図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
車両用空調ユニット1は、車両に搭載されている。車両用空調ユニット1は、その内部に車室内空気である内気、あるいは車室外空気である外気を取り込む。車両用空調ユニット1は、取り込まれた空気の温度を調整して車室内に吹き出す。言い換えると、車両用空調ユニット1は、車室内の暖房運転や冷房運転や除湿運転などの空調運転を行う装置である。
図1において、車両用空調ユニット1は、車両左右の略中央に配置されている空調本体ユニット2と、空調本体ユニット2よりも助手席側に配置されている送風機ユニット4とを備えている。空調本体ユニット2と送風機ユニット4とは内部が連通しており、送風機ユニット4から送風された空気は空調本体ユニット2の内部に流れ込むように構成されている。
送風機ユニット4の空気流れ最上流側には、内外気切り替え装置5が配置されている。内外気切り替え装置5は、車両用空調ユニット1の内部に内気を導入するか外気を導入するかを切り替える装置である。送風機ユニット4の内部において、内外気切り替え装置5の下方には電動送風機が配されている。電動送風機は、回転数を電気的に制御して送風を行う装置である。送風機ユニット4は、電動送風機を収容する送風機ケース40を備えている。
空調本体ユニット2は、送風機ユニット4から送風された送風空気を冷却する冷却用熱交換器と、送風空気を加熱する加熱用熱交換器とを備えている。空調本体ユニット2は、冷却用熱交換器と熱交換した冷風と加熱用熱交換器と熱交換した温風とを混ぜるエアミックスドア装置や、吹き出しモードを切り替える吹き出しモードドア装置などの空調用機器を備えている。空調本体ユニット2は、冷却用熱交換器や加熱用熱交換器や空調用機器などの装置を収容する車両用空調ケース20を備えている。
車両用空調ケース20は、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bと第3ケース部材20cとの3つの部材が組み付けられて形成されている。車両用空調ケース20は、第2ケース部材20bを中心として左右にそれぞれ第1ケース部材20aと第3ケース部材20cとが配置された状態で連結して固定されている。第1ケース部材20aと第2ケース部材20bとは、例えばスナップフィットなどによって嵌合固定されている。第2ケース部材20bと第3ケース部材20cとについても同様に、例えばスナップフィットなどによって嵌合固定されている。ただし、ケース部材20a、20b、20cの互いの固定方法は嵌合固定に限られず、ネジ止めなどによる締結固定や接着剤による接着固定などを採用してもよい。
車両用空調ケース20と送風機ケース40とは、ある程度の弾性と防水性を有し、強度的にも優れた絶縁性樹脂にて成形されている。絶縁性樹脂としては、例えばポリプロピレンなどが採用可能である。
空調本体ユニット2における空気流れの最下流側には、温度調整された送風空気である空調空気を空調本体ユニット2の外側へ吹き出させる複数の開口が設けられている。開口から吹き出された空調空気は、開口に接続して設けられたダクトの内部を流れる。ダクトを流れた空調空気は、車室内に面して設けられた吹き出し口から吹き出されて車室内の空調を行う。
車両用空調ケース20の外周面において、アクチュエータ3が取り付けられている。アクチュエータ3は、第1ケース部材20aの表面において、送風機ユニット4と対向する側の面に設けられている。アクチュエータ3は、第1ケース部材20aに対してネジなどを用いて締結固定されている。アクチュエータ3は、吹き出しモードドア装置を駆動するサーボモータなどにより構成されている。アクチュエータ3は、外部からの入力信号に従って動作する。アクチュエータ3は、電装部品を提供する。アクチュエータ3と同様の電装部品は、第3ケース部材20cの外周面にも設けられている。言い換えると、車両用空調ケース20の表面において、両側にアクチュエータ3が設けられている。ただし、電装部品の設置位置は、上述した位置に限られない。さらに、電装部品を3つ以上設けるように構成してもよい。
車両用空調ケース20の外周面において、ハーネスユニット100が取り付けられている。ハーネスユニット100は、車両用空調ケース20の高さ方向の略中間位置に設けられている。ハーネスユニット100は、ハーネスアタッチメント50とワイヤハーネス80とを備えている。言い換えると、ワイヤハーネス80に対してハーネスアタッチメント50が装着されて一体物となった状態がハーネスユニット100である。ハーネスユニット100において、ワイヤハーネス80は、車両用空調ケース20とハーネスアタッチメント50との間ではなく、外側に露出した状態でハーネスアタッチメント50に沿って取り付けられている。言い換えると、ハーネスユニット100を取り付けた状態で、ワイヤハーネス80がハーネスアタッチメント50の適切な位置に配されているかを目視確認可能な位置に取り付けられている。
