以下、図面を参照して、本発明に係る一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の水電解装置1を側面からみた断面図である。
水電解装置1は、水道水、純水またはイオン交換水(軟水)等の水を水電解してオゾン水、水素水、オゾンと過酸化水素を混合した促進酸化水などの機能水を電解水として生成する装置である。
水電解装置1は、図1に示されるように、筐体300と水電解部100とから構成されている。筐体300は、円筒形状に形成されている。水電解部100は円柱形状に形成されている。筐体300は、図中上方からみて円形の上板330と、図中下方からみて円形の下板340と、上板330と下板340の間の円筒部350とを含んで構成される。
筐体300内に水電解部100が配置されている。筐体300には、流入口310と流出口320が、筐体300の外部と筐体300の内部を連通するように設けられている。
流入口310は筐体300の上板330に設けられている。流出口320は筐体300の下板340に設けられている。流入口310は、たとえば筐体300の上板330の中心に形成された貫通孔である。この貫通孔をネジ孔とし、ネジ部を有した流入用配管の継ぎ手を螺合してもよい。流出口320は、たとえば筐体300の下板340の中心に形成された貫通孔である。この貫通孔をネジ孔とし、ネジ部を有した流出用配管の継ぎ手を螺合してもよい。流入口310と流出口320は、その中心が筐体300の鉛直中心軸に一致または略一致するように配置されている。なお、流入口310と流出口320は、その中心が筐体300の鉛直中心軸からずれて配置されていてもよい。
流入口310には、外部から原料水が流入される。水電解部100は、流入口310と流出口320との間に介在されている。流出口320からは、水電解部100で生成された電解水が外部に流出される。
水電解部100は、陽極110と、高分子電解質膜120と、陽極側電解領域130と、陽極側メッシュ電極140と、陰極150と、陰極側電解領域160と、陰極側メッシュ電極170とを含んで構成される。なお、図7で後述するように陽極110を陽極保持部内に収容して保持してもよい。同様に陰極150を陰極保持部内に収容して保持してもよい。
陽極110は、図示しない直流電源のプラス端子に電源コード111、陽極端子119を介して電気的に接続された陽極側電極板としての陽極側ターミナルプレートである。
高分子電解質膜120は、陽極110の厚み方向に設けられ、流出口320に連通する内側開口部121が形成されている。高分子電解質膜120としては、例えば、ナフィオン膜(例えばナフィオン117膜;ナフィオンは登録商標)などの固体高分子電解質膜が用いられる。高分子電解質膜120としては、ナフィオン膜に限らず、種々の固体電解質膜を用いることができる。
陽極側電解領域130は、陽極110と高分子電解質膜120との間に形成され、外周開口部131が流入口310に連通している。
陽極側メッシュ電極140は、陽極側電解領域130に設けられ、この陽極側電解領域130の内側に内側開口部141を有しており、この内側開口部141が高分子電解質膜120の内側開口部121に連通している。
陰極150は、上記直流電源のマイナス端子に電源コード151、陰極端子159を介して電気的に接続された陰極側電極板としての陰極側ターミナルプレートである。陰極150は、高分子電解質膜120の厚み方向に設けられている。陰極150には、高分子電解質膜120の内側開口部121に連通する内側開口部152が形成されている。
陰極側電解領域160は、高分子電解質膜120と陰極150との間に形成され、外周開口部161が流入口310に連通している。
陰極側メッシュ電極170は、陰極側電解領域160に設けられ、この陰極側電解領域160の内側に内側開口部171を有し、この内側開口部171が高分子電解質膜120の内側開口部121に連通している。
陽極側メッシュ電極140および陰極側メッシュ電極170の電極面は、高分子電解質膜120の面に対して平行となっている。
陽極110と、陽極側メッシュ電極140と、高分子電解質膜120と、陰極側メッシュ電極170と、陰極150は、厚み方向に垂直な平面でみて、つまり図中上方からみて外形が円形または略円形に形成されている。陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170、陰極150それぞれの内側開口部141、121、171、152は、円形または略円形に形成されている。内側開口部141、121、171、152は、たとえば陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170、陰極150それぞれの中心に形成された貫通孔である。陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170、陰極150は、厚み方向に垂直な平面でみて、つまり図中上方からみて、円環状または略円環状に形成されている。陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170、陰極150は、それぞれの内側開口部141、121、171、152の中心が、筐体300の鉛直中心軸方向に一致または略一致するように配置されている。なお、陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170、陰極150は、それぞれの内側開口部141、121、171、152の中心が筐体300の鉛直中心軸からずれて配置されていてもよい。
陽極側メッシュ電極140は、たとえば1つのメッシュ電極で構成することができる。メッシュ電極140は、その上面が陽極110に接触し、その下面が高分子電解質膜120に接触するように配置されている。
陰極側メッシュ電極170は、たとえば2つのメッシュ電極で構成することができる。陰極側メッシュ電極170の各メッシュ電極は、互いに厚み方向に接触し、上方のメッシュ電極の上面が高分子電解質膜120に接触し、下方のメッシュ電極の下面が陰極150に接触するように配置されている。
陽極側メッシュ電極140を構成するメッシュ電極の数は、1以上の任意の数のメッシュ電極で構成することができる。同様に陰極側メッシュ電極170を構成するメッシュ電極の数は、1以上の任意の数のメッシュ電極で構成することができる。
陽極側メッシュ電極140を陽極110と高分子電解質膜120の間に挟み、陰極側メッシュ電極170を高分子電解質膜120と陰極150の間に挟み、陽極110、陰極150、筐体300の下板340に形成されたネジ孔にボルト180のネジ部を螺合する。ボルト180をねじ込み、厚み方向に締結することで、水電解部100が、筐体300の下板340に固定される。なお後述するように陽極保持部と陰極保持部にボルト180をねじ込み固定してもよい。
水電解装置1では、陽極110と筐体300の上板330の間に隙間としての流路301が形成される。また陽極110および陰極150と筐体300の円筒部350の間に隙間としての流路302が形成される。また陰極150と筐体300の下板340の間に隙間としての流路303が形成される。
陰極150と筐体300の下板340の間の隙間として流路303は、Oリング360によってシールされる。Oリング360の内側上方に、陰極150の内側開口部152が位置し、Oリング360の内側下方に、流出口320が位置するように、Oリング360が配置される。
陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170は、生成しようとする機能水の種類に応じて材料が選定される。陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170としては、例えば、水の電気分解活性に優れた触媒電極が用いられる。この触媒電極としては、例えば、Pt、Ni、ステンレス等の金属、PbO2、NiやSbをドープしたSnO2、IrO2、Nb2O5、TaOx等の酸化物、活性化炭素、ボロンドープダイヤモンド(BDD)等の炭素電極などが用いられる。陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170としては、水中へのガス成分の溶解を促進するため、平織り、あるいは複数本を束ねて綾織りにした構造のものがよい。また織り込みのないエキスパンドメタルなどを使用してもよい。陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170としては、液体(水)がメッシュ面を通過する際に気体(ガス)が液体(水)中に効率よく溶解する構造ものであればよい。例えば、平織りや綾織りなどで板状(扁平状)かつメッシュ状(網状)の電極が用いられる。
例えば、オゾン水を生成したい場合には、陽極側メッシュ電極140としてプラチナ(Pt)等の金属やPbO2等の金属酸化物のメッシュを使うことができる。同じく、酸素水を生成したい場合には、陽極側メッシュ電極140としてIrO2等の金属酸化物のメッシュを使うことができる。特に、IrO2メッシュは、人体に有害なオゾンガスをほとんど生成しないので酸素水を安全に作ることができる。また、オゾンと過酸化水素が共存する促進酸化水を生成する場合には、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持したメッシュ電極や孔あきNb基板上にボロンドープダイヤモンド(BDD)を成膜した電極を陽極側の電極として使うことができる。これらのボロンドープダイヤモンド(BDD)触媒電極は、高分子電解質膜120の面にボロンドープダイヤモンド(BDD)触媒電極面を接触させた状態で設置する。
以上のように構成された水電解装置1は、以下のように動作する。
原料水源、たとえば図示しない貯留タンク、水道の蛇口等から原料水が流入口310に供給される。また直流電源によって、陽極110と陰極150の間に電圧が印加される。これにより、直流電源のプラス端子から電源コード111、陽極110、陰極150、電源コード151を経て直流電源のマイナス端子に電流が流れ、水電解部100の陽極側電解領域130および陰極側電解領域160で水電解が行われる。
図3Aは、水電解部100の水の流れを説明する図である。以下、図1と併せ参照して説明する。
流入口310に流入した原料水は、流路301、流路302、陽極側電解領域130の外周開口部131を介して陽極側電解領域130に流入する。
一方、図2Aは、陽極側電解領域130における水の流れを説明する図である。以下、図1、図3Aと併せ参照して説明する。
陽極側電解領域130では、外周開口部131から陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解により発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に流入する。
一方、流入口310に供給された原料水は、流路301、流路302、陰極側電解領域160の外周開口部161を介して陰極側電解領域160に流入する。
陰極側電解領域160では、外周開口部161から陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に流入する。
陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に流入した陽極側電解水は、高分子電解質膜120の内側開口部121を介して、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に流入された陰極側電解水と合流する。合流した電解水は、陰極150の内側開口部152、流路303、流出口320を介して外部に流出される。
図2Bは、従来の角型のメッシュ電極500を用いて水電解部を構成した場合の水の流れを説明する図である。
メッシュ電極500の電極面積を8cm2とし、水の入口部の幅を2cm、水の流れ方向の奥行きを4cmとする。この場合、水の流入断面積は「2cm×メッシュ電極の厚み」となる。
これに対して図2Aに示すように、第1の実施形態において、角型のメッシュ電極500と同じ電極面積8cm2の陽極側メッシュ電極140を用い内側開口部141の直径を1cmにした場合、水の流入断面積が「3.14cm×メッシュ電極の厚み」以上になる。陽極側メッシュ電極140の内側から外側に向かうほど水の流入断面積が大きくなるので水を流す際の抵抗が減少する。したがって角型のメッシュ電極500と比べて同じ電極面積ながら水の流入断面積が大きくなり、圧力損失の少ない水電解部を構成でき、多くの水量を流すことが可能となる。陰極側メッシュ電極170についても同様である。
このように第1の実施形態によれば、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成される。このため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、水の流入断面積を大きくすることができる。このため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくい。このため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。
第1の実施形態の場合には、陽極側と陰極側で水の入口と出口が共通化され、流入口310、流出口320がそれぞれ1つとなり、水の流入配管、流出配管をそれぞれ1つとすることができる。このため、さらに配管数を減らし、省スペース化を図ることができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させて利用できるため水を節約することができる。
以上、陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170の形状が円環状あるいは略円環状である構成例について説明した。
しかし、陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170の形状はどのようなものでもよい。例えば陽極側メッシュ電極140、高分子電解質膜120、陰極側メッシュ電極170の外周形状および内側開口部の形状は四角形、三角形、楕円形であってもよい。また、筐体300の形状についても円筒形状に限定されることなく、四角形、三角形、楕円形等であってもよい。
また図1に示す水電解装置1は、水の流れが図中上から下へ流れる構造となっている。
しかし、図中下から陰極側メッシュ電極170の内側開口部171、高分子電解質膜120の内側開口部121、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に水を流す構造をとってもよい。この場合、陽極側電解領域130の外周開口部131、陰極側電解領域160の外周開口部161から電解水が外方へ流出され、図中上方に向けて水が流出される。この実施形態については第2の実施形態で後述する。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、図3Aに示すように、メッシュ電極の外周から内側開口部に向けて径方向に流れが形成される構成について説明した。
しかし、図3Bに示すように、メッシュ電極の内側開口部から外周に向けて径方向に流れが形成される構成とする実施も可能である。
図3Bは、第2の実施形態の水電解部100の水の流れを説明する図である。以下、図1に示される構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
第2の実施形態では、流入口310が、陰極150の内側開口部152を介して、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171、高分子電解質膜120の内側開口部121、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に連通している。また陽極側電解領域130の外周開口部131、陰極側電解領域160の外周開口部161が流出口320に連通している。
したがって、流入口310に流入した原料水は、陰極150の内側開口部152、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171を介して陰極側電解領域160に流入する。また原料水は、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171、高分子電解質膜120の内側開口部121、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141を介して陽極側電解領域130に流入する。
陰極側電解領域160では、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171から外周開口部161に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出される。
一方、陽極側電解領域130では、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141から外周開口部131に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解より発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出される。
陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出された陽極側電解水は、陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出された陰極側電解水と合流する。合流した電解水は、流出口320を介して外部に流出される。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成されるため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくいため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。陽極側と陰極側で水の入口と出口が共通化されているため、さらに配管数を減らし、省スペース化を図ることができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させて利用できるため水を節約することができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態、第2の実施形態では、陽極側と陰極側で水の入口と出口を共通化する構成について説明した。
しかし、陽極側と陰極側で水の入口と出口を別々に設け、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々の室で生成する二室型の水電解部とする実施も可能である。この場合、陽極側の室と陰極側の室は、高分子電解質膜120によって仕切られる。
図4Aは、第3の実施形態の水電解部100の水の流れを説明する図である。以下、図1に示される構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
第3の実施形態では、第1の流入口310A、第2の流入口310Bが設けられ、第1の流出口320A、第2の流出口320Bが設けられる。
