JP6990762B2 - 加熱ローラ及び紡糸延伸装置 - Google Patents

加熱ローラ及び紡糸延伸装置 Download PDF

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Description

本発明は、加熱ローラ及び当該加熱ローラを備える紡糸延伸装置に関する。
ローラの外筒部が加熱される加熱ローラとして、例えば、複数の糸が外周面に巻き掛けられ、複数の糸を加熱する加熱ローラが知られている。このような加熱ローラにおいて、ローラ表面の温度が軸方向において不均一になると、各糸の間で加熱の程度に差が生じ、糸の品質にばらつきが生じるおそれがある。この点、特許文献1に記載の加熱ローラでは、ローラ本体の外筒部に、気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室が軸方向に延びるように設けられている。このジャケット室がヒートパイプとして機能することで、ローラ表面の温度を軸方向に均一化することができる。
特開2003-100437号公報
しかしながら、特許文献1のように、ヒートパイプ(ジャケット室)をローラ本体の外筒部に設ける構成では、外筒部の厚みを大きくせざるを得ない。その結果、外筒部の熱容量が大きくなり、ローラ表面の昇温に多くのエネルギーを要するという問題があった。そこで、本願発明者らは、ローラ本体よりも熱伝導率の高い円筒状の均熱部材を、ローラ本体の外筒部の内周面に接触させた状態で設けることを検討している。こうすれば、均熱部材がヒートパイプの役割を果たし、外筒部のヒートパイプを省略することができるので、外筒部の厚みを小さくすることができる。ところが、熱伝導率の高い均熱部材を単に外筒部の内周面に接触させるだけだと、外筒部の厚みが小さいにもかかわらず、ローラ表面を想定したよりも効率的に昇温できないという問題があった。
以上の課題に鑑みて、本発明に係る加熱ローラは、均熱部材を設けた構成において、ローラ表面を効率的に昇温することを目的とする。
本発明に係る加熱ローラの第1態様は、ローラ本体の被加熱部が加熱される加熱ローラであって、前記被加熱部の内周面と接触するように円筒状に構成され、軸方向の熱伝導率が前記被加熱部の少なくとも内周面における熱伝導率よりも高い均熱部材を備え、前記均熱部材は、径方向の熱伝導率が軸方向の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
本願発明者らは、鋭意検討の結果、均熱部材を設けた場合にローラ表面の温度を効率的に昇温できない理由が、ローラ本体の被加熱部から多くの熱が均熱部材を径方向内側に移動し、均熱部材の内周面から放熱されてしまうことが原因であることを見出した。そこで、本発明の第1態様では、均熱部材の径方向の熱伝導率を軸方向の熱伝導率よりも低くしている。これによって、ローラ本体の被加熱部から径方向内側へ熱が逃げにくくなり、ローラ表面の温度低下を抑えることができる。したがって、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本発明において、前記均熱部材は、周方向の熱伝導率が径方向の熱伝導率よりも高いとよい。
均熱部材の熱伝導性に異方性を持たせた場合に、周方向の熱伝導率が径方向の熱伝導率と同様に低いと、ローラ表面の周方向において温度分布にムラが生じやすくなる。そこで、上述のように、周方向の熱伝導率を径方向の熱伝導率よりも大きくすることで、軸方向だけでなく周方向の温度分布も効果的に均一化できるようになる。
本発明において、前記均熱部材は、複数の繊維材が、前記繊維材よりも熱伝導率の低い母材を介して径方向に積層された繊維複合材料からなるとよい。
このような繊維複合材料によれば、径方向において繊維材と繊維材との間に存在する母材が断熱の役割を有することになり、径方向の熱伝導率を低くすることができる。したがって、均熱部材の材料として好適である。
本発明において、前記繊維複合材料は、前記繊維材及び前記母材を含むシート状部材が径方向に積層された構造を有するとよい。
このように、繊維複合材料をシート状部材の積層構造とすることで、各シート状部材の間には母材からなる層ができ、径方向の熱伝導率をより効果的に低くすることができる。
本発明において、前記繊維複合材料は、前記繊維材が主に軸方向に配向されているとよい。
繊維材が主に軸方向に配向されていれば、軸方向における熱伝導率を高めることができ、ローラ表面の軸方向の温度分布をより効果的に均一化することができる。なお、「主に軸方向に配向されている」の意味は、全ての繊維材が軸方向に配向されている必要はなく、少なくとも過半数の繊維材が軸方向に配向されていればよいことを意味する。
本発明において、前記繊維複合材料は、前記繊維材が3次元的にランダム配向されているとよい。
このようにランダム配向された繊維複合材料の製造コストは、繊維材が所定の方向に配向されたものよりも一般的に安い。したがって、加熱ローラの製造コストを低減することができる。
本発明において、前記繊維複合材料からなる前記均熱部材において、径方向の各位置で得られる径方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値が、軸方向の各位置で得られる軸方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値よりも小さいとよい。
後で詳細に説明するが、このような構成であれば、径方向の熱伝導率を軸方向の熱伝導率よりも低くすることができるので、均熱部材の材料として好適である。
