JP2021150161A - リチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】初回クーロン効率を向上することができるリチウム二次電池用負極活物質を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、Si相と、結晶構造が異なるSiO2相A及びSiO2相Bとを含有する活物質成分を含み、上記活物質成分が、X線回折測定において、上記SiO2相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、上記SiO2相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及び上記Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークを示し、上記2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及び上記2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、上記2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅以下であることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に関し、特に負極活物質にケイ素及び酸素を含有する化合物が用いられたリチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
現在、リチウム二次電池は、電子機器や自動車の動力源として広く利用されている。近年、電池には高容量化が求められており、それに伴い高容量を有する電極活物質に注目が集まっている。現在、多くのリチウム二次電池の負極活物質としては黒鉛が用いられているが、既に理論容量に近い性能まで得られているため、これ以上の高容量化は望めない。そこで、高い理論容量を有する酸化ケイ素が用いられた負極活物質(以下、「酸化ケイ素系負極活物質」と呼称することがある。)が注目されている。しかしながら、酸化ケイ素系負極活物質には、初回クーロン効率((放電容量[Ah]/充電容量[Ah])×100[%])が低いという欠点がある。初回クーロン効率が高いほど、充電した容量の多くを放電できるので好ましい。
現在、様々な研究機関で初回クーロン効率の改善が検討されている。その中で、例えば、特許文献1では、酸化ケイ素系負極活物質にLiをドープすることでクーロン効率を改善している。また、特許文献2では、酸化ケイ素系負極活物質にLi及びMgをドープすることでクーロン効率を改善している。
特開2017−195015号公報 特開2017−204374号公報
従来の酸化ケイ素系負極活物質において、リチウムイオン(Li)が挿入される充電過程では、Si−Li化合物(例えば、SiLi4.4等)及びLi−Si−O化合物(例えば、LiSiO等)が生成される。これらの化合物の生成は、下記式(1)に示すように初回充電時に多量のリチウムイオンが消費されることで生じる。
Figure 2021150161
一方、リチウムイオンが脱離する放電過程では、下記式(2)に示すように、上記のLi−Si化合物からはリチウムイオンが脱離するものの、上記のLi−Si−O化合物からはリチウムイオンがほとんど脱離しない。
Figure 2021150161
上記のように、従来の酸化ケイ素系負極活物質において、リチウムイオンが挿入される充電過程では、17.2個のリチウムイオン(Li)のうち4個のリチウムイオンがSiOに含まれる酸素と結合することで、放電過程でリチウムイオンがほとんど脱離しないLi−Si−O化合物が生成する。つまり、酸化ケイ素系負極活物質の充放電反応の一部は不可逆であり、それにより正極及び負極の間を移動できるリチウムイオンが減少することで、酸化ケイ素系負極活物質の初回クーロン効率は低くなる。
特許文献1及び2には、予めLi、Mg等をドープすることでLi−Si−O化合物の生成を抑制させることにより、酸化ケイ素系負極活物質の特性を向上させる技術が記載されている。上記のように酸化ケイ素系負極活物質の放電過程でLi−Si−O化合物からリチウムイオンがほとんど脱離しない問題に対しては、このような特許文献1及び2に記載の技術でも対応可能であり、それにより初回クーロン効率の向上を見込むことができる。しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術は、多量のLiやMg等が必要であること、反応性の高いLiは扱いが難しいこと等の課題があるために、工業的に用いることが困難であり、改善の余地がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、初回クーロン効率を向上することができるリチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、放電過程でリチウムイオンがほとんど脱離しないLi−Si−O化合物の生成には、酸化ケイ素系負極活物質に含まれる酸化ケイ素中の酸素が寄与していることを突き止めた。