JP7008196B2 - リチウム空気電池 - Google Patents

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Description

本開示は、リチウム空気電池に関する。
リチウム空気電池とは、正極活物質として空気中の酸素を用い、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な金属又は化合物を用いた電池である。リチウム空気電池は、エネルギー密度が高い、小型化が容易である、軽量化が容易であるといった利点を有している。したがって、リチウム空気電池は、現在最もエネルギー密度が高いと考えられているリチウムイオン電池を超えるエネルギー密度を有する電池として注目されている。
リチウム空気電池においては、放電反応によって過酸化リチウムが正極に析出し、充電反応によって過酸化リチウムが分解する。過酸化リチウムの電子伝導性が乏しいので、リチウム空気電池は、一般に、充電時において大きい過電圧を示す。その結果、充電電位が上昇し、エネルギー効率が低下する。
特許第4816693号公報 特許第5434086号公報 特許第5315831号公報
Benjamin J.Bergner et al, Understanding the fundamentals of redox mediators in Li-O2 batteries: a case study on nitroxides, Phys. Chem. Chem. Phys., 2015,17, 31769-31779
本開示の一態様は、リチウム空気電池の充電電位を低下させるとともに、サイクル特性を向上させるための技術を提供する。
本開示の一態様のリチウム空気電池は、
リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、
空気中の酸素を正極活物質として用いるように構成された正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された非水系リチウムイオン伝導体と、
を備え、
前記非水系リチウムイオン伝導体は、
下記式(1)で表される化合物と、
2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を含む。
Figure 0007008196000001
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は電子供与性を示す官能基であり、R1及びR2から選ばれる少なくとも1つが前記電子供与性を示す官能基である。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含み、前記鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
本開示の一態様によれば、リチウム空気電池の充電電位を低下させ、かつサイクル特性も向上させることができる。
図1は、本開示の一実施形態に係るリチウム空気電池の概略断面図である。 図2は、実施例1及び比較例1の各化合物のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。 図3は、実施例2、比較例2及び比較例3のリチウム空気電池の充電曲線を示すグラフである。 図4は、実施例2、実施例3、実施例4、比較例2及び比較例4のリチウム空気電池の充電曲線を示すグラフである。
(本開示の基礎となった知見)
過酸化リチウムの分解を促進するために、酸素発生触媒(「レドックスメディエータ」とも呼ばれる)を使用することが提案されている。
特許文献1から3に記載されたリチウム空気電池には、酸素発生触媒として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)の誘導体(以下、「TEMPO誘導体」と称する)が使用されている。TEMPO誘導体は、電解液又は正極に含まれている。酸素発生触媒は、正極と過酸化リチウムとの間で電子の移動を仲介することによって過酸化リチウムの分解を促進し、充電電位を低下させる。
非特許文献1に記載されたリチウム空気電池には、酸素発生触媒として、TEMPO誘導体、2-アザアダマンタン-N-オキシル(AZADO)又は1-メチル-2-アザアダマンタン-N-オキシル(1-Me-AZADO)が使用されている。これらの酸素発生触媒は、電解液に溶解しており、リチウム空気電池の充電電位を低下させる。
先行技術文献に記載されたこれらの酸素発生触媒は、一電子酸化されてオキソアンモニウムカチオンに変化する化合物であり、ニトロキシルラジカル化合物と呼ばれる。ニトロキシルラジカル化合物は、過酸化リチウムを酸化分解すると同時に還元される。これにより、ニトロキシルラジカルが再生成される。再生成されたニトロキシルラジカルが正極の表面上で再びカチオン体に変化し、過酸化リチウムと反応する。このように、ニトロキシルラジカル化合物は、酸化と還元を繰り返しながら過酸化リチウムを分解する。
特許文献1から3及び非特許文献に記載されたニトロキシルラジカル化合物は、3.5V(vs.Li/Li+)以上の酸化還元電位を示す。過酸化リチウムの分解は、ニトロキシルラジカル化合物の酸化によるカチオン体の生成によって開始する。そのため、卑な酸化還元電位を有する化合物を酸素発生触媒として用いることによって、リチウム空気電池の充電電位をさらに下げることができると考えられる。
本発明者は、上記の知見に基づき、リチウム空気電池において、充電反応が進みにくく、充放電サイクル特性が十分でないという課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、本開示の一態様のリチウム空気電池を完成させるに至った。