本発明において、前記繊維複合材料からなる前記均熱部材において、径方向の各位置で得られる径方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値が、周方向の各位置で得られる周方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値よりも小さいとよい。
後で詳細に説明するが、このような構成であれば、径方向の熱伝導率を周方向の熱伝導率よりも低くすることができるので、均熱部材の材料として好適である。
本発明において、前記繊維複合材料からなる前記均熱部材は、複数の均熱片を周方向に並べることによって円筒状に形成されているとよい。
繊維複合材料の製造方法によっては、円筒状に成形することが困難な場合がある。しかしながら、均熱部材を複数の均熱片の集合体として構成することで、円筒状に成形することが困難な繊維複合材料であっても、均熱部材に採用することができる。
本発明において、前記繊維材は、炭素繊維であるとよい。
炭素繊維は、高い熱伝導率を有する軽量の素材である。したがって、炭素繊維を含む繊維複合材料で均熱部材を構成することにより、ローラ表面の温度分布をより均一化できるとともに、加熱ローラの軽量化を図ることができる。
本発明において、前記均熱部材の内周面に、前記被加熱部の少なくとも内周面よりも熱抵抗値の高い断熱部が設けられているとよい。
このような断熱部を設けることによって、均熱部材の内周面からの放熱をより効果的に抑えることができ、ローラ表面をさらに効率的に昇温することができる。
本発明に係る加熱ローラの第2態様は、ローラ本体の被加熱部が加熱される加熱ローラであって、前記被加熱部の内周面と接触するように円筒状に構成され、軸方向の熱伝導率が前記被加熱部の少なくとも内周面における熱伝導率よりも高い均熱部材を備え、前記均熱部材の内周面に、前記被加熱部の少なくとも内周面よりも熱抵抗値の高い断熱部が設けられていることを特徴とする。
本発明の第2態様では、均熱部材の内周面に断熱部を設けている。これによって、均熱部材の内周面からの放熱を抑え、ローラ本体の被加熱部から径方向内側へ熱が逃げにくくなるので、ローラ表面の温度低下を抑えることができる。したがって、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本発明において、前記断熱部は、非磁性体且つ非導電体であるとよい。
断熱部を非磁性体且つ非導電体とすれば、加熱ローラが誘導加熱式の場合に、磁束が断熱部を通過すること、及び、渦電流が断熱部を流れることが抑えられる。その結果、ローラ本体の被加熱部での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本発明の第1態様及び第2態様において、前記ローラ本体の内部に配置されたコイルを備え、前記コイルに通電することで、前記被加熱部が誘導加熱されるとよい。
このような誘導加熱式の加熱ローラの場合、発熱分布を細かく制御することが難しく、温度分布にムラが生じやすい。したがって、均熱部材によってローラ表面の温度分布を均一化できる本発明が特に有効である。
本発明において、前記均熱部材は、前記被加熱部よりも比透磁率が低いとよい。
こうすれば、加熱ローラが誘導加熱式の場合に、磁束が均熱部材よりもローラ本体の被加熱部を通過しやすくなる。その結果、ローラ本体の被加熱部での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本発明において、前記均熱部材の周方向の電気抵抗率が、前記被加熱部の電気抵抗率よりも高いとよい。
こうすれば、加熱ローラが誘導加熱式の場合に、渦電流が均熱部材よりもローラ本体の被加熱部を多く流れる。その結果、ローラ本体の被加熱部での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本発明に係る紡糸延伸装置は、上記何れかの加熱ローラを備える紡糸延伸装置であって、前記加熱ローラの外周面に複数の糸が軸方向に並んで巻き掛けられていることを特徴とする。
本発明に係る紡糸延伸装置によれば、ローラ表面の温度分布を均一化できるとともに、ローラ表面を効率的に昇温することが可能となる。したがって、加熱ローラに巻き掛けられた糸の品質が安定し、高品質な糸を生産することができる。
本実施形態に係る誘導加熱ローラを備える紡糸引取機を示す模式図。 本実施形態に係る誘導加熱ローラの軸方向に沿った断面図。 均熱部材を示す斜視図。 均熱片の製造工程を示す斜視図。 均熱片の変形例を示す斜視図。 周方向に直交する断面における均熱片の模式図及び炭素繊維の充填率の分布を示す図。 軸方向に直交する断面における均熱片の模式図及び炭素繊維の充填率の分布を示す図。 ローラ本体及び均熱部材の各物性値を示す表。 フィラメントワインディング法による均熱部材の製造工程を示す斜視図。 他の実施形態に係る誘導加熱ローラの軸方向に沿った断面図。 他の実施形態に係るローラ本体及び均熱部材の各物性値を示す表。
(紡糸引取機)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る誘導加熱ローラを備える紡糸引取機を示す模式図である。図1に示すように、紡糸引取機1は、紡糸装置2から連続的に紡出されたポリエステル等の溶融繊維材料が固化して形成された複数(ここでは6本)の糸Yを、紡糸延伸装置3で延伸した後、糸巻取装置4で巻き取る構成となっている。なお、以下では、各図に付した方向を参照しつつ説明を行う。
