JP2015150787A - スリットシートの搬送方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】切り込みを有するプリプレグを搬送する際の、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを防止した、スリットシートの搬送方法を提供する。
【解決手段】強化繊維5とマトリックス樹脂とからなるプリプレグに対して強化繊維5を横切る方向で強化繊維5を切断する深さに切り込み4を形成してなるスリットシート3を、ロボットハンド8で保持して搬送するスリットシート3の搬送方法である。ロボットハンド8として、面で吸着する吸盤型の第1パッドと、負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッドとを備えたものを用いる。スリットシート3の、切り込み4が形成されていない領域を第1パッドで吸着保持するとともに、スリットシートの、切り込みが形成された領域を第2パッドで吸着保持し、その状態でロボットハンドを移動させることにより、スリットシートを搬送する。
【選択図】図1
【解決手段】強化繊維5とマトリックス樹脂とからなるプリプレグに対して強化繊維5を横切る方向で強化繊維5を切断する深さに切り込み4を形成してなるスリットシート3を、ロボットハンド8で保持して搬送するスリットシート3の搬送方法である。ロボットハンド8として、面で吸着する吸盤型の第1パッドと、負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッドとを備えたものを用いる。スリットシート3の、切り込み4が形成されていない領域を第1パッドで吸着保持するとともに、スリットシートの、切り込みが形成された領域を第2パッドで吸着保持し、その状態でロボットハンドを移動させることにより、スリットシートを搬送する。
【選択図】図1
Description
本発明は、スリットシートの搬送方法に関する。
繊維強化熱可塑性プラスチックの成形方法としては、連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸したプリプレグと称される基材を積層し、プレス等で加熱加圧することによって目的の形状に賦形するスタンピング成形が、最も一般的である。
これによって得られた繊維強化プラスチックは、連続した強化繊維を備えることにより、構造材に適用可能な曲げ強度や引張弾性率などの優れた機械物性(力学物性)を有している。このような繊維強化プラスチックは、連続した強化繊維を規則的に配列することで、必要とする機械物性(力学物性)に設計することが可能である。
また、近年では、力学特性(力学物性)のバラツキが低く、さらに複雑な形状への賦形性にも優れた基材として、プリプレグに対してその強化繊維を横切る方向に切り込みを入れた(形成した)スリットシートが開発されている。
また、近年では、力学特性(力学物性)のバラツキが低く、さらに複雑な形状への賦形性にも優れた基材として、プリプレグに対してその強化繊維を横切る方向に切り込みを入れた(形成した)スリットシートが開発されている。
このスリットシートは、前記プリプレグに対してその外周部を除く中央部に、強化繊維を横切る方向で該強化繊維を切断する深さに直線状の切り込みを形成したものである。このような切り込みは、強化繊維とのなす角度が30度以上60度以下となるように形成され、さらに、前記プリプレグ1m2あたりの切り込み長の総和が20m以上、150m以下となるように形成される。
このような切り込みを形成したスリットシートは、複数枚が積層されて積層基材とされ、さらに加熱・加圧を行うことで一体化され、繊維強化熱可塑性シートとされる。その後、スタンピング成形工程に供されることにより、目的の形状に賦形される。
このような切り込みを形成したスリットシートは、複数枚が積層されて積層基材とされ、さらに加熱・加圧を行うことで一体化され、繊維強化熱可塑性シートとされる。その後、スタンピング成形工程に供されることにより、目的の形状に賦形される。
ところで、前記のスリットシートを複数枚積層して積層基材を形成する際には、切り込みが入れられ、複数枚が積層された状態のスリットシートを、それぞれ異なる位置から積層基材とする工程に供するべく、ロボットハンドを用いてスリットシートを一枚ずつ前記積層基材とする工程に搬送し、一箇所に積層する。ロボットハンドとしては、通常は面で吸着する吸盤型の吸着パッドを備えたものが用いられ、この吸着パッドによってスリットシートを吸着保持し、搬送している。
しかしながら、スリットシートには切り込みが存在するため、切り込みが形成された領域では空気の通り抜けが起こり、二枚取りや脱落といった搬送トラブルが生じることがある。特に、スリットシートが大判である場合、自重で中央部が撓むことから、この撓みを起点として脱落が生じ易くなる。
このような脱落を防止するには、スリットシートの外周部だけでなく中央部をも吸着保持することが重要になる。しかし、中央部には切り込みが形成されているため、吸着パッドをスリットシートの中央部に配してここを吸着保持した際に、切り込みからその下に配置されたスリットシートも同時に吸い上げてしまい、前述したように二枚取りを生じてしまう。
吸引された二枚目のシートは、一枚目のシートを吸い上げた際に自重で剥がれ落ちるが、元々配置されていた位置からはずれて落下するため、次の搬送時にはロボットハンドの位置決めができず、搬送ができなくなる。そのため、二枚目のシートを吸い上げることなく、確実に一枚目のシートのみを吸着保持する必要がある。
産業用ロボットハンドを用いたシート状のワークの搬送については、例えば特許文献1に、一部に切り込みを有するシート状の強化繊維基材を搬送する工程が開示されている。この特許文献1では、搬送工程の自動化を容易にするため、搬送にロボット等を用いている。搬送方法については、強化繊維基材を上下に機械的にクランプして搬送する方法や、強化繊維基材を静電吸着またはエアー吸引による吸着等の手法により保持して搬送する方法が挙げられている。後者の場合では、保持手段と保持される強化繊維基材との間にエアーが侵入し、保持形態が崩れないよう、可撓性シート状物を介して静電吸着またはエアー吸引による吸着を行うことが示されている。
