JP6981280B2 - 多結晶誘電体薄膜および容量素子 - Google Patents

多結晶誘電体薄膜および容量素子 Download PDF

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Description

本発明は、多結晶誘電体薄膜および容量素子に関する。
近年、スマートフォンに代表される無線通信機器において、さらなる高速化および高容量化が求められている。スマートフォンのIC部分にはセラミックコンデンサが多数使用されている。しかし、セラミックコンデンサは共振周波数以上になると絶縁性を保つことができない。したがって、高周波数に対応したコンデンサが求められている。
高周波数に対応したコンデンサを得るためには、一般的にはコンデンサの静電容量を向上させる必要がある。そして、コンデンサの誘電体層を薄層化および多層化することによるコンデンサの小型化および大容量化が進んでいる。薄層化および多層化したコンデンサを得るために、従来ではシート工法が広く用いられている。しかし、シート工法により作成する誘電体層を薄層化することには限界がある。
特許文献1には、BaTiOエピタキシャル膜およびSrTiOエピタキシャル膜を交互に積み重ねた超格子構造を有する薄膜コンデンサが記載されている。しかし、特許文献1に記載された薄膜コンデンサは、エピタキシャル成長させるために特殊な単結晶基板が必要となるため、工業的な利用は難しい。
特開2001−220300号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、比誘電率の高い多結晶誘電体薄膜および容量素子を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点に係る多結晶誘電体薄膜は、主成分が一般式(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表される酸窒化物からなり、 0≦x≦1,0≦y≦1,0<z<1/3であり、
M(1),M(2),M(3)およびM(4)の形式価数の総和が14であり、
前記酸窒化物の結晶構造が、中心原子、2個の4aサイト原子および4個の8hサイト原子からなる8面体構造を含み、
前記中心原子がM(3)またはM(4)であり、
前記4aサイト原子がO原子またはN原子であり、
前記8hサイト原子がO原子またはN原子であり、
前記8面体構造において、2個の4aサイト原子を結んだ直線と、前記結晶構造のc軸方向とのなす角をθとする場合に、0.5°≦θ≦12°であることを特徴とする。
本発明の第2の観点に係る多結晶誘電体薄膜は、主成分が一般式(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表される酸窒化物からなり、
0≦x≦1,0≦y≦1,0<z≦0.333であり、
前記酸窒化物はペロブスカイト型酸窒化物であり、
前記ペロブスカイト型酸窒化物の結晶構造が、中心原子、2個の4aサイト原子および4個の8hサイト原子からなる8面体構造を含み、
前記中心原子がTaまたはNbであり、
前記4aサイト原子がO原子またはN原子であり、
前記8hサイト原子がO原子またはN原子であり、
前記8面体構造において、2個の4aサイト原子を結んだ直線と、前記結晶構造のc軸方向とのなす角をθとする場合に、0.5°≦θ≦12°であることを特徴とする。
本発明の第3の観点に係る多結晶誘電体薄膜は、主成分が一般式(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表される酸窒化物からなり、
0.02≦x≦0.8,0≦y≦0.4,0.033≦z≦0.233であり、
前記酸窒化物はペロブスカイト型酸窒化物であることを特徴とする。
本発明に係る多結晶誘電体薄膜は、上記の特徴を有することにより、周波数1MHz前後の場合において数千〜数万以上という非常に高い比誘電率を有する。
また、本発明に係る容量素子は、前記第1〜第3の発明に係る多結晶誘電体薄膜を有する。
本発明の一実施形態に係る薄膜キャパシタの概略図である。 SrTaONの結晶構造を表す図である。 酸窒化物の8面体構造を表す図である。 分極の大きさの変化量ΔPを図示するグラフである。 2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転による比誘電率の変化を図示するグラフである。 分極の大きさの変化量ΔPを図示するグラフである。
以下、本発明を各実施形態に基づき説明する。
(第1実施形態)
本実施形態に係る薄膜キャパシタの模式図を図1に示す。図1に示す薄膜キャパシタ1は、基板11上に下部電極12、多結晶誘電体薄膜13の順に形成され、多結晶誘電体薄膜13の表面に上部電極14を備える。
