図1は、本発明の一の実施の形態に係るフィルタプレス装置1の構成を示す図であり、フィルタプレス装置1を示す側面図である。図2は、フィルタプレス装置1の一部を示す平面図である。図1および図2では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している(他の図において同様)。典型的には、X方向およびY方向は水平な方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
フィルタプレス装置1は、液体中に汚泥や鉱物等が混ざった混合物(以下、「スラリー」という。)に対して加圧を伴う濾過を行う。また、フィルタプレス装置1は、後述する濾布経路に沿って、1枚の濾布31を移動(走行)させる濾布走行式である。図1では、濾布31を太線で示している(図2を除く他の図において同様)。
図1に示すフィルタプレス装置1は、制御部10と、複数の濾板2と、濾布31と、ローラ群4と、濾板開閉機構5とを備える。制御部10は、フィルタプレス装置1の全体制御を担う。各濾板2は、ZX平面に平行な板状部材であり、複数の濾板2はY方向に配列される。X方向における複数の濾板2の両側には、Y方向に長い一対のサイドバー111(図2参照)が設けられる。複数の濾板2は、一対のサイドバー111によりY方向に移動可能に支持される。一対のサイドバー111は、フィルタプレス装置1の全体を支持する支持フレーム11の一部である。各濾板2の構造の詳細については後述する。
濾板開閉機構5は、移動ヘッド51と、固定ヘッド52と、進退機構53(図2参照)と、4個の連結部54とを備える。移動ヘッド51および固定ヘッド52は、Y方向において複数の濾板2を挟んで配置される。詳細には、固定ヘッド52は、複数の濾板2の(+Y)側に配置され、支持フレーム11に固定される。移動ヘッド51は、複数の濾板2の(-Y)側に配置され、一対のサイドバー111によりY方向に移動可能に支持される。進退機構53は、例えば油圧シリンダであり、移動ヘッド51をY方向に移動させる。図2では、進退機構53の(+Z)側に配置される構成(後述の駆動ローラ61、移動ローラ71等)の図示を省略している。
4個の連結部54のうち2個の連結部54は、図1に示すように、(+X)側のサイドバー111の(+Z)側および(-Z)側にそれぞれ配置される。残りの2個の連結部54は、(-X)側のサイドバー111の(+Z)側および(-Z)側にそれぞれ配置される。各連結部54は、複数の連結板541および複数の支持ピン542を有する。支持ピン542は、複数の濾板2のそれぞれのX方向に垂直な側面に固定され、連結板541は、支持ピン542により回動可能に支持される。また、移動ヘッド51および固定ヘッド52のそれぞれにおける、X方向に垂直な側面にも、係合ピンが取り付けられる。各連結板541には、他の連結板541の支持ピン542または係合ピンが挿入される長孔が形成される。各連結部54では、複数の連結板541、複数の支持ピン542および複数の係合ピンがリンク機構を構成する。
濾板開閉機構5では、移動ヘッド51を(+Y)方向に移動させることにより、複数の濾板2が固定ヘッド52に向かって押し込まれ、移動方向であるY方向に互いに密着する(後述の図4参照)。正確には、互いに隣接する2つの濾板2は、濾布31を挟んで互いに密着する。複数の濾板2を移動方向に互いに密着させた状態を、以下、「密着状態」という。
また、密着状態において移動ヘッド51を(-Y)方向に移動させると、連結部54が実現するリンク機構により、複数の濾板2が移動ヘッド51の移動に連動して(-Y)方向に移動し、図1に示すように、互いに隣接する2つの濾板2の全ての組合せにおける間隔が一定となる。このように、複数の濾板2が移動方向に互いに離間する。複数の濾板2を移動方向に互いに離間させた状態を、以下、「離間状態」という。離間状態では、最も(-Y)側の濾板2と移動ヘッド51との間、および、最も(+Y)側の濾板2と固定ヘッド52との間にも、間隙が形成される。フィルタプレス装置1では、濾板開閉機構5により、密着状態と離間状態とが選択的に形成される。なお、連結部54の個数は任意に決定されてよい。また、リンク機構の構造は適宜変更されてよい。
