次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、フロントサスペンション31及びリアサスペンション41に対する電流供給制御のための電気的構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の鞍乗型車両としての自動二輪車1は、車体フレーム10と、エンジン(駆動源)11と、前輪(車輪)13と、後輪(車輪)14と、を備える。
車体フレーム10には、フロントフォーク16と、スイングアーム17と、が取り付けられている。フロントフォーク16は、車体フレーム10が備える図略のヘッドパイプに支持されている。前輪13は、フロントフォーク16の先端部に回転可能に支持されている。スイングアーム17は、図示しないピボットフレームを介して車体フレーム10に接続されている。後輪14は、スイングアーム17の先端部に回転可能に支持されている。
エンジン11は、車体フレーム10に固定されている。エンジン11の出力軸の回転は、適宜変速されて後輪14に伝達され、後輪14が駆動される。
フロントフォーク16は、前輪13用の緩衝装置である左右1対のフロントサスペンション31を備える。それぞれのフロントサスペンション31は、アウターチューブ22と、インナーチューブ23と、を備える。アウターチューブ22は上方(車体側)に配置されてステアリングステムに固定され、インナーチューブ23は下方(前輪13側)に配置される。各フロントサスペンション31において、インナーチューブ23はアウターチューブ22に挿入されており、アウターチューブ22に対して長手方向に移動可能である。左右のインナーチューブ23の間には、フロントアクスル24及びフロントホイール26を介して、前輪13が回転可能に取り付けられている。
それぞれのアウターチューブ22とインナーチューブ23は、スプリングを介して接続されている。このスプリングにより、フロントフォーク16は、前輪13を弾発的に支持する。それぞれのフロントサスペンション31は上下方向に伸縮可能であり、これに伴って、前輪13は車体に対して上下方向で変位可能である。上記のスプリングは、フロントサスペンション31の伸縮に抗する向きの弾性力を作用させる。これによって、前輪13が、予め車体との関係で設定される基準位置に対して上下方向に移動する量を小さくすることができる。
左右に配置されたフロントサスペンション31のそれぞれにおいて、互いに結合されたアウターチューブ22及びインナーチューブ23の内部には、オイルが封入されたオイル室が形成されている。左右のオイル室は、フロントアクスル24の近傍に左右1対で配置された減衰力発生部32と、適宜の配管等を介してそれぞれ接続されている。本実施形態では、アウターチューブ22、インナーチューブ23及び減衰力発生部32により、フロントサスペンション(電力消費部)31が構成されている。
この構成で、アウターチューブ22とインナーチューブ23とが相対的に移動すると、スプリングが伸縮するのと同時に、減衰力発生部32に形成される流路をオイル室のオイルが通過する。これにより、前輪13の車体に対する上下移動に対して減衰力が付与されるので、上下移動速度を抑えることができる。この結果、走行時において前輪13が受ける路面からの衝撃及び振動を減衰させることができる。
減衰力発生部32の内部には、オイルが通過する図略の流路が形成されている。また、それぞれの減衰力発生部32は、前記流路の流量の制限の度合いを変更可能な電動のアクチュエータであるソレノイドバルブ33を備える。ソレノイドバルブ33は、公知の構成のソレノイドを有しており、このソレノイドは、電磁石として機能するように電線を巻いて形成されたコイル部(磁力発生素子)に電流が流れることで磁力を発生させて、弁体に取り付けられた可動鉄心を動かすことができる。減衰力発生部32は、後述のサスペンションECU52が送信した電気信号に応じてソレノイドバルブ33を動作させ、流路におけるオイルの通過し易さを調整する。これにより、フロントサスペンション31から得られる減衰力を調整することができる。
本実施形態において、ソレノイドバルブ33は、所定のストロークで往復移動可能に配置された可動鉄心を移動方向一方の端部に向けて付勢するスプリングを備える。このスプリングの付勢力と逆向きの磁力がソレノイドから可動鉄心に作用することで、鉄心とともに弁体が移動方向他方に向かって移動する。この構成で、弁体を移動方向一方の端部と異なる位置に保持するためには、ソレノイドに電流を継続的に流して、スプリングの付勢力に抗した磁力を与え続けなければならない。弁体を移動方向一方の端部から近い位置で保持する場合よりも、離れた位置で保持する場合の方が、スプリングが発生する付勢力が大きいため、ソレノイドに大きな電流を流す必要がある。本実施形態のソレノイドバルブ33は、ソレノイドに供給する電流の大きさを段階的に変化させることで、弁体を、予め定めた複数段階の位置から選択された位置で保持するように制御する。これにより、減衰力発生部32の流路におけるオイルの通過し易さを段階的に変更することができる。自動二輪車1の走行中において減衰力の制御応答性を高めるために、上記のソレノイドの発生磁力は大きいことが好ましい。
スイングアーム17の後部には、リアアクスル44及びリアホイール46を介して、後輪14が回転可能に取り付けられている。スイングアーム17と車体フレーム10の間には、リアサスペンション(電力消費部)41が取り付けられている。
リアサスペンション41は、車体フレーム10と、スイングアーム17と、を連結する。本実施形態では、リアサスペンション41は車幅方向のほぼ中央に1つ設けられており、その全体が車体フレーム10の内部に配置されている。リアサスペンション41は伸縮可能に構成されており、この伸縮に際して、弾性力及び減衰力が付与される。
リアサスペンション41は、弾性力を発生させるためのスプリング45を備える。また、リアサスペンション41の内部には、オイルが封入されるオイル室が形成されている。オイル室は、リアサスペンション41が備える減衰力発生部42と、適宜の流路を介して接続されている。
