JP6997527B2 - ポリフェニレンサルファイド不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、不織布に関し、さらに詳しくは、ポリフェニレンサルファイド不織布に関する。
ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略す)繊維は、高い耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、難燃性を有し、非常に厳しい環境下で使用することができるという特徴がある。そのため、PPS繊維からなる不織布は、従来から工業薬品用のフィルターやバグフィルター、電池セパレータなどの用途に使用され、特に、耐熱性、耐薬品性が必要とされる過酷な環境下での使用が期待されている。
例えば、ゴミ焼却炉、石炭ボイラー、金属溶解炉などから排出されるダストを集じんするためのフィルターとしては、周知のように、バグフィルターが用いられてきた。
一般に、ダストを集じんする際には、集じん対象とする粉体をろ過布の表面層に一次堆積させることで粉体層を形成させて内部への粉体の侵入を防止し、一次層の粉体上で粉体を捕集した後、ろ過布内の内外圧を逆転させるなどしてろ過布本体を脈動させて捕集した粉体を払い落とす動作を繰り返している。加えて、バグフィルター濾材では、用途によっても違うが、排ガスの温度が150~250℃の高温であることから耐熱性を必要とする。
そこで、この温度雰囲気下の限られた空間内で、捕集効率を上げるために、特許文献1には、PPS繊維からなる不織布に樹脂を含浸させ、プリーツ加工することで濾過面積を増大させる方法が開示されている。しかしながら、生産工程が煩雑になり、生産効率が低下してコスト高となりやすいという問題や、加工時に不織布が伸びる必要のある形状は作れないため、生産できるフィルター形状の幅が狭い問題があった。
一方、従来から、自動車や建築用途などの吸音材などでは、使用部位の形状に合わせる必要があるため、成型性も併せ持つ不織布が求められ、特許文献2及び3には、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィン系ポリマーやポリスチレン系共重合体との混合ポリマーからなる繊維を用いた立体成型用不織布が開示されている。また、特許文献4には、ポリエチレンテレフタレート単体でも繊維の配向を制御し、熱処理をすることで優れた成型性を持つ不織布を作る方法が開示されている。しかしながら、これらの不織布は、自動車や建築用途などで高い耐熱性、難燃性、耐薬品性が求められる場合は、不十分であった。
以上のように、従来提案されているいずれの不織布も、各用途において求められている耐熱性、耐薬品性、難燃性、及び様々な形態への成型性、且つ生産性の全てを満たすことができなかった。
特許第4110628号公報 特開2003-301357号公報 特開2016-108706号公報 特開昭61-28062号公報
本発明が解決しようとする課題は、生産が容易で、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、成型性などの物理的特性に優れたポリフェニレンサルファイド繊維不織布を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定範囲の結晶化度と剛直非晶度との和を有するポリフェニレンサルファイド繊維不織布は、熱時の引張伸度が高く、熱成型性に優れることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
結晶化度と剛直非晶度との和が30%未満であり、かつ、150℃での引張伸度が50%以上である、ポリフェニレンサルファイド繊維不織布。
[2]
結晶化度が25%未満である、[1]に記載のポリフェニレンサルファイド繊維不織布。
[3]
熱接着または機械的交絡されている、[1]または[2]に記載のポリフェニレンサルファイド繊維不織布。
[4]
210℃、1500時間の条件下で行われた耐熱暴露試験後の引張強度低下率が5%以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維不織布。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維不織布を熱成型する工程を含む、ポリフェニレンサルファイド成型体の製造方法。
