以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明においては、図中の直交座標系を方向の基準とし、便宜上、x軸プラス方向を右方、y軸プラス方向を前方、z軸プラス方向を上方とする。
図1及び図2を参照して、一実施形態に係るワーク反転装置10について説明する。ワーク反転装置10は、制御装置12、第1の保持装置14、第2の保持装置15、及びワークハンドリング装置18を備える。
制御装置12は、プロセッサ及びメモリ(ともに図示せず)を有し、第1の保持装置14、第2の保持装置15、及びワークハンドリング装置18の動作を、直接的又は間接的に制御する。
第1の保持装置14は、第1の吸着部16、x軸機構部(第1の機構部)17、及びz軸機構部(第3の機構部)20を有する。第1の吸着部16は、吸着面16aを有し、該吸着面16aに物体を吸着して保持し、吸着を解除して該物体を解放することができる。
x軸機構部17は、第1の吸着部16を第2の吸着部26に向かって、x軸と平行な軸線A1に沿って進退させる。本実施形態においては、x軸機構部17は、シャフト収容部22及び駆動シャフト24を有する。
シャフト収容部22は、軸線A1を中心としてx軸方向に延在する中空部材であって、駆動シャフト24を軸線A1に沿って進退可能となるように受容している。第1の吸着部16は、駆動シャフト24の先端に、軸線A1を中心とするように、固定されている。
例えば、x軸機構部17は、シリンダであって、制御装置12からの指令に応じて、駆動シャフト24及び第1の吸着部16を、空圧又は油圧の作用によって、軸線A1に沿って第2の吸着部26に対して進退させる。
又は、x軸機構部17は、サーボモータと、該サーボモータの回転を軸線A1の方向の往復動へ変換して駆動シャフト24に伝達する運動変換機構(例えば、ボール螺子機構)とを有してもよい。この場合、x軸機構部17は、制御装置12からの指令に応じて、該サーボモータによって駆動シャフト24及び第1の吸着部16を、軸線A1に沿って第2の吸着部26に対して進退させる。
z軸機構部20は、z軸と平行な軸線A3に沿って延在し、x軸機構部17及び第1の吸着部16を、軸線A3に沿って往復動させる。一例として、z軸機構部20は、シリンダ(例えばロッドレスシリンダ)であって、制御装置12からの指令に応じて、x軸機構部17のシャフト収容部22を、空圧又は油圧の作用によって軸線A3の方向へ往復動させる。この場合、z軸機構部20は、中空のシリンダ本体と、該シリンダ本体内に軸線A3に沿って往復動可能に収容され、シャフト収容部22に固定されたピストンとを有し得る。
他の例として、z軸機構部20は、サーボモータと、該サーボモータの回転を軸線A3の方向の往復動へ変換してシャフト収容部22に伝達する運動変換機構(例えば、ボール螺子機構)とを有してもよい。この場合、z軸機構部20は、制御装置12からの指令に応じて、該サーボモータによってシャフト収容部22を軸線A3の方向へ往復動させる。
第2の保持装置15は、第2の吸着部26、x軸機構部(第2の機構部)28、及びz軸機構部(第4の機構部)30を有する。第2の吸着部26は、吸着面26aを有し、該吸着面26aに物体を吸着及び吸着解除できる。
x軸機構部28は、第2の吸着部26を第1の吸着部16に向かって、x軸と平行な軸線A2に沿って進退させる。x軸機構部28は、x軸機構部17と同様の構成を有する。具体的には、x軸機構部28は、シャフト収容部32及び駆動シャフト34を有する。
シャフト収容部32は、軸線A2を中心としてx軸方向に延在する中空部材であって、駆動シャフト34を軸線A2に沿って進退可能となるように受容している。第2の吸着部26は、駆動シャフト34の先端に、軸線A2を中心とするように、固定されている。
x軸機構部28は、上述のx軸機構部17と同様に、シリンダであってもよいし、又は、サーボモータと、該サーボモータの回転動作を軸線A2の方向の往復動へ変換する運動変換機構とを有してもよい。x軸機構部28は、制御装置12からの指令に応じて、駆動シャフト34及び第2の吸着部26を、軸線A2に沿って第1の吸着部16に対して進退させる。
z軸機構部30は、z軸と平行な軸線A4に沿って延在し、x軸機構部28及び第2の吸着部26を、軸線A4に沿って往復動させる。z軸機構部30は、上述のz軸機構部20と同様の構成を有する。
具体的には、z軸機構部30は、シリンダ(例えばロッドレスシリンダ)であってもよいし、又は、サーボモータと、該サーボモータの回転を軸線A4の方向の往復動へ変換する運動変換機構とを有してもよい。z軸機構部30は、制御装置12からの指令に応じて、シャフト収容部32)を、軸線A4に沿って往復動させる。
