以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
そして、以下の説明で前後左右上下の方向を用いて説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとする。そして、各図に適宜示す矢印についても同様の定義を用いており、車両幅方向とは左右方向に相当している。
本実施形態に係るシャッター装置1は、車両エンジン52を駆動源として走行する車両に搭載された車両用冷却装置の一部を構成しており、図1に示すように、矩形状の枠として形成されたフレーム部材10と、複数のブレード部材20と、リンク部材30等を有して構成されている。
図2に示すように、車両用冷却装置は、シャッター装置1と、室外熱交換器45と、ラジエータ50と、送風機60とを有している。当該車両用冷却装置は、車両における車体Cの前側に配置されたフロントグリルGの後方において、車体Cの内部(即ち、エンジンルーム)に配置されている。
フロントグリルGから車両後方に向かって、シャッター装置1、室外熱交換器45、ラジエータ50、送風機60の順番で配置されており、車両の前後方向へ空気が流れるように構成されている。
当該シャッター装置1は、フロントグリルGの開口部を覆うように配置されており、リンク部材30のスライド移動によって各ブレード部材20の姿勢を変更することで、室外熱交換器45及びラジエータ50を通過する空気の量(即ち、通風量)を調整することができる。このシャッター装置1の具体的構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
当該車両用冷却装置において、室外熱交換器45は、シャッター装置1に対する車両後方側に配置されており、断面扁平状に形成された複数のチューブと、各チューブの間に配置された波形のフィンにより構成された熱交換器コア部と、各チューブの両端に配置された一対のヘッダタンクとを有している。
室外熱交換器45は、車両用空調装置を構成する冷凍サイクル装置の構成機器の一つであり、冷凍サイクル装置を循環する冷媒と空気との間の熱交換を行う熱交換器であり、チューブが水平方向に伸びるように配置されたクロスフロー型の熱交換器として構成されている。
冷凍サイクル装置は、車両用空調装置における蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成しており、室外熱交換器45に加えて、図示しない圧縮機と、減圧部(例えば、膨張弁やキャピラリチューブ等)と、蒸発器等を有している。
室外熱交換器45は、車両用空調装置の運転モードに応じて、吸熱器又は放熱器の何れかとして機能する。例えば、暖房モードにおいては、室外熱交換器45は、フロントグリルGから導入される外気から吸熱する吸熱器として機能し、冷房モードでは、高圧冷媒の有する熱を外気に放熱する放熱器として機能する。
尚、冷凍サイクル装置で用いられる冷媒としては、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。
図2に示すように、ラジエータ50は、車両用冷却装置において、シャッター装置1及び室外熱交換器45の車両後方側に配置されている。当該ラジエータ50は、車両の駆動源である車両エンジン52を冷却する為のエンジン冷却水回路51の構成機器の一つであり、当該エンジン冷却水回路51を循環するエンジン冷却水と空気との間の熱交換によってエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。
そして、ラジエータ50は、断面扁平状に形成された複数のチューブと、各チューブの間に配置された波形のフィンとを有して構成されたラジエータコア部と、ラジエータコア部の両側に配置された一対のヘッダタンクとを有している。
ここで、エンジン冷却水回路51は、ラジエータ50及び車両エンジン52の間にてエンジン冷却水を循環可能に構成されており、エンジン冷却水を圧送するウォータポンプ53と、流路切替部54と、エンジン冷却水回路51を循環するエンジン冷却水を加温する為の電熱ヒータ55とを有している。
流路切替部54は、サーモスタットや三方弁等によって構成されており、エンジン冷却水回路51におけるエンジン冷却水の流路を切り替える際に作動する。当該エンジン冷却水回路51では、流路切替部54は、ラジエータ50の流出口側からウォータポンプ53及び車両エンジン52へと向かうエンジン冷却水の流路上に配置されている。
当該流路切替部54は、エンジン冷却水が所定温度未満である場合には、エンジン冷却水がラジエータ50を迂回する流路を流れるようにし、エンジン冷却水の温度が所定温度以上である場合には、車両エンジン52から流出したエンジン冷却水がラジエータ50を通過するように作動する。従って、エンジン冷却水回路51によれば、車両エンジン52の排熱で温められたエンジン冷却水を、ラジエータ50で空気と熱交換させることで冷却することができる。
