実施形態を図面を参照して以下に説明する。
図1は、実施形態に係るピストン21を含むディスクブレーキ10を示すものである。このディスクブレーキ10は、自動車等の車両用に制動力を付与するものであり、具体的には四輪自動車の前輪制動用のものである。ディスクブレーキ10は、図示略の車輪と共に回転するディスク11の回転を止めることで車両を制動する。以下、ディスク11の中心軸線の方向をディスク軸方向、ディスク11の径方向をディスク径方向、ディスク11の回転方向(円周方向)をディスク回転方向と称す。
ディスクブレーキ10は、キャリア12と、一対のパッド13,14と、キャリパ15とを備えている。キャリア12は、ディスク11の外周側を跨いで配置されて車両の非回転部に固定される。一対のパッド13,14は、ディスク回転方向の両側がキャリア12にディスク軸方向に移動可能となるように支持されてディスク11のディスク軸方向の両側に配置される。言い換えれば、キャリア12は、ディスク11の両側に配置される一対のパッド13,14を移動可能に支持する。キャリパ15は、キャリア12にディスク軸方向に移動可能に設けられており、ディスク11を跨いで配置される。キャリパ15は、一対のパッド13,14を挟持してこれらをディスク11の両面に押圧する。
キャリパ15は、キャリパボディ20と、ピストン21と、ピストンシール22と、ピストンブーツ23とを有している。
キャリパボディ20は、鋳造により一体成形された金属製の素材に加工を施すことにより形成されるもので、具体的にはアルミニウム合金からなっている。なお、キャリパボディ20をダクタイル鋳鉄等の鋳鉄製とすることも可能である。キャリパボディ20は、ディスク11のディスク軸方向の一側に位置するシリンダ部26と、シリンダ部26のディスク径方向外側からディスク11の外周を跨ぐように延出するブリッジ部27と、ブリッジ部27のシリンダ部26とは反対側からディスク径方向内方に延出してディスク11のディスク軸方向の他側に位置する爪部28と、を有している。キャリパボディ20は、これに取り付けられる図示略のスライドピンにおいてキャリア12にディスク軸方向に移動可能に支持される。
キャリパ15のキャリパボディ20には、そのシリンダ部26に、爪部28側に向けて一端が開口しディスク軸方向のディスク11とは反対側に向けて凹むシリンダボア35が形成されている。シリンダボア35が形成されることにより、シリンダ部26は、爪部28とは反対側に、シリンダボア35の内底面38を含むシリンダ底部36を有しており、シリンダ底部36から爪部28側に延出してシリンダボア35の内周面39を含むシリンダ胴部37を有している。
シリンダボア35には、ピストン21がディスク軸方向に摺動可能となるように収容されている。ピストン21は、一対のパッド13,14のうちの一方である、ピストン21とディスク11との間に配置されたパッド13を押圧する。一対のパッド13,14のうち、パッド13は、車幅方向内側に配置されるインナ側のパッドであり、パッド14は、車幅方向外側に配置されるアウタ側のパッドである。
シリンダボア35の内周面39は、ピストン21の移動を案内する円筒面であるガイド内周面41を有している。シリンダボア35の内周面39は、ガイド内周面41よりもシリンダ底部36側に、ガイド内周面41よりも径方向外方に凹む円環状の大径溝42を有している。大径溝42は、溝底径が、ガイド内周面41よりも大径となっている。シリンダボア35の内周面39は、ガイド内周面41のシリンダ底部36とは反対側の中間位置に、ガイド内周面41よりも径方向外方に凹む円環状のピストンシール溝45を有している。シリンダ部26には、シリンダボア35よりも爪部28側に、シリンダボア35のガイド内周面41よりも径方向外方に凹む円環状のブーツ嵌合穴48が形成されている。ブーツ嵌合穴48の底部にシリンダボア35の開口部51が開口している。
ピストン21は、円板状の底部61と筒状のピストン筒状部62(筒状部)とを備えており、ピストン筒状部62の底部61とは反対側はピストン開口部63(開口部)となっている。言い換えれば、ピストン21は、底部61とピストン筒状部62とを有しピストン筒状部62の底部61とは反対側の端部がピストン開口部63とされた有底筒状に形成されている。以下、ピストン21の中心軸線の方向をピストン軸方向、ピストン21の径方向をピストン径方向、ピストン21の円周方向をピストン周方向と称す。
ピストン筒状部62には、ピストン軸方向の底部61とは反対のピストン先端面66側に、円筒面からなるピストン主外周面64よりもピストン径方向の内方に凹む円環状の係止溝65が形成されている。係止溝65は、ピストン周方向に延びている。ピストン21は、底部61がシリンダボア35内でシリンダ底部36側に位置するようにシリンダボア35に収容されており、この状態で、ピストン先端面66を含む先端側がシリンダボア35よりも爪部28側に突出している。ピストン21には、このようにシリンダボア35よりも突出する先端側に係止溝65が形成されている。
