以下、図面を参照して、熱可塑性繊維強化プラスチックシートの搬送方法、搬送装置、及び搬送システムについて説明する。なお、以下の説明においては、「熱可塑性繊維強化プラスチックシート」を、単に「FRPシート」と略称する。
図1は、本開示のFRPシート積層装置1を模式的に示す平面図である。図2は、本開示のFRPシート積層装置1を模式的に示す側面図である。
FRPシート積層装置1は、FRPシートを搬送しながら、複数のFRPシートを積層していく搬送システムである。このFRPシート積層装置1は、ロール状のFRPシート原反P1を繰り出す繰り出し装置2と、この繰り出し装置2から繰り出されたFRPシート原反P1を走行させるメイン搬送路3と、メイン搬送路3上を走行してきたFRPシート積層物P5を引き込んでさらに下流側に送る送り装置4と、を備える。
図3は、本開示のFRPシート積層装置1によって形成されるFRPシート積層物P5を示す模式図である。
FRPシート積層物P5は、図3に示すように、FRPシート原反P1上に、第1のFRPシートP2、FRPシート原反P3、第2のFRPシートP4が順次積層されたものである。
FRPシート原反P1は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維が熱可塑性樹脂に含浸させられて50〜300μm程度の厚さに形成されている。このFRPシート原反P1は、強化繊維Fが一定方向に揃えられている。FRPシート原反P1は、その強化繊維Fの配向方向が、FRPシート原反P1の長さ方向に概ね一致するように形成されている。この強化繊維Fの配向方向を、0°とする。
図1に示すように、FRPシート積層装置1は、第1のFRPシートP2を形成する第1のFRPシート形成部5と、第2のFRPシートP4を形成する第2のFRPシート形成部14と、を備える。また、FRPシート積層装置1は、前後に配置された第1のFRPシートP2の間を溶着する溶着装置11と、前後に配置された第2のFRPシートP4の間を溶着する溶着装置20と、を備える。
図2に示すように、繰り出し装置2は、ローラを有し、ロール状に巻かれたFRPシート原反P1をその長さ方向に繰り出してメイン搬送路3上に送り出すように構成されている。図1に示すように、メイン搬送路3は、FRPシート原反P1の幅より広い幅を有する直線状(直板状)に設けられた支持台である。メイン搬送路3の上面(支持面)は、FRPシート原反P1を円滑に走行させることができるように、摩擦抵抗の少ない平滑面に形成されている。
送り装置4は、図2に示すように、上下に配置された一対のローラ4aと、図1に示すように、一対のローラ4aのいずれか一方に接続されたモータなどの駆動源4bと、を有する。送り装置4は、メイン搬送路3上を走行してきたFRPシート積層物P5を一対のローラ4a間に挟持し、駆動源4bによるローラ4aの回転によってFRPシート積層物P5を引き込み、下流側に送るようになっている。
第1のFRPシート形成部5は、図1に示すように、メイン搬送路3の上流側に設けられている。第1のFRPシート形成部5は、ロール状のFRPシート原反P1を送り出す送り出し装置6と、送り出し装置6から送り出されたFRPシート原反P1を走行させるサブ搬送路7と、サブ搬送路7上を走行してきたFRPシート原反P1を予め設定された角度でその幅方向に切断する切断装置8と、を備える。送り出し装置6から送り出されるFRPシート原反P1は、上述の繰り出し装置2によってメイン搬送路3上に繰り出されるFRPシート原反P1と同じ、強化繊維Fの配向方向が0°のものである。
送り出し装置6は、ロール状のFRPシート原反P1を繰り出す繰り出し装置6aと、繰り出し装置6aによって繰り出されたロール状のFRPシート原反P1をサブ搬送路7上に送る送り装置6bと、を備える。繰り出し装置6aは、上述の繰り出し装置2と同様の構成となっており、ロール状に巻かれたFRPシート原反P1をその長さ方向に繰り出してサブ搬送路7上に送り出すように構成されている。
送り装置6bは、上述の送り装置4と同様に形成されたもので、上下に配置された一対のローラ6cと、一対のローラ6cのいずれか一方に接続したモータなどの駆動源6dと、を有する。この送り装置6bは、繰り出し装置6aから繰り出されたFRPシート原反P1を一対のローラ6c間に挟持し、駆動源6dによるローラ6cの回転によってFRPシート原反P1を引き込み、サブ搬送路7の下流側に送るようになっている。
