JP7005272B2 - 切羽前方探査方法 - Google Patents
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Description
この切羽前方探査方法を図10に示している。この切羽前方探査方法では、複数の受振器がトンネル壁面付近に設けられ、切羽掘削のための発破や掘削ドリル等により生じ、切羽前方の不連続面に反射して戻ってくる波形を測定する。
このようにして切羽掘削により発生する発振点から振動を発生し、切羽前方の断層に反射してトンネルT内へ戻ってくる振動波を、トンネルTの壁面の複数の受振器Sで測定する。複数の発振点と複数の受振器Sの組み合わせから数多くの測定波を得る。
まず、発振点から受振点に伝播した直接波を利用してトモグラフィ解析を行う。受振点で測定された直接波のデータを格納したデータ収集装置は取り外され、パーソナルコンピュータに接続される。パーソナルコンピュータ上でデータ収集装置から読み出された直接波のデータに基づいてトモグラフィ解析を行う。トモグラフィ解析を行うことにより、発振点と受振点間の地盤の速度分布を算出する。トンネルTの地質状況と、発振点、受振点間の地盤の速度分布から切羽前方地盤の速度分布を仮定する。
次に、発振点と受振点を含む切羽前方に格子点を設定する。
続いて、仮定された速度分布を用いて、発振点から格子点で反射され受振点までの理論的伝播時間を算出する。
次いで、格子点毎に、該格子点を介する複数の前記受振点で測定された波形に対して、前記理論的伝送時間だけシフトさせ、この波形の振幅をすべて足し合わせる。
そして、足し合わせた波形の振幅に基づいて、振幅が正の値でその絶対値が大きい格子点を堅岩部として前記振幅が負の値でその絶対値が大きい格子点を弱層部として、地質を推定する手段と地質を推定する。
トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、中心にロックボルト挿通部を有するケース内に少なくともx方向、y方向及びz方向の3次元的方向の受振センサーを有する多成分受振センサーを配置してなる受振ユニットを用い、
前記受振ユニットの設置位置とするトンネルの坑壁面所定の位置にロックボルトを一端から打ち込み前記ロックボルトの他端を前記坑壁面上に受振ユニット取付部として残し、
前記受振ユニットを前記ロックボルト挿通部に前記坑壁面に打ち込んだ前記ロックボルトの前記受振ユニット取付部を通し、前記x方向の受振センサーをトンネルの軸方向に、前記y方向の受振センサーをトンネルの鉛直方向に、前記z方向の受振センサーを前記ロックボルトの軸方向となるようにして前記坑壁面上に設置した後、前記ロックボルトの前記受振ユニット取付部にナットを締め込むことにより、前記受振ユニットを前記坑壁面上に圧接して前記坑壁に一体的に設置することで、
少なくとも3方向の受振センサーをトンネルの孔壁面に固定し、
前記受振ユニットの各受振センサーにより前記坑壁を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを要旨とする。
この場合、複数のロックボルトを少なくともトンネルの坑壁の天端、左右側壁にそれぞれ坑壁面に対して直交させて打ち込み、複数の受振ユニットを少なくとも前記各ロックボルトを介してトンネルの坑壁の天端、左右側壁に圧接して設置することが好ましい。
この方法では、地震計として、少なくとも3方向の受振センサーをトンネルの孔壁面に固定し、各受振センサーにより坑壁を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。このようにすることで、複数の受振器を坑壁内部に埋設して反射波を計測する例えば手法3などのような従来の手法と3成分の反射波において概ね同様の計測特性が得ることができる。
そして、この方法では、地震計として、中心にロックボルト挿通部を有するケース内に少なくともx方向、y方向及びz方向の受振センサーを有する多成分受振センサーを配置してなる受振ユニットを用いる。そして、トンネルの坑壁面所定の位置にロックボルトを一端から打ち込み、ロックボルトの他端を坑壁面上に受振ユニット取付部として残す。このようにして受振ユニットをロックボルト挿通部に坑壁面に残したロックボルト他端の受振ユニット取付部を通し、x方向の受振センサーをトンネルの軸方向に、y方向の受振センサーをトンネルの鉛直方向に、z方向の受振センサーをロックボルトの軸方向となるようにして坑壁面上に設置し、ロックボルトの受振ユニット取付部にナットを締め込むことにより、受振ユニットを坑壁面上に圧接して坑壁に一体的に設置して、少なくとも3方向の受振センサーをトンネルの孔壁面に固定する。
したがって、この方法によれば、トンネル坑内に地震計を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置することができ、しかも、このような地震計のトンネル坑壁面上への簡易な設置でありながら、従来の手法と同様に、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況を精度よく推定することができる。
図1、図2及び図3に第1の実施の形態を示している。
図1に示すように、この切羽前方探査方法(以下、手法1という。)は、弾性波反射法を利用したもので、トンネルT内に地震計1を設置し、トンネルT内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を地震計1により受振し、反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する。