図2において、ハーネスアタッチメント50は、ベース部51とケース保持部61と可動部71とを備えている。ハーネスアタッチメント50は、例えばポリプロピレンなどの樹脂材料でベース部51とケース保持部61と可動部71とが連続して一体成形されている。ただし、単一の樹脂材料のみでハーネスアタッチメント50を形成するのではなく、複数の樹脂材料を用いてハーネスアタッチメント50を形成してもよい。あるいは、大きな弾性が必要となる部分にゴムなどのエラストマーを用いるようにしてもよい。あるいは、別々に成形した部品を組み合わせてハーネスアタッチメント50を構成するようにしてもよい。
ベース部51は、直方体形状の板部材である。ベース部51の長手方向の端部には、ケース保持部61が設けられている。ケース保持部61のベース部51とは反対側の端部には、可動部71が設けられている。言い換えると、ハーネスアタッチメント50は、ベース部51と可動部71との間にケース保持部61を備えた形状である。ケース保持部61と可動部71とは、ベース部51の長手方向の両端部のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、ハーネスアタッチメント50は、1つのベース部51に対して2つのケース保持部61と2つの可動部71とを有している。ただし、1つのベース部51に対してケース保持部61と可動部71とを3つ以上設けるように構成してもよい。あるいは、片方のケース保持部61の端部のみに可動部71を備え、残りのケース保持部61の端部には可動部71を備えないように構成してもよい。
ワイヤハーネス80は、ハーネスアタッチメント50に沿って配置されている。ワイヤハーネス80は、配線81とコネクタ82とを備えている。配線81は、電気信号などを通信するための金属線を樹脂材料で被覆した部品である。配線81は、細長く柔らかい部品である。コネクタ82は、アクチュエータ3などの電装部品と接続する端子部品である。コネクタ82は、軟体物である配線81の端につながって設けられている。
ベース部51は、配線固定部52を備えている。配線固定部52は、フック形状である。配線固定部52は、ベース部51の長手方向に並んで複数設けられている。ハーネスアタッチメント50とワイヤハーネス80とが一体となった状態において、配線81は配線固定部52の内側に通されて固定されている。配線固定部52は、ベース部51から配線81が大きく浮き上がってしまうなどして位置がずれることを防止している。
ケース保持部61は、配線固定部62を備えている。配線固定部62は、フック形状である。配線81は、配線固定部62の内側に通されて固定されている。配線固定部62は、ケース保持部61から配線81が大きく浮き上がってしまうなどして位置がずれることを防止している。
ケース保持部61は、凹部63を備えている。凹部63は、可動部71と対向する端面に設けられている。凹部63は、端面から内側に向かって傾斜する構造である。言い換えると、凹部63は、端面において最も幅が広く、端面から離れるほど幅が狭くなっていく形状である。言い換えると、凹部63は、可動部71が収納される手前側から奥側に向かって徐々に幅が狭くなる傾斜構造である。凹部63の断面形状は、端面に向かって幅が広がっていく台形状である。
ベース部51とケース保持部61とは、接続部55で接続されている。接続部55は、ベース部51とケース保持部61とが車両用空調ケース20に対向する面同士を連続させてつなぐことで形成されている。言い換えると、接続部55は、ベース部51の角部とケース保持部61の角部とを接続している。接続部55は、ベース部51やケース保持部61に比べて薄く形成されている。このため、ケース保持部61は、わずかに撓んで車両用空調ケース20にハーネスユニット100を取り付ける際の衝撃を吸収しやすい。
ケース保持部61と可動部71とは、屈曲部65で接続されている。屈曲部65は、ケース保持部61の角部と可動部71の角部とを接続している。屈曲部65は、一定の方向にハーネスアタッチメント50を折り曲げる関節としての機能を果たしている。言い換えると、屈曲部65はベース部51に対して可動部71を屈曲させるヒンジとして機能する。屈曲部65は、ケース保持部61や可動部71に比べて薄く形成されている。このため、屈曲部65が変形することで、ケース保持部61に対する可動部71の相対的な位置関係を調整する。言い換えると、屈曲部65が変形することで、ケース保持部61に対して可動部71が移動して、ハーネスアタッチメント50が屈曲する。ここで、屈曲することには座屈による不可逆な折れ曲がりや、弓形に折れ曲がる湾曲なども含まれる。屈曲部65は、ケース保持部61や可動部71とは別部品でもよい。例えば金属製の蝶番などを用いてケース保持部61および可動部71を接続して屈曲部65としてもよい。可動部71の動作の詳細については、後述する。
