JP6980189B2 - 清酒の苦味を低減する添加剤、清酒の製造方法、清酒の苦味低減方法、および苦味が抑えられた清酒 - Google Patents

清酒の苦味を低減する添加剤、清酒の製造方法、清酒の苦味低減方法、および苦味が抑えられた清酒 Download PDF

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本発明は、清酒の苦味を低減する添加剤、前記添加剤を用いた清酒の製造方法、前記添加剤を用いた清酒の苦味低減方法、および苦味が抑えられた清酒に関する。
近年、海外における和食ブームなどを追い風に、清酒の需要増加が期待されている。清酒にはアルコールの他に、アミノ酸、有機酸、糖類、ミネラル等の様々な微量成分が含まれており、それらが組み合わさって清酒に特有の風味が作り出されている。
清酒の風味としては、一般的には、甘味、辛味、酸味、苦味、渋味などが知られており、これらの味がバランスよく保持されていることで、各清酒に特有の味が奏されている。
前記の風味の中で、苦味や渋味は、一般に、不快味とされており(特許文献1の段落[0004])、清酒の分野において、苦味、渋味成分としては、チロソール、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、ロイシン、イソロイシン、チロシン、コハク酸、乳酸、プロリルロイシン等があることが知られている(非特許文献1)。
しかしながら、アルコール飲料において苦味などの不快味を低減する技術については、例えば、アルコール飲料に炭酸ガスを含ませると、爽快感は与えられるが苦味が増大することから、苦味のない、上品な甘味のある、炭酸ガスを含んだアルコール飲料を得るために、果糖を添加する手法が知られているものの(特許文献2)、果糖を清酒に添加すると、味のバランスが崩れてしまうため実際に適用することは難しいことから、清酒の分野において十分に研究されているとはいえなかった。
特開平5−41973号公報 特開2003−125749号公報
中山 繁喜、櫻井 廣、「清酒の苦味・渋味成分と味覚センサの応答」、岩手県工業技術センター研究報告第8号(2001)
そこで、本発明は、清酒の苦味を低減する技術を新たに提供することを目的とする。詳しくは、本発明は、清酒の苦味を効率よく低減することができる清酒の苦味低減用添加剤、前記添加剤を用いた苦味の低減した清酒の製造方法、及び前記添加剤を用いた清酒の苦味低減方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために、清酒において苦味成分として公知のアミノ酸「L−チロシン」に着目し、甘酒中で乳酸菌および麹菌を共存させた培養物を、清酒の仕込み工程で添加すると、前記培養物を添加しなかった場合と比べて、得られる清酒中のL−チロシンの含有量が顕著に低減し、しかも実際に清酒の苦味も顕著に抑えられることを初めて見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]清酒の醪を作製するための初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で添加するための清酒の苦味低減用添加剤であって、甘酒中で麹菌と乳酸菌とを培養させた麹菌および乳酸菌の培養物を主成分として含有してなり、かつ、フェノール濃度が750μM以上であり、前記乳酸菌がラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)である清酒の苦味低減用添加剤、
[2]麹菌を含む甘酒と乳酸菌であるラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌とを培養させた培養物を作製する工程、ならびに
前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに、初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で仕込んで醪を作製する工程
を含む、清酒の製造方法、
[3]前記清酒中のγ−アミノ酪酸濃度が60mg/mL以下である前記[2]に記載の清酒の製造方法、
[4]清酒の製造工程において、
