以下、添付図面を参照して、本願の開示する減圧乾燥装置および減圧乾燥装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<1.有機発光ダイオードの構成および製造方法>
先ず、有機発光ダイオードの構成の概略およびその製造方法について、図1~図3を用いて説明する。図1は、有機発光ダイオード500の構成の概略を示す模式断面図である。図2は、有機発光ダイオード500のバンク540の構成の概略を示す模式平面図である。図3は、有機発光ダイオード500の製造方法の主な工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、有機発光ダイオード500は、基板としてのガラス基板G(以下、「基板G」と記載する)上で、陽極510および陰極520の間に有機EL層530を挟んだ構造を有している。
有機EL層530は、陽極510側から順に、正孔注入層531、正孔輸送層532、発光層533、電子輸送層534および電子注入層535が積層されて形成される。
具体的には先ず、陽極形成処理(図3のステップS101)において、基板G上に陽極510が形成される。陽極510は、たとえば蒸着法を用いて形成される。なお、陽極510には、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極が用いられる。
つづいて、バンク形成処理(図3のステップS102)において、陽極510上にバンク540が形成される。バンク540は、たとえばフォトリソグラフィ処理やエッチング処理等によって、所定のパターンにパターニングされる。
図2に示すように、バンク540は、行方向および列方向に複数形成される。そして、バンク540の内部には、後述するように有機EL層530と陰極520が積層されて画素が形成される。バンク540には、たとえば感光性ポリイミド樹脂が用いられる。
つづいて、バンク540内の陽極510上に有機EL層530が形成される。具体的には、正孔注入層形成処理(図3のステップS103)において、陽極510上に正孔注入層531が形成される。そして、正孔輸送層形成処理(図3のステップS104)において、正孔注入層531上に正孔輸送層532が形成される。
そして、発光層形成処理(図3のステップS105)において、正孔輸送層532上に発光層533が形成される。なお、発光層533には、R色発光層(赤色発光層)、G色発光層(緑色発光層)およびB色発光層(青色発光層)が含まれる。
つづいて、電子輸送層形成処理(図3のステップS106)において、発光層533上に電子輸送層534が形成され、電子注入層形成処理(図3のステップS107)において、電子輸送層534上に電子注入層535が形成される。
本実施形態では、正孔注入層531、正孔輸送層532および発光層533はそれぞれ、後述する基板処理システム100において形成される。基板処理システム100では、インクジェット方式による有機材料の塗布処理、有機材料の減圧乾燥処理、有機材料の焼成処理が順次行われて、これら正孔注入層531、正孔輸送層532および発光層533が形成される。なお、正孔注入層531、正孔輸送層532および発光層533の形成については図4~図7B等を用いて後述する。
また、電子輸送層534および電子注入層535は、それぞれたとえば蒸着法を用いて形成される。
そして、陰極形成処理(図3のステップS108)において、電子注入層535上に陰極520が形成される。陰極520は、たとえば蒸着法を用いて形成される。なお、陰極520には、たとえばアルミニウムが用いられる。
そして、ステップS101~S108を経て形成された積層構造を大気中の水分等と遮断するため、封止処理が行われる(図3のステップS109)。
このような成膜工程~封止工程を経て製造された有機発光ダイオード500では、陽極510と陰極520との間に電圧が印加されることによって、正孔注入層531で注入された所定数量の正孔が正孔輸送層532を介して発光層533へ輸送される。
また、電子注入層535で注入された所定数量の電子が、電子輸送層534を介して発光層533へ輸送される。そして、発光層533内で正孔と電子が再結合して励起状態の分子を形成し、発光層533が発光することとなる。
<2.基板処理システムの構成>
次に、本実施形態に係る検査装置および減圧乾燥装置を備えた基板処理システム100の構成について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る基板処理システム100の構成の概略を示す模式平面図である。なお、図4では、検査装置200を分かり易く示すため、検査装置200を所定のパターンで塗りつぶして模式的に示している。
なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図4に示すように、基板処理システム100には、予め陽極形成処理およびバンク形成処理(図3のステップS101およびS102参照)を経て陽極510とバンク540が形成された基板Gが搬入される。そして、基板処理システム100では、図3のステップS103~S105に相当する各処理が行われ、基板G上に正孔注入層531、正孔輸送層532および発光層533が形成された後、電子輸送層形成処理(図3のステップS106参照)へ向けて搬出される。
図4に示すように、基板処理システム100は、搬入ステーション110と、処理ステーション120と、搬出ステーション130とを一体に接続した構成を有している。搬入ステーション110は、複数の基板GをカセットC単位で外部から搬入し、カセットCから処理前の基板Gを取り出す。
処理ステーション120は、基板Gに対して正孔注入層形成処理を行う正孔注入層形成ブロック121と、正孔注入層形成処理後の基板Gに対して正孔輸送層形成処理を行う正孔輸送層形成ブロック122とを備える。また、処理ステーション120は、正孔輸送層形成処理後の基板Gに対して発光層形成処理を行う発光層形成ブロック123を備える。
搬出ステーション130は、処理後の基板GをカセットC内に収納し、複数の基板GをカセットC単位で外部へ搬出する。
搬入ステーション110、正孔注入層形成ブロック121、正孔輸送層形成ブロック122、発光層形成ブロック123および搬出ステーション130は、X軸負方向からX軸正方向にこの順番で並べて配置される。
搬入ステーション110は、カセット載置台111と、搬送路112と、基板搬送体113とを備える。カセット載置台111は、複数のカセットCをY軸方向に一列に載置自在である。
搬送路112は、Y軸方向に延伸させて設けられる。基板搬送体113は、かかる搬送路112上を移動可能に、かつ、Z軸方向およびZ軸まわりに移動可能に設けられ、カセットCと処理ステーション120との間で基板Gを搬送する。なお、基板搬送体113は、たとえば基板Gを吸着保持しつつ搬送する。
処理ステーション120において正孔注入層形成ブロック121は、塗布装置121aと、バッファ装置121bと、減圧乾燥装置121cと、熱処理装置121dと、温度調節装置121eとを備える。