この構成で、スイングアーム17が揺動すると、スプリングが伸縮するのと同時に、減衰力発生部42に形成される流路をオイル室のオイルが通過する。これにより、走行時において後輪14が受ける路面からの衝撃及び振動を減衰させることができる。
リアサスペンション41の減衰力発生部42は、フロントサスペンション31の減衰力発生部32と実質的に同様の機能を有する。減衰力発生部42は、電動のアクチュエータであるソレノイドバルブ43を備えており、サスペンションECU52が送信した電気信号に応じてソレノイドバルブ43を動作させ、オイルの通過し易さを調整する。ソレノイドバルブ43の構成は、フロントサスペンション31におけるソレノイドバルブ33と類似しているので、説明を省略する。これにより、リアサスペンション41から得られる減衰力を調整することができる。
車体の適宜の位置には、エンジン11の制御を行うエンジンECU51と、フロントサスペンション31及びリアサスペンション41の制御を行うサスペンションECU(制御装置)52と、が配置されている。また、車体には、各種の電装部品に電力を供給するバッテリー55が取り付けられている。本実施形態では、エンジンECU51は後輪14の上方に配置され、サスペンションECU52は前輪13の後上方に配置されて、それぞれ車体フレーム10に固定されている。バッテリー55は、運転者が跨る座席の下方に配置されている。
バッテリー55が電力を供給する電装部品としては、例えば、制御装置、エンジン制御用アクチュエータ、車体制御用アクチュエータ、各種センサ、計器メータのほか、保安部品であるヘッドランプ、ターンシグナル等を挙げることができる。また、電装部品には、車体に後付け的に取り付けられる外部のアクセサリ部品、例えば、グリップヒータ、ナビゲーション装置、補助ライト、アクセサリソケット、ETC車載装置を含む。更に、バッテリー55は、上記以外の様々な電装部品に電力を供給することができる。
エンジン11の近傍には、オルタネータ56が配置されている。このオルタネータ56は、エンジン11によって駆動されることにより発電し、交流電流を出力する。オルタネータ56が生成した交流電流は、図示しない整流器によって直流に整流された後、バッテリー55に供給されて充電される。
ECUとは電子制御ユニットの略であり、図1及び図2に示すエンジンECU51及びサスペンションECU52は何れも小型のコンピュータとして構成されている。エンジンECU51及びサスペンションECU52は、何れも、演算部としてのCPUを備えるとともに、記憶部としてのROM及びRAMを備える。
エンジンECU51は、車体の各部に取り付けられた各種の情報センサ58(図2)から取得した情報に基づいて、エンジン11の制御に必要な指令値をエンジン制御用アクチュエータに出力する。指令値としては、例えば燃料噴射量、点火時期、吸気量等が考えられるが、これに限定されない。エンジン制御用アクチュエータとしては、例えば燃料噴射装置、点火プラグ、スロットル弁制御装置等が考えられるが、これに限定されない。情報センサ58から取得される情報としては、例えば、変速比、エンジン回転数、走行速度、車輪回転数、吸気圧、アクチュエータの動作情報、車体の姿勢、車体に加わる慣性力等を挙げることができる。エンジンECU51はサスペンションECU52に電気的に接続されており、各種の情報を出力することができる。この情報には、走行速度検出値の情報、及び、エンジン回転数検出値の情報が含まれる。走行速度検出値は、例えば、前輪13の回転を検出する車速センサによって取得することができる。エンジン回転数検出値は、例えば、クランク軸の回転を検出するエンジンクランクセンサによって取得することができる。車速センサ及びエンジンクランクセンサは、図2に示す情報センサ58の一種である。
走行速度検出値は、車体の走行に応じて変化する評価値(走行評価値)であるということができる。エンジン回転数検出値は、エンジンの駆動出力が増加するのに従って大きくなる評価値(出力評価値)であるということができる。ただし、走行評価値は、位置変化又は加速度等であっても良い。また、出力評価値は、アクセル操作量、吸気圧又は発電量等であっても良い。
サスペンションECU52は、2つのフロントサスペンション31がそれぞれ備える減衰力発生部32、及び、リアサスペンション41が備える減衰力発生部42に対して、減衰力を調整する制御を行うことができる。具体的に説明すると、サスペンションECU52は、車体の適宜の位置に配置された慣性計測装置(IMU)の検出結果に基づいて、走行状態、例えば、車体の加速度及び姿勢を求める。そして、サスペンションECU52は、得られた走行状態に応じた適切な減衰力を減衰力発生部32,42に発生させるように、ソレノイドバルブ33,43に対して制御信号を走行中に出力する。慣性計測装置は、図2に示すサスペンション用情報センサ59の一種である。このように、走行中のサスペンションの緩衝特性をサスペンションECU52が電子制御で変更することができる。このように走行状況に応じた車体の制御を図ることで、良好な走行フィーリングを実現し易い。
サスペンションECU52について更に詳細に説明する。サスペンションECU52には、外部装置からの取得情報に基づいて、走行中に設定すべき減衰力を決定するプログラムが記憶される。また、サスペンションECU52には、設定すべき減衰力に対応する電流の大きさを決定するプログラムが記憶される。この構成で、サスペンションECU52の演算部は、取得情報と、予め記憶される情報と、を読み出すとともに、外部から取得した情報に基づいて、ソレノイドバルブ33,43へ供給すべき電流の大きさを決定する。サスペンションECU52は出力部を備え、この出力部は、ソレノイドへ供給する電流を生成して出力する電気回路を備える。この出力部は、バッテリー55から供給される電力から、演算部が決定した電流の大きさに応じた電流を生成して、ソレノイドバルブ33,43へ供給する。電流の大きさを決定するプログラムは、フロントサスペンション31とリアサスペンション41とで異なっていても良い。