ワークハンドリング装置18は、後述するワークW(図5)を把持し、第1の保持装置14及び第2の保持装置15の各々に対して該ワークWを受け渡す。本実施形態においては、ワークハンドリング装置18は、垂直多関節ロボットであって、ベース36、旋回胴38、ロボットアーム40、手首部42、及び第3の吸着部44を有する。ベース36は、作業セルの床に固定されている。
旋回胴38は、z軸と平行な軸線周りに旋回可能となるように、ベース36に設けられている。ロボットアーム40は、旋回胴38に回動可能に連結された下腕部46と、該下腕部46の先端に回動可能に連結された上腕部48とを有する。
手首部42は、上腕部48の先端に回動可能に設けられており、第3の吸着部44は、手首部42に取り付けられている。ベース36、旋回胴38、ロボットアーム40、及び手首部42には、複数のサーボモータ50(図2)が内蔵されている。制御装置12は、これらサーボモータ50に指令を送り、ワークハンドリング装置18を動作させて第3の吸着部44を移動させる。
第3の吸着部44は、吸着面44aを有し、該吸着面44aに物体を吸着及び吸着解除できる。例えば、吸着対象の物体が磁性体である場合、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の各々は、電磁石から構成され得る。この場合、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44は、電磁石を励磁したときに生じる磁力によって、物体を吸着する。
または、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の各々は、負圧生成装置(いわゆる、バキューム装置)であってもよい。この場合、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44は、それぞれ、その吸着面16a、26a、及び44aと物体との間に負圧を生成し、該物体を吸着する。
次に、図3~図12を参照して、ワーク反転装置10の動作について説明する。本実施形態においては、ワーク反転装置10は、ワークハンドリング装置18が把持する図5に示すワークWを反転させる。本実施形態に係るワークWは、第1の面S1と、該第1の面S1とは反対側の第2の面S2とを有する。
図3に示すフローは、制御装置12が、上位コントローラ、オペレータ、又は作業プログラムから作業指令を受け付けたときに、開始する。図3に示すフローの開始時点においては、第1の保持装置14及び第2の保持装置15は、第1の吸着部16及び第2の吸着部26を、図4に示す初期位置にそれぞれ配置している。
この初期位置においては、x軸機構部17の駆動シャフト24は後退位置に配置されており、これにより、第1の吸着部16は、シャフト収容部22に隣接する後退位置に配置されている。同様に、x軸機構部28の駆動シャフト34は後退位置に配置されており、これにより、第2の吸着部26は、シャフト収容部32に隣接する後退位置に配置されている。
また、初期位置においては、第2の保持装置15のx軸機構部28は、第1の保持装置14のx軸機構部17から上方へずれて配置され、これにより、第2の吸着部26は、第1の吸着部16から上方へずれて配置されている。換言すれば、この初期位置においては、軸線A1と、軸線A2とは、z軸方向へ離反している。
その結果、第1の吸着部16の右側に第2の吸着部26及びx軸機構部28が配置されておらず、これにより、第1の吸着部16とz軸機構部30との間にスペースBが確保されている。
ステップS1において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44でワークWの第2の面S2を吸着する。具体的には、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44の吸着面44aを、予め定められた保管場所に保管されているワークWの第2の面S2に接して配置させる。
ここで、吸着面44aを第2の面S2に接して配置したとき、第3の吸着部44が起動されたときに吸着面44aで第2の面S2を吸着して保持することできる程度に、吸着面44aと第2の面S2とが離隔してもよいし、又は、吸着面44aと第2の面S2とが面接触してもよい。
次いで、制御装置12は、第3の吸着部44を動作させて、吸着面44aで第2の面S2を吸着する。例えば、ワークWが磁性体であり、第3の吸着部44が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、該電磁石を励磁して、第3の吸着部44の吸着面44aで第2の面S2を磁力で吸着する。
他の例として、第3の吸着部44が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を起動して、第3の吸着部44の吸着面44aと第2の面S2との間に負圧を形成し、これにより、吸着面44aで第2の面S2を吸着する。
