JP6983007B2 - イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法 - Google Patents

イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6983007B2
JP6983007B2 JP2017161117A JP2017161117A JP6983007B2 JP 6983007 B2 JP6983007 B2 JP 6983007B2 JP 2017161117 A JP2017161117 A JP 2017161117A JP 2017161117 A JP2017161117 A JP 2017161117A JP 6983007 B2 JP6983007 B2 JP 6983007B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fermented seasoning
seasoning composition
yeast
fermented
isoamyl alcohol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017161117A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019037162A (ja
Inventor
真悟 小川
未来 平沼
靖子 高野
淳 長澤
博之 佐野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tablemark Co Ltd
Original Assignee
Tablemark Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tablemark Co Ltd filed Critical Tablemark Co Ltd
Priority to JP2017161117A priority Critical patent/JP6983007B2/ja
Publication of JP2019037162A publication Critical patent/JP2019037162A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6983007B2 publication Critical patent/JP6983007B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Seeds, Soups, And Other Foods (AREA)
  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)
  • Seasonings (AREA)

Description

本発明は、酵母を用いて製造された、発酵調味料組成物に関する。本発明は、食品製造の分野等で有用である。
最近、香気成分を強化した調味料の開発が盛んに行われている。イソアミルアルコールは、酒、醤油、味噌、パンなどの発酵食品に含まれる香気成分であり、平成17年に食品添加物として指定され、食品への着香のために広く用いられてきている。
食品にイソアミルアルコールを用いることに関する技術としては、例えば、特許文献1には、魚卵加工品又は漬け魚の製造において、魚卵加工品又は漬け魚の調味液に3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)を300ppm以上含有する食材又は添加物を喫食時の濃度が0.1〜30ppmとなるように添加することにより、魚卵加工品又は漬け魚に熟成香を付与する製造方法を提案する。また特許文献2は、水産物加工品の製造において、水産物の調味液に分岐鎖を有する炭素数4又は5のアルコール及び/又は炭素数3〜5のアルデヒドを添加することにより水産物に熟成香を付与する水産物加工品の製造方法を提案する。分岐鎖を有する炭素数4又は5のアルコールとしては、3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール、又は2−メチル−1−ブタノールのいずれかが好ましいことが記載されており、また3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)の添加に際しては、3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)を100ppm以上の濃度で含有する焼酎又は清酒を用いることが好ましいことが記載されている。さらに特許文献3は、酢酸含有調味料を飲食品に添加した際に、飲食品の味の持続性や嗜好性を改善するものとして、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルをそれぞれ10〜300ppmおよび10〜150ppmの含有量で含んでなる酢酸含有調味料を提案する。この調味料は、味の持続性および嗜好性を改善するため、不快臭や不快味をマスキングするため、または甘味やうま味を増強するため、および米飯の食感を改善するために、用いることができるとされている。この酢酸含有調味料の調製に用いることができる原料としては、酢酸を含有するものとして食酢が、イソアミルアルコールを含有するものとして清酒が、酢酸エチルを含有するものとしてみりんがそれぞれ挙げられている。さらに特許文献4は、酢酸、HEMF(4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3(2H)−フラノンと4−ヒドロキシ−5−エチル−2−メチル−3(2H)−フラノンの任意の割合での混合物)、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含む、食品に添加するための組成物を提案し、これにより食品の塩味やうま味が増強されたことを報告する。
一方、酵母を用いてイソアミルアルコールを多く含有する発酵食品を生産する方法としては、例えば、特許文献5は、香気成分である、n−プロパノール、イソブチルアルコール、活性アミルアルコール、イソアミルアルコール、及びβ−フェネチルアルコールをより多量に含有する香りの高い飲食品を提供することを目的に、サッカロマイセス属に属し、かつアミノチロシン耐性を有する酵母を用いることを特徴とする、飲食品の製造法を提案する。ここでは、特定の酵母菌株を用いることにより、475ppmのイソアミルアルコールを含む焼酎を得ている(第5表)。また特許文献6は、飲食品の香気成分として有用なアルコール類(特に、n−プロパノール、活性アミルアルコール等)をより多量に含有する香りの高い飲食品を提供することを目的に、サッカロマイセス属に属し、イマザピル耐性を有し、かつn−プロパノールおよび/または活性アミルアルコールを生成する能力が向上した酵母を用いることを特徴とする飲食品の製造法を提案する。ここでは、481ppmのイソアミルアルコールを含む発酵調味料を得ている(第8表)。
さらに特許文献7は、魚介類の加工に伴い排出される魚腸の従来の加工、利用における問題点を解消し、魚腸から短期間で魚由来の臭気が低減された風味の優れた魚系調味料を得ることを課題として、n−プロパノール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコールを含有することを特徴とする魚系調味料を提案する。また非特許文献1、2においては、酵素変異により、イソアミルアルコールを高濃度有する清酒の開発について、提案されている。また、特許文献8は、畜肉風味のフレーバー等として食品の風味付けに用いられているイソ吉草酸に着目し、ピキア属に属し、且つイソ吉草酸を生産する能力を有する酵母を、20〜50mMのロイシンを含有する培地中に培養する工程を含む、イソ吉草酸を含む培養物の製造方法を提案する。
特許第5659277号公報 特開2015−42180号公報 特開2013−99316号公報 WO2013/172049 特開平6−133703号公報(特許第3193506号) 特開平6−292557号公報(特許第3260896号) 特開平11−137207号公報 特開2013−223485号公報
生物工学、89(12), 716-718 (2011) Ashida,S. et al: Agric. Biol. Chem., 51(8), 2061-2065 (1987)
イソアミルアルコールを含む調味料に関する特許文献1−4においては、イソアミルアルコールは、清酒や焼酎等の発酵食品として添加されるか、または市販の試薬として添加されているに過ぎない。また、特許文献5、および6のように特定の酵母を用いる場合であっても、イソアミルアルコールの濃度が500ppm以上の発酵物を生産することは達成されていない。また特許文献5−7のような、従来の多価アルコールを高濃度生産する方法において、イソアミルアルコールを高濃度に含有する発酵物は得られていたものの、イソアミルアルコール以外の香気成分も同時に高濃度に含有されるために、種々の香気成分の中でイソアミルアルコールのみを高濃度とし、イソアミルアルコールの有する香気を特徴とする調味料を生産することは達成されていなかった。また非特許文献1、2で提案される酵素変異は、変異株の作成などの高度の技術が必要であることから、安全性を重んずる食品においてはその方法を用いることができず、また同時に酢酸イソアミルや他の分解物によるオフフレーバーも発生しており、調味料などの食品への応用はまだ検討されていなかった。
本発明においては、特定の酵母がロイシンからイソアミルアルコールを転換する能力を有することを見出し、その酵母を用いて、ロイシンを高濃度で含めた培地中で培養することによってイソアミルアルコールのみを高濃度で含有する発酵調味料組成物を見出した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1] 酵母を用いた発酵調味料組成物であって、主要香気成分中のイソアミルアルコールの割合が、50%以上である、発酵調味料組成物。
[2] 主要香気成分が、イソアミルアルコール、イソ酪酸、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸からなる、1に記載の、発酵調味料組成物。
[3] 酵母が、ハンセヌラ・スアベオレンス、またはサッカロマイセス・セレビジエに属するものである、1または2に記載の発酵調味料組成物。
[4] 固形分5.0%の発酵調味料組成物に換算したときに500ppm以上のイソアミルアルコールを含む、1から3のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。
[5] ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、またはキャンディダ属に属する酵母を、ロイシンを0.3%以上含む培地で、好気的条件で培養し、