しかし、このような搬送方法においても、切り込み部分での吸着による二枚取りの問題がある。また、可撓性シートを介して吸着を行った場合の、搬送後の可撓性シートの取り扱いについては記載されていないが、このような可撓性シートの取り扱いは当然ながら搬送工程を複雑化する一因となる。
また、特許文献2には、大型用紙の搬送における脱落防止策として、吸着部に沿ってガイド板を延設することが開示されている。しかし、ここに開示されているガイド板には、前記スリットシートの自重による撓みを抑制する機能はない。したがって、この特許文献2に開示された技術を用いても、撓みに起因して搬送中にスリットシートが脱落するのを防止することはできない。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、切り込みを有するスリットシートを搬送する際の、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを防止した、スリットシートの搬送方法を提供することを課題としている。
本発明は、強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグに対して前記強化繊維を横切る方向で該強化繊維を切断する深さに切り込みを形成してなるスリットシートを、ロボットハンドで保持して搬送するスリットシートの搬送方法であって、
前記ロボットハンドとして、面で吸着する吸盤型の第1パッドと、負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッドとを備えたものを用い、
前記スリットシートの、前記切り込みが形成されていない領域を前記第1パッドで吸着保持するとともに、前記スリットシートの、前記切り込みが形成された領域を前記第2パッドで吸着保持し、その状態で前記ロボットハンドを移動させることにより、前記スリットシートを搬送することを特徴とする。
前記ロボットハンドとして、面で吸着する吸盤型の第1パッドと、負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッドとを備えたものを用い、
前記スリットシートの、前記切り込みが形成されていない領域を前記第1パッドで吸着保持するとともに、前記スリットシートの、前記切り込みが形成された領域を前記第2パッドで吸着保持し、その状態で前記ロボットハンドを移動させることにより、前記スリットシートを搬送することを特徴とする。
また、前記スリットシートの搬送方法において、前記スリットシートを搬送する際に、下記式(1)で表される前記スリットシートにかかる空気抵抗力Fを、0Nより大、かつ、10N以下にすることを特徴とする。
F=C(ρv2/2)Ssinθ …式(1)
ただし、Cは抵抗係数、ρは空気の密度、vは前記ロボットハンドの水平方向の移動速度、Sはスリットシートの面積、θはスリットシートの移送方向に向く面と水平面とのなす角度である。
F=C(ρv2/2)Ssinθ …式(1)
ただし、Cは抵抗係数、ρは空気の密度、vは前記ロボットハンドの水平方向の移動速度、Sはスリットシートの面積、θはスリットシートの移送方向に向く面と水平面とのなす角度である。
また、前記スリットシートの搬送方法において、前記第2パッドは、該第2パッドと前記スリットシートとの間にエアクッションを介して前記スリットシートを吸着保持する非接触型のパッドであることを特徴とする。
また、前記スリットシートの搬送方法において、前記第2パッドと前記スリットシートとの間のクリアランスを、2mm以上10mm以下とすることを特徴とする。
また、前記スリットシートの搬送方法において、前記第2パッドは、複数の吸引孔を有する多孔プレートからなる吸着面によって前記スリットシートを吸着保持することを特徴とする。
また、前記スリットシートの搬送方法において、前記スリットシートの厚みが、50μm以上500μm以下であることを特徴とする。
前記第2パッドの真空作動圧が、0.1MPa以上0.6MPa以下であることを特徴とする。
本発明のスリットシートの搬送方法によれば、切り込みを有するスリットシートを搬送する際の、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを防止することができる。
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1(a)〜(d)は、本発明に係るスリットシートの搬送方法の実施形態となる工程を含む、繊維強化プラスチックシートの製造方法の工程説明図である。
図1(a)〜(d)は、本発明に係るスリットシートの搬送方法の実施形態となる工程を含む、繊維強化プラスチックシートの製造方法の工程説明図である。
繊維強化プラスチックシートを製造するには、まず、図1(a)に示すように、従来と同様にして形成したプリプレグ、すなわち強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグ1に対して、打抜き装置2で切り込みを入れ、図1(b)に示すようにスリットシート3を得る。切り込み4は、プリプレグ1に対して強化繊維5を横切る方向で該強化繊維5を切断する深さに形成する。
ここで、本発明の搬送方法は、限定されないものの、特に大判のスリットシート3の搬送に好適に用いられる。大判のスリットシート3として具体的には、多角形の辺のうち一番長い辺の長さが500mm以上の大きさのものを挙げることができ、このような大判のスリットシートの搬送に、本発明は好適に用いられる。
スリットシート3(プリプレグ1)としては、その形状が四角形(正方形、長方形、平行四辺形、台形、菱形を含む)や三角形(正三角形、直角三角形、二等辺三角形を含む)などの多角形とされる。本実施形態では、図1(b)に示すように長辺の長さが300mm以上であり、厚さが50μm以上500μm以下である長方形状のスリットシート3(プリプレグ1)を搬送対象としている。これらのスリットシートは、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを有するため、本願発明により当該トラブルを解決したものである。ただし、これ以外の大きさ・形状・厚さのスリットシート(プリプレグ)に対しても、本発明が適用可能であるのはもちろんである。