紡糸装置2は、ポリエステル等の溶融繊維材料を連続的に紡出することで、複数の糸Yを生成する。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、油剤ガイド10によって油剤が付与された後、案内ローラ11を経て紡糸延伸装置3に送られる。
紡糸延伸装置3は、複数の糸Yを加熱延伸する装置であり、紡糸装置2の下方に配置されている。紡糸延伸装置3は、保温箱12の内部に収容された複数(ここでは5つ)のゴデットローラ21~25を有している。各ゴデットローラ21~25は、モータによって回転駆動されるとともに、コイルへの通電によって誘導加熱される誘導加熱ローラであり、複数の糸Yが巻き掛けられている。保温箱12の右側面部の下部には、複数の糸Yを保温箱12の内部に導入するための導入口12aが形成され、保温箱12の右側面部の上部には、複数の糸Yを保温箱12の外部に導出するための導出口12bが形成されている。複数の糸Yは、下側のゴデットローラ21から順番に、各ゴデットローラ21~25に対して360度未満の巻き掛け角で巻き掛けられている。
下側3つのゴデットローラ21~23は、複数の糸Yを延伸する前に予熱するための予熱ローラであり、これらのローラ表面温度は、糸Yのガラス転移点以上の温度(例えば90~100℃程度)に設定されている。一方、上側2つのゴデットローラ24、25は、延伸された複数の糸Yを熱セットするための調質ローラであり、これらのローラ表面温度は、下側3つのゴデットローラ21~23のローラ表面温度よりも高い温度(例えば150~200℃程度)に設定されている。また、上側2つのゴデットローラ24、25の糸送り速度は、下側3つのゴデットローラ21~23よりも速くなっている。
導入口12aを介して保温箱12に導入された複数の糸Yは、まず、ゴデットローラ21~23によって送られる間に延伸可能な温度まで予熱される。予熱された複数の糸Yは、ゴデットローラ23とゴデットローラ24との間の糸送り速度の差によって延伸される。さらに、複数の糸Yは、ゴデットローラ24、25によって送られる間にさらに高温に加熱されて、延伸された状態が熱セットされる。このようにして延伸された複数の糸Yは、導出口12bを介して保温箱12の外に導出される。
紡糸延伸装置3で延伸された複数の糸Yは、案内ローラ13を経て糸巻取装置4に送られる。糸巻取装置4は、複数の糸Yを巻き取る装置であり、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。糸巻取装置4は、ボビンホルダ14やコンタクトローラ15等を備えている。ボビンホルダ14は、前後方向に延びる円筒形状を有し、図示しないモータによって回転駆動される。ボビンホルダ14には、その軸方向に複数のボビンBが並んだ状態で装着される。糸巻取装置4は、ボビンホルダ14を回転させることによって、複数のボビンBに複数の糸Yを同時に巻き取り、複数のパッケージPを生産する。コンタクトローラ15は、複数のパッケージPの表面に接触して所定の接圧を付与し、パッケージPの形状を整える。
(誘導加熱ローラ)
図2は、本実施形態に係る誘導加熱ローラ30の軸方向に沿った断面図である。図2では、誘導加熱ローラ30が連結されるモータ50については、出力軸51及びハウジング52の一部のみを図示している。図2に示す誘導加熱ローラ30は、図1におけるゴデットローラ21~25の全てに適用される。
誘導加熱ローラ30は、軸方向(前後方向)に沿った円筒状のローラ本体31と、ローラ本体31の内部に配置されたコイル32とを有する。コイル32に高周波電流を供給することで、コイル32の周りに変動磁界が発生する。このとき、電磁誘導によってローラ本体31の外筒部33を周方向に流れる渦電流が生じ、そのジュール熱によって外筒部33が加熱される。なお、渦電流は、表皮効果により外筒部33の主に内周面近傍に発生する。
ローラ本体31は、磁性体であり、導体でもある炭素鋼からなる。ローラ本体31は、コイル32の径方向外側に位置する円筒状の外筒部33と、コイル32の径方向内側に位置する円筒状の軸心部34と、外筒部33の前端部と軸心部34の前端部とをつなぐ円板状の端面部35と、が一体形成されたものである。ただし、外筒部33及び端面部35が磁性体且つ導体であるならば、外筒部33及び端面部35が異なる材料であってもよい。また、外筒部33及び端面部35が同じ材料で構成されている場合であっても、外筒部33及び端面部35を異なる部材としてもよい。ローラ本体31の後端側は開口しており、この開口からモータ50の出力軸51がローラ本体31内に挿入される。なお、軸心部34は、円筒状に限らず、例えば円錐台のように傾斜を有する形状でもよい。
ローラ本体31の内部には、外筒部33の内周面に接触するように配置された円筒状の均熱部材36が設けられている。均熱部材36の外径は外筒部33の内径と略同じであり、均熱部材36の外周面が全面にわたって外筒部33の内周面に接触している。ローラ表面に複数の糸Yが巻き掛けられている軸方向の領域を巻掛領域Rとすると、均熱部材36は軸方向において巻掛領域Rを含む範囲にわたって設けられている。
均熱部材36は、ローラ本体31の後端側の開口から挿入可能である。均熱部材36の軸方向の長さは、概ねローラ本体31の外筒部33と同じ長さとされている。均熱部材36の前端部は、ローラ本体31の端面部35に当接している。均熱部材36の後端部は、環状の固定部材37によって外筒部33の後端部に固定されている。均熱部材36については、後で詳細に説明する。