又、当該車両用冷却装置では、図2に示すように、送風機60は、シャッター装置1、室外熱交換器45、ラジエータ50に対して車両後方側に配置されている。当該送風機60は、ファンと、電動モータと、シュラウド61とを備えている。ファンは、空気を送風する軸流式の送風ファンであり、回転軸を中心に回転するように構成されている。
当該送風機60の電動モータは、ファンに回転動力を与える電動機であり、当該電動モータの回転軸にファンが固定されている。そして、送風機60の電動モータは、正回転及び逆回転可能に構成されている。
従って、当該送風機60は、車両前方から後方へ向かって空気を送風する作動態様(以下、吸込運転という)と、車両後方から前方へ向かって空気を送風する作動態様(以下、吹出運転という)とを実現することができる。本実施形態における前後方向は、本発明における通風方向に相当する。
そして、電動モータは、シュラウド61に設けられた複数のステーによって、シュラウド61における所定位置に支持されている。シュラウド61は、電動モータを保持すると共に、ファンにより誘起される空気流れが室外熱交換器45及びラジエータ50を通過するように空気流れをガイドする部品である。
次に、本実施形態に係るシャッター装置1の具体的構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、シャッター装置1は、矩形状の枠として形成されたフレーム部材10の内側に、複数のブレード部材20を所定間隔で並列して有している。各ブレード部材20は、フレーム部材10に対して回動可能に配置されている。
そして、フレーム部材10の上部及び下部における車両後方側には、リンク部材30がそれぞれ配置されている。各リンク部材30は、枠状のフレーム部材10の四隅に取り付けられた保持部材40によって、車両左右方向へスライド移動可能に保持されている。
当該シャッター装置1においては、リンク部材30のスライド移動に連動して、各ブレード部材20が回動するように構成されている。従って、当該シャッター装置1は、各ブレード部材20の回動量を調整することで、室外熱交換器45の通風量及びラジエータ50の通風量を調整することができる。
フレーム部材10は、室外熱交換器45の熱交換器コア部及びラジエータ50のラジエータコア部の空気通過面の外形に対応した大きさの枠体を為し、例えば、樹脂材料によって構成されている。当該フレーム部材10は、図1に示すように、上側支持部11と、下側支持部12と、左右両側に配置された側部13によって構成されている。
枠状に形成されたフレーム部材10の上部には、上側支持部11が形成されている。当該上側支持部11は、フレーム部材10における枠の内側に位置する面に複数の支持軸15を有している。上側支持部11における各支持軸15は、枠の内側に位置する面から下方に向かって伸びている。
一方、フレーム部材10の下部には、下側支持部12が形成されている。当該下側支持部12は、図3に示すように、フレーム部材10における枠の内側に位置する面に複数の支持軸15を有している。下側支持部12における各支持軸15は、枠の内側に位置する面から上方に向かって伸びており、上側支持部11における各支持軸15と対向する位置に配置されている。
上側支持部11及び下側支持部12における各支持軸15は、シャッター装置1における上下方向に沿って伸びており、後述するように、各ブレード部材20の回動中心として機能する。即ち、本実施形態における上下方向は本発明における回動軸方向に相当する。
フレーム部材10における各支持軸15は、後述する各ブレード部材20における軸支持溝22の内部にそれぞれ配置される。即ち、各支持軸15は、各ブレード部材20をフレーム部材10に対し回動可能に支持しており、本発明における支持軸として機能する。そして、当該フレーム部材10は、上側支持部11及び下側支持部12にて、複数のブレード部材20を回動可能に支持しているので、本発明における支持部材として機能する。
そして、フレーム部材10には一対の側部13が配置されている。一方の側部13は、上側支持部11及び下側支持部12の左側端部を接続するように上下に伸びており、他方の側部13は、上側支持部11及び下側支持部12の右側端部を接続するように上下に伸びている。
尚、当該シャッター装置1において、側部13には、作動部材35がそれぞれ配置されている。図1に示すように、作動部材35は、側部13に沿って上下方向に伸びるシャフト部36を有して構成されている。当該作動部材35は、シャフト部36の軸心周りの回転運動をリンク部材30のスライド移動に変換する機能を有しており、作動部材35とリンク部材30とによって、例えば、ラックアンドピニオン機構を構成している。