ピストン筒状部62には、ピストン軸方向のピストン先端面66側の内周側に、円筒面からなる主内周面71よりもピストン径方向の外方に凹んでピストン軸方向に延びる軸方向延在溝72,73(軸方向延在部)が形成されている。言い換えれば、ピストン21は、ピストン開口部63側の内周側にピストン軸方向に延びる複数の軸方向延在溝72,73を有している。
軸方向延在溝72と軸方向延在溝73とは、ピストン軸方向の長さを異ならせている。軸方向延在溝72および軸方向延在溝73は、いずれもピストン21のピストン開口部63側のピストン先端面66に開口しており、ピストン先端面66から底部61側に向けて延びている。軸方向延在溝72と軸方向延在溝73とは、互いにピストン先端面66からのピストン軸方向の長さを異ならせており、軸方向延在溝72が軸方向延在溝73よりもピストン軸方向の長さが長い。ピストン筒状部62には、ピストン軸方向のピストン先端面66側の内周側のみに、軸方向延在溝72,73が形成されている。
ピストン21には、同長さの複数の軸方向延在溝72が中心軸を中心として点対称の位置に複数配置されており、同長さの複数の軸方向延在溝73が中心軸を中心として点対称の位置に複数配置されている。具体的に、ピストン21には、同長さの二箇所の軸方向延在溝72が、互いにピストン周方向に180度位置を異ならせて形成されており、同長さの二箇所の軸方向延在溝73が、互いにピストン周方向に180度位置を異ならせて形成されている。ピストン周方向において隣り合う軸方向延在溝72と軸方向延在溝73とはピストン周方向に90度位置を異ならせて形成されている。ピストン21は、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の内周側にピストン軸方向の長さが異なる複数の軸方向延在溝72,73を有しており、複数の軸方向延在溝72が、中心軸を中心として点対称の位置に配置され、複数の軸方向延在部73が、中心軸を中心として点対称の位置に配置されている。
ピストンシール22は、シリンダボア35のピストンシール溝45に嵌合されており、このピストンシール22の内周側にピストン21が嵌合されている。ピストンシール22は、シリンダ部26とピストン21との隙間をシールすると共に、シリンダボア35のガイド内周面41とでピストン21を軸方向に移動可能に支持する。
ピストンブーツ23は、シリンダ部26のブーツ嵌合穴48に嵌合する環状の大径嵌合部81と、ピストン21の係止溝65に嵌合する環状の小径嵌合部82と、これらの間の伸縮可能な蛇腹部83とを有している。ピストンブーツ23は、ピストン21の係止溝65よりもシリンダボア35側の部分のシリンダ部26から露出する外周部を覆っており、ピストン21のシリンダ部26に対する移動に伴って、シリンダ部26およびピストン21に対し固定されていない中間の蛇腹部83が伸縮する。
ピストン21は、鍛造により成形される図2に示すピストン素材21Aに対して切削加工等を行うことで製造される。
ピストン素材21Aは、円板状の底部61と筒状の素材筒状部62A(筒状部)とを有しており、素材筒状部62Aの底部61とは反対側は素材開口部63A(開口部)となっている。言い換えれば、ピストン素材21Aは、素材筒状部62Aの底部61とは反対側が素材開口部63Aとされた有底筒状に形成されている。以下、ピストン素材21Aの中心軸線の方向を素材軸方向、ピストン素材21Aの径方向を素材径方向、ピストン素材21Aの円周方向を素材周方向と称す。
素材筒状部62Aには、素材軸方向の素材先端面66A側の内周側に、円筒面からなる主内周面71よりも素材径方向の外方に凹んで素材軸方向に延びる軸方向延在溝72,73が形成されている。言い換えれば、ピストン素材21Aは、素材開口部63A側の内周側に素材軸方向に延びる複数の軸方向延在溝72,73を有している。軸方向延在溝72と軸方向延在溝73とは、素材軸方向の長さを異ならせている。軸方向延在溝72および軸方向延在溝73は、いずれもピストン素材21Aの素材開口部63A側の素材先端面66Aに開口しており、素材先端面66Aから底部61側に向けて延びている。軸方向延在溝72および軸方向延在溝73は、互いに素材先端面66Aからの素材軸方向の長さを異ならせており、軸方向延在溝72が軸方向延在溝73よりも素材軸方向の長さが長い。素材筒状部62Aには、素材軸方向の素材先端面66A側の内周側のみに、軸方向延在溝72,73が形成されている。
