JP6992245B2 - 無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材 - Google Patents

無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材 Download PDF

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Description

本発明は、無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材に係る。
電解コンデンサは、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔とをセパレータを介在させて巻回して形成されたコンデンサ素子を有する。そして、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等からなる有底筒状の外装ケースに収納する。外装ケースの開口部には封止材が装着され、絞り加工により外装ケースを密封している。封止材は、ブチルゴム等の弾性ゴムを用いて形成されている。封止材は、電解コンデンサ内部の電解液が外部に蒸発揮散するのを防止するガスバリア特性を有する。このような封止材は、電解コンデンサ以外にも、キャパシタや電池等の蓄電デバイスにおいて使用されている。
特開2003-282373号公報
近年、封止材として、ベントナイトを弾性ゴムに混ぜることで、封止材のガスバリア特性を向上させることが検討されている。ベントナイトは、凝灰岩などが風化してできた粘土であり、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物である。また、ベントナイトは、層状構造を有する。そのため、ベントナイトは複数の層が凝集しており、弾性ゴム内で均一に分散させることが難しい。よって、ベントナイトを含む封止材のガスバリア特性が不十分となるおそれがあった。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、封止材のガスバリア特性を良好とすることができる無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材を提供することにある。
本発明者らは、層状構造を有する無機化合物であるベントナイトについて、水に分散させた状態でフリーズドライ処理を行い、その後焼成処理を行うことでベントナイトの層構造が単層に剥離するという知見を得た。この剥離後のベントナイトをエラストマーに含有させることにより、ガスバリア特性が良好な封止材を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る無機化合物の製造方法は、層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、前記溶媒を撹拌して無機化合物の層間を剥離させる剥離工程と、前記剥離工程により得られた、層間が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶媒を凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程と、前記フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
前記フリーズドライ工程の凍結温度は、0~-100℃であってもよい。前記焼成工程の焼成温度は、700~1000℃であってもよい。
また、本発明に係る封止材の製造方法は、上記の製造方法により製造された無機化合物と、エラストマーを混練して、固相組成物を生成する混練工程と、固相生成物を加圧成形して、加硫化物を生成する加硫工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る封止材は、層状構造を有する無機化合物において層が剥離された無機化合物が、エラストマーに含有され、前記エラストマーにおいて前記無機化合物が形成する凝集体の90%以上の大きさが3μm以下であることを特徴とする。前記無機化合物が、ベントナイトであってもよい。
本発明によれば、封止材のガスバリア特性を良好とすることができる無機化合物の製造方法、封止材の製造方法、および封止材を提供することができる。
モンモリロナイトの構造を説明するイメージ図であり、(a)は層状構造を有するモンモリロナイト、(b)は層が剥離されたモンモリロナイトを示す。 モンモリロナイトについてXRD分析を行った結果を示すグラフである。 加硫化物についてXRD分析を行った結果を示すグラフである。 加硫化物について波長200~1500nmにおける透過率を測定した結果を示すスペクトルである。 加硫化物のSEM像(×2.00k)である。 加硫化物のTEM像(×10k)である。 加硫化物について透過度測定を行った結果を示すグラフである。
[1.構成]