得られた培養物から酵母菌体を除去して発酵液を得る
工程を含む、発酵調味料組成物の製造方法。
[6] ロイシンを0.3%以上含む培地が、さらに魚醤を3%以上含む、5に記載の製造方法。
[7] 塩味増強用、不快臭のマスキング用、味噌の風味の向上用、チーズ風味の向上用、または卵風味の向上用である、1〜4のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。
[8] 不快臭が、魚肉臭、または畜肉臭である、7に記載の発酵調味料組成物。
培養16時間後と24時間後のIAAの濃度 GC-MSによる分析結果 即席みそ汁(白味噌、合わせ味噌、または赤味噌)への発酵調味料の添加効果 チーズディップソースへの発酵調味料の添加効果 カスタードクリームへの添加効果
数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値XおよびYを含む。「Aおよび/またはB」は、特に記載した場合を除き、A、Bのうち少なくとも一方が存在することを指し、AとBの双方が存在する場合も含む。食品は、固形のもののみならず、飲料およびスープのような液状の経口摂取物も含む。また、そのまま摂取される形態のもの(例えば、調理済みの各種の食品、サプリメント、ドリンク剤)のみならず、食品添加物、発酵調味料組成物、飲料濃縮物も含む。さらに、ヒトのみならず、非ヒト動物(ペット、家畜等)のためのものも含む。食品はまた、一般食品(いわゆる健康食品を含む。)のほか、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、および特定保健用食品を含む。)を含む。濃度、または比(%、部等)を表す場合は、特に記載した場合を除き、重量に基づく。
本発明は、酵母を用いた発酵調味料組成物に関する。酵母を用いた発酵調味料組成物は、酵母による発酵工程で得た発酵物から、酵母菌体を除去することにより得られる。
[製造方法]
本発明の発酵調味料組成物は、下記の工程を含む製造方法により、製造することができる:
酵母を、魚醤を3%以上含む培地で、好気的条件で培養し、得られた培養物から酵母菌体を除去して発酵液を得る。
(酵母)
本発明に用いられる酵母は、ロイシンからイソアミルアルコールを生産する能力を有するものを用いる。酵母は、その培養液を最終的にそのまま食品に用いることができるように、食品製造のために用いられるものの中から選択することが望ましい。例えば、酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母、野生酵母等の慣用されている酵母を用いることができる。より具体的には、例えば、ハンセヌラ (Hansenula)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ガラクトマイセス(Galactomyces)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、およびジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属からなる群より選択されるいずれかである。酵母は、増殖性が良好であることから、酒製造に用いられている酒酵母、ビール製造に用いられているビール酵母、食料や飼料等の製造に用いられているトルラ酵母であることが好ましく、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、またはキャンディダ属に属する酵母であることがより好ましい。ハンセヌラ属の例として、ハンセヌラ・スアベオレンス(Hansenula suaveolens)、Hansenula anomala、Hansenula javanica、Hansenula schneggii、Hansenula saturnus、Hansenula odessaが挙げられる。サッカロマイセス属の例として、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)が挙げられる。なお、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)とサッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の一種として分類される場合もある。キャンディダ属の例として、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・サケ(Candida sake)が挙げられる。より好ましくは、ハンセヌラ・スアベオレンス(Hansenula suaveolens)、およびサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)からなる群より選択されるいずれかである。
好ましい実施態様においては、酵母としては、ハンセヌラ・スアベオレンス IAHP-1株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株、またはサッカロマイセス・セレビジエ IAHP-2株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株:サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-3株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株:サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-4株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質(寄託の申請書に詳細に説明されている)を有する菌株を用いることができる。
ハンセヌラ・スアベオレンス IAHP-1株は、以下の科学的性質(形態的、培地上の特徴、生理学的特徴等)を有する。
細胞形態:卵型
コロニー:クリーム色
特徴:発酵能を有する、子嚢胞子をつくる
ハンセヌラ・スアベオレンス IAHP-1株は、以下の培養条件で培養できる。
培地名:YPD培地
培地の組成:
Yeast Extract (Difco) 10g
グルコース 20g
Polypeptone (Difco) 20g
蒸留水 1L
培地のpH(滅菌前):5.8
滅菌温度・時間:121℃、15分
培養温度:30℃
培養期間:24時間
酸素要求性:好気
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-2株、IAHP-3株、およびIAHP-4株は、以下の科学的性質(形態的、培地上の特徴、生理学的特徴等)を有する。
細胞形態:卵型
コロニー:クリーム色
特徴:発酵能を有する、子嚢胞子をつくる
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-2株、IAHP-3株、およびIAHP-4株は、以下の培養条件で培養できる。
培地名:YPD培地
培地の組成:
Yeast Extract 10g
グルコース 20g
Polypeptone 20g
蒸留水 1L
培地のpH(滅菌前):5.8
滅菌温度・時間:121℃、15分
培養温度:30℃
培養期間:24時間
酸素要求性:好気、浸盪培養
ハンセヌラ・スアベオレンス IAHP-1株、サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-2株、
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-3株、サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-4株
は、それぞれ順に、受託番号NITE BP-02335、NITE BP-02417、NITE BP-02418、NITE BP-02419として、NITE BP-02335は2016年8月22日付で、NITE BP-02417、NITE BP-02418、NITE BP-02419は2017年2月9日付けで、テーブルマーク株式会社(住所:日本国東京都中央区築地6-4-10)により、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物センター(住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ、ブタペスト条約および日本国特許法に基づき、寄託された。
(発酵条件)
酵母による発酵のための条件は、当業者であれば、用いる酵母に応じ、適宜設計することができる。
培地には、イソアミルアルコールの生産前駆体となりうる特定のアミノ酸を添加する。添加するアミノ酸の種類は、酵母の代謝経路によりイソアミルアルコールの生産の前駆体となるものが好ましく、本発明においてはロイシンを用いる。培地へのロイシンの添加量(ロイシンの塩を添加する場合は、ロイシンに換算した添加量)は、適宜とすることができるが、例えば、0.05〜10%とすることができ、0.1〜5%とすることが好ましく、0.2〜2%とすることがより好ましい。特に好ましい態様においてはロイシンを添加し、ロイシンの添加量は、他の成分の濃度がいずれの場合であっても、0.05〜5%とすることができ、0.1〜3%とすることが好ましく、0.2〜2%とすることがより好ましい。
培地には、酵母の増殖に必要な窒素源としてアミノ酸源となるものを添加することが好ましく、醤油、魚醤、アミノ酸調合液、酵母エキス、乳清、ペプトン、コーンスティプリカー(CSL)、カゼイン等の含窒素有機物、ならびに尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびリン酸アンモニウム等の無機塩からなる群などを用いることができるが、魚醤が添加されることが好ましく、さらに酵母エキス、アミノ酸調合液などの窒素源をさらに添加することが好ましい。用いることができる窒素源は、食品原料として適した物であれば特に限定されない。なお、魚醤を用いる場合には魚醤の添加量は、適宜とすることができるが、例えば、1〜10%とすることができ、2〜7%とすることが好ましく、3〜6%とすることがより好ましい。培地には、炭素源として、例えば、サトウキビ廃糖蜜、ビート廃糖蜜、蔗糖、木材チップ蒸解液、亜硫酸パルプ廃液、サトウキビ抽出液、グルコースなどの糖液、酢酸、およびエタノールからなる群より選択されるいずれかを用いることができる。さらに、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を培地に添加してもよく、ビオチン、パントテン酸、チアミン、イノシトール、ピリドキシン等のビタミン類、亜鉛、銅、鉄、マンガン等のミネラル類を添加してもよい。培養に際しては、用いる培地を滅菌してもよい。なお、本発明に関し、培地の成分の濃度をいうときは、特に記載した場合を除き、培養開始時の濃度を指す。
