JP6989823B2 - 繊維材料の製造方法及び複合材料の製造方法 - Google Patents

繊維材料の製造方法及び複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースナノファイバーを用いた繊維材料の製造方法及び複合材料の製造方法に関する。
近年、天然セルロース繊維をナノサイズに解繊したセルロースナノファイバーが注目されている。天然セルロース繊維は、木材などのパルプを原料とするバイオマスであって、これを有効利用することによって、環境負荷低減が期待される。
セルロースナノファイバーは、水分散液として市場に提供されているが、エラストマーや合成樹脂との複合化のための加工が困難であった。セルロースナノファイバーは、水分散液から水を除去する乾燥工程において水素結合を形成して凝集するため、複合化過程において、セルロースナノファイバーが高度に解繊された状態で存在できず、複合材料をセルロースナノファイバーによって十分に補強することができなかった。
そこで、セルロースナノファイバー水分散液とゴムラテックスまたは樹脂エマルジョンとを混合する方法が提案された(特許文献1,2参照)。
しかしながら、これらの方法で製造された複合材料は、ゴムラテックスまたは樹脂エマルジョンの特性に影響されることがあった。また、ゴムラテックスまたは樹脂エマルジョンとして市場に流通していないゴムや樹脂への適用ができなかった。
特開2015-98576号公報 特開2016-29169号公報
本発明の目的は、セルロースナノファイバーを複合化するための加工性に優れた繊維材料の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、当該繊維材料を用いた複合材料の製造方法を提供することにある。
[1]本発明に係る繊維材料の製造方法の一態様は、
酸化されたセルロースナノファイバーとナトリウムを含まない金属塩と水系溶媒とを混合してCNF分散液を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記CNF分散液から水系溶媒を低減して繊維前駆体を得る乾燥工程と、
前記乾燥工程で得られた前記繊維前駆体を水により洗浄して前記繊維前駆体より前記セルロースナノファイバー由来のナトリウム元素量が低減した繊維材料を得る洗浄工程と、を含み、
前記金属塩に用いられる金属は、ナトリウムよりイオン化傾向の低い金属であることを特徴とする。
[2]前記繊維材料の製造方法の一態様において、
X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記洗浄工程後の前記繊維材料のナトリウム元素量が0atm%を超え0.80atm%未満であることができる。
[3]前記繊維材料の製造方法の一態様において、
X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記洗浄工程後の前記繊維材料のナトリウム元素量が前記洗浄工程前の前記繊維前駆体のナトリウム元素量の1/1000以上1/10以下であることができる。
[4]前記繊維材料の製造方法の一態様において、
前記CNF分散液における前記金属塩の前記セルロースナノファイバーに対する質量比が0.1倍~2倍であることができる。
[5]本発明に係る複合材料の製造方法の一態様は、
前記繊維材料の製造方法で得られた前記繊維材料中の水分量を調節して所定量の水を含む膨潤繊維材料を得る膨潤工程と、
前記膨潤工程で得られた前記膨潤繊維材料と高分子物質とを混合して複合材料を得る混練工程と、
をさらに含み、
前記膨潤繊維材料における前記水の前記セルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍~4倍であることを特徴とする。
[6]前記複合材料の製造方法の一態様において、
前記高分子物質はエラストマーであり、
前記混練工程は、ロール間隔が0.1mm~0.5mmでロール温度が0℃~50℃に設定されたオープンロールを用いて薄通しする工程を含むことができる。
[7]前記複合材料の製造方法の一態様において、
前記高分子物質は、熱可塑性樹脂であり、
前記混練工程は、前記熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲の混練温度で混練する工程を含むことができる。
[8]前記複合材料の製造方法の一態様において、
前記高分子物質は、熱硬化性樹脂であり、
前記混練工程は、前記熱硬化性樹脂の主剤に前記繊維材料を混合し、前記主剤の軟化点より20℃低い温度から前記軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度で混練した後、さらに硬化剤を混合する工程を含むことができる。
本発明によれば、セルロースナノファイバーを複合化するための加工性に優れると共に複合材料に用いた場合にも水により膨潤することを抑制することができる繊維材料の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該繊維材料を用いた複合材料の製造方法を提供することができる。
一実施の形態に係る繊維材料の製造方法を示すフローチャートである。 一実施の形態に係る複合材料の製造方法を示すフローチャートである。 一実施の形態に係る複合材料の製造方法における混練工程を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る複合材料の製造方法における混練工程を模式的に示す図である。 一実施の形態に係る複合材料の製造方法における混練工程を模式的に示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.繊維材料の製造方法
図1を用いて、一実施の形態に係る繊維材料の製造方法について説明する。図1は、一実施の形態に係る繊維材料の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る繊維材料の製造方法は、酸化されたセルロースナノファイバーとナトリウムを含まない金属塩と水系溶媒とを混合してCNF分散液を得る混合工程(S10)と、混合工程(S10)で得られたCNF分散液から水系溶媒を低減して繊維前駆体を得る乾燥工程(S12)と、乾燥工程(S12)で得られた繊維前駆体を水により洗浄して繊維前駆体より前記セルロース由来のナトリウム元素量が低減した繊維材料を得る洗浄工程(S14)と、を含む。
1-1.混合工程
混合工程(S10)は、酸化されたセルロースナノファイバーと金属塩と水系溶媒とを混合してCNF分散液を得る工程である。ここで、CNF分散液における金属塩のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.1倍~2倍であり、繊維材料に含まれる水のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍~4倍であることができる。
混合工程(S10)は、原料となるセルロースナノファイバー水分散液に金属塩を投入し、公知の攪拌機例えば、プロペラ式攪拌機、ロータリー式攪拌機、三本ロールなどを用いて混合することができる。セルロースナノファイバー水分散液と金属塩が溶解または分散した金属塩分散液とを混合してもよい。
1-1-1.セルロースナノファイバー水分散液
混合工程(S10)における原料となるセルロースナノファイバー水分散液は、第一工業製薬社などから市場で入手できるものを用いることができる。一般に、市場で入手できるセルロースナノファイバーは、例えば2%濃度等で水溶液中に分散されている状態で提供される。
セルロースナノファイバー水分散液は、例えば天然セルロース繊維を酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、酸化セルロース繊維を微細化処理する微細化工程と、を含む製造方法によって得ることができる。ここでは、酸化工程を用いたセルロースナノファイバー水分散液の製造方法について説明するが、他の製造方法で得られたものでもよい。
