JP7000212B2 - 幹細胞の凍結保存液 - Google Patents

幹細胞の凍結保存液 Download PDF

Info

Publication number
JP7000212B2
JP7000212B2 JP2018046452A JP2018046452A JP7000212B2 JP 7000212 B2 JP7000212 B2 JP 7000212B2 JP 2018046452 A JP2018046452 A JP 2018046452A JP 2018046452 A JP2018046452 A JP 2018046452A JP 7000212 B2 JP7000212 B2 JP 7000212B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stem cells
cryopreservation solution
cells
cryopreservation
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018046452A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019154329A (ja
Inventor
祐太朗 山田
久成 米田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2018046452A priority Critical patent/JP7000212B2/ja
Publication of JP2019154329A publication Critical patent/JP2019154329A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7000212B2 publication Critical patent/JP7000212B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は幹細胞、特に霊長類の胚性幹細胞や多能性幹細胞を凍結保存するための溶液に関する。
胚性幹細胞(Embryonic Stem Cells、以下ES細胞)や人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cells、以下iPS細胞)を始めとする多能性幹細胞は、三胚葉系のすべてへ分化し得る能力(分化万能性)を持ち、再生医療や創薬研究においての応用が期待されている。
これらの細胞は、細胞培養時の雑菌による汚染や、細胞の変質を防止し、均一の品質の細胞を長期的かつ安定的に供給する目的で、細胞の凍結保存が行われている。
従来、動物細胞の凍結保存法には、主にガラス化法と緩慢凍結法の二種類の方法が用いられてきた。ガラス化法は疑似的なガラス状態で細胞を凍結保存する方法であり、例えばDAP213と呼ばれるジメチルスルホキシド(以下DMSO)、アセトアミド及びプロピレングリコールを高濃度で含有する凍結保存液に浸漬し、液体窒素等を用いて急速に冷却することで、水の結晶化を防ぎ、氷晶による細胞への傷害を抑制する保存方法である。しかしながら、ガラス化法は高濃度のDMSOやアセトアミドなどを含む凍結保存液に細胞を浸漬するため、凍結時および/または融解時の細胞への毒性が高く、そのために、例えば、細胞を凍結保存液に懸濁した後、数分以内に液体窒素保存容器に投入するなど迅速な凍結が必要であり、また、融解後も直ちに遠心分離し、保存液を除去する操作を行う必要があるなど、各操作に熟練を要する。また、一度に多数のサンプルを保存することは困難である。一方で緩慢凍結法は、ガラス化法に比べ低濃度の成分からなる凍結保存液に細胞を浸漬し、緩やかに冷却することで、氷晶の成長を押さえる凍結保存方法である。再生医療の分野では将来的により多数の細胞サンプルを一度に凍結することが求められていることから、本質的により細胞に対する毒性の低い凍結保護液を用いる緩慢凍結法の方が好ましい。
従来、緩慢凍結法の細胞凍結保存液には、DMSOを有効成分として添加したものが最も広く用いられてきた。多能性幹細胞に特化して開発された緩慢凍結法用の凍結保存液としては、例えば、STEM-CELLBANKER(日本全薬)、CP-5E(極東製薬)、CryostemTM Freezing Medium(STEMGENT)、などが挙げられる。
一方、幹細胞、なかでもES細胞やiPS細胞は、培地成分やストレスなどによって容易に未分化状態を逸脱して分化してしまう。凍結保存液に含まれるDMSOもこのような分化因子として働くことが懸念されている。DMSOを含まない比較データは開示されていないものの、例えば、10%DMSOを凍結保存液として用いた例で凍結保存後の未分化マーカー遺伝子の発現低下が報告されている(非特許文献1)。あるいは、培養中のマウスのES細胞にDMSOを添加した場合、エピジェネティックなDNAメチル化状態の変化が起こることも報告されている(非特許文献2)。DMSOを有効成分として添加した凍結保存液はこのような細胞の形質変化が懸念されるため、DMSOを含まない、本質的に未分化幹細胞の意図せぬ分化リスクを低減した凍結保存液の開発が求められている。
このような状況のなか、DMSOを含まない緩慢凍結法の凍結保存液として、いくつかの組成が提案されている。例えば、特許文献1では、DMSOを有しない凍結保存液として、エチレングリコール、ポリエチレングリコールを含む凍結保存液を提案している。また、特許文献2ではヒドロキシエチルスターチ(HES)4~8%(w/v)、DMSO4~6%(v/v)、エチレングリコール2~15%(v/v)を含む凍結保存液を評価している。また、特許文献3では、グリセロールを加えた凍結保存液を開示している。
特許文献1:特開2010-273549号公報
特許文献2:WO2013/187077号パンフレット
特許文献3:特開2016-73207号公報
非特許文献1:Katkov et al.、Cryobiology、2006、53(2)、pp.194-205
非特許文献2:Iwatani et al.、Stem Cells、2006、24(11)、pp.2549-2556
しかしながら、特許文献1には、1℃/分程度の降温速度による緩慢凍結法での実施可能性を記載しているものの、上記化合物が高濃度で含まれる細胞毒性の高い組成であり、緩慢凍結法による細胞保存が困難なことは明白である。
特許文献2は、DMSO濃度を従来の保存液(通常10%)より下げることにより、多能性幹細胞の意図せぬ分化のリスクを軽減する可能性について言及しているものの、本質的に毒性のあるDMSOを使用しており、依然として細胞の品質へのリスクは解消されておらず、また、長期的に問題ないことを何ら保障するものではない。
