JP6999518B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents
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Description
本発明による燃料電池セルとは、燃料極と、固体電解質と、空気極とを少なくとも備えてなる、当業界において通常固体酸化物形燃料電池セルと分類または理解されるものと同一のものを意味する。また、本発明による燃料電池セルはこれを用いて当業界において燃料電池システムと理解され、また今後理解されるであろうシステムに用いることができる。また、本発明による燃料電池セルは、その形状も限定されず、例えば円筒状、板状、内部にガス流路を複数形成した中空板状などであってもよい。また、内側電極は支持体の表面に形成されていても良い。
本発明において、空気極は、ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物と硫黄元素とを含み、固体電解質側の表面から5μm以内の表面領域と、表面領域以外の領域である内部領域とから構成されており、表面領域に含まれる硫黄元素の含有量は、内部領域に含まれる硫黄元素の含有量よりも大きい。これにより、シャットダウン時の空気極の剥離を防止し、かつ高い性能を発揮可能な燃料電池を得ることができる。このような効果が得られる理由としては下記が考えられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
求めることができる。
空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物を構成する各元素の酸化物を準備し、ガラスビード法により成形し、標準試料を作製する。次に、この標準試料の特性X線のピーク強度を蛍光X線分析装置(XRF)により測定する。その後、これら標準試料の秤量値から算出される標準試料の組成量と、得られた特性X線のピーク強度とから検量線を作成する。
本発明において、燃料極は、上記の空気極とともに燃料電池セルを構成可能なものであれば特に限定されないが、例えば、NiO/ジルコニウム含有酸化物、NiO/セリウム含有酸化物などが挙げられる。ここで、NiO/ジルコニウム含有酸化物とは、NiOとジルコニウム含有酸化物とが、所定の比率で均一に混合されたものを意味する。また、NiO/セリウム含有酸化物とは、NiOとセリウム含有酸化物とが、所定の比率で均一に混合されたものを意味する。NiO/ジルコニウム含有酸化物のジルコニウム含有酸化物としては、例えばCaO、Y2O3、Sc2O3のうちの1種以上をドープしたジルコニウム含有酸化物などが挙げられる。また、NiO/セリウム含有酸化物のセリウム含有酸化物としては、一般式Ce1-yLnyO2(但し、LnはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Yのいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり、0.05≦y≦0.50)などが挙げられる。なお、NiOは燃料雰囲気下で還元されてNiとなるため、上述の混合物はそれぞれNi/ジルコニウム含有酸化物又はNi/セリウム含有酸化物となる。
本発明において、固体電解質は、上記の空気極とともに燃料電池セルを構成可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ランタンガレート系酸化物、固溶種としてY、Ca、Scのいずれか1種以上を固溶した安定化ジルコニアなどが挙げられる。固体電解質は、好適にはSr及びMgがドープされたランタンガレート系酸化物であり、より好適には一般式La1-aSraGa1-b-cMgbCocO3(但し、0.05≦a≦0.3、0<b<0.3、0≦c≦0.15)で表されるランタンガレート系酸化物(LSGM)である。本発明の一つの好ましい態様によれば、固体電解質と燃料極の間に、反応抑制層として、セリアにLaを固溶させたセリウム系酸化物(Ce1-xLaxO2(但し、0.3<x<0.5))を設けてもよい。反応抑制層は、好ましくはCe0.6La0.4O2である。
図1は本発明の固体酸化物形燃料電池セルの断面の一態様を示す模式図であり、内側電極を燃料極としたタイプについて示した。本発明における固体酸化物形燃料電池セル210は、例えば多孔質支持体201と、(第一/第二)燃料極202、(第一/第二)固体電解質203と、(第一/第二)空気極204と、集電層205から構成される。ここで、(第一/第二)とは、「単層又は二以上の層であって、二層の場合は第一層と第二層とを有する」ことを意味する。本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいて、各層の好ましい厚さは、多孔質支持体が0.5~2mm、燃料極が10~200μm、燃料極触媒層が0~30μm、反応抑制層が0~20μm、固体電解質が5~60μm、空気極触媒層が0~50μm、空気極が10~200μmである。
本発明において、空気極材料は、ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物を含む空気極材料において、ペロブスカイト型酸化物のAサイトに含まれる元素のモル数(A)と、ペロブスカイト型酸化物のBサイトに含まれる元素のモル数(B)との比がA/Bであり、A/Bが1.000<A/Bであることが好ましく、1.000<A/B比≦1.030であることがさらに好ましく、1.005≦A/B比≦1.015であることがさらにより好ましい。これにより、シャットダウン時における空気極の剥離を防止することができる。