可動部71は、コネクタ保持部72を備えている。可動部71は、コネクタ82よりも大きな部材である。コネクタ保持部72は、1つの面が開放された箱型形状である。コネクタ保持部72は、コネクタ82の先端を可動部71よりも突出した状態で可動部71に対する位置や向きが変わらないように保持している。コネクタ82の突出方向は、ハーネスアタッチメント50の屈曲方向と同じ方向である。コネクタ保持部72には、スリットが設けられておりコネクタ82が保持された状態では、スリットを通して配線81が引き出されて可動部71に沿って延びている。
可動部71は、平板状の突出部73を備えている。突出部73は、コネクタ82が接続された状態においてアクチュエータ3と対向する面とは反対側の面に設けられている。突出部73は、ハーネスアタッチメント50の屈曲方向とは逆方向に突出して設けられている。突出部73は、ケース保持部61から離れる方向に延び出して設けられている。突出部73の基部は、屈曲部65と連続して一体に設けられている。
可動部71は、第1板バネ部74と第2板バネ部75とを備えている。第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、可動部71のケース保持部61側に位置する角部に並んで設けられている。第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、可動部71のコネクタ保持部72が配されている面とその反対側の面とのそれぞれの面に対応して設けられている。第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、湾曲する板形状である。第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、ケース保持部61から離れる方向に延出し、外側に膨らんで傾斜するように設けられている。第1板バネ部74は、第2板バネ部75よりも屈曲部65から離れた位置に設けられている。第1板バネ部74は、第2板バネ部75よりも大きなサイズである。第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、板バネ部を提供する。
第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、少なくともコネクタ82がアクチュエータ3に接続された状態においては、凹部63の傾斜面と接触した状態である。凹部63と接触した状態の板バネ部74、75は、凹部63から押されて撓むことで、可動部71を凹部63の傾斜面から離れる方向に押す力を加える。ここで、板バネ部74、75は、可動部71の両側に設けられているため、可動部71をコネクタ保持部72が配されている面とその反対側の面との両側から押し合うこととなる。可動部71が凹部63の中央に存在する場合には、可動部71の両側に設けた板バネ部74、75によって可動部71を押す力が拮抗する。一方、可動部71が凹部63の中央よりも片側に寄った位置に存在する場合は、凹部63により近い側に存在する板バネ部74、74で発生する弾性力が大きくなり、可動部71を凹部63の中央に案内する。言い換えると、板バネ部74、75は、可動部71が動くときに、凹部63と可動部71との相対的な位置関係が適切になるように案内している。
可動部71は、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とを備えている。第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは、間にコネクタ保持部72を配して互いに対向した位置関係にある。第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは、コネクタ82と同様にハーネスアタッチメント50の屈曲方向に向かって突出している。ただし、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは、コネクタ82よりも可動部71からの突出量が大きい。第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは、突出した先端部がコネクタ保持部72から離れる方向に傾斜した反り形状を有している。言い換えると、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78との幅は、可動部71から突出した先端部が最も大きく、コネクタ保持部72に近づくほど小さくなる。第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは位置合わせ部を提供する。
図1において、車両用空調ケース20にハーネスユニット100が装着された状態では、ベース部51は、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bと第3ケース部材20cとのそれぞれに接触している。ケース保持部61は、第1ケース部材20aもしくは第3ケース部材20cと接触している。言い換えると、ベース部51の長手方向の両端部に設けたケース保持部61は、車両用空調ケース20を外側から挟持して、ケース部材20a、20b、20c同士が組み付けられた状態を保持している。言い換えると、ハーネスユニット100は、車両用空調ケース20が分解しないように補強している。