特許文献3の凍結保存液を用いた凍結保存は、グリセロールを混和する際に温度管理が必要であり、簡便な方法とは言えない。
上記のように、従来開発されてきた凍結保存液は十分な性能を有しているとはいえず、より凍結保存性がよく、また簡便な凍結操作が可能であり、かつDMSOを含まない細胞凍結保存液の開発が求められている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、幹細胞の緩慢凍結法に好適に用いられる凍結保存液であり、DMSOなどの細胞に対する毒性や分化誘発のリスクのある物質を含まず、凍結融解後幹細胞の未分化状態を維持し、凍結後の生存率を高く維持し、凍結融解後の増殖がよく、操作が簡便な凍結保存液、および凍結保存方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は以下を提供する。
(1) 培地成分と、低分子ポリオールと、糖類とを少なくとも含んでなることを特徴とする幹細胞の凍結保存液、
(2) 低分子ポリオールがエチレングリコールである上記(1)の幹細胞の凍結保存液、
(3) 培地成分としてナトリウム塩および/またはカリウム塩を少なくとも含むことを特徴とする上記(1)または(2)の幹細胞の凍結保存液、
(4) 培地成分がDMEM、DMEM/F-12、αMEM、EMEM、F-12、RPMI1640、D-PBSからなる群より選択される少なくとも1種類の培養用培地である上記(1)~(3)のいずれかの幹細胞の凍結保存液、
(5) 糖類が単糖、二糖、三糖、四糖のいずれか一種類以上である上記(1)~(4)のいずれかの幹細胞の凍結保存液、
(6) タンパク成分を含んでなる上記(1)~(5)のいずれかの幹細胞の凍結保存液、
(7) タンパク成分がアルブミンである上記(6)の幹細胞の凍結保存液、
(8) アルブミンが遺伝子組換え技術により製造されたアルブミンである上記(7)の幹細胞の凍結保存液、
(9) 幹細胞が多能性幹細胞である上記(1)~(8)のいずれかの幹細胞の凍結保存液、
(10) 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)または人工多能性幹細胞(iPS細胞)である上記(9)の幹細胞の凍結保存液、
(11) 多能性幹細胞が霊長類由来である上記(9)または(10)の幹細胞の凍結保存液、
(12) 多能性幹細胞がヒトiPS細胞である上記(9)~(11)のいずれかの幹細胞の凍結保存液、及び
(13) 幹細胞の凍結保存方法であって、上記(1)~(12)のいずれかの凍結保存液に幹細胞を懸濁し、凍結保存することを特徴とする幹細胞の凍結保存方法。
本発明の組成物によれば、解凍後の生存率及び増殖が良好となる細胞の凍結保存液及び細胞の凍結保存方法を提供することができる。また、凍結保存液にDMSOを含有しないことから、凍結保存時や復元培養時に細胞の未分化状態に与える悪影響を低減することができ、未分化状態を維持したまま細胞を凍結保存することができる。さらには、凍結保存液による毒性が低いことで作業時間の制約が緩和され、操作時の温度や時間に厳密な管理を必要としない。
図1は、市販凍結保存液と本発明の凍結保存液の凍結保存安定性効果の比較を示す図である。 図2は、本発明の凍結保存液組成の未分化マーカー遺伝子Oct3/4発現に及ぼす影響を示す図である。 図3は、本発明の凍結保存液組成にて凍結保存したiPS細胞の復元培養後コロニーのアルカリホスファターゼ染色の結果を示す図である。 図4は、本発明の凍結保存液組成にて凍結保存したiPS細胞の復元培養後コロニーを蛍光標識レクチンrBC2LCNで染色した結果を示す図である。 図5は、本発明の凍結保存液組成にて凍結保存したiPS細胞の増殖曲線を示した図である。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明における幹細胞とは、自己複製能を有し、別の細胞への分化能を有する細胞をいう。本発明の幹細胞には、その分化能力によって、生体を構成する全ての細胞種に分化可能な多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、全てではないが複数の種類の細胞に分化可能な多分化性幹細胞(multipotent stem cell)、特定の種類の細胞に分化可能な単能性幹細胞(unipotent stem cell)が含まれる。多能性幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)などが挙げられ、多分化性幹細胞としては、例えば間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞などが挙げられ、単能性幹細胞としては筋幹細胞等が挙げられるが、これらに限定するものではなく、好ましくは多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)である。また本発明の幹細胞はいずれの動物由来であってもよく、例えばマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ヒト、サル、チンパンジー等が挙げられるが、好ましくはヒト由来の幹細胞である。
本発明のiPS細胞は、フィーダー培養であってもフィーダーフリー培養であってもよい。
次に本発明における凍結保存液について説明する。
本発明における凍結保存液とは、保存したい細胞のペレットや細胞懸濁液に加える前の水溶液を指す。
本発明における凍結保存液には培地成分が含有されている。本発明における培地成分とは、好ましくは、少なくともナトリウム塩および/またはカリウム塩を含む動物細胞の培養・維持に供する水溶液のことをいう。ナトリウム塩および/またはカリウム塩としては、例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び前記の任意の混合物が挙げられるが、これに限定されない。ナトリウム塩、カリウム塩は水和物であってもよい。
本発明の培地成分は、ナトリウム塩、カリウム塩以外の無機塩を含んでいてよい。ナトリウム塩、カリウム塩以外の無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム塩;例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのマグネシウム塩が挙げられる。なお、上記のナトリウム塩ないしカリウム塩以外の無機塩も水和物であってよい。
本発明の培地成分は、さらに微量金属を含んでいてもよい。本発明の微量金属は、通常の培地に見出され得るいずれのものも含み、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、硫酸銅、硝酸銅、硫酸亜鉛などをさすが、これに限定されない。これらの微量金属もまた、水和物であってよい。
