JP6992245B2 - 無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材 - Google Patents
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Description
以下、本発明に係る無機化合物および無機化合物を用いた封止材の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の無機化合物は、層状構造を有する無機化合物において層が剥離されているものである。このような無機化合物は、層状構造を有する無機化合物を溶媒に分散させることで得られる。また、この溶液にフリーズドライ処理を施し、フリーズドライ処理の回収物に焼成処理を施すことで層が剥離された状態の無機化合物が固体として回収される。
エラストマーとしては、未架橋ブチルゴムを用いることができる。未架橋ブチルゴムとしては、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体ゴムを用いる。イソプレンの含有量は、例えば、ゴム全体の0.6~2.5モル%程度である。他にも、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのブチルゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やフッ素ゴム(FKM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。
架橋剤としては、アルキルフェノールホルマリン樹脂を用いると良い。他にも、過酸化物、キノイド、およびイオウ等を架橋剤として用いることができる。過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、1,1-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン等が挙げられる。キノイドとしては、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。架橋剤の添加量は、エラストマー100重量部に対して、1~20重量部とすることが好ましい。
封止材は、エラストマーに、無機化合物および架橋剤等の配合剤を混練し、加圧成形することにより得られる加硫化物を用いて形成される。加硫化物において、層状構造が剥離された無機化合物は、エラストマー内に含有され均一に分散している。ただし、剥離された層状構造は、混練・加硫工程において一部凝集体を形成する場合がある。本実施形態の無機化合物が、加硫化物において形成する凝集体の大きさは3μm以下である。
上記のような本実施形態の無機化合物の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、溶媒を撹拌して無機化合物の層間を剥離させる剥離工程
(2)溶媒を凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程
(3)フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を焼成する焼成工程
剥離工程においては、まず、層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加する。無機化合物は、溶媒に対して0.01~10wt%となるように添加すると良い。この溶液を撹拌すると層状構造を有する無機化合物が溶媒に分散され、無機化合物において層間距離が増大する。分散溶液を、撹拌後静置することで無機化合物の層状構造が崩れてカードハウス構造が形成される。カードハウス構造においては、無機化合物の各層は、他の層から剥離された状態である。撹拌時間を0.5~5時間程度とし、静置時間を0~3時間程度とすることで、無機化合物の層間距離を充分に増大した上で、カードハウス構造を形成するこができて良い。
フリーズドライ工程においては、層が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶液について、フリーズドライ処理が施される。フリーズドライ処理では、まず、凍結庫等を用いて大気中-45℃程度で剥離溶液を冷凍させる。凍結温度は0~-100℃とすることが好ましい。この温度範囲で剥離溶液を凍結させると、フリーズドライ処理の乾燥段階において水分が均一に昇華される。冷凍を行う時間は、剥離溶液の体積により異なるが、剥離溶液が250mLであれば、大気中において例えば2~3時間程度行う。
焼成工程では、フリーズドライ工程により回収された層が剥離された無機化合物について焼成処理を行う。焼成処理は、焼成温度700~1000℃、焼成時間は3~7時間程度行うことが好ましい。焼成処理を施しておくと、吸湿等により無機化合物が吸水したとしても、剥離された層が凝集して凝集体を形成することが抑制される。
以上のようにして形成された無機化合物を用いた封止材の製造法は、以下の工程を含む。
(1)無機化合物とエラストマーを混練して、固相組成物を生成する混練工程
(2)固相生成物を加圧成形して、加硫化物を生成する加硫工程
混練工程では、エラストマーに、無機化合物および架橋剤等が添加され、これらを混練することにより固相組成物が得る。混練手段としては、バンバリミキサーやインターナルミキサー等の密閉式ミキサーおよび2本ロールミル等のオープンロールミルを好適に用いることができる。混練手段としては、他にも、例えばニーダー、一軸押出機、二軸押出機が挙げられる。混練手段は、単独で用いても良いし、複数を組み合わせて利用しても良い。混合時間は、用いる混練手段により異なるが、30分~1時間程度混合することで各材料が均一に混合される。混練温度は、20~50℃とすると良い。