酵母発酵は、使用菌株にもよるが、例えば20〜40℃、好ましくは25〜35℃で、例えば12〜40時間、行うことができる。本発明者らの検討によると、目的のイソアミルアルコールは、培養の後期に多く産生されるので、発酵時間は、18時間以上であることが好ましく、20時間以上であることがより好ましく、22時間以上であることがさらに好ましい。
発酵は、好気条件下で行う。必要に応じ、酵母発酵上十分な通気および/または攪拌を行いながら実施することができる。通気および/または攪拌は、具体的には、1分間当たり発酵液体積の約1/5量から同量の無菌エアーを発酵槽底部に吹き込み、必要に応じ100〜400rpmで攪拌することにより行うことができる。好ましい態様の一つは、1分間当たり発酵液体積の約1/4〜1/3量の無菌エアーを発酵槽底部に吹き込むことにより行うことである。尚、酒類の製造工程においては、通常、嫌気条件下で発酵を行うため、酵母は多量のエタノールを生成する。しかし本実施態様では、好気条件下で発酵を行うため、発酵中のエタノール濃度は低く保たれ、酵母はエステルや脂肪酸、高級アルコール等の各種香気成分を多く生成しうる。酵母発酵過程および発酵終了後における発酵液中のアルコール濃度は、1.0%未満であることが好ましい。
酵母発酵工程の終点は、当業者であれば適宜決定しうるが、Brix値、pH値、イソアミルアルコールの濃度等を指標とすることができる。
発酵工程から得られた発酵物は不溶性の固形分や酵母菌体を含んでいるので、これらの固形物を除くために、固液分離処理を行うことにより、目的の発酵調味料組成物を得ることができる。固液分離の手段は、同様の目的で食品の製造分野で用いられる種々の手段を適用することができる。例えば、遠心分離による沈殿物の除去、珪藻土やパーライトを濾過助剤としたフィルタープレス濾過、または精密濾過(MF:Micro filtration)が挙げられる。得られた発酵調味料組成物のBrixは、その発酵工程の良否によって左右されるが、通常は1〜10%、好ましくは3〜7%であり得る。なお本発明の酵母を用いた発酵調味料組成物は、酵母菌体を除去することにより得られる発酵液を用いた調味料組成物であり、酵母菌体を含まない点で、酵母菌体を回収し、その酵母菌体であるビール酵母やパン酵母を自己消化等して得る酵母エキスとは異なるものである。
(その他)
得られた発酵調味料組成物には、保存安定性を高める目的で食塩、澱粉、糖などを添加してもよい。これらの添加量は、特に限定されるものではないが、水分活性を充分に下げるため、食塩の場合には酵母発酵液に対して、例えば10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上となるように添加することができる。
発酵調味料組成物は、種々の形態であり得る。例えば、上記の液状のものを、必要に応じ、濃縮または乾燥等し、ペースト状、固形状、粉末状、顆粒状等とすることができる。
[発酵調味料組成物、およびその特徴]
本発明の発酵調味料組成物は、イソアミルアルコールを、他の香気成分に比較して多く含むことを特徴とする。
(香気成分)
本発明の発酵調味料組成物には、イソアミルアルコールが含まれる。イソアミルアルコール(Isoamyl alcohol、分子式: C5H12O)は、イソブチルカルビノール、イソアミロール、イソペンタノール、イソアミノール、3−メチルブタン−1−オール、3−メチルブチルアルコール、2−メチル−4−ブタノール、イソペンチルアルコール、イソアミルアルコール、3−メチル−1−ブタノールと称されることもある。イソアミルアルコールは、単独では、一般的には不快に感じられるが、清酒などの代表的な香気、あるいは水産物の熟成香と感じられる香気を有している。
本発明の発酵調味料組成物は、イソアミルアルコール以外の香気成分として、3−ヘキサノン、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール アセテート、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,5−ジメチル−3−ヘキサノン、イソ酪酸、イソヘキシルアルコール、酢酸、イソ吉草酸イソブチル、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フェネチルアルコール、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、エナント酸、イソブチル 2−メチルブタノエート、1,3−シクロペンタンジオンが挙げられる。本発明に関し、発酵調味料組成物の主要香気成分というときは、発酵調味料組成物中に検出される成分のうち、イソアミルアルコールおよび上記の成分から選択される成分を指す。主要香気成分は、好ましくは、イソアミルアルコール、イソ酪酸、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸であり;より好ましくは、イソアミルアルコール、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸である。
香気成分の定性および定量分析は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)法で行うことができる。本発明に関し、香気成分の種類や量をいうときは、特に記載した場合を除き、GC−MS法で検出・測定されたものである。
(イソアミルアルコール含量)
本発明の発酵調味料組成物は、イソアミルアルコールを多く含み、イソアミルアルコールの主要香気成分中に占める割合は、50%以上であり、好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。ある成分の主要香気成分中に占める割合が50%であるとは、GC−MS法で測定した主要香気成分中に占めるその成分の割合が、50%であることをいう。例えば、イソアミルアルコールの主要香気成分中に占める割合が50%以上であるとは、GC−MS法で測定した主要香気成分(イソアミルアルコール、3−ヘキサノン、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール アセテート、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,5−ジメチル−3−ヘキサノン、イソ酪酸、イソヘキシルアルコール、酢酸、イソ吉草酸イソブチル、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フェネチルアルコール、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、エナント酸、イソブチル 2−メチルブタノエート、1,3−シクロペンタンジオン;好ましくは、イソアミルアルコール、イソ酪酸、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸;より好ましくは、イソアミルアルコール、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸)中に占めるイソアミルアルコールの割合が、50%以上であることをいう。この値は、GC−MS法による測定結果を出力したチャートのピーク面積に基づいて求めることもできるし、またGC−MS法により定量した主要香気成分の測定値に基づいて求めることもできる。具体的には、対象発酵調味料組成物について、主要香気成分、すなわちイソアミルアルコール、3−ヘキサノン、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール アセテート、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,5−ジメチル−3−ヘキサノン、イソ酪酸、イソヘキシルアルコール、酢酸、イソ吉草酸イソブチル、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、フェネチルアルコール、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、エナント酸、イソブチル 2−メチルブタノエート、1,3−シクロペンタンジオンの有無、および濃度について測定し、それらのピークの積分面積に占めるイソアミルアルコールのピーク面積の比を求めるか、またはそれらの総量に占めるイソアミルアルコールの量比を求めることにより、算出できる。
本発明はまた、固形分5.0%の発酵調味料組成物に換算したときに500ppm以上のイソアミルアルコールを含む、発酵調味料組成物を提供する。ここでいう固形分には食塩は含まれない。具体的には、対象発酵調味料組成物についてBrixを測定した値から、食塩濃度(塩分ということもある。)(%)を減じた値が、ここでいう固形分である。例えば、ある発酵調味料組成物において測定されるBrix値が25.1%であり、その発酵調味料組成物の食塩濃度が20.1%である場合に、その発酵調味料組成物の固形分は、5.0%であると計算される。また、このようにして計算した固形分濃度が5.0%より低い場合、または高い場合は、固形分を5.0%とした場合に換算した、イソアミルアルコールの濃度について判断される。なお、Brix値は、20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値で定められており、ショ糖1gのみを溶質として含む水溶液100gをBrix屈折計で測定したときのその示度Brix値が1%であると定められている。ショ糖以外の固形成分を含む溶液では、Brix値は固形成分濃度の目安になる。Brix値を測定するための機器は市販されており、当業者であればBrix値を適宜測定しうる。
従来、酵母の発酵液において、イソアミルアルコールの濃度を500ppm以上とすることは達成されなかった。したがって、固形分5.0%の発酵調味料組成物に換算したときに500ppm以上のイソアミルアルコールを含む、発酵調味料組成物は、新規なものであり、かつ進歩性を有するものである。
好ましい態様においては、発酵調味料組成物におけるイソアミルアルコールの濃度は、750ppm以上であり、より好ましくは1000ppm以上であり、さらに好ましくは1500ppm以上である。
(他の香気成分)
