以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建具10を室外側から見た正面図である。図2は、図1に示す建具10の縦断面図である。図3は、図1に示す建具10の横断面図である。図1〜図3に示すように、建具10は、開口枠12と、方立部14と、引戸16と、框体18と、袖壁パネル20とを備える。建具10は、建物躯体21に固定された開口枠12で引戸16をスライド可能に支持すると共に、方立部14の一側方に形成された引戸16の引込み空間Sの室内側に袖壁パネル20を嵌め殺した構成の袖付引戸である。建具10は、例えば住宅等の建物の玄関に設置される。本発明は、袖付引戸以外、例えば片引戸や引違い戸、ドア、開閉扉等の各種建具に利用してもよい。
開口枠12は、上枠12a、下枠12b、戸先側縦枠12c、及び戸尻側縦枠12dを四周枠組みした構成である。各枠12a〜12dは、例えばアルミニウム等の金属の押出形材である。開口枠12は、くぎやねじ等の固定具22を用いて建物躯体21に固定される。
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Yで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な戸先側縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Zで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠状部材の内側(内周)とは、例えば開口枠12の枠内側をいい、枠状部材の外側(外周)とは、例えば開口枠12の躯体に固定される枠外側をいう。
図2に示すように、上枠12aは、室内側に配置される室内側枠部24と室外側に配置される室外側枠部25とを、ウレタン樹脂等の断熱部材(枠側断熱部材)26で連結した構造である。上枠12aは、室内側枠部24及び室外側枠部25のそれぞれが固定具22を用いて建物躯体21に固定される。室外側枠部25には上レール25aが連結されている。上レール25aは、引戸16の上端部に設けられた吊ローラ28の走行レールである。
下枠12bは、室内側に配置される室内側枠部30と室外側に配置される室外側枠部31とを、ウレタン樹脂等の断熱部材32で連結した構造である。室外側枠部31の内側見込み面59にはガイド部品31aが設けられている。ガイド部品31aは、引戸16の下端部に設けられた図示しないガイド溝内に配置されて引戸16の走行を案内する部品である。
図3に示すように、戸先側縦枠12cは、室内側に配置される室内側枠部34と室外側に配置される室外側枠部35とを、ウレタン樹脂等の断熱部材36で連結した構造である。室外側枠部35は、引戸16の全閉時の戸当たりとなる。
戸尻側縦枠12dは、室内側に配置される室内側枠部38と室外側に配置される室外側枠部39とを、ウレタン樹脂等の断熱部材40で連結した構造である。戸尻側縦枠12dは、框体18の縦框としても機能し、袖壁パネル20の側端部を保持する。室外側枠部39は、全開された引戸16の引込み空間Sの一壁部となる。
図3に示すように、方立部14は、方立44と、中間縦枠46とを備える。方立部14は、戸先側縦枠12cと戸尻側縦枠12dとの間となる位置に立脚した柱であり、当該建具10を幅方向(X方向)で引戸16側と袖壁パネル20側とに区画する。方立部14は、方立44と中間縦枠46とをブリッジ材47で断熱しつつ連結した構造である。中間縦枠46と方立44は一体構造とされてもよい。
方立44は、中空部44aと、室内側煙返し片44bと、枠保持片44cとを有し(図5も参照)、上端部が上枠12aに連結され、下端部が下枠12bに連結されている。中空部44aは、断面矩形状に形成され、方立44の長手方向に亘って延在している。室内側煙返し片44bは、中空部44aの室外側に設けられ、後述する引戸16側の室外側煙返し片16hと対向配置される略L字形状の板片である。枠保持片44cは、方立44の室内側端部から戸尻側縦枠12d側に延在しており、室外側に延びた突出片44d(図5参照)が途中に設けられた略T字形状の板片である。