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係るリチウム空気電池は、
リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、
空気中の酸素を正極活物質として用いるように構成された正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された非水系リチウムイオン伝導体と、
を備え、
前記非水系リチウムイオン伝導体は、
下記式(1)で表される化合物と、
2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を含む。
Figure 0007008196000002
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は電子供与性を示す官能基であり、R1及びR2から選ばれる少なくとも1つが前記電子供与性を示す官能基である。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含み、前記鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
第1態様によれば、式(1)で表される化合物が過酸化リチウムを効率的に分解する充電用触媒として機能するので、充電電位が低下する。過酸化リチウムの分解を促進することに加えて、リチウム空気電池の各部材に高電圧が印加されることを回避できるので、各部材の酸化による劣化が抑制され、リチウム空気電池のサイクル特性も向上する。2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンは、充電電位を更に低下させる効果をもたらす。
先行技術文献に記載されたTEMPO誘導体は、レドックス部位であるNO位(N-oxyl基)の周囲に4つのメチル基を有し、ラジカルが立体的に保護されることによって安定化されている。仮に、4つのメチル基が水素原子に置き換えられた場合、TEMPO誘導体は、速やかに不均化してニトロンとヒドロキシルアミンとを生成する。
先行技術文献に記載されたTEMPO誘導体と比較して、式(1)で表される化合物において、ラジカルの安定性は維持されつつ、レドックス部位の周囲の立体障害が小さい。そのため、式(1)で表される化合物と過酸化リチウムとの反応サイトが大きく、反応サイトが過酸化リチウムに接触しやすい。また、先行技術文献に記載されたTEMPO誘導体の酸化還元電位と比較して、式(1)で表される化合物の酸化還元電位は卑であるため、式(1)で表される化合物は、過酸化リチウムをより卑な電位で分解しうる。したがって、式(1)で表される化合物をレドックスメディエータとして用いることで、リチウム空気電池の充電時において、過酸化リチウムを効率的に分解することが可能である。その結果、充電電位を十分に下げることができる。併せて、リチウム空気電池のサイクル特性の向上も期待できる。
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係るリチウム空気電池では、前記式(1)において、R1及びR2の両方が電子供与性を示す官能基であってもよい。R1及びR2の両方が電子供与性を示す官能基であるとき、式(1)で表される化合物の酸化還元電位を十分に卑にシフトさせることができる。
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係るリチウム空気電池では、前記電子供与性を示す官能基が炭化水素基であってもよい。炭化水素基は、式(1)で表される化合物において、確実に電子供与性を示す。
本開示の第4態様において、例えば、第3態様に係るリチウム空気電池では、前記炭化水素基の炭素数が1から3であってもよい。炭化水素基における炭素数が1から3である場合、立体障害による反応性の低下を抑制しつつ、酸化還元電位を卑にシフトさせることができる。
本開示の第5態様に係るリチウム空気電池は、
リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、
空気中の酸素を正極活物質として用いるように構成された正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された非水系リチウムイオン伝導体と、
を備え、
前記非水系リチウムイオン伝導体は、下記式(1)で表される化合物を含む。
Figure 0007008196000003
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1から3の炭化水素基であり、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含み、前記鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
第5態様によれば、式(1)で表される化合物が過酸化リチウムを効率的に分解する充電用触媒として機能するので、充電電位が低下する。過酸化リチウムの分解を促進することに加えて、リチウム空気電池の各部材に高電圧が印加されることを回避できるので、各部材の酸化による劣化が抑制され、リチウム空気電池のサイクル特性も向上する。
本開示の第6態様において、例えば、第3から第5態様のいずれか1つに係るリチウム空気電池では、前記炭化水素基がメチル基であってもよい。炭化水素基がメチル基であるとき、レドックス部位の周囲の立体障害が小さく、酸化還元電位も卑にシフトさせることができる。
本開示の第7態様において、例えば、第1から第6態様のいずれか1つに係るリチウム空気電池では、前記式(1)において、R3及びR4のそれぞれが水素原子であってもよい。R3及びR4のそれぞれが水素原子であるとき、式(1)で表される化合物は、小さい分子径を有するので、優れた反応性を示す。
