以下、本発明の一実施形態を、図1~22を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を、収納体である防災キャビネットAに適用したものである。防災キャビネットAは、図21、及び、図22に示すように、例えば、エレベータ室Fの内部に設置されるものである。例えば、地震等の災害発生に伴ってエレベータ室Fが建物内において異常停止してしまったような場合には、エレベータ室Fの内部に閉じ込められた者が防災キャビネットA内に収納された災害対応物品(図示せず)を適宜使用することができるようになっている。すなわち、防災キャビネットAは、災害時においてエレベータ室Fに閉じ込められた者の急場を凌ぐための一助とすることができるようになっている。
この実施形態に示す防災キャビネットAは、エレベータ室F内におけるコーナー領域Rを構成する一対の壁面f1に強力な磁石k11を利用して添接させつつ床面f2上に設置するタイプのものである。
防災キャビネットAは、図1に示すように、必要時において鍵(図示せず)を用いることなく正面側に表出させた押しボタン8を押すことによって扉Hを施錠状態から開錠状態に切り替えることができる錠Jを備えている。その一方で、防災キャビネットAは、一旦、押しボタン8が押されて扉Hが施錠状態から開錠状態に切り替えられた後は、鍵を使用して錠Jに設けられたカムロック錠6を操作しない限り、扉Hを施錠状態に戻すことができないように構成されている。
防災キャビネットAは、図1~3に示すように、災害対応物品を収納し得る収納空間spを有した収納体本体たるキャビネット本体Gと、錠Jを有しキャビネット本体Gの収納空間spを開閉可能に当該キャビネット本体Gに対して回動可能に支持された扉Hとを備えている。
キャビネット本体Gは、図1~3に示すように、エレベータ室Fにおけるコーナー領域Rに設置し得る形状をなしている。キャビネット本体Gは、略二等辺三角形状の部位を有した底壁g0と、底壁g0において互いに略90°異なる方向に延びた対をなす後縁部からそれぞれ立設された対をなす後壁g1と、対をなす後壁g1の上端間に配設された前傾姿勢をなす天壁g2と、左右の後壁g1の前端部間に配設され収納空間spと外部空間とを連通し得る開口を形成した前枠部g3と、前枠部g3の下における左右の後壁g1間に配された下部前壁g4とを備えている。後壁g1の周縁部には、内部に埃の侵入を抑制するための弾性部材たるスポンジ材g5が設けられている。
左右に対をなす後壁g1は、その上下二箇所に、エレベータの壁面f1に磁石k11を利用して止着するための止着装置Kを備えている。止着装置Kは、磁石k11を有した止着具本体k1と、この止着具本体k1を進退動作可能に保持する支持部k2とを備えている。止着具本体k1は、先端部に設けられた円環状をなす磁石k11と、先端部において磁石k11を支持するとともに先端部よりも後側の部位にねじ溝を形成したねじ部材k12とを備えている。支持部k2は、止着具本体k1のねじ部材k12を螺合進退可能に支持し得るものである。
止着装置Kを有した防災キャビネットAは、図13~15、及び、図19~図21に示すように、エレベータ室Fの壁面f1に接着した金属製の取付板Bを介してエレベータ室Fの壁に支持され得るように構成されている。取付板Bの表面b1は、止着装置Kの磁石k11が吸着し得る面をなし平面状に構成されている。なお、取付板B、及び、取付板Bの取り付けに用いられるガイド板Eについては後で詳述することにする。
キャビネット本体Gの後壁g1には、図2に示すように、扉Hが開いた状態にあるときに当該扉Hのキャビネット本体Gに対する開き度合いを調整し得る扉支持部材Lが設けられている。扉支持部材Lは、扉Hが開いた後に、当該扉Hが過度に開いて周囲の邪魔になる状態を抑制し得るものである。扉支持部材Lは、基端が後壁g1に支持された紐状体である鎖l1と、この鎖l1の先端に支持された扉接着用の磁石l2とを備えたものである。扉接着用の磁石l2は、使用時において扉本体Iの内面側に止着し得るものとなっている。
扉Hは、図1~3に示すように、金属板を主体に構成されキャビネット本体Gの収納空間spを開閉可能に移動し得る開閉体である扉本体Iと、扉本体Iに取り付けられた錠Jとを備えたものである。