本発明の発酵調味料組成物は、主要香気成分に占めるイソアミルアルコールの割合が高いこと、またはイソアミルアルコールの濃度が高いことを特徴とするが、それ以外に、従来技術においてはイソアミルアルコールと共に増量されてきた香気成分である、n−プロパノール(1−プロパノール、1−プロピルアルコール、n−プロピルアルコールともいう。)、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール、2−メチルプロピルアルコールともいう。)、活性アミルアルコール(光学活性アミルアルコール、2‐メチル‐1‐ブタノール、sec−ブチルカルビノール、2−メチルブタノール、2−メチルブタン−1−オール、2−メチルブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノールということもある。)が少ないことも特徴である。これらの成分が少ないことは、食品に意図しない香気を付与しないので、後述する本発明が提供する用途においては好ましく作用していると考えられる。好ましい態様においては、主要香気成分に占めるn−プロパノール、イソブチルアルコール、および活性アミルアルコールの合計量は、0.3%以下であり、好ましくは0.2%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。検出限界下であってもよい。
(発酵調味料組成物の形態等)
上述の製造方法により得られた発酵調味料組成物は、他の調味料組成物の有効成分とすることができる。また発酵調味料組成物は、発酵調味料組成物そのものでもよく、有効成分が目的の効果を発揮しうる限り、他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、であり得る。この例には、酸化防止剤(抗酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、賦形剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。発酵調味料組成物中の有効成分の量は、例えば1〜100%であり、10〜80%とすることができ、20〜60%としてもよい。
[発酵調味料組成物の用途]
本発明の発酵調味料組成物は、特許文献1にあるように、水産製品の着香に用いることもできるし、本発明で新たに見出した塩味増強用、不快臭のマスキング用、味噌の風味の向上用、チーズ風味の向上用、または卵風味の向上のために用いることができる。
<塩味増強>
本発明により得られた発酵調味料組成物は、塩味増強のために用いることができる。塩味は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五基本味のうちの一つである。本発明に関し、塩味というときは、塩化ナトリウムによって呈される味をいう。従来、特許文献4に示すように、酢酸などを主成分とするものにHEMF(4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3(2H)−フラノンと4−ヒドロキシ−5−エチル−2−メチル−3(2H)−フラノンの任意の割合での混合物)とともにイソアミルアルコールを含有した場合に、塩味の増強効果があることは報告されていたが、本発明者らの検討によると、高濃度のイソアミルアルコールを含有する発酵調味料組成物の添加により、種々の塩分濃度の食品において、塩味を増強できることが分かった。また、本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物による塩味増強効果は、同等の量のイソアミルアルコールを用いる場合よりも高かった。一般に、食塩不使用食品または低塩食品は物足りなく感じられるものが多いとされているが、本発明により、そのような食品の風味においても、塩味を増強し、美味しさを感じられるものとすることができる。例えば、塩分濃度が0.7%以下の食品であっても、0.7%を超える塩味に感じられる。したがって、本発明の一態様は、得られた発酵調味料組成物を有効成分として含有する、塩味の増強剤である。本発明はまた、食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減する方法も提供する。
<不快臭のマスキング用>
得られた発酵調味料組成物は、食材の種々の不快臭をマスキングするために用いることができる。対象となる不快臭は様々であるが、本発明は特に、魚肉臭、畜肉臭に対して好適に用いることができる。魚肉臭は、生魚の不快な臭い(生臭み)、および加熱された魚がもつ特有の臭い(魚臭)を含む。畜肉臭は、内臓臭(もつ臭)、グラス臭、および獣臭を含む。グラス臭とは、牧草肥育している牛から得られた牛肉に特有の草の青臭い臭いをいう。本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物の添加により、種々の食品において、魚肉臭、および畜肉臭がマスキングでき、その効果は、同等の量のイソアミルアルコールを用いる場合よりも高かった。したがって、本発明の一態様は、発酵調味料組成物を有効成分として含有する、不快臭のマスキング剤、魚肉臭抑制剤、および畜肉臭抑制剤である。
魚肉臭抑制の対象となる食品は、魚肉そのものに限られず、魚肉を原料として用いた加工品、それらを用いた食品であってもよい。畜肉臭抑制の対象となる食品は、畜肉そのものに限られず、それを原料とする加工品や、それらを原料とする食品であってもよい。
従来の不快臭のマスキング剤は、不快臭の低減を試みる際に、それ自体の味が発揮され、食品に意図しない味が付く場合があり、また不快臭のみならず、対象食品の好ましい風味が低減されてしまうことがあるが、本発明の不快臭のマスキング剤は、有効量用いたとしても、このような問題は少ないと考えられる。また本発明の不快臭のマスキング剤を用いることにより、不快臭がマスキングされるのみならず、熟成香も向上されうる。
<香辛料の刺激感の向上>
得られた発酵調味料組成物は、料理や調味液などに含まれる香辛料(それを原料とする加工品を含む。)の刺激感を向上させるために用いることができる。本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物を、香辛料を含有する調味液や各種ソースに添加することにより、喫食時に香辛料の刺激をより強く感じさせることができる。その効果は、同等の量のイソアミルアルコールを用いる場合よりも高い可能性がある。したがって、本発明の一態様は、発酵調味料組成物を有効成分として含有する、香辛料の刺激感(「香辛料感」ということもある。)の向上剤である。
香辛料とは、食品に加えることにより、味、香り、色、コク、熟成感または刺激感(辛味)に変化をもたらし、おいしく感じさせたり食欲を増進させたりする効果があるものを指す。限定されるものではないが、本発明により刺激感が向上される香辛料として、ブラックペッパー、レッドペッパー、グリーンペッパー、コショウ、シナモン、ナツメグ、クローブ、オールスパイス、クミン、チンピ、コリアンダー、アニス、セージ、タイム、ローレル、オレガノ、カレーリーフ、サフラン、サンショウ、唐辛子、マスタード、しょうが、にんにく、パプリカ、玉葱、ネギ、ゴマ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子、チリパウダー等が挙げられる。
香辛料の刺激感の向上の対象となる食品は、香辛料そのものに限られず、香辛料を用いた調味料(例えば、ウスターソース等)、それらを用いた食品であってもよい。
本発明の香辛料の刺激感の向上剤を用いることにより、香辛料の刺激感が向上されるだけではなく、香辛料の、熟成香、コク、後味をひくことにおいても向上されうる。
<味噌の風味の向上>
得られた発酵調味料組成物は、味噌の風味を向上させるために用いることができる。味噌の風味には、原料風味(より具体的には、大豆風味、米風味、麦風味、等)、甘味、旨味、だし感が含まれる。旨味は、主にグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸に由来する味を指し、だし感は、魚や節に由来する香気や燻製香が感じられることを指す。本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物を、味噌を含有する食品に添加することにより、喫食時に味噌の風味をより強く感じさせることができ、また同等の量のイソアミルアルコールを用いた場合には、この効果は低かった。したがって、本発明の一態様は、発酵調味料組成物を有効成分として含有する味噌の原料風味向上剤である。
対象となる味噌としては、限定されるものではないが、白味噌、赤味噌、合わせ味噌、米味噌(大豆と米を発酵・熟成させたもの)、麦味噌(大豆と大麦またははだか麦を発酵・熟成させたもの)、豆味噌(大豆を発酵・熟成させたもの)、調合味噌(米味噌、麦味噌、豆味噌の各味噌を混合したもの)等が挙げられる。一般に加熱殺菌された味噌やフリーズドライされた味噌、例えば即席味噌汁用の調味味噌では、味噌の風味が劣化する傾向がみられるが、本発明の発酵調味料組成物は、このような味噌における風味の向上にも好ましく使用することができる。本発明の味噌の風味向上剤は、味噌を含有するさまざまな食品に適用することができる。
<チーズ風味の向上>
得られた発酵調味料組成物は、チーズ風味を向上させるために用いることができる。チーズ風味の向上とは、チーズ特有の好ましい風味を向上させることをいう。本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物を、チーズ、またはチーズを用いた食品に添加することにより、喫食時にチーズ風味をより強く感じさせることができ、同等の量のイソアミルアルコールを用いた場合には、この効果は比較的低かった。したがって、本発明の一態様は、発酵調味料組成物を有効成分として含有するチーズ風味向上剤である。
チーズ風味の向上の対象となる食品は、チーズ自体、およびチーズを原料に含む食品である。
本発明のチーズ風味の向上剤を用いることにより、チーズの風味が向上されるだけではなく、酸味も向上されうる。チーズ風味と適度な酸味により、対象食品において総じて好ましい風味が増強されうる。
<卵風味の向上>
得られた発酵調味料組成物は、卵風味を向上させるために用いることができる。本発明に関して卵というときは、食用の、鳥類の卵を指し、これには、ニワトリの卵(鶏卵)、ウズラの卵、アヒルの卵、ダチョウの卵、ハトの卵が含まれる。また、本発明に関して卵風味というときは、生の卵が持つ風味ではなく、加熱などにより調理された卵によって生まれる風味(調理風味、調理香ということもある。)を指す。卵風味は、甘い風味、コク、濃厚さ、香ばしさ等によって表現されることもある。卵風味の向上とは、卵特有の好ましい風味(コク、濃厚さ等)を向上させることをいう。本発明者らの検討によると、発酵調味料組成物を、卵を用いた食品に添加することにより、喫食時に卵風味をより強く感じさせることができ、同等の量のイソアミルアルコールを用いた場合には、この効果は比較的低かった。したがって、本発明の一態様は、発酵調味料組成物を有効成分として含有する卵風味向上剤である。
卵風味の向上の対象となる食品は、卵を原料に含む調理された食品である。調理は、加熱に限られない。卵風味の向上の対象となる食品は、好ましくは、加熱調理された食品である。
本発明の卵風味の向上剤を用いることにより、卵の風味が向上されるだけではなく、卵風味の持続性も向上されうる。
<評価方法および基準>