麹菌を含む甘酒と乳酸菌であるラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌とを培養させた培養物を作製する工程、ならびに
前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに、初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で仕込んで醪を作製する工程
を含む、清酒の苦味低減方法
に関する。
本発明の清酒の苦味低減用添加剤を、清酒の醪造りにおける初添、仲添、留添などのいわゆる仕込みの段階で添加するという簡単な手法により、得られる清酒における苦味成分であるL−チロシンの含有量を抑えて、実際の清酒の苦味を効率よく低減することができる。
また、本発明で得られる清酒は、前記苦味低減用添加剤を用いずに清酒を製造した場合と比べると、高級酒に分類される吟醸酒様の香りを伴ったフルーティーな風味を有する、飲みやすい清酒となるという効果が奏される。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.清酒の苦味低減用添加剤
本発明の清酒の苦味低減用添加剤(以下、本発明の添加剤という)は、甘酒中で麹菌と乳酸菌とを培養させた麹菌および乳酸菌の培養物を主成分として含有してなり、かつ、フェノール濃度が750μM以上であることを特徴とする。
本発明において清酒とは、酒税法3条7号に規定される酒類であり、アルコール分が二十二度未満のものをいう。
また、清酒の種類としては、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの特定名称酒、これらの特定名称酒として区分されない普通酒、生酒、生貯蔵酒、生一本、樽酒などが含まれる。
本発明で用いる甘酒とは、米麹と米飯との混合物、米麹と酒粕との混合物などを主原料とし、これに必要に応じて適当量の水を添加混合し、また、必要に応じて40〜70℃で0.5〜15時間保持して、糖化反応などを行わせることにより調製した、一般的な甘酒を包含する。
甘酒の原料は、米麹、米麹と米飯との混合物、米麹と酒粕との混合物、酒粕、米麹と米飯と酒粕との混合物から選ばれた一種以上を主原料とするものであればよい。
なお、前記米飯としては、炊いた米やかゆ状のものなどが好ましく用いられる。
また、前記酒粕は、清酒等の醪を圧搾した後に残る固形物であり、種類については特に限定はなく、例えば、市販品等を使用すればよい。
前記米麹や本発明の添加剤で使用する麹菌の種類については、酒類又は食品の製造に用いるものであればよく、特に限定はない。例えば、ムコール ルーキシイ(Mucor rouxii)、リゾプス ジャバニクス(Rhozopus javanicus)、リゾプス デレマー(Rhizopus delemar)、アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)、モナスカス パープリウス(Monascus purpureus)、モナスカス アンカ(Monascus anka)等を挙げることができる。麹菌の形態は、固体麹では胞子を原料である米飯に接種すればよく、液体麹では胞子又は菌糸のどちらを用いてもよい。用いる麹菌の菌株は1種又は2種以上の混合菌株のどちらでもよい。
また、麹菌としては、市販の清酒用種麹を使用してもよい。例えば、株式会社ビオック製「黒版もやし」、株式会社菱六製「菱六モヤシ」、日本醸造工業株式会社製「丸福もやし」、株式会社樋口松之助商店製「ヒグチモヤシ」などが挙げられるが、特に限定はない。
麹菌の接種量は特に限定はなく、培養条件下で用いる菌株の増殖速度を考慮して適宜選択すればよい。
