JP3946792B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両等に制動力を与えるのに好適に用いられるディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、キャリパのシリンダ穴内に摺動可能に設けられる有底筒状のピストンと、該ピストンの少なくとも開口端側に設けられ、該ピストンに摩擦パッドからの熱が伝わるのを抑える断熱性のインシュレータとを備えてなるディスクブレーキは知られている。
【0003】
この種のディスクブレーキでは、ブレーキ操作時には外部からシリンダ穴内に供給されるブレーキ液圧によりピストンがシリンダ穴内を摺動する。そして、該ピストンがインシュレータを介して摩擦パッドを押圧して、ディスクに制動力を与えるようにしている。
【0004】
このとき、摩擦パッドはディスクとの間で生じる摩擦熱によって高温状態になるものの、断熱性を有したインシュレータによりこの摩擦熱が摩擦パッドからピストンを介して前記ブレーキ液側に伝わるのを抑えるようにしている。これによって、ブレーキ液が前記摩擦熱で高温になって気化したりして、ディスクブレーキの性能が低下してしまうのを防止するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術によるディスクブレーキでは、ピストン全体が金属材料等の比較的比重の大きな材料から筒状体として形成され、ピストンの重量が大きくなる傾向にあるために、ピストンを可能な限り薄肉に形成することによって、ディスクブレーキ全体の軽量化を図ることが要求される。
【0006】
しかし、ピストンを薄肉に形成するために、該ピストンの内周側を削取った場合には、ピストンの内径が大きくなるため、該ピストン内に配設されるインシュレータとピストンの内周面との間の隙間が大きくなり、ピストンに対するインシュレータのガタツキが大きくなってしまう。
【0007】
この結果、ブレーキ操作時には、ピストン内でインシュレータが振動して異音等が発生してしまうという問題がある。また、このようにインシュレータのガタツキが大きくなると、摩擦パッドによるディスクの制動力を十分に得ることができず、円滑にブレーキ操作を行うことができないという問題がある。さらに、ピストンを薄肉にして形成した場合には、該ピストン全体の機械的強度が低下してしまい、ピストンが変形し易くなるという問題がある。
【0008】
一方、前述の如きインシュレータのガタツキを防止するために、ピストンの内径と対応した外径を有するインシュレータを新しく形成するようにした場合には、このインシュレータ用の金型等を新たに新設する必要が生じ、該インシュレータの成形−製作全体に亘るコスト等が上昇してしまうという問題がある。
【0009】
また、ピストン全体の軽量化を図るために、凹溝等をピストンの内周側に該ピストンの開口端側から底部側に向けて延びるように形成した場合には、該凹溝のピストン開口側端部にバリ等が発生し易くなる。このため、該ピストン開口端の仕上げ加工時等に、このようなバリ等を除去するための工程を追加する必要が生じ、ピストンの製作時の生産性が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明はピストン全体の軽量化を図ることができると共に、ピストンおよびインシュレータの生産性を大幅に向上できるようにしたディスクブレーキを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、キャリパのシリンダ穴内に摺動可能に設けられる有底筒状のピストンを備えてなるディスクブレーキに適用される。
【0012】
そして、請求項1に記載の発明が採用する構成の特徴は、前記ピストンの内周側には該ピストンの軸方向に沿って延びる複数の凹溝を形成し、該ピストンの開口端には、その内周側を全周に亘って延び前記各凹溝の端部をピストンの開口側端面よりも奥側へと逃がす環状の切込み部を形成し、前記ピストンには、一端側が該ピストンに当接し他端側が該ピストンの開口端から摩擦パッド側に突出して該摩擦パッドに当接する断熱性のインシュレータを設け、該インシュレータは、前記複数の凹溝間に形成される凸部を介して前記ピストン内に隙間なく挿嵌されることにより、前記凹溝との間に凹部状をなした複数の放熱空間を形成し、この放熱空間は、前記ピストンの切込み部を介して外気と連通する構成としたことにある。