図3および図4は、複数の濾板2、濾布31およびローラ群4等を示す図であり、X方向に垂直なこれらの断面を示している。図3では、複数の濾板2は離間状態であり、図4では、複数の濾板2は密着状態である。隣接する2つの濾板2において、互いに対向する2つの面の一方には、ダイヤフラム21が設けられる。図3および図4の例では、互いに対向する2つの面のうち(+Y)側の面にダイヤフラム21が設けられる。また、(-Y)側の面がダイヤフラム21に対向する対向面22となる。ダイヤフラム21の(+Y)側の空間には所定の流体が圧入可能であり、当該流体の圧入によりダイヤフラム21が対向面22に向かって凸状となる。ダイヤフラム21および対向面22の双方にはZ方向に延びる複数の溝がX方向に配列して形成される。ダイヤフラム21と対向面22との間、すなわち、互いに隣接する2つの濾板2の間が、濾過が行われる濾過室20である。図4に示す密着状態では、濾過室20が閉じられており、図3に示す離間状態では、濾過室20が開かれている。
ローラ群4は、複数の上ローラ411と、複数の下ローラ421とを備える。複数の上ローラ411および複数の下ローラ421は、X方向に延びる。図1に示すように、最も(-Y)側の濾板2を除く各濾板2の上部には上ローラ支持部23が取り付けられる。各上ローラ支持部23により上ローラ411が回転可能に支持される。離間状態において、各上ローラ支持部23に支持される上ローラ411は、Y方向に関して、当該上ローラ支持部23が取り付けられる濾板2と当該濾板2の(-Y)側に隣接する濾板2との間に配置される。すなわち、上ローラ411は、濾過室20の上方に配置される。また、上ローラ支持部23には、スクレーパ231が設けられる。最も(-Y)側の濾板2には、上ローラ支持部23は設けられない。
各濾板2の下部には下ローラ支持部24が取り付けられる。下ローラ支持部24により下ローラ421が回転可能に支持される。下ローラ421は、当該濾板2のほぼ真下に配置される。図1では、最も(+Y)側の上ローラおよび下ローラに符号411a,421aを付し、以下、上ローラ411aおよび下ローラ421aを他の上ローラおよび下ローラと区別する場合に、「最外上ローラ411a」および「最外下ローラ421a」という。
ローラ群4は、上ローラ412をさらに備える。上ローラ412は、X方向に延びる。上ローラ412は、移動ヘッド51の上方に配置され、回転可能な状態で移動ヘッド51に対して固定される。上ローラ412は、移動ヘッド51と共にY方向に移動可能である。複数の上ローラ411,412のうち、上ローラ412は最も(-Y)側に配置され、後述の駆動ローラ61に最も近接する。以下、上ローラ412を「最外上ローラ412」という。
濾布31は長尺であり、例えば、ポリプロピレン等の合成繊維により形成される。図3に示すように、Y方向に並ぶ複数の上ローラ411、および、複数の下ローラ421において、濾布31は、上ローラ411と下ローラ421とに交互に、かつ、Y方向に沿って順に掛けられる。換言すると、Y方向に連続する複数の濾過室20を順に経由する経路(以下、「濾布経路」という。)に沿って濾布31が配置されるように、ローラ群4により濾布31が支持される。濾布経路は、上ローラ411と下ローラ421とを交互に経由する。各濾過室20を形成する2つの濾板2の間に注目した場合に、濾布31が、一方の濾板2の下方から当該2つの濾板2よりも上方の上ローラ411へと向かい、当該上ローラ411により折り返されて他方の濾板2の下方へと向かう。したがって、図3に示す離間状態において、当該2つの濾板2の間では、濾布31の形状(濾布経路の形状)は、上下が反転された略V字状となる。濾布31は、最外上ローラ412にも掛けられる。
スクレーパ231は、当該上ローラ411と当該2つの濾板2との間において、Y方向に互いに対向する濾布31の2つの部位の間に設けられる。濾布31において、当該2つの部位のうち(+Y)側の部位は、スクレーパ231の(+Y)側の端部に接触し、(-Y)側の部位は、スクレーパ231の(-Y)側の面に当接する。これにより、離間状態においても、当該2つの濾板2の間における濾布31のダイヤフラム21側の部位がダイヤフラム21に接触または近接し、対向面22側の部位が対向面22に接触または近接する。
一方、図4に示す密着状態では、各濾過室20を形成する2つの濾板2が密着し、濾布31のダイヤフラム21側の部位と、対向面22側の部位とが接触または近接する。後述するスラリーの処理では、濾布31のこれらの部位の間にスラリーが注入され、当該スラリーが濾布31により濾過される。