ケース部材20a、20b、20cの互いの連結方法として嵌合固定を採用した場合、冷房時と暖房時とでの温度差により、嵌合部分の樹脂材料に収縮や膨張が引き起こされることで適切な嵌合状態を維持しにくい。あるいは、連結方法として締結固定を採用した場合、冷房時と暖房時とでの温度差により、締結部分の樹脂材料に収縮や膨張が引き起こされることでネジなどが緩みやすくなる。あるいは、連結方法として接着固定を採用した場合、冷房時と暖房時とでの温度差により、接着部分の樹脂材料に収縮や膨張が引き起こされることで接着面同士が離れやすくなる。また、温度変化に伴う接着剤の変質が引き起こされやすい。いずれの連結方法を採用した場合であっても、車両用空調ケース20は車両に搭載されているため、車両走行時の大きな振動が連結部分に加えられることで、連結状態が解除されやすい。このため、ハーネスユニット100を用いて補強することは、車両用空調ユニット1に用いる車両用空調ケース20に対して非常に有用である。
ケース保持部61による車両用空調ケース20の補強方法は車両用空調ケース20の外側からの挟持に限られない。例えば車両用空調ケース20にケース保持部61を挿入可能な差し込み口を備えて、差し込み口にケース保持部61の端部を挿入してハーネスユニット100の長手方向への分離を規制するようにしてもよい。この場合、車両用空調ケース20に対して外側から内側に向かって常に応力を加え続ける挟持状態を維持するのではなく、車両用空調ケース20が分解しそうになって外側に広がった時に、外側から内側に向かう応力が加えられることとなる。これにより、車両用空調ケース20の分解などを抑制して車両用空調ケース20が組み付けられた状態を安定して維持する。
車両用空調ケース20にハーネスユニット100を取り付ける過程を以下に説明する。図3において、ハーネスユニット100は、ロボットアーム99によってつまんで持ち上げられた状態である。ロボットアーム99は、ハーネスユニット100の取り付け角度を調整して、ベース部51を挟持している。ロボットアーム99は、車両用空調ケース20に対してハーネスユニット100の高さ位置および左右位置を調整している。この時、ロボットアーム99は、ベース部51に設けられた位置決め突起の位置が、車両用空調ケース20に設けられた位置決め孔25の位置に重なるように位置を調整している。位置決め孔25は、第1ケース部材20aと第3ケース部材20cとに1つずつ設けられている。ただし、車両用空調ケース20側に突起を設け、ベース部51側に孔を設けて位置決めを行うようにしてもよい。この場合、車両用空調ケース20に位置決めのための孔を設ける必要がないため、位置決め孔25から風が漏れ出すことを防ぐことができる。
図4において、ハーネスユニット100は、車両用空調ケース20に取り付けられている。この状態では、位置決め孔25にベース部51に設けられた位置決め突起が挿入されて車両用空調ケース20とハーネスユニット100とが連結した状態である。したがって、ハーネスユニット100は、車両用空調ケース20に対して2か所で連結して保持されている。このため、ハーネスユニット100が取り付けられた状態において、ハーネスユニット100が回転して位置がずれたり、ハーネスユニット100が車両用空調ケース20から脱落したりしにくい状態である。
ただし、ハーネスユニット100の車両用空調ケース20への連結方法は、位置決め孔25への位置決め突起の挿入による固定に限られない。例えば位置決め孔25や位置決め突起を備える代わりに、両面テープや接着剤による接着固定を行ってもよい。あるいは、位置決め孔25を設ける代わりにフック部材を設けてハーネスユニット100をフック部材の内側にスライド挿入させてフック部材で挟み込んで固定するなどしてもよい。あるいは、位置決め孔25などを設けず、ケース保持部61によって車両用空調ケース20を外側から挟持する力のみで連結を行うようにしてもよい。あるいは、複数のロボットアーム99を用いて、ハーネスユニット100のコネクタ82がアクチュエータ3に接続されるまでの間、ロボットアーム99によるハーネスユニット100の位置決め状態を保持し続けるようにしてもよい。
図5において、ハーネスユニット100が車両用空調ケース20に取り付けられた状態でロボットアーム99の先端部をケース保持部61の下端面に沿って配置している。この状態においては、可動部71は、重力に引かれてケース保持部61から屈曲部65を介してぶら下がった状態である。この状態で可動部71に応力を加えると、可動部71が屈曲部65を中心軸として揺動してコネクタ82がアクチュエータ3に対して近づいたり離れたりする動作を繰り返すこととなる。可動部71が揺動していない状態においては、コネクタ保持部72に保持された状態のコネクタ82が下方に位置している。
