一般に、金属材料、例えば、アルミニウム又はその合金材料等による押出材(ビレット)を押出成形する押出プレス装置は、油圧で前進駆動させるメインシリンダのメインラムの先端部に、メインクロスヘッドを介して押出ステムが取り付けられている。押出プレス装置により押出材を押出成形する場合、エンドプラテン側に配置されたダイスに、コンテナシリンダ等でコンテナを押し付けた状態で、コンテナ内に収納された押出材を、該押出ステムを前進させてダイスに押圧(アプセット工程)させる。そして、メインラムをさらに前進させることにより、押出材を押出ステムによりダイスに押圧させて、ダイスから所定の製品を押出成形する(押出工程)。
押出プレス装置によるこのような押出成形において、エンドプラテン側に配置されたダイスに、コンテナシリンダ等でコンテナを押し付ける力をコンテナシール力と呼称する。コンテナシール力は、コンテナ内に収納された押出材を押出ステムにより押圧させる際、ダイスからではなく、ダイス端面及びコンテナ前端面間から押出材が押し出される、所謂「花咲現象」を防止するために、押出工程中、コンテナシリンダ等の油圧シリンダによりコンテナに付与させる力である。
ここで、図1を参照しながら、コンテナシール力を説明する。図1(a)は、複数のコンテナシリンダ28がエンドプラテン10側に配置された従来の押出プレス装置のコンテナ18周りの構成を説明するための概略平面図(一部断面含む)であり、図1(b)は図1(a)のA部詳細図である。ダイス16にコンテナ18を押圧させるコンテナシール力fは、図1(b)に示すように、ダイス16及びコンテナ18の当接面に発生する。また、図1(a)に示すように、エンドプラテン10側に配置された複数のコンテナシリンダ28のシリンダロッドがコンテナホルダ19に連結されており、コンテナホルダ19に固定されたコンテナ18をダイス16に押圧可能に構成されている。
また、先に説明したように、押出材20をダイス16に押圧させる押出ステム24がコンテナ18側に突出するようにメインクロスヘッド22の前端面に配置されており、メインクロスヘッド22の後端面には、メインシリンダ12A(図示せず)のメインラム12Bの一端側が固定され、他端側がメインシリンダ12Aに収納されている。このメインシリンダ12Aは、エンドプラテン10と対向するように配置されるメインシリンダハウジング12(図示せず)の略中央に配置され、さらに、メインシリンダハウジング12のメインシリンダ12Aの周囲に複数のサイドシリンダ26(図示せず)が配置され、サイドシリンダ26のシリンダロッド26Aがメインクロスヘッド22の後端面に連結されている。この構成において、押出工程やアプセット工程で、押出ステム24及びメインクロスヘッド22を押出方向に前進させる場合は、メインラム12B及びサイドシリンダ26の両方を駆動させ、押出工程完了後他、押出ステム24及びメインクロスヘッド22を後退させる場合は、サイドシリンダ26を駆動させる。
エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12はタイロッド14により連結されている。図示はしていないが、タイロッド14はエンドプラテン10の四隅及び対応するメインシリンダハウジング12の四隅を連結しており、押出工程中に、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12を互いに離間させる方向に作用する力(押圧作用力の反力)に抗するように構成されている。
一方、押出工程中、コンテナ18内に収納された押出材20を押出ステム24によりダイス16に押圧させる場合、押出材20に付与される押圧作用力により押出材20がコンテナ18内で円周方向に塑性変形して、押出材20外周面が、押出材20を収納するコンテナ18内周面に面接触する状態となるため、押出工程中、押出材20外周面と、押出材20を収納するコンテナ18内周面との間に摩擦力Fbが発生する。そのため、押出ステム24により押出材20に付与すべき、前進方向(エンドプラテン10に接近する方向)の押出作用力Fは、押出材20を介してダイス16に作用する所要押出力Faと摩擦力Fbとの和、すなわち、F=Fa+Fbで表される。
所要押出力Faは、上記摩擦力Fbが無い状態での、押出材20をダイス16から押出成形する際のダイス16の押出抵抗力であって、押出工程中の押出材20の温度が変動しなければ、押出工程中略均一である。一方、摩擦力Fbは、押出工程開始時、押出材20及びコンテナ18との接触面積(押出材20の押出方向のコンテナ18内の押出材長L)が一番大きな(最大押出材長Lmax)状態が最も大きく(最大摩擦力Fbmax)、押出工程の進行に伴う押出材20及びコンテナ18との接触面積(押出材長L)の減少に比例して減少し、押出完了時、押出材20及びコンテナ18との接触面積(押出材長L)が一番小さな(最小押出材長Lmin)状態が最も小さい(最小摩擦力Fbmin)。そのため、図1(c)に示すように、押出工程開始時の押出作用力F(Fa+Fbmax)は、押出工程完了時にFa+Fbminまで減少する。図1(c)の横軸は、押出材20の押出材長Lで、原点が、最大押出材長Lmaxである。同じく縦軸は押出作用力Fを示す。
そして、この押出材20及びコンテナ18間の摩擦力Fbの反力Fb’は、コンテナ18に対して、コンテナ18をダイス16に押圧させる方向、すなわち、コンテナシール力fと同じ方向に作用する。この反力Fb’は、一般的に、押出作用力Fの30%前後であり、少なくとも、押出工程開始時の最大摩擦力Fbmaxの最大反力Fb’maxは、「花咲現象」を防止するコンテナシール力fとして十分な力である。そのため、コンテナシリンダ28によるコンテナシール力は、先に説明したアプセット工程時に必要な初期コンテナシール力のみが付与され、図1(d)に示すように、押出工程開始時は、コンテナ18に対して作用させるコンテナシール力fを、押出作用力Fの最大反力Fb’maxのみ(f=Fb’max)として、コンテナシリンダ28によるコンテナシール力を付与しない。
