以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1~図4を参照して、本第1実施形態について2段圧縮機として、活用した場合の説明をする。まず、図1、図2を参照して、本実施形態に係るスクロール圧縮機2が設けられる冷凍サイクル1の構成を説明する。
図1には、冷凍サイクル1の各構成要素を通過する冷媒の圧力pとエンタルピーhとに基づき、冷凍サイクル1の各構成要素がph線図上に図示されている。図1の縦軸は冷媒の圧力pを表し、図1の横軸は冷媒のエンタルピーhを表す。
図1、図2に示すように、冷凍サイクル1は、1つの密閉ハウジング3内に低段側圧縮機構4と高段側圧縮機構6との2つの圧縮機構が収容設置されたスクロール圧縮機2を有する。
スクロール圧縮機2は、低段側圧縮機構4と高段側圧縮機構6とを接続した密閉された中間圧室5を有する。中間圧室5は、密閉ハウジング3において、低段側圧縮機構4及び高段側圧縮機構6が収容される内部吸入圧空間と区分された空間を形成する。
中間圧室5では、低段側圧縮機構4により圧縮・吐出された中間圧の冷媒が通過し、高段側圧縮機構6に導入される。スクロール圧縮機2の詳細構成については、後述する。
本実施形態の冷媒としては、例えば、二酸化炭素等が用いられている。
冷凍サイクル1の運転時の働き(動作)について、以下に記述する。
スクロール圧縮機2の高段側圧縮機構6には、吐出配管7が接続されており、図1に示すように、吐出配管7の他端は、放熱器8に接続されている。放熱器8において、高温高圧の冷媒は、給湯機の場合は水と、空調機の場合は空気と熱交換されて冷却される。
放熱器8の下流には、第1調整弁26と第1気液分離器9が設けられ、放熱器8で冷却され減圧した後に、第1調整弁26で減圧された冷媒を気液分離している。第1気液分離器9の下流には第2調整弁24と第2気液分離器10が設けられ、第1気液分離器9から出力されて減圧した後に、第2調整弁24で減圧された冷媒を気液分離している。
第2気液分離器10の下流には第3調整弁22と第3気液分離器11が設けられ、第2気液分離器10から出力されて減圧した後に、第3調整弁22で減圧された冷媒を気液分離している。
第3気液分離器11の下流には減圧弁12が設けられている。減圧弁12を経て減圧された低温低圧の気液二相冷媒は、蒸発器13で図示省略の蒸発器用ファンにより送風される空気と熱交換され、該空気から吸熱して気化されるようになっている。
また、蒸発器13で蒸発された冷媒は、蒸発器13とスクロール圧縮機2との間に接続された吸入配管14を介してスクロール圧縮機2の低段側圧縮機構4に吸入されるよう構成されている。
図1、図2に示すように、スクロール圧縮機2の低段側圧縮機構4には、冷媒を低段側圧縮機構4内にインジェクションするための第3インジェクション配管21が、第3気液分離器11の下流側に設けられ、第3調整弁22にて所望の圧力まで減圧され、第3気液分離器11でガス冷媒と液冷媒に分離された冷媒のうち、ガスを低段側圧縮機構4に供給できるように構成されている。
図1、図2に示すように、スクロール圧縮機2の中間圧室5には、冷媒を中間圧室5内にインジェクションするための第2インジェクション配管23が、第2気液分離器10の下流側に設けられ、第2調整弁24にて所望の圧力まで減圧され、第2気液分離器10でガス冷媒と液冷媒に分離された冷媒のうち、ガスを中間圧室5に供給できるように構成されている。
図1、図2に示すように、スクロール圧縮機2の高段側圧縮機構6には、冷媒を内側作動室6a内にインジェクションするための第1インジェクション配管25が、第1気液分離器9の下流側に設けられ、第1調整弁26にて所望の圧力まで減圧され、第1気液分離器9でガス冷媒と液冷媒に分離された冷媒のうち、ガスをインジェクションポート)(図示省略)を介して高段側圧縮機構6に供給できるように構成されている。
このように第1インジェクション配管25、第2インジェクション配管23、および第3インジェクション配管21によって、3種類のインジェクションが実施されることになる。
なお、上述のインジェクションは、3種類を全て採用しなくてもよく、採用しなくても本発明は、有用である。
第3インジェクション配管21から低段側圧縮機構4にインジェクションされる冷媒の圧力は、吸入配管14からの吸入圧以上、かつ、中間圧室5における冷媒の圧力(中間圧)以下に調整される。
第2インジェクション配管23から中間圧室5にインジェクションされる冷媒の圧力は、中間圧室5の中間圧以上、かつ、高段側圧縮機構6にインジェクションされる冷媒の圧力以下に調整される。
第1インジェクション配管25から溝部130eにインジェクションされる冷媒の圧力は、中間圧室5の中間圧以上、かつ、吐出配管7からの吐出圧以下に調整される。なお、冷凍サイクル1におけるインジェクション冷媒は、インジェクション流量と発生ガス量のバランスの関係で湿り状態となる場合がある。
図3及び図4を参照して、スクロール圧縮機2の具体的な構成について説明する。スクロール圧縮機2は、1台のスクロール式圧縮機構の圧縮機構を2段に分けたスクロール式の圧縮機構40(以下では「スクロール式圧縮機構」とも表記する)を備えた構成となっている。
図3に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機2は、密閉ハウジング3のうち軸線方向他方側に、スクロール式圧縮機構40が設置されている。密閉ハウジング3のうち軸線方向一方側には、スクロール式圧縮機構40の駆動源である電動モータ31(動力発生手段)が設置されている。
電動モータ31は、ロータ32とステータ33とを有し、ロータ32には、出力軸34が一体的に結合されている。出力軸34は、その軸心Sが密閉ハウジング3の軸線に一致するように配置されている。出力軸34の下端は、スクロール式圧縮機構40の可動スクロール120に接続され、可動スクロール120の回転駆動源とされている。軸線方向は、軸心Sが延びる方向であって、固定スクロール130(或いは、110)と可動スクロール120とが並ぶ方向に一致している。
スクロール圧縮機2は、中間圧室5及び低段側圧縮機構4のそれぞれに冷媒がインジェクションされる構成となっている。電動モータ31の駆動力は、出力軸34によって後述の可動スクロール120に伝達され、低段側圧縮機構4および高段側圧縮機構6を動作させる。
低段側圧縮機構4および高段側圧縮機構6は、いずれもスクロール式の圧縮機構として構成されている。これら圧縮機構4、6は、固定スクロール110、130と可動スクロール120と吐出プレート140とによって構成されている。
本実施形態では、固定スクロール110、130、可動スクロール120、および吐出プレート140は、鉄、アルミニウム等の金属材料等の金属素材(以下、固定スクロール素材133という)によって形成されている。
