そのゲノム内に修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択するための方法であって:a)ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位で一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む工程;およびb)工程(a)から前記修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択する工程を含む方法を含む。保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、その5’末端、3’末端ならびに5’末端および3’末端の両方で少なくとも1つの保護分子を含む線状ポリヌクレオチドであってよい、または環状分子であってよい。保護分子は、アルカンスペーサー、蛍光体、NHSエステル、ジゴキシゲン、コレステリル-TEG、C6、C12、ヘキシニル、Oxtadiynyl dUTP、ビオチン、ジチオール、逆ジデオキシ-T修飾またはそれらの任意の1つの組合せからなる群から選択できる。保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、少なくとも1本の鎖の5’末端で少なくとも1つのホスホロチエート結合を含む二本鎖線状分子であってよい。保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、各鎖の5’末端上で3炭素アルカリスペーサーを含む二本鎖線状分子であってよい。保護ポリヌクレオチド鋳型の少なくとも1つのヌクレオチド修飾は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換え、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入および(iv)(i)~(iii)の任意の組合せからなる群から選択することができる。
本明細書に記載した方法および組成物は、ガイドポリヌクレオチド、保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを使用し、遺伝子組換え(例えば関心対象のポリヌクレオチドを導入する、遺伝子を編集する、もしくは代謝経路の一部である遺伝子を修飾する)のために使用できる。
本明細書に記載した方法は、代謝経路工学(代謝工学)および/または遺伝子組換えされてきた組換え微生物細胞を生成するために使用できる。所定の実施形態における組換え微生物細胞は、本明細書に記載した方法を使用する代謝工学のために遺伝子を欠失させることによって遺伝子組み換えされてきた微生物細胞であってよい。所定の実施形態における組換え微生物細胞は、例えばPUFAなどの増加した量の全脂質および/または脂肪酸を生成するために遺伝子組換えされてきた微生物細胞であってよい。例えば、脂肪酸もしくはPUFA生合成経路またはその一部は、例えば脂肪酸デサチュラーゼおよびエロンガーゼなどの所定の経路酵素のためにコーディング配列を挿入することによって生物に導入することができる。下記の酵素:δ-4デサチュラーゼ、δ-5デサチュラーゼ、δ-6デサチュラーゼ、δ-12デサチュラーゼ、δ-15デサチュラーゼ、δ-17デサチュラーゼ、δ-9デサチュラーゼ、δ-8デサチュラーゼ、δ-9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、C20/22エロンガーゼの1つもしくは組合せは、その中にPUFA生合成経路を提供するために油脂性酵母細胞に遺伝的に導入することができる。これらの酵素の1つ以上は、異種起源由来であってよい。典型的なPUFA生合成経路は、δ-9エロンガーゼおよびδ-8デサチュラーゼの両方(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011-0055973号明細書を参照されたい)またはδ-6デサチュラーゼおよびδ-6エロンガーゼの両方を含有する可能性がある。または、組換え微生物細胞は、脂肪酸生合成を調節する、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードする遺伝子以外の遺伝子を導入もしくは欠失させることによって、増加した全脂質および/またはPUFAレベルを有するように修飾することができる。
所定の実施形態における組換え微生物細胞は、乾燥細胞重量の重量%として測定して少なくとも28%のEPAを含む油を生成する、およびSou2ソルビトール利用タンパク質をコードする内在性ポリヌクレオチド配列および膜結合型O-アシルトランスフェラーゼモチーフ内に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む活性LPCAT酵素をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションを含むヤロウィア(Yarrowia)属細胞であってよい(参照により本明細書に組み込まれる2013年12月18日に出願されたPCT/US2013/07895号明細書)。
組換え微生物細胞は、酵母、カビ、真菌、卵母細胞、細菌、藻類、ストラメノパイルもしくは原生生物(例えば、ユーグレナ)の細胞であってよい。所定の実施形態では、組換え微生物細胞は、例えば油脂性酵母細胞などの油脂性微生物細胞である。油脂性酵母の例としては、ヤロウィア(Yarrowia)属、カンジダ(Candida)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属およびリポミセス(Lipomyces)属の種が挙げられる。油脂性酵母のより特定の例としては、例えば、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポミセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェルス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プルケリマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユティリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルティヌス(Rhodotorula glutinus)およびR.グラミニス(R.graminis)が挙げられる。所定の実施形態における真菌細胞の例としては、フザリウム(Fusarium)属(例えば、フザリウム・ラテリティウム(Fusarium lateritium))、モルティエレラ(Mortierella)属(例えば、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina))およびムコール(Mucor)属(例えば、ムコール・ロキシイ(Mucor rouxii)およびムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides))が挙げられる。本明細書に開示した他の実施形態では、微生物細胞は、エントモフトラ(Entomophthora)属、ピチウム(Pythium)属およびポルフィリジウム(Porphyridium)属の微生物細胞であってよい。
本明細書では関心対象のポリヌクレオチドについて詳細に記載するが、商業市場および作物の開発に関係する商業市場の関心を反映するポリヌクレオチドが含まれる。関心対象の作物および市場は変化し、開発途上国が世界市場を広げるにつれて、さらに新規な作物およびテクノロジーもまた出現するであろう。さらに、農業形質ならびに産出量および雑種強勢などの特徴に関する我々の理解が高まるにつれて、遺伝子組換えのための遺伝子の選択はこれに応じて変化するであろう。
さらに提供されるのは、そのゲノム内に標的部位でターゲティングされる関心対象のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの細胞を同定するための方法である。標的部位もしくは標的部位の近くでゲノム内への挿入を含むそれらの細胞をスクリーニング可能マーカー表現型を使用せずに同定するためには、様々な方法を利用することができる。そのような方法は、PCR法、シークエンシング法、ヌクレアーゼ消化法、サザンブロット法およびそれらの任意の組合せを含むがそれらに限定されない標的配列内の何らかの変化を検出するために標的配列を直接的に分析する工程であると見なすことができる。例えば、本明細書に記載した方法のために必要な程度まで参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/147,834号明細書を参照されたい。
関心対象のポリヌクレオチド/ポリペプチドには、微生物代謝経路遺伝子、除草剤耐性コーディング配列、殺虫剤耐性コーディング配列、殺線虫性コーディング配列、抗菌コーディング配列、抗真菌コーディング配列、抗ウイルスコーディング配列、非生物および非生物的ストレス耐性コーディング配列もしくは例えば産出量、穀粒品質、栄養素量、デンプンの品質および量、窒素の固定および/または利用、脂肪酸および油分および/または油成分などの植物形質を修飾する配列が含まれるがそれらに限定されない。関心対象の遺伝子の一般的カテゴリーには、例えば、ジンクフィンガーなどの情報に関係する遺伝子、キナーゼなどのコミュニケーションに包含される遺伝子および熱ショックタンパク質などのハウスキーピングに関係する遺伝子が含まれる。トランス遺伝子のより特異的カテゴリーには、例えば、農業、昆虫耐性、疾患耐性、除草剤耐性、妊孕性もしく不稔性、穀粒の特徴および商業的製品にとって重要な形質をコードする遺伝子が含まれる。関心対象の遺伝子には、一般に、油、デンプン、炭水化物もしくは栄養素代謝に関係する遺伝子、ならびに殻のサイズ、スクロース負荷に影響を及ぼす遺伝子および本明細書に記載した除草剤耐性などであるがそれらに限定されない他の形質と組み合わせて積み重ねる、または使用できる遺伝子が含まれる。
例えば油、デンプンおよびタンパク質含量などの農業的に重要な形質は、伝統的な育種法を使用することに加えて遺伝的に改変することができる。修飾には、オレイン酸、飽和酸および不飽和酸の含量を増加させる工程、リシンおよび硫黄のレベルを増加させる工程、必須アミノ酸を提供する工程およびさらにデンプンの修飾が含まれる。ホルドチオニンタンパク質修飾は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,703,049号明細書、同第5,885,801号明細書、同第5,885,802号明細書および同第5,990,389号明細書に記載されている。
さらに、関心対象のポリヌクレオチドは、さらに関心対象の標的化遺伝子配列のためのメッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも一部分に対して相補的であるアンチセンス配列も含むことができる。アンチセンスヌクレオチドは、対応するmRNAとハイブリダイズするために構築される。アンチセンス配列の修飾は、その配列が対応するmRNAとハイブリダイズして対応するmRNAの発現を妨害する限り作成することができる。この方法で、対応するアンチセンス配列に対する70%、80%もしくは85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用することができる。さらに、標的遺伝子の発現を崩壊させるためにアンチセンスヌクレオチドの部分が使用されてもよい。一般に、少なくとも50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチドまたはそれ以上の配列を使用できる。
さらに、関心対象のポリヌクレオチドは、さらに関心対象の生物内の内在性遺伝子の発現を抑制するためにセンス方向で使用することもできる。センス方向にあるポリヌクレオチドを使用して微生物および植物中の遺伝子発現を抑制するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,283,184号明細書および同第5,034,323号明細書を参照されたい。
関心対象のポリヌクレオチドは、さらに表現型マーカーであってよい。表現型マーカーは、陽性選択可能マーカーであるか陰性選択可能マーカーであるかにかかわらず、視覚マーカーおよび選択可能マーカーを含むスクリーニング可能または選択可能マーカーである。任意の表現型マーカーを使用することができる。詳細には、選択可能もしくはスクリーニング可能マーカーは、多くの場合は特定の条件下で、1つの分子もしくはこの分子を含有する細胞を同定する、またはこの分子もしくは細胞に有利もしくは不利に選択することを可能にするDNAセグメントを含む。これらのマーカーは、RNA、ペプチドもしくはタンパク質の産生などであるがそれらに限定されない活性をコードすることができる、またはRNA、ペプチド、タンパク質、無機化合物および有機化合物または組成物などのための結合部位を提供することができる。
選択可能マーカーの例としては、それらに限定されないが、制限酵素部位を含むDNAセグメント;例えばスペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、Basta、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)およびハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)などの抗生物質を含む、他の点では毒性の化合物に対する耐性を提供する産物をコードするDNAセグメント;レシピエント細胞において他の点では欠失している産物をコードするDNAセグメント(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー);容易に同定できる産物をコードするDNAセグメント(例えば、β-ガラクトシダーゼ、GUS;緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン(CFP)、黄色(YFP)、赤色(RFP)および細胞表面タンパク質などの表現型マーカー);PCRにとっての新規のプライマー部位(例えば、以前には並置されていなかった2つのDNA配列の並列)の生成、制限エンドヌクレアーゼもしくは他のDNA修飾酵素、化学物質などの作用を受けていない、または受けたDNA配列の含有ならびにその同定を可能にする特異的修飾(例えば、メチル化)のために必要とされたDNA配列の包含が挙げられる。
追加の選択可能マーカーには、例えばグルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノンおよび2,4-ジクロロフェノキシアセテート(2,4-D)などの除草性化合物に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。例えば、Yarranton,(1992)Curr Opin Biotech 3:506-11;Christopherson et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314-8;Yao et al.,(1992)Cell 71:63-72;Reznikoff,(1992)Mol Microbiol 6:2419-22;Hu et al.,(1987)Cell 48:555-66;Brown et al.,(1987)Cell 49:603-12;Figge et al.,(1988)Cell 52:713-22;Deuschle et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400-4;Fuerst et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549-53;Deuschle et al.,(1990)Science 248:480-3;Gossen,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917-21;Labow et al.,(1990)Mol Cell Biol 10:3343-56;Zambretti et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952-6;Baim et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072-6;Wyborski et al.,(1991)Nucleic Acids Res 19:4647-53;Hillen and Wissman,(1989)Topics Mol Struc Biol 10:143-62;Degenkolb et al.,(1991)Antimicrob Agents Chemother 35:1591-5;Kleinschnidt et al.,(1988)Biochemistry 27:1094-104;Bonin,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-51;Oliva et al.,(1992)Antimicrob Agents Chemother 36:913-9;Hlavka et al.,(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78 (Springer-Verlag,Berlin);Gill et al.,(1988)Nature 334:721-4を参照されたい。商業的形質は、さらに例えばエタノール産生のためにデンプンを増加させられる、またはタンパク質の発現を提供できる1つ以上の遺伝子上でコードすることもできる。形質転換微生物もしくは植物のまた別の重要な商業的使用は、例えば米国特許第5,602,321号明細書に記載されているポリマーおよびバイオプラスチックの生成である。例えばβ-ケトチオラーゼ、PHBase(ポリヒドロキシブチレートシンターゼ(polyhydroxyburyrate synthase))およびアセトアセチル-CoAレダクターゼ(Schubert et al.(1988)J.Bacteriol.170:5837-5847を参照されたい)などの遺伝子は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の発現を促進する。
本明細書で使用するための選択方法は、カナマイシン、ハイグロマイシンおよびアミノグリコシドG418に対する耐性ならびにウラシル、ロイシン、リシン、トリプトファンもしくはヒスチジンが欠如する培地上で増殖する能力である。また別の実施形態では、5-フルオロオロチン酸(5-フルオロウラシル-6-カルボン酸一水和物[5-FOA])が酵母Ura-突然変異体(米国特許出願公開第2009-0093543号明細書)の選択のために使用される、またはスルホニルウレア系除草剤耐性(国際公開第2006/052870号パンフレット)を付与する天然アセトヒドロキシ酸シンターゼ(もしくはアセト乳酸シンターゼ;E.C.4.1.3.18)が形質転換体を選択するために利用される。部位特異的リコンビナーゼ系を使用することによって、好ましい選択マーカー対を複数の連続的形質転換において使用するために「リサイクリング」するための固有の方法は、さらに米国特許出願公開第2009-0093543号明細書に教示されている。
転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質安定性ならびにタンパク質位置決め、酸素制限および宿主細胞からの分泌の態様を制御する本明細書に開示された実施形態では多数の様々な遺伝要素を操作するのが望ましい場合がある。より詳細には、遺伝子発現は、下記の:関連プロモーターおよびターミネーター配列の性質;クローン化遺伝子のコピー数;遺伝子がプラスミド由来であるか、宿主細胞のゲノム内に組み込まれているのかどうか;合成異種タンパク質の最終細胞部位;宿主生物内の翻訳効率;宿主細胞内のクローン化遺伝子タンパク質の内在性安定性;およびその頻度が例えば宿主細胞の好ましいコドン使用の頻度に近付くようなクローン化遺伝子内のコドン使用を改変することによって制御することができる。
微生物宿主細胞内の異種遺伝子の発現を駆動するために有用なプロモーターは数多くあり、当業者には公知である。発現は、誘導法もしくは構成的方法で実施することができる。誘導発現は、関心対象の遺伝子に機能的に結合した調節可能なプロモーターの活性を誘導することによって実施できるが、構成的発現は、関心対象の遺伝子に機能的に結合した構成的プロモーターの使用によって達成できる。遺伝子の発現を指令できる実質的に任意のプロモーター(すなわち、天然、合成もしくはキメラ)は好適であるが、宿主種からの転写および翻訳調節領域は、特別に有用な可能性がある。
一般に、ターミネーターは、それからプロモーターが得られた遺伝子の3’領域または異なる遺伝子由来であってよい。極めて多数のターミネーターが公知であり、それらが由来した同一もしくは異なる属および種の両方において利用されると、様々な宿主において満足できるように機能する。ターミネーターは、通常は任意の特別な特性のためではなくもむしろより便宜的な物質として選択される。好ましくは、ターミネーターは、酵母遺伝子に由来する。ターミネーターはさらに、当業者であればターミネーターを設計および合成するために利用可能な情報を利用できるので、合成であってもよい。ターミネーターは、不可欠ではないが、存在するのが好ましい。
制限されることを意図していないが、ヤロウィア(Yarrowia)属の組換え微生物宿主細胞において使用するための好ましいプロモーターおよびターミネーターは、それらの全部が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009-0093543号明細書、同第2010-0068789号明細書、同第2011-0059496号明細書、同第2012-0252079号明細書、同第2012-0252093号明細書、同第2013-0089910号明細書および同第2013-0089911号明細書の中で教示されたものである。
トランス遺伝子、組換えDNA分子、関心対象のDNA配列および関心対象のポリヌクレオチドは、遺伝子サイレンシングのための1つ以上のDNA配列を含むことができる。細胞および生物におけるDNA配列の発現を包含する遺伝子サイレンシングのための方法は、当技術分野において公知であり、共抑制、アンチセンス抑制、二本鎖RNA(dsRNA)干渉、ヘアピンRNA(hpRNA)干渉、イントロン含有ヘアピンRNA(ihpRNA)干渉、転写遺伝子サイレンシングおよびミクロRNA(miRNA)干渉が含まれるがそれらに限定されない。
本明細書で使用する「核酸」は、ポリヌクレオチドを意味しており、デオキシリボヌクレオチド塩基もしくはリボヌクレオチド塩基の一本鎖もしくは二本鎖ポリマーを含む。核酸は、さらに断片および修飾ヌクレオチドを含むこともできる。
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」および「核酸断片」は、任意選択的に合成、非天然もしくは改変ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAおよび/またはDNAのポリマーを示すために互換的に使用される。ヌクレオチド(通常は5’-一リン酸塩形で見いだされる)は、次の一文字名称で呼ばれる:アデノシンもしくはデオキシアデノシン(それぞれRNAもしくはDNAに対して)に対して「A」、シトシンもしくはデオキシシトシンに対しては「C」、グアノシンもしくはデオキシグアノシンに対しては「G」、ウリジンに対しては「U」、デオキシチミジンに対しては「T」、プリン(AもしくはG)に対しては「R」、ピリミジン(CまたはT)に対しては「Y」、GもしくはTに対しては「K」、AもしくはCもしくはTに対しては「H」、イノシンに対しては「I」および任意のヌクレオチドに対しては「N」(例えば、DNA配列について言及する場合は、Nは、A、C、TもしくはGであってよく;RNA配列について言及する場合は、Nは、A、C、UもしくはGであってよい)。本明細書に開示した任意のRNA配列(例えば、crRNA、tracrRNA、gRNA)は、好適なDNA配列によってコードされてよい。