しかしながら、先に説明した様に、摩擦力Fb(反力Fb’)が、押出工程の進行に伴い減少するため、図1(d)に示すように、押出工程開始時のコンテナシール力f(Fb’max)は、コンテナシリンダによりコンテナシール力を付与しなければ、最小反力Fb’minまで減少する。図1(d)の横軸は、図1(c)と同じく、押出材長Lで、縦軸はコンテナシール力fを示す。一般的には、この最小反力Fb’minが、「花咲現象」を防止するコンテナシール力fとして不十分であるため、「花咲現象」を防止可能なコンテナシール力fを必要コンテナシール力fcとして、反力Fb’によるコンテナシール力fが必要コンテナシール力fcまで減少したタイミング(押出材長L=Lc)で、コンテナシリンダ28によるコンテナシール力fの付与(制御)を開始させて、図1(d)に示すように、領域C(斜線部)において、減少する反力Fb’によるコンテナシール力fをコンテナシリンダ28により増加補正させ、押出工程完了までコンテナシール力fをf=fcに保持させるコンテナシール力制御方法が実施される。
上記のコンテナシール力制御方法の実施のため、コンテナシリンダ28には、エンドプラテン10に対して、コンテナ18を前進・後退させるための、メインの作動油供給源からの油圧回路とは別に、コンテナシリンダ28へ作動油を供給させる専用の作動油供給源及び、同作動油供給源から供給させる作動油の圧力を制御可能な圧力制御手段を含む専用の油圧回路が設けられる。このコンテナシール力制御方法用の作動油供給源はコンテナシールポンプと呼称される。
このような従来のコンテナシール力制御により、押出工程後半に発生する可能性が高い「花咲現象」を防止できる。しかしながら、上記の摩擦力Fbの変動(減少)による前者の押出作用力Fの変動(減少)や、後者のコンテナシール力fの変動(減少)は、押出工程中、ダイス16を介してエンドプラテン10に伝播され、押出成形される製品の押出用開口部10Aを有するエンドプラテン10の撓み量の変動(主として湾曲変形による撓み)や、エンドプラテン10の押出用開口部10Aを覆うように配置されているダイス16の撓み量(押出方向の圧縮や湾曲変形による撓み)の変動を生じさせる。この撓み量の変動は、押出成形によって得られる製品の、長手方向(押出方向)の肉厚や形状の不均一や、寸法・形状精度の悪化を招くという問題がある。
前述したような問題を鑑み、変動(減少)するコンテナシール力を補正し、押出工程中のコンテナシール力を略一定に保持する押出プレス装置や押圧プレス装置の押出制御方法が開示されている。
例えば、特許文献1には、メインシリンダと油圧コンテナシリンダとをメインシリンダハウジングに備えるとともに、コンテナをダイスと離間する方向に単独又は該油圧式コンテナシリンダと協働して移動可能な油圧式アシストシリンダをエンドプラテンに備える押出プレス装置が開示されている。この特許文献1には、油圧式アシストシリンダによりコンテナ(コンテナホルダ)を押出方向と反対側に押圧して、押出工程開始時から押出工程中にダイスに過大に作用するコンテナシール力を削減させ、押出工程中にダイスに作用するコンテナシール力を、押出開始時から押出完了時まで一定となるように制御する等圧押出動作(等圧押出制御方法)が開示されている。(特許文献1明細書段落0019他)
特許文献1に記載されている等圧押出制御方法と、先に説明した従来のコンテナシール制御方法との主要な差違は、後述する領域Bにおいて、コンテナシリンダとは別の構成(油圧式アシストシリンダ)を駆動させる点のみである。図2を参照しながら、特許文献1の等圧押出制御方法の概要を説明する。図1(d)と同じく、図2の横軸は、押出材長Lで、縦軸はコンテナシール力fを示す。
等圧押出制御方法においては、コンテナシール力fと同じ方向に作用する、押出工程開始時の最大摩擦力Fbmaxの反力である最大反力Fb’maxを押出工程中の最大コンテナシール力fmaxとみなす。また、先に説明した様に、反力Fb’は、押出工程の進行に伴い減少するため、押出完了時の最小反力Fb’minを最小コンテナシール力fminとみなす。ここで、図2に示すように、この最大コンテナシール力fmax及び最小コンテナシール力fmin間に、基準コンテナシール力1(fs1)を設定する。基準コンテナシール力1(fs1)は、「花咲現象」を防止可能なコンテナシール力であることは言うまでもない。
次に、押出工程開始後、基準コンテナシール力1(fs1)が反力Fb’によるコンテナシール力よりも小さい領域B(斜線部)においては、コンテナをダイスから離間させる方向(反押圧方向)に押圧させることにより、コンテナシール力f(領域Bにおいては反力Fb’)が基準コンテナシール力1(fs1)になるように押出作用力Fを減少補正させる。特許文献1の等圧押出制御方法においては、この減少補正が、コンテナをダイスから離間させる方向に移動可能な油圧式アシストシリンダへの供給作動油の油圧制御により行われる。
また、押出工程が進行し、反力Fb’によるコンテナシール力fが、基準コンテナシール力1(fs1)よりも小さくなる領域C(斜線部)においては、コンテナシール力制御方法と同様に、コンテナシリンダへの供給作動油の油圧制御により、コンテナシール力f自体を増加させて、コンテナシール力fが基準コンテナシール力1(fs1)になるようにコンテナシール力fを増加補正させる。
このようにして、押出工程中(領域B及び領域C)に、コンテナシール力fを一定(基準コンテナシール力1(fs1))に保持させることができる。すなわち、等圧押出制御方法の、コンテナシール力制御方法との差違は、領域Bにおいて、反力Fb’によるコンテナシール力fを減少させる点である。
特許文献1に開示されているような等圧押出制御方法においては、押出工程中にダイスに作用するコンテナシール力を、押出開始時から押出完了時まで一定となるように制御することにより、押出工程の進行に伴うコンテナシール力の減少が防止でき、押出工程後半に発生することが多い、ダイス端面及びコンテナ前端面間から押出材が押し出される、所謂「花咲現象」を防止することができる。また、従来のコンテナシール力制御方法では、コンテナシール力の変動を補正できなかった押出工程開始後の領域Bにおいても、コンテナシール力が略一定に保持されるため、ダイス16の撓み量の変動が抑制され、押出成形によって得られる製品の、長手方向(押出方向)の肉厚や形状の不均一や、寸法・形状精度の悪化を抑制することができる。