塩味が増強されているか否か、またはその程度;不快臭がマスキングされているか否か、またはその程度;香辛料の刺激感が向上されているか否か、またはその程度;味噌の風味が向上されているか否か、またはその程度;チーズの風味が向上されているか否か、またはその程度;卵風味が向上されているか否か、またはその程度は、当業者であれば、適切な対照食品を基準とした官能試験を企画して評価することができる。より具体的には、例えば有効成分を含まない食品等適切な対照を準備し、3〜10段階程度の基準を定め、基準(産業上意義のある基準を超えた場合に、合格とするように定めることができる。)に基づき、訓練されたパネラーが対象となる食品と対照とを比較することにより評価することができる。
塩味の増強に関しては、段階的な濃度の食塩水(例えば、0.7%、0.75%、0.8%、0.9%の食塩水)を準備し、パネラーに、対象物と食塩水とを比較させ、対象物と同等の塩味を呈する食塩水の濃度を提示させることにより、評価することができる。
より具体的な評価のための方法として、本明細書の実施例の項に記載した方法を参照することができる。
〔適用される食品〕
得られた発酵調味料組成物は、種々の食品に適用できる。適用される塩味を増強する対象となる食品の例としては、特に限定されない、特に好ましいものの一つとして、液状の、または水分をある程度含む各種調味料、例えば、しょうゆ(薄口、濃口)、オイスターソース、カレールウ、ハヤシルウ、めんつゆ(濃縮タイプ、ストレート)、みそ、とうばん醤、ソース(ウスター、とんかつ、中農)、ねりわさび、ねりがらし、トマトケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、チリソース、チリペッパーソース、トマトソース、ピザソース、バター、マーガリン、コーンスープの素、マーボー豆腐の素、等が挙げられる。また、各種加工食品(冷蔵食品および冷凍食品であってもよい)の例としては、春巻、中華丼(の具)、餃子、焼売、小龍包、肉まん、八宝菜、回鍋肉、青椒肉絲、野菜炒め、きんぴら、筑前煮のほか、コロッケ、メンチカツ、エビカツ等のフライ製品、ハンバーグ等の肉製品、あんかけうどん、長崎ちゃんぽん、焼きそば、スパゲッティナポリタン、マカロニグラタン、ラザニア等の麺類、チャーハン、ピラフ、炊き込みご飯、ちらしずし等の米飯製品、お好み焼き、たこ焼き、ピザ等の小麦粉製品が挙げられる。
不快臭、特に魚肉臭をマスキングする対象となる食品の例としては、特に限定されず、焼き魚、魚肉加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、揚げかま、ちくわ、はんぺん等)、魚加工品(干物、ぬれ珍味、煮魚、西京漬け、魚缶詰等)、つみれ、魚介類エキス、かつお飯が挙げられる。畜肉臭をマスキングする対象となる食品の例としては、特に限定されず、食肉調製品(牛肉、豚肉、その他の食肉を原料としたもので、加熱調理、または味つけした製品や半加工品等)、具体的には、牛肉調製品(ビーフカレー、ビーフジャーキー、コンビーフ、ローストビーフ、シーズンド・ビーフ等)、豚肉調製品(シーズンド・ポーク、 ソーセージ、 缶入りハム、ポークランチョンミート等)、ハンバーガー用のパティー、ステーキ用肉、焼き肉用肉(牛タン、ハラミ、肝臓等)、ハム、ソーセージ、ベーコン、味付けスペアリブ、牛丼、豚丼、もつ入り鍋、ハンバーグ、とんかつ、酢豚、豚てんぷら、餃子、ポークビーンズが挙げられる。
香辛料の刺激感の向上の対象となる食品の例としては、特に限定されず、ウスターソース、中濃ソース、とんかつソース、お好み焼きソース、タコ焼きソース、ステーキソース、バーベキューソース、焼き肉のたれ、ハーブソルト等が挙げられる。
味噌の風味向上の対象となる食品の例としては、特に限定されず、味噌自体のほか、味噌汁、豚汁、冷汁、味噌だれ、味噌おでん 、味噌煮込みうどん、味噌ラーメン、なめろう、味噌カツ、味噌田楽、風呂吹き、鯉こく、五平餅、味噌松風、味噌饅頭、味噌せんべい、味噌かりんとう、惣菜パン等が挙げられる。チーズ風味向上の対象となる食品の例としては、特に限定されず、プロセスチーズ、ピザ、グラタン、ドリア、パスタソース、シチュー、ホワイトソース、コロッケ、スナック菓子、チーズケーキ、アイスクリーム類、シュークリーム、クリームブリュレ、ショートケーキ等が挙げられる。卵風味向上の対象となる食品の例としては、特に限定されず、卵焼、オムレツ、茶わん蒸し、カスタードソース、プリン、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等)、シュークリーム、クリームブリュレ、ケーキ、クリームコロッケ、グラタン、およびドリア等が挙げられる。
食品への発酵調味料組成物の添加量は、食品の種類にもよるが、固形分5.0%の発酵調味料組成物(塩分が20.10%含まれるものとする。)に換算して、喫食時の濃度において0.005〜2%の範囲で用いることができる。下限値は、例えば0.01%以上であり、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上であり、さらに好ましくは0.2%以上である。0.01%未満では効果が乏しいからである。塩味を増強するためには、添加する食塩(発酵調味料組成物に含まれる食塩は除く。)に対し、固形分5.0%の発酵調味料組成物(食塩が20.10%含まれるものとする。)に換算して10〜250%、好ましくは30%〜210%の範囲で用いてもよい。
添加量の上限は、発酵調味料組成物の酸味や香気が、対象となる食品の風味を損なわない限り、限定されない。食品にも拠るが、固形分5.0%の発酵調味料組成物(塩分が20.10%含まれるものとする。)に換算して、喫食時の濃度において2%を超えると発酵調味料組成物の風味が感じられるようになるので、2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下としてもよく、1.5%以下としてもよい。雑味や渋みを感じやすい味の薄い食品に関しては1.0%以下としてもよく、また雑味・渋みが感じられず、かつ十分に高い効果を得るとの観点からは、0.7%以下としてもよい。
〔その他〕
本発明の実施態様の一つは、上で説明された発酵調味料組成物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、製造方法である。あるいは、発酵調味料組成物の有効量を添加する工程を含む、畜肉もしくは魚肉、香辛料、味噌、チーズ、または卵を原料に含む食品の製造方法である。食品の製造方法における、発酵調味料組成物の添加の段階は、作業性等を考慮し、適宜とすることができる。ここで、添加するとは、食品原料に注入すること、接触させることを含む。例えば畜肉には、添加は、本発明の剤を調味液に含有させ、畜肉等に注入することであってもよく、調味液に畜肉等を漬け込むことであってもよい。
本発明の他の実施態様として、上で説明された発酵調味料組成物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、塩味の増強方法、または発酵調味料組成物の有効量を添加する工程を含む、畜肉もしくは魚肉の不快臭のマスキング、香辛料による刺激の向上、味噌の風味の向上、チーズの風味の向上、または卵の風味の向上のための方法が提供されうる。
[実施例1:イソアミルアルコール高生産酵母の探索]
下表に示す培地3mlを殺菌後に、酵母(酒酵母、ビール酵母、野生酵母)196株をそれぞれ植菌し、30℃で16時間振盪培養した。培養後、専門家2名による官能評価を行い、香気のタイプが下記の3つに該当するか否かを判断した。またタイプ1または2であると判断されたものの培養後の培地のイソアミルアルコール(IAA)濃度を、下記の条件でHPLCにより測定した。
Figure 0006983007
香気のタイプ
タイプ1.醤油様香気(醤油特有の発酵臭)
タイプ2.魚醤様香気(魚臭)
タイプ3.酢酸エチル臭(果実の香気成分に含まれるエステル臭)
(イソアミルアルコール分析条件)
装置:日立HPLC L2000シリーズ
検出器:RI
カラム:Shodex SUGAR KS-G+SUGAR KS-801
カラム温度:80℃
移動層:H2O
流速:1.0mL/min
その結果、タイプ1が39株、タイプ2が13株選抜された。また、タイプ1の1株(IAHP-4)が1879ppm、タイプ2の1株(IAHP-1)のIAA濃度が1087ppmであった。それ以外はタイプ1の1株(IAHP-2)が968ppmであるだけで、IAHP-3など他はすべて500ppm以下であり、また多くは100〜300ppm程度であった。評価した菌株と香気の特徴、およびIAA濃度を下表にまとめた。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
なお、IAHP-1〜IAHP-4の4株は、(独)製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ国際寄託されている。受託番号は下記のとおりである:
ハンセヌラ・スアベオレンス IAHP-1株:受託番号 NITE BP-02335
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-2株:受託番号 NITE BP-02417
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-3株:受託番号 NITE BP-02418
サッカロマイセス・セレビジエ IAHP-4株:受託番号 NITE BP-02419
[実施例2:イソアミルアルコール(IAA)の生産能力の確認試験]
500mLフラスコ中に、下表に示す培地100mLを調製し、殺菌後に、IAHP-4株、およびIAHP-1株をそれぞれ接種し、30℃で振盪培養を行った。16時間、24時間にサンプリングした。得られた培養物はそれぞれ遠心分離して酵母菌体を除去し、上清に20%加塩した。なお培養後の培地のIAA濃度は、実施例1と同じ条件で測定した。
Figure 0006983007
培養16時間後と24時間のIAAの濃度を、図1に示した。IAHP-4株を用いて24時間培養すると、IAA濃度は415ppmを示した。またIAHP-1株を用いて24時間培養すると、IAA濃度は711ppmであった。再試験したところ、690ppmと高い値を示した。よってIAHP-1株を長く培養することで、培地中のIAA濃度が高くなる可能性があることが分かった。
IAHP-1株を用いることによってイソアミルアルコールを高濃度で生産することが可能になった。
[実施例3:イソアミルアルコール高含有調味料の製造]
水3670kg、魚醤200kg、酵母エキス40kg、グルコース80kg、L-ロイシン14kgからなる培地を調製し、殺菌後に、 IAHP-1株の酵母シードを植菌した。温度30〜32℃、通気条件1000L/minの条件下で、16〜24時間通気撹拌発酵を行った。発酵後、パーライトを用いてろ過を行い、ろ液に食塩約900kgを添加し、発酵調味料、3220kgを得た。以下の試験ではこの発酵調味料を標品として使用した。得られた発酵調味料ついて、各種分析を行った。
