JP6989894B2 - キチン分解酵素組成物、キチン分解反応液及び糖の製造方法 - Google Patents

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    • C12P19/02Monosaccharides

Description

本発明は、キチン分解酵素組成物、キチン分解反応液及び糖の製造方法に関する。
キチンは生物界において昆虫や甲殻類の外骨格、菌類の細胞壁等に含まれており、その年間生産量は、地球上に豊富に存在するバイオマスであるセルロースに次ぐものと推定されている。このため、キチンはセルロースに次ぐバイオマス資源として関心が高まっている。
キチンは単糖であるN-アセチル-D-グルコサミンが結合した不溶性多糖であり、キチンの分解酵素(「キチン分解酵素」ともいう)であるキチナーゼを用いた酵素反応によって、低分子化されたキチン多糖(低分子化キチン多糖)、キチン多糖に由来するキチンオリゴ糖、単糖(N-アセチル-D-グルコサミン)等に加水分解される。なお、これらの加水分解物は、キチンの酵素反応における生産物である。
キチンの酵素反応における生産物は、優れた抗菌性、保湿性、生体適合性、安全性、キレート性等を有している。このため、医用材料、医薬、化粧品、繊維、農業、水処理、食品等の各分野での利用が期待されており、研究開発が進められている。
例えば、非特許文献1には、シリカナノ粒子(SNP)を用いたキチナーゼの酵素活性に関する技術について記載されている。具体的には、SNPの表面に、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のキチナーゼ(Chi9602)を静電吸着によって固定化し、ナノスケールキチナーゼ(SNPC1)を調製し、調製したSNPC1を用いてキチナーゼの酵素活性を測定したことが開示されている。なお、調製したSNPC1におけるシリカの固定化率は、55%程度である。
しかしながら、SNPC1のキチナーゼ活性は、Chi9602のキチナーゼ活性100%に対して43%程度であることから、シリカの固定化によって活性が57%程度低下することが明らかとなった。即ち、シリカにキチナーゼを固定化した反応系においては、糖の製造は可能であるが、酵素活性が阻害されて糖化反応効率が低下することが判明し、当該反応系を用いる際には、かかる問題を解決することが必要となる。また、コスト性の観点から、煩雑な反応系は望ましくない。
X. Qin et al., International Journal of Biological Macromolecules, Vol.82, 2016, p.13-p.21
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キチン分解酵素を用いた反応系においてシリカを適用した場合に、簡便な工程でキチン分解酵素による糖化反応効率を向上させると共に、生産物の高収率化を実現することができるキチン分解酵素組成物、キチン分解反応液及び糖の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、キチンを加水分解するキチン分解酵素であるキチナーゼと、シリカ又はシリカ含有物質と、窒素を含む複素環式化合物である窒素含有複素環式化合物と、を含有することを特徴とするキチン分解酵素組成物にある。
本発明の第2の態様は、前記キチナーゼが、少なくともキチナーゼAを含有することを特徴とする第1の態様のキチン分解酵素組成物にある。
本発明の第3の態様は、前記窒素含有複素環式化合物が、窒素含有五員複素環式化合物であることを特徴とする第1の態様又は第2の態様のキチン分解酵素組成物にある。
本発明の第4の態様は、前記窒素含有五員複素環式化合物が、イミダゾール及び2-メチルイミダゾールから選択される何れか1つであることを特徴とする第3の態様のキチン分解酵素組成物にある。
上記目的を達成する本発明の第5の態様は、キチンと、第1の態様から第4の態様の何れかのキチン分解酵素組成物と、を含有することを特徴とするキチン分解反応液にある。
上記目的を達成する本発明の第6の態様は、第5の態様のキチン分解反応液を用いてキチンを加水分解することにより糖を製造することを特徴とする糖の製造方法にある。
本発明の第7の態様は、撹拌下にて前記キチン分解反応液を用いてキチンを加水分解することにより糖を製造することを特徴とする第6の態様の糖の製造方法にある。
本発明によれば、キチン分解酵素を用いた反応系においてシリカを適用した場合に、簡便な工程でキチン分解酵素による糖化反応効率を向上させると共に、生産物の高収率化を実現することができるキチン分解酵素組成物、キチン分解反応液及び糖の製造方法を提供することができる。
(キチン分解酵素組成物)
本発明のキチン分解酵素組成物は、キチン分解酵素であるキチナーゼを用いた酵素反応において、糖化反応効率を向上させて生産物であるオリゴ糖やN-アセチル-D-グルコサミン等の高収率化を実現するものである。以下、本発明のキチン分解酵素組成物の詳細について説明する。