そして、本発明者は、酸化ケイ素中の酸素含有ドメインをリチウムイオンに対して不活性なSiO(二酸化ケイ素)に結晶化することにより、Li−Si−O化合物の生成を抑制できることを見出すとともに、Li−Si−O化合物の生成の抑制により初回クーロン効率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するために、本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、Si相と、結晶構造が異なるSiO相A及びSiO相Bとを含有する活物質成分を含み、上記活物質成分が、X線回折測定において、上記SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、上記SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及び上記Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークを示し、上記2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及び上記2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、上記2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅以下であることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明のリチウム二次電池は、正極と、負極と、電解質とを備え、上記負極が、上記リチウム二次電池用負極活物質を有することを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するために、本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、上記リチウム二次電池用負極活物質の製造方法であって、酸化ケイ素系化合物及びリチウムハロゲン化合物を混合する混合工程と、上記混合工程で得られる混合物を不活性雰囲気中で750℃超1050℃未満の範囲内の温度で加熱する加熱工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、リチウム二次電池の初回クーロン効率を向上することができる。
以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
実施形態のリチウム二次電池の一例の主要な構成要素(電気化学反応に寄与する部分)を示す概略断面図である。 実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法の一例の概略フローチャートである。 実施例1の負極活物質及び比較例1の負極活物質のX線回折パターンである。横軸は回折角(2θ(°))を示し、縦軸は強度(Intensity(a.u.))を示している。
以下、適宜図面を参照して、本発明のリチウム二次電池用負極活物質(以下、単に「負極活物質」と呼称することがある。)、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に係る実施形態について説明する。
なお、本明細書に記載された数値及びその範囲は、本発明を限定するものではない。本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載された数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書において段階的に記載された数値範囲において、一つの数値範囲で記載された下限値又は上限値は、他の段階的に記載された下限値又は上限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載された数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示された値に置き換えてもよい。
本明細書に説明された各部材は、各部材を構成する材料群の中から選択された材料を単独で又は複数組み合わせて用いてもよい。また、本明細書で説明された各部材や材料は、本明細書に記載された材料のみで構成されてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で本明細書に記載されていない他の材料を含んでもよい。
最初に、実施形態のリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の概略について、例示して説明する。図1は、実施形態のリチウム二次電池の一例の主要な構成要素(電気化学反応に寄与する部分)を示す概略断面図である。
図1に示すリチウム二次電池1は、対向配置された正極2及び負極3と、正極2及び負極3の間に設けられたセパレータ4とを備えている。正極2は、正極集電体6と正極集電体6の負極3と対向する表面に設けられた正極活物質層5とを有している。負極3は、負極集電体8と負極集電体8の正極2と対向する表面に設けられた負極活物質層7とを有している。正極2及び負極3は、電気化学反応に直接的に寄与する。リチウム二次電池1は、正極2及び負極3の間でリチウムイオン(Li)の移動を可能にする電解液10(電解質)をさらに備え、電解液10は、正極2の正極活物質層5、負極3の負極活物質層7、及びセパレータ4に含浸されている。電解液10は、例えば、リチウム塩が有機溶媒に溶解したものである。
負極3の負極活物質層7は、粉末状の負極活物質(図示せず)を有している。負極活物質は、Si相と、結晶構造が異なるSiO相A及びSiO相Bとを含有する活物質成分を含んでいる。負極活物質の活物質成分は、X線回折測定において、SiO2相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及びSi相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークを示す。そして、上記2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及び上記2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、上記2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅以下である。
上記のように、従来の酸化ケイ素系負極活物質の充電過程では、放電過程でリチウムイオンがほとんど脱離しないLi−Si−O化合物(例えば、LiSiO等)が生成する。このようなLi−Si−O化合物の生成には、酸化ケイ素系負極活物質に含まれる酸化ケイ素中の酸素が寄与している。すなわち、従来の酸化ケイ素系負極活物質では、酸化ケイ素が関連する充放電時の反応機構は下記式(1)及び(2)のようになる。
Figure 2021150161