まず、酸化工程は、原料となる天然セルロース繊維に対して水を加え、ミキサー等で処理して、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。
ここで、天然セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ、綿系パルプ、バクテリアセルロース等が含まれる。より詳細には、木材パルプとしては、例えば針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等を挙げることができ、綿系パルプとしては、コットンリンター、コットンリントなどを挙げることができ、非木材系パルプとしては、麦わらパルプ、バガスパルプ等を挙げることができる。天然セルロース繊維は、これらの少なくとも1種以上を用いることができる。
天然セルロース繊維は、セルロースミクロフィブリル束とその間を埋めているリグニン及びヘミセルロースから構成された構造を有する。すなわち、セルロースミクロフィブリル及び/又はセルロースミクロフィブリル束の周囲をヘミセルロースが覆い、さらにこれをリグニンが覆った構造を有していると推測される。リグニンによってセルロースミクロフィブリル及び/又はセルロースミクロフィブリル束間は、強固に接着しており、植物繊維を形成している。そのため、植物繊維中のリグニンはあらかじめ除去されていることが、植物繊維中のセルロース繊維の凝集を防ぐことができるという点で好ましい。具体的には、植物繊維含有材料中のリグニン含有量は、通常40質量%程度以下、好ましくは10質量%程度以下である。また、リグニンの除去率の下限は、特に限定されるものではなく、0質量%に近いほど好ましい。なお、リグニン含有量の測定は、Klason法により測定することができる。
セルロースミクロフィブリルとしては、幅4nm程のセルロースミクロフィブリルが最小単位として存在し、これをシングルセルロースナノファイバーと呼ぶことができる。本発明において、「セルロースナノファイバー」とは、天然セルロース繊維及び/又は酸化セルロース繊維をナノサイズレベルまで解きほぐしたものであり、特に繊維径の平均値が1nm~200nmであることができ、さらに1nm~150nmであることができ、特に1nm~100nmのセルロースミクロフィブリル及び/又はセルロースミクロフィブリル束であることができる。すなわち、セルロースナノファイバーは、シングルセルロースナノファイバー単体、またはシングルセルロースナノファイバーが複数本集まった束を含むことができる。
セルロースナノファイバーのアスペクト比(繊維長/繊維径)は、平均値で、10~1000であることができ、さらに10~500であることができ、特に100~350であることができる。
なお、セルロースナノファイバーの繊維径及び繊維長の平均値は、電子顕微鏡の視野内のセルロースナノファイバーの少なくとも50本以上について測定した算術平均値である。
次に、酸化工程として、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒として天然セルロース繊維を酸化処理して酸化セルロース繊維を得る。セルロースの酸化触媒として使用可能なN-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(以下、TEMPOとも表記する)、4-アセトアミド-TEMPO
、4-カルボキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO等を用いることができる。
酸化工程後、例えば水洗とろ過を繰り返す精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、スラリー中に含まれる酸化セルロース繊維以外の不純物を除去することができる。酸化セルロース繊維を含む溶媒は、例えば水に含浸させた状態であり、この段階では酸化セルロース繊維はセルロースナノファイバーの単位まで解繊されていない。溶媒は、水を用いることができるが、例えば、水以外にも目的に応じて水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)を使用することができる。
酸化セルロース繊維は、セルロースナノファイバーの水酸基の一部がカルボキシ基を有する置換基で変性され、カルボキシ基を有する。酸化セルロース繊維は、繊維径の平均値が10μm~30μmであることができる。なお、酸化セルロース繊維の繊維径の平均値は、電子顕微鏡の視野内の酸化セルロース繊維の少なくとも50本以上について測定した算術平均値である。酸化セルロース繊維は、セルロースミクロフィブリルの束であることができる。酸化セルロース繊維は微細化工程においてセルロースナノファイバーに解繊することができる。
微細化工程は、酸化セルロース繊維を水等の溶媒中で撹拌処理することができ、セルロースナノファイバーを得ることができる。
微細化工程において、分散媒としての溶媒を水とすることができる。また、水以外の溶媒として、水に可溶な有機溶媒、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類等を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
微細化工程における撹拌処理は、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
また、微細化処理における酸化セルロース繊維を含む溶媒の固形分濃度は、例えば50質量%以下とすることができる。この固形分濃度が50質量%を超えると、分散に高いエネルギーを必要とすることになる。
微細化工程によってセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー水分散液を得ることができる。セルロースナノファイバー水分散液は、無色透明又は半透明な懸濁液であることができる。懸濁液には、表面酸化されると共に解繊されて微細化した繊維であるセルロースナノファイバーが水中に分散されている。すなわち、この分散液においては、ミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、酸化工程によるカルボキシ基の導入によって弱め、更に微細化工程を経ることで、セルロースナノファイバーが得られる。そして、酸化工程の条件を調整することにより、カルボキシ基含有量、極性、平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
このようにして得られたセルロースナノファイバー水分散液は、酸化されたセルロースナノファイバーを0.1質量%~10質量%含むことができる。また、例えば、セルロースナノファイバーの固形分1質量%に希釈した分散液であることができる。さらに、分散液は、光透過率が40%以上であることができ、さらに光透過率が60%以上であることができ、特に80%以上であることができる。分散液の透過率は、紫外可視分光硬度計を用いて、波長660nmでの透過率として測定することができる。
1-1-2.金属塩
混合工程(S10)における原料となる金属塩は、セルロースナノファイバー水分散液と混合されることで金属イオンを電離し、電離した金属イオンがセルロースナノファイバーとイオン結合することができる。
金属塩は、1価金属塩、2価金属塩及び3価金属塩の少なくとも1種を含むことができる。金属塩としては、1価金属塩及び2価金属塩が好ましい。金属塩に用いられる金属は、ナトリウムよりもイオン化傾向が低い金属である。水で洗浄する際にナトリウムイオンを水に溶かして除去するため、残しておく金属はナトリウムよりもイオン化傾向が低いものの方が効率よく除去できるからである。金属塩に用いられる金属としては、例えばマグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、銅、銀などを挙げることができる。1価金属塩としては銀を含む塩であり、例えば、硝酸銀などを挙げることができる。2価金属塩としては、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、鉛