固定スクロール110、130は、いずれも密閉ハウジング3に対して固定された部材であって、内部空間SPのうち電動モータ31よりも下方側となる位置において互いに対向して配置されている。
固定スクロール130は、図5に示すように、軸線方向他方側に固定歯底面130bを形成してなる固定基板130aと、固定基板130aの固定歯底面130bから軸線方向一方側に突出して渦巻き状に形成されている固定歯部131とを備える。
ここで、軸線方向一方は、出力軸34(すなわち、密閉ハウジング3)の軸心Sが延びる方向である。固定歯部131が突出する向きは、固定スクロール130と可動スクロール120とが並ぶ方向の一方側に一致している。すなわち、固定歯部131が突出する向きは、軸線方向に一致している。
固定歯部131のうち軸線方向一方側の端部(すなわち、歯先)には、軸線方向他方側に凹む溝部が設けられている。この溝部は、固定歯部131に沿って渦巻き状に形成されている。
この溝部には、チップシールSLが入っている。チップシールSLは、固定歯部131の歯先から軸線方向一方側(すなわち、可動歯底面120a)に突起している。チップシールSLは、溝部の底部とチップシールSLとの間の冷媒の圧力によって、軸線方向に変位可能になっている。チップシールSLは、可動歯底面120aに対して摺動して高段側圧縮機構6から低段側圧縮機構4に冷媒が漏れることを抑制する。
固定スクロール130には、固定歯部131に沿って渦巻き状に形成されている溝部130d、130eが形成されている。溝部130d、130eは、それぞれ、固定歯底面130bを底部とする凹状に形成されている。
溝部130eは、溝部130dに対して固定歯部131の渦巻き方向の中央側に設けられている。溝部130d、130eは、仕切り部BDによって仕切られている。仕切り部BDは、固定スクロール130の固定歯部131の相互の間を軸心S(すなわち、軸線)を中心とする径方向に連結している。
ここで、仕切り部BDのうち軸線方向一方側の端部(すなわち、歯先)には、軸線方向他方側に凹む溝部が設けられている。この溝部には、チップシールSLが入っている。チップシールSLは、固定歯部131の歯先から軸線方向一方側(すなわち、可動歯底面120a)に突起している。
本実施形態の溝部130dの軸線方向寸法は、溝部130eの軸線方向寸法よりも小さくなっている。すなわち、溝部130dの深さ寸法が、溝部130eの深さ寸法よりも小さくなっている。
本実施形態の可動スクロール120は、可動歯底面120aを軸線方向一方側に形成してなる可動基板120bと、外側可動歯部122、内側可動歯部123とを備える。外側可動歯部122は、内側可動歯部123とともに、可動歯部124を構成する。
外側可動歯部122は、可動歯底面120aから溝部130d内にて軸線方向他方側に突出して渦巻き状に形成されている内側稼働歯部である。内側可動歯部123は、可動歯底面120aから溝部130e内にて軸線方向他方側に突出して渦巻き状に形成されている外側稼働歯部である。
外側可動歯部122は、内側可動歯部123に対して内側可動歯部123の渦巻き方向の外側に設けられている。外側可動歯部122は、溝部130d内にて旋回運転して外側固定歯部131aとともに冷媒を圧縮する低段側圧縮機構4を構成する。
外側固定歯部131aは、固定スクロール130の固定歯部131のうち渦巻き方向において仕切り部BDよりも外側の領域である。内側可動歯部123は、溝部130e内にて旋回運転して内側固定歯部131bとともに冷媒を圧縮する高段側圧縮機構6を構成する。内側固定歯部131bは、固定スクロール130の固定歯部131のうち渦巻き方向において仕切り部BDよりも内側の領域である。
可動スクロール120は、固定スクロール110と固定スクロール130との間において可動可能な状態で設けられている。可動スクロール120は、軸線を軸心Sとしたとき、固定スクロール130に対して軸心Sを中心として旋回運動する。電動モータ31が動作しているときには、出力軸34から受ける力によって可動スクロール120が可動する。
これにより、次に述べる外側作動室4a及び内側作動室6aのそれぞれの容積及び位置が変化して行き、冷媒の圧縮が行われる。可動スクロール120は、オルダムリング150により自転することが防止されている。
図4および図5に示されるように、固定スクロール130と可動スクロール120との間には、低段側圧縮機構4の外側作動室4aと、高段側圧縮機構6の内側作動室6aとがそれぞれ形成されている。
外側作動室4aは、固定スクロール130の外側固定歯部131aの側面と可動スクロール120の外側可動歯部122の側面との間に形成された空間である。
内側作動室6aは、固定スクロール130の内側固定歯部131bと可動スクロール120の内側可動歯部123との間に形成された空間である。外側作動室4aと内側作動室6aとの間は仕切り部BDによって仕切られている。
可動スクロール120の外側可動歯部122のうち軸線方向他方側の端部には、軸線方向一方側に凹む溝部が設けられている。この溝部内は、チップシールSLが配置されている。チップシールSLは、外側可動歯部122の端部から軸線方向他方側(すなわち、固定歯底面130b)に突起している。チップシールSLは、溝部の底部とチップシールSLとの間の冷媒の圧力によって、軸線方向に変位可能になっている。
可動スクロール120の内側可動歯部123のうち軸線方向他方側の端部には、軸線方向一方側に凹む溝部が設けられている。この溝部内は、チップシールSLが配置されている。
チップシールSLは、内側可動歯部123の端部から軸線方向他方側(すなわち、固定歯底面130b)に突起している。チップシールSLは、溝部の底部とチップシールSLとの間の冷媒の圧力によって、軸線方向に変位可能になっている。チップシールSLは、固定歯底面130bに対して摺動して高段側圧縮機構6から低段側圧縮機構4に冷媒が漏れることを抑制する。
外側作動室4aや内側作動室6aとしては、それぞれに1室以上の作動室が形成される。チップシールSLにより、外側作動室4aや内側作動室6aに形成される各作動室間での冷媒漏れ、低段側圧縮機から吸入側への冷媒漏れ、及び、高段側圧縮機から中間段への冷媒漏れからの冷媒の漏出が抑えられている。
図3の吐出プレート140は、固定スクロール130のうち軸線方向他方側(すなわち、可動スクロール120とは反対側)の面に対して、ガスケットG(図6を参照)を介して取り付けられた板状の部材である。図6は、吐出プレート140を取り外した状態の固定スクロール130を、図3中下方側から視て模式的に描いた図となっている。
後に説明する中間圧室5、高段吐出室924、及び低段インジェクション室942は、いずれも、吐出プレート140と固定スクロール130との両方に跨るように形成されている。