本発明のキチン分解酵素組成物は、基質であるキチンを加水分解することができる組成物であり、キチン分解酵素と、シリカ又はシリカ含有物質と、窒素含有複素環式化合物と、を含有するものである。
ここで、基質であるキチンとは、N-アセチル-D-グルコサミン残基が多数β-1,4結合した直線状の高分子アミノ糖であり、強固な結晶構造を持つ不溶性多糖である。キチンは、下記式(1)で表される化学構造を有している。
Figure 0006989894000001
また、キチンの脱アセチル化物はキトサンと呼ばれ、下記式(2)で表される化学構造を有している。
Figure 0006989894000002
一般的なキチンは、部分的にアセチル基を失ったキトサン構造を有しており、一方、キトサンは、部分的にアセチル基を有したキチン構造を有している。従って、本発明におけるキチンは、前述のキトサン構造を有するキチンや、キチン構造を有するキトサンも含む概念である。また、このようなキチンは、酵素反応における生産物が回収可能な程度にキチンを含有するキチン含有物質であってもよい。
上述のキチンの原料としては特に制限されないが、キチン系バイオマス由来の原料を用いることができる。そのような原料としては、例えばエビやカニ等の甲殻やイカ等の軟甲、或いは昆虫等の甲殻や外骨格、真菌類の細胞壁等が挙げられる。また、原料として天然物由来のものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。原料が天然物由来のものである場合には、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
天然物由来の原料としては、例えば紅ズワイガニを用いることができる。紅ズワイガニを用いる場合には、乾燥した紅ズワイガニの殻のほか、身抜きした足やその付け根部分を3cm~5cmに粉砕し、高温の希水酸化ナトリウム水溶液と室温の希塩酸水溶液に、それぞれ2時間~3時間浸してタンパク質や炭酸カルシウムを除去することで、キチンを得ることができる。なお、得られたキチンを高温の濃水酸化ナトリウム水溶液中で8時間~20時間かけて脱アセチル化することにより、キトサンを得ることができる。脱アセチル化に要した時間が短い場合には、得られたキトサンは脱アセチル化度が低いもの、即ちキチン構造を有するキトサンとなる。このようにして得られたキチン、或いは必要に応じてキチン構造を有するキトサンは、本発明のキチン分解酵素組成物を用いて後述する手順により、酵素反応に供することができる。
また、自然界に存在するキチンには、α-キチンとβ-キチンの2種類の結晶構造が存在することが知られている。
本発明のキチン分解酵素組成物は、α-キチンとβ-キチンの何れの構造であっても加水分解することができ、或いは、これらの構造が混合して含まれたキチンであっても加水分解することができる。なお、キチンと同様に、キトサンにおいてもα,βの両構造が存在するものと考えられるが、何れの構造のキトサンであっても、キチン構造を有するであれば、加水分解することができる。
本発明では、キチン分解酵素として、キチナーゼを主体としたものが用いられる。かかるキチナーゼは、酵素反応において酵素として機能し、キチンを加水分解して低分子化されたキチン多糖(低分子化キチン多糖)、キチン多糖に由来するキチンオリゴ糖、単糖(N-アセチル-D-グルコサミン)等といった生産物が得られるものを意味している。
上述のキチナーゼの由来は特に限定されないが、例えば微生物由来、植物由来、昆虫由来等であってもよく、これらの中では微生物由来のキチナーゼが好ましい。キチナーゼを生産する微生物としては特に限定されないが、例えば、セラチア(Serratia)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、アルテロモナス(Alteromonas)属、コクシジオイデス(Coccidioides)属、ビブリオ(Vibrio)属等の細菌;アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属等の真菌類が挙げられる。
また、キチナーゼを生産する植物としては特に限定されないが、例えば、パラゴムノキ(Para rubber tree,Hevea brisiliennsis)、大豆(Glycine max)、たばこ(Nicotiana tabacum)等が挙げられる。
また、キチナーゼを生産する昆虫としては特に限定されないが、例えば、蚕(Bombyx mori)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)等が挙げられる。
これらの中では、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、バシラス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)にそれぞれ由来するキチナーゼが好ましい。
なお、これらのキチナーゼは、人工的に改変(例えば後述する実施例のクローン化)されていてもよい。また、これらのキチナーゼは、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。また、キチナーゼは、一連の酵素群であってもよい。かかる酵素群としては、キチナーゼ(EC 3.2.1.14)等が挙げられる。また、キチナーゼは、異なる由来のキチナーゼを混合して用いてもよい。