第1の流入口310Aが、陽極110の内側開口部112を介して、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に連通している。また第2の流入口310Bが、陰極150の内側開口部152を介して、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に連通している。
陽極側電解領域130の外周開口部131が、第1の流出口320Aに連通している。また陰極側電解領域160の外周開口部161が第2の流出口320Bに連通している。
したがって、第1の流入口310Aに流入した原料水は、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141を介して陽極側電解領域130に流入する。また第2の流入口310Bに流入した原料水は、陰極150の内側開口部152、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171を介して陰極側電解領域160に流入する。
陽極側電解領域130では、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141から外周開口部131に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解より発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出される。陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出された陽極側電解水は、第1の流出口320Aを介して外部に流出される。
一方、陰極側電解領域160では、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171から外周開口部161に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出される。陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出された陰極側電解水は、第2の流出口320Bを介して外部に流出される。
第3の実施形態によれば、第1の実施形態、第2の実施形態と同様に、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成されるため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくいため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成するため、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させた場合と比べて、高濃度なオゾン水、水素水等の機能水を生成することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に、陽極側と陰極側で水の入口と出口を別々に設け、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成する二室型の水電解部とする実施の形態である。第3の実施形態では、図4Aに示すように、メッシュ電極の内側開口部から外周に向けて径方向に流れが形成される構成について説明した。
しかし、図4Bに示すように、メッシュ電極の外周から内側開口部に向けて径方向に流れが形成される構成とする実施も可能である。
図4Bは、第4の実施形態の水電解部100の水の流れを説明する図である。以下、図1に示される構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
第4の実施形態では、第1の流入口310A、第2の流入口310Bが設けられ、第1の流出口320A、第2の流出口320Bが設けられる。
第1の流入口310Aが、陽極側電解領域130の外周開口部131に連通している。また第2の流入口310Bが、陰極側電解領域160の外周開口部161に連通している。
第1の流出口320Aが、陽極110の内側開口部112を介して、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に連通している。また第2の流出口320Bが、陰極150の内側開口部152を介して、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に連通している。
したがって、第1の流入口310Aに流入した原料水は、陽極側電解領域130の外周開口部131を介して陽極側電解領域130に流入する。
陽極側電解領域130では、外周開口部131から陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解より発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141、陽極110の内側開口部112、第1の流出口320Aを介して外部に流出される。
一方、第2の流入口310Bに流入した原料水は、陰極側電解領域160の外周開口部161を介して陰極側電解領域160に流入する。
陰極側電解領域160では、外周開口部161から陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171、陰極150の内側開口部152、第2の流出口320Bを介して外部に流出される。
第4の実施形態によれば、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態と同様に、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成されるため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくいため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成するため、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させた場合と比べて、高濃度なオゾン水、水素水等の機能水を生成することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第3の実施形態、第4の実施形態と同様に、陽極側と陰極側で水の入口と出口を別々に設け、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成する二室型の水電解部とする実施の形態である。
第5の実施形態は、図5Aに示すように、陽極側については、第3の実施形態と同様に構成され、メッシュ電極の内側開口部から外周に向けて径方向に流れが形成される。一方、陰極側については、第4の実施形態と同様に構成され、メッシュ電極の外周から内側開口部に向けて径方向に流れが形成される。
したがって、第1の流入口310Aに流入した原料水は、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141を介して陽極側電解領域130に流入する。
陽極側電解領域130では、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141から外周開口部131に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解より発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。
陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出される。陽極側電解領域130の外周開口部131から外方に流出された陽極側電解水は、第1の流出口320Aを介して外部に流出される。
一方、第2の流入口310Bに流入した原料水は、陰極側電解領域160の外周開口部161を介して陰極側電解領域160に流入する。
陰極側電解領域160では、外周開口部161から陰極側メッシュ電極170の内側開口部171に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171、陰極150の内側開口部152、第2の流出口320Bを介して外部に流出される。
第5の実施形態によれば、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態と同様に、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成されるため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくいため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成するため、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させた場合と比べて、高濃度なオゾン水、水素水等の機能水を生成することができる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、第3の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態と同様に、陽極側と陰極側で水の入口と出口を別々に設け、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成する二室型の水電解部とする実施の形態である。
第6の実施形態は、図5Bに示すように、陽極側については、第4の実施形態と同様に構成され、メッシュ電極の外周から内側開口部に向けて径方向に流れが形成される。一方、陰極側については、第3の実施形態と同様に構成され、メッシュ電極の内側開口部から外周に向けて径方向に流れが形成される。
したがって、第1の流入口310Aに流入した原料水は、陽極側電解領域130の外周開口部131を介して陽極側電解領域130に流入する。
陽極側電解領域130では、外周開口部131から陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に向かう径方向の流れが形成される。陽極側メッシュ電極140の電極面に対して水平な流れが形成される。
陽極側電解領域130において水電解より発生したオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が、陽極側電解領域130において原料水に溶解され、陽極側電解水が生成される。陽極側メッシュ電極140で微泡化されたオゾン、酸素等のガス及び過酸化水素が原料水と接触して高濃度の陽極側電解水が生成される。陽極側電解領域130で生成された陽極側電解水は、陽極側メッシュ電極140の内側開口部141、陽極110の内側開口部112、第1の流出口320Aを介して外部に流出される。
一方、第2の流入口310Bに流入した原料水は、陰極150の内側開口部152、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171を介して陰極側電解領域160に流入する。
陰極側電解領域160では、陰極側メッシュ電極170の内側開口部171から外周開口部161に向かう径方向の流れが形成される。陰極側メッシュ電極170の電極面に対して水平な流れが形成される。
陰極側電解領域160において水電解より発生した水素ガス、過酸化水素等が、陰極側電解領域160において原料水に溶解され、陰極側電解水が生成される。陰極側メッシュ電極170で微泡化された水素ガス、過酸化水素等が原料水と接触して高濃度の陰極側電解水が生成される。陰極側電解領域160で生成された陰極側電解水は、陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出される。陰極側電解領域160の外周開口部161から外方に流出された陰極側電解水は、第2の流出口320Bを介して外部に流出される。
第6の実施形態によれば、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態と同様に、メッシュ電極の外周と内側開口部との間で径方向に流れが形成されるため、水電解装置を通過する水の圧力損失が小さくなり、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。また流体のデッド部やガス溜まりが生じにくいため、従来の角形のメッシュ電極を用いた場合よりも、少ない配管数で効率良く水電解することができる。また陽極側電解水、陰極側電解水を合流させることなく別々に生成するため、陽極側電解水、陰極側電解水を合流させた場合と比べて、高濃度なオゾン水、水素水等の機能水を生成することができる。
(第7の実施形態)
図6は、図4Bに示す第4の実施形態の構成例を第7の実施形態として示す。
以下、図1、図4Bに示される構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、異なる構成について説明する。
第7の実施形態の水電解装置1の筐体300は、上板としての陽極側フランジ330と、下板としての陰極側フランジ340とを含んで構成される。
陽極側フランジ330の外周には、陰極側フランジ340のフランジ凸部340Fに対向するフランジ凸部330Fが形成されている。フランジ凸部330Fの対向面には、高分子電解質膜120の外周に当接するOリング370Aを収容する円環状の溝が形成されている。フランジ凸部330Fの側壁には第1の流入口310Aが形成されている。フランジ凸部330Fの内側には、第1の流入口310Aに連通する円環状の溝凹部332が形成されている。溝凹部332の内側には、陽極側メッシュ電極140に当接する凸部330Dが形成されている。凸部330Dには、円環状の陽極110を収容する円環状の凹部331が形成される。凸部330Dの中央にあって凹部331の内側中心には、第1の流出口320Aが形成されている。
一方、陰極側フランジ340の外周には、陽極側フランジ330のフランジ凸部330Fに対向するフランジ凸部340Fが形成されている。フランジ凸部340Fの対向面には、高分子電解質膜120の外周に当接するOリング370Bを収容する円環状の溝が形成されている。フランジ凸部340Fの側壁には第2の流入口310Bが形成されている。フランジ凸部340Fの内側には、第2の流入口310Bに連通する円環状の溝凹部342が形成されている。溝凹部342の内側には、陰極側メッシュ電極170に当接する凸部340Dが形成されている。凸部340Dには、円環状の陰極150を収容する円環状の凹部341が形成される。凸部340Dの中央にあって凹部341の内側中心には、第2の流出口320Bが形成されている。
陽極側フランジ330のフランジ凸部330Fと陰極側フランジ340のフランジ凸部340Fは、ボルト181により締結される。陽極側の室と陰極側の室は、高分子電解質膜120によって仕切られ、それぞれOリング370A、Oリング370Bによってシールされる。
陽極側フランジ330のフランジ凸部330Fの対向面から凸部330Dの当接面までの距離(深さ)が、陽極側メッシュ電極140の収容枚数を規定する。たとえば厚さ0.3mmの陽極側メッシュ電極140を5枚収容する場合には、上記の距離(深さ)を1.5mmにすればよい。同様に陰極側フランジ340のフランジ凸部340Fの対向面から凸部340Dの当接面までの距離(深さ)が、陰極側メッシュ電極170の収容枚数を規定する。
例えば陽極側メッシュ電極140を3枚で構成し、陰極側メッシュ電極170を6枚で構成し、陰極側メッシュ電極170の枚数を陽極側メッシュ電極140の枚数の2倍とし、陰極側の室に陽極側の室よりも多くの流量を流す実施が可能である。陰極側の室に陽極側の室よりも多くの流量を流すことで、陰極側電解水のpH上昇が抑制され、ミネラル分が陰極側に電析することが抑制される。ミネラル分の電析を抑制する実施形態については後述する。
以上、図6を用いて、図4Bに示す第4の実施形態の構成例を説明した。
しかし、図6の構成例は、図4Aに示す第3の実施形態、図5Aに示す第5の実施形態、図5Bに示す第6の実施形態にも同様にして適用することができる。
(第8の実施形態)
上記第1の実施形態乃至第7の実施形態においてミネラル分の電析を抑制する実施形態について説明する。
陰極側メッシュ電極170の種類と枚数並びに水電解の条件(陰極側電解水の流量と電流密度)を変化させることによって水酸化物イオンOH-の生成速度を調整し、陰極側電解水のpH上昇を抑制することが可能である。
陰極側での水酸化物イオンOH-の生成反応は、下記(1)式で与えられる。
例えば、水素過電圧がほぼゼロであるプラチナ(Pt)メッシュ、又は水素過電圧が約0.1Vのステンレスメッシュを陰極側メッシュ電極170として用いて低電流密度で水電解する。これにより陰極側電解水中での水酸化物イオンOH-の生成速度を低くすることが可能である。この結果、陰極側電解水のpHの上昇を最低限に抑制して、pH上昇に伴う炭酸カルシウムCaCO3や水酸化マグネシウムMg(OH)2等のミネラル分の飽和溶解度の低下が抑制される。これにより陰極側にこれらミネラル分が電析することを防止できる。このような運転を行うことにより、長時間にわたって水電解装置1を安定的に稼動することが可能となる。
一方、チタン(Ti)、ボロンドープダイヤモンド(BDD)等の水素過電圧が高いメッシュを用いると、過酸化水素の生成には有利になる反面、上式(1)による水酸化物イオンOH-の生成速度が大きくなる。このため陰極側電解水のpHが上昇し、炭酸カルシウムCaCO3や水酸化マグネシウムMg(OH)2等のミネラル分の飽和溶解度が低下する。この結果、ミネラル分が陰極側に電析しやすくなる。特に、原料水としてCa2+とMg2+イオン濃度の高い硬水を使用する場合は、pH上昇をゼロに近づける必要がある。このためには、陰極側メッシュ電極170にプラチナ(Pt)メッシュ又はステンレスメッシュを用いたり、更に、電流密度を下げたり、陰極側電解水の流量を増やしたりする等の運転を行うことが望ましい。これによりミネラル分の電析が防止される。
原料水として硬水を利用する場合には、第1の実施形態、第2の実施形態の合流式の水電解装置を用いると、ミネラル分の電析を防止するために、電流密度が低く、かつ、陰極側電解水の流量が多い運転を行う必要がある。このためオゾン水の濃度を高めることが困難となる。
一方、第3の実施形態乃至第6の実施形態の二室型の水電解装置を用いると、陽極側で生成されるオゾン水が陰極側電解水と合流することが無く、陽極側電解水を単独で取り出すことができる。このため原料水として硬水を利用する場合に、ミネラル分の電析を防止するために陰極側電解水の流量が多い運転を行っても陽極側には影響がない。このためオゾン水の濃度を高めることが容易となる。
陰極側メッシュ電極170の材料如何にかかわらず、水電解の条件を最適化して陰極側電解水のpH上昇を制御し、ミネラル分の陰極側への電析を防止することが、長時間の運転を行う上で重要となる。
陽極側での過酸化水素の生成反応については、下記(2)式で表すことができる。
陽極側にボロンドープダイヤモンド(BDD)電極を用いると、(2)式の反応が促進され、陽極側で過酸化水素が生成される。
陰極側で水素を効率よく生成する場合には、高分子電解質膜120の面に接触させる陰極側メッシュ電極170として水素過電圧が低いプラチナ(Pt)メッシュを用いるとよい。これにより電極への印加電圧が抑制され水素生成の電力効率を高くすることができる。
また、水素過電圧が低いPtメッシュを陰極側メッシュ電極170として用いることにより、(1)式による水酸化物イオンOH-の生成を抑制できる。このため陰極側電解水の流量を増加させることなく陰極側電解水のpHの上昇を抑制でき、ミネラル分の電析を防止できる。