空気極材料に含まれるペロブスカイト型酸化物を構成する各元素の酸化物を準備し、ガラスビード法により成形し、標準試料を作製する。次に、この標準試料の特性X線のピーク強度を蛍光X線分析装置(XRF)により測定する。その後、これら標準試料の秤量値から算出される標準試料の組成量と、得られた特性X線のピーク強度とから検量線を作成する。
本発明において、空気極材料は以下のように作製することが可能である。
ペロブスカイト型酸化物が所望の組成となるように、ペロブスカイト型酸化物に含まれる各元素の水溶性の硝酸塩を所定の割合で水に溶解する。これにNH4OHを添加してそれぞれの不溶性塩を共沈させ、沈殿を乾燥、焼成させることにより所望の組成を有するペロブスカイト型酸化物を有する粉末を得ることができる。
ペロブスカイト型酸化物が所望の組成となるように、ペロブスカイト型酸化物に含まれる各元素の金属酸化物の原料を秤量し、溶媒と混合する。その後、溶媒を除去し、得られた粉末を焼成し、粉砕することにより所望の組成を有するペロブスカイト型酸化物を有する粉末を得ることができる。
本発明による固体酸化物形燃料電池セルは、空気極に硫黄元素を含有させる以外は、公知の方法に準じて従って、適宜製造することができる。好ましい製造方法を示せば下記のとおりである。
本発明によれば、本発明による固体酸化物形燃料電池セルを備えた固体酸化物形燃料電池システムが提供される。図3は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池システムを示す構成図である。この図3に示すように、固体酸化物形燃料電池システム1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えてなる。
空気極用スラリーの作製
ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物として、表1に示すA/B比が1.001である(La0.6Sr0.4)1.001(Co0.2Fe0.8)O3の原料粉末と、硫黄化合物としてナトリウムジオクチルスルホサクシネートと、溶媒と、バインダーとを混合粉砕することにより空気極用スラリーを作製した。ナトリウムジオクチルスルホサクシネートは、焼成直後の空気極中の硫黄含有量が表1に示す量になるように空気極用スラリーに添加した。
NiO粉末と8YSZ(8mol%Y2O3-92mol%ZrO2)粉末とを重量比60:40で混合して、押し出し成形機にてせん断を加え1次粒子化させながら円筒状に成形し、900℃で仮焼して燃焼極支持体を作製した。この燃料極支持体上に、燃料極の反応を促進させる燃料極触媒層を形成した。燃料極触媒層は、NiOとGDC10(10mol%Gd2O3-90mol%CeO2)とを、重量比50:50で混合したものをスラリーコート法により燃料極支持体上に製膜し形成した。さらに、燃料極反応触媒層上にLDC40(40mol%La2O3-60mol%CeO2)、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2O3の組成のLSGMをスラリーコート法により順次積層し、固体電解質層を形成し、成形体を得た。得られた成形体を1300℃にて焼成した。その後、空気極用スラリーをスラリーコート法にて製膜し、1050℃で焼成することで固体酸化物形燃料電池を作製した。
得られた固体酸化物形燃料電池について、実体顕微鏡による外観検査を行い、空気極表面におけるクラックの有無を確認した。倍率100倍にて、燃料電池セルにおいて長軸方向における両端2箇所と中央部1箇所の計3箇所を確認し、1箇所でもクラックが確認された場合には×と評価し、それ以外は○と評価した。結果を表1に示す。
○:クラックなし
×:クラックあり
燃料電池セルを空気極と固体電解質との界面が含まれるように任意の面で切断した。この切断面を空気極と固体電解質との界面を含むように走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、2次電子像を取得した。この得られた2次電子像において、コントラストおよび多孔度の違いから固体電解質と空気極の界面を特定した。この固体電解質と空気極の界面から5μm以内の領域を空気極の空気極の表面領域とした。この切断面を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX、日立製作所製 SU8220)を用い、倍率5000倍において観察し、画像を得た。画像において、特定した空気極の表面領域を囲み、得られた信号強度を定量化することで、空気極の表面領域に含まれる硫黄元素の含有量を求めた。結果を表1に示す。
燃料電池セルにおいて、空気極の内部領域に該当する部分を削り取った。得られた空気極粉を、炭素硫黄分析装置(LECO社製CS844)を用いて分析することにより、空気極の内部領域に含まれる硫黄元素の含有量を求めた。結果を表1に示す。
空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物のA/B比は、作製した固体酸化物形燃料電池の空気極を削り取り、得られた空気極粉すべてをXRFにより分析し、得られた特性X線のピーク強度を得た。次に、検量線を以下の方法で作成した。空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物を構成する各元素の酸化物を準備し、ガラスビード法により成形し、標準試料を作製した。次に、この標準試料の特性X線のピーク強度を蛍光X線分析装置(XRF)により測定する。その後、これら標準試料の秤量値から算出される標準試料の組成量と、得られた特性X線のピーク強度とから検量線を作成した。固体酸化物形燃料電池セルの空気極から得られた特性X線のピーク強度と上記検量線とから空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物の各元素量(wt%)を求めた。これらから、ペロブスカイト型酸化物のAサイトに含まれる元素のモル数(A)、及びBサイトに含まれる元素のモル数(B)を求め、空気極のA/B比を得た。空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物のA/B比は、原料粉末を測定した結果と同じ値を得た。結果を表1に示す。