また、キチナーゼには複数の立体構造が存在することが知られているが、キチン分解酵素として用いる際には立体構造は特に限定されず、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。そのような立体構造を有するキチナーゼとしては、例えばセラチア・マルセッセンス由来のキチナーゼAやキチナーゼB、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)WL-12由来のキチナーゼA1、病原性糸状菌のコクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)由来のキチナーゼ、パラゴムノキ由来のヘバミン、超高熱菌のパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のキチナーゼ、放線菌のストレプトマイセス・グリセウス由来のキチナーゼC等が挙げられる。
これらの中では、キチナーゼAが好ましく、特に少なくともキチナーゼAを含有しているものが好ましい。なお、微生物由来や植物由来のキチナーゼは、複数の構造が混合した状態にある。この場合、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)等の分離方法を用いてキチナーゼを精製することができる。精製されたキチナーゼを構造毎に分離するためには、例えばサイズ排除クロマトグラフィーのサンプリングのタイミングを、キチナーゼの分子量に応じて変更することで実現することができる。
キチナーゼの多くは、pH3以上、pH8以下の範囲で至適な酵素活性を有するものが一般的であるが、pH8~pH10以上の範囲で至適な酵素活性を有するアルカリキチナーゼと呼ばれるものであってもよい。また、キチナーゼの多くは、反応温度が25℃以上、50℃以下の範囲で至適な酵素活性を有するものが多いが、70℃以上、100℃以下の範囲で至適な酵素活性を有する耐熱性キチナーゼと呼ばれるものであってもよい。
本発明では、シリカ又はシリカ含有物質として、シリカ、珪藻土、珪砂、石英、ガラス等を用いることができる。シリカ含有物質のうち、珪藻土及び珪砂は、シリカが主成分の天然物である。シリカは少なくとも二酸化ケイ素を含有する化合物の総称であり、表面の一部にシラノール基が存在しているのが一般的である。このシリカは、粒子形状が球状でも非球状でもよく、粒子構造が中実構造でも多孔質構造でもよく、結晶性が非晶質でも結晶質でもよく、粉末状、懸濁液、分散液等の何れの状態で使用してもよい。シリカ表面の一部がシラノール基以外の別の官能基で修飾されていてもよい。また、シランカップリング剤やシリコンアルコキシド、又はケイ酸イオン等でシリカ以外の化合物の表面に反応させてシリカの層が存在する形でもよい。その中でも特にコロイダルシリカ、珪藻土及び珪砂の適用が好ましい。
コロイダルシリカは、平均一次粒子径が1nm以上、400nm以下、好ましくは、5nm以上、350nm以下であり、後述するキチン分解反応液中に存在させて用いられる。平均一次粒子径は、窒素吸着法(BET法)により測定される比表面積S(m/g)から換算式(D(nm)=2720/S)により算出されたものである。なお、コロイダルシリカは、水、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール等の分散媒に分散させた分散液として用いられ、分散液は、コロイド液、ゾル等と呼ばれる。本発明では、酵素の活性を阻害しない範囲で分散媒を選択してよいが、水、エタノール等の分散媒の適用が好ましい。
コロイダルシリカの製造方法として、水ガラスを原料とする水ガラス法、金属アルコキシドを原料とするアルコキシド法、塩化ケイ素化合物を原料とする気相法等がある。どの製造法で得られたコロイダルシリカを用いてもよいが、水ガラス法により得られたコロイダルシリカの適用が好ましい。
本発明において、窒素含有複素環式化合物は、窒素を含む複素環式化合物である。このような窒素含有複素環式化合物としては、アジリジン-2-カルボン酸メチル、1-(2-ヒドロキシエチル)エチレンイミン等の三員複素環式化合物(窒素含有三員複素環式化合物);ピロリジン、1H-ピロール、2H-ピロール、3H-ピロール、イミダゾール、L-ヒスチジン、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、1H-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール等の五員複素環式化合物(窒素含有五員複素環式化合物);ピペリジン、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン、ピリジン、2-アミノピリジン、2-アミノ-6-メチルピリジン等の六員複素環式化合物(窒素含有六員複素環式化合物);ε-カプロラクタム、ε-チオカプロラクタム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の七員複素環式化合物(窒素含有七員複素環式化合物)が挙げられる。