基板11の材質には特に制限はないが、基板11としてSi単結晶基板を用いることが入手容易性およびコスト性に優れている。フレキシビリティを重視する場合にはNi箔やCu箔を基板として使用することも出来る。
下部電極12および上部電極14の材質に特に制限はなく、電極として機能すればよい。例えば、Pt,Ag,Ni等が挙げられる。下部電極12の厚みは0.01〜10μmが好ましい。上部電極14の厚みは0.01〜10μmが好ましい。
多結晶誘電体薄膜13は、主組成が(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表される酸窒化物を有する。また、0≦x≦1,0≦y≦1,0<z<1/3である。なお、M(1),M(2),M(3)およびM(4)の形式価数の総和が14である。
M(1)およびM(2)の種類に特に制限はないが、例えば、Sr,Ba,Ca,La,Ce,Pr,Nd,Naなどから選択される1種である。また、M(1)がSrであり、M(2)がBaであることが好ましい。
M(3)およびM(4)の種類に特に制限はないが、例えば、Ta,Nb,Ti,Wから選ばれる1種である。また、M(3)がTaであり、M(4)がNbであることが好ましい。
主組成が(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表される化合物の例としては、図2に示すSrTaON化合物21が挙げられる(具体的には、M(1)=Sr,M(3)=Ta,x=0,y=0,z=1/3)。SrTaON化合物21はTa原子23が中心原子であり、O原子24aまたはN原子24bが2個の4aサイト原子および4個の8hサイト原子である8面体構造31が連続して存在している。なお、Sr原子22は8面体構造31の外部に存在する。ただし、本実施形態に係る化合物は、図2に示すSrTaONよりもOの割合が大きくNの割合が小さい化合物である。好ましくは、0≦x≦1,0≦y≦1,0<z≦0.333であるペロブスカイト型酸窒化物である。
ここで、本実施形態に係る主組成が(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表され、0≦x≦1,0≦y≦1,0<z<1/3である酸窒化物は、図3に示すように、中心原子33(図2におけるTa原子23)の位置が8面体構造の中心点0からずれている。そして、2個の4aサイト原子(4aサイトO原子34a1および4aサイトN原子34a2)を結んだ直線がc軸から角度θで傾く。なお、図3では4aサイト原子がO原子およびN原子である場合を図示しているが、2個の4aサイト原子がいずれもO原子である8面体構造が部分的に含まれていてもよい。
また、一般的に主組成が(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表される酸窒化物である場合には、M(1)〜M(4)の種類やx,yおよびzの値に応じて、M(3)またはM(4)の位置が8面体構造の中心からずれる大きさが変化する。そして、図3に示す2個の4aサイト原子を結んだ直線のc軸から傾く角度θが変化する。
本実施形態に係る酸窒化物は0.5°≦θ≦12°である。角度θが前記範囲内であることにより、特に周波数が1MHz前後の高周波数である場合における比誘電率が著しく向上する。また、好ましくは、1.8°≦θ≦12°、さらに好ましくは、4.6≦θ≦12°、最も好ましくは、6.5°≦θ≦12°である。
角度θは、第一原理計算と呼ばれる計算方法により比較的簡単に、かつ高精度に求めることができる。
第一原理計算の手法の一つとして、PAW(Projector Augmented−Wave)法と呼ばれる計算方法がある。この方法は、第一原理計算の手法の中でも高精度かつ短時間で計算を行うことができる方法である。また、単位格子等を構成する各原子のポテンシャルをあらかじめ用意して電子状態計算を行うことで、結晶構造最適化の計算も可能である。
また、結晶中に多数存在する電子の相互作用を計算するためには密度汎関数法と呼ばれる計算手法が用いられる。密度汎関数法を用いた近似方法の一つとしてGGA(Generalized Gradient Approximation)法と呼ばれる手法がある。GGA法を用いることにより、精度よく電子状態の計算を行うことができる。
上記のPAW法およびGGA法を内包した第一原理計算パッケージプログラムとしてVASP(the Vienna Ab−initio Simulation Package)と呼ばれるパッケージプログラムがある。本実施形態および後述する実施例での第一原理計算は、全てこのVASPを用いて行う。