こうして、図5に示すように、第3の吸着部44の吸着面44aでワークWの第2の面S2を吸着し、第3の吸着部44によってワークWを吸着保持することができる。したがって、本実施形態においては、第3の吸着部44は、ワークWを解放可能に把持する把持部を構成する。
ステップS2において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44が吸着保持するワークWの第1の面S1を、第1の吸着部16に接して配置させる。具体的には、制御装置12は、ロボットプログラムに従ってワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44及びワークWを、図6に示す位置に移動させる。
第3の吸着部44が図6に示す位置に配置されたとき、該第3の吸着部44に吸着保持されているワークWの第1の面S1は、第1の吸着部16の吸着面16aに接して配置される。ここで、吸着面16aを第1の面S1に接して配置したとき、第1の吸着部16が起動されたときに吸着面16aで第1の面S1を吸着して保持することできる程度に、吸着面16aと第1の面S1とが離隔してもよいし、又は、吸着面16aと第1の面S1とが面接触してもよい。
なお、このステップS2の開始時点では、第1の吸着部16及び第2の吸着部26は、上述した初期位置に配置されている。この配置によれば、このステップS2においてワークハンドリング装置18が第3の吸着部44をスペースB(図4)に進入させることができるので、このステップS2の実行時にワークハンドリング装置18の構成要素が、第2の保持装置15の構成要素と干渉してしまうのを防止できる。
なお、このステップS2において、ワークハンドリング装置18は、第3の吸着部44をスペースBに、z軸方向から進入させてもよいし、又は、y軸方向から進入させてもよい。
ステップS3において、制御装置12は、第1の吸着部16を動作させて、第1の吸着部16でワークWの第1の面S1を吸着する。例えば、ワークWが磁性体であり、第1の吸着部16が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、該電磁石を励磁して、第1の吸着部16の吸着面16aで第1の面S1を磁力で吸着する。
他の例として、第1の吸着部16が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を起動して、第1の吸着部16の吸着面16aと第1の面S1との間に負圧を形成し、これにより、吸着面16aで第1の面S1を吸着する。
こうして、図6に示すように第3の吸着部44の吸着面44aがワークWの第2の面S2を吸着している状態で、第1の吸着部16の吸着面16aでワークWの第1の面S1を吸着し、該第1の吸着部16によってワークWを吸着保持することができる。
ステップS4において、制御装置12は、第3の吸着部44によるワークWの第2の面S2の吸着を解除する。例えば、ワークWが磁性体であり、第3の吸着部44が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、磁力を消失させるように該電磁石の励磁を停止して、吸着面44aによる第2の面S2の吸着を解除する。
他の例として、第3の吸着部44が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を停止して、第3の吸着部44の吸着面44aと第2の面S2との間の負圧を解消し、これにより、吸着面44aによる第2の面S2の吸着を解除する。こうして、第3の吸着部44は、ワークWを解放する。
ステップS5において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44をワークWの第2の面S2から離れるように退避させる。このステップS5の終了時の状態を、図7に示す。この状態においては、ワークWは、その第1の面S1が第1の吸着部16によって吸着保持される一方、その第2の面S2の全体が露出される。
ステップS6において、制御装置12は、第1の保持装置14及び第2の保持装置15を動作させて、第2の吸着部26をワークWの第2の面S2に接して配置する。具体的には、制御装置12は、第2の保持装置15のz軸機構部30を動作させて、図7に示すx軸機構部28及び第2の吸着部26を、図8に示す位置まで下方へ移動させる。
図8に示す配置においては、軸線A1のy-z平面における位置と、軸線A2のy-z平面における位置とが互いに略一致し、第1の吸着部16の吸着面16aと、第2の吸着部26の吸着面26aとが、互いにx軸方向に対向する。
次いで、制御装置12は、第1の保持装置14のx軸機構部17を動作させて、該x軸機構部17の駆動シャフト24を、図8に示す後退位置から図9に示す突出位置へ、右方へ移動させる。この動作により、第1の吸着部16、及び該第1の吸着部16に保持されているワークWも、図8に示す後退位置から図9に示す突出位置に移動される。