これらの中では、安価で入手し易いことから、ピロリジン、イミダゾール、L-ヒスチジン、2-メチルイミダゾール、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、1,2,4-トリアゾール、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、2-アミノピリジン、2-アミノ-6-メチルピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンが好ましく、特にイミダゾール、2-メチルイミダゾールが好ましい。
(キチン分解反応液及び糖の製造方法)
本発明において、キチンを加水分解する際にはキチン分解反応液を調製して用いる。本発明のキチン分解反応液は、原料であるキチンと、本発明のキチン分解酵素組成物とを含有するものである。詳細は後述するが、糖化反応効率の向上効果を享受する観点から、本発明のキチン分解反応液においては、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物を併用する。
一般に、酵素反応においては、基質濃度が高くなると反応速度が飽和する現象がみられ、この反応速度は飽和最大速度へ至る双曲線を描く。これは、酵素分子が基質に比べて巨大な場合が多く活性中心の範囲が狭いため、金属触媒等に比べて、基質と触媒(酵素)とが衝突しても(活性中心に適合し)反応を起こす頻度が小さいことが原因と考えられるためである。そして、基質濃度が高まると、少ない酵素の活性中心を基質が取り合うようになるので飽和現象が生じる。
従って、本発明のキチン分解反応液では、キチン分解酵素の濃度をキチンの含有量に応じて適宜決定すればよい。ただし、キチン分解反応液中のキチン分解酵素の濃度が低すぎると、キチン分解酵素の糖化反応効率が低下して好ましくない。一方、キチン分解酵素の濃度が高すぎると、飽和現象が生じるだけでなく、キチン分解酵素がキチン分解反応液に溶解し難くなり、経済的に不適である。
また、本発明のキチン分解反応液において、シリカ又はシリカ含有物質中のシリカの濃度は、0.1mg/mL以上、400mg/mL以下、好ましくは、0.5mg/mL以上、100mg/mL以下である。シリカ又はシリカ含有物質中のシリカの濃度が0.1mg/mLより低いと、キチン分解酵素の糖化反応効率が低下して好ましくない。一方、これらのシリカの濃度が400mg/mLより高いと、キチン分解反応液の分散性が悪化するだけでなく、経済的に不適である。
また、キチン分解反応液において、キチン分解酵素とシリカ又はシリカ含有物質中のシリカとの質量比率(キチン分解酵素/シリカ)は、0.0002以上、300以下、好ましくは、0.002以上、30以下である。両者の質量比率が上記範囲を外れると、キチン分解酵素の糖化反応効率の向上が顕著ではなくなる。
また、キチン分解反応液において、窒素含有複素環式化合物の濃度は、0.005mg/mL以上、100mg/mL以下、好ましくは、0.05mg/mL以上、50mg/mL以下である。更に好ましくは0.68mg/mL以上、34mg/mL以下である。最も好ましくは6.8mg/mL以上、34mg/mL以下である。窒素含有複素環式化合物の濃度が0.005mg/mLより低いとキチン分解酵素の糖化反応効率が低下して好ましくなく、一方、100mg/mLより高いとキチン分解反応液の分散性が悪化するだけでなく、経済的に不適である。
また、キチン分解反応液において、シリカ又はシリカ含有物質中のシリカと窒素含有複素環式化合物との質量比率(窒素含有複素環式化合物/シリカ)は、0.0001以上、100以下、好ましくは、0.001以上、10以下である。両者の質量比率が上記範囲を外れると、キチン分解酵素の糖化反応効率の向上が顕著ではなくなる。
また、キチン分解反応液のpHは、4以上、8以下、好ましくは、5以上、7以下である。pHが4より低いとシリカ又はシリカ含有物質の凝集が生じてキチン分解酵素の糖化反応効率が低下し、一方、pHが8より高いとシリカ又はシリカ含有物質がキチン分解反応液に溶解しやすくなるため好ましくない。なお、キチン分解反応液にアルカリキチナーゼを用いる場合には、シリカ又はシリカ含有物質のキチン分解反応液に対する溶解性を調製する。これにより、pHが8より高いキチン分解反応液として用いることができる。
キチン分解反応液のpH調整剤として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸;酢酸、シュウ酸等のカルボン酸;クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシ酸;リン酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物塩;アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等が挙げられる。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特にその種類や濃度に使用制限はない。また、これらのpH調整剤は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよく、或いは、緩衝作用を有する緩衝液の状態で使用してもよい。