、ニッケル、マンガン、スズなどを含む塩であり、例えば、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、などの不飽和酸金属塩モノマーを挙げることができる。3価金属塩としては鉄またはアルミニウムを含む塩であり、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化鉄(FeCl)などを挙げることができる。
CNF分散液における金属塩のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.1倍~2倍である。金属塩がセルロースナノファイバーに対する質量比で0.1倍未満であると、後述する混練工程における加工性が低下する。すなわち、混練工程でセルロースナノファイバーの凝集塊を解繊させることが困難になる。また、金属塩がセルロースナノファイバーに対する質量比で2倍を超えると、繊維材料の段階でセルロースナノファイバーと結合しなかった金属塩が析出する。析出した金属塩は、後述する混練工程でエラストマー等の物性に影響を与える可能性がある。金属塩は、さらにセルロースナノファイバーに対する質量比が0.2倍~1.5倍であることができる。
金属塩が1価金属塩である場合には、CNF分散液における1価金属塩のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.2倍~2倍であることができ、さらに0.5倍~1.5倍であることができる。金属塩が2価金属塩である場合には、CNF分散液における2価金属塩のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.1倍~2倍であることができ、さらに0.2倍~1.5倍であることができる。実験の結果、1価金属塩または2価金属塩とセルロースナノファイバーとの配合量により後述する混練工程における加工性に影響があると推測できる。
水系溶媒としては、水または水溶性成分を含有する水溶液であってもよい。
1-1-3.CNF分散液
CNF分散液は、酸化されたセルロースナノファイバーと金属塩と水系溶媒とが混合されたものであり、水溶性の金属塩はイオン化して金属イオンがセルロースナノファイバーに結合し、非水溶性の金属塩も金属イオンがセルロースナノファイバーと結合すると考えられる。CNF分散液は、金属塩を含んでいない原料としてのセルロースナノファイバー水分散液と区別するために「CNF分散液」と表記する。金属イオンは、セルロースナノファイバーのカルボキシ基とイオン結合しているNaと置換してイオン結合している。CNF分散液中において水溶性の金属イオンは複数の金属イオンが寄り集ってイオンクラスターを形成していると考えられる。そして、そのイオンクラスターにセルロースナノファイバーが結合していると考えられる。また、非水溶性の金属塩を用いても複合材料の物性が水溶性の金属塩と同様に向上していることから、金属イオンがイオンクラスターを形成し、そのイオンクラスターにセルロースナノファイバーが結合していると考えられる。イオンクラスターの大きさは、数十nm~数百nmである。
水溶性の金属イオンは、CNF分散液中において解繊された状態のセルロースナノファイバーに結合して全体に分散している。
1-2.乾燥工程
乾燥工程(S12)は、混合工程(S10)で得られたCNF分散液から水系溶媒を低減して繊維材料を得る工程である。CNF分散液から水系溶媒を低減する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば加熱によって乾燥してもよい。
例えば、CNF分散液を容器(バット等)に流し込み、その容器をオーブンに入れて30℃~100℃で水系溶媒を蒸発させる。
1-2-1.繊維前駆体
乾燥工程(S12)で得られた繊維前駆体は、金属塩由来の金属が結合したセルロースナノファイバーを含む。
繊維前駆体は、混練工程における加工性を考慮して粉末状に粉砕することができる。乾燥工程(S12)で得られた繊維前駆体は、次の洗浄工程(S14)の作業性の点から水系溶媒を含まないことが好ましいが、洗浄工程(S14)における繊維前駆体の取り扱いが可能な範囲で水系溶媒を含んでいてもよい。繊維前駆体の水分量は例えば50質量%以下であることができる。
水系溶媒が低減されたことにより、繊維前駆体中のセルロースナノファイバーは再びセルロースナノファイバー表面で水素結合が形成されるため、再凝集して例えば水系溶媒がなくなればシート状の固形物となる。繊維前駆体をこのままエラストマーなどに混合してもセルロースナノファイバーに解繊されることはなく、粉砕された固形物がエラストマーに分散されるだけである。
繊維前駆体をエラストマー等に混合して、ナノサイズの繊維であるセルロースナノファイバーの補強等の効果を得るためには、CNF分散液中と同様にセルロースナノファイバーが一本一本にほぐれた状態で複合材料中に分散させる必要がある。
1-3.洗浄工程
洗浄工程(S14)は、乾燥工程(S12)で得られた繊維前駆体を水により洗浄して繊維材料を得る工程である。洗浄工程(S14)で得られた繊維材料は、繊維前駆体よりナトリウム元素量が低減している。
繊維前駆体中のセルロースナノファイバーは例えばTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシルの略称)による触媒酸化処理によりカルボキシ基に酸化されている。TEMPO酸化により得られたセルロースナノファイバーはカルボキシ基のナトリウム塩を高密度で生成することにより繊維間に水中で強大な静電的斥力と浸透圧効果が作用することで容易に解繊処理をすることができる。しかしナトリウム塩は高い親水性を示すため、繊維前駆体をこのまま含む複合材料は水を吸収して膨潤しやすく、水による膨潤で体積変化が生じる。複合材料の用途として体積変化が小さいことを要求される製品であると、セルロースナノファイバーと水との接触を避ける必要がある。
そこで洗浄工程(S14)により繊維前駆体からナトリウム元素を分離してナトリウム元素の含有量を低減させることにより、複合材料にしたときの膨潤しやすさを抑制する。
洗浄工程(S14)は、繊維前駆体と水とを接触させて、繊維前駆体からナトリウムイ
オンを水中に溶け出させ、ナトリウムイオンが溶け出した水を繊維前駆体から分離することにより行う。例えば、繊維前駆体を水に入れて撹拌し、撹拌された液体を吸引濾過して繊維前駆体を回収する工程を複数回繰り返してもよいし、撹拌された液体中に繊維前駆体が沈殿したら上澄みの水を取り除く工程を繰り返してもよい。また繊維前駆体を流水で洗浄してもよい。洗浄工程(S14)に用いる水の量は繊維前駆体の体積よりも多いことが好ましい。例えば、セルロースナノファイバーの質量に対して水の質量を50倍で洗浄し、超音波による混合を1時間程度行い、上澄み液を捨てて同様の洗浄を4回繰り返すことができる。
洗浄工程(S14)により洗浄された繊維材料をさらに乾燥させてもよい。繊維材料の乾燥は、上述した乾燥工程(S12)と同様の方法を採用することができる。
1-3-1.繊維材料
洗浄工程(S14)後に得られた繊維材料は、ナトリウム元素の量が繊維前駆体と比べて低減されている。ナトリウム元素量が低減された繊維材料を複合材料の製造方法に用いることにより、セルロースナノファイバーを複合化するための加工性に優れ、しかも製造された複合材料が水により膨潤することを抑制することができる。繊維材料及び繊維前駆体におけるナトリウム元素の量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって測定することができる。
X線光電子分光法(XPS)によって測定した洗浄工程(S14)後の繊維材料のナトリウム元素量は0atm%を超え0.80atm%未満であることができる。
X線光電子分光法(XPS)によって測定される洗浄工程(S14)後の繊維材料のナトリウム元素量が洗浄工程(S14)前の繊維前駆体のナトリウム元素量の1/1000以上1/10以下であることができる。