サスペンションECU52が外部装置から取得する情報(取得情報)は、エンジンECU51から与えられる各種情報のほか、サスペンション31,41の動作情報を検出するサスペンション用情報センサ59から入力される情報でも良い。サスペンション用情報センサ59としては、上記のIMUのほか、例えば、サスペンション31,41の伸縮量を検出するセンサが考えられる。サスペンションECU52は、取得情報として、エンジンECU51を介さずに情報センサ58等から直接取得しても良い。例えば、各電装部品が公知のCAN通信規格に従ってバス接続されたネットワークを用いて、サスペンションECU52が様々なセンサから情報を取得するように構成することができる。
エンジンECU51及びサスペンションECU52には、それぞれを動作させるための電力がバッテリー55から供給される。また、上記ソレノイドバルブ33,43を駆動するための電力は、バッテリー55からサスペンションECU52を介して供給される。本実施形態では、サスペンションECU52は、ソレノイドバルブ33,43の各ソレノイドに供給される電流の大きさのほか、当該電流の供給/遮断を制御することができる。
次に、サスペンションECU52において行われる、ソレノイドバルブ33,43への駆動電流の供給に関する制御について説明する。図3及び図4には、サスペンションECU52が行う処理のフローチャートが示されている。
図3及び図4の処理は、サスペンションECU52へバッテリー55から電力が供給されて、サスペンションECU52の電源がONになると開始される。最初に、サスペンションECU52は、RAMに記憶されているカウント値をゼロにリセットする(ステップS101)。次に、サスペンションECU52は上述のとおり、減衰力発生部32,42が走行状態に応じた適切な減衰力を発生させるように、ソレノイドバルブ33,43の動作を制御する(ステップS102)。これにより、フロントサスペンション31及びリアサスペンション41の減衰力の電子制御が実現される。
次に、サスペンションECU52は、走行速度検出値が所定の第1閾値α1以下であるか否かを判定する(ステップS103)。この第1閾値α1は、本実施形態では、ゼロ以上、具体的には時速10キロメートル以下となる速度、例えば時速5キロメートルに設定される。走行速度検出値が第1閾値α1を上回っている場合は、処理はステップS101に戻る。
ステップS103の判断で、走行速度検出値が第1閾値α1以下である場合、サスペンションECU52は、エンジン回転数検出値が所定の第2閾値α2以下であるか否かを判定する(ステップS104)。この第2閾値α2は、エンジン11のアイドリング回転数より大きな回転数とすることが好ましい。アイドリング回転数とは、アクセル操作が与えられていない場合のエンジン11の回転数を意味する。この第2閾値α2は、本実施形態では、エンジン11のアイドリング回転数が1500rpmである場合、アイドリング回転数の2倍以下、例えば3000rpmに設定される。エンジン回転数検出値が第2閾値α2を上回っている場合は、処理はステップS101に戻る。
ステップS104の判断で、エンジン回転数検出値が第2閾値α2以下である場合、サスペンションECU52は、RAMに記憶されているカウント値を1だけ増加させる(ステップS105)。
その後、サスペンションECU52は、カウント値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106の所定値は、所定の第1時間T1(例えば、3秒)に相当する値とすることができる。カウント値が所定値未満である場合は、処理はステップS102に戻る。このループ処理により、上記のステップS105の処理は、走行速度検出値が第1閾値α1以下、かつ、エンジン回転数検出値が第2閾値α2以下である状態が継続している間、反復して行われる。従って、上記の状態が続く限り、カウント値は時間の経過に応じて増加していく。
ステップS106の判断で、カウント値が所定値以上、具体的には第1時間T1に相当する値以上である場合、サスペンションECU52はソレノイドバルブ33,43への電流供給を遮断するように制御する(ステップS107)。その後、処理は図4のステップS108に進む。
ソレノイドバルブ33,43に対する電流が遮断された状態では、各サスペンション31,41の減衰力発生部32,42は、磁力による影響がない位置、即ち、ソレノイドバルブ33,43のスプリングにより決定される自然状態となるように構成されている。従って、車体が実質的に停止している状態では、各サスペンション31,41において自然状態の減衰力が得られることになる。
ステップS108において、サスペンションECU52は、カウント値をゼロにリセットする。次に、サスペンションECU52は、上記の走行速度検出値が所定の第3閾値α3以上であるか否かを判定する(ステップS109)。この第3閾値α3は、ゼロを超えた速度とすることが好ましく、前記第1閾値α1より大きい速度とすることが好ましい。第3閾値α3は、本実施形態では、時速5キロメートルを超えた値、例えば時速7キロメートルに設定される。走行速度検出値が第3閾値α3以上である場合、処理はステップS111に進み、サスペンションECU52は、カウント値を1だけ増加させる。
ステップS109の判断で、走行速度検出値が第3閾値α3未満である場合、サスペンションECU52は、上記のエンジン回転数検出値が所定の第4閾値α4以上であるか否かを判定する(ステップS110)。この第4閾値α4は、エンジン11のアイドリング回転数より大きな回転数とすることが好ましく、前記第2閾値α2より大きい回転数とすることが好ましい。第4閾値α4は、本実施形態では、アイドル回転数の3倍以上の値、例えば5000rpmに設定される。エンジン回転数検出値が第4閾値α4以上である場合、処理はステップS111に進み、サスペンションECU52は、カウント値を1だけ増加させる。