又、図1に示すように、シャッター装置1の右側に配置された作動部材35は、シャフト部36の上端部に作動伝達部37を有している。当該作動伝達部37は、シャッター装置1の開閉動作に関する駆動源(例えば、電動モータ等)からの操作荷重が伝達される部分である。当該作動部材35は、作動伝達部37に伝達された操作荷重によって、シャフト部36の軸心周りに回転する。
本実施形態におけるブレード部材20は、図1等に示すように、矩形の枠状に形成されたフレーム部材10の上側支持部11と下側支持部12の間において、車両の左右方向へ所定間隔で並列して配置されており、例えば、樹脂材料によって構成されている。各ブレード部材20は、図4に示すように、略平板状に形成されたブレード本体部21と、軸支持溝22と、延出片24と、連結軸25とを有している。
尚、ブレード部材20に関する説明においては、板状に形成されたブレード本体部21を含む平面に鉛直な方向をX方向とし、ブレード本体部21の短辺方向をY方向とする。そして、ブレード本体部21の長辺方向をZ方向とする。図1、図4に示すように、当該Z方向は、シャッター装置1における上下方向に一致する。
図1、図4に示すように、ブレード部材20におけるブレード本体部21は、略長方形をなす平板状に形成されている。ブレード本体部21の短辺方向の長さは、フレーム部材10における支持軸15の間隔に対応している。ブレード本体部21における上端部側及び下端部側は、本発明におけるブレード本体部の一端側及び他端側に相当する。
ブレード本体部21における上端部及び下端部には、軸支持溝22が配置されている。図4に示すように、ブレード本体部21における各軸支持溝22は、ブレード本体部21の短辺方向における中央部分において、ブレード本体部21に対して交差する方向に伸びている。より具体的には、軸支持溝22は、ブレード本体部21に対して垂直を為すX方向に伸びるように形成されている。
X方向における軸支持溝22の一端部(図4中、右側)には、開放部23が配置されており、支持軸15が軸支持溝22の内部に進入可能に構成されている。一方、X方向における軸支持溝22の他端側(図4中、左側)は閉塞されている。
図4~図6等に示すように、当該軸支持溝22は、ブレード本体部21の短辺方向における中央部分において、略U字状を描くように伸びる突条部の内側に形成される。当該軸支持溝22のY方向における幅寸法は、フレーム部材10の支持軸15の外径よりも大きく、軸支持溝22のX方向における奥行寸法は、支持軸15の外径及び軸支持溝22の幅寸法よりも大きく定められている。
従って、当該軸支持溝22の内部に対して、開放部23を介して支持軸15を進入させて配置可能に構成されている。そして、ブレード部材20の軸支持溝22の内部に、フレーム部材10の支持軸15を配置することで、ブレード部材20は、フレーム部材10における上側支持部11及び下側支持部12の間で回動可能に支持される。即ち、軸支持溝22は、本発明における軸支持溝に相当する。
そして、ブレード本体部21における上端部及び下端部には、延出片24及び連結軸25が配置されている。延出片24は、ブレード本体部21の上端部及び下端部において、ブレード本体部21のY方向における一方側(図4中、手前側)に配置されている。当該延出片24は、何れもブレード本体部21に対してX方向の一方側(図4中、右方向)に向かって、水平に延出された板状に形成されている。
各延出片24には、当該ブレード部材20の動作をリンク部材30の動作に連動させる為の連結軸25が配置されている。図4に示すように、当該ブレード本体部21の上端部において、連結軸25は延出片24の上面からZ方向に沿って上側に突出するように形成されている。一方、ブレード本体部21の下端部においては、連結軸25は、延出片24の下面からZ方向に沿って下側に突出するように形成されている。
各連結軸25は、ブレード本体部21における軸支持溝22の位置に対して、X方向及びY方向に所定寸法偏心した位置に配置されている。即ち、連結軸25は、ブレード部材20の回動中心の位置からX方向及びY方向へ偏心した位置で、ブレード部材20の回動中心に沿って平行に伸びている。
当該連結軸25は、後述するリンク部材30に形成されたリンク溝31の内部に配置されることで、リンク部材30のスライド動作に連動してブレード部材20を回動させるように、ブレード部材20とリンク部材30を連結する。即ち、連結軸25は、本発明における連結軸に相当する。
図1に示すように、フレーム部材10における上側支持部11の車両後方側には、リンク部材30が、フレーム部材10の右上部分及び左上部分に取り付けられた保持部材40によって、車両左右方向にスライド移動可能に取り付けられている。本実施形態における車両左右方向は、本発明におけるスライド方向に相当し、車両後方側は、本発明における通風方向一方側に相当する。