以下、本発明に係る無機化合物および無機化合物を用いた封止材の実施形態について詳細に説明する。
(無機化合物)
本実施形態の無機化合物は、層状構造を有する無機化合物において層が剥離されているものである。このような無機化合物は、層状構造を有する無機化合物を溶媒に分散させることで得られる。また、この溶液にフリーズドライ処理を施し、フリーズドライ処理の回収物に焼成処理を施すことで層が剥離された状態の無機化合物が固体として回収される。
層状構造を有する無機化合物としては、天然粘土や合成粘土を用いる。天然粘土としては、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト等があげられる。合成粘土としては、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤マイカ等が挙げられる。層状構造を有する無機化合物としては、特に、ベントナイトを好適に用いることができる。
ベントナイトは、モンモリロナイト(以下、MMTと記載する場合もある)を主成分とする粘土鉱物である。また、ベントナイトは、石英、α-クリストバライト、オパールなどの珪酸鉱物を含む。このようなベントナイトは、長石、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、さらにパイライトなどの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称である。ベントナイトに含有する各鉱物を構成する元素は、地殻を構成する主要元素Si,Al,Fe,Mg,Ca,Na,K,O,H,S,Cからなっており、一般的な岩石の化学組成と類似している。
ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは、スメクタイトに分類される粘土鉱物である。スメクタイトは、層状ケイ酸塩鉱物の一種である。モンモリロナイトは、アルミナ八面体層が2つのケイ酸四面体層に挟まれるようにして積み重なった3層を単位層としている。単位層は、厚みが1nm程度、各辺の長さが1μm程度の板状の結晶体である。図1(a)に示す通り、モンモリロナイトは、単位層が空間を介して複数積層された状態で存在する。モンモリロナイトは、単位層表面の負電荷と層間の陽イオンが結合することで、複数の単位層が重なった状態で安定化している。
安定化状態において、モンモリロナイトの各層は平面が負電荷を帯び、側面が正電荷を帯びている。そのためモンモリロナイトを溶媒に分散させて静置すると、図1(b)に示す通り、負電荷を有する平面と正電荷を有する側面とが引き合うことで層状構造が崩れて立体的な構造(カードハウス構造)を呈する。カードハウス構造において、無機化合物の各層は、他の層から剥離された状態となる。モンモリロナイトを分散させる溶媒としては、純水等の水が好ましい。モンモリロナイトの層間の陽イオンと水分子が水和し、層間距離が増大するからである。ただし、アルコールやアセトンのような有機溶媒を用いた場合も、層間の陽イオンと溶媒和することにより、層間距離を増大させることができる。
層が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶液について、フリーズドライ処理を施すと、無機化合物の各層が固体として回収される。すなわち、層が剥離された無機化合物が回収される。フリーズドライ処理により得られた層が剥離された無機化合物については、焼成処理が施される。フリーズドライ処理により層が剥離された無機化合物であっても、再度水分が添加されると凝集体を形成する。焼成処理を施しておくと、無機化合物が吸湿等により凝集体を形成することが抑制される。以上のようにして、層状構造を有する無機化合物から、層が剥離された無機化合物が得られる。なお、フリーズドライ処理および焼成処理については、後ほど詳細に説明する。
このような無機化合物は、以下に示すエラストマーおよび架橋剤等と混合され、加圧成形されることで封止材を形成する。封止材とは、例えば固体電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子や電解液等が収納された外装ケースの開口部に装着され、外装ケースを密閉する部材である。無機化合物をエラストマーと混合する場合、無機化合物の添加量は、エラストマー100重量部に対して、30~150重量部とすることが好ましい。
(エラストマー)
エラストマーとしては、未架橋ブチルゴムを用いることができる。未架橋ブチルゴムとしては、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体ゴムを用いる。イソプレンの含有量は、例えば、ゴム全体の0.6~2.5モル%程度である。他にも、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのブチルゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やフッ素ゴム(FKM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。