ロックボルト2は、受振ユニット12Uの設置位置とするトンネルTの坑壁面所定の位置にロックボルト2の一端から打ち込み、ロックボルト2の他端の一部(この場合、3cm程度)を坑壁面上に受振ユニット取付部21として残しておく。受振ユニット12Uは中心のロックボルト挿通部10に坑壁Wに打ち込んだロックボルト2の受振ユニット取付部21を通し、x方向の受振センサー12をトンネルTの軸方向に、y方向の受振センサー12をトンネルTの鉛直方向に、z方向の受振センサー12をロックボルト2の軸方向となるようにしてトンネルTの坑壁Wの坑壁面上に設置した後、ロックボルト2の受振ユニット取付部21にナット3を締め込むことにより、坑壁Wに反力を取って、受振ユニット12Uを坑壁面上に圧接して坑壁Wに一体的に設置する。そして、この受振ユニット12Uの各受振センサー12に通信ケーブルを介して又は無線により記録装置を接続し、この記録装置を受振ユニット12Uの近傍に設置する(図示省略)。
各波形データのデータ処理、解析では、図3に示すように、受振ユニット12Uの各受振センサー12で捉え、記録装置に記録した各地震波の各波形データから特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動の波形(最初の波長(1波長目))と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。そして、この計測結果より、切羽前方の地質境界面を推定する。
図7に示すように、手法1、3の3成分(x方向、y方向、z方向)の波形データには図示のような特徴が見られ、100Hz付近に中心周波数があることが分かる。手法1では、この100Hzを中心周波数として20-250Hzくらい(好ましくは50-200Hzくらい)をターゲットとする。
図8に示すように、x方向、y方向及びz方向の各計測波形から、手法1により取得したトンネルT内の坑壁面の挙動と手法3により取得した坑壁W(岩盤内部(深部))の挙動が低周波(20-250Hz)の領域で同じような動きが見られ、とりわけ、手法1の計測波形の初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)と手法3の計測波形の初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)に同じような波形が取れていることが分かる。この最初の1波長はP波であり、手法1の波形でも手法3の波形でも同じ揺れ方をし、この後に続く後続波の波形にはS波や表面波が混在されているが、後続のP波も同じ動きを取り、反射波のP波成分、つまり、一次反射波もまた同じ動きをするものと考えられる。そこで、この手法1では、特に地震波の1波長目にくるP波を前方探査のソースとする。
このように手法1による計測波形は手法3による計測波形に比べて遜色がなく、手法1によっても、手法3と概ね同様の、3次元的な指向性を持った計測が可能であることを確認した。
そして、この手法1では、特に、受振センサー12の設置アンカーに支保工に使用するロックボルト2を利用するので、手法3など従来の手法に比べて準備作業を簡易に短時間で行うことができ、また、施工設備を利用して計測するため、測定しやすく安価である。
また、トンネル切羽前方の地質境界面を3次元的に把握できるため、トンネルの掘削時に地質の変化が始まる部位(天端か踏前か、右側か左側か)を予測することができ、トンネルの掘削時の施工管理、安全管理に活用することができる。
図4に示すように、この切羽前方探査方法(以下、手法2という。)は、手法1と同様に、弾性波反射法を利用したもので、トンネルT内に地震計1を設置し、トンネルT内で地震波を発生させてトンネルTの切羽前方の地質境界面で反射した反射波を地震計1により受振し、反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する。
複数のロックボルト2は、各受振センサー13の設置位置とするトンネルTの坑壁Wの坑壁面所定の位置にそれぞれロックボルト2の一端から相互に異なる方向に打ち込み、ロックボルト2の他端側の一部を坑壁面上に残してロックボルト2の他端面を受振センサー取付部22とする。
各受振センサー13は、坑壁面に打ち込んだ各ロックボルト2の受振センサー取付部22にロックボルト2の長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付ける。ロックボルト2は後述するとおり長軸方向に振動しやすい性質を有することから、受振センサー13をロックボルト2の挿入方向の単成分センサーとして取り扱い、複数の受振センサー13を組み合わせることで、多成分受振センサーとして機能させることが可能である。そして、各受振センサー13に通信ケーブルを介して又は無線により記録装置を接続し、この記録装置をトンネルT内に設置する(図示省略)。
この手法2では、トンネル断面が探査範囲に対して十分小さく無視できる場合、反射波を3次元的に計測するには、図4(a)に示すように、複数のロックボルト2を少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁にそれぞれ坑壁面に対して直交又は斜交(好ましくは側壁に対して±45°方向に斜交)させて打ち込み、複数の受振センサー13を各ロックボルト2を介して少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁に設置することが好ましい。なお、ロックボルト2を坑壁面に斜交させて打ち込む場合は、ロックボルト2の一端(先端)を切羽方向に向けて打ち込むことが望ましい。また、図4(b)に示すように、3本以上の複数のロックボルト2をトンネルTの坑壁面の同一地点に各ロックボルト2を相互に直交させて打ち込み、複数の受振センサー13を各ロックボルト2を介してトンネルTの坑壁面の同一箇所に設置するようにしてもよい。このようにすることにより全体として多成分受振センサーとして取り扱うことが可能である。なお、この場合も、ロックボルト2を坑壁面にロックボルト2の一端(先端)を切羽方向に向けて打ち込むことが望ましい。
