JP7008742B2 - シャッター建具 - Google Patents
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Description
また、近年、建具においても高い防火性能が求められるようになり、融点が鉄よりも低いアルミニウム合金よりなる建具に対しては、防火上有害な変形が生じないように鋼製の補強部材を設けることなどが求められ(例えば、社団法人カーテンウォール・防火開口部協会が2002年に発行した「アルミニウム合金製防火戸標準仕様書の解説」等)、また、先行技術文献に示すようにアルミ製の框材に鋼製の補強部材を配置することにより、火災時に框材が融解して障子が崩れ落ちる等の変形を防止する建具が開発されている。
このように、従来の建具においては、アルミニウムという材料の特性を生かして軽量で施工性、操作性に優れた建具を形成しながら、アルミニウム製であることの弱点を鋼製の補強部材によって補うことで、強度の高い、防火性にも優れ、全体としてバランスのとれた建具を形成していた。
すなわち、先行技術文献に示すような補強は、アルミ製の框材に対して鋼製の補強部材が、所定間隔毎に設定された固定位置においてネジ等により固定されることによりなされるのが普通であるが、鉄に対してアルミニウムの熱膨張率が略1.9倍と非常に大きいため、火災時初期において熱によって框材が伸びたときにその伸びが鋼製の補強部材により固定位置間で制限され、伸びが制限された分框材が撓むという事象が生じる可能性があった。そして、框材が撓むことにより、框材に設けた気密材が枠材から離れて窓枠と障子との間の気密材による気密が火災初期の段階で損なわれ、その隙間から火炎や煙、ガスが侵入する危険性があった。
また、大型の建具については、障子の框材を鋼製の補強部材により補強することで、障子が重くなることは避けられなかった。
本発明を、引き違い窓の実施形態を用いて説明する。
本発明の実施形態に係る建具は、上下枠及び左右の縦枠を四周に組んで成り、建物の開口部に固定される窓枠に対して、上下框及び左右の縦框を四周に組んでその内周にガラス等のパネルを配置してなる内外2枚の障子を引き違い自在に配置してなる通常周知の引き違い窓をその基本構成とするものである。
縦枠13,14はアルミ形材からなり、縦枠本体部131,141の外周に取付片132,142が突出して形成されており、取付片132,142が図示しないネジ等の固定手段により躯体に固定されることにより、建物開口部に固定されている。
図2に示すように、内障子2の召合框(左縦框)23は、アルミ形材からなる金属縦框231と、金属縦框231の外周面及び室内側面を覆うように、外周面及び室内側面との間に間隔を隔てて配置される樹脂縦框232とからなり、樹脂縦框232により金属縦框231が室内に露出するのを防止するとともに、金属縦框231の外周面及び室内側面に断熱空間を形成することで建具の召合せ部における断熱性能を向上させている。
金属縦框231は、中空部を備える縦框本体部231aと、縦框本体部231aの室外側内周面から内周方向に延設される室外側内周壁231bと、縦框本体部231aの室内側内周面から内周方向に延設される室内側内周壁231cと、縦框本体部231aの室外側に形成されて煙返しを構成する突片231dとから構成されている。
そして、金属縦框231の室内側内周壁231c及び室内側内周壁231cに係止された室内面部232bと、金属縦框231の室外側内周壁231bとによって、召合框23の内周に開口するガラス間口が形成されている。
ガラス間口に配置されたグレチャン81の外周部や補強部材61周辺の適宜位置に熱膨張部材fが配置されている。
なお、補強部材71の見付面71aには、熱膨張部材fが配置されている。
そして、室外側壁部34b及び室内側壁部34cによって、召合框34の内周に開口するガラス間口が形成されており、ガラス間口には、火災時に室外側壁部34b若しくは室内側壁部34cが溶融した際にガラス等のパネル材35が落下することを防止するスチールやステンレス等鋼製の薄板からなる補強部材62が配置されており、その内周にはグレチャン82を介してパネル材35が装着されている。
ガラス間口のグレチャン82の外周部や補強部材62周辺の適宜位置には熱膨張部材fが配置されている。
なお、補強部材74の見付面74aには、熱膨張部材fが配置されている。