中間縦枠46は、室内側に配置される室内側枠部48と室外側に配置される室外側枠部49とを、ウレタン樹脂等の断熱部材50で連結した構造である。中間縦枠46は、框体18の縦框としても機能し、袖壁パネル20の側端部を保持する。中間縦枠46は、室外側枠部49の上下端部がそれぞれ上枠12a、下枠12bに連結され、室内側枠部48の外側見込み面46aが方立44の突出片44dに対してねじ51を用いて連結される(図5参照)。ブリッジ材47は、樹脂製の押出形材であり、中間縦枠46の外側見込み面46aと方立44の内側見込み面44eとの間に介在している(図5参照)。ブリッジ材47は、室外側の中間縦枠46と室内側の方立44との間を断熱する。
図1〜図3に示すように、引戸16は、上枠12aの上レール25aと下枠12bのガイド部品31aとに支持され、上枠12a及び下枠12bの長手方向に沿ってスライド可能である。引戸16は、上枠12a、下枠12b、戸先側縦枠12c、及び方立44によって形成される開口部12eを開閉可能である。本実施形態の場合、引戸16は、室内外の表面材16a,16b間に枠状の骨材16c及び断熱材16dを設けた構造(フラッシュ構造)である。引戸16は、フラッシュ構造以外であってもよい。
引戸16は、戸先側の外側見込み面と戸尻側の外側見込み面とにそれぞれカバー部材16e,16fが装着されている。戸尻側のカバー部材16fは、召合せ部16gと、室外側煙返し片16hとを有する。召合せ部16gは、カバー部材16fの室内側見付け面から室内側に延在している。室外側煙返し片16hは、召合せ部16gの室内側に設けられ、方立44側の室内側煙返し片44bと対向配置される略L字形状の板片である。
図4は、図1に示す建具10の袖壁パネル20に対応する部分での縦断面拡大図である。図5は、図1に示す建具10の袖壁パネル20に対応する部分での横断面拡大図である。図1〜図3に示すように、框体18は、上框18a、下框18b、中間縦枠46、及び戸尻側縦枠12dを四周框組し、内側の開口部18cに袖壁パネル20を保持した枠状部材である。
図2及び図4に示すように、上框18aは、袖壁パネル20の上端部を保持する開口溝52を有し、中間縦枠46と戸尻側縦枠12dとの間となる位置で上枠12aの内側見込み面53に連結されている。上框18aは、開口溝52の室内側壁部52aが形成された室内側框部54と、開口溝52の室外側壁部52bが形成された室外側框部55とを、ウレタン樹脂等の断熱部材56で連結した構造である。上框18aは、室内側框部54が上枠12aの室内側枠部24と共に固定具22を用いて建物躯体21に共締め固定されている。袖壁パネル20の上端部は、開口溝52を形成する室内側壁部52aと室外側壁部52bとの間でタイト材57を用いて保持される。タイト材57は、下框18b、中間縦枠46、及び戸尻側縦枠12dにも同様に用いられている(図4及び図5参照)。
下框18bは、袖壁パネル20の下端部を保持する開口溝58を有し、中間縦枠46と戸尻側縦枠12dとの間となる位置で下枠12bの内側見込み面59に連結されている。下框18bは、開口溝58の室内側壁部58aが形成された室内側框部60と、開口溝58の室外側壁部58bが形成された室外側框部61とを、ウレタン樹脂等の断熱部材62で連結した構造である。下框18bは、室内側框部60が下枠12bの室内側枠部30に対してねじ63を用いて連結されている。
図3及び図5に示すように、中間縦枠46は、框体18の一方の縦框として機能する。中間縦枠46は、袖壁パネル20の側端部を保持する開口溝66を有する。中間縦枠46は、室内側枠部48に開口溝66の室内側壁部66aとして機能する押縁67が装着され、室外側枠部49に開口溝66の室外側壁部66bが形成されている。
戸尻側縦枠12dは、框体18の他方の縦框として機能する。戸尻側縦枠12dは、袖壁パネル20の側端部を保持する開口溝68を有する。戸尻側縦枠12dは、室内側枠部38に開口溝68の室内側壁部68aとして機能する押縁70が装着され、室外側枠部39に開口溝68の室外側壁部68bが形成されている。