本発明に用いる乳酸菌の種類には特に限定はないが、ラクトバチルス(Lactobacillus、以下、L.と略記する)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等に属するものを挙げることができる。これらの中でもラクトバチルス属に属するものがより好ましく、この例として、ラクトバチルス サケイ(L.sakei)、ラクトバチルス ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス ブルガリカス(L. bulgaricus)、ラクトバチルス デルブリッキ(L. delbrueckii)、ラクトバチルス レイヒマニー(L. leichmannii)、ラクトバチルス プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルスラクティス(L. lactis)、ラクトバチルス ヘルベティカス(L.helveticus)、ラクトバチルス アシドフィラス(L. acidophilus)、ラクトバチルス カゼイ(L. casei)、及びラクトバチルス ファーメンタム(L. fermentum)等を挙げることができる。用いる乳酸菌の菌株は1種又は2種以上の混合菌株のどちらでもよい。
また、乳酸菌としては、市販の清酒用乳酸菌を使用してもよい。乳酸菌の接種量は特に限定はなく、培養条件下で用いる菌株の増殖速度を考慮して適宜選択すればよい。
本発明の添加剤は、前記甘酒中で麹菌と乳酸菌とを培養させた麹菌および乳酸菌の培養物を主成分として含有する。
前記麹菌および前記乳酸菌の培養物とは、例えば、麹菌を用いて作製した甘酒と乳酸菌とを混合し、培養した培養物、甘酒に麹菌および乳酸菌を混合して培養した培養物、これらの培養物に水を添加した液状物などが挙げられる。
前記麹菌および前記乳酸菌を培養する方法としては、撹拌培養、振とう培養、静置培養などが挙げられるが、特に限定はない。
例えば、甘酒の製造において麹菌を含む甘酒をまず作製し、これに乳酸菌を添加して、所定の温度・時間で撹拌、振とう、静置などをしながら麹菌および乳酸菌を培養してもよい。培養麹菌および乳酸菌の培養物を作製するための培養温度としては、麹菌および乳酸菌が死滅しない温度条件であればよいが、例えば、麹菌の一般的な生育温度は25〜30℃、乳酸菌の一般的な生育温度は15〜37℃であることから、前記所定のフェノール濃度にまで、麹菌および乳酸菌の両方を効率よく培養する観点から、15〜37℃であればよい。
前記の麹菌および乳酸菌の培養は、これらの培養物のフェノール濃度が750μM以上になるまで行う。
本発明において、フェノールは甘酒中で培養されている麹菌から産生される成分であると考えられ、フェノール濃度が750μM以上に調整されていることは、甘酒中の麹菌の状態が本発明の効果を得るために必要な培養状態になっていることを示す。
前記のように培養物のフェノール濃度が750μM以上になるまで培養を行うことで、本発明の添加剤中のフェノール濃度も750μM以上に調整することができる。
前記フェノール濃度の上限値については、特に限定はない。
なお、前記フェノール濃度が750μM未満である場合、麹菌の培養が十分とはいえず、清酒の苦味低減作用も十分とならないおそれがある。
前記フェノール濃度の測定方法としては、フェノール測定用キット「フェノール−テストワコー」(和光純薬工業(株))を用いて行うことができる。
前記フェノール濃度を調整するための培養時間については、甘酒中における麹菌、乳酸菌の量および甘酒の組成によって、一概に限定できない。
例えば、後述の実施例に記載のように、乳酸菌を接種する前の麹菌を含む甘酒中のフェノール濃度は、400μM程度であり、この甘酒に乳酸菌を接種して24時間培養することで、フェノール濃度を850μM以上に増加させることができる。
また、本発明の添加剤では、乳酸濃度(L−乳酸とD−乳酸の合計濃度)が35μM以上に調整されていることが好ましい。
本発明の添加剤において、L−乳酸、D−乳酸などの乳酸は、甘酒中で培養された乳酸菌から主に産生される成分であると考えられ、L−乳酸およびD−乳酸の合計濃度が35μM以上に調整されていることは、甘酒中の乳酸菌の状態が本発明の効果を得るために必要な培養状態になっていることを示す。
前記のように培養物の乳酸濃度が35μM以上になるまで培養を行うことで、本発明の添加剤中の乳酸濃度も35μM以上に調整することができる。
前記乳酸濃度の上限値については、特に限定はない。
前記フェノール濃度を調整するための培養時間については、甘酒中における麹菌、乳酸菌の量および甘酒の組成によって、一概に限定できない。