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つに係るリチウム空気電池では、前記非水系リチウムイオン伝導体における前記化合物の濃度が0.01mmol/リットル以上であってもよい。第8態様によれば、過酸化リチウムの分解を促進する効果及びリチウム空気電池のサイクル特性を向上させる効果が十分に得られる。
本開示の第9態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係るリチウム空気電池では、前記非水系リチウムイオン伝導体における2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つの濃度が0.01mmol/リットル以上であってもよい。2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つの濃度が適切に調整されている場合、上記した効果が十分に得られる。
本開示の第10態様において、例えば、第1から第9態様のいずれか1つに係るリチウム空気電池では、前記非水系リチウムイオン伝導体は、テトラエチレングリコールジメチルエーテルをさらに含んでいてもよい。テトラエチレングリコールジメチルエーテルは、揮発しにくく、酸素ラジカルに対して安定であるため、リチウム空気電池の非水系リチウムイオン伝導体に適している。
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
図1は、本開示の一実施形態に係るリチウム空気電池の概略断面図である。図1に示すように、本実施形態のリチウム空気電池1は、電池ケース11と、負極12と、正極13と、非水系リチウムイオン伝導体としての電解質層14とを備えている。電池ケース11は、上面側及び底面側の両方が開口した筒状部11aと、筒状部11aの底面側の開口を塞ぐように設けられた底部11bと、筒状部11aの上面側の開口を塞ぐように設けられた蓋部11cとを備えている。蓋部11cには、空気を電池ケース11内に取り込むための空気取り込み孔15が設けられている。負極12は、電池ケース11の底部11bの内底面上に配置された負極層12aを備えている。電池ケース11の底部11bは、負極12の負極集電体の機能を兼ね備えている。すなわち、負極集電体を兼ねる底部11bと負極層12aとによって、負極12が構成されている。正極13は、炭素材料を含む正極層13aと、正極層13aと電池ケース11の蓋部11cとの間に配置された正極集電体13bとで構成されている。リチウム空気電池1の電解質層14は、セパレータを含んでいてもよい。底部11bとは別に負極集電体を設けてもよい。
上記のような構成を有するリチウム空気電池1における電池反応は以下のとおりである。
放電反応(すなわち、電池使用時の反応)
負極:2Li → 2Li++2e- (A1)
正極:2Li++2e-+O2 → Li22 (A2)
充電反応(すなわち、電池充電時の反応)
負極:2Li++2e- → 2Li (A3)
正極:Li22 → 2Li++2e-+O2 (A4)
放電時には、式(A1)及び(A2)に示すように、負極12から電子とリチウムイオンとが放出される。正極13に電子が取り込まれると同時に、正極13において、電池の外部から取り込まれた酸素とリチウムイオンとが反応してリチウム酸化物が生成する。充電時には、式(A3)及び(A4)に示すように、負極12に電子とリチウムイオンとが取り込まれる。正極13から電子、リチウムイオン及び酸素が放出される。充電用触媒は、式(A4)に示す反応を促進する材料である。
次に、このようなリチウム空気電池1の各構成について詳細に説明する。
1.正極
前述のとおり、正極13は、正極層13aを含んでおり、さらに正極集電体13bを含んでいてもよい。以下に、正極層13a及び正極集電体13bについてそれぞれ説明する。
(正極層)
正極層13aは、空気中の酸素を正極活物質として該酸素を酸化還元可能とする材料を含んでいる。そのような材料として、本実施形態における正極層13aは、炭素を含む導電性多孔質体を含んでいる。炭素を含む導電性多孔質体として用いられる炭素材料は、高い電子伝導性を有していてもよい。具体的には、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどの、一般的に導電助剤として用いられている炭素材料を用いることができる。比表面積及び一次粒子のサイズの観点から、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを用いてもよい。炭素材料は、通常、粉末である。炭素材料の比表面積は、例えば800m2/g以上2000m2/g以下であり、1200m2/g以上1600m2/g以下であってもよい。炭素材料の比表面積がこのような範囲にあると、細孔構造を有する正極層13aを形成しやすい。比表面積は、BET法により測定される値である。
正極層13aは、上記の導電性多孔質体を固定化するバインダをさらに含有していてもよい。バインダとしては、リチウム空気電池1の正極層13aのバインダとして公知の材料を用いることができる。バインダとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。正極層13aにおけるバインダの含有量は、特に限定されず、例えば1質量%以上40質量%以下の範囲にある。
正極層の厚さ13aは、リチウム空気電池1の用途などに応じて変わるので特に限定されない。正極層13aの厚さは、例えば2μm以上500μm以下の範囲にあり、5μm以上300μm以下の範囲にあってもよい。