本発明の培地成分は更にアミノ酸を含んでいても良い。当該アミノ酸としては、例えば、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンが挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明の培地成分にはビタミン類が入っていてもよい。ビタミン類としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、ビオチン、パントテン酸、コリン、葉酸、ナイアシン、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、チミジン、ビタミンB12が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の培地成分にはグルコースが含まれていてよい。グルコース濃度は、例えば0.1g/L~4.5g/L(0.5mM~25mM)が細胞培養用途には好ましい。
上記のような培地成分としては、例えば、ダルベッコリン酸緩衝食塩液(D-PBS)やハンクス平衡塩溶液(HBSS)などの平衡緩衝液;例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle’s Minimum Essential Medium)、MEMαまたはα-MEM(Minimum Essential Medium alpha Modification)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、GMEM(Glasgow’s MEM)、Ham’s F-10、Ham’s F-12、Ham’s F-12K、RPMI-1640、199培地、L-15培地、マッコイ5A培地、MCDB培地(MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201)、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL-1066、Williams’medium E、Brinster’s BMOC-3 MediumやE8 mediumなどの細胞培養用培地が挙げられる。これらの細胞培養用培地は、市販培地を使用してもよく、例えば、リプロセル社製のReproFF、ReproFF2、Primate ES Cell Medium、ReproStem、ReproXF、StemFit AK02Nなどや、プロモセル社製のhPSC Growth medium DXFを用いてもよい。
本発明の培地成分は、好ましくは細胞培養用培地であり、より好ましくは成分既知の培地であり、更に好ましくはDMEM、EMEM、α-MEM等の一般細胞の培地であり、特に好ましくはDMEMである。
本発明の培地成分は、その凍結保存性が損なわれない範囲ならば、細胞培養の際に通常処方される濃度と同一または異なる濃度で本発明の凍結保存液に含有させることが可能である。例えば、DMEMであれば、その通常の処方に従った組成物が、本発明の凍結保存液の全量に対して、典型的には約10~90%(v/v)含有されるように、好ましくは約20~80%含有されるように、更に好ましくは約30~60%含有されるように添加され得る。言い換えれば、本発明の培地成分の含有量は、凍結保存液の全量を基準にして、前記の濃度(v/v%)であり得る。
また本発明における凍結保存液には、細胞培養用培地添加物として自体公知の添加剤が含まれていてもよい。添加剤は特に限定されないが、FGF2などの成長因子類、トランスフェリンなどの鉄源、グルタチオン、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体などの抗酸化剤、ペニシリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質、HEPESなどのpH調製剤、乳酸やプロピオン酸などの有機酸、リノレン酸などの脂肪酸、エタノールアミンやプトレシンなどのアミン類、メルカプトエタノールや3-メルカプト‐1,2-プロパンジオールなどの還元剤、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、プルランなどの増粘剤等、細胞培養用培地および/または凍結保存液に通常一般に配合される成分の1または複数との組成物としての形態であってもよい。
本発明の凍結保存液は、低分子ポリオールを含む。本発明の低分子ポリオールとは、炭素数1~5のポリオールであり、例えば、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3―プロパンジオール、グリセロール(1,2,3-プロパントリオール)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3,4-ブタンテトラオール(エリトリトール)、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオールが挙げられるがこれらには限定されない。好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールであり、より好ましくはエチレングリコールである。低分子ポリオールの濃度は好ましくは約1~25%(v/v)であり、より好ましくは約5~15%(v/v)である。
本発明の凍結保存液は糖類を含む。本発明における糖類は、好ましくは重合度が1~6の糖類であり、より好ましくは重合度1~4の糖類である。糖類は分子量分布を持っていてもよいが、好ましくは単一成分からなる糖である。糖類は環状構造でもよい。また、糖アルコールや他の糖誘導体(例えば、エステル化、カルボキシル化、リン酸化、アミノ化やN-アシル化誘導体など)も本発明の糖類に含まれ得る。糖類の例としては、以下のものを挙げることができる。
単糖類;アラビノース、アラビトール、アロース、アリトール、myo‐イノシトール、epi‐イノシトール、allo‐イノシトール、muco‐イノシトール、syllo‐イノシトール、1L-epi‐2-イノソース、エリトリトール、エリトロース、ガラクトース、ガラクチトール、キシリトール、キシロース、epi-クエルシトール、proto-クエルシトール、vivo-クエルシトール、グルコース、ソルボース、タガトース、フコース、プシコース、フルクトース、ピニトール、マンノース、ラムノース、リボース、等が挙げられるがこれらには限定されない。