X線光電子分光装置は日本電子社製の「マイクロ分析用X線光電子分光装置JPS-9200を用いて測定する。具体的には、繊維材料の試料を、カーボンテープを用いて金属板中に固定した。測定X線源としてはAlα線(出力105W)を用い、Hybrid測定モードにて、0.9mm×0.6mmの分析領域を測定した。ナトリウム元素量は、得られた試料のXPSスペクトルにて検出される全元素のスペクトルのピーク面積に対する、Na(1s)スペクトルのピーク面積から求められる。Na(1s)スペクトルの結合エネルギーは、結合状態にもよるが、通常0~1000eVにて観察される。この内、ナトリウム元素に由来するピークは1076eV付近に観測される。
2.複合材料の製造方法
図2を用いて、一実施の形態に係る複合材料の製造方法について説明する。図2は、一実施の形態に係る複合材料の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る複合材料の製造方法は、上述した繊維材料の製造方法に加えて、洗浄工程(S14)で得られた繊維材料中の水分量を調節して所定量の水を含む膨潤繊維材料を得る膨潤工程(S15)と、膨潤工程(S15)で得られた膨潤繊維材料と高分子物質とを混合して複合材料を得る混練工程(S16)と、をさらに含む。膨潤繊維材料における水のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍~4倍である。
例えば、図2に示すように、複合材料の製造方法は、混練工程(S16)の後に、複合材料から水分を除去する脱水工程(S18)をさらに含んでもよい。
2-1.膨潤工程
膨潤工程(S15)は、洗浄工程(S14)で得られた繊維材料中の水分量を調節して所定量の水を含む膨潤繊維材料を得る工程である。膨潤工程(S15)は、乾燥して水を含まない繊維材料に水を吸収させて所定量になるまで膨潤させる工程であってもよいし、洗浄工程(S14)後の所定量を超える水を含む繊維材料から所定量になるまで水を蒸発させる工程であってもよい。
繊維材料に所定量の水を含ませることにより、繊維材料中で強固に結合したセルロースナノファイバー同士の剥離性を向上させる。繊維材料に吸収された水によってセルロースナノファイバーに結合した金属が再びイオン化し、セルロースナノファイバー同士の水素結合及び金属イオンクラスターとのイオン結合を弱めると考えられる。
例えば、膨潤工程(S15)は、繊維材料と所定量の水を密閉容器に入れ、所定時間加熱して保持する。例えば、70℃で1時間程度である。密閉容器内で飽和水蒸気となった水が繊維材料に吸収され、繊維材料が膨潤する。密閉容器はガラス容器を用いることができ、また、オートクレーブ用の装置を用いることができる。
膨潤工程(S15)において繊維材料に含ませる所定量の水は、繊維材料に含まれるセルロースナノファイバーに対する質量比で0.5倍~4倍であることができる。水のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍未満であると、混練工程(S16)における加工性が低下する。水のセルロースナノファイバーに対する質量比が4倍を超えると、エラストマー等に対して混ざりにくくなり、加工時間が長くなる。膨潤工程(S15)において繊維材料に含ませる所定量の水は、さらにセルロースナノファイバーに対する質量比が1倍~3.5倍であることができ、特にセルロースナノファイバーに対する質量比が1倍~3倍であることができる。
膨潤工程(S15)は、混練工程における加工性及び解繊性を向上させるためのものである。そのため、膨潤工程(S15)を経なくても混練工程に用いる際の膨潤繊維材料が所定量の水を含んでいればよく、例えば、洗浄工程(S14)後の乾燥により所定の水分量になるまで水を除去してもよい。膨潤工程(S15)によって得られた所定量の水を含む繊維材料は膨潤繊維材料という。
2-1-1.膨潤繊維材料
膨潤繊維材料は、不飽和酸金属塩由来の金属が結合したセルロースナノファイバーと、水と、を含む。膨潤繊維材料に含まれる水のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍~4倍である。
膨潤繊維材料に含まれる水によって繊維材料中で強固に結合したセルロースナノファイバー同士の剥離性を向上させる。そのため、膨潤繊維材料を用いることで後述する混練工程における加工性及び解繊性を向上させることができる。
膨潤繊維材料に含まれる水は、膨潤繊維材料に含まれるセルロースナノファイバーに対する質量比で0.5倍~4倍である。水のセルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍未満であると、混練工程(S16)における加工性が低下する。水のセルロースナノファイバーに対する質量比が4倍を超えると、エラストマー等に対して混ざりにくくなり、加工時間が長くなる。
2-2.混練工程
混練工程(S16)は、複合材料のマトリクスとなる高分子物質によって条件が異なる。エラストマー、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂についてそれぞれ説明する。
2-2-1.エラストマーを用いた混練工程
図3~図5を用いて、繊維材料をエラストマーと混練する混練工程(S16)について説明する。図3~図5は、一実施の形態に係る複合材料の製造方法を模式的に示す図である。混練工程(S16)は、ロール間隔が0.1mm~0.5mmでロール温度が0℃~50℃に設定されたオープンロールを用いて薄通しする薄通し工程を含むことを特徴とする。
まず、薄通し工程の前に、図3に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行なうことができ、エラストマー30の分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマー30のフリーラジカルがセルロースナノファイバーと結びつきやすい状態となる。エラストマー30としては、天然ゴム、合成ゴム及び熱可塑性エラストマーを用いることができる。
次に、図4に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、膨潤繊維材料80を徐々に投入し、混練して中間混合物を得る工程を行うことができる。ここで膨潤繊維材料80はセルロースナノファイバーの他に、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤、受酸剤などを含むことができる。これらのセルロースナノファイバー以外の配合剤は、混合の過程の適切な時期にエラストマー30に投入することができる。
図3及び図4の中間混合物を得る工程については、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
さらに、図5に示すように、薄通し工程を行うことができる。薄通し工程は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール2を用いて、0℃~50℃で薄通しを行って未架橋の複合材料50を得る工程を行うことができる。この工程では、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0.1mm~0.5mmの間隔に設定し、図2で得られた中間混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回~複数回行なうことができる。薄通しの回数は、例えば1回~10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05~3.00であることができ、さらに1.05~1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このように狭いロール間から押し出された複合材料50は、エラストマーの弾性による復元力で図5のように大きく変形し、その際にエラストマーと共にセルロースナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm~500μmのシート状に分出しされる。