ステップS110の判断で、エンジン回転数検出値が第4閾値α4未満である場合(即ち、走行速度検出値が第3閾値α3未満かつエンジン回転数検出値が第4閾値α4未満の場合)は、処理はステップS109に戻る。
ステップS111の処理の後、サスペンションECU52は、カウント値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS112)。ステップS112の所定値は、所定の第2時間T2(例えば、0.1秒)に相当する値とすることができる。カウント値が所定値未満である場合は、処理はステップS109に戻る。このループ処理により、ステップS111の処理は、走行速度検出値が第3閾値α3以上、又は、エンジン回転数検出値が第4閾値α4以上である状態が継続している間、反復して行われる。従って、上記の状態が続く限り、カウント値は時間の経過に応じて増加していく。
ステップS112の判断で、カウント値が所定値以上、具体的には第2時間T2に相当する値以上である場合、サスペンションECU52はソレノイドバルブ33,43への電流供給を再開するように制御する(ステップS113)。その後、処理は、図3のステップS101に戻る。
以上の手順により、車体の停止状態に対応する阻止条件を満足する場合、具体的には、走行速度が第1閾値α1以下(時速5キロメートル以下)であり、かつ、エンジン回転数が第2閾値α2以下(3000rpm以下)である状態が第1時間T1以上(3秒以上)継続した場合に、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給を遮断する制御が行われる。電流の遮断制御が行われた後は、車体の走行開始状態に対応する復帰条件を満足する場合、具体的には、走行速度が第3閾値α3以上(時速7キロメートル以上)であるか、又は、エンジン回転数が第4閾値α4以上(5000rpm以上)である状態が第2時間T2以上(0.1秒以上)継続した場合に、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給を再開する制御が行われる。
これにより、車体が走行状態から実質的な停止状態に移行したと判断したときは、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給が停止される。従って、ソレノイドバルブ33,43の電力消費を効果的に抑えることができる。また、車体が停止状態から脱して実質的な走行状態となったと判断したときは、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給が再開される。従って、電流供給停止に伴う走行状態への影響を抑えることができる。本実施形態では、走行フィーリングの低下を防止することができる。電流の供給を再開する場合、ソレノイドに流す電流は、ゼロから制御目標値まで直ちに増大させることができる。ただし、テーリング動作、即ち、電流を時間とともにゼロから徐々に増大させる動作としても良い。
本実施形態の自動二輪車1に示すような鞍乗型車両は、運転者が座席に跨って運転するため、車幅方向の寸法が小さく、車載可能なスペースが比較的小さい。従って、バッテリー55の容積の大型化が困難であり、大容量化が難しい。このことから、消費電力を節減することが、他の形式の車両に比べて重要になる。この点、本実施形態の構成によれば、ソレノイドバルブ33,43への電力供給を停止することで、消費電力を効果的に抑制することができる。言い換えれば、オルタネータ56の発電能力を小さくすることができる。
また、本実施形態の自動二輪車1においては、充電のための電力をバッテリー55に供給するオルタネータ56の発電量は、エンジン回転数の増加に応じて大きくなる。従って、走行停止時には、比較的エンジン回転数が小さいために発電量が小さくなるので、消費電力を抑制することが特に重要になる。この点、本実施形態では、走行停止時においてソレノイドバルブ33,43の電力供給を停止することで、走行停止時のバッテリーの過放電を良好に防止することができる。
本実施形態では、走行停止時に電流の供給が遮断される制御が行われる対象は、走行時の車体挙動を制御する装置である各サスペンション31,41(具体的には、減衰力発生部32,42が備えるソレノイドバルブ33,43)である。各サスペンション31,41は、車輪に対する緩衝特性を電子制御によって変更可能な緩衝装置である。
車体が停止しているときは、前輪13及び後輪14が路面の凹凸から衝撃を受けることがないので、各サスペンション31,41の減衰力の制御を行わない場合でも、即ち、ソレノイドバルブ33,43に通電しなくても、運転者のフィーリングに与える影響はないということができる。しかも、ソレノイドバルブ33,43は、コイル部に通電して磁力を発生させることでスプリングの付勢力に抗して弁体の位置を保持する構成であるため、消費電力が大きい。従って、本実施形態のように電流を遮断する制御を行うことで、車両の操作フィーリングの低下を防止しつつ、消費電力を効果的に抑制することができる。
本実施形態では、サスペンションECU52は、車体が走行状態から停止状態に移行したか否かを判断する条件として、走行速度の条件と、エンジン回転数の条件と、を組み合わせたものを用いている(ステップS103、ステップS104)。なお、これは、車体が停止状態から走行状態に移行したか否かを判断する場合も同様である(ステップS109、ステップS110)。これにより、ソレノイドバルブ33,43に対する電流の遮断/供給の制御を、例えば走行速度だけで判定する場合よりも適切に行うことができる。
具体的には、本実施形態ではステップS103及びステップS104に示すように、走行速度が第1閾値α1以下であること、かつ、エンジン回転数が第2閾値α2以下であること、の両方を満たす場合に(AND条件)、車体の緩衝制御を中断可能な条件が満たされたものとして、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給が遮断される。言い換えれば、サスペンションECU52は、上記の2つの要件を何れも満たす場合に、電流の供給を阻止する条件が満たされたと判断する。
