JP6992363B2 - アルミニウム容器の製造法 - Google Patents
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Description
この特許文献1には、Al-Mn-Fe系晶出物、或いはAl-Mn-Fe-Si系晶出物がしごき成形性を向上させることが開示されている。即ち、特許文献1の容器は、Mn、Mg、Fe、及びSi等の他の金属を含むアルミニウム合金により外層が形成されているためしごき加工性に優れており、しごき成形に際しての型表面へのアルミニウムの凝着が有効に抑制され、連続生産に適しており、内面側の耐食性にも優れているものである。
前記塑性加工に際して、前記アルミニウム基材の表面と塑性加工に用いる金型の作用面との間に、前記アルミニウム基材よりも高硬度のAl合金の微粒子を介在させることを特徴とするアルミニウム容器の製造法が提供される。
(1)前記アルミニウム基材の塑性加工前のビッカース硬さをHa、前記金型の作用面のビッカース硬さをHbとしたとき、前記微粒子を形成しているAl合金のビッカース硬さHcは、下記式(1);
1.5Ha<Hc<0.8Hb (1)
で表される条件を満足していること。
(2)前記Al合金の微粒子として、該Al合金よりなる素材を塑性加工する際に生じた摩耗粉を使用すること。
(3)前記Al合金が、Mgを0.8~5.0質量%含有していること。
(4)前記塑性加工に先立って、前記アルミニウム基材の表面に、前記微粒子を付着させておくこと。
(5)前記微粒子が、0.1μm以下の粒径を有していること。
(6)前記塑性加工はインパクト成形、絞り成形、再絞り成形、しごき成形のうち1つ以上含むこと。
(7)前記塑性加工が、すくなくともしごき成形を含むこと。
本発明では、このような微粒子を介在させた状態で塑性加工を行うことにより、金型の作用面へのアルミニウムの凝着が有効に防止され、連続的に塑性加工を実施することが可能となる。即ち、金型の作用面にアルミニウムが凝着したとしても、高硬度の微粒子により、金型の作用面に凝着したアルミニウムが掻き取られ、この結果、アルミニウムの凝着を有効に防止できるのである。
本発明では、所定の高純度のアルミニウム基材を用いての塑性加工により製造される。
このような高純度のアルミニウムからなる基材は、例えば熱間鍛造や冷間鍛造、熱間圧延、冷間圧延、押出し成形、引き抜き成形、鋳造法等によって得られるものであり、最終的に得られる容器の形態や用いる塑性加工手段に応じて、板状、スラグ状、棒状等の形態を有している。
本発明においては、特に過酷な成形手段であるしごき成形による塑性加工が本発明の利点を最大限に活かす上で最も好適である。
図1において、前述した高純度のアルミニウム製の基材1は、先ず、打ち抜き加工に付せられ、これにより、缶用の円板3が得られる(図1(a)参照)。
かかる打ち抜き加工では、円板3の直径に相当する外径を有する打ち抜き用パンチ5と、基材1を保持し且つ円板3の直径に相当する開口を有するダイ7が使用される。即ち、パンチ5によりダイ7上に保持された基材1を打ち抜くことにより、所定の大きさの円板3が得られる。
尚、かかる製造プロセスで製造する成形物の形態によっては、基材1は、他の形状(例えば矩形状)に打ち抜かれることもある。
かかる絞り成形においては、ダイ11上に打ち抜かれた円板3が保持され、この円板3の周囲はしわ押え用の治具13によって保持されている。ダイ11には、開口が形成されており、絞り用のパンチ15を用いてダイ11の開口内に円板3を押し込むことにより、絞り缶9が得られることとなる。
尚、このダイ11の開口の上端のコーナー部(円板3を保持している側)にアール(曲率部)が形成されており、円板3が速やかに且つ折れることなく、ダイ11の開口内に押し込まれるようになっており、パンチ15の外径は、円板3のほぼ厚みに相当する分だけ、ダイ11の開口の径よりも小さく設定されている。即ち、この絞り成形では、薄肉化はほとんど行われない。尚、絞り成形は成形品の形状に応じて複数回行う場合もある。