例えば、後述の実施例の場合、乳酸菌を接種する前の麹菌を含む甘酒中の乳酸濃度は、8μM程度であり、この甘酒に乳酸菌を接種して24時間培養することで、乳酸濃度が35μM以上に増加させることができる。
前記乳酸濃度の測定方法としては、乳酸測定用キット「F−キットD−乳酸/L−乳酸(J.K.インターナショナル製)を用いて行うことができる。
また、本発明の添加剤は、例えば、前記培養物のみからなるものでもよいが、前記培養物から水分を除去した固形物または乾燥物、あるいは前記培養物を水などの液体で希釈したものなども含まれる。
本発明の添加剤を固形物または乾燥物である場合、この固形物または乾燥物に水に添加した液状物中のフェノール濃度が750μM以上であればよい。
また、本発明の添加剤は、必要に応じて、カゼインペプトン、肉エキス 、酵母エキス、クエン酸三アンモニウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム 7 水和物、硫酸マンガン4 水和物、リン酸二カリウム、ブドウ糖(グルコース)、Tween 80などの任意成分を含有してもよい。
前記任意成分の含有量は、本発明の効果に影響を与えない程度であればよく、特に限定はない。
2.清酒の製造方法
本発明の清酒の製造方法(以下、本発明の製造方法)は、
麹菌を含む甘酒と乳酸菌とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌とを培養させた培養物を作製する工程(以下、添加剤作製工程)、ならびに
前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに仕込んで醪を作製する工程(以下、醪作製工程)
を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法では、前記添加剤作製工程および前記醪作製工程以外は、公知の酒母を用いる清酒の製造方法と同じように、公知の一般的な工程に従って清酒を製造すればよい。
すなわち、玄米を精米し(精米)、前記精米した白米を洗う洗米して蒸し(蒸米)、前記蒸米に麹菌を植菌して米麹を作製し(製麹)、前記蒸米に酵母や必要に応じて乳酸を添加して酒母を作製し(酒母)、前記米麹、酒母、蒸米および水を仕込んで醪を作製し(仕込み)、得られた醪を上槽して清酒と酒粕とを分けることで(上槽)、清酒を製造することができる。
本発明の製造方法では、前記添加剤作製工程で別途作製した本発明の添加剤を、前記仕込みの工程において、前記添加剤を米麹、酒母、蒸米および水とともに仕込むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法の特徴である前記添加剤作製工程および前記醪作製工程について説明する。
前記添加剤作製工程では、本発明の添加剤を作製する。
本工程で用いる麹菌を含む甘酒および乳酸菌については、前記の本発明の添加剤で使用されるものと同じである。
前記麹菌を含む甘酒と前記乳酸菌とを混合する手法としては、麹菌を含む甘酒に乳酸菌を接種して混合してもよいし、乳酸菌は別途培養した状態の物でもよいし、特に限定はない。
麹菌および乳酸菌は甘酒中で培養する。培養方法としては、静置培養、撹拌培養、振とう培養などが挙げられるが、特に限定はない。
例えば、甘酒の製造において麹菌を含む甘酒を撹拌しながら、これに乳酸菌を添加して、撹拌を続ける方法で培養してもよい。
培養条件としては、15〜37℃で24〜72時間程度であればよいが、培養方法や培養のスケールに応じて調整すればよく、特に限定はない。
また、必要に応じて、麹菌および乳酸菌を含む甘酒には、撹拌培養などを行う場合、撹拌し易いように、水を添加してもよい。
前記の麹菌および乳酸菌の培養は、これらの培養物のフェノール濃度が750μM以上になれば終了する。
得られた培養物は、そのまま醪作製工程で使用すればよい。なお、前記培養物は、水分を除去した固形物または乾燥物としておいてもよい。
前記培養物の固形物または乾燥物を醪作製工程で使用する場合には、前記培養物の固形物または乾燥物を水と混合した液状物として使用すればよい。
前記醪作製工程では、前記添加剤作製工程で得られた培養物(本発明の添加剤)を、米麹、酒母、蒸米および水とともに仕込んで醪を作製する。