しかしながら、このような等圧押出制御方法においては、摩擦力Fbによるコンテナシール力fが、基準コンテナシール力1(fs1)よりも大きな領域Bにおいて、コンテナをダイスから離間させる方向(反押圧方向)に押圧させて、押出作用力Fを減少補正させる。すなわち、タイロッド14で連結されるエンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に作用する押出作用力Fの反力を、領域Bにおいて、増加させた状態から徐々に減少(変動)させる。
すなわち、コンテナシール力fは一定に保持されるものの、そのために、押出工程中の領域Bにおいて、タイロッド14で連結されるエンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に作用する押出作用力Fの反力は、領域Bから、領域B及び領域Cの変位点に到るまで減少し続ける。その結果、押出工程中に、タイロッド14で連結されるエンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に作用する押出作用力Fの反力の変動(減少)が、ダイス16を介してエンドプラテン10に伝播され、エンドプラテン10の撓み量(主として湾曲変形による撓み)や、ダイス16の撓み量(押出方向の圧縮や湾曲変形による撓み)の変動を招き、これら撓みの変動の抑制には限界があるという問題がある。
上記問題を解決するため、特許文献1に開示された押出プレス装置のように、メインシリンダハウジングにコンテナシリンダが配置される形態において、例えば、図2に示す基準コンテナシール力1(fs1)をできるだけ押出工程開始時の最大コンテナシール力fmax(Fb’max)に近づける場合、押出作用力Fを減少させる領域Bが狭くなり、コンテナシール力fを増加させる領域Cが大きくなる。これにより、押出作用力の変動は、特許文献1の等圧押圧制御方法よりも抑制できるが、領域Cにおいてコンテナシール力をより増加させるために、メインシリンダハウジングに配置させるコンテナシリンダを、より大きな出力の発生が可能なシリンダに変更する必要がある。
また、逆に、基準コンテナシール力1(fs1)をできるだけ押出工程完了時の最小コンテナシール力fminに近づける場合、押出作用力Fを減少させる領域Bが広くなり、コンテナシール力fを増加させる領域Cが狭くなる。これにより、押出作用力Fの変動は抑制できるが、領域Bにおいて押出作用力Fを減少させるために、エンドプラテンに配置させる油圧式アシストシリンダをより大きな出力の発生が可能なシリンダに変更する必要があるだけでなく、押出作用力Fをより減少させる制御であるため、エネルギー効率の観点から好ましくない。また、結果的にコンテナシール力fを減少させるため、花咲現象の発生も懸念される。
ここで、特許文献1の押出プレス装置のように、メインシリンダハウジングにコンテナシリンダが配置される形態においては、図3に示すように、メインシリンダハウジング12の略中央にメインシリンダ12Aが配置され、その周囲には、メインクロスヘッドを前進・後退させる、複数のサイドシリンダ26が配置される。さらに、メインシリンダハウジング12の四隅にはタイロッド14が配置されている。図3は、コンテナシリンダがメインシリンダハウジングに配置される特許文献1の押出プレス装置のメインシリンダハウジング12側の概略正面図である。
この形態において、特許文献1の明細書段落0007には、メインシリンダハウジングにコンテナシリンダが配置される従来の押出プレス装置においては、「このようにコンテナシリンダ16をメインシリンダ4へ取付ける構成としたので、押出プレスにおける他部品と、他機構との干渉の有無等の関係からコンテナストリップ力を大きくすることは。設計強度や構造上の困難を伴うという問題があった。」の記載があり、コンテナストリップ力については、「コンテナをダイスから引き離す(反押出)方向への作用力である。」の記載(特許文献1の明細書段落0021)がある。
すなわち、この形態において、コンテナシール力及びコンテナストリップ力のいずれであっても、コンテナシリンダをより大きな出力の発生が可能なシリンダに変更する場合、メインシリンダ12Aの周囲で、且つ、隣り合うタイロッド14間に、複数のサイドシリンダ26を回避して、複数のコンテナシリンダ28を配置させる必要があるため、少なくとも、配置上の制約により、コンテナシリンダ28を、十分な出力の発生が可能なシリンダ径で構成してメインシリンダハウジング12に配置させることが困難であるという問題がある。
一方、メインシリンダハウジング12を大きくすれば、十分な出力の発生が可能なシリンダ径で構成されたコンテナシリンダ28の配置が可能になるが、これに伴いコンテナホルダ19や他の関連部位も大きく高剛性にする必要が生じる。
また、本来、押出工程中に必要なコンテナシール力は、先に説明した様に、押出工程開始時は、押出作用力Fの最大摩擦力Fbmaxの最大反力Fb’maxで十分であり、反力Fb’の減少に伴い、「花咲減少」の防止に必要なコンテナシール力が付与できれば良い。また、押出工程完了から次の押出工程開始までの間(アイドル時間)、コンテナ18内に残った押出材(ディスカード)のコンテナ18からの排出や、新たな押出材20のコンテナ18への収納等で、コンテナ18をエンドプラテン10に対して進退させる(図1参照)必要があり、生産性向上のためのアイドル時間の短縮には、コンテナシリンダはその出力よりも駆動速度が優先され、コンテナシリンダのシリンダ径は小さい方が好適である。そのため、コンテナシリンダの出力を大きくするために、コンテナシリンダのシリンダ径を大きくする必要性が低く、等圧押出制御方法においては、領域Bにおいて押出作用力Fを減少補正させるために、コンテナシリンダ以外の構成(特許文献1:油圧式アシストシリンダ)が採用されることが一般的であった。