図3に示すように、内障子2の戸先框(右縦框)24は、アルミ形材からなる金属縦框241と、金属縦框241の室内側面と間隔を隔てて配置される樹脂縦框242とからなり、樹脂縦框242により金属縦框241が室内に露出するのを防止するとともに、金属縦框241の外周面に断熱空間を形成することで断熱性能を向上させている。
金属縦框241は、中空部を備える縦框本体部241aと、縦框本体部241aの室外端内周より内周方向に延設される室外側壁部241bと、縦框本体部241aの室外側及び室内側外周より外周方向に延設される室外側戸先壁部241c及び室内側戸先壁部241dとにより構成されており、室外側戸先壁部241cの室内側には、縦枠14との間を気密する気密材s1が配置されている。
ガラス間口には、火災時に金属縦框241の室外側壁部241b若しくはガラス間口壁部242bが溶融した際にガラス等パネルが落下することを防止するスチールやステンレス等鋼製の薄板からなる補強部材63が配置されており、その内周にはグレチャン83を介してパネル材25が装着されている。ガラス間口に配置されたグレチャン83の外周部や補強部材63周辺の適宜位置に熱膨張部材fが配置されている。
以上の本発明の実施形態の建具は、アルミ形材からなる縦框本体部の中空部内に配置される補強部材が、アルミ製である点に特徴がある。
アルミ形材からなる枠材や框材(例えば召合框34)を補強部材を用いて補強するに際しては、図4(b)に示すように、アルミニウムの弱点を補うことのできる強度や耐熱性の高いスチール等鋼材からなる補強部材sを用いることが普通であった。あえて鋼製の補強部材sを用いないとしても、少なくともアルミニウムと同等以上の強度や耐熱性を有する材料で補強部材を形成し、枠材や框材に固定することが常識であった。
枠材や框材を同じ材料であるアルミニウムにより補強することを考えれば、図4(a)に示すように、枠材や框材に補強部材の肉厚と同等の肉厚を追加して肉厚部分を形成することが製造面やコスト面からも有利であり、あえてアルミ製の補強部材を別体に形成して枠材や框材を補強することは全く考えられていなかった。
アルミ製の補強部材による補強の鋼製の補強部材による補強に対する優位性を推測するために、アルミ製の補強部材により補強された框材に、火災時にどのような温度変化が生じるかについて、シミュレーションによる解析を行った。
シミュレーションは、汎用CFD(数値流体力学)ソフトを用いて行った。計算は2次元で行い非定常輻射熱伝導解析とした。空気は本来流体であるが計算においては固体として計算を行っている。境界条件として解析対象から100mm離れた位置での温度を標準加熱曲線(ISO834)に準じた温度曲線による温度として設定してその部分からの輻射熱が框材の加熱面に与えられると設定した。放熱面は外部との熱の授受を仮定した温度(20℃)及び熱伝達係数(5W/(m2・K))にて行うモデルとして設定し、30分まで加熱した際の框材及び補強部材の温度を求めた。使用した標準加熱曲線(ISO834)を図8に示す。
シミュレーションに用いる框材kは、基本部分については外障子の召合框をモデル化して31.4(見込み寸法)mm×20.0(見付け寸法)の断面矩形の中空構造の框材を想定し、見付け面の一方面を加熱面とし、他方面を放熱面とした。加熱面側の見付け面の肉厚を2.3mmとし、補強部材を固定しない側の見込み面と放熱面の肉厚を1.1mmとし、補強部材を固定する側の見込み面の肉厚を1.0mmとした。框材の中空部の内径は、見込み寸法が28.0mm、見付け寸法が17.9mmである。
case2に使用する補強部材sは、厚さ1.6mmの鋼製のU字状板材とし、case1のアルミ製の補強部材aと同様に、見込み寸法を27.0mm、見付け寸法を16.9mmとした。U字状板材の一側壁s2には、框材に固定するための固定部s4を有している。
case1及びcase2の補強部材a,sは、略U字状の底部a1,s1を框材kの加熱面側の見付け面に対向させて挿入され、略U字状の一側壁a2,s2の固定部a4,s4を框材の一方側の見込み面に密着させて固定し、固定部分以外の部分については表面の凹凸等による非接触を想定して0.5mmの間隔d2を設定している。
なお、この約1.0mmの間隔d1は、框材kに対して補強部材a,sを挿入する際に必要となる遊びとして想定することもできる。
補強部材a,sの放熱面側の両端部は、框材kの放熱面側の見付け面に密着させた。