(架橋剤)
架橋剤としては、アルキルフェノールホルマリン樹脂を用いると良い。他にも、過酸化物、キノイド、およびイオウ等を架橋剤として用いることができる。過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、1,1-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン等が挙げられる。キノイドとしては、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。架橋剤の添加量は、エラストマー100重量部に対して、1~20重量部とすることが好ましい。
なお、封止材を形成する際に、例えば、補強剤、増量剤、加工助剤、反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、老化防止剤、難燃剤、カップリング剤等の配合剤を添加しても良い。例えば、加工助剤を添加することにより、後述する固相組成物を柔らかくし、加工性を向上することができる。また、無機化合物もより多量に添加できるようになる。加工助剤としては、例えばポリブテンオイル、パラフィン系オイル、パラフィン系ワックス、ナフテン系オイル、脂肪酸、脂肪酸塩等を使用できる。
(封止材)
封止材は、エラストマーに、無機化合物および架橋剤等の配合剤を混練し、加圧成形することにより得られる加硫化物を用いて形成される。加硫化物において、層状構造が剥離された無機化合物は、エラストマー内に含有され均一に分散している。ただし、剥離された層状構造は、混練・加硫工程において一部凝集体を形成する場合がある。本実施形態の無機化合物が、加硫化物において形成する凝集体の大きさは3μm以下である。
得られた加硫化物は、電解コンデンサ、キャパシタ、および電池等の蓄電デバイスにおいて封止材として用いると良い。例えば、封止材の表面をテフロン(登録商標)等の樹脂でコーティングしたり、封止材の表面にベークライト等の板を貼り付けると溶媒蒸気の透過性が低減するのでさらに好ましい。ただし、得られた加硫化物の用途は封止材に限定さるものではない。
蓄電デバイスの電解液としては、一般的に用いられている溶媒や電解質が使用できる。例えば、エチレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソブチルスルホンなどの鎖状スルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシエタン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ニトロメタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、メタノール、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒、水、またはこれらの溶媒との混合物を用いることもできる。
[2.無機化合物の製造方法]
上記のような本実施形態の無機化合物の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、溶媒を撹拌して無機化合物の層間を剥離させる剥離工程
(2)溶媒を凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程
(3)フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を焼成する焼成工程
(1)剥離工程
剥離工程においては、まず、層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加する。無機化合物は、溶媒に対して0.01~10wt%となるように添加すると良い。この溶液を撹拌すると層状構造を有する無機化合物が溶媒に分散され、無機化合物において層間距離が増大する。分散溶液を、撹拌後静置することで無機化合物の層状構造が崩れてカードハウス構造が形成される。カードハウス構造においては、無機化合物の各層は、他の層から剥離された状態である。撹拌時間を0.5~5時間程度とし、静置時間を0~3時間程度とすることで、無機化合物の層間距離を充分に増大した上で、カードハウス構造を形成するこができて良い。
(2)フリーズドライ工程
フリーズドライ工程においては、層が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶液について、フリーズドライ処理が施される。フリーズドライ処理では、まず、凍結庫等を用いて大気中-45℃程度で剥離溶液を冷凍させる。凍結温度は0~-100℃とすることが好ましい。この温度範囲で剥離溶液を凍結させると、フリーズドライ処理の乾燥段階において水分が均一に昇華される。冷凍を行う時間は、剥離溶液の体積により異なるが、剥離溶液が250mLであれば、大気中において例えば2~3時間程度行う。