上記式(1)及び(2)のように、充電過程では、17.2個のリチウムイオン(Li)のうち4個のリチウムイオンがSiOに含まれる酸素と結合することでLi−Si−O化合物が生成するのに対して、放電過程では、Li−Si−O化合物からリチウムイオンがほとんど脱離しない。この結果、正極及び負極の間を移動可能なリチウムイオンが減少することになる。このことは、初回クーロン効率が低下する原因となる。このため、充電時のLi−Si−O化合物の生成を抑制すれば、正極及び負極の間を移動可能なリチウムイオンの減少を抑制できるので、初回クーロン効率を向上することができる。
上記のような酸化ケイ素系負極活物質に含まれる酸化ケイ素が関連する充放電時の反応機構では、充電時のLi−Si−O化合物の生成に酸化ケイ素中の酸素が寄与している。このため、酸化ケイ素中の酸素が充放電時の反応に寄与しないようにすれば、充電時のLi−Si−O化合物の生成を抑制できるので、初回クーロン効率を向上することができる。このような課題に関し、酸化ケイ素の中では、結晶性の高いSiO(二酸化ケイ素)が、リチウムイオンに対して不活性、すなわち反応性が低いことを見出した。
これに対して、上記の図1に示すリチウム二次電池1では、負極3の負極活物質層7中の負極活物質が上記のような活物質成分を含んでいる。すなわち、負極活物質層7中の負極活物質に含まれる活物質成分は、酸化ケイ素中の酸素含有ドメインを結晶化することでSiO相A及びSiO相Bにしたものとなっている。様々な相が成長することで特定の相の成長によるドメインサイズの増大が抑制される。よって、SiO相A及びSiO相Bは、結晶性が高くリチウムイオンに対して反応性が低いために、負極活物質層7中の負極活物質では、充電時のLi−Si−O化合物の生成を抑制することができる。これにより、図1に示すリチウム二次電池1では、初回クーロン効率を向上することができる。
続いて、実施形態のリチウム二次電池の構成について、以下に詳細に説明する。実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の構成及びその製造方法の条件についても、リチウム二次電池の構成の説明の一部として、以下に詳細に説明する。
1.正極
正極は、正極活物質を有するものであれば特に限定されないが、例えば、正極集電体と、正極集電体の表面に設けられた正極活物質層とを備えるものである。
(1)正極活物質
正極活物質層は、正極活物質を有するものであれば特に限定されないが、例えば、正極活物質と導電剤とバインダとを有するものである。
a.正極活物質
正極活物質は、充電過程においてリチウムイオンが脱離し、放電過程において負極活物質層中の負極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される物質である。正極活物質としては、このような物質であれば特に限定されないが、遷移金属を有するリチウム複合酸化物が好ましい。
正極活物質としては、例えば、LiMO、Li1+a1−a、LiM、LiMn2−b、LiMSiO、LiMPO、LiMVO、及びLiMBO等で表される化合物が挙げられる。なお、これらの化合物において、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Cr、Zn、Ta、Al、Mg、Cu、Cd、Mo、Nb、W、及びRu等から選択される少なくとも一種類の元素である。また、aは0.33以下の任意の数である。bは0.5以下の任意の数である。cは化合物に含まれる酸素濃度であり、0以上の任意の整数である。また、正極活物質としては、例えば、硫黄、TiS、MoS、Mo、TiSe等のカルコゲナイド、V等のバナジウム系酸化物、FeF等のハライド、ポリアニオンを構成するFe(MoO、Fe(SO、LiFe(PO等の酸化物、並びにキノン系有機結晶等も挙げられる。元素比は上記定比組成からずれていてもよい。なお、正極活物質について制限はなく、上記物質以外の物質を用いることもできる。
b.導電剤
導電剤は、正極活物質層の導電性を向上させる。導電剤としては、特に限定されないが、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、及び黒鉛等が挙げられる。
c.バインダ
バインダは、正極活物質層中の正極活物質や導電剤等を結着させる。バインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド、及びポリアミド等が挙げられる。
d.正極活物質層の作製方法
正極活物質層を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドクターブレード法、ディッピング法、又はスプレー法等により、正極スラリを正極集電体の表面に付着させた後、正極スラリ中の溶媒を乾燥し、ロールプレスで加圧成形することにより、作製する方法等が挙げられる。
正極スラリを調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、正極活物質、導電剤、及びバインダを混合した後、これらの混合物に溶媒を加えて調製する方法等が好ましい。正極スラリの調製に用いる溶媒は、バインダを溶解できるものであれ特に限定されないが、例えば、1−メチル−2−ピロリドンや水等が挙げられる。正極スラリの調製では、正極活物質、導電剤、及びバインダを溶媒に分散する分散処理を行うことが好ましい。分散処理を行う装置としては、特に限定されず、例えば、公知の混練機及び分散機等が挙げられる。正極スラリにおける正極活物質、導電剤、及びバインダの質量比は、正極活物質、導電剤、及びバインダの合計質量を100とした場合、例えば、正極活物質:導電剤:バインダ=80〜99:0.5〜10:0.5〜10の質量比等にすることができる。正極スラリにおける正極活物質、導電剤、及びバインダの合計質量に対する溶媒の質量比は、例えば、0.1倍〜2倍等にすることができる。
(2)正極集電体
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、及びチタン箔等が挙げられる。
2.負極