この薄通し工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0℃~50℃に設定して行うことができ、さらに5℃~30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。複合材料50の実測温度も0℃~50℃に調整されることができ、さらに5℃~30℃に調整されることができる。
このような温度範囲に調整することによって、エラストマーの弾性を利用してセルロースナノファイバーを解繊し、解繊されたセルロースナノファイバーを複合材料50中に分散することができる。
この薄通し工程における高い剪断力により、エラストマーに高い剪断力が作用し、膨潤繊維材料中のセルロースナノファイバーがエラストマーの分子に1本ずつ引き抜かれるよ
うに相互に分離し、エラストマー中に分散される。繊維材料の膨潤によってセルロースナノファイバーに結合した金属がイオン化し、セルロースナノファイバー同士の結合力を弱めているからである。特に、エラストマーは、弾性と、粘性と、を有するため、セルロースナノファイバーを解繊し、分散することができる。そして、セルロースナノファイバーの分散性および分散安定性(セルロースナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた複合材料50を得ることができる。
より具体的には、オープンロールでエラストマーとセルロースナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがセルロースナノファイバーの相互に侵入する。セルロースナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマーの分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマーの分子の移動に伴ってセルロースナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたセルロースナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
次に、熱可塑性樹脂を用いた場合の複合材料の製造方法について説明する。
2-2-2.熱可塑性樹脂を用いた混練工程
高分子物質として熱可塑性樹脂を用いた混練工程について説明する。混練工程は、熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲の混練温度で混練する工程を含むことができる。
混練工程は、熱可塑性樹脂を溶融して成形加工するための装置、例えば、オープンロール、密閉式混練機、押出機、射出成形機などを用いることができる。例えば、コニカル型スクリュウを有する押出成形機や、図3~図5に示すようなオープンロール2を用いて行うことができる。
混練工程は、例えば、熱可塑性樹脂と膨潤繊維材料とを第1温度で混練して第1の混合物を得る第1温度混合工程と、第1の混合物を第2温度に温度調節する低温化工程と、前記第1の混合物を前記第2温度で混練する低温混練工程と、を含むことができる。第1温度は、第2温度より高い温度であり、第2温度は、熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における複合材料の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲である。
2-2-2-1.第1温度混合工程
第1温度混合工程は、熱可塑性樹脂と膨潤繊維材料とを第1温度で混練して第1の混合物を得る。
第1温度混合工程は、熱可塑性樹脂に予定した配合量の膨潤繊維材料を投入し終わるまでの工程であり、好ましくは、作業者が目視してセルロースナノファイバーが熱可塑性樹脂の全体に混合されたことを認識するまでの工程であることができる。前述したエラストマーの場合と同様に図3及び図4のように実施することができる。
第1温度は、熱可塑性樹脂の融点(Tm)より高い温度である。第1温度は、第2温度より高い温度である。第1温度は、熱可塑性樹脂の融点(Tm)より25℃以上高い温度であることができる。第1温度は、熱可塑性樹脂の融点(Tm)より25℃以上70℃以下高い温度であることができ、融点(Tm)より25℃以上60℃以下高い温度であることができる。第1温度は、第1温度混合工程中の熱可塑性樹脂の実際の温度であり、加工
装置の温度ではない。熱可塑性樹脂の成形加工温度は、一般的に、加工装置の例えば押出機や射出成形機であれば加熱筒の設定温度で表わされるが、通常、混練時のせん断発熱によって加工装置の設定温度よりも実際の樹脂の温度は高温になる。第1温度は加工中の温度であるため、できるだけ実際の樹脂の表面温度を測定することが望ましいが、測定できない場合は加工装置から第1の混合物を取り出した直後の樹脂の表面温度を測定してその温度とすることができる。第1温度は、樹脂を加工装置に投入した直後の温度ではなく、膨潤繊維材料を投入し終わって混合しているときの温度である。
本発明において「融点(Tm)」は、示差走査熱量測定(DSC)を用いてJIS K7121に準拠して測定した融解ピーク値をいう。
第1温度混合工程で得られた第1の混合物中におけるセルロースナノファイバーは、原料と同じ凝集体のまま全体に分散して存在する。したがって、第1の混合物は、その材料中に欠陥を有することになり、例えば引張試験などを行うと、原料の熱可塑性樹脂単体のときよりも切断時伸びが著しく低下する。
2-2-2-2.低温化工程
低温化工程は、第1の混合物を第2温度に温度調節する。
ここで第2温度について説明する。
第1温度混合工程における一般的な加工設定温度すなわち加工装置の設定温度は、熱可塑性樹脂を短時間で十分に溶融させ、迅速に加工するために、熱可塑性樹脂の加工設定温度として推奨されている温度よりも高い温度である。したがって、熱可塑性樹脂は、その融点付近で加工は行なわない。加工時の熱可塑性樹脂の表面温度は、そのような加工設定温度よりも高くなることは前述のとおりである。
特に、熱可塑性樹脂にセルロースナノファイバーのような充填剤が配合されている場合には、その加工設定温度は一般的な加工設定温度よりもさらに高い温度で加工を行うことになるのが通常である。また、セルロースナノファイバーの配合量が増えると剪断による発熱によって、第1温度混合工程における第1の混合物の温度が急激に上昇する。
したがって、低温混練工程を実施するためには、第1の混合物の温度を下げる必要がある。混練を行うと第1の混合物の温度は上昇するので、混練を続けながら温度を下げることが困難な場合がある。そのため、低温化工程は、混練後、混練機を所定時間停止し、または混練機から第1混合物を取り出して、第2温度まで放冷することができる。また、第1の混合物を扇風機、スポットクーラー、チラー等の冷却機構などを備えた冷却装置を用いて積極的に冷却することができる。積極的に冷却することで加工時間を短縮することができる。
第2温度は、この製造方法に用いる熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における複合材料の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲である。
発明者等の研究により、複合材料について、動的粘弾性試験(以下、DMA試験という。)を行うと、原料の熱可塑性樹脂とは異なる挙動を示すことがわかった。原料の熱可塑性樹脂は、融点(Tm)付近で貯蔵弾性率(E’)が急激に低下し、流動する。しかし、セルロースナノファイバーを混合した複合材料は、所定量以上のセルロースナノファイバーを分散させることにより、融点を超えても貯蔵弾性率(E’)がほとんど低下しない平坦領域、すなわちエラストマーのようなゴム弾性領域が発現することがわかった。