また、図1で説明したような従来の押出プレス装置において、サイドシリンダ26によりメインクロスヘッド22の後退動作を行わせるため、コンテナ18の後退時に、コンテナシリンダ28から排出された排出作動油の全量を、サイドシリンダ26に供給させる場合がある。しかしながら、駆動速度を優先する観点から、コンテナシリンダのシリンダ径は小さい方が好適であり、また、コンテナシリンダのシリンダ径を大きくする必要性が低いことから、コンテナ18が後退限位置に到達するまでに、コンテナシリンダ28から排出される排出作動油の容積は、サイドシリンダ26により、メインクロスヘッド22をその後退限位置に到達させるのに必要な供給作動油の容積よりも少ないことが一般的であった。そのため、コンテナ18の後退限位置への到達後、油圧回路を切り換えて、メインの作動油供給源からの作動油をサイドシリンダ26に供給させて、後退限位置に未到達のメインクロスヘッド22をあらためて後退限位置までに後退させる必要があり、メインクロスヘッド22を後退限位置まで後退させる(メインクロスヘッド後退工程)所要時間の短縮が困難であった。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、シリンダ径の大径化を抑制しつつ、大きな出力の発生が可能なコンテナシリンダをメインシリンダハウジングに配置させて、大きなコンテナシール力やコンテナスプリット力を得ることができる押出プレス装置と、同押出プレス装置を使用するメインクロスヘッドの後退制御方法を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、エンドプラテンと、
前記エンドプラテンと対向するように配置され、前記エンドプラテンと複数のタイロッドにより連結されるメインシリンダハウジングと、
前記メインシリンダハウジングの略中央に配置されるメインシリンダと、
前記エンドプラテン及び前記メインシリンダハウジング間に配置され、前端面に突出するように押出ステムが配置されるメインクロスヘッドと、
前記メインクロスヘッドの後端面に一端側が固定され、他端側が前記メインシリンダに収納され、前記メインクロスヘッドを前記エンドプラテンに接近させるように前進させるメインラムと、
前記メインシリンダハウジングの、前記メインシリンダの周囲に配置され、前記メインクロスヘッドを前記エンドプラテンに接近させるように前進させる、又は前記エンドプラテンから離間させるように後退させる複数のサイドシリンダと、
前記エンドプラテン及び前記メインクロスヘッド間に配置され、押出材が収納されるコンテナと、
前記コンテナを前記エンドプラテンに対して接近させるように前進させる、又は前記エンドプラテンから離間させるように後退させる複数のコンテナシリンダと、
を含む押出プレス装置であって、
前記コンテナシリンダが、前記メインシリンダハウジングの前記メインシリンダの周囲に配置され、
前記コンテナシリンダのシリンダボディが、前記コンテナシリンダのシリンダロッドの長手方向に複数の油室を備え、該油室に連通する前記シリンダロッドに、該油室毎に該油室内で該長手方向に摺動可能なピストン部が形成されると共に、
前記油室内に、前記ピストン部により前記長手方向に2分割される分割油室が形成され、
前記コンテナシリンダによる前記コンテナの後退時に、前記コンテナシリンダの各前記油室から排出される排出作動油を、
前記サイドシリンダによる前記メインクロスヘッドの後退のために、前記サイドシリンダへ供給する連通状態と、前記サイドシリンダへ供給しない閉止状態と、を任意で選択可能なメインクロスヘッド後退用油圧回路を備える
ことを特徴とする押出プレス装置によって達成される。
また、本発明に係る押出プレス装置においては、前記コンテナを、前記コンテナシリンダにより前記コンテナの前進限位置から後退限位置まで後退させる間に、前記コンテナシリンダの各前記油室から排出される排出作動油の合計容積が、
押出前進限位置にある前記押出ステム及び前記メインクロスヘッドを、前記サイドシリンダにより前記メインクロスヘッドの後退限位置まで後退させるのに必要な供給作動油の容積と略同じ、又は、該供給作動油の容積よりも大きくなるように、前記コンテナシリンダが構成されることが好ましい。
一方、本発明に係る押出プレス装置で、上述したようなメインクロスヘッド後退用油圧回路を備える押出プレス装置や、
前記コンテナを、前記コンテナシリンダにより前記コンテナの前進限位置から後退限位置まで後退させる間に、前記コンテナシリンダの各前記油室から排出される排出作動油の合計容積が、
押出前進限位置にある前記押出ステム及び前記メインクロスヘッドを、前記サイドシリンダにより前記メインクロスヘッドの後退限位置まで後退させるのに必要な供給作動油の容積と略同じ、又は、該供給作動油の容積よりも大きくなるように、前記コンテナシリンダが構成される押出プレス装置においては、
押出工程完了後、作動油供給源から前記サイドシリンダへ作動油を供給する油圧回路を閉止させ、前記メインクロスヘッド後退用油圧回路の閉止状態を連通状態にさせるコンテナ後退準備工程と、
前記コンテナ後退準備工程後、前記作動油供給源から前記コンテナシリンダに作動油を供給して、前記コンテナを後退限位置まで後退させるコンテナ後退工程と、
前記コンテナ後退工程により前記コンテナシリンダから排出される作動油を、前記メインクロスヘッド後退用油圧回路を介して前記サイドシリンダに供給することにより、前記メインクロスヘッドを後退限位置まで後退させるメインクロスヘッド後退工程と、
を含み、
前記コンテナ後退工程の完了と略同時、又は、前記コンテナ後退工程の完了前に、前記メインクロスヘッド後退工程を完了させる、メインクロスヘッド後退制御方法を行っても良い。
本発明に係る押出プレス装置は、前記コンテナシリンダのシリンダボディが、前記コンテナシリンダのシリンダロッドの長手方向に複数の油室を備え、該油室に連通する前記シリンダロッドに、該油室毎に該油室内で該長手方向に摺動可能なピストン部が形成されると共に、