固定スクロール130には、図6に示すように、低段吸入流路901と、中間圧室5と、高段吐出室924と、高段吐出流路931と、低段インジェクション流路941と、低段インジェクション室942と、中間インジェクション流路951とが形成されている。
低段吸入流路901は、吸入配管14からの冷媒を低段側圧縮機構4の外側作動室4aに冷媒を供給するための流路である。尚、低段吸入流路901には、吸入配管14の一部であるパイプが圧入されているのであるが、図4等では当該パイプの図示が省略されている。低段吸入流路901に供給された冷媒は、低段吸入ポート911を通って外側作動室4aに流入した後、低段側圧縮機構4により圧縮される。
中間圧室5は、外側作動室4aと内側作動室6aとの間を繋ぐ流路として形成されている。外側作動室4aにおいて圧縮された冷媒は、低段吐出ポート913を通って中間圧室5に流入した後、高段吸入ポート921を通って内側作動室6aに流入する。
ここで、低段吐出ポート913は、作動室歯底、または、歯部穴の一部が食い込むように形成されている。いずれの場合も圧縮した冷媒を吐き出すために、低段吐出ポート913に可動スクロールの歯部が重なった際に、可動スクロールの歯部によって、固定スクロールの吐出ポートが閉じられる必要がある。
高段吐出室924は、内側作動室6aから排出された冷媒が流入する空間として、吐出プレート140と固定スクロール130との両方に跨るように形成された空間である。内側作動室6aにおいて圧縮された冷媒は、高段吐出ポート923を通って高段吐出室924に流入する。
高段吐出流路931は、高段吐出室924にある冷媒、すなわち内側作動室6aにおいて圧縮された後の冷媒を、吐出配管7に向けて排出するための流路である。尚、高段吐出流路931には、吐出配管7の一部であるパイプが圧入されているのであるが、図6等では当該パイプの図示が省略されている。
低段インジェクション流路941は、第3インジェクション配管21から低段側圧縮機構4にインジェクションされる冷媒が通る流路である。尚、低段インジェクション流路941には、第3インジェクション配管21の一部であるパイプが圧入されているのであるが、図4等では当該パイプの図示が省略されている。低段インジェクション流路941を通った冷媒は低段インジェクション室942に流入する。
低段インジェクション室942は、低段インジェクション流路941を通った冷媒が流入する空間として、吐出プレート140と固定スクロール130との両方に跨るように形成された空間である。低段インジェクション室942に流入した冷媒は、貫通穴である低段インジェクションポート943を通って外側作動室4aにインジェクションされる。
中間インジェクション流路951は、第2インジェクション配管23からの冷媒を中間圧室5にインジェクションするための流路である。尚、中間インジェクション流路951には、第2インジェクション配管23の一部であるパイプが圧入されているのであるが、図4等では当該パイプの図示が省略されている。中間インジェクション流路951を通った冷媒は中間圧室5にインジェクションされる。
その他の構成について説明する。図5に示されるように、固定スクロール130には、オイル戻し流路971と、オイル吸い上げパイプ972とが設けられている。
オイル戻し流路971は、外部からスクロール圧縮機2に戻されるオイル(すなわち、潤滑材)を受け入れて、これを固定スクロール130と可動スクロール120との間に供給するための流路である。
オイル吸い上げパイプ972は、密閉ハウジング3の底部に溜まっているオイルを吸い上げるためのパイプである。オイル吸い上げパイプ972の上端は、低段吸入流路901に接続されている。このため、低段吸入流路901からの冷媒の吸引が行われると、密閉ハウジング3の底部に溜まっているオイルが、オイル吸い上げパイプ972に吸引されて低段吸入流路901に供給される。その後、当該オイルは各部の潤滑に供される。
図7に示されるように、低段インジェクション室942と低段インジェクションポート943との間となる位置には、リードバルブ72が設けられている。
リードバルブ72は、弁座721と弁体722とを有している。低段インジェクション室942の圧力が、低段インジェクションポート943の圧力よりも高いときには、弁体722が弁座721から離れた状態となり、冷媒はリードバルブ72を通って外側作動室4aにインジェクションされる。
一方、低段インジェクションポート943の圧力が、低段インジェクション室942の圧力よりも高いときには、圧力によって弁体722が弁座721に押し付けられた状態となる。これにより、外側作動室4a側から低段インジェクション室942側へと冷媒が逆流してしまうことが防止される。
次に、本実施形態の固定スクロール130の具体的な構造について図4を参照して説明する。
まず、渦巻き方向において溝部130dの外周側と内周側とが所定範囲Waに亘って重なるように溝部130dが形成されている。
固定歯部131のうち外側作動室4aを形成する側面は、シール部200、201、202、203および逃がし部205、206を形成している。
シール部200は、固定歯部131の径方向外側において、溝部130dの渦巻き方向の外側に配置されている。具体的には、シール部200は、角度k1~角度k2の間の角度範囲に亘って形成されている。シール部200は、インボリュート曲線に沿って形成されている。
シール部201は、固定歯部131の径方向外側において、角度k4~角度k2の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に沿って形成されている。
シール部202は、固定歯部131の径方向内側において、角度k3~角度k4の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に沿って形成されている。
シール部203は、仕切り部BDの側面に沿って湾曲状(例えば、円弧状)に形成されている。シール部203は、シール部201と逃がし部206とを連結する。
逃がし部205は、固定歯部131の径方向外側において、角度k2~角度k4の間の約の角度範囲において形成されている。逃がし部205は、インボリュート曲線に対して径方向内側にずれた曲線に沿って形成されている。
逃がし部206は、固定歯部131の径方向外側において、角度k2~角度k4の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に対して径方向内側にずれた曲線に沿って形成されている。
本実施形態のシール部201、逃がし部205、206は、それぞれ、約180°の角度範囲に亘って形成されている。