図6において、ケース保持部61から可動部71に向かって、ケース保持部61の下端面に沿ってロボットアーム99を摺動させることで屈曲部65を中心に可動部71を回転させてハーネスユニット100を屈曲させている。可動部71がベース部51に対して回転することで、コネクタ保持部72に保持されたコネクタ82とアクチュエータ3との距離が近づき、最終的にコネクタ82がアクチュエータ3に接触して接続されている。
アクチュエータ3にコネクタ82を接続する過程の詳細について以下に説明する。図7において、アクチュエータ3は、コネクタ82が接続される端子である受け側端子31を備えている。ロボットアーム99は、ケース保持部61の下端面に沿ってケース保持部61から可動部71に向かって平行移動している。ロボットアーム99は、ケース保持部61側から屈曲部65を越えて突出部73と接触し始めた状態である。ロボットアーム99は、突出部73と接触することで可動部71を下から上に持ち上げる。言い換えると、屈曲部65を中心として可動部71を屈曲方向に回転させる。ここで、屈曲方向とは矢印A1に示す方向である。言い換えると、屈曲方向とは可動部71のコネクタ保持部72がアクチュエータ3に近づく方向である。
図8において、第1位置合わせ部77は、アクチュエータ3の外周と接触している状態である。この状態において、第1位置合わせ部77は、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78との間にアクチュエータ3が位置するように可動部71をガイドしている。言い換えると、第1位置合わせ部77は、屈曲部65から離れる方向である周方向外側にコネクタ保持部72の位置がずれ過ぎてしまうことを規制している。一方、第2位置合わせ部78は、屈曲部65に近づく方向である周方向内側にコネクタ保持部72の位置がずれ過ぎてしまうことを規制している。すなわち、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とは、可動部71の回転運動の周方向において、コネクタ保持部72に保持されたコネクタ82を受け側端子31に対向する位置に導くようにガイドしている。
また、第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、凹部63の傾斜面と接触して撓むことで可動部71に弾性力による力を加えている。言い換えると、可動部71の両側に設けた板バネ部74、75の弾性力が可動部71の両側で釣り合う位置に凹部63と可動部71との相対的な位置を変更させている。言い換えると、可動部71が適切な軌道を描いて屈曲部65を中心とした回転運動ができるようにガイドしている。これにより、コネクタ82の位置が車両用空調ケース20に近づきすぎたり、車両用空調ケース20から離れすぎたりすることを規制している。すなわち、第1板バネ部74と第2板バネ部75とは、可動部71の回転運動の軸方向において、コネクタ82を受け側端子31に対向する位置に導くようにガイドしている。
これらのガイドにより、可動部71は、コネクタ保持部72に保持されたコネクタ82を受け側端子31に対して適切な軌跡で屈曲して接近させるように動く。言い換えると、コネクタ82の先端が受け側端子31に対して若干ずれているために、コネクタ82をアクチュエータ3に接続できないといった事態が引き起こされることを低減している。
図9において、受け側端子31にはコネクタ82が接続されている。この状態で、さらにコネクタ82を受け側端子31に確実に押し込むため、ロボットアーム99は、突出部73を押し上げる。この時、突出部73は板バネのように弾性部材として機能する。このため、すでにコネクタ82が受け側端子31に適切に接続された状態であれば、突出部73が撓むことでロボットアーム99による押し上げ動作の衝撃を吸収してコネクタ82の適切な接続状態を維持する。一方、コネクタ82がまだ受け側端子31に完全には接続されていない状態であれば、コネクタ82を押し込んでコネクタ82と受け側端子31とが適切に接続された状態とする。
コネクタ82が受け側端子31に適切に接続された状態においては、アクチュエータ3の外周が第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78との両方の部材に接触した状態である。ただし、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78の両方を備えず、どちらか片方だけを備えるようにしてもよい。あるいは、第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78の両方とも備えず、ケース保持部61を正確に位置合わせすることでコネクタ82の接続を適切に行うようにしてもよい。
一方のアクチュエータ3へのコネクタ82の接続が完了した後、もう一方のアクチュエータ3へのコネクタ82の接続を同様に行う。これにより、ロボットアーム99によるコネクタ82の接続作業を全て完了させる。コネクタ82がアクチュエータ3に接続されたことで、位置決め孔25を用いた固定と、ケース保持部61を用いた挟持による固定と、アクチュエータ3へのコネクタ82の接続による固定が完了したこととなる。言い換えると、車両用空調ユニット1に対して、ハーネスユニット100を用いた3種類の固定が完了したこととなる。