また、キチン分解反応液の反応温度は、キチン分解酵素の至適温度に合わせて反応温度を設定することが好ましく、例えば10℃以上、50℃以下、特に25℃以上、40℃以下とするのが好ましい。一般的に、反応温度が10℃より低いとキチン分解酵素の糖化反応効率が著しく低下し、50℃より高いとキチン分解酵素が失活する虞があるため好ましくない。ただし、耐熱性キチナーゼを用いる場合には、70℃以上、100℃以下であっても失活しない。
なお、キチン系バイオマス由来の原料の前処理は、公知の処理方法を適用することにより行えばよい。例えば、カッターミル等による物理的な粉砕を行った後に、酸処理及び/又はアルカリ処理を行うことによってタンパク質や炭酸カルシウムを除去し、これをキチンの原料とすればよい。
また、キチン分解反応液の調製手順は特に制限されないが、キチン分解酵素を分散させた分散液に、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物を添加してキチン分解反応液としてもよい。或いは、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物を分散させた分散液に、キチン分解酵素を添加してキチン分解反応液としてもよい。これらの調整手順において、キチン分解酵素の糖化反応効率が低下しなければ添加順序は問わない。例えば、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物を同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。その際、窒素含有複素環式化合物を粉末状態で添加してもよいし、溶液状態で添加してもよい。なお、pH調整剤等のその他の添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば任意の順序で添加すればよい。
以上で説明した通り、本発明のキチン分解酵素組成物を用いてキチン分解反応液を調整する際に、メカニズムは明らかでないが、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物を併用させることで、キチンの加水分解をより促進させてキチン分解酵素による糖化反応効率を向上させることができる。また、キチン分解酵素の糖化反応効率が向上することで、生産物である糖の収率を向上させて高収率化を実現することができる。また、このキチン分解反応液は、シリカ又はシリカ含有物質及び窒素含有複素環式化合物の併用により、キチン分解酵素の使用量を減少させることができるので、簡便な反応系でありコスト性にも優れている。
本発明のキチン分解酵素組成物を用いて調製したキチン分解反応液を使用してキチンを加水分解することにより、糖を製造することができる。糖を製造する際には、撹拌下で、キチン分解反応液を使用してキチンを加水分解してもよい。具体的な糖の製造方法は、後述の実施例において説明する。
以下、実施例に基づいて更に詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
(1.実施例1)
(1-1.キチナーゼAの調製)
キチン分解酵素として用いたキチナーゼAは、以下の手順に従って調製した。
セラチア・マルセッセンスからクローン化されたキチナーゼA(以下「SmChiA」とする)(T. Watanabe et al., Journal of Bacteriol, Vol.179, No.22, 1997, p.7111-p.7117参照)を、T7プロモーターを利用したタンパク大量発現系構築用プラスミドベクターpET27b(ノバジェン社製)へクローン化した。クローン化の際に、SmChiAのカルボキシル末端側に6回反復ヒスチジンタグが付随するように構築した。
SmChiAのエスケリキア・コリ(Escherichia coli;E. coli)を宿主とした大量発現を、以下の手順により行った。
上記プラスミドベクターを保持するE. coli BL21(DE3)を、50μg/mLのカナマイシンを加えたLB培地で、37℃で一晩振とう培養して培養液を得た。翌日、この培養液を種菌として、50μg/mLのカナマイシンを加えたオーバーナイトエクスプレス(OvernightExpress(登録商標))LB培地(ノバジェン社製)へ植菌し、30℃で一晩振とう培養した。翌日、遠心分離器を用いて集菌して菌のペレットを作製し、このペレットをベンゾナーゼ(Benzonase(登録商標))(ノバジェン社製)を加えたバグバスター(Bugbuster(登録商標))(ノバジェン社製)へ懸濁して懸濁液を得た。次いで、この懸濁液を室温で30分間放置後、再び遠心し、その上清画分を回収した。
