JP6992269B2 - モールド成形用含気泡チョコレート及びその製造法 - Google Patents
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チョコレート類を含気させる方法としては、チョコレート生地に乳化剤を添加し起泡する方法(特許文献1)、構成脂肪酸残基の炭素数の合計が58以上のトリグリセリドを一定以上含む油脂をチョコレート生地中に配合し、その油脂結晶により気泡を安定化させ、チョコレート生地の比重を下げる方法(特許文献2)、予め気泡を含ませたあと予備冷却したチョコレート等を、減圧用容器の中に投入し、減圧してチョコレートを膨化し、全体を硬化する方法(特許文献3)、加圧した気体をチョコレート生地に含ませ、常圧に戻すことによりチョコレート生地の比重を下げる方法(特許文献4)、起泡したショートニングとチョコレート生地を混合しチョコレート生地の比重を下げる方法(特許文献5)、等が知られている。
また構成脂肪酸残基の炭素数の合計が58以上のトリグリセリドを添加する方法では、この構成脂肪酸残基の炭素数の合計が58以上のトリグリセリドが高融点であるため、チョコレートの本来持つ特徴である、口溶けの良さを阻害する問題がある。
減圧や加圧により起泡する方法はチョコレートの比重を大きく低下できるものの、製造工程が煩雑であったり大規模な付加的な設備を必要とするし、また別途起泡したショートニングと合わせて含気泡チョコレートを作製する場合は、必要以上に油分が上昇して油性感が増したり、合わせる過程で消泡したり、あわせられるチョコレート自体はまったく比重が下がっていないため、最終的に得られたホイップチョコレートの比重が下がりにくい傾向があった。
ところが、ホイップチョコレートはホイップという性格上、必ず多くの空隙部分があり、その空隙部分が収縮しないため、チョコレート全体の収縮が小さくなる。この特性から、収縮によって型離れするモールド成形では用いることが困難であった。
例えば、含気油性菓子生地を、油性菓子で薄層を形成したモールドに注入した後、冷却した押し型でプレスすることでダブルシェルを作り、該シェルの内側にセンターとして可食物を充填することを特徴とする含気複合油性菓子の製造方法(特許文献6)や含気油性菓子生地を、加熱したモールドに直接注入し、界面部分のみを融解させ、さらに振動を加えたのち、冷却して剥離させる含気油性菓子のモールド成型方法(特許文献7)などが挙げられる。
しかしながら、ダブルシェル内に充填する方法は、通常のモールド成形に比べ作業の手間や時間がかかり、また加熱したモールドを用いる方法は、テンパリング型(1,3-ジ飽和-2-不飽和トリグリセロールといった、対称型トリアシルグリセロールからなり、チョコレートを安定結晶化させる操作であるテンパリング操作が必要である。厳密な温度操作または種結晶となるシーディング剤をチョコレート中に分散させる必要がある。)の場合は加熱温度に制限があり、融解が不十分であったり、ブルームが発生しかねない。シーディング剤としてBOB(1,3-ジベヘニル-2-オレイルグリセロール、テンパリング型に含まれる対象型トリアシルグリセロールに比べ、同じ対象型でありながら、脂肪酸鎖長が長く、テンパリング型チョコレートが融解するような温度帯であっても安定結晶を維持でき、シーディング剤としての機能を発現できる)を用いることで、多少加熱温度の上限を向上させることはできるが、37℃程度であり、これも十分な融解効果が得られなかったり、シーディング剤の安定結晶が壊れてしまいブルームが発生しかねない。さらにはテンパリングの必要のない非テンパリングタイプのチョコレートの使用も記載されているが、融解によるブルームの恐れはないものの、テンパリング型のチョコレートに比べて口どけが劣る。
また、ホイップチョコレートの技術としては、食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を添加することで、含気させることができる技術(特許文献8)はあったが、上記のとおり、ホイップチョコレートにモールド適正はないと考えられていたため、モールドへの利用は全く考えられていなかった。
結論としてホイップチョコレートは塗布や付着させる製品形態に今のところ限られており、モールド成形を試みる動きもあるが、いまだ不十分であった。
そのため、ホイップチョコレートの成形方法を充実させることは市場から大きく嘱望されている技術であった。