そして、各受振センサー13によりトンネルTの坑壁Wに打ち込まれた各ロックボルト2を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して各波形データから特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時(到来時間)から当該各反射波の走時差(到来時間の時間差)を算出し、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。
そして、第1の実施の形態と同様に、手法2、手法3によるx方向、y方向及びz方向の3成分の反射波の実際の計測データからバンドパスフィルタで20-250Hzの周波数帯の計測波形を取り出したところ、手法2では、x方向の成分、y方向の成分は適正に取れない結果となったが、z方向の波形データは手法3のz方向の波形データと概ね同様の動きが見られ、とりわけ、両手法2、3の計測波形の初動波形の最初の2分の1波長内の範囲に同じような波形が取れており、z方向の反応は適正に取れることが分かった。この初動波形はP波であり、手法2の波形でも手法3の波形でも同じ揺れ方をし、この後に続く後続波の波形にはS波や表面波が混在されているが、後続のP波も同じ動きを取り、反射波のP波成分、すなわち、一次反射波もまた同じ動きをするものと考えられる。そこで、この手法2では、特に地震波の2分の1波長目にくるP波を前方探査のソースとする。
このように手法2による計測波形はz成分については手法3による計測波形に比べて遜色がなく、ロックボルト2頭部の受振センサー13で、ロックボルト2の振動の伝播特性を使って、z方向(ロックボルトの長軸方向)の波形データを計測できることを確認した。
また、図4(b)に示すように、複数のロックボルト2を同一地点において異なる方向に打ち込む場合でも同様で、各反射波の各受振センサー13に到達する時間が違うので、この時間差から、各反射波の到来方向及び位置を求めることができる。この場合、例えば、切羽前方の右側に地質境界面があると見込まれるときは、複数のロックボルト2を右側の坑壁Wに集中してそれぞれ異なる方向に向けて打ち込み、各ロックボルト2の頭部に受振センサー13を取り付けておけば、各反射波の到来方向及び位置をより適切に求めることができる。また、この場合、各ロックボルト2をトンネルTの坑壁Wに切羽方向に向けて差し込むことで、より強い反応を取ることができる。
そして、この手法2においても、特に、受振センサー13の設置アンカーに支保工に使用するロックボルト2を利用するので、手法3など従来の手法に比べて準備作業を簡易に短時間で行うことができ、また、施工設備を利用して計測するため、測定しやすく安価である。
また、トンネル切羽前方の地質境界面を3次元的に把握できるため、トンネルの掘削時に地質の変化が始まる部位(天端か踏前か、右側か左側か)を予測することができ、トンネルの掘削時の施工管理、安全管理に活用することができる。
W 坑壁
1 地震計
10 ロックボルト挿通部
11 ケース
12 受振センサー(多成分受振センサー)
12U 受振ユニット
13 受振センサー(Z方向の単成分受振センサー)
2 ロックボルト
21 受振ユニット取付部
22 受振センサー取付部
3 ナット
Claims (2)
- トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、中心にロックボルト挿通部を有するケース内に少なくともx方向、y方向及びz方向の3次元的方向の受振センサーを有する多成分受振センサーを配置してなる受振ユニットを用い、
前記受振ユニットの設置位置とするトンネルの坑壁面所定の位置にロックボルトを一端から打ち込み前記ロックボルトの他端を前記坑壁面上に受振ユニット取付部として残し、
前記受振ユニットを前記ロックボルト挿通部に前記坑壁面に打ち込んだ前記ロックボルトの前記受振ユニット取付部を通し、前記x方向の受振センサーをトンネルの軸方向に、前記y方向の受振センサーをトンネルの鉛直方向に、前記z方向の受振センサーを前記ロックボルトの軸方向となるようにして前記坑壁面上に設置した後、前記ロックボルトの前記受振ユニット取付部にナットを締め込むことにより、前記受振ユニットを前記坑壁面上に圧接して前記坑壁に一体的に設置することで、少なくとも3方向の受振センサーをトンネルの孔壁面に固定し、
前記受振ユニットの各受振センサーにより前記坑壁を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを特徴とする切羽前方探査方法。 - 複数のロックボルトを少なくともトンネルの坑壁の天端、左右側壁にそれぞれ坑壁面に対して直交させて打ち込み、複数の受振ユニットを少なくとも前記各ロックボルトを介してトンネルの坑壁の天端、左右側壁に圧接して設置する請求項1に記載の切羽前方探査方法。
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