前記米麹は、蒸した米に麹菌の胞子をふりかけて生育したものであり、米のデンプンをブドウ糖に糖化させたものをいう。
前記米麹は、公知の製麹の手法で作製されたものであればよく、特に限定はない。
酒母は、酒税法3条24項に規定されるものであればよく、例えば、協会系酵母を大量に培養したものであり、もととも呼ばれる。前記酒母としては、生もと、山廃もとなどの生もと系または速醸もとなどの速醸系のいずれでもよい。
蒸米は、清酒の米麹に使用される蒸米であればよく、米の種類、状態、作製方法などについて特に限定はない。
前記米麹、酒母および蒸米は、水とともに仕込みをされる。仕込みの手法としては、公知の手法であればよく、特に限定はない。例えば、仕込みタンクにおいて、初添、仲添、留添などの3段にわけて段階的に仕込んでいく手法が挙げられる。また、必要に応じて、4段階以上に仕込みの回数を増やしてもよい。
本発明の製造方法では、前記段仕込みのいずれかのタイミングで、前記添加剤作製工程で得られた培養物(本発明の添加剤)を仕込めばよい。例えば、初添、仲添、留添のいずれかのタイミングで仕込んでもよいし、留添後に仕込んでもよい。
ただし、前記培養物を仕込むタイミングが早いほど、清酒の苦味の低減効果が得られやすいという利点がある。
前記培養物(本発明の添加剤)の仕込む量としては、特に限定はない。例えば、仕込み量として、米麹、酒母および蒸米および水の合計量100重量部に対して、前記培養物(本発明の添加剤)0.5重量部以上であればよく、上限については醪を作製するのに影響がない量であればよい。
前記仕込みを行って醪を作製する際の温度条件などについては、通常の条件と同じであればよい。
本工程において醪とは、酒税法3条25項に規定するものであればよい。
本発明の製造方法において、得られた醪は上槽を行って清酒の原酒を作製する。
前記原酒は、アルコール度数が18〜19%前後のものであればよい。
本発明の製造方法においては、前記原酒に火入れを行って清酒を得ることができる。例えば、前記原酒に対して火入れを行い、貯蔵後に、ろ過などをして一般清酒としてもよいし、前記原酒に対して火入れを行わずに、貯蔵後後に、ろ過などをして生貯蔵酒にしてもよいし、前記原酒に対して火入れおよび貯蔵せずに、ろ過、ろ過などをして生酒としてもよい。また、必要に応じて、加水を行ってアルコール度数を調整してもよい。
なお、本発明の製造方法では、上記の方法以外にも、原料として、酒税法3条7号ロやハに規定する清酒かす、その他政令で定める物品を原料として発酵させてこしたものをも使用することができる。
3.清酒
本発明の製造方法で得られる清酒は、苦味が抑えられた清酒となっており、
苦味アミノ酸であるL−チロシンの濃度と乳酸との濃度の比率(L−チロシン濃度/(L−乳酸濃度 + D−乳酸濃度))が60以下であり、L−チロシンとフェノールとの濃度の比率(L−チロシン濃度/フェノール濃度)が1.5以下に調整されている。
本発明では、L−チロシンの濃度が乳酸の濃度およびフェノールの濃度に対して、それぞれ上記の範囲以下に調整されていることで、清酒における苦味が顕著に抑えられ、その結果、吟醸酒のような香りを伴ったフルーティーな風味となる。
前記L−チロシン濃度/(L−乳酸濃度 + D−乳酸濃度)またはL−チロシン濃度/フェノール濃度の比率が前記所定値よりも高くなることは、清酒における苦味低減作用が十分でないことを示す。
例えば、前記L−チロシン濃度/(L−乳酸濃度 + D−乳酸濃度)が60を超えていたり、L−チロシン濃度/フェノール濃度が1.5を超えていたりすると、清酒における苦味が感じられるようになる。
前記L−チロシン濃度の測定方法としては、各分析試料を水で希釈後、含有アミノ酸をo-フタルアルデヒド(OPA)とN−アセチル−L−システイン(NAC)と反応させ、蛍光キラル誘導体にして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行うことができる。
なお、本発明の清酒では、一般的な乳酸菌を使用するため、γ−アミノ酪酸濃度が60mg/mL以下となっている。
前記γ−アミノ酪酸濃度の測定方法としては、各分析試料を水で希釈後、含有アミノ酸をo-フタルアルデヒド(OPA)とN−アセチル−L−システイン(NAC)と反応させ、蛍光キラル誘導体にして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行うことができる。