サブ搬送路7は、メイン搬送路3の一方の側方に配置されている。このサブ搬送路7は、メイン搬送路3と直交するように延びている。サブ搬送路7も、メイン搬送路3と同様にFRPシート原反P1の幅より広い幅を有する直線状(直板状)に設けられた支持台である。サブ搬送路7の上面(支持面)は、FRPシート原反P1を円滑に走行させることができるように、摩擦抵抗の少ない平滑面に形成されている。
図4は、本開示の切断装置8の概略構成を示す斜視図である。
図4に示すように、切断装置8は、サブ搬送路7上を走行してきたFRPシート原反P1を予め設定された角度でその幅方向に切断(裁断)するものである。切断装置8は、カッター8aと、カッター8aを移動可能に保持する保持バー8bと、保持バー8bの両端部を支持する一対の支持部8cと、を備える。
カッター8aは、モータ等の駆動手段によって保持バー8bの長さ方向に往復移動するように構成されている。カッター8aは、往路を移動することでFRPシート原反P1を切断し、復路を移動することで初期位置に戻り、新たな切断のために待機するようになっている。
保持バー8bは、FRPシート原反P1の幅よりも充分に長い長さに形成された細長い角柱状を有する。この保持バー8bは、その長さ方向にカッター8aを案内するものである。保持バー8bは、FRPシート原反P1の幅方向を横断するように、FRPシート原反P1の上方に配置されている。
一対の支持部8cは、保持バー8bを、そのFRPシート原反P1に対する角度が予め設定された角度となるように、保持バー8bの両端部を移動可能に支持している。本開示では、FRPシート原反P1の配向方向、すなわちFRPシート原反P1の長さ方向に対して、保持バー8bが45°(−45°)に交差するように該保持バー8bを支持している。
カッター8aは、保持バー8bの長さ方向に沿って移動することにより、カッター8aはFRPシート原反P1を、45°(−45°)の角度でその幅方向を切断する。ここで、−45°の符号の「−」とは、図3に示すように強化繊維Fの配向方向が時計回りにシフトしていることを示している。したがって、反時計回りにシフトした場合には、「+」の符号で示される。
また、図4に示すように一対の支持部8cは、FRPシート原反P1に対する保持バー8bの角度を、任意の角度に変えられるように構成されている。すなわち、保持バー8bは、保持バー8bを直接支持する支持バー8dに対して、その両端部が支持バー8dの長さ方向の相反する方向にそれぞれ移動するように構成されている。
このように、本開示では、FRPシート原反P1の長さ方向(強化繊維Fの配向方向)に対する角度が可変になっている。したがって、切断装置8は、例えばFRPシート原反P1の切断角度を「+45°」で行うのに代えて、例えば「+30°」や「+60°」で切断することも可能になっている。さらには、「−45°」で切断することも可能になっている。
なお、切断装置8は、図示しない制御装置により、カッター8aの駆動が、送り出し装置6の送り装置6bの動作に連動するように制御されている。すなわち、送り装置6bによるFRPシート原反P1の送り動作が一旦停止させられている間に、カッター8aが駆動してFRPシート原反P1が予め設定された角度で切断され、図3に示す平行四辺形の第1のFRPシートP2が形成されるようになっている。なお、図3中に符号L1で示す辺の長さは、FRPシート原反P1の幅の√2倍の長さとなっている。
図1に示すように、切断装置8の下流側には、第1のFRPシートP2を、メイン搬送路3上を走行するFRPシート原反P1上に載せる搬送装置9が設けられている。搬送装置9は、図2に示すように、第1のFRPシートP2を吸着保持する保持部9aと、この保持部9aを水平面上で回転させ、第1のFRPシートP2の強化繊維Fの向きを予め設定された向きにする移動部9bと、を備える。
保持部9aは、後述する吸着によって第1のFRPシートP2を着脱可能に保持するように構成されている。移動部9bは、ロボットアームによって形成されたもので、複数の回動軸を有して保持部9aを水平方向のXY方向に移動させるとともに軸周りに回転させ、かつ、保持部9aを昇降させるように構成されている。