このしごき成形では、上記の絞り成形により得られた絞り缶9の内部にしごき用のパンチ19を挿入し、リング形状のしごきダイス21の内面に該絞り缶9の外面を圧接しながら、パンチ19を降下させることにより、しごきダイス21により、筒状体9の側壁が薄肉化されていくこととなる。これにより、薄肉化され、且つ薄肉化の程度に応じてハイトが高くなったアルミニウム缶基体17が得られることとなる。更に高いハイトが必要であれば、ダイス21の内径よりも小さい内径のしごきダイス22を用いてしごき用のパンチ19との間でアルミニウム缶基体17の円筒壁をしごき加工してアルミニウム缶基体25を得ることができる。
このようなしごき成形は、目的とする容器の形態や厚みに応じて多段で行うこともでき、これにより、更なる薄肉化や高ハイト化を実現できる。
更に、係るしごき成形も絞り成形と同様、クーラントを流しながら行われる。
1.5Ha<Hc<0.8Hb (1)
で表される条件を満足していることが好適である。このような硬さを有している金属ないし金属合金の微粒子を用いることにより、より確実に金型(例えばしごきダイス21或いは22)の作用面でのアルミニウムの凝着を有効に防止することができる。即ち、微粒子の硬度Hcが1.5Ha以下であると、凝着したアルミニウムの掻き取り効果が低く、凝着防止効果が低下する傾向があり、また、微粒子の硬度が0.8Hb以上であると、アルミニウムの凝着を効果的に防止することはできるが、金型の作用面を損傷するおそれがある。
さらに、かかる微粒子は、その粒径が0.1μm以下の微細なものであることが好ましい。この粒径が大きいと、粗大な粒子を介在させて塑性加工が行われることとなり、得られる容器の表面が粗面になってしまうおそれがある。
ところで、本発明におけるアルミニウム基材よりも高硬度の金属ないし金属合金の微粒子の硬さについては、微小ビッカース硬さ試験機を用いて直接的に測定することが困難もしくは不可能であるが、間接的に、例えば、ビッカース硬さが既知の鏡面研磨された試験片表面にその微粒子をこすりつけて試験片側の疵付きの有無により、微粒子の硬さを決定することができる。また、微粒子が磨耗粉の場合であれば、磨耗する以前の材料硬さと同一ないし加工硬化して若干硬いと推定できる。
また、本発明による製造法によれば、塑性加工に際して用いる微粒子は成形された後の容器よりも高硬度なので、金型と接した容器表面に食い込むか突き刺さるかなどして残留するため、容器表面の分析から本発明の方法を実施したものか判別可能である。一方、発明者の分析によれば微粒子の残留量は検出可能としてもさほど多くはなく、特に容器内面側においては検出困難なほど極微量であり、純アルミニウム製容器としての耐食性が低下することなく維持されることがわかっている。更に、容器表面の平滑化が阻害されることはなく、むしろ、金型作用面へのアルミニウムもの凝着が抑制されているため、微粒子を用いない場合に比して容器の表面は平滑な面となる。
したがって、本発明の製造法により得られる容器は、高純度アルミニウムを基材としての塑性加工により得られるものであるため、耐食性、ならびに外観に優れ、飲料缶用、食品缶用、エアゾール缶用等の容器として好適に使用される。
<実施例1>
ビッカース硬さがHV85のA3004合金板を素材とする絞り・しごき缶(DI缶)を製造する製造設備に設置されているクーラント濾過装置(シュナイダー型濾過機)において使用済みとなった不織布製濾材を約1m2を切り出し、新たに作製した水性エマルションクーラント20Lに浸し、十分に撹拌して液中に濾材に捕捉された摩耗粉約2g/L(体積割合として約0.074%)を混入させた。この摩耗粉は、Mgを1.0質量%含有していた。また、レーザー回折散乱法で測定した摩耗粉の平均粒径は0.1μmであった。不織布製濾材の濾過精度は元々0.1μmよりもはるかに大きいものであったが、クーラント中の油分の作用で極めて微細な粒子が濾材中に捕捉されていた。磨耗粉の硬さは、ビッカース硬さにしてHV110であった。