凍結された剥離溶液は、フリーズドライ処理において真空乾燥機を用いて真空中で乾燥される。真空乾燥機の乾燥室において、真空排気されることにより、凍結された剥離溶液に含まれる水分が昇華され、層が剥離したままの状態で無機化合物が乾燥される。フリーズドライ処理を行う時間は、凍結された剥離溶液の体積により異なるが、厚さ2~3cm程度の氷であれば、2~4日程度行う。以上のようなフリーズドライ工程において、層が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶液から、無機化合物の各層が回収される。すなわち、層が剥離された無機化合物が回収される。
(3)焼成工程
焼成工程では、フリーズドライ工程により回収された層が剥離された無機化合物について焼成処理を行う。焼成処理は、焼成温度700~1000℃、焼成時間は3~7時間程度行うことが好ましい。焼成処理を施しておくと、吸湿等により無機化合物が吸水したとしても、剥離された層が凝集して凝集体を形成することが抑制される。
[3.封止材の製造方法]
以上のようにして形成された無機化合物を用いた封止材の製造法は、以下の工程を含む。
(1)無機化合物とエラストマーを混練して、固相組成物を生成する混練工程
(2)固相生成物を加圧成形して、加硫化物を生成する加硫工程
(1)混練工程
混練工程では、エラストマーに、無機化合物および架橋剤等が添加され、これらを混練することにより固相組成物が得る。混練手段としては、バンバリミキサーやインターナルミキサー等の密閉式ミキサーおよび2本ロールミル等のオープンロールミルを好適に用いることができる。混練手段としては、他にも、例えばニーダー、一軸押出機、二軸押出機が挙げられる。混練手段は、単独で用いても良いし、複数を組み合わせて利用しても良い。混合時間は、用いる混練手段により異なるが、30分~1時間程度混合することで各材料が均一に混合される。混練温度は、20~50℃とすると良い。
(2)加硫工程
加硫工程では、得られた固形組成物を、PET(Polyethylene Terephthalate)シートの型に入れ、ヒートプレスすることで加硫(架橋)させるとともに板状に加工する。プレスの条件は、温度を150℃以上、圧力を10Mpa、およびプレス時間を7~8分とすることが好ましい。なお、PETシートの型ではなく、金型に入れて所定の圧力とプレス時間でプレスすることにより加硫させることもできる。加硫工程において得られた板状の加硫化物について、必要に応じて加工を行うことで封止材が形成される。
[4.作用効果]
本実施形態の封止材が奏する作用効果は以下の通りである。
(1)層状構造を有する無機化合物において層が剥離された無機化合物が、エラストマーに含有され、エラストマーにおいて無機化合物が形成する凝集体の90%以上の大きさが3μm以下であることを特徴とする。
層が剥離された無機化合物をエラストマー等の高分子材料と混合することにより、無機化合物をエラストマーに均一に分散させることができる。このような加硫化物を封止材に用いることで、気体の透過を抑制し、気密性が向上された蓄電デバイスを提供することができる。すなわち、封止材のガスバリア特性を良好とすることができる。
また、層が剥離された無機化合物がエラストマーに含有されると、一部凝集体を形成する場合がある。しかし、本実施形態の無機化合物が形成する凝集体は、凝集体の90%以上において、大きさが3μm以下であるため、エラストマーの一部に無機化合物が大きく凝集することがない。エラストマーにおいて大きな凝集体が存在することは、エラストマー内に無機化合物が均一に分散されていないことになる。よって、気体の通り道となる隙間が多数存在する。一方、凝集体の大きさが3μm以下の場合、無機化合物はエラストマー内に均一に分散している状態であるため、無機化合物により気体の通りが阻害される。よって、封止材のガスバリア特性を良好とすることができる。
(2)無機化合物が、ベントナイトである。
ベントナイトは、層状構造を有するモンモリロナイトを主成分としているため、ベントナイトを用いることで層が剥離された無機化合物を効率的に得ることができる。
また、本実施形態の無機化合物の製造方法が奏する作用効果は以下の通りである。
(3)層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、溶媒を撹拌して無機化合物の層間を剥離させる剥離工程と、剥離工程により得られた、層間が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶媒を凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程と、フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を焼成する焼成工程と、を有する。
層が剥離された無機化合物が含まれる剥離溶液を真空凍結乾燥することにより、層が剥離された状態で無機化合物を回収することができる。この回収物を焼成することにより、吸湿等により無機化合物が吸水したとしても、層が剥離された状態が維持される。よって、剥離された層が凝集して凝集体を形成することが抑制される。以上より、封止材のガスバリア特性を良好とする無機化合物を提供することができる。