【0013】
このように構成することにより、各凹溝が設けられたピストンの部位を薄肉に形成することができ、ピストン全体の重量を確実に減らすことができる。また、このように各凹溝をピストンに形成した場合には、インシュレータが装着されるピストン内径の大きさは変わらないから、インシュレータの外径を変更する必要をなくすことができる。
【0014】
さらに、環状の切込み部をピストンの開口端内周側に形成することにより、各凹溝の端部のうちピストンの開口端側に位置した端部を、ピストンの開口端よりも内側(奥側)へと逃がすことができる。これによって、前記各凹溝の端部に沿って形成され易いバリ等がピストンの開口端で発生してしまうのを環状の切込み部により防止することができる。
【0015】
また、前記ピストンには、一端側が該ピストンに当接し他端側が該ピストンの開口端から摩擦パッド側に突出して該摩擦パッドに当接する断熱性のインシュレータを設け、該インシュレータは、前記複数の凹溝間に形成される凸部を介して前記ピストン内に隙間なく挿嵌されることにより、前記凹溝との間に凹部状をなした複数の放熱空間を形成し、この放熱空間は、前記ピストンの切込み部を介して外気と連通する構成としている。
【0016】
この結果、ピストンの底部側と、摩擦パッドとの間で円柱状のインシュレータを両側から保持することができ、インシュレータをピストン内に確実に収容することができる。また、シリンダ穴の内径を変更してキャリパを形成した場合でも、ピストンの外径および各凹溝の溝深さをこのシリンダ穴の内径に対応して適宜に変更すると共に、ピストンの内径をインシュレータの外径に対応した寸法に設定することにより、該ピストン内に収容されるインシュレータの外径を変更する必要をなくすことができる。しかも、ピストンの各凹溝とインシュレータとの間には、凹部状をなした複数の放熱空間を形成でき、この放熱空間を前記ピストンの切込み部側で外気と連通させることができる。
【0017】
さらに、請求項2に記載の発明によると、前記切込み部は、その切込み幅を前記凹溝の溝深さと同一の寸法に設定する構成としている。
【0018】
この結果、各凹溝の端部のうちピストンの開口端側に位置した端部を、切込み部の切込み幅(凹溝の溝深さ)分だけピストンの開口端よりも内側(奥側)へと逃がすことができ、ピストンの開口側端面を仕上げ加工するときに、この開口側端面にバリ等が発生するのを防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを二輪車に適用する場合を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1ないし図4は本発明の第1の実施例を示している。
【0021】
図において、1は二輪車の車輪と共に回転するディスク、2は該ディスク1のアウタ側となる位置で、車両の非回転部分(図示せず)に一体的に取付けられる取付部材を示し、該取付部材2は、ディスク1の周方向に離間した腕部3A,3Bと、該各腕部3A,3Bの基端側を連結した連結部4とから大略構成されている。
【0022】
また、腕部3Aには図1に示す如く、ディスク1のアウタ側に位置してトルク受部3A1 がディスク1の径方向内側に向けて突設されると共に、腕部3Aの内周面には、後述の各摩擦パッド14をパッドガイド16を介してディスク1の軸方向へ摺動可能に案内する断面略凹形状のパッドガイド部3A2 が形成されている。
【0023】
5は取付部材2に摺動ピン(図示せず)等を介して摺動可能に支持されたキャリパを示し、該キャリパ5は図1および図2に示す如く、ディスク1のアウタ側に配設され、内周側に有底筒状のシリンダ穴6Aが形成されたアウタ脚部6と、取付部材2の各腕部3A、3B間でディスク1の外周側を跨ぐように該アウタ脚部6からディスク1のインナ側へと延設されたブリッジ部7と、該ブリッジ部7の先端側からアウタ脚部6と略平行に延設され、ディスク1のインナ側に配設されたインナ脚部8とから大略構成されている。
【0024】
そして、前記アウタ脚部6のシリンダ穴6A内には、図2に示す如く後述のピストン10が摺動可能に挿嵌されると共に、該シリンダ穴6Aとピストン10の底部10Aとの間に画成された液圧室9内には、外部からブレーキ液圧が供給されるようになっている。