上述した実施形態によると、ハーネスアタッチメント50は、コネクタ保持部72に保持されたコネクタ82の位置を変位させる可動部71を備えている。このため、コネクタ82を直接動かす代わりに可動部71を動かすことで、コネクタ82の位置を変位させて、アクチュエータ3へのコネクタ82の接続を適切に行うことができる。したがって、受け側端子31に対してコネクタ82の位置を細かく調整する作業が不要となり、接続作業性を向上させることができる。言い換えると、コネクタ82の位置を個別に調整する必要がなく、ハーネスユニット100を車両用空調ケース20に取り付けた時点で位置合わせを完了することができる。特に、コネクタ82のサイズが小さい場合にはコネクタ82を直接つかんで接続する作業に多くの時間が必要である。このため、コネクタ82のサイズが小さい場合に特に有用である。
また、コネクタ82の接続作業において、小さなコネクタ82をつかんで動かす代わりに、可動部71を動かすことでコネクタ82の接続が可能である。このため、ロボットアーム99などを用いて接続作業を自動化する場合に、ロボットアーム99による作業を単純化できる。言い換えると、軟体物である配線81につながったコネクタ82をつまむ動作や、コネクタ82を受け側端子31の位置まで移動させて位置合わせを行う動作などの複雑な動作を簡略化できる。したがって、ロボットアーム99の制御プログラムを簡略化して製造プロセスを自動化しやすい。
ハーネスアタッチメント50は、車両用空調ケース20を保持可能なケース保持部61を備えている。このため、車両用空調ケース20とハーネスユニット100とが接触して一体となっている部分についての剛性を高めることができる。したがって、車両用空調ケース20が変形したり破損したりすることを低減できる。さらに、車両用空調ケース20が複数のケース部材20a、20b、20cが組み付けられて構成されている場合には、ケース保持部61は、車両用空調ケース20が組み付けられた状態を保持する。このため、車両用空調ケース20において各ケース部材20a、20b、20cの結合状態が解除されてしまうことを防ぐことができる。走行時の振動の影響により各ケース部材20a、20b、20cが衝撃を受けやすい車両用空調ユニット1において、特に有用である。また、空調制御に伴う温度変化により、各ケース部材20a、20b、20cが膨張や収縮を行って体積変化しやすい車両用空調ユニット1において、特に有用である。
ハーネスアタッチメント50は、ケース保持部61と可動部71とを備えている。このため、車両用空調ケース20へのワイヤハーネス80の接続作業における作業性の向上と、車両用空調ケース20の補強とを1つのハーネスユニット100を用いて実現できる。言い換えると、作業性の向上を目的とした部材と車両用空調ケース20の補強を目的とした部材とを別々に用意する必要がない。
ケース保持部61は、車両用空調ケース20を外側から挟持している。このため、車両用空調ケース20が車両の走行に伴う衝撃を受けるなどしても、ハーネスユニット100が車両用空調ケース20を外側から挟持することで車両用空調ケース20が組み付けられた状態を保持している。さらに、車両用空調ケース20の適切な位置にハーネスユニット100が配置された状態を維持しやすい。したがって、車両用空調ケース20を適切な形状に保つとともに、車両用空調ケース20にハーネスユニット100が適切に接続された状態を維持しやすい。さらに、配線81が浮き上がるなどして車両用空調ケース20と配線81とが繰り返し衝突して接触音が発生することを抑制できる。
ハーネスユニット100は、第1ケース部材20aと第3ケース部材20cとに設けられた位置決め孔25にベース部51の位置決め突起を挿入することで、車両用空調ケース20とハーネスユニット100とが連結して保持されている。言い換えると、ハーネスユニット100は、複数のケース部材20a、20cのそれぞれに対して保持されている。このため、ハーネスユニット100を車両用空調ケース20に装着した状態において、第1ケース部材20aと第3ケース部材20cとの相対的な位置関係を維持しやすい。さらに、複数の位置決め孔25における固定により、車両用空調ケース20の膨張や収縮による変位を規制して、車両用空調ケース20を適切な形状に保つことができる。言い換えると、車両用空調ケース20にハーネスユニット100が適切に接続された状態を維持しやすい。
可動部71は、屈曲部65を中心に屈曲してコネクタ82の位置を変異させてアクチュエータ3にコネクタ82を接続している。このため、可動部71を押す方向とコネクタ82が移動する方向とを異なる方向にすることができる。したがって、アクチュエータ3の受け側端子31が組立作業者の正面向きではなく下向きに設けられている場合など、コネクタ82の接続方向と同じ方向にコネクタ82を押し込みにくい場合であっても接続作業性を向上させやすい。また、受け側端子31が組立作業者の手の届きにくい場所に位置している場合であっても、可動部71を動かすことでコネクタ82を受け側端子31に接続できるため、接続作業性を向上させやすい。