負極は、リチウム二次電池用負極活物質を有するものであれば特に限定されないが、例えば、負極集電体と、負極集電体の表面に設けられた負極活物質層とを備えるものである。
(1)負極活物質層
負極活物質層は、実施形態のリチウム二次電池用負極活物質を有するものであれば特に限定されないが、例えば、リチウム二次電池用負極活物質と導電剤とバインダとを有するものである。
a.リチウム二次電池用負極活物質
実施形態のリチウム二次電池用負極活物質は、充電過程において正極活物質層中の正極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入され、放電過程においてリチウムイオンが脱離する物質である。リチウム二次電池用負極活物質は、Si相と、結晶構造が異なるSiO相A及びSiO相Bとを含有する活物質成分を含み、上記活物質成分が、X線回折測定において、上記SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、上記SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及び上記Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークを示し、上記2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及び上記2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、上記2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅以下であることを特徴とする。ここで、「X線回折測定」とは、CuΚα線を用いたX線回折測定をいう。
負極活物質の活性成分に含有されるSiO相A及びSiO相Bは、X線回折測定において、それらのピークが観察できるほど結晶化しているものである。一方、Si相は、電池の高容量の観点から、結晶性が低いものが好ましい。
SiO相Aは、活性成分のX線回折測定において、2θ=21.5°〜22.5°の範囲内の位置にピークを示す正方晶である。
SiO相Aは、活性成分のX線回折測定において、2θ=21.5°〜22.5°の範囲内の位置の他に、2θ=31°〜32°、35.5°〜36.5°、及び38°〜39°の範囲内の位置にピークを示す。
SiO相Bは、活性成分のX線回折測定において、2θ=26°〜27°の位置にピークを示す六方晶である。
SiO相Bは、活性成分のX線回折測定において、2θ=26°〜27°の範囲内の位置の他に、2θ=20°〜21°及び49°〜50°の範囲内の位置にピークを示す。
Si相は、活性成分のX線回折測定において、2θ=28°〜29°の位置にピークを示す。
Si相は、活性成分のX線回折測定において、2θ=28°〜29°の範囲内の位置の他に、2θ=47°〜48°及び55.5°〜56.5°の範囲内の位置にピークを示す。
リチウム二次電池用負極活物質は、上記活物質成分の表面を被覆する炭素被膜をさらに含むものが好ましい。これにより、負極活物質の導電性を向上することで放電容量を増加する結果、リチウム二次電池の初回クーロン効率をさらに向上することができる。炭素被膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、製造した負極活物質の活物質成分に対して炭素化合物を混合し、加熱処理することで形成する方法等が挙げられる。
b.リチウム二次電池用負極活物質の製造方法
実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法について説明する。図2は、実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法の一例の概略フローチャートである。
図2に示す負極活物質の製造方法では、まず、酸化ケイ素系化合物及びリチウムハロゲン化合物を混合し、これらの化合物の混合物を得る(混合工程S1)。
次に、図2に示すように、混合工程で得られる混合物を不活性雰囲気中で750℃超1050℃未満の範囲内の温度で加熱する(加熱工程S2)。これにより、原材料である酸化ケイ素系化合物中の酸素含有ドメインを結晶化してSiO相A及びSiO相Bにすることで、実施形態の負極活物質を製造することができる。
続いて、実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の条件について、詳細に説明する。
(混合工程)
混合工程においては、酸化ケイ素系化合物及びリチウムハロゲン化合物を混合する。
酸化ケイ素系化合物は、加熱工程により実施形態の負極活物質の活性成分となるケイ素及び酸素を含有する化合物である。酸化ケイ素系化合物としては、このような化合物であれば特に限定されないが、例えば、組成式がSiO(0.1≦x≦2)で表される化合物が好ましく、中でも組成式がSiO(0.5≦x≦1.5)で表される化合物が好ましい。
リチウムハロゲン化合物は、加熱工程により酸化ケイ素系化合物との混合物に加熱することで酸化ケイ素系化合物の結晶化を効果的に促進することにより、実施形態の負極活物質の活性成分を生成する作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、LiF(フッ化リチウム)、LiCl(塩化リチウム)等が挙げられ、中でもLiF等が好ましい。加熱工程による酸化ケイ素系化合物の結晶化を効果的に促進することができるからである。
リチウムハロゲン化合物としてLiFを用いる場合には、酸化ケイ素系化合物及びLiFを混合するときの酸化ケイ素系化合物の質量に対するLiFの質量比は、特に限定されず任意に設定可能であるが、例えば、2質量%以下とすることが好ましい。LiFの添加量がこの上限以下であることにより、加熱工程での酸化ケイ素系化合物からのSi相の結晶成長を抑制することで、負極活物質のリチウムイオンに対する反応性の低下を抑制することができるからである。
なお、酸化ケイ素系化合物及びリチウムハロゲン化合物を混合する方法は、特に限定されず、例えば、公知の混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。