本発明でいう食用油脂とは、例えば菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ脂、パーム核油等の植物性油脂、並びに、それら油脂の硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる。植物油脂は魚油等の動物油脂に比べて風味上優れている。
また、この食用油脂とこのあと添加するベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドを添加して作成する混合油はさらにチョコレート生地に添加するのだが、チョコレート生地がテンパリングタイプである場合はその食用油脂もテンパリングタイプの油脂を、チョコレート生地がノーテンパリングタイプである場合は、食用油脂もノーテンパリングタイプの油脂を用いる方が望ましい。
テンパリングタイプとは、チョコレートなどが固化する際に、油脂を安定した結晶構造にするための温度管理(テンパリング操作)が必要なもので、そういったテンパリング操作が必要な油脂をテンパリングタイプの油脂と称し対称型トリアシルグリセロール、例えばPOS(パルミト・オレオ・ステアリン)POP(パルミト・オレオ・パルミチン)、SOS(ステアロ・オレオ・ステアリン)というようにトリアシルグリセロールの1,3位に飽和脂肪酸、2位に不飽和脂肪酸であるオレイン酸が結合しているという特徴がある。
テンパリングタイプの油脂としては、チョコレートの主成分であるココアバター、シア脂、サル脂、ハイオレイックひまわり油などのトリグリセリドの1,3位に選択的に飽和脂肪酸を導入した酵素エステル交換油脂、パーム油等の溶剤分別で得られている。
本発明はホイップをするチョコレートがテンパリングタイプか、ノーテンパリングタイプかにより、使用する食用油脂を合わせたほうが望ましい。
ただし、モールド成型をするためには流し込んだチョコレートを冷却固化する際に収縮することでモールドから抜けやすくなる。ノーテンパリングタイプのチョコレートにも本発明は用いることができるが、テンパリングタイプのチョコレートの方が望ましい。よって、ここで用いる食用油脂もテンパリングタイプの方が望ましい。
本発明でいうベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドとは、例えばエルシン酸を含む油脂を水素添加により通常沃素価1以下、融点60℃以上にすることにより得ることができる。(不飽和のエルシン酸を硬化すれば、飽和のベヘン酸を得ることができる。)
ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの飽和脂肪酸中のベヘン酸は30%以上であることが望ましく、より好ましくは40%以上であることが望ましい。ベヘン酸が30%未満の場合は、チョコレート生地に混ぜたときにホイップ性が悪い傾向がある。
エルシン酸を30%以上含む油脂としては高エルシン酸の菜種油、からし油、クランベ油、うぜんばれん種子油等が挙げられるが、容易に入手可能な高エルシン酸の菜種油が好ましい。またトリ飽和脂肪酸グリセリドとはトリグリセリドの構成脂肪酸が全て飽和脂肪酸よりなるトリグリセリドである。
下記の製法によりベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドが選択的に結晶化するため、食用油脂の融解特性をほぼ維持したまま、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶が分散した形の油脂となる。
本発明では食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドとを85:15~95:5の割合で混合し使用するのが良い。当該トリ飽和脂肪酸グリセリドがこの割合より多いと、混合油の流動性を悪くして、扱い難いばかりか、チョコレート生地に混ぜたときにホイップ性が悪い傾向がある。また当該トリ飽和脂肪酸グリセリドがこの割合より少ないとチョコレート生地に混ぜたときにホイップ性が悪くなる。
本発明では食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を完全に融解した後、混合油の品温を30℃~45℃まで冷却し結晶を析出させた後、冷却で調製した油脂を使用するのが良い。そのことによって、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶がそれより融点の低い低融点油脂中に分散させてなる油脂組成物がえられ、これは含気泡用添加物として好適に用いることができる。食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油脂を完全に融解した後、オンレーター等の練りを加えることの出来る装置を用いて、品温を30℃~45℃まで冷却し結晶を析出させた後、冷却させて調製することができる。これ以外の方法たとえば単純に室温に放置して徐冷却した場合では結晶のサイズが大きくなり過ぎチョコレートに気泡を含ませるには不向きとなり、逆にコンビネーターなどを用いて急冷却させると結晶系が異なるためか、この場合もチョコレートに気泡を含ませるには不向きとなる。