低温混練工程は、融点付近の温度からこの平坦領域の一部までを利用して、凝集しているセルロースナノファイバーをほぐすように解繊して、熱可塑性樹脂中に分散させるものである。第2温度の範囲を設定するためには、その配合の複合材料のサンプルについてあらかじめDMA試験を行う必要がある。具体的には以下のとおりである。
まず、所定の配合で前記2-2-2-1の「第1温度混合工程」を実施して第1の混合物を得る。次に、第1の混合物に対し、マトリクスとなる熱可塑性樹脂の融点付近の温度(例えば融点の+10~+20℃の加工できる範囲)を混練温度として後述する低温混練工程と同様の工程を実施して複合材料サンプルを得る。このサンプルにおいてセルロースナノファイバー等は解繊されて分散していることが望ましいが、解繊が不十分であっても変曲点や平坦領域発現温度付近で明らかな特性の変化が確認できる。この複合材料サンプルについてDMA試験を行い、貯蔵弾性率(E’)と温度(℃)との関係をグラフ化して平坦領域が確認されればこのDMA試験結果を用いる。又、この複合材料サンプルでは平坦領域が確認できなければ、変曲点と思われる温度付近を第2温度として上記方法で複合材料サンプルを新たに得て、DMA試験を行って同様にグラフ化する。このような作業を平坦領域が明確に発現するまで繰り返す。
こうして得られた変曲点の温度より高い温度であって、かつ複合材料サンプルの粘度が低くなって流れ出さない程度の温度、例えば平坦領域発現温度の1.06倍の温度を混練温度の上限とする。平坦領域発現温度の1.06倍の温度までであれば、あらゆる熱可塑性樹脂でセルロースナノファイバーの凝集塊を解繊することができると考えられる。
加工領域発現温度から平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの温度範囲であれば、第2の混合物は適度な弾性と適度な粘性とを有しているため、加工が可能であって、かつ、セルロースナノファイバーを解繊することができる。本発明者等の研究により、融点が高くなるにつれて平坦領域発現温度からその1.06倍の温度までの温度幅が広くなる傾向がわかっている。
低温混練工程の混練温度の下限は、変曲点における変曲点温度以上としてもよい。第2の混合物の加工がより容易になるからである。なお、セルロースナノファイバーの配合量を変えることにより、平坦領域発現温度及びその1.06倍の温度はわずかに異なる温度となる。
本発明者らの研究によって、変曲点温度よりわずかに低い温度から平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲を混練温度として低温混練工程を実施することで、凝集しているセルロースナノファイバーをほぐすように解繊して、熱可塑性樹脂中に分散させることができることを確信するに至った。
第2温度は、熱可塑性樹脂の加工温度として採用されない比較的低い温度であり、特に、第2の混合物の加工温度としてはこれまで採用されなかった低い温度範囲となる。
第2温度まで温度が下がった第1の混合物は、例えば、第2温度に設定されたオーブン内に入れ、第2温度の範囲で所定温度に維持することができる。混練機から取り出された第1の混合物は降温が進行するので、加工品質の安定化のためである。
また、第1の混合物として市販のセルロースナノファイバーが入ったペレットを用いる場合には、第1温度混合工程と低温化工程との間に再加熱工程が必要となる。再加熱工程は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱することにより行うことができる。
2-2-2-3.低温混練工程
低温混練工程は、第1の混合物を第2温度で混練する。
第1の混合物としては、前記2-2-2-1の第1温度混合工程によって得られたものを用いることができる。
この工程では、例えば、ロール温度以外の条件をエラストマーを用いた図5と同様に、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0mm~0.5mmの間隔に設定し、第1温度混合工程で得られた第1の混合物をオープンロール2に投入して混練を行なうことができる。
このように狭いロール間から押し出された第1の混合物は、第2温度が適度な弾性を有し、かつ、適度な粘性を有している温度範囲であることから、熱可塑性樹脂の弾性による復元力で大きく変形し、その際の熱可塑性樹脂の変形と共にセルロースナノファイバーが大きく移動することができる。
第2温度は、低温混練工程における第1の混合物の表面温度であり、加工装置の設定温度ではない。第1温度でも説明したように、第2温度もできるだけ実際の樹脂の表面温度を測定することが望ましいが、測定できない場合は加工装置から複合材料を取り出した直後の樹脂の表面温度を測定してその温度から加工中の第2温度とすることができる。
オープンロール2の場合は、非接触温度計を用いて表面温度を測定することができ、非接触温度計40の配置は、ニップを通過した直後の位置以外であればよく、好ましくは第1のロール10の上方である。ニップを通過した直後は、第1の混合物の温度が急激に変化する不安定な温度であるため、避けた方が望ましい。
また、密閉式混練機や押出機などのように、低温混練工程における第1の混合物の表面温度を測定することができない場合には、混練した後装置から取り出した直後の複合材料の表面温度を測定し、第2温度の範囲内にあることを確認することができる。
低温混練工程は、第2温度において、例えば4分間~20分間であることができ、さらに5分間~12分間であることができる。第2温度での混練時間を十分にとることによって、セルロースナノファイバーの解繊をより確実に実施することができる。
第1の混合物は、セルロースナノファイバーが配合されたことによって加工性が低下しており、これを混練することによるせん断発熱によって、第1の混合物の温度は装置の設定温度よりもさらに高くなる。そのため、低温混練工程に適した第2温度範囲に第1の混合物の表面温度を維持するために、オープンロールであればロールの温度を調節して第1の混合物の温度が高くならないように、積極的に冷やすように温度調節しなければならない。これは密閉式混練機、押出機または射出成形機などにおいても同様であり、装置の加工設定温度を積極的に冷やすように調節することで第1の混合物の表面温度を第2温度範囲に一定時間維持することができる。例えば、押出機においては材料を供給する付近においては加熱筒の設定温度を一般的な加工温度よりも高い温度に設定し、他のゾーンを第2温度よりも低温に設定し、加工中の樹脂の表面温度が第2温度になるように調節することができる。
低温混練工程によって得られた複合材料は、例えば、金型内に投入されてプレス加工することができ、あるいは、例えば、さらに押出機を用いてペレットに加工するなどして、公知の熱可塑性樹脂の加工方法を用いて所望の形状に成形することができる。
低温混練工程において得られた剪断力により、熱可塑性樹脂に高い剪断力が作用し、凝集していたセルロースナノファイバーが熱可塑性樹脂の分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、解繊され、熱可塑性樹脂中に分散される。繊維材料の膨潤によってセルロースナノファイバーに結合した金属がイオン化し、セルロースナノファイバー同士の結合力を弱めているからである。特に、熱可塑性樹脂は、第2温度範囲における弾性と、粘性と、を有するため、セルロースナノファイバーを解繊し、分散することができる。そして、セルロースナノファイバーの分散性および分散安定性(セルロースナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた複合材料を得ることができる。
2-2-3.熱硬化性樹脂を用いた混練工程
高分子物質として熱硬化性樹脂を用いた混練工程について説明する。ここでは熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの主剤および硬化剤を用いた2液混合型の樹脂について説明するがこれに限定するものでない。