case3に使用する框材ktは、加熱面側の見付け面の肉厚を補強部材aの厚さ寸法分厚くした4.3(=2.3+2.0)mmとし、同様に、補強部材を固定しない側の見込み面と放熱面の肉厚を3.1(=1.1+2.0)mmとし、補強部材を固定する側の見込み面の肉厚を3.0(=1.0+2.0)mmとした。
また、本願発明の実施例であるcase1の補強部材aの肉厚として2.0mmを選択した理由は、case2に対する重量的な優位性が十分に発揮できるか否かに基づいて選択した。
具体的には、実際に補強部材(長さ=1261mm)として形成した際に、case2の肉厚1.6mmの鋼材からなる補強部材(質量:約1.054kg)に対して、その半分以下の質量の補強部材として、肉厚2.0mmのアルミ製の補強部材(質量:約0.445kg)を用いた。
(1)鋼製の補強部材sによる補強を行ったcase2 については、加熱開始10分の時点で框材kの加熱面表面温度A2が391.9℃であるのに対して補強部材温度B2が370.1℃であり、アルミ製の框材kの熱伸びと鋼製の補強部材sの熱伸びとの間に差が生じていると考えられる。
具体的には、框材kの長さを2000mmと仮定すると、アルミニウムの熱膨張係数(23.0(10-6/℃))とスチールの熱膨張係数(12.1(10-6/℃))とから、框材部分の熱伸びが17.1mm(=23.0×10-6×2000×(391.9-20))であるのに対して、鋼製の補強部材sの熱伸びは8.5mm(=12.1×10-6×2000×(370.1-20))であり、10mm程度の熱伸びの差が生じることとなる。
これに対し、本願発明であるcase1 は、補強部材aが框材kと同じ材料であるため、補強部材aの熱伸びと框材kの熱伸びとの差は、ほとんどないと考えられる。具体的には、框材kの熱伸びが15.6mm(=23.0×2000×(359.0-20))であるのに対して、アルミ製の補強部材aの熱伸びは14.7(=23.0×2000×(340.2-20))であり、熱伸びの差は1mm以下にとどまっている。
スチールの融点は、1539℃であることから、補強部材sは溶融することはないが、框材kの加熱面表面温度A2がアルミニウムの融点(660℃)を超えているため、case2においては、加熱開始30分経過後には、アルミ製の框材kは溶融し始める。
(3)框材ktをアルミの一体物として形成したcase3においては、補強部材温度C3は、加熱面表面温度A3とほぼ同じであるのに対して、本願発明の実施例である case1 においては、加熱面表面温度A1についてはcase3に比べて高いものの、補強部材温度B1については、加熱開始から30分経過後に至るまで、case3の補強部材温度B3に比べて約10℃ほど低く抑えられている。
框材kと補強部材aとの間の接触熱抵抗や間隙によって、補強部材aに対する熱の伝達が妨げられて補強部材aの温度上昇を抑制していると考えられる。
補強部材aの温度上昇が抑制されることにより、補強部材aが溶融温度に達するのを遅らせることとなる。
以上、シミュレーションによる推測であり、上記事象が実際の框材において必ずしも現れるものではないが、実際の框材においても同様の傾向になると考えられる。
また、アルミニウムの熱膨張係数がスチールの熱膨張係数よりも非常に大きいため、火災発生後、熱によって框材kが伸びたときにその伸びが鋼製の補強部材sとのビス等による固定位置間(例えば400mm)で制限され、伸びが制限された分框材kが撓むことで、例えば、框材が戸先框である場合などには、図2に示す金属縦框241の室外側戸先壁部241cに配置された気密材s1が右縦枠14から離間してしまい、その離間箇所から火炎や煙が侵入する危険性があった。
また、通常使用時においても、アルミニウムと鋼との電位の差により、建具の長期に亘る使用によりアルミ形材である框材kに電位腐食が生じる可能性があった。
また、火災初期時においてアルミ製の補強部材aに火災時の熱が伝達して温度が上昇しても、補強部材aが框材kと同様にアルミ製であることから、框材kと補強部材aとの間に生じる伸び量の差は極小さく抑えることができる。それにより、火災初期時においては框材kと補強部材aとがともに同程度伸びることで框材kの撓みが抑えられて火災初期段階において框材kと枠間及び框材k同士間における気密の破壊を遅らせることができるとともに、補強部材aを固定するためのネジ孔等に過度の力が加わることがなく、ネジ孔に長孔部分Hが形成されるのを抑制することができる。
防火試験は、建築基準法第2条第9号の二のロ(防火戸その他の政令で定める防火設備)に準じて行い、標準加熱曲線(ISO834)(図8)を用いて加熱した。