「オープンリーディングフレーム」は、ORFと略記する。
「機能的に同等である小断片」および「機能的に同等の小断片」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、遺伝子発現を改変する、または所定の表現型を生成する能力が、断片もしくは小断片が活性酵素をコードするか否かにかかわらず維持されている単離核酸断片の一部分もしくは小断片を意味する。例えば、断片もしくは小断片は、微生物もしくは植物において所望の表現型を生成するために遺伝子の設計において使用できる。遺伝子は、プロモーター配列に対してセンスもしくはアンチセンス方向で、活性酵素をコードするか否かにかかわらず、それらの核酸断片もしくは小断片を結合することによって抑制において使用するために設計できる。
用語「保存ドメイン」もしくは「モチーフ」は、進化的に関連するタンパク質のアラインメントされた配列に沿って特定位置で保存された1セットのアミノ酸を意味する。他の位置でのアミノ酸は相同タンパク質間で変動する可能性があるが、特定位置で高度に保存されているアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性もしくは活性にとって必須であるアミノ酸を指示する。それらは1ファミリーのタンパク質ホモログのアラインメントされた配列内のそれらの高度の保存度によって同定されるために、それらは、新規に決定された配列を備えるタンパク質が以前に同定されたタンパク質ファミリーに属するかどうかを決定するために、識別子もしくは「シグネチャー」として使用できる。
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列、それらの変異体およびこれらの配列の構造的関係は、本明細書では互換的に使用される用語「相同性」、「相同」、「実質的に同一」、「実質的に類似」および「実質的に対応する」によって記載することができる。これらは、ポリペプチドもしくは核酸断片に関するが、ここで1つ以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド塩基における変化は例えば遺伝子発現を媒介する、または所定の表現型を生成する能力などの分子の機能には影響を及ぼさない。これらの用語はさらに、初期の未修飾断片に対して結果として生じた核酸断片の機能的特性を実質的には改変しない核酸断片の修飾も意味する。これらの修飾には、核酸断片内の1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換および/または挿入が含まれる。
包含された実質的に類似の核酸配列は、それらが(例えば、0.5×のSSC、0.1%のSDS、60℃の中ストリンジェンシー条件下で)本明細書に例示した配列または本明細書に開示した核酸配列のいずれかと機能的に同等であり、本明細書に開示した、または本明細書に開示した核酸配列のいずれかと機能的同等であるヌクレオチド配列のいずれかの部分とハイブリダイズする能力によって規定できる。ストリンジェンシー条件は、例えば遠縁の生物由来の相同配列などの中等度に類似の断片から、例えば近縁の生物由来の機能的酵素を複製する遺伝子などの高度に類似の断片までをスクリーニングするために調整することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄がストリンジェンシー条件を決定する。
用語「選択的にハイブリダイズする」には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、核酸配列の、非標的核酸配列および非標的核酸の実質的排除へのハイブリダイゼーションに比較して特定の核酸標的配列への検出可能に大きな程度(例えば、バックグラウンドに比較して少なくとも2倍)のハイブリダイゼーションについての言及が含まれる。選択的にハイブリダイズする配列は、典型的には相互に少なくとも80%の配列同一性もしくは90%の配列同一性および100%までの配列同一性(すなわち、完全相補的)を有する。
用語「ストリンジェントな条件」もしくは「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、プローブがin vitroハイブリダイゼーションアッセイにおいてその標的配列に選択的にハイブリダイズするであろう条件についての言及が含まれる。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、様々な状況において異なるであろう。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することによって、プローブと100%相補的である標的配列を同定することができる(相同プロービング)。または、ストリンジェンシー条件は、低い程度の類似性が検出されるように配列内での一部のミスマッチを許容するように調整することができる(非相同プロービング)。一般に、プローブは、長さが約1,000ヌクレオチド未満、任意選択的に長さが500ヌクレオチド未満である。
典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0~8.3、および短鎖プローブ(例えば、10~50ヌクレオチド)に対しては少なくとも約30℃および長鎖プローブ(例えば、50ヌクレオチド超)に対しては少なくとも約60℃で、塩濃度が約1.5MのNaイオン、典型的には約0.01~1.0MのNaイオン濃度(もしくは他の塩)である条件であろう。ストリンジェントな条件は、さらにまた例えばホルムアミドなどの脱安定化剤の添加により達成することができる。典型的な低ストリンジェンシー条件には、37℃での30~35%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(硫酸ドデシルナトリウム)のバッファー溶液を用いたハイブリダイゼーションおよび50~55℃での1×~2×のSSC(20×のSSC=3.0MのNaCl/0.3Mのクエン酸三ナトリウム)中での洗浄が含まれる。典型的な中ストリンジェンシー条件には、37℃での40~45%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS中でのハイブリダイゼーションおよび55~60℃での0.5×~1×のSSC中での洗浄が含まれる。典型的な高ストリンジェンシー条件には、37℃での50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS中でのハイブリダイゼーションおよび60~65℃での0.1×のSSC中での洗浄が含まれる。
核酸配列もしくはポリペプチド配列の状況における「配列同一性」もしくは「同一性」は、特定の比較窓全体にわたり最大の一致に対してアラインメントされた場合に同一である2つの配列における核酸塩基もしくはアミノ酸残基を意味する。
用語「配列同一性のパーセンテージ」は、比較窓全体にわたり2つの適切にアラインメントされた配列を比較することにより決定される数値を意味しており、比較窓中のポリヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列の部分は、これら2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加もしくは欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。パーセンテージは、配列同一性のパーセンテージを得るために、マッチした位置数を生じさせるために両方の配列内で同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基が発生する位置の数を決定し、マッチした位置数を比較窓内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けることによって計算される。配列同一性率(%)の有用な例としては、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または50%~100%の任意の整数パーセンテージが挙げられるがこれらに限定されない。これらの同一性は、本明細書に記載したプログラムのいずれかを使用して決定することができる。
配列アラインメントおよび同一性率(%)もしくは類似性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラムが挙げられるがこれに限定されない相同配列を検出するために設計された様々な比較方法を使用して決定することができる。本出願の状況内では、配列分析ソフトウェアが分析に使用される場合は、他に規定されない限り、分析結果は、言及したプログラムの「デフォルト値」をベースとすることは理解されるだろう。本明細書で使用する「デフォルト値」は、最初に初期化されるとソフトウェアで最初にロードされる数値もしくはパラメーターの任意のセットを意味するであろう。
「アラインメントのClustal V法」は、Clustal V(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189-191により説明されている)と表示されており、およびLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラム中で見出されるアラインメント法に対応する。多重アラインメントの場合、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustal法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性率(%)の算出用のデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同一プログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性率(%)」を得ることができる。
「アラインメントのClustal W法」は、Clustal W(Higgins and Sharp,(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins et al.,(1992)Comput Appl Biosci 8:189-191により説明されている)と表示されているおよびLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.、Madison,WI)のMegAlign(商標)v6.1プログラム中で見出されるアラインメント法に対応する。多重アラインメント用のデフォルトパラメーター(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用した配列のアラインメントの後、同一プログラム中の「配列距離」表を調べることにより、「同一性率(%)」を得ることができる。
他に言及しない場合は、本明細書で提供する配列同一性/類似性値は、下記のパラメーター:GAP生成ペナルティ重量50およびGAP長伸長ペナルティ重量3およびnwsgapdna.cmp scoring matrixを使用したヌクレオチド配列に対する同一性率(%)および類似性率(%);GAP生成ペナルティ重量8およびGAP長伸長ペナルティ2およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する、GAP Version 10(GCG,Accelrys、San Diego,CA)を使用して得られた数値を意味する(Henikoff and Henikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915)。GAPは、Needleman and Wunsch,(1970)J Mol Biol 48:443-53のアルゴリズムを使用してマッチの数を最大化してギャップの数を最小限に抑える2つの完全配列のアラインメントを見出す。GAPは、全ての可能なアラインメントおよびギャップ位置を考慮し、一致した塩基の単位でギャップ生成ペナルティおよびギャップ伸長ペナルティを使用して、マッチした塩基の最大数および最小のギャップを有するアラインメントを作成する。
「BLAST」は、生物学的配列間の類似性領域を見いだすために使用される、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)によって提供される探索アルゴリズムである。このプログラムは、ヌクレオチドもしくはタンパク質配列を配列データベースと比較し、類似性が無作為に発生したとは予測されないクエリー配列との十分な類似性を有する配列を同定するためにマッチの統計的有意性を計算する。BLASTは、同定された配列およびクエリー配列に対するそれらの局所的アラインメントを報告する。
多数のレベルの配列同一性は、他の種由来のポリペプチドまたはそのようなポリペプチドが同一もしくは類似の機能もしくは活性を有する場合に自然もしくは合成的に修飾されているポリペプチドを同定する際に有用であることは当業者によって明確に理解されるだろう。同一性率(%)の有用な例としては、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または50%~100%の任意の整数パーセンテージが挙げられるがこれらに限定されない。実際に、50%~100%の、例えば51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の任意の整数のアミノ酸同一性は、本開示を記載する際に有用である可能性がある。
「遺伝子」には、例えば、コーディング配列に先行する(5’非コーディング配列)および後続する(3’非コーディング配列)調節配列を含む、特異的タンパク質などであるがそれには限定されない機能的分子を発現する核酸断片が含まれる。「天然遺伝子」は、自己の調節配列を備えて自然で見出される遺伝子を意味する。
「突然変異遺伝子」は、ヒトが介入して改変されている遺伝子である。そのような「突然変異遺伝子」は、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換によって、対応する非突然変異遺伝子の配列とは異なる配列を有する。本開示の所定の実施形態では、突然変異遺伝子は、本明細書に開示したガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系から結果として生じる改変を含む。突然変異細胞は、突然変異遺伝子を含む細胞である。
本明細書で使用する「標的化突然変異」は、本明細書で開示した、または当技術分野で公知である標的配列のDNA内に二本鎖切断を導入することができる二本鎖切断誘導剤を包含する方法を使用して、天然遺伝子内の標的配列を改変することによって作成された天然遺伝子内での突然変異である。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ誘導性標的化突然変異は、Casエンドヌクレアーゼによって認識および切断されるゲノム標的部位内もしくは外に位置するヌクレオチド配列内で発生する可能性がある。
細胞に適用される場合の用語「ゲノム」は、核内で見出される染色体DNAだけでなく、細胞の細胞内成分(例えば、ミトコンドリアもしくはプラスミド)内で見出されるオルガネラDNAも包含する。
「コドン修飾遺伝子」もしくは「コドン優先遺伝子」もしくは「コドン最適化遺伝子」は、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するように設計されているコドン使用頻度を有する遺伝子である。
「対立遺伝子」は、染色体上の所定の遺伝子座を占有する遺伝子の数種の代替形の1つである。染色体上の所定の遺伝子座に存在する対立遺伝子全部が同一である場合は、その生物はその遺伝子座ではホモ接合性である。染色体上の所定の遺伝子座に存在する対立遺伝子が異なる場合は、その生物はその遺伝子座ではヘテロ接合性である。
「コーディング配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を意味する。「調節配列」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、コーディング配列内またはコーディング配列の下流(3’非コーディング配列)に位置しており、関連するコーディング配列の転写、RNAのプロセシングもしくは安定性または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、イントロン、ポリアデニル化標的配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム-ループ構造が含まれる可能性があるがこれらに限定されない。
プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび転写を開始する他のタンパク質の認識および結合に関係するDNAの領域である。プロモーター配列は、近位およびより遠位の上流要素からなり、後者の要素はエンハンサーと称されることが多い。「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激できるDNA配列であり、プロモーターの固有の要素であってもよい、またはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入された異種要素であってもよい。プロモーターは、それらの全体が天然遺伝子に由来してよい、または自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成されてよい、および/または合成DNAセグメントを含んでいてもよい。様々なプロモーターが、様々な組織型もしくは細胞型で、または様々な発達段階で、または様々な環境条件に応じて、遺伝子の発現を指令できることは当業者に理解されている。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界が完全には定義されていないので、一部の変動を備えるDNA断片が同一のプロモーター活性を有する可能性があることもさらに認識されている。ほとんどの場合の大多数の細胞型で遺伝子が発現することを引き起こすプロモーターは、一般には「構成的プロモーター」と呼ばれる。
本明細書で使用する「強力プロモーター」は、単位時間当たり相当に多数の生成開始を指令できるプロモーター、および/または細胞内の遺伝子の平均転写レベルよりも高いレベルの遺伝子転写を駆動するプロモーターである。
植物プロモーターは、植物細胞において転写を開始できるプロモーターであり、植物プロモーターの概説については、Potenza et al.,(2004)In Vitro Cell Dev Biol 40:1-22を参照されたい。構成的プロモーターには、例えば、国際公開第99/43838号パンフレットおよび米国特許第6,072,050号明細書に開示されたRsyn7プロモーターのコアプロモーターおよび他の構成的プロモーター、コアCaMV 35Sプロモーター(Odell et al.,(1985)Nature 313:810-2);ライスアクチン(McElroy et al.,(1990)Plant Cell 2:163-71);ユビキチン(Christensen et al.,(1989)Plant Mol Biol 12:619-32;Christensen et al.,(1992)Plant Mol Biol 18:675-89);pEMU(Last et al.,(1991)Theor Appl Genet 81:581-8);MAS(Velten et al.,(1984)EMBO J 3:2723-30);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号明細書)などが含まれる。他の構成プロモーターは、例えば、米国特許第5,608,149号明細書、同第5,608,144号明細書、同第5,604,121号明細書、同第5,569,597号明細書、同第5,466,785号明細書、同第5,399,680号明細書、同第5,268,463号明細書、同第5,608,142号明細書および同第6,177,611号明細書に記載されている。一部の例では、誘導性プロモーターを使用することができる。病原体による感染後に誘導される病原体誘導性プロモーターには、限定はされないが、PRタンパク質、SAタンパク質、β-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼなどの発現を調節するプロモーターが含まれる。
化学調節プロモーターは、外在性化学調節因子の適用によって植物内の遺伝子の発現を調節するために使用することができる。プロモーターは、化学物質の適用が遺伝子発現を誘導する化学誘導性プロモーターであっても、化学物質の適用が遺伝子発現を抑制する化学抑制性プロモーターであってもよい。化学誘導性プロモーターには、限定はされないが、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤によって活性化されるトウモロコシIn2-2プロモーター(De Veylder et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:568-77)、発芽前除草剤として使用される疎水性求電子性化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター(GST-II-27、国際公開第93/01294号パンフレット)およびサリチル酸によって活性化されるタバコPR-1aプロモーター(Ono et al.,(2004)Biosci Biotechnol Biochem 68:803-7)が含まれる。その他の化学調節プロモーターには、ステロイド応答性プロモーター(例えば、グルココルチコイド誘導性プロモーター(Schena et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10421-5;McNellis et al.,(1998)Plant J 14:247-257を参照されたい);テトラサイクリン誘導性およびテトラサイクリン抑制性プロモーター(Gatz et al.,(1991)Mol Gen Genet 227:229-37;米国特許第5,814,618号明細書および同第5,789,156号明細書を参照されたい)が含まれる。
組織優先プロモーターは、特定の植物組織内での強化された発現をターゲティングするために使用することができる。組織優先プロモーターには、例えば、Kawamata et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:792-803;およびGuevara-Garcia et al.,(1993)Plant J 4:495-505が含まれる。種子優先プロモーターには、種子の発生中に活性な種子特異的プロモーターおよび種子の発芽中に活性な種子発芽プロモーターの両方が含まれる。Thompson et al.,(1989)BioEssays 10:108を参照されたい。
