JP6981450B2 - リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池およびリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
〔充電〕 4SiO+17.2Li++17.2e−→
3SiLi4.4+Li4SiO4
〔放電〕 3SiLi4.4→
3Si+13.2Li++13.2e−
前記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
なお、本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として有する意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された下限値または上限値は、他の段階的に記載されている下限値または上限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の下限値または上限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の主要な構成要素(電気化学反応に寄与する部分)を図示した概略説明図である。ここで、リチウムイオン二次電池とは、電極へのLiの吸蔵・脱離(放出)により、電気エネルギを貯蔵または利用可能とする電気化学デバイスをいう。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオン電池、非水電解質二次電池などの別の名称で呼ばれるが、いずれの電池も本発明の対象である。
正極2は、正極層5と正極集電体6とから構成されている。正極層5は、正極活物質と導電剤とバインダとから構成されている。
正極活物質は、充電過程においてリチウムイオンが脱離し、放電過程において負極層7中の負極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される物質である。正極活物質としては、遷移金属を有するリチウム複合酸化物が望ましい。正極活物質としては、例えば、組成式:LiAO2、Li1+xA1−xO2、LiA2O4、LiAPO4、LiAVOz、LiABO3、Li2ASiO4、LiMn2−yAyO4などで表される化合物を使用することができる。なお、これらの化合物において、Aは金属である。Aとしては、例えば、Co、Ni、Mn、Fe、Cr、Zn、Ta、Al、Mg、Cu、Cd、Mo、Nb、W、Ruなどから選択される少なくとも一種類が挙げられる。xは0.33以下の任意の数を取り得る。yは0.5以下の任意の数を取り得る。zは化合物に含まれる酸素濃度であり、0以上の任意の整数を取り得る。また、正極活物質として、例えば、硫黄、TiS2、MoS2、Mo6S8、TiSe2などのカルコゲナイドや、V2O5などのバナジウム系酸化物、FeF3などのハライド、ポリアニオンを構成するFe(MoO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3などの酸化物や、キノン系有機結晶なども用いることができる。元素比は前記定比組成からずれていてもよい。なお、本実施形態においては、正極活物質について制限はなく、前記した材料以外のものを使用することができる。
導電剤は、正極層5の導電性を向上させる。導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などを使用することができるが、これらに限定されない。
バインダは、正極2中の正極活物質や導電剤などを結着させる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシル・メチルセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミドなどを使用することができるが、これらに限定されない。
正極集電体6は、正極層5の集電を行う。正極集電体6としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔などを使用することができるが、これらに限定されない。
正極層5を作製するために、正極活物質、導電剤、バインダを混合した後、溶媒を加え、正極スラリを調製することが好ましい。正極スラリを調製するために用いる溶媒は、バインダを溶解できるものであればよく、例えば、1−メチル−2−ピロリドンや水などを使用することができるが、これらに限定されない。正極活物質、導電剤およびバインダの溶媒への分散処理には、公知の混練機、分散機を使用することができる。
正極活物質、導電剤、バインダの混合比は、正極活物質:導電剤:バインダの質量比でこれらの合計を100とした場合、例えば、80〜99:0.5〜10:0.5〜10などとすることができる。また、粉末の混合物に対し、溶媒は質量比で0.1〜2倍などとすることができる。
負極3は、負極層7と負極集電体8とから構成されている。負極層7は、負極活物質と導電剤とバインダとから構成されている。
負極活物質は、放電過程においてリチウムイオンが脱離し、充電過程において正極層5中の正極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される物質である。
本実施形態に係る負極活物質は、Si相と、Si、OおよびM(前記Mは、B、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Gaのうちの一種類以上の元素)を含むM−Si−O相と、を含んでいる。このようなMを用いると、SiO中のOとLiの反応を抑制できるため、初回クーロン効率が向上する。
本実施形態では、原料として用いたSiO中のO含有ドメインを金属珪素化合物化し、M−Si−O相とすることによって初回クーロン効率を向上させている。ここで、負極活物質中にM−Si−O相を含むことによって、初回クーロン効率が向上する理由について説明する。
〔充電〕 4SiO+17.2Li++17.2e−→
3SiLi4.4+Li4SiO4
〔放電〕 3SiLi4.4→
3Si+13.2Li++13.2e−
負極3に用いる導電剤およびバインダは、正極2と同様のものをそれぞれ使用することができる。
負極集電体8は、例えば、銅箔、ステンレス鋼箔などを使用することができるが、これらに限定されない。