ローラ本体31の軸心部34には、軸方向に沿って延設された軸取付孔34aが形成されている。軸取付孔34aには、不図示の固定手段によって、モータ50の出力軸51が固定されている。これによって、ローラ本体31がモータ50に片持ち支持され、ローラ本体31が出力軸51と一体回転可能となっている。
コイル32は、円筒状のボビン部材39の外周面に導線が巻き回された構成を有する。ボビン部材39は、ローラ本体31と同様に炭素鋼からなる。図示は省略するが、ボビン部材39は完全な円筒形状ではなく、周方向の一部分が切断されたC字状の断面形状を有する。このため、ボビン部材39には渦電流が流れにくく、ボビン部材39における発熱を抑えることができるようになっている。ボビン部材39は、モータ50のハウジング52に取り付けられている。
ハウジング52には、環状の凹部52aが形成されている。凹部52a内には、上述の固定部材37が、凹部52aの構成面に接触しないように配置されている。モータ50の出力軸51は、不図示の軸受を介してハウジング52に回転可能に支持されており、モータ50を作動させると、ローラ本体31が出力軸51と一体回転する。
(均熱部材)
均熱部材36は、ローラ本体31の外筒部33の外周面(ローラ表面)における温度分布を均一化するために設けられている。このような目的のため、均熱部材36は、ローラ本体31よりも熱伝導率が高いことが求められる。しかし、単に高い熱伝導率を有する材料を用いるだけだと、均熱部材36において径方向内側への熱移動も多く生じ、均熱部材36の内周面からの放熱量が大きくなりやすい。そうすると、ローラ本体31の外筒部33から径方向内側に熱が逃げやすくなり、ローラ表面を効率的に昇温できなくなる。そこで、本実施形態では、径方向の熱伝導率が軸方向の熱伝導率よりも低い異方性材料を均熱部材36に採用することで、上述の問題を解決している。具体的には、本実施形態の均熱部材36は、炭素繊維と黒鉛とを含むC/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)からなる。
図3は、均熱部材36を示す斜視図である。均熱部材36は、全体としては円筒状に形成されている。しかしながら、後で説明するように、均熱部材36を構成するC/Cコンポジットの形状は一般的に板状となり、円筒状に成形することは困難である。そこで、本実施形態では、円筒状の均熱部材36を、小さな板状の複数の均熱片38を周方向に敷き詰めるように並べた集合体として構成している。
均熱片38の製造方法について説明する。図4は、均熱片38の製造工程を示す斜視図である。C/Cコンポジットを製造する際には、まず、図4のa図に示すように、複数のシート状部材41を準備する。このシート状部材41は、所定の方向に配向された炭素繊維41aと樹脂やピッチからなる母材41bとを含むシート状の部材である。各シート状部材41は、基本的に炭素繊維41aの配向方向が揃うように積層される。しかし、強度的に弱い方向が生じることを回避するため、一部のシート状部材41(例えば、図4のa図の上から3層目のシート状部材41)は、炭素繊維41aの配向方向が他のものと交差するように積層される。図4のa図では、上から3層目のシート状部材41の炭素繊維41aの配向方向が他のものと直交している場合を図示しているが、直交することは必須ではない。なお、炭素繊維1本は非常に細いものなので、炭素繊維は複数の繊維を束ねた繊維束の状態で使用されるのが一般的である。また、本実施形態では、炭素繊維として、熱伝導率の高いピッチ系炭素繊維が用いられている。
次に、積層配置された複数のシート状部材41を焼成し、母材41bを炭化させることによって、図4のb図に示すように、薄い直方体状の板状部材42が得られる。炭化して黒鉛となった母材41bの熱伝導率は、炭素繊維41aの熱伝導率より小さい。ここで、板状部材42のままだと、ローラ本体31の外筒部33の内周面に沿わせることができないので、図4のc図に示すように、板状部材42の表面が円弧状になるように、板状部材42の一部を切削加工する。これによって、均熱片38が完成する。なお、図4のc図では、均熱片38の外周面だけでなく内周面も円弧状とされているが、内周面を円弧状にすることは必須ではない。例えば、図5に示すように、均熱片38の内周面を平面状のままとしておいてもよい。こうすれば、板状部材42の切削工数を短縮できる。
均熱片38は、シート状部材41の積層方向が誘導加熱ローラ30の径方向に一致し、炭素繊維41aの主な配向方向が誘導加熱ローラ30の軸方向に一致するように配置される。なお、図4及び図5では、互いに隣接するシート状部材41の境界面を便宜上記載しているが、実際には各シート状部材41の母材41bは連続しており、境界面が観察できるわけではない(図6及び図7でも同様)。
こうして製造された均熱片38の内部構造を詳細に説明する。図6は、周方向に直交する断面における均熱片38の模式図及び炭素繊維41aの充填率の分布を示す図であり、図7は、軸方向に直交する断面における均熱片38の模式図及び炭素繊維41aの充填率の分布を示す図である。ここで、炭素繊維41aの充填率とは、ある断面において炭素繊維41a(実際には繊維束)が存在している領域の割合を示すものである。以下では、炭素繊維41aの充填率のことを、単に充填率と言う。また、図6及び図7の断面図では、繊維束の状態の炭素繊維41aを模式的に図示している。