図1のフィルタプレス装置1は、濾布走行機構6と、移動ローラ71と、複数のガイド部32と、2つのマーク検出部72とをさらに備える。濾布走行機構6は、2つの駆動ローラ61,62を有する。駆動ローラ61は、移動ヘッド51の(-Y)側に配置され、駆動ローラ62は、固定ヘッド52の(+Z)側に配置される。各駆動ローラ61,62には、図示省略のモータが減速機を介して接続されており、駆動ローラ61,62は、X方向に平行な中心軸を中心として回転する。図1の例では、2つの駆動ローラ61,62の回転速度は、ほぼ等しい。2つの駆動ローラ61,62は、互いに独立して回転可能である。濾布31において、長手方向における移動ヘッド51側の端部は駆動ローラ61に固定され、固定ヘッド52側の端部は駆動ローラ62に固定される。本実施の形態では、濾布31の各端部を含む部位が駆動ローラ61,62に巻回される。濾布走行機構6は、離間状態において、2つの駆動ローラ61,62の一方により濾布31を送り出し、他方により濾布31を巻き取ることにより、濾布経路に沿って濾布31を走行させる。
各駆動ローラ61,62には、角度位置検出部63が設けられる。角度位置検出部63は、ロータリーエンコーダであり、例えば、歯車状の円盤と、円盤の歯に近接する近接センサとを有する。円盤は、駆動ローラ61,62の回転軸の端部に取り付けられる。近接センサでは、円盤の歯が通過する毎にパルスが生成され、円盤の歯数に対応する分解能で駆動ローラ61,62の角度位置が検出される。当該パルスは、制御部10に出力される。
移動ローラ71は、移動ヘッド51と(-Y)側の駆動ローラ61との間に配置される。移動ローラ71は、X方向に延び、ローラ支持部711により上下方向に移動可能に支持される。ローラ支持部711には、X方向に延びる補助ローラ712がさらに取り付けられる。X方向に沿って見た場合に、最外上ローラ412と駆動ローラ61との間に想定される(+Z)側の接線に対して、補助ローラ712が(-Z)側で接する位置に配置される(後述の図5参照)。最外上ローラ412と駆動ローラ61との間も、上記濾布経路に含まれる。後述する濾布31の走行時には、濾布31は、当該接線に沿った形状となる。
図1に示すように、移動ローラ71は、濾布31の(+Z)側に配置され、移動ローラ71の重量により濾布31が下方に向かって押さえられる。すなわち、移動ローラ71は、濾布31における、最外上ローラ412と駆動ローラ61との間の部位に対して張力を作用させる。このとき、移動ローラ71は比較的軽いため、移動ローラ71の重量により濾布31に作用する張力は小さい。したがって、2つの駆動ローラ61,62が停止した状態(濾布31の非走行時)において、仮に最外上ローラ412と(+Y)側の駆動ローラ62との間において濾布31の一部に弛みが生じている場合であっても、当該弛みは移動ローラ71の重量によっては解消されない。すなわち、最外上ローラ412と駆動ローラ62との間における濾布31の一部の弛みを維持するような大きさの張力が、移動ローラ71により濾布31に作用する。移動ローラ71の重量により、(-Y)側の駆動ローラ61から濾布31が引き出されることもない。
移動ローラ71に作用する重力は、駆動ローラ61,62による濾布31の巻き取り時に濾布31に作用させる力よりも十分に小さく、例えば、当該力の1/5以下であり、好ましくは1/8以下である。移動ローラ71により、最外上ローラ412と(-Y)側の駆動ローラ61との間において、濾布31が不規則に弛んで、皺等が発生することが防止される。移動ローラ71は、重錘ローラとも呼ばれる。
複数のガイド部32は、移動ローラ71、最外上ローラ412、最も(-Y)側の上ローラ411、および、最外上ローラ411aにそれぞれ設けられる。図2に示すように、ガイド部32は、各ローラの両端近傍に設けられる一対の環状突起部321を有する。環状突起部321は、ローラの外周面から全周に亘って突出する。X方向における一対の環状突起部321間の空間の幅は、長手方向に垂直な幅方向(X方向)における濾布31の幅よりも僅かに大きい。図2では、濾布31の一部を二点鎖線にて示している。各ガイド部32では、一対の環状突起部321が、濾布経路上において長手方向に沿う濾布31の両エッジ311に近接することにより、幅方向における濾布31の位置が制限される。