M(1)=Sr、M(2)=Ba、M(3)=Ta、M(4)=Nbである酸窒化物、すなわち、(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表されるペロブスカイト型酸窒化物は、TaまたはNbを中心原子とし、合計6個のOまたはNが、2個の4aサイト原子または4個の8hサイト原子として存在する8面体構造を有する酸窒化物である。ここで、4個の8hサイト原子は、4個のうち1〜2個がNであり、残りの2〜3個がOであることが知られている。
当該ペロブスカイト型酸窒化物に対して第一原理計算を行ったところ、図3に示すように、中心原子33であるTa原子またはNb原子は8面体構造の中心点0からずれた位置に存在することがエネルギー的に安定であることがわかる。そして、前記8面体構造の2個の4aサイトを結んだ直線が結晶のc軸方向から角度θで傾くことがわかる。本発明者らは、M(1)〜M(4)の種類および各元素の含有量の比率であるx,yおよびzの値を変化させることで角度θが変化することを見出した。さらに、酸窒化物(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zの比誘電率は、θが大きいほど高くなることを見出した。なお、θが0.5°≦θ≦12°であることにより比誘電率が高くなる効果は、特に1MHz前後の高周波数における比誘電率の場合において大きくなる。
酸窒化物が図3の八面体構造31を取る場合において比誘電率が高くなる現象は、(I)イオン分極(II)2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転(8面体構造の回転)による双極子分極(III)2個の4aサイト原子を結ぶ直線のc軸に対する向きの変化による双極子分極、の3つに起因することが考えられる。
SrTaONを例にとると、(I)イオン分極は、カチオンであるTaイオンの位置と、アニオンである4個のOイオンおよび2個のNイオンの中心点0の位置との相対的なずれにより生じる分極のことである。当該分極が生じることで比誘電率が向上すると考えられる。第一原理計算によれば、当該イオン分極により向上する比誘電率の向上幅は周波数1MHzの場合で443である。
SrTaONを例にとると、(II)2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転による双極子分極は、2個の4aサイト原子を結ぶ直線が回転することにより生じる双極子分極のことである。当該双極子分極が生じることで比誘電率が向上すると考えられる。当該回転による比誘電率変化は下記の数式(1)により算出される。
Figure 0006981280
(II)の場合には、当該数式(1)のεが真空の誘電率、εが比誘電率、Pおよびpが分極の大きさ、Eが定格電圧1/4(E=1V/μm)、Vが第一原理計算による計算モデルの体積(V=528.15Å)、ZがOとNとの電荷の差(Z=2)、lがO−N間距離(l=4.0787Å)、i=2(前記体積中の分極数)、そして、e=1.60218×10−19Cである。
ここで、(II)におけるΔP(分極の大きさの変化量)を図示すると図4となる。そして、第一原理計算により算出される図4のΔθ´の大きさと比誘電率変化の向上幅の関係を示すグラフが図5となる。図5は図4および数式(1)から導出されるグラフである。
以上より、2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転により比誘電率が向上するが、当該直線の回転により増加する比誘電率の変化Δεは周波数1MHzの場合で数十〜数百程度である。
SrTaONを例にとると、(III)2個の4aサイト原子を結ぶ直線のc軸に対する向きの変化により双極子分極が生じることで比誘電率が変化すると考えられる。当該向きの変化は、N原子とO原子の位置がそれぞれの8面体構造で異なることにより変化するものである。当該向きの変化による比誘電率変化は下記の数式(1)により算出される。
Figure 0006981280
(III)の場合には、当該数式(1)のεが真空の誘電率、εが比誘電率、Pおよびpが分極の大きさ、Eが定格電圧の1/4(E=1V/μm)、Vが第1原理計算による計算モデルの体積(V=528.15Å)、ZがOとNとの電荷の差(Z=2)、lがO−N間距離(l=4.0787Å)、i=2(前記体積中の分極数)、そして、e=1.60218×10−19Cである。簡単のため、2個の4aサイト原子を結ぶ直線の向きがc軸に対して対称に変化する場合を想定して(III)におけるΔP(分極の大きさの変化量)を図示すると図6となる。
以上より、2個の4aサイト原子を結ぶ直線のc軸に対する向きの変化により比誘電率が向上する。当該向きの変化により生じる比誘電率の変化ΔεrをΔθから算出すると、周波数1MHzの場合で数千程度である。なお、図6のΔθ/2の大きさが図3のθである。すなわち、図6のΔθの大きさが2θである。