塗布装置121aは、基板Gに形成された陽極510上に正孔注入層531を形成するための有機材料を塗布する装置である。図5Aは、正孔注入層531を形成するための有機材料が塗布された基板Gを示す模式断面図である。
図5Aに示すように、塗布装置121aでは、インクジェット方式で基板G上の所定の位置、すなわちバンク540の内部に有機材料が塗布される。かかる有機材料は、正孔注入層531を形成するための所定の材料を有機溶媒に溶解させた溶液である。
図4に示すバッファ装置121bは、複数の基板Gを一時的に収容する装置である。減圧乾燥装置121cは、塗布装置121aで塗布された有機材料を減圧乾燥する装置である。
図5Bは、減圧乾燥装置121cにおいて減圧乾燥された基板Gを示す模式断面図である。図5Aと図5Bとの対比から分かるように、バンク540の内部に塗布された有機材料は、減圧乾燥により溶媒が除去され、よって膜厚が均一または略均一な正孔注入層531が陽極510上に積層された状態となる。
図4に示す熱処理装置121dは、減圧乾燥装置121cで乾燥された有機材料を熱処理して焼成する装置である。たとえば熱処理装置121dは、基板Gを収容可能なチャンバと、チャンバ内に配置された熱板(図示略)とを有し、熱板からの熱によって有機材料の焼成を行う。
温度調節装置121eは、熱処理装置121dで熱処理された基板Gを所定の温度、たとえば常温に調節する装置である。なお、正孔注入層形成ブロック121における塗布装置121a、バッファ装置121b、減圧乾燥装置121c、熱処理装置121dおよび温度調節装置121eの配置や個数は、任意に選択可能である。
また、正孔注入層形成ブロック121は、基板搬送領域CR1~CR3と、受渡装置TR1~TR3とを備える。基板搬送領域CR1~CR3は、たとえば搬送ロボットであり、それぞれ隣接して設けられる各装置へ基板Gを搬送する。
具体的には、基板搬送領域CR1は、かかる基板搬送領域CR1に隣接する塗布装置121aおよびバッファ装置121bへ基板Gを搬送する。また、基板搬送領域CR2は、かかる基板搬送領域CR2に隣接する減圧乾燥装置121cへ基板Gを搬送する。
また、基板搬送領域CR3は、かかる基板搬送領域CR3に隣接する熱処理装置121dおよび温度調節装置121eへ基板Gを搬送する。なお、基板搬送領域CR1~CR3にはそれぞれ基板Gを搬送する基板搬送装置(図示略)が、水平方向、鉛直方向および鉛直軸まわりに移動自在に設けられている。
受渡装置TR1~TR3はそれぞれ順に、搬入ステーション110および基板搬送領域CR1の間、基板搬送領域CR1およびCR2の間、基板搬送領域CR2およびCR3の間に設けられ、これらの間で基板Gを受け渡しさせる。
正孔輸送層形成ブロック122は、塗布装置122aと、バッファ装置122bと、減圧乾燥装置122cと、熱処理装置122dと、温度調節装置122eとを備える。塗布装置122aは、基板Gに形成された正孔注入層531上に正孔輸送層532を形成するための有機材料を塗布する。図6Aは、正孔輸送層532を形成するための有機材料が塗布された基板Gを示す模式断面図である。
図6Aに示すように、かかる塗布装置122aでは、インクジェット方式で基板G上の所定の位置、すなわちバンク540の内部に有機材料が塗布される。かかる有機材料は、正孔輸送層532を形成するための所定の材料を有機溶媒に溶解させた溶液である。
図4に示すバッファ装置122bおよび減圧乾燥装置122cについては、バッファ装置121bおよび減圧乾燥装置121cとほぼ同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
図6Bは、減圧乾燥装置122cにおいて減圧乾燥された基板Gを示す模式断面図である。図6Aと図6Bとの対比から分かるように、バンク540の内部に塗布された有機材料は、減圧乾燥により溶媒が除去され、よって膜厚が均一または略均一な正孔輸送層532が正孔注入層531上に積層された状態となる。
また、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eも、熱処理装置121dおよび温度調節装置121eとほぼ同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。ただし、正孔輸送層形成ブロック122では、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eの内部は、低酸素かつ低露点雰囲気に維持される。
ここで、低酸素雰囲気とは、大気よりも酸素濃度が低い雰囲気、たとえば酸素濃度が10ppm以下の雰囲気をいう。また、低露点雰囲気とは、大気よりも露点温度が低い雰囲気、たとえば露点温度が-10℃以下の雰囲気をいう。なお、かかる低酸素かつ低露点雰囲気は、たとえば窒素ガス等の不活性ガスを用いて維持される。
正孔輸送層形成ブロック122において、これら塗布装置122a、バッファ装置122b、減圧乾燥装置122c、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eの数や配置は、任意に選択可能である。
また、正孔輸送層形成ブロック122は、基板搬送領域CR4~CR6と、受渡装置TR5およびTR6とを備える。なお、正孔注入層形成ブロック121と正孔輸送層形成ブロック122との間は、受渡装置TR4を介して接続される。
ここで、基板搬送領域CR4~CR6および受渡装置TR4~TR6は、上述した基板搬送領域CR1~CR3および受渡装置TR1~TR3とほぼ同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
ただし、上記したように、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eの内部は、低酸素かつ低露点雰囲気に維持されるため、基板搬送領域CR6の内部もまた低酸素かつ低露点雰囲気に維持される。
また、かかる基板搬送領域CR6と基板搬送領域CR5とを接続する受渡装置TR6は、基板Gを一時的に収容し、内部雰囲気を切り替え可能に、すなわち低酸素かつ低露点雰囲気と大気雰囲気とを切り替え可能に設けられたロードロック装置として構成される。
発光層形成ブロック123は、塗布装置123aと、バッファ装置123bと、減圧乾燥装置123cと、熱処理装置123dと、温度調節装置123eとを備える。
塗布装置123aは、基板Gに形成された正孔輸送層532上に発光層533を形成するための有機材料を塗布する装置である。図7Aは、発光層533を形成するための有機材料が塗布された基板Gを示す模式断面図である。
図7Aに示すように、塗布装置123aでは、インクジェット方式で基板G上の所定の位置、すなわちバンク540の内部に有機材料が塗布される。かかる有機材料は、発光層533を形成するための所定の材料を有機溶媒に溶解させた溶液である。なお、図7Aにおいては、発光層533のR色発光層に符号533R、G色発光層に符号533G、B色発光層に符号533Bを付した。