そして、下側支持部12の車両後方側においては、リンク部材30が、フレーム部材10の右下部分及び左下部分に取り付けられた保持部材40によって、車両左右方向にスライド移動可能に取り付けられている。
当該リンク部材30は、車両左右方向に沿って伸びる角柱状に形成されており、複数のリンク溝31を有している。図1に示すように、上側支持部11に取り付けられたリンク部材30において、複数のリンク溝31は、当該リンク部材30の下面にて一定の間隔をあけて配置されている。各リンク溝31は、当該リンク部材30の下面を上方に窪ませた溝状に形成されており、車両前後方向に沿って伸びている。
一方、下側支持部12に取り付けられたリンク部材30では、複数のリンク溝31は、図1、図3に示すように、当該リンク部材30の上面にて一定の間隔をあけて配置されている。各リンク溝31は、当該リンク部材30の上面を下方に窪ませた溝状に形成されており、車両前後方向に沿って伸びている。下側のリンク部材30における各リンク溝31は、上側のリンク部材30における各リンク溝31と対向する位置に配置されている。
当該リンク溝31の車両左右方向における幅寸法は、ブレード部材20の連結軸25の外径よりも大きく、リンク溝31の車両前後方向における奥行寸法は、連結軸25の外径及びリンク溝31の幅寸法よりも大きく定められている。
そして、各リンク溝31の車両後方側の端部には、開放端32が配置されており、各ブレード部材20における連結軸25を、各リンク溝31の内部に進入させて配置可能に構成されている。一方、各リンク溝31の車両前方側の端部は、リンク部材30の車両前方側の側面まで伸びておらず、閉塞されている。
各リンク溝31は、当該リンク溝31の内部に連結軸25を配置することで、リンク部材30と、各ブレード部材20とを連結することができる。これにより、当該シャッター装置1においては、リンク部材30が車両左右方向にスライド移動に伴い、各リンク溝31及び各連結軸25の位置を変更される為、フレーム部材10に対して各ブレード部材20を回動させることができる。
各リンク部材30の両端部には、車両前方側の側面に図示しないラックが配置されている。当該ラックは、車両左右方向に沿うように形成された複数の歯によって構成されており、作動部材35のシャフト部36に配置されたピニオンと夫々噛み合うように構成されている。
即ち、リンク部材30と作動部材35によってラックアンドピニオン機構が構成されている。作動部材35の回転動作は、リンク部材30の車両左右方向へのスライド移動に変換される。
図1、図3に示すように、当該保持部材40は、樹脂材料によってフレーム部材10に対して脱着可能に構成されており、保持片41を有している。リンク部材30が配置されたフレーム部材10に対して、保持部材40を取り付けた場合には、保持片41は、フレーム部材10及びリンク部材30の車両後方側に配置され、フレーム部材10からのリンク部材30の脱落を防止する。
続いて、上述のように構成されたシャッター装置の動作について、図5、図6を参照しつつ説明する。図5は、シャッター装置1の開状態を示す説明図であり、図6は、シャッター装置1の閉状態を示す説明図である。
尚、図5~図10においては、理解を容易にする為に、シャッター装置1を構成するフレーム部材10、リンク部材30を実線で示し、各ブレード部材20については破線で示している。
ここで、開状態とは、フレーム部材10と複数のブレード部材20の間に形成される流路面積が最大となっている状態である。従って、図5に示すように、開状態は、各ブレード部材20のY方向が車両前後方向と平行になった状態を意味する。
一方、閉状態とは、フレーム部材10と複数のブレード部材20の間における流路面積が最小となっている状態である。図6に示すように、閉状態は、各ブレード部材20におけるブレード本体部21の一部が他のブレード本体部21に対して車両前後方向に位置する状態を意味する。
先ず、図5に示す開状態から図6に示す閉状態に変更する際のシャッター装置1の作動について説明する。上述したように、当該シャッター装置1においては、作動伝達部37を用いた作動部材35の回転動作が行われる。作動部材35を所定方向に回転させることで、ラックアンドピニオン機構を介して、各リンク部材30が車両左側に向かってスライド移動する。
リンク部材30が車両左側へスライド移動することで、各リンク溝31の内部に配置された連結軸25の位置がそれぞれ車両左側へ移動していく。この時、フレーム部材10にて各ブレード部材20を回動可能に支持する支持軸15及び軸支持溝22の位置関係は変化していない。
この為、支持軸15及び軸支持溝22によるブレード部材20の回動中心に対する連結軸25の位置が、回動中心に対して車両右側の位置から車両左側の位置へ向かって、リンク部材30のスライド移動に伴い移動していく。これにより、各ブレード部材20は、支持軸15及び軸支持溝22によるブレード部材20の回動中心まわりに回動して、シャッター装置1における流路面積を徐々に小さくすることができる。