扉本体Iは、正面視において矩形状をなしており、キャビネット本体Gを閉塞し得るものである。扉本体Iの周縁部である上縁部内面側には、扉Hが開いた状態にあるときに、その扉本体Iがキャビネット本体Gに密着した状態をとれないようにするための閉止姿勢禁止機構たるバネ部材i1が取り付けられている。バネ部材i1は、扉Hが一旦開いた場合に、その後扉本体Iがキャビネット本体Gに密着してあたかも不使用であるような外観が維持されてしまうという不具合を抑制するためのものである。バネ部材i1は、扉本体Iがキャビネット本体Gの前枠部g3に近接した際に当該前枠部g3に当接しその弾性反発力によって扉本体Iを前枠部g3から離れる方向に付勢し得るようになっている。
続いて、錠Jについて説明する。
錠Jは、図1~12に示すように、扉本体Iに止着されるベース1と、ベース1に設けられた軸受部11に支持される軸部31を有しベース1に対して前位置(M)と後位置(N)との間で前後動可能に軸支持されたストッパー3と、先端部41が扉本体Iを閉じ姿勢に保持するべくキャビネット本体Gに係合し得るロック位置(O)と扉本体Iを開き姿勢にするべくキャビネット本体Gと係合しないロック解除位置(P)との間でベース1に対して回動可能に支持され前位置(M)にあるストッパー3と係合することによりロック位置(O)に保持され得るロック板4と、ストッパー3とロック板4との間に設けられロック板4をロック解除位置(P)の方向に付勢し得るスプリング5と、ベース1に設けられロック解除位置(P)にあるロック板4をロック位置(O)の方向に押圧し得る押圧板63を有したカムロック錠6とを備えている。また、錠Jは、ストッパー3の後側に位置してなりベース1に取り付けられた押さえ板7と、ベース1とストッパー3との間に配された押しボタン8と、押しボタン8と押さえ板7との間に配された押しボタン付勢用スプリング9とを備えている。
ベース1は、図1、図4、及び、図5に示すように、正面視において略円形をなしたものである。ベース1には、押しボタン8を前側から押圧し得るための開口部12が形成されている。ベース1は、ねじv1により扉本体Iに取り付けられている。ベース1は、その背面側に扉本体Iに設けられた図示しない連通孔の下開口縁に係り合う図示しない係合部を設けている。そして、ベース1のねじ挿通孔13を前側から通過したねじv1は、扉本体Iに設けられた連通孔を通過して扉本体Iの裏側に配された裏カバー10に螺着するようになっている。そして、ベース1と裏カバー10とがねじ止めされることにより、これらベース1と裏カバー10とによって扉本体Iを前後から挟んだ状態をとることになる。換言すれば、ベース1における背面側の周縁部は、扉本体Iに形成されベース1よりも小さな大きさに設定された連通孔の周縁部前面に密接した状態に保持されている。
なお、ベース1の前面に表出したねじv1の頭部分は、ベース1に貼着された隠蔽部材たる隠蔽シール2により隠蔽されている。
ストッパー3は、図6~12に示すように、上端部にベース1に設けられた軸受部11に回動可能に支持される左右方向に延びた軸部31と、軸部31に対して後方に突出し当該軸部31と一体に設けられた上のスプリング支持部であるフック32と、軸部31から下方に一体に延出してなり回動端となる下端部近傍に前後方向に貫通した矩形状の係合孔331を有するとともに上下方向中間部に押しボタン8の突出部82及び押しボタン付勢用スプリング9が通過し得る前後方向に貫通した縦長の連通孔332を有したストッパー本体33とを備えている。係合孔331を有したストッパー3の下端部は、ロック板4の後側に位置させてある。ストッパー本体33における連通孔332の両側には、押しボタン8側に向かって突出し押しボタン8が押圧操作された際に当該押しボタン8が当接し得る押しボタン受付突部333が形成されている。