図4に示すバッファ装置123bおよび減圧乾燥装置123cについては、上記したバッファ装置122bおよび減圧乾燥装置122cとほぼ同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
図7Bは、減圧乾燥装置123cにおいて減圧乾燥された基板Gを示す模式断面図である。図7Aと図7Bとの対比から分かるように、バンク540の内部に塗布された有機材料は、減圧乾燥により溶媒が除去され、よって膜厚が均一または略均一な発光層533が正孔輸送層532上に積層された状態となる。
上記した減圧乾燥装置121c,122c,123cには、それぞれ基板Gの乾燥状態を検出するための検査装置200が設けられる。これら減圧乾燥装置121c,122c,123cおよび検査装置200の詳細な構成については図8,9を参照して後述する。
図4の説明を続けると、バッファ装置123bおよび減圧乾燥装置123cについても、バッファ装置122bおよび減圧乾燥装置122cとほぼ同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
発光層形成ブロック123において、これら塗布装置123a、バッファ装置123b、減圧乾燥装置123c、熱処理装置123dおよび温度調節装置123eの数や配置は、任意に選択可能である。
発光層形成ブロック123は、基板搬送領域CR7~CR9と、受渡装置TR8~TR10とを備える。なお、正孔輸送層形成ブロック122と発光層形成ブロック123との間は、受渡装置TR7を介して接続される。
ここで、基板搬送領域CR7~CR9および受渡装置TR7~TR9は、上述した基板搬送領域CR4~CR6および受渡装置TR4~TR6とほぼ同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
受渡装置TR10は、基板搬送領域CR9および搬出ステーション130の間に設けられ、これらの間で基板Gを受け渡しさせる。なお、受渡装置TR10は、基板Gを一時的に収容し、内部雰囲気を切り替え可能に、すなわち低酸素かつ低露点雰囲気と大気雰囲気とを切り替え可能に設けられたロードロック装置として構成されることが好ましい。
搬出ステーション130は、カセット載置台131と、搬送路132と、基板搬送体133とを備える。カセット載置台131は、複数のカセットCをY軸方向に一列に載置自在である。
搬送路132は、Y軸方向に延伸させて設けられる。基板搬送体133は、かかる搬送路132上を移動可能に、かつ、Z軸方向およびZ軸まわりに移動自在に設けられ、処理ステーション120とカセットCとの間で基板Gを搬送する。なお、基板搬送体133は、たとえば基板Gを吸着保持しつつ搬送する。また、搬出ステーション130の内部は、低酸素かつ低露点雰囲気に維持されていることが好ましい。
また、基板処理システム100は、制御装置140を備える。制御装置140は、たとえばコンピュータであり、制御部141と記憶部142とを備える。記憶部142には、基板処理システム100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部141は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部142に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム100の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置140の記憶部142にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。なお、制御部141は、プログラムを用いずにハードウェアのみで構成されてもよい。また、制御装置140の具体的な構成については、図10を参照して後述する。
ところで、上記した減圧乾燥装置121c,122c,123cにおいて、乾燥が完了するまでの乾燥時間は、たとえば基板Gに塗布される有機材料の種類や量、基板Gの表面状態、形成される層の種類など種々の要因によって変わる。そのため、たとえば有機発光ダイオード500を量産するような場合、事前に最適な乾燥時間を設定する作業が必要となる。
従来技術では、多くのサンプルを作成し、作成されたサンプルの各層の膜厚や光学特性を計測することで、最適な乾燥時間を設定していたため、設定作業に時間がかかっていた。
そこで、本実施形態に係る減圧乾燥装置121c,122c,123cにあっては、基板Gにおいて有機材料が塗布された塗布領域の乾燥状態を検出する検査装置200を備えるようにした。そして、かかる検査装置200にあっては、基板Gの塗布領域を撮像するとともに、撮像された塗布領域の色濃度を計測し、計測された色濃度に基づいて塗布領域の乾燥状態を検出するようにした。
このように、減圧乾燥装置121c,122c,123cが、塗布領域の色濃度に基づいて乾燥状態を検出する検査装置200を備えることで、塗布領域の乾燥状態を早期に検出することができる。また、これによって最適な乾燥時間を設定する作業の効率化を図ることも可能になる。
<3.検査装置および減圧乾燥装置の構成>
以下、本実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置121c,122c,123cの構成について図8,9を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る減圧乾燥装置123cの構成を示す模式平面図であり、図9は、図8のIX-IX線模式断面図である。
なお、ここでは減圧乾燥装置123cを例にとって説明するが、減圧乾燥装置121c,122c,123cは、ほぼ同様の構成であるため、以下の説明は減圧乾燥装置121c,122cにも妥当する。
図8および図9に示すように、減圧乾燥装置123cは、チャンバ150と、基板保持機構160(図9参照)と、減圧機構170(図9参照)と、検査装置200とを備える。
チャンバ150は、内部を密閉可能な略直方体状の処理容器である。図9に示すように、チャンバ150には、基板保持機構160によって保持された基板Gなどが収容される。また、チャンバ150には、開口部151および窓部152が設けられる。具体的には、チャンバ150の天井部150aには、複数個の開口部151が設けられ、かかる開口部151にはそれぞれ窓部152が取り付けられる。
窓部152は、チャンバ150の外部から、撮像部11a~11c(後述)によってチャンバ150の内部の基板Gを撮像可能な程度の透光性を有するガラスである。なお、窓部152は、たとえば石英ガラスにより形成されるが、これに限定されるものではない。また、開口部151および窓部152の数や配置は、任意に選択可能である。
基板保持機構160は、保持部161と、支柱部162と、昇降部163とを備える。保持部161は、ステージである。詳しくは、保持部161は、複数枚の平板状の部材を備え、基板Gを載置して保持する。なお、図9に示す例では、平板状の部材を5枚としたがこれに限られない。また、保持部161を構成する平板状の部材は1枚でもよい。