このような構成のもとに搬送装置9は、保持部9aによって切断装置8で切り出された平行四辺形の第1のFRPシートP2を保持し、移動部9bによって保持した第1のFRPシートP2をメイン搬送路3上に移動させ、その後、保持部9aから脱着させることで第1のFRPシートP2をFRPシート原反P1上に載置するようになっている。
移動部9bは、図3に示すように、第1のFRPシートP2の強化繊維Fの配向方向が予め設定された向きとなるように、すなわちFRPシート原反P1の強化繊維Fの配向方向とは異なる角度である+45°となるように、第1のFRPシートP2を回転させてFRPシート原反P1上に載置する。なお、第1のFRPシートP2を載置する際、この第1のFRPシートP2の切断辺L2がそれぞれFRPシート原反P1の側端縁上に位置するように位置合わせする。
図1及び図2に示すように、メイン搬送路3には、溶着装置11が設けられている。溶着装置11は、FRPシート原反P1上に載置された第1のFRPシートP2の前後の隙間とその近傍を加熱する。溶着装置11としては、例えば、超音波溶着機を使用することができる。溶着装置11は、第1のFRPシートP2およびその下のFRPシート原反P1の樹脂を溶融させ、前後の第1のFRPシートP2の間を溶着すると同時に、第1のFRPシートP2とFRPシート原反P1とを溶着するようになっている。なお、溶着装置11としては、超音波溶着機に代えて、加熱されたローラを転がす構造のものや、長尺のヒータ線を押し付ける構造のものを使用することができる。
溶着装置11の下流側には、送り出し装置12が配設されている。送り出し装置12は、メイン搬送路3の上方に配置されている。この送り出し装置12は、メイン搬送路3を走行するFRPシート原反P1と第1のFRPシートP2との積層物の上に、他のFRPシート原反P3を送り出すように構成されている。このFRPシート原反P3は、図3に示すように、FRPシート原反P1と同じく強化繊維Fの配向方向が0°である。
送り出し装置12は、図2に示すように、ロール状のFRPシート原反P3を繰り出す繰り出し装置12aと、繰り出し装置12aによって繰り出されたロール状のFRPシート原反P3をメイン搬送路3上に送る送り装置12bと、を備える。送り装置12bは、繰り出し装置12aから繰り出され、一旦上方に送り出されたFRPシート原反P3を複数のローラ12cによって上方から下方に送り、メイン搬送路3を走行する前記積層物の上に送り出すように構成されている。
この送り出し装置12より下流側には、図1、図2に示すように、溶着装置13が配設されている。溶着装置13は、溶着装置11と同様のものであり、最上層となっているFRPシート原反P3とこれの下層となるFRPシート原反P1と第1のFRPシートP2との積層物とを溶着し、一体化する。
この溶着装置13より下流側には、図1に示すように、第2のFRPシート形成部14が配設されている。第2のFRPシート形成部14は、第1のFRPシート形成部5とほぼ同様に構成されたもので、ロール状のFRPシート原反P1を送り出す送り出し装置15と、この送り出し装置15から送り出されたFRPシート原反P1を走行させるサブ搬送路16と、サブ搬送路16上を走行してきたFRPシート原反P1を予め設定された角度でその幅方向に切断(裁断)する切断装置17と、を備えている。
送り出し装置15は、ロール状のFRPシート原反P1を繰り出す繰り出し装置15aと、繰り出し装置15aによって繰り出されたロール状のFRPシート原反P1をサブ搬送路16上に送る送り装置15bと、を備える。送り装置15bは、上下に配置された一対のローラ15cと、一対のローラ15cのうちの一方のローラ15cに接続して該ローラ15cを回転させるモータ等の駆動源15dと、を備える。
切断装置17は、第1のFRPシート形成部5の切断装置8と同様に、サブ搬送路16上を走行してきたFRPシート原反P1を予め設定された角度でその幅方向に切断するものである。ただし、この切断装置17は、FRPシート原反P1を−45°の角度でその幅方向を切断し、図3に示した第2のFRPシートP4を形成するようにしている。なお、図3中に符号L3で示す辺の長さは、FRPシート原反P1の幅の√2倍の長さとなっている。