図1に示すように、2つのマーク検出部72は、2つの駆動ローラ61,62の近傍にそれぞれ設けられる。各マーク検出部72は、図示省略の出射部と、受光部とを有する。濾布31において、一方のエッジ311近傍であって長手方向における所定位置には、孔部であるマークが形成される。出射部および受光部は、当該エッジ311近傍の部位を挟んで互いに対向する。マーク検出部72では、出射部から出射される光が、マークを透過して受光部により受光されることにより、当該マークが検出される。マークの検出信号は、制御部10に出力される。一方の駆動ローラ61,62が濾布31の巻き取り動作を行う後述の濾布走行時には、当該駆動ローラ61,62に近接するマーク検出部72がマークを検出することにより、当該駆動ローラ61,62による巻き取り動作が停止される。濾布31では、2つの駆動ローラ61,62における巻き取り動作の停止をそれぞれ指示する2つのマークが形成される。
次に、フィルタプレス装置1がスラリーを処理する動作について説明する。スラリー処理前のフィルタプレス装置1では、図3に示す離間状態が形成されている。このとき、後述の動作により、最外下ローラ421aにおいて濾布31が弛んだ状態となっている。すなわち、濾布31において上下方向の向きが反転する部位が、最外下ローラ421aから下方に離れている。なお、(+Y)側の駆動ローラ62と最外上ローラ411aとの間における濾布31の部位の重量により、停止状態の駆動ローラ62から濾布31が引き出されることはない。また、(-Y)側の駆動ローラ61と最外上ローラ412との間では、移動ローラ71により濾布31が所定量だけ押し下げられた状態である。既述のように、移動ローラ71の重量により、停止状態の駆動ローラ61から濾布31が引き出されることはない。
続いて、移動ヘッド51が(+Y)方向に移動することにより、図4に示す密着状態が形成される。密着状態では、各濾過室20を形成する2つの濾板2が濾布31を挟んで密着し、濾布31のダイヤフラム21側の部位と、対向面22側の部位とが接触または近接する。
ここで、各濾過室20に注目すると、図3の離間状態では、Y方向に関する対向面22の位置は、スクレーパ231の(-Y)側の面の真下、または、当該面よりも僅かに(-Y)側に位置する。したがって、上ローラ411から対向面22へと向かう濾布31の部位は真っ直ぐに延びて、開かれた状態の濾過室20内に入る。一方、図4の密着状態では、Y方向に関する対向面22の位置は、スクレーパ231の(-Y)側の面よりも(+Y)側に位置する。したがって、上ローラ411から対向面22へと向かう濾布31の部位が、スクレーパ231の当該面の下端で(+Y)側に折り曲げられて濾過室20内に入る。
このように、密着状態では、上ローラ411から対向面22を通過して下ローラ421へと至る濾布31の部位の長さが、離間状態における当該長さよりも長くなる。その結果、密着状態における最外上ローラ411aから最外上ローラ412までの濾布31の長さが、離間状態における当該長さよりも長くなり、最外下ローラ421aにおける濾布31の弛み量、および、移動ローラ71による濾布31の押し下げ量が小さくなる。フィルタプレス装置1では、密着状態においても、最外下ローラ421aにおける濾布31の弛み、および、移動ローラ71による濾布31のある程度の押し下げは確保されており、濾布31に対して過度な張力が作用することはない。
図4に示す密着状態が形成されると、各濾過室20において、濾布31のダイヤフラム21側の部位と対向面22側の部位との間に、図示省略の送液具を介してスラリーが注入され、当該スラリーが濾布31により濾過される。濾布31を通過した液体は、ダイヤフラム21および対向面22に形成された複数の溝を介して濾過室20の下部に移動し、当該下部に設けられた回収口にて回収される(後述の圧搾時において同様)。続いて、ダイヤフラム21の(+Y)側の空間に、流体を圧入することによりダイヤフラム21が対向面22に向かって凸状となる。これにより、濾布31内のスラリーに対する圧搾が行われる。