支柱部162は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が昇降部163に接続され、先端部において保持部161を水平に支持する。昇降部163は、たとえば電動モータなどの駆動源であり、支柱部162および保持部161を鉛直方向に昇降させる。これにより、保持部161に保持された基板Gは昇降させられる。なお、昇降部163は、保持部161と同数であり、複数ある保持部161にそれぞれ接続されるが、図9では、図示の簡略化のため、昇降部163を1つのブロックで模式的に示した。
また、昇降部163による保持部161の昇降は、後述するように減圧乾燥処理時に行われるが、基板Gの搬入出時にも行われるようにしてもよい。すなわち、たとえば基板Gが基板搬送領域CR8(図4参照)から減圧乾燥装置123cへ搬入される場合、昇降部163は先ず、複数ある保持部161の一部(たとえば基板Gの中央部を保持する保持部161の両側にある保持部161)を下降させる。
そして、基板Gを載せた基板搬送装置のフォーク部(図示せず)は、下降した保持部161の上方の空間に挿し入れられ、その後フォーク部が下されることで、基板Gは、下降していない保持部161に載置されることとなる。次いで、フォーク部が引き抜かれ、昇降部163が下降させていた保持部161を元の位置まで上昇させると、図9に示すように、基板Gが保持部161によって保持された状態となる。
減圧機構170は、チャンバ150に接続され、チャンバ150の内部雰囲気をたとえば1Pa以下まで減圧する。なお、減圧機構170としては、たとえばドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを用いることができる。
検査装置200は、第1撮像ユニット210aと、第2撮像ユニット210bと、第3撮像ユニット210cとを備える。なお、撮像ユニットの数は、例示であって限定されるものではなく、2台以下または4台以上であってもよい。
第1~第3撮像ユニット210a~210cは、窓部152の近傍で、チャンバ150の外部に配置される。詳しくは、第1、第3撮像ユニット210a,210cは、基板Gの周縁部の上方に位置された窓部152の近傍に配置され、第2撮像ユニット210bは、基板Gの中央部の上方に位置された窓部152の近傍に配置される。
以下、第1撮像ユニット210aを例にとって説明するが、第1~第3撮像ユニット210a~210cは、ほぼ同様の構成であるため、以下の説明は第2、第3撮像ユニット210b,210cにも妥当する。なお、図8,9において、第2、第3撮像ユニット210b,210cの構成要素については、第1撮像ユニット210aと同じ構成要素には、同じ番号で末尾のアルファベットのみを変えた符号を付して説明を省略する。
第1撮像ユニット210aは、撮像部11aと、照明部12aと、焦点調整部13aとを備える。撮像部11aは、窓部152の上方に位置され、基板Gを撮像する、詳しくは基板Gにおいて有機材料が塗布された塗布領域(後述)を窓部152を介して撮像する。このように、チャンバ150に撮像用の窓部152を設けることで、簡易な構成でありながら、チャンバ150内の基板Gをチャンバ150の外側から撮像することができる。
また、撮像部11aは、基板Gの主面に対して撮像部11aの光軸が垂直となる向きに配置される。なお、撮像部11aとしては、たとえば長焦点レンズを有するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサカメラを用いることができるが、これに限られない。
照明部12aは、図示しない光源を有し、撮像部11aの側面に取り付けられる。照明部12aは、かかる光源から基板Gに対して撮像用の光を照射する。詳しくは、撮像部11aは、側面に取り付けられた照明部12aからの光を下方へ反射させるハーフミラー(図示せず)を備える。そして、ハーフミラーによって反射された照明部12aからの光は、基板Gの主面に対して垂直な方向、換言すれば、撮像部11aの光軸と同軸方向に入射して、撮像対象物たる塗布領域に照射される。このように、照明部12aは、いわゆる同軸照明とされるが、これに限定されるものではなく、たとえば、基板Gの塗布領域に対して斜め方向から光を照射させるようにしてもよい。
焦点調整部13aは、本体部14aと、スライド部15aとを備える。本体部14aは、チャンバ150の天井部150aに固定される。また、本体部14aの内部には、スライド部15aを駆動する駆動源(図示せず)が収容される。かかる駆動源としては、たとえば電動モータを用いることができる。
スライド部15aは、基端部が基板Gの主面に対して垂直な方向(Z軸方向)にスライド可能に本体部14aに取り付けられる。また、スライド部15aの先端部には、撮像部11aが固定される。
上記のように構成された焦点調整部13aには、図示しないケーブルを介して制御装置140(図4参照)が接続される。そして、制御装置140は、本体部14aの駆動源を制御することで、スライド部15aおよび撮像部11aを基板Gの主面に対して垂直な方向にスライドさせ、これにより撮像部11aの焦点を適宜に調整することができる。
上記したように、第1~第3撮像ユニット210a~210cは、ほぼ同様の構成である。したがって、以下では、撮像部11aや照明部12aについて、第1~第3撮像ユニット210a~210cを特に区別しない場合、末尾のアルファベットを省略して「撮像部11」や「照明部12」と記載することがある。
上記した撮像部11、照明部12、昇降部163および減圧機構170も、図示しないケーブルを介して制御装置140(図4参照)に接続され、それぞれの動作が制御される。
<4.制御装置の構成>
かかる制御装置140の構成について、図10を参照して詳しく説明する。図10は、制御装置140のブロック図である。なお、図10では、実施形態に係る検査装置200および減圧乾燥装置123cの特徴を説明するために必要な構成要素を機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
換言すれば、図10に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
さらに、各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUなどのプロセッサおよび当該プロセッサにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得るものである。
先ず、既に述べたように、制御装置140は、制御部141と記憶部142とを備える。制御部141は、記憶部142に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、たとえば図10に示す各機能ブロック141a~141hとして機能する。つづいて、かかる各機能ブロック141a~141hについて説明する。
