以下、添付図1〜図27を参照して本発明の好適な第1〜第3実施形態について、詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の縮尺等は説明のため適宜変更し、また、構造が理解しやすいように一部を模式的に示している。
[各実施形態の特徴]
第1実施形態は、本発明の基本構成であり、2コイルステップモータによって外部磁界を検出し、外部磁界に応じて駆動パルスを選択してステップモータを駆動することを特徴とする。
第2実施形態は、2コイルステップモータを複数備え、複数のステップモータによって検出した外部磁界に応じて駆動パルスを選択してステップモータを駆動することを特徴とする。
第3実施形態は、1コイルステップモータによって外部磁界を検出し、外部磁界に応じて駆動パルスを選択してステップモータを駆動することを特徴とする。
[第1実施形態]
[第1実施形態のステップモータ構成機構の構成説明:図1]
第1実施形態のステップモータ駆動機構の構成について、図1を用いて説明する。図1に示すように、ステップモータ駆動機構1は、基準信号P1を出力する発振回路2、基準信号P1を入力して各回路を制御する制御信号CN1〜CN3等を出力する制御回路3、一つのロータ21と二つのコイルA、Bを有する2コイルステップモータ20(以下、「モータ20」という)、モータ20に駆動パルスを供給する駆動回路10、駆動回路10からの誘起パルス信号CSを入力する判定回路4等によって構成される。
駆動回路10は、破線で囲った回路構成であり、制御信号CN1を入力して駆動パルスSPを出力する駆動パルス発生回路11、制御信号CN2を入力して所定位置パルスAPを出力する所定位置パルス発生回路12、駆動パルスSPと所定位置パルスAPを入力してモータパルスMPを出力するパルス選択回路13、制御信号CN3を入力して誘起電流検出パルスCPを出力する検出パルス発生回路14、モータパルスMPと誘起電流検出パルスCPを入力してモータ駆動パルスO1〜O4をモータ20に供給するドライバ回路15、モータ駆動パルスO1〜O4と誘起電流検出パルスCPを入力して誘起パルス信号CSを出力する誘起電流検出回路16などによって構成される。
判定回路4は、誘起電流検出回路16からの誘起パルス信号CSを入力し、内部で所定の閾値Vthと比較して、その比較結果を検出信号DSとして制御回路3へ出力する。この判定回路4は、図示しないが、電源電圧の約1/2が閾値VthとなるC−MOSのインバータ回路等でもよい。また、この閾値Vthを可変にして、誘起パルス信号CSに対する検出感度を調整できる回路を採用してもよい。
なお、誘起パルス信号CSと検出信号DSは、それぞれ4つの信号(誘起パルス信号CS1〜CS4、検出信号DS1〜DS4)で構成されるが、まとめて表す場合は誘起パルス信号CS、検出信号DSと称する。
[ドライバ回路と誘起電流検出回路の回路構成の説明:図2]
次に、モータ20を駆動するドライバ回路15と、モータ20のロータ21の動きから外部磁界による誘起電流を検出する誘起電流検出回路16の回路構成の一例について、図2を用いて説明する。
図2に示すように、ドライバ回路15は、合計4つのバッファ回路によって構成される。すなわち、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路は、モータ駆動パルスO1を出力してモータ20のコイルAのコイル端子O1に接続される。
また同様に、低ON抵抗のトランジスタP2とトランジスタN2とでなるバッファ回路は、モータ駆動パルスO2を出力してコイルAのコイル端子O2に接続される。
また同様に、低ON抵抗のトランジスタP3とトランジスタN3とでなるバッファ回路は、モータ駆動パルスO3を出力してモータ20のコイルBのコイル端子O3に接続される。
また同様に、低ON抵抗のトランジスタP4とトランジスタN4とでなるバッファ回路は、モータ駆動パルスO4を出力してコイルBのコイル端子O4に接続される。
各トランジスタP1〜P4、N1〜N4のゲート端子Gは、図示しないが、パルス選択回路13(図1参照)からのモータパルスMPを入力してON/OFF制御され、コイルA、コイルBにモータ駆動パルスO1〜O4を供給する。
次に、誘起電流検出回路16は、4組のPチャンネルMOSトランジスタTP1〜TP4(以下、「トランジスタTP1〜TP4」という)と検出抵抗R1〜R4とを有している。トランジスタTP1のソース端子Sは電源VDDに接続され、トランジスタTP1のドレイン端子Dは検出抵抗R1の一方の端子に接続され、検出抵抗R1の他方の端子は、コイルAのコイル端子O1に接続される。
また、トランジスタTP2のソース端子Sは電源VDDに接続され、トランジスタTP2のドレイン端子Dは検出抵抗R2の一方の端子に接続され、検出抵抗R2の他方の端子は、コイルAのコイル端子O2に接続される。
また、トランジスタTP3のソース端子Sは電源VDDに接続され、トランジスタTP3のドレイン端子Dは検出抵抗R3の一方の端子に接続され、検出抵抗R3の他方の端子は、コイルBのコイル端子O3に接続される。