第2のFRPシートP4は、搬送装置18によってピッキングされる。搬送装置18は、図2に示すように、第2のFRPシートP4を吸着保持する保持部18aと、この保持部18aを水平面上で回転させ、第2のFRPシートP4の強化繊維Fの向きを予め設定された向きにする移動部18bと、を備える。
搬送装置18は、FRPシート原反P1や第1のFRPシートP2、FRPシート原反P3の強化繊維Fの向き(配向)とは異なる角度である−45°となるように、第2のFRPシートP4をFRPシート原反P3(積層物)上に載置する。なお、第2のFRPシートP4を載置する際、この第2のFRPシートP4の切断辺L4がそれぞれFRPシート原反P1の側端縁上に位置するように位置合わせする。
図1に示すように、メイン搬送路3におけるサブ搬送路16より少し下流側には、溶着装置20が設けられている。溶着装置20も溶着装置11とほぼ同様の構成となっており、前後の第2のFRPシートP4の間を溶着するとともに、これら第2のFRPシートP4とその下の積層物(FRPシート原反P3)とを溶着し、一体化する。
この溶着装置20より下流側には、もう一つの溶着装置21が設けられている。この溶着装置21は最上層の第2のFRPシートP4とこれの下層となる積層物(FRPシート原反P3)とを再度溶着する。その際、この溶着装置21は、図3に示す第2のFRPシートP4の切断辺L4と交差する方向に沿って、第2のFRPシートP4と積層物とを溶着する。つまり、溶着装置20とは異なる角度で溶着することにより、得られる積層物をより強固に一体化する。
このようにして形成されたFRPシート積層物P5は、送り装置4の下流側に設けられた切断装置22によって、図1に示すように矩形状のFRPシート積層体P6に切断される。FRPシート積層体P6は、図2に示すようにメイン搬送路3の下流側に配設された収容箱23に順次収容され、次工程に供されるようになっている。例えば、次工程では、FRPシート積層体P6をローラープレス機に入れて適宜形状に裁断し、得られたFRPシート積層体P6の形状物を複数枚重ねることにより、所望の3次元形状を形成する。
続いて、上記構成のFRPシート積層装置1に設けられた搬送装置9について、図5〜図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、上述した第1のFRPシート形成部5に設けられた搬送装置9について説明するが、上述した第2のFRPシート形成部14に設けられた搬送装置18も同様の構成となっている。
図5は、本開示の搬送装置9の保持部9aを示す側面図である。図6は、図5に示す保持部9aの底面図である。図7は、図5に示す保持部9aの要部拡大図である。
図5に示すように、搬送装置9は、サブ搬送路7の支持台7aの上面(支持面)に載置された第1のFRPシートP2(吸着対象物)を吸着し搬送するものである。この搬送装置9は、複数のベルヌーイチャック50(第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50b)と、複数のベルヌーイチャック50と共に上下方向に移動可能な複数の吸着パッド40と、を備える。つまり、搬送装置9は、ベルヌーイチャック50と吸着パッド40を併用して第1のFRPシートP2を吸着し搬送するようになっている。
吸着パッド40は、第1のFRPシートP2を吸着する吸着面40Aを有する。吸着面40Aには、一又は複数の吸引孔が形成されている。この吸着パッド40は、中空シャフト41の下端に接続されている。中空シャフト41は、円筒状の支持部42によって支持されている。支持部42は、保持部9aの保持フレーム9a1に取り付けられ、不図示のバネを介して中空シャフト41を上下方向に移動可能に支持している。これにより、吸着パッド40が、他の吸着パッド40と同一平面で第1のFRPシートP2に押圧可能とされている。