ここで、シール部202で用いられるインボリュート曲線と、逃がし部206で用いられるインボリュート曲線とは、共通の曲線である。シール部200、201で用いられるインボリュート曲線と、逃がし部205で用いられるインボリュート曲線とは、共通の曲線である。
図4中P1は、シール部202と逃がし部206との間の接続部である。P2は、シール部201と逃がし部205との間の接続部である。P6は、シール部200と逃がし部205との間の接続部である。P8は、シール部201、203の間の接続部である。P5は、シール部203と逃がし部206との間の接続部である。
本実施形態のシール部200、201、202、203は、可動スクロール120の旋回に伴って、固定歯部131の側面のうち外側可動歯部122の側面が摺動(すなわち、接触)する領域である。
逃がし部205、206は、可動スクロール120の旋回に伴って、固定歯部131の側面のうち外側可動歯部122の側面が非接触となるように形成されている領域である。
つまり、逃がし部205、206は、固定歯部131の側面のうち外側可動歯部122の側面が非接触となるように外側可動歯部122の側面から逃がされた領域である。
次に、固定歯部131のうち内側作動室6aを形成する側面は、シール部210、211、212および逃がし部213、214を形成している。
まず、シール部210は、固定歯部131の径方向外側において、角度k4~角度k5の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に沿って形成されている。
シール部211は、固定歯部131の径方向内側において、角度k2~角度k4の間の角度範囲に亘って湾曲状に形成されている。
シール部212は、固定歯部131の径方向内側において、角度k6に対して渦巻き方向内側の角度範囲に亘って、インボリュート曲線に沿って形成されている。
本実施形態のシール部210、211、212は、可動スクロール120の旋回に伴って、固定歯部131の側面のうち内側可動歯部123の側面が摺動(すなわち、接触)する領域である。
逃がし部213は、固定歯部131の径方向外側において、角度k2~角度k4の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に対して径方向内側にずれた曲線に沿って形成されている。
逃がし部214は、固定歯部131の径方向内側において、角度k2~角度k4の間の角度範囲に亘ってインボリュート曲線に対して径方向外側にずれた曲線に沿って形成されている。
逃がし部213、214は、可動スクロール120の旋回に伴って、固定歯部131の側面のうち内側可動歯部123の側面が非接触となるように形成されている領域である。
つまり、逃がし部213、214は、固定歯部131の側面のうち内側可動歯部123の側面が非接触となるように内側可動歯部123の側面から逃がされた領域である。
図4中P3は、シール部210と逃がし部213との間の接続部である。P7はシール部212と逃がし部214との間の接続部である。P4は、シール部211と逃がし部214との間の接続部である。P9は、P4は、シール部211と逃がし部213との間の接続部である。
なお、本明細書において、角度とは、軸心S(すなわち、軸線)を中心とする角度であり、径方向とは、軸心を中心とする径方向である。
次に、本実施形態の接続部P1~P8について図9を参照して説明する。
以下、逃げ量について下記の如く定義する。例えば、逃がし部213の逃げ量とは、逃がし部213を形成するのに用いられるインボリュート曲線(すなわち、基準曲線)と逃がし部213との間の間隔である。
例えば、逃がし部205の逃げ量とは、逃がし部205を形成するのに用いられるインボリュート曲線(すなわち、基準曲線)と逃がし部205との間の間隔である。
つまり、逃がし部の逃げ量とは、外側可動歯部122(或いは、内側可動歯部123)が固定歯部131に接触することを避けるために外側可動歯部122(或いは、内側可動歯部123)とインボリュート曲線との間に形成される間隔である。インボリュート曲線とは、逃がし部を形成するために用いられる基準曲線である。
グラフa中210は、シール部210を形成するのに用いられるインボリュート曲線(すなわち、基準曲線)とシール部210との間の間隔(=零)を示している。
図9中グラフa中213は、内側作動室6aを形成する逃がし部213の逃げ量を示している。グラフb中205は、外側作動室4aを形成する逃がし部205の逃げ量を示している。
グラフb中200は、シール部200を形成するのに用いられるインボリュート曲線(すなわち、基準曲線)とシール部200との間の間隔(=零)を示している。グラフb中201は、シール部201を形成するのに用いられるインボリュート曲線(すなわち、基準曲線)とシール部201との間の間隔(=零)を示している。
まず、接続部P6について説明する。固定歯部131の側面のうち角度k2よりも小さい角度の領域には、シール部200が形成されている。固定歯部131の側面のうち角度k2よりも大きい角度の領域には、逃がし量が所定量Naである逃がし部205が形成されている。
ここで、固定歯部131の側面のうち角度k2よりも角度が小さい領域には、角度が大きくなるにつれて逃がし量が徐々に大きくなる徐変部Qaが形成されている。
このように、シール部200および逃がし部205の間の接続部P6には、徐変部Qaが形成されている。
次に、接続部P2について説明する。固定歯部131の側面のうち角度k4よりも小さい角度の領域には、逃がし量が所定量Naである逃がし部205が形成されている。固定歯部131の側面のうち角度k2よりも大きい角度の領域にはシール部201が形成されている。
ここで、固定歯部131の側面のうち角度k2よりも角度が大きい領域には、角度が大きくなるにつれて逃がし量が徐々に小さくなる徐変部Qdが形成されている。
このように、シール部201および逃がし部205の間の接続部P2には、徐変部Qdが形成されている。
次に、接続部P3について説明する。固定歯部131の側面のうち角度k4よりも小さい角度の領域には、シール部210が形成されている。固定歯部131の側面のうち角度k4よりも大きい角度の領域には、逃がし量が所定量Naである逃がし部213が形成されている。
ここで、固定歯部131の側面のうち角度k4よりも角度が小さい領域には、角度が大きくなるにつれて逃がし量が徐々に大きくなる徐変部Qcが形成されている。
このように、シール部210および逃がし部213の間の接続部P3には、徐変部Qcが形成されている。
接続部P1には、接続部P6と同様、徐変部Qaが形成されている。接続部P7には、接続部P3と同様、徐変部Qcが形成されている。接続部P4、P5、P9には、接続部P2と同様、徐変部Qdが形成されている。
次に、本実施形態の外側可動歯部122、内側可動歯部123の具体的な構造について図8を用いて説明する。