スリットシート3(プリプレグ1)としては、その形状が四角形(正方形、長方形、平行四辺形、台形、菱形を含む)や三角形(正三角形、直角三角形、二等辺三角形を含む)などの多角形とされる。本実施形態では、図1(b)に示すように長辺の長さが300mm以上であり、厚さが50μm以上500μm以下である長方形状のスリットシート3(プリプレグ1)を搬送対象としている。これらのスリットシートは、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを有するため、本願発明により当該トラブルを解決したものである。ただし、これ以外の大きさ・形状・厚さのスリットシート(プリプレグ)に対しても、本発明が適用可能であるのはもちろんである。
プリプレグ1を形成する強化繊維としては、本発明ではその種類が限定されることなく、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用可能である。無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステルなどが挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、最終成形物の強度等の機械物性(力学物性)を考慮すると、炭素繊維が好ましい。また、強化繊維の平均繊維直径は、1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさら好ましい。
また、プリプレグ1を形成するマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等を用いることができる。また、これらの混合物を用いてもよい。さらに、ナイロン6とナイロン66との共重合体ナイロンのように共重合したものであってもよい。また、得たい成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくこともできる。
なお、本発明に係るマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂に限定されることなく、熱硬化性樹脂を用いることもできる。しかし、不連続な強化繊維を用いた繊維強化プラスチックの場合、強化繊維端部どうしを連結するように破壊するため、一般的に熱硬化性樹脂よりも靱性値が高い熱可塑性樹脂を用いることで、強度、特に衝撃性が向上する。さらに、熱可塑性樹脂は化学反応を伴うことなく冷却固化して形状を決定するので、短時間成形が可能であり、生産性に優れる。したがって、マトリックス樹脂としては熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
プリプレグ1に対して形成する切り込み4としては、強化繊維5の長さ方向とのなす角度が30度以上90度以下、好ましくは30度以上60度以下となるように形成され、さらに、プリプレグ1m2あたりの切り込み長の総和が20m以上、150m以下となるように形成される。また、このような切り込み4によって切断された強化繊維5の長さは、特に制限されないものの、力学物性と流動性との観点から、5mm以上100mm以下とするのが好ましい。特に充分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させるためには、10mm以上50mm以下とするのがより好ましい。
なお、このような切り込み4は、長方形状のプリプレグ1に対して、その外周部を除く中央部に、ほぼ均一に分布するように形成する。図1(b)では、簡略化して切り込み4が同じ方向に配列した状態でそれぞれ連続しているように示しているが、実際には、図2に示すようにこのような切り込み4の一本一本は、断続的に形成配置された複数の切り込み4aによって形成されている。ここで、スリットシート3における、前記切り込み4が形成されている領域、すなわち図2中二点鎖線で囲まれた領域を切り込み形成領域6とし、この切り込み形成領域6の外側の、切り込みが形成されていない領域を非切り込み形成領域7とする。非切り込み形成領域7は、長方形状のプリプレグ1の外周部に長方形枠状に形成される。また、切り込み形成領域6は、非切り込み形成領域7の内側、すなわちプリプレグ1の中央部に長方形状に形成される。
このようなスリットシート3については、本実施形態では図1(b)に示すように強化繊維5の長さ方向(配向)が異なる複数種、すなわち4種のスリットシート3(3a、3b、3c、3d)を形成する。このようにして形成した4種のスリットシート3a、3b、3c、3dを予め設定した順番で順次積層し、後述するように加熱・加圧して一体化し、シート化することにより、その強度が全方位で略等しくなる、疑似等方積層基材を得ることができる。
これら4種のスリットシート3a、3b、3c、3dは、図1(a)に示したプリプレグ1に切り込み4を入れる工程において、それぞれ異なる打ち抜き装置2によって打ち抜かれ、その後順次排出されて同じ種類のものどうし積層され、保管される。したがって、前記したような疑似等方積層基材を得るためには、形成した4種のスリットシート3a、3b、3c、3dを予め設定した順番で積層し、積層基材とする必要がある。
そこで、異なる位置に積層され、保管された4種のスリットシート3(3a、3b、3c、3d)を、図1(c)に示すようにロボットハンド8を用いて所定位置にまで搬送し、予め設定された通りに積層する。
このロボットハンド8によるスリットシート3(3a、3b、3c、3d)の搬送工程が、本発明のスリットシートの搬送方法の一実施形態となる。
このロボットハンド8によるスリットシート3(3a、3b、3c、3d)の搬送工程が、本発明のスリットシートの搬送方法の一実施形態となる。
ロボットハンド8は、ハンド本体9と、ハンド本体9の先端部に設けられた吸着保持部10とを備えて構成されている。ハンド本体9は、その先端部の吸着保持部10を上下方向および水平方向に移動可能とし、かつ、水平面に対して所望の角度に傾けることができるように回動可能とした公知の機構のものである。
吸着保持部10は、本実施形態ではスリットシート3の大きさ・形状とほぼ同じ大きさ・形状の枠体と、この枠体に設けられてスリットシート3を吸着保持するパッドと、を備えて構成されている。
吸着保持部10は、本実施形態ではスリットシート3の大きさ・形状とほぼ同じ大きさ・形状の枠体と、この枠体に設けられてスリットシート3を吸着保持するパッドと、を備えて構成されている。