負極層7を作製するために、負極活物質、導電剤、バインダを混合した後、溶媒を加え、負極スラリを調製することが好ましい。負極スラリを調製するために用いる溶媒は、バインダを溶解できるものであればよく、例えば、1−メチル−2−ピロリドンや水などを使用することができるが、これらに限定されない。負極活物質、導電剤およびバインダの溶媒への分散処理には、公知の混練機、分散機などを使用することができる。
負極活物質、導電剤、バインダの混合比は、負極活物質:導電剤:バインダの質量比でこれらの合計を100とした場合、例えば、60〜98:0.5〜20:0.5〜20などとすることができる。また、粉末の混合物に対し、溶媒は質量比で0.1〜2倍などとすることができる。
セパレータ4は、正極2と負極3とを絶縁する(短絡を防止する)とともに、正極2と負極3との間にリチウムイオンを伝達させる。セパレータ4としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、セルロース、セルロースの変成体などの微孔性フィルムや不織布などを使用することができるが、これらに限定されない。セパレータ4はこれらの材料で形成された積層体であってもよい。セパレータ4の厚みは、電池の高出力化の観点から、40μm以下とすることが好ましい。このような厚みのセパレータ4を用いることで、電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
また、正極2、負極3およびセパレータ4を1つの群として、複数の群を併用することができる。この場合、2つの群の間に、短絡を防止するための図示しないセパレータを設けることが好ましい。このセパレータとして、前記したセパレータ4を使用することができる。
電解質としては、リチウム塩が溶解した有機溶媒を使用することができる。
電解質の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、亜リン酸トリス、メチルホスホン酸ジメチルなどを使用することができるが、これらに限定されない。電解質の有機溶媒は前記したものの中から選択されたいずれか一種を用いることができ、二種以上を併用することもできる。電解質には、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイトなどの添加剤を加えてもよい。
電解質のリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2などを使用することができるが、これらに限定されない。
電解質として具体的には、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを体積比1:1:1で混合した後、ビニレンカーボネートを質量比で1%加えたものを有機溶媒として用い、これに1.0mol/LのLiPF6をリチウム塩として溶解させた液を好適に用いることができる。
なお、前記した電解質の代わりに、固体電解質を使用することも可能である。固体電解質の例としては、Li3BO3−Li2SO4、Li7La3Zr2O12、Li10GeP2S12などを使用することができるが、これらに限定されない。
前記したように、図1は、リチウムイオン二次電池1の主要な構成要素(電気化学反応に寄与する部分)を図示したものであり、電気化学反応に寄与する部分以外のその他の構成については図示していない。
リチウムイオン二次電池1における前記その他の構成としては、例えば、前述したリチウムイオン二次電池1を収容する外装体(図示せず)が挙げられる。外装体は、電解質に対して耐食性のある材料で任意の形状に形成することができる。外装体は、例えば、有底円筒形または有底角筒形の本体と、本体の開口部を封じる蓋体と、で形成することができる。この場合、外装体は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などの金属材料で好適に形成することができる。またこの場合、必要に応じて本体と蓋体との間に樹脂製のシーリング材を介在させてもよい。このようにすると、本体と蓋体との隙間から電解質などが漏出するのを防ぐことができる。さらに、外装体は、例えば、任意のラミネート材を用いて密封させたものを用いることができる。
次に、図2を参照して、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法(以下、単に「本製造方法」と呼称することがある)について説明する。なお、本製造方法の説明にあたって、既に説明している構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略することがある。
図2に示すように、本製造方法は、前述したリチウムイオン二次電池用負極活物質を製造する方法であり、混合工程S1と、焼成工程S2と、を含む。本製造方法は、これらの工程についてはこの順に行うものである。
混合工程S1は、SiOに、後の焼成工程S2においてSiO中のO含有ドメインを金属珪素化合物化させる効果のある化合物を添加し、混合する工程である。このような効果のある化合物としては、Mを含む金属化合物が挙げられる。SiO中のO含有ドメインを金属珪素化合物化させる効果のある化合物として好適かつ具体的には、AlF3が挙げられる。なお、混合工程S1は、公知の混練機を用いて行うことができる。SiOは、組成式がSiOn(0.1≦n≦2、好ましくは0.5≦n≦1.5)で示されるものを用いることができる。SiOは、具体的には、一酸化珪素(SiO)、二酸化珪素(SiO2)およびSiOやSiO2からわずかにずれた組成の酸化珪素を用いることができる。
焼成工程S2は、混合工程S1で混合して得られた材料を不活性雰囲気下で焼成する工程である。不活性雰囲気は、焼成を行うチャンバ内の空気を不活性ガスに置換することで成すことができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどを挙げることができるが、含有される酸素濃度の低い気体であればこれらに限定されずに使用可能である。不活性雰囲気としない場合、Si相およびM−Si−O相以外の化合物が生成される可能性があるため、電池容量が低くなったり、初回クーロン効率が向上しなったりするおそれがある。
そして、焼成工程S2では、不活性雰囲気下、800℃〜1100℃、好ましくは900℃〜1050℃、より好ましくは950℃付近の温度で焼成を行うと、Si相とM−Si−O相(例えば、Al6Si2O13)とを含む負極活物質が得られる。