スラリーの圧搾が完了すると、移動ヘッド51が(-Y)方向に移動することにより、複数の濾板2が離間状態とされる(図3参照)。既述のように、離間状態では、上ローラ411から対向面22を通過して下ローラ421へと至る濾布31の部位の長さが、密着状態における当該長さよりも短くなる。したがって、一部または全ての下ローラ421において濾布31が弛む。
続いて、制御部10の制御により、2つの駆動ローラ61,62が同じ方向(図3中の反時計回り)に回転することにより、(-Y)側の駆動ローラ61による濾布31の巻き取り動作、および、(+Y)側の駆動ローラ62による濾布31の送り出し動作が開始される。これにより、濾布31が駆動ローラ62から駆動ローラ61に向かって濾布経路に沿って走行する。
このとき、駆動ローラ62による送り出し動作により、最外下ローラ421aでは、図5に示すように濾布31が弛んだ状態が保たれる。これにより、濾布31において、最外上ローラ411aに対する走行方向の後側近傍の部位は、いずれの部材にも拘束されていない状態となる。なお、当該部位には、その自重による張力は作用する。また、濾布31の厚さは、例えば0.8~1.5mmであり、濾布31は、ある程度の剛性を有する。したがって、長手方向における濾布31の各部位が最外上ローラ411aを通過する直前に、当該部位の一方のエッジ311が、ガイド部32の環状突起部321(図2参照)よりも、僅かに幅方向外側に位置する場合であっても、当該部位が最外上ローラ411aを通過する際に、当該エッジ311が環状突起部321に当接して、その幅方向内側に戻される。このように、濾布31の各部位が最外上ローラ411aを通過する際に、ガイド部32により幅方向の位置が修正され、幅方向における当該部位の位置が、一対の環状突起部321の内側に制限される。
駆動ローラ62から駆動ローラ61に向かう濾布31の走行では、各濾過室20において、対向面22に接触または近接する濾布31の部位は、対向面22の下方に位置する下ローラ421に向かって下降する。下ローラ421では、濾布31の移動方向がV字状に反転される。したがって、濾布31の当該部位に付着する固形物(ケーキ)は、下ローラ421近傍にて濾布31から剥離される。なお、下ローラ421の下方に濾布31に向けて洗浄液を吐出する洗浄部が設けられ、濾布31の走行時に、ケーキの剥離とともに、または、ケーキの剥離と独立して、濾布31の洗浄が行われてもよい。
また、各濾過室20において、ダイヤフラム21に接触または近接する濾布31の部位は、濾過室20の上方に位置する上ローラ411に向かって上昇する。既述のように、各濾過室20の2つの濾板2と上ローラ411との間において、Y方向に互いに対向する濾布31の2つの部位の間に、スクレーパ231が設けられる。上ローラ411に向かって移動する(上昇する)濾布31の部位は、スクレーパ231の(+Y)側の端部に当接し、当該部位に付着するケーキが掻き取られる。
(-Y)側の駆動ローラ61では、近接するマーク検出部72が濾布31に形成された既述のマークを検出することにより、巻き取り動作が停止される。本実施の形態では、密着状態において各濾過室20の対向面22に接触または近接する濾布31の部位の全体が、下ローラ421を通過するように、濾布31におけるマークの位置が設定されている。また、(+Y)側の駆動ローラ62では、角度位置検出部63(図1参照)により所定数のパルスが生成されると、送り出し動作が停止される。駆動ローラ62が送り出し動作を停止するまのでパルス数は、濾布31の走行時において最外下ローラ421aにて濾布31が弛んだ状態が保たれるように、駆動ローラ61による濾布31の巻き取り長さに応じて決定される。駆動ローラ61による濾布31の巻き取り長さは、密着状態において各濾過室20のダイヤフラム21に接触または近接する濾布31の部位の全体が、スクレーパ231を通過し、さらに下ローラ421を通過するように設定されてもよい。これにより、濾布31に付着したケーキをより確実に除去することが可能となる。
続いて、駆動ローラ61,62が、直前の濾布31の走行時とは反対方向(図5の時計回り)に回転することにより、(+Y)側の駆動ローラ62による濾布31の巻き取り動作、および、(-Y)側の駆動ローラ61による濾布31の送り出し動作が開始される。これにより、濾布31が駆動ローラ61から駆動ローラ62に向かって濾布経路に沿って走行する。