4.清酒の苦味低減方法
本発明の清酒の苦味低減方法(本発明の苦味低減方法)は、
清酒の製造工程において、
麹菌を含む甘酒と乳酸菌とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌とを培養させた培養物を作製する工程(以下、添加剤作製工程)、ならびに
前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに仕込んで醪を作製する工程(以下、醪作製工程)
を含むことを特徴とする。
本発明の苦味低減方法を用いることにより、清酒の苦味を低減することができる。
苦味が低減することは、後述の実施例に記載するように、本発明の添加剤を使用せずに醪を作製し、これを上槽して得られる清酒の風味と比較することで判別できる。
なお、本発明の苦味低減方法は、前記の本発明の清酒製造方法と特徴となる工程が同じであるため、説明を省略する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
(実施例1:清酒の苦味低減用添加剤の作製)
以下の手順で清酒の苦味低減用添加剤を作製した。
公知の手法に準じて、原料米である玄米(品種:山田錦)を精米し(精米歩合:72%)、前記精米した白米を洗う洗米して蒸して蒸米を得た。次いで、前記蒸米に麹菌を植菌し、静置状態で55〜60℃で6時間、糖化を行い、甘酒を作製した。
前記甘酒に乳酸菌を添加し、28〜30℃で24時間撹拌しながら、甘酒中で麹菌と乳酸菌との培養を行った。
また、前記培養物から計時的にサンプリングして、培養物中のフェノール濃度および乳酸濃度を測定した。
フェノール濃度は、フェノール測定用キット「フェノール−テストワコー」(和光純薬工業(株))を用いて行った。
乳酸濃度は、L−乳酸およびD−乳酸の合計量を、乳酸測定用キット「F−キットD−乳酸/L−乳酸(J.K.インターナショナル製)を用いて行った。
使用した甘酒の段階(段階1)、甘酒に乳酸菌を植菌した段階(段階2)、甘酒中で麹菌と乳酸菌とを24時間培養した培養物の段階(段階3)における前記フェノール濃度および乳酸濃度を表1に示す。
(比較例1)
表1に示す仕込配合で酒母(もと)、初添、仲添、及び留添の仕込を行い、9〜16℃で約20日撹拌して醪を作製し、得られた醪を上槽して清酒の原酒を得た後、火入れをして清酒Aを得た。
なお、各仕込みの段階における温度、時間の設定、上槽、火入れ、貯蔵については常法に従って行った。
また、原料米である玄米(品種名「あけぼの」)を精米し(精米歩合:72%)、前記精米した白米を洗う洗米し蒸して蒸米を得た。
米麹に使用した麹菌としては、純米酒用麹菌「黒版もやし」を使用した。
また、酒母は、蒸米、米麹、水に加えて、酵母、乳酸を添加してもと立てをし、中温速醸8日で仕上げをした速醸系酒母を用いた。
Figure 0006980189
(比較例2)
株式会社三光正宗製の山廃純米酒(原料米「雄町」)を用意した(清酒B)。
(実施例2)
原料米に玄米(品種「山田錦」)を用い、初添2日目に実施例1で得られた清酒の苦味低減用添加剤を添加した以外は、比較例1と同様にして清酒Cを得た(アルコール度数:約18.5%)。表2に、清酒Cの仕込配合を示す。
Figure 0006980189
(試験例)
実施例2において、清酒Cを製造するまでの段階1〜3:
段階1:甘酒、
段階2:甘酒に乳酸菌を植菌した段階
段階3:甘酒中で麹菌と乳酸菌とを24時間培養した培養物
に加えて、下記段階4〜8:
段階4:酒母
段階5:酒母、蒸米、米麹、水および添加剤の混合物
段階6:醪
段階7:原酒
段階8:火入れ後に貯蔵した清酒
におけるフェノール濃度、乳酸濃度およびL−チロシン濃度を測定した。
次いで、各さらにL−チロシン濃度/(L−乳酸濃度 + D−乳酸濃度)、L−チロシン濃度/フェノール濃度の比率を算出した。
また、比較例1の清酒A、比較例2の清酒Bについても、上記指標を測定して、算出した。以上のようにして得られた各段階の結果を表3に示す。