なお、防火試験では、図1における、外障子3の召合框34内に配置される補強部材74として、アルミ製の厚さ2mmの補強部材を使用し、外障子3の戸先框33内に配置される補強部材73及び内障子2の戸先框24、召合框23内に配置される補強部材71,72として、アルミ製の厚さ1.5mmの補強部材を使用した。
1.5mmのアルミ製の補強部材を使用することにより、補強部材の質量は、鋼製の補強部材の約3分の1にまで減少させることができる。
防火試験終了後に、障子の框材kの加熱面表面を確認すると、図7に示すように、加熱された框材kは溶融が進んでおり、見込み面については、一部(A)は框材kが溶け残っていたが、見付け面に近い部分(C)の框材は溶け落ちて中空部に配置された補強部材が露出していた。框材kの見付け面の部分(B)はほぼ溶け落ちてアルマイト層のみが表面に残っていた。
框材kから露出していたアルミ製の補強部材は、比較的原形に近い形で框材の中空部内に留まっていることが確認できた。
一例をあげれば、腰窓サイズ(W1650,H1300)のサッシでは、縦框内に配置する補強部材を鋼製の補強部材(厚さ1.6mm)からアルミ製の補強部材(外障子召合框用:厚さ2.0mm、外障子戸先框及び内障子召合框、戸先框用:厚さ1.5mm)に変更することにより、質量を約2.3kg減少させることができ、框体の総重量としては、12.2kgから9.9kgに軽量化することできる。
また、テラスサイズ(W1650,H2200)のサッシでは、縦框内に配置する補強部材を鋼製の補強部材(厚さ1.6mm)からアルミ製の補強部材(外障子召合框用:厚さ2.0mm、外障子戸先框及び内障子召合框、戸先框用:厚さ1.5mm)に変更することにより、質量を約4.0kg減少させることができ、框体の総重量としては、18.2kgから14.2kgに軽量化することできる。
例えば、上記実施形態において、スチールやステンレス等の鋼製の補強部材61,62,63をアルミ製の補強部材により構成することができる。
本発明のアルミ製の補強部材による補強技術は、引違い窓だけでなく、開き窓やすべり出し窓等の様々な窓種に適用できるものであるが、該補強技術の適用は窓に限るものではなく、アルミ形材により形成される種々の建材に用いることができ、例えば、防火シャッター装置に適用することができる。
そして、ガイドレール補助部材952の室内側壁952aは、内周方向に延設されており、補強部材75の室外壁部75aの内周端部及びガイドレール補助部材952の室内側壁952aの内周端部には、加熱により膨張する加熱膨張材fが対向するように配置されている。
また、本実施形態においては、アルミ製の補強部材は、その断面形状が略U字状をなしているが、その断面形状はU字状に限定されるものではなく、ガラス間口の底部に取付けるための見込面と室内外方向の貫通を抑制するための見付面とを備えるものであれば、L字状や中空形状等その断面形状は限定されない。
また、本実施形態においては、障子の縦框に対してアルミ材からなる補強部材を配置、固定しており、比較的長尺となる縦框の変形を押さえることで障子全体の遮炎性能を向上させているが、補強部材を配置、固定する部位は、障子の縦框に限定されるものではなく、障子の上下框等の横框、窓枠の上下枠や無目等横枠、並びに左右縦枠や方立等縦枠のいずれの部位に配置、固定されるものでもよい。さらにいえば、窓枠や障子を構成するいずれの枠材や框材に配置しても、建具の遮炎性能を向上させることができる。
75a :室外壁部
75b :外周壁部
9 :シャッター装置
93 :側壁
94 :側壁
95 :ガイドレール
951 :案内溝
951a :底壁
952 :ガイドレール補助部材
952a :室内側壁
96 :ガイドレール
97 :シャッターカーテン
971 :スラット
972 :端部
Claims (1)
- アルミ形材からなり内周に案内溝を有するガイドレールと、ガイドレールの案内溝に案内されて開閉するシャッターカーテンを備え、
ガイドレールの案内溝内には、ガイドレールの略全長に亘って案内溝の室外側壁及び底壁に沿って配置される断面略L字状のアルミ製の補強部材が配置されてガイドレールの底壁に固定されているとともに、
シャッターカーテンのスラットの端部を案内する溝状のアルミ製の補助部材が配置されてガイドレールの室内側壁に固定されているシャッター建具。
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