ベルヌーイチャック50は、気体を噴出する噴出部50Aを有する。噴出部50Aは、例えば、有頂筒状の円筒部を有し、その円筒部側面にある不図示のノズルから気体を噴出する。このベルヌーイチャック50は、円筒部内部で旋回流を形成し、その旋回流の中央部に真空を発生させるサイクロン方式のものである。噴出部50Aから噴出された気体は、噴出部50Aと第1のFRPシートP2との隙間から、大気に放出される。つまり、噴出部50Aは、第1のFRPシートP2と非接触の状態で、第1のFRPシートP2を吸着するようになっている。
図7に示すように、ベルヌーイチャック50は、噴出部50Aから吸着パッド40の吸着面40Aと同じ高さまで延伸しているスペーサ53を有する。噴出部50Aの下面は、吸着面40Aよりも上方に位置している。スペーサ53は、噴出部50Aの下面と吸着面40Aとの離間距離53Aと同じ長さを有する。このスペーサ53は、噴出部50Aの円筒部の開口縁から垂設されたゴム板(弾性体)である。このスペーサ53は、図6に示すように、噴出部50Aの中心を挟んで対向するように二つ設けられている。
ベルヌーイチャック50は、図5に示すように、中空シャフト51の下端に接続されている。中空シャフト51は、円筒状の支持部52によって支持されている。支持部52は、保持部9aの保持フレーム9a1に取り付けられ、不図示のバネを介して中空シャフト51を上下方向に移動可能に支持している。これにより、ベルヌーイチャック50(スペーサ53の先端)が、吸着パッド40と同様に、第1のFRPシートP2に押圧可能とされている。
上記構成のベルヌーイチャック50及び吸着パッド40は、図6に示すように、保持部9aの保持フレーム9a1に取り付けられている。保持フレーム9a1は、第1のFRPシートP2と同じ平行四辺形の枠部9a2と、枠部9a2の対向角部同士を接続する二本の梁部9a3と、を有する。なお、二本の梁部9a3は、平行四辺形の枠部9a2の中心で交差しており、この交差部には、図2に示す移動部9bが接続される。
ベルヌーイチャック50は、図3に示す第1のFRPシートP2の鋭角部C1を吸着するように配設されている。第1のFRPシートP2は、FRPシート原反P1から+45°で切断されたものであり、45°の一対の鋭角部C1と、135°の一対の鈍角部C2とを備える。ベルヌーイチャック50は、図6に示すように、第1のFRPシートP2の一方の鋭角部C1を吸着する第1のベルヌーイチャック50aと、第1のFRPシートP2の他方の鋭角部C1を吸着する第2のベルヌーイチャック50bと、を備える。
本開示の第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bは、枠部9a2の鋭角部に取り付けられている。一方、複数の吸着パッド40は、枠部9a2及び梁部9a3に沿って間隔をあけて取り付けられ、水平面において、第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bとを対角の位置とする正方形の内側に配置されている。また、本開示において第1のFRPシートP2を保持するベルヌーイチャック50と吸着パッド40のうち、第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bが最も離隔している。本開示の複数の吸着パッド40は、第1のFRPシートP2の鈍角部C2を含む外縁部、及びその外縁部よりも内側の領域を吸着するように配設されている。吸着パッド40の個数は、ベルヌーイチャック50(第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bの合計)の個数よりも多い。また、複数の吸着パッド40は、第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bの離間距離50Dよりも小さい離間距離40Dで配置されている。
複数の吸着パッド40は、第1のベルヌーイチャック50aに最も近い第1の吸着パッド40b1と、第2のベルヌーイチャック50bに最も近い第2の吸着パッド40b2と、を有する。第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2は、第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bと同様に、枠部9a2の鋭角部に取り付けられ、第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bよりも内側の領域において第1のFRPシートP2の鋭角部C1を吸着するようになっている。