混練工程は、熱硬化性樹脂の主剤に膨潤繊維材料を混合し、主剤の軟化点より20℃低い温度から軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度で混練した後、さらに硬化剤を混合する工程を含むことができる。主剤の軟化点付近の温度であれば、完全に液体状になっておらず、試験結果によれば軟化点より20℃低い温度から軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度において適度な弾性及び粘性を有することができる。
エポキシ樹脂の場合は、主剤として例えばビスフェノールA型などの室温では固形でありかつ軟化点100℃以下のものを用いることができる。主剤の軟化点は、環球法により求めることができる。環球法は、例えば、JIS K 7234に規定される軟化点試験方法を用いることができる。また、エポキシ樹脂の硬化剤として例えばアミン系、アミドアミン系など室温で液状のものを用いることができる。
フェノール樹脂の場合は、主剤として例えばノボラック樹脂を用いることができ、硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることができる。主剤の軟化点は、環球法により求めることができる。
室温では固形でありかつ軟化点が100℃以下の主剤であれば、混練加工性に優れ、特に、混練時にせん断力を与えることで主剤の弾性による復元力を利用して加工しやすい。
混練工程は、例えば、オープンロール、密閉式混練機、押出機などを用いることができる。例えば、図3~図5に示すようなオープンロール2を用いて行うことができる。
基本的な手順はエラストマーの場合と同様であるが、ここでは、エポキシ樹脂の場合について、ビスフェノールA型主剤(室温では固形で軟化点64℃)を例に説明する。まず、第1のロール10は60~70℃及び第2のロール20は50~60℃の温度として図3の素練りを行う。次に図4のように主剤に膨潤繊維材料を徐々に投入し混合する。その後、図5に示すような薄通し工程を、例えば、ロール間隔dを0mm~0.5mmに設定して行うことができる。ロールの表面速度比はエラストマーの場合と同様である。エラストマーを用いた薄通し工程と同様に、主剤の適度な弾性と適度な粘性を利用してセルロースナノファイバーを解繊するためである。
ロール温度を主剤の軟化点付近で制御し、且つロール10とロール20に約10℃の温度差を持たせているのは、主剤の加工性による。このような主剤を用いた場合、ロールに付着しやすいため、2本のロール10,20が同じ温度の場合には両方のロール10,20に単純に分かれて、付着する。そのため、主剤にせん断力が掛かりにくく、セルロースナノファイバーが解繊されにくい。そこで、このような温度差を設けることにより、低温
側の第2のロール20に主剤が巻き付くことができ、主剤に所望のせん断力を与えることができ、その結果、セルロースナノファイバーを有効に解繊することができる。
また、この混練工程において、膨潤繊維材料の水分によってセルロースナノファイバーに結合した金属がイオン化している。そのため、金属イオンによりセルロースナノファイバー同士の結合力を弱めている状態で混練のせん断力を付加し、さらに薄通しの工程における主剤の弾性による復元力を利用してセルロースナノファイバーの間隔を広げることが可能になり、セルロースナノファイバーの均一な解繊、分散が行われる。
硬化剤を混合する工程は、脱水工程の後に行うことが望ましい。加工後の製品の品質向上のためである。
主剤とセルロースナノファイバーとの混練後、さらに、硬化剤(例えば、ポリアミドアミン)を添加して、再度、主剤の場合と同様の方法、条件で混錬し、硬化剤を均一に混合することができる。硬化剤の混合方法も主剤の混練方法と同様に行うことで、主剤中のセルロースナノファイバーの解繊状態を悪化せず、均一な混合、分散状態を保持する。その後、成型(プレス加工、圧縮成型、押し出し成型等)を行い、例えば、室温で1日置いて硬化させ、その後、ポストベーク(80℃、15時間)を行い、複合材料を得ることができる。
2-3.脱水工程
脱水工程(S18)は、混練工程(S16)で得られた複合材料を脱水する工程である。また、熱硬化性樹脂を用いた複合材料の製造方法においては、上述のとおり、主剤とセルロースナノファイバーとの混練工程の後に脱水工程(S18)を経てから硬化剤を混合して複合材料を得ることが好ましい。
脱水工程(S18)は、複合材料を加熱して水分を蒸発させることができる。例えば、オーブン中に複合材料を入れ、加熱するとともに、オーブンの内部を真空引きしてもよい。
また、混練工程(S16)の途中で膨潤繊維材料中の水が除去される場合には脱水工程(S18)を設ける必要はない。例えば、混練工程(S16)をオープンロールで行う場合には薄通し後にロールを加熱して水を除去してもよいし、密閉式の混練機である場合には脱水機能のある装置を用いてもよい。
エラストマーを用いた複合材料の場合には、さらに、加硫促進剤、加硫剤、老化防止剤、補強剤、カップリング剤等の公知のゴム薬品を配合し、加熱プレス等にて加硫して所望形状に成形してもよい。また、ゴム製品の所望の物性を得るために、混練工程(S16)中のエラストマーに、カーボンブラック、シリカ、カーボンナノチューブなどの公知の補強剤を配合してもよい。
2-4.複合材料
本実施形態に係る複合材料は、高分子物質中に繊維材料を含み、繊維材料は、セルロースナノファイバーに不飽和酸金属塩由来の金属が結合し、かつ、X線光電子分光法(XPS)によって測定される繊維材料のナトリウム元素量が0atm%を超え0.80atm%未満であることを特徴とする。本実施形態に係る複合材料によれば、水による膨潤が抑制される。繊維材料のナトリウム元素量は、高分子物質と混合する前の繊維材料におけるナトリウム元素量である。X線光電子分光法(XPS)による測定方法は上述した通りである。
複合材料の高分子物質がエラストマーであるとき、耐水性試験として60℃の水中で7
0時間浸漬した後の前記複合材料の体積膨潤率は0%を超え10%以下であることができる。体積膨張率は、耐水性試験前の複合材料の体積(a)に対する耐水性試験後の複合材料の体積(b)の体積増加量の百分率((b-a)×100/a)を測定した。
複合材料は、CNF分散液における金属塩由来の金属が結合したセルロースナノファイバーを含む。複合材料の剛性が高いことから、複合材料中の金属塩由来の金属は互いに近接して存在し、イオンクラスターを形成する。イオンクラスターを形成する金属に結合するセルロースナノファイバーが複合材料中に3次元に擬似的にネットワークをつくることで繊維による補強構造が得られると推測できる。
複合材料は、繊維材料に含まれていたセルロースナノファイバーが混練工程によってセルロースナノファイバー同士の水素結合に抗して1本1本に分かれて複合材料中に分散される。
複合材料は、繊維材料から解繊されたセルロースナノファイバーと高分子物質とを含むことができる。複合材料の中の繊維材料は、高分子物質のマトリックスの中で解繊された状態のセルロースナノファイバーとして存在する。複合材料の中のセルロースナノファイバーの全てが解繊されていることが好ましいが、少なくとも電子顕微鏡で引張破断面を観察しても、最大幅が50μm以上のセルロースナノファイバー凝集塊を含まないことが好ましい。このような凝集塊を含むと繊維としての補強効果が得られないばかりでなく、引張試験における破断起点となる可能性もあるためである。セルロースナノファイバー凝集塊は、複数のセルロースナノファイバーが寄り集って粒子状に凝集したままマトリックス中に点在する。セルロースナノファイバー凝集塊の最大幅は、走査型電子顕微鏡で複合材料の割断面を観察することでマトリックス材料中に点在する粒子状の凝集塊を観察して最大幅を計測する。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)高分子物質としてエラストマーを用いたサンプルの作製
(A-1)実施例1のサンプルの作製
混合工程:セルロースナノファイバー水分散液(第一工業製薬社製2%濃度TEMPO酸化セルロースナノファイバー)を水で希釈してセルロースナノファイバー1%濃度の分散液(溶媒は水)として、その分散液に、表1に示す種類の金属塩をプロペラ式攪拌機にて撹拌することで混合してCNF分散液を得た。