(加熱工程)
加熱工程においては、混合工程で得られる混合物を不活性雰囲気中で750℃超1050℃未満の範囲内の温度で加熱する。
不活性雰囲気は、例えば、混合物を加熱するチャンバ内の大気を不活性ガスに置換することで準備することができる。不活性ガスとしては、含有される酸素濃度の低い気体であれば特に限定されないが、例えば、ヘリウムガス、窒素ガス、及びアルゴンガス等が挙げられる。なお、混合物を加熱する雰囲気を不活性雰囲気としない場合、酸化ケイ素系化合物においてSi相が酸化されることで、酸化ケイ素系化合物から生成される成分がSiO相のみを含有するものとなり活物質として使用できなくなるおそれがある。
混合物の加熱温度は、750℃超1050℃未満の範囲内の温度であり、中でも800℃〜1000℃の範囲内の温度が好ましい。これらの範囲内の温度で混合物を加熱することにより、実施形態の負極活物質の活性成分を生成することができる。なお、混合物の加熱温度をこれらの範囲の下限以上とすることにより、酸化ケイ素系化合物でのSiO相A及びSiO相Bの結晶化を効果的に促進することができる。混合物の加熱温度をこれらの範囲の上限以下とすることにより、酸化ケイ素系化合物でのSi相の結晶成長を進行させないことで、活物質成分のLi挿入脱離能の低下を抑制することができ、さらに負極活物質の粒子の粗大化を抑制することができるので、電池性能を向上することができる。
混合物の加熱時間は、酸化ケイ素系化合物からSi相とSiO相A及びSiO相Bとを含有する実施形態の負極活物質の活性成分を生成することができれば特に限定されないが、例えば、0.01時間〜20時間の範囲内の時間等が挙げられる。混合物の加熱時間は、例えば、3時間とすることができる。
実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、上記混合工程及び上記加熱工程を備えることで、酸化ケイ素系化合物中の酸素含有ドメインを結晶化することでSiO相A及びSiO相Bにすることにより、酸化ケイ素系化合物からSi相とSiO相A及びSiO相Bとを含有する負極活物質の活性成分を生成することができる。これにより、リチウム二次電池の初回クーロン効率を高くすることができる、実施形態の負極活物質を製造することができる。
c.導電剤及びバインダ
負極活物質層に用いる導電剤及びバインダについては、正極活物質層に用いる導電剤及びバインダと同様のものであるため、ここでの説明は省略する。
d.負極活物質層の作製方法
負極活物質層を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドクターブレード法、ディッピング法、又はスプレー法等により、負極スラリを負極集電体の表面に付着させた後、負極スラリ中の溶媒を乾燥し、ロールプレスで加圧成形することにより、作製する方法等が挙げられる。
負極スラリを調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、負極活物質、導電剤、及びバインダを混合した後、これらの混合物に溶媒を加えて調製する方法等が好ましい。負極スラリの調製に用いる溶媒は、バインダを溶解できるものであれ特に限定されないが、例えば、1−メチル−2−ピロリドンや水等が挙げられる。負極スラリの調製では、負極活物質、導電剤、及びバインダを溶媒に分散する分散処理を行うことが好ましい。分散処理を行う装置としては、特に限定されず、例えば、公知の混練機及び分散機等が挙げられる。負極スラリにおける負極活物質、導電剤、及びバインダの質量比は、負極活物質、導電剤、及びバインダの合計質量を100とした場合、例えば、負極活物質:導電剤:バインダ=60〜98:0.5〜20:0.5〜20の質量比等にすることができる。負極スラリにおける負極活物質、導電剤、及びバインダの合計質量に対する溶媒の質量比は、例えば、0.1倍〜2倍等にすることができる。
(2)負極集電体
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体としては、特に限定されないが、例えば、例えば、銅箔及びステンレス鋼箔等が挙げられる。
3.電解質
電解質としては、特に限定されないが、例えば、電解液、固体電解質等が挙げられる。
電解液としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩が有機溶媒に溶解したもの等が挙げられる。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、亜リン酸トリス、及びメチルホスホン酸ジメチル等が挙げられる。有機溶媒としては、上記に列挙したものの中から選択されたいずれか一種を用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。電解液には、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、又はエチレンサルファイト等の添加剤を添加してもよい。
リチウム塩としては、特に限定されないが、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、及びLiN(SOCFCF等が挙げられる。
なお、電解液として、具体的には、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートの体積比が1:1:1となるようにエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを混合した後に、これらの混合物の質量に対するビニレンカーボネートの質量比が1%となるようにこれらの混合物に対してビニレンカーボネートを加えたものを有機溶媒として用い、電解液におけるLiPFの濃度が1.0mol/Lとなるように調製した有機溶媒に対してLiPFをリチウム塩として溶解させた電解液等が好ましい。