以下、厚み方向、歯丈について下記の如く定義する。
外側可動歯部122の厚み方向とは、外側可動歯部122の渦巻く方向に交差(具体的には、直交)し、かつ外側可動歯部122が可動歯底面120aから突起する方向に交差(具体的には、直交)する方向である。
内側可動歯部123の厚み方向とは、内側可動歯部123の渦巻く方向に交差(具体的には、直交)し、かつ内側可動歯部123が可動歯底面120aから突起する方向に交差(具体的には、直交)する方向である。
内側可動歯部123の歯丈は、内側可動歯部123のうち可動歯底面120aから突起する方向の寸法である。外側可動歯部122の歯丈は、外側可動歯部122のうち可動歯底面120aから突起する方向の寸法である。
まず、内側可動歯部123の厚み方向の寸法は、外側可動歯部122の厚み方向の寸法に比べて大きくなっている。
具体的には、内側可動歯部123のうち渦巻き方向の外側における厚み方向の寸法t1は、外側可動歯部122のうち渦巻き方向の外側における厚み方向の寸法t2に比べて大きくなっている。
内側可動歯部123のうち渦巻き方向の内側における厚み方向の寸法t4は、外側可動歯部122のうち渦巻き方向の内側における厚み方向の寸法t3に比べて大きくなっている。
外側可動歯部122のうち、渦巻き方向内側の厚み方向の寸法t3は、渦巻き方向外側の厚み方向の寸法t2よりも大きくなっている。同様に、内側可動歯部123のうち、渦巻き方向内側の厚み方向の寸法t4は、渦巻き方向外側の厚み方向の寸法t1よりも大きくなっている。
また、内側可動歯部123の歯丈は、外側可動歯部122の歯丈に比べて大きくなっている。
次に、本実施形態のスクロール圧縮機2の作動について図10~図15を用いて説明する。
まず、電動モータ31は、その駆動力を出力軸34を通して可動スクロール120に伝達する。すると、可動スクロール120が旋回する。これに伴い、外側可動歯部122が図12→図13→図14→図15→図10→図11→図12の順に溝部130d内で旋回運転する。
一方、内側可動歯部123が図14→図15→図10→図11→図12→図13→図14の順に溝部130e内で旋回する。
この際に、外側可動歯部122は、固定歯部131のうち低段側圧縮機構4を構成する固定歯部131aとの間に外側作動室4aを形成する。外側可動歯部122の旋回に伴って外側可動歯部122が外側作動室4aを変位・変形させる。
一方、内側可動歯部123は、固定歯部131のうち高段側圧縮機構6を形成する固定歯部131bとの間に内側作動室6aを形成する。内側可動歯部123の旋回に伴って内側可動歯部123が内側作動室6aを変位・変形させる。
この際に、蒸発器13で蒸発されたガス冷媒が吸入配管14、低段吸入ポート911を介して溝部130d内の外側作動室4aに吸入される。第3気液分離器11からのガス冷媒が第3インジェクション配管21を介して溝部130d内の外側作動室4aにインジェクションされる。
このようにガス冷媒は外側作動室4aに吸入されて外側作動室4aにおいて圧縮される。
具体的には、図14の過程では、外側可動歯部122の渦巻き方向中央側がシール部201に接触した状態で、外側作動室4aへのガス冷媒の吸入が開始される。その後、図15の過程を経て図10の過程に遷移する。
この過程では、外側作動室4aへのガス冷媒の吸入が終了して外側作動室4aによるガス冷媒の圧縮を開始させることになる。
このとき、外側可動歯部122の渦巻き方向外側がシール部200に接触し、外側可動歯部122の渦巻き方向中央側がシール部202に接触し、かつ外側可動歯部122の渦巻き方向内側がシール部201に接触している。
このことにより、外側作動室4aが固定歯部131と外側可動歯部122とによってシールされていることになる。
その後、外側可動歯部122が旋回して外側作動室4aの容積が縮小しつつ時計回りに移動する。このことにより、外側作動室4aによる冷媒の圧縮が行われることになる。
この際、図10の過程から外側可動歯部122の渦巻き方向内側がシール部201に対して摺動して、図11、図12の状態になる。
このため、外側可動歯部122の渦巻き方向中央側が逃がし部206との間で非接触状態を維持しつつ、外側可動歯部122の渦巻き方向内側がシール部201との間で非接触状態となる。
その後、図13、図14のように、外側可動歯部122が逃がし部205、206との間で非接触状態を維持した状態となる。
次いで、図15、図10のように、外側可動歯部122の旋回に伴って外側可動歯部122がシール部203、201に対して摺動する。
このことにより、外側作動室4aの容積が縮小しつつ時計回りに移動する。このため、外側作動室4aにより圧縮されたガス冷媒は、低段吐出ポート913から中間圧室5に吐出される。
図10では、溝部130eのうち渦巻き方向内側(すなわち、仕切り部BD側)に外側作動室4aが形成され、この外側作動室4aからガス冷媒が低段吐出ポート913に吐出される。
その後、図11の過程に遷移して、外側作動室4aから低段吐出ポート913へのガス冷媒の吐出が終了する。つまり、外側作動室4aによる冷媒の圧縮過程が終了することになる。
このように外側作動室4aから低段吐出ポート913にガス冷媒が吐出される。第2気液分離器10からのガス冷媒が第2インジェクション配管23を介して中間圧室5にインジェクションされる。このため、第2インジェクション配管23からのガス冷媒と低段吐出ポート913からのガス冷媒が中間圧室5で混合されて高段吸入ポート921を通って溝部130dに吸入される。
一方、第1気液分離器9からガス冷媒が第1インジェクション配管25を通して溝部130dに吸入される。
このように溝部130dに吸入されるガス冷媒は、内側作動室6aに吸入され、内側作動室6aによって圧縮される。
具体的には、内側可動歯部123が図14→図15→図10→図11の順に旋回すると、逃がし部213、214によって内側可動歯部123が固定歯部131に対して非接触状態を維持しつつ、内側作動室6aを変化・変位させる。このため、内側作動室6a内にガス冷媒が吸入される。
その後、内側可動歯部123が、図12に示すように、シール部210、211に接触した状態になる。このため、内側可動歯部123と固定歯部131とによって内側作動室6aがシールされることになる。このことにより、内側作動室6aによる冷媒の圧縮が開始されることなる。
その後、図13に示すように、可動スクロール120の旋回に伴って、内側可動歯部123がシール部210、211に摺動する。このため、内側作動室6aが変位・変化する。これにより、内側作動室6aにより冷媒が圧縮される。
さらに、図14、図15、図10、図11の課程では、逃がし部213、214により内側可動歯部123が固定歯部131に対する非接触状態を維持しつつ、旋回する。このため、内側作動室6aが変位・変化する。このため、内側可動歯部123が固定歯部131に対して非接触状態のまま、内側作動室6a内の冷媒が移動される。