また、制御装置12は、第2の保持装置15のx軸機構部28を動作させて、該x軸機構部28の駆動シャフト34を、図8に示す後退位置から図9に示す突出位置へ、左方へ移動させる。この動作により、第2の吸着部26も、図8に示す後退位置から図9に示す突出位置に移動される。その結果、第2の吸着部26の吸着面26aは、ワークWの第2の面S2に接して配置される。
ここで、吸着面26aを第2の面S2に接して配置したとき、第2の吸着部26が起動されたときに吸着面26aで第2の面S2を吸着して保持することできる程度に、吸着面26aと第2の面S2とが離隔してもよいし、又は、吸着面26aと第2の面S2とを面接触させて、第1の吸着部16と第2の吸着部26とでワークWを挟持させてもよい。
ステップS7において、制御装置12は、第2の吸着部26を動作させて、該第2の吸着部26でワークWの第2の面S2を吸着する。例えば、ワークWが磁性体であり、第2の吸着部26が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、該電磁石を励磁して、第2の吸着部26の吸着面26aで第2の面S2を磁力で吸着する。
他の例として、第2の吸着部26が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を起動して、第2の吸着部26の吸着面26aと第2の面S2との間に負圧を形成し、これにより、吸着面26aで第2の面S2を吸着する。
こうして、第1の吸着部16の吸着面16aがワークWの第1の面S1を吸着している状態で、第2の吸着部26の吸着面26aでワークWの第2の面S2を吸着し、該第2の吸着部26によってワークWを吸着保持することができる。
ステップS8において、制御装置12は、第1の吸着部16によるワークWの第1の面S1の吸着を解除する。例えば、ワークWが磁性体であり、第1の吸着部16が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、磁力を消失させるように該電磁石の励磁を停止して、吸着面16aによる第1の面S1の吸着を解除する。
他の例として、第1の吸着部16が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を停止して、第1の吸着部16の吸着面16aと第1の面S1との間の負圧を解消し、これにより、吸着面16aによる第1の面S1の吸着を解除する。これにより、第1の吸着部16は、ワークWを解放する。
ステップS9において、制御装置12は、第1の保持装置14及び第2の保持装置15を動作させて、第1の吸着部16及び第2の吸着部26を、互いから離反させる。具体的には、制御装置12は、第1の保持装置14のx軸機構部17を動作させて、駆動シャフト24及び第1の吸着部16を、突出位置から後退位置まで左方へ移動させる。
また、制御装置12は、第2の保持装置15のx軸機構部28を動作させて、駆動シャフト34及び第2の吸着部26を、突出位置から後退位置まで右方へ移動させる。こうして、第1の吸着部16及び第2の吸着部26は、再度、図8に示す位置に配置される。
次いで、制御装置12は、第1の保持装置14のz軸機構部20を動作させて、x軸機構部17及び第1の吸着部16を、図8に示す位置から図10に示す位置まで上方へ移動させる。その結果、図10に示すように、第1の吸着部16は、第2の吸着部26に吸着保持されているワークWの第1の面S1から離反し、ワークWは、その第2の面S2が第2の吸着部26によって吸着保持される一方、その第1の面S1の全体が露出される。
また、第1の吸着部16(すなわち、軸線A1)は、第2の吸着部26(すなわち、軸線A2)から上方へずれて配置されている。この状態においては、第2の吸着部26の左側に第1の吸着部16及びx軸機構部17が配置されておらず、これにより、第2の吸着部26とz軸機構部20との間にスペースCが確保されることになる。
ステップS10において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44の吸着面44aを、第2の吸着部26に吸着保持されているワークWの第1の面S1に接して配置させる。この状態を図11に示す。
ここで、このステップS10の開始時点では、第1の吸着部16及び第2の吸着部26は、図10に示す位置に配置されている。この配置によれば、このステップS10においてワークハンドリング装置18が第3の吸着部44をスペースCに進入させることができるので、このステップS10の実行時にワークハンドリング装置18の構成要素が第1の保持装置14の構成要素と干渉してしまうのを防止できる。
ステップS11において、制御装置12は、第3の吸着部44を動作させて、その吸着面44aでワークWの第1の面S1を吸着する。こうして、第2の吸着部26がワークWの第2の面S2を吸着している状態で、第3の吸着部44でワークWの第1の面S2を吸着保持する。