固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、LiBO−LiSO、LiLaZr12、及びLi10GeP12等が挙げられる。
4.リチウム二次電池
ここで、「リチウム二次電池」とは、電極へのリチウムイオンの挿入(吸蔵)及び脱離(放出)により、電気エネルギを貯蔵又は利用可能とする電気化学デバイスをいう。「リチウム二次電池」は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン電池、及び非水電解質二次電池等の別の名称で呼ばれることもあるが、これらのいずれの電池も実施形態のリチウム二次電池の対象である。
(1)セパレータ
実施形態のリチウム二次電池は、電解質として電解液を用いる場合には、通常、正極及び負極を絶縁する(正極及び負極の短絡を防止する)セパレータをさらに備える。この場合には、セパレータとセパレータに含浸させた電解液とを含む電解質層が正極及び負極の間でリチウムイオンを伝達させる。
セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、セルロース、セルロースの変成体等の微孔性フィルムや不織布等が挙げられる。セパレータは、これらの材料が積層された積層体でもよい。セパレータの厚みは、特に限定されないが、例えば、電池の高出力化の観点から、40μm以下が好ましい。このような厚みのセパレータを用いることで、電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
実施形態のリチウム二次電池は、電解質として固体電解質を用いる場合には、セパレータを備えていなくてもよい。この場合には、固体電解質を含む固体電解質層が正極及び負極の間でリチウムイオンを伝達させる。
(2)リチウム二次電池
実施形態のリチウム二次電池では、以上に説明した正極(正極活物質層及び正極集電体)、負極(負極活物質層及び負極集電体)、及びセパレータ(電解質層)の厚さや形状等は任意に設定することができる。また、実施形態のリチウム二次電池では、正極、負極、及びセパレータ(電解質層)を1つの群として、複数の群を併用することができる。この場合、2つの群の間に短絡を防止するためのセパレータを設けることが好ましい。このセパレータとしては、上記「(1)セパレータ」の項目で説明したセパレータと同様のものを用いることができる。
(3)リチウム二次電池のその他の構成
上記のように、図1は、実施形態のリチウム二次電池の主要な構成要素(電気化学反応に寄与する部分)を示すものであり、電気化学反応に寄与する部分以外のその他の構成については示していない。
実施形態のリチウム二次電池のその他の構成としては、例えば、正極(正極活物質層及び正極集電体)、負極(負極活物質層及び負極集電体)、及びセパレータ(電解質層)を収容する外装体(図示せず)が挙げられる。外装体は、特に限定されないが、例えば、電解質に対して耐食性のある材料から任意の形状に形成されたものである。外装体は、例えば、有底円筒形又は有底角筒形の本体と、本体の開口部を封じる蓋体とを有するものである。このようなものである場合、外装体は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等の金属から構成されたものが好ましい。また、この場合、必要に応じて本体及び蓋体の間に樹脂製のシーリング材を介在させてもよい。このようにすると、本体及び蓋体の隙間から電解質等が漏出するのを防ぐことができる。さらに、外装体としては、例えば、任意のラミネート材を用いて密封させたものを用いることができる。
また、実施形態のリチウム二次電池のその他の構成としては、例えば、正極タブ及び負極タブ(図示せず)等が挙げられる。正極タブは、正極集電体と接続され、外装体の外部に延出し、外部電源等と接続される。負極タブは、負極集電体と接続され、外装体の外部に延出し、外部電源等と接続される。
さらに、実施形態のリチウム二次電池が乾電池又はボタン電池等として用いられる場合、正極集電体は正極リード片(図示せず)で外装体の蓋体と接続することができ、負極集電体は負極リード片(図示せず)で外装体の本体の底部と接続することができる。
正極タブ、負極タブ、正極リード片、及び負極リード片は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼箔、チタン箔等から任意に選択された金属箔から構成されたもの等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下に挙げる実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明のリチウム二次電池用負極活物質の一例を作製し、さらにこの負極活物質を用いて本発明のリチウム二次電池の一例である電気化学セルを作製した。以下、具体的に説明する。
(負極活物質の作製)
まず、SiO(一酸化ケイ素)の質量に対するLiF(フッ化リチウム)の質量比が1質量%となるように、SiOに対してLiFを添加して混合する(混合工程)。次に、混合工程で得られた混合物をアルゴン雰囲気中で900℃の温度で3時間加熱した(加熱工程)。その後、加熱工程で得られた粉末状の生成物を45μmの篩を用いて分級することで粉末状の負極活物質を作製した。
(電気化学セルの作製)
負極活物質、ケッチェンブラック、及びポリアクリル酸の質量比が70:15:15となるように、作製した負極活物質、ケッチェンブラック、及びポリアクリル酸を混合することで粉末状の混合物を得た。次に、粉末状の混合物及び1−メチル−2−ピロリドンの質量比が1:1となるように、得られた粉末状の混合物に対して1−メチル−2−ピロリドンを加えて混合することにより、負極用スラリを調製した。次に、負極用スラリを銅箔(負極集電体)の一方の表面にドクターブレード法により付着させて乾燥させた後に、ロールプレスで加圧成形することにより銅箔の一方の表面に負極活物質層を形成した。これにより、銅箔と負極活物質層とを備える負極を作製した。