一方、陰極側でも過酸化水素を生成したい場合には、チタン(Ti)、ボロンドープダイヤモンド(BDD)等の水素過電圧が高い電極を用いればよい。これらの触媒電極も、高分子電解質膜120に接触させた状態で設置する。
陰極側では、原料水中の溶存酸素と水素イオンH+が下記(3)式によって反応して過酸化水素を生成する。
上記(3)式の標準電位E0から、陰極側に水素過電圧の高い電極を用いれば、より多くの過酸化水素を生成できると予想される。特に、ボロンドープダイヤモンド(BDD)電極は、水素過電圧が-1V程度なので陰極側で効率良く過酸化水素を生成できる。
陽極側と陰極側に設置するメッシュ電極の枚数は、陽極側と陰極側へ流す水量の比によって決定すればよい。例えば、陰極側に陽極側の2倍の水量を流したい場合には、陰極側に設置されるメッシュ電極の合計枚数を、陽極側に設置されるメッシュ電極の合計枚数の2倍とする。これによって、陰極側への水量を確保することができるので、陰極側電解水のpH上昇を抑制することが可能となる。そして、水電解で生成される炭酸カルシウムCaCO3や水酸化マグネシウムMg(OH)2等のミネラル分が陰極側に析出することを防止できる。
陰極側電解水のpHが9以上に上昇すると、水への水酸化マグネシウムMg(OH)2の飽和溶解度が低くなる。このため局部的にpHが低くなっている陰極側の電極上に水酸化マグネシウムMg(OH)2が析出してしまう。また、炭酸カルシウムCaCO3の原料となる水中のCO2
3-イオンの濃度は炭酸H2CO3の解離平衡で決まる。
しかし、pHが8.3程度まで高められると、水道水中に存在する炭酸H2CO3の1%程度しかCO2
3-イオンにならない。
したがって、水流量、電流密度、並びに陰極側の触媒種を調整して、陰極側電解水のpHを8.3近傍に調整することにより、水酸化マグネシウムMg(OH)2と炭酸カルシウムCaCO3の両物質の電析を抑制することができる。
(第9の実施形態)
図7は、図1の筐体300内に配置される水電解部100の構成例を示す分解図である。
円環状の陽極110が、陽極保持部118に形成された円環状凹部118A内に収容される。一方、円環状の陰極150が、陰極保持部158に形成された円環状凹部158A内に収容される。
陽極保持部118、陰極保持部158は、たとえばアクリル樹脂製である。陽極110は、たとえばチタン(Ti)製のターミナルプレートとして構成される。陰極150は、たとえばステンレス製のターミナルプレートとして構成される。
陽極110には、圧着端子として構成される陽極端子119が、例えばネジ117(たとえばM3ネジ)によって、ねじ込み固定される。陰極150には、圧着端子として構成されるマイナス端子159が、例えばネジ157(M3ネジ)によって、ねじ込み固定される。
陽極側には、陽極側メッシュ電極140として2枚のチタン(Ti)メッシュ電極(たとえば80メッシュ)と1枚の基板電極140Pが設けられている。基板電極140Pには、高分子電解質膜120の内側開口部121および陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に連通する内側開口部141Pが形成されている。基板電極140Pは、複数の貫通孔141Hが厚み方向に形成された基板電極であり、ニオブ(Nb)を材料とし、ニオブ(Nb)基板上にボロンドープダイヤモンド(BDD)の薄膜が成膜されている。基板電極140Pは、高分子電解質膜120に接触するように配置される。
ボロンドープダイヤモンド(BDD)の基板電極140P を用いる場合には、物質移動が速やかに行われるようにする必要がある。このため、基板電極140P のボロンドープダイヤモンド(BDD)膜形成面(高分子電解質膜120との接触面)とニオブ(Nb)の剥き出し面(メッシュ電極140との接触面)を貫通する細かい貫通孔141Hを開ける必要がある。例えば、直径1mmの丸い貫通孔や、一辺が1mmの四角い貫通孔が2mm程度のピッチの間隔で開けられたものを基板電極140Pとして用いる。
なお、陽極側に配置すべき陽極側メッシュ電極140としては、流路断面積を確保するために、基板電極140P以外に少なくとも1枚のメッシュ電極が配置されていればよい。
また、陰極側には、陰極側メッシュ電極170として4枚のチタン(Ti)メッシュ電極(たとえば80メッシュ)が設けられている。
以上のような材質のメッシュ電極等を選択している理由は、オゾンと過酸化水素が共存した促進酸化水を生成するためである。
図7に示される水電解部100は、図1に示される筐体300内に配置される。
陽極側メッシュ電極140および基板電極140Pを陽極110と高分子電解質膜120の間に挟み、陰極側メッシュ電極170を高分子電解質膜120と陰極150の間に挟み、陽極保持部118、陰極保持部158、筐体300の下板340に形成されたネジ孔にボルト180(たとえばM3ネジ)のネジ部を螺合する。ボルト180をねじ込み、厚み方向に締結することで、水電解部100が、筐体300の下板340に固定される。
筐体300の材料は、オゾン耐性のあるテフロン(登録商標)が好ましい。しかし、溶存オゾン濃度が低い場合には、筐体300の材料をアクリルやポリプロピレン等の汎用樹脂で構成してもよい。特に、アクリル樹脂で筐体300を構成した場合には、10mg/L程度の濃度のオゾン水に数年間さらされても劣化しない。またテフロン(登録商標)のように圧力によって変形することがない。また加工性もよいため筐体300の材料に適している。
筐体300の上板330および下板340の中央部にはそれぞれ、流入口310、流出口320が開口され、内周面に継ぎ手接続用のメネジが切られている。筐体300は、本実施形態では、透明なアクリル樹脂製である。流入口310、流出口320にそれぞれ継ぎ手を接続して、継ぎ手に配管またはチューブを接続する。
筐体300は、たとえば内径が50mmで、上板330と下板340との間隔が35mmである。この筐体300の中に、図7に示される外径47mm、高さ22mmの円柱形の水電解部100が配置される。陽極110、陰極150の厚さを、たとえば、それぞれ6mmにすることができる。
陽極側メッシュ電極140、基板電極140P、陰極側メッシュ電極170の外径を3.5cm、内径(内側開口部の直径)を1.1cmにすることができる。このときメッシュ電極および基板電極の面積は、8.6cm2程度となる。
陽極側には、2~4枚のメッシュ電極を設けるとともに、陰極側には、4~8枚のメッシュ電極を設けて水路を形成する。厚さ0.5mmの基板電極140Pを使用することができる。高分子電解質膜120には、厚さ0.2mmのナフィオン117膜等を使用することができる。水電解部100と筐体300の下板340との隙間は、Oリング360によってシールされる。
水電解部100の陽極110と陰極150には、それぞれ、たとえば直径3mm程度の太さの電源コード111、151が電気的に接続され、筐体300に開けた孔348,349を介して電源コード111、151がそれぞれ外部に引き出される。電源コード111、151と孔348、349の間の隙間は、接着剤などで封止される。電源コード111、151はそれぞれ、可変電源あるいは定電圧直流電源のプラス端子、マイナス端子に電気的に接続される。
陽極側電解水と陰極側電解水の流量比は、陽極側電解領域130の外周開口部131と陰極側電解領域160の外周開口部161の流路断面積の比、つまりメッシュ電極の枚数比に応じて定められる。陽極側に、2枚のメッシュ電極を設けるとともに、陰極側に、4枚のメッシュ電極を設けると、水電解部100に流れる陽極側電解水と陰極側電解水の流量比は、(陽極側電解水の流量)/(陰極側電解水の流量)=1/2となる。
陽極側に比べて陰極側へ2倍の流量の水をより多く流すことにより、陰極側電解水のpH上昇が抑制され、炭酸カルシウムCaCO3や水酸化マグネシウムMg(OH)2等のミネラル分の析出が防止される。
なお図7に示される水電解部100では、メッシュ電極以外に、基板電極140Pが用いられている。この場合、基板電極140Pに対して水が水平に流れるため基板電極140Pに相当する断面積部分は、水を堰き止めることになり、上記流路断面積には含まれない。したがって陽極側電解水と陰極側電解水の流量比は、基板電極140Pを除いたメッシュ電極の枚数比で定まる。
水電解部100では、陽極側で生成された陽極側電解水と陰極側で生成された陰極側電解水が合流して、陰極保持部158の内側開口部152を介して外部に流出される。オゾン、酸素、水素の3種類のガスと過酸化水素が溶解した機能水を得ることができる。
陽極側で生成されたオゾン水と陰極側で生成された水素水が合流して、オゾンと水素が溶解した電解水が得られる。
また陽極側に、高分子電解質膜120に接触する触媒電極としてボロンドープダイヤモンド(BDD)を用い、陰極側に、高分子電解質膜120に接触する触媒電極としてチタン(Ti)やステンレス、あるいはボロンドープダイヤモンド(BDD)を担持したメッシュ電極を用いると、両極で過酸化水素を生成することができる。これにより過酸化水素の濃度を高めることができる。
図7に示す水電解部100では、陽極側電解領域130、陰極側電解領域160に存在する陽極側電解水と陰極側電解水が高分子電解質膜120により仕切られている。このため電解水が陽極側と陰極側の間を互いに行き来することはない。水電解が終了すると、水電解部100の中央の内側開口部で陽極側電解水と陰極側電解水が合流して図中下側の陰極保持部158の内側開口部152から流出される。このため水電解反応中にオゾンと酸素が水素イオン(H+)で還元されることが抑制される。
図7に示す水電解部100を図1に示す筐体300に配置した構成の水電解装置1では、図中上方から水を供給しているが、図中下方から水を供給してもよく、水を供給する方向は任意である。水電解部100を横向きに配置してもよく、配置の角度も任意に設定することができる。このため水電解装置1をゴムホース等につなげてシャワーや散水の用途に使用することができる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態の変形例について説明する。図8は、第10の実施形態の水電解部400の構成例を示す分解図である。
水電解部400は、流入口310と流出口320との間に、2つの水電解部100、100´が介在されて構成されている。
水電解部400は、図中の対称軸Cを対称中心に上下対称に構成されている。対称軸Cの上方には、図7に示される水電解部100と同様の水電解部100(一方の電解部100という)が設けられている。対称軸Cの下方には、図7に示される水電解部100と同様の水電解部100´(他方の電解部という)が設けられている。他方の水電解部100´の各構成要素のうち、一方の水電解部100の構成要素と同じ構成要素には、ダッシュを付与している。
一方の水電解部100の陽極側電解領域130および陰極側電解領域160における水の流れと、他方の水電解部100´の陽極側電解領域130´および陰極側電解領域160´における水の流れが並列となるように配置されている。
一方の水電解部100の陰極150は、他方の水電解部100´の陰極と共通となっている。
一方の水電解部100の構成は以下のとおりである。
円環状の陽極110が、陽極保持部118に形成された円環状凹部118A内に収容されている。
陽極110には、圧着端子として構成される陽極端子119が、例えばネジ117によって、ねじ込み固定される。陰極150には、圧着端子として構成されるマイナス端子159が、例えばネジ157によって、ねじ込み固定される。
陽極側には、陽極側メッシュ電極140として2枚のメッシュ電極と1枚の基板電極140Pが設けられている。基板電極140Pには、高分子電解質膜120の内側開口部121および陽極側メッシュ電極140の内側開口部141に連通する内側開口部141Pが形成されている。基板電極140Pは、高分子電解質膜120に接触するように配置されている。
また、陰極側には、陰極側メッシュ電極170として2枚のメッシュ電極が設けられている。
他方の水電解部100´の構成は以下のとおりである。
一方の水電解部100の各構成要素と同じ構成要素が、対称軸Cを対称中心にして、他方の水電解部100´の構成要素として対称に配置されている。
ただし他方の水電解部100´の陽極保持部118´には、流出口320および陽極側メッシュ電極140´の内側開口部141´に連通する内側開口部115が形成されている。
流入口310に上方から水が流入されると、一方の水電解部100の陽極側電解領域130および陰極側電解領域160と、これらと並列に配置された他方の水電解部100´の陽極側電解領域130´および陰極側電解領域160´で、同時に水が流れ、水電解が同時に行われる。
一方の水電解部100で生成された電解水と、他方の水電解部100´で生成された電解水は合流して、他方の水電解部100´の陽極保持部118´の内側開口部115、流出口320を介して外部に流出される。
図8に示される水電解部400を、図1に示される筐体300内に配置して水電解装置1を構成してもよい。
また図8に示される水電解部400に対して、図中上方から水を供給してもよく、図中下方から水を供給してもよい。水電解部400に対して水を供給する方向は任意である。水電解部400を横向きに配置してもよく、配置の角度も任意に設定することができる。
第10の実施形態の水電解部400は、同じ電極面積を有する水電解部100、100´が2つ設けられている。このため流路断面積が、単一の水電解部100の2倍となり、圧力損失を飛躍的に小さくでき、大流量の電解水を生成することができる。
図8の構成例では、一方の水電解部100の陰極150を、他方の水電解部100´の陰極150と共通としている。しかし、陽極110を共通電極とする実施も可能である。一方の水電解部100の陽極110を、他方の水電解部100´の陽極と共通として水電解部400を構成してもよい。
また図8の構成例では、並列に配置された二段の水電解部100、100´で構成したが、必要に応じて3段、4段、あるいはそれ以上の段数の水電解部で構成してもよい。
(第11の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、筐体300内に、水電解部100を配置した構成例について説明した。
しかし、筐体300内に水電解部100と気液混合部を配置する実施も可能である。気液混合部は、水電解部100から流出される電解水中に水電解部100で生成されたガスを再溶解させるために設けられる。
図9は、第2の実施形態の水電解部100と気液混合部200を筐体300内に配置した水電解装置1の構成例を示す図であり、水電解装置1を側面からみた断面図である。水電解部100は、図7に示す第9の実施形態の構造のものを適用することができる。
図9に示すように、筐体300の下板340に流入口310が設けられ、上板330に流出口320が設けられている。
筐体300内に、水電解部100が配置され、筐体300内にあって、水電解部100と流出口320の間に、気液混合部200が介在されている。
気液混合部200は、水電解部100の陽極側電解領域130の外周開口部131および陰極側電解領域160の外周開口部161に連通する気液混合入口部202を備えている。気液混合部200は、気液混合された流体を排出し、流出口320に連通する気液混合出口部203を備えている。
気液混合部200は、特願2017-165651号に開示された構成のものを適用することができる。
気液混合部200は、気液混合入口部202と気液混合出口部203との間に介在された複数の仕切部230を備えている。複数の仕切部230は、複数の開口230Aを有しており、筐体300の軸方向(図中上下方向)に間隔をあけて設けられ、筐体300内を軸方向に仕切っている。
保持部材210は、軸方向に隣接する仕切部230間に配置されており、仕切部230間の間隔を保持する。
仕切部230は、複数の開口230Aが形成された仕切部材220によって構成されている。
仕切部材220は、平織りあるいは綾織りのメッシュ、エキスパンドメタル、複数の貫通孔が形成された板状部材等を用いることができる。仕切部材220を、たとえばチタン(Ti)のメッシュを2枚重ねたもので構成することができる。
保持部材210は、Oリング、パッキンを用いることができる。保持部材210は、たとえばオゾン耐性のあるテフロン(登録商標)のOリングで構成することができる。
気液混合部200の気液混合入口部202は、リング部材201によって形成される。たとえば断面角状のリング部材201が筐体300の円筒部350の内周面に、接着等により固定される。リング部材201の内径、つまり気液混合入口部202の径は、円筒部350の内径よりも小さくなる。リング部材201は、たとえばアクリル樹脂で構成することができる。リング部材201は、気液混合部200の最下部に設けられた保持部材210に当接され、複数の保持部材210および複数の仕切部230を下方より支持する支持部材として機能する。
気液混合部200の気液混合出口部203の径は、筐体300の円筒部350の内径と等しくなっている。流出口320の径は、気液混合部200の気液混合出口部203の径よりも小さくなっている。
以上のように構成された水電解装置1の流入口310に原料水が供給されると、水電解部100の陽極側電解領域130の外周開口部131および陰極側電解領域160の外周開口部161から電解水が流出される。
水電解部100から流出された電解水は、気液混合部200の気液混合入口部202に流入する。
気液混合部200の仕切部230、たとえば2枚の仕切部材220(2枚のチタン(Ti)のメッシュ)の面に対して垂直方向に電解水が流れる。これにより軸方向に隣接する仕切部230間の空間部に水電解部100で生成されたガスがトラップされてガス溜まりを形成する。気液混合部200の仕切部230を電解水が通過すると、電解水が開口230A(例えばメッシュ孔)により微滴化(細分化)される。微滴化(細分化)され、気液接触面積が大きくなった電解水が、ガス溜まりの中を流れることにより、電解水がガスを吸収する。
複数の仕切部230を電解水が通過する毎に電解水へのガスの吸収が行われ、ガスと電解水との混合が促進され、高効率にガスが電解水に溶解する。
高効率にガスが溶解された電解水は、気液混合部200の気液混合出口部203、流出口320を介して外部に流出される。
第11の実施形態によれば、水電解部と気液混合部を配管で接続する場合と比べて、省スペース化を図ることができる。また、高効率にガスが水に溶解し、溶解度が大きい電解水を生成することができる。
また、気液混合部200の流路断面積は、筐体300の円筒部350の内径から保持部材210の面積を除いた面積であるため、流路断面積が大きく圧力損失を低減することができる。水電解部100それ自体の圧力損失が小さく、小型の装置ながら大流量の機能水を生成できる。
これにより、小型であるにもかかわらず、低圧力損失で、気体の溶解度が大きい水電解装置を実現することができる。
保持部材210(たとえばテフロン(登録商標)製Oリング)と仕切部材220(たとえば チタン(Ti)メッシュ)の数としての段数(組数)は、生成しようとするオゾン水等の濃度によって決定することができる。例えば、0.5mg/L程度の低濃度オゾン水を生成する場合には12~13段とすればよい。また、2mg/L程度の中濃度オゾン水を生成する場合には、20~25段にすればよい。気液混合部200の段数と内径を大きくすればするほど、ガスの溶解性能は向上する。