用語「誘導性プロモーター」は、例えば化学的化合物(化学的誘導因子)によって内在性もしくは外在性刺激の存在に応答して、または環境、ホルモン、化学的および/または発育シグナルに応答してコーディング配列もしくは機能的RNAを選択的に発現するプロモーターを意味する。誘導性もしくは調節プロモーターには、例えば、光、熱、ストレス、洪水もしくは渇水、塩分ストレス、浸透圧ストレス、植物ホルモン、外傷または例えばエタノール、アブシジン酸(ABA)、ジャスモン酸塩、サリチル酸もしくは毒性緩和剤などの化学物質により誘導もしくは調節されるプロモーターが含まれる。ストレス誘導性の例は、RD29Aプロモーター(Kasuga et al.(1999)Nature Biotechnol.17:287-91)である。植物細胞において有用な様々なタイプの新規なプロモーターは、常に発見され続けている;数多くの例は、Okamuro and Goldberg,(1989)In The Biochemistry of Plants,Vol.115,Stumpf and Conn,eds(New York,NY:Academic Press),pp.1-82による編纂物において見いだすことができる。
「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコーディング配列との間に位置するポリヌクレオチド配列を意味する。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流にあるmRNA内に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNA、mRNA安定性もしくは翻訳効率への一次転写物のプロセシングに影響を及ぼす可能性がある。翻訳リーダー配列の例は、記載されている(例えば、Turner and Foster,(1995)Mol Biotechnol 3:225-236を参照されたい)。
「3’非コーディング配列」、「転写ターミネーター」もしくは「終結配列」は、コーディング配列の下流に位置するDNA配列を意味しており、ポリアデニル化認識配列およびmRNAプロセシングもしくは遺伝子配列に影響を及ぼすことのできる調節シグナルをコードする他の配列が含まれる。ポリアデニル化シグナルは、通常は、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸区域の付加に影響を及ぼすことによって特徴付けられる。様々な3’非コーディング配列の使用は、Ingelbrecht et al.,(1989)Plant Cell 1:671-680によって例示されている。
「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒性転写により生じる産物を意味する。RNA転写物がDNA配列の完全相補性コピーである場合は、RNA転写物は、一次転写物もしくはプレ-mRNAと呼ばれる。RNA転写物は、それが一次転写物であるプレmRNAtの翻訳後プロセシングに由来するRNA配列である場合に成熟RNAもしくはmRNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA」もしくは「mRNA」は、イントロンを有しておらず、細胞によってタンパク質に翻訳することのできるRNAを意味する。「cDNA」は、mRNA鋳型に相補的である、および酵素の逆転写酵素を使用してmRNA鋳型から合成されるDNAを意味する。cDNAは、一本鎖形であってよい、またはDNAポリメラーゼIのKlenow断片を使用して二本鎖形に転換させることができる。「センス」RNAは、mRNAを含み、細胞内もしくはin vitroでタンパク質内に翻訳できるRNA転写物を意味する。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物もしくはmRNAの全部または一部に対して相補的である、および標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写物を意味する(例えば、米国特許第5,107,065号明細書を参照されたい)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の部分、すなわち、5’非コーディング配列、3’非コーディング配列、イントロンもしくはコーディング配列との相補性であってよい。「機能的RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNAもしくは翻訳されることはないがそれでも細胞内プロセスに影響を及ぼす他のRNAを意味する。用語「相補体」および「逆相補体」は、mRNA転写物に関して本明細書では互換的に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを定義することが意図されている。
用語「コントロール細胞」および「好適なコントロール細胞」は、本明細書では互換的に使用され、特定の修飾(例えば、ポリヌクレオチドの過剰発現、ポリヌクレオチドのダウンレギュレーション)が加えられた細胞(すなわち、「実験細胞」)をことができる。コントロール細胞は、実験細胞の特定の修飾を有していない、または発現しない任意の細胞であってよい。したがって、コントロール細胞は、非形質転換野生型細胞であってよい、または遺伝的に形質転換される可能性はあるが遺伝的形質転換を発現することはない。例えば、コントロール細胞は、実験細胞の直接の親であってよく、その直接の親細胞は、実験細胞内に存在する特定の修飾を有していない。または、コントロール細胞は、一世代または複数世代によって除去される実験細胞の親であってよい。さらになお、コントロール細胞は、実験細胞の同胞であってよく、この同胞は、実験細胞内に存在する特定の修飾を含まない。
用語「機能的に結合した」は、一方の機能が他方によって調節されるような単一核酸断片上での核酸配列の会合を意味する。例えば、プロモーターは、そのコーディング配列の発現を調節することができる場合には、コーディング配列と機能的に結合している(すなわち、コーディング配列はプロモーターの転写制御下にある)。コーディング配列は、センスもしくはアンチセンス方向で調節配列に機能的に結合させることができる。また別の例では、相補性RNA領域は、直接的もしくは間接的のいずれかで、5’を標的mRNAに、もしくは3’を標的mRNAに、または標的mRNA内で機能的に結合させることができる、または第1相補性領域は5’であり、その相補体は3’から標的mRNAまでである。
本明細書で使用する標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当技術分野において周知であり、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)により詳細に記載されている。形質転換法は、当業者であれば周知であり、下記で説明する。
「PCR」もしくは「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特定のDNAセグメントを合成するための技術であり、一連の反復的な変性、アニーリングおよび伸長サイクルからなる。典型的には、二本鎖DNAは熱変成され、標的セグメントの3’境界に対して相補的である2本のプライマーは低温でDNAにアニーリングされ、その後に中間温度で伸長させられる。1セットのこれらの3つの連続工程は、「サイクル」と呼ばれる。
用語「組換え」は、例えば、化学合成によって、または遺伝子工学技術による核酸の単離セグメントの操作によって、2つのさもなければ分離している配列セグメントの人工的組合せを意味する。
用語「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、通常は二本鎖DNAの形態にある染色体外要素を意味する。そのような要素は、その中で多数のヌクレオチド配列が、細胞内へ関心対象のポリヌクレオチドを導入できる固有構造に結合もしくは再結合されている任意の起源に由来する一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNAの線状もしくは環状の形態にある自律的複製配列、ゲノム組込み配列、ファージもしくはヌクレオチド配列であってよい。「形質転換カセット」は、遺伝子を含有する、および遺伝子に加えて特定宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特定ベクターを意味する。「発現カセット」は、遺伝子を含有する、および遺伝子に加えて宿主内でのその遺伝子の発現を可能にする要素を有する特定ベクターを意味する。
本明細書で使用する用語「形質転換」は、核酸分子の宿主生物内への移動を意味する。核酸分子は、自律的に複製するプラスミドであってよい、または生成宿主のゲノム内に組み込まれてよい。用語「組換えDNA分子」、「組換え構築物」、「発現構築物」、「構築物」、「構築物」および「組換えDNA構築物」は、本明細書では互換的に使用される。組換え構築物は、核酸断片、例えば自然には全部が一緒に見いだされることのない調節配列およびコーディング配列の人工的組合せを含む。例えば、構築物は、異なる起源に由来する調節配列およびコーディング配列、または同一起源に由来するが、自然に見いだされるのとは異なる方法で配列された調節配列およびコーディング配列を含む可能性がある。そのような構築物は、単独で使用されてよい、またはベクターと結び付けて使用されてよい。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者であれば周知であるように、宿主細胞を形質転換させるために使用される方法に左右される。例えば、プラスミドベクターを使用できる。当業者であれば、宿主細胞を上首尾で形質転換する、選択する、および繁殖させるためにベクター上に存在しなければならない遺伝要素について熟知している。当業者であればさらに、様々な独立形質転換事象が様々なレベルおよびパターンの発現を生じさせる可能性があること(Jones et al.,(1985)EMBO J4:2411-2418;DeAlmedia et al.,(1989)Mol Gen Genetics 218:78-86)、およびそこで複数の事象は、典型的には所望の発現レベルおよびパターンを提示するラインを入手するためにスクリーニングされることも認識するであろう。そのようなスクリーニングは、標準分子生物学、生物化学アッセイならびにDNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、PCR、リアルタイム定量的PCR(qPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、タンパク質発現の免疫ブロッティング分析、酵素もしくは活性アッセイおよび/または表現型分析を含む他のアッセイによって遂行することができる。
本明細書において使用する用語「発現」は、前駆体もしくは成熟形のいずれかでの機能的最終産物(例えば、mRNA、ガイドRNAもしくはタンパク質)の生成を意味する。
用語「提供する工程」には、核酸(例えば、発現構築物)もしくはペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を細胞に提供する工程を含む。「提供する工程」には、核酸もしくはポリペプチドの真核細胞もしくは原核細胞内への組込みであって、核酸を細胞のゲノム内に組み込むことができる組込みについての言及および核酸もしくはタンパク質の細胞への一過性提供についての言及が含まれる。「提供する工程」には、安定性もしくは一過性形質転換法、トランスフェクション、形質導入、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、ウイルス法、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性形質転換、弾道粒子加速ならびに有性交配についての言及が含まれる。したがって、核酸断片(例えば、組換えDNA構築物/発現構築物、ガイドRNA、ガイドDNA、鋳型DNA、ドナーDNA)を細胞内に導入する状況における「提供する工程」には、「トランスフェクション」もしくは「形質転換」もしくは「形質導入」が含まれ、さらに核酸断片の真核細胞もしくは原核細胞内への組込みについての言及が含まれるが、ここで核酸断片は細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドもしくはミトコンドリアDNA)内に組み込む、自律複製内に転換する、または一過性発現する(例えば、トランスフェクトされたmRNA)ことができる。
安定性形質転換法、一過性形質転換法、ウイルス媒介性方法、有性交配および有性育種法を含む、組成物(例えば、ヌクレオチド配列、ペプチドもしくはポリペプチド)を生物に接触させる、提供する、および/または導入するための多数の方法が公知である。安定性形質転換は、導入されたポリヌクレオチドが生物のゲノム内に組み込まれ、それらの子孫によって遺伝で受け継がれる可能性があることを表す。一過性形質転換は、導入された組成物が一時的にのみ発現する、または生物内に存在することを表す。
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞もしくは生物に接触させる、提供する、導入するためのプロトコールは公知であり、マイクロインジェクション(Crossway et al.,(1986)Biotechniques 4:320-34および米国特許第6,300,543号明細書)、分裂組織形質転換(米国特許第5,736,369号明細書)、エレクトロポレーション(Riggs et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602-6)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性形質転換(米国特許第5,563,055号明細書および同第5,981,840号明細書)、直接遺伝子導入(Paszkowski et al.,(1984)EMBO J 3:2717-22)および弾道粒子加速(米国特許第4,945,050号明細書;同第5,879,918号明細書;同第5,886,244号明細書;同第5,932,782号明細書;Tomes et al.,(1995)“Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment”,Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods,ed.Gamborg & Phillips(Springer-Verlag,Berlin);McCabe et al.,(1988)Biotechnology 6:923-6;Weissinger et al.,(1988)Ann Rev Genet 22:421-77;Sanford et al.,(1987)Particulate Science and Technology 5:27-37(タマネギ);Christou et al.,(1988)Plant Physiol 87:671-4(ダイズ);Finer and McMullen,(1991)In Vitro Cell Dev Biol 27P:175-82(ダイズ);Singh et al.,(1998)Theor Appl Genet 96:319-24(ダイズ);Datta et al.,(1990)Biotechnology 8:736-40(コメ);Klein et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305-9(トウモロコシ);Klein et al.,(1988)Biotechnology 6:559-63(トウモロコシ);米国特許第5,240,855号明細書;同第5,322,783号明細書および同第5,324,646号明細書;Klein et al.,(1988)Plant Physiol 91:440-4(トウモロコシ);Fromm et al.,(1990)Biotechnology 8:833-9(トウモロコシ);Hooykaas-Van Slogteren et al.,(1984)Nature 311:763-4;米国特許第5,736,369号明細書(穀類);Bytebier et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345-9(ユリ科);De Wet et al.,(1985),The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,ed.Chapman et al.,(Longman,New York),pp.197-209(花粉);Kaeppler et al.,(1990)Plant Cell Rep 9:415-8)およびKaeppler et al.,(1992)Theor Appl Genet 84:560-6(ウィスカー媒介性形質転換);D’Halluin et al.,(1992)Plant Cell 4:1495-505(エレクトロポレーション);Li et al.,(1993)Plant Cell Rep 12:250-5;Christou and Ford(1995)Annals Botany 75:407-13(コメ)およびOsjoda et al.,(1996)Nat Biotechnol 14:745-50(アグロバクテリウム・ツメファキエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介してトウモロコシ)、化学的形質転換(酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186-187(1991))が含まれる。1つの例として、米国特許第4,880,741号明細書および同第5,071,764号明細書ならびにChen et al.(1997,Appl.Microbiol.Biotechnol.48:232-235)は、DNAの線状化断片に基づくY.リポリティカ(Y.lipolytica)についての組込み技術を記載している。
または、ポリヌクレオチドは、細胞もしくは生物をウイルスもしくはウイルス核酸と接触させることにより細胞もしくは生物内に導入することができる。一般に、そのような方法は、ウイルスDNAもしくはRNA分子内にポリヌクレオチドを組み込む工程を包含している。一部の例では、関心対象のポリペプチドは、所望の組換えタンパク質を生成するためにin vivoもしくはin vitroでのタンパク質分解によって後にプロセシングされる、ウイルスポリタンパク質の一部として最初に合成することができる。ポリヌクレオチドを植物中に導入してその中でコードされた、ウイルスDNAもしくはRNA分子を包含するタンパク質を発現させるための方法は公知であり、例えば、米国特許第5,889,191号明細書、同第5,889,190号明細書、同第5,866,785号明細書、同第5,589,367号明細書および同第5,316,931号明細書を参照されたい。一過性形質転換法には、例えば二本鎖切断誘導物質などのポリペプチドの生物内への直接的導入、例えばDNAおよび/またはRNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの導入ならびに例えば二本鎖切断誘導物質をコードするmRNAなどのRNA転写物の生物内への導入が含まれるがそれらに限定されない。そのような方法には、例えば、マイクロインジェクションもしくは粒子衝突法が含まれる。例えば、Crossway et al.,(1986)Mol Gen Genet 202:179-85;Nomura et al.,(1986)Plant Sci 44:53-8;Hepler et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2176-80;およびHush et al.,(1994)J Cell Sci 107:775-84を参照されたい。
核酸およびタンパク質は、例えば細胞浸透性ペプチド、ナノキャリアなどの誘導型Cas系(タンパク質および/または核酸)いずれか1つもしくは全成分の取込みを促進するための分子を使用する方法などであるがそれらに限定されない当技術分野において公知の任意の方法によって細胞に提供することができる。例えばさらに参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20110035836号明細書、Nanocarier based plant transfection and transductionおよび欧州特許出願公開第2821486A1号明細書、Method of introducing nucleic acid into plant cellsを参照されたい。
ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体を細胞に提供する工程には、前記複合体の個別成分を細胞に直接的もしくは組換え構築物によってのいずれかで提供する工程が含まれ、同様に複合体全体を細胞に提供する工程が含まれる。
「成熟」タンパク質は、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド(すなわち、一次翻訳産物中に存在する任意のプレペプチドもしくはプロペプチドがそれから除去されているポリペプチド)を意味する。「前駆体」タンパク質は、mRNAの翻訳の一次産物を意味する(すなわち、プレペプチドおよびプロペプチドが依然として存在する)。プレペプチドおよびプロペプチドは、細胞内局在化シグナルであってよいがこれには限定されない。
「安定性形質転換」は、結果として遺伝的に安定性の遺伝形質を生じさせる、核およびオルガネラゲノムの両方を含む宿主生物のゲノム内への核酸断片の移動を意味する。対照的に、「一過性形質転換」は、結果として組込みもしくは安定性遺伝形質を伴わない遺伝子発現を生じさせる、宿主生物の核もしくは他のDNA含有オルガネラ内への核酸断片の移動を意味する。形質転換核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」生物と呼ばれる。
用語「植物」は、植物全体、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、種子および同一物の子孫を意味する。植物細胞には、制限なく、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、新芽、配偶体、胞子体、花粉および小胞子由来の細胞が含まれる。植物部位には、根、茎、新芽、葉、花粉、種子、腫瘍組織、および様々な形態の細胞および培養物(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚およびカルス組織)を含むがそれらに限定されない分化組織および未分化組織が含まれる。植物組織は、植物中または植物の器官、組織もしくは細胞培養物中に含まれてよい。用語「植物器官」は、植物組織、または植物の形態的および機能的に独立した部分を構成する一群の組織を意味する。用語「ゲノム」は、生物の各細胞またはウイルスもしくはオルガネラ中に存在する遺伝物質(遺伝子および非コーディング配列)の構成要素全体;および/または1つの親からの(ハプロイド)単位として受け継いだ完全セットの染色体を意味する。「子孫」は、植物のあらゆるその後の世代を含む。