図3は、ロボットハンド8の吸着保持部10の概略構成を模式的に示す底面図である。本実施形態ではスリットシート3が長方形状に形成されていることから、図3に示すように吸着保持部10の枠体も長方形状に形成されている。すなわち、長方形状の外枠11aと、この外枠11aの内部に配設された十字状の内枠11bとによって枠体11が形成されている。
このような枠体11には、前述したようにその底面にパッドが設けられている。
パッドは、本実施形態では外枠11aに設けられた複数(8つ)の第1パッド12と、内枠11bに設けられた1つの第2パッド13とからなっている。なお、第1パッド12や第2パッド13の数については、後述するように搬送対象となるスリットシート3の形状や大きさに対応して、適宜に変更され、設定される。
パッドは、本実施形態では外枠11aに設けられた複数(8つ)の第1パッド12と、内枠11bに設けられた1つの第2パッド13とからなっている。なお、第1パッド12や第2パッド13の数については、後述するように搬送対象となるスリットシート3の形状や大きさに対応して、適宜に変更され、設定される。
第1パッド12は、面で吸着する一般的な吸盤型のパッド、すなわちお椀型や皿型、さらにはベローズ式などのゴムや樹脂、金属等からなる各種タイプの吸盤からなっている。この第1パッド12は、例えば図4に示すように、フレキシブルチューブ14を介して真空ポンプ等の負圧発生手段15に接続されている。これにより、第1パッド12は負圧発生手段15によって吸盤内が低真空度の負圧とされ、この負圧力によって吸盤の開口面全体で面吸着するようになっている。
なお、第1パッド12の負圧発生手段15としては、一般的な負圧源である真空ポンプに限定されず、後述する第2パッド13に備えられる、圧縮空気を供給することで負圧力を発生させる真空発生機構を用いることもできる。
第2パッド13は、低真空圧の負圧により吸着力を発揮する非吸盤型のパッドである。この非吸盤型の第2パッド13としては、例えば以下に示す2種類のパッドが使用可能である。
第1の種類のパッド13は、スリットシート3との間にエアクッションを介してスリットシート3を吸着保持する非接触型のパッドである。具体的には、図5(a)に示すようなベルヌーイタイプのパッド13が挙げられる。
第1の種類のパッド13は、スリットシート3との間にエアクッションを介してスリットシート3を吸着保持する非接触型のパッドである。具体的には、図5(a)に示すようなベルヌーイタイプのパッド13が挙げられる。
このベルヌーイタイプのパッド13では、供給ポート13aから導入された圧縮空気が、吸着面側の凸部13bの側面に設けられたノズルから放射状に噴き出され、放射流を形成する。この放射流は、パッド13とスリットシート3との間のクリアランス(隙間)から大気中に放出される。その際、この放射流によってパッド13とスリットシート3との間にエアクッションが形成される。また、噴き出された放射流がパッド13の側周面側に向かうことにより、パッド13の中心部には低真空域が形成される。これによってパッド13は、低真空圧の負圧によって吸引力を発揮し、エアクッションを介してスリットシート3を非接触で吸着保持する。
また、第1の種類の、エアクッションを介してスリットシート3を吸着保持する非接触型のパッド13としては、図5(b)に示すようなサイクロンタイプのパッド13も挙げられる。
このサイクロンタイプのパッド13では、供給ポート13aから導入された圧縮空気が、吸着面側の凹部13cの側面に設けられたノズルから周方向に噴き出され、旋回流を形成する。この旋回流は、パッド13とスリットシート3との間のクリアランス(隙間)から大気中に放出される。その際、この旋回流によってパッド13とスリットシート3との間にエアクッションが形成される。また、噴き出された旋回流がパッド13の側周面側に向かうことにより、サイクロン効果によって旋回流の内部、すなわちパッド13の中心部に低真空域が形成される。これによってパッド13は、低真空圧の負圧によって吸引力を発揮し、エアクッションを介してスリットシート3を非接触で吸着保持する。
このようなエアクッションを介してスリットシート3を吸着保持する非接触型のパッド13、すなわち第1の種類のパッド13では、サイズによっても異なるものの、供給ポート13aに供給する圧縮空気として0.1MPa以上0.6MPa以下の圧(作動圧)の空気が用いられ、これによって数Nから10数Nの保持力を発揮する。
また、このような非接触型のパッド13は、図5(a)、(b)に示すスリットシート3との間のクリアランスx1、x2、すなわち前記エアクッションの厚さに対応するパッド13とスリットシート3との間の隙間x1、x2が、好ましくは2mm以上10mm以下の範囲内となるようにスリットシート3上に配置される。x1(x2)が2mm未満では、後述するようにパッド13による吸引効果(吸引力)がスリットシート3の切り込み4を通過して二枚目のスリットシート3にも及び、二枚取りしてしまうおそれがあるからである。また、10mmを超えて離間すると、パッド13による吸引効果がスリットシート3の表面にまで及びにくくなり、スリットシート3に対する吸着保持力が小さくなって後述する撓みの防止効果が充分に発揮できなくなるからである。
また、第2の種類のパッド13は、図6(a)〜(c)に示すように略円筒状のパッド本体13dと、複数(多数)の吸引孔13eを有する吸着プレート(多孔プレート)13fとを有して構成されている。パッド本体13dには、図5(a)や図5(b)に示したような、導入された圧縮空気を側面から噴き出すことで低真空域を形成し、低真空圧の負圧によって吸引力を発揮する真空発生機構(図示せず)、およびこの真空発生機構で形成した真空を破壊して脱着を可能にする真空破壊回路が内蔵されている。
吸着プレート13fは、図6(a)に示すようにスリットシート3に接してこれを吸着保持する吸着面として機能するもので、前記の真空発生機構で形成された負圧による吸引力により、複数(多数)の吸引孔13eを介してスリットシート3を吸着保持する。
このような複数の吸引孔13eを有する吸着プレート13fからなる吸着面によってスリットシート3を吸着保持する接触型のパッド13、すなわち第2の種類のパッド13では、サイズによっても異なるものの、供給する圧縮空気として0.1MPa以上0.6MPa以下の圧(作動圧)の空気が用いられ、これによって数Nから10数Nの保持力を発揮する。なお、この第2の種類のパッド13の真空発生機構、すなわち図5(a)や図5(b)に示した低真空圧の負圧によって吸引力を発揮する真空発生機構を、前述した第1パッド12の負圧発生手段15として使用することができる。