図10に示すように、制御部141は、照明制御部141aと、撮像制御部141bと、画像取得部141cと、色濃度計測部141dと、判定部141eと、乾燥状態検出部141fと、減圧制御部141gと、昇降制御部141hとを備える。また、記憶部142は、たとえば、撮像画像情報142aと、パターン・位置情報142bと、所定範囲情報142cと、乾燥状態情報142dとを記憶する。
照明制御部141aは、照明部12を制御し、照明部12からの光を基板Gに向けて照射させる。撮像制御部141bは、撮像部11を制御して、減圧乾燥処理中の基板Gの撮像画像を撮像部11に撮像させる。
画像取得部141cは、撮像部11が撮像した撮像画像を取得して、撮像画像情報142aとして記憶部142へ記憶させる。図11は、撮像部11が撮像した撮像画像20の一例であり、撮像画像20の一部を拡大して示す模式拡大図である。
図11に示すように、撮像部11は、基板Gのバンク540およびバンク540の周辺領域を撮像する。なお、図11では、バンク540を1つだけ示したが、撮像部11は複数のバンク540を撮像してもよい。
また、図11に示す例では、基板Gに形成された発光層533のうち、G色発光層533G(図7A,7B参照)を撮像した撮像画像20を示している。すなわち、図11は、発光層形成ブロック123の減圧乾燥装置123cに設けられた撮像部11が撮像した撮像画像20を示している。なお、以下では、G色発光層533Gが形成された塗布領域21を例にとって説明するが、以下の説明は、R色発光層533RやB色発光層533Bが形成された塗布領域21にも妥当する。
バンク540の内部には、上記したように、G色発光層533Gを形成する有機溶剤が塗布されており、その有機材料が塗布された領域を、図11では「塗布領域21」として破線の閉曲線で示した。このように、撮像部11は、基板Gの塗布領域21を撮像する。
図10の説明に戻ると、色濃度計測部141dは、撮像画像情報142aを記憶部142から読み出し、撮像部11によって撮像された塗布領域21の色濃度を計測する。ここで、色濃度とは、撮像された塗布領域21を、赤色、緑色および青色の3原色についてそれぞれ0~255階調に数値化して表したものである。
なお、本実施形態では、赤色、緑色および青色の3原色のそれぞれを0~255階調(8ビット)に数値化して表したものを色濃度としたが、3原色のそれぞれの階調をイメージセンサカメラの性能に応じて、65536階調(16ビット)やそれ以上の階調に数値化して、色濃度として用いることもできる。
なお、撮像部11が複数のバンク540を撮像し、G色発光層533Gが形成された塗布領域21が複数ある場合、色濃度計測部141dは、たとえば、複数の塗布領域21の色濃度の平均値を計測するようにしてもよい。上記した平均値は、単純平均や加重平均など種々の平均値を適用することができる。また、G色発光層533Gが形成された塗布領域21が複数ある場合、上記した平均値を計測する例に限られず、色濃度計測部141dは、たとえば、複数の塗布領域21の中から代表する塗布領域21を一つ選択し、かかる塗布領域21の色濃度を計測してもよい。
また、色濃度計測部141dは、色濃度の計測の他に、パターン検索処理および位置情報取得処理も行う。パターン検索処理は、撮像された塗布領域21を有するバンク540のパターンの形状が、基板Gに形成されたパターンのうち、どのパターンの形状と一致するかを検索する処理である。また、位置情報取得処理は、検索処理によって一致するとされたパターンの基板Gにおける位置情報を取得する処理である。
詳しくは、記憶部142には、減圧乾燥処理が施される基板Gにおけるバンク540のパターン形状(以下「記憶パターン形状」という)、バンク540に形成される有機EL層530の種類、バンク540の位置情報などがパターン・位置情報142bとして予め記憶されている。
なお、上記で記憶される有機EL層530の種類の情報とは、たとえば正孔注入層531、正孔輸送層532や発光層533などの情報である。また、有機EL層530の種類の情報は、発光層533である場合、R色発光層533R、G色発光層533GおよびB色発光層533Bのいずれであるかの情報も含む。また、バンク540の位置情報は、たとえば、基板G上に設定された基準点(原点)に対するバンク540の相対的な位置を示すXY座標であるが、これに限定されるものではない。
パターン検索処理において色濃度計測部141dは、撮像された塗布領域21を有するバンク540のパターン形状を記憶パターン形状と比較し、一致する記憶パターン形状を検索する。そして、色濃度計測部141dは、検索により一致した記憶パターン形状を有するバンク540の有機EL層530の種類や位置の情報を、上記で計測された色濃度を示す情報と対応付けし、かかる情報を判定部141eへ出力する。
判定部141eは、色濃度計測部141dから出力された情報に基づき、塗布領域21の色濃度の変化を示す値、詳しくは色濃度の変化率を算出する。なお、上記した判定部141eでは、色濃度の変化を示す値として変化率を算出するようにしたが、これに限定されるものではなく、たとえば、色濃度の変化量などその他の値であってもよい。
ここで、減圧乾燥処理中の色濃度の変化と基板Gの塗布領域21の乾燥状態との関係について、図12を参照して説明する。図12は、減圧乾燥処理中に色濃度計測部141dによって計測された色濃度を示すグラフである。
なお、図12において、上から順に、破線のグラフは「赤色濃度30R」を、一点鎖線のグラフは「緑色濃度30G」、二点鎖線のグラフは「青色濃度30B」である。また、図12において、実線のグラフは、チャンバ150内の圧力値31である。なお、図12に示す例では、減圧乾燥処理を開始してから時刻T0経過後に、色濃度の測定を開始した。
発明者らは、減圧乾燥処理中の塗布領域21に対して色濃度の計測を行ったところ、塗布領域21の色濃度と塗布領域21の乾燥状態との間に相関関係があることを見出した。具体的に説明すると、たとえば、図12に示すように、減圧乾燥処理を開始し、時刻Taが経過すると、圧力値31の変化がなくなり、チャンバ150内は所定圧力に減圧された状態が維持される。
塗布領域21においては、所定圧力へ減圧される前で乾燥が始まったばかりのときは、色濃度が比較的大きく変化しているが、時刻Taが経過してからは時間の経過とともに、換言すれば、乾燥が完了する状態に近づくにつれて、色濃度が徐々に安定してくる。そして、たとえば、緑色濃度30Gにおいては、時刻Tbで値が安定し、塗布領域21の乾燥が完了した状態となる。
これは、塗布領域21において、減圧乾燥によって除去される溶媒の量が時間の経過とともに徐々に減っていき、色濃度の変化もなくなっていくためである。このように、塗布領域21の色濃度と、塗布領域21の乾燥状態との間には相関関係があることがわかる。
そこで、本実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cでは、塗布領域21の色濃度の変化率を算出し、算出された変化率に基づいて塗布領域21の乾燥状態を検出するようにした。