ロック板4は、図6~10に示すように、ベース1に対して先端部41が上下方向に回動し得るようにベース1に対して支持されている。ロック板4は、先端部41がキャビネット本体Gの前枠部g3に係わり合い扉Hが開くことを禁止し得るロック位置(O)と、先端部41がキャビネット本体Gの前枠部g3に係り合わないロック解除位置(P)との間で回動し得るように構成されたものである。ロック位置(O)におけるロック板4の先端部41は、ロック解除位置(P)におけるロック板4の先端部41よりも上であり且つ外側に位置するようになっている。ロック板4の基端部には、ベース1に突設された軸14に外嵌する軸孔42を有している。ロック板4における先端部41の前面411は、外方に向かって漸次後側に位置するように形成されている。ロック板4は、その背面側に、ストッパー3に設けられた係合孔331に係合し得る凸部43を備えている。凸部43は、ロック位置(O)においてストッパー3における係合孔331における下の内周面に当接し得る下向面431を有している。凸部43は、ロック板4をロック解除位置(P)からロック位置(O)に戻す際に円滑に係合孔331に係り得るようにするための案内傾斜面432を有している。
錠Jは、ロック板4がロック位置(O)にあるときに、前位置(M)におけるストッパー3の係合孔331に、ロック板4の凸部43が入り込んで係合し得るようになっている。ロック板4は、押圧板63によって下側から上側に向かって押圧され得る被押圧部44を備えている。ロック板4は、基端部における軸孔42の右側、換言すれば、軸孔42を基準にしてロック板4の先端部41が位置する側とは反対側になる場所に下のスプリング支持部であるフック45を突設している。
スプリング5は、図6~12に示すように、コイル状をなした単一のものである。スプリング5は、ストッパー3とロック板4との間に介設されている。スプリング5は、ロック板4をロック解除位置(P)方向に付勢するとともにストッパー3を前位置(M)方向に付勢するものである。換言すれば、スプリング5は、ロック板4をロック解除位置(P)方向に付勢する機能、及び、ストッパー3を前位置(M)方向に付勢する機能を兼ねたものとなっている。
スプリング5は、その一端である上端51がストッパー3の軸部31に突設された上のスプリング支持部であるフック32に支持されており、他端である下端52がロック板4の基端部に突設された下のスプリング支持部であるフック45に支持されている。
カムロック錠6は、図1、図3~10に示すように、ベース1に一体に設けられたシリンダー61と、このシリンダー61内に回転可能に配され前側に鍵挿入部621が設けられたカムロック錠本体62と、このカムロック錠本体62と一体的に回動し得る押圧板63とを備えたものである。カムロック錠6は、図示しない鍵がカムロック錠本体62に設けられた鍵挿入部621に挿入された場合にのみ、カムロック錠本体62をシリンダー61内において回転させ得るものとなっている。カムロック錠本体62の後端部に一体回転し得るように設けられた押圧板63は、鍵を持って回転操作した使用者の操作力によって、ロック板4をロック解除位置(P)からロック位置(O)に位置変更させることができるようになっている。
押さえ板7は、図6~10に示すように、ストッパー3の後側に配設されている。押さえ板7は、ねじv2によりベース1に取り付けられている。押さえ板7は、ストッパー3やロック板4がベース1から離脱しないようにこれらを後方から押さえ得る位置に設けられている。押さえ板7は、押しボタン8を前側に向かって付勢する押しボタン付勢用スプリング9の後端部を支持し得る足場としても機能している。押さえ板7の中間部には、押しボタン8に設けられた姿勢保持用の突出部82が挿通し得る位置決め孔71が設けられている。
押しボタン8は、図1、図3~10に示すように、正面視において円形をなす押しボタン本体81と、押しボタン本体81の中央部から後方に突設された突出部82とを備えている。押しボタン8は、押しボタン付勢用スプリング9の付勢力により前側に向かって付勢されている。押しボタン本体81の後には、ストッパー3の中間部が位置しており、押しボタン8に対する使用者の押圧操作力をストッパー3が受け付け得るようになっている。換言すれば、使用者による押しボタン8に対する押圧操作力を受けて当該押しボタン8がストッパー3を後方に押圧し得るように構成されている。
押しボタン付勢用スプリング9は、図10に示すように、コイル状のものであり、押しボタン8の突出部82に巻装されている。押しボタン付勢用スプリング9の後端部は押さえ板7に支持されており、前端部は押しボタン本体81の裏面側に当接させてある。