正極層13aは、例えば、以下に説明する方法によって作製することができる。炭素材料と溶媒とを混合し、混合物を調製する。必要に応じて、バインダなどの添加剤が混合物に含まれていてもよい。得られた混合物(塗布液として用いられる)をドクターブレード法などの塗布方法によって正極集電体13b上に塗布し、塗膜を乾燥させる。これにより、正極13が得られる。混合物の塗膜を乾燥させ、乾燥した塗膜をロールプレスなどの方法によって圧延することによって、正極集電体13bを有さないシート状の正極層13aを作製してもよい。炭素材料を圧着プレスによって直接成形することによってシート状の正極層13aを作製してもよい。
(正極集電体)
正極集電体13bは、正極層13aの集電を行う部材である。正極集電体13bの材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されない。正極集電体13bの材料として、例えばステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン及びカーボンなどが挙げられる。正極集電体13bの形状としては、例えば箔状、板状及びメッシュ(例えば、グリッド)状などが挙げられる。本実施形態においては、正極集電体13bの形状がメッシュ状であってもよい。メッシュ状の正極集電体13bは、集電効率に優れているからである。この場合、正極層13aの内部にメッシュ状の正極集電体13bが配置されうる。本実施形態のリチウム空気電池1は、メッシュ状の正極集電体13bによって集電された電荷を集電する別の正極集電体13b(例えば箔状の集電体)をさらに有していてもよい。本実施形態においては、後述する電池ケース11が正極集電体13bの機能を兼ね備えていてもよい。正極集電体13bの厚さは、例えば10μm以上1000μm以下の範囲にあり、20μm以上400μm以下の範囲にあってもよい。
2.負極
前述のとおり、負極12は、負極集電体を含んでおり、さらに負極層12aを含んでいてもよい。以下に、負極層12a及び負極集電体についてそれぞれ説明する。
(負極層)
本実施形態における負極層12aは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を含有していてもよい。このような負極活物質としては、リチウム元素を含有する物質であれば特に限定されず、例えば金属単体である金属リチウム、リチウム元素を含有する合金、リチウム元素を含有する酸化物及びリチウム元素を含有する窒化物などが挙げられる。リチウム元素を含有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金及びリチウムケイ素合金などが挙げられる。リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物などが挙げられる。リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物及びリチウムマンガン窒化物などが挙げられる。
負極層12aは、負極活物質のみを含有していてもよく、負極活物質の他にバインダを含有していてもよい。負極活物質が箔状である場合には、負極層12aは、負極活物質のみを含有しうる。負極活物質が粉末状である場合には、負極層12aは、負極活物質及びバインダを含有しうる。バインダとしては、リチウム空気電池1の負極層12aのバインダとして公知の材料を用いることができ、例えばPVdF及びPTFEなどが挙げられる。負極層12aにおけるバインダの含有量は、特に限定されず、例えば1質量%以上40質量%以下の範囲にある。粉末状の負極活物質を用いて負極層12aを作製する方法としては、上記の正極層13aの作製方法と同様に、ドクターブレード法又は圧着プレスによる成形方法などを用いることができる。
(負極集電体)
負極集電体は、負極層12aの集電を行う部材である。負極集電体の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されない。リチウム空気電池の負極集電体として公知の材料を用いることができる。負極集電体の材料として、例えば銅、ステンレス鋼、ニッケル及びカーボンなどが挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状及びメッシュ(例えば、グリッド)状などが挙げられる。負極集電体は、表面に凹凸を有する多孔質体であってもよい。後述する電池ケース11が負極集電体の機能を兼ね備えていてもよい。
3.セパレータ
本実施形態のリチウム空気電池1は、正極13と負極12との間に配置されたセパレータを備えていてもよい。正極13と負極12との間にセパレータが配置されることにより、安全性の高い電池を得ることができる。セパレータは、正極層13aと負極層12aとを電気的に分離する機能を有するものであれば特に限定されない。セパレータとして、例えばポリエチレン(PE)多孔膜及びポリプロピレン(PP)多孔膜などの多孔膜、PE不織布及びPP不織布などの樹脂不織布、ガラス繊維不織布、並びに、紙製の不織布などの多孔質絶縁材料などが挙げられる。
セパレータの多孔度は、例えば30%以上90%以下の範囲にある。多孔度がこのような範囲にあれば、十分な量の電解質がセパレータに保持されるとともに、セパレータが十分な強度を有する。セパレータの多孔度は、35%以上60%以下の範囲にあってもよい。多孔度は、材料の真密度、細孔を含む総体積及び重量から算出されうる。
4.電解質層
電解質層14は、正極13と負極12との間に配置され、リチウムイオンの伝導を行う層である。電解質層14は、リチウムイオン伝導性を有するリチウムイオン伝導体であればその形態は特に限定されず、電解質としてのリチウムの塩を含む有機溶媒系に代表される溶液系、及び、リチウムの塩を含む高分子固体電解質の系に代表される固体膜系のいずれの形態であってもよい。電解質が固体状又はゲル状であっても、電解質に含まれたメディエータは、正極13の表面上で電気化学反応を起こすことができる。