二糖類;アガロビオース、アロラクトース、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトース、ガラクチノール、α―ガラクトシルグルコシド、キシロスクロース、キシロビオース、キトビオース、グルコシルキシルロシド、ゲンチオビウロース、ゲンチオビオース、コージビオース、シラビオース、スクラロース、スクロース、セロビオース、セロビオン酸、ソホロース、ツラノース、トレハルロース、トレハロース、トレハロサミン、ニゲロース、ネオトレハロース、ネオラクトース、パラチノース(イソマルツロース)、ヒアロビウロン酸、ビシアノース、プリメベロース、マルツロース、マルトース、マルチトール、マンノビオース、メリビウロース、メリビオース、ラクチトール、ラクツロース(ラクチュロース)、ラクトース、ラクトースジアミン、ラクトサミン、ラクトスクロース、ラクトビオン酸、ラミナリビオース、ルチヌロース、ルチノース、等が挙げられるがこれらには限定されない。
三糖類;イソマルトトリオース、エルロース(フルクトシルマルトシド)、4’-ガラクトシルラクトース、キトトリオース、グルコシルスクロース、グルコシルラクトシド、ケストース、ゲンチアノース、セロトリオース、セラギノース、テアンデロース、トリ‐N-アセチルキトトリオース、ニゲロトリオース、パノース、α―マルトシルグルコシド、マルトトリオース、マルトトリイトール、メレジトース(メレチトース)、ラクトスクロース、ラフィノース、等が挙げられるがこれらには限定されない。
四糖類;アカルボース、アガロテトラオース、キトテトラオース、スタキオース、テトラ‐N-アセチルキトテトラオース、ニストース、パノース、マルトテトラオース、α―マルトトリオシルグルコシド、環状マルトシルマルトース、環状ニゲロシルニゲロース、等が挙げられるがこれらには限定されない。
五糖類;セロペンタオース、マルトペンタオース、α―マルトテトラオシルグルコシド、イソシクロマルトペンタオース、ペンタ‐N-アセチルキトペンタオース、等が挙げられるがこれらには限定されない。
六糖類~八糖類;シクロデキストラン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ―シクロデキストリン、ヒアルロン酸四糖、ヒアルロン酸六糖、等が挙げられるがこれらには限定されない。
その他のオリゴ糖類;アガロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マルトシルシクロデキストリン、等が挙げられるがこれらには限定されない。
ただし、本発明において定義される「糖類」には、培地成分に含まれるグルコースは含まれない。糖類の濃度は、好ましくは0.1~500mMであり、より好ましくは、1~300mM、さらに好ましくは10~100mMである。糖類は単独でも、組み合わせであっても良い。
本発明の凍結保存液が低分子量タンパクを含むことも好ましい。本発明の低分子量タンパクは、分子量2万~10万のタンパクをいい、例えばアルブミンが挙げられる。アルブミンとしては、例えば、ウシ血清由来アルブミン、ヒト血清由来アルブミン、卵白アルブミンなど、天然から単離・精製されたものや、遺伝子組み換え技術により製造されたアルブミン(リコンビナントヒト血清アルブミン;rHSA)を挙げることができるが、異種由来成分の除去の観点から遺伝子組み換えアルブミンが好ましい。本発明の低分子量タンパク質の添加量は、0.01~50mg/mLが好ましく、1~20mg/mLがより好ましい。
本発明の凍結保存液は、フィルターや高圧蒸気、その他の方法により滅菌した後に使用することが好ましい。
本発明の凍結保存液は、接着細胞および/または浮遊細胞に対して、任意の方法にて混合され得る。この際、凍結保存液を加えた後の細胞の濃度が、典型的には、1×10~1×10個/mLとなり、好ましくは、1×10~1×10個/mLとなるように、本発明の凍結保存液を混合する。
細胞を懸濁した凍結保存液は0.01mL以上の任意の容量で保存しうるが、好ましくは0.01mL~50mLであり、より好ましくは0.05mL~20mLであり、さらに好ましくは0.1mL~5mLである。凍結保存に用いる容器は特に限定されないが、これらの容量を確保しうる汎用的なアンプルやチューブを用いることができる。
(凍結保存方法)
本発明の凍結保存は、以下の手法により実施され得るが、これに限るものではない。
本発明の凍結保存液は、細胞を懸濁したのち、例えば汎用的に用いられる極低温冷蔵庫を使用し、緩慢な凍結温度で-80℃まで冷却される。本発明における緩慢凍結とは、-0.5℃~-2℃/分を指し、好ましくは-1℃/分である。
緩慢凍結を実施するための形態としては、プログラムフリーザーを用いる方法、CoolCell(Biocision社)、Mr.Frosty(Nalgene社)、バイセル(日本フリーザー社)に挙げられる緩慢凍結容器を用いる方法、4℃、-30℃、-80℃と段階的に冷蔵・冷凍設備を変えていく方法、などが挙げられるが、これに限定されない。
上記のようにして-80℃まで冷却された、細胞を懸濁した凍結保存液を含むチューブは、所定の期間そのままの温度に維持したのち、-130℃以下の超低温冷凍庫、または液体窒素保存容器の気相、または同液相中に移送し保存されることが好ましい。例えば、好ましくは1週間以内、より好ましくは1日以内に-80℃から移送して、-130℃以下の超低温冷凍庫、または液体窒素保存容器の気相、または同液相中で保存することが挙げられる。
本発明の方法により凍結された幹細胞は、任意の方法で解凍できるが、急速に解凍することが好ましく、具体的には、約37℃程度の温浴、湯浴、ドライバスなどを用いて速やかに室温付近に加温することが例示できる。その後、当該凍結保存液は、当該細胞を培養するための培地に希釈し培養される。必要に応じて遠心分離やストレーナーなどにより、凍結保存液を除去しても構わない。
(凍結保存液の性能評価方法)
本発明の凍結保存液は、
(1)凍結融解後の生細胞または死細胞を特定の試薬(例えばCalsein-AMなどの生細胞を染色する試薬;例えば、トリパンブルー、アクリジンオレンジ、DAPI、エチジウムブロマイド、Propidium Iodideなどの死細胞を染色する試薬;例えば、クリスタルバイオレット、Hoechstなどの全細胞を染色する試薬;例えば、ブロモクロロインドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウムなどの細胞に発現する酵素活性により呈色する試薬)で染色、計数し、全細胞数のうち当該試薬で定義される生細胞の割合を計算する方法、およびこれらを蛍光強度、吸光強度、発光強度によって間接的に計算する方法(本明細書では「生細胞率」という。)、
(2)凍結融解後、再度所定の培地に播種・培養した後に、必要に応じて上記(1)の試薬を用いて染色し、例えば、細胞や細胞塊(クランプ)の形状、数、面積を光学顕微鏡などで観察して評価する方法、および/または、それらを蛍光強度、吸光強度、発光強度によって間接的に観測する方法(本明細書では、「凍結保存安定性」あるいは単に「保存安定性」ともいう。)、