図4及び図5に示すように、袖壁パネル(パネル体)20は、スペーサ72で間隔を隔てて一対のガラス板20a,20bを対面配置した複層ガラスである。本実施形態の場合、室外側に配置されるガラス板20bは網入りガラスとし、室内側に配置されるガラス板20aは薄板のフロートガラスとしている。ガラス板20bは耐熱強化ガラスや厚板ガラス等であってもよい。つまりガラス板20bは、所定の耐火性能を有する耐火ガラスで構成されている。ガラス板20aについても耐火ガラスで構成してもよい。袖壁パネル20は、ガラス板20a,20bに代えて、耐火性能を有する樹脂パネル等で構成されてもよい。袖壁パネル20は、単層ガラス又は3層以上の複層ガラスで構成されてもよい。
図4に示すように、下框18bの開口溝58内には、脚部材74とセッティングブロック75とが設けられている。脚部材74は、下框18bの室内側框部60と室外側框部61との間に亘って断熱部材62を跨いだ略門形状のピース部品であり、下框18bの長手方向で複数設けられる。セッティングブロック75は、各脚部材74の上面上に載置された補強材76の内側見込み面76aに対し、下框18bの長手方向で複数設けられたピース部品である。補強材76は、ステンレス板やスチール板を略L字形状に屈曲させた板材であり、下框18bの長手方向に亘って延在している。袖壁パネル20は、その下端面20fが開口溝58内で各セッティングブロック75上に支持され、その側端面20g,20hがそれぞれ中間縦枠46及び戸尻側縦枠12dの開口溝66,68内で支持部材77,78を介して支持される。
次に、建具10の防火構造を説明する。先ず、袖壁パネル20の周辺部での防火構造を説明する。図4に示すように、上枠12aは、室外側枠部25の内側見込み面53に規制金具80が連結されている。規制金具80は、ステンレス板やスチール板を略L字形状に屈曲させた板材であり、上框18aの長手方向に亘って延在している。規制金具80は、室外側枠部25に対してねじ81を用いて締結される取付部80aと、取付部80aの室内側端部から下方に突出した規制部80bとを有する。上框18aの室外側框部55は、その室内側端部に断熱部材56が装着される装着部82を有する。装着部82は、上框18aの外側見込み面83から上方に膨出され、室内側に開口した略コ字形状を有する。規制金具80の規制部80bは、装着部82の室外側見付け面82aに対して当接又は近接した位置で対向配置される。規制金具80は、上枠12aではなく、建物躯体21に対して直接的に連結されてもよい。
上框18aは、開口溝52内に脱落防止金具84が設けられている。脱落防止金具84は、ステンレス板やスチール板を略コ字形状に屈曲させた板材であり、上框18aの長手方向に亘って延在している。脱落防止金具84は、室内側框部54の内側見込み面85に対して固定具22を用いて締結される固定部84aと、袖壁パネル20の室内側表面20cに対向配置される保持部84bと、袖壁パネル20の室外側表面20dに対向配置される保持部84cと、固定部84aと室外側の保持部84cとの間を繋ぐブリッジ部84dとを有する。室内側の保持部84bは、開口溝52の室内側壁部52aとガラス板20aの室内側表面20cとの間に介在している。室外側の保持部84cは、開口溝52の室外側壁部52bとガラス板20bの室外側表面20dとの間に介在している。ブリッジ部84dは、内側見込み面85から離間する方向(下方)に向かって固定部84aの室外側端部から屈曲し、室外側に向かってさらに屈曲したクランク形状を有し、その室外側端部に保持部84cが設けられている。固定部84aは、建物躯体21に対して直接的に連結されてもよい。