本発明のポリフェニレンサルファイド繊維不織布(以下、PPS不織布という)は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)の耐熱性、耐薬品性および難燃性の特性を有しながら、成型性に優れる。従って本発明のPPS不織布は、PPS樹脂の耐熱性、耐薬品性および難燃性の特性を有しながら、使用部位に適した形状への加工が可能なため、様々な産業用途への利用が可能となる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分とする繊維から構成される不織布であって、PPS本来の特性である耐熱性、耐薬品性、難燃性を保持し、かつ、成型性を大幅に改善したPPS不織布である。
尚、PPSを主成分とするPPS繊維とはPPS繊維を50質量%以上含む繊維をいう。さらに、PPS不織布にはPPS不織布以外の不織布を含んでいてもよい。
本実施形態に係るPPS不織布は、結晶化度と剛直非晶度との和が30%未満である。好ましくは、3~28%、特に好ましくは、7~26%であることが重要である。
本実施形態における結晶化度及び剛直非晶度とは、実施例で後述するように示差走査熱量計(DSC)による測定から求められるものである。
本発明で言う剛直非晶度とは、次式:
剛直非晶度[%]=100[%]-結晶化度[%]-可動非晶度[%]
に示すとおり、繊維を形成する結晶・非晶の全体(100%)から結晶化度[%]、可動非晶度[%]を差し引いた残りを言う。
ここで、本発明で言う可動非晶度とは、実施例で後述するように温度変調DSCによる測定から求められるものである。
本発明者らは、所望するような熱時伸度(後掲する150℃での引張伸度)を発現するためには、繊維の結晶構造以外にも剛直非晶構造が大きく影響していることを見出している。すなわち、剛直非晶は非晶でありながら熱に対する微細構造の動きやすさに関しては、結晶と類似した役割を果たしているものと考えられる。
従って、結晶化度と剛直非晶度との和が30%未満であり、好ましくは、3~28%、特に好ましくは、7~26%であるPPS不織布は、生産工程の熱接着ロールへ取られて破断してしまうことを防止できる。
また、本発明のPPS不織布は、結晶化度が25%未満であることが好ましい。より好ましくは、20%未満、特に好ましくは、5~15%であると、生産工程の熱接着ロールへ取られて破断してしまうことを防止でき、且つ150℃での熱時伸度が50%以上あるため、優れた成型性能を有する。
上記のように不織布の結晶構造と非晶構造が制御されたPPS不織布の150℃における伸度(熱伸度)は50%以上であり、そのため優れた成型性能を有する。熱伸度は60%以上であることがより好ましく、80%以上であるとさらに好ましい。上限は特に限定されないが、実質的には200%以下である。
PPS不織布の結晶化度と剛直非晶度の和を特定範囲にコントロールするためには、ポリマー条件、紡糸段階での紡糸速度、加熱、冷却、延伸条件を適正化することが重要である。特に、紡速と紡糸部での糸の冷却プロファイルをコントロールすることで、特定範囲の結晶化度と剛直非晶度の和を得ることができる。このコントロール方法は、本発明者らにより見出されたものであり、以下に詳細を記述する。
本実施形態において、PPS長繊維の紡糸速度は、3000~6000m/minが好ましく、より好ましくは3500~5000m/minであり、特に好ましくは3500~4000m/minである。紡糸速度が上記の範囲であると、熱時伸度の高い不織布が得られる。
また、本実施形態において、糸の冷却プロファイルのコントロールは、紡糸温度と吐出されたポリマーを冷却する冷風の風速で行われる。紡糸温度を比較的高く305℃以上、または冷風風速を低く0.5m/s以下に設定すると配向結晶化が進み難く、結晶化度の低い、熱時伸度の高い不織布を得ることができる。さらに、吐出直後は、徐冷で糸を細化し、細化完了後に急冷することで剛直非晶度を抑制することができ、結晶化度と剛直非晶度との和の小さい不織布を得ることができる。
本実施形態に係るPPS不織布は、その構造に特に限定はないが、スパンボンド不織布、SM積層不織布、SMS積層不織布、4層以上の多層構造不織布、短繊維不織布が挙げられる。なかでも、生産効率、高機能化の面から、スパンボンド不織布、SM積層不織布、SMS積層不織布、3層以上の多層構造不織布が好ましい。なお、Sはスパンボンド、Mはメルトブローを意味する。
本実施形態に係るPPS不織布において、後掲のウェブ同士の接合方式としては、熱接着方式、水流交絡法、ニードルパンチ法などが挙げられるが、生産効率の面から、熱接着方式が好ましい。また、熱接着は全面であっても部分的であってもよい。