(3)凍結融解後の上記(1)および/または(2)の時間的変化を見る方法(本明細書では「増殖性」という。)、
などの方法によって評価することが可能であるが、これに限らない。
本明細書における「分化」とは、細胞についての用語であり、特殊化していない細胞の機能および/または形態が特殊化することをいい、分化しない状態を維持している細胞を「未分化」であるという。分化に伴い、通常、多能性は減少または消失する。創薬や再生医療用途に用いる幹細胞においては、保存、継代、維持培養といったサイクルにおいて、未分化状態を維持し、かつ、所望の作業で意図的に所望の細胞へ分化させることが重要である。
細胞の未分化状態(多能性)の確認方法としては、iPS細胞を分化誘導させて確認する方法や、PCR法や免疫染色法により未分化細胞に特異的に発現している未分化マーカー遺伝子の発現を解析する方法、免疫不全マウスへ移植しテラトーマ(奇形腫)の形成を確認する方法などが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(凍結保存液の調製)
凍結保存液は、所定の全成分を混合後、孔径0.20μmのメンブレンフィルター(東洋濾紙社製)で無菌的に濾過した後に使用した。市販の滅菌済み凍結保存液(比較保存液)はそのまま使用した。
(細胞の培養)
ヒト多能性幹細胞として京都大学iPS細胞研究所より分譲された健常人由来ヒトiPS細胞株1231A3株を使用した。細胞の培養は、京都大学iPS細胞研究所の公開しているフィーダーフリーでの維持培養プロトコルCiRA_Ff-iPSC_protocol_JP_v140310(URL:http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/img/protocol/hipsprotocolFf_140311.pdf)に従った。具体的には、iMatrix-511(ニッピ社製)でラミニンコートした培養容器及びStemFit AK02N培地(味の素社製)にAntibiotic‐Antimycotic 100×(Thermo Fisher Scientific社製)を添加した培地を用い、37℃、5%CO条件下で培養した。
(細胞を懸濁した凍結保存液の調製)
細胞から培養培地を除去した後、D-PBS(-)(ダルベッコリン酸緩衝液、ナカライテスク社製)で1回洗浄し、D-PBS(-)で2倍に希釈したTrypLE Select(Thermo Fisher Scientific社製)を添加した。37℃で12分間インキュベートした後、D-PBS(-)で1回洗浄し、10μMのY-27632(ROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤、和光純薬社製)を含むStemFit AK02Nを添加して細胞を剥離・シングルセル化した。100×g、5分間遠心分離し、上清を除いた後、StemFit AK02Nに懸濁し、トリパンブルー染色を行い細胞数をカウントした。細胞懸濁液を再度100×g、5分間遠心分離した後、上清を除き、1.0×10 Live cells/mLとなるように細胞を凍結保存液に懸濁し、0.3mLずつクライオチューブに分注した。クライオチューブはCoolCell(Biocision社製)に入れた状態で-80℃フリーザーに移し、約1℃/分の冷却速度で細胞を凍結させた。必要に応じて、24時間経過後、液体窒素中にクライオチューブを移送した。
(凍結保存安定性の評価方法)
凍結保存液の保存安定性評価は、凍結融解後に培養容器底面に定着した生細胞を蛍光染色することにより評価した。
凍結保存したクライオチューブをフリーザーから取り出し、37℃ウォーターバス中にて湯浴し、速やかに融解した。融解した液を、10μMのY-27632を含むStemFit AK02Nで10倍に希釈し、iMatrix-511でコーティングされた96ウェルプレートに播種した後、37℃、5%COの条件下で培養した。6時間~1日培養後、培地上清を除き、Calsein-AMを終濃度2μg/mLとなるようにD-PBS(-)に溶解した染色液を96ウェルプレートに100μL分注した。37℃で96ウェルプレートを保温しながら、0および30分の蛍光強度(Ex:480nm、Em:525nm)を蛍光プレートリーダー(infinite200Pro、Tecan社製)で測定し、蛍光強度の増分を算出した。Calsein-AMは、生細胞でのみ加水分解され蛍光を発するため、蛍光強度は、生細胞数に比例する。従って、保存安定性は、上記操作による蛍光強度の増分に基づいて評価した。
[実施例1]
(糖類との組み合わせによる効果)
エチレングリコール(和光純薬社製)、アルブミン(CultureSure(登録商標) BSA、和光純薬社製)、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、1.0g/L Glucose、ナカライテスク社製)、及び各種糖類(D(+)-グルコース(和光純薬社製)、D-マンノース(和光純薬製)、myo-イノシトール(和光純薬製),D(-)-ソルビトール(和光純薬製)、D(-)-マンニトール(和光純薬製)、スクロース(和光純薬製)、トレハロース二水和物(林原製)、ネオトレハロース(林原製)、α-ガラクトシルグルコシド(林原製)、マルトース(林原製)、マルチトール(林原製)、イソマルトース(林原製)、ツラノース(林原製)、D(+)-ラフィノース五水和物(和光純薬製)、α-マルトシルグルコシド三水和物(林原製)、グルコシルラクトシド(林原製)、スタキオース水和物(東京化成工業製)、α-マルトトリオシルグルコシド(林原製)または環状ニゲロシルニゲロース五水和物(林原製)を混合して凍結保存液を調整し、上記手法にて凍結保存液の保存安定性評価を実施した。凍結保存液の組成と保存安定性評価の結果を表1に示した。
表1に示すように、糖類の添加により、非添加の組成B3と比べて凍結保存安定性の向上を示すことが確認された。
Figure 0007000212000001
(市販の凍結保存液との凍結保存安定性の比較)
本発明による保存液組成と市販の凍結保存液であるSTEM-CELLBANKER(比較保存液1、日本全薬社製、DMSOを含有する緩慢凍結保存用保存液)およびCell Reservoir One DMSO Free(比較保存液2、ナカライテスク社製、DMSOを含有しない緩慢凍結保存用保存液)の凍結保存安定性を比較した。保存安定性評価の結果を図1に示した。本発明による凍結保存液組成は、市販の凍結保存液を上回る凍結保存安定性を示した。
[実施例2]
高い凍結保存安定性を示した実施例1の凍結保存液組成において、未分化マーカー遺伝子の発現維持効果を下記の手法で確認した。