このような複数の吸引孔13eを有する吸着プレート13fからなる吸着面によってスリットシート3を吸着保持する接触型のパッド13、すなわち第2の種類のパッド13では、サイズによっても異なるものの、供給する圧縮空気として0.1MPa以上0.6MPa以下の圧(作動圧)の空気が用いられ、これによって数Nから10数Nの保持力を発揮する。なお、この第2の種類のパッド13の真空発生機構、すなわち図5(a)や図5(b)に示した低真空圧の負圧によって吸引力を発揮する真空発生機構を、前述した第1パッド12の負圧発生手段15として使用することができる。
このような構成の第1パッド12、第2パッド13では、特に第1パッド12はスリットシート3における非切り込み形成領域7を吸着保持するように配置され、第2パッド13はスリットシート3における切り込み形成領域6を吸着保持するように配置される。すなわち、図2、図3に示したように、スリットシート3の非切り込み形成領域7となる外周部に対応する枠体11の外枠11aに、第1パッド12が配置され、スリットシート3の切り込み形成領域6となる中央部に対応する枠体11の内枠11bに、第2パッド13が配置される。
図3に示した例では、外枠11aに合計8つの第1パッド12が設けられ、内枠11bに一つの第2パッド13が設けられる。外枠11aに設けられた第1パッド12は、外枠11aの長辺方向、短辺方向にそれぞれ三つずつ配置されており、それぞれの方向において等間隔で配置されている。このような第1パッド12の数やその配置は、スリットシート3の大きさや形状に対応して適宜に設定されるが、100mm〜500mmの間隔で一つ配置するのが好ましい。
第2パッド13についても、スリットシート3の大きさや形状に対応して配置する数を複数にしてもよい。このような第2パッド13の配置は、例えばスリットシート3の面積2m2あたり、一つ配置するのが好ましい。その場合に、各第2パッド13の配置については、スリットシート3の面積を第2パッド13の個数で等分割して決められたエリアの、中心から30%以内の位置に配置することが好ましい。
このように配置すれば、スリットシート3がその自重で最も撓み易くなる位置を第2パッド13で吸着保持できるため、撓みに起因するスリットシート3の脱落を確実に防止することができる。また、第2パッド13を一つのみ配置する場合では、その配置をスリットシート3の重心から30%以内の位置に配置することが好ましい。このように配置すれば、前述した第2パッド13を複数配置した場合と同様に、撓みに起因するスリットシート3の脱落を確実に防止することができる。
このような構成の吸着保持部10を有するロボットハンド8により、図1(c)に示すようにスリットシート3を吸着保持して次の積層基材とする工程に供するべく、ロボットハンド8の吸着保持部10の第1パッド12、第2パッド13によってスリットシート3を吸着保持する。そして、その状態でロボットハンド8のハンド本体9を例えば回転移動させることにより、スリットシート3を所望箇所に移動し、脱着してスリットシート3の搬送を終了する。
その際、ロボットハンド8の吸着保持部10はスリットシート3の非切り込み形成領域6を第1パッド12で吸着保持し、切り込み形成領域7を第2パッド13で吸着保持するので、スリットシート3の外周部である非切り込み形成領域6については、従来と同様に安定して吸着保持することができる。
一方、スリットシート3の中央部である切り込み形成領域7については、低真空域の負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッド13によって吸着保持しているので、面で吸着する吸盤型の第1パッド12に比べて吸引力が比較的小さい。したがって、切り込み形成後に積層された状態で保管されているスリットシート3を吸着保持して持ち上げる際、吸引力が切り込み4を通過して二枚目のスリットシート3にまで及ぶことがなく、これによって二枚取りすることを防止することができる。
特に、第2パッド13として、図5(a)、(b)に示したようなエアクッションを介してスリットシート3を吸着保持する非接触型のパッド13を用いた場合、吸引力がスリットシート3の表面に広く及ぶ分、切り込み4を通過して二枚目のスリットシート3にまで及ぶことがなく、したがってスリットシート3の二枚取りを確実に防止することができる。
また、第2パッド13として、図6(a)〜(c)に示した複数の吸引孔13eを有する吸着プレート(多孔プレート)13fを備えたパッド13を用いた場合では、一つ一つの吸引孔13eによる吸引力が小さく、したがって切り込み4の直上に配置される吸引孔13eがあってもこれによる吸引力は小さいことから、この吸引力が切り込み4を通過して二枚目のスリットシート3にまで及ぶことがない。すなわち、吸引孔13eの多くは切り込み4の直上に配置されることなく切り込み4、4間に配置されてその吸引力が二枚目のスリットシート3に及ぶことがなく、また、切り込み4の直上に配置される吸引孔13eは僅かであってその吸引力も小さいことから、この吸引力が実質的に二枚目のスリットシート3にまで及ぶことがない。したがって、吸着プレート(多孔プレート)13fを備えたパッド13にあっても、スリットシート3の二枚取りを確実に防止することができる。
また、図5(a)、(b)に示したパッド13では、前述したように吸引力がスリットシート3の表面に広く及ぶことから、スリットシート3が大判である場合でも、その自重で中央部(切り込み形成領域6)が撓むことを防止することができ、したがってこのような撓みを起点とする、スリットシート3のロボットハンド8の吸着保持部10からの脱落を防止することができる。
一方、図6(a)〜(c)に示したパッド13でも、前述したように吸引孔13eの多くが切り込み4、4間に配置されて一枚目のスリットシート3に対してのみ吸引力を発揮するので、スリットシート3の中央部(切り込み形成領域6)の撓みを防止し、このような撓みを起点とするスリットシート3の脱落を防止することができる。