このように、本実施形態のサスペンションECU52は、走行速度とエンジン回転数の両方が所定条件を満たしていないと、具体的には、両方がゼロに十分に近い値を示していないと、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給を遮断しない。このように複数の要件をともに満足するか否かで走行停止の判断をするので、判断の的確性を高めることができる。具体的には、エンジン回転数が所定値を上回っており、かつ走行速度が極低速又は停止状態であるとき、例えば急停止の瞬間又はエンジンブレーキ状態では、その後すぐに加速することも予想される。この点、本実施形態では、そのような状況では走行停止状態であると判断されず、減衰力の制御が維持される。従って、減衰制御の中断の影響をなくすことができる。また、走行速度が所定値を上回っており、かつエンジン回転数が極低速又は停止している状態、例えば下り坂等で慣性を利用して走行している状態では、その後すぐにアクセルが操作されて通常の走行状態に移行することも予想される。この点、本実施形態では、そのような状況では走行停止状態であると判断されず、減衰力の制御が維持される。従って、減衰制御の中断の影響をなくすことができる。
また、本実施形態ではステップS109及びステップS110に示すように、走行速度が第3閾値α3以上であること、又は、エンジン回転数が第4閾値α4以上であることを満たす場合に(OR条件)、車体の緩衝制御を再開すべき条件が満たされたものとして、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給が再開される。言い換えれば、サスペンションECU52は、上記の2つの要件の少なくとも一方を満たす場合に、電流の供給を再開する条件が満たされたと判断する。
このように、本実施形態のサスペンションECU52は、走行速度とエンジン回転数のうち何れかがゼロからある程度乖離した値を示していれば、ソレノイドバルブ33,43への電流の供給を再開する。このように複数の要件の何れかを満足するか否かで走行開始の判断をするので、判断の確実性を高めることができる。具体的には、特殊な状況ではあるが、例えばバイクレースにおいて、スタート直前にエンジンの回転数を予め上げておき、スタートと同時にクラッチを繋ぐことで急加速するライディングが行われることがある。この場合、本実施形態の制御では、ソレノイドバルブ33,43がスタート前から通電されているので、車体制御の再開遅れを防ぐことができる。このように、走行開始に伴って適切に減衰制御の再開を行ったり、走行開始準備段階での減衰制御の再開を行ったりすることができる。従って、走行停止時における減衰制御の中断の影響が走行再開後に生じることを更に良好に抑えることができる。
図3のステップS103、ステップS104、及びステップS106に示すように、ソレノイドバルブ33,43に対する電流の供給を遮断する条件(車体の停止状態に対応する阻止条件)は、上述したように走行速度とエンジン回転数のAND条件を満たす状態が、所定時間である第1時間T1継続したことである。一方、図4のステップS109、ステップS110、及びステップS112に示すように、ソレノイドバルブ33,43に対する電流の供給を再開する条件(車体の走行状態に対応する復帰条件)は、走行速度とエンジン回転数のOR条件を満たす状態が第2時間T2継続したことである。阻止条件はAND条件であり、復帰条件はOR条件であるため、阻止条件は復帰条件よりも厳密であるということができる。また、本実施形態では第1時間T1の方が第2時間T2よりも長く設定されるため、時間的な観点でも、阻止条件は復帰条件よりも満たすことが難しいということができる。
このように阻止条件が復帰条件よりも厳しく定められているので、減衰制御を中断する機会又は期間を減らして、車両停止の可能性が高い状況で、減衰力の制御の中断を行うことができる。逆に言えば、減衰制御の早期の再開を促すことができる。これによって、走行状態での減衰制御中断の影響を防ぐことができるとともに、走行開始状態での減衰制御再開の遅れを防ぐことができ、運転者の走行フィーリングにおける違和感を抑えることができる。
なお、サスペンションECU52が、上記の阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも何れかにおいて、エンジン回転数の検出値に代えて、又はそれに加えて、オルタネータ56の発電量を適宜のセンサで検出した発電量検出値を所定の閾値と比較する判断を行うように構成することもできる。この場合、発電量と電力消費量のバランスを考慮して、電力を柔軟に低減することができる。
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、バッテリー55と、フロントサスペンション31及びリアサスペンション41と、サスペンションECU52と、を備える。各サスペンション31,41には、バッテリー55から電力が供給される。サスペンションECU52は、バッテリー55から各サスペンション31,41(具体的には、ソレノイドバルブ33,43)に流れる電流を制御する。サスペンションECU52は、車体の停止状態に対応する阻止条件を満たすと判定した場合は、各サスペンション31,41への電流の供給を阻止する。サスペンションECU52は、各サスペンション31,41への電流の供給を阻止した後、車体の走行状態に対応する復帰条件を満たすと判定した場合は、各サスペンション31,41への電流の供給を再開する。
これにより、車体の停止状態では動作させておく必要性が高くない部品であるフロントサスペンション31及びリアサスペンション41のソレノイドバルブ33,43に対して電流の供給を阻止する制御を行うことにより、消費電力を全体として抑えて、バッテリー55を効率的に活用することができる。ただし、車体の停止状態で動作させておく必要性が高い部品に対し、上記のように電流の供給を阻止しても良い。