本発明では「食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドとの混合油」(以降、混合油とする)をチョコレート生地に添加するに際し、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶が融解しない温度でホイップすることが必要である。特にベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドが結晶状態で存在することが必要であり、これによりベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドは他の油脂、例えばチョコレート生地中のココアバター等と相互作用しないためチョコレートの口溶けを悪くしない。しかし、完全に融解した状態で使用した場合においてはホイップするために必要な結晶量が無くなり、チョコレートの比重が低下しないばかりか、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドが他の油脂、例えばチョコレート生地中のココアバターと相互作用し、油脂の融点を上昇させ最終チョコレートの耐熱性は上がるが、口溶けが非常に悪いものとなる。
このためチョコレート生地の品温は25℃~40℃の範囲に温度調整することが必要であり、また食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油も同様に温度調整し、これらを混合してホイップする。なお、もちいた食用油脂が室温で液状である場合は、得られた混合油も室温でペースト状でチョコレート生地に添加するにしても混ぜ込みやすいが、食用油脂が室温で固化している場合は、ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドが融解しないが、食用油脂が融解する温度より高い温度域で混合油自体がペースト状になるまで温度調節する必要がある。
さらに、テンパリング型のチョコレート生地を使用するときには、テンパリングを行ったチョコレートのテンパリングが壊れない温度、例えば31℃で混合し、ホイップする事が可能である。
混合油をチョコレート生地に添加する場合、当該トリ飽和脂肪酸グリセリドが最終的にチョコレート生地中0.5%~2%、好ましくは1%~2%の範囲となるように添加する事が好ましい。これより添加量が多い場合、油脂の融点が高くなり過ぎ、ホイップはするもののホイップ途中でチョコレートの粘度増加が激しく、ホイップ時の温度によってはホイップ途中に固化してしまう。さらにホイップできたとしてもチョコレートとしては、耐熱性は付与されるが、非常に口溶けの悪いものとなり、菓子としての商品価値は非常に下がる。逆にこれより添加量が少ない場合、チョコレートの比重が低下しない。
また、前述のとおり、混合油に用いた食用油脂とチョコレート生地はテンパリングタイプ同士であわせておく方が望ましい。タイプの異なる組み合わせの場合はホイップの成否とは別にブルームがでかねず、また、ノーテンパリングタイプはホイップをしない状態でも収縮しにくく、本発明を使うことで改善はなされるが、それでもモールド成型用途には不向きである。
本発明でいう含気泡チョコレートの比重とは、望ましくは0.5~1.0であることが好ましい。適正な比重の説明はデモールド工程にてより詳細に説明する。
なお、比重は含気泡チョコレートの密度(単位体積あたり質量)と、4℃の水の密度との比であり、その測定は容器に含気泡チョコレートを充填して内容物の重量を測定し、かわりに水を充填したときの水の重量で除して算出した。