トランスジェニック植物には、例えば、形質転換工程によって導入された異種ポリヌクレオチドをゲノム内に含む植物が含まれる。異種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが後に続く世代に受け継がれるように、ゲノム内に安定性で組み込むことができる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノム内に単独で、または組換えDNA構築体の一部として組み込まれる可能性がある。トランスジェニック植物はさらに、そのゲノム内に2つ以上の異種ポリヌクレオチドを含むこともできる。各異種ポリヌクレオチドは、トランスジェニック植物に異なる形質を付与することができる。異種ポリヌクレオチドとしては、例えば、外来種を起源とする配列を含むことができ、または異種ポリヌクレオチドが同種由来である場合は、その天然形態から実質的に修飾される可能性がある。トランスジェニックは、任意の細胞、細胞系、カルス、組織、植物部位もしくは植物を含むことができ、それらの遺伝子型はそのように改変されたそれらのトランスジェニックならびに初期のトランスジェニック由来の有性交配(sexual cross)または無性増殖によって作成されたものを含む異種核酸の存在によって改変させられている。従来型植物育種法、異種ポリヌクレオチドの挿入を生じさせない本明細書に記載のゲノム編集手順または例えば無作為他家受精、非組換えウイルス感染、非組換え細菌形質転換、非組換え転位もしくは自然突然変異などの自然に発生する事象による植物ゲノム(染色体もしくは染色体外)の改変をトランスジェニックと見なすことは意図されていない。
稔性植物は、生存可能な雄性配偶子および雌性配偶子を生成する植物であり、自家稔性である。そのような自家稔性植物は、任意の他の植物からの寄与を伴わずに配偶子およびその中に含有される遺伝物質の子孫植物を生成することができる。雄性不稔植物には、生育可能もしくはさもなければ受精可能である雄性配偶子を生成しない植物が含まれる。雌性不稔植物には、生育可能もしくはさもなければ受精可能な雌性配偶子を生成しない植物が含まれる。雄性不稔植物および雌性不稔植物は、それぞれ雌性稔性および雄性捻性であってよいと認識されている。さらに、雄性稔性(雌性捻性以外)植物は、雌性稔性植物と交配すると成長可能な子孫を生成することができ、雌性稔性(雄性捻性以外)植物は、雄性稔性植物と交配すると成長可能な子孫を生成することができると認識されている。
例えばサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの従来型酵母は、典型的には、ルーチン的に70%を超える効率を備える短鎖隣接相同性アーム(30~50bp)を備えるドナーDNAの特異的組込みを示すが、他方例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピチア・スティピティス(Pichia stipitis)およびクルベイロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)などの非従来型酵母は、通常は1%未満の効率で類似の構造のドナーDNAを備える特異的組込みを示す(Chen et al.,PLoS ONE 8:e57952)。したがって、HRプロセスの優先度は、例えば、酵母を好適なドナーDNAで形質転換させ、ドナーDNAによってターゲティングされると予測されるゲノム部位と特異的に組み換えられる程度を決定することによって、測定することができる。NHEJに対する優先度(もしくはHRに対する低い優先度)は、例えば、そのようなアッセイが酵母ゲノム内へのドナーDNAの高度の無作為組込みを生成すれば明らかになるであろう。酵母内のDNAの特異的(HR媒介性)および/または無作為(NHEJ媒介性)組込みの比率を決定するためのアッセイは、当技術分野において公知である(例えば、Ferreira and Cooper,Genes Dev.18:2249-2254;Corrigan et al.,PLoS ONE 8:e69628;Weaver et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:6354-6358;Keeney and Boeke,Genetics 136:849-856を参照されたい)。
それらの低レベルのHR活性を前提にすると、本明細書の非従来型酵母は、(i)30~50bpの隣接相同性アームを有する好適な鋳型もしくはドナーDNAによる、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%もしくは8%未満の特異的なターゲティング率を示す可能性がある、および/または(ii)前述のドナーDNAの、例えば、約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%もしくは75%超の無作為組込み率を示す可能性がある。これらの好適な鋳型もしくはドナーDNAの(i)特異的ターゲティング率および/または(ii)無作為組込み率は、本明細書に開示した誘導型Cas系が提供される前から存在するために、非従来型酵母であると特徴付けることができる。
本明細書の非従来型酵母の非限定的例には、下記の:ヤロウィア(Yarrowia)属、ピチア(Pichia)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、アルクスラ(Arxula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、カンジダ(Candida)属、ウスティラゴ(Ustilago)属、トルロプシス(Torulopsis)属、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、トリゴノプシス(Trigonopsis)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ファフィア(Phaffia)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属およびパチソレン(Pachysolen)属の酵母が含まれる。ヤロウイア(Yarrowia)属種の好適な例は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)である。ピキア(Pichia)属種の好適な例としては、P.パストリス(P.pastoris)、P.メタノリカ(P.methanolica)、P.スティピティス(P.stipitis)、P.アノマーラ(P.anomala)およびP.アングスタ(P.angusta)が挙げられる。シュワニオミセス(Schwanniomyces)属種の好適な例には、S.カステリイ(S.castellii)、S.アルビウス(S.alluvius)、S.ホミニス(S.hominis)、S.オキシデンタリス(S.occidentalis)、S.カプリオッティ(S.capriottii)、S.エチェルシィ(S.etchellsii)、S.ポリモルファス(S.polymorphus)、S.シュードポリモルファス(S.pseudopolymorphus)、S.バンリジアエ(S.vanrijiae)およびS.ヤマダエ(S.yamadae)が挙げられる。クルイベロミセス(Kluyveromyces)属種の好適な例としては、K.ラクティス(K.lactis)、K.マルキシアヌス(K.marxianus)、K.フラギリス(K.fragilis)、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、K.ファゼオロスポラス(K.phaseolosporus)、K.バヌデニイ(K.vanudenii)、K.ワルティ(K.waltii)、K.アフリカヌス(K.africanus)およびK.ポリスポラス(K.polysporus)が挙げられる。アルクスラ(Arxula)属種の好適な例としては、A.アデニニボランス(A.adeninivorans)およびA.テレストレ(A.terrestre)が挙げられる。トリコスポロン(Trichosporon)属種の好適な例としては、T.クタネウム(T.cutaneum)、T.カピタタム(T.capitatum)、T.インキン(T.inkin)およびT.ビーメリ(T.beemeri)が挙げられる。カンジダ(Candida)属種の好適な例としては、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アスカラフィダルム(C.ascalaphidarum)、C.アンフィクシアエ(C.amphixiae)、C.アンタークティカ(C.antarctica)、C.アルゲンティア(C.argentea)、C.アトランティカ(C.atlantica)、C.アトモスファェリカ(C.atmosphaerica)、C.ブラッテ(C.blattae)、C.ブロメリアセアルム(C.bromeliacearum)、C.カルポフィラ(C.carpophila)、C.カルバジャリス(C.carvajalis)、C.セラムビシダルム(C.cerambycidarum)、C.チャウリオデス(C.chauliodes)、C.コリダリ(C.corydali)、C.ドッセイ(C.dosseyi)、C.デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.エルガテンシス(C.ergatensis)、C.フルクツス(C.fructus)、C.グラブラータ(C.glabrata)、C.フェルメンタティ(C.fermentati)、C.ギリエルモンディ(C.guilliermondii)、C.ハエムロニィ(C.haemulonii)、C.インセクタメンス(C.insectamens)、C.インセクトルム(C.insectorum)、C.インテルメディア(C.intermedia)、C.イェフレシィ(C.jeffresii)、C.ケフィア(C.kefyr)、C.ケロセニエ(C.keroseneae)、C.クルセイ(C.krusei)、C.ルシタニエ(C.lusitaniae)、C.リキソソフィラ(C.lyxosophila)、C.マルトーサ(C.maltosa)、C.マリーナ(C.marina)、C.メンブラニファシエンス(C.membranifaciens)、C.ミレリ(C.milleri)、C.モギイ(C.mogii)、C.オレオフィラ(C.oleophila)、C.オレゴネンシス(C.oregonensis)、C.パラプシローシス(C.parapsilosis)、C.クエルシトルーサ(C.quercitrusa)、C.ルゴサ(C.rugosa)、C.サケ(C.sake)、C.シャハテア(C.shehatea)、C.テムノキラエ(C.temnochilae)、C.テヌイス(C.tenuis)、C.テアエ(C.theae)、C.トレランス(C.tolerans)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ツチヤエ(C.tsuchiyae)、C.シノラボランティウム(C.sinolaborantium)、C.ソーヤ(C.sojae)、C.サブハシィ(C.subhashii)、C.ビスワナチイ(C.viswanathii)、C.ユティリス(C.utilis)、C.ウバツベンシス(C.ubatubensis)およびC.ゼンプリニナ(C.zemplinina)が挙げられる。ウスティラゴ(Ustilago)属種の好適な例としては、U.アベナエ(U.avenae)、U.エスクレンタ(U.esculenta)、U.ホルデイ(U.hordei)、U.マイジス(U.maydis)、U.ヌーダ(U.nuda)およびU.トリチシ(U.tritici)が挙げられる。トルロプシス(Torulopsis)属種の好適な例としては、T.ゲオチャレス(T.geochares)、T.アジマ(T.azyma)、T.グラブラータ(T.glabrata)およびT.カンジダ(T.candida)が挙げられる。
チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属種の好適な例としては、Z.バイリイ(Z.bailii)、Z.ビスポラス(Z.bisporus)、Z.シドリ(Z.cidri)、Z.フェルメンタティ(Z.fermentati)、Z.フロレンティヌス(Z.florentinus)、Z.コンブチャエンシス(Z.kombuchaensis)、Z.レンツス(Z.lentus)、Z.メリス(Z.mellis)、Z.ミクロエリプソイデス(Z.microellipsoides)、Z.ムラキイ(Z.mrakii)、Z.シュードロウキシイ(Z.pseudorouxii)、およびZ.ロウキシィ(Z.rouxii)が挙げられる。トリゴノプシス(Trigonopsis)属種の好適な例としては、T.バリアビリス(T.variabilis)が挙げられる。クリプトコッカス(Cryptococcus)属種の好適な例としては、C.ローレンティ(C.laurentii)、C.アルビダス(C.albidus)、C.ネオフォルマンス(C.neoformans)、C.ガッティ(C.gattii)、C.ユニグトゥラツス(C.uniguttulatus)、C.アデリエンシス(C.adeliensis)、C.アエリウス(C.aerius)、C.アルビドシミリス(C.albidosimilis)、C.アンタルクティカス(C.antarcticus)、C.アクアティカス(C.aquaticus)、C.アーテル(C.ater)、C.ブータネンシス(C.bhutanensis)、C.コンソルティオニス(C.consortionis)、C.カルバツス(C.curvatus)、C.フェノリカス(C.phenolicus)、C.スキンネリ(C.skinneri)、C.テレウス(C.terreus)およびC.ビシュニアッシ(C.vishniacci)が挙げられる。ロドトルラ(Rhodotorula)属種の好適な例としては、R.アケニオルム(R.acheniorum)、R.トゥラ(R.tula)、R.アクタ(R.acuta)、R.アメリカーナ(R.americana)、R.アラウカリアエ(R.araucariae)、R.アークティカ(R.arctica)、R.アルメニアカ(R.armeniaca)、R.アウランティアカ(R.aurantiaca)、R.アウリクラリエ(R.auriculariae)、R.バカルム(R.bacarum)、R.ベンチカ(R.benthica)、R.ビオウルゲイ(R.biourgei)、R.ボゴリエンシス(R.bogoriensis)、R.ブロンキアリス(R.bronchialis)、R.ブフォニィ(R.buffonii)、R.カリプトゲナエ(R.calyptogenae)、R.チュングナメンシス(R.chungnamensis)、R.クラディエンシス(R.cladiensis)、R.コラリナ(R.corallina)、R.クレゾリカ(R.cresolica)、R.クロセア(R.crocea)、R.シクロクラスティカ(R.cycloclastica)、R.ダイレネンシス(R.dairenensis)、R.ディフルエンス(R.diffluens)、R.エバーグラディエンシス(R.evergladiensis)、R.フェルリカ(R.ferulica)、R.フォリオルム(R.foliorum)、R.フラガリア(R.fragaria)、R.フジサネンシス(R.fujisanensis)、R.フトロネンシス(R.futronensis)、R.ゲラティノーサ(R.gelatinosa)、R.グラシアリス(R.glacialis)、R.グルティニス(R.glutinis)、R.グラシリス(R.gracilis)、R.グラミニス(R.graminis)、R.グリンベルグシィ(R.grinbergsii)、R.ヒマライエンシス(R.himalayensis)、R.ヒヌレア(R.hinnulea)、R.ヒストリティカ(R.histolytica)、R.ヒロフィラ(R.hylophila)、R.インカルナタ(R.incarnata)、R.インゲニオサ(R.ingeniosa)、R.ジャバニカ(R.javanica)、R.コイシカウェンシス(R.koishikawensis)、R.ラクトーサ(R.lactosa)、R.ラメリブラキエ(R.lamellibrachiae)、R.ラリンギス(R.laryngis)、R.リグノフィラ(R.lignophila)、R.リニ(R.lini)、R.ロンギッシマ(R.longissima)、R.ルドウィギィ(R.ludwigii)、R.リシノフィラ(R.lysinophila)、R.マリーナ(R.marina)、R.マルチニエ-フラガンティス(R.martyniae-fragantis)、R.マトリテンシス(R.matritensis)、R.メリ(R.meli)、R.ミヌータ(R.minuta)、R.ムシラギノーサ(R.mucilaginosa)、R.ニテンス(R.nitens)、R.ノトファギ(R.nothofagi)、R.オリザエ(R.oryzae)、R.パシフィカ(R.pacifica)、R.パリダ(R.pallida)、R.ペネアウス(R.peneaus)、R.フィリラ(R.philyla)、R.フィロプラナ(R.phylloplana)、R.ピラティ(R.pilatii)、R.ピリマナエ(R.pilimanae)、R.ピニコラ(R.pinicola)、R.ピリカータ(R.plicata)、R.ポリモルファ(R.polymorpha)、R.サイクロフェノリカ(R.psychrophenolica)、R.サイクロフィラ(R.psychrophila)、R.パストゥラ(R.pustula)、R.レティノフィラ(R.retinophila)、R.ロザケア(R.rosacea)、R.ロスラータ(R.rosulata)、R.ルベファシエンス(R.rubefaciens)、R.ルベラ(R.rubella)、R.ルベスセンス(R.rubescens)、R.ルブラ(R.rubra)、R.ルブロルゴサ(R.rubrorugosa)、R.ルフラ(R.rufula)、R.ルティラ(R.rutila)、R.サングイネア(R.sanguinea)、R.サニエイ(R.sanniei)、R.サルトリィ(R.sartoryi)、R.シルベストリス(R.silvestris)、R.シンプレックス(R.simplex)、R.シネンシス(R.sinensis)、R.スルーフィアエ(R.slooffiae)、R.ソンクキィ(R.sonckii)、R.ストラミネア(R.straminea)、R.スベリコラ(R.subericola)、R.スガニィ(R.suganii)、R.タイワネンシス(R.taiwanensis)、R.タイワニアナ(R.taiwaniana)、R.テルペノイダリス(R.terpenoidalis)、R.テッレア(R.terrea)、R.テキセンシス(R.texensis)、R.トキョエンシス(R.tokyoensis)、R.ウルザマエ(R.ulzamae)、R.バニリカ(R.vanillica)、R.ブイレミニィ(R.vuilleminii)、R.ヤロウィ(R.yarrowii)、R.ユナネンシス(R.yunnanensis)およびR.ゾルティ(R.zsoltii)が挙げられる。ファフィア(Phaffia)属種の好適な例としては、P.ロドジマ(P.rhodozyma)が挙げられる。
スポロボロミセス(Sporobolomyces)属種の好適な例としては、S.アルボルベスセンス(S.alborubescens)、S.バナエンシス(S.bannaensis)、S.ベイジンゲンシス(S.beijingensis)、S.ビスコフィエ(S.bischofiae)、S.クラバツス(S.clavatus)、S.コプロスマエ(S.coprosmae)、S.コプロスミコーラ(S.coprosmicola)、S.コラリヌス(S.corallinus)、S.ディメナエ(S.dimmenae)、S.ドラコフィリィ(S.dracophylli)、S.エロンガツス(S.elongatus)、S.グラシリス(S.gracilis)、S.イノシトフィルス(S.inositophilus)、S.ジョンソニィ(S.johnsonii)、S.コアラエ(S.koalae)、S.マグニスポラス(S.magnisporus)、S.ノボゼアランディカス(S.novozealandicus)、S.オドラス(S.odorus)、S.パタゴニカス(S.patagonicus)、S.プロダクツス(S.productus)、S.ロセウス(S.roseus)、S.サシコーラ(S.sasicola)、S.シバタヌス(S.shibatanus)、S.シンギュラリス(S.singularis)、S.スブルンネウス(S.subbrunneus)、S.シンメトリカス(S.symmetricus)、S.シジギィ(S.syzygii)、S.タウポエンシス(S.taupoensis)、S.ツガエ(S.tsugae)、S.キサンツス(S.xanthus)、およびS.ユナネンシス(S.yunnanensis)が挙げられる。パチソレン(Pachysolen)属種の好適な例としては、P.タノフィルス(P.tannophilus)が挙げられる。
好適なヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(Y.リポリティカ(Y.lipolytica))の例としては、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、Manassas,VA)から入手できる次の単離菌:菌株名称ATCC#20362、#8862、#8661、#8662、#9773、#15586、#16617、#16618、#18942、#18943、#18944、#18945、#20114、#20177、#20182、#20225、#20226、#20228、#20327、#20255、#20287、#20297、#20315、#20320、#20324、#20336、#20341、#20346、#20348、#20363、#20364、#20372、#20373、#20383、#20390、#20400、#20460、#20461、#20462、#20496、#20510、#20628、#20688、#20774、#20775、#20776、#20777、#20778、#20779、#20780、#20781、#20794、#20795、#20875、#20241、#20422、#20423、#32338、#32339、#32340、#32341、#34342、#32343、#32935、#34017、#34018、#34088、#34922、#34922、#38295、#42281、#44601、#46025、#46026、#46027、#46028、#46067、#46068、#46069、#46070、#46330、#46482、#46483、#46484、#46436、#60594、#62385、#64042、#74234、#76598、#76861、#76862、#76982、#90716、#90811、#90812、#90813、#90814、#90903、#90904、#90905、#96028、#201241、#201242、#201243、#201244、#201245、#201246、#201247、#201249および/または#201847が挙げられる。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ならびに本明細書の任意の他の非従来型酵母は、油脂性(例えば、油としての乾燥細胞重量の少なくとも25%を生成する)および/または1種以上のポリ不飽和脂肪酸(例えば、ω-6もしくはω-3)であってよい。そのような油脂性は、その野生型形に比較して増加した量の脂質を生成するように遺伝子組み換えされている酵母の結果である可能性がある。油脂性Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0093543号明細書および同第2010/0317072号明細書、同第2012/0052537号明細書および同第2014/0186906号明細書に開示されている。