リンク部材30が車両左側へスライド移動すると、図6に示すように、ブレード本体部21の一部が他のブレード本体部21に対して車両前後方向に重複し、シャッター装置1における流路面積を最小にすることができる。即ち、当該シャッター装置1を閉状態にすることができる。
この閉状態にした場合、当該シャッター装置1は、走行風や送風機60の吸込運転時にて、フロントグリルGから車両後方側へ向かって流れる送風空気の流れを遮断することができ、車両の空気抵抗係数(即ち、Cd値)を低減することができる。
又、閉状態にすることで、ラジエータ50における空気とエンジン冷却水の間の熱交換を抑制することができるので、車両エンジン52の暖機を行う際の効率を向上させることができる。
又、当該閉状態において、送風機60の吹出運転時により車両前方側へ向かって送風した場合、車両エンジン52の排熱によって暖められた空気が室外熱交換器45に向かって送風され、室外熱交換器45の周辺の空気を暖めることができる。これにより、車両用空調装置の暖房モード時における効率を向上させることができ、更に、当該暖房モード時における室外熱交換器45の着霜を、車両エンジン52の排熱を利用して抑制することができる。
続いて、図6に示す閉状態から図5に示す開状態に変更する際のシャッター装置1の作動について説明する。この場合、作動部材35を上述した所定方向とは逆方向に回転させることで、ラックアンドピニオン機構を介して、各リンク部材30を車両右側に向かってスライド移動させる。
リンク部材30が車両右側へスライド移動することで、各リンク溝31の内部に配置された連結軸25の位置がそれぞれ車両右側へ移動していく。この為、ブレード部材20の回動中心に対する連結軸25の位置が、回動中心に対して車両左側の位置から車両右側の位置へ向かって、リンク部材30のスライド移動に伴い移動していく。
これにより、各ブレード部材20は、当該ブレード部材20の回動中心まわりに回動して、シャッター装置1における流路面積を徐々に大きくすることができる。リンク部材30が車両右側へスライド移動すると、図5に示すように、各ブレード部材20のY方向が車両前後方向に沿った状態となる。この結果、シャッター装置1における流路面積を最大にすることができ、当該シャッター装置1を開状態にすることができる。
この開状態にした場合、当該シャッター装置1は、走行風や送風機60の吸込運転によるフロントグリルGから車両後方側へ向かって流れる空気の流れを、室外熱交換器45及びラジエータ50に導くことができる。即ち、室外熱交換器45にて冷媒と、車両の外部における空気(即ち、外気)とを熱交換させて、冷凍サイクル装置を作動させることができる。
又、開状態においては、送風機60の吹出運転によって車両前方側に向かって流れる空気は、室外熱交換器45及びラジエータ50を通過した後、フロントグリルGを介して、車体Cの外部に排気される。この場合、車両エンジン52で温められた空気を車体Cの外部に排気することができるので、エンジンルーム内部における熱害を抑制することも可能となる。
このように、本実施形態に係るシャッター装置1は、開状態において、車両の走行風や送風機60の吸込運転によって、車両前方側から後方へ向かって空気が流れる場合が想定される。この時の気体の流れによって、各ブレード部材20には、車両後方側へ向かう風圧が作用する。この時の風圧は、車両の走行風等を考慮すると、送風機60の吹出運転による車両前方側への風圧よりも大きい。
これに対して、開状態のシャッター装置1においては、車両前方側から後方へ向かう空気の流れに対して、各ブレード部材20の軸支持溝22が直交するように伸びており、当該軸支持溝22の内部に、フレーム部材10の支持軸15が配置されている。
従って、車両前方から後方に向かう風圧を受けた場合であっても、軸支持溝22の内壁面と支持軸15が接触することにより、当該フレーム部材10の支持軸15をブレード部材20の軸支持溝22の内部に保持することができ、フレーム部材10からのブレード部材20の脱落を防止することができる。
又、本実施形態に係るシャッター装置1は、開状態において、送風機60の吹出運転によって、車両後方側から前方へ向かって送風する場合も想定される。この場合も、車両前方側へ向かう空気の流れに対して、各ブレード部材20の軸支持溝22が直交するように伸びており、軸支持溝22の内部に支持軸15が配置されている。
従って、車両後方から前方に向かう風圧を受けた場合であっても、軸支持溝22の内壁面と支持軸15が接触することにより、当該フレーム部材10の支持軸15をブレード部材20の軸支持溝22の内部に保持することができ、フレーム部材10からのブレード部材20の脱落を防止することができる。
又、この時、リンク部材30における各リンク溝31の内部に、それぞれブレード部材20の連結軸25が配置されており、当該リンク溝31の開放端32は車両後方側に位置し、車両前方側の端部は閉塞されている。