前記油室内に、前記ピストン部により前記長手方向に2分割される分割油室が形成されるため、シリンダ径の大径化を抑制しつつ、大きな出力の発生が可能なコンテナシリンダをメインシリンダハウジングに配置させて、大きなコンテナシール力やコンテナスプリット力を得ることができる。また、コンテナ18が後退限位置に到達するまでに、コンテナシリンダ28から排出される排出作動油の容積を増加させて、前記コンテナ後退工程により前記コンテナシリンダから排出される作動油を、前記メインクロスヘッド後退用油圧回路を介して前記サイドシリンダに供給することにより、前記コンテナ後退工程の完了と略同時、又は、前記コンテナ後退工程の完了前に、前記メインクロスヘッド後退工程を完了させて、メインクロスヘッド後退工程の所要時間を短縮することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る押出プレス装置の主要構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係る押出プレス装置の概略平面図(一部断面含む)である。図1と同じ、あるいは機能的に変わらない構成については、図1と同じ符号を付与するものとする。
第1実施形態に係る押出プレス装置100は、エンドプラテン10と、エンドプラテン10と対向するように配置され、エンドプラテン10と複数のタイロッド14により連結されるメインシリンダハウジング12と、メインシリンダハウジング12の略中央に配置されるメインシリンダ12Aと、を含む。また、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に配置され、前端面に突出するように押出ステム24が配置されるメインクロスヘッド22と、メインクロスヘッド22の後端面に一端側が固定され、他端側がメインシリンダ12Aに収納され、メインクロスヘッド22をエンドプラテン10に接近させるように前進させるメインラム12Bと、を含む。
さらに、メインシリンダハウジング12の、メインシリンダ12Aの周囲に配置され、メインクロスヘッド22をエンドプラテン10に接近させるように前進させる、又はエンドプラテン10から離間させるように後退させる複数のサイドシリンダ26と、エンドプラテン10及びメインクロスヘッド22間に配置され、押出材20が収納されるコンテナ18と、コンテナホルダ19に固定されたコンテナ18をエンドプラテン10に対して接近させるように前進させる、又はエンドプラテン10から離間させるように後退させる複数のコンテナシリンダ128と、を含む。
図1に示す押出プレス装置と、第1実施形態に係る押出プレス装置100との主な相違点は、コンテナシリンダ128が、メインシリンダハウジング12に配置されており、押出工程時、エンドプラテン10に配置されるダイス16に、コンテナ18をメインシリンダハウジング12側から前進させて押圧させる点である。
ここで、第1実施形態に係る押出プレス装置100のコンテナシリンダ128の構成について図5を参照しながら説明する。図5はコンテナシリンダ128のシリンダロッド128Aを後退限位置まで後退させた状態を示す。コンテナシリンダ128は、シリンダロッド128Aの長手方向に複数の油室を備え、該油室に連通するシリンダロッド128Aに、油室毎に油室内で長手方向に摺動可能なピストン部が形成されると共に、油室内に、ピストン部により長手方向に2分割される分割油室が形成されることを特徴とする。
具体的には、コンテナシリンダ128は、シリンダロッド128Aの長手方向に、コンテナ18側(前方)から、連続する2つの油室51及び油室61を備え、それぞれの油室に連通するシリンダロッド128Aは、前方の油室51に連通するロッド部52と、後方の油室61に連通するロッド部62とが、ねじ込み構造等により油室51側で連結されるよう構成されている。また、前方の油室51は、前方をロッド部52が貫通するシリンダボディ53に形成され、後方の油室61はシリンダボディ63に形成される。そして、シリンダボディ53の後方開口部及びシリンダボディ63の前方開口部を対向するように連結部71に固定させ、油室61を連通するロッド部62を連結部71に貫通させて、油室51及び油室61がそれぞれ独立した油室として形成される。
一方、ロッド部52及びロッド部62の油室51側での連結部分には、油室51を長手方向に2分割させるピストン部54が、該連結部分の外周面にねじ込み構造等により取付・形成される。また、油室61を長手方向に2分割させるピストン部64が、ロッド部62の後端にねじ込み構造等により取付・形成される。シリンダボディ53の前方には、ロッド部52用のシール部材等を固定するシール固定部材55が取り付けられ、シリンダボディ63の後方開口部には、同開口の閉塞及びシール部材の固定を兼用する閉塞部材65が取り付けられている。
上記の構成において、説明上、油室51の前方(ロッド部52側)を分割油室56A、後方(ピストン部54及び連結部71間)を分割油室56Bと呼称する。同様に、ピストン部64により長手方向に2分割された油室61の前方(ロッド部62側)を分割油室66A、後方(ピストン部64及び閉塞部材65間)を分割油室66Bと呼称する。そして、ピストン部54及びピストン部64により長手方向に2分割された油室51及び油室62のそれぞれの分割油室に油圧配管が接続されるものとする。すなわち、コンテナ18を前進・押圧させる場合は、分割油室56B及び分割油室66Bの少なくとも一方に作動油が供給され、コンテナ18を後退させる場合は、分割油室56A及び分割油室66Aの少なくとも一方に作動油が供給される。尚、図5は、コンテナシリンダ128の具体的構造の一例であって、コンテナシリンダ128の構造は、図5に示す構造に限定されるものではない。また、図を簡単にするために、図5において、シール部材、ねじ込み構造、固定部材(ボルト等)の図示は省略している。
第1実施形態に係る押出プレス装置100においては、上記のような構成のコンテナシリンダにより、シリンダ径の大径化を抑制しつつ、複数の油室の合計受圧面積を大きく確保して、該複数の油室の全てに作動油を供給させることにより大きな出力の発生が可能になると共に、配置上の制約があっても、コンテナシリンダをメインシリンダハウジングに配置させることができる。その結果、第1実施形態に係る押出プレス装置100において、大きなコンテナシール力やコンテナスプリット力を得ることができる。また、該複数の油室の1つに作動油を供給させることにより、供給作動油量を増加することなく、コンテナシリンダを駆動させることができる。