ステップS12において、制御装置12は、第2の吸着部26によるワークWの第2の面S2の吸着を解除する。例えば、ワークWが磁性体であり、第2の吸着部26が電磁石から構成されている場合、制御装置12は、磁力を消失させるように該電磁石の励磁を停止して、吸着面26aによる第2の面S2の吸着を解除する。
他の例として、第2の吸着部26が負圧生成装置から構成されている場合、制御装置12は、該負圧生成装置を停止して、第2の吸着部26の吸着面26aと第2の面S2との間の負圧を解消し、これにより、吸着面26aによる第2の面S2の吸着を解除する。こうして、第2の吸着部26は、ワークWを解放する。
ステップS13において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させ、図12に示すように、ワークWを吸着保持している第3の吸着部44を、第2の吸着部26から離れるように退避させる。
上記の一連の動作によって、ワークハンドリング装置18が把持していたワークWは、図5に示すように第2の面S2が第3の吸着部44に吸着保持されていた状態から、図12に示すように第1の面S1が第3の吸着部44に吸着保持されている状態へと、反転されることになる。
ステップS14において、制御装置12は、第1の保持装置14及び第2の保持装置15を動作させて、第1の吸着部16及び第2の吸着部26を、図12に示す位置から、図4に示す初期位置へ移動させる。具体的には、制御装置12は、第1の保持装置14のz軸機構部20を動作させて、第1の吸着部16を、図12に示す位置から図4に示す初期位置へ、下方へ移動させる。
これとともに、制御装置12は、第2の保持装置15のz軸機構部30を動作させて、第2の吸着部26を、図12に示す位置から図4に示す初期位置へ、上方へ移動させる。こうして、第1の吸着部16及び第2の吸着部26は、初期位置へ復帰する。
ステップS15において、制御装置12は、全てのワークに対する作業が完了したか否か判定する。制御装置12は、全てのワークに対する作業が完了した(すなわち、YES)と判定した場合、図3に示すフローを終了する。一方、制御装置12は、作業すべきワークが残存している(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS1へ戻り、次のワークWに対してステップS1~S16を実行する。
以上に述べたように、ワーク反転装置10は、第1の保持装置14、第2の保持装置15、及びワークハンドリング装置18の間でワークWを、吸着及び吸着解除により、受け渡している。
この構成によれば、第1の保持装置14、第2の保持装置15、及びワークハンドリング装置18は、ワークWの受け渡しを行うときに、第1の吸着部16、第2の吸着部26、又は第3の吸着部44を特定の姿勢に位置決めする必要がない。これにより、ワーク反転装置10でワークWを反転する動作を実行するためのアルゴリズムを簡単化することができる。これとともに、ワークWの受け渡し動作を、迅速に実行できる。
また、本実施形態においては、第1の保持装置14は、x軸機構部17を有し、第2の保持装置は、x軸機構部28を有している。この構成によれば、第1の吸着部16及び第2の吸着部26を互いに接近及び離反する動作を迅速に実行できる。
また、本実施形態においては、第1の保持装置14は、z軸機構部20を有し、第2の保持装置15は、z軸機構部30を有している。この構成によれば、上記したスペースB及びCを確保できるので、ステップS2及びS10の実行時にワークハンドリング装置18が第1の保持装置14又は第2の保持装置15と干渉してしまうのを防止できる。
また、ワークWのz軸方向の位置を変更することなく、ステップS3~12において、第1の保持装置14、第2の保持装置15、及びワークハンドリング装置18の間でワークWを受け渡す動作を実行できる。そのため、図3のフローの実行時におけるワークWの総移動距離を低減できるので、作業のサイクルタイムを縮減できる。
次に、図13及び図14を参照して、一実施形態に係る吸着部70について説明する。この吸着部70は、上述の第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の少なくとも1つに適用可能である。
吸着部70は、筐体部74、ベース部76、複数の保持要素78、及び複数の付勢部80を有する。筐体部74は、底壁82と、該底壁82の外周縁から延出する筒状の側壁84とを有する。
ベース部76は、側壁84の先端部に固定され、筐体部74とともに内部空間Dを画定している。ベース部76は、略平面の表面86及び裏面88を有する、平板状の部材である。