【0025】
10はキャリパ5のシリンダ穴6A内に摺動可能に挿嵌され、内部に後述のインシュレータ11が収容されたピストンを示し、該シリンダ10は図2ないし図4に示す如く、例えば鋳造あるいはプレス加工等の手段によって金属材料等から有底筒状に成形され、底部10A、内周面10Bおよび開口側端面10C等を有している。
【0026】
ここで、ピストン10は、外径がシリンダ穴6Aと対応するように寸法d1 をもって形成され、内径は後述するインシュレータ11と対応するように寸法d2 をもって形成されている。そして、ピストン10は、液圧室9内に供給されるブレーキ液圧によりシリンダ穴6A内を軸方向に摺動するものである。
【0027】
11はピストン10内に挿嵌されたインシュレータを示し、該インシュレータ11は断熱性を有した樹脂材料等により中実の略円柱状に形成されている。そして、該インシュレータ11はピストン10の内径とほぼ対応した外径をもって形成され、ピストン10内にほぼ隙間なく挿嵌した状態で収容されている。
【0028】
ここで、インシュレータ11は、一端側11Aがピストン10の底部10Aに当接し、他端側11Bは開口側端面10Cから所定寸法だけ僅かに突出してアウタ側の摩擦パッド14に当接している。これによってインシュレータ11は、ピストン10の底部10Aとアウタ側の摩擦パッド14との間で抜止め状態に保持され、ピストン10がキャリパ5のシリンダ穴6A内を摺動することにより、インシュレータ11の他端側11B端面で各摩擦パッド14をディスク1の両面側に押圧するようになっている。
【0029】
そして、インシュレータ11は、ブレーキ操作時に各摩擦パッド14とディスク1との間で生じる摩擦熱等が、該各摩擦パッド14からピストン10を介して液圧室9内のブレーキ液に伝わるのを抑えるものである。
【0030】
12,12,…は4個の凹溝で、該各凹溝12は図2ないし図4に示す如く、ピストン10の周方向で互いに離間し、ピストン10の内周面10Bに沿って軸方向に延びるように形成されている。
【0031】
ここで、各凹溝12は図3に示すように、寸法tの溝深さをもって後述の段差部13から底部10Aまで延びている。また、各凹溝12は、段差部13側に開口した端部がそれぞれ端部12A,12A,…となっている。そして、各凹溝12は、該各凹溝12が設けられたピストン10の部位を薄肉にして、ピストン10全体の重量を軽くするものである。
【0032】
13はピストン10の開口側端面10C側で内周面10Bに沿って設けられた環状の切込み部としての段差部を示し、該段差部13は、図2ないし図4に示す如く断面L形状をなし、ピストン10の開口端側を全周に亘って延びている。
【0033】
ここで、該段差部13は開口側端面10Cの径方向に対する切込み幅(切込み深さ)が、前記凹溝12の溝深さ(寸法t)と同一寸法に設定されている。そして、段差部13は、各凹溝12の端部12Aをピストン10の開口側端面10Cよりも内側(ピストン10の奥側)へと逃がすようになっている。
【0034】
14,14はディスク1の両側に配置されたインナ側およびアウタ側の摩擦パッドを示し、該各摩擦パッド14は平板状をなし、その裏面側には裏金15,15が重なり合うように固着されている。また、アウタ側の摩擦パッド14には、裏金15の長さ方向両端側に各耳部15A(一個のみ図示)が突設され、該各耳部15Aには各パッドガイド16が挿嵌されている。
【0035】
16は金属板等からなるパッドガイド(一方のみ図示)で、該パッドガイド16は腕部3Aのパッドガイド部3A2 に取付けられ、各摩擦パッド14の耳部15Aを摺動可能に支持している。そして、各パッドガイド16は各摩擦パッド14をディスク1の軸方向に摺動可能に案内するようになっている。
【0036】
本実施例によるディスクブレーキは上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0037】
まず、運転者がブレーキ操作を行うと、キャリパ5のアウタ脚部6内に設けられたピストン10が外部からの液圧供給により、ディスク1側に摺動して、ピストン10内に収容されたインシュレータの他側端面とインナ脚部8との間で各摩擦パッド14をディスク1の両面に押圧し、該ディスク1に制動力を与える。
【0038】