非従来型酵母について本明細書で開示した実施形態は、さらに例えば真菌などの他の微生物にも提供することができる。所定の実施形態における従来型真菌は、HRによって媒介される修復プロセスよりもNHEJ DNA修復プロセスを好む真菌である可能性がある。本明細書の真菌は、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、ツボカビ類(Chytridiomycetes)もしくは子嚢菌類(Ascomycetes)の真菌であってよい。本明細書の糸状菌の例としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、チエラビア(Thielavia)属、ノイロスポラ(Neurospora)属(例えば、N.クラッサ(N.crassa)、N.シトフィラ(N.sitophila))、クリオネクトリア(Cryphonectria)属(例えば、C.パラシチカ(C.parasitica))、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属(例えば、A.プルランス(A.pullulans))、フィリバシジウム(Filibasidium)属、ピロミケス(Piromyces)属、クリプトコックス(Cryplococcus)属、アクレモモニウム(Acremonium)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、スキタリジウム(Scytalidium)属、スキゾフィルム(Schizophyllum)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属(例えば、P.ビライアエ(P.bilaiae)、P.カメムベルチ(P.camemberti)、P.カンディヅム(P.candidum)、P.クリソゲヌム(P.chrysogenum)、P.エクスパンスム(P.expansum)、P.フニクロスム(P.funiculosum)、P.グラウクム(P.glaucum)、P.マルネフェイ(P.marneffei)、P.ロケフォルチ(P.roqueforti)、P.ベルコスム(P.verrucosum)、P.ヴリジカタム(P.viridicatum))、ギベレラ(Gibberella)属(例えば、G.アクミナタ(G.acuminata)、G.アベナケア(G.avenacea)、G.バカタ(G.baccata)、G.キルキナタ(G.circinata)、G.キアノゲナ(G.cyanogena)、G.フジクロイ(G.fujikuroi)、G.イントリカンス(G.intricans)、G.プリカリス(G.pulicaris)、G.スティボイデス(G.stilboides)、G.トリキンクタ(G.tricincta)、G.ゼアエ(G.zeae))、ミケリオフトラ(Myceliophthora)属、ムコール(Mucor)属(例えば、M.ロウキシイ(M.rouxii)、M.キルキネロイデス(M.circinelloides))、アスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、A.ニガー(A.niger)、A.オリザエ(A.oryzae)、A.ニデュランス(A.nidulans)、A.フラヴス(A.flavus)、A.レンツルス(A.lentulus)、A.テレウス(A.terreus)、A.クラバツス(A.clavatus)、A.フミガツス(A.fumigatus))、フサリウム(Fusarium)属(例えば、F.グラミネアルム(F.graminearum)、F.オキシスポルム(F.oxysporum)、F.ブディゲヌム(F.bubigenum)、F.ソラニ(F.solani)、F.オキシスポルム(F.oxysporum)、F.ベルチキルリオイデス(F.verticillioides)、F.プロリフェラタム(F.proliferatum)、F.ベネナタム(F.venenatum))およびフミコーラ(Humicola)属、ならびにそれらのアナモルフおよびテレモルフが挙げられる。本明細書の真菌の属および種は、所望であれば、Barnett and Hunter(Illustrated Genera of Imperfect Fungi,3rd Edition,Burgess Publishing Company,1972)に開示された形態学によって定義することができる。真菌は、任意選択的に、例えば動物(例えば、ヒト)の害虫/病原体などの害虫/病原体であると特徴付けることができる。
本明細書の所定の態様におけるトリコデルマ(Trichoderma)属種としては、T.アグレッシバム(T.aggressivum)、T.アマゾニクム(T.amazonicum)、T.アスペレルム(T.asperellum)、T.アトロビリデ(T.atroviride)、T.アウレオビリデ(T.aureoviride)、T.アウストロコニンギィ(T.austrokoningii)、T.ブレビコンパクトゥム(T.brevicompactum)、T.カンディドゥム(T.candidum)、T.カリッベウム(T.caribbaeum)、T.カトプトロン(T.catoptron)、T.クレメウム(T.cremeum)、T.セラミクム(T.ceramicum)、T.セリヌム(T.cerinum)、T.クロロスポルム(T.chlorosporum)、T.クロロスペルマム(T.chromospermum)、T.シナモメウム(T.cinnamomeum)、T.シトリノビリデ(T.citrinoviride)、T.クラッスム(T.crassum)、T.クレメウム(T.cremeum)、T.ジングレエアエ(T.dingleyeae)、T.ドロテアエ(T.dorotheae)、T.エフスム(T.effusum)、T.エリナセウム(T.erinaceum)、T.エストニクム(T.estonicum)、T.フェルティル(T.fertile)、T.ゲラティノサス(T.gelatinosus)、T.グハネンセ(T.ghanense)、T.ハマタム(T.hamatum)、T.ハルジアヌム(T.harzianum)、T.ヘリクム(T.helicum)、T.イントリカタム(T.intricatum)、T.コニラングブラ(T.konilangbra)、T.コニンギィ(T.koningii)、T.コニンギオプシス(T.koningiopsis)、T.ロンギブラキアタム(T.longibrachiatum)、T.ロンギピレ(T.longipile)、T.ミヌティスポルム(T.minutisporum)、T.オブロギスポルム(T.oblongisporum)、T.オバリスポルム(T.ovalisporum)、T.ペテルセニィ(T.petersenii)、T.フィロスタヒディス(T.phyllostahydis)、T.ピルリフェルム(T.piluliferum)、T.プレウロティコラ(T.pleuroticola)、T.プレウロトゥム(T.pleurotum)、T.ポリスポルム(T.polysporum)、T.プセウドコニンギィ(T.pseudokoningii)、T.プベスセンス(T.pubescens)、T.リーゼイ(T.reesei)、T.ロゲルソニィ(T.rogersonii)、T.ロシクム(T.rossicum)、T.サツルニスポルム(T.saturnisporum)、T.シネンシス(T.sinensis)、T.シヌオスム(T.sinuosum)、T.スピラレ(T.spirale)、T.ストラミネウム(T.stramineum)、T.ストリゴスム(T.strigosum)、T.ストロマティクム(T.stromaticum)、T.スロトゥンドゥム(T.surrotundum)、T.タイワネンセ(T.taiwanense)、T.タイランディクム(T.thailandicum)、T.テレフォリコルム(T.thelephoricolum)、T.セオブロミコラ(T.theobromicola)、T.トメントスム(T.tomentosum)、T.ベルティヌム(T.velutinum)、T.ビレンス(T.virens)、T.ビリデ(T.viride)およびT.ビリデスセンス(T.viridescens)が挙げられる。本明細書のトリコデルマ(Trichoderma)属種は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるTrichoderma: Biology and Applications(P.K.Mukherjee et al.,Eds.,CABI,Oxfordshire,UK,2013)に記載されたように培養/操作することができる。
所定の実施形態における微生物細胞は、藻類細胞である。例えば、藻類細胞は、下記の:緑色植物(Chlorophyta)(緑藻類)、紅色植物(Rhodophyta)(紅藻類)、褐色植物(Phaeophyceae)(褐藻類)、珪藻綱(Bacillariophycaeae)(珪藻類)および双鞭毛虫類(Dinoflagellata)(渦鞭毛藻(dinoflagellates))のいずれか由来の藻類細胞であってよい。藻類細胞は、他の態様において、微細藻類(例えば、植物プランクトン、微細植物もしくはプランクトン藻類)または大型藻類(ケルプ、海草)の細胞であってよい。また別の例として、本明細書の藻類細胞は、ポルフィラ(Porphyra)属(紫色の海苔)、パルマリア(Palmaria)属(例えば、P.パルマータ(P.palmata)(ダルス))、アルスロスピラ(Arthrospira)属種(例えば、A.プラテンシス(A.platensis)(スピルリナ))、クロレラ(Chlorella)属(例えば、C.プロトテコイデス(C.protothecoides))、コンドラス(Chondrus)属(例えば、C.クリスプス(C.crispus)(アイリッシュ・モス))、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、サルガスム(Sargassum)属、コチャユヨ(Cochayuyo)属、ボトリオコッカス(Botryococcus)属(例えば、B.ブラウニイ(B.braunii))、デュナリエラ(Dunaliella)属(例えば、D.テルティオレクタ(D.tertiolecta))、グラシラリア(Gracilaria)属、プロイロクリシス(Pleurochrysis)属(例えば、P.カルテラエ(P.carterae))、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)属、シクロテラ(Cyclotella)属、ハンチア(Hantzschia)属、ナノクロリス(Nannochloris)属、ナノクロロプシス(Nannochloropsis)属、ニッスチア(Nitzschia)属、ファエオダクチラム(Phaeodactylum)属(例えば、P.トリコルヌタム(P.tricornutum))、セネデスムス(Scenedesmus)属、スティコノコッカス(Stichococcus)属、テトラセルミス(Tetraselmis)属(例えば、T.スエシカ(T.suecica))、タラシオシリア(Thalassiosira)属(例えば、T.シュードナナ(T.pseudonana))、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属(例えば、C.コーニイ(C.cohnii))、ネオクロリス(Neochloris)属(例えば、N.オレオアバンダンス(N.oleoabundans))またはシオキトリウム(Schiochytrium)属の種であってよい。本明細書の藻類種は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるThompson(Algal Cell Culture.Encyclopedia of Life Support System(EOLSS),Biotechnology Vol 1、eolss.net/sample-chaptersのインターネットサイトから入手可能)に記載されたように培養および/または操作することができる。
本明細書の原生生物細胞は、例えば、繊毛虫(Ciliata)綱(例えば、テトラヒメナ(Tetrahymena)属、ゾウリムシ(Paramecium)属、コルピディウム(Colpidium)属、コルポダ(Colpoda)属、グラウコマ(Glaucoma)属、プラティオフリア(Platyophrya)属、ボルチセラ(Vorticella)属、ポトマカス(Potomacus)属、シュードコニレンブス(Pseudocohnilembus)属、ユープロテス(Euplotes)属、エンゲルマニエラ(Engelmaniella)属およびスチロニキア(Stylonichia)属)、マスチゴフォラ(Mastigophora)亜門(フラゲラーテ(flagellates))、フィトマスチゴフォラ(Phytomastigophorea)綱(例えば、ミドリムシ(Euglena)属、アスタシア(Astasia)属、ヘマトコッカス(Haematococcus)属およびクリプテコディニウム(Crypthecodinium))、鞭毛虫(Zoomastigophorea)綱、リゾポーザ(Rhizopoda)上綱、ロボセア(Lobosea)綱(例えば、アメーバ(Amoeba)属)ならびに真菌虫亜綱(Eumycetozoea)(例えば、ディクティオステリウム(Dictyostelium)属およびフィサルム(Physarum)属)から選択することができる。本明細書の所定の原生生物種は、例えば、ATCC(登録商標)Protistology Culture Guide:tips and techniques for propagating protozoa and algae(2013、American Type Culture Collection internet siteで入手可能)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたように培養および/または操作することができる。所定の実施形態では、原生生物は、任意選択的に、植物または動物(例えば、ヒト)の害虫/病原体と特徴付けることができる。
所定の実施形態における細菌細胞は、球菌、桿菌、スピロヘータ菌、スフェロプラスト菌、プロトプラスト菌などの形態の細菌細胞であってよい。細菌の他の非限定的例としては、グラム陰性およびグラム陽性である細菌が挙げられる。細菌のさらに他の非限定的例としては、サルモネラ(Salmonella)属(例えばS.チフス(S.typhi)、S.エンテリティディス(S.enteritidis))、シゲラ(Shigella)属(例えばS.ディセンテリアエ(S.dysenteriae))、エシェリキア(Escherichia)属(例えばE.コリ(E.coli))、エンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロテウス(Proteus)属、エルシニア(Yersinia)属、シトロバクター(Citrobacter)属、エドワードシエラ(Edwardsiella)属、プロビデンシア(Providencia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、ハフニア(Hafnia)属、ユーインゲラ(Ewingella)属、クルイベラ(Kluyvera)属、モルガネラ(Morganella)属、プラノコッカス(Planococcus)属、ストマトコッカス(Stomatococcus)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属(例えばS.アウレウス(S.aureus)、S.エピデルミディス(S.epidermidis))、ビブリオ(Vibrio)属(例えばV.コレラエ(V.cholerae)、エーロモナス(Aeromonas)属、プレシオモナス(Plessiomonas)属、ヘモフィルス(Haemophilus)属(例えば、H.インフルエンザエ(H.influenzae))、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属(例えば、M.ニューモニア(M.pneumonia))、ウレアプラズマ(Ureaplasma)属、リケッチア(Rickettsia)属、コクシエラ(Coxiella)属、ロカリマエア(Rochalimaea)属、エーリキア(Ehrlichia)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(例えばS.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.ニューモニアエ(S.pneumoniae))、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えばE.フェーカリス(E.faecalis))、エーロコッカス(Aerococcus)属、ゲメラ(Gemella)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属(例えばL.ラクティス(L.lactis))、ロイコノストック(Leuconostoc)属(例えばL.メセンテロイデス(L.mesenteroides))、ペディコッカス(Pedicoccus)属、バチルス(Bacillus)属(例えばB.セレウス(B.cereus)、B.サブチリス(B.subtilis)、B.チューリンギエンシス(B.thuringiensis))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(例えばC.ジフテリアエ(C.diphtheriae))、アルカノバクテリウム(Arcanobacterium)属、アクチノミセス(Actinomyces)属、ロードコッカス(Rhodococcus)属、リステリア(Listeria)属(例えばL.モノシトゲネス(L.monocytogenes))、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)属、ガルドネレラ(Gardnerella)属、ナイセリア(Neisseria)属(例えば、N.メニンギティディス(N.meningitidis)、N.ゴノルホエアエ(N.gonorrhoeae))、カンピロバクター(Campylobacter)属、アクロバクター(Arcobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属(例えば、H.ピロリ(H.pylori))、アクロモバクター(Achromobacter)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属(例えばA.ツメファシエンス(A.tumefaciens))、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、クリセモナス(Chryseomonas)属、コマモナス(Comamonas)属、エイケネラ(Eikenella)属、フラビモナス(Flavimonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、モラクセラ(Moraxella)属、オリゲラ(Oligella)属、シュードモナス(Pseudomonas)属(例えばP.アエルギノーサ(P.aeruginosa))、シェバネラ(Shewanella)属、ウィークセラ(Weeksella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、フランシエセラ(Franciesella)属、ブルセラ(Brucella)属、レジオネラ(Legionella)属、アフィピア(Afipia)属、バルトネラ(Bartonella)属、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)属、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)属、ストレプトバチルス(Streptobacillus)属、スピリルム(Spirillum)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、サルシニア(Sarcinia)属、コプロコッカス(Coprococcus)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、モビルンクス(Mobiluncus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、オイバクテリウム(Eubacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属(例えばL.ラクティス(L.lactis)、L.アシドフィルス(L.acidophilus))、ロチア(Rothia)属、クロストリジウム(Clostridium)属(例えばC.ボツリナム(C.botulinum)、C.パーフィリンゲンス(C.perfringens))、バクテロイデス(Bacteroides)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、プレボテーラ(Prevotella)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ビロフィラ(Bilophila)属、レプトリキア(Leptotrichia)属、ウォリネラ(Wolinella)属、アシダミノコッカス(Acidaminococcus)属、メガスファエラ(Megasphaera)属、ベイロネラ(Veilonella)属、ノルカルディア(Norcardia)属、アクチノマデュラ(Actinomadura)属、ノルカルディオプシス(Norcardiopsis)属、ストレプトミセス(Streptomyces)、ミクロポリスポラス(Micropolysporas)属、サーモアクチノミセス(Thermoactinomycetes)属、ミコバクテリウム(Mycobacterium)属(例えば、M.ツベルクロシス(M.tuberculosis)、M.ボビス(M.bovis)、M.レプラエ(M.leprae))、トレポネーマ(Treponema)属、ボレリア(Borrelia)属(例えば、B.ブルドルフェリ(B.burgdorferi))、レプトスピラ(Leptospira)属およびクラミジア(Chlamydiae)属の細菌が挙げられる。細菌は、任意選択的に、所定の実施形態では植物もしくは動物(例えば、ヒト)の害虫/病原体であると特徴付けることができる。細菌は、所定の実施形態では、混合微生物集団(例えば、他の細菌を含有する、または酵母および/もしくは他の細菌を含有する)に含まれる可能性がある。