第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2は、互いに別の空圧系統70,71を有している。第1の吸着パッド40b1の空圧系統70には、第1の圧力センサ70aが設けられている。また、第2の吸着パッド40b2の空圧系統71には、第2の圧力センサ71aが設けられている。第1の吸着パッド40b1は、第1のベルヌーイチャック50aの吸着不良を検出するセンサの役割を有する。また、第2の吸着パッド40b2は、第2のベルヌーイチャック50bの吸着不良を検出するセンサの役割を有する。これら第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2は、他の吸着パッド40aよりも吸着面40Aの面積及び空間容積が小さい小型のものである。
また、他の吸着パッド40aも、領域ごとに互いに別の空圧系統60,61,62,63を有している。このように、複数の領域で互いに別の空圧系統60,61,62,63を設けることで、例えば、一つの領域で吸着パッド40aの負圧が立たなかった場合であっても、他の領域ではその影響を受けないようにすることができる。具体的に、第1のベルヌーイチャック50aと共に第1のFRPシートP2の一方の鋭角部C1を吸着する領域A1に配置された複数の吸着パッド40aは、空圧系統60と接続されている。また、第1のFRPシートP2の一方の鈍角部C2を吸着する領域A2に配置された複数の吸着パッド40aは、空圧系統61と接続されている。
また、第2のベルヌーイチャック50bと共に第1のFRPシートP2の他方の鋭角部C1を吸着する領域A1に配置された複数の吸着パッド40aは、空圧系統62と接続されている。そして、第1のFRPシートP2の他方の鈍角部C2を吸着する領域A2に配置された複数の吸着パッド40aは、空圧系統63と接続されている。空圧系統60,61,62,63には、それぞれ圧力センサ60a,61a,62a,63aが設けられている。なお、領域A1,A2は、枠部9a2の2組の対辺の中点を通る二本の境界線K1によって区画されている。
続いて、上記構成の搬送装置9の動作(熱可塑性繊維強化プラスチックシートの搬送方法)について、図8を参照して説明する。
図8は、本開示の搬送装置9の動作を示す説明図である。図8(a)は、搬送装置9が第1のFRPシートP2を搬送する様子を示し、図8(b)は、第1のFRPシートP2の一部(鋭角部C1)が搬送装置9から剥がれたときの様子を示している。
サブ搬送路7の上面に載置された第1のFRPシートP2を吸着し搬送する場合、先ず、搬送装置9の保持部9aを第1のFRPシートP2に押し付ける(上述した図5に示す状態)。保持部9aには、複数の吸着パッド40及び複数のベルヌーイチャック50が取り付けられており、それらは不図示のバネによって上下に移動可能とされているため、第1のFRPシートP2の表面に面一に接触することができる。
搬送装置9の保持部9aを第1のFRPシートP2に押し付けたら、複数の吸着パッド40から気体を吸引し、また、複数のベルヌーイチャック50から気体を噴出することによって、搬送装置9の保持部9aに第1のFRPシートP2を吸着させる。その後、図8(a)に示すように、第1のFRPシートP2を吸着した保持部9aを移動部9b(図2参照)によって上昇させる。
このように、ベルヌーイチャック50と吸着パッド40を併用して第1のFRPシートP2を吸着し搬送することにより、第1のFRPシートP2を安定して搬送できる。すなわち、吸着パッド40は、気体の吸引により負圧を立てて吸着面40Aに第1のFRPシートP2を吸着するため、第1のFRPシートP2を安定して保持できる。一方で、吸着パッド40は、第1のFRPシートP2の一部が裂けていたり、微細な孔が開いていたりすると、負圧を立てることができなくなる場合がある。