iPS細胞(1231A3株)を10μMのY-27632を含むStemFit AK02N(味の素社製)で1日培養後、STEM-CELLBANKER(比較保存液1;DMSOを含有する市販の凍結保存液)若しくは表1に示す組成E15、E16、E18及びE19のいずれかの凍結保存液10%(v/v)又はall-trans-レチノイン酸(和光純薬社製)100nMを含むStemFit AK02Nにて4日間培養した。
培養後の細胞を回収し、全RNAをillustra RNAspin Mini(GEヘルスケア社製)で抽出した。抽出したRNAからPrimeScript RT Reagent Kit(タカラバイオ社製)を用いてcDNAを合成した。定量PCRは、SYBR Premix Ex Taq II Tli RNaseH Plus(タカラバイオ社製)及びCFX96 Real-Time PCR System(Bio-Rad社製)により行った。mRNA量はglyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)のmRNA量を内部標準遺伝子として定量した。定量PCRに用いたOct3/4、GAPDHの各遺伝子のプライマー配列は以下の通りである。
Figure 0007000212000002
尚、all-trans-レチノイン酸は、iPS細胞の分化誘導剤として知られており、分化誘発の測定を明確にするため添加した。本実験系においてall-trans-レチノイン酸濃度100nMのみの添加では、Oct3/4の低下を示さない。
凍結保存液を添加せずに培養された細胞のOct3/4発現量に対する相対発現量を図2に示す。DMSOを含有する比較保存液1を添加して培養した場合には未分化マーカー遺伝子Oct3/4の発現が減少したのに対し、実施例の凍結保存液を添加した場合にはいずれも発現を維持していた。以上の結果より、本発明による凍結保存液はDMSOを含む凍結保存液に比べて、曝露されても未分化マーカー遺伝子発現への影響が少なく、意図しない分化を誘発するリスクがないもしくは低いことが示された。
[実施例3]
(凍結後細胞の未分化状態の維持)
アルカリホスファターゼ染色及びレクチン染色により、凍結融解後の細胞の未分化状態の維持を確認した。24時間-80℃にて凍結保存したクライオチューブをフリーザーから取り出し、37℃ウォーターバス中にて湯浴し、速やかに融解した。融解した凍結保存細胞液をiMatrix-511でコーティングされた12ウェルプレートに播種し、37℃、5%COの条件下で5日間培養した。アルカリホスファターゼ染色は培養した細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定後、Alkaline Phosphatase Substrate Kit VI<BCIP/NBT>(Vector Labratories社製)で染色した。レクチン染色は蛍光標識rBC2LCN(和光純薬社製)を用いて染色した。アルカリホスファターゼ染色の結果を図3、レクチン染色の結果を図4に示す。組成E15、E16、E18、E19のいずれの凍結保存液で凍結保存した細胞も凍結融解後に未分化状態を維持していた。
[実施例4]
(解凍後の細胞の増殖性)
24時間-80℃にて凍結保存したクライオチューブをフリーザーから取り出し、37℃ウォーターバス中にて湯浴し、速やかに融解した。融解した凍結保存細胞液50μLをiMatrix-511でコーティングされた6ウェルプレートに播種し、37℃、5%COの条件下で培養した。培養4、6日目に細胞を酵素処理により剥離回収し、血球計算盤にて細胞数を計測した。結果を図5に示す。組成E15、E16、E18、E19のいずれの凍結保存液を用いた場合でも比較保存液1、2と比べて良好な細胞増殖が認められた。
[実施例5]
<凍結保存液の毒性評価>
従来用いられているガラス化法凍結保存液は細胞毒性が高く、迅速な凍結および融解操作を要求されていることから、凍結保存液への浸漬による細胞への毒性を評価した。比較例として、市販の緩慢凍結保存液である比較保存液1、2に加えて、ガラス化法にて一般的に用いられる凍結保存液DAP213 (Generation of Human induced Pluripotent Stem Cells、CiRA M&M March 5, 2009)(比較保存液3)及び特許文献1記載のDMSOを含有しないガラス化凍結保存液組成VS2E(比較保存液4)を用いた。DAP213はDMSO 2M、アセトアミド 1M、プロピレングリコール 3M(それぞれ和光純薬社製)となるようにDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、1.0g/L Glucose)に希釈して調製した。VS2Eはエチレングリコール40%(v/v)、ポリエチレングリコール(PEG#1,000、ナカライテスク社製)10%(w/v)となるようにユーロコリンズ液に希釈して調製した。ユーロコリンズ液は、D(+)-グルコース34.95g/L、リン酸水素二カリウム7.4g/L、リン酸二水素カリウム2.05g/L、塩化カリウム1.12g/L、炭酸水素ナトリウム0.84g/L(それぞれ和光純薬社製)となるように純水に希釈して調製した。
前記の(細胞を懸濁した凍結保存液の調製)の項に記載した方法に準じて、iPS細胞(1231A3株)を凍結保存液に懸濁後、2時間25℃にて静置した。その後、実施例2記載の凍結保存性評価と同様の方法にて、生細胞の残存度合いを蛍光強度により評価した。評価結果を表2に示す。
表2に示す通り、本発明による凍結保存液組成に浸漬した細胞は浸漬2時間後もコントロール(培養用培地に浸漬)比80%以上の生存が維持されていた。一方で、ガラス化法保存液組成である比較保存液3または4への浸漬は細胞の生存への影響が著しく、浸漬2時間後には細胞の生存はほぼ認められなかった。以上の結果より、本発明による凍結保存液は細胞毒性が相対的に低いことから、作業時間の制約が緩和され、凍結操作および融解操作の温度や時間に厳密な管理を必要としないことが示された。
Figure 0007000212000003
本発明の凍結保存液を用いれば、未分化状態を維持したまま幹細胞を凍結保存することができ、その後、融解した幹細胞を効率よく増殖させることができる。さらに、保存液の細胞への毒性が高く、迅速な凍結操作および融解作業を要求されるガラス化法を用いないことから、厳密な作業時間管理を要求されず細胞を保存することができ、大量の保存ストックを作成する場合にも利用できる。さらには、DMSOを凍結保存液に使用しないことにより、凍結保存液成分が幹細胞の未分化状態に与える影響を低減できるため、凍結保存液の除去作業を必ずしも必要とせず、より簡便な解凍作業が可能となる。したがって、本発明の凍結保存液は再生医療や創薬の分野での細胞凍結保存に好適に利用できる。