また、比較例1の清酒A、比較例2の清酒Bおよび実施例2の清酒Cについて、国税局で清酒の鑑定評議を行っているパネラー1名により、苦味の強度を調べる官能試験を行い、「×」:強い、「△」:やや強い、「○」:普通の3段階で評価した。これらの結果を表3に示す。
表3に示す結果より、甘酒(段階1)および甘酒に乳酸菌を植菌した直後(段階2)に比べて、甘酒中で麹菌および乳酸菌を培養した添加剤(段階3)は、フェノール濃度が886μMと約2倍以上に増加しており、さらに、乳酸濃度(L−乳酸 + D−乳酸濃度)が43μMと約5倍以上に増加していた。
前記添加剤を仕込んで得られた実施例2の清酒Cでは、L−チロシン濃度/(L−乳酸 + D−乳酸濃度)の比率が「47」であり、前記添加剤を使用していない比較例1の清酒Aの前記比率「123」と比べて顕著に低減されていた。清酒CのL−チロシン濃度/(L−乳酸 + D−乳酸濃度)の比率は、比較例2の清酒Bと比べても低い値であった。
また、実施例2の清酒Cでは、L−チロシン濃度/フェノール濃度の比率が「1.27」であり、前記添加剤を使用していない比較例1の清酒Aの前記比率「3.50」と比べると顕著に低減されていた。清酒CのL−チロシン濃度/フェノール濃度の比率は、比較例2の清酒Bと比べても低い値であった。
また、実施例2の清酒Cは、比較例1の清酒Aと比べると、苦味が顕著に低減されたものであった。実施例2の清酒Cは、山廃仕込みの比較例2の清酒Bと比べても、苦味が有意に低減されたものであった。
また、比較例1の清酒A、比較例2の清酒Bおよび実施例2の清酒Cについて、国税局で清酒の鑑定評議を行っているパネラー1名により、吟醸香の有無を調べる官能試験を行い、「○」:有り、「×」:無しの2段階で評価した。これらの結果を表3に示す。
実施例2の清酒Cは、比較例1の清酒A、比較例2の清酒Bでは感じられない、おだやかで落ち着いた吟醸酒様の香りを伴ったフルーティーな風味を感じることができ、しかもさわやかで飲みやすい清酒であった。
以上のことから、実施例1で得られた添加剤を用いることで、清酒の苦味を顕著に低減できることがわかる。
また、実施例1で得られた添加剤を用いることで製造した実施例2の清酒Cは、吟醸作りを行っていないのにも関わらず、吟醸酒様の香りを伴っていた点で、実施例1で得られた添加剤により、従来の清酒製造では得られなかった意外で、顕著な効果が奏されていると考える。
Figure 0006980189

Claims (4)

  1. 清酒の醪を作製するための初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で添加するための清酒の苦味低減用添加剤であって、
    甘酒中で麹菌と乳酸菌とを培養させた麹菌および乳酸菌の培養物を主成分として含有してなり、かつ、フェノール濃度が750μM以上であり、
    前記乳酸菌がラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)である清酒の苦味低減用添加剤。
  2. 麹菌を含む甘酒と乳酸菌であるラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌とを培養させた培養物を作製する工程、ならびに
    前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに、初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で仕込んで醪を作製する工程
    を含む、清酒の製造方法。
  3. 前記清酒中のγ−アミノ酪酸濃度が60mg/mL以下である請求項2に記載の清酒の製造方法。
  4. 清酒の製造工程において、
    麹菌を含む甘酒と乳酸菌とを混合し、フェノール濃度が750μM以上になるまで麹菌および乳酸菌であるラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)とを培養させた培養物を作製する工程、ならびに
    前記培養物を、米麹、酒母、蒸米および水とともに、初添、仲添又は留添のいずれかの仕込みの段階で仕込んで醪を作製する工程
    を含む、清酒の苦味低減方法
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