具体的には、図10に示す判定部141eは、色濃度の変化率を算出し、算出された色濃度の変化率が所定範囲内になったか否かを判定する、別言すれば、色濃度について変化がなくなって安定した値になったか否かを判定する。なお、上記した所定範囲は、乾燥の進行に伴う色濃度の変化が比較的小さくなって安定したと判定できるような値に予め設定され、記憶部142に所定範囲情報142cとして記憶されている。判定部141eは、判定結果を乾燥状態検出部141fへ出力する。
乾燥状態検出部141fは、判定結果に基づいて塗布領域21の乾燥状態を検出する、詳しくは、撮像部11によって撮像された塗布領域21の色濃度に基づいて塗布領域21の乾燥状態を検出する。より詳しくは、乾燥状態検出部141fは、判定部141eによって算出された変化率が所定範囲内になったと判定された場合、塗布領域21が乾燥した状態になったことを検出する。
乾燥状態検出部141fは、減圧乾燥処理を開始してから、乾燥した状態になったことが検出されるまでの時間(ここではたとえば時刻Tb)を「乾燥時間」として設定し、かかる乾燥時間を乾燥状態情報142dとして記憶部142に記憶させる。
なお、乾燥状態検出部141fは、上記した乾燥時間の他に、乾燥した状態となった塗布領域21が形成されたバンク540の有機EL層530の種類や位置情報なども乾燥状態情報142dとして記憶部142に記憶させる。
このように、乾燥状態検出部141fにあっては、塗布領域21の色濃度を利用することで、多くのサンプルを作成するような技術に比べて、塗布領域21の乾燥状態を早期に検出することができる。
また、上記したように、減圧乾燥装置123cに塗布領域21の乾燥状態を検出するための検査装置200を設け、検出された塗布領域21の乾燥状態に基づいて乾燥時間を設定するようにした。これにより、たとえば有機発光ダイオード500を量産する前に最適な乾燥時間を設定する作業を行う場合、多くのサンプルを作成することを要さず、設定作業の効率化を図ることが可能になる。
なお、上記した乾燥状態検出部141fにあっては、色濃度計測部141dによって計測された色濃度の全てに対して塗布領域21の乾燥状態を検出することを要しない。すなわち、乾燥状態検出部141fは、たとえば、塗布領域21の種類に応じて赤色濃度、緑色濃度および青色濃度の中から少なくとも一つの色濃度を選択するようにしてもよい。
詳しく説明すると、色濃度は、上記したように、赤色濃度、緑色濃度および青色濃度を含む。かかる3つの色濃度の時間経過に伴う変化の仕方は、塗布領域21の種類に応じてそれぞれ異なり、これら色濃度の変化は、乾燥状態の進行に伴う変化とも対応している。
そこで、乾燥状態の進行に伴う変化が顕著に表れる色濃度を予め実験等を通じて求めておき、乾燥状態検出部141fが、塗布領域21の種類に応じて赤色濃度、緑色濃度および青色濃度の中から少なくとも一つの色濃度を選択するようにしてもよい。
そして、乾燥状態検出部141fは、選択された色濃度に基づいて乾燥状態を検出するようにしてもよい。このように、乾燥状態検出部141fは、乾燥状態の進行に伴う変化が表れ易い色濃度を用いることで、塗布領域21の乾燥状態を正確に検出することが可能となる。なお、乾燥状態検出部141fによって選択される色濃度の数は、任意の値に設定することができる。
図10の説明を続けると、減圧制御部141gは、減圧機構170を制御し、減圧乾燥処理を行う。具体的には、減圧制御部141gは、乾燥時間の設定作業が終わった後、設定された乾燥時間、または設定された乾燥時間に所定時間を加えた時間に亘って減圧乾燥処理を行う。
昇降制御部141hは、昇降部163を制御し、保持部161を昇降させる。なお、昇降制御部141hは、乾燥時間の設定作業が完了した後に行われる減圧乾燥処理中、言い換えると、有機発光ダイオード500を量産する際に行われる減圧乾燥処理中、塗布領域21の乾燥状態に応じて昇降部163を制御するが、これについては図14を参照して後述する。
<5.検査装置および減圧乾燥装置の具体的動作>
次に、本実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cが実行する処理の内容について図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cにおいて、乾燥時間を設定する処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図13は、たとえば有機発光ダイオード500を量産する前に、最適な乾燥時間を設定するための処理手順を示している。そのため、図13に示す例では、塗布領域21の乾燥状態を予め設定された検出処理時間に亘って検出し続け、検出処理時間の経過後に乾燥時間を設定することとした。上記した検出処理時間は、塗布領域21が乾燥した状態になると予測される時間よりも十分に長い時間に設定されるものとする。
また、図13に示す各処理手順は、制御装置140の制御部141の制御に従って実行される。
以下詳明すると、図13に示すように、制御部141の撮像制御部141bは、基板Gにおいて有機材料が塗布された塗布領域21を撮像する(ステップS10)。なお、かかる撮像処理の前には、照明部12からの光が基板Gに向けて照射されているものとする。
次いで、色濃度計測部141dは、撮像した撮像画像において、塗布領域21を有するバンク540のパターンの形状を記憶パターン形状と比較し、一致する記憶パターン形状を検索する(ステップS11)。つづいて、色濃度計測部141dは、検索処理により一致した記憶パターン形状を有するバンク540の有機EL層530の種類や位置情報などを取得する(ステップS12)。
次いで、色濃度計測部141dは、撮像した撮像画像において、塗布領域21の色濃度を計測する(ステップS13)。つづいて、判定部141eは、塗布領域21の色濃度の変化率を算出し(ステップS14)、算出された色濃度の変化率が所定範囲内になったか否かを判定する(ステップS15)。
判定部141eは、色濃度の変化率が所定範囲内になったと判定した場合(ステップS15,Yes)、減圧乾燥処理が開始されてから、色濃度の変化率が所定範囲内になったと判定されるまでの時間を「乾燥時間」として算出する(ステップS16)。
なお、判定部141eは、色濃度の変化率が所定範囲内になっていないと判定した場合(ステップS15,No)、すなわち、色濃度が比較的大きく変化していると判定した場合、ステップS16の処理をスキップする。
次いで、乾燥状態検出部141fは、たとえば、判定部141eによって変化率が所定範囲内になったと判定された場合、塗布領域21が乾燥した状態になったことを検出し、乾燥した状態になったことを示す情報を出力し、記憶部142へ記憶させる(ステップS17)。また、乾燥状態検出部141fは、判定部141eの判定結果に関わらず、取得されたバンク540の有機EL層530の種類や位置情報や、計測された塗布領域21の色濃度などを乾燥状態を示す情報として出力し、記憶部142へ記憶させる。
つづいて、乾燥状態検出部141fは、上記した検出処理時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。乾燥状態検出部141fは、検出処理時間が経過していないと判定した場合(ステップS18,No)、ステップS10~S17の処理を繰り返す。