本発明の不織布の目付としては、10~1000g/mが好ましい。目付を10g/m以上、より好ましくは100g/m以上、さらに好ましくは200g/m以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度の不織布を得ることができる。一方、フィルター等で使用する場合には、目付を1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、さらに好ましくは500g/m以下とすることにより、適度な通気性を有し、高圧損となることを抑制することができる。
本実施形態に係るPPS不織布は、空気中、210℃の温度で1500時間の耐熱暴露試験におけるたて引張強力保持率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であれば、高温下で長期間使用される耐熱性フィルター等の使用にも耐えうることができる。
本発明における熱接着は、1回のみ実施されることが、生産効率上、好ましい。ただし、熱時伸度の高い不織布を得るため、場合によっては、後加工により接着温度を段階的に変えて処理することもでき、このようなPPS不織布も本発明の範囲内である。
次に、本発明のPPS不織布を製造方法の一態様として、スパンボンド法での製法を説明する。
PPSポリマーの粘度は、荷重5kgおよび温度315.6℃の条件でASTM-D1238-82法で測定した溶融流れ(MFR)が、10~700(g/10min)の範囲のものが好ましく、より好ましくは50~500(g/10min)の範囲である。また、PPSポリマーは線状であることが好ましい。
MFRが上記の範囲であると、紡糸工程での繊維形成における変形追随性が良好で、糸切れが少なく、また、PPSポリマーの分子量が十分に高い為、実用上十分な強度の繊維が得られる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、PPSポリマーへ、原着や、酸化チタン、紫外線吸収剤や、熱安定剤、又は酸化防止剤等の任意の添加剤が添加されても良い。
紡糸工程の1例を挙げると、PPSポリマーを、通常の押出機で溶融した後、該溶融物を、計量ポンプを経て、温度が300~380℃である多数の細孔を有する紡糸口金に送り込み、溶融押出しして糸状物とし、その後、牽引装置(例えば、エジェクター装置)で延伸することにより、PPS繊維ウェブが得られる。このPPS繊維ウェブを、熱圧着ロールを用いて、連続的に熱接着によって一体化接合することにより、本発明のPPS不織布を得ることができる。
溶融紡糸する際の紡糸温度は、290~380℃が好ましく、より好ましくは300~370℃であり、特に好ましくは305~340℃である。紡糸温度が上記の範囲であると、安定した溶融状態で、斑および着色がなく満足し得る強度の繊維が得られる。用いる紡口口金の形状については特に制限はなく、円形、三角、多角形、扁平等のものを用いることが出来、通常は、ノズル直径が0.1~1.0mm程度の円形が好ましい。
所定の紡糸温度でノズルから押し出された溶融ポリマーは、エジェクター装置の出口から空気流と共に噴出されて、延伸フィラメント群となり、更に、その下方に設けられた移動式の多孔性の受器(例えば、金属製あるいは樹脂製の定速走行している網状物等)の上にウェブとして捕集される。
ここで、エジェクター装置とは、加圧空気による高速空気流を推進力として、溶融紡糸されたフィラメントを高速で引き取り、細化し、かつ該高速空気流にフィラメントを随伴させる機能を有する装置を言う。エジェクターから押し出されるフィラメントの速度、すなわち紡糸速度は、フィラメント単糸の細化結晶化の指標であり、低速に抑えることで結晶化を抑制し、熱時伸度の高い繊維が得られる。
紡糸速度は、3000~6000m/minが好ましく、より好ましくは3500~5000m/minであり、特に好ましくは3500~4000m/minである。紡糸速度が上記の範囲であると、熱時伸度の高い不織布が得られる。
この時、エジェクターから噴出されるフィラメント群が、固まりやすくかつ捕集されたウェブの広がりが狭く、シートとしての均一性および品位に欠けるような傾向にあるときには、特にフィラメントが相互に離れた状態で噴出されて捕集されるような工夫をすることが有効である。
このためには、例えば、エジェクターの下方に衝突部材を設け、衝突部材にフィラメントを衝突させて、フィラメントに摩擦帯電を起こさせて開繊させる方法、あるいは、エジェクターの下方で、コロナ放電により該フィラメントに強制帯電させて開繊させる方法などを用いることができる。
ウェブの捕集に際しては、フィラメント群に随伴して受器に当たる空気流のために、一旦堆積したウェブが吹き流されて乱れたものになる場合があり、この現象を防ぐためには、受器の下方から空気を吸引する手段を採用することが好ましい。PPS長繊維層は、単層でもよいし、複数層を重ねて用いることもできる。