ピストン素材21Aには、軸方向延在溝72が中心軸を中心として点対称の位置に複数配置されており、軸方向延在溝73が中心軸を中心として点対称の位置に複数配置されている。具体的に、ピストン素材21Aには、二箇所の同長さの軸方向延在溝72が、互いに素材周方向に180度位置を異ならせて形成されており、二箇所の同長さの軸方向延在溝73が、互いに素材周方向に180度位置を異ならせて形成されている。素材周方向において隣り合う軸方向延在溝72と軸方向延在溝73とは素材周方向に90度位置を異ならせて形成されている。ピストン素材21Aは、素材筒状部62Aに、円筒面からなる素材主外周面64Aを有している。ピストン素材21Aは、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に軸方向に延びる軸方向延在溝72,73を有している。ピストン素材21Aは、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に素材軸方向の長さが異なる複数の軸方向延在溝72,73を有しており、複数の軸方向延在溝72が、中心軸を中心として点対称の位置に配置され、複数の軸方向延在部73が、中心軸を中心として点対称の位置に配置されている。
ピストン素材21Aは、図3に示すピストン製造工程を経てピストン21となる。ピストン製造工程は、例えば丸棒状の材料を受け入れる材料受入工程S1と、材料受入工程S1で受け入れた丸棒状の材料を所定長さに切断する切断工程S2と、切断工程S2で切断された材料を焼鈍する焼鈍工程S3と、焼鈍工程S3で焼鈍された材料に皮膜処理を行って潤滑皮膜を生成するボンデ工程S4と、ボンデ工程S4でボンデ処理された材料に冷間鍛造を行う冷間鍛造工程S5と、冷間鍛造工程S5で冷間鍛造された材料を焼鈍する焼鈍工程S6と、焼鈍工程S6で焼鈍された材料に皮膜処理を行って潤滑皮膜を生成するボンデ工程S7と、ボンデ工程S7でボンデ処理された材料に冷間鍛造を行う冷間鍛造工程S8と、を含んでいる。これらの材料受入工程S1〜冷間鍛造工程S8を経て、ピストン素材21Aは、上記形状に形成される。
ここで、軸方向延在溝72,73は、冷間鍛造工程S5および冷間鍛造工程S8の少なくともいずれか一方の工程で形成される。材料受入工程S1〜冷間鍛造工程S8が、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に素材軸方向に延びる軸方向延在溝72,73を有する有底筒状のピストン素材21Aを製造する素材製造工程となっている。ピストン製造工程では、その素材製造工程において、軸方向延在溝72,73を、素材軸方向の長さを異ならせて複数形成する。なお、ピストン素材21Aを、鍛造で形成するのではなく、鋳造によって形成しても良い。
そして、冷間鍛造工程S8後の切削加工工程S9で、ピストン素材21Aに切削加工を行う。切削加工工程S9においては、ピストン素材21Aの素材筒状部62Aの素材開口部63A側を素材先端面66Aから切削して、ピストン先端面66を形成する。また、素材筒状部62Aの素材主外周面64A側を素材主外周面64Aから切削して、ピストン主外周面64および係止溝65を形成する。
切削加工工程S9後、ピストン主外周面64を研磨加工する研磨加工工程S10を行い、その後、メッキ処理工程S11を行う。材料受入工程S1〜メッキ処理工程S11を含むピストン製造工程を経てピストン21が製造される。
以上により、材料受入工程S1〜メッキ処理工程S11を含むピストン製造工程は、ピストン素材21Aの少なくとも素材筒状部62Aの素材開口部63A側を切削加工する切削加工工程を含み、ピストン素材21Aは、少なくとも素材筒状部62Aの素材開口部63A側が切削加工されてピストン21となる。
ここで、上記のように、切削加工工程S9においては、素材筒状部62Aの素材開口部63A側を素材先端面66Aから切削して、ピストン先端面66を形成することになるが、実施形態に係る製造方法では、複数のピストン素材21Aに対して、素材筒状部62Aの切削加工工程S9により切削される部分の素材軸方向の長さをそれぞれ異ならせることにより、この切削加工工程S9後に残存する軸方向延在溝72,73の数をそれぞれ異ならせる。
すなわち、複数の同形状のピストン素材21Aを製造し、これら同形状のピストン素材21Aの中から、切削加工工程S9後に図4に示すように軸方向延在溝72,73の両方が残存するピストン21を形成したり、同形状のピストン素材21Aの中から、切削加工工程S9後に図5に示すように軸方向延在溝72のみが残存するピストン121を形成したり、同形状のピストン素材21Aの中から、切削加工工程S9後に図6に示すように軸方向延在溝72,73のいずれも残存しないピストン221を形成したりする。
よって、ピストン21は、ピストン121よりもピストン軸方向の長さが長く、ピストン121は、ピストン221よりもピストン軸方向の長さが長い。
図4に示すように、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の端部の内周面側に、二箇所の軸方向延在溝72および二箇所の軸方向延在溝73の合計四つが残存しているものは、同形状のピストン素材21Aから形成されるピストン21,121,221のうち最もピストン軸方向の長さが長いピストン21となる。ピストン21の四箇所の軸方向延在溝72,72,73,73は、いずれもピストン先端面66まで延びている。