表1において、
「CNF」はTEMPO酸化セルロースナノファイバー(セルロースナノファイバーの平均繊維径は3.3nm、平均アスペクト比は225)であり、
「メタクリル酸Zn」は浅田化学工業社製メタクリル酸亜鉛 R-20S(金属分25~27%、メタクリル酸分60~64%)であった。
表1における「繊維材料の配合」は、膨潤工程後の膨潤繊維材料におけるCNFを1としたときの各配合量の比で表している。
乾燥工程:CNF分散液から水系溶媒を除去して繊維前駆体を得た。より具体的には、CNF分散液をバットに流し込み、オーブンにて80℃、24時間で乾燥して水系溶媒を除去し、繊維前駆体を得た。実施例1に用いた繊維前駆体は、目視によって表面に金属塩の析出は確認できなかった。
洗浄工程:乾燥工程で得られた10gの繊維前駆体をCNFに対して50倍量の水に投入し、シャープ製超音波洗浄機(周波数35kHz)を用いて超音波をあて、1時間経過後の液体の上澄みを取り除いた沈殿物をろ紙の上で水分を取り除き、再び得られた沈殿物をCNFに対して50倍量の水に投入して同様の作業を4回繰り返す。こうして得られた沈殿物の水分量をCNFの3倍量まで除去し、洗浄工程前の繊維前駆体よりナトリウム元素量が低減した膨潤繊維材料を得た。
混練工程:繊維材料を、表1に示すエラストマーに混合して複合材料を得た。より具体的には、二本ロールを用いて素練りしたエラストマーに繊維材料を徐々に投入し、混練して中間混合物を得て、薄通し(ロール温度10℃~30℃、ロール間隔0.3mm、ロール速度比1.1)して複合材料を得た。
表1における「複合材料の配合」は、混練工程における繊維材料に含まれるセルロースナノファイバーと金属塩との配合量を質量部(phr)で表している。複合材料のサンプルは、100gのエラストマーを用いて作製した。
表1において、「HNBR」は日本ゼオン社製ゼットポール2010(ゼットポールは登録商標)(結合アクリロニトリル量中心値11(%)、ヨウ素価中心値7以下(mg/100mg)、ムーニー粘度(中心値)85)であった。
脱水工程:混練工程で得られた複合材料を脱水した。より具体的にはオーブンにて40℃~90℃で12時間乾燥して、膨潤工程で追加した水を複合材料から除去した。
プレス工程:脱水した複合材料に架橋剤、老化防止剤等を二本ロールで配合した後、複合材料を金型に入れ、真空下で加圧成形して、サンプルを作製した。真空加圧成形は、金型を165℃に加熱し、加圧(金型に対して)しながら25分間プレス成型し、金型を冷却プレスに移動して加圧(金型に対して)しながら室温まで冷却し、厚さ1mmの実施例1のシート状サンプルを得た。
(A-2)比較例1,2のサンプルの作製
比較例1,2のサンプルは、表1の配合量に従って、洗浄工程を除き実施例1と同様に作製した。
表1において「メタクリル酸Na」は浅田化学工業社製メタクリル酸ナトリウム(金属分19~21%、メタクリル酸分75~80%)であった。
(B)評価方法
(B-1)XPS測定
実施例1のサンプルについて、日本電子社製の「マイクロ分析用X線光電子分光装置JPS-9200を用いて洗浄工程後の繊維材料中のナトリウム元素の量(atm%)を測定した。比較例1,2のサンプルの測定は、乾燥工程後の繊維前駆体について行った。比較例2のサンプルは実施例1のサンプルと同配合であるので比較例2の繊維前駆体におけるナトリウム元素の量が実施例1のサンプルの繊維前駆体(洗浄工程を行う前)におけるナトリウム元素の量であるといえる。測定方法は上述の1-3-1「繊維材料」の説明の通りに行った。測定結果を表1の「Na元素量」の欄に示した。
(B-2)耐水性試験
実施例及び比較例のサンプルを60℃の水に70時間浸漬した。体積膨潤率(耐水性試験前の各サンプルの体積(a)に対する耐水性試験後の各サンプルの体積(b)の増加量の百分率((b-a)×100/a)を測定した。測定結果を表1の「体積膨潤率」の欄
に示した。
Figure 0006989823000001
(C)評価結果
表1に示すように、実施例1に用いた繊維材料の「Na元素量」は、洗浄工程を行っていない比較例1,2に比べて低減しており、特に比較例2の「Na元素量」の1/10以下であった。実施例1に用いた繊維材料の「Na元素量」は、0.80atm%より小さい値であった。洗浄工程により繊維材料に含まれるナトリウム元素量が低減したことがわかった。
実施例1のサンプルの体積膨潤率は10%以下であり、比較例1,2のサンプルに比べて体積膨潤率が低かった。特に実施例1のサンプルの体積膨潤率は、洗浄工程を経ない他は実施例1と同じ配合及び処理工程を行った比較例2のサンプルの体積膨潤率の1/3以下であった。
実施例1及び比較例1,2のサンプルは、混練工程における加工性は良好であり、セルロースナノファイバーの解繊性及び分散性も良好であった。
2…オープンロール、10…第1のロール、20…第2のロール、30…エラストマー、34…バンク、36…中間混合物、50…複合材料、80…膨潤繊維材料

Claims (8)

  1. 酸化されたセルロースナノファイバーとナトリウムを含まない金属塩と水系溶媒とを混合してCNF分散液を得る混合工程と、
    前記混合工程で得られた前記CNF分散液から水系溶媒を低減して繊維前駆体を得る乾燥工程と、
    前記乾燥工程で得られた前記繊維前駆体を水により洗浄して前記繊維前駆体より前記セルロースナノファイバー由来のナトリウム元素量が低減した繊維材料を得る洗浄工程と、を含み、
    前記金属塩に用いられる金属は、ナトリウムよりイオン化傾向の低い金属である、繊維材料の製造方法。
  2. 請求項1において、
    X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記洗浄工程後の前記繊維材料のナトリウム元素量が0atm%を超え0.80atm%未満である、繊維材料の製造方法。
  3. 請求項1において、
    X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記洗浄工程後の前記繊維材料のナトリウム元素量が前記洗浄工程前の前記繊維前駆体のナトリウム元素量の1/1000以上1/10以下である、繊維材料の製造方法。
  4. 請求項1において、
    前記CNF分散液における前記金属塩の前記セルロースナノファイバーに対する質量比が0.1倍~2倍である、繊維材料の製造方法。
  5. 請求項1~請求項4に記載の繊維材料の製造方法で得られた前記繊維材料中の水分量を
    調節して所定量の水を含む膨潤繊維材料を得る膨潤工程と、
    前記膨潤工程で得られた前記膨潤繊維材料と高分子物質とを混合して複合材料を得る混練工程と、
    をさらに含み、
    前記膨潤繊維材料における前記水の前記セルロースナノファイバーに対する質量比が0.5倍~4倍である、複合材料の製造方法。
  6. 請求項5において、
    前記高分子物質はエラストマーであり、
    前記混練工程は、ロール間隔が0.1mm~0.5mmでロール温度が0℃~50℃に設定されたオープンロールを用いて薄通しする工程を含むことができる、複合材料の製造方法。
  7. 請求項5において、
    前記高分子物質は、熱可塑性樹脂であり、
    前記混練工程は、前記熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度の1.06倍の温度までの範囲の混練温度で混練する工程を含むことができる、複合材料の製造方法。
  8. 請求項5において、
    前記高分子物質は、熱硬化性樹脂であり、
    前記混練工程は、前記熱硬化性樹脂の主剤に前記繊維材料を混合し、前記主剤の軟化点より20℃低い温度から前記軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度で混練した後、さらに硬化剤を混合する工程を含む、複合材料の製造方法。
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