このとき、図6に示すように、最外上ローラ412と駆動ローラ61との間では、駆動ローラ61により送り出される濾布31が、移動ローラ71により押し下げられる。既述のように、移動ローラ71は比較的軽いため、濾布31に作用する張力は小さい。したがって、長手方向における濾布31の各部位が最外上ローラ412を通過する際に、ガイド部32の一対の環状突起部321(図2参照)により幅方向の位置が修正される。すなわち、幅方向における当該部位の位置が、一対の環状突起部321の内側に制限される。
(+Y)側の駆動ローラ62では、近接するマーク検出部72が濾布31に形成された既述のマークを検出することにより、巻き取り動作が停止される。これにより、密着状態から離間状態を形成した直後に各濾過室20に配置されていた濾布31の部位が、ほぼ同じ位置に戻される。また、(-Y)側の駆動ローラ61では、角度位置検出部63(図1参照)により所定数のパルスが生成されると、送り出し動作が停止される。駆動ローラ61が送り出し動作を停止するまのでパルス数は、濾布31の走行時において移動ローラ71が濾布31をある程度押し下げた状態が保たれるように、駆動ローラ62による濾布31の巻き取り長さに応じて決定される。以上のように、フィルタプレス装置1では、離間状態において、濾布31が所定の距離だけ往復移動し、脱水ケーキが剥離される。
駆動ローラ62では、巻き取り動作の停止後、所定の角度だけ反転することにより、濾布31が送り出される。これにより、図3に示すように、最外下ローラ421aにて濾布31が弛んだ状態となる。また、駆動ローラ61における送り出し動作の停止後では、最外上ローラ412と駆動ローラ61との間において、移動ローラ71により濾布31が所定量だけ押し下げられた状態となる。その結果、次に密着状態を形成する際に、濾布31に対して過度な張力が作用することが防止される。以上の動作により、フィルタプレス装置1がスラリーを処理する動作が完了する。
ここで、比較例のフィルタプレス装置を想定する。比較例のフィルタプレス装置では、上記濾布31よりも十分に長い濾布の端部同士を接続することにより、複数の濾過室を経由する無端濾布が形成される。無端濾布は、緊張機構により比較的大きい張力を作用させて弛みが生じない状態で複数のローラに掛けられており、一部の駆動ローラの回転により、無端濾布が一定の方向に循環移動する。しかしながら、比較例のフィルタプレス装置では、無端濾布の表面が汚れている場合等に、駆動ローラに対して無端濾布が滑って、無端濾布を精度よく移動させることができなくなる。また、無端濾布の循環移動では、幅方向における無端濾布の位置ずれが、移動距離の増大に従って大きくなるため、蛇行を修正する機構等が必須となる。
これに対し、フィルタプレス装置1では、濾布31の長手方向における両端が2つの駆動ローラ61,62に接続される。これにより、駆動ローラ61,62に対して濾布31が滑ることなく、濾布31を精度よく移動させることができる。また、幅方向における濾布31の位置を制限するガイド部32が、濾布経路上に設けられ、一方の駆動ローラ62から他方の駆動ローラ61に向かって濾布31を走行させる際に、濾布31において当該ガイド部32よりも駆動ローラ62側の部位が弛んだ状態とされる。これにより、濾布31の走行時における蛇行を適切に修正することができ、専用の蛇行修正機構等を省略してフィルタプレス装置1の構成を簡素化することができる。
さらに、他のガイド部32が、濾布経路上に設けられ、駆動ローラ61から駆動ローラ62に向かって濾布31を走行させる際に、濾布31において当該他のガイド部32よりも駆動ローラ61側の部位に対して、当該他のガイド部32と駆動ローラ62との間における濾布31の一部の弛みを維持するような大きさの張力が作用する。これにより、濾布31の走行における往路および復路の双方において、蛇行を修正することができる。フィルタプレス装置1では、濾布31の使用時間が長くなり、濾布31の伸縮量が大きくなった場合であっても、駆動ローラ61,62により、濾布31の伸縮を容易に吸収することが可能である。
また、比較例のフィルタプレス装置では、濾布を取り付ける際に、濾布を複数のローラに掛けた後、濾布の端部同士を接続して無端濾布が形成される。したがって、当該濾布の端部に所定の複雑な加工を事前に施す必要があるとともに、濾布の端部同士を接続する際にも煩雑な作業が必要となる。