一方、乾燥状態検出部141fは、検出処理時間が経過したと判定した場合(ステップS18,Yes)、乾燥時間を設定する(ステップS19)。ここで設定される乾燥時間は、ステップS16で算出された乾燥時間と同じ値とされる。
このようにして、たとえば有機発光ダイオード500を量産する前に、最適な乾燥時間を設定するための一連の処理が完了する。そして、図示は省略するが、たとえば有機発光ダイオード500を量産する場合、減圧乾燥装置123cにあっては、ステップS19で設定された乾燥時間、または設定された乾燥時間に所定時間を加えた時間に亘って減圧乾燥処理を行うように構成される。なお、上記において乾燥時間に所定時間を加えたのは、たとえば仮に、塗布領域21の乾燥の進行が環境条件によって遅れた場合であっても、遅れた分の時間を所定時間で吸収し、塗布領域21の乾燥を確実に完了させるためである。
また、上記した減圧乾燥装置123cにあっては、塗布領域21の乾燥状態の検出を、乾燥時間を設定する作業の際に行うようにした。しかしながら、減圧乾燥装置123cにおいて、塗布領域21の乾燥状態の検出は、上記に限定されるものではない。
すなわち、たとえば、塗布領域21の乾燥状態の検出を、乾燥時間が設定された後の減圧乾燥装置123cでも行うように構成してもよい。たとえば、後述するように、基板Gの塗布領域21にあっては、基板Gの周縁部と中央部とでは、乾燥の速度が相違する。そこで、本実施形態においては、周縁部の塗布領域21および中央部の塗布領域21の乾燥状態を検出し、検出結果に基づいて基板Gを昇降させることで、乾燥の促進を図るようにしてもよい。
これについて図14を参照して説明する。図14は、周縁部の塗布領域21および中央部の塗布領域21のG色濃度を示すグラフである。なお、図14においては、第1撮像ユニット210aの撮像部11aで撮像された塗布領域21のG色濃度に符号41を付した。また、図14においては、第2撮像ユニット210bの撮像部11bで撮像された塗布領域21のG色濃度に符号42を付し、第3撮像ユニット210cの撮像部11cで撮像された塗布領域21のG色濃度に符号43を付した。すなわち、G色濃度41,43は、周縁部の塗布領域21のG色濃度であり、G色濃度42は、中央部の塗布領域21のG色濃度である。
図14に示すように、G色濃度41~43にあってはいずれも、減圧乾燥処理を開始して時刻T0経過後は、急峻に増加した後に減少に転じている。そして、3つのG色濃度41~43のうち、G色濃度41,43にあっては、時刻T1において、減少していた値が反転して増加しており、G色濃度42にあっては、時刻T1よりも遅い時刻T2において、減少していた値が反転して増加している。
かかる反転は、図7Aに示すように、バンク540の上面よりも上方に隆起していた発光層533が、乾燥によって下降してバンク540の上面よりも下方になった状態(図7B参照)のときにみられる事象である。なお、図7Bに示す状態になった直後の塗布領域21は、完全に乾燥した状態ではない。
上記したように、G色濃度41~43において反転するタイミングは、中央部の塗布領域21のG色濃度42が周縁部の塗布領域21のG色濃度41,43よりも遅くなっている。すなわち、中央部の塗布領域21は、周縁部の塗布領域21に比べて乾燥の速度が遅く、乾燥し難いことが分かる。
また、チャンバ150内においては、減圧機構170によって気流が生じるが、かかる気流の向きなどによっては、チャンバ150内には塗布領域21が乾燥し易い場所が存在することがある。
そこで、本実施形態に係る減圧乾燥装置123cでは、たとえば、塗布領域21の乾燥状態に応じて昇降部163を制御して保持部161を昇降させ、基板Gの高さを調整するようにしてもよい。
詳しくは、昇降制御部141hは、周縁部の塗布領域21のG色濃度41,43が反転した場合に、昇降部163を制御して保持部161を昇降させ、中央部の塗布領域21がチャンバ150内の乾燥し易い場所に位置するように、基板Gの高さを調整する。これにより、中央部の塗布領域21における乾燥の促進を図ることができる。
また、上記のように構成することで、中央部の塗布領域21の乾燥速度を周縁部の塗布領域21の乾燥速度に近づけることが可能になり、よって基板Gにおいて場所による乾燥むらが生じることを抑制することができる。
上述してきたように、第1の実施形態に係る検査装置200は、撮像部11と、乾燥状態検出部141fとを備える。撮像部11は、基板Gにおいて有機材料が塗布された塗布領域21を撮像する。乾燥状態検出部141fは、撮像部11によって撮像された塗布領域21の色濃度に基づいて塗布領域21の乾燥状態を検出する。これにより、基板Gにおいて有機材料が塗布された塗布領域21の乾燥状態を早期に検出することができる。
なお、上記では、乾燥状態検出部141fは、塗布領域21の1箇所の色濃度に基づいて塗布領域21の乾燥状態を検出するようにしたが、これに限られない。すなわち、乾燥状態検出部141fは、たとえば図11に想像線で示すように、塗布領域21のうちの複数箇所のポイント22の色濃度に基づいて乾燥状態を検出するようにしてもよい。
これにより、乾燥状態検出部141fは、たとえば、塗布領域21内の複数箇所のポイント22において色濃度の比較を行うことが可能となり、塗布領域21内で均一な乾燥となっているかを確認することもできる。
また、塗布領域21内の複数箇所のポイント22の色濃度の差も算出できるため、かかる差によって塗布領域21における膜厚分布を推定することもでき、結果として塗布領域21の乾燥状態に対する膜厚の変化を分析することも可能となる。
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cについて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第2の実施形態にあっては、撮像部の配置を変更するようにした。図15は、第2の実施形態に係る撮像ユニット310の撮像部311付近を示す模式拡大断面図である。
図15に示すように、第2の実施形態において、撮像部311は、基板Gの主面に対して撮像部311の光軸が斜めとなる向きに配置される。なお、撮像ユニット310の照明部312としては、第1の実施形態と同様、同軸照明のものを用いることができる。
また、撮像ユニット310は、補助照明部320をさらに備えるようにしてもよい。補助照明部320は、たとえば、撮像対象物たる塗布領域21の上方に配置され、基板Gに対して撮像用の光を照射する。なお、図15にあっては、理解の便宜のため、塗布領域21を破線の閉曲線で模式的に示した。
第2の実施形態にあっては、撮像部311を上記のように配置することで、第1の実施形態と同様に、塗布領域21の乾燥状態を早期に検出することができる。また、第2の実施形態にあっては、撮像部311を上記のように構成することで、塗布領域21を斜め上方から撮像することができる。斜め上方から撮像された塗布領域21の色濃度は、乾燥が進むにつれて比較的大きな変化を示すことがあるため、第2の実施形態では、塗布領域21の乾燥状態をより正確に検出することも可能となる。