以上より、本発明者らは、(M(1)1−xM(2))(M(3)1−yM(4))(O1−zで表される酸窒化物の比誘電率の向上効果は、主に(III)2個の4aサイト原子を結ぶ直線のc軸に対する向きの変化に起因することを見出した。そして、2個の4aサイト原子を結ぶ直線のc軸に対する向きの変化に起因する比誘電率の向上効果の大きさは、角度θの大きさにより決定されることを見出した。上記組成の多結晶薄膜を形成することにより数千程度の比誘電率が得られる。
多結晶誘電体薄膜13は、多結晶膜の一種であり、誘電体薄膜の一種でもある。多結晶誘電体薄膜13の厚さには特に制限はないが、好ましくは10nm〜1μmである。
薄膜キャパシタ1の製造方法
次に、薄膜キャパシタ1の製造方法について説明する。以下、M(1)=Sr、M(3)=Ta、x=y=0とする場合について説明するが、M(1)〜M(4)として他の種類の原子を用いる場合、および、x,yおよび/またはzを変化させる場合でも同様である。
最終的に多結晶誘電体薄膜13となる薄膜の成膜方法に特に制限はない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、PLD法(パルスレーザー蒸着法)、MO−CVD(有機金属化学気相成長法)、MOD(有機金属分解法)、ゾル・ゲル法、CSD(化学溶液堆積法)などが例示される。また、成膜時に使用する原料には微少な不純物や副成分が含まれている場合があるが、薄膜の性能を大きく損なわない程度の量であれば特に問題はない。また、本実施形態に係る多結晶誘電体薄膜13も、性能を大きく損なわない程度に微少な不純物や副成分を含んでいても構わない。
上記の成膜方法のうち、PLD法、スパッタリング法およびCSD法などの方法で成膜すると、最終的に得られる薄膜が多結晶膜となりやすい。また、本実施形態に係る多結晶誘電体薄膜13についてPLD法、スパッタリング法およびCSD法などの方法で成膜するとNがcis配置をとる構造となりやすい。CVD法でも合成は可能であるが、成分元素数が多いため、PLD法やスパッタリング法の方がより組成制御性が高い。本実施形態ではPLD法による成膜方法について説明する。
まず、基板11としてSi単結晶基板を準備する。次に、Si単結晶基板上にSiO、TiO、Ptの順に成膜し、Ptからなる下部電極12を形成する。下部電極12を形成する方法には特に制限はない。例えば、スパッタリング法やCVDなどが挙げられる。
次に、下部電極12上にPLD法で金属酸化物薄膜を成膜した。また、下部電極12の一部を露出させるためにメタルマスクを使用して薄膜が一部成膜されない領域を形成した。
PLD法では、まず、目的とする多結晶誘電体薄膜の構成元素を含むターゲットを成膜室内に設置する。次に、ターゲットの表面上にパルスレーザーを照射する。パルスレーザーの強いエネルギーによりターゲットの表面を瞬時に蒸発させる。そして、ターゲットと対向するように配置した基板上に蒸発物を堆積させて金属酸化物薄膜を成膜する。
ターゲットの種類に特に制限はなく、作製する多結晶誘電体薄膜の構成元素を含む金属酸化物焼結体の他、合金、窒化物焼結体、金属酸窒化物焼結体などを用いることができる。また、ターゲットにおいては各元素が平均的に分布していることが好ましいが、得られる多結晶誘電体薄膜の品質に影響がない範囲で分布にばらつきがあってもよい。さらに、ターゲットは必ずしも一つである必要はなく、多結晶誘電体薄膜の構成元素の一部を含むターゲットを複数用意して成膜に用いることも可能である。ターゲットの形状にも制限はなく、使用する成膜装置に適した形状とすればよい。
また、PLD法の際には、成膜する金属酸化物薄膜を結晶化させるために成膜時に基板11を赤外線レーザーで加熱することが好ましい。基板11の加熱温度は金属酸化物薄膜および基板11の構成元素および組成等により変化するが、例えば、600〜800℃となるように加熱して成膜を行う。基板11の温度を適温とすることで、金属酸窒化物薄膜が結晶化しやすくなるとともに冷却時に生じる割れの発生を防止することができる。
成膜中に、窒素ラジカルを導入して窒化処理を行うことで、ペロブスカイト型酸窒化物からなる多結晶誘電体薄膜13を得ることができる。窒化処理の方法としては、例えば、金属酸化物膜を成膜した後に、窒素ラジカルを導入して窒化処理を行う方法や、成膜中に窒素ラジカルを導入する方法が挙げられる。そして、窒素ラジカルの量を制御することで、成膜した薄膜中の窒素量を変化させることができ、zを変化させることができる。ここで、成膜した薄膜中の窒素量はX線光電子分光法により確認できる。窒素の定量に関しては、X線光電子分光装置の内部標準を使用することもできるが、AlNなどの窒化単結晶ウェハから感度因子を算出して定量値を補正する方が好ましい。
最後に、多結晶誘電体薄膜13上に上部電極14を形成することで、薄膜キャパシタ1を製造することができる。なお、上部電極14の材質に特に制限はなく、Ag,Au,Cu等を用いることができる。また、上部電極14の形成方法にも特に制限はない。例えば、蒸着やスパッタリング法により形成することができる。