次に、上記上清画分からSmChiAを精製・回収するため、当該上清画分を5×5mLのHisTrap HPカラム(GEヘルスケア社製)へ添加した。その後、洗浄用緩衝液で上記HPカラムを洗浄した。なお、洗浄用緩衝液は、20mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)、0.5Mの塩化ナトリウム、及び25mMのイミダゾールを混合して作製した。
次に、濃度が25mMから250mM(終濃度)になるように濃度勾配を付けながら、イミダゾールをカラムへ添加していき、SmChiAを溶出させて、SmChiA溶出画分を回収した。このSmChiA溶出画分を、ビバスピン(Vivaspin(登録商標))20を用いて遠心透析し、上記洗浄用緩衝液を50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)へと置換し、精製酵素(SmChiA)を得た。得られた精製酵素の定量は、280nmの吸光度を測定することにより行った。なお、SmChiAのモル吸光係数は、予測アミノ酸配列から「The Proteomics Protocols Handbook」(J. M. Walker, Humana Press, 2005, p.571-p.607参照)を用いて算出した。
(1-2.キチン分解酵素組成物のキチナーゼ活性の測定)
上記(1-1.)で精製して得られた精製酵素であるSmChiAに加えて、シリカ又はシリカ含有物質としてシリカ、及び窒素含有複素環式化合物としてイミダゾールを用いてキチン分解酵素組成物を調製し、酵素活性(キチナーゼ活性)を測定した。かかる反応系のキチナーゼ活性の測定は、以下の手順により行った。なお、調製したキチン分解酵素組成物の組成については、下記表1に示した。
まず、ガラスバイアルに回転子を一つ入れ、そこに、終濃度12.5mg/mLの結晶性キチン(純正化学株式会社製)、20mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)、0.125mg/mLのSmChiA、終濃度100mMのイミダゾール、及び終濃度50mg/mLのシリカゾル(日産化学工業株式会社製、品名:ST-OL、酸性ゾル)をそれぞれ加えてキチン分解反応液を得た。このキチン分解反応液を加えたガラスバイアルを、バイアルスターラー(Vaial Stirrer)HS-10VA(アズワン株式会社製)に並べ、25℃、22時間、及び最大出力の条件で撹拌した。反応終了後は、直ちにキチナーゼ活性を以下の手順で測定した。
キチナーゼ活性の測定は、PHBAH(p-Hydroxybenzoic acid hydrazide)法(M. Lever, Analytical Biochemistry, Vol.47, No.1, 1972, p.273-p.279参照)を用いて、生産物であるキチンオリゴ糖及びN-アセチル-D-グルコサミンの還元糖量を求めることで行った。具体的には、上記キチン分解反応液を遠心分離(4℃、最大遠心加速度15780×g、5分)にかけ、その上清を回収した。次に、回収した上清に、当該上清の2倍量のPHBAH溶液と、上記上清と等量の2Mの水酸化ナトリウムを加え、よく懸濁して懸濁液を得た。なお、PHBAH溶液は、0.1MのPHBAH、0.2Mの酒石酸カリウムナトリウム、及び0.5Mの水酸化ナトリウムを混合して得られたものである。
得られた懸濁液を98℃で10分間反応させた後、10分で2℃に急冷した。その後、波長405nmのOD値(OD:Optical Density;光学濃度、光学密度)を測定し、このOD値を用いてブランクとの吸光度の差を求めた。また、検量線はN-アセチル-D-グルコサミンを用いて作成し、上記上清における吸光度の上昇量から還元糖量を求め、下記表1に示した。なお、下記表1に示した還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(2.実施例2~4)
実施例2~4では、シリカ又はシリカ含有物質として、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、品名:ST-OZL-35、酸性ゾル)、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、品名:MP-4540M、Na安定型アルカリ性ゾル)、及びフュームドシリカ(エボニック社製、品名:AEROSIL(登録商標)OX50、親水性フュームドシリカ)をそれぞれ適用したこと以外は実施例1と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、これらのキチナーゼ活性を測定した。各シリカの終濃度は、実施例1と同様にして50mg/mLとした。なお、各キチン分解酵素組成物の組成や求めた各還元糖量については、実施例1と同様にして下記表1に示した。また、下記表1に示した各還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(3.実施例5)