所定の実施形態における古細菌細胞は、例えばユーリ古細菌門、クレン古細菌門、ナノ古細菌門、コル古細菌門、アイガー古細菌門、タウム古細菌門などの任意の古細菌門に由来してよい。本明細書の古細菌細胞は、例えば、好極限性(例えば、ほんどの生命にとって有害となる、物理的もしくは地球化学的に過酷な条件で成長および/または増殖することができる)であってよい。好極限性古細菌の一部の例としては、好熱性(例えば、45~122℃の温度で成長できる)、超好熱性(例えば、80~122℃の温度で成長できる)、好酸性(例えば、3以下のpHレベルで成長できる)、好アルカリ性(例えば、9以下のpHレベルで成長できる)および/または好塩性(例えば、高塩濃度[20~30%のNaCl]で成長できる)のものが挙げられる。古細菌種の例としては、ハロバクテリウム(Halobacterium)属種(例えば、H.ボルカニイ(H.volcanii))、スルフォロブス(Sulfolobus)属種(例えば、S.ソルファタリカス(S.solfataricus)、S.アシドカルダリウス(S.acidocaldarius))、サーモコッカス(Thermococcus)属種(例えば、T.アルカリフィルス(T.alcaliphilus)、T.セレール(T.celer)、T.キトノファグス(T.chitonophagus)、T.ガンマトレランス(T.gammatolerans)、T.ヒドロテルマリス(T.hydrothermalis)、T.コダカレンシス(T.kodakarensis)、T.リトラリス(T.litoralis)、T.ペプトノフィルス(T.peptonophilus)、T.プロフンドゥス(T.profundus)、T.ステッテリ(T.stetteri))、メタノカルドコッカス(Methanocaldococcus)属種(例えば、M.サーモリトトロフィクス(M.thermolithotrophicus)、M.ヤナシイ(M.jannaschii))、メタノコッカス(Methanococcus)属種(例えば、M.マリパルディス(M.maripaludis)、メタノサーモバクター(Methanothermobacter)属種(例えば、M.マルブルゲンシス(M.marburgensis)、M.テルマウトトロフィクス(M.thermautotrophicus))、アーケオグロブス(Archaeoglobus)属種(例えば、A.フルギドゥス(A.fulgidus))、ニトロソプミルス(Nitrosopumilus)属種(例えば、N.マリティムス(N.maritimus))、メタロスファエラ(Metallosphaera)属種(例えば、M.セドゥラ(M.sedula))、フェロプラズマ(Ferroplasma)属種、サーモプラズマ(Thermoplasma)属種、メタノブレビバクター(Methanobrevibacter)属種(例えば、M.スミチイ(M.smithii))およびメタノスフェラ(Methanosphaera)属種(例えば、M.スタットマナエ(M.stadtmanae))が挙げられる。
所定の実施形態における哺乳類細胞は、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、類人猿)、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギもしくはヒツジの細胞であってよい。本明細書の哺乳類細胞の他の例としては、初代上皮細胞(例えば、角化細胞、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞、網膜上皮細胞);樹立細胞系(例えば、293胎仔腎臓細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞、PER-C6網膜細胞、MDBK、CRFK、MDCK、CHO、BeWo、チャン細胞、デトロイト562、Hep-2、KB、LS180、LS174T、NCI-H-548、RPMI2650、SW-13、T24、WI-28 VA13、2RA、WISH、BS-C-I、LLC-MK2、クローンM-3、RAG、TCMK-1、LLC-PK1、PK-15、GH1、GH3、L2、LLC-RC256、MH1C1、XC、MDOK、VSW、TH-I、B1細胞);任意の組織または器官からの任意の上皮、間葉(例えば、線維芽細胞)、神経もしくは筋肉細胞(例えば、皮膚、心臓;肝臓;腎臓;結腸;腸;食道;胃;例えば脳または脊髄などの神経組織;肺;維管束組織;例えばリンパ腺、アデノイド、扁桃腺、骨髄または血液などのリンパ系組織;脾臓);ならびに線維芽細胞または線維芽細胞様細胞株(例えば、TRG-2、IMR-33、ドン細胞、GHK-21、シトルリン細胞、デンプシー細胞、デトロイト551、デトロイト510、デトロイト525、デトロイト529、デトロイト532、デトロイト539、デトロイト548、デトロイト573、HEL299、IMR-90、MRC-5、WI-38、WI-26、MiCl1、CV-1、COS-1、COS-3、COS-7、ベロ、DBS-FrhL-2、BALB/3T3、F9、SV-T2、M-MSV-BALB/3T3、K-BALB、BLO-11、NOR-10、C3H/IOTI/2、HSDM1C3、KLN205、McCoy細胞、マウスL細胞、SCC-PSA1、スイス/3T3細胞、インドホエジカ細胞、SIR、イェンセン細胞が挙げられる。哺乳類細胞系を培養および操作する方法は、当技術分野において知られている。
所定の実施形態では、細胞は、動物もしくは植物の任意の病原体および/または害虫の細胞であってよい。そのような病原体および/または害虫の例としては、様々なタイプの細菌、真菌、酵母、原生生物、線虫および昆虫が挙げられる。当業者であれば、上記に開示したそのような病原体/害虫の例を認識するであろう。
「センチモルガン」(cM)もしくは「図単位」は、2つの結合遺伝子、マーカー、標的部位、遺伝子座もしくはそれらの任意の対間の距離であり、ここで減数分裂の積の1%は組換えである。したがって、1センチモルガンは2つの結合遺伝子、マーカー、標的部位、遺伝子座もしくはそれらの任意の対間の1%の平均組換え頻度と同等の距離と同等である。
本明細書に記載したガイドRNA/Cas系は、標的からずれた切断が標的細胞にとって有害である可能性がある状況では、ヌクレアーゼゲノム遺伝子工学、特に微生物および植物ゲノム遺伝子工学のために特に有用である。本明細書に記載したガイドRNA/Cas系の1つの実施形態では、発現最適化Cas9遺伝子は、標的ゲノム内、例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属ゲノム内に安定性で組み込まれる。Cas9遺伝子の発現は、例えばヤロウィア(Yarrowia)属プロモーターなどのプロモーターの制御下にある。ガイドRNAもしくはcrRNAの非存在下では、Cas9タンパク質はDNAを切断することができないので、このため細胞内でのその存在はほとんどもしくは全く結果をもたらさないはずである。そこで、本明細書に記載したガイドRNA/Cas系の重要な利点は、細胞生育性にほとんどもしくは全く結果を伴わないCas9タンパク質を効率的に発現させることのできる細胞系もしくは生物を作成して維持する能力である。
遺伝子ターゲティングを媒介するガイドRNA/Cas系は、国際公開第2013/0198888号パンフレット(2013年8月1日に公開)に開示された方法に類似する方法でトランス遺伝子挿入を指令するため、および/または複数のトランス遺伝子を含む複合トランスジェニック形質遺伝子座を生成するための方法であって、関心対象の遺伝子を導入するために二本鎖切断誘導物質の代わりに本明細書に開示したガイドRNA/Cas系が使用される方法において使用することができる。複合トランスジェニック形質遺伝子座には、相互に遺伝的に結合された複数のトランス遺伝子を有するゲノム遺伝子座が含まれる。相互から0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2もしくは実に5センチモルガン(cM)以内に独立トランス遺伝子を挿入することによって、トランス遺伝子は、単一遺伝子座として増殖されることができる(例えば、米国特許出願公開第13/427,138号明細書もしくは国際公開第PCT/US2012/030061号明細書を参照されたい)。
関心対象の表現型もしくは形質と相関する染色体間隔は、同定することができる。染色体間隔を同定するためには、当技術分野において周知の様々な方法を利用できる。そのような染色体間隔の境界は、関心対象の形質を制御する遺伝子に結合されるであろうマーカーを包含すると描出される。言い換えると、染色体間隔は、その間隔(その間隔の境界を規定する末端マーカーを含む)内に存在する任意のマーカーをトウモロコシ煤斑耐性についてのマーカーとして使用できるように描出される。1つの実施形態では、染色体間隔は、少なくとも1つのQTLを含み、さらに、2つ以上のQTLを実際に含む可能性がある。同一間隔内の複数のQTLの近接近は、1つのマーカーが2つ以上のQTLへの結合を証明する可能性があるので、特定のマーカーと特定のQTLとの相関を不明瞭にする可能性がある。これとは逆に、例えば、近接近にある2つのマーカーが所望の表現型形質と共分離を示す場合は、それらのマーカーのそれぞれが同一QTLもしくは2つの異なるQTLを同定するかどうかが不明の場合がある。用語「定量的形質遺伝子座」もしくは「QTL」は、少なくとも1つの遺伝的背景において、例えば、少なくとも1つの育種集団において定量的表現型形質の示差的発現と関連しているDNAの1つの領域を意味する。QTLの領域は、問題の形質に影響を及ぼす1つ以上の遺伝子を包含する、または密接に結合している。「QTLの対立遺伝子」は、例えばハロタイプなどの隣接ゲノム領域もしくは結合群内の複数の遺伝子もしくは他の遺伝因子を含むことができる。QTLの1つの対立遺伝子は、特定窓内のハロタイプを意味することができ、ここで前記窓は、1セットの1つ以上の多型マーカーを用いて定義できる、および追跡できる隣接ゲノム領域である。ハロタイプは、特定窓内の各マーカーで対立遺伝子の固有のフィンガープリントによって定義することができる。
スクリーニング可能マーカー表現型を使用せずに標的部位もしくは標的部位の近くで改変ゲノムを有するそれらの細胞を同定するためには、様々な方法を利用することができる。そのような方法は、PCR法、シークエンシング法、ヌクレアーゼ消化法、サザンブロット法およびそれらの任意の組合せを含むがそれらに限定されない、標的配列内の何らかの変化を検出するために標的配列を直接的に分析する工程であると見なすことができる。
タンパク質は、アミノ酸の置換、欠失、切断および挿入を含む様々な方法で改変することができる。そのような操作のための方法は、一般に公知である。例えば、タンパク質のアミノ酸配列変異体は、DNA内の突然変異によって調製することができる。突然変異生成およびヌクレオチド配列改変の方法には、例えば、Kunkel,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-92;Kunkel et al.,(1987)Meth Enzymol 154:367-82;米国特許第4,873,192号明細書;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)およびその中で言及された参考文献が含まれる。タンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない可能性が高いアミノ酸置換に関するガイダンスは、例えば、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl Biomed Res Found,Washington,D.C.)のモデル内で見いだされる。例えば1つのアミノ酸と類似の特性を有するまた別のアミノ酸との保存的置換が好ましい可能性がある。保存的置換、挿入およびアミノ酸置換は、タンパク質の特性における急激な変化を生成するとは予測されず、任意の置換、欠失、挿入もしくはそれらの組合せの影響はルーチンのスクリーニングアッセイによって評価することができる。二本鎖切断誘導活性についてのアッセイは、当技術分野で公知であり、一般には、標的部位を含有するDNA基質上の作用物質の全活性および特異性を測定する。
ヌクレオチド配列およびポリペプチドを生物中に導入するためには、例えば、形質転換、有性交配およびポリペプチド、DNAもしくはmRNAの細胞内への導入を含む様々な方法が公知である。
組成物を様々な生物と接触させる、様々な生物に提供する、および/または様々な生物中に導入するための方法は公知であり、安定性形質転換、一過性形質転換法、ウイルス媒介性方法および有性育種法が含まれるがそれらに限定されない。安定性形質転換は、導入されたポリヌクレオチドが生物のゲノム内に組み込まれ、それらの子孫によって遺伝で受け継がれる可能性があることを表す。一過性形質転換は、導入された組成物が一時的にのみ発現する、または生物内に存在することを表す。
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを植物内に導入するためのプロトコールは、例えば単子葉植物もしくは双子葉植物などの形質転換の標的とされる植物もしくは植物細胞のタイプに依存して変動する可能性がある。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを植物細胞内に導入し、その後の植物ゲノム内へ挿入するための好適な方法には、マイクロインジェクション(Crossway et al.,(1986)Biotechniques 4:320-34および米国特許第6,300,543号明細書)、分裂組織形質転換(米国特許第5,736,369号明細書)、エレクトロポレーション(Riggs et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602-6)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性形質転換(米国特許第5,563,055号明細書および同第5,981,840号明細書)、直接遺伝子導入(Paszkowski et al.,(1984)EMBO J 3:2717-22)および弾道粒子加速(米国特許第4,945,050号明細書;同第5,879,918号明細書;同第5,886,244号明細書;同第5,932,782号明細書;Tomes et al.,(1995)“Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment”,Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods,ed.Gamborg & Phillips(Springer-Verlag,Berlin);McCabe et al.,(1988)Biotechnology 6:923-6;Weissinger et al.,(1988)Ann Rev Genet 22:421-77;Sanford et al.,(1987)Particulate Science and Technology 5:27-37(タマネギ);Christou et al.,(1988)Plant Physiol 87:671-4(ダイズ);Finer and McMullen,(1991)In Vitro Cell Dev Biol 27P:175-82(ダイズ);Singh et al.,(1998)Theor Appl Genet 96:319-24(ダイズ);Datta et al.,(1990)Biotechnology 8:736-40(コメ);Klein et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305-9(トウモロコシ);Klein et al.,(1988)Biotechnology 6:559-63(トウモロコシ);米国特許第5,240,855号明細書;同第5,322,783号明細書および同第5,324,646号明細書;Klein et al.,(1988)Plant Physiol 91:440-4(トウモロコシ);Fromm et al.,(1990)Biotechnology 8:833-9(トウモロコシ);Hooykaas-Van Slogteren et al.,(1984)Nature 311:763-4;米国特許第5,736,369号明細書(穀類);Bytebier et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345-9(ユリ科);De Wet et al.,(1985),The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,ed.Chapman et al.,(Longman,New York),pp.197-209(花粉);Kaeppler et al.,(1990)Plant Cell Rep 9:415-8)およびKaeppler et al.,(1992)Theor Appl Genet 84:560-6(ウィスカー媒介性形質転換);D’Halluin et al.,(1992)Plant Cell 4:1495-505(エレクトロポレーション);Li et al.,(1993)Plant Cfell Rep 12:250-5;Christou and Ford(1995)Annals Botany 75:407-13(コメ)およびOsjoda et al.,(1996)Nat Biotechnol 14:745-50(アグロバクテリウム・ツメファキエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介するトウモロコシ)が含まれる。
または、ポリヌクレオチドは、植物をウイルスもしくはウイルス核酸と接触させることにより植物内に導入することができる。一般に、そのような方法は、ウイルスDNAもしくはRNA分子内にポリヌクレオチドを組み込む工程を包含している。一部の例では、関心対象のポリペプチドは、最初にウイルスポリタンパク質の一部として合成することができ、その後に所望の組換えタンパク質を生成するためにin vivoもしくはin vitroでのタンパク質分解によってプロセシングされる。ポリヌクレオチドを植物中に導入してその中でコードされた、ウイルスDNAもしくはRNA分子を包含するタンパク質を発現させるための方法は公知であり、例えば、米国特許第5,889,191号明細書、同第5,889,190号明細書、同第5,866,785号明細書、同第5,589,367号明細書および同第5,316,931号明細書を参照されたい。一過性形質転換法には、例えば二本鎖切断誘導物質などのポリペプチドの生物内への直接的導入、例えばDNAおよび/またはRNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの導入ならびに例えば二本鎖切断誘導物質をコードするmRNAなどのRNA転写物の生物内への導入が含まれるがそれらに限定されない。そのような方法には、例えば、マイクロインジェクションもしくは粒子衝突法が含まれる。例えば、Crossway et al.,(1986)Mol Gen Genet 202:179-85;Nomura et al.,(1986)Plant Sci 44:53-8;Hepler et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2176-80;およびHush et al.,(1994)J Cell Sci 107:775-84を参照されたい。
用語「双子葉植物」は、「双子葉植物網」としても公知である被子植物の亜綱を意味するが、植物全体、植物器官(例えば、葉、幹、根など)、種子、植物細胞および同一物の子孫についての言及が含まれる。本明細書で使用する植物細胞には、制限なく、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、新芽、配偶体、胞子体、花粉および小胞子が含まれる。
本開示の状況における用語「交配した」もしくは「交配(cross)」もしくは「交配(crossing)」は、子孫(すなわち、細胞、種子もしくは植物)を生成するための授粉による配偶子の融合を意味する。この用語は、有性交配(1種の植物と他の植物との授粉)および自植(自家受粉、すなわち、花粉および胚珠(もしくは小胞子および大胞子)は同一植物もしくは遺伝的に同一の植物に由来する)の両方を包含する。
用語「遺伝子移入」は、1つの遺伝的背景から別の遺伝的背景への遺伝子座の所望の対立遺伝子の伝達を意味する。例えば、特定遺伝子座での所望の対立遺伝子の遺伝子移入は、2種の親植物間の有性交配により少なくとも1つの子孫植物へ伝達することができるが、ここで親植物の少なくとも1つはそのゲノム内に所望の対立遺伝子を有する。または、例えば、対立遺伝子の伝達は、例えば融合プロトプラスト内の2つのドナーゲノム間の組換えによって発生する可能性があり、ここでドナープロトプラストの少なくとも1つは、そのゲノム内に所望の対立遺伝子を有する。所望の対立遺伝子は、例えば、トランス遺伝子、修飾(突然変異もしくは編集)天然対立遺伝子またはマーカーもしくはQTLの選択された対立遺伝子であってよい。
標準のDNA単離、精製、分子クローニング、ベクター構築および検証/特性解析法は明確に確立されており、例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)を参照されたい。ベクターおよび構築物には、環状プラスミドおよび関心対象のポリヌクレオチドおよび任意選択的にリンカー、アダプター、調節もしくは分析を含む他の成分を含む線状ポリヌクレオチドが含まれる。一部の例では、認識部位および/または標的部位は、イントロン、コーディング配列、5’UTR、3’UTRおよび/または調節領域内に含有される可能性がある。
単子葉植物および双子葉植物を含む任意の植物を使用できる。使用できる単子葉植物の例としては、トウモロコシ(ゼア・マイズ(Zea mays))、コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、ライムギ(セカレ・セレアレ(Secale cereale))、ソルガム(ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare))、キビ(例えばトウジンビエ(ペニセタム・グラウクム(Pennisetum glaucum)、キビ(パニクム・ミリアセウム(Panicum miliaceum)、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica)、シコクビエ(エレウシネ・コラカナ(Eleusine coracana))、コムギ(トリティクム・アエスティバム(Triticum aestivum))、サトウキビ(サッカルム種(Saccharum spp.))、カラスムギ(アヴィーナ(Avena属))、オオムギ(ホルデウム属(Hordeum))、スイッチグラス(パニクム・ヴィルガタム(Panicum virgatum))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、バナナ(ムサ種(Musa spp.))、ヤシ、観賞植物、芝草および他の草が挙げられる。使用できる双子葉植物の例としては、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、カノーラ(ブラシカ・ナプス(Brassica napus)およびB.カンペストリス(B.campestris))、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum))、シロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus))、綿(ゴシピウム・アルボレウム(Gossypium arboreum))および落花生(アラキス・ハイポガエア(Arachis hypogaea))、トマト(ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum))、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))などが含まれるがそれらに限定されない。
略語の意味は以下の通りである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」は「マイクロモルの」を意味し、「mM」は「ミリモルの」を意味し、「M」は「モルの」を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、および「kb」はキロベースを意味味する。
本明細書に開示した組成物および方法の非限定的例は、以下の通りである:
1.そのゲノム内に修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択するための方法であって:
a)ガイドポリヌクレオチド、少なくとも1つの保護ポリヌクレオチド修飾鋳型およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位で一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む工程;および