前記したようにロボットハンド8によってスリットシート3を吸着保持し、次工程に供するべくこれを搬送する際には、図7に示すようにスリットシート3を立ててその移送方向(搬送方向)に向く面と水平面(図7中に二点鎖線で示す)との間に角度θを付与することが好ましい。このようにスリットシート3の移送時(搬送時)の姿勢に角度θを付与することにより、移送時にスリットシート3がその下面(移送方向を向く面)に空気抵抗を受ける。これにより、スリットシート3は自重による撓みが抑制され、吸着保持部10からの脱落がより確実に防止される。また、このような空気抵抗によってスリットシート3には浮力が働くため、その移動が安定することで移動速度を上げることができ、したがって搬送効率を高めることができる。
ここで、ロボットハンド8によってスリットシート3を搬送する際には、下記式(1)で表されるスリットシート3にかかる空気抵抗力Fを、0N<F≦10Nにすることが好ましい。下記式(1)はニュートンの抵抗法則を示す式であり、Fは抵抗力、すなわちスリットシート3にかかる空気抵抗力を示す。
F=C(ρv2/2)Ssinθ …式(1)
ただし、Cは抵抗係数、ρは空気の密度、vは前記ロボットハンド8の吸着保持部10の水平方向の移動速度、Sはスリットシートの面積、θはスリットシート3の移送方向(搬送方向)に向く面と水平面とのなす角度である。
ここで、スリットシートのように物体の形状が板状である場合のC(抵抗係数)は1.1であることから、本実施形態では前記式(1)中のC(抵抗係数)を1.1とする。
また、S×sinθにより、スリットシート3の移動方向に投影された面積S’が求められる。すなわち、S’=S×sinθとなる。
F=C(ρv2/2)Ssinθ …式(1)
ただし、Cは抵抗係数、ρは空気の密度、vは前記ロボットハンド8の吸着保持部10の水平方向の移動速度、Sはスリットシートの面積、θはスリットシート3の移送方向(搬送方向)に向く面と水平面とのなす角度である。
ここで、スリットシートのように物体の形状が板状である場合のC(抵抗係数)は1.1であることから、本実施形態では前記式(1)中のC(抵抗係数)を1.1とする。
また、S×sinθにより、スリットシート3の移動方向に投影された面積S’が求められる。すなわち、S’=S×sinθとなる。
スリットシートを搬送する際、ロボットハンド8を傾けてスリットシート3に前記角度θを付与する(θを0度より大とする)ことにより、空気抵抗力は0Nより大となる。
このように空気抵抗力Fを0Nより大とすることにより、前述したようにスリットシート3の撓みを抑制して吸着保持部10からの脱落をより確実に防止することができる。
すなわち、スリットシート3の下面からの空気抵抗によってスリットシート3の撓みが防止され、これによって脱落することなくスリットシート3が搬送されるようになる。
また、スリットシート3に浮力が働くため、移動速度を上げることで搬送効率を高めることができる。
このように空気抵抗力Fを0Nより大とすることにより、前述したようにスリットシート3の撓みを抑制して吸着保持部10からの脱落をより確実に防止することができる。
すなわち、スリットシート3の下面からの空気抵抗によってスリットシート3の撓みが防止され、これによって脱落することなくスリットシート3が搬送されるようになる。
また、スリットシート3に浮力が働くため、移動速度を上げることで搬送効率を高めることができる。
ただし、角度θや移動速度vが大きくなって空気抵抗力Fが10Nを超えると、スリットシート3の切り込み4から抜けようとする空気によって切り込み4の形成部分に裂けや形態不良などが生じるおそれがある。したがって、空気抵抗力Fを10N以下にするのが好ましい。空気抵抗力Fを10N以下すれば、切り込み4から抜けようとする空気の量が少なくなり、前記の裂けや形態不良などのおそれがほとんどなくなる。
このようにして異なる位置に積層され、保管された4種のスリットシート3(3a、3b、3c、3d)を、ロボットハンド8を用いて所定位置にまで搬送し、予め設定された通りに積層したら、この積層した複数のスリットシート3、すなわち積層基材を、図1(d)に示すように例えばダブルベルト方式のシート化装置16で加熱・加圧して一体化し、繊維強化プラスチックシートする。
本実施形態のスリットシートの搬送方法によれば、前記スリットシート3の搬送工程で示したように、特に切り込み形成領域6を第2パッドで吸着保持するようにしたので、このスリットシート3を搬送する際の、二枚取りや脱落といった搬送トラブルを防止することができる。
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
300mm角の正方形状のスリットシートを、高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、図6(a)に示したタイプの第2パッド13であるシュマルツ製のコアンダグリッパー(SCG−1xE100−A−MA)一つと、第1パッド12である吸着パッド(SAUG−FL−SCG−40−POM)二つとを備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。二つの第1パッド12は正方形状のスリットシートの一方の対角線の両側を吸着保持させ、一つの第2パッド13は正方形状のスリットシートの中心を吸着保持させた。第1パッド12、第2パッド13には、それぞれ圧力0.1MPaで空気を供給し、負圧を発生させることでスリットシートを吸引させ、これを保持吸着させた。
(実施例1)
300mm角の正方形状のスリットシートを、高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、図6(a)に示したタイプの第2パッド13であるシュマルツ製のコアンダグリッパー(SCG−1xE100−A−MA)一つと、第1パッド12である吸着パッド(SAUG−FL−SCG−40−POM)二つとを備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。二つの第1パッド12は正方形状のスリットシートの一方の対角線の両側を吸着保持させ、一つの第2パッド13は正方形状のスリットシートの中心を吸着保持させた。第1パッド12、第2パッド13には、それぞれ圧力0.1MPaで空気を供給し、負圧を発生させることでスリットシートを吸引させ、これを保持吸着させた。