このとき、各摩擦パッド14とディスク1との間には大きな摩擦熱が発生するものの、断熱性を有したインシュレータ11によりこの摩擦熱が各摩擦パッド14からピストン10を介して、液圧室9内のブレーキ液側に伝わるのを抑制する。これによって、該ブレーキ液が高温になって気化したりして、当該ディスクブレーキの性能が低下してしまうのを防止している。
【0039】
ここで、当該ディスクブレーキの一部を構成するピストン10は、金属材料等からなる比較的比重の大きな材料によって形成されている。
【0040】
しかし、本実施例では、ピストン10の内周面10Bに寸法tの溝深さを有した複数の凹溝12を、ピストン10の軸方向に沿って延びるように形成すると共に、ピストン10の開口側端面10C側には内周面10Bに沿って環状の段差部13を形成し、ピストン10の径方向に対する段差部13の切込み深さを、各凹溝12の溝深さ(寸法t)とほぼ同一寸法に設定している。
【0041】
この結果、ピストン10全体の重量を内周面10Bに形成された各凹溝12の分だけ効果的に軽くすることができ、車体等に装備される当該ディスクブレーキの軽量化を確実に図ることができる。
【0042】
また、このように各凹溝12をピストン10に形成した場合には、インシュレータ11が装着されるピストン10内径(寸法d2 )の大きさは変わらないから、インシュレータ11の外径を変更する必要をなくすことができ、サイズ等の異なるディスクブレーキに対してもインシュレータ11を共通部品として使用できる。
【0043】
さらに、キャリパ5のシリンダ穴6A内径を変更した場合にも、ピストン10の外径および各凹溝12の溝深さ(寸法t)を、このシリンダ穴6Aの内径に対応して適宜に変更すると共に、ピストン10の内径(寸法d2 )をインシュレータ11の外径と対応して所定寸法に設定することにより、このピストン11内に収容されるインシュレータ11の外径を変更する必要をなくすことができる。 さらにまた、各凹溝12の端部12Aを段差部13によりピストン10の開口側端面10Cよりも内側(ピストン10の奥側)へと確実に逃がすことができ、これによって端部12A側に沿って比較的形成され易いバリ等が、開口側端面10C側に発生してしまうのを段差部13により確実に防止することができる。
【0044】
従って本実施例では、ピストン10を各凹溝12により軽量化したから、従来技術で述べたように、インシュレータ11の外径を変更して新しいインシュレータを形成する必要をなくすことができ、これによって該インシュレータ用の金型等を新たに新設する無駄を省くことができ、インシュレータ11の成形−製作全体に亘るコスト等を大幅に低減することができる。
【0045】
また、ピストン10の内周面10Bとインシュレータ11との間の隙間を可能な限り小さくすることができ、インシュレータ11のピストン10に対するガタツキ等を確実に防止することができる。これによってブレーキ操作時には、インシュレータ11とピストン10との間で異音(振動音)等が発生するのを確実に防止できると共に、インシュレータ11を介した各摩擦パッド14によるディスク1の制動力を十分に高めることができ、円滑なブレーキ操作を行うことができる。
【0046】
さらに、ピストン10の開口側端面10C側で内周面10Bに沿って段差部13を形成したから、開口側端面10Cの仕上げ加工時等に、各凹溝12の端部12A側で発生するバリ等を除去するための工程を追加して行う必要がなくなり、ピストン10の加工性等を確実に向上させることができる。
【0047】
さらにまた、各凹溝12をピストン10の内周面10Bに該ピストン10の軸方向に沿って形成したから、該内周面10Bには各凹溝12間の位置に縦長の各凸部を形成することができる。これによって、該各凸部がピストン10を補強するための梁部材となってピストン10の機械的強度等を効果的に高めることができ、該ピストン10に変形等が生じるのを確実に防止することができる。
【0048】
一方、ピストン10の内周面10Bに各凹溝12を形成したから、該凹溝12とインシュレータ11との間で凹部状をなした複数個の放熱空間を形成でき、この放熱空間をピストン10の段差部13側で外気と連通させることができる。これによってブレーキ操作時にディスク1と各摩擦パッド14との間で生じる摩擦熱を、インシュレータ11側から前記各放熱空間側に効果的に放熱させることができ、該インシュレータ11の冷却効果を確実に高めることができ、インシュレータ11の寿命等を確実に延ばすことができる。