また、本実施形態の自動二輪車1において、各サスペンション31,41はソレノイドバルブ33,43を備えており、このソレノイドバルブ33,43は、電流が流れることで磁力を発生させるコイル部を含む。
これにより、ソレノイドバルブ33,43のように消費電力が大きい部品に対して、車両の停止状態において電流の供給が阻止されるので、全体としての消費電力を良好に抑制することができる。特に、本実施形態では、走行中の減衰力を制御する計3つのソレノイドバルブ33,43がスプリング力に抗して弁体を保持する構成であるため、消費電力の抑制効果が大きい。
また、本実施形態の自動二輪車1において、各サスペンション31,41は、走行時の車体挙動を制御する装置である。
このように、走行時の車体挙動を制御する装置であるサスペンション31,41は、車体の停止状態で動作させておく必要が高くない。また、走行再開時は電流の供給を再開するので、走行フィーリングに対する影響を小さくしつつ、消費電力を抑制することができる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、各サスペンション31,41は、車輪に対する緩衝特性を電子制御によって変更可能な緩衝装置である。
これにより、路面の凹凸から車輪が受ける衝撃を考慮する必要性が乏しい車両の停止状態において、各サスペンション31,41への電流の供給を阻止することで、走行フィーリングに対する影響を小さくしつつ、消費電力を抑制することができる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、阻止条件及び復帰条件は、車体の走行に応じて変化する走行速度検出値の条件と、車体を駆動するエンジン11の駆動出力に応じて変化するエンジン回転数検出値の条件と、を含む。
これにより、各サスペンション31,41に対して電流の供給を阻止又は再開するタイミングを、走行速度と駆動出力の両方を考慮して適切に定めることができる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、走行速度検出値は、車体の走行速度が増加するのに従って大きくなるように定められる。エンジン回転数検出値は、エンジンの駆動出力が増加するのに従って大きくなるように定められる。サスペンションECU52は、走行速度検出値が第1閾値α1以下である条件と、エンジン回転数検出値が第2閾値α2以下である条件と、の両方を満たす場合に、阻止条件を満たすと判定する。
これにより、走行速度及びエンジン回転数の両方が低くないと、各サスペンション31,41への電流の供給が阻止されない。従って、停止判断の精度を向上させることができる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、サスペンションECU52は、走行速度検出値が第3閾値α3以上である条件と、エンジン回転数検出値が第4閾値α4以上である条件と、のうち少なくとも一方を満たす場合に、復帰条件を満たすと判定する。
これにより、走行速度及びエンジン回転数のうち少なくとも何れかが高くなれば、各サスペンション31,41への電流の供給が再開される。従って、車両を停止状態から発進させる場合に、各サスペンション31,41への電流の供給が遅れることを防止できる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、上記の阻止条件は、復帰条件よりも厳しい。
これにより、各サスペンション31,41への電流の供給を阻止する機会又は期間が少なくなる一方、電流の供給の再開は積極的に行うので、走行再開時の車体制御の遅れを抑制することを重視しつつ、電力消費量を適切に抑制することができる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、サスペンションECU52は、ステップS103の要件及びステップS104の要件を何れも満たす場合に、阻止条件を満たすと判定する。サスペンションECU52は、ステップS109の要件及びステップS110の要件のうち少なくとも何れか1つを満たす場合に、復帰条件を満たすと判定する。
これにより、走行状態の車両を停止させる場合には、車両が実質的に停止した状態を比較的厳密に確認してから、各サスペンション31,41への電流の供給を止めることができる。一方、車両を停止状態から発進させる場合に、各サスペンション31,41への電流の供給が遅れることを防止できる。
また、本実施形態の自動二輪車1において、サスペンションECU52は、ステップS103及びステップS104で説明した要件を満たす状態が所定の第1時間T1継続した場合に、阻止状態を満たすと判定する。サスペンションECU52は、ステップS109及びステップS110で説明した要件を満たす状態が所定の第2時間T2継続した場合に、復帰条件を満たすと判定する。第2時間T2は、第1時間T1よりも短い。
これにより、走行状態の車両を停止させる場合には、瞬間的ではなくある程度継続した停止状態となってから、各サスペンション31,41への電流の供給を止めることができる。一方、車両を停止状態から発進させる場合は、各サスペンション31,41への電流の供給を素早く再開することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、フロントサスペンション31及びリアサスペンション41に対して、バッテリー55からの電流の供給の阻止/再開が制御されている。しかしながら、他の電装部品に対して、上述のような電流の供給の阻止/再開が行われても良い。
このような制御の対象となり得る電力消費部としては、例えば、運転者が握るハンドルに取り付けられた電熱線(熱発生素子)を含むグリップヒータを挙げることができる。グリップヒータは、この電熱線に電流を流すことで熱を発生させて手を温める構成であり、消費電力が比較的大きい。従って、グリップヒータに対して供給する電流について上記の制御を行うことにより、消費電力を効果的に減らすことができる。