このような第1パッド12、第2パッド13を備えた吸着保持部で最上段のスリットシートを吸着保持するべく、該スリットシートに接近させたところ、スリットシート上面との距離が10mm程度に近づいたときから最上段のスリットシートのみが浮き上がり、この最上段のスリットシートのみを吸着保持することができた。
したがって、積層されたスリットシートを一枚ずつ吸着保持し、搬送することができた。また、搬送時におけるスリットシートの脱落もなく、スリットシートの変形も見られなかった。
したがって、積層されたスリットシートを一枚ずつ吸着保持し、搬送することができた。また、搬送時におけるスリットシートの脱落もなく、スリットシートの変形も見られなかった。
(比較例1)
300mm角の正方形状のスリットシートを、高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、第1パッド12である吸着パッド(SAUS−FL−SCG−40−POM)を三つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。第1パッド12は、正方形状のスリットシートの一方の対角線の両側と、中心とを吸着保持させた。第1パッド12には、それぞれ圧力0.5MPaで空気を供給し、負圧を発生させることでスリットシートを吸引させ、これを保持吸着させた。
300mm角の正方形状のスリットシートを、高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、第1パッド12である吸着パッド(SAUS−FL−SCG−40−POM)を三つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。第1パッド12は、正方形状のスリットシートの一方の対角線の両側と、中心とを吸着保持させた。第1パッド12には、それぞれ圧力0.5MPaで空気を供給し、負圧を発生させることでスリットシートを吸引させ、これを保持吸着させた。
このような第1パッド12のみを備えた吸着保持部で最上段のスリットシートを吸着保持させたところ、第1パッド12が切り込みの直上に位置することで、該切り込みを通して下段のスリットシートも吸着してしまい、二枚取りが発生した。また、吸着時にスリットシートに多少の変形が見られた。
(実施例2)
940mm×1235mmの長方形状のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。
最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を12個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を二つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。12個の第1パッド12は、スリットシートの長方形枠状の外周部(非切り込み形成領域7)に310mm間隔で配置した。二つの第2パッド13は、縦940mmの中央、横1235mmのうち410mm間隔で配置した。
940mm×1235mmの長方形状のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。
最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を12個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を二つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。12個の第1パッド12は、スリットシートの長方形枠状の外周部(非切り込み形成領域7)に310mm間隔で配置した。二つの第2パッド13は、縦940mmの中央、横1235mmのうち410mm間隔で配置した。
このような第1パッド12、第2パッド13を備えた吸着保持部を最上段のスリットシートに近づけたところ、第1パッド12によってその外周部を吸着保持し、第2パッド13によってスリットシートの中央部を吸着保持することができた。その際、第2パッド13によって二枚取りすることなく、最上段のスリットシートのみを吸着保持することができた。また、このようにスリットシートのみを吸着保持したときの、第2パッド13(サイクロンパッド)と最上段のスリットシートとのクリアランスは5mmであった。
(実施例3)
938mm×938mmの直角二等辺三角形のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を6個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を一つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。6個の第1パッド12は、スリットシートの直角を挟む2辺に310mm間隔で配置した。一つの第2パッド13は、スリットシートの重心と斜辺との間の中心に配置した。
938mm×938mmの直角二等辺三角形のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を6個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を一つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。6個の第1パッド12は、スリットシートの直角を挟む2辺に310mm間隔で配置した。一つの第2パッド13は、スリットシートの重心と斜辺との間の中心に配置した。
このような第1パッド12、第2パッド13を備えた吸着保持部を最上段のスリットシートに近づけ、このスリットシートと各パッド12、13との間のクリアランスが3mmとなる位置で吸引を開始したところ、第1パッド12によってその外周部を吸着保持し、第2パッド13によってスリットシートの中央部を吸着保持することができた。
ただし、第1パッド12、第3パッド13を上方へ持ち上げた際、最上段のスリットシートと併せて、第2パッド13(サイクロンパッド)が吸着する位置のみで二枚目のスリットシートも持ち上がった。その後、吸着保持部を上昇させて第1パッド12、第2パッド13の位置をさらに高くしたところ、二枚目のスリットシートは自重で脱落し、元の位置に戻った。したがって、本実施例でも、最上段のスリットシートのみを搬送することができ、また、二枚目のスリットシートも最上段のスリットシートと同様にトラブルなく搬送できることが分かった。