図6において、均熱片38の断面図の左に記載のグラフは、均熱片38の径方向の各位置(実際には所定距離ごと)における、径方向に直交する断面における充填率を示したものである。また、均熱片38の断面図の下に記載のグラフは、均熱片38の軸方向の各位置(実際には所定距離ごと)における、軸方向に直交する断面における充填率を示したものである。同様に、図7において、均熱片38の断面図の左に記載のグラフは、均熱片38の径方向の各位置(実際には所定距離ごと)における、径方向に直交する断面における充填率を示したものである(図6のものと同じ)。また、均熱片38の断面図の下に記載のグラフは、均熱片38の周方向の各位置(実際には所定距離ごと)における、周方向に直交する断面における充填率を示したものである。
シート状部材41を積層した構造を有する均熱片38においては、互いに隣接するシート状部材41の境界面付近は主に母材41bが占めている。このため、境界面付近では充填率が極端に低くなり、径方向では充填率の変動が大きい(図6及び図7参照)。一方、炭素繊維41aが主に軸方向に配向されているため、軸方向では充填率の変動が小さく、比較的高い値で概ね一定となっている(図6参照)。また、炭素繊維41aが主に軸方向に配向されているため、周方向においては炭素繊維41aの間に母材41bが存在している部分が多い。このため、周方向では充填率の変動が大きい(図7参照)。
ある方向における均熱片38の熱伝導率は、その方向における充填率の変動と大きな相関がある。すなわち、ある方向において充填率が低い部分があれば、その部分の熱伝導率が低くなり、均熱片38全体としてもその方向における熱伝導率が低下する。反対に、ある方向において充填率が比較的高い値で概ね一定であれば、その方向では炭素繊維41aに沿って熱伝導が生じやすく、均熱片38の熱伝導率が高くなる。本発明者らは、このような特性を、ある方向に直交する断面における充填率の最低値S1~S3によって指標化できることを見出した。S1は軸方向に直交する断面における充填率の最低値を示し、S2は径方向に直交する断面における充填率の最低値を示し、S3は周方向に直交する断面における充填率の最低値を示す。
図6に示す例では、S2<S1という関係が成立している。これは、均熱片38の径方向の熱伝導率が軸方向の熱伝導率よりも低いことを意味している。同様に、図7に示す例では、S2≒S3という関係が成立している。これは、均熱片38の径方向の熱伝導率と周方向の熱伝導率とが略同じであることを意味している。
図8は、ローラ本体31及び均熱部材36の各物性値を示す表である。なお、図8の各物性値は常温での数値である(図11も同様)。上述の均熱片38によって均熱部材36を構成することで、均熱部材36(軸方向配向のC/Cコンポジット)の軸方向の熱伝導率は、ローラ本体31(外筒部33)の熱伝導率よりも高くなっている。このため、糸Yの品質を安定させるうえで重要なローラ表面の軸方向における温度分布を均一化することができる。なお、均熱部材36の軸方向の熱伝導率は、外筒部33の少なくとも内周面における熱伝導率よりも高ければ、ローラ表面の温度分布を均一にする効果は得られる。また、均熱部材36の径方向の熱伝導率は、軸方向の熱伝導率よりも低くなっている。このため、ローラ本体31の外筒部33から径方向内側への熱伝導を抑えることで、ローラ表面を効率的に昇温することが可能となっている。
さらに、C/Cコンポジットによって構成された均熱部材36は、次のような点でも有利である。C/Cコンポジットは非磁性体であり、ローラ本体31(外筒部33)を構成する炭素鋼よりも比透磁率が低い。このため、磁束が均熱部材36よりもローラ本体31の外筒部33を通過しやすくなり、外筒部33での発熱量を増加させることができる。また、C/Cコンポジットの周方向の電気抵抗率は、ローラ本体31(外筒部33)の電気抵抗率よりも高い。このため、渦電流が均熱部材36よりも外筒部33を多く流れ、外筒部33での発熱量を増加させることができる。したがって、ローラ表面を一層効率的に昇温させることができる。さらに、C/Cコンポジットは耐熱性に優れ、非常に軽量であるといった利点もあるため、誘導加熱ローラ30に使用するのに最適である。
(効果)
以上のように、本実施形態では、均熱部材36の径方向の熱伝導率を軸方向の熱伝導率よりも低くしている。これによって、ローラ本体31の外筒部33(本発明の被加熱部に相当)から径方向内側へ熱が逃げにくくなり、ローラ表面の温度低下を抑えることができる。したがって、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本実施形態では、均熱部材36は、複数の繊維材41aが、繊維材41aよりも熱伝導率の低い母材41bを介して径方向に積層された繊維複合材料からなる。このような繊維複合材料によれば、径方向において繊維材41aと繊維材41aとの間に存在する母材41bが断熱の役割を有することになり、径方向の熱伝導率を低くすることができる。したがって、均熱部材36の材料として好適である。
本実施形態では、上記繊維複合材料は、繊維材41a及び母材41bを含むシート状部材41が径方向に積層された構造を有する。このように、繊維複合材料をシート状部材41の積層構造とすることで、各シート状部材41の間には母材41bからなる層ができ、径方向の熱伝導率をより効果的に低くすることができる。
本実施形態では、上記繊維複合材料は、繊維材41aが主に軸方向に配向された構成を有する。繊維材41aが主に軸方向に配向されていれば、軸方向における熱伝導率を高めることができ、ローラ表面の軸方向の温度分布をより効果的に均一化することができる。なお、「主に軸方向に配向されている」の意味は、全ての繊維材41aが軸方向に配向されている必要はなく、少なくとも過半数の繊維材41aが軸方向に配向されていればよいことを意味する。