次に、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層から構成される厚さ30μmのセパレータを準備した。次に、正極をセパレータの一方の接触面に接触するように配置し、負極をセパレータの他方の接触面に負極活物質層が接触するように配置した。これにより、正極及び負極を対向配置し、セパレータを正極及び負極の間に設けた。なお、実施例及び比較例では、作製した負極活物質の作用を評価することを目的としているために、正極としては、正極集電体と正極集電体の表面に設けられた正極活物質層とを備える正極の代りに、性能の安定しているリチウム金属板を単体で用いた。
次に、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートの体積比が1:1:1となるようにエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを混合した後に、これらの混合物の質量に対するビニレンカーボネートの質量比が1質量%となるようにこれらの混合物に対してビニレンカーボネートを加えることで有機溶媒を調製した。次に、電解液におけるLiPFの濃度が1.0mol/Lとなるように調製した有機溶媒に対してLiPFを溶解することで電解液を調製した。
次に、電解液を負極の負極活物質層及びセパレータに含浸した上で、電解液の揮発を抑制するために、正極及び負極とセパレータとそれらに含まれる電解液とをガラス容器に密封した。これにより、電気化学セルを作製した。
[実施例2]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱時間を2.5時間とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[実施例3]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱時間を2時間とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[実施例4]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱時間を5時間とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[実施例5]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱温度を950℃とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[実施例6]
負極活物質の作製時の混合工程において、SiO(一酸化ケイ素)の質量に対するLiF(フッ化リチウム)の質量比が2質量%となるように、SiOに対してLiFを添加した点を除いて実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[比較例1]
比較例1では、実施例1で負極活物質の原材料として用いたSiO(一酸化ケイ素)をそのまま負極活物質として用いた点を除いて実施例1と同様の条件で電気化学セルを作製した。
[比較例2]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱温度を750℃とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[比較例3]
負極活物質の作製時の加熱工程において、混合物の加熱温度を1050℃とした点を除いて、実施例1と同様の条件で負極活物質及び電気化学セルを作製した。
[充放電評価]
実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した電気化学セルについて、充放電試験を行って初回クーロン効率[%]を算出した。
具体的には、各電気化学セルについて、初回充放電サイクルにおいて、0.25CAの定電流にて電池電圧が0Vに達するまで充電し、電池電圧が0Vに達した後に、その電圧にて電流が0.0125CAになるまで充電し、このときの電気量[Ah]を充電容量として測定した。続いて、0.25CAの定電流にて電池電圧が1.5Vになるまで放電し、このときの電気量[Ah]を放電容量として測定した。そして、(放電容量[Ah]/充電容量[Ah])×100[%]の計算式を用いて、測定された放電容量[Ah]及び充電容量[Ah]から初回クーロン効率を算出した。なお、ここで、「1CA」とは、電極を1時間で放電することができる電流を指す。各例の電気化学セルで算出された初回クーロン効率を下記表1に示す。
[結晶構造評価]
実施例1〜6並びに比較例1及び3で作製した負極活物質の結晶構造を、CuΚα線を用いたX線回折測定により評価した。併せて、比較例1で負極活物質として用いたSiO(一酸化ケイ素)の結晶構造を、CuKα線を用いたX線回折測定により評価した。図3は、実施例1の負極活物質及び比較例1の負極活物質のX線回折パターンである。図3の横軸は回折角(2θ(°))を示し、縦軸は強度(Intensity(a.u.))を示している。また、実施例1〜6及び比較例1〜3の負極活物質のX線回折パターンにおける、SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅、SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅、及びSi相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅を比較した結果を、下記表1に示す。
Figure 2021150161
上記表1に示すように、実施例1〜6の負極活物質は、初回クーロン効率が70%を超え、かつ放電容量が1100mAh/gを超えており、優れた結果となった。また、実施例1の負極活物質のX線回折パターンでは、図3に示されているように、SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及びSi相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークが示されており、SiO相A、SiO相B、及びSi相が検出された。さらに、SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及びSiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅より小さくなった。また、実施例2〜6の負極活物質のいずれのX線回折パターン(図示せず)でも、同様の結果となった。