図5に示すように、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の端部の内周側に、二箇所の軸方向延在溝72および二箇所の軸方向延在溝73のうちの二箇所の軸方向延在溝72のみが残存しているものは、同形状のピストン素材21Aから形成されるピストン21,121,221のうちピストン軸方向の長さが中間のピストン121となる。ピストン121の二箇所の軸方向延在溝72,72も、いずれもピストン先端面66まで延びている。
図6に示すように、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の端部に、二箇所の軸方向延在溝72および二箇所の軸方向延在溝73のいずれも残存していないものは、同形状のピストン素材21Aから形成されるピストン21,121,221のうちピストン軸方向の長さが最も短いピストン221となる。ピストン221には、ピストン先端面66まで延びる溝はない。
よって、作業者は、ピストン筒状部62のピストン開口部63側のピストン先端面66を軸方向外側から見て、図4(a)に示すようにピストン先端面66に四箇所の溝72,72,73,73があれば、ピストン21,121,221のうち最もピストン軸方向の長さが長いピストン21であると識別でき、図5(a)に示すようにピストン先端面66に二箇所のみの溝72,72があれば、ピストン21,121,221のうちピストン軸方向の長さが中間のピストン121であると識別でき、図6(a)に示すようにピストン先端面66に溝がなければ、ピストン21,121,221のうちピストン軸方向の長さが最も短いピストン221であると識別できる。即ち、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の溝の数で、ピストンの長さ違いを識別できる。
図1に示すディスクブレーキ10には、ピストン21,121,221のうち、最もピストン軸方向の長さが長いピストン21が組み付けられることになり、他のディスクブレーキには、ピストン21,121,221のうち、ピストン軸方向の長さが中間のピストン121が組み付けられることになり、さらに他のディスクブレーキには、ピストン21,121,221のうち、ピストン軸方向の長さが最も短いピストン221が組み付けられることになる。
ディスクブレーキ10は、シリンダボア35と、ピストン21との間にブレーキ液圧が導入されると、ピストン21にブレーキ液圧が作用する。すると、ピストン21が、ディスク11側に前進し、ディスク11との間に配置されたパッド13をディスク11に向かって押圧する。これにより、このパッド13が移動してディスク11に接触する。また、この押圧の反力で、キャリパボディ20がキャリア12に対し移動し、爪部28が、爪部28とディスク11との間に配置されたパッド14をディスク11に向かって押圧する。これにより、このパッド14が、ディスク11に接触する。このようにして、キャリパ15は、ピストン21の作動により、ピストン21と爪部28とで一対のパッド13,14をディスク軸方向の両側から挟持してディスク11の両面に押圧する。その結果、キャリパ15は、ディスク11に摩擦抵抗を付与して、制動力を発生させる。
特許文献1に記載のピストンは、内燃機関のピストンであり、有底筒状で、底部の外周側には、周方向に延びる溝が軸方向に間隔をあけて複数配置されている。これらの溝は、ピストンリングを保持するリング溝である。
実施形態のピストンの製造方法は、底部61と素材筒状部62Aとを有し素材筒状部62Aの底部61とは反対側が素材開口部63Aとされ、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に素材軸方向に延びる軸方向延在溝72,73を有する有底筒状のピストン素材21Aを製造する素材製造工程と、ピストン素材21Aの少なくとも素材筒状部62Aの素材開口部63A側を切削加工する切削加工工程と、を含み、複数のピストン素材21Aに対して、素材筒状部62Aの切削加工工程により切削される部分の素材軸方向の長さをそれぞれ異ならせることにより、切削加工工程後に残存する軸方向延在溝72,73の数をそれぞれ異ならせる。よって、同形状の共通のピストン素材21Aから複数種類のピストン21,121,221を形成することができ、これらピストン21,121,221が軸方向延在溝72,73の数で識別可能となる。したがって、複数種類のピストン21,121,221を製造するにあたって、それぞれのピストン素材21Aを製造するための金型を共通化できて金型のコストを低減でき、ピストン素材21Aの在庫管理も容易となって管理コストを低減できる。
また、素材筒状部62Aの内周側に軸方向延在溝72,73を形成するため、シリンダボア35のガイド内周面41を摺動するピストン主外周面64に打痕、傷等が生じることを抑制できる。