Claims (12)

  1. 培地成分と、低分子ポリオールと、糖類とを少なくとも含んでなることを特徴とする幹細胞の凍結保存液であって、該凍結保存液はジメチルスルホキシドを含まず、前記糖類はα-マルトシルグルコシド、グルコシルラクトシド、α-マルトトリオシルグルコシドおよび環状ニゲロシルニゲロースからなる群から選択される一種以上である、前記凍結保存液
  2. 低分子ポリオールがエチレングリコールである請求項1に記載の幹細胞の凍結保存液。
  3. 培地成分としてナトリウム塩および/またはカリウム塩を少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2に記載の幹細胞の凍結保存液。
  4. 培地成分がDMEM、DMEM/F-12、αMEM、EMEM、F-12、RPMI1640、D-PBSからなる群より選択される少なくとも1種類の培養用培地である請求項1~3のいずれか一項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  5. タンパク成分を含んでなる請求項1~のいずれか一項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  6. タンパク成分がアルブミンである請求項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  7. アルブミンが遺伝子組換え技術により製造されたアルブミンである請求項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  8. 幹細胞が多能性幹細胞である請求項1~のいずれか一項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  9. 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)または人工多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  10. 多能性幹細胞が霊長類由来である請求項またはに記載の幹細胞の凍結保存液。
  11. 多能性幹細胞がヒトiPS細胞である請求項10のいずれか一項に記載の幹細胞の凍結保存液。
  12. 幹細胞の凍結保存方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の凍結保存液に幹細胞を懸濁し、凍結保存することを特徴とする幹細胞の凍結保存方法。
JP2018046452A 2018-03-14 2018-03-14 幹細胞の凍結保存液 Active JP7000212B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018046452A JP7000212B2 (ja) 2018-03-14 2018-03-14 幹細胞の凍結保存液