従って、車両後方から前方に向かう風圧を受けた場合であっても、リンク溝31の前方側の内壁面と連結軸25が接触することにより、シャッター装置1における各ブレード部材20の相対的な位置を保持することができ、ブレード部材20の脱落を防止することができる。
又、本実施形態に係るシャッター装置1は、図6に示すように、閉状態においても、車両の走行風や送風機60の吸込運転によって、車両前方側から後方へ向かう風圧が作用する場合が想定される。
これに対して、開状態のシャッター装置1においては、車両前方側から後方へ向かう空気の流れに対して、各ブレード部材20の軸支持溝22が交差するように伸びており、軸支持溝22の開放部23が車両後方側に位置し、車両前方側の端部は閉塞されている。そして、当該軸支持溝22の内部に、フレーム部材10の支持軸15が配置されている。
従って、車両前方から後方に向かう風圧を受けた場合であっても、軸支持溝22の内壁面の内、閉塞されている端部側の内壁面と支持軸15が接触することにより、フレーム部材10の支持軸15をブレード部材20の軸支持溝22の内部に保持することができ、フレーム部材10からのブレード部材20の脱落を防止することができる。
又、本実施形態に係るシャッター装置1は、閉状態において、送風機60の吹出運転によって、車両後方側から前方へ向かって送風する場合も想定される。この場合において、リンク部材30における各リンク溝31の内部に、それぞれブレード部材20の連結軸25が配置されており、当該リンク溝31の開放端32は、車両後方側に位置し、車両前方側の端部は閉塞されている。
従って、車両後方から前方に向かう風圧を受けた場合であっても、リンク溝31の前方側の内壁面と連結軸25が接触することにより、シャッター装置1における各ブレード部材20の相対的な位置を保持することができ、ブレード部材20の脱落を防止することができる。
このように、本実施形態に係るシャッター装置1によれば、車両前方側から後方へ向かう空気の流れと、車両後方側から前方側に向かう空気の流れの何れに対しても、各ブレード部材20の脱落を防止することができる。又、シャッター装置1の開状態、閉状態の何れであっても、各ブレード部材20の脱落を防止することができ、ブレード部材20の脱落という不具合を確実に抑制することができる。
そして、本実施形態に係るシャッター装置1においては、開状態と閉状態の何れにおいても、各軸支持溝22の内部における支持軸15の位置と、各リンク溝31の内部における連結軸25の位置が以下の条件を満たすように形成されている。
図5、図6に示すように、シャッター装置1の開状態と閉状態の何れにおいても、フレーム側奥行寸法Lがリンク側幅寸法lよりも大きくなるように形成されている。そして、リンク側奥行寸法dについては、フレーム側幅寸法Dよりも大きくなるように形成されている。
ここで、フレーム側奥行寸法Lとは、X方向に関して、軸支持溝22の内部に配置された支持軸15の表面から軸支持溝22における開放部23の先端部までの距離を示す。一方、リンク側幅寸法lは、車両左右方向に関して、リンク溝31の内部に配置された連結軸25の表面からリンク溝31の内壁面までの距離を示す。
そして、フレーム側幅寸法Dは、Y方向に関して、軸支持溝22の内部に配置された支持軸15の表面から軸支持溝22の内壁面までの距離を示す。一方、フレーム側幅寸法Dは、車両前後方向に関して、リンク溝31の内部に配置された連結軸25の表面からリンク溝31における開放端32の先端部まで距離を示す。
図5、図6に示すように、当該シャッター装置1によれば、開状態から閉状態の間で、フレーム側奥行寸法Lがリンク側幅寸法lよりも大きく、リンク側奥行寸法dがフレーム側幅寸法Dよりも大きくなるように形成されている為、車両後方側からの風圧に対し、各ブレード部材20の脱落を確実に防止することができる。
次に、本実施形態に係るシャッター装置1の製造方法について、図7~図10を参照しつつ説明する。本実施形態に係るシャッター装置1の製造方法は、前処理工程と、連結工程と、挿入工程と、組付工程と、後処理工程とを有して構成されている。
前処理工程においては、櫛状に形成されたブレード用治具65を用いて、シャッター装置1を構成する複数のブレード部材20を、各ブレード本体部21が平行になるように保持する。
ブレード用治具65は、フレーム部材10における支持軸15の間隔に対応して等間隔に配置された複数のブレード保持部66を有して構成されている。各ブレード保持部66は、ブレード用治具65の端部からスリット状に伸びており、ブレード本体部21におけるX方向の厚みに相当する幅を有している。
従って、ブレード用治具65の各ブレード保持部66に対して、各ブレード部材20のブレード本体部21を配置していくことで、各ブレード本体部21が平行となる状態で、複数のブレード部材20を等間隔に列設させることができる。