1.一般成分
収量:3220 kg
色:褐色清澄液
風味:重いアルコール香、特有の発酵臭を有する。
水分:81.10%
pH:4.9
Brix:25.10%
塩分:20.10%
イソアミルアルコール 612.1ppm
2.有機酸およびアミノ酸の分析
下記の方法で、有機酸およびアミノ酸を分析し、結果を下表に示した。
(有機酸分析条件(ポストカラムBTB法))
装置:日立HPLC L-2000シリーズ
カラム:日立 GL-C610H-S 7.8mmID×300mm
溶離液:3mM 過塩素酸
反応液:BTB溶液
検出器:UV(440nm)
流速:0.5mL/min
(アミノ酸分析条件(たんぱく加水分解物分析法))
装置:日立アミノ酸アナライザ L-8900
カラム:日立 たんぱく加水分解物分析用パックドカラム 4.6×60mm(#2622SC 充填済み)
緩衝液:L-8500PHキット(PH-1、PH-2、PH-3、PH-4、PH-RG)(三菱化学)
反応液:BTB溶液
反応液:ニンヒドリン試液 アミノ酸自動分析装置用キット(和光純薬)
Figure 0006983007
3.香気成分
下記の方法で、香気成分を分析した。結果を下表および図2に示した。なお、分析は2回行い、図2のチャートは、1回目のものである。なお、1回目、2回目とも同じ条件で測定した。
(香気成分(GC-MS法))
装置: Agilent GC-MS 7890B/5977A
カラム:DB-WAX 60m/0.32mm/ 1um
前処理:5g サンプリング。DHS法にて測定。N=3
スプリット比:Low Split(3:1)
昇温:50℃(4min)-6℃/min-240℃/5min
コンスタントフロー(1.8ml/min), スニフィング分岐無し
SIM/SCANモード、SIM:18m/z、イオン源温度230℃、MSDインターフェース温度245℃、ゲイン係数1、EM電圧:1008、Mass range:35-300
検出された各成分の面積比より、香気成分全体におけるイソアミルアルコール含有率は86.37%であった。
Figure 0006983007
[実施例4:塩味増強効果]
実施例3の発酵調味料の塩味増強効果を、食塩水、模擬液、アプリケーションでそれぞれ比較評価を行った。食塩を蒸留水で希釈した食塩水を標準品(Control)とした。なお、模擬液は下記の配合で調製した(以下の本実施例において同じ。)。
Figure 0006983007
1.食塩濃度0.7%での評価
食塩濃度が0.7%になるように、食塩と実施例3の発酵調味料(0.1%、0.2%、0.5%、1.0%)を蒸留水で希釈した(下表)。これら実施例3の発酵調味料を添加した食塩水について5名のパネラーにより官能評価を行い、塩味を比較した。塩味は、0.7%、0.75%、0.8%、0.9%の食塩水と比較して、塩味強度が等しくなる食塩濃度を小数点以下2桁で記載させ、平均値を求めた。各試験液の組成、および評価結果を下表に示す。
Figure 0006983007
実施例3の発酵調味料を添加することで塩味増強効果がみられた。
2.食塩濃度0.9%での評価
食塩濃度が0.9%になるように、食塩と実施例3の発酵調味料0.2%および模擬液0.2%を蒸留水でそれぞれ希釈した。これら実施例3の発酵調味料および模擬液を添加した食塩水について5名のパネラーにより官能評価を行い、塩味を比較した。塩味は、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%食塩水と比較して、塩味強度が等しくなる食塩濃度を小数点以下2桁で記載させた。各食塩濃度の平均値を下表に示す。
Figure 0006983007
実施例3の発酵調味料と模擬液はそれぞれ塩味増強効果を有し、そのなかでは、実施例3の発酵調味料の方が塩味増強効果が高いといえる。
3.めんつゆでの評価
実施例3の発酵調味料および模擬液を添加しためんつゆを下表の配合でそれぞれ調整した。それぞれ調整しためんつゆ25gを湯275gで12倍に希釈した。そして、喫食時のそれぞれのめんつゆについて、専門パネラー5名で官能検査を行った。
Figure 0006983007
結果を下表に示した。実施例3の発酵調味料と模擬液ではともに塩味増強効果を有しており、特に実施例3の発酵調味料の方が塩味増強効果が高いといえる。
Figure 0006983007
4.オニオンスープでの評価
実施例3の発酵調味料を添加したオニオンスープについて官能評価を行った。標準のスープ(Blank)、標準から20%減塩したスープ(Control)、20%減塩に実施例3の発酵調味料を添加したスープ(発酵調味料用)それぞれを一定の配合割合で調製した(下表)。Blank、Controlについては、各3gをお湯で100gに希釈し調整した。発酵調味料用については、実施例3の発酵調味料0.2gを発酵調味料用3gに加えて、その後、お湯で100gに希釈し調整した。
Figure 0006983007
結果を下表に示した。塩味の強さの順番は、Blank(減塩前)>発酵調味料(20%減塩)>Control(20%減塩)であった。実施例3の発酵調味料は、ナトリウムを調整したモデルの系での評価では、Contorlの20%減塩より塩味を強く感じ、塩味増強効果が確認された。
Figure 0006983007
[実施例5:マスキング効果]
1.白身魚エキスへの添加試験
下表に記載された量の、湯、食塩、実施例3の発酵調味料および白身魚エキスを混合した。その後、それぞれのサンプルを専門パネラー5名で官能評価することにより、実施例3の発酵調味料の白身魚エキスへの添加効果を評価した。なお、模擬液は下記の配合で調製した(以下の本実施例において同じ。)。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
結果を下表に示した。実施例3の発酵調味料および模擬液により、白身魚特有の生臭い魚臭のマスキング効果が得られた。また、実施例3の発酵調味料の効果は、模擬液の効果より高かった。
Figure 0006983007
2.シャケほぐし身への添加試験
下表に記載された量の湯、食塩水及び実施例3の発酵調味料を混合した。そして、混合液をシャケのほぐし身と混合させ、実施例3の発酵調味料のシャケほぐし身への添加効果を確認した。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
3.もつ入り鍋スープへの添加試験
下表に記載された原材料を混合して調味液とした。次に、豚生もつをパウチに充填し、90℃、10分、加熱殺菌して、豚ゆでもつを得た。そして、調味液80重量部に対し、豚ゆでもつ20重量を加え、喫食に適した温度まで加熱してもつ入り鍋スープを得た。実施例3の発酵調味料のもつ入り鍋スープへの添加効果を確認した。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
4.牛丼具材への添加試験
下表記載された原材料を混合し、湯煎で85℃まで加熱した後、冷却し調味液とした。牛肉と玉ねぎをボイルした後、冷却した。牛肉、玉ねぎ、調味液を下表に記載の配合率でパックに入れ、90℃、10分加熱した。水冷後、凍結して牛丼の素とした。
牛丼の素を解凍後、パックごとに加熱して官能評価用サンプルとした。実施例3の発酵調味料の牛丼(具材)への添加効果を確認した。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
Figure 0006983007
5.ウスターソースへの添加試験
ウスターソース(ブルドックソース株式会社製)にそれぞれ実施例3の発酵調味料、下表に記載された原材料を混合し、実施例3の発酵調味料の市販のウスターソースへの添加効果を確認した。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
6.まとめ
実施例3の発酵調味料は、畜肉・魚の嫌な生臭い風味をマスキングして、ベースの良い味・風味はしっかり残る。模擬液は、実施例3の発酵調味料と類似の効果が認められるが、その効果は弱いといえる。
実施例3の発酵調味料は、臭み消しをして芳醇な香りを付与するイメージで、嫌な風味のマスキング効果があるといえる。また、熟成香気による素材の味を引き立てる効果があるといえる。
[実施例6:即席味噌汁添加試験]
実施例3の発酵調味料の即席味噌汁への添加効果を確認した。即席味噌汁用の調味味噌として、合わせ味噌(永谷園製「あさげ」生味噌タイプ)、赤だし味噌(永谷園製「ひるげ」生味噌タイプ)、白味噌(永谷園製「ゆうげ」生味噌タイプ)を使用した。下表の割合で、調味味噌と他の原材料を混合したものに湯を注ぎ、混合し、味噌汁を得て評価に供した。なお、模擬液は下表のものを用いた(以下の本実施例において同じ。)。
Figure 0006983007
Figure 0006983007
試作後、室温まで冷ましたサンプルを、よく訓練されたパネル5名にて、豆風味、甘味、旨味、およびだし感の強さについてControl(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。
結果を図3に示した。発酵調味料添加品は豆風味、甘味、旨味、だし感(特に旨味、だし感)が向上した。模擬液は、発酵調味料添加品と同様の効果が認められるが、その効果は弱いといえる。
[実施例7:チーズディップソース試作試験]
実施例3の発酵調味料のチーズディップソースへの添加効果を確認した。下表の原材料を全て混合し、ホモジナイザーにて破砕して、チーズディップソースを試作した。試作後、サンプルを、よく訓練されたパネル5名にて、チーズ風味、および酸味の強さについてControl(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。
Figure 0006983007
結果を図4に示した。発酵調味料添加品はチーズ風味が向上した。実施例3の発酵調味料と模擬液ではともにチーズ風味が向上しており、特に実施例3の発酵調味料の方がチーズ風味向上効果が高いといえる。
[実施例8:カスタードクリーム試作試験]
実施例3の発酵調味料のカスタードクリームへの添加効果を確認した。卵黄と実施例3の発酵調味料、グラニュー糖と薄力粉とコーンスターチをそれぞれ混ぜた後、それぞれを混合し混合液を作成した。鍋に牛乳、バニラエッセンスを入れ、煮立ったら火を止めて、混合液へ加えた。上記混合物を鍋に戻し、かき混ぜながら加熱し、バットに移して冷却し、カスタードクリームを得た。得られたサンプルを、よく訓練されたパネル5名にて、卵風味の強さについてControl(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。
Figure 0006983007
結果を図5に示した。発酵調味料添加品では、卵風味が向上した。模擬液は、発酵調味料添加品と同様の効果が認められるが、その効果は弱いといえる。