可動部71とケース保持部61とは、屈曲部65によって接続されている。言い換えると、可動部71は、屈曲部65を介してケース保持部61に接続されている。このため、車両用空調ケース20に対して適切に位置決めされているケース保持部61を基準に可動部71が屈曲方向に動く。したがって、可動部71の動きに伴ってコネクタ82が適切な軌道を描いてアクチュエータ3に適切に接続されやすい。
可動部71は、コネクタ保持部72に保持されたコネクタ82が可動部71に対して突出する側とは反対側に突出する突出部73を備えている。言い換えると、可動部71は、屈曲部65によって屈曲する屈曲方向とは逆方向に突出する突出部73を備えている。このため、ハーネスユニット100の屈曲が進む過程においても屈曲方向とは逆方向に設けられた突出部73が可動部71から突出しており、突出部73を屈曲方向に向かって押す力を加え続けやすい。言い換えると、屈曲部65を中心に可動部71を回転させて屈曲方向に屈曲させやすい。
ケース保持部61は、可動部71の一部を収納して可動部71の屈曲方向への動きをガイドする凹部63を備えている。このため、凹部63に可動部71の一部が収納された状態においては、可動部71が凹部63に接触した状態で動くこととなる。したがって、可動部71が適切な軌道の動きを行わず、受け側端子31に対してコネクタ82が接続できなくなることを抑制できる。言い換えると、可動部71の動きをガイドして適切な軌道で受け側端子31にコネクタ82を接続しやすい。
凹部63は、可動部71が収納される手前側から奥側に向かって徐々に幅が狭くなる傾斜構造である。このため、凹部63の入口に相当する手前側の幅が広く、可動部71を凹部63の内側に取り込みやすい。また、凹部63の終端部に相当する奥側の幅が狭く、可動部71が凹部63の傾斜壁面と接触した状態になりやすい。言い換えると、凹部63がピンポイントに可動部71を適切な位置にガイドしやすい。
可動部71は、アクチュエータ3にコネクタ82を接続した状態において、凹部63と接触する第1板バネ部74と第2板バネ部75とを備えている。このため、可動部71と一体の第1板バネ部74と第2板バネ部75とが、凹部63に対して接触しやすい。言い換えると、凹部63による可動部71のガイド機能をより確実に受けることができる。
可動部71は、アクチュエータ3と接触してコネクタ82を適切な位置にガイドする第1位置合わせ部77と第2位置合わせ部78とを備えている。このため、コネクタ82をアクチュエータ3に接続する過程で、可動部71とアクチュエータ3との相対位置を調整できる。したがって、コネクタ82をアクチュエータ3に適切に接続させやすい。
ハーネスアタッチメント50を保管する際には、接続部55や屈曲部65を折り曲げてハーネスアタッチメント50を部分的に折りたたんだ状態としてもよい。あるいは、接続部55や屈曲部65を伸ばして、ハーネスアタッチメント50を重ねやすい状態としてもよい。これによると、限られた空間により多くのハーネスアタッチメント50を保管しやすい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、可動部271がガイド筒部264に沿って直線的に移動することでコネクタ保持部272を変位させて、コネクタ82をアクチュエータ3に接続している。
図10において、ハーネスユニット100を構成するハーネスアタッチメント50は、ケース保持部261を備えている。ケース保持部261は、ガイド筒部264を備えている。ガイド筒部264は、断面が四角形の角筒状である。ガイド筒部264は、車両用空調ケース20と接する側とは反対側にスリットを備えている。
ハーネスアタッチメント50は、可動部271を備えている。可動部271は、直方体の部品である。可動部271は、コネクタ保持部272を備えている。コネクタ保持部272は、1つの面が開放された箱型形状である。コネクタ保持部272には、コネクタ82の先端が突出した状態で保持されている。配線81は、コネクタ保持部272に設けられたスリットを通り、さらにガイド筒部264に設けられたスリットに沿うように、ハーネスアタッチメント50に配されている。
可動部271は、ガイド筒部264の内部に収納された状態である。可動部271は、ガイド筒部264の内側を摺動して移動可能である。言い換えると、可動部271がガイド筒部264の内側を動くことで、ガイド筒部264に対する可動部271の突出量が変化する。これにより、可動部271の先端に設けられたコネクタ保持部272の位置が変位する。
図11において、コネクタ82はアクチュエータ3に接続されている。言い換えると、ガイド筒部264に対する可動部271の突出量が最大となった状態である。コネクタ82がアクチュエータ3に接続された状態においては、可動部271は、アクチュエータ3とは接触しておらず、コネクタ82のみがアクチュエータ3と接触している。可動部271は、組立作業者の手、あるいはロボットアーム99によってアクチュエータ3に向かって押された方向と同じ方向に移動している。言い換えると、可動部271を押す方向と可動部271の移動方向とは、ともにガイド筒部264に平行な方向である。