複数の保持要素78は、ベース部76の表面86と略直交する方向へ個別に往復動可能となるように、ベース部76に設けられている。例えば、ワークWが磁性体の場合、複数の保持要素78の各々は、電磁石である(いわゆる、針千本型電磁石)。この場合、保持要素78の各々は、制御装置12からの指令の下で励磁されて、ワークWをその先端面78aで磁力によって吸着する。
又は、複数の保持要素78の各々は、中空の負圧形成器であってもよい。この場合、複数の保持要素78には、該保持要素78内の気圧を増減させるコンプレッサ(図示せず)が接続され、制御装置12からの指令の下、各々の保持要素78の先端面78aとワークWとの間に負圧を形成し、該ワークWを吸着する。
複数の付勢部80の各々は、内部空間Dに配置され、底壁82と、複数の保持要素78の各々との間に介挿されている。これら付勢部80は、保持要素78を、図13に示す初期位置にそれぞれ配置させる。複数の保持要素78が初期位置に配置されたとき、これら保持要素78の先端面78aは、一平面上に整列し、ワークWを吸着する吸着面90(すなわち、吸着面16a、26a、44aに対応)を構成する。
1つの保持要素78が、図13に示す初期位置から紙面左方へ変位されると、該1つの保持要素78に接続された付勢部80は、該1つの保持要素78を初期位置へ向かって付勢する。このように、付勢部80は、保持要素78を初期位置に位置決めする位置決め機構81を構成する。
本実施形態に係る吸着部70によれば、あらゆる形状のワークWを吸着して保持することができる。具体的には、図14に示すように、蛇腹状のワークWの第1の面S1を吸着部70で吸着させた場合、ベース部76の表面86は、ワークWに面して配置され、各々の保持要素78は、吸着対象面である第1の面S1の形状に対応するように、ベース部76に対して変位する。
このように変位した状態で、各々の保持要素78は、ワークWを吸着する。なお、吸着部70は、その吸着面90でワークWの第2の面S2を同様に吸着可能であることが理解されよう。
図14に示す状態から、吸着部70によるワークWの吸着を解除し、該ワークWを吸着部70から解放した場合、付勢部80は、それぞれ、保持要素78を図14の紙面右方へ変位させ、図13に示す初期位置に復帰させる。
本実施形態に係る吸着部70を上述の第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44に適用し、図3に示すフローを実行した場合、図14に示す蛇腹状のワークWを含む、あらゆる形状のワークWを、専用の冶具を用いることなく、吸着部70で吸着保持することが可能となる。
また、本実施形態に係る吸着部70においては、付勢部80が保持要素78を初期位置に付勢している。この構成によれば、仮に、各保持要素78が水平(すなわち、吸着部70の吸着面90が鉛直方向と平行)に配置されている状態でワークWの吸着保持及び解放をしたとしても、付勢部80によって各々の保持要素78を初期位置に自動的に復帰させることができる。
次に、図15を参照して、他の実施形態に係る吸着部92について説明する。吸着部92は、上述の第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の少なくとも1つに適用可能である。本実施形態に係る吸着部92は、上述の吸着部70と、以下の構成において相違する。すなわち、吸着部92は、付勢部80の代わりに、複数の保持要素駆動部94を有する。
保持要素駆動部94は、内部空間Dに配置されている。保持要素駆動部94の各々は、例えばサーボモータ又はシリンダを有し、保持要素78の各々を、図15に示す初期位置と、該初期位置から図15の紙面左方へ後退した後退位置との間で、表面86と直交する方向へ個別に進退させる。
例えば、この初期位置は、保持要素78の移動ストロークの右端である一方、後退位置は、移動ストロークの左端である。このように、保持要素駆動部94は、保持要素78を初期位置に位置決めする位置決め機構95を構成する。
本実施形態に係る吸着部92も、上述の吸着部70と同様に、あらゆる形状のワークWを吸着して保持することができる。具体的には、図16に示すように、蛇腹状のワークWの第1の面S1を吸着部92で吸着させた場合、各々の保持要素駆動部94は、各々の保持要素78を、吸着対象面である第1の面S1の形状に対応するように、ベース部76に対して初期位置から変位させる。
このように変位した状態で、各々の保持要素78は、ワークWを吸着する。なお、吸着部92は、その吸着面90でワークWの第2の面S2を同様に吸着可能であることが理解されよう。
本実施形態に係る吸着部92を上述の第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44に適用し、図3に示すフローを実行した場合、図14に示す蛇腹状のワークWを含む、あらゆる形状のワークWを、専用の冶具を用いることなく、吸着部92で吸着して保持することが可能となる。