(4)フリーズドライ工程の凍結温度は、0~-100℃である。
凍結温度0~-100℃において剥離溶液を凍結させると、フリーズドライ処理の乾燥段階において水分が均一に昇華される。そのため、得られる層が剥離された無機化合物の品質を向上させることができる。
(5)焼成工程の焼成温度は、700~1000℃である。
焼成温度700~1000℃において焼成すると、吸湿等により無機化合物が吸水したとしても、剥離された層が凝集して凝集体を形成することが抑制される。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(1)無機化合物の結晶構造解析
無機化合物の結晶構造を解析するために、以下の実施例1および比較例1を作成した。
<実施例1の無機化合物>
層状構造を有する無機化合物としてのモンモリロナイトを、純水100mLに対して1g添加した。無機化合物が添加された溶液を、5時間撹拌後剥離溶液を得た。剥離溶液について、大気中-45℃にて2時間冷凍を行った。凍結された剥離溶液について、乾燥室を真空排気することで、真空乾燥を行った。真空乾燥は、2日間に渡り行った。真空乾燥により回収された層が剥離された無機化合物について、800℃で5時間焼成処理を行い、層が剥離された無機化合物を得た。
<比較例1の無機化合物>
比較例1の無機化合物としては、未処理のモンモリロナイトを用いた。
以上の実施例1および2のモンモリロナイトについて、XRD(X線回折法)による結晶構造解析を行った。XRD分析の結果を図2に示す。
図2の比較例1には、7度付近にモンモリロナイトの層間の結晶ピークが観察された。この結晶ピークは、モンモリロナイトを構成する単位層が、規則正しく空間を介して平行に積層されている場合に検出される。比較例1の7度付近のピークの強度が強いことから、積層構造の規則性が強いことが伺えた。一方、実施例1の無機化合物においては、7度付近にピークが検出されなかった。これは、実施例1の無機化合物では、層状構造を有するモンモリロナイトの各層がバラバラに剥離され、層状構造として規則性が失われていることを意味する。すなわち、実施例1の無機化合物は、層が剥離されていることが分かった。
(2)加硫化物の特性評価
上記実施例1および比較例1の無機化合物と、エラストマーとを混合し加硫した際に得られる加硫化物の特性を評価するために、以下の実施例2、比較例2および3を作成した。
<実施例2>
ブチルゴム3gに対して、実施例1の無機化合物を0.3gと、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
<比較例2>
ブチルゴム3gに対して、比較例1のモンモリロナイトを0.3gと、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
<比較例3>
ブチルゴム3gに対して、架橋剤としてのタッキロール201(田岡化学工業社製)を0.24g混合し、30℃において二軸混練ロール機で30分間混練し固形組成物を得た。得られた固形組成物をPETシートの型に入れ、温度190℃、圧力10MPaの条件で、8分プレスして板状の加硫化物を得た。
(a)加硫化物の結晶構造解析
実施例2および比較例2の加硫化物について、XRD(X線回折法)による結晶構造解析を行った。XRD分析の結果を図3に示す。
図3からも明らかな通り、層状構造を有するモンモリロナイトが混合された比較例2の加硫化物では、7度付近にモンモリロナイトの層間の結晶ピークが観察された。この結晶ピークは、モンモリロナイトを構成する単位層が、規則正しく空間を介して平行に積層されている場合に検出される。比較例2の7度付近のピークの強度が強いことから、積層構造の規則性が強いことが伺えた。一方、層が剥離されたモンモリロナイトか混合された実施例2の加硫化物では、7度付近にピークが検出されなかった。これは、実施例2では、層状構造を有するモンモリロナイトの各層がバラバラに剥離された状態が、加硫化物の状態においても維持されていることを意味する。
(b)加硫化物の透過率測定
上記実施例2、比較例2および3について、波長200~1500nmにおける透過率を分光光度計を用いて測定した。透過率の測定結果を図4に示す。
図4からも明らかな通り、モンモリロナイトが混合されていない比較例3では、透過光が検知おされた可視および近赤外の全ての領域において透過率が高かった。次に、層状構造を有するモンモリロナイトが混合された比較例2では、透過光が検知された可視および近赤外の全ての領域において、比較例3と比べて20%~40%程度透過率が低くなった。これは、層状構造を有するモンモリロナイトがエラストマーにおいて凝集した結果、入射光が凝集体により吸収又は散乱された結果と考えられる。