第1実施形態に係る押出プレス装置100においては、先に、図2を参照しながら説明したコンテナシール力制御方法において、図2に示す基準コンテナシール力f’をできるだけ押出工程開始時の最大コンテナシール力fmax(Fb’)に近づけることが可能となり、押出作用力Fの変動を従来のコンテナシール力制御方法よりも抑制することができる。
一方、第1実施形態に係る押出プレス装置100においては、メインクロスヘッド22を前進させる際の、メインシリンダ12A内の作動油の圧力、又は、メインシリンダ12Aへ供給される作動油の圧力を検出する圧力検出手段81と、コンテナ18を、コンテナシリンダ128により前進させる際に、コンテナシリンダ128の各油室に作動油を供給する、等圧押出制御用作動油供給源82及び等圧押出制御用圧力制御手段83を含む等圧押出制御用油圧回路84を備えることにより、特許文献1の等圧押出制御方法よりも、さらに、押出作用力Fの変動を抑制した等圧押出制御方法が可能である。これを、図6を参照しながら説明する。
上記の構成は、先に説明したように、コンテナ18を前進・後退させるための、メインの作動油供給源からの油圧回路とは別の専用の油圧回路であり、上記の等圧押出制御用作動油供給源82が、先に説明したコンテナシールポンプと考えて良い。この等圧押出制御用作動油供給源82は、押出工程中の等圧押出制御方法の際にのみ使用するものではなく、押出工程以外においては、メインの作動油供給源と共に駆動させるものであるが、図6(a)においては、油圧回路を簡単にするために、メインの作動油供給源及び該供給源からの油圧回路の図示は省略している。図6(a)は、第1実施形態に係る押出プレス装置により等圧押出制御方法を行うための概略油圧回路図であり、図6(b)は、等圧押出制御方法を説明するためのグラフである。図6(b)の横軸は押出材長Lで、縦軸はコンテナシール力fを示す。
押出工程において、押出ステム24を前進させて、コンテナ18に収納された押出材20をダイス16から押し出す際、図6(a)に示すように、メインシリンダ12A及びサイドシリンダ26には、図示しないメインの作動油供給源(1つ以上の油圧ポンプ)から、所望する押出作用力F且つ所望する押出速度で、押出ステム24及びメインクロスヘッド22を前進させるために必要な圧力及び吐出量の作動油が供給される。
押出工程開始時には、既に、コンテナシリンダ128によりコンテナ18を前進させて、ダイス16にコンテナ18を押圧させるコンテナシール工程が完了している。そのため、コンテナシリンダ128の分割油室56Bと分割油室56Bには作動油が初期コンテナシール力に準じた圧力で満たされ、等圧押出制御用油圧回路84でコンテナシール力fを制御可能な状態にある。
まず、押出工程の開始時に、メインシリンダ12Aやサイドシリンダ16の油室や、これらに作動油を供給する油圧回路に配置される圧力検出手段81(圧力ピックアップ等の圧力センサ)により検出された、作動油の押出開始時圧力により、該押出開始時圧力に基づく押出開始時実押出作用力を算出させる。また、該押出開始時実押出作用力により、コンテナ18を介してダイス16に作用する力、すなわち、押出作用力Fによる押出材20及びコンテナ18間の最大摩擦力Fbmax(=最大反力Fb’max)も算出させ、この最大反力Fb’maxを基準コンテナシール力2(fs2)として設定する(基準コンテナシール力設定工程)。これらの算出はコントローラ85により行われる。
引き続き、押出工程中、圧力検出手段81により検出された、作動油の押出中圧力に基づく押出中実押出作用力と、該押出中実押出作用力による押出中の摩擦力Fb(=反力Fb’)も算出させ、この反力Fb’を押出中コンテナシール力fexとし、この押出中コンテナシール力fexと基準コンテナシール力fsとの差違である減少コンテナシール力fdを算出する(減少コンテナシール力算出工程)。これらの算出もコントローラ85により行われる。例えば、減少コンテナシール力算出工程を、図6(b)を参照しながら説明すると、押出材長LがL1の時点における反力Fb’を押出中コンテナシール力fex(fex=Fb’)とし、コントローラ85によりこの押出中コンテナシール力fexと基準コンテナシール力2(fs2)との差違である減少コンテナシール力fd(fd=fs2-fex)を算出する。この減少コンテナシール力fdは、押出工程中減少する摩擦力Fb又は反力Fb’の減少量(Fbmax-Fb又はFb’max-Fb’)と略同じである。
そして、減少コンテナシール力算出工程により算出された減少コンテナシール力fdと略同じ前進方向の力を、コンテナシリンダ128によりコンテナ18に付与できる、コンテナシリンダ128への作動油の供給圧力であるコンテナシール力補完圧力Paをコントローラ85により算出する(コンテナシール力補完圧力算出工程)。
第1実施形態に係る押出プレス装置100の等圧押出制御方法は、等圧押出制御用油圧回路84において、このような工程によりリアルタイムで算出されるコンテナシール力補完圧力Paで、等圧押出制御用作動油供給源82からコンテナシリンダ128の各油室(分割油室56B及び分割油室66B)に作動油が供給されるよう、等圧押出制御用圧力制御手段83が制御される。等圧押出制御用作動油供給源82は可変吐出量油圧ポンプであることが好ましく、等圧押出制御用圧力制御手段83は、リアルタイムで油圧回路の作動油圧力の制御が可能な圧力制御機器、例えば、比例電磁式リリーフ弁等が採用されれば良い。
第1実施形態に係る押出プレス装置100において、上記の等圧押出制御方法を実施させることにより、押出工程の開始から完了まで、減少する押出作用力Fにより、減少する反力Fb’(減少コンテナシール力fd)、すなわち、図6(b)に示す領域Dを、コンテナシール力補完圧力Paの作動油が供給されるコンテナシリンダ128により、増加補正させることができる。その結果、押出工程中に、コンテナシール力fを略一定(基準コンテナシール力fs(=Fb’max)に保持させることができる。