上框18aは、脱落防止金具84のブリッジ部84dの内側見込み面84eに熱膨張性部材(第1熱膨張性部材)86を有し、室外側の保持部84cの室内側見付け面84fに熱膨張性部材(第2熱膨張性部材)87を有する。熱膨張性部材86は耐火ガラスであるガラス板20bの上端面(外周端面)20eに対向し、熱膨張性部材87はガラス板20bの室外側表面20dに対向している。熱膨張性部材86,87は、加熱されると発泡して膨張する黒鉛等の加熱発泡材であり、接着剤や両面テープ等を用いて内側見込み面84e等に接着固定される。なお、後述する熱膨張性部材88,93,94,97a〜97j,98a〜98eについても、熱膨張性部材86,87と同様な性質である。
図4に示すように、下框18bは、袖壁パネル20の下端面20f及び室内側表面20cに対向配置した略L字形状の補強材76を有する。補強材76は、内側見込み面76aの室外側端部に熱膨張性部材88を有する。熱膨張性部材88は耐火ガラスであるガラス板20bの下端面(外周端面)20fに対向している。
図5に示すように、方立部14は、方立44の中空部44aに補強材90を有する。補強材90は、上下端部がそれぞれ上枠12a及び下枠12bに連結されている。補強材90は、ステンレス板やスチール板を略コ字形状に屈曲させた板材であり、方立44の長手方向に亘って延在している。補強材90は、室内外方向に沿う見込み片(第1板部)90aと、見込み片90aの室内側端部から屈曲した室内側見付け片90bと、見込み片90aの室外側端部から屈曲した室外側見付け片(第2板部)90cとを有する。見込み片90aは、中空部44aの戸先側縦枠12c側(図5中で左側)の壁面に近接配置されている。各見付け片90b,90cは、戸尻側縦枠12d側(図5中で右側)に向かって突出している。
補強材90は、室外側見付け片90cの室内側見付け面90dが係止部材92によって係止されることにより、室内側への移動が規制されている。本実施形態の場合、係止部材92は、ねじである。係止部材92は、中間縦枠46の室外側枠部49に形成されたねじ孔49aに対して開口溝66側から螺合し、ブリッジ材47の挿通孔47aと方立44の挿通孔44fとを挿通し、中空部44aに進入している。係止部材92は、ねじ部の外周面92aが室外側見付け片90cの室内側見付け面90dに対して近接配置又は当接配置されている。
方立部14は、ブリッジ材47を配置した空間、つまり方立44の内側見込み面44eと中間縦枠46の外側見込み面46aとの間の空間に臨む位置に熱膨張性部材93を有する。本実施形態の場合、熱膨張性部材93は、枠保持片44cの室外側見付け面44gに設けられている。さらに方立44は、室内側煙返し片44bの内側見込み面に熱膨張性部材94を有する。
中間縦枠46は、開口溝66内に脱落防止金具95が設けられている。脱落防止金具95は、室内側の保持部84bを持たない以外は、上記した上框18aの脱落防止金具84と略同一構造であるため、図中に同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち脱落防止金具95は、固定部84a、保持部84c、及びブリッジ部84dを有し、ブリッジ部84dの内側見込み面84eに熱膨張性部材(第1熱膨張性部材)86が設けられ、保持部84cの室内側見付け面84fに熱膨張性部材(第2熱膨張性部材)87が設けられている。脱落防止金具95の固定部84aは、室内側枠部48の内側見込み面に配置され、ねじ51を用いて室内側枠部48及び枠保持片44cの突出片44dと連結される。脱落防止金具95の熱膨張性部材86は、耐火ガラスであるガラス板20bの側端面(外周端面)20gに対向している。
戸尻側縦枠12dは、開口溝68内に脱落防止金具96が設けられている。脱落防止金具96は、上記した中間縦枠46の脱落防止金具95と左右対称構造である以外は同一構造であるため、図中に同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち脱落防止金具96は、固定部84a、保持部84c、及びブリッジ部84dを有し、ブリッジ部84dの内側見込み面84eに熱膨張性部材(第1熱膨張性部材)86が設けられ、保持部84cの室内側見付け面84fに熱膨張性部材(第2熱膨張性部材)87が設けられている。脱落防止金具96の固定部84aは、室内側枠部38の内側見込み面に配置され、固定具22を用いて室内側枠部38と共に建物躯体21に連結されている。脱落防止金具96に設けた熱膨張性部材86は、耐火ガラスであるガラス板20bの側端面(外周端面)20hに対向している。