本発明でいうチョコレートは、いわゆる規約乃至法規上に規定されたチョコレート(「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(昭和46年3月29日、公正取引委員会告示第16号)による「チョコレート生地」及び「準チョコレート生地」)のみを指すのではなく、通常、カカオバターの代わりに使用されるカカオバター代用脂としてのハードバターを使用した各種のチョコレート類をも含むものであり、配合面よりスイートチョコレート、ミルクチョコレート、ブラックチョコレート、ホワイトチョコレート等のいずれであっても良い。含気泡チョコレートにおける原料チョコレートの含有量としては60%以上が好ましい。
使用するモールドはテーパが付いているものが望ましい。ここで言う「テーパが付く」とはモールドの底部(デモールドしたチョコレートにおいては上部にあたる)よりモールド開口部(デモールドしたチョコレートにおいては底部にあたる)が大きい状態を指し、モールドの側面(モールド底部とモールド開口部のそれぞれと交わる面を指す)と底面の交わる角度(図1θ1~θ3参照)は、空隙部側が90°を超えることが望ましい。(図1(A)~(C)参照)側面は曲面であってもかまわずその底面と交わる角は微小面における交差角とする。また側面はどの位置をとってもテーパが付いている必要があり、一部が逆テーパの状態、例えば上部側より底部側が大きい状態がどこかに発生している状態は望ましくない。逆テーパの付いたモールドは本発明のホイップ云々以前にデモールドが不良となりやすい。
上記記載のテーパの付いたモールドを水平な台上に置き、予め融解したチョコレートを流しこむ。
次いで、充填の終ったモールドに軽く震動を与えた(タッピング)後、型外へはみ出た材料を掻き取り(スクレーピングし)、冷風を当てる、あるいは冷蔵温度帯(5℃程度)で固化させ、次いで(要すれば更にエージング後)製品として包装などの工程に供される。なお被充填物が普通のカカオバター又はハードバターを用いたチョコレートであれば、当然充填前にテンパリングが必要である。
タッピングは、従来のモールド成型を施すチョコレートの製造工手においても行われている操作であり、チョコレートをモールドの凹部に流し込んだ際に残存する大きな空気の泡(大気泡と称する)を取り除くために行うものである。タッピングはモールドに振動(手作業の場合は、作業台に軽く当てる操作を繰り返すことが多い)を与えることで、モールド内のチョコレートと気泡に加速度を与えることとなる。
この流体中の物体の浮力Fは
F = ρVg (ただし、ρ:流体の密度、V:物体の体積、g:重力加速度)
で表される。(ここでは物体は「空気(気泡)」であり、流体は「チョコレート」にあたる。)
通常重力の加速度下では気泡にかかる浮力は「1Gの重力加速度での気泡と同体積のチョコレートの重量」に相当する力であり、その浮力では粘稠なチョコレートの表面張力を打ち破ることが出来ずモールドの壁に張り付いたままである。
しかし、タッピングを行うことで振動に伴う加速度(手作業の場合は作業台にモールドを当てることで発生する急ブレーキに伴う加速度)が気泡に対して「強い加速度下での気泡と同体積の流動性食品素材の重量」相当する「強い浮力」が発生し、モールドの壁からはずれ粘稠なチョコレートの中を移動し、最終的に表面張力を打ち破って外に脱出する。
これにより、タッピングはモールド凹型内のチョコレートから大気泡を離脱させ、チョコレートの厚さを均一化する効果がある。(図2(D)、(E)のL参照)
しかし、粘稠なチョコレート内を移動する抵抗であるところの粘度は気泡の表面積に依存し、浮力は体積に依存するため、表面積が体積に比して大きくなる、すなわち気泡径が小さくなるにつれて加速度による浮力が粘度に抗って気泡を動かす抵抗が増し、結果としてタッピングでチョコレートの外に脱出できる大気泡以外の、ホイップチョコレートを構成する「比較的小さな気泡」はタッピング程度の加速度ではチョコレートからの脱出には至らない。
この粘度差があるホイップチョコレートをタッピングした際に、粘度の低いペースト油脂法のチョコレートに含まれる「比較的小さな気泡」のなかでも大きいもの(中気泡と称する、図2(D)、(E)のM)はチョコレート表面から離脱することはできないものの、加速度に伴う浮力を得て、付近のチョコレートごと動き、流動しやすい状態にする。このチョコレートが流動しやすい状態においてはタッピング後の短時間維持されており、その間に中気泡は重力とは反対方向、すなわち上方にわずかながら移動する。(図2(E)参照)
もちろん、「比較的小さな気泡」のなかでも小さいもの(小気泡と称する、図2(D)、(E)のS)は、前述の中気泡より相対的に体積に比した表面積が大きくなるため、粘度の高い乳化剤法はもちろんだが、粘度が低いペースト油脂法によるホイップチョコレートにおいてもタッピングで獲得した浮力ではチョコレートを動かすこともそれ自身が動いて壁から離れることも困難である。