【0049】
次に、図5は本発明の第2の実施例を示し、本実施例では前記第1の実施例と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施例の特徴は、前記第1の実施例で述べた段差部13に替えて、環状の切込み部としてのテーパ部21をピストン10の開口側端面10C側から内周面10Bの内側(ピストン10の奥側)へと漸次縮径するように形成し、開口側端面10C側に位置した各凹溝22の端部22Aを、テーパ部21によりテーパ状に切り込む構成としたことにある。
【0050】
ここで、各凹溝22は、前記第1の実施例で述べた各凹溝12と同様にピストン10の内周面10Bに形成されているものの、該各凹溝22は端部22Aがテーパ部21により斜めに傾斜するテーパ面として形成されている。
【0051】
かくして、このように構成される本実施例でも、各凹溝22の端部22Aを、ピストン10の開口側端面10Cよりも内側(ピストン10の奥側)へと確実に逃がすことができるから、端部22Aで発生するバリ等が開口側端面10Cで発生するのを防止することができ、前記第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、前記各実施例では、各凹溝12(22)をピストン10に4個設けるものとして述べたが、これらの凹溝は、例えば4個以上設けてもよいし、あるいは3個以下にしてもよい。
【0053】
また、前記各実施例では、キャリパ5のシリンダ穴6Aを一個のみ設けるものとして述べたが、本発明はこれに限らず、例えばキャリパに複数個のシリンダ穴が設けられるディスクブレーキにも適用されるものである。
【0054】
さらにまた、前記各実施例では、ディスクブレーキを二輪車に適用するものとして述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、自動車や自転車等の他の車両等にも適用されるものである。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、請求項1に記載の如く、ピストンの内周側に該ピストンの軸方向に沿って延びる複数の凹溝を形成し、該ピストンの開口端には、その内周側を全周に亘って延び前記各凹溝の端部をピストンの開口側端面よりも奥側へと逃がす環状の切込み部を形成し、前記ピストンには、一端側が該ピストンに当接し他端側が該ピストンの開口端から摩擦パッド側に突出して該摩擦パッドに当接する断熱性のインシュレータを設け、該インシュレータは、前記複数の凹溝間に形成される凸部を介して前記ピストン内に隙間なく挿嵌されることにより、前記凹溝との間に凹部状をなした複数の放熱空間を形成し、この放熱空間は、前記ピストンの切込み部を介して外気と連通する構成としたから、各凹溝が設けられたピストンの部位を薄肉に形成することができ、ピストン全体の重量を確実に減らすことができ、車体等に装着される当該ディスクブレーキの軽量化を確実に図ることができる。
【0056】
また、ピストンの開口端に環状の切込み部を形成することにより、各凹溝の端部のうちピストンの開口端側に位置した端部を、ピストンの開口端から内側(ピストンの奥側)へと逃がすことができるので、ピストンの開口側端面を仕上げ加工するときに、前記各凹溝の端部側に沿って形成され易いバリ等が、ピストンの開口側端面に発生するのを環状の切込み部によって防止でき、このようなバリ等を除去する工程を省略することができると共に、ピストンの成形、加工時における作業性を確実に向上することができる。
【0057】
一方、ピストンの内周面で各凹溝間に位置した部位に、縦長の複数本の凸部を形成することができるから、該各凸部がピストンを補強するための梁部材となってピストンの機械的強度等を効果的に高めることができ、該ピストンに変形等が生じるのを確実に防止することができる。
【0058】