図17に、図15に示す吸着部92の構成を、上述の第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44に適用した場合のワーク反転装置10を示す。この場合、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の各々は、筐体部74、ベース部76、複数の保持要素78、及び保持要素駆動部94を有する。
次に、図18を参照して、図17に示すワーク反転装置10の動作フローの一例について説明する。なお、図17に示すフローにおいて、図3中のプロセスと同様のプロセスには同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、ワークWは、図14に示すような蛇腹状の磁性体であり、第1の吸着部16、第2の吸着部26、及び第3の吸着部44の保持要素78の各々は、電磁石である。
ステップS21において、制御装置12は、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44の吸着面44a(すなわち、吸着面90)でワークWの第2の面S2を吸着する。具体的には、制御装置12は、上述の実施形態と同様に、ワークハンドリング装置18を動作させて、第3の吸着部44の吸着面44aを、予め定められた保管場所に保管されているワークWの第2の面S2に接して配置させる。
次いで、制御装置12は、第3の吸着部44を動作させて、吸着面44aで第2の面S2を吸着する。具体的には、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、ワークWの第2の面S2の形状に対応するように、ベース部76に対して初期位置から変位させる。次いで、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素78の各々を動作させて、これら保持要素78でワークWの第2の面S2を吸着する。
ステップS2の後、ステップS22において、制御装置12は、第1の吸着部16を動作させて、該第1の吸着部16の吸着面16a(すなわち、吸着面90)でワークWの第1の面S1を吸着する。
具体的には、制御装置12は、第1の吸着部16の保持要素駆動部94の各々を動作させて、図16に示すように、各々の保持要素78を、ワークWの第1の面S1の形状に対応するように、ベース部76に対して変位させる。次いで、制御装置12は、第1の吸着部16の保持要素78の各々を動作させて、これら保持要素78でワークWの第1の面S1を吸着する。
ステップS4の後、ステップS23において、制御装置12は、第3の吸着部44の複数の保持要素78を、後退位置まで順に後退させる。具体的には、制御装置12は、複数の保持要素駆動部94を順に動作させて、複数の保持要素78を後退位置まで、1個ずつ順に後退させる。これにより、第3の吸着部44の保持要素78は、第1の吸着部16に保持されているワークWの第2の面S2から、1個ずつ順に離反することになる。
ステップS5の後、ステップS24において、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素78を初期位置に配置する。具体的には、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、後退位置から初期位置まで移動させる。このとき、制御装置12は、全ての保持要素78を同時に初期位置まで移動させてもよい。
ステップS6の後、ステップS25において、制御装置12は、第2の吸着部26を動作させて、該第2の吸着部26の吸着面26a(すなわち、吸着面90)でワークWの第2の面S2を吸着する。
具体的には、制御装置12は、第2の吸着部26の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、ワークWの第2の面S2の形状に対応するように、ベース部76に対して変位させる。次いで、制御装置12は、第2の吸着部26の保持要素78の各々を動作させて、これら保持要素78でワークWの第2の面S2を吸着する。
ステップS8の後、ステップS26において、制御装置12は、第1の吸着部16の複数の保持要素78を、後退位置まで順に後退させる。具体的には、制御装置12は、複数の保持要素駆動部94を順に動作させて、第1の吸着部16の保持要素78を後退位置まで、1個ずつ順に後退させる。これにより、第1の吸着部16の保持要素78は、第2の吸着部26に保持されているワークWの第1の面S1から、1個ずつ順に離反することになる。
ステップS9の後、ステップS27において、制御装置12は、第1の吸着部16の保持要素78を初期位置に配置する。具体的には、制御装置12は、第1の吸着部16の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、後退位置から初期位置まで移動させる。このとき、制御装置12は、全ての保持要素78を同時に初期位置まで移動させてもよい。