この時、各ブレード部材20は、ブレード本体部21のZ方向における中央部分がブレード用治具65によって保持されるように配置される。こうして、複数のブレード部材20をブレード用治具65で保持すると、前処理工程を終了する。
本実施形態に係るシャッター装置1の製造方法では、前処理工程を終了すると、連結工程が行われる。図7に示すように、当該連結工程では、各ブレード本体部21が平行となる状態でブレード用治具65に保持された複数のブレード部材20を、一対のリンク部材30の間を、当該リンク部材30に対して車両前方側(即ち、通風方向他方側)へ移動させる。
この時、ブレード用治具65に保持された各ブレード部材20の連結軸25は、一対のリンク部材30における各リンク溝31の開放端32から進入し、当該リンク溝31の内部に配置される。これにより、複数のブレード部材20が一対のリンク部材30に対して連結される。
本実施形態においては、連結工程を終了すると、挿入工程が行われる。図8に示すように、当該挿入工程では、複数のブレード部材20をフレーム部材10の内側に挿入する。
具体的には、ブレード用治具65に保持された複数のブレード部材20及び連結工程で連結されたリンク部材30を、フレーム部材10における枠の内側を車両前方側へ移動させる。当該挿入工程によって、各ブレード部材20のブレード本体部21がフレーム部材10における各支持軸15の車両左側のスペースに配置される。
挿入工程を終了した後、組付工程が行われる。当該組付工程では、図9に示すように、挿入工程で、各支持軸15の車両左側のスペースに配置された複数のブレード部材20等を、フレーム部材10に対して車両右側に向かってスライド移動させる。この時、ブレード用治具65及びリンク部材30も、複数のブレード部材20と共に車両右側へ向かって移動する。
ここで、各ブレード部材20において、軸支持溝22は、ブレード本体部21に対して直交するX方向に伸びている。従って、複数のブレード部材20をフレーム部材10に対して車両右側にスライド移動させることで、フレーム部材10の各支持軸15は、各ブレード部材20における軸支持溝22の開放部23から、軸支持溝22の内部へ進入する。即ち、複数のブレード部材20を車両右側へスライド移動させることで、フレーム部材10に対して複数のブレード部材20を回動可能に組み付けることができる。
組付工程にて、フレーム部材10に対して複数のブレード部材20及びリンク部材30が組み付けられた後、後処理工程が行われる。具体的には、図10に示すように、複数のブレード部材20からブレード用治具65が取り外される。
又、当該後処理工程において、フレーム部材10の四隅に対して、保持部材40をそれぞれ取り付けて、フレーム部材10に対してリンク部材30をスライド移動可能に保持すると同時に、フレーム部材10からのリンク部材30の脱落を防止する。
このように、当該シャッター装置1の製造方法によれば、前処理工程と、連結工程と、挿入工程と、組付工程と、後処理工程とを実行することで、フレーム部材10に対して、複数のブレード部材20及びリンク部材30を組み付けることができ、本実施形態に係るシャッター装置1を製造することができる。
そして、当該シャッター装置1の製造方法によれば、フレーム部材10及びリンク部材30に対して、複数のブレード部材20を車両前方側及び車両右側へスライド移動させることで、リンク部材30のスライド移動に連動してフレーム部材10に対して回動するように、複数のブレード部材20を取り付けることができる。
即ち、当該シャッター装置1の製造方法によれば、組付け作業時に移動させる部材を変更する必要はなく、且つ、部材の移動方向も2方向に限定されている為、組付け作業における作業性を向上させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係るシャッター装置1によれば、リンク部材30を車両左右方向に移動させることで、複数のブレード部材20をフレーム部材10の各支持軸15を中心として回動させ、当該シャッター装置1を通過する気体の風量を調整することができる。
又、当該シャッター装置1においては、図5、図6に示すように開状態と閉状態の何れにおいても、複数のブレード部材20における軸支持溝22は、当該軸支持溝22の内部に支持軸15を配置した状態で、通風方向である車両前後方向に対して交差する方向に伸びている。
従って、車両前側へ気体が流れる場合と、車両後側へ気体が流れる場合の何れであっても、ブレード部材20における軸支持溝22の内側壁面に対して、フレーム部材10の支持軸15が当接する。この為、当該シャッター装置1によれば、ブレード部材20がフレーム部材10から脱落することを防止できる。