上記の摩耗粉が添加されたクーラント液の外観は黒色で、明らかに通常に用いられるクーラントの白濁した色調と異なるものであった。
なお、クーラントの噴射量は各工程の合計で10L/分とした。クーラントの循環経路に設置されたフィルタは磨耗粉の通過を妨げないように濾過精度10μmのものを用いた。この絞りしごき缶の外径は35mm、胴部の平均厚さは0.3mm、缶の平均高さは約134mmとなった。この条件での成形を連続して1万缶おこなったところ、しごきダイスの作用面全体にわたってアルミニウムの目立った凝着はなく、成形された缶の表面も問題の無い品質であった。
また、最後に得られた缶外面の表面粗さRaは、0.040μmであった。
Al99.7重量%、残り不可避不純物よりなる直径48mm、厚さ3mmの純アルミスラグにカップ成形用潤滑油を塗布し、インパクト成形(衝撃後方押出成形)により外径48mm、底部の厚さ1mm、側壁の平均厚さ1.1mm、高さ約25mmのカップ体を作製した。このカップ体を、カップ体の作製方法以外は実験例1と同様にして1万缶の連続成形を行ったところ、しごきダイスの作用面全体にわたってアルミニウムの目立った凝着はなく、成形された缶の表面も問題の無い品質であった。
A3004合金板を素材とする絞り・しごき缶(DI缶)を製造する過程で得られた摩耗粉をクーラントに添加しない以外は、実施例1と同様にして、純アルミ材の厚さ1.0mmの圧延板からアルミニウム缶を製造した。
約50缶の製造で金型の作用面、特にしごきダイスの作用面にアルミニウムの著しい凝着(ビルドアップ)が発生し、成形を停止した。
最後に得られた缶の外面の表面粗さRaは、0.305μmであった。
3:円板
5:打ち抜き用パンチ
9:絞り缶
11:ダイ
17:アルミニウム缶基体
21,22:しごきダイス
Claims (8)
- Al含量が99質量%以上のアルミニウムよりなるアルミニウム基材を塑性加工して容器の形態に成形するアルミニウム容器の製造法において、
前記塑性加工に際して、前記アルミニウム基材の表面と塑性加工に用いる金型の作用面との間に、前記アルミニウム基材よりも高硬度のAl合金の微粒子を介在させることを特徴とするアルミニウム容器の製造法。 - 前記アルミニウム基材の塑性加工前のビッカース硬さをHa、前記金型の作用面のビッカース硬さをHbとしたとき、前記微粒子を形成しているAl合金のビッカース硬さHcは、下記式(1);
1.5Ha<Hc<0.8Hb (1)
で表される条件を満足している請求項1に記載のアルミニウム容器の製造法。 - 前記Al合金の微粒子として、該Al合金よりなる素材を塑性加工する際に生じた摩耗粉を使用する請求項1または2に記載のアルミニウム容器の製造法。
- 前記Al合金が、Mgを0.8~5.0質量%含有している請求項1~3の何れかに記載のアルミニウム容器の製造法。
- 前記塑性加工に先立って、前記アルミニウム基材の表面に、前記微粒子を付着させておく請求項1~4の何れかに記載のアルミニウム容器の製造法。
- 前記微粒子が、0.1μm以下の粒径を有している請求項1~5の何れかに記載のアルミニウム容器の製造法。
- 前記塑性加工はインパクト成形、絞り成形、再絞り成形、しごき成形のうち1つ以上含む請求項1~6の何れかに記載のアルミニウム容器の製造法。
- 前記塑性加工が、すくなくともしごき成形を含む請求項1~7の何れかに記載のアルミニウム容器の製造法。
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