上記のようにして得られたウェブを、連続的に熱接着して一体化接合することにより、本発明のPPS不織布を得ることができる。熱接着は、130~250℃の加熱下で圧着面積率が3%以上で行うことが好ましく、熱接着により繊維相互間の良好な接着を行うことができる。この場合の熱接着は短時間の瞬間的な熱付与であり、PPS繊維の結晶構造に変化を生じさせるものではない。
熱接着の方法としては、加熱した平板を用いて熱圧着することが可能であるが、一対のカレンダーロール間にウェブを通して熱圧着させる方法が生産性に優れているため好ましい。カレンダーロールの温度および圧力は、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められない点もあるが、より好ましい温度は130~250℃、圧着面積率は3%以上、圧力は少なくとも線圧が50N/cm以上であることが、得られる不織布の強度を図る上で好ましい。
カレンダーロールとしては、その表面が平滑なものや模様が彫刻されたもの(例えば、長方形型、ピンポイント型、織目柄、Y柄、ドンゴロス柄、ヘリンボン柄、四角形柄、横菱柄絣、斜絣柄)の使用、あるいは、これらの同種のローラーの組み合わせ、異種のローラーの組み合わせによる複数の回転ローラーの使用も可能である。熱圧着部の面積は、不織布の全面積に対して3%以上とすることが不織布の強度を良好に発揮させる上で好ましい。
本発明においての熱接着は、1回のみ実施されることが、生産効率上、好ましい。ただし、熱時伸度の高い不織布を得るため、場合によっては、低温結晶化温度以下で仮接着した後、定張熱セットのような後加工により低温結晶化温度以上で処理することもでき、このようなPPS不織布も本発明の範囲内である。仮接着の温度は、100~120℃が好ましく、熱セットの温度は、120℃~250℃が好ましい。
一方、ニードルパンチで機械的に交絡する場合は、針形状や単位面積当たりの針本数等を適宜選択、調整して実施される。特に単位面積当たりの針本数としては、強度や形態保持の点から少なくとも100本/cm以上とすることが好ましい。またニードルパンチ前の不織ウェブにシリコーン系の油剤を噴霧し、針で繊維が切断されることを防止し、繊維同士の交絡性を向上させることが好ましい。
また機械的交絡をウォータージェットパンチで実施する場合、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.05~3.0mmのノズルから圧力1~60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。不織ウェブを効率的に交絡し、一体化させるための圧力としては、少なくとも1回は10MPa以上の圧力で処理することが好ましく、15MPa以上がより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。
(1)溶融流れ量(MFR)
荷重5kg、荷重315.6℃の条件にて、ASTM-D1238-82法に準じて測定した。単位はg/10minである。
(2)繊維径
試料の任意の10ヶ所をマイクロスコープの倍率2500倍にて撮影して、50点の繊維の直径を測定し、それらの平均値を求めた。
(3)平均単繊維繊度(dtex)
ネット上に捕集した不織ウェブからランダムに小片サンプル10個を採取し、マイクロスコープで500~1000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ計100本の繊維の幅を測定し、平均値を算出した。単繊維の幅平均値を、丸形断面形状を有する繊維の平均直径とみなし、使用する樹脂の固形密度から長さ10,000m当たりの重量を平均単繊維繊度として、小数点以下第三位を四捨五入して算出した。
(4)紡糸速度(m/min)
繊維の平均単繊維繊度(dtex)と各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(g/min)(以下、単孔吐出量と略記する。)から、次式:
紡糸速度=(10000×単孔吐出量)/平均単繊維繊度
に基づき、紡糸速度を算出した。
(5)結晶化度(%)
生産後の不織布からランダムに試料3点を採取し、示差走査熱量計(TA Instruments社製、Q1000)を用いて、次の条件下で、以下の式:
結晶化度={〔(融解による吸熱量[J/g])-(冷結晶化による発熱量[J/g])〕/146.2[J/g]}×100
で表される結晶化度を算出し、平均値を算出した。上記の「冷結晶化による発熱量」とは冷結晶化に由来する発熱ピーク面積であり、「融解による吸熱量」とは融解に由来する吸熱ピーク面積である。熱量(ピーク面積)算出時のベースラインは、非晶のガラス転移後の液体状態と結晶の融解後の液体状態の熱流を直線で結んだものとし、このベースラインとDSC曲線の交点を境界として、発熱側と吸熱側を切り分けた。また、完全結晶時の融解熱量を146.2J/gとした。