b)工程(a)から前記修飾ヌクレオチド配列を含む細胞を選択する工程を含む方法。
2.保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、その5’末端、3’末端ならびに5’末端および3’末端の両方で少なくとも1つの保護分子を含む線状ポリヌクレオチドである、実施形態1の方法。
3.保護分子は、アルカンスペーサー、蛍光体、NHSエステル、ジゴキシゲン、コレステリル-TEG、C6、C12、ヘキシニル、Oxtadiynyl dUTP、ビオチン、ジチオール、逆ジデオキシ-T修飾もしくはそれらのいずれか1つの組合せからなる群から選択される、実施形態2の方法。
4.保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、環状ポリヌクレオチドである、実施形態1の方法。
5.前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、少なくとも1本の鎖の5’末端で少なくとも1つのホスホロチエート結合を含む一本鎖もしくは二本鎖線状分子である、実施形態1の方法。
6.前記保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、各鎖の5’末端上で3炭素アルカリスペーサーを含む一本鎖もしくは二本鎖線状分子である、実施形態1の方法。
7.保護ポリヌクレオチド鋳型の少なくとも1つのヌクレオチド修飾は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換え、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入および(iv)(i)~(iii)の任意の組合せからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つの方法。
8.前記細胞内の相同組換え修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)の頻度をさらに決定する、実施形態1の方法。
9.HDRの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、実施形態1の方法と同一の成分および工程全部を有するコントロール法に由来するHDRの頻度と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%もしくは250%増加させられる、実施形態8の方法。
10.NHEJの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、実施形態1の方法と同一の成分および工程全部を有するコントロール法に由来するNHEJの頻度と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%減少させられる、実施形態8の方法。
11.前記細胞内の保護ポリヌクレオチド修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度をさらに決定する、実施形態1の方法。
12.前記細胞内の保護ポリヌクレオチド修飾鋳型のオフサイト組込みの頻度は、非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用すること以外は、実施形態1の方法と全て同一の成分および工程を有するコントロール法に由来するオフサイト組込みの頻度と比較して減少させられる、実施形態11の方法。
13.そのゲノム内の標的部位に挿入された関心対象のポリヌクレオチドを含む細胞を選択するための方法であって:
a)ガイドポリヌクレオチド、少なくとも1つの保護ポリヌクレオチドドナーDNAおよびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位での一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチドドナーDNAは前記細胞のゲノム内に導入すべき関心対象のポリヌクレオチドを含む工程;および
b)工程(a)からそのゲノム内の標的部位内へ挿入された関心対象のポリヌクレオチドを含む細胞を選択する工程を含む方法。
14.そのゲノム内の標的部位に挿入された関心対象のポリヌクレオチドを含む微生物細胞を選択するための方法であって:
a)ガイドポリヌクレオチド、少なくとも1つの保護ポリヌクレオチドドナーDNAおよびCasエンドヌクレアーゼを細胞に提供する工程であって、ここで前記Casエンドヌクレアーゼおよびガイドポリヌクレオチドは前記細胞のゲノム内の標的部位での一本鎖もしくは二本鎖切断を導入することができる複合体を形成することができ、前記保護ポリヌクレオチドドナーDNAは前記細胞のゲノム内に導入すべき関心対象のポリヌクレオチドを含む工程;および
b)工程(a)からそのゲノム内の標的部位内へ挿入された関心対象のポリヌクレオチドを含む微生物細胞を選択する工程を含む方法。
15.細胞は、ヒト、非ヒト、動物、細菌、古細菌、真菌、昆虫、酵母、非従来型酵母、植物および微生物細胞からなる群から選択される、実施形態1~13の方法。
16.微生物細胞は、酵母細胞または非従来型酵母由来の細胞である、実施形態15の方法。
17.前記酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)属、ピチア(Pichia)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、アークスラ(Arxula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、カンジダ(Candida)属、ウスティラゴ(Ustilago)属、トルロプシス(Torulopsis)属、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、トリゴノプシス(Trigonopsis)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ファフィア(Phaffia)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属およびパチソレン(Pachysolen)属からなる群から選択される属の一員である、実施形態16の非従来型酵母である。
18.(b)の細胞から植物を生成する工程をさらに含む、実施形態13の方法。
下記の実施例では、他に特に明記しない限り、部およびパーセンテージは重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本開示の実施形態を示しているが、例示するためにのみ提供されていることを理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者であれば様々な用法および条件に適合させるために本開示に様々な変更および修飾を加えることができる。そのような修飾もまた、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
実施例1
Can1をターゲティングするCas9 HDV-gRNA発現プラスミド
本実施例では、肝炎δウイルス(HDV)リボザイムによって5’末端上で隣接されている一本鎖ガイドRNA(sgRNA)の使用について考察する。HDVリボザイムは、その固有の配列の5’を切断し、任意の先行するRNA配列を除去するが、gRNAの5’末端に融合したHDV配列は残す。
ヤロウィア(Yarrowia)属におけるsgRNA/Casエンドヌクレアーゼ系を試験するために、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)M1 GAS由来のCas9遺伝子(SF370(配列番号1))は、当技術分野において公知の標準技術によってヤロウィア(Yarrowia)コドン最適化した(配列番号2)。細胞の核にCas9タンパク質を局在化するために、シミアン・ウイルス40(SV40)一方向性(PKKKRKV、配列番号3)核局在化シグナルは、Cas9タンパク質のカルボキシ末端で組み込まれた。ヤロウィア(Yarrowia)コドン最適化Cas9遺伝子は、標準分子生物学技術によってヤロウィア(Yarrowia)属構成的プロモーターであるFBA1(配列番号4)に融合させた。FBA1プロモーターおよびヤロウィア(Yarrowia)最適化Cas9-NLS融合を含有するヤロウィア(Yarrowia)コドン最適化Cas9発現カセットの例は、配列番号5に示した。Cas9発現カセットは、結果としてpZufCas9(配列番号6)を生じさせるプラスミドpZuf内にクローン化された。
プラスミドpZuf-Cas9CS(配列番号6)は、pRF109(配列番号9)を生成するpZuf-Cas9CS(配列番号6)内に存在するヤロウィア(Yarrowia)コドン最適化Cas9遺伝子(配列番号2)内に存在する内在性AarI部位を除去するために、Agilent QuickChangeおよび次のプライマーAarI-除去-1(AGAAGTATCCTACCATCTACcatctccGAAAGAAACTCGTCGATTCC、配列番号7)およびAarI-除去-2(GGAATCGACGAGTTTCTTTCggagatgGTAGATGGTAGGATACTTCT、配列番号8)を使用して突然変異を起こさせた。修飾Aar1-Cas9CS遺伝子(配列番号10)は、存在するCas9遺伝子(配列番号2)をAar1-Cas9遺伝子(配列番号10)と置き換えてpRF141(配列番号11)を生成することでpRF109(配列番号9)由来のNcoI/NotI断片としてpZufCas9CS(配列番号6)のNcoI/NotI部位内にクローニングさせた。
高スループット可変性ターゲティングドメイン(VT)クローニングカセット(図1、配列番号12)は、yl52プロモーター(配列番号13)、HDVリボザイムをコードするDNA配列(配列番号14)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)逆選択カセットrpsL(配列番号15)、Cas9 CERドメインをコードするDNA(配列番号16)およびS.セレビジエ(S.cerevisiae)SUP4ターミネーター(配列番号17)から構成される。高スループットクローニングカセット(配列番号12)の末端に隣接しているのは、PacIおよびClaI制限酵素認識部位である。高スループットクローニングカセット(配列番号12)は、pRF291(配列番号14)を生成するためにpRF141(配列番号11)のPacI/ClaI部位内にクローニングされた。rpsL逆選択カセット(配列番号15)は、その天然プロモーターおよびターミネーターとともにE.コリ(E.coli)rpsL遺伝子のWT(野生型)コピーを含有する。rpsLはS12リボソームタンパク質サブユニットを含有する(Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology,1987 American Society of Microbiology)。S12サブユニット内の一部の突然変異は、rpsL遺伝子の野生型コピーが存在する場合は、菌株がストレプトマイシンに対して表現型的に感受性であるように、抗生物質ストレプトマイシンに対する耐性(Ozaki,M.,et al.(1969).“Identification and functional characterization of the protein controlled by the streptomycin-resistant locus in E.coli.”Nature 222(5191):333-339)を劣性方法で誘導する((Lederberg,J.(1951).“Streptomycin resistance;a genetically recessive mutation.”J Bacteriol 61(5):549-550.)。((Lederberg,J.(1951).“Streptomycin resistance;a genetically recessive mutation.”J Bacteriol 61(5):549-550.)。例えばTop10(Life technologies)などの一般的クローニング菌株は、細胞がストレプトマイシンに対して耐性であるようにそれらの染色体上にrpsLの突然変異コピーを有する。
可変ターゲティングドメインをpRF291内にクローニングするには、高スループットクローニングカセット内に存在する2つのAarI部位内にクローニングするために、アニーリングされるとそれらが所望の可変ターゲティングドメインならびに正確なオーバーハングを含有する2つの部分的相補性オリゴヌクレオチドを必要とする。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のCAN1遺伝子内のCan1-1標的部位(配列番号22)を標的とする可変ターゲティングドメインCan1-1(配列番号21)をコードするDNAを含有する2つのオリゴヌクレオチドであるCan1-1F(AATGGGACtcaaacgattacccaccctcGTTT、配列番号19)およびCan1-1R(TCTAAAACgagggtgggtaatcgtttgaGTCC、配列番号20)を100μMで二重バッファー(30mMのHEPES(pH7.5)、100mMの酢酸ナトリウム)中に再懸濁させた。Can1-1F(配列番号19)およびCan1-1R(配列番号20)を単一試験管中でそれぞれ50μMの最終濃度で混合し、95℃へ5分間加熱し、二本鎖DNA小分子を形成するために2つのオリゴヌクレオチドをアニーリングするために0.1℃/分で25℃へ冷却した(図2)。20μLの最終容量中に50ngのpRF291、Can1-1F(配列番号19)およびCan1-1R(配列番号20)から構成される2.5μMの短鎖二本鎖DNA、1×のT4リガーゼバッファー(50mMのTris-HCl、10mMのMgCl2、1mMのATP、10mMのDTT(pH7.5))、0.5μMのAarIオリゴヌクレオチド、2単位のAarI、40単位のT4 DNAリガーゼを含有する単一チューブ消化/ライゲーション反応を作成した。Can1-1F二本鎖およびCan1-1R二本鎖が欠如する第2コントロール反応もまた組み立てた。この反応を37℃で30分間インキュベートした。10μLの各反応は、以前に記載されたようにTop10 E.コリ(E.coli)細胞内へ形質転換させた(Green,M.R.& Sambrook,J.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Fourth Edition edn,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012))。Can1-1F(配列番号19)およびCan1-1R(配列番号20)の二本鎖がAarI制限部位によって隣接されたrpsL逆染色マーカーに置き換えられたpRF291の存在を選択するために、細胞は、100μg/mLのアンピシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを含有する1.5(重量/容積)%のBacto寒天により凝固させた溶原性ブロス上でプレーティングした。高スループットクローニングカセットを含有するpRF291の存在は、抗生物質アンピシリンに対しては表現型的に耐性であるが、プラスミド上の逆選択カセットの存在に起因して抗生物質ストレプトマイシンには感受性であるコロニーを産生した。しかし、逆選択カセットがAarI酵素により除去され、二本鎖DNAを含有するCan1-1可変ターゲティングドメインが(AarIに対する認識配列を除去して)その部位内にライゲーションされた場合は、プラスミドを用いて形質転換された細胞はアンピシリン耐性、ストレプトマイシン耐性表現型を有していた(図1)。逆選択カセットを置き換えているCan1-1可変ターゲティングドメインを含有するpRF291は、SUP4ターミネーター(配列番号17)に融合したCERドメイン(配列番号16)をコードするDNAに融合したCan1-1可変ターゲティングドメイン(配列番号21)をコードするDNAに融合したHDVリボザイム(配列番号14)をコードするDNAに融合したyl52プロモーター(配列番号13)を含有する組換えCan1-1 gRNA発現カセット(配列番号19)を作成した。この構築物を含有するプラスミドであるpRF303(配列番号24)を使用して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のCAN1遺伝子(配列番号23)をCas9によりターゲティングした。
実施例2
保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の生成
Cas9/gRNA生成DNA二本鎖切断(DSB)の修復中に、二本鎖DNA切断(DSB)を修復するために非相同末端結合経路を使用するための大多数の真核細胞タイプに対する優先は、典型的にはこの切断を修復するための相同組換え修復(HDR)のタンパク質を使用してコロニーをほとんど備えないNHEJ由来突然変異(インデル)の大きな背景を作り出す。これは、DSBでの鋳型化変化を作成するために鋳型を使用および編集する遺伝子編集実験では、HDRを使用してCas9/gRNA生成DSBが修復された事象を見いだすために多数の事象についてスクリーニングしなければならないことを意味する。鋳型を編集する保護ポリヌクレオチドの使用は、所望の編集を用いて事象を見いだすためにスクリーニングしなければならない事象数を減少させることでCas9/gRNA生成DSBのHDR修復の頻度を増加させる方法を提供する。本実施例では、「保護ポリヌクレオチド修飾鋳型」と呼ばれる、それらが分解する傾向を低下させる修飾末端を有する3種の異なるタイプのポリヌクレオチド修飾鋳型の生成について記載する。これらの保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、細胞内のエキソヌクレアーゼから鋳型を保護することによって強力に鋳型安定性を改変する、および/または鋳型が非相同末端結合(NHEJ)のための基質として作用する能力を改変することができる。所望の遺伝子編集事象が2つの異なる相同性アーム間の領域の欠失である場合は(図3A)、編集鋳型は、介在配列を使用せずに結合している2つの相同性アームを含有するであろう(図3B)。3種のタイプの保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、1)利用可能な二本鎖末端を備えていない環状DNA鋳型(図3D)、各鎖の5’末端上の3炭素アルカンスペーサーを用いて修飾された線状二本鎖DNA鋳型(図3C)、および3)各鎖上でホスホロチオエート結合と取り換えられた5つの5’最末端ホスホジエステル結合を備える線状二本鎖DNA鋳型(図3C)である。
非保護(未修飾)ポリヌクレオチド修飾鋳型は、1つが、標準技術(使用したプライマー、GGGAAGCTTGCTACGTTAGGAGAAGACGC(フォワード、配列番号26)およびGGAGAGAGCGTCGGGAGTGGTCGGATGGATGGAGACG(リバース、配列番号27))を用いてヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC20362ゲノムDNAから増幅させたCAN1オープンリーディングフレーム(配列番号25)の2bpの5’で終了する629bpである2つのPCR産物を作成することによって生成した。リバースプライマーはCAN1オープンリーディングフレームの3’の37bpの配列に相補的な17ヌクレオチドを付加し、フォワードプライマーは、5’HinDIII認識部位を付加する。第2PCR産物は、CAN1オープンリーディングフレームの3’の37塩基対から出発する637bpからなる(配列番号28)。このPCR産物は、標準技術(使用したプライマー、CGTCTCCATCCATCCGACCACTCCCGACGCTCTCTCC(フォワード、配列番号29)およびCCATACATCCTTCCACCACTGC(リバース、配列番号30))を使用してヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC20362ゲノムDNAから増幅させた。フォワードプライマーは、CAN1オープンリーディングフレームの5’の2bpで終了する領域に相補的である20ヌクレオチドを付加する。上流PCR産物(配列番号25)および下流PCR産物(配列番号28)はどちらも、Zymoクリーンおよび濃縮カラムを使用して精製した。10ngの各PCR産物は新規のPCR反応中で混合した。上流産物の3’の37ヌクレオチドは、下流産物の5’の37ヌクレオチドと同一である。上流断片および下流断片を使用して、上流配列および下流配列の両方を含有する重複する末端からの合成により、相互が非保護ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号31)を表す単一産物を作成するようにプライミングした(Horton et al(2013)Biotechniques 54(3):129-133)(図3B)。完全非保護(コントロール)ポリヌクレオチド修飾鋳型は、HinDIIIを用いて消化し、プラスミドpRF80(配列番号33)を使用してpUC18(配列番号32)のHinDIII部位内にクローニングした。プラスミドpRF80は、相同組換え修復(HDR)のための鋳型として使用されると全CAN1オープンリーディングフレームの欠失をもたらすであろう1210bpのDNA断片(配列番号34)を含む二本鎖環状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型(図3D)を表す。
線状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、pRF80上に含有されたクローン化鋳型から生成された(配列番号33)。pRF80上に含有された鋳型は、標準技術およびプライマーとして化学的に合成、修飾されたオリゴヌクレオチド(IDT)を使用してPCR増幅させた。アルカンスペーサーを用いて修飾された5’末端を備える線状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型を生成するために、pRF80からの鋳型は、各鎖の5’末端上で5’アルカンスペーサーを備えるCAN1 ORF欠失鋳型(配列番号34)を含有する1215bpのPCRを生成するために増幅させた(使用したプライマー、/5SpC3/AGCTTGCTACGTTAGGAGAA、フォワード(配列番号35)および/5SpC3/TATGAGCTTATCCTGTATCG、リバース(配列番号36))。第2線状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、本質的にPCR鋳型としてpRF80(配列番号33)を用いる同一方法で生成した。線状鋳型は、5つの5’最末端ホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合(*)(使用したプライマー;A*G*C*T*T*GCTACGTTAGGAGAA、フォワード(配列番号37)およびT*A*T*G*A*GCTTATCCTGTATCG、リバース(配列番号38))と置き換えられている化学合成プライマー(IDT)を用いて増幅させた。結果として生じる産物は、各鎖の5’最末端に5つのホスホロチオエート結合を含有する1,215bpのCAN1欠失保護ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号31)である。未修飾(非保護、コントロール)鋳型は、非保護1,215bpの線状CAN1欠失ポリヌクレオチド修飾鋳型(編集鋳型)(配列番号31)を生成するために、修飾を備えない化学合成オリゴヌクレオチドプライマーおよび標準技術(使用したプライマー、AGCTTGCTACGTTAGGAGAA、フォワード(配列番号40)およびTATGAGCTTATCCTGTATCG、リバース(配列番号41)を使用してpRF80から増幅させた。線状鋳型のPCR反応は、Zymoクリーンおよび濃縮25カラムを使用して精製し、25μLの10mMのTris、1mMのEDTA(pH8.0)中に溶出させた。