また、上記の等圧押出制御方法においては、図6(b)に示す領域D(斜線部/=減少コンテナシール力fd)を、メインシリンダハウジング12に配置されるコンテナシリンダ128により、メインシリンダハウジング12側から、コンテナ18をダイス16に押圧させて増加補正させるものである。先に説明したように、この減少コンテナシール力fdは、押出工程中減少する摩擦力Fbの減少量(Fbmax-Fb)と略同じであり、増加補正時のコンテナシリンダ128に作用する反力は、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に作用する。
すなわち、押出工程中に減少する押出作用力Fの減少分と、同じ方向に作用する略同じ力が、上記の等圧押出制御方法において増加補正されるため、押出工程中に、エンドプラテン10及びメインシリンダハウジング12間に作用する力(押出作用力Fの反力)も略一定に保持されることになる。言い換えれば、上記の等圧押出制御方法においては、図6(b)に示す領域D(=減少コンテナシール力fd)を増加補正させることにより、図1(c)の、押出作用力Fの押出工程中の変動を示すグラフにおいて、押出工程開始時の押出作用力F(Fa+Fbmax)が、押出工程完了まで維持されることになる。
その結果、ダイス16を介してエンドプラテン10に伝播される押出作用力Fが押出工程中略一定に維持される(押出作用力Fの変動が無くなる)ため、エンドプラテン10の撓み量(主として湾曲変形による撓み)や、ダイス16の撓み量(押出方向の圧縮や湾曲変形による撓み)も、押出工程開始時の状態が同工程完了まで維持される。これにより、押出成形によって得られる製品の、長手方向(押出方向)の肉厚や形状の不均一や、寸法・形状精度の悪化を、特許文献1の等圧押出制御方法よりもさらに抑制することができる。
尚、図6は、第1実施形態に係る押出プレス装置により等圧押出制御方法を行うための概略油圧回路図であるため、説明に必要と思われる主要なバルブや圧力制御機器についてのみ符号を付与し説明した。したがって、実際の油圧回路に必要な全ての油圧機器は記載しておらず、また、記載したバルブで、符号を付与していないバルブについては、図6中に「開」、「閉」を図示するに留めた。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る押出プレス装置と、同押出プレス装置のメインクロスヘッド後退制御方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係る押出プレス装置によりメインクロスヘッド後退制御方法を行うための概略油圧回路図である。第2実施形態に係る押出プレス装置200自体は、メインシリンダハウジング12に配置されるコンテナシリンダ128の構成を含め、第1実施形態に係る押出プレス装置100(図4及び図5)の構成と基本的に同じである。したがって、図4及び図5と同じ、あるいは機能的に変わらない構成については、両図と同じ符号を付与し説明を省略する。
第2実施形態に係る押出プレス装置200と、第1実施形態に係る押出プレス装置100との主な相違点は、装置自体ではなく装置を駆動させる油圧回路にある。具体的には、コンテナシリンダ128によるコンテナ18(コンテナホルダ19)の後退時に、コンテナシリンダ128の各油室(油室51及び油室61)から排出される排出作動油を、サイドシリンダ26によるメインクロスヘッド22の後退のために、サイドシリンダ26へ供給する連通状態と供給しない閉止状態と、を任意で選択可能なメインクロスヘッド後退用油圧回路284を備える点である。
第2実施形態に係る押出プレス装置100においては、押出工程完了後、次の押出工程のため、コンテナ18や押出ステム24及びメインクロスヘッド22を後退させる際の所要時間を、コンテナシリンダ128の特徴を活用して短縮させるメインクロスヘッド後退制御方法が可能である。
押出工程完了後、コンテナ18及びメインクロスヘッド22(押出ステム24)を後退させて、コンテナ18内に残った押出材20(ディスカード)を、ダイス16端面に露出させる。次に、ダイス16及びコンテナ18間に、上方から、図示しないシャー装置(ディスカード切断装置)等を降下させて、ダイス16端面に露出させたディスカードを除去する。そして、メインクロスヘッド22を後退限位置まで後退(メインクロスヘッド後退工程)させて、コンテナ18内への新たな押出材20の収納準備を行う。
具体的には、まず、メインの作動油供給源であるメインポンプ282(通常は複数台)から、サイドシリンダ26へ作動油を供給する油圧回路を、バルブ201Cを閉じて閉止させ、メインクロスヘッド後退用油圧回路284の閉止状態を、バルブ201Bを開いて連通状態にさせる(コンテナ後退準備工程)。次に、コンテナ18及び押出ステム24間に、新たな押出材20を供給する空間長を確保するため、バルブ201Aを開いて、メインポンプ282からコンテナシリンダ28の分割油室56A(油室51)及び分割油室66A(油室61)に作動油を供給して、コンテナ18を後退限位置まで後退させる(コンテナ後退工程)。尚、コンテナ18の後退速度を早めるため、メインポンプ282からコンテナシリンダ28の分割油室56A(油室51)及び分割油室66A(油室61)のいずれか一方の分割油室のみに作動油を供給して、他方の分割油室には、図示しないタンクラインを開放させて、作動油タンクから作動油を吸引させても良い。
このとき、メインクロスヘッド後退用油圧回路284を連通状態にさせているため、コンテナシリンダ128の2つの油室から排出された作動油は、その全量がバルブ201Bを経由して、サイドシリンダ26のロッド側の油室に供給され、メインクロスヘッド22を後退させる。