また、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に軸方向に延びる軸方向延在溝72,73を形成するため、目視による識別が容易となり、誤組み付け等を抑制することができ、プローブによる自動検査にも適している。
また、同形状の共通のピストン素材21Aから複数種類のピストン21,121,221を形成することができるため、複数種類のピストン21,121,221の製造ラインにおいて、切削加工工程S9よりも前の工程の設備を同様の構造にできる。したがって、設備コストを低減することができる。
また、素材製造工程S1〜S8において、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に素材軸方向の長さが異なる複数の軸方向延在溝72,73を形成するため、共通形状のピストン素材21Aから、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の内周側に最も多くの軸方向延在溝72,72,73,73を有するピストン21と、これよりも数が少ない軸方向延在溝72,72を有するピストン121と、溝がないピストン221との、少なくとも3種類を製造することができる。
ピストン素材21Aは、底部61と素材筒状部62Aとを有し素材筒状部62Aの底部61とは反対側が素材開口部63Aとされた有底筒状であり、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に軸方向に延びる軸方向延在溝72,73を有するため、上記した製造方法に用いて好適となる。
ピストン21は、底部61とピストン筒状部62とを有しピストン筒状部62の底部61とは反対側がピストン開口部63とされた有底筒状であり、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の内周側に軸方向方向長さが異なる複数の軸方向延在溝72,73を有するため、複数の軸方向延在溝72,73を目視することが容易となる。
ピストン21は、軸方向延在溝72が中心軸を中心として点対称の位置に配置されており、軸方向延在溝73が中心軸を中心として点対称の位置に配置されているため、ピストン21の重量バランスが良好となる。特に鍛造で軸方向延在溝72,73を形成する際に安定的にこれらを形成することができる。
以上の実施形態においては、素材製造工程において、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に素材軸方向の長さが異なる複数の軸方向延在溝72,73を形成する場合を例にとり説明したが、図7に示すように、素材筒状部62Aの素材開口部63A側の内周側に軸方向延在溝にかえて、素材軸方向の長さが異なる複数の軸方向延在突部172,173(軸方向延在部)を形成しても良い。
この場合も、複数のピストン素材21Aに対して、素材筒状部62Aの切削加工工程により切削される部分の素材軸方向の長さをそれぞれ異ならせることにより、切削加工工程後に残存する軸方向延在突部172,173の数をそれぞれ異ならせる。
すなわち、ピストン筒状部62のピストン開口部63側の端部に、二箇所の軸方向延在突部172および二箇所の軸方向延在突部173のうち、全部が残存しているものは、最もピストン軸方向の長さが長いピストン21となり、二箇所の軸方向延在突部172のみが残存しているものは、ピストン軸方向の長さが中間のピストン121となり、いずれも残存していないものは、ピストン軸方向の長さが最も短いピストン221となる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、底部と筒状部とを有し前記筒状部の前記底部とは反対側が開口部とされ、前記筒状部の前記開口部側の内周側に軸方向に延びる軸方向延在部を有する有底筒状のピストン素材を製造する素材製造工程と、前記ピストン素材の少なくとも前記筒状部の前記開口部側を切削加工する切削加工工程と、を含み、複数の前記ピストン素材に対して、前記筒状部の前記切削加工工程により切削される部分の軸方向長さをそれぞれ異ならせることにより、該切削加工工程後に残存する前記軸方向延在部の数をそれぞれ異ならせる。
また、第2の態様は、第1の態様において、前記素材製造工程において、前記軸方向延在部を、軸方向長さを異ならせて複数形成する。
また、第3の態様は、底部と筒状部とを有し前記筒状部の前記底部とは反対側が開口部とされた有底筒状であり、少なくとも前記筒状部の前記開口部側が切削加工されてピストンとなるピストン素材であって、前記筒状部の前記開口部側の内周側に軸方向に延びる軸方向延在部を有する。
また、第4の態様は、底部と筒状部とを有し前記筒状部の前記底部とは反対側が開口部とされた有底筒状のピストンであって、前記筒状部の前記開口部側の内周側に軸方向長さが異なる複数の軸方向延在部を有する。
また、第5の態様は、第4の態様において、前記軸方向延在部が、中心軸を中心として点対称の位置に配置されている。