電解質層14が溶液系である場合、非水溶媒にリチウム塩を溶解することによって調製された非水電解液を電解質層14として用いることができる。
非水電解液に電解質として含まれるリチウム塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)及びビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(LiN(CF3SO22)などが挙げられるが、これらに限定されない。リチウム空気電池1の非水電解液の電解質として公知のリチウム塩を用いることができる。
非水電解液における電解質の濃度は、例えば0.5mol/リットル以上2.5mol/リットル以下である。溶液系の電解質層14である非水電解液を用いる場合、前述のとおり、この非水電解液をセパレータに含浸させて保持することにより、電解質層14が形成されうる。
非水溶媒としては、リチウム空気電池1の非水電解液の非水溶媒として公知の非水溶媒を用いることができる。例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどの鎖状エーテルを溶媒として用いることができる。鎖状エーテルは、カーボネート系溶媒と比較して、正極13内での酸素の酸化還元反応以外の副反応を起こしにくい。特に、テトラエチレングリコールジメチルエーテルは、揮発しにくく、酸素ラジカルに対して安定であるため、空気電池用電解液として適している。他の非水溶媒として、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
本実施形態のリチウム空気電池1は、酸素発生触媒としてのニトロキシルラジカル化合物をさらに含む。本実施形態のニトロキシルラジカル化合物は、下記式(1)で表される。
Figure 0007008196000004
式(1)で表される化合物は、ニトロキシルラジカルを含む架橋環構造を有する有機化合物である。式(1)で表される化合物は、歪みが小さく、堅牢な、対称性の高いアダマンタン骨格を有しているため、フリーラジカルの状態で極めて安定に存在できる。
本実施形態において、ニトロキシルラジカル化合物は、非水系リチウムイオン伝導体である電解質層14に含まれている。リチウム空気電池1が充電されるとき、ニトロキシルラジカル化合物は、正極13の表面上で酸化されてカチオン体に変化する。このカチオン体は、過酸化リチウムの分解を促進する充電用触媒として働く。
非水電解液が電解質層14として使用されている場合、ニトロキシルラジカル化合物は、非水電解液を構成する非水溶媒に溶解している。そのため、ニトロキシルラジカル化合物が正極13の周囲に豊富に存在できる。非水電解液におけるニトロキシルラジカル化合物の濃度は、例えば、0.01mmol/リットル以上である。非水電解液におけるニトロキシルラジカル化合物の濃度の上限は、例えば、200mmol/リットルである。ニトロキシルラジカル化合物の濃度が適切に調整されている場合、上記した効果が十分に得られる。
式(1)で表される化合物において、レドックス部位であるN-oxyl基に隣接するα炭素には、R1及びR2が結合している。R1及びR2から選ばれる少なくとも1つが電子供与性を示す官能基であるとき、式(1)で表される化合物の酸化還元電位を卑にシフトさせることができる。R1及びR2の両方が電子供与性を示す官能基であるとき、この効果がより十分に得られる。R1及びR2の構造は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
電子供与性を示す官能基としては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、式(1)で表される化合物において、確実に電子供与性を示す。
炭化水素基は、典型的には、メチル基、エチル基などのアルキル基である。アルキル基のσ結合からN-oxyl基に部分的に電子が供与されると、超共役効果によってラジカルが安定化される。アルキル鎖が長ければ長いほど酸化還元電位が卑にシフトする。ただし、アルキル鎖が長すぎると立体障害の影響が増加し、式(1)で表される化合物とLi22との反応性が低下する可能性がある。炭化水素基における炭素数が1から3である場合、立体障害による反応性の低下を抑制しつつ、酸化還元電位を卑にシフトさせることができる。炭化水素基がメチル基であるとき、レドックス部位の周囲の立体障害が小さく、酸化還元電位も卑にシフトさせることができる。
式(1)で表される化合物において、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含んでいてもよい。鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
式(1)で表される化合物において、R3及びR4はレドックス部位から離れている。そのため、R3及びR4が酸化還元電位に及ぼす影響は小さい。この観点から、R3及びR4の構造は限定されない。R3及びR4のそれぞれが水素原子であるとき、式(1)で表される化合物は、小さい分子径を有するので、優れた反応性を示す。
1及びR2のそれぞれがメチル基であるとき、本開示におけるニトロキシルラジカル化合物は、下記式(2)で表される。R1及びR2のそれぞれがメチル基であり、R3及びR4のそれぞれが水素原子であるとき、本開示におけるニトロキシルラジカル化合物は、下記式(3)で表される。式(3)で表される化合物は、1,5-ジメチル-9-アザノルアダマンタン-N-オキシル(DMN-AZADO)である。
Figure 0007008196000005
Figure 0007008196000006
式(1)で表される化合物の存在は、例えば、1H-NMR測定によって確かめることができる。