Claims (9)

  1. 酵母を用いた発酵調味料組成物であって、イソアミルアルコール、イソ酪酸、ベンズアルデヒド、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、プロピオン酸、3−メチル吉草酸、およびエナント酸からなる主要香気成分中のイソアミルアルコールの割合が、50%以上である、発酵調味料組成物。
  2. 酵母が、ハンセヌラ・スアベオレンス、またはサッカロマイセス・セレビジエに属するものである、請求項1に記載の発酵調味料組成物。
  3. 固形分5.0%の発酵調味料組成物に換算したときに500ppm以上のイソアミルアルコールを含む、請求項1または2に記載の発酵調味料組成物。
  4. 酵母が、ハンセヌラ・スアベオレンス(Hansenula suaveolens)NITE BP-02335、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)NITE BP-02417、サッカロマイセス・セレビジエNITE BP-02418、およびサッカロマイセス・セレビジエNITE BP-02419からなる群より選択されるいずれかであり、
    水、魚醤、酵母エキス、グルコース、L-ロイシンを用いて発酵を行い、得られた培養物から酵母菌体を除去して得た発酵液を用いた発酵調味料組成物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。
  5. ハンセヌラ・スアベオレンス(Hansenula suaveolens)NITE BP-02335、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)NITE BP-02417、サッカロマイセス・セレビジエNITE BP-02418、およびサッカロマイセス・セレビジエNITE BP-02419からなる群より選択される酵母を、ロイシンを0.3%以上含む培地で、好気的条件で培養し、
    得られた培養物から酵母菌体を除去して発酵液を得る
    工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物の製造方法。
  6. ロイシンを0.3%以上含む培地が、さらに魚醤を3%以上含む、請求項5に記載の製造方法。
  7. 快臭のマスキング用である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。
  8. 不快臭が、魚肉臭、または畜肉臭である、請求項7に記載の発酵調味料組成物。
  9. 塩味増強用、味噌の風味の向上用、チーズ風味の向上用、または卵風味の向上用である、酵母を用いた発酵調味料組成物であって、主要香気成分中のイソアミルアルコールの割合が、50%以上である、発酵調味料組成物。
JP2017161117A 2017-08-24 2017-08-24 イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法 Active JP6983007B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017161117A JP6983007B2 (ja) 2017-08-24 2017-08-24 イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017161117A JP6983007B2 (ja) 2017-08-24 2017-08-24 イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019037162A JP2019037162A (ja) 2019-03-14
JP6983007B2 true JP6983007B2 (ja) 2021-12-17