実施例5では、終濃度100mMの塩化ナトリウムを更に加えたこと以外は実施例2と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、これらのキチナーゼ活性を測定した。なお、キチン分解酵素組成物の組成や求めた還元糖量については、実施例1と同様にして下記表1に示した。また、下記表1に示した還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(4.実施例6)
実施例6では、イミダゾールの終濃度を500mMに変更した以外は実施例2と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、これらのキチナーゼ活性を測定した。なお、キチン分解酵素組成物の組成や求めた還元糖量については、実施例1と同様にして下記表1に示した。また、下記表1に示した還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(5.実施例7)
実施例7では、窒素含有複素環式化合物であるイミダゾールを2-メチルイミダゾールに変更した以外は実施例2と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、これらのキチナーゼ活性を測定した。なお、キチン分解酵素組成物の組成や求めた還元糖量については、実施例1と同様にして下記表1に示した。また、下記表1に示した還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(6.比較例1~10)
比較例1では、シリカ、イミダゾール及び塩化ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例2では、シリカ及び塩化ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例3では、シリカを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例4では、シリカ及びイミダゾールを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例5~8では、それぞれイミダゾールを添加しなかったこと以外は実施例1~4と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例9では、イミダゾールを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
比較例10では、反応時に、回転子を用いた撹拌を行わずにそのまま25℃で22時間静置したこと以外は比較例3と同様にして、キチン分解酵素組成物を調製し、このキチナーゼ活性を測定した。
なお、比較例1~10では、各キチン分解酵素組成物の組成や求めた各還元糖量については、実施例1と同様にして下記表1に示した。また、下記表1に示した各還元糖量は、n=3における還元糖量の範囲とした。
(7.キチナーゼ活性の評価)
(7-1.イミダゾール又は塩化ナトリウムの添加によるキチナーゼ活性の向上効果)
比較例1と比較例2~4のキチナーゼ活性を比較し、イミダゾール又は塩化ナトリウムの添加によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
比較例1と比較例2~4の還元糖量をみると、比較例1に対して比較例2~4は、何れも還元糖量が微増していた。これは、比較例2~4ではキチンの加水分解反応が円滑に行われて糖化反応効率がやや向上したことを示しており、イミダゾール又は塩化ナトリウムの添加によりキチナーゼ活性がやや向上したことが明らかとなった。
(7-2.シリカの添加によるキチナーゼ活性の向上効果)
比較例1と比較例5~8のキチナーゼ活性を比較し、シリカの添加によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
比較例1と比較例5~8の還元糖量をみると、比較例1に対して比較例5~8は、シリカの形態に応じて程度の差は見られるものの、何れも還元糖量が減少していた。これは、比較例5~8ではキチンの加水分解反応が円滑に行われなかったことを示しており、シリカの添加によりキチナーゼ活性が阻害されたことが明らかとなった。従って、ここでは比較例1に対する比較例5~8のキチナーゼ活性が阻害されたと評価し、キチナーゼ活性向上効果を「阻害」として下記表1に示した。
シリカがキチナーゼ活性の阻害要因となる理由として、非特許文献1の図5(SNPC1)の結果と整合していることから、キチナーゼとシリカが共存した状態では、シリカ表面にキチナーゼが物理吸着して固定化されてキチナーゼ活性が阻害されると考えられる。
(7-3.シリカ及びイミダゾールの併用によるキチナーゼ活性の向上効果)
上記(7-1.)及び上記(7-2.)の結果を踏まえて、実施例1~4、実施例6と比較例2、比較例5~8のキチナーゼ活性を比較し、シリカ及びイミダゾールの併用によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