・測定雰囲気:窒素流(50ml/分)
・温度範囲 :0~350℃
・昇温速度 :10℃/分
・試料量 :5mg
(6)可動非晶度(%)
生産後の不織布からランダムに試料3点を採取し、温度変調DSC(TA Instruments社製、Q1000)を用いて、次の条件下で、以下の式:
可動非晶度[%]=(ガラス転移温度前後の比熱変化量[J/g℃])/0.2699[J/g℃]×100
で表される可動非晶度を算出し、平均値を算出した。また、完全非晶時の比熱量を0.2699J/g℃とした。
・測定雰囲気:窒素流(50ml/分)
・温度範囲 :60~200℃
・昇温速度 :2℃/分
・試料量 :5mg
(7)剛直非晶度(%)
上記(5)で求めた結晶化度と上記(6)で求めた可動非晶度から、次式:
剛直非晶度[%]=100[%]-結晶化度[%]-可動非晶度[%]
にて剛直非晶度を算出した。
(8)不織布の目付(g/m
JIS L-1906に準じて測定した。
(9)不織布の引張強力
JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」中に記載される、6.3「引張強さ及び伸び率(ISO法)」の6.3.1「標準時」に準じ、サンプルサイズ5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分の条件でたて方向3点の引張試験を行い、サンプルが破断した時の強力をたて引張強力(N/5cm)平均値について小数点以下第三位を四捨五入して算出した。
(10)耐熱暴露試験とたて引張強力保持率
熱風オーブン(エスペック株式会社製、TABAI HIGH-TEMP OVEN PHH-200)を用い、長さ30cm、幅5cmのたて方向のサンプルを必要数投入し、熱風空気雰囲気下、210℃×1500時間、曝露させた。耐熱暴露試験前後のサンプルについて、上記(9)に記載の方法で引張強力を測定し、下記式:
たて引張強力保持率(%)={耐熱暴露試験後たて引張強力(N/5cm)/耐熱暴露試験前たて引張強力(N/5cm)}×100
を用いてたて引張強力保持率を算出した。
(11)成型における展開比及び成型性の評価
20cm×20cmの不織布等の布帛試料片を成型機にセットし、熱風温度150℃で予熱して、直径12cmの成型金型で熱プレスを実施した時の成型体の深さを測定し、下記の式:
展開比=(成型体の深さ)/(成型前シートの直径)
で展開比を算出した。
成型性の評価は、展開比0.2での成型性により評価した。
○:破れがなく、成型性良好
△:糸の無い微小穴状部位が発生し、成型性不良
×:破れが発生し、成型性不良
[実施例1]
溶融流れ量(MFR)が70g/10minである線状PPSポリマー(ポリプラスチックス社製:フォートロン)を305℃で溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から押出し、風速0.5m/sの冷風にて線状ポリマーを冷却し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度4000m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させてPPS長繊維ウェブを作成した。
得られたウェブを、180℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧300N/cmにて部分熱圧着し、PPS不織布を作製した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
[実施例2、3、及び4]
実施例1において、紡糸速度を5000m/min(実施例2)、3500m/min(実施例3)、6000m/min(実施例4)にしたこと以外は、実施例1と同様にして、PPS不織布を作製した。得られた不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、得られたウェブを、100℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧300N/cmにて仮接着したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸し、不織ウェブ化を行った。