以上のように構成された建具10が火災で加熱された場合、袖壁パネル20の上端部付近では、断熱部材56が溶融又は消失し、袖壁パネル20の上端部を保持する上框18aの室内側框部54と室外側框部55とが分離する。しかしながら、建具10では、規制金具80によって室外側框部55が室外側に移動することが規制されている。このため、室外側框部55の脱落が防止され、室外側框部55による袖壁パネル20の上端部の保持状態が維持されるため、袖壁パネル20の脱落を防止でき、防火性能を向上することができる。規制金具80は、袖付引戸以外の建具にも利用可能であり、例えば建物躯体に固定された開口枠(框体)にパネル体を嵌め殺した嵌め殺し窓等にも利用できる。
建具10は、方立44に設けた補強材90の室内側への移動を規制する係止部材92を、上框18a、下框18b、及び戸尻側縦枠12dと強固に框組された中間縦枠46に取り付けている。このため、火災時に補強材90が熱伸びし、中央部が室内側に移動するような弓状の反り変形を生じることを係止部材92によって抑制できる。その結果、方立44と引戸16との間での室内外方向の貫通孔の形成を防止できる。従って、係止部材92は、補強材90の長手方向(上下方向)で少なくとも中央部又はその付近に設けられることが望ましい。本実施形態では係止部材92は、例えば上端付近、中央部、下端付近にそれぞれ設置している。なお、方立44の室外側には引戸16が設けられるため、補強材90が上記した方向と逆方向に弓状の反り変形をすることはほとんどないため、係止部材92は補強材90の室内側への移動を規制可能であればよい。係止部材92はねじ以外、例えば金属棒や金属片等で構成されてもよい。
また、本実施形態の場合、係止部材92は、中間縦枠46の室外側枠部49に固定されている。このため、火災時に中間縦枠46の断熱部材50が溶融又は消失し、中間縦枠46の室内側枠部48と室外側枠部49とが分離した場合であっても、係止部材92が補強材90の室内側見付け面90dに係止されるため、室外側枠部49が室外側に移動することが規制される。このため、室外側枠部49の脱落が防止され、室外側枠部49による袖壁パネル20の側端部の保持状態が維持され、袖壁パネル20の脱落が一層確実に防止される。
建具10は、袖壁パネル20を保持する框体18の上框18a、中間縦枠46、及び戸尻側縦枠12dの開口溝52,66,68にそれぞれ脱落防止金具84,95,96を設けている。このため、建具10は、例えば火災時に長時間加熱され、上框18a、中間縦枠46、及び戸尻側縦枠12dの室外側框部55、室外側枠部49,39が軟化或いは溶融した場合、又は断熱部材56,50,40が溶融又は消失した場合であっても、袖壁パネル20の上端部及び側端部を保持しておくことができ、袖壁パネル20の脱落を一層確実に防止できる。この際、脱落防止金具84のブリッジ部84dは、断熱部材56から離間した位置で断熱部材56を跨いだ状態で延在し、固定部84aと保持部84cとの間を繋いでいる。このため、通常時、脱落防止金具84が室内側框部54と室外側框部55との間で熱橋となって建具10の断熱性能を低下させることが抑制されており、脱落防止金具95,96についても同様な断熱構造を有する。なお、上框18aは、袖壁パネル20の脱落防止のために重要な部位であるため、脱落防止金具84は袖壁パネル20の室内側表面20cを保持する保持部84bも有する構成となっている。但し、本実施形態の場合、保持部84b及びその室内側の室内側框部54の室内側には、建物躯体21やこれと固定された額縁部材が配設されているため、保持部84bを省略しても十分な防火性能を担保できる。また、上框18aに脱落防止金具84を設けていれば、他の脱落防止金具95,96を省略してもよく、反対に脱落防止金具95,96のみを設けて脱落防止金具84を省略してもよい。脱落防止金具84,95,96は、袖付引戸以外の建具にも利用可能であり、例えば建物躯体に固定された開口枠(框体)にパネル体を嵌め殺した嵌め殺し窓等や開口枠に開閉可能に支持される障子の框体にも利用できる。