本実施形態では、上記繊維複合材料からなる均熱部材36において、径方向の各位置で得られる径方向に直交する断面における繊維材41aの充填率の最低値S2が、軸方向の各位置で得られる軸方向に直交する断面における繊維材41aの充填率の最低値S1よりも小さい。このような構成であれば、径方向の熱伝導率を軸方向の熱伝導率よりも低くすることができるので、均熱部材36の材料として好適である。
本実施形態では、上記繊維複合材料からなる均熱部材36は、複数の均熱片38を周方向に並べることによって円筒状に形成されている。繊維複合材料の製造方法によっては、円筒状に成形することが困難な場合がある。しかしながら、均熱部材36を複数の均熱片38の集合体として構成することで、円筒状に成形することが困難な繊維複合材料であっても、均熱部材36に採用することができる。
本実施形態では、繊維材41aを炭素繊維としている。炭素繊維は、高い熱伝導率を有する軽量の素材である。したがって、炭素繊維を含む繊維複合材料で均熱部材36を構成することにより、ローラ表面の温度分布をより均一化できるとともに、加熱ローラ30の軽量化を図ることができる。
本実施形態では、上記炭素繊維をピッチ系炭素繊維としている。炭素繊維として、ピッチを使ったピッチ系炭素繊維と、アクリル繊維を使ったPAN系炭素繊維とが知られているが、ピッチ系炭素繊維のほうが、PAN系炭素繊維よりも高い熱伝導率を有する。このため、ピッチ系炭素繊維を用いることで、均熱部材36の熱伝導率をより高めることができ、ローラ表面の温度分布をより効果的に均一化できる。
本実施形態では、上記繊維複合材料を、炭素繊維と黒鉛とを含むC/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)としている。C/Cコンポジットは、炭素繊維を含む繊維複合材料の中でも高い熱伝導率を有しており、耐熱性も高い。したがって、均熱部材36にC/Cコンポジットを採用することで、ローラ表面の温度分布をより効果的に均一化できるとともに、高温にも耐え得る加熱ローラ30を提供することができる。
本実施形態では、ローラ本体31の内部に配置されたコイル32を備え、コイル32に通電することで、外筒部33が誘導加熱される構成としている。このような誘導加熱式の加熱ローラ30の場合、発熱分布を細かく制御することが難しく、温度分布にムラが生じやすい。したがって、均熱部材36によってローラ表面の温度分布を均一化できる本発明が特に有効である。
本実施形態では、均熱部材36は、外筒部33よりも比透磁率が低い。こうすれば、加熱ローラ30が誘導加熱式の場合に、磁束が均熱部材36よりもローラ本体31の外筒部33を通過しやすくなる。その結果、ローラ本体31の外筒部33での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本実施形態では、均熱部材36の周方向の電気抵抗率が、外筒部33の電気抵抗率よりも高い。こうすれば、加熱ローラ30が誘導加熱式の場合に、渦電流が均熱部材36よりもローラ本体31の外筒部33を多く流れる。その結果、ローラ本体31の外筒部33での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。
本実施形態のように、均熱部材36の比透磁率を外筒部33よりも低くし、且つ、均熱部材36の周方向の電気抵抗率を外筒部33の電気抵抗率よりも高くすることで、ローラ本体31の外筒部33での発熱量を増加させる効果が一層顕著となり、ローラ表面をより効率的に昇温することができる。
本実施形態では、加熱ローラ30の外周面に複数の糸Yが軸方向に並んで巻き掛けられている。本実施形態の加熱ローラ30は、上述のように、ローラ表面の温度分布を均一化できるとともに、ローラ表面を効率的に昇温することが可能である。したがって、加熱ローラ30に巻き掛けられた糸Yの品質が安定し、高品質な糸Yを生産することができる。
(均熱部材の変形例1)
上記実施形態では、炭素繊維41aが主に軸方向に配向された均熱部材36を用いたが、炭素繊維41aを軸方向に配向させることは必須ではない。例えば、均熱部材36を、炭素繊維が3次元的にランダム配向されたシート状部材を積層した構造を有するC/Cコンポジットとしてもよい。この場合でも、互いに隣接するシート状部材の境界面付近は、主に母材で占められることになるので、径方向の熱伝導率を低くすることができる。
炭素繊維をランダム配向した場合には、上述した充填率に関して、S2<S1、S2<S3という関係が成立する。その結果、図8に示すように、ランダム配向の場合でも、均熱部材36の径方向の熱伝導率が、軸方向の熱伝導率より低くなっている。また、周方向の熱伝導率が、径方向の熱伝導率よりも高くなっている。このように、周方向の熱伝導率を径方向の熱伝導率よりも大きくすることで、軸方向だけでなく周方向の温度分布も効果的に均一化できるようになる。また、繊維材がランダム配向された繊維複合材料の製造コストは、繊維材が所定の方向に配向されたものよりも一般的に安い。したがって、加熱ローラ30の製造コストを低減することができる。
(均熱部材の変形例2)
上記実施形態では、均熱部材36をC/Cコンポジットで構成するものとしたが、その他の繊維複合材料を用いてもよい。例えば、炭素繊維と樹脂(例えばエポキシ樹脂)との繊維複合材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いてもよい。CFRPは、C/Cコンポジットと比べると、耐熱性は低いが安価である。したがって、加熱ローラ30にそれほど耐熱性が求められない場合には、均熱部材36にCFRPを採用することで、コストを低減することができる。また、均熱部材36を構成する炭素繊維を、ピッチ系炭素繊維の代わりに、アクリル繊維を使ったPAN系炭素繊維としてもよい。さらには、繊維材として炭素繊維以外のものを採用してもよい。