加硫工程では、得られた固形組成物を、PET(Polyethylene Terephthalate)シートの型に入れ、ヒートプレスすることで加硫(架橋)させるとともに板状に加工する。プレスの条件は、温度を150℃以上、圧力を10Mpa、およびプレス時間を7~8分とすることが好ましい。なお、PETシートの型ではなく、金型に入れて所定の圧力とプレス時間でプレスすることにより加硫させることもできる。加硫工程において得られた板状の加硫化物について、必要に応じて加工を行うことで封止材が形成される。
(1)層状構造を有する無機化合物において層が剥離された無機化合物が、エラストマーに含有され、エラストマーにおいて無機化合物が形成する凝集体の90%以上の大きさが3μm以下であることを特徴とする。
ベントナイトは、層状構造を有するモンモリロナイトを主成分としているため、ベントナイトを用いることで層が剥離された無機化合物を効率的に得ることができる。
(3)層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、溶媒を撹拌して無機化合物の層間を剥離させる剥離工程と、剥離工程により得られた、層間が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶媒を凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程と、フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を焼成する焼成工程と、を有する。
凍結温度0~-100℃において剥離溶液を凍結させると、フリーズドライ処理の乾燥段階において水分が均一に昇華される。そのため、得られる層が剥離された無機化合物の品質を向上させることができる。
焼成温度700~1000℃において焼成すると、吸湿等により無機化合物が吸水したとしても、剥離された層が凝集して凝集体を形成することが抑制される。
無機化合物の結晶構造を解析するために、以下の実施例1および比較例1を作成した。
層状構造を有する無機化合物としてのモンモリロナイトを、純水100mLに対して1g添加した。無機化合物が添加された溶液を、5時間撹拌後剥離溶液を得た。剥離溶液について、大気中-45℃にて2時間冷凍を行った。凍結された剥離溶液について、乾燥室を真空排気することで、真空乾燥を行った。真空乾燥は、2日間に渡り行った。真空乾燥により回収された層が剥離された無機化合物について、800℃で5時間焼成処理を行い、層が剥離された無機化合物を得た。
比較例1の無機化合物としては、未処理のモンモリロナイトを用いた。
上記実施例1および比較例1の無機化合物と、エラストマーとを混合し加硫した際に得られる加硫化物の特性を評価するために、以下の実施例2、比較例2および3を作成した。
ブチルゴム3gに対して、実施例1の無機化合物を0.3gと、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
ブチルゴム3gに対して、比較例1のモンモリロナイトを0.3gと、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
ブチルゴム3gに対して、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
実施例2および比較例2の加硫化物について、XRD(X線回折法)による結晶構造解析を行った。XRD分析の結果を図3に示す。
上記実施例2、比較例2および3について、波長200~1500nmにおける透過率を分光光度計を用いて測定した。透過率の測定結果を図4に示す。
上記実施例2および比較例2について、SEM画像にて無機化合物の分散性を確認した。図5に各加硫化物の断面図のSEM像(×2.00k)を示す。
そこで、実施例2について、TEM画像にて無機化合物の分散性を確認した、図6に、実施例2の断面図のTEM像を示す。図6の左側は、TEM像(×10k)であり、右側の2図は左側のTEM像の部分拡大像(×200k)である。
上記実施例2、比較例2および3について、メタノールを用いた透過度の測定を行った。透過度とは、一定時間に単位面積の加硫化物を通過する水蒸気の量である。この測定における透過度とは、温度40℃において、加硫化物を通過する水蒸気の質量(g)を,その材料1m2当たりに換算した値である。なお、透過度の測定については、JISZ0208の規格に沿って行われた。図7に、透過度の測定結果を示す。
Claims (4)
- 蓄電デバイスの封止材の製造方法であって、
層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、前記溶媒を撹拌して無機化合物の層状構造を崩す剥離工程と、
前記剥離工程により得られた、層状構造が崩れた無機化合物が含まれる剥離溶媒を0~-100℃で凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程と、
前記フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を700~1000℃で焼成する焼成工程と、
前記剥離工程と前記フリーズドライ工程と前記焼成工程とを経た無機化合物と、エラストマーを混練して、固相組成物を生成する混練工程と、
固相生成物を加圧成形して、加硫化物を生成する加硫工程と、
を有することを特徴とする封止材の製造方法。 - 前記剥離工程では、当該無機化合物の各層の平面と側面とが引き合った立体構造であるカードハウス構造にすることを特徴とする請求項1記載の封止材の製造方法。
- 蓄電デバイスの封止材であって、
層状構造を有する無機化合物が、層状構造が崩れた状態で、エラストマーに含有され、
前記エラストマーにおいて前記無機化合物が形成する凝集体の90%以上の大きさが3μm以下であることを特徴とする封止材。 - 層状構造を有する無機化合物が、各層の平面と側面とが引き合うことで層状構造が崩れてカードハウス構造を有する状態であることを特徴とする請求項3記載の封止材。
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