なお、実施例1の負極活物質のX線回折パターンでは、上記のピークの他に、SiO相Aに由来する2θ=31°〜32°、35.5°〜36.5°、及び38°〜39°の範囲内のピークが示されていた。また、SiO相Bに由来する2θ=20°〜21°及び49°〜50°の範囲内のピークが示されていた。さらに、Si相に由来する2θ=47°〜48°及び55.5°〜56.5°の範囲内のピークが示されていた。
これらの結果から、実施例1〜6の負極活物質の初回クーロン効率が優れているのは、適切条件において、原材料であるSiO(一酸化ケイ素)に対してLiF(フッ化リチウム)を添加して混合した上で、その混合物を適切な条件で加熱することで、SiO中の酸素含有ドメインを結晶性が高くリチウムイオンに対して反応性が低いSiO相A及びSiO相Bとし、かつSiO中のSi相の結晶成長を進行させないことにより、負極活物質のLi挿入脱離能の低下を抑制できたからであると考えられる。
これに対して、比較例1及び2の負極活物質は、初回クーロン効率が70%未満となり、劣る結果となった。比較例1の負極活物質のX線回折パターンでは、図3に示されているように、SiO相A及びSiO相Bが検出されず、比較例2の負極活物質のX線回折パターン(図示せず)でも、同様の結果となった。
一方、比較例3の負極活物質は、放電容量が1100mAh/g未満であり、劣る結果となった。比較例3の負極活物質のX線回折パターン(図示せず)では、SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク及びSiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピークが示されたものの、Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅が、SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅より小さくなった。これらの結果から、比較例3の負極活物質の放電容量が劣っているのは、原材料であるSiOの加熱温度が高過ぎたために、SiO中のSi相の結晶成長を進行させることで負極活物質のLi挿入脱離能を低下させてしまったからであると考えられる。
以上の結果から、負極活物質の作製時において、適切条件により、原材料であるSiO(一酸化ケイ素)等の酸化ケイ素系化合物に対してLiF等のリチウムハロゲン化合物を添加して混合した上で、その混合物を適切な条件で加熱することにより、負極活物質において、結晶構造が異なるSiO相A及びSiO相Bを生成し、初回クーロン効率を向上できることが分かった。さらに、Si相の結晶成長を進行させないことで、高容量を維持できることが分かった。
以上、本発明のリチウム二次電池用負極活物質、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法について実施形態及び実施例により詳細に説明したが、本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1 リチウム二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 正極活物質層
6 正極集電体
7 負極活物質層
8 負極集電体
10 電解液

Claims (6)

  1. Si相と、結晶構造が異なるSiO相A及びSiO相Bとを含有する活物質成分を含み、
    前記活物質成分が、X線回折測定において、前記SiO相Aに由来する2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピーク、前記SiO相Bに由来する2θ=26°〜27°の範囲内のピーク、及び前記Si相に由来する2θ=28°〜29°の範囲内のピークを示し、
    前記2θ=21.5°〜22.5°の範囲内のピークの半値幅及び前記2θ=26°〜27°の範囲内のピークの半値幅が、前記2θ=28°〜29°の範囲内のピークの半値幅以下であることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質。
  2. 前記活物質成分の表面を被覆する炭素被膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  3. 正極と、負極と、電解質とを備え、
    前記負極が、請求項1又は請求項2に記載のリチウム二次電池用負極活物質を有することを特徴とするリチウム二次電池。
  4. 請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法であって、
    酸化ケイ素系化合物及びリチウムハロゲン化合物を混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られる混合物を不活性雰囲気中で750℃超1050℃未満の範囲内の温度で加熱する加熱工程と、
    を備えることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウムハロゲン化合物が、LiFであることを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
  6. 前記混合工程において、前記酸化ケイ素系化合物の質量に対する前記LiFの質量比が2質量%以下となるように、前記酸化ケイ素系化合物及び前記LiFを混合することを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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