先に説明したように、図1で説明したような従来の押出プレス装置において、サイドシリンダ26によりメインクロスヘッド22の後退動作を行わせるため、コンテナ18の後退時に、コンテナシリンダ28から排出された排出作動油の全量を、サイドシリンダ26に供給させる場合がある。しかしながら、駆動速度を優先する観点から、コンテナシリンダのシリンダ径は小さい方が好適であり、コンテナシリンダのシリンダ径を大きくする必要性が低いことから、コンテナ18が後退限位置に到達するまでに、コンテナシリンダ28から排出される排出作動油の容積は、サイドシリンダ26により、メインクロスヘッド22をその後退限位置に到達させるのに必要な供給作動油の容積よりも少ないことが一般的であった。そのため、コンテナ18の後退限位置への到達後、油圧回路を切り換えて、メインの作動油供給源からの作動油をサイドシリンダ26に供給させて、後退限位置に未到達のメインクロスヘッド22をあらためて後退限位置までに後退させる必要があり、メインクロスヘッド22を後退限位置まで後退させる(メインクロスヘッド後退工程)所要時間の短縮が困難であった。
一方、これに対して、第2実施形態の押出プレス装置200のコンテナシリンダ128は、シリンダ径の大径化を抑制しつつ、大きな出力の発生を可能にするために、実施形態1で説明した特徴を有するため、コンテナシリンダ28から排出される排出作動油の容積を、従来の押出プレス装置よりも大幅に増加させることができる。そのため、コンテナ18が後退限位置に到達するまでに、メインクロスヘッド22をその後退限位置のより近い位置まで後退させることにより、メインクロスヘッド後退工程の所要時間の短縮が可能になる。
また、第2実施形態の押出プレス装置200のコンテナシリンダ128が、コンテナシリンダ28から排出される排出作動油の容積を、サイドシリンダ26により、メインクロスヘッド22をその後退限位置に到達させるのに必要な供給作動油の容積と略同じ、又は、該供給作動油の容積よりも大きくなるように構成されることにより、上記のメインクロスヘッド後退制御方法により、コンテナ後退工程の完了と略同時、又は、コンテナ後退工程の完了前に、メインクロスヘッド後退工程を完了させることができ、メインクロスヘッド後退工程の所要時間のさらなる短縮が可能になる。これに加えて、コンテナ後退工程の完了後、従来のように、メインクロスヘッドの後退限位置までの再後退動作のため、メインの作動油供給源からの作動油をサイドシリンダへ供給させる必要がなくなるため、メインの作動油供給源からの作動油の略全量を、シャー装置(ディスカード切断装置)に供給させることが可能になり、ディスカード切断の所要時間も短縮される。このように、メインクロスヘッド後退工程の所要時間の短縮だけではなく、アイドル時間自体の短縮が可能になる。
さらに、第2実施形態の押出プレス装置200のコンテナシリンダ128は、サイドシリンダ26と共にメインシリンダハウジング12に配置されているため、メインクロスヘッド後退用油圧回路284を非常に短い油圧配管長で構成することが可能であるため、押出プレス装置の油圧配管等の組立工数や油圧配管内滞留作動油量を減少させることができる。尚、図7は、第2実施形態に係る押出プレス装置によりメインクロスヘッド後退制御方法を行うための概略油圧回路図であるため、説明に必要と思われる主要なバルブについてのみ符号を付与し説明した。したがって、実際の油圧回路に必要な全ての油圧機器は記載しておらず、また、記載したバルブで、符号を付与していないバルブについては、図7中に「開」、「閉」を図示するに留めた。
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態及び第2実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
例えば、第1実施形態において、コンテナシリンダ128が、シリンダロッド128Aの長手方向に、2つの油室(油室51及び油室61)を備える形態として説明したが、コンテナシリンダのメインシリンダハウジングへの配置の制約をクリアできれば、3つ以上の油室を備える形態であっても良い。
また、第1実施形態において、等圧押出制御方法を行うことを前提に、等圧押出制御用油圧回路84を説明した。しかしながら、等圧押出制御用作動油供給源82からコンテナシリンダ128に供給させる作動油を、図6(a)には図示していないが、方向切換弁等により、コンテナ18を前進させる、コンテナシリンダ128の分割油室56B及び分割油室66Bと、後退させる分割油室56A及び分割油室66Aとに、選択的に供給させる形態であっても良い。その場合、コンテナ18の後退速度を早める場合と同様に、メインポンプ282からコンテナシリンダ28の分割油室56B(油室51)及び分割油室66B(油室61)のいずれか一方の分割油室のみに作動油を供給して、他方の分割油室には、図示しないタンクラインを開放させて、作動油タンクから作動油を吸引させても良い。第1実施形態において、等圧押出制御用作動油供給源82は、押出工程中の等圧押出制御方法の際にのみ使用するものではなく、押出工程以外においては、メインの作動油供給源と共に駆動させるものであることを説明したが、等圧押出制御方法以外で、コンテナ18を前進させる場合だけでなく、コンテナ18を後退させる場合に、メインの作動油供給源と共に駆動させても良い。
例えば、押出工程完了時のディスカードが長い場合や、極小ロット数生産のため、押出工程途中の、コンテナ18内の押出材20の押出材長Lが長い場合、あるいは、高力材を使用する場合には、コンテナ18を後退させる際に必要な力(コンテナストリップ力)が通常よりも大きくなる。このような場合や、これ以外でも、大きなコンテナストリップ力が必要な場合に、等圧押出制御用圧力制御手段83により通常よりも高い圧力の作動油をコンテナシリンダ128に供給させて、コンテナ18を後退させても良い。第1実施形態で説明したコンテナシリンダ128の構成であれば、従来と同じ供給作動油圧力であっても、従来よりも高いコンテナストリップ力を発生させることができる。
さらに、第1実施形態において等圧押出制御方法を、第2実施形態においてメインクロスヘッド後退制御方法を説明したが、これらの制御方法を行うために、各実施形態で説明した構成をすべて含んでも、各制御方法を行うことに問題はない。例えば、第2実施形態で説明したメインクロスヘッド後退制御方法における、メインクロスヘッド後退用回路284のバルブ201Bを閉じて、メインクロスヘッド後退用油圧回路284を閉塞状態にさせれば、等圧押出制御用油圧回路84により、第1実施形態で説明した等圧押出制御方法を行うことに問題はない。