(第2実施形態)
本実施形態に係る薄膜キャパシタの形状は第1実施形態と同様である。基板11,下部電極12および上部電極14の材質も第1実施形態と同様である。さらに、下部電極12の厚みも第1実施形態と同様である。
多結晶誘電体薄膜13は、主成分が一般式(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表される酸窒化物からなり、0.02≦x≦0.8,0≦y≦0.4,0.033≦z≦0.233であり、前記酸窒化物はペロブスカイト型酸窒化物である。
本実施形態に係る多結晶誘電体薄膜13は、上記の酸窒化物を主成分とすることにより、比誘電率を著しく向上させることができる。特に、チタン酸バリウム系の酸化物、および、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム系の酸化物を主成分とする場合と比較して、1kHz〜1MHzの幅広い周波数での比誘電率が著しく向上する。
本実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法は第1実施形態と同様である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々異なる態様で実施し得ることは勿論である。
なお、本発明に係る容量素子とは、誘電性を利用した素子のことであり、コンデンサ、サーミスタ、フィルター、ダイプレクサ、共振器、発信子、アンテナ、圧電素子、トランジスタ、強誘電体メモリ等を含む。本実施形態に係る多結晶誘電体薄膜は、特に誘電損失が小さいことが求められる容量素子に好適に用いられる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実験例1
まず、成膜用ターゲットとして用いる焼結体の原料として、SrCO粉末およびTa粉末を準備した。また、Srの一部または全部をBaで置換する場合には、BaCO粉末を準備した。Taの一部をNbで置換する場合にはNb粉末を準備した。(Sr+Ba)/(Ta+Nb)のモル比が1となるように原料粉末を秤量した。
次に、原料粉末に対して、エタノール溶媒を用いた湿式ボールミルにて16時間混合して混合スラリーを得た。
次に、前記混合スラリーを恒温乾燥機にて80℃で12時間乾燥し、混合物を得た。
次に、前記混合物を乳鉢にて軽く解砕し、セラミック製のるつぼに入れた。そして、電気炉を用いて大気雰囲気中、1000℃で2時間熱処理し、仮焼物を得た。
次に、前記仮焼物に対して、再びエタノール溶媒を用いた湿式ボールミルにて16時間混合して仮焼後スラリーを得た。
得られた仮焼後スラリーを恒温乾燥機にて80℃で12時間乾燥し、仮焼後混合物を得た。
前記仮焼後混合物に対し、バインダーとしてポリビニルアルコール溶液を添加し、混合して造粒物を得た。ポリビニルアルコール溶液の添加量は、粉砕物100重量%に対して0.6重量%とした。
前記造粒物を直径約23mm、高さ約9mmの円柱形状に成形して成型物を得た。成形方法はCIP成形とした。
前記成型物に対し、電気炉を用いて大気雰囲気中、1400℃で2時間焼成して焼結物を得た。さらに、前記焼結物の上面および下面を鏡面研磨して高さ5mmの成膜ターゲットを得た。なお、得られた成膜ターゲットの相対密度が96〜98%であることを確認した。
上記のようにして得られた成膜用ターゲットを成膜装置に設置し、成膜用ターゲットと対向するように、Si基板を設置した。当該Si基板としては表面に下部電極としてPt膜を有するものを用いた。
実験例1では、PLD法で厚さ200nmとなるように成膜した。このときの成膜条件(酸素のガス圧,窒素のガス圧等)を調整することで、最終的に得られる多結晶誘電体薄膜に含まれる酸窒化物の組成を以下に示す表1および表2の試料番号1〜13の組成となるように制御した。成膜中に、窒素ラジカルを導入して窒化処理を行うことで多結晶誘電体薄膜を得た。なお、成膜時の所要時間は0.5〜2時間であった。比誘電率(ε)は電圧1Vrms/μm、周波数1MHzにおいて評価した値を記載した。比誘電率を評価するための上部電極は直径100μmのサイズにてAgを蒸着することにより形成した。なお、試料番号1、9および13は比較例であり、その他の試料は実施例である。
実験例1で得られた薄膜サンプルのXRDパターンをリガク社製全自動水平型多目的X線回折装置SmartLabを用いて測定した。実験例1の試料番号1〜13は全てエピタキシャル膜ではないことを確認した。また、得られた薄膜サンプルに含まれる酸窒化物におけるx,yおよびzはULVAC―PHI, Inc.製PHI Quantera IITMを用いて光電子分光分析によって定量した。