裏カバー10は、図2に示すように、錠Jを構成する主要部分をカバーするとともに、錠Jを構成する各種部材をユニット的に一括支持しているベース1を扉本体Iに対して取り付ける役割を担っている。裏カバー10にはベース1のねじ挿通孔13を通過したねじv1が螺着する図示しないナット部を備えている。なお、図6~9においては、説明の便宜上、裏カバー10を省略したものを示している。
次に、錠Jの作動について説明する。
防災キャビネットAがエレベータ室F内に設置されている状態では、錠Jは扉Hを施錠状態に保持している。すなわち、扉本体Iに止着されている錠Jのロック板4は、キャビネット本体Gの前枠部g3に係り合ったロック位置(O)に位置している。このときストッパー3は、前位置(M)に位置しており、ストッパー3の係合孔331内にロック板4の凸部43が入り込んで係合した状態になっている。
災害発生時等において扉Hを開きたいときには、扉Hを開錠状態にするべく、錠Jの押しボタン8を前から押圧する。使用者によって押された押しボタン8は、押しボタン付勢用スプリング9の付勢力に抗して後方に移動する。そして、押しボタン本体81の裏面がストッパー3に突設された押しボタン受付突部333に接し、押しボタン8は、ストッパー3を前位置(M)から後位置(N)に位置変更させることになる。
ストッパー3が後位置(N)に移動すると、ストッパー3の係合孔331が後側に移動し、下方に動き得るように付勢されているロック板4の凸部43から抜け出すことになる。つまり、ストッパー3が前位置(M)から後位置(N)に移動すると、ロック板4の凸部43とストッパー3の係合孔331との係合が解除され、スプリング5の付勢力により、ロック板4がロック位置(O)からロック解除位置(P)に遷移する。
図11及び図12に拡大して示すように、ストッパー3が前位置(M)から後位置(N)に変位するとストッパー3の軸部31に一体に設けたフック32は軸部31の回転に伴って下から上に向かって変位することになる。このフック32の動きに伴って、後位置(N)にあるスプリング5における上端51の位置は、前位置(M)にあるときよりも上に位置することになる。つまり、この実施形態における錠Jは、ストッパー3がロック板4と係合していない状態において、スプリング5の下端52との距離をできるだけ長く得ることができるようになっている。換言すれば、この錠Jは、ロック板4がロック位置(O)からロック解除位置(P)に遷移する過程において、スプリング5による上のフック32と下のフック45とを引き付けようとする付勢力の減衰を効果的に抑制し得るものとなっている。
続いて、防災キャビネットAを磁石k11による吸着力を利用してエレベータ室Fの壁に支持させるための取付板Bについて説明する。この実施形態では、エレベータ室Fの壁の材質によって防災キャビネットAに配した磁石k11による取り付けが難しい場合であっても柔軟に壁に支持させ得るように、取付板Bを利用して防災キャビネットAを壁に固定させるようにしている。
取付板Bは、磁石k11が吸着し得る金属製のものであり裏面b2側が接着手段である両面テープCを介して壁面f1に取り付けられるものである。取付板Bは、周縁部b3に工具であるスパナDを嵌合させ得る被係合部である突出部b4が形成されている。そして、取付板Bを壁面f1から剥がす必要がある場合には、スパナDを用いて壁面f1に対して回転する操作力を取付板Bに付与することができるようになっている。
取付板Bは、周縁部b3に突出部b4を複数形成している。より具体的に言えば、取付板Bは、正面視において上下及び左右に略対称形状をなしており、周縁部b3の四箇所に突出部b4が形成されている。突出部b4は、スパナDの口径部d1に合致する形状をなしたものである。この実施形態では、突出部b4の幅寸法は、口径部d1の二面幅である12mmに対応させてある。
この実施形態に示す取付板Bであれば、スパナDを利用して壁面f1に貼り付けられた取付板Bを当該壁面f1に対して回転させる事により壁面f1から比較的容易に離脱させることができるようになっている。つまり、取付板Bを壁面f1から離れる方向に引っ張って取付板Bを壁面f1から離脱させようとすると過大な力が必要であったが、本実施形態に示すものであれば、スパナDを利用して極めて簡単に取付板Bを壁面f1から剥がすことができるものとなっている。このため、この取付板Bであれば、メンテナンス性に優れたものとなっている。