建具10において、脱落防止金具84,95,96は、耐火ガラスであるガラス板20bの各端面20e,20g,20hと対向する位置にそれぞれ熱膨張性部材86を有する。このため、火災時に熱膨張性部材86が膨張することにより、各脱落防止金具84,95,96とガラス板20bの各端面20e,20g,20hとの隙間が塞がれ、この隙間が室内外方向の貫通孔となることを防止できる。なお、本実施形態の場合は、下框18bの開口溝58に設けた補強材76にもガラス板20bの下端面20fと対向する位置に熱膨張性部材88を設けている。このため、建具10は、火災時にガラス板20bの外周端面と框体18との間の隙間が四周に亘って熱膨張性部材86,88によって塞がれるため、一層高い防火性能が得られる。
さらに脱落防止金具84,95,96は、ガラス板20bの室外側表面20dと対向する位置に熱膨張性部材87を有する。これにより、建具10の火災時には袖壁パネル20の室外側表面20dと脱落防止金具84,95,96との間の隙間が膨張した熱膨張性部材87で塞がれる。このため、この隙間が室内外方向に連通する貫通孔となることが防止されると共に、膨張した熱膨張性部材87によって袖壁パネル20が保持され、その脱落が一層確実に防止される。
本実施形態の場合、袖壁パネル20の室外側のガラス板20bを耐火ガラスとしているため、このガラス板20bの周囲に熱膨張性部材86,87を設けた構成を例示したが、室内側のガラス板20aを耐火ガラスとした場合はこちら側に熱膨張性部材86,87を設けるとよい。脱落防止金具84,95,96についても同様であり、室内側のガラス板20aを耐火ガラスとした場合は、室外側框部55、室外側枠部49,39に固定部84aを固定し、ブリッジ部84dを室内側框部54、室内側枠部48,38側へと延在させ、保持部84cを室内側表面20cに対向配置するとよい。
建具10では、方立部14にも熱膨張性部材93,94を設けている。熱膨張性部材93は、当該建具10の火災時にPVC等の樹脂製のブリッジ材47が焼失した際に形成される方立44と中間縦枠46との間の隙間を塞ぎ、この隙間が室内外方向の貫通孔となることを防止する。また、熱膨張性部材94は、当該建具10の火災時に室内側煙返し片44bと引戸16の室外側煙返し片16hとの間の隙間を塞ぎ、この隙間が室内外方向の貫通孔となることを防止する。
次に、袖壁パネル20の周辺部以外の部分での防火構造を説明する。本実施形態の場合、建具10は引戸16及びその周辺部にも防火構造を有する。図3に示すように、引戸16の左右側部では、骨材16cの外面と表面材16a,16bの内面との間に熱膨張性部材97a,97bが設けられ、骨材16cの内面に熱膨張性部材97c,97dが設けられ、カバー部材16e,16fに熱膨張性部材97e,97f,97g,97h,97i,97jが設けられている。図2に示すように、引戸16の上下部では、熱膨張性部材98a,98b,98c,98d,98eが設けられている。熱膨張性部材98b,98dは、例えば上枠12a及び下枠12bの戸先側縦枠12cと方立部14との間に設けられる部位の室外側見付け面に設けられる。熱膨張性部材98c,98eは、例えば引戸16の上下端部に設けられる。
熱膨張性部材97a〜97j,98a〜98eは、例えば引戸16の骨材16c等の長手方向に亘って設けられる。これにより建具10の火災時、熱膨張性部材97a〜97jは、引戸16と戸先側縦枠12cとの間や引戸16と方立部14との間での室内外方向の貫通孔の発生を防止し、熱膨張性部材98a〜98eは、引戸16と上枠12aや下枠12bとの間での室内外方向の貫通孔の発生を防止する。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。