上述した実施形態によると、可動部271は、ガイド筒部264の内側を摺動することでコネクタ保持部272の位置を変位させて、アクチュエータ3に対してコネクタ82を接続させている。言い換えると、可動部271を押す方向と可動部271の移動方向である摺動方向が一致している。このため、可動部271の摺動過程において可動部271を押す力を加えやすい。さらに、可動部271を押し込んだ距離と可動部271が移動する距離とを一致させることで、可動部271を押し込む必要のある距離を把握しやすくすることができる。したがって、可動部271を強く押し込みすぎることによるアクチュエータ3やコネクタ82の破損を防ぎやすい。
コネクタ82の保持方法は、可動部271に設けた箱型形状のコネクタ保持部272によるものに限られない。例えば、コネクタ82に箱型形状の受け部を備え、可動部271には受け部に対応した突形状を備え、可動部271の突形状をコネクタ82の受け部でくわえ込むようにして保持してもよい。これによると、箱型形状のコネクタ保持部272に異物が入った状態でコネクタ82が保持されるなどして、コネクタ82が傾いた状態で保持されることによるアクチュエータ3への接続不良が起こることを防止できる。言い換えると、ハーネスアタッチメント50よりもサイズが小さく、柔軟に曲げることのできるワイヤハーネス80に箱型形状の受け部が設けられているため、受け部に異物が入った場合であっても、異物を受け部から外に出しやすい。したがって、可動部271が正常に動いているにもかかわらずコネクタ82がアクチュエータ3に適切に接続されないといった事態を低減できる。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、可動部371が回転軸部365を中心に回転移動することでコネクタ保持部372の位置を変位させて、コネクタ82をアクチュエータ3に接続している。
図12において、ハーネスユニット100を構成するハーネスアタッチメント50は、ケース保持部361を備えている。ケース保持部361と可動部371とは、円柱状の回転軸部365で接続されている。可動部371は、直方体の部品である。可動部371は、コネクタ保持部372を備えている。コネクタ保持部372は、1つの面が開放された箱型形状である。コネクタ保持部372には、コネクタ82の先端が突出した状態で保持されている。配線81は、コネクタ保持部372に設けられたスリットを通って、ハーネスアタッチメント50に沿って配されている。配線81は、ケース保持部361に貼り付けられた固定シール366によって固定されている。
可動部371は、コネクタ保持部372がアクチュエータ3の受け側端子31と対向していない状態である。この状態においては、アクチュエータ3とハーネスユニット100とは、接触していない。可動部371は回転軸部365を回転軸として回転可能である。言い換えると、可動部371が回転移動することで、可動部371に設けられたコネクタ保持部372の位置が変位する。回転軸部365による回転の軸方向は、ケース保持部361の長手方向と一致している。したがって、コネクタ保持部372に保持されたコネクタ82は、回転軸部365による回転の周方向に移動する。
図13において、コネクタ82はアクチュエータ3に接続されている。コネクタ82がアクチュエータ3と接続された状態においては、可動部371は、アクチュエータ3とは接触しておらず、コネクタ82のみがアクチュエータ3と接触している。可動部371は、組立作業者の手、あるいはロボットアーム99によって回転されている。ただし、モータを備えて回転軸部365を回転させることで、可動部371を回転移動させるなどしてもよい。
上述した実施形態によると、可動部371は、回転軸部365を中心に回転することでコネクタ保持部372の位置を変位させて、アクチュエータ3に対してコネクタ82を接続させている。このため、可動部371を所定角度回転させるだけでアクチュエータ3にコネクタ82を接続可能である。したがって、受け側端子31に対してコネクタ82の位置を調整する作業が不要となり、接続作業性を向上させることができる。
屈曲部65を用いて可動部71を屈曲させる動きに比べて、可動部371の動きに伴ってハーネスアタッチメント50に生じる負荷が小さい。言い換えると、屈曲部65を用いた屈曲の動きにおいては、屈曲部65に屈曲に伴う応力が集中して大きな負荷が加わりやすい。これに対して、回転軸部365を用いた回転の動きにおいては、回転に伴う応力が特定の部分に集中して加えられにくい。このため、可動部371を動かした際の衝撃でハーネスアタッチメント50が破損しにくい。
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。