しかし、気液混合部200の内径を大きくし過ぎて、大流量の電解水を流すと、水流によってチタン(Ti)メッシュで構成された仕切部材220が凹んでしまい、偏流が生じる虞がある。この結果、ガスの溶解効率が低下する。そのような場合には、チタン(Ti)メッシュを支持する目的で、0.5mm程度の厚みのチタン(Ti)あるいはステンレス製のマイクロエキスパンドメタルを用いてチタン(Ti)メッシュを支えればよい。
外径47mmの水電解部100と13段の気液混合部200を用いて図9に示す水電解装置1を構成すると、筐体300は内径50mm、高さ100mmの寸法となり、非常に小型となる。
図9に示す水電解装置1に、水道水を3L/min程度の流量(陽極側電解水と陰極側電解水の合計)で流し、電源コード111、151を介して陽極110、陰極150間に直流8V程度の電圧を印加すると、1.77A(0.2A/cm2)程度の電流が流れる。これにより水電解が起こり、0.5mg/Lの溶存オゾン、0.2mg/Lの溶存水素、10mg/Lの溶存酸素、0.2~0.3mg/Lの過酸化水素を含んだ機能水が生成される。
オゾンガスは、すべて機能水中に溶解しているため、有害な気相のオゾンガスは、水電解装置1からは発生しない。
ただし、この機能水を容器等に貯めておくと溶解していたオゾンが徐々にガスとして蒸散する。4Lの洗面器に機能水を流し続けた状態で、洗面器直上10cmでの気相オゾン濃度は0.05ppmv程度となる。この値は、環境基準の瞬間最大値である0.1ppmvをクリアしている。
また、洗面器直上20cmでの気相オゾン濃度は、0ppmvへと低下し、24時間平均規制値である0.05ppmvを下回るので、安全面での問題は全くない。
なお、図9の構成例では、気液混合部200として、特願2017-165651号に開示された構成のものを適用した。
しかし、筐体300内に配置すべき気液混合部200としては、特願2017-165651号に開示された構成のものに限定されるわけではない。筐体300内に配置すべき気液混合部200としては、水電解部100との間の配管を不要とすることができる構成のものであればよい。
以上、第2の実施形態の水電解部100と気液混合部200を組み合わせた構成例について説明した。
また、第1の実施形態の水電解部100と気液混合部200を組み合わせ、筐体300内にこれらを配置して水電解装置1を構成してもよい。
たとえば、図1に示される第1の実施形態の水電解部100を、図中上下を逆にして、図9に示す水電解装置1の筐体300内に第2の実施形態の水電解部100の代わりに配置すればよい。
また、以上説明した第11の実施形態を第8の実施形態、第9の実施形態、第10の実施形態と組み合わせて実施してもよい。
(第12の実施形態)
第9の実施形態、第10の実施形態では、陽極側に、ボロンドープダイヤモンド(BDD)の薄膜が成膜された基板電極140Pを配置し、促進酸化水を生成する例について説明した。
しかし、多数の貫通孔141Hが形成されたボロンドープダイヤモンド(BDD)成膜基板は高価であり、水電解装置全体のコストが上昇する。
そこで、促進酸化水を生成するための触媒電極を安価に製造することができる実施形態について説明する。
チタン(Ti)メッシュ上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉が担持されたボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147を製造する方法について図10を用いて以下説明する。ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉は安価に入手できる。
(工程1)
ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を用意する。ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉は疎水性であり、水から界面力を受けるため水面に浮く。このような水面に浮くボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を用意する。ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を、篩過等により、水面に浮く所定の粒度分布に整粒してもよい。
(工程2)
図10(A)に示すように、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を、水面に浮かせる。ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145は、界面力によって自己組織化し、重なり合うことなく一層(単層)に、かつ緻密に水面に自己配列する。
一方で、水中に、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145の粒子よりも更に目の細かいメッシュの金属メッシュを配置する。水中に、たとえば80メッシュのチタン(Ti)メッシュ146を、水面上のボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145の下方に位置するように配置する。
(工程3)
図10Bに示すように、チタン(Ti)メッシュ146を、水中から上方に引き上げ、チタン(Ti)メッシュ146により、水面のボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145をすくい取る。
(工程4)
チタン(Ti)メッシュ146によりすくい取られたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145に、高分子電解質膜120の溶液(ナフィオン溶液等)を噴霧するなどして、チタン(Ti)メッシュ146上に固定する。
このようにしてチタン(Ti)メッシュ146上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145が担持されたボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147が製造される。チタン(Ti)メッシュ146上には、ボロンドープダイヤモンド(BDD)の微粒子が一層(単層)で均一に配列されている。
このボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147を各実施形態の水電解部100の陽極側に配置することで、促進酸化水を生成することができる。触媒粒子が必要最小量で済むため、触媒電極を安価に製造することができる。
高分子電解質膜120上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を単層に担持させる実施も可能である。このような触媒電極付き高分子電解質膜120の製造方法について以下説明する。たとえば、高分子電解質膜120上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を転写させる方法を用いる。
まず、上記工程1、工程2、工程3を実施して、チタン(Ti)メッシュ146上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を配列させる。
つぎに、膨潤させた高分子電解質膜上に、チタン(Ti)メッシュ146上に配列されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を転写させる。
つぎに、膨潤させた高分子電解質膜上に転写されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145に対して高分子電解質膜の溶液(ナフィオン溶液等)を噴霧するなどして固定する。
膨潤させた高分子電解質膜上に高分子電解質膜の溶液を噴霧すると、膜にしわや凸凹が生じやすい。そこで、高分子電解質膜の変形を防止するため、エアーチャックで高分子電解質膜を固定することが望ましい。
また、つぎのような方法でもよい。この方法は、エアーチャックを使わずに高分子電解質膜の変形を防止できる。
まず、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145の転写を行う前に、高分子電解質膜の溶液を塗布したガラス上に高分子電解質膜を貼り付けて乾燥、固定しておく。
つぎに、ガラス上の高分子電解質膜の表面に対して高分子電解質膜の溶液を塗布する。
つぎに、高分子電解質膜の溶液が塗布された高分子電解質膜に、チタン(Ti)メッシュ146上に配列されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を転写する。
つぎに、ホットプレートを用いて、120℃程度で圧着して高分子電解質膜120とボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を一体化させる。
このようにして高分子電解質膜120上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145が単層に担持された触媒電極付き高分子電解質膜が製造される。この触媒電極付き高分子電解質膜の触媒電極面を各実施形態の水電解部100の陽極側に配置することで、促進酸化水を生成することができる。触媒粒子が必要最小量で済むため、触媒電極を安価に製造することができる。
なお、以上は、メッシュ電極としてチタン(Ti)メッシュを使用したが、チタン(Ti)以外の金属メッシュを用いる実施も可能である。
またボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持する実施について説明したが、他の疎水性の触媒粒子を担持する実施も同様にして可能である。
以上、疎水性の触媒粒子を担持する実施形態について説明したが、親水性の触媒粒子を担持する実施も可能である。
チタン(Ti)メッシュ上に、金属酸化物等の親水性の触媒粒子、例えば酸化イリジウム(IrO2)粉が担持されたメッシュ電極149を製造する方法について図11を用いて以下説明する。
(工程1)
図11Aに示すように、シリコン油等の油中の底面、シリコン油等の油と水との界面に、チタン(Ti)メッシュ146を浮かべる。これによりチタン(Ti)メッシュ146の表面に油分を浸み込ませる。
(工程2)
チタン(Ti)メッシュ146の上方に、酸化イリジウム(IrO2)粉148を撒く。酸化イリジウム(IrO2)粉148は親水性であるため、水と油の界面に一層(単層)で、かつ緻密に自己配列される。
(工程3)
チタン(Ti)メッシュ146を、一旦、水中に沈める。図11Bに示すように、水中からチタン(Ti)メッシュ146を、上方に引き上げ、チタン(Ti)メッシュ146により、水と油の界面に自己配列された酸化イリジウム(IrO2)粉148をすくい取る。
(工程4)
チタン(Ti)メッシュ146によりすくい取られた酸化イリジウム(IrO2)粉148に、高分子電解質膜の溶液(ナフィオン溶液等)を噴霧するなどして、チタン(Ti)メッシュ146上に固定する。
このようにしてチタン(Ti)メッシュ146上に酸化イリジウム(IrO2)粉148が担持された酸化イリジウム(IrO2)担持メッシュ電極149が製造される。チタン(Ti)メッシュ146上には、酸化イリジウム(IrO2)の微粒子が一層(単層)で均一に配列されている。この酸化イリジウム(IrO2)担持メッシュ電極149を各実施形態の水電解部100の陽極側に配置することで、酸素水を生成することができる。触媒粒子が必要最小量で済むため、触媒電極を安価に製造することができる。
高分子電解質膜120上に酸化イリジウム(IrO2)粉148を単層に担持させる実施も可能である。このような触媒電極付き高分子電解質膜の製造方法については、上述した高分子電解質膜120上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を転写させる方法と同様の方法を適用することができる。
なお、以上は、メッシュ電極としてチタン(Ti)メッシュを使用したが、チタン(Ti)以外の金属メッシュを用いる実施も可能である。
また酸化イリジウム(IrO2)粉を担持する実施について説明したが、他の金属酸化物等の親水性の触媒粒子を担持する実施も同様にして可能である。
第12の実施形態の触媒粒子担持メッシュ電極あるいは触媒電極付き高分子電解質膜を、第1の実施形態乃至第11の実施形態に適用することができる。
各実施形態の水電解装置1の大きさは、水の流量に応じて定められる。大流量の水を流す場合には、筐体300と水電解部100を大きくし、電極面積と気液混合部200の容積を増やせばよい。
各実施形態の水電解装置1は、圧力損失を考慮して製造することができる。例えば、図9に示す水電解装置1を、10L/minの水を流す装置として製造しようとすると、圧力損失は0.1MPa程度となる。圧力損失を更に低減したい場合には、筐体300、水電解部100、気液混合部200の断面積を大きくしたり、図8に示す並列型の水電解部400を用いればよい。
以下、各実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示す構成の内径50mmの筐体300の中に、図12に示す構成の外径47mm、高さ22mmの水電解部100を設置して水電解装置1を構成した。
図12は、図7と同様に水電解部100を分解図で示す。陽極側には、2枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極140と、0.5mm厚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pを設置した。陰極側には、8枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極170を設置した。陽極側メッシュ電極140、基板電極140P、陰極側メッシュ電極170は、外径35mm、内径(内側開口部の径)11mmの円環状である。陽極側と陰極側の間に、高分子電解質膜120としてナフィオン117膜を挿入した。高分子電解質膜120のサイズは、内径10mm、外径36mmである。
図1に示す筐体300の上側の流入口310から水道水を2.4L/minの流量で流し、図12に示す陽極110、陰極150間に1~3Aの電流を流して水電解を行った。筐体300の下側の流出口320から陽極水と陰極水が混合した電解水としての機能水を取り出した。
陽極側へは0.5L/minの流量、陰極側へは1.9L/minの流量の水が流れたものと考えられる。
実施例1の水電解装置1の電圧-電流特性を図13に示す。
図13から、水電解装置1の抵抗は少なく、電圧6.2Vで1A(0.12A/cm2)の電流が流れ、電圧8.4Vで3A(0.35A/cm2)の電流が流れたことがわかる。また、電圧に比例して電流が増加しているのがわかる。
生成された機能水中の溶存オゾン濃度を図14に示す。
図14から、電流密度が0.2A/cm2を上回ると溶存オゾン濃度が顕著に増加することがわかる。
気相オゾン生成速度を図15に示す。
図15から、電流密度が0.12A/cm2(1A)~0.17A/cm2(1.5A)では、気相オゾンの生成が少なく安全に装置を運転できることがわかる。しかし、電流密度が、0.23A/cm2(2A)を越えると気相オゾンの生成が多くなり、危険であることがわかる。
図16に気相オゾン、液相オゾンおよび気相オゾンと液相オゾンの合計それぞれのオゾン生成電流効率を示す。
図16からわかるように、電流密度が0.35A/cm2(3A)のときに20%近い電流効率が得られたが、低い電流密度では5%未満の電流効率である。
なお、いずれの電流密度の場合でも、気相オゾンと液相オゾンの生成効率は、ほぼ同等(約1:1)であり、オゾンガスが水中に良く溶けずに気体として放出されていた。この原因は、陽極側への水流量が少なかったので気液混合が促進されなかった、あるいは、気体が陽極側メッシュ電極間に溜まって電極を覆い、有効触媒面積が低下した、等の理由によると考えられる。
図17に生成した機能水中の過酸化水素濃度を示す。
図17から、0.23A/cm2(2A)以下の電流密度では、溶存オゾンよりも過酸化水素の方が多く生成されていることがわかる。
実施例1によれば、簡素な水電解装置1でも運転条件を選べば、20%近いオゾン生成電流効率(図16参照)を得られることが明らかとなった。また溶存オゾンと同程度の濃度の過酸化水素を生成できることがわかった。また陽極側の水の流量を増加させるべきことが明らかになった。
(実施例2)
陰極側に用いる電極の材質、陰極側へ流す水の流量、電流密度が、水電解時に生成される陰極側電解水のpHに与える影響を調べる実験を行った。
この実験では、図6に示す二室型の水電解装置1と同様の二室型の水電解装置1を用いた。
陽極側には、2枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極(陽極側メッシュ140)と、1枚の0.5mm 厚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pを設置した。陰極側には、陰極150側に、3枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極(陰極側メッシュ170)を配置した。
陰極側には、高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)に接する電極として、80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極170を1枚または80メッシュのプラチナ(Pt)メッシュ電極170を1枚配置することで、陰極側の電極の材質の違いによる陰極側電解水のpHの変化を調べた。陽極側メッシュ電極140、陽極側基板電極140P、陰極側メッシュ電極170は、いずれも円環状に形成された電極である。いずれの電極も電極面積は、7.6cm2である。
水電解装置1に流す水道水の流量は、陽極側が1.1L/min、陰極側が2.0L/minとして、図6に示すように陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170の外周側から内側開口部に向けて水を流した。
図18に、高分子電解質膜120に接触する陰極側メッシュ電極(陰極側メッシュ170)として80メッシュのプラチナ(Pt)メッシュ電極(陰極側メッシュ170)を用いた場合の陽極側電解水と陰極側電解水のpHを示す。
図19に、高分子電解質膜120に接触する陰極側メッシュ電極170としてプラチナ(Pt)メッシュ電極とチタン(Ti )メッシュ電極を用いた場合の水酸化物イオンOH-の生成速度の違いを示す。なお、図中のカッコ( )内の数値は、陰極側電解水の流量である。
水電解装置1の陽極110、陰極150間に2A、4A、6Aの電流を流して、陰極側電解水のpH変化および水酸化物イオンOH-の生成速度を測定した。
図18から、陰極側に80メッシュのプラチナ(Pt)メッシュ電極170を使用すると、いずれの電流密度においても陰極側電解水のpHの上昇は少ないことがわかる。陰極側電解水のpHは、原料水中に含まれるMg2+イオン(約5mg/L)が全て水酸化マグネシウムMg(OH)2になった場合に予想される飽和溶解度であるpH値8.6を下回っているのがわかる。
図18から、陰極側メッシュ電極170にプラチナ(Pt)メッシュを用いれば、陰極側の電極上へのミネラルの電析なしに、長時間運転することが可能であると判断される。
一方、高分子電解質膜120に接触する陰極側メッシュ電極170として80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極(陰極側メッシュ170)を用いると、図19に示すように、陰極側電解水のpH、つまり水酸化物イオンOH-の生成速度が増加した。