一方、層が剥離されたモンモリロナイトか混合された実施例2では、透過光が検知された可視および近赤外の全ての領域において、比較例3と比べた透過率の低下が20%以下となった。つまり、モンモリロナイトの層が剥離された状態で混合された実施例2では、層状構造を有するモンモリロナイトが混合された比較例2と比較して、透過率が上昇している。これは、実施例2では、凝集体の形成が抑制されていることを意味すると考えられた。
(c)加硫化物のSEM分析
上記実施例2および比較例2について、SEM画像にて無機化合物の分散性を確認した。図5に各加硫化物の断面図のSEM像(×2.00k)を示す。
図5からも明らかな通り、層状構造を有するモンモリロナイトを含む比較例2では、モンモリロナイトの凝集体が白い塊として確認された。比較例2における凝集体の大きさは、5μm以上が多数を占めている。一方、層が剥離されたモンモリロナイトを含む実施例2では、白い塊が確認されなかった。よって、実施例2では、モンモリロナイトの凝集体が形成されていないことが伺えた。特に、図5を参照すると、実施例2のSEM画像は、全体的にザラザラしているように観察された。この質感は、モンモリロナイトがブチルゴム内に均一に分散されていることによるものと考えられた。
(d)加硫化物のTEM分析
そこで、実施例2について、TEM画像にて無機化合物の分散性を確認した、図6に、実施例2の断面図のTEM像を示す。図6の左側は、TEM像(×10k)であり、右側の2図は左側のTEM像の部分拡大像(×200k)である。
図6からも明らかな通り、層が剥離されたモンモリロナイトを含む実施例2では、各層がブチルゴム内に均一に分散していることが分かった。これは、Area1および2の部分拡大像からも明らかな通り、モンモリロナイトの層状構造を形成していた単位層が剥離された状態で、ブチルゴム内に存在しているからである。Area2の部分拡大像では、モンモリロナイトの凝集体が黒い点として確認された。ただし、目視で確認した結果、このような凝集体の90%以上は大きさが3μm以下であり、モンモリロナイトがブチルゴム内に均一に分散されることを阻害する程の大きさではなかった。
(e)メタノール透過試験
上記実施例2、比較例2および3について、メタノールを用いた透過度の測定を行った。透過度とは、一定時間に単位面積の加硫化物を通過する水蒸気の量である。この測定における透過度とは、温度40℃において、加硫化物を通過する水蒸気の質量(g)を,その材料1m当たりに換算した値である。なお、透過度の測定については、JISZ0208の規格に沿って行われた。図7に、透過度の測定結果を示す。
図7からも明らかな通り、層状構造を有するモンモリロナイトを含む比較例2は、モンモリロナイトを含まない比較例3よりも透過度が高くなった。上記(e)の結果より、比較例2の加硫化物では、モンモリロナイトが凝集体を形成している。そのため、加硫化物においてブチルゴムとモンモリロナイトが不均一に混ざり合い、モンモリロナイトの凝集体間の隙間が増大する。この隙間を通ってメタノールが加硫化物を通過するため、透過度が高くなっている。
一方、層が剥離されたモンモリロナイトを含む実施例2では、モンモリロナイトを含まない比較例3よりも透過度が低くなった。上記(e)および(f)の結果より、実施例2の加硫化物では、モンモリロナイトがブチルゴム内に均一に分散されている。そのため、ブチルゴムにおけるモンモリロナイト間の隙間が減少する。そのため、メタノールがモンモリロナイトの各層によりブロックされ、加硫化物を通過することが抑制され、透過度が低くなっている。

Claims (4)

  1. 蓄電デバイスの封止材の製造方法であって、
    層状構造を有する無機化合物を溶媒に添加し、前記溶媒を撹拌して無機化合物の層状構造を崩す剥離工程と、
    前記剥離工程により得られた、層状構造が崩れた無機化合物が含まれる剥離溶媒を0~-100℃で凍結し、真空中で乾燥させるフリーズドライ工程と、
    前記フリーズドライ工程により得られた、層間が剥離された無機化合物を700~1000℃で焼成する焼成工程と、
    前記剥離工程と前記フリーズドライ工程と前記焼成工程とを経た無機化合物と、エラストマーを混練して、固相組成物を生成する混練工程と、
    固相生成物を加圧成形して、加硫化物を生成する加硫工程と、
    を有することを特徴とする封止材の製造方法。
  2. 前記剥離工程では、当該無機化合物の各層の平面と側面とが引き合った立体構造であるカードハウス構造にすることを特徴とする請求項1記載の封止材の製造方法。
  3. 蓄電デバイスの封止材であって、
    層状構造を有する無機化合物が、層状構造が崩れた状態で、エラストマーに含有され、
    前記エラストマーにおいて前記無機化合物が形成する凝集体の90%以上の大きさが3μm以下であることを特徴とする封止材。
  4. 層状構造を有する無機化合物が、各層の平面と側面とが引き合うことで層状構造が崩れてカードハウス構造を有する状態であることを特徴とする請求項3記載の封止材。
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