(均熱部材の変形例3)
上記実施形態では、C/Cコンポジットからなる均熱部材36を、シート状部材41を積層して製造する方法について説明したが、均熱部材36の製造方法はこれに限定されない。例えば、上述のCFRPからなる均熱部材を製造する場合には、フィラメントワインディング法を採用することも可能である。図9は、フィラメントワインディング法による均熱部材44の製造工程を示す斜視図である。
フィラメントワインディング法では、まず、図9のa図に示すように、円筒状のマンドレル100の外周面に繊維束43を巻き付けていく。マンドレル100は不図示の支持装置によって軸周りに回転可能に支持されており、回転しているマンドレル100に対して繊維束43を軸方向に移動させながら繊維束43を巻き付ける。繊維束43は、複数の炭素繊維から構成されており、予め液状の母材が含浸されている。
図9のb図に示すように、マンドレル100の外周面全面にわたって繊維束43を複数層巻き付ける。その後、繊維束43を焼成し、図9のc図に示すように、マンドレル100を引き抜くことによって、円筒状のCFRPからなる均熱部材44が完成する。この均熱部材44においては、繊維束43が径方向に順番に重ねて巻き付けられているので、炭素繊維が母材を介して径方向に積層された構造となっており、径方向の熱伝導率を低くすることができる。このように、シート状部材を積層する方法以外であっても、径方向において繊維材と繊維材の間に母材が存在する構造となっていれば、径方向の熱伝導率を小さくできる。また、フィラメントワインディング法を採用することで、直接的に円筒状の均熱部材44が得られるので、均熱片38を加工する作業や組み立てる作業が不要となる。
(その他の実施形態)
(1)上記実施形態では、均熱部材36をC/Cコンポジット等の繊維複合材料で構成するものとした。しかしながら、均熱部材36を、例えばローラ本体31よりも熱伝導率の高いアルミニウムや銅等の金属材料で構成し(図11参照)、ローラ表面の軸方向及び周方向の温度分布の均一化を図ることもできる。ただし、このような等方性の金属材料を均熱部材36に使用した場合、径方向内側への熱伝導が生じやすく、均熱部材36の内周面からの放熱量が大きくなりやすい。
そこで、図10に示すように、均熱部材36の内周面に、外筒部33の少なくとも内周面よりも熱抵抗値の高い断熱部49を設けるとよい。この断熱部49は、均熱部材36の内周面に一体的に形成されてもよいし、均熱部材36とは別の部材を均熱部材36の内周面に接触させるように配置したものでもよい。断熱部49を設けることによって、均熱部材36の内周面からの放熱を抑え、ローラ表面を効率的に昇温することができる。また、均熱部材36に一般的な等方性材料を使用することができるので、均熱部材36を安く調達することが可能となる。また、一般的に金属材料は繊維複合材料より加工がしやすく、円筒状に成形しやすいので、円筒状の均熱部材36が比較的簡単に製造できる。
断熱部49は、非磁性体且つ非導電体であることが好ましい。こうすれば、磁束が断熱部49を通過すること、及び、渦電流が断熱部49を流れることが抑えられる。その結果、ローラ本体31の外筒部33での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することができる。具体的には、断熱部49に適した材料として、非磁性体且つ非導電体であり、軽量(例えば比重が2.0程度以下)で耐熱性(例えば耐熱温度が180℃程度以上)に優れた、グラスウールシートやセラミック含有塗料等の断熱塗料が挙げられる。また、必要とされる耐熱温度に応じて、フェノール発泡材等の発泡材(耐熱温度が120℃程度)も用いることができる。
上述の熱抵抗値とは、
熱抵抗値[(m2・K)/W]=厚さ[m]/熱伝導率[W/(m・K)]
なる式から求めることができる。つまり、断熱部49の種類が決まれば、その熱伝導率に応じて熱抵抗値がローラ本体31の外筒部33よりも高くなるように、断熱部49の厚さを決めればよい。例えば、ローラ本体31の外筒部33の厚さが8mm、熱伝導率が51.5[W/(m・K)]の場合は、外筒部33の熱抵抗値は1.6×10-4[(m2・K)/W]となる。これに対して、例えば、厚さ2mm、熱伝導率0.05[W/(m・K)]のグラスウールを断熱部49に採用すれば、断熱部49の熱抵抗値は0.04[(m2・K)/W]となり、外筒部33よりも十分高い熱抵抗値となる。なお、断熱部49のさらに径方向内側に他の部材を設けてもよい。この場合には、径方向においてローラ本体31の外筒部33と断熱部49との間に位置する部材が均熱部材として機能する。
図11に示すように、アルミニウムや銅は、非磁性体であり、ローラ本体31(外筒部33)を構成する炭素鋼よりも比透磁率が低いため、磁束が均熱部材36よりもローラ本体31の外筒部33を通過しやすくなる。その結果、ローラ本体31の外筒部33での発熱量を増加させることができ、ローラ表面を効率的に昇温することが可能である。
ところで、炭素鋼、アルミニウム、銅等の金属材料のように等方性材料の場合には、各物性値は方向にかかわらず1つの数値を有することになる。したがって、等方性材料の場合は、「軸方向における」、「周方向における」、「径方向における」と限定された物性値は、上記1つの数値を意味する。