図19から、プラチナ(Pt)メッシュ電極(陰極側メッシュ電極170)を用いた場合の水酸化物イオンOH-の生成速度は、チタン(Ti)メッシュ電極(陰極側メッシュ電極170)を用いた場合の水酸化物イオンOH-の生成速度の約半分であることがわかる。
また、陰極側電解水の流量は、水酸化物イオンOH-の生成速度に影響は無く、水酸化物イオンOH-の生成速度は電極の材質と電流密度によって定まることがわかる。
特に、プラチナ(Pt)メッシュ電極(陰極側メッシュ電極170)を用いた場合には、電流密度を0.5A/cm2以下にすれば、水酸化物イオンOH-の生成速度をほぼゼロに近づけることが可能である。
したがって陰極側メッシュ電極170にプラチナ(Pt)メッシュ電極を用いた水電解装置1は、中国や欧州の水道水のような硬度の高い水を電解する用途に最適である。
実施例2の実験では、軟水を原料水として用いたため、プラチナ(Pt)メッシュ電極およびチタン(Ti)メッシュ電極のいずれかを陰極側メッシュ電極170として用いてもミネラル分の電析は発生しなかった。
しかし、中国や欧州の水道水のような硬度の高い原料水を使用する場合には、陰極側メッシュ電極170にプラチナ(Pt)メッシュ電極を用いることが望ましい。陰極側メッシュ電極170にプラチナ(Pt)メッシュ電極を用い、かつ、0.5A/cm2以下の低電流密度で水電解を行うことによって、ミネラル分の電析を防止することができると考えられる。
なお、日本の水道水のような硬度が低い軟水を原料水として用いる場合には、陰極側メッシュ電極170に比較的水素過電圧が高いチタン(Ti)メッシュ電極やステンレスメッシュ電極等を用いることが可能である。
図19から、例えばチタン(Ti)メッシュ電極を陰極側メッシュ電極170に用いる場合には、電流密度を0.75A/cm2以下とし、陰極側に1L/min以上の流量の水を流せばミネラル分の電析を抑制する上で好ましいことがわかる。
このときの水酸化物イオンOH-の生成速度は、2×10-8mol/minであることから、原料水となる水道水のpHが8.0と高めであったとしても、陰極側電解水のpHは8.5程度となり、ミネラル分の電析を抑制できると考えられる。
(比較例1)
実施例2に対する比較例を説明する。
陰極側メッシュ電極170として比較的水素過電圧が高いボロンドープダイヤモンド(BDD)を使用した場合に、ミネラル分の電析が問題になるか否かを調べる実験を行った。
この実験では、実施例2と同じく、図6に示す二室型の水電解装置1を用いた。
陽極側には、2枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極(陽極側メッシュ電極140)と、1枚の0.5mm厚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pを設置した。陰極側には、陰極150に、2枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極(陰極側メッシュ電極170)を接触するように配置した。
陰極側には、高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)に接する電極として、1枚の0.5mm厚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極170Pを配置した。
陽極側メッシュ電極140、陽極側基板電極140P、陰極側メッシュ電極170、陰極側基板電極170Pは、いずれも円環状に形成された電極である。いずれの電極も電極面積は、7.6cm2である。
水電解装置1に流す原料水となる水道水の流量は、2L/minとし、陽極側が1L/min、陰極側が1L/minとして、図6に示すように陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170の外周側から内側開口部に向けて水を流した。
この水電解装置1に0.4A/cm2(3A)の電流を流したところ、陰極側電解水のpHが9.3に上昇し、4時間の運転中に電圧が9Vから13Vへと上昇し、水電解装置1の劣化が確認された。
運転停止後に、水電解装置1を分解、点検したところ、陰極側のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極170Pおよび高分子電解質膜120の陰極面に多量のミネラル分が電析していた。
このように、陰極側に、ボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極170Pを使用すると、水酸化物イオンOH-の生成速度が大きくなって、陰極側電解水のpHが上昇し、ミネラル分の析出が発生するので好ましくないと判断される。陰極側には、水素過電圧が低いプラチナ(Pt)やチタン(Ti)等の材質の電極を用いる方がミネラル分の電析を抑制する上で望ましい。
(実施例3)
実施例1、実施例2および比較例1の結果を踏まえて、水電解装置1に用いられるメッシュ電極の種類と運転条件を最適化して促進酸化水を生成する実験を行った。
この実験では、図9に示す筐体300内に水電解部100と気液混合部200を配置した水電解装置1を用いた。
図9に示す構成の内径50mmの筐体300の中に、図20に示す構成の外径47mmの水電解部100を設置した。図20は、図7、図12と同様に水電解部100を分解図で示す。
陽極側には、3枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極140と、1枚の0.5mm厚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pを設置した。陰極側には、陰極150に、6枚の80メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極170を接触するように配置した。
陰極側には、高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)に接する電極として、80メッシュのプラチナ(Pt)メッシュ電極(陰極側メッシュ電極170)を1枚配置した。
陽極側メッシュ電極140、陽極側基板電極140P、陰極側メッシュ電極170は、外径35mm、内径11mmの円環状であり、電極面積は8.6cm2である。
図9に示すように、水電解装置1の下側から水を供給し、陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170の内側開口部から外周側に向けて水を流した。
原料水として3.0L/minの水道水を供給し、陽極110、陰極150間に0.12A/cm2~0.35A/cm2(1~3A)の電流を流して水電解を行った。筐体300の流出口320からオゾンと過酸化水素が混合された促進酸化水を取り出した。
実施例3の水電解装置1の電圧-電流特性を図21に示す。
図21から、実施例3では電極の構造が最適化されたことにより、図17の実施例1における電圧-電流特性と比べて、低い電圧で1~3A の電流を流せることがわかる。
電流密度を変化させて気相オゾンの生成速度を調べた。気相オゾン生成速度を図22に示す。
気相オゾンフリーとなる気相オゾン生成速度の目安は、0.01mL/minと考えられる。図22から、電流密度を0.2A/cm2(1.7A)以下にすれば、気相オゾンをフリーにできることがわかる。
気相オゾンをフリーにできる電流密度である0.2A/cm2(1.7A)で水電解を24時間継続した場合の溶存オゾン濃度を図23に示す。
また、過酸化水素の濃度を図24に示す。
これら図23、図24から、実施例3の水電解装置1によれば、0.5mg/Lのオゾンと0.2mg/Lの過酸化水素を含んだ促進酸化水を気相オゾンフリーの状態で安定的に生成されることがわかる。
電流密度0.2A/cm2(1.7A)で24時間運転したときのオゾン生成電流効率の経時変化を図25に示す。
図25から、オゾン生成電流効率の平均は、21.3%という高い状態で安定していることが明らかである。
このように、実施例3の水電解装置1によれば、高効率に促進酸化水を生成することができる。
(実施例4)
実施例3の水電解装置1を用いて、水電解装置1の高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)のみを新品状態にして耐久試験を行った。
水の流量等の条件を実施例3と同一とし、0.2A/cm2という定電流密度で120時間(7,200分)の連続運転を行った。
連続運転の間、4.0L/minの流量で水を供給したときを除いて、安定的に0.5mg/Lの溶存オゾンと0.2mg/Lの過酸化水素を含んだ促進酸化水を生成できた。
この耐久試験における電圧の経時変化を図26に示す。
図26から、水の流量を4.0L/minに増やすと、電圧が0.2~0.3V程度上がるものの、水の流量を元の3.0L/minに戻すと、電圧も元に戻ることがわかる。
120時間運転後のオゾン生成電流効率は、20.6%であり実施例3とほぼ同等の値である。これにより水電解装置1の劣化は、全く発生しなかったことがわかる。
なお、4.0L/minの水流量では、0.4mg/Lの濃度の溶存オゾンを含む促進酸化水を生成することができた。
120時間連続運転をした後に、電極へのミネラル分の電析の有無を電子天秤で調べた。測定の結果、電析は全く発生しておらず、実験前後での陰極側のメッシュ電極の重量に変化はなかった。
このように水電解装置1に用いられる触媒の種類と運転条件を最適化することにより、長時間、安定的な運転が可能であることがわかった。
実験中に生成した促進酸化水を4Lのバケツに流してオーバーフローさせながら、北川式オゾンガス検知器を用いて、バケツの水面直上10cmおよび20cmの高さでオゾンガス濃度を調べた。その結果、オゾンガス濃度は、バケツの直上10cmで0.05ppmv、直上20cmで0ppmvであり、安全であることが確認できた。
また、運転の途中で促進酸化水を光路長1cmの分光セルに採取して、その中の溶存オゾン濃度の経時変化を調べた。
時間の経過に伴う溶存オゾン濃度の減少の様子を図27に示す。
初期のオゾンの吸光度(Abs.)は、0.034(溶存オゾン濃度;0.54mg/L)であり、それが半減するまでにわずか15分しかかからなかった。
通常のオゾン水中のオゾンの半減期は45~60分程度であるため、過酸化水素による促進酸化反応でオゾンが消費されていることが確認できた。
以上のことから、実施例3の水電解装置1は、安全な促進酸化水を効率良く長時間にわたって生成できることが確認された。
(実施例5)
実施例3の水電解装置1と同じ装置を用い、陽極のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pのみをボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147(80メッシュのチタン(Ti)メッシュ)に置き換えて水電解の実験を行った。
チタン(Ti)メッシュ146上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を担持する方法は、図10で説明した通りである。
ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145は、Changsha 3 Better Ultra-hard Materials Co., Ltd. 製を使用した。
ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145の粒子サイズは、40/45(40メッシュは通り抜けるが、45メッシュは通り抜けない大きさ)である。ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を担持した後のメッシュ電極147の厚みは、0.53mmになった。
ボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147は、陽極側メッシュ電極140、陰極側メッシュ電極170と同様に、外径35mm、内径11mmの円環状であり、電極面積は8.6cm2である。
実験で用いたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145は、抵抗が大きくなるようにボロンのドーパント濃度が低く調整されたものである。
しかし、実施例4と同じ条件(水道水の流量;3.0L/min)で水電解した場合でも、17.5Vで1A(0.115A/cm2)、20Vで1.32A(0.153A/cm2)の電流を流すことができた。また、オゾン生成電流効率は、電流密度によって若干変化したが、全体的に7~10%が得られた。
このように抵抗が大きくなるようにボロンのドーパント濃度が低く調整されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉145を用いても、オゾンと過酸化水素を含む促進酸化水を安定して生成できるのが確認された。
各電流密度における液相のオゾン(O3)と過酸化水素(H2O2)の濃度を図28に表として示す。
図28から、電流が1A(0.115A/cm2)のときに、0.125mg/Lのオゾンと0.15mg/Lの過酸化水素が含まれた機能水を生成できたことがわかる。
また、電流が1.32A(0.153A/cm2)のときには、溶存オゾン濃度が0.193mg/Lに増加した。
なお、気相オゾン生成速度は、気相オゾンフリーの目安となる0.01mL/minを大きく下回り、どの条件でも安全に機能水を生成することが確認された。この理由は、オゾン生成量が少なかったので、その大部分が水に溶解したためと考えられる。
水電解装置1の高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)のみを新品状態にして耐久試験を行った。
電流を1.5A(0.115A/cm2)の定電流とし、原料水となる水道水を流量3.0L/minに設定して、水電解装置1を4時間連続運転した。
この耐久試験における電圧の経時変化を図29に示す。
図29から、電圧が安定しており水電解装置1で劣化が生じないことが確認された。定電流で4~5時間の運転を行って電圧が安定していれば、その後も水電解装置1の劣化は発生しないと考えられる。
4時間の運転後に水電解装置1を分解してミネラル分の電析の有無を調べた。この結果、電析は全く生じていないことが確認された。
したがってボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147を陽極側に使用した水電解装置1は、0.115A/cm2の電流密度下であれば、安定的に長時間運転ができることが確認された。
さらにボロンのドーパント濃度が高く、かつ低抵抗なボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を用いれば、高品質のボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147を製造することができる。このような高品質のメッシュ電極147を、水電解装置1に配置することで、高濃度にオゾンと過酸化水素が溶存した促進酸化水を、長時間、水電解装置1に劣化が生じることなく、生成できるものと予測される。
(参考例)
以下に、参考例の水電解装置について説明する。
実施例3によれば、原料水として3.0L/minの水道水を供給し、電流密度を0.2A/cm2(1.7A)以下にすれば、0.5mg/Lのオゾンと0.2mg/Lの過酸化水素を含んだ促進酸化水を安定的に生成することができる。このとき気相オゾンフリーの状態で高分子電解質膜120(ナフィオン117膜)の損傷は確認されなかった。
実施例3の水電解装置1の電極面積は8.6cm2と小さく、小型化を達成している。
そこで、以下の点を課題とする参考例について説明する。
(課題)
(1)促進酸化水中の溶存オゾン(DO3)と過酸化水素(H2O2)の濃度を向上させること
(2)水の流量を増やすこと
(3)電解質膜120(ナフィオン117膜)の損傷を防止すること
上記(1)、(2)、(3)を達成するためには、水電解部の電極面積を大きくする必要がある。
しかし、電極面積は大きいけれども小型であるという、相反した特性を兼ね備えた水電解装置を提供することを課題とする。
(促進酸化水の製造目標)
上記(1)、(2)を達成するために促進酸化水中の溶存オゾン(DO3)と過酸化水素(H2O2)の濃度および水の流量の目標値を以下のとおりとする。
(4)溶存オゾン(DO3)の濃度=1.0mg/L、過酸化水素(H2O2)の濃度=0.4~0.6mg/L程度
(5)促進酸化水流量=10L/min以上
(制約条件)
筐体300の大きさ等、以下の制約条件を課す。
(6)筐体300の内径を60mmを超えないこと
気液混合部200を筐体300内に配置することを前提にすると、仕切部材220にエキスパンドメタルを使用しないで済む大きさとする。チタン(Ti)製のエキスパンドメタルメタルは高価であり、コスト低減のためである。
(7)エキスパンドメタルを使用する場合でも筐体300の内径が80mm以下であること
(8)第12の実施形態のボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極147、触媒電極付き高分子電解質膜と同様に、チタン(Ti)メッシュ上又は電解質膜120(ナフィオン117 膜)上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持したものを使用する。
これは、電極が大面積となるため、触媒電極に、高価なプラチナ(Pt)メッシュを使用することを回避して、コスト低減を図るためである。
(必要電流値、電極面積の計算)
(9)比較例
実施例3の水電解装置1を比較例とし、電極面積=8.6cm2、電流密度=0.2A/cm2、電流値=1.73Aで、溶存オゾン(DO3)の濃度=0.5mg/L、過酸化水素(H2O2)の濃度=0.2mg/Lの促進酸化水を、流量3L/minで生成できる。オゾン生成電流効率は、20%程度である。
(10)参考例の水電解装置1に必要な電流値と電極面積
必要となる電流値をΧ[A]とすると、上記(4)、(5)、(9)の数値を用いて、1.73:(3L/min×0.5mg/L)=Χ:(10L/min×1mg/L)となる。したがって、必要な電流値は、Χ=11.5[A]となる。15Aの電流を流せるようにすることが望ましい。
電解質膜120(ナフィオン117 膜)の損傷を防止するため、0.1A/cm2という低電流密度で運転することにした場合、必要となる電極面積は、
15[A]÷0.1[A/cm2]=150[cm2]となる。これは、比較例の電極面積(=8.6cm2)の約17.4倍となる。
(参考例の水電解部の構成)
参考例の水電解部を各比較例の水電解部の構成と対比する。
(11)比較例1:一段の水電解部100(第9の実施形態等)
第9の実施形態等の一段の水電解部100で構成された水電解装置1を比較例1とする。
メッシュ電極のサイズを、外径=14cm、内径(開口部の径)=2cmとすると、電極面積=150.8cm2となり、参考例の水電解装置1の必要電極面積(=150cm2)を実現できる。
ネジ孔の設置と筐体300内におけるクリアランスを考慮すると、筐体300の内径は、20cmとなる。
(12)比較例2:三段の水電解部(第10の実施形態)
第10の実施形態では、二段の水電解部で構成された水電解装置1とともに、三段の水電解部で構成された水電解装置1を説明した。