その後、図12に示すように、シール部211により内側可動歯部123が固定歯部131に対して接触状態となる。つまり、このため、内側可動歯部123と固定歯部131とによって内側作動室6aがシールされることになる。
次いで、内側可動歯部123がシール部211に摺動しつつ、図13に示すように、旋回する。このため、内側作動室6a内によって圧縮されたガス冷媒が高段吐出ポート923に吐出される。
このことにより、内側可動歯部123と固定歯部131とによって内側作動室6aがシールされた状態で、内側作動室6a内によって圧縮されたガス冷媒が高段吐出ポート923に吐出される。つまり、内側作動室6aによる冷媒圧縮が終了する。
この吐出されたガス冷媒が高段吐出室924、および吐出配管7を通して放熱器8に吐出される。
以上説明した本実施形態によれば、外側作動室4aが冷媒の圧縮を開始する角度(以下、外側冷媒開始角度という)に、可動スクロール120が位置するとき、外側可動歯部122がシール部200、201に接触して、外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされることになる(図10参照)。
可動スクロール120が外側冷媒開始角度に位置するとき、内側可動歯部123が逃がし部213、214によって固定歯部131に対して非接触となっている。
次に、外側作動室4aが冷媒を吐出する角度(以下、外側冷媒吐出角度という)に、可動スクロール120が位置するとき、外側可動歯部122がシール部201、203に接触して、外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされることになる(図10参照)。
可動スクロール120が外側冷媒吐出角度に位置するとき、内側可動歯部123が逃がし部213、214によって固定歯部131に対して非接触となっている。
一方、内側作動室6aが冷媒の圧縮を開始する角度(以下、内側冷媒開始角度という)に、可動スクロール120が位置するとき、内側可動歯部123がシール部210、211に接触して、内側作動室6aが内側可動歯部123と固定歯部131とによってシールされることになる(図12参照)。
可動スクロール120が内側冷媒開始角度に位置するとき、外側可動歯部122が逃がし部205、206によって固定歯部131に対して非接触となっている。
次に、内側作動室6aが冷媒を吐出する角度(以下、内側冷媒吐出角度という)に、可動スクロール120が位置するとき、内側可動歯部123がシール部210、211に接触して、内側作動室6aが内側可動歯部123と固定歯部131とによってシールされることになる(図12参照)。
可動スクロール120が内側冷媒吐出角度に位置するとき、外側可動歯部122が逃がし部205、206によって固定歯部131に対して非接触となっている。
このように構成される本実施形態では、可動スクロール120における外側冷媒開始角度と内側冷媒開始角度とは角度θがオフセットされている。可動スクロール120における外側冷媒吐出角度と内側冷媒吐出角度とは角度θがオフセットされている。
本実施形態の角度θとしては、60deg以上の角度が設定されている。角度θとしては、120deg以上の角度が望ましい。より望ましくは、180deg以上の角度が角度θとして用いられる。
以上説明した本実施形態によれば、スクロール圧縮機2は、固定スクロール130および可動スクロール120を備える。固定スクロール130は、固定歯底面130bから突出して渦巻き状に形成されている固定歯部131を備える。固定スクロール130には、溝部130d、130eが形成されている。
溝部130dは、固定歯底面130bを底面とする凹状に形成されて固定歯部131に沿って渦巻き状に形成されている。溝部130eは、固定歯底面130bを底面とする凹状に形成されて、かつ溝部130dに対して固定歯部131の渦巻き方向の内側に配置され、固定歯部131に沿って渦巻き状に形成されている。
可動スクロール120は、外側可動歯部122、内側可動歯部123を備える。外側可動歯部122は、可動歯底面120aから溝部130d内に突出して渦巻き状に形成されて、固定歯部131との間に外側作動室4aを形成する。
内側可動歯部123は、可動歯底面120aから溝部130e内に突出して渦巻き状に形成されて、固定歯部131との間に内側作動室6aを形成する。仕切り部BDは、固定歯部131の相互間にて固定歯部131を、軸心Sを中心とする径方向に連結することにより、溝部130d、130eを仕切る。可動スクロール120が軸心Sを中心とする旋回する際に、外側可動歯部122が外側作動室4aを変化させて冷媒を圧縮し、内側可動歯部123が内側作動室6aを変化させて冷媒を圧縮する。
可動スクロール120が外側冷媒開始角度に位置するときには、外側可動歯部122がシール部200、201に接触して外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされる。このとき、内側可動歯部123が逃がし部213、214によって固定歯部131に対して非接触となっている。
可動スクロール120が外側冷媒吐出角度に位置するときには、外側可動歯部122がシール部201、203に接触して外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされる。このとき、内側可動歯部123が逃がし部213、214によって固定歯部131に対して非接触となっている。
可動スクロール120が内側冷媒開始角度に位置するときには、内側可動歯部123がシール部210、211に接触して内側作動室6aが内側可動歯部123と固定歯部131とによってシールされる。このとき、外側可動歯部122が逃がし部205、206によって固定歯部131に対して非接触となっている。
可動スクロール120が内側冷媒吐出角度に位置するときには、内側可動歯部123がシール部210、211に接触して内側作動室6aが内側可動歯部123と固定歯部131とによってシールされる。このとき、外側可動歯部122が逃がし部205、2206によって固定歯部131に対して非接触となっている。
以上により、外側作動室4aによる冷媒圧縮の開始時、冷媒の吐出時、内側作動室6aによる冷媒圧縮の開始時、冷媒の吐出時に、外側作動室4a或いは内側作動室6aから冷媒が漏れる量を少なくすることができる。よって、外側作動室4a或いは内側作動室6aの各々で、冷媒漏れの影響の少ない安定してバランスの良い圧縮することが可能となり、ノイズ・振動の低減の悪化を防ぐことが可能となる。
以上により、冷媒圧縮の効率が低下することを抑制するスクロール圧縮機を提供することができる。