また、実験例1で得られた薄膜サンプルについてXRDパターンから、実験例1の試料番号1〜13は全て多結晶膜であることを確認した。すなわち、薄膜が結晶化し、多結晶薄膜となっていることを確認した。また、得られた多結晶薄膜は特定の面に対して配向している配向膜ではないことを確認した。
一方、表1のM(1)〜M(4)の種類、および、表2のx,yおよびzの値より角度θを第一原理計算により算出した。さらに、周波数1MHzにおける比誘電率εを角度θより算出し、実験結果と計算結果との間に相関があることを確認した。なお、表2に示す計算結果では(I)イオン分極による比誘電率向上(II)2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転(8面体構造の回転)による双極子分極による比誘電率向上を無視している。本実験例では、試料番号1(比較例)の比誘電率である1500を超える場合を良好とし、1800以上である場合をさらに良好とした。結果を表1および表2に示す。
Figure 0006981280
Figure 0006981280
表1および表2より、0<z<1/3であり、θが0.5°以上12°以下である各実施例は周波数1MHzで1500を超える高い比誘電率となった。
実験例2
M(2)としてCaを用いた試料番号14および15、M2(2)としてLaおよびM(4)としてTiを用いた試料番号16および17を実験例1と同様な方法で作製した。成膜用ターゲットとして用いる焼結体の原料としては、M(2)としてCaを用いる場合にはCaCO粉末を準備した。M(2)としてLaを用いる場合にはLa粉末を準備した。M(4)としてTiを用いる場合にはTiOを準備した。
実験例2で得られた薄膜サンプルのXRDパターンを測定し、実験例2の試料番号14〜17は全てエピタキシャル膜ではないことを確認した。また、実験例1と同様にして得られた薄膜サンプルに含まれる酸窒化物におけるx,yおよびzを定量した。
また、実験例2で得られた薄膜サンプルのXRDパターンから、実験例2の試料番号14〜17は全て多結晶膜であることを確認した。すなわち、薄膜が結晶化し、多結晶薄膜となっていることを確認した。また、得られた多結晶薄膜は特定の面に対して配向している配向膜ではないことを確認した。
一方、表3のM(1)〜M(4)の種類、および、表4のx,yおよびzの値より角度θを第一原理計算により算出した。さらに、周波数1MHzにおける比誘電率εを角度θより算出し、実験結果と計算結果との間に相関があることを確認した。なお、表4に示す計算結果では(I)イオン分極による比誘電率向上(II)2個の4aサイト原子を結ぶ直線の回転(8面体構造の回転)による双極子分極による比誘電率向上を無視している。本実験例では、試料番号1(比較例)の比誘電率である1500を超える場合を良好とした。結果を表3および表4に示す。
Figure 0006981280
Figure 0006981280
表3および表4より、元素の種類を変更しても0<z<1/3であり、θが0.5°以上12°以下である各実施例は周波数1MHzで1500を超える高い比誘電率となった。
1・・・薄膜キャパシタ
11・・・基板
12・・・下部電極
13・・・多結晶誘電体薄膜
14・・・上部電極
21・・・SrTaON化合物
22・・・Sr原子
23・・・Ta原子
24a・・・O原子
24b・・・N原子
31・・・8面体構造
33・・・中心原子
34a1・・・4aサイトO原子
34a2・・・4aサイトN原子

Claims (3)

  1. 主成分が一般式(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表される酸窒化物からなり、
    0≦x≦1,0≦y≦1,0<z≦0.333であり、
    前記酸窒化物はペロブスカイト型酸窒化物であり、
    前記ペロブスカイト型酸窒化物の結晶構造が、中心原子、2個の4aサイト原子および4個の8hサイト原子からなる8面体構造を含み、
    前記中心原子がTaまたはNbであり、
    前記4aサイト原子がO原子またはN原子であり、
    前記8hサイト原子がO原子またはN原子であり、
    前記8面体構造において、2個の4aサイト原子を結んだ直線と、前記結晶構造のc軸方向とのなす角をθとする場合に、0.5°≦θ≦4.6°であることを特徴とする多結晶誘電体薄膜。
  2. 主成分が一般式(Sr1−xBa)(Ta1−yNb)(O1−zで表される酸窒化物からなり、
    0.02≦x≦0.8,0≦y≦0.4,0.033≦z≦0.233であり、
    前記酸窒化物はペロブスカイト型酸窒化物である多結晶誘電体薄膜。
  3. 請求項1または2に記載の酸窒化物を含む容量素子。
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