メッシュ電極のサイズを、外径=8cm、内径(開口部の径)=1cmとして、水電解部100を3段並列に配置した構造にする。電極面積は、
{(82-12)/4}π×3=148.4[cm2]
となる。この電極面積は、参考例の水電解装置1の必要電極面積(=150cm2)を満足できる。
ネジ孔の設置と筐体300内におけるクリアランスを考慮すると、筐体300の内径は、11cmとなる。
(13)参考例の水電解部1500の構成
図30に、参考例の水電解部1500の構成を示す。
図30Bは、水電解部1500の断面図で、図30Aは、図30Bに示すロール状電極部1501を、拡大するとともに、平坦にして断面構造を示す図である。
図30Bに示すように、水電解部1500は、円柱状の心棒1590と、ロール状電極部1501を含んで構成される。
ロール状電極部1501は、心棒1590に巻き付けられ、密着される。ロール状電極部1501は、心棒1590側(内側)を裏面1501Bとし、対向する反対側の外側を表面1501Aとして、内側のロール状電極1501の表面1501Aが、外側のロール状電極1501の裏面1501Bに重なるように、巻き付けられる。
図30Aに示すように、ロール状電極部1501は、表面1501A側から、裏面1501B側に向けて、セパレータ1510、陰極側メッシュ電極1540、触媒電極付き高分子電解質膜1560、陽極側メッシュ電極1520の順番で厚み方向に積層され、密着されて構成されている。
セパレータ1510は、電気的に絶縁性のある材料で構成されている。内側のロール状電極1501の表面1501Aが、外側のロール状電極1501の裏面1501Bに重なるように、巻き付けられる。この際に、セパレータ1510は、内側のロール状電極1501の陰極側と、外側のロール状電極1501の陽極側とが電気的に接触して、短絡等することを防止する。
陽極側メッシュ電極1520は、実施形態の陽極側メッシュ電極140に相当する。メッシュ電極の材料、枚数等は任意である。
陰極側メッシュ電極1540は、実施形態の陰極側メッシュ電極170に相当する。メッシュ電極の材料、枚数等は任意である。
触媒電極付き高分子電解質膜1560は、第12の実施形態のボロンドープダイヤモンド(BDD)の触媒電極付き高分子電解質膜に相当する。触媒電極付き高分子電解質膜1560は、電解質膜120(ナフィオン117膜)上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持して構成される。触媒電極付き高分子電解質膜1560の触媒電極面(ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉)が陽極側に配置される。
セパレータ1510と触媒電極付き高分子電解質膜1560の間に形成された領域は、陰極側電解領域1550を構成する。陰極側電解領域1550は、実施形態の陰極側電解領域160に相当する。
触媒電極付き高分子電解質膜1560と、内側のロール状電極部1501の表面1501Aに配置されたセパレータ1510の間に形成された領域は、陽極側電解領域1530を構成する。陽極側電解領域1530は、実施形態の陽極側電解領域130に相当する。
図30に示す水電解部1500に対して、紙面の垂直方向に原料水が流され、水が陽極側電解領域1530および陰極側電解領域1550内を紙面の表面から裏面に向けて、あるいは紙面の裏面から表面に向けて流通して、電気分解が行われる。
例えば、直径3cm(半径1.5cm)、長さ5cmのフィルムケースのような心棒590に幅5cmのロール状電極部501を3周巻き付けて、水電解部500が構成される。この水電解部1500の電極面積は、
2×π×1.5[cm]×5[cm]×3=141.4[cm2]
となる。この電極面積は、参考例の水電解装置1の必要電極面積(=150cm2)を満足できる。
これにより、小さな水電解部1500でありながら、大きな電極面積を持たせることが可能となる。水流路である陽極側電解領域1530、陰極側電解領域1550の流入断面積が広いため、圧力損失が小さく大流量の水を流すことができる。
(参考例の水電解装置1の構成)
図31に、参考例の水電解装置1の構成を示す。
図31Aは、筐体300内に水電解部1500を配置した構成を示す。筐体300については、第11の実施形態等の構成要素と同じものには同じ符号を付与している。
図31Bは、筐体300と水電解部1500の間に配置されるスペーサ391の平面図である。すなわち、図31Bは、図31Aのスペーサ391を上面または下面からみた図である。
図31Aに示すように、筐体300内には、水電解部1500が、図30Bの紙面に対する垂直方向が、図31Aの図中の上下方向となるように配置される。
筐体300の内部上端には、図中上面からみて十字状のスペーサ391が配置されている。スペーサ391は、上板330と水電解部1500の上端の間に配置される。
スペーサ391は、上板330に設けられた流入口310と、水電解部1500の上端の水流入口(陽極側電解領域1530、陰極側電解領域1550の流入口)とを連通する流路を形成する。
筐体300の内部下端には、図中下面からみて十字状のスペーサ391が配置されている。スペーサ391は、下板340と水電解部1500の下端の間に配置される。
スペーサ391は、下板340に設けられた流出口320と、水電解部1500の下端の水流出口(陽極側電解領域1530、陰極側電解領域1550の流出口)とを連通する流路を形成する。
筐体300の内部上側および内部下側にはそれぞれ、Oリング392が、円筒部350の内周に設けられている。Oリング392は、水電解部1500の外周に密着されている。
図31Aの図中上側の流入口310に、原料水として例えば水道水を供給する。これにより水電解部1500に対して、図中下方向に原料水が流される。
ロール状電極部1501の陽極側には、電源コード1581の一端が電気的に接続され、電源コード1581の他端が図示しない直流電源のプラス端子に電気的に接続される。ロール状電極部1501の陰極側には、電源コード1582の一端が電気的に接続され、電源コード1582の他端が上記直流電源のマイナス端子に電気的に接続される。上記直流電源のプラス端子から電源コード1581、ロール状電極部1501の陽極側、ロール状電極部1501の陰極側、電源コード1582を経て上記直流電源のマイナス端子に電流が流れ、水電解部1500の陽極側電解領域1530および陰極側電解領域1550で水電解が行われる。
水が陽極側電解領域1530および陰極側電解領域1550内を図中上側から下側に向けて流通しながら当該領域1530、1550において電気分解が行われる。水電解が行われた電解水、たとえば促進酸化水は、図31Aの図中下側の流出口320から外部に流出される。
水電解部1500を、心棒1590に、ロール状電極部1501を3巻きして構成する。
ロール状電極部1501の一巻き分の厚みを2.8mmとすると、3巻きしたロール状電極部1501は、8.4mmの厚さとなる。また心棒1590の直径を30mmとする。
このとき水電解部1500の外径は、47mmとなる。したがって、内径50mmの筐体300内に水電解部1500を収めることができる。
したがって電極面積は大きいけれども小型であるという、相反した特性を兼ね備えた水電解装置1を提供することができる。
第11の実施形態等と同様に、図30Aの筐体300内にあって、水電解部1500と流出口320の間に、気液混合部200を介在させて水電解装置1を構成してもよい。
(実施例6)
以下に、電極を大面積化して大流量の水を流すことができる水電解装置の実施例について説明する。本実施例6は、上述した各実施形態および各実施例および参考例に適用することができる
(電極材料の選定)
水電解部の大型化を図る際には、電極材料の特性に注意する必要がある。大面積の電極を用いて、高いオゾン生成効率を上げるためには、少なくとも8V以上、できれば10V以上の電圧を印加する必要がある。
そこで、水電解部の陽極側に用いられる電極の材料毎に、電流-電圧の特性(以下、I-V特性)を比較、検討した。
(実施例と比較例)
実施例:陽極側に、チタン(Ti)メッシュ上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持したボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極を用いる。ボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極は、実施例5と同様に、抵抗が大きくなるようにボロンのドーパント濃度が低く調整されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を用いたものである。8cm2の電極面積で17V-1.0A程度のI-V特性となる。
比較例1:陽極側に、プラチナ(Pt)メッシュ電極を用いる。8cm2の電極面積で10V-15A 程度のI-V特性となる。
比較例2:陽極側に、ニオブ(Nb)基板上にボロンドープダイヤモンド(BDD)の薄膜が成膜されたボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極を用いる。8.6cm2の電極面積 8V-1.73A 程度のI-V特性となる。
(制約条件)
参考例と同様に、以下を条件とする。
(1)溶存オゾン(DO3)の濃度=1.0mg/L、過酸化水素(H2O2)の濃度=0.4~0.6mg/L程度
(2)促進酸化水流量=10L/min以上
(3)電解質膜120(ナフィオン117膜)の損傷を防止するため、0.1A/cm2という低電流密度で運転する。
したがって、必要となる電極面積は、150[cm2]となり、150[cm2]の電極面積に対して15A(0.1A/cm2)の電流を流す必要がある。
またオゾン生成効率を上げるため、8V以上の電圧を陽極と陰極間に印加する必要がある。
(印加電圧と電流の計算結果)
上記制約条件のもとに、比較例1、比較例2、実施例について印加電圧と電流を計算する。
(比較例1)
8[cm2]の電極面積のプラチナ(Pt)メッシュ電極の抵抗値は、10[V]/15[A]=0.667[Ω]となる。
150[cm2]の電極面積の電極と、8[cm2]の電極面積の電極の電極面積比は、150[cm2]÷8[cm2]=18.8倍となる。
よって、150[cm2]の電極面積のプラチナ(Pt)メッシュ電極を用いた水電解部の抵抗値Rは、並列回路であるとして、
1/R=(1/0.667[Ω])×18.8=28.2
R=1/28.2=0.0354[Ω]となる。
したがって電流15Aを流したときの印加電圧は、15×0.0354=0.53[V]となる。
この電圧0.53[V]では、オゾンは全く生成されないと考えられる。また2~3Vの印加電圧で水電解が始まった瞬間に、制約条件の上限である15Aが流れてしまうことになる。
(比較例2)
8.6[cm2]の電極面積のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極の抵抗値は、比較例1のプラチナ(Pt)メッシュ電極の約7倍である。その抵抗値は、
8[V]/1.73[A]=4.62[Ω]となる。
150[cm2]の電極面積の電極と、8.6[cm2]の電極面積の電極の電極面積比は、150[cm2]÷8.6[cm2]=17.4倍となる。
よって、150[cm2]の電極面積のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極を用いた水電解部の抵抗値Rは、並列回路であるとして、
1/R=(1/4.62[Ω])×17.4=3.78
R=1/3.78=0.265[Ω]となる。
したがって電流15Aを流したときの印加電圧は、15×0.265=3.97[V]となる。
この電圧3.97[V]は、わずかにオゾンが生成し始める値であり、オゾン生成電流効率は、ほぼゼロであると考えられる。
(実施例)
8[cm2]の電極面積のボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極の抵抗値は、比較例2のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極の約2.4倍である。その抵抗値は、14[V]/1.5[A]=9.33[Ω]となる。
140[cm2]の電極面積の電極と、8[cm2]の電極面積の電極の電極面積比は、140[cm2]÷8[cm2]=17.5倍となる。
よって、140[cm2]の電極面積のボロンドープダイヤモンド(BDD)担持メッシュ電極を用いた水電解部の抵抗値Rは、並列回路であるとして、
1/R=(1/9.33[Ω])×17.5=1.88
R=1/1.88=0.531[Ω]となる。
したがって電流15Aを流したときの印加電圧は、15×0.531=7.97[V]となる。
この電圧7.97[V]程度を陽極、陰極間に印加すれば、十分にオゾンを生成することができる。オゾン生成電流効率は、9% 程度になると思われる。ただし、消費電力は 120Wとなる。なお、電流20A(0.133A/cm2)を流す場合の印加電圧は、10.6Vまで上昇する。このため、上記電圧7.97[V]を陽極、陰極間に印加して、オゾン生成電流効率が低い場合には、電流密度を少し上げて運転すればよい。
本実施例では、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持したメッシュ電極を水電解装置の陽極側に配置した構成について説明した。
しかし、ボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持した電極であればよい。電解質膜(ナフィオン 膜)上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持して構成される触媒電極付き高分子電解質膜の触媒電極面を陽極側に配置する実施でもよい。
以上のように、本実施例によれば、水電解装置の陽極側に、0.531[Ω]以上の抵抗値が得られるようにボロンのドーパント濃度が低く調整されたボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持した電極であって、140[cm2]以上の電極面積の電極を配置した。このため、つぎのような顕著な作用効果が得られる。
1)10L/min以上の流量の促進酸化水を生成することができる。
2)7.97[V]以上の電圧を陽極、陰極間に印加して、オゾン生成電流効率を、9%以上にすることができる。
3)0.1A/cm2以下の低電流密度で運転されるため、電解質膜(ナフィオン 膜)の損傷が抑制される。水電解装置を安定して長時間運転することができる。
2019年2月22日に出願された日本国特許出願2019-031029に開示された第1の実施形態~第12の実施形態及び実施例1~実施例6に、
下記の実施形態及び実施例を追記する。以下において、同一の構成要素には同一の符号を付与して適宜同様な説明を省略する。また、以下において、各構成要素の長さ、面積等の数値、材料名等が明示されているが、これらの明示によって請求の範囲が何ら制限されるものではない。
(第13の実施形態)
第1の実施形態~第9の実施形態、第11の実施形態および第12の実施形態では、単一の水電解部100に金属メッシュ電極140、170を設け、金属メッシュ電極140、170の面に対して水平に水を流通させることで、金属メッシュ電極140、170内で微泡化されたオゾン及び過酸化水素と水とを接触させ、電解水として例えば促進酸化水が製造される。さらに第10の実施形態では、並列に配置された二段の水電解部100、100´を構成し(図8の構成例)、あるいは、必要に応じて3段、4段、あるいはそれ以上の段数の水電解部を構成することにより、電解水として例えば促進酸化水の更なる大流量の生成が可能になることを説明した。
図32は、水電解部を並列に三段重ねた水電解装置の分解図である。図8に示す水電解部100、100´の図中上方、水電解部100、100´の厚み方向に重ねて、水電解部100-3が設けられる。 図8に示す水電解部100、100´をそれぞれ、水電解部100-1、100-2で置き換えている。したがって、全体の水電解部400は、厚み方向に重ねられて配置された3段の水電解部100-1、100-2、100-3で構成される。以下では図8の構成例について説明したのと重複した説明は適宜省略する。
水電解部400は、流入口310と流出口320との間に、介在されている。図8と異なり、図中下に配置された流入口310から上方に原料水が流入し、図中上に配置された流出口320から電解水が流出する。
図8の構成例と同様に、最下段の水電解部100-1の陰極150の長手方向中心軸を対称中心にして、最下段の水電解部100-1の各構成要素および中段の水電解部100-2の各構成要素は上下対称に構成されている。最下段の水電解部100-1の各構成要素のうち、中段の水電解部100-2の各構成要素と同じ構成要素には、同一の符号にダッシュを付与している。
厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-1、100-2の陰極150は共通の電極で構成されている。
中段の水電解部100-2の陽極110の長手方向中心軸を対称中心にして、最上段の水電解部100-3の各構成要素および中段の水電解部100-2の各構成要素は上下対称に構成されている。最上段の水電解部100-3の各構成要素のうち、中段の水電解部100-2の各構成要素と同じ構成要素には、同一の符号にダッシュを付与している。
厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-2、100-3の陽極110は共通の電極で構成されている。
最上段の水電解部100-3の円環状の陰極150´は、陰極保持部158´に形成された円環状凹部158A´内に収容される。陰極150´および共通の陰極150には、圧着端子として構成されるマイナス端子159´、159が、例えばネジ157´、157(M3ネジ)によって、ねじ込み固定される。マイナス端子159´、159には電源コード151が電気的に接続される。
図8の構成例と同様に、最下段の水電解部100-1の円環状の陽極110´は、陽極保持部118´に形成された円環状凹部118A´内に収容される。陽極110´および共通の陽極110には、圧着端子として構成される陽極端子119´、119が、例えばネジ117´、117(たとえばM3ネジ)によって、ねじ込み固定される。
陽極保持部118´には、流入口310および陽極側メッシュ電極140´の内側開口部141´に連通する内側開口部115が形成されている。
水電解部400の図中最下位に配置される陽極保持部118´および図中最上位に配置される陰極保持部158´は、たとえばアクリル樹脂製である。共通の陽極110、陽極110´は、たとえばチタン(Ti)製のターミナルプレートとして構成される。共通の陰極150、陰極150´は、たとえばステンレス製のターミナルプレートとして構成される。
陽極側には、陽極側メッシュ電極140、140´として3枚のチタン製のメッシュ電極と1枚のボロンドープダイヤモンド(BDD)が成膜等にて担持された穴開き基板電極140P、140P´が設けられている。基板電極140P、140P´は、水電解部の陽極側に設けられたボロンドープダイヤモンドを含む触媒電極を構成する。また、陰極側には、陰極側メッシュ電極170、170´として3枚のチタン製のメッシュ電極が設けられている。