また、第2の実施形態にあっては、斜め上方から撮像された塗布領域21の体積を求めるように構成し、塗布領域21の乾燥状態に対する体積の変動などを分析するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
次いで、第3の実施形態に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cについて説明する。第3の実施形態にあっては、図9に想像線で示すように、偏光フィルタ400を備えるようにした。これにより、塗布領域21の色濃度をより正確に計測でき、結果として正確な乾燥状態を検出することが可能となる。
以下詳説すると、偏光フィルタ400は、撮像部11と基板Gの塗布領域21(図11参照)との間に配置される。なお、図9では、図示の簡略化のため、撮像部11aと塗布領域21との間に配置される偏光フィルタ400のみを示し、撮像部11b,11cと塗布領域21との間に配置される偏光フィルタ400の図示を省略した。
ところで、照明部12の光は塗布領域21に照射され、塗布領域21で反射する。この塗布領域21から反射する光には、塗布領域21の内部まで到達して基板Gの上面で反射する「内部反射光」と、塗布領域21の内部まで到達せず塗布領域21の表面で乱反射する「表面反射光」とが含まれる。この乱反射した表面反射光は、撮像部11にとって外乱の要因となるため、可能な限り受光しないことが好ましい。
そこで偏光フィルタ400にあっては、撮像部11の光軸が通過する中心部では、上記した内部反射光の位相を有する光を通過させ、かかる中心部を取り囲む周辺部では、偏光の向きを直交させ、乱反射した表面反射光の位相を有する光を通過させないようにする。
これにより、撮像部11にあっては、乱反射した表面反射光の受光を偏光フィルタ400によって軽減することができ、表面反射光の影響を抑制することができる。したがって、第3の実施形態にあっては、塗布領域21の色濃度をより正確に計測でき、結果として正確な乾燥状態を検出することが可能となる。
(第1の変形例)
次いで、第1の変形例に係る検査装置200を備えた減圧乾燥装置123cについて説明する。
第1の変形例に係る減圧乾燥装置123cにあっては、図10に想像線で示すように、報知部410を備える。そして、減圧乾燥装置123cにおいて、乾燥状態検出部141fは、たとえば、色濃度の変化率が所定範囲内に収束した後に所定範囲を外れた場合、減圧乾燥装置123cに何らかの異常が生じた可能性があると推定し、報知部410を介してユーザへ報知する。
報知部410としては、ディスプレイやブザーなどを用いることができ、減圧乾燥装置123cに何らかの異常が生じたと推定された場合、たとえば異常発生を示すディスプレイ表示やブザー鳴動が行われる。これにより、減圧乾燥装置123cの異常をユーザに早期に認識させることが可能となる。
また、第1の変形例に係る減圧乾燥装置123cにあっては、図10に想像線で示すように、光測定器420を備えるようにしてもよい。光測定器420は、照明部12に設けられ、照明部12の光量を測定する。
光測定器420で測定された光量を示す情報は、照明制御部141aへ出力される。照明制御部141aは、たとえば、照明部12の光量が低下して、照明部12の劣化を検出した場合、報知部410を介してユーザへ報知する。
これにより、たとえば、照明部12の経年劣化により、塗布領域21の色濃度の正確な計測ができなくなる前に、照明部12をメンテナンスすることをユーザに促すことができる。すなわち、照明部12の経年劣化に起因して塗布領域21の色濃度の正確な計測ができず、塗布領域21の乾燥状態の検出精度が低下することを、事前に回避することが可能となる。
(第2の変形例)
次いで、第2の変形例について説明する。第2の変形例に係る減圧乾燥装置123cにおいては、照明部12から塗布領域21へ照射する光の波長を、計測される色濃度の種類に応じて変えるようにした。
詳しくは、色濃度計測部141dによって計測される塗布領域21の色濃度の値は、照明部12から照射される光の波長によって変わることがある。そこで、第2の変形例において、照明制御部141aは、計測される塗布領域21の色濃度の種類に応じて、乾燥状態の進行に伴う色濃度の変化が表れ易い波長を選択し、選択した波長の光を塗布領域21へ照射する。なお、照明制御部141aによって選択される波長は、たとえば実験等によって予め適正値を導出しておき、記憶部142等に記憶されているものとする。
これにより、乾燥状態検出部141fは、乾燥状態の進行に伴う色濃度の変化を正確に捉えることができ、結果として塗布領域21の乾燥状態を正確に検出することが可能となる。また、上記したように光の波長を変更することで、塗布されるインクへのダメージを軽減したり、より観察し易い撮像画像を取得したりすることも可能となる。
(第3の変形例)
次いで、第3の変形例について説明する。第3の変形例に係る減圧乾燥装置123cにあっては、撮像部11が、赤外線の透過率が比較的高い材質で製作された長焦点レンズを有する、赤外線イメージセンサカメラを備えるようにした。また、かかる場合、窓部152も赤外線の透過率が比較的高い材質を用いるようにした。
第3の変形例にあっては、赤外線イメージセンサカメラ(サーモビューアカメラなど)により、測定対象である基板Gの塗布領域21から放射される赤外線の強度を測定して塗布領域21の温度分布、温度イメージを観察することができる。また、かかる赤外線イメージセンサカメラ(サーモビューアカメラなど)を用いることにより、温度測定を高速かつ非接触で行うことができる。
そして、測定された塗布領域21の温度を乾燥状態情報142dとして記憶部142に記憶させるようにすれば、塗布領域21の乾燥状態に対する塗布領域21の温度変化を分析することも可能となる。
なお、上記した第1から第3の実施形態および第1から第3の変形例においてそれぞれ説明した各構成は、適宜に組み合わせることができる。すなわち、たとえば、第1の実施形態の構成に、第1の変形例の報知部410と、第2の変形例の照明部12の光の波長を変更する照明制御部141aとを組み合わせるようにしてもよい。
また、上記では、チャンバ150の天井部150aは、平面視において矩形状であり、窓部152および第1~第3撮像ユニット210a~210cを天井部150aの対角線上に沿って配置するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、窓部152および第1~第3撮像ユニット210a~210cを天井部150aに対してX軸方向やY軸方向に沿って配置するようにしてもよい。
また、上記のように構成することで、撮像画像情報142aには、塗布領域21の乾燥が進行していく過程を示す、連続的な撮像画像が含まれることとなる。これにより、たとえば、減圧乾燥装置121c,122c,123cの減圧乾燥処理の乾燥レシピを設定する際、連続的な撮像画像を解析することで、効率的に最適化することも可能となる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。