しかし、中気泡部分は、油脂の収縮が悪い他、泡自体が脆く、デモールドの際に、モールドの壁に張り付いた泡の部分から割れて型に一部付着し、デモールド不良の原因になるが、小気泡では割れや付着が顕著ではなく、さらにはペースト油脂法の場合は大気泡が内部に移動することで表面付近の見かけ上の比重が大きく、連続相である油脂が相対的に大きくなることで収縮が大きくなりモールドからはがれやすくなる。
上記のとおり連続相である油脂が大きいほど収縮がしやすくデモールドしやすくなる。油脂の量は比重で判断でき、望ましくは比重が0.5~1.0、より望ましくは0.6~0.95が、最も望ましくは0.7~0.95であることが好ましい。
比重は大きいほど、デモールドしやすくなるが、通常のチョコレートの比重や食感に近くなり、ホイップする意義が失われる。ただし、ホイップされていないチョコレートの比重は1.1~1.2程度もあり、1.0というのは十分にホイップされたチョコレートとして差別化されている品質である。
比重が小さいほど食感は軽くなるが、気泡をかなり含む為、チョコレートの流動性が無くなり、モールドへの流し込みにくくなり、また油脂の連続相が少なくなり、たとえ粘度の低いペースト法で作成されたチョコレート中でタッピングをしても十分に収縮せずデモールドしにくくなる。それでも他の方法で含気させた含気泡性チョコレートよりデモールドしやすい傾向にあるのだが、0.5未満になると食感自体は非常に軽くなるのだが、デモールド不良品が多く、商品価値が低い。
ハードバター(沃素価34、融点34℃、不二製油株式会社製、商品名「メラノNewSS7」)89部とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドとして高エルシン酸菜種油の極度硬化油(沃素価1以下、融点62℃)11部の混合油を完全に80℃で融解した後、水温15℃の水槽中で油脂の品温が38℃まで冷却してベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶を析出させ、この状態の混合油を20℃で保存した。
ペースト油脂Aを40℃、12~15時間保管後、30℃に温調する。
別途50℃の湯煎にて融解したホワイトチョコレート(不二製油株式会社製、商品名「ホワイトチョコレート」/油分34%)を30℃まで冷却し、シード剤(不二製油株式会社製/「チョコシードA」商品名)をチョコレートに対し0.2%加えてテンパリングしたものを85部用意し、先の温調済みのペースト油脂Aを15部加え、ケンウッドミキサー(株式会社愛工舎製作所製、ホイッパー使用)で中速にて表1記載の所定の時間攪拌した含気泡チョコレートを得て、その比重を測定した。
得られた含気泡チョコレートを底面寸の縦15mm×横28mm、開口部の縦21mm×横34mm、深さ15mmのテーパのついたモールド型に流し込み、10℃で30分間冷却した後に、デモールドして剥離性を評価した。
ホイップ用の乳化剤(阪本薬品工業製、商品名「SYグリスターPS3S」)を最終チョコレートに対して0.5%となるように加えたハードバター(沃素価34、融点34℃、不二製油株式会社製、商品名「メラノNewSS7」)15部を十分に融解させ30℃に温調する。
別途50℃の湯煎にて融解したホワイトチョコレート(不二製油株式会社製、商品名「ホワイトチョコレート」/油分34%)を30℃まで冷却し、シード剤(不二製油株式会社製/「チョコシードA」商品名)をチョコレートに対し0.2%加えてテンパリングしたものを85部用意し、先の温調済みのホイップ用の乳化剤入りハードバターを15部加え、ケンウッドミキサーで中速にて表1記載の所定の時間攪拌した含気泡チョコレートを得て、その比重を測定した。
得られた含気泡チョコレートを実施例1と同じモールド型に流し込み、10℃で30分間冷却した後に、デモールドして剥離性を評価した。
注1: 流動性の評価について
○:通常のチョコ生地に近い状態の流動性
△:ややボテているが、自重で流れる
×~△:自重で落ちないが、外力で流せる
×:モールドのタッピングすら困難
注2:デモールド性の評価について
○:問題なく剥離
△:剥離するが、一部モールドに付着が見られる
×:モールドにひどく付着
一方の比較例1~比較例4の乳化剤法で作成したホイップチョコレートは、比重0.9程度までしか落ちていない比較例1ですら、ペースト油脂法で0.73程度まで落ちた実施例5と同程度の流動性とデモールド性しか得られずそれ以下の比重まで下げた比較例2~比較例4は作業性・デモールド性ともに商品価値の低いものとなった。