実施例1~4と比較例5~8の還元糖量をみると、比較例5~8に対して実施例1~4は、シリカの形態に応じて程度の差は見られるものの、何れも還元糖量が増加していた。更に、実施例1~4,6と比較例2の還元糖量をみると、比較例2に対して実施例1~4,6は、何れも還元糖量が増加していた。理由は明らかでないが、これは、実施例1~4,6ではキチンの加水分解反応が円滑に行われて糖化反応効率が向上したことを示しており、シリカ及びイミダゾールの併用によりキチナーゼ活性が向上したことが明らかとなった。従って、ここでは比較例5~8に対する実施例1~4,6のキチナーゼ活性が向上したと評価し、キチナーゼ活性向上効果を「有」として下記表1に示した。
(7-4.シリカと塩化ナトリウムの併用によるキチナーゼ活性の向上効果)
上記(7-1.)~上記(7-3.)の結果を踏まえて、実施例2,5と比較例3,9のキチナーゼ活性を比較し、シリカ及び塩化ナトリウムの併用によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
実施例2,5の還元糖量をみると、両者の還元糖量は殆ど変化していなかった。次に、実施例5と比較例3の還元糖量をみると、比較例3に対して実施例5の還元糖量が増加していた。次に、実施例5と比較例9の還元糖量をみると、比較例9に対して実施例5の還元糖量が増加していた。これらのことから、実施例5でキチナーゼ活性が向上した要因はシリカとイミダゾールの併用にあり、シリカと塩化ナトリウムの併用ではないことが明らかとなった。従って、ここでは比較例9に対する実施例5のキチナーゼ活性が向上したと評価し、キチナーゼ活性向上効果を「有」として下記表1に示した。
(7-5.シリカ及び2-メチルイミダゾールの併用によるキチナーゼ活性の向上効果)
上記(7-1.)~上記(7-4.)の結果を踏まえて、実施例7と比較例2,6のキチナーゼ活性を比較し、シリカ及び2-メチルイミダゾールの併用によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
実施例2,7と比較例2,6の還元糖量をみると、比較例2,6に対して実施例2,7は、何れも還元糖量が増加していた。このことは、イミダゾールを用いた実施例2と同様に、2-メチルイミダゾールを用いた実施例7でも、キチンの加水分解反応が円滑に行われて糖化反応効率が向上したことを示しており、シリカ及び2-メチルイミダゾールの併用によりキチナーゼ活性が向上したことが明らかとなった。従って、ここでは比較例6に対する実施例7のキチナーゼ活性が向上したと評価し、キチナーゼ活性向上効果を「有」として下記表1に示した。なお、この結果から、イミダゾールや2-メチルイミダゾール以外の窒素含有複素環式化合物についても、シリカとの併用によりキチナーゼ活性が向上する可能性が示唆された。
(7-6.撹拌の有無によるキチナーゼ活性の向上効果)
上記(7-1.)~上記(7-5.)の結果を踏まえて、比較例3と比較例10のキチナーゼ活性を比較し、撹拌の有無によるキチナーゼ活性の向上効果について検討した。
比較例3と比較例10の還元糖量をみると、比較例3に対して比較例10の還元糖量が減少し、キチナーゼ活性が低下していた。撹拌の有無で酵素活性が変化することは、一般的な酵素反応系で起こり得る現象である。ここでは、比較例3に対する比較例10のキチナーゼ活性が阻害されたと評価し、キチナーゼ活性向上効果を「阻害」として下記表1に示した。
Figure 0006989894000003
なお、上記表1における窒素含有複素環式化合物の種類A、Bは、以下に示した通りである。
A:イミダゾール(分子量68.08)
B:2-メチルイミダゾール(分子量82.11)
以上の各実施例及び各比較例により、キチン分解酵素組成物を用いてキチン分解反応液を調整する際に、シリカと、イミダゾール又は2-メチルイミダゾールとを併用させることで、キチナーゼAによる糖化反応効率を向上させ、生産物である糖の収率を向上させて高収率化を実現できることが明らかとなった。
本発明は、カニやエビ等の甲殻類、昆虫、菌類等に含まれるキチンを含むキチン系バイオマスから、低分子化キチン多糖、キチン多糖に由来するキチンオリゴ糖、単糖等といった糖に分解する技術が適用される産業分野、例えば、医用材料、医薬、化粧品、繊維、農業、水処理、食品等で利用することができる。

Claims (5)

  1. キチンを加水分解するキチン分解酵素であるキチナーゼと、シリカ又はシリカ含有物質と、窒素を含む複素環式化合物である窒素含有複素環式化合物と、を含有し、前記窒素含有複素環式化合物は、窒素含有五員複素環式化合物であるイミダゾール及び2-メチルイミダゾールから選択される何れか1つであることを特徴とするキチン分解酵素組成物。
  2. 前記キチナーゼは、少なくともキチナーゼAを含有することを特徴とする請求項1に記載のキチン分解酵素組成物。
  3. キチンと、請求項1又は2に記載のキチン分解酵素組成物と、を含有することを特徴とするキチン分解反応液。
  4. 請求項に記載のキチン分解反応液を用いてキチンを加水分解することにより糖を製造することを特徴とする糖の製造方法。
  5. 撹拌下にて前記キチン分解反応液を用いてキチンを加水分解することにより糖を製造することを特徴とする請求項に記載の糖の製造方法。
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