本実施形態のリチウム空気電池1は、放電反応において電子授受を仲介するn型レドックス分子をさらに含んでいてもよい。n型レドックス分子として、下記式(4)で表される2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、及び、下記式(5)で表される2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つが使用されうる。
Figure 0007008196000007
Figure 0007008196000008
2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン(共にDBBQと呼称する)は、共に2.6V(vs.Li/Li+)付近に酸化還元電位を有し、同様の酸化還元特性を有するn型レドックス分子であり、放電時に正極13から電子を受け取りアニオン体(DBBQ-)に転化する。DBBQ-は、Li+及びO2と複合体(LiDBBQO2)を形成して安定化する。その後、この複合体の二分子が不均化することによって過酸化リチウムが生成すると考えられる。
DBBQが電子の授受を仲介することによって、正極13の表面上だけでなく、正極13の表面から多少離れた電解液中(正極13の近傍)でも過酸化リチウムが生成しうる。すなわち、正極13から電子を受け取ったDBBQが濃度勾配によって電解液中に拡散し、過酸化リチウムの生成反応場が拡大する。そのため、過酸化リチウムは、異なる場所で生成した多数の粒子が正極13の表面上に堆積するような形で生成する。DBBQを使用しなかった場合、電子の授受がほぼ正極13の表面のみで行われるため、正極13の表面を被覆するように過酸化リチウムが生成する。放電容量が同等であると仮定すると、DBBQを使用した場合、DBBQを使用しなかった場合と比較して、正極13における過酸化リチウムの表面積が大きい。充電時において酸素発生触媒としてのレドックスメディエータのカチオン体と過酸化リチウムとの反応面積が拡大し、得られる触媒効果が増大し、過酸化リチウムがより効率的に分解されうる。その結果、リチウム空気電池1の充電電位が更に低下する。
非水電解液が電解質層14として使用されている場合、DBBQは、非水電解液を構成する非水溶媒に溶解している。そのため、DBBQが正極13の周辺に豊富に存在できる。非水電解液におけるDBBQの濃度は、例えば、0.01mmol/リットル以上である。非水電解液におけるDBBQの濃度の上限は、例えば、200mmol/リットルである。DBBQの濃度が適切に調整されている場合、上記した効果が十分に得られる。DBBQとして、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンの両方が非水電解液に含まれている場合、それぞれの濃度の合計がDBBQの濃度である。
5.電池ケース
本実施形態のリチウム空気電池1の電池ケース11は、前述したような正極13、負極12及び電解質層14を収納できれば、形状などは特に限定されない。本実施形態のリチウム空気電池1の電池ケース11は、図1に示す形状には限定されず、コイン型、平板型、円筒型及びラミネート型などの様々な形状を用いることができる。電池ケース11は、大気開放型の電池ケースであってもよく、密閉型の電池ケースであってもよい。大気開放型の電池ケースとは、大気が出入りできる通風口を有しており、大気が正極と接触可能なケースである。密閉型電池ケースの場合、密閉型電池ケースに、気体の供給管及び排出管が設けられていてもよい。この場合、供給及び排出される気体は、乾燥気体であってもよい。供給及び排出される気体は、高い酸素濃度を有していてもよく、純酸素(酸素濃度99.99%)であってもよい。放電時には酸素濃度が高く、充電時には酸素濃度が低くてもよい。
以下、実施例によって本開示をさらに詳細に説明する。以下の実施例は一例であり、本開示は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、キシダ化学株式会社製)にLiTFSA(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド、キシダ化学株式会社製)を1mol/リットルの濃度となるように混合及び溶解させ、非水電解液を得た。得られた非水電解液に1,5-ジメチル-9-アザノルアダマンタン-N-オキシル(DMN-AZADO)を2mmol/リットルの濃度で溶解させた。作用極としてグラッシーカーボン電極、対極として白金電極、参照電極としてAg/Ag+電極(全てビー・エー・エス株式会社製)を用い、10mV/secの走査速度でサイクリックボルタンメトリ測定を行った。
(比較例1)
DMN-AZADOに代えてTEMPOを使用したことを除き、実施例1と同じ方法によってサイクリックボルタンメトリ測定を行った。
図2は、実施例1及び比較例1の各化合物のサイクリックボルタモグラムを示している。図2に示すように、DMN-AZADO(実施例1)は、TEMPO(比較例1)のレドックス電位よりも卑なレドックス電位を有していた。
理論的な計算によれば、式(1)で表される化合物において、R1がメチル基であり、R2からR4が水素原子である場合、式(1)で表される化合物のレドックス電位は、DMN-AZADOのレドックス電位よりも貴であり、TEMPOのレドックス電位よりも卑である。
(実施例2)
炭素材料としてケッチェンブラック(ライオン株式会社製)の粉末を用いた。バインダとしてPTFE(ダイキン工業株式会社製)の粉末を用いた。炭素材料及びバインダを質量比90:10でエタノール溶媒を用いて混練し、混合物を得た。混合物をロールプレスによって圧延し、電極シートを作製した。得られた電極シートを切断して正極(正極層)を得た。
テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME、キシダ化学株式会社製)にLiTFSA(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド、キシダ化学株式会社製)を1mol/リットルの濃度となるように混合及び溶解させた。混合溶液を露点-50度以下のドライエア雰囲気下で24時間撹拌し、非水電解液を得た。得られた非水電解液にDMN-AZADOを20mmol/リットルの濃度で溶解させた。
セパレータとして、ガラス繊維セパレータを準備した。金属リチウム箔に集電体としてのSUS304メッシュを貼付し、負極を得た。正極、セパレータ、非水電解液及び負極を用い、図1に示す構造を有するリチウム空気電池を作製した。
(比較例2)
DMN-AZADOを使用しなかったことを除き、実施例2と同じ方法によって比較例2のリチウム空気電池を作製した。
(比較例3)
DMN-AZADOに代えてTEMPOを使用したことを除き、実施例2と同じ方法によって比較例3のリチウム空気電池を作製した。
(充放電試験)
実施例2、比較例2及び比較例3のリチウム空気電池を酸素雰囲気下で20分以上保持した後、充放電試験を行った。放電時における電流密度は0.4mA/cm2であり、カットオフ電圧は2.0Vであった。充電時における電流密度は0.1mA/cm2であり、カットオフ電圧は4.5Vであった。放電を行ったのち、充電を行った。得られた充電曲線を図3に示す。図3の横軸のSOC(State Of Charge)は、充電率を表し、縦軸Voltageは負極リチウムの酸化還元電位に対する電池電圧を表す。
図3に示すように、実施例2のリチウム空気電池の充電電位は、比較例2及び比較例3のリチウム空気電池の充電電位よりも低かった。実施例2においては、DMN-AZADOが正極の表面上で酸化されてカチオン体に変化し、過酸化リチウムを効率的に分解する充電用触媒として機能し、充電電位が低下したと推測される。
(充放電サイクル試験)
先に説明した充放電試験と同じ条件にて、実施例2、比較例2及び比較例3のリチウム空気電池の充放電サイクル試験を行った。具体的には、放電及び充電をそれぞれ3回繰り返した。この充放電サイクル試験の結果を表1に示す。容量維持率は、初回の放電容量に対する各回の放電容量の比率を表している。
Figure 0007008196000009
表1に示すように、比較例2及び比較例3のリチウム空気電池と比較して、実施例2のリチウム空気電池の放電容量は減少しにくかった。実施例2のリチウム空気電池では、酸素発生触媒(レドックスメディエータ)として、DMN-AZADOを使用した。DMN-AZADOのレドックス部位の周辺の立体障害は小さく、かつ分子径も小さい。そのため、DMN-AZADOが過酸化リチウムを効率的に分解する充電用触媒として機能したと推測される。また、DMN-AZADOが過酸化リチウムと接触しやすく、過酸化リチウムを素早く分解する。そのため、実施例2のリチウム空気電池において、DMN-AZADOは、充電過程において充電電位を低下させるだけでなく、過酸化リチウムの分解を促進し、リチウム空気電池のサイクル特性が向上したと考えられる。
図3のグラフに示すように、比較例3のリチウム空気電池においても、レドックスメディエータとしてのTEMPOによる充電電位の低下効果が得られた。ただし、比較例3における充電電位の低下効果は、実施例2で得られた効果よりも低かった。よって、TEMPOとLi22との反応性は、DMN-AZADOとLi22との反応性よりも低いと考えられる。TEMPOは、DMN-AZADOと比較して、N-oxyl基の周りの立体障害が大きい。このことが充電電位の低下効果に影響したと推測される。
図3のグラフに示すように、1サイクル目の充電電位には、TEMPOの酸化電位が反映され、低い充電電位が得られた。しかし、酸化状態のTEMPO(TEMPO+)とLi22との反応がスムーズに起こらない場合、充電後も正極内に多量のLi22が残留する。残留したLi22と2サイクル目の放電で析出したLi22とによって、正極の細孔の殆どが埋まり、その後の充電においてもTEMPOの働きが弱いためLi22を十分に分解できず、3サイクル目の放電が進みにくかったと推測される。
比較例3の3サイクル目の容量維持率が比較例2よりも劣っている理由としては、負極の表面においてレドックスメディエータが失活することも挙げられる。負極の表面をゲル電解質等で被覆したり、固体電解質等でレドックスメディエータと負極のリチウムとの接触を遮断したりしない限り、失活の問題は避けられない。しかし、TEMPOのようにLi22の分解効果が高くないレドックスメディエータを用いた場合、失活によるデメリットがメリットを上回ると推測される。
(実施例3)
炭素材料とバインダとの質量比を70:30に変更したこと、及び、非水電解液に10mmol/リットルの濃度で2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン(2,5-DBBQ)を追加で溶解させたことを除き、実施例2と同じ方法によって実施例3のリチウム空気電池を作製した。
(実施例4)
2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン(2,5-DBBQ)に代えて2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン(2,6-DBBQ)を使用したことを除き、実施例3と同じ方法によって実施例4のリチウム空気電池を作製した。
(比較例4)
DMN-AZADOに代えて2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン(2,5-DBBQ)を使用したことを除き、実施例2と同じ方法によって比較例4のリチウム空気電池を作製した。
(充放電試験)