熱発生素子を含む電力消費部としては、グリップヒータ以外にも、例えば、電熱線が内蔵されたグローブ及び衣類等が考えられる。この構成では、自動二輪車1に設けられる電源供給部分、例えばDCソケットを介して、バッテリー55からの電力が電熱線に供給される。このように、電力消費部は、取外し可能なコネクタを介して車体に電気的に接続することで電力が供給される構成であっても良い。この構成において、当該コネクタ(様々な装置を接続できる汎用のコネクタを含む。)に対して上記の電流供給制御を行う場合も本発明に含まれる。
上記のほかにも、電力消費部の例としては、電子制御ステアリング装置、排気デバイス、ETC車載装置、DCソケット、ウインドシールド昇降装置(昇降用電動モータ)等を挙げることができる。電子制御ステアリングのように、走行時の車体挙動を制御する装置に対して上記の電流制御を行うことで、消費電力の低減を合理的に行うことができる。また、電流が流れることで磁力及び熱のうち少なくとも何れかを発生させる素子を含む装置に対して上記の電流制御を行うことで、消費電力の低減効果が良好であり、好適である。
電力消費部は、リニアソレノイドのような対象部品を直線駆動させる磁力発生素子のほか、対象部品を角変位又は回転させる磁力発生素子を含むもの、例えば、ロータリソレノイド又はモータとしても良い。また、例えば、車両に用いられるアクチュエータに対して、上述する電流供給制御を行ってもよい。なお、電流供給制御は、駆動源の出力制御を行うアクチュエータ以外のアクチュエータに対して行われることが好ましい。これにより、走行停止中でのエンジン稼動状況の変化を防ぐことができる。
電力消費部は、車両のアクチュエータのうち、駆動源の出力制御とは別に車体の挙動を変化させる電装部品であっても良い。上述したように、車体の挙動を変化させる電装部品としては、サスペンション装置のほか、電子制御ステアリング装置、ウインドシールド昇降装置等が考えられる。上記のほか、車体の挙動を変化させるアクチュエータ全般に本発明が用いられてもよい。また、サスペンション装置においても、減衰力のほか、プリロード荷重(イニシャル荷重)、基準長さを変化させるアクチュエータに本発明が適用されてもよい。
電力消費部は、電波(電磁波)を送信するような電装部品、例えば、アンテナを備えるETC車載装置、電磁波送受信を利用した測距センサを備えるレーダ装置等であっても良い。
電力消費部は、スプリングによる付勢力に抗して対象部品が移動した状態を維持するアクチュエータであってもよい。例えば、上記ソレノイドバルブ33,43のほか、排気デバイスについて同様の電流供給制御を実施してもよい。
全ての電装部品に対して上記の電流供給制御を行わずに、一部の電装部品に対して行う場合も本発明に含まれる。この場合、他と比較して電力消費量が大きい電装部品について電流供給制御の対象とすることが好ましい。
上記の阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも一方は、車体の走行速度に応じて変化する走行速度検出値の条件と、自動二輪車1が備えるオルタネータ56による発電量に応じて変化する発電量検出値(発電量評価値)の条件と、を含むように構成することもできる。この構成において、発電量検出値は、発電量評価値であるが、エンジン11の駆動出力に応じて変化する出力評価値でもあるということができる。この場合、各サスペンション31,41への電流の供給を阻止又は再開するタイミングを、発電量と電力消費量のバランスを考慮して定めることができる。
上記の実施形態において、自動二輪車1の走行速度は車速センサによって取得されている。これに代えて、サスペンションECU52が、上述のIMUセンサから得られた加速度を積分し、この積分結果である速度を走行速度検出値として、ステップS103及びステップS109の判断で用いることができる。
サスペンションECU52は、得られた速度を積分することにより車体の変位(位置)を求め、この変位を走行評価値として、阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも一方に用いることができる。また、サスペンションECU52は、上述のIMUセンサから得られた加速度を、走行評価値として、阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも一方に用いることができる。
上記の実施形態においてサスペンションECU52は、前後のサスペンション31,41の両方に対して電流の供給の阻止及び再開を行っている。しかしながら、フロント及びリアのうち一方だけに対して電流の供給の阻止及び再開を行うように変更しても良い。また、サスペンションECU52が、フロント用とリア用でそれぞれ設けられても良い。
前後のサスペンション31,41の間で、阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも何れかが異なっていても良い。例えば、後輪14を駆動輪、前輪13を従動輪とする場合には、リアサスペンション41について電流供給を阻止する制御を行わないようにしたり、電流供給を阻止した後の復帰の条件をフロントサスペンション31よりも緩くしたりしても良い。これによって、フロントサスペンション31の復帰時においてリアサスペンション41の緩衝特性の変化を防ぐことができ、加速フィーリングの違和感を抑えることができる。
上記の実施形態において、フロントサスペンション31は左右1対で2つ設けられ、リアサスペンション41は1つだけ設けられている。しかしながら、フロント及びリアのサスペンションの数はそれぞれ任意である。例えば、フロントサスペンション31が1つだけ設けられても良い。また、リアサスペンション41が左右1対で2つ設けられても良い。
左右1対のフロントサスペンション31のうち片側のみが、減衰力発生部32を有する構成であっても良い。
前後のサスペンション31,41のうち一方だけが、車輪に対する緩衝特性の電子制御を行うサスペンションとして構成されても良い。