ベルヌーイチャック50は、非接触で第1のFRPシートP2を吸着するため、保持の安定性の面では吸着パッド40より劣るが、ベルヌーイチャック50は、気体の噴出により負圧を発生させるため、第1のFRPシートP2の一部が裂けたり、微細な孔が開いていたり、また、第1のFRPシートP2が反るなどの曲り癖があっても、吸着力を発揮できる。したがって、ベルヌーイチャック50と吸着パッド40を併用することにより、一部が裂けたり、微細な孔があったり、曲り癖があるような第1のFRPシートP2(熱可塑性繊維強化プラスチックシート)を安定して搬送することができる。
本開示のベルヌーイチャック50は、気体を噴出する噴出部50Aと、噴出部50Aから吸着パッド40の吸着面40Aと同じ高さまで延伸しているスペーサ53と、を有している。すなわち、噴出部50Aは、スペーサ53を介して、第1のFRPシートP2を吸着している。スペーサ53により、噴出部50Aと第1のFRPシートP2の間には、噴出部50Aから噴出された気体が流通可能な隙間が形成される。そのため、噴出部50Aに第1のFRPシートP2が接近しすぎることで生じる、保持力の低下を抑制できる。また、本開示のスペーサ53は、吸着パッド40の吸着面40Aと同じ高さまで延伸しているため、吸着面40Aと同一の高さで第1のFRPシートP2を保持することができる。
また、本開示においては、図6に示すように、複数のベルヌーイチャック50は、第1のベルヌーイチャック50aと、第2のベルヌーイチャック50bと、を有し、第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bとの離間距離50Dは、複数の吸着パッド40の離間距離40Dよりも大きい。この構成よれば、曲り癖が出やすいFRPシートP2の外縁部を第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bで保持できる。
また、図6に示すように、吸着パッド40の個数は、ベルヌーイチャック50の個数よりも多く、複数の吸着パッド40は、第1のベルヌーイチャック50aと第2のベルヌーイチャック50bの離間距離50Dよりも小さい離間距離40Dで配置されている。この構成によれば、第1のFRPシートP2の外縁部よりも内側の領域を、複数の吸着パッド40によってベルヌーイチャック50よりも短い間隔で保持できるため、第1のFRPシートP2の保持の安定性を高めることができる。
また、本開示において、第1のFRPシートP2は平行四辺形であり、第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bは、第1のFRPシートP2の一対の鋭角部C1を吸着する。平行四辺形の鋭角部C1は、鈍角部C2よりも細く、曲げ癖が出やすいため、このような鋭角部C1を第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bによって吸着することにより、第1のFRPシートP2の保持の安定性をより高めることができる。
なお、ここでいう第1のFRPシートP2の保持の安定性とは、第1のFRPシートP2を吸着する吸着力及び横ずれの抑制を意味する。すなわち、鋭角部C1の先端でない箇所は、通気性が大きい第1のFRPシートP2であっても複数の吸着パッド40により支持できるので、安定して搬送可能である。しかし、鋭角部C1の先端では、吸着面積自体が減るため、第1のFRPシートP2の把持が困難な場合がある。加えて、鋭角部C1の先端の吸着は、外乱に弱い性質があり、加えて鋭角部C1の先端では曲り癖が大きく出るため、搬送装置9の運転に影響を与える可能性が高い。
そのため、本開示では、通常時の吸着力が吸着パッド40よりも劣るベルヌーイチャック50を用いて、通気性が大きい第1のFRPシートP2において、特に吸着面積が狭く曲り癖が大きく出やすい鋭角部C1の先端における外乱に強くしている。また、ベルヌーイチャック50は、吸着パッド40の吸着面40Aに比べて噴出部50Aから第1のFRPシートP2に吸着力を及ぼす距離が大きいため、曲り癖により第1のFRPシートP2の鋭角部C1の先端が多少剥がれたとしても吸着状態を保つことができ、第1のFRPシートP2を安定して搬送可能である。