実施例3
Cas9/gRNAターゲティングと組み合わせて保護ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用する精密な遺伝子編集
本実施例では、HDRおよびNHEJ頻度に(非保護(コントロール)鋳型の代わりに)保護鋳型を使用した場合の影響を決定するために、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞を保護および非保護(未修飾)ポリヌクレオチド修飾鋳型の存在下および非存在下でターゲティングプラスミドを用いて形質転換させた。HDR頻度の増加およびNHEJ頻度の同時の減少は、典型的なCas9/gRNA遺伝子編集実験において存在するNHEJ由来背景を大きく減少させるであろう。全ターゲティング効率(NHEJ頻度+HDR頻度を表す)を決定するために、細胞をカナバニン耐性について表現型的にスコアリングした。HDRおよびNHEJによるCas9/gRNA生成二本鎖切断の修復の頻度を決定するために、CAN1遺伝子座(配列番号39)のコロニーPCRを実施した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC20362のウラシル栄養要求性株を30℃のYPD培地プレート(Teknova)上で24時間増殖させた。1ループの細胞を形質転換バッファー(35%のポリエチレングリコール(平均分子量3550)、100mMの酢酸リチウム、100mMのジチオトレイトール、10mMのTris、1mMのEDTA(pH6.0))中に再懸濁させた。100μLの細胞懸濁液は、ポリヌクレオチド修飾鋳型なし、1μgの非保護線状ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号31)、1μgのC3S保護線状ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号31の5’末端で3炭素アルカリスペーサーを含む鋳型)、1μgのPT保護ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号31の最初の5つの5’ヌクレオチドでホスホロチエート結合を含む鋳型)もしくは5μgの環状ポリヌクレオチド修飾鋳型、pRF80(配列番号33)のいずれかとともに100ngのpRF291(配列番号18)(Cas9発現、gRNAなし)もしくはpRF303(配列番号24)(Cas9発現、Can1-1 gRNA発現)のいずれかと混合した。形質転換混合物は、800RPMで1時間にわたり39℃でインキュベートした。形質転換混合物は、プラスミドDNAを用いて形質転換された細胞を選択するためにウラシル(Teknova)が欠如する完全最小培地プレート上でプレーティングした。プレートは、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの24コロニーは、単一コロニーに対してウラシル(Teknova)が欠如する完全最小培地プレート上で画線精製した。60μg/mLのL-カナバニンを含有するアルギニンが欠如する完全最小培地プレートに各画線精製コロニー(各形質転換について96)からの4つの単一コロニーをパッチした。L-カナバニンは、細胞へのアルギンおよびL-カナバニンのインポーターである機能的CAN1遺伝子を備える細胞にとっては毒性である。CAN1遺伝子内に機能的対立遺伝子の消失を含有する細胞は、培地中のL-カナバニンの存在に対して表現型的に耐性であり、L-カナバニンを含有するプレート上でコロニーを形成するであろう。CAN1遺伝子の野生型コピーを含有する細胞は、L-カナバニンを含有する培地上では増殖できないであろう。L-カナバニンの作用様式は、周知である(Rosenthal G.A.,The Biological effects and mode of action of L-Canavanine,a structural analog of L-arginine,The quarterly review of biology,volume 52,1977,155-178)。形質転換処理によるカナバニン耐性の発生頻度は、表2に示した。
Cas9発現カセットを有するがCAN1遺伝子をターゲティングする機能的gRNAが欠如するpRF291(配列番号18)を用いて形質転換された細胞は、C3Sポリヌクレオチド修飾鋳型を用いた単回実験におけるカナバニン耐性コロニーが生じた単一例を除いて、カナバニン耐性細胞を生じさせなかった(表2)。非保護もしくは保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の存在下および非存在下でpRF303(配列番号24)を用いて形質転換された細胞は、カナバニン耐性コロニーの類似の頻度を生じさせたが(表2)、これは形質転換ミックス中のポリヌクレオチド修飾鋳型の存在が標的化二本鎖切断を誘導するCas9/gRNAの能力を改変させないことを示唆している。
非保護(コントロール)もしくは保護ポリヌクレオチド修飾保護修飾鋳型の存在下で、Can1-1標的部位でCas9/gRNAにより生成された標的化二本鎖切断での相同組換え修復(HDR)およびNHEJの頻度を決定するために、標準技術を使用してCAN1遺伝子座(配列番号44)(使用したプライマー、GGAAGGCACATATGGCAAGG、フォワード(配列番号42)およびGTAAGAGTGGTTTGCTCCAGG、リバース(配列番号43))のヤロウイア(Yarrowia)コロニーPCRを実施した。CAN1遺伝子座が修飾されなかった、またはNHEJによって生成された小インデルを含有する場合は、コロニーPCRは、見かけのサイズ2125bp(配列番号44)でWT CAN1遺伝子座とサイズが類似するバンドを生じさせるであろう。Cas9/gRNA生成二本鎖切断が非保護もしくは保護修飾鋳型を使用して修復されていた場合は、PCRはより小さなCAN1遺伝子座産物392bpを生成することになり、これは全オープンリーディングフレーム(配列番号45)の欠失を示すであろう。コロニーPCRは、鋳型の存在下もしくは非存在下においてpRF303を用いて形質転換された細胞由来の全カナバニン耐性コロニー上で実施し、Cas9/gRNA生成二本鎖切断がポリヌクレオチド修飾鋳型を用いてHDRもしくはNHEJにより修復された細胞の分画が決定された(表3)。
非保護ポリヌクレオチド修飾鋳型もしくはC3S保護線状鋳型を用いて処理された細胞は、HDRによるCas9/gRNA生成DSBの修復の類似の頻度を有していた(表3)。PT線状保護修飾ポリヌクレオチド鋳型もしくはpRF80環状保護修飾ポリヌクレオチド修飾鋳型を用いて処理された細胞は、それぞれ、非保護(コントロール)線状ポリヌクレオチド修飾鋳型より2.1倍および1.4倍高いCas9/gRNA生成DSBのHDR頻度を有していた。Cas9/gRNA生成二本鎖切断の修復では、5’ホスホロチオエート修飾を備える線状保護鋳型もしくは環状の非複製保護鋳型は、非保護線状ポリヌクレオチド修飾鋳型の頻度の200%および140%を備えるHDRによって修復された切断の分画における実質的な増加を提供する。NHEJは、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を含む大多数の真核細胞における優勢なDNA DSB修復経路である。保護DNA修飾鋳型の使用は、Cas9/gRNA生成DSBのHDR修復の頻度を2倍に大きく増加させ、DSBの正確な鋳型修復を見いだすためにより少ない事象数のスクリーニングを可能にする。
ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用したCas9/gRNA生成二本鎖切断の修復の追加の厄介な問題は、DNA損傷の他の領域でNHEJ経路によって鋳型が組み込まれてしまうことがあり、結果としてオフサイト組込みを生じさせる可能性が高いことである。このオフサイト組込みがポリヌクレオチド修飾鋳型を用いて処理された細胞において発生する頻度を決定するために、ポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号46)の62bp断片を探すための相対コピー数分析を実施した。相対コピー数分析は、pRF303(配列番号24)および線状コントロールポリヌクレオチド修飾鋳型(配列番号34)、線状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型、PT(配列番号34)および環状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型のpRF80(配列番号33)を用いて処理された細胞由来のコロニー上で実施した。ポリヌクレオチド修飾鋳型がCAN1遺伝子座(配列番号39)でのCas9/gRNA二本鎖切断のHDR中にのみ組み込まれる場合は、細胞はコピー数分析断片(配列番号46)の単一コピーしか有していないであろう。しかし、細胞がNHEJ経路の活性に起因してポリヌクレオチド修飾鋳型の追加のコピーをゲノム内のどこかで組み込む場合は、断片の追加のコピーが存在し、細胞はより高い相対コピー数に復帰するであろう。手短には、ゲノムDNAは標準技術を使用してCan1-1 Cas9/gRNA標的化二本鎖切断のHDRに対して正であるとスコアリングされたコロニーから単離された。各コロニー由来の1μLのゲノムDNAは、CAN1遺伝子座(配列番号46)、(使用したプライマー、AGCGCCAAACCCAAAGC、フォワード(配列番号47)、CTTGCCATATGTGCCTTCCA、リバース(配列番号48)および6FAM-CTTTTCGCCCCCACTGCAGCC-TAMRA、プローブ(配列番号49))もしくはコントロールとしてのTEF1遺伝子座(配列番号50)(使用したプライマー、CGACTGTGCCATCCTCATCA、フォワード(配列番号51)、TGACCGTCCTTGGAGATACCA、リバース(配列番号52)および6FAM-TGCTGGTGGTGTTGGTGAGTT-TAMRA、プローブ(配列番号53))の両方について3つの複製qPCR反応に加えた。反応は、95℃で10分間、その後に95℃で15分間、60℃で1分間の40サイクルが続くサイクリング条件を使用して、life technologiesのQuant Studio 7機器上でTaqMAN汎用PCRマスターミックス(ABI life technologies)内でランした。プローブからの6FAM蛍光を40サイクルのPCRを通して監視し、Ct値を収集した。相対遺伝子コピー数は、ΔΔCt法によって決定した(User Bulletin #2 ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Updated 2001))。手短には、TEF1 Ct値を使用して、ゲノムDNAサンプル間の細胞コピー数の相違についてデータを正規化した。野生型菌株由来のゲノムDNAは、CAN1コピー数断片(配列番号46)についての相対定量のための参照物質として使用した。Quant Studio 7上のソフトウェアは、野生型株に比較して各サンプルについての相対遺伝子コピー数および対応するエラーを計算した。コロニーは、2未満の相対コピー数および2以上の相対コピー数である2つのビンに分離された。第1のビンは、ポリヌクレオチド修飾鋳型がCan1-1標的部位でのCas9/gRNA生成二本鎖切断(配列番号22)のHDR修復のためにのみ使用され、NHEJによってゲノム内のどこかに組み込まれなかったことを示している。第2のビンは、ポリヌクレオチド修飾鋳型がCan1-1標的部位(配列番号22)でのCas9/gRNA生成二本鎖切断を修復するために使用され、NHEJ機構を介してゲノム内のどこかに少なくとも1回は組み込まれたことを示している。コピー数分析の結果は、表4に示した。
コピー数分析は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のCAN1遺伝子座ならびに全ポリヌクレオチド修飾鋳型(保護および非保護)上の両方に存在したqPCR標的を使用して実施した。細胞内のCAN1遺伝子座のHDRのためにポリヌクレオチド修飾鋳型が使用された場合は、標的のコピー数は1のままであろう。ポリヌクレオチド編集鋳型がさらにヤロウィア(Yarrowia)属ゲノム内のどこかに挿入された場合は、コピー数はCAN1遺伝子座内に存在するコピーおよびゲノム内のどこかでNHEJによって挿入されたポリヌクレオチド編集鋳型のコピーを示す少なくとも2となるであろう。
非保護線状ポリヌクレオチド修飾鋳型およびPT鋳型はどちらもCAN1ポリヌクレオチド修飾鋳型の単一コピーを備えるおよそ60%のコロニーを産生したが、これはポリヌクレオチド修飾鋳型がCas9/gRNA生成DSBのHDRのために使用されたが、ゲノム内には組み込まれなかったことを示している(表4)。環状保護ポリヌクレオチド修飾鋳型であるpRF80は100%のコロニーがCAN1遺伝子座の単一コピーだけを備えることを証明したが、これは環状鋳型がCan1-1でのCas9/gRNA生成切断のHDRのためだけに使用され、染色体内のどこにも組み込まれなかったことを示している。
保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、非保護ポリヌクレオチド修飾鋳型と比較して驚くべき方法で優れた結果をもたらした。各鎖上の5つの5’ホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合と置き換えられている線状保護鋳型は、染色体内のどこかで線状鋳型の取込みにおける変化を誘発することなく、HDRによって修復されたCas9/gRNA生成DSBを用いると非保護鋳型の2倍超という多数のコロニーを生じさせる。線状ではなく環状である保護ポリヌクレオチド修飾鋳型は、Can1-1でのCas9/gRNA生成二本鎖切断のHDRの頻度における40%の改善をもたらし(表3)、ポリヌクレオチド修飾鋳型のオフサイト組込みを伴わずにコロニー数の60%の改善をもたらした(表4)。
実施例4
Cas9/sgRNAプラスミド上に含有された保護ポリヌクレオチド修飾鋳型を使用する精密なゲノム編集
本実施例では、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のURA3遺伝子を、Cas9発現カセットおよびsgRNA発現カセットを含有する環状DNA分子の一部である保護ポリヌクレオチド編集鋳型を使用して精密なゲノム編集の標的とした。
プラスミドpRF434(配列番号54)は、PacIおよびPmeI制限部位間でpRF291(配列番号18)に存在するURA3選択可能マーカーをハイグロマイシン耐性発現カセット(配列番号55)と置き換えることによって構築した。このプラスミドは、pRF291と同一方法で可変ターゲティングドメインの高スループットクローニングを可能にする(図1)。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)URA3遺伝子剤(配列番号56)内に、標的部位Ura3-1(配列番号57)が存在する。Ura3-1標的部位(配列番号57)に対応する可変ターゲティングドメインをコードするDNAを含有する2つのオリゴUra3-1F(配列番号58)およびURA3-1R(配列番号59)を100μMで二本鎖バッファー(30mMのHEPES(pH7.5)、100mMの酢酸ナトリウム)中に再懸濁させた。Ura3-1F(配列番号58)およびUra3-1R(配列番号59)を単一試験管中でそれぞれ50μMの最終濃度で混合し、95℃へ5分間加熱し、二本鎖DNA小分子を形成するために2つのヌクレオチドをアニーリングするために0.1℃/分で25℃へ冷却した。20μLの最終容量中に50ngのpRF434、Ura3-1F(配列番号58)およびUra3-1R(配列番号59)から構成される2.5μMの小二本鎖DNA、1×のT4リガーゼバッファー(50mMのTris-HCl、10mMのMgCl2、1mMのATP、10mMのDTT(pH7.5))、0.5μMのAarIオリゴヌクレオチド、2単位のAarI、40単位のT4 DNAリガーゼを含有する単一チューブ消化/ライゲーション反応を作成した。コントロール反応には、Ura3-1F(配列番号58)およびUra3-1R(配列番号59)の小DNA二本鎖が欠如していた。反応は、37℃で1時間インキュベートし、その後に以前に記載されたようにTop10 E.コリ(E.coli)細胞内へ形質転換させた(Green,M.R.& Sambrook,J.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Fourth Edition edn,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012))。Ura3-1F(配列番号58)およびUra3-1R(配列番号59)の二本鎖がAarI制限部位によって隣接されたrpsL逆染色マーカーに置き換えられているpRF434の存在を選択するために(図1)、細胞は、100μg/mLのアンピシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシンを含有する1.5(重量/容積)%のBacto寒天により凝固させた溶原性ブロス上でプレーティングした。高スループットクローニングカセットを含有するpRF434(配列番号54)の存在は、アンピシリンに対して表現型的に耐性であるが、逆選択カセットのためにストレプトマイシンに対しては感受性であるコロニーを産生したが、ストレプトマイシンの存在下ではコロニーを形成しない。しかし、逆選択カセットがAarI酵素によって除去され、Ura3-1二本鎖DNAがその部位内にライゲートされる(AarI認識部位を除去する)場合には、形質転換細胞は、アンピシリン耐性、ストレプトマイシン耐性表現型を有し、アンピシリンおよびストレプトマイシンの存在下でコロニーを形成する。AarI部位内でUra3-1可変ターゲティングドメインをコードするDNAを含有するpRF434(配列番号54)は、SUP4ターミネーター(配列番号17)に融合したCERドメイン(配列番号16)をコードするDNAに融合したUra3-1 VTドメイン(配列番号60)をコードするDNAに融合したHDVリボザイム(配列番号14)をコードするDNAに融合したyl52プロモーター(配列番号13)を含有する組換えHDV-sgRNA発現カセットを作成する。この構築物を含有するプラスミドであるpRF421(配列番号61)を使用して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のURA3遺伝子座(配列番号56)をターゲティングした。
URA3遺伝子座(配列番号56)をターゲティングする保護ポリヌクレオチド編集鋳型を構築するために、URA3オープンリーディングフレーム(配列番号62)の上流378bpをURA3停止コドンおよびこの停止コドン(配列番号63)をコードするDNAの下流255bpに融合させた。このDNAは、停止コドンだけを残してURA3オープンリーディングフレームを欠失させることのできるポリヌクレオチド編集鋳型を表す。ポリヌクレオチド編集鋳型は、5’EcoRIおよび3’HinDIII制限部位(配列番号64)を用いて化学的に合成した。この構築物は、プラスミドpRF263(配列番号65)を生成するpUC18(配列番号32)のEcoRI/HinDIII部位内にクローニングされた。ポリヌクレオチド編集鋳型は、5’および3’EcoRI部位(配列番号68)によって隣接されたURA3欠失ポリヌクレオチド修飾鋳型を生成するために、プライマーHY007(配列番号66)およびオリゴ297(配列番号65)を使用してpRF263から増幅させた。EcoRI隣接URA3欠失ポリヌクレオチド修飾鋳型は、pRF437(配列番号69)を生成するためにpRF421(配列番号61)のEcoR部位内にクローニングされた。
原栄養性ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC20362細胞は、30℃のYPD培地プレート(Teknova)上で24時間増殖させた。1ループの細胞を形質転換バッファー(35%のポリエチレングリコール(平均分子量3550)、100mMの酢酸リチウム、100mMのジチオトレイトール、10mMのTris、1mMのEDTA(pH6.0))中に再懸濁させた。100μLの細胞懸濁液は、100ngのpRF421(配列番号61)、pRF434(配列番号54)、pRF437(配列番号69)のいずれかまたはDNAなしと混合した。細胞に1時間にわたり39℃、800RPMで熱ショックを与えた。各形質転換に1mLのYPD培地(Teknova)を加えた。細胞は、ハイグロマイシン耐性カセットの発現を可能にするために4時間にわたり30℃、220RPMで増殖させた。細胞は、250mg/Lの硫酸ハイグロマイシン(calbiocnem)を含有するYPD培地上でプレーティングした。コロニーは、30℃で形成するに任せた。各形質転換からの48コロニー(コロニーを全く有していなかったDNAなしを除いて)は、YPD培地プレート(Teknova)および450mg/Lの5-フルオロオロチン酸(5FOA)を含有するCMプレートにパッチした。5FOAは、機能的URA3遺伝子を備える細胞に対して選択する。これらのパッチから、pRF434(配列番号54)、pRF421(配列番号61)およびpRF437(配列番号69)によるURA3不活性化の効率をスコアリングすることが可能であった(表5)。
Cas9/sgRNAプラスミドの状況内での保護ポリヌクレオチド修飾鋳型の存在は、Ura3-1可変ターゲティングドメインを含有するsgRNAを使用してURA3遺伝子座をターゲティングする頻度に影響を及ぼさなかった(表5)。5FOA耐性の頻度は全ターゲティング頻度を表し、NHEJ経路およびHDR経路によるCas9/gRNA DSBの修復により生成された突然変異体を含む。HDRおよびNHEJ経路によるCas9/sgRNA生成DSBの修復の頻度を決定するために、5FOA耐性コロニー内のURA3遺伝子座のPCR増幅は、オリゴヌクレオチドプライマー308(配列番号70)および309(配列番号71)を使用して実施した。典型的には、NHEJ経路によって修復されたCas/sgRNA切断は、少数ヌクレオ値の欠失もしくは挿入を生じさせ、結果として小インデルを生じさせ、全遺伝子座が増幅される場合は、産物は(1714bp)のサイズのWT(配列番号56)であると思われる。Cas/sgRNA生成DSBがHDRを介して保護ポリヌクレオチド編集鋳型を用いて修復されている場合には、増幅URA3遺伝子座は、URA3オープンリーディングフレームの欠失に起因してサイズが減少する(859bp)(配列番号72)。pRF437(配列番号69)を用いて形質転換された細胞由来の5FOA耐性コロニーのPCRの例は、図4に示した。
5FOA耐性コロニー間のHDRの全頻度は、表6に示した。
ポリヌクレオチド編集鋳型を複製環状DNA内に配置することによって、末端は保護され、修飾鋳型は細胞内に残留し、HDR経路を介してのCas/sgRNA生成DSBの修復を有する80%を超えるコロニーを産生するので、このためコロニーの15%はNHEJによるCas/sgRNA生成切断を修復した。