サスペンションECU52以外のコンピュータが、制御装置として、各サスペンション31,41等の電力消費部に対する電流の供給の阻止/再開の制御を行うように変更することもできる。そのような制御装置としては、エンジンECU51、図示しない車両CPU等が考えられるが、これに限定されない。
第1閾値α1、第2閾値α2、第3閾値α3、第4閾値α4、第1時間T1、及び第2時間T2は、適宜変更することができる。例えば、第1閾値α1と第3閾値α3が同じであっても良く、第2閾値α2と第4閾値α4が同じであっても良く、第1時間T1と第2時間T2が同じであっても良い。また、第1時間T1及び第2時間T2のうち少なくとも何れかがゼロであっても良い。第1閾値α1がゼロであっても良いが、この場合は、第3閾値α3をゼロより大きくする必要がある。それぞれの値は、運転者の好みや乗り方、車両の特性によって適宜設定できるように構成しても良い。
上記の実施形態では、走行速度検出値の条件と、エンジン回転数検出値の条件と、の組合せによって、上記の阻止条件及び復帰条件の両方が判断されている。しかしながら、サスペンションECU52が、阻止条件及び復帰条件のうち少なくとも一方について、例えば2つの条件のうち一方だけで判断するように変更しても良い。
上記の実施形態で示した阻止条件は一例であり、当該阻止条件は、車両の走行停止を何らかの方法で判断できるものであれば良い。例えば、走行停止の判断について、車速センサ、前後何れかの車輪速センサ、IMUセンサ以外の情報を用いても良い。詳細な例を挙げれば、衛星航法システム等の電波航法を用いた測位センサによる位置情報、車体振動、サスペンションストローク、車体傾斜状態(一時停止時には足つきのため車両を傾かせる)、運転者姿勢等を用いたり、複合的に用いたりして、車両の走行停止を判断してもよい。衛星航法システムとしては、例えば、GPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を挙げることができる。位置及び速度等は、他の公知のセンサにより取得しても良く、例えば、車両に取り付けたセンサとしてのカメラで取得した画像に基づいて車両の位置を推定することができる。また、走行停止の判断として、具体的な車両に関する現象のほかに、運転者の走行停止操作に係る情報を取得して、走行停止状態として判断してもよい。例えば、ブレーキ操作、クラッチ操作、ギヤ操作、メータ操作等、停車時に行われるであろう操作信号等を検出し、上述した車両に係る現象と総合して(又は車両に係る現象と無関係に)、車両の走行停止に近い状態又は近い将来に走行停止が行われるであろう状態を走行停止状態として判断してもよい。
上記の実施形態で示した復帰条件は一例であり、当該復帰条件は、車両の走行開始を何らかの方法で判断できるものであれば良い。例えば、走行開始の判断について、上記の走行停止の条件と同様に、車速センサ、前後何れかの車輪速センサ、IMUセンサ以外の情報を用いても良い。詳細な例を挙げれば、衛星航法システム等の電波航法を用いた測位センサによる位置情報、車体振動、サスペンションストローク、車体傾斜状態(走行再開時には車両を直立状態に戻す)、運転者姿勢等を用いたり、複合的に用いたりして、車両の走行開始を判断してもよい。衛星航法システムとしては、例えば、GPS等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を挙げることができる。位置及び速度等は、他の公知のセンサにより取得しても良く、例えば、車両に取り付けたセンサとしてのカメラで取得した画像に基づいて車両の位置を推定することができる。また、走行開始の判断として、具体的な車両に関する現象のほかに、運転者の走行開始操作に係る情報を検出して、走行開始状態として判断してもよい。例えば、ブレーキ解除操作、クラッチ操作、ギヤ操作、アクセル操作等を検出し、上述した車両に係る現象と総合して(又は車両に係る現象と無関係に)、車両の走行開始に近い状態又は近い将来に走行開始が行われるであろう状態を車両開始状態として判断してもよい。
上記の実施形態において、走行評価値である走行速度は、車体の走行状態を直接的に示す情報(直接的な情報)と捉えることができる。一方、出力評価値であるエンジン回転数は、車体の走行状態と強く相関するものではないが、ある程度相関する情報(間接的な情報)と捉えることができる。上記の実施形態のように、サスペンションECU52が直接的な情報(走行評価値)だけでなく間接的な情報(出力評価値)にも基づいて走行停止/走行開始の判断を行うことで、判断の根拠となる情報量を増やすことができ、より適切な制御を行うことができる。具体的には、的確な判断を行うことができ、また、判断の遅れを防ぐことができる。直接的な情報(走行評価値)としては、車体の走行速度のほか、車体の位置、車体の加速度等とすることができる。間接的な情報(出力評価値)は、運転者の意思によるアクセル/ブレーキ等の操作に応じて影響する値の情報であり、エンジン回転数のほか、吸気圧、吸気量、排気圧、発電量、発電電流等とすることができる。
サスペンション31,41は、上述の実施形態で示した構成のほか、公知の構成に変更することもできる。例えば、フロントサスペンション31に関し、インナーチューブ23が下方に位置する倒立式に代えて、上方に位置する正立式とすることもできる。また、図1で示すフロントフォークタイプに代えて、例えばスイングアームタイプの自動二輪車の電子制御サスペンションに、上記の電流制御を適用することもできる。
本発明は、図1に示すスーパースポーツタイプの自動二輪車に限らず、他の自動二輪車(ネイキッドタイプ、モトクロスタイプ、ツアラータイプ、クルーズタイプ、及びスクータタイプ等)にも適用することができる。また、二輪車に限らず、三輪又は四輪のバギー車、水上バイク(パーソナルウォータークラフト)に適用することもできる。
本発明は、エンジンにより駆動されるタイプの鞍乗型車両に限らず、電動車又はハイブリッド車にも適用することができる。