しかも、前記インシュレータをピストン内に隙間なく挿嵌して設けることにより、ピストンの各凹溝とインシュレータとの間に凹部状をなした複数の放熱空間を形成し、この放熱空間は、ピストンの切込み部を介して外気と連通する構成としているので、例えばブレーキ操作時にディスクと摩擦パッドとの間で生じる摩擦熱等を、インシュレータ側から前記各放熱空間側に効果的に放熱でき、インシュレータの冷却効果を確実に高めて、インシュレータの寿命等を確実に延ばすことができる。一方、シリンダ穴の内径を変更してキャリパを形成した場合でも、ピストンの外径および各凹溝の溝深さをこのシリンダ穴の内径に対応して適宜に変更できると共に、ピストンの内径をインシュレータの外径に対応した寸法に設定することができ、該ピストン内に収容されるインシュレータの外径を変更する必要を確実になくすことができる。
【0059】
従って、シリンダ穴の内径が異なるキャリパに対しても、前記インシュレータを共通部品として用いることができると共に、該インシュレータ用の金型等を別個に新設する必要をなくすことができ、インシュレータの成形−製作に費やされるコスト等を大幅に低減することができる。
【0060】
また、前述の如くピストンに各凹溝を形成した場合には、インシュレータが装着されるピストン内径の大きさは変わらないから、インシュレータの外径を変更する必要をなくすことができ、従来技術で述べたように、インシュレータの外径を変更して新しいインシュレータを形成する必要をなくすことができる。これによって該インシュレータ用の金型等を新たに新設する無駄を省くことができ、インシュレータの成形−製作全体に亘るコスト等を大幅に低減することができる。
【0061】
さらに、インシュレータと該インシュレータが装着されるピストンの内周側との間の隙間を可能な限り小さくすることができ、インシュレータのピストンに対するガタツキ等を確実に防止することができる。これによってブレーキ操作時にはインシュレータとピストンとの間で異音(振動音)等が発生するのを確実に防止できると共に、インシュレータを介した各摩擦パッドによるディスクの制動力を十分に高めることができ、円滑なブレーキ操作を行うことができる。
【0062】
さらに、請求項2に記載の発明によると、ピストンの開口端に形成した環状の切込み部は、その切込み幅を凹溝の溝深さと同一の寸法に設定する構成としているので、ピストンの開口端側に位置した各凹溝の端部を、切込み部の切込み幅(凹溝の溝深さ)分だけピストンの開口端よりも内側(奥側)へと逃がすことができ、ピストンの開口側端面を仕上げ加工するときに、この開口側端面にバリ等が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例によるディスクブレーキの正面図である。
【図2】 図1中の矢示II−II方向からみた断面図である。
【図3】 ピストンおよびインシュレータを示す図4中の矢示 III−III 線に沿った拡大断面図である。
【図4】 ピストンおよびインシュレータを示す図3の右側面図である。
【図5】 本発明の第2の実施例によるディスクブレーキのピストンおよびインシュレータを示す図3と同様の要部断面図である。
【符号の説明】
1 ディスク
5 キャリパ
6A シリンダ穴
10 ピストン
10A 底部
10B 内周面
10C 開口側端面
11 インシュレータ
12,22 凹溝
13 段差部(切込み部)
14 摩擦パッド
21 テーパ部(切込み部)
Claims (2)
- キャリパのシリンダ穴内に摺動可能に設けられる有底筒状のピストンを備えてなるディスクブレーキにおいて、
前記ピストンの内周側には該ピストンの軸方向に沿って延びる複数の凹溝を形成し、該ピストンの開口端には、その内周側を全周に亘って延び前記各凹溝の端部をピストンの開口側端面よりも奥側へと逃がす環状の切込み部を形成し、前記ピストンには、一端側が該ピストンに当接し他端側が該ピストンの開口端から摩擦パッド側に突出して該摩擦パッドに当接する断熱性のインシュレータを設け、該インシュレータは、前記複数の凹溝間に形成される凸部を介して前記ピストン内に隙間なく挿嵌されることにより、前記凹溝との間に凹部状をなした複数の放熱空間を形成し、この放熱空間は、前記ピストンの切込み部を介して外気と連通する構成としたことを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記切込み部は、その切込み幅を前記凹溝の溝深さと同一の寸法に設定してなる請求項1に記載のディスクブレーキ。
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