実施例3のリチウム空気電池を酸素雰囲気下で20分以上保持した後、充放電試験を行った。放電時における電流密度は0.4mA/cm2であり、カットオフ電圧は2.0Vであった。充電時における電流密度は0.1mA/cm2であり、カットオフ電圧は4.0Vであった。放電を行ったのち、充電を行った。比較例4のリチウム空気電池の充放電試験も行った。得られた充電曲線を図4に示す。
図4は、実施例3、実施例4及び比較例4のリチウム空気電池の充電曲線に加えて、実施例2及び比較例2のリチウム空気電池の充電曲線も示している。図4に示すように、実施例3及び実施例4のリチウム空気電池の充電電位は、実施例2のリチウム空気電池の充電電位よりも低かった。つまり、2,5-DBBQ又は2,6-DBBQを非水電解液に添加することによって充電電位が更に低下した。
2,5-DBBQのみを含む比較例4のリチウム空気電池において、充電電位を低下させる効果は得られなかった。
以上のとおり、本開示の技術によれば、放電生成物である過酸化リチウムの分解を促進してリチウム空気電池の充電電位を低下させ、サイクル特性を向上させることができる。
本開示の技術によれば、高容量を確保しつつ、リチウム空気電池の充電電位を低下させることができ、良好な充放電サイクル特性を有するリチウム空気電池を提供できる。したがって、本開示のリチウム空気電池は二次電池として有用である。
1 リチウム空気電池
11 電池ケース
11a 筒状部
11b 底部
11c 蓋部
12 負極
12a 負極層
13 正極
13a 正極層
13b 正極集電体
14 電解質層
15 空気取り込み孔

Claims (10)

  1. リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、
    空気中の酸素を正極活物質として用いるように構成された正極と、
    前記負極と前記正極との間に配置された非水系リチウムイオン伝導体と、
    を備え、
    前記非水系リチウムイオン伝導体は、
    下記式(1)で表される化合物と、
    2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つと、
    を含む、リチウム空気電池。
    Figure 0007008196000010
    [式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は電子供与性を示す官能基であり、R1及びR2から選ばれる少なくとも1つが前記電子供与性を示す官能基である。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含み、前記鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。]
  2. 前記式(1)において、R1及びR2の両方が電子供与性を示す官能基である、請求項1に記載のリチウム空気電池。
  3. 前記電子供与性を示す官能基が炭化水素基である、請求項1又は2に記載のリチウム空気電池。
  4. 前記炭化水素基の炭素数が1から3である、請求項3に記載のリチウム空気電池。
  5. リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、
    空気中の酸素を正極活物質として用いるように構成された正極と、
    前記負極と前記正極との間に配置された非水系リチウムイオン伝導体と、
    を備え、
    前記非水系リチウムイオン伝導体は、下記式(1)で表される化合物を含む、リチウム空気電池。
    Figure 0007008196000011
    [式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1から3の炭化水素基であり、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、スルホ基、硫酸基、アルコキシカルボニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリロイル基、ウレイド基、メルカプト基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1つを含み、前記鎖状又は環状の脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。]
  6. 前記炭化水素基がメチル基である、請求項3から5のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
  7. 前記式(1)において、R3及びR4のそれぞれが水素原子である、請求項1から6のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
  8. 前記非水系リチウムイオン伝導体における前記化合物の濃度が0.01mmol/リットル以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
  9. 前記非水系リチウムイオン伝導体における2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン及び2,6-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つの濃度が0.01mmol/リットル以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
  10. 前記非水系リチウムイオン伝導体は、テトラエチレングリコールジメチルエーテルをさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
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