(2)上記実施形態のように、均熱部材36をC/Cコンポジット等の繊維複合材料で構成した場合に、さらに、その内周面に図10の断熱部49と同様の断熱部を設けてもよい。こうすれば、均熱部材36の内周面からの放熱をより効果的に抑えることができ、ローラ表面をさらに効率的に昇温することができる。
(3)上記実施形態では、ローラ本体31が片持ち支持されるものとした。しかしながら、ローラ本体31が両持ち支持される構成であってもよい。
(4)上記実施形態では、1つの誘導加熱ローラ30に、複数の糸Yが巻き掛けられるものとしたので、ローラ表面の軸方向の温度分布を均一化することで、複数の糸Yにおける品質のばらつきを低減できるという点において有益である。しかしながら、1本の糸が巻き掛けられる誘導加熱ローラに対しても、本発明を適用可能であることは言うまでもない。
(5)上記実施形態では、本発明に係る加熱ローラを誘導加熱ローラ30に適用した場合について説明した。しかしながら、誘導加熱式でない加熱ローラに本発明を適用することも可能である。
(6)上記実施形態では、糸Yを加熱する加熱ローラ30について説明した。しかしながら、加熱ローラ30の用途は糸Yを加熱するものに限定されず、糸Y以外のフィルムや紙等を加熱するものでもよい。
3:紡糸延伸装置
30:誘導加熱ローラ(加熱ローラ)
31:ローラ本体
32:コイル
33:外筒部(被加熱部)
36:均熱部材
38:均熱片
41:シート状部材
41a:炭素繊維(繊維材)
41b:母材
49:断熱部
Y:糸

Claims (14)

  1. ローラ本体の被加熱部が加熱される加熱ローラであって、
    前記被加熱部の内周面と接触するように円筒状に構成され、軸方向の熱伝導率が前記被加熱部の少なくとも内周面における熱伝導率よりも高い均熱部材を備え、
    前記均熱部材は、径方向の熱伝導率が軸方向の熱伝導率よりも低く、
    前記均熱部材は、複数の繊維材が、前記繊維材よりも熱伝導率の低い母材を介して径方向に積層された繊維複合材料からなり、
    前記繊維複合材料からなる前記均熱部材は、複数の均熱片を周方向に並べることによって円筒状に形成されていることを特徴とする加熱ローラ。
  2. 前記均熱部材は、周方向の熱伝導率が径方向の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の加熱ローラ。
  3. 前記繊維複合材料は、前記繊維材及び前記母材を含むシート状部材が径方向に積層された構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱ローラ。
  4. 前記繊維複合材料は、前記繊維材が主に軸方向に配向されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  5. 前記繊維複合材料は、前記繊維材が3次元的にランダム配向されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  6. 前記繊維複合材料からなる前記均熱部材において、径方向の各位置で得られる径方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値が、軸方向の各位置で得られる軸方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値よりも小さいことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  7. 前記繊維複合材料からなる前記均熱部材において、径方向の各位置で得られる径方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値が、周方向の各位置で得られる周方向に直交する断面における前記繊維材の充填率の最低値よりも小さいことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  8. 前記繊維材は、炭素繊維であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  9. 前記均熱部材の内周面に、前記被加熱部の少なくとも内周面よりも熱抵抗値の高い断熱部が設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  10. 前記断熱部は、非磁性体且つ非導電体であることを特徴とする請求項に記載の加熱ローラ。
  11. 前記ローラ本体の内部に配置されたコイルを備え、
    前記コイルに通電することで、前記被加熱部が誘導加熱されることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  12. 前記均熱部材は、前記被加熱部よりも比透磁率が低いことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  13. 前記均熱部材の周方向の電気抵抗率が、前記被加熱部の電気抵抗率よりも高いことを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の加熱ローラ。
  14. 請求項1~13の何れか1項に記載の加熱ローラを備える紡糸延伸装置であって、
    前記加熱ローラの外周面に複数の糸が軸方向に並んで巻き掛けられていることを特徴とする紡糸延伸装置。

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