ただし、第1パッド12、第3パッド13を上方へ持ち上げた際、最上段のスリットシートと併せて、第2パッド13(サイクロンパッド)が吸着する位置のみで二枚目のスリットシートも持ち上がった。その後、吸着保持部を上昇させて第1パッド12、第2パッド13の位置をさらに高くしたところ、二枚目のスリットシートは自重で脱落し、元の位置に戻った。したがって、本実施例でも、最上段のスリットシートのみを搬送することができ、また、二枚目のスリットシートも最上段のスリットシートと同様にトラブルなく搬送できることが分かった。
(実施例4)
940mm×1235mmの長方形状のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。
最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を12個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を二つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。12個の第1パッド12は、スリットシートの長方形枠状の外周部(非切り込み形成領域7)に310mm間隔で配置した。二つの第2パッド13は、縦940mmの中央、横1235mmのうち410mm間隔で配置した。
940mm×1235mmの長方形状のスリットシートを高さ方向に複数枚重ねて積層した。
最上段のスリットシートを、第1パッド12であるPISCO製の吸着パッド(VPHD15LS6J)を12個備え、図6(b)に示したタイプの第2パッド13であるSMC製サイクロンパッド(XT661−6A−R/L)を二つ備えたロボットハンドの吸着保持部により吸着保持し、所定距離搬送した。12個の第1パッド12は、スリットシートの長方形枠状の外周部(非切り込み形成領域7)に310mm間隔で配置した。二つの第2パッド13は、縦940mmの中央、横1235mmのうち410mm間隔で配置した。
このような第1パッド12、第2パッド13を備えた吸着保持部を最上段のスリットシートに近づけたところ、第1パッド12によってその外周部を吸着保持し、第2パッド13によってスリットシートの中央部を吸着保持することができた。
また、このようにスリットシートを吸着保持した状態で、前記式(1)におけるスリットシートの水平面に対する角度θが20度となるようにロボットハンドの角度を設定し、速度1.5m/sで搬送した。このとき、スリットシートにかかる抵抗力Fは0.59Nであった。
移動によりスリットシートの下面側に発生する浮力によってスリットシートが支持されることにより、スリットシートを撓ませることなく搬送することができた。
また、このようにスリットシートを吸着保持した状態で、前記式(1)におけるスリットシートの水平面に対する角度θが20度となるようにロボットハンドの角度を設定し、速度1.5m/sで搬送した。このとき、スリットシートにかかる抵抗力Fは0.59Nであった。
移動によりスリットシートの下面側に発生する浮力によってスリットシートが支持されることにより、スリットシートを撓ませることなく搬送することができた。
1…プリプレグ、3…スリットシート、4…切り込み、5…強化繊維、6…切り込み形成領域、7…非切り込み形成領域、8…ロボットハンド、10…吸着保持部、12…第1パッド、13…第2パッド
Claims (7)
- 強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグに対して前記強化繊維を横切る方向で該強化繊維を切断する深さに切り込みを形成してなるスリットシートを、ロボットハンドで保持して搬送するスリットシートの搬送方法であって、
前記ロボットハンドとして、面で吸着する吸盤型の第1パッドと、負圧により吸着力を発揮する非吸盤型の第2パッドとを備えたものを用い、
前記スリットシートの、前記切り込みが形成されていない領域を前記第1パッドで吸着保持するとともに、前記スリットシートの、前記切り込みが形成された領域を前記第2パッドで吸着保持し、その状態で前記ロボットハンドを移動させることにより、前記スリットシートを搬送することを特徴とするスリットシートの搬送方法。 - 前記スリットシートを搬送する際に、下記式(1)で表される前記スリットシートにかかる空気抵抗力Fを、0Nより大、かつ、10N以下にすることを特徴とする請求項1記載のスリットシートの搬送方法。
F=C(ρv2/2)Ssinθ …式(1)
ただし、Cは抵抗係数、ρは空気の密度、vは前記ロボットハンドの水平方向の移動速度、Sはスリットシートの面積、θはスリットシートの移送方向に向く面と水平面とのなす角度である。 - 前記第2パッドは、該第2パッドと前記スリットシートとの間にエアクッションを介して前記スリットシートを吸着保持する非接触型のパッドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスリットシートの搬送方法。
- 前記第2パッドと前記スリットシートとの間のクリアランスを、2mm以上10mm以下とすることを特徴とする請求項3記載のスリットシートの搬送方法。
- 前記第2パッドは、複数の吸引孔を有する多孔プレートからなる吸着面によって前記スリットシートを吸着保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のスリットシートの搬送方法。
- 前記スリットシートの厚みが、50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリットシートの搬送方法。
- 前記第2パッドの作動圧が0.1MPa以上0.6MPa以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスリットシートの搬送方法。
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-
2014
- 2014-02-14 JP JP2014026636A patent/JP2015150787A/ja active Pending
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