さらに、本開示では、図6に示すように、第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bに最も近い第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2の圧力を計測している。このため、第1のベルヌーイチャック50a及び第2のベルヌーイチャック50bにおける第1のFRPシートP2の吸着状態を検出することができる。例えば、図8(b)に示すように、第1のベルヌーイチャック50aにおいて第1のFRPシートP2の吸着が不可になると、第1のFRPシートP2が垂れ下がり、第1のFRPシートP2は第1の吸着パッド40b1からも脱落する。
第1の吸着パッド40b1は、図6に示すように、第2の吸着パッド40b2の空圧系統71とは独立した空圧系統70を有し、空圧系統70には圧力センサ70aが設けられている。第1のFRPシートP2と第1の吸着パッド40b1が離隔すれば、空圧系統70の負圧が低下する。すなわち、空圧系統70の負圧により、第1のベルヌーイチャック50aにおける第1のFRPシートP2の吸着不可状態(つまり、第1のFRPシートP2と第1の吸着パッド40b1の離隔)を検出することができる。また、同様に、空圧系統71の負圧により、第2のベルヌーイチャック50bにおける第1のFRPシートP2の吸着不可状態を検出することができる。第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2は、小型で空間容積が小さいため、他の吸着パッド40aよりも真空破壊による応答性が高く、早期にベルヌーイチャック50の吸着不可状態を検出することができる。
以上、図面を参照しながら本開示の1つの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
図9は、本開示の一変形例におけるサブ搬送路7の支持台7aの構成を示す断面図である。
図9に示す支持台7aには、上面から下面にかけて貫通する貫通孔7a2が複数形成されている。この構成によれば、仮に、第1のFRPシートP2に微細な孔が多数あったとしても、吸着パッド40における吸引によって支持台7aを吸い付けてしまうことがなくなる。よって、第1のFRPシートP2を容易に持ち上げることができる。なお、貫通孔7a2の代わりに、支持台7aの上面に溝を形成しても同じような作用効果が得られる。
図10は、本開示の一変形例における第1のFRPシートP2の好ましい吸着位置を説明するための説明図である。
平行四辺形の第1のFRPシートP2は、同じ幅の正方形P10と比べて、図10に示す領域100を吸着することが好ましい。なお、正方形P10は、平行四辺形の第1のFRPシートP2と重心が一致している。また、正方形P10は、第1のFRPシートP2の辺の一部と重なっている。また、第1のFRPシートP2の対角線のうち短い側は、正方形P10の辺上で終端する。領域100は、第1のFRPシートP2とシートP10の中心を重ね、第1のFRPシートP2の平行四辺形の領域からシートP10の正方形の領域を除外した領域であって、吸着パッド40(40a)のパッド径を2rとしたときに、当該領域の境界から距離rだけ内側の領域である。
あるいは、領域100のうち、第1のFRPシートP2の鋭角部C1を頂角とし、当該頂角を二等分する二等分線Bが第1のFRPシートP2の境界まで至る線分の長さをDとしたときに、頂角から二等分線Bに沿ってDの10%の位置を当該頂角の対向する辺の中点とする、二等辺三角形の領域101を吸着してもよい。この領域101は、保持部9aの保持フレーム9a1(枠部9a2)のフレーム幅wにより吸着し難い領域を含むため、より吸着性能が向上する。
また、例えば、上述の本開示では、第1のFRPシートP2の鋭角部C1の吸着不可状態を、第1の吸着パッド40b1及び第2の吸着パッド40b2の互いに独立した空圧系統70,71の負圧によって検出する構成について説明したが、例えば、ベルヌーイチャック50の空圧系統でも同様の検出は可能である。
なお、上述の本開示では、特に第1のFRPシートP2や第2のFRPシートP4の強化繊維Fの配向方向を+45°もしくは−45°としたが、切断装置8、切断装置17の保持バーの角度を調整することにより、例えば+30°(−30°)や+60°(−60°)などとするようにしてもよい。