これに対し、フィルタプレス装置1では、濾布31の両端部を駆動ローラ61,62に固定することにより濾布31が取り付けられるため、濾布31に対して複雑な加工を施す必要がない。また、比較例のフィルタプレス装置に比べて、濾布31の長さを短くすることができ、消耗品である濾布31に要するコストを削減することができる。さらに、濾布31の交換作業を、簡単に行うことも可能である。
フィルタプレス装置1では、複数の上ローラのうち、各駆動ローラ61,62に最も近接する上ローラ412,411aにガイド部32が設けられる。これにより、濾布経路上において、ガイド部32を容易に配置することができる。また、密着状態を形成する直前において、2つの駆動ローラ61,62間における濾布31の一部が弛んだ状態である。これにより、密着状態を形成する際に、濾布31に過度な張力が作用して、濾布31等が損傷することを防止することができる。各駆動ローラ61,62では、マーク検出部72におけるマークの検出に基づいて、濾布31の巻き取り動作を停止することにより、濾布31の走行を適切な位置にて停止することができる。
スラリーの濾過および圧搾の完了後、離間状態において、濾布31の対向面22側の部位が下方へと移動し、下ローラ421において移動方向が上方に反転する。その結果、当該部位に付着するケーキを適切に剥離させ、濾板2の下方に効率よく排出することができる。また、濾布31のダイヤフラム21側の部位は上方へと移動して、スクレーパ231に当接する。これにより、上ローラ411に接触する前に、当該部位に付着するケーキを剥離させることができ、上ローラ411が汚れることを抑制することができる。さらに、濾布31を比較的短い距離だけ移動するのみで、濾布31の対向面22側のケーキ、および、ダイヤフラム21側のケーキをほぼ同時に剥離させることができる。
上記フィルタプレス装置1では様々な変形が可能である。
図1の(+Y)側の駆動ローラ62と同様に、(-Y)側の駆動ローラ61が、複数の濾板2よりも上方に配置されてもよい。図7に示す例では、駆動ローラ61が移動ヘッド51の上方に配置されるとともに、図1の移動ローラ71および最外上ローラ412が省略される。図7の例では、(-Y)側の駆動ローラ61から(+Y)側の駆動ローラ62に向かって濾布31を走行させる際に、駆動ローラ61による送り出し動作により、最も(-Y)側の下ローラ421において、濾布31が弛んだ状態が保たれる。これにより、長手方向における濾布31の各部位が最も(-Y)側の上ローラ411を通過する際に、当該上ローラ411のガイド部32により幅方向における当該部位の位置が修正される。また、図1の(+Y)側の駆動ローラ62が固定ヘッド52の(+Y)側に配置されてもよい。この場合、固定ヘッド52に上ローラ412が設けられ、駆動ローラ62と固定ヘッド52との間に移動ローラ71が設けられる。
以上のように、フィルタプレス装置1では、一方の駆動ローラから他方の駆動ローラに向かって濾布31を走行させる際に、濾布31において一のガイド部32よりも当該一方の駆動ローラ側の部位(すなわち、走行方向の後側の部位)が弛んだ状態であればよい。または、当該ガイド部32よりも当該一方の駆動ローラ側の部位に対して、当該ガイド部32と当該他方の駆動ローラとの間(すなわち、走行方向の前側)における濾布31の一部の弛みを維持するような大きさの張力が作用すればよい。好ましいフィルタプレス装置1では、当該他方の駆動ローラから当該一方の駆動ローラに向かって濾布31を走行させる際にも、濾布31において他のガイド部32よりも当該他方の駆動ローラ側の部位が弛んだ状態である、または、当該他のガイド部32よりも当該他方の駆動ローラ側の部位に対して、当該他のガイド部32と当該一方の駆動ローラとの間における濾布31の一部の弛みを維持するような大きさの張力が作用する。
図8に示すように、フィルタプレス装置1aにおいて、無端の濾布31が用いられてもよい。フィルタプレス装置1aでは、1つの駆動ローラ61が設けられる。また、ローラ群4の複数の上ローラ411および複数の下ローラ421に加えて、複数の補助ローラ43が設けられ、無端の濾布31は、これらのローラ411,421,43、並びに、駆動ローラ61に掛けられる。最も(+Y)側の最外下ローラ421aでは、濾布31は弛んだ状態である。フィルタプレス装置1aは、駆動ローラ61の近傍に配置される張力保持機構611をさらに備える。張力保持機構611は、補助駆動ローラ612を有し、チェーンおよびギアを介して駆動ローラ61の回転が補助駆動ローラ612に伝達される。