得られた固体酸化物型燃料電池セル(電極有効面積:35.0cm2 )を用いて発電試験を行った。燃料極の集電は、内側電極端子にAg線を外周に巻きつけ行った。空気極の集電も空
気極集電層にAg線を外周に巻きつけ行った。発電条件は、以下の通りとした。すなわち、燃料ガスは燃料(H2+3%H2O)とN2の混合ガスとし、燃料利用率は75%とした。また、酸化剤ガスは空気とした。測定温度は700℃ とし、電流密度0.2A/cm2での発電電位を測定した。セルの初期性能は表1に初期電位として示されるとおりであった。
燃料極支持体の両端部に集電体とガスシールを兼ね備えた導電性シール材を取付け、さらに前記燃料極の両端部に導電性シール材を覆うように内側電極端子を設け、燃料電池セルユニットを作製した。内側電極端子は燃料ガス流路となる燃料極支持体の内径より縮径し、前記セルのそれぞれの端部からセルの外方向に伸びる縮径部を有するものとした。前記燃料電池セルユニットを16本一組とし、燃料極と空気極を接続するコネクタで16本を直列につなぎスタック化した。前記スタックを10組搭載し160本を直列に接続し、さらに改質器、空気配管、および燃料配管を取付けた後にハウジングで囲み、固体酸化物形燃料電池モジュールを作製した。この燃料電池モジュールを、固体酸化物形燃料電池システムに組み込んだ。
燃料ガスを都市ガス13Aとし、燃料利用率は75%とした。また、酸化剤は空気とし、空気利用率は40%とした。S/C=2.25とした。発電定常温度は700℃とし、電流密度0.2A/cm2で運転した。
上述の定常温度で2時間運転したのち、燃料電池システムの電流、燃料ガス、空気、水の供給をほぼ同時に遮断する、シャットダウン停止により燃料電池システムを停止させた。その後、システム内のモジュールを取り出し、モジュール内の固体酸化物形燃料電池セル全数の外観を目視にて確認した。そして、燃料電池セルスタック内部位置するセルについては、セルスタックを解体し、1本毎に目視にて空気極が成膜されている部位のクラック有無を確認し、外観を以下の基準で評価した。また、評価が○のものについては浮きが発生した空気極の本数をカウントし、評価が×のものについては、剥離した空気極の本数をカウントした。
評価◎:100回以上のシャットダウン停止後も発電に支障がなく、空気極の剥離、セルの破損がない。
評価○100回未満のシャットダウン停止後も発電に支障がなく、空気極の剥離、セルの破損は見られなかったが、100回以上のシャットダウン停止で、空気極の剥離までは至らないものの、空気極に部分的な浮き(しわ)を確認した。
表1に示すA/B比を有する(La0.6Sr0.4)A/B(Co0.2Fe0.8)O3の原料粉末を用い、焼成直後の空気極中の硫黄含有量が表1に示す量になるように硫黄化合物としてナトリウムジオクチルスルホサクシネートを用いた以外は実施例1と同様に混合粉砕することにより空気極用スラリーを作製した。その後、実施例1と同様にして固体酸化物型燃料電池セルおよび燃料電池システムを作製した。そして、実施例1と同様の試験を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
実施例9および11、および比較例1で作製した固体酸化物型燃料電池セルの空気極に含まれる硫黄元素量を、グロー放電発光分析装置GD-OES(堀場製作所 GD-PROFILER2)を用いて測定した。具体的には、空気極の表面の任意の場所から固体電解質の内部まで厚み方向に分析し、グロー放電により生じる硫黄元素の発光プロファイルを得た。得られたプロファイルを図7に示す。横軸は時間を示し、縦軸は硫黄元素の発光強度を示す。なお、横軸の時間は空気極と固体電解質の厚みと対応している。また、図の中央付近にある点線は空気極と固体電解質の界面であり、左側が空気極(内部領域および界面領域)、右側が固体電解質である。
Claims (5)
- 空気極と、
燃料極と、
空気極と燃料極との間に形成される固体電解質とを有する固体酸化物形燃料電池において、
前記空気極は、
ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物と硫黄元素とを含み、
固体電解質側の表面から5μm以内の表面領域と、前記表面領域以外の領域である内部領域とから構成されており、
前記表面領域に含まれる硫黄元素の含有量は、前記内部領域に含まれる硫黄元素の含有量よりも大きい、固体酸化物形燃料電池。 - 前記表面領域に含まれる硫黄元素の含有量は50ppm以上28000ppm以下である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
- 前記ペロブスカイト型酸化物は、Aサイトにランタン(La)、Bサイトにコバルト(Co)または鉄(Fe)を含む、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。
- 前記硫黄元素は、硫酸ストロンチウム化合物として前記空気極に含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
- 前記硫黄元素は、硫黄とストロンチウムを含む化合物として前記空気極に含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
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