なお、触媒電極としては、穴開き金属基板(例えば、Nb)上にBDDを成膜したBDD基板電極を用いてもよく、高分子電解質膜上にBDD粉を担持した膜電極一体型触媒電極を用いてもよく、金属メッシュ上にボロンドープダイヤモンド(BDD)粉を担持したメッシュ型BDD触媒電極を用いてもよい。これによりオゾンと過酸化水素が共存した促進酸化水を製造することができる。また陰極側メッシュ触媒電極には、プラチナまたはステンレスあるいはチタンの金属メッシュ触媒電極を用いることができる。
図33は、図32に示す三段の水電解部100-1、100-2、100-3で構成された水電解部400の他の構成例と水の流れを示したものである。
最上位の陰極150´、最下位の陽極110´のみならず、共通の陰極150、共通の陽極110についても、陰極保持部158´、陽極保持部118´と同様の陰極保持部158、陽極保持部118によって保持されている。
陰極保持部158´、陽極保持部118、陰極保持部158、陽極保持部118´は、それぞれに形成されたネジ孔にボルト180のネジ部が螺合されることで厚み方向に共締めされる。
3つの水電解部100-1、100-2、100-3のそれぞれに形成されたメッシュ電極、触媒電極、高分子電解質膜の内側開口部141´、141P´、121´、171´、141、141P、121、171は、共通の流入口310に連通している。さらに、3つの水電解部100-1、100-2、100-3のそれぞれの外周開口部131、161、131´、161´は、共通の流出口320に連通している。
共通の流入口310に下方から水が流入されると、各内側開口部141´、141P´、121´、171´、141、141P、121、171を介して、最下段の水電解部100-1の陽極側電解領域130´および陰極側電解領域160´、中段の水電解部100-2の陽極側電解領域130および陰極側電解領域160、最上段の水電解部100-3の陽極側電解領域130´および陰極側電解領域160´それぞれに水が流れ、水電解が行われる(図32参照)。
最下段の水電解部100-1、中段の水電解部100-2、最上段の水電解部100-3それぞれで生成された電解水は、各外周開口部131、161、131´、161´を介して合流して、共通の流出口320から外部に流出される。
原料水が各水電解部100-1、100-2、100-3の陽極側メッシュ電極140、140´の隙間に流れて電解されると、オゾン及び酸素並びに過酸化水素を含む陽極水となる。
原料水が各水電解部100-1、100-2、100-3の陰極側メッシュ電極170、170´の隙間に流れて電解されると、水素及び過酸化水素を含む陰極水となる。それら陽極水と陰極水は、合流して、共通の流出口320から流出される。したがって本実施形態によれば、節水型の小型促進酸化水製造装置を構成することができる。また本実施形態によれば、電極メッシュ及び触媒電極の全面に水を流すことが可能となり、水電解の効率を低下させる気泡溜まり、つまり水の流れのデッド部の形成を防止でき、高効率な水電解装置を構成することができる。
図32、図33の構成例では、水電解部100-1、100-2、100-3の各内側開口部に原料水を流入させ、各外周開口部から電解水を流出させる構成をとっている。
しかし、図8の構成例と同様に、水電解部100-1、100-2、100-3の各外周開口部に原料水を流入させ、各内側開口部から電解水を流出させる構成をとってもよい。
この構成をとる場合には、3つの水電解部100-1、100-2、100-3のそれぞれに形成されたメッシュ電極、触媒電極、高分子電解質膜の内側開口部141´、141P´、121´、171´、141、141P、121、171を、共通の流出口310に連通させるようにする。さらに、3つの水電解部100-1、100-2、100-3のそれぞれの外周開口部131、161、131´、161´を、共通の流入口320に連通させるようにする。
図34は、図32、図33の三段並列型の水電解部400を円筒形のアクリル製筐体300(缶体)内に収納した促進酸化水製造装置の側面図である。
例えば水電解部400の直径を5.6cmとした場合、筐体300の内径を6cm、内径高さを7~8cm程度にすればよい。これにより非常に小型な促進酸化水製造装置を構成できる。また水の配管は、筐体300の流入口310、流出口320にそれぞれ一つだけつなげるだけでよい。
水電解部400を、例えば図1に示される筐体300と同様に構成された筐体300内に配置して水電解装置を構成してもよい。
筐体300は、円筒形状に形成されている。筐体300は、例えばアクリル樹脂で構成される。水電解部400も同様に円柱形状に形成されている。筐体300は、図中上方からみて円形のフランジ付きの上板330と、図中下方からみて円形のフランジ付きの下板340と、上板330と下板340の間のフランジ付きの円筒部350とを含んで構成される。上板330に流出口320が設けられ、下板340に流入口310が設けられている。上板330と円筒部350の各フランジ同士、円筒部350と下板340の各フランジ同士がネジ止め等によって接合されて、筐体300が構成される。
陽極保持部118´と下板340の間の隙間として流路303は、Oリング360によってシールされる。また円筒部350と下板340との間の隙間は、Oリング360によってシールされる。
図34に示す水電解装置に、水道水、純水またはイオン交換水(軟水)等の原料水を流し、数~20ボルト程度の電圧をかけて水電解することにより、オゾンと過酸化水素を含有した促進酸化水などの機能水を生成することができる。
この水電解装置は、原料水から機能水を生成するだけでなく、排水、河川水並びに井戸水などの水を浄化、殺菌する機能も有する。例えば、有機物や酸・アルカリで汚染された排水を浄化する場合には、排水を図34に示す水電解装置に導入して直接電解する。この際に、排水中の汚染物質がオゾン並びに過酸化水素と反応することにより分解・除去される。また、バクテリアや大腸菌等を含んだ河川水や井戸水を図34に示す水電解装置34に流して直接電解することにより、水道水レベルにまで殺菌浄化することができる。
本第13の実施形態の水電解部400は、同じ電極面積を有する水電解部が3つ設けられている。このため流路断面積が、単一の水電解部100の3倍となり、圧力損失を飛躍的に小さくでき、大流量の電解水を生成することができる。必要に応じて4段、5段あるいはそれ以上の段数の水電解部で構成してもよい。
本第13の実施形態の水電解部400は、厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-2、100-3の陽極110を共通の電極で構成し、厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-1、100-2の陰極150を共通の電極で構成している。
本第13の実施形態では、すべての厚み方向に隣り合う水電解部について電極(陽極及び陰極)を共通にするように構成した。しかし、厚み方向に隣り合う少なくとも2つの水電解部について電極を共通にする構成も可能である。例えば、厚み方向に隣り合う一方の2つの水電解部100-2、100-3の陽極110を共通の電極で構成するが、厚み方向に隣り合う他方の2つの水電解部100-1、100-2については、それぞれ個別の陰極で構成する実施も可能である。
第13の実施形態の水電解部400と同様にして、n個の水電解部100-1、100-2、100-3・・・100-nを、厚み方向に重ねて水電解部400を構成することができる。
n個の水電解部100-1、100-2、100-3・・・100-nの厚み方向に隣り合う水電解部の陽極または陰極を共通の電極で構成すると、全ての電極数をn+1個で構成することができる。
3個の水電解部100-1、100-2、100-3の場合には、電極の数が4個となる。4個の水電解部の場合には、電極の数が5個となる。5個の水電解部の場合には、電極の数が6個となる。
以上のように構成された水電解部400は、陽極110および陰極150が共通化されているため、単体の水電解部100をそのまま並列に配置した場合と比べて、少ない部品数で構成できる。単体の水電解部100をそのまま並列にn個配置した場合には、電極数は、2n個となるからである。これにより装置の小型、軽量化、低価格化が可能となる。小型でありながら、単体の水電解部100に比べて流路断面積とBDD基板電極の面積を大きくすることがきる。したがって大流量で高濃度な促進酸化水を生成することができる。
(第14の実施形態)
図35は、並列に5段重ねた水電解部400と気液混合部200を同一の筐体(缶体)300内に収容したミキサー内蔵型五段並列型水電解装置の断面図である。
図9の構成例と同様に、筐体300内に水電解部400と気液混合部200が配置される。以下では図9の構成例について説明したのと重複した説明は適宜省略する。
気液混合部200は、水電解部400から流出される電解水中に水電解部400で生成されたガスを再溶解させるために設けられる。
水電解部400は、五段の水電解部100-1、100-2、100-3、100-4、100-5で構成される。図32、図33に示す三段の水電解部100-1、100-2、100-3の図中上方に、メッシュ電極等同様の構成要素で構成された水電解部100-4、100-5が順次厚み方向に重ねられて構成される。各水電解部100-1~100-5の陽極側には、ボロンドープダイヤモンドを含む触媒電極が設けられる。
厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-1、100-2の陰極150は共通の電極で構成されている。厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-2、100-3の陽極110は共通の電極で構成されている。厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-3、100-4の陰極150は共通の電極で構成されている。厚み方向に隣り合う2つの水電解部100-4、100-5の陽極110は共通の電極で構成されている。
図35の図中最下位の陽極110は、電極保持部500によって保持されている。最上位の陰極150は、電極保持部500´によって保持されている。共通の陽極110、共通の陰極150は、電極保持部600によって保持されている。電極保持部が陽極、陰極を保持する構成例については図36A、36B、37A、37B、38A、38Bを参照して説明する。
以下では説明の便宜上、図35の図中上から下に配置される6個の電極保持部を、その上から下の順序で、第1の電極保持部500´、第2の電極保持部600、第3の電極保持部600、第4の電極保持部600、第5の電極保持部600、第6の電極保持部500と適宜呼ぶものとする。
図36A、36Bは、図35の図中最下位の陽極110を保持する第6の電極保持部500を示している。図36Aは、図35の上面から電極保持部500を見た上面図で、図36Bの矢視A図である。図36Bは、電極保持部500の側面図である。
図37Aは、円環状の陽極110または陰極150の側面図で、図37Bはその上面図で、図37Aの矢視A図である。図37A、37Bに示すように円環状の電極110、陰極150の中心あるいは略中心には、貫通孔としての内側開口部112、152が形成されている。円環状の陽極110、陰極150の側面には、陽極端子用のネジ117、陰極端子用のネジ157のネジ部に螺合するネジ穴117Hが形成されている。
電極保持部500には、円環状の陽極110又は陰極150が嵌合される円状凹部118Bが形成されている。なお、円状凹部118Bは、円環状の陽極110又は陰極150が篏合された際に容易に脱着しない程度の嵌め合い公差で設計されるのが望ましい。円状凹部118Bの深さは、例えば円環状の陽極110、陰極150の厚さと同一あるいは略同一となるように形成される。
円状凹部118Bの中心あるいは略中心には、円環状の陽極110又は陰極150が円状凹部118Bに篏合された際にその内側開口部112、152に連通する貫通孔としての内側開口部115が形成されている。内側開口部115は、例えば内側開口部112、152と同径、同一中心となるように形成される。
電極保持部500の外周部590には、陽極端子119又はマイナス端子159が篏合される切欠き511が形成されている。切欠き511は、外周部590の外側側面から円状凹部118Bに連通するとともに、厚み方向に連通するように形成されている。
図36A中では、電源コード119、159を紙面で示しているが、陽極端子119、マイナス端子159が切欠き511に篏合された際に電源コード119、159は図36A中の紙面奥方向に配置される。
電極保持部500の外周部590には、厚み方向に貫通し、電源コード119、159を挿通させるための切欠き512、513、514、515、516が形成されている。
切欠き511~516は、その番号順に、反時計回りに同ピッチ(60度)で外周部590の周方向に形成されている。
電極保持部500の外周部590には、陽極側メッシュ電極140、BDD触媒電極の外周をガイドするガイド爪530が形成されている。ガイド爪530は、円状凹部118Bの開口側、円環状の陽極110、陰極150の挿入側に形成される。ガイド爪530は、外周部590の周方向に、例えば同ピッチで6個形成されている。
電極保持部500の外周部590には、厚み方向に貫通し、ボルト180のネジ部が螺合されるネジ孔520が形成されている。ネジ孔520は、外周部590の周方向に、例えば同ピッチで6個形成されている。
図35の図中最上位の第1の電極保持部500´についても図36A、36Bに示した第6の電極保持部500と同様に構成される。ただし、第1の電極保持部500´では、内側開口部115は形成されず、陰極150を保持するための円状凹部118Bのみが形成された厚み方向に非貫通のもので構成される。また第1の電極保持部500´では、第6の電極保持部500にあった電源コード119、159を挿通させるための切欠き512、513、514、515、516の形成は省略される。
つぎに図35の図中上から5番目の第5の電極保持部600について説明する。
図38A、図38Bはそれぞれ図36A、36Bに対応する上面図、断面図であり、共通の陽極110、共通の陰極150を保持する電極保持部600の構成を示す図である。図36A、36Bと同一の構成要素には同一の符号を付与して適宜説明を省略する。
電極保持部600には、貫通孔として形成され、円環状の陽極110又は陰極150が嵌合される円状開口部118Cが形成されている。なお、円状開口部118Cは、円環状の陽極110又は陰極150が篏合された際に容易に脱着しない程度の嵌め合い公差で設計されるのが望ましい。円状開口部118Cの深さ、つまり電極保持部600の厚さは、例えば円環状の陽極110、陰極150の厚さと同一あるいは略同一となるように形成される。
またガイド爪530は、電極保持部600の両面に設けられる(図38B参照)。また第5の電極保持部600では、第6の電極保持部500にあった電源コード119、159を挿通させるための切欠き512の形成は省略され切欠き513~516が形成される。
図35の図中上から4番目の第4の電極保持部600についても図38A、38Bに示した第5の電極保持部600と同様に構成される。ただし、第4の電極保持部600では、第6の電極保持部500にあった電源コード119、159を挿通させるための切欠き512、513の形成は省略され切欠き514~516が形成される。
図35の図中上から3番目の第3の電極保持部600についても図38A、38Bに示した第5の電極保持部600と同様に構成される。ただし、第3の電極保持部600では、第6の電極保持部500にあった電源コード119、159を挿通させるための切欠き512、513、514の形成は省略され切欠き515、516が形成される。
図35の図中上から2番目の第2の電極保持部600についても図38A、38Bに示した第5の電極保持部600と同様に構成される。ただし、第2の電極保持部600では、第6の電極保持部500にあった電源コード119、159を挿通させるための切欠き512、513、514、515の形成は省略され切欠き516が形成される。
第1の電極保持部500´の切欠き511には、マイナス端子159が篏合される。マイナス端子159にはネジ157が螺合され、円環状の陰極150のネジ穴117Hに螺合される。これにより電極保持部500´の陰極150に電源コード151が電気的に接続される。
以下同様にして、第2の電極保持部600の陽極110に電源コード111が電気的に接続される。第3の電極保持部600の陰極150に電源コード151が電気的に接続される。第4の電極保持部600の陽極110に電源コード111が電気的に接続される。第5の電極保持部600の陰極150に電源コード151が電気的に接続される。第6の電極保持部500の陽極110に電源コード111が電気的に接続される。
以下では、説明の便宜上、第1の電極保持部500´、第2の電極保持部600、第3の電極保持部600、第4の電極保持部600、第5の電極保持部600、第6の電極保持部500に形成された切欠き511~516は、図35の上方からみて反時計回りに、511~516の番号順に配列されているものとして扱う。
第2の電極保持部600は、図35の上方からみて第1の電極保持部500´の切欠き511の位置が、第2の電極保持部600の切欠き516の位置に相当するように反時計回りに60度ずらして配置される。第1の電極保持部500´に電気的に接続された電源コード151は、第2の電極保持部600の切欠き516に挿通される。
同様に第3の電極保持部600は、第2の電極保持部600に対して反時計回りに60度ずらして配置される。第1の電極保持部500´に電気的に接続された電源コード151は、第3の電極保持部600の切欠き515に挿通され、第2の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第3の電極保持部600の切欠き516に挿通される。
同様に第4の電極保持部600は、第3の電極保持部600に対して反時計回りに60度ずらして配置される。第1の電極保持部500´に電気的に接続された電源コード151は、第4の電極保持部600の切欠き514に挿通され、第2の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第4の電極保持部600の切欠き515に挿通される。第3の電極保持部600に電気的に接続された電源コード151は、第4の電極保持部600の切欠き516に挿通される。
同様に第5の電極保持部600は、第4の電極保持部600に対して反時計回りに60度ずらして配置される。第1の電極保持部500´に電気的に接続された電源コード151は、第5の電極保持部600の切欠き513に挿通され、第2の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第5の電極保持部600の切欠き514に挿通される。第3の電極保持部600に電気的に接続された電源コード151は、第5の電極保持部600の切欠き515に挿通される。第4の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第5の電極保持部600の切欠き516に挿通される。
同様に第6の電極保持部500は、第5の電極保持部600に対して反時計回りに60度ずらして配置される。第1の電極保持部500´に電気的に接続された電源コード151は、第6の電極保持部600の切欠き512に挿通され、第2の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第6の電極保持部600の切欠き513に挿通される。第3の電極保持部600に電気的に接続された電源コード151は、第6の電極保持部600の切欠き514に挿通される。第4の電極保持部600に電気的に接続された電源コード111は、第6の電極保持部600の切欠き515に挿通される。第5の電極保持部600に電気的に接続された電源コード151は、第6の電極保持部600の切欠き516に挿通される。