本実施形態では、外側可動歯部122の渦巻き方向内側端部(すなわち、巻き始めR部)はその曲率半径が小さくなっているものの、仕切り部BDの側面には、円弧状にシール部203が形成されている。このため、仕切り部BDの側面に外側可動歯部122を良好に接触させることができる。よって、外側作動室4aからの冷媒漏れをより一層抑えることも可能となり性能向上にもつながる。
本実施形態の外側可動歯部122のうち渦巻き方向内側(すなわち、巻き始め部)は、大きな冷媒圧力が加わり、圧力負荷が大きくなる。
そこで、外側可動歯部122のうち渦巻き方向内側の厚み方向の寸法t3を渦巻き方向外側の厚み方向の寸法t2よりも大きくしている。すなわち、外側可動歯部122のうち、一部の厚み方向の寸法t3は、外側可動歯部122のうち一部以外の他の部位の厚み方向の寸法t2よりも少なくとも1箇所、部分的に大きくなっている。それにより、外側可動歯部122の剛性が向上し、圧力負荷による歪が減少する。
同様に、内側可動歯部123のうち渦巻き方向内側の厚み方向の寸法t4を渦巻き方向外側の厚み方向の寸法t1よりも大きくしている。すなわち、内側可動歯部123のうち、一部の厚み方向の寸法t4は、内側可動歯部123のうち一部以外の他の部位の厚み方向の寸法t1よりも少なくとも1箇所、部分的に大きくなっている。それにより、内側可動歯部123の剛性が向上し、圧力負荷による歪が減少する。
このように外側可動歯部122、内側可動歯部123の剛性が向上し、圧力負荷による歪が減少する。このため、外側可動歯部122、内側可動歯部123の側面によるシールが確実に作用するため、一層の効率改善が見込める。
このような厚み方向の寸法の増大は、外側可動歯部122、内側可動歯部123の側面でシールを実施する部分で、効果があるため、外側可動歯部122、内側可動歯部123の任意の一部分を大きくしてもよい。
つまり、外側可動歯部122、内側可動歯部123のうちいずれか一方の歯部において、一部の領域の厚み方向の寸法を、他の領域の厚み方向の寸法に比べて大きくする。
ここで、本実施形態では、外側可動歯部122の渦巻き方向の外側(すなわち、巻き終わり部)で曲率半径が最大になるため、外側可動歯部122の渦巻き方向の外側の剛性が低い。
そこで、本実施形態では、外側可動歯部122の歯丈を内側可動歯部123の歯丈よりも小さくしているので、外側可動歯部122の剛性を向上させてシール性を向上させることができる。
一方、内側可動歯部123の歯丈が大きい場合には、内側可動歯部123には大きな圧縮反力が作用するため、内側可動歯部123の歯根元に掛かる応力が大きくなる。そこで、内側可動歯部123の厚み方向の寸法t2を外側可動歯部122の厚み方向の寸法t1よりも大きくすることにより、剛性を向上でき、信頼性を確保することが可能になる。また、内側可動歯部123のひずみも低減できるため、効率向上にもつながる。
歯部の厚み寸法を大きくする剛性の向上は、外側可動歯部122でも有効であり、内側可動歯部123および外側可動歯部122の両方に実施しても、背反は無い。
本実施形態では、固定歯部131の側面のうちシール部(200~203、210、211、212)と逃がし部(205、206、213、214)とを繋ぐ領域には、逃がし量が徐々に変化する徐変部Qa、Qdが設けられている。このため、シール部と逃がし部とを滑らかに繋ぐことにより、内側可動歯部123や外側可動歯部122が固定歯部131の側面に衝突したり、圧力変動などを抑制でき、ノイズ・振動の低減につながる。
特に、外側作動室4a、内側作動室6aを備える2段のスクロール圧縮機2では、外側作動室4a、内側作動室6aのそれぞれの圧縮効率のバランスが崩れた場合、片方の圧縮部に負荷が偏るため、著しく効率が低下するため、各段の効率を改善することによる効果は大きい。
なお、シール部と逃がし部とを低段側圧縮機構4と高段側圧縮機構6とを跨いで構成した場合でもあっても、シール部と逃がし部との間に徐変部Qa、Qdを設けることにより、シール部と逃がし部とを滑らかに繋ぐことができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、可動スクロール120が外側冷媒吐出角度に位置するときには、外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされる例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、次のようにする。
すなわち、本第2実施形態では、可動スクロール120が外側冷媒吐出角度に位置するときには、外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされないようにする。
具体的には、図16に示すように、シール部203が削除される。このため、可動スクロール120が外側冷媒吐出角度に位置するとき、仕切り部BDに対して外側可動歯部122が非接触のまま、外側作動室4aから冷媒が吐出されることになる。
さらに、固定歯部131のうち渦巻き方向の中心側のシール部211が削除される。このため、可動スクロール120が内側冷媒吐出角度に位置するとき、固定歯部131のうち渦巻き方向の中心側に対して外側可動歯部122が非接触のまま、内側作動室6aから冷媒が吐出されることになる。
以上説明した本実施形態では、シール部203、211以外の構成は、上記第1実施形態と同様である。
したがって、可動スクロール120が外側冷媒開始角度に位置するときには、外側可動歯部122がシール部200、201に接触して外側作動室4aが外側可動歯部122と固定歯部131とによってシールされる。このとき、内側可動歯部123が逃がし部213、214によって固定歯部131に対して非接触となっている。
可動スクロール120が内側冷媒開始角度に位置するときには、内側可動歯部123がシール部210、211に接触して内側作動室6aが内側可動歯部123と固定歯部131とによってシールされる。このとき、外側可動歯部122が逃がし部205、206によって固定歯部131に対して非接触となっている。
以上により、外側作動室4aによる冷媒圧縮の開始時、内側作動室6aによる冷媒圧縮の開始時に、外側作動室4a或いは内側作動室6aから冷媒が漏れる量を少なくすることができる。よって、外側作動室4a或いは内側作動室6aの各々で、冷媒漏れの影響の少ない安定してバランスの良い圧縮することが可能となり、ノイズ・振動の低減の悪化を防ぐことが可能となる。
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2実施形態では、外側作動室4aで圧縮された冷媒が内側作動室6aで圧縮される例について説明したが、これに代えて、次の(a)(b)のようにしてもよい。
(a)内側作動室6aで圧縮して吐出された冷媒が外側作動室4aで圧縮されるようにしてもよい。