Family

ID=65724630

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017161117A Active JP6983007B2 (ja) 2017-08-24 2017-08-24 イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6983007B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7381213B2 (ja) * 2019-03-25 2023-11-15 テーブルマーク株式会社 イソ吉草酸を含有する発酵調味料組成物の製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3278254B2 (ja) * 1992-10-24 2002-04-30 カゴメ株式会社 ウスターソース類の製造方法
JPH11127849A (ja) * 1997-10-28 1999-05-18 The Nikka Wisky Distilling Co Ltd 新規酵母及びその利用法
JPH11137207A (ja) * 1997-11-07 1999-05-25 Shokuhin Sangyo Kankyo Hozen Gijutsu Kenkyu Kumiai 魚系調味料およびその製造方法
JP5138194B2 (ja) * 2006-08-30 2013-02-06 公益財団法人 日本醸造協会 新規酵母と当該酵母による酒類の製造方法
JP2012095596A (ja) * 2010-11-02 2012-05-24 Kikkoman Corp 醤油様調味料

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019037162A (ja) 2019-03-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6970226B2 (ja) 新規発酵調味料組成物
KR100971010B1 (ko) 멸치액젓 농축물을 이용한 msg 대체용 조미료 조성물 및그 제조방법
JP5089446B2 (ja) 料理用酒類及びその用途、並びに、加工食品
CN111867396A (zh) 咸味和/或辛香感增强剂
JP7381213B2 (ja) イソ吉草酸を含有する発酵調味料組成物の製造方法
KR101114888B1 (ko) 액상 조미료 및 그 제조방법
CA2983421A1 (en) Method for producing yeast extract, yeast extract obtained thereby, seasoning composition, and food
JP5976369B2 (ja) 酢酸含有調味料
JPWO2008120598A1 (ja) 魚臭さを低減化し、風味を向上させた魚醤油の製造方法
JP6983007B2 (ja) イソアミルアルコール高含有調味料組成物およびその製造方法
JP5101727B2 (ja) 醤油様調味料
JP2007111046A (ja) 調味料素材及びその製造方法
WO2011000824A2 (en) Compositions suitable as a flavour and to the use of these compositions to evoke or enhance koku perception
JP5272262B2 (ja) 魚醤油の製造方法
JP7329330B2 (ja) 風味付与調味料
JP2010220520A (ja) 畜肉フレーバー又は卵フレーバー様調味料の製造方法
JP6158900B2 (ja) オフフレーバーのマスキング効果が向上した液体調味料
JP4850749B2 (ja) みりんの製造方法
JP6029877B2 (ja) 辛味抑制剤
JP2013078284A (ja) 塩味増強剤による塩味増強法及び食塩含有飲食品の減塩方法
WO2022176979A1 (ja) 香りの優れた醤油及び醤油様調味料、並びに加熱劣化臭の抑制方法、加熱劣化臭が抑制された容器詰組成物及び加熱劣化臭抑制用組成物
JP2017143767A (ja) 食塩含有飲食品用醤油様調味液
JP4338907B2 (ja) 海洋深層水を利用した魚醤とその製造方法
WO2023190557A1 (ja) 塩味増強剤
JP2023148189A (ja) 苦味の抑制方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200817

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210525

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210726

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210831

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211109

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211122

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6983007

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150