焼成工程S2における焼成時間は、例えば、1〜20時間などとすることができるが、Si相とM−Si−O相とを含む負極活物質が得られればよく、これに限定されない。焼成時間は、例えば、10時間とすることができる。
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、本実施形態に係る負極活物質を含んでいるため、初回クーロン効率が高い。
そして、本実施形態に係る負極活物質の製造方法は、初回クーロン効率が高い本実施形態に係る負極活物質を製造できる。
以下のようにして実施例1に係る負極活物質を製造し、さらにこれを用いて電気化学セルを作製した。
SiOとAlF3とを、SiO:AlF3=1:0.4(モル比)となるように混合し、得られた混合物をアルゴン雰囲気下で900℃、10時間焼成して、実施例1に係る負極活物質を製造した。
製造した負極活物質と導電剤とバインダとを質量比で70:15:15となるように混合した後、粉末の混合物に対し、質量比で1:1となるように溶媒を加え、負極スラリを調製した。なお、導電剤はケッチェンブラックを使用し、バインダはポリアクリル酸を使用し、溶媒は1−メチル−2−ピロリドンを使用した。
調製した負極スラリを負極集電体8である銅箔の上にドクターブレード法で付着させた後、乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、負極層7を作製した。
以上のようにして作製した電気化学セルについて、充放電評価を行った。
充放電評価における充放電試験は下記の条件で行った。すなわち、電気化学セルを初回充電において0.25CAで定電流充電し、0Vに電圧が達した後に定電圧充電の電流値が0.0125CAになるまで充電し、0.25CAで1.5Vまで定電流放電した。
そして、得られた放電容量(Ah)と、充電容量(Ah)とを用いて、{放電容量(Ah)/充電容量(Ah)}×100の式から初回クーロン効率(%)を算出した。なお、作製した電極を一時間で放電することができる電流を1CAと定義する。
X線回折測定(XRD)を用いて、実施例1に係る負極活物質の結晶構造を評価した。
実施例2では、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
実施例3では、焼成温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
実施例4では、焼成温度を1050℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
実施例5では、SiO:AlF3=1:0.2(モル比)となるように混合し、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
実施例6では、SiO:AlF3=1:0.6(モル比)となるように混合し、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
実施例7では、SiO:AlF3=1:0.8(モル比)となるように混合し、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
比較例1では、負極活物質としてSiO(AlF3なし、焼成せず)を用い、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
比較例2では、負極活物質としてSiO(AlF3なし、焼成温度950℃で焼成)を用い、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
比較例3では、AlF3の代わりにAl2O3を用いた。比較例3では、SiO:Al2O3=1:0.2(モル比)となるように混合し、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
比較例4もAlF3の代わりにAl2O3を用いた。比較例4では、SiO:Al2O3=1:0.3(モル比)となるように混合し、焼成温度を950℃とした以外は、実施例1と同様の条件で負極活物質を製造した。そして、実施例1と同様にして充放電評価と結晶構造の評価とを行った。
表1に示すように、実施例1〜7に係る負極活物質は、初回クーロン効率が70%を超えており、優れた結果となった。また、実施例1〜7に係る負極活物質は、X線回折測定においてSi相であるSiと、M−Si−O相であるAl6Si2O13とが検出された。これは、図3に示す実施例2に係る負極活物質の回折チャートからも確認することができる。なお、図3には実施例1、3〜7の回折チャートは図示していないが、同様のピークが確認されている。
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 正極層
6 正極集電体
7 負極層
8 負極集電体
S1 混合工程
S2 焼成工程
Claims (4)
- Si相と、Si、OおよびM(前記MはAlである)を含むM−Si−O相と、を含み、前記M−Si−O相が、Al 6 Si 2 O 13 であるリチウムイオン二次電池用負極活物質。
- 正極と、負極と、電解質と、を含むリチウムイオン二次電池であり、
前記負極が、Si相と、Si、OおよびM(前記MはAlである)を含むM−Si−O相と、を含み、前記M−Si−O相が、Al 6 Si 2 O 13 であるリチウムイオン二次電池用負極活物質を含んでいるリチウムイオン二次電池。 - Si相と、Si、OおよびM(前記MはAlである)を含むM−Si−O相と、を含み、前記M−Si−O相が、Al 6 Si 2 O 13 であるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であり、
SiOと、前記Mを含む金属化合物と、を混合する混合工程と、
混合した前記SiOと、前記Mを含む金属化合物とを不活性雰囲気下800℃〜1100℃で焼成する焼成工程と、
を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。 - 請求項3において、
前記混合工程で混合する前記SiOと前記Mを含む金属化合物との混合比が、モル比で前記SiO:前記Mを含む金属化合物=1:0.2〜0.8であるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
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