(b)蒸発器13の冷媒出口と放熱器8の冷媒入口との間で内側作動室6aと外側作動室4aとが並列に接続される。内側作動室6aと外側作動室4aとがそれぞれ蒸発器13からの冷媒を圧縮して放熱器8に吐出する。
(2)上記第1、第2実施形態では、内側作動室6aと外側作動室4aといった2つの作動室を備えるスクロール圧縮機2について説明したが、これに代えて、3つ以上の作動室を備えるスクロール圧縮機2を本発明のスクロール圧縮機としてもよい。
(3)上記第1、第2実施形態では、電動モータ31からの回転力によって可動スクロール120を駆動して可動スクロール120を固定スクロール130に対して旋回させる例について説明した。しかし、これに代えて、電動モータ31からの回転力によって固定スクロール130を駆動して旋回させてもよい。これにより、固定スクロール130と可動スクロール120とが相対的に旋回することになる。
(4)上記第1、第2実施形態では、シール部と逃がし部とをインボリュート曲線を用いて形成した例について作成したが、これに代えて、インボリュート曲線以外の曲線を用いてシール部と逃がし部とを形成してもよい。
(5)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記第1~第2実施形態、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、スクロール圧縮機は、第1歯底面から突出して渦巻き状に形成されている第1歯部と、第1歯底面を底面とする凹状に形成されて第1歯部に沿って渦巻き状に形成されている外側溝部と、第1歯底面を底面とする凹状に形成されて、かつ外側溝部に対して第1歯部の渦巻き方向の内側に配置され、第1歯部に沿って渦巻き状に形成されている内側溝部と、を備える第1スクロールを備える。
スクロール圧縮機は、第2歯底面から外側溝部内に突出して渦巻き状に形成されて、第1歯部との間に外側作動室を形成する外側歯部と、第2歯底面から内側溝部内に突出して渦巻き状に形成されて、第1歯部との間に内側作動室を形成する内側歯部とを備える第2スクロールを備える。
スクロール圧縮機は、第1歯部の相互間にて第1歯部を、軸心を中心とする径方向に連結することにより、外側溝部と内側溝部とを仕切る仕切り部を備える。
スクロール圧縮機は、第2スクロールが軸心を中心として旋回する際に、外側歯部が外側作動室を変化させて冷媒を圧縮し、内側歯部が内側作動室を変化させて冷媒を圧縮する。
第2スクロールが軸心を中心とする所定角度に位置するとき、第1歯部の側面のうち外側作動室および内側作動室のうち一方の作動室を形成する第1領域は、内側歯部および外側歯部のうち一方の作動室を形成する一方の歯部の側面に接触して一方の作動室をシールするシール部を形成する。
第2スクロールが所定角度に位置するとき、第1歯部の側面のうち、外側作動室および内側作動室のうち一方の作動室以外の他方の作動室を形成する第2領域は、内側歯部および外側歯部のうち他方の作動室を形成する他方の歯部の側面が非接触となるように形成されている逃がし部を形成する。
第2の観点によれば、シール部は、第1歯部の側面において、基準曲線に沿って形成されている。逃がし部は、第1歯部の側面において、基準曲線に対してずれた位置に形成されている曲線に沿って形成されている。
基準曲線と逃がし部との間の間隔を逃げし量とする。第1歯部の側面のうち軸心を中心とする第1角度よりも大きい角度の領域には、シール部が形成され、かつ第1角度よりも小さい角度の領域には、逃がし部が形成されている場合には、第1歯部の側面のうち第1角度よりも角度が大きい領域には、角度が大きくなるにつれて逃がし量が徐々に小さくなる第1徐変部が形成されている。
第1歯部の側面のうち軸心を中心とする第2角度よりも小さい角度の領域には、シール部が形成され、かつ第2角度よりも大きい角度の領域には、逃がし部が形成されている場合には、第1歯部の側面のうち第1角度よりも角度が小さい領域には、角度が大きくなるにつれて逃がし量が徐々に大きくなる第2徐変部が形成されている。
これにより、シール部から逃がし部への移行、或いは、逃がし部からシール部への移行をスムーズに行うことができる。
第3の観点によれば、所定角度は、外側作動室により冷媒の圧縮を開始する第1圧縮開始角度であり、第2スクロールが第1圧縮開始角度に位置するとき、第1歯部の側面に外側歯部の側面が接触して一方の作動室としての外側作動室をシールする。
これにより、外側作動室により冷媒の圧縮を適切に行うことができる。よって、冷媒圧縮の効率が低下することを抑制することができる。
第4の観点によれば、所定角度は、内側作動室により冷媒の圧縮を開始する第2圧縮開始角度であり、第1圧縮開始角度と第2圧縮開始角度とがオフセットされており、第2スクロールが第2圧縮開始角度に位置するとき、第1歯部の側面に内側歯部の側面が接触して一方の作動室としての内側作動室をシールする。
これにより、内側作動室により冷媒の圧縮を適切に行うことができる。よって、冷媒圧縮の効率が低下することを抑制することができる。
第5の観点によれば、所定角度は、外側作動室により冷媒を吐出する第1吐出角度であり、第2スクロールが第1吐出角度に位置するとき、第1歯部の側面に外側歯部の側面が接触して一方の作動室としての外側作動室をシールする。
これにより、外側作動室により冷媒を吐出することを適切に行うことができる。よって、冷媒圧縮の効率が低下することを抑制することができる。
第6の観点によれば、所定角度は、内側作動室により冷媒を吐出する第2吐出角度であり、第1吐出角度と第2吐出角度とがオフセットされており、第2スクロールが第2吐出角度に位置するとき、第1歯部の側面に内側歯部の側面が接触して一方の作動室としての内側作動室をシールする。
これにより、内側作動室により冷媒を吐出することを適切に行うことができる。よって、冷媒圧縮の効率が低下することを抑制することができる。
第7の観点によれば、内側歯部および外側歯部は、第2歯部(124)を構成し、第1歯部および第2歯部の一方の歯部のうち、一部の厚み方向の寸法は、一方の歯部の一部以外の他の部位の厚み方向の寸法よりも少なくとも1箇所部分的に大きくなっている。
第8の観点によれば、外側圧縮室および内側圧縮室のうち一方の圧縮室は、他方の圧縮室によって圧縮された冷媒を吸入して圧縮する。
第9の観点によれば、内側歯部の歯丈は、外側歯部の歯丈よりも大きい。
第10の観点によれば、内側歯部および外側歯部は、第2歯部を構成し、第1歯部および第2歯部のうちいずれか一方の歯部のうち一方の圧縮室を構成する領域の厚み方向の寸法は、一方の歯部のうち他方の圧縮室を構成する領域の厚み方向の寸法よりも大きい。
これにより、一方の歯部のうち一方の圧縮室を構成する領域の剛性を高めることができる。