引き続き、上記不織ウェブに、油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2質量%付与し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを300本/cmの交絡処理を施して、PPS不織布を作製した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、得られたウェブを、100℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧300N/cmにて仮接着したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸し、不織ウェブ化を行った。
引き続き、上記不織ウェブを、ノズルが孔径0.2mm、ピッチ0.2mmであるウォータージェットパンチを用い、表裏を交互に15MPaの圧力で交絡処理を施し、設定温度を100℃とした熱風乾燥機で乾燥させることで、PPS不織布を作製した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
[比較例1、及び2]
実施例1において、紡糸速度を7500m/min(比較例1)、6500m/min(比較例2)にしたこと以外は、実施例1と同様にして、PPS不織布を作製した。得られた不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。しかし、満足する熱時伸度が得られず、成型性に優れた不織布を得ることができなかった。
[比較例3]
比較例1において、得られたウェブを、250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧300N/cmにて仮接着したこと以外は、比較例1と同様にして紡糸し、不織ウェブ化を行った。得られた不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。しかし、満足する熱時伸度が得られず、成型性に優れた不織布を得ることができなかった。
[比較例4]
実施例4において、300℃で溶融し、風速1.0m/sの冷風にて線状ポリマーを冷却したこと以外は、実施例4と同様にして紡糸し、不織ウェブ化を行った。得られた不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。しかし、満足する熱時伸度が得られず、成型性に優れた不織布を得ることができなかった。
[比較例5]
溶融流れ量(MFR)が50g/10minであるPETポリマーを290℃で溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から押出し、風速0.5m/sの冷風にて線状ポリマーを冷却し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度2500m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させてPPS長繊維ウェブを作成した。
得られたウェブを、70℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧300N/cmにて部分的に仮接着し、その後、フェルトカレンダーによる130℃の定張熱セットにてPET不織布を作製した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。成型性は良好なものの、耐熱暴露試験後の引張強度低下率が大きく、満足する耐熱性を持つ不織布を得ることができなかった。
Figure 0006997527000001
本発明の耐熱性不織布は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、成型性などの物理的特性に優れているので、一般産業用資材、難燃性被覆材等のみならず、従来のポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系の積層不織布が使用不可能であった用途にも広く用いることができる。特に、耐薬品性、耐熱性、時には成型性の要求される、フィルター関連用途、電池セパレータ等の用途に好適である。

Claims (2)

  1. 結晶化度と剛直非晶度との和が7%以上30%未満であり、結晶化度が5%以上25%未満であり、150℃での引張伸度が50%以上200%以下であり、かつ熱接着されている、ポリフェニレンサルファイド繊維不織布。
  2. 請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド繊維不織布を熱成型する工程を含む、ポリフェニレンサルファイド成型体の製造方法。
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