ステップS10の後、ステップS28において、制御装置12は、第3の吸着部44を動作させて、該第3の吸着部44の吸着面44aでワークWの第1の面S1を吸着する。
具体的には、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、ワークWの第1の面S1の形状に対応するように、ベース部76に対して変位させる。次いで、制御装置12は、第3の吸着部44の保持要素78の各々を動作させて、これら保持要素78でワークWの第1の面S1を吸着する。
ステップS12の後、ステップS29において、制御装置12は、第2の吸着部26の複数の保持要素78を、後退位置まで順に後退させる。具体的には、制御装置12は、複数の保持要素駆動部94を順に動作させて、第2の吸着部26の保持要素78を後退位置まで、1個ずつ順に後退させる。これにより、第2の吸着部26の保持要素78は、第3の吸着部44に保持されているワークWの第2の面S2から、1個ずつ順に離反することになる。
ステップS13の後、ステップS30において、制御装置12は、第2の吸着部26の保持要素78を初期位置に配置する。具体的には、制御装置12は、第2の吸着部26の保持要素駆動部94の各々を動作させて、各々の保持要素78を、後退位置から初期位置まで移動させる。このとき、制御装置12は、全ての保持要素78を同時に初期位置まで移動させてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、一方の吸着部16、26又は44が吸着保持しているワークWから他方の吸着部16、26又は44を離反させるとき、制御装置12は、保持要素78を後退位置まで、1個ずつ順に後退させている(ステップS23、S26、S29)。
この構成によれば、該他方の吸着部16、26又は44の保持要素78をワークWから引き離し易くすることができる。この作用について、以下に説明する。一方の吸着部16、26又は44がワークWを吸着するために発生させている磁力により、他方の吸着部16、26又は44の保持要素78は、ワークWに引き付けられることになる。
この状態で、仮に、該他方の吸着部16、26又は44の保持要素78を同時にワークWから離反させると、該他方の吸着部16、26又は44の保持要素78とワークWとが磁力により結合し、ワークWが一方の吸着部16、26又は44から引き離されてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態においては、ワークWから離反させるべき他方の吸着部16、26又は44の保持要素78を順に後退させることによって、該他方の吸着部16、26又は44の保持要素78の各々を、ワークWから引き離し易くすることができる。これにより、ワークWを保持すべき一方の吸着部16、26又は44から該ワークWが引き離されてしまうのを確実に防止できる。
なお、上述のワーク反転装置10から、x軸機構部28、z軸機構部20及び30を省略することもできる。以下、図19~図22を参照して、このような実施形態について説明する。
図19及び図20に示す実施形態においては、第1の保持装置14’は、第1の吸着部16及びx軸機構部17を有し、第1の吸着部16を第2の吸着部26に対して接近及び離反するように、x軸方向へ往復動させる。一方、第2の保持装置15’は、第2の吸着部26及び固定部材102を有し、第2の吸着部26は、固定部材102に移動不能に固定されている。
図21及び図22に示す実施例においては、第1の保持装置14’は、第1の吸着部16及びz軸機構部17’を有し、第1の吸着部16を第2の吸着部26に対して接近及び離反するように、z軸方向へ往復動させる。
一方、第2の保持装置15’は、第2の吸着部26及び固定部材102を有し、第2の吸着部26は、固定部材102に移動不能に固定されている。なお、図21及び図22に示す実施形態において、第1の吸着部16及び第2の吸着部26を、x軸方向へ相対的に移動させる機構部を設けてもよい。
また、吸着部16、26、及び44は、電磁石及び負圧生成装置に限らず、物体を吸着及び吸着解除可能であれば、如何なる装置を適用してもよい。また、ワークハンドリング装置18は、水平多関節型、パラレルリンクロボット、ローダ等、如何なるタイプのロボットであってもよい。
ワークハンドリング装置18は、第3の吸着部44の代わりに、複数の開閉可能な指部を有する、ワークWを解放可能に把持可能なロボットハンドを有してもよい。また、上述の実施形態においては、吸着部16、26、44が、互いに反対側となるワークWの第1の面S1及びS2を吸着保持する場合について述べたが、これに限らず、例えば、互いに接続された2つの面(前面と上面)を吸着保持してもよい。
以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。