よって同程度の比重において、乳化剤法に比べ、ペースト油脂法は流動性が良く、デモールド性に優位であり、同程度の作業性とデモールド性なら、乳化剤法に比べ、ペースト油脂法ははるかに低い比重に到達できることが確認された。
底面寸の縦14mm×横14mm、開口部の縦19mm×横19mm、深さ14mmのテーパのついたモールド型に流し込む以外は、実施例3と同様の配合と操作にて得られた含気泡チョコレートを作成し、デモールドして剥離性を評価した。
底面寸の縦15mm×横28mm、開口部の縦15mm×横28mm、深さ15mmのテーパのついていないモールド型に流し込む以外は、実施例1と同様の配合と操作にて得られた含気泡チョコレートを作成し、デモールドして剥離性を評価した。
実施例1のホワイトチョコレートを実施例8はミルクチョコレート(不二製油製、商品名「ミルクチョコレート」/油分34%)に、実施例9はスイートチョコレート(不二製油製、商品名「スイートチョコレート」/油分34%)変える以外は実施例1と同様の配合と操作にて得られた含気泡チョコレートを作成し、デモールドして剥離性を評価した。
実施例9はペースト油脂Bの食用油脂にテンパリングタイプのハードバターを用いたが、実施例3のペースト油脂Aのハードバターより若干融点が低く、得られたホイップチョコレートが喫食温度帯で噛み出しがやわらかい特徴があったが、実施例3と同様にデモールド作性は良好であった。
また、実施例10はペースト油脂Cに融点が低くテンパリングタイプには用いられない油脂を用いたため、チョコレートへの添加や混合の作業性がよいのではあるが、テンパリングタイプのチョコレートへ添加することで、チョコレートの固化時の収縮がペースト油脂A・ペースト油脂Bに比較して小さく、デモールド性はやや劣ったものの、商品として利用できるものであった。
図3、図4より、ペースト油脂法では、モールド近傍部は気泡が比較的細かく、中央部は大きい。
これは中気泡が近傍部より離脱し、より中央へと移動したためと見られる。
図5、図6より、乳化剤法では、近傍部、中央部による差が全くなかった。気泡は全体的に大きく、数が少ない。これは本来であれば表面積に比して大きな浮力を得られるはずのより大きな気泡であるにもかかわらず、粘度が高いため、モールド近傍部より移動できないことを示している。
(B):テーパがついたモールド(空隙部が円錐台)
(C):テーパがついたモールド(空隙部が半楕円体)
θ1:(A)のモールドにおける側面と底面の交わる角度
θ2:(B)のモールドにおける側面と底面の交わる角度
θ3:(C)のモールドにおける側面と底面の交わる角度
L:大気泡
M:中気泡
S:小気泡
Claims (6)
- 食用油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を、加温して結晶を融解させた後、冷却してベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの結晶を析出させた状態で、チョコレート生地に添加してホイップさせる、モールド成形用含気泡チョコレートを製造する工程、
得られたモールド成形用含気泡チョコレートを、テーパが付いたモールドを用いて成形する工程を有する、含気泡チョコレートの製造法(ただし、天面及び側面に梨地の模様が付いたモールドを使用する態様を除く)。 - チョコレート生地に添加してホイップさせた後の比重が0.5~1.0である、請求項1に記載の含気泡チョコレートの製造法。
- 食用油脂がテンパリングタイプである、請求項1又は請求項2に記載の含気泡チョコレートの製造法。
- ベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドとして、飽和脂肪酸中のベヘン酸が30%以上の油脂を使用する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の含気泡チョコレートの製造法。
- モールドを用いて成形する工程において、中央部よりもモールド近傍部の気泡が細かくなることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の含気泡チョコレートの製造法。
- 使用するモールドのテーパが20°以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の含気泡チョコレートの製造法。
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