この実施形態では、図16~20に示すように、取付板Bを壁面f1に取り付けるためにガイド板Eを使用している。
ガイド板Eは、エレベータ室Fの壁面f1に添接して使用されるものである。そして、ガイド板Eは、取付板Bの取付位置をガイドすることができるため、取付板Bを壁面f1の所定位置に容易に取り付けることができるものとなっている。
ガイド板Eは、取付板Bを通過させ得る取付ガイド孔e1と、起立する壁面f1に隣接し当該壁面f1に対して異なる方向を向く他の壁面である床面f2に当接し得る姿勢保持用の他の壁面当接部である床当接部e2を備えている。ガイド板Eは、正面視において略矩形板状に形成されている。ガイド板Eに設けられた取付ガイド孔e1は、複数設けられており、この実施形態では四箇所に形成されている。
ガイド板Eは、段ボールにより作られたものである。ガイド板Eは、設置されるべき防災キャビネットAの収容箱内に当該防災キャビネットAとともに収容され得る大きさに設定されている。この実施形態では、ガイド板Eは、その左右方向中間部にエレベータ室Fにおいて隣り合う壁面f1により形成されたコーナー部分f3に添接して位置決めされる谷折り線であるコーナー当接部e3を備えている。なお、取付ガイド孔e1の外側に設けられた上下方向に延びてなる折り線e4は、防災キャビネットAの収納箱内に収納する際に折り曲げられる部位である。
図17~22を参照して、エレベータ室F内に取付板Bを適切な位置に取り付けるとともに、防災キャビネットAをコーナー領域Rに設置する概要について説明する。
まず、防災キャビネットAを梱包していた収容箱内からガイド板Eを取出し、防災キャビネットAを設置するコーナー領域Rのコーナー部分f3を確認する(図17)。
次いで、ガイド板Eの左右方向中間部に上下方向に延びてなるコーナー当接部e3を、コーナー部分f3に当接させてガイド板Eを位置決めするとともに床当接部e2である下端縁を床面f2に当接させてガイド板Eを位置決めする(図18)。
続いて、コーナー領域Rに位置決めされたガイド板Eの取付ガイド孔e1を通過させて裏面b2に両面テープCを貼り付けた取付板Bをエレベータ室Fの壁面f1に貼り付ける(図19)。
そして、ガイド板Eに案内されて四箇所に取付板Bを取り付けた後に、壁面f1及び床面f2に添接させていたガイド板Eを取り除く(図20)。これにより、防災キャビネットAの背面側の四箇所に配設された止着装置Kの位置に合致する壁面f1部分に、取付板Bを貼る作業が完了する。
しかる後に、防災キャビネットAをコーナー部分f3方向に移動させ(図21)、その後、防災キャビネットAの収納空間sp側から止着装置Kの止着具本体k1を適宜螺合進退調整するだけで、防災キャビネットAをエレベータ室Fのコーナー領域Rに配設する作業が完了する(図22)。
以上説明したように、本実施形態に係る錠Jは、物品を収納し得る収納空間spを有した収納体本体であるキャビネット本体Gと、このキャビネット本体Gの収納空間spを開閉可能に移動し得る開閉体たる扉本体Iとを備えた収納体である防災キャビネットAに設けられるものである。
そして、錠Jは、扉本体Iに止着されるベース1と、このベース1に設けられた軸受部11に支持される軸部31を有しベース1に対して前位置(M)と後位置(N)との間で前後動可能に軸支持されたストッパー3と、先端部41が扉本体Iを閉じ姿勢に保持するべくキャビネット本体Gに係合し得るロック位置(O)と扉本体Iを開き姿勢にするべくキャビネット本体Gと係合しないロック解除位置(P)との間でベース1に対して回動可能に支持され前位置(M)にあるストッパー3と係合することによりロック位置(O)に保持され得るロック板4と、ストッパー3とロック板4との間に設けられロック板4をロック解除位置(P)の方向に付勢し得るスプリング5と、ベース1に設けられロック解除位置(P)にあるロック板4をロック位置(O)の方向に押圧し得る押圧板63を有したカムロック錠6とを備えてなる。この錠Jは、スプリング5の一端が軸部31に突設されたスプリング支持部であるフック32に支持されたものである。
このため、本実施形態のものであれば、ロック板4をロック位置(O)からロック解除位置(P)に移動させるスプリング5の付勢力を好適に発揮させ得る構成を有した錠Jを提供することができるものとなる。