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018046452A JP7000212B2 (ja) 2018-03-14 2018-03-14 幹細胞の凍結保存液

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019154329A JP2019154329A (ja) 2019-09-19
JP7000212B2 true JP7000212B2 (ja) 2022-01-19

Family

ID=67994549

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018046452A Active JP7000212B2 (ja) 2018-03-14 2018-03-14 幹細胞の凍結保存液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7000212B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021193606A1 (ja) * 2020-03-27 2021-09-30 株式会社大塚製薬工場 アカルボース及びデキストランを含む哺乳動物細胞保存用液
JP7266892B2 (ja) * 2020-11-16 2023-05-01 株式会社アビー 細胞凍結保存液、凍結細胞保存方法、及び細胞凍結方法
CN113881622B (zh) * 2021-09-30 2023-12-15 齐国光 一种干细胞的保存运输方法
CN117898229A (zh) * 2024-03-19 2024-04-19 三亚热带水产研究院 一种华贵栉孔扇贝人工受精方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012217342A (ja) 2011-04-04 2012-11-12 Bio Verde:Kk 多能性幹細胞その他の分散浮遊可能な細胞用の凍結保存液および凍結保存法
JP2013110988A (ja) 2011-11-25 2013-06-10 Sumitomo Chemical Co Ltd 多能性幹細胞由来の組織の凍結保存方法
WO2013187077A1 (ja) 2012-06-15 2013-12-19 極東製薬工業株式会社 幹細胞保存媒体、幹細胞保存方法および幹細胞保存システム
US20150175955A1 (en) 2013-12-19 2015-06-25 FertiPro N.V. Cryopreservation tools and methods
JP2016059290A (ja) 2014-09-16 2016-04-25 三菱製紙株式会社 動物細胞のガラス化凍結保存方法
WO2018005802A1 (en) 2016-06-29 2018-01-04 The General Hospital Corporation Ice nucleation formulations for cryopreservation and stabilization of biologics
JP2019528765A (ja) 2016-10-04 2019-10-17 トランスウェル バイオテック カンパニー リミテッド 細胞の凍結保存のための組成物および方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012217342A (ja) 2011-04-04 2012-11-12 Bio Verde:Kk 多能性幹細胞その他の分散浮遊可能な細胞用の凍結保存液および凍結保存法
JP2013110988A (ja) 2011-11-25 2013-06-10 Sumitomo Chemical Co Ltd 多能性幹細胞由来の組織の凍結保存方法
WO2013187077A1 (ja) 2012-06-15 2013-12-19 極東製薬工業株式会社 幹細胞保存媒体、幹細胞保存方法および幹細胞保存システム
US20150175955A1 (en) 2013-12-19 2015-06-25 FertiPro N.V. Cryopreservation tools and methods
JP2016059290A (ja) 2014-09-16 2016-04-25 三菱製紙株式会社 動物細胞のガラス化凍結保存方法
WO2018005802A1 (en) 2016-06-29 2018-01-04 The General Hospital Corporation Ice nucleation formulations for cryopreservation and stabilization of biologics
JP2019528765A (ja) 2016-10-04 2019-10-17 トランスウェル バイオテック カンパニー リミテッド 細胞の凍結保存のための組成物および方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019154329A (ja) 2019-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7000212B2 (ja) 幹細胞の凍結保存液
JP5835853B2 (ja) 細胞保存用水溶液
Katenz et al. Cryopreservation of primary human hepatocytes: the benefit of trehalose as an additional cryoprotective agent
Ji et al. Cryopreservation of adherent human embryonic stem cells
JP7006943B2 (ja) 間葉系細胞及び間葉系幹細胞の凍結保存用溶液、凍結物、及び凍結保存方法
US20050106554A1 (en) Cryopreservation of pluripotent stem cells
TW201816107A (zh) 用於細胞冷凍保存的組合物和方法
Fuller et al. Biopreservation of hepatocytes: current concepts on hypothermic preservation, cryopreservation, and vitrification
CA3046169C (en) Mammalian cell cryopreservation liquid
WO2014119219A1 (ja) 多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖を行うための培養方法
BR112015003253B1 (pt) método e solução de conservação de um ou mais embriões ou óvulos fertilizados de bovino
EP3685665A1 (en) Preservation of stem cells
WO2020149394A1 (ja) 細胞凍結保存液
JP2020162533A (ja) 細胞凍結保存方法、細胞凍結保存用組成物、および細胞凍結保存用培地
EP3035798B1 (en) Boron added cell cryopreservation medium
WO2020207152A1 (zh) 一种无血清冷冻保存液及其制备方法与应用
JP2008104407A (ja) 細胞保存方法
WO2023199641A1 (ja) 哺乳動物細胞凍結保存液
JP2022519784A (ja) 生物学的材料の凍結保存用組成物
TWI837281B (zh) 細胞冷凍保存液及細胞的漸凍方法
Chowdhury et al. Cryopreservation of Stem Cells
JP2022010480A (ja) 細胞凍結保存剤および細胞の凍結方法
JP2019110799A (ja) 動物細胞のガラス化凍結保存方法
PL237896B1 (pl) Pożywka zwłaszcza do hodowli komórek płazich i sposób hodowli komórek, tkanek i narządów płazich
UA108932U (uk) Спосіб збереження життєздатності сперміїв за кріоконсервування

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200924

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210831

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20211014

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211110

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211214

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211223

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7000212

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150