第1の電極保持部500´、第2の電極保持部600、第3の電極保持部600、第4の電極保持部600、第5の電極保持部600、第6の電極保持部500は、それぞれに形成されたネジ孔520にボルト180のネジ部が螺合されることで厚み方向に共締めされる。
なお、図34に示す3段の水電解部で構成された水電解装置に対して、同様の電極保持部500、500´、600を適用して構成することができる。この場合、図34に示す陰極保持部158´、陽極保持部118、陰極保持部158、陽極保持部118´をそれぞれ電極保持部500´、電極保持部600、電極保持部600、電極保持部500に置換すればよい。ただし電源コード111、151を挿通するための切欠きは最大で3つあればよい。図34の図中最下位の陽極保持部118´に同様の陽極端子119、マイナス端子159を篏合する切欠き511、電源コード111、151を挿通する切欠き512、513、514を周方向に同ピッチで形成する。図34の図中上から三番目の
陰極保持部158では、切欠き512が省略され、切欠き513、514が形成される。図34の図中上から二番目の陽極保持部118では、切欠き512、513が省略され、切欠き514が形成される。図34の図中最上位の陰極保持部158´では、切欠き512、513、514が省略される。そして、各電極保持部158´、陽極保持部118、陰極保持部158、陽極保持部118´を同ピッチで順次ずらして配置し、図34の図中上方の電極保持部の電源コード111、151を図中下方の電極保持部の切欠き512、513、514に挿通させればよい。
図39は、厚み方向に隣り合う2つの電極保持部600、600の側面断面図である。一方の電極保持部600のガイド爪530と、これに対面する他方の電極保持部600のガイド爪530によって高分子電解質膜120が挟み込まれる。そして、一方の電極保持部600のガイド爪530によって、陽極側メッシュ電極140、ボロンドープダイヤモンドを含む触媒電極140Pの外周がガイドされ、図中横方向の動きが規制される。同様に他方の電極保持部600のガイド爪530によって、陰極側メッシュ電極170の外周がガイドされ、図中横方向の動きが規制される。他の厚み方向に隣り合う2つの電極保持部500、600及び500´、600についても同様に構成される。
このように構成された5段の水電解部100-1~100-5のそれぞれに形成されたメッシュ電極140、170、触媒電極140P、高分子電解質膜120の内側開口部は、図35の筐体300の共通の流入口310に連通している。さらに、5段の水電解部100-1~100-5それぞれの外周開口部131、161は、気液混合部200を介して筐体300の共通の流出口320に連通している。
筐体300内にあって、5段の水電解部100-1~100-5と、共通の流出口320の間に、気液混合部200が介在されている。
気液混合部200の気液混合入口部202は、5段の水電解部100-1~100-5それぞれの外周開口部131、161に連通している。気液混合部200の気液混合出口部203は、筐体300の共通の流出口320に連通している。
共通の流入口310に下方から水が流入されると、図33に示したのと同様に、各内側開口部を介して、各水電解部100-1~100-5の陽極側電解領域および陰極側電解領域それぞれに水が流れ、水電解が行われる。
各水電解部100-1~100-5それぞれで生成された電解水は、各外周開口部131、161を介して合流して、気液混合部200の気液混合入口部202に流入される。
気液混合部200では、ガスと電解水との混合が促進され、高効率にガスが電解水に溶解する。高効率にガスが溶解された電解水は、気液混合出口部203、共通の流出口320を介して外部に排出される。
各水電解部100-1~100-5の陽極側メッシュ電極140の隙間に流れて電解されると、オゾン及び酸素並びに過酸化水素を含む陽極水となる。原料水が各水電解部100-1~100-5の陰極側電極メッシュ170の隙間に流れて電解されると、水素及び過酸化水素を含む陰極水となる。それら陽極水と陰極水は、合流して、共通の流出口320から流出される。
図35の構成例では、水電解部100-1~100-5の各内側開口部に原料水を流入させ、各外周開口部131、161から電解水を流出させる構成をとっている。
しかし、図8の構成例と同様に、水電解部100-1~100-5の各外周開口部131、161に原料水を流入させ、各内側開口部から電解水を流出させる構成をとってもよい。
この構成をとる場合には、水電解部100-1~100-5のそれぞれに形成されたメッシュ電極、触媒電極、高分子電解質膜の内側開口部を、気液混合部200の気液混合入口部202に連通させ、気液混合入口部202を介して共通の流出口320に連通させるようにする。さらに、水電解部100-1~100-5のそれぞれの外周開口部131、161を、共通の流入口310に連通させるようにする。
前述したように本実施形態の構成をとることなく、水電解部100が一つだけの水電解装置を5基並列に接続して使用する場合、アノードとカソードのターミナルとしての陽極110、陰極150は計10枚必要となる。これに伴い継ぎ手類も数多く必要となる。しかし、図35に示す水電解装置では、陽極110、陰極150を共有できる。このため、ターミナルとしての陽極110、陰極150の枚数は計6枚で済み、継ぎ手も共通の流入口310と共通の流出口320の2箇所のみ設けるだけで済む。
図35に示す水電解装置の一例では、筐体300の内径が10cmで、水電解部400は、その外径が9.4cmのもので構成される。オゾンガスを水中に十分に溶解させるために、気液混合部200は、その長さが30cmのもので構成される。
金属メッシュ電極140、170及びBDD基板電極140P並びに高分子電解質膜120の内径と外径はそれぞれ2cm、7.35cmであり、五段の水電解部100-1~100-5の合計の電極面積は196cm2 である。
ここで実施例1等の電極面積が8.6cm2の一段型の水電解装置と比較する。本実施形態によれば、水電解部を5段に重ね、さらに一段あたりの電極の径を大きくすることにより、一段型の水電解装置と比べて電極面積を22.8倍(196cm2)にも大きくすることが可能となる。
また水電解部が一つだけの水電解装置を5基並列に接続する場合に比べて、はるかに小型、軽量で安価な装置にすることができる。
さらに気液混合部200により発生したオゾンガスが全て水に溶解されるため、気相オゾンがほぼなくなり安全な促進酸化水を製造することができる。また、水電解部400と気液混合部200の配管接続が不要となる。
本実施形態によれば、小型でオゾンガスを発生しない安全な促進酸化水製造装置を市場に提供できる。また、排水や汚染された河川水並びに井戸水を殺菌する用途に使用することができる。この用途に使用する場合も処理装置から出る水からのオゾンガスの発生が抑制され、安全な処理水を得ることができる。
(実施例7)
図40は、図34に示す三段並列型水電解装置1の共通の流出口320に、日本国特開2019-42628号に開示された気液混合装置20の入口部28を連通させるように配管接続した装置構成を示す。気液混合装置20は気液混合部200と同様に構成される。
三段並列型水電解装置1の共通の流入口310に水道水が流入される。気液混合装置20の出口部30から促進酸化水が流出され、容器700に貯留される。
可変電源800は、三段並列型水電解装置1の陽極110と陰極150の間に直流の電圧を印加する。可変電源800によって陽極110と陰極150の間に印加される電圧Vは、その大きさを調整することができる。
3段の水電解部100-1~100-3それぞれの陽極側には、5枚の100メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極120と、1枚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pが設置されている。陰極側には、3枚の100メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極170が設置されている。陽極側メッシュ電極140、基板電極140P、陰極側メッシュ電極170は、外径3.95cm、内径1.2cmの円環状である。
三段の水電解部100-1~100-3の合計の電極面積は34cm2 である。気液混合装置20には、テフロン(登録商標)製のOリングで構成された保持部材210が33段設けられる。また気液混合装置20には、チタン(Ti)製の100メッシュで構成された仕切り部材220が33段(66枚)設けられる。気液混合装置20は、内径が8cm、高さが24cmである。
三段並列型水電解装置1の共通の流入口310に水道水を10L/minの流量で流し、陽極110、陰極150間に電流を流して水電解を行った。実施例7の三段並列型水電解装置1の電圧-電流特性を図41に実線にて示す。三段並列型水電解装置1で生成される促進酸化水中の溶存オゾン濃度の経時変化を図42に示す。また、三段並列型水電解装置1におけるオゾン生成電流効率の経時変化を図43に示す。
(比較例3)
実施例7に対応する比較例3には、電極面積が8.6cm2の一段の水電解部100と気液混合部200が筐体300内に内蔵された一段型の水電解装置を用いた。この一段型の水電解装置も陽極側に1枚のボロンドープダイヤモンド(BDD)基板電極140Pが設置されている。この一段型の水電解装置の流入口310に水道水を4L/minの流量で流し、陽極110、陰極150間に電流を流して水電解を行った。
比較例3の一段型水電解装置の電圧-電流特性を図41に破線にて示す。図41から、一段型水電解装置と比べると、三段並列型水電解装置1は、電極面積が大きいために同一の電圧下で3.9倍の電流を流せることがわかる。
図42からわかるように、三段並列型水電解装置1に電流密度が0.2A/cm2の電流を流した場合には、0.9mg/Lの溶存オゾンを含有した促進酸化水を10L/minという高流量で生成できる。
また図43から、三段並列型水電解装置1の0.2A/cm2の電流密度におけるオゾン生成電流効率は、25%以上であった。なお、促進酸化水中の過酸化水素濃度は、0.2~0.3mg/Lであった。
一方、一段型水電解装置に電流密度が0.2A/cm2の電流を流した場合、4L/minの流量で生成される促進酸化水中の溶存オゾン濃度は、0.48mg/Lで、過酸化水素濃度は 0.2mg/Lであった。
したがって三段並列型の水電解装置1は、一段型の水電解装置に比べて流量を高流量化することができ、溶存オゾン濃度を高濃度することができる。
三段並列型の水電解装置1で生成された促進酸化水を殺菌用途に用いた場合に十分な殺菌洗浄力があることが確認された。したがって実施例7の水電解装置によれば、十分な殺菌洗浄力を有する促進酸化水を 10L/minという高流量で生成できることがわかった。
(実施例8)
図40に示す実施例7の三段並列型の水電解装置を用いて、汚染水の殺菌洗浄効果について評価した。
殺菌洗浄方法は、三段並列型の水電解装置1の共通の流入口310に、水道水の代わりに、菌および/またはウイルスを含む汚染水を直接供給し、三段並列型の水電解装置1の共通の流出口320から、ATP(アデノシン三リン酸)値が低下された(殺菌洗浄された)処理後の汚染水を流出させるという方法を採った。この汚染水の殺菌洗浄方法を第1の殺菌洗浄方法というものとする。
汚染水の殺菌洗浄の手順は、以下のとおりである。
1)汚染原水として、河川の水を採取する。河川水は採取してから室内で一昼夜静置し、菌数を安定化させる。
2)汚染原水中の菌数を安定化させた後に、三段並列型の水電解装置1の共通の流入口310に、2L/minの流量で汚染原水を供給する。三段並列型の水電解装置1の陽極110、陰極150間に電流密度が0.2A/cm2の電流7Aを流す。
3)容器700に貯留された処理後の汚染水の殺菌洗浄効果を評価する。評価方法は、あらゆる生物のエネルギー代謝に必須な物質であるATP(アデノシン三リン酸)の濃度を測定する方法である。この方法は、一般的に「ルミノール反応」と呼ばれている。なお、環境が無菌ではなく、サンプル採取に使用したビーカー類も滅菌処理していないため、河川水が完全殺菌されてもATP指示値はゼロにはならない。そこで、水道水のATP値(RLU=7)を殺菌レベルの指標とし、ATP値が7を下回れば河川水を完全殺菌できたものと判断した。
三段並列型水電解装置1の殺菌実験結果を図44に表1として示す。三段並列型の水電解装置1に汚染原水を供給して、処理後の汚染水を評価したところ、処理前の汚染原水のATP値357から、処理後汚染水のATP値7まで低下した。三段並列型の水電解装置1に同じ流量、同じ電流密度の運転条件で水道水を供給して水道水を電解して促進酸化水を生成した場合には、生成された促進酸化水中の溶存オゾン濃度は2.7mg/Lで、過酸化水素濃度は0.42mg/Lであった。したがって、溶存オゾン濃度は2.7mg/Lで、過酸化水素濃度は0.42mg/Lの促進酸化水を生成する装置であれば、ATP値357の汚染水を、強い殺菌力で完全に殺菌洗浄することが確認された。
汚染水を直接電解して殺菌洗浄する第1の殺菌洗浄方法を用いて汚染水を殺菌洗浄する方法を説明したが、促進酸化水と汚染水を混合する第2の殺菌洗浄方法を用いてもよい。
第2の殺菌洗浄方法では、三段並列型の水電解装置1の共通の流入口310に、水道水を供給して、促進酸化水を生成する。つぎに生成された促進酸化水を、菌および/またはウイルスを含む汚染水と混合して、ATP(アデノシン三リン酸)値を例えば7以下まで低下させる(殺菌洗浄する)。
さらに促進酸化水を生成できるように構成すれば、本明細書に開示された各実施形態、各実施例の任意の形態の水電解装置を用いて第1の殺菌洗浄方法および第2の殺菌洗浄方法を実施することができる。促進酸化水を汚染水の殺菌洗浄の用途に用いることができる。
溶存オゾンと過酸化水素が共存する促進酸化水は、汚染水中の有機物および/またはアンモニアおよび/またはシアンを分解・除去する用途に用いても、有用である。
たとえば図34に示す三段並列型水電解装置1を用いて、以下の第1の分解・除去方法あるいは第2の分解・除去方法が実施される。
(第1の分解・除去方法)
三段並列型の水電解装置1の共通の流入口310に、水道水の代わりに、有機物および/またはアンモニアおよび/またはシアンを含む汚染水を直接供給し、三段並列型の水電解装置1の共通の流出口320から、三段並列型の水電解装置1の共通の流出口320から、有機物および/またはアンモニアおよび/またはシアンが分解・除去された水を流出させる。
(第2の分解・除去方法)
三段並列型の水電解装置1の共通の流入口310に、水道水を供給して、促進酸化水を生成する。つぎに生成された促進酸化水を、有機物および/またはアンモニアおよび/またはシアンを含む汚染水と混合して、汚染水中の有機物および/またはアンモニアおよび/またはシアンを分解・除去する。
さらに促進酸化水を生成できるように構成すれば、本明細書に開示された各実施形態、各実施例の任意の形態の水電解装置を用いて第1の分解・除去方法および第2の分解・除去方法を実施することができる。
第1の殺菌洗浄方法、第2の殺菌洗浄方法、第1の分解・除去方法、第2の分解・除去方法は、併用して実施することができる。第1の殺菌洗浄方法および/または第2の殺菌洗浄方法および/または第1の分解・除去方法および/または第2の分解・除去方法の実施により、アンモニアと大腸菌を含んだ汚染水の飲用化が可能になる。例えば、0.03%程度の濃度のアンモニアが添加された水道水を、図34に示す三段並列型の水電解装置1に供給すると、アンモニアが完全分解された無臭の水を得ることができた。
また有機物、シアンを含んだ排水を、図34に示す三段並列型の水電解装置1に供給すると、排水中の有機物、シアンを分解・除去することができた。したがって、本明細書に開示された水電解装置を排水処理の用途に用いることができる。
(実施例9)
図35に示す気液混合部内蔵型の五段並列型水電解装置1を用いて大流量の促進酸化水を生成する実施例を説明する。
5段の水電解部100-1~100-5それぞれの陽極側には、6枚の100メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極120と、1枚のボロンドープダイヤモンド(BDD)を担持したチタン(Ti)メッシュ電極140Pが設置されている。陰極側には、3枚の100メッシュのチタン(Ti)メッシュ電極170が設置されている。五段の水電解部100-1~100-5の合計の電極面積は196cm2 である。
五段並列型水電解装置1の共通の流入口310に水道水を30L/minの流量で流し、陽極110、陰極150間に電流密度が0.15A/cm2の電流30Aを流して水電解を行い、促進酸化水を生成した。
五段並列型水電解装置1の共通の流入口310から流出促進酸化水を生成した。この運転の条件における五段並列型水電解装置1の圧力損失は、0.02MMPaと小さいものであった。生成された促進酸化水中には、0.9mg/Lの溶存オゾンと0.3mg/Lの過酸化水素が含まれていた。生成された促進酸化水を殺菌洗浄用途に用いたところ、十分な殺菌力があることが確認された。
別の運転条件では、五段並列型水電解装置1の共通の流入口310に水道水を50L/minの流量で流して、水電解を行い、促進酸化水を生成した。
この運転の条件で生成された促進酸化水中の溶存オゾン濃度は、0.5mg/Lで、過酸化水素濃度は0.2mg/Lであった。生成された促進酸化水を殺菌洗浄用途に用いたところ、十分な殺菌力があることが確認された。
いずれの運転の条件においても、気液混合部200で効率良くオゾンガスを水中に溶解する。このため人体に有害な気相オゾンの生成はみられなかった。また、オゾン生成電流効率は、15~17%であった。
このように大流量の促進酸化水を生成できる水電解装置は、農産物、魚、肉、カット野菜等の加工食品の殺菌の用途、レストラン等の厨房や食器の殺菌の用途に用いることができる。特に塩素系殺菌洗浄剤の使用規制がある場合に、本実施形態の水電解装置は有用である。また気相オゾン濃度に規制がある場合に、気相オゾンの生成がほぼない本実施形態の水電解装置は有用である。
以上の説明では、水電解装置厚み方向に隣り合う少なくとも2つの水電解部について電極を共通にする構成も可能である。例えば、厚み方向に隣り合う一方の2つの水電解部100-2、100-3の陽極110を共通の電極で構成するが、厚み方向に隣り合う他方の2つの水電解部100-1、100-2については、それぞれ個別の陰極で構成する実施も可能である。
第10の実施形態、第13の実施形態、第14の実施形態、実施例7、実施例8、実施例9では、厚み方向に隣り合う少なくとも2つの水電解部について電極を共通にする構成とした。
しかし、複数の水電解部を並列に設ける構成では、必ずしも電極を共通にすることを必須とするものではない。たとえば、複数の水電解部を並列に設ける構成では、複数の水電解部は、それぞれの内側開口部が共通の流入口に連通し、かつそれぞれの外周開口部が共通の流出口に連通して配置されていればよい。あるいは、複数の水電解部は、それぞれの内側開口部が共通の流出口に連通し、かつそれぞれの外周開口部が共通の流入口に連通して配置されていればよい。
2019年2月22日に出願された日本国特許出願2019-031029の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。