更に、当該シャッター装置1において、リンク部材30における各リンク溝31は、当該リンク溝31の内部に各ブレード部材20の連結軸25を配置した状態で、車両後方側に開放端32が位置し、車両前方側が閉塞されている。
従って、車両後方側から前方側へ気体が流れる場合には、各リンク溝31の内側側面が各ブレード部材20の連結軸25に当接することになるので、シャッター装置1における各ブレード部材20の移動を抑制して、ブレード部材20の脱落を防止できる。
又、当該シャッター装置1においては、軸支持溝22の内部に対する支持軸15の配置とリンク溝31の内部に対する連結軸25の配置を、フレーム部材10及びリンク部材30に対して各ブレード部材20を移動させて行うことができる。これにより、当該シャッター装置1は、フレーム部材10等に対するブレード部材20の組み付け作業性を向上させることができる。
そして、本実施形態においては、ブレード部材20の軸支持溝22は、ブレード本体部21に対して直交するX方向に沿って伸びている。従って、当該ブレード部材20をフレーム部材10に対して組み付ける際に、通風方向に直交する車両左右方向へスライド移動させることで、各軸支持溝22の内部に支持軸15を配置することができる。
この時、ブレード部材20をスライド移動させる方向が通風方向に直交する方向である為、容易にその移動方向を特定することができ、フレーム部材10に対してブレード部材20を組み付ける際の作業性を向上させることができる。
更に、当該シャッター装置1においては、支持軸15及び連結軸25の断面積が小さくなる部分を有しておらず、フレーム部材10及びリンク部材30にスリット状の切り込み部分を有していない。即ち、当該シャッター装置1によれば、シャッター装置1を構成する各構成部材の剛性を低下させることなく、軸強度やフレーム強度を充分な水準に保つことができる。
図7~図10に示すように、本実施形態に係るシャッター装置1の製造方法は、連結工程と、挿入工程と、組付工程とを有しており、これらの工程を経ることで、複数のブレード部材20をフレーム部材10及びリンク部材30に対して組み付けることができる。
この時、連結工程、挿入工程及び組付工程においては、複数のブレード部材20を所定方向からスライド移動させることで行うことができるので、シャッター装置1に係る組付け作業性を向上させることができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、ブレード部材20における連結軸25は、延出片24に形成されており、ブレード部材20の回動中心に対してX方向及びY方向に偏心した位置に配置されていたが、この態様に限定されるものではない。ブレード部材20における連結軸25の位置は、ブレード部材20の回動中心から偏心していればよく、様々な配置を採用することができる。
例えば、図11に示すように、ブレード部材20における連結軸25の位置を、ブレード本体部21と略同一平面であって、ブレード部材20の回動中心から偏心した位置に配置してもよい。即ち、連結軸25の位置を、ブレード部材20の回動中心からY方向へ偏心させた位置とすることも可能である。
(2)又、上述した実施形態においては、シャッター装置1を構成するブレード部材20にて、軸支持溝22はブレード本体部21に対して直交するX方向に伸びるように形成されているが、この態様に限定されるものではない。軸支持溝22の伸びる方向は、ブレード本体部21に対して交差する方向であればよく、適宜変更することができる。
(3)そして、上述した実施形態においては、シャッター装置1は、複数のブレード部材20を車両上下方向に沿って伸びるように支持し、リンク部材30を車両左右方向へスライド移動させることで、シャッター装置1における通風量を調整していたが、この構成に限定されるものではない。
即ち、本発明に係るシャッター装置を、複数のブレード部材20を車両左右方向に沿って伸びるように支持させ、リンク部材30を車両上下方向にスライド移動させる構成とすることも可能である。
(4)又、上述した実施形態では、当該シャッター装置1は、フレーム部材10の後方側にリンク部材30を配置した構成であったが、この構成における車両前後方向を逆にして車両に配置してもよい。上述したように、当該シャッター装置1は、車両前側からの空気の流れと、車両後側からの空気の流れの何れに対しても、各ブレード部材20の脱落を防止することができるので、逆向きで配置した構成でも同様の効果を発揮することができる。
(5)そして、上述した実施形態においては、製造方法として、連結工程の後に挿入工程を行っていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、連結工程と挿入工程と同時に行うことも可能である。
この場合には、フレーム部材10に対して各リンク部材30がスライド移動可能に取り付けられており、且つ、リンク部材30における各リンク溝31が予め定められた位置に位置するように調整しておく必要がある。