すなわち、ロック板4をロック解除位置(P)に移動させるためにストッパー3が前位置(M)から後位置(N)に変位するとストッパー3の軸部31に一体に設けたフック32も下から上に向かって変位することになる。このため、スプリング5の上端51と下端52との距離をできるだけ長く得られるものとなり、スプリング5による上のフック32と下のフック45とを引き付けようとする付勢力を効果的に発揮し得るものとなっている。
ベース1が、ねじv1により開閉体である扉本体Iに取り付けられたものである。そして、ねじv1がベース1に貼着された隠蔽部材たる隠蔽シール2により隠蔽されている。このため、外力をうけてロック板4の予期しない変形等が生じてしまったような場合には、ねじv1を取り外すことによりベース1を扉本体Iから取り外すことができるため、緊急時におけるメンテナンス性に優れたものとなっている。
スプリング5の他端がロック板4の基端部に設けたスプリング支持部たるフック45に支持されている。このため、ロック板4をロック位置(O)方向に向けて好適に付勢し得るものとなっている。
ストッパー3の後側に位置してなりベース1に取り付けられた押さえ板7と、ベース1とストッパー3との間に配された押しボタン8と、押しボタン8と押さえ板7との間に配された押しボタン付勢用スプリング9とを備えたものである。そして、ベース1に、押しボタン8を前側から押圧し得るための開口部12が形成されており、押しボタン8に対する押圧操作力を受けて当該押しボタン8がストッパー3を後方に押圧し得るように構成されている。このため、押しボタン8の操作により、ストッパー3を前位置(M)から後位置(N)に移動させることができ、これに伴ってロック板4の凸部43とストッパー3の係合孔331との係合関係を簡単に解除させることが可能になっている。
スプリング支持部であるフック32が、左右方向に延びる軸部31に対して後方に突出したものである。このため、フック32は、ストッパー3の軸部31回りの回転に連動して好適に上下動し得るものなっている。
ロック板4における先端部41の前面411が、外方に向かって漸次後側に位置するように形成されている。このため、ロック板4がロック解除位置(P)からロック位置(O)に遷移するときに、緩衝材等の存在によってロック板4が扉本体Iと不適切に係り合うような不具合が生じにくいものとなっている。
ストッパー3の下端部に前後方向に貫通した係合孔331が設けられている。ロック板4に係合孔331に係合し得る凸部43が形成されている。そして、ロック板4がロック位置(O)にあるときに、前位置(M)におけるストッパー3の係合孔331に、ロック板4の凸部43が前側から係合し得るようになっている。このため、使用者によるストッパー3に対する押圧操作を受けて、ロック板4を好適にロック解除位置(P)に遷移させることができるものとなっている。
カムロック錠6が、ベース1に一体に設けられたシリンダー61と、このシリンダー61内に回転可能に配され前側に鍵挿入部621が設けられたカムロック錠本体62と、このカムロック錠本体62と一体的に回動し得る押圧板63とを備えたものである。そして、ロック板4が、押圧板63によって下側から上側に向かって押圧され得る被押圧部44を備えている。このため、カムロック錠6を操作することのみによって、扉本体Iを閉止位置に位置させた状態でロック板4をロック位置(O)に位置させることができるものとなっている。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
収納体はどのようなものであってもよく、防災キャビネットに限られるものではない。また、収納体を構成する収納体本体や開閉体もキャビネット本体や扉本体に限られるものではない。例えば、開閉体が、引き出しや蓋を構成するようなものであってもよい。
ベースは、開閉体に対して溶接により取り付けられたものであってもよい。
ストッパーに設けられたスプリング支持部は、フックに限られるものではなくスプリングの一端を支持し得るものであればどのようなものであってもよい。
上述した実施形態で示した防災キャビネットは、エレベータ内のコーナー領域に設置するタイプのものであるが、コーナー領域以外の場所に設置し得る形状のものであってもよい。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。