フィルタプレス装置1aでは、離間状態において、駆動ローラ61が図8中の時計回りに回転する。また、駆動ローラ61の回転により、補助駆動ローラ612が、駆動ローラ61とは反対方向である図8中の反時計回りに回転する。駆動ローラ61および補助駆動ローラ612の回転により、両者に接する濾布31の部位間が緊張し、下方において濾布31が弛んだ状態で、駆動ローラ61により濾布31を搬送することが可能となる。濾布31は、濾布経路に沿って固定ヘッド52側から移動ヘッド51側に向かう一定の走行方向に走行する。このとき、最外下ローラ421aにおいて濾布31が弛んだ状態が維持されるため、濾布31の各部位が最外上ローラ411aを通過する際に、ガイド部32により幅方向の位置が適切に修正される。
フィルタプレス装置1aの設計によっては、図9に示すように、最外下ローラ421aを上下方向に昇降する昇降機構81(例えば、エアシリンダ)が設けられてもよい。図9の例では、昇降機構81が、最外下ローラ421aを図9中に実線にて示す上位置から二点鎖線にて示す下位置へと下降させ、その後、直ぐに上位置へと戻す。これにより、最外下ローラ421aが上位置へと戻った直後において、濾布31が弛んだ状態となる。したがって、濾布31の走行により、最外下ローラ421aにおける濾布31の弛みが解消するまでの間、濾布31の各部位が最外上ローラ411aを通過する際に、ガイド部32により幅方向の位置を修正することが可能となる。昇降機構81では、所定時間(例えば、10秒)毎に最外下ローラ421aの上記昇降動作が行われる。
さらに、駆動ローラ61が固定ヘッド52の(+Y)側に配置される場合等には、昇降機構81を省略し、図1のフィルタプレス装置1と同様に、移動ローラ71が用いられてもよい。この場合、ガイド部32が設けられた上ローラ412(図1参照)が固定ヘッド52に取り付けられ、駆動ローラ61と上ローラ412との間に移動ローラ71が設けられる。
以上のように、フィルタプレス装置1,1aの濾布走行機構6では、少なくとも1つの駆動ローラが設けられていればよい。そして、濾布走行機構6が濾布31を走行させる際に、濾布31においてガイド部32よりも走行方向の後側の部位が弛んだ状態である、または、当該後側の部位に対してガイド部32よりも前側における濾布31の一部の弛みを維持するような大きさの張力が作用することにより、当該ガイド部32により濾布31の幅方向の位置を適切に修正することが可能となる。
ガイド部32は、ローラと個別に設けられてもよい。例えば、離間状態における濾布経路上において濾布31の一部に沿う板状部材が設けられ、当該板状部材上に濾布31の両エッジ311に近接する一対の突起部が形成される。このような板状部材を有するガイド部を採用する場合も、濾布31において、当該ガイド部に対する走行方向の後側近傍の部位を弛んだ状態等とすることにより、幅方向における濾布31の位置を修正することが可能である。また、複数のガイド部は必ずしも同一の構造である必要はなく、異なる構造のガイド部が用いられてもよい。
図1のフィルタプレス装置1では、濾布31の長手方向における両端が、駆動ローラ61,62に直接的に接続されるが、当該両端は、シート状またはワイヤー状の別部材を介して駆動ローラ61,62に間接的に接続されてもよい。この場合、濾過に用いられない当該部材が駆動ローラ61,62に巻回される。
濾布31に形成されるマークは、孔部以外であってもよく、例えば、濾布31に取り付けられた金属片等でもよい。また、マーク検出部72では、濾布31のマークが検出可能であるならば、近接センサ等の他のセンサが用いられてもよい。さらに、マーク検出部72におけるマークの検出から、駆動ローラ61,62における巻き取り動作の停止までの間に、一定の遅延時間が設定されてもよい。すなわち、巻き取り動作が停止されるタイミングは、マークの検出に基づいて決定されればよい。
Y方向に連続する複数の濾過室20を形成するという観点では、フィルタプレス装置1,1aでは、3以上の濾板2が設けられることが好ましい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。