また、トランジスタTP4のソース端子Sは電源VDDに接続され、トランジスタTP4のドレイン端子Dは検出抵抗R4の一方の端子に接続され、検出抵抗R4の他方の端子は、コイルBのコイル端子O4に接続される。
また、4つの検出抵抗R1〜R4とモータ20のコイル端子O1〜O4の接続点は、誘起パルス信号CS1〜CS4として判定回路4(図1参照)に入力される。なお、誘起パルス信号CSの詳細は後述する。
また、ドライバ回路15が出力する4つのモータ駆動パルスO1〜O4は、モータ20のコイルA、Bのそれぞれのコイル端子O1〜O4に接続されるが、説明を分かりやすくするために、各モータ駆動パルスと各コイル端子は共通の符号とする。
[第1実施形態の2コイルステップモータの概略説明:図3]
次に、第1実施形態及び後述する第2実施形態で使用する2コイルタイプのモータ20の概略構成について、図3を用いて説明する。なお、2コイルステップモータの構成は公知であるが、本発明を理解する上で必要であるので以下概略を説明する。
図3に示すように、モータ20は、ロータ21、ステータ22、ロータ21に磁界を印加する二つのコイルA、コイルBなどによって構成される。ロータ21は2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極が着磁されている。
ステータ22は、コイルA、Bによって発生した磁界をロータ21に誘導する機能を有している。ステータ22は、軟磁性材によって成り、ロータ21が挿入されるロータ穴22dが設けられ、このロータ穴22dにロータ21が配置されている。
ステータ22は、ロータ21に略対向して第1のステータ磁極部22a(以下、「第1磁極部22a」という)と第2のステータ磁極部22b(以下、「第2磁極部22b」という)が設けられている。また、第1磁極部22aと第2磁極部22bの間にあってロータ21と向き合う位置に第3のステータ磁極部22c(以下、「第3磁極部22c」という)が設けられている。
また、第1のコイルであるコイルAは、第1磁極部22aと第3磁極部22cとを磁気的に結合し、第2のコイルであるコイルBは、第2磁極部22bと第3磁極部22cとを磁気的に結合する。
コイルAは絶縁基板23a上にコイル端子O1、O2を有しており、コイルAの巻線の両端が接続されている。また、コイルBは絶縁基板23b上にコイル端子O3、O4を有しており、コイルBの巻線の両端が接続されている。この各コイル端子O1〜O4に、前述したドライバ回路15から出力されるモータ駆動パルスO1〜O4がそれぞれ供給される。
また、図3で示すロータ21は静止状態であり、図面の上方を0度と規定し、その位置から反時計回りに90度、180度、270度と規定する。ロータ21は、N極が0度に位置するときと、180度に位置するときが静止位置(静的安定点)である。よって、図3で示すロータ21は、N極が静止位置0度にある。
[ステップモータの基本動作の説明:図4、図5]
次に、2コイルステップモータの駆動動作は公知であるが、本発明を理解する上で必要であるので、モータ20を駆動するモータ駆動パルスの一例と、モータ20の回転動作の概要について、図4と図5を用いて説明する。なお、以降の説明でのモータ20の各符号及びロータ21の静止位置は図3に準じる。
まず、ロータ21のN極が静止位置0度から逆転(反時計回り)するときのモータ駆動パルスO1〜O4とロータ21の回転動作について、図4を用いて説明する。図4(a)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置0度から逆転するためのモータ駆動パルスO1〜O4の波形であり、図4(b)は、ロータ21のN極が静止位置0度である状態を示し、図4(c)〜図4(e)は、モータ駆動パルスO1〜O4によるロータ21の回転
動作を示している。
図4(a)に示すように、ロータ21のN極が静止位置0度のとき、モータ駆動パルスO1〜O4は、ロータ21を1ステップ(180度)逆転させるために三つの分割駆動パルスSP11、SP12、SP13で構成される。分割駆動パルスSP11、SP12、SP13の電位は、0V(VDD)と−V(たとえば−1.5V)で構成される。
この分割駆動パルスSP11〜SP13をモータ20のコイルA、コイルBに順次供給する。まず、分割駆動パルスSP11を供給すると、コイルAのコイル端子O1は−V、コイル端子O2は0V、コイルBのコイル端子O3、O4は共に0Vとなる。これにより、コイルAのO2からO1に駆動電流が流れ、コイルBには駆動電流が流れない。
その結果、図4(c)に示すように、コイルAに磁束が発生して(左向き矢印)、第1磁極部22aがS極、第3磁極部22cがN極に磁化される。また、コイルBには磁束が発生しないので、第2磁極部22bは、第3磁極部22cと同じN極となる。それにより、ロータ21のN極と第1磁極部22aのS極が引き合って、ロータ21は反時計回りに約60度回転する。
次に、モータ20に分割駆動パルスSP12を供給すると、コイルAのコイル端子O1、O2は共に0Vになり、コイルBのコイル端子O3は−V、O4は0Vとなる。これにより、コイルAには駆動電流が流れず、コイルBのO4からO3に駆動電流が流れる。
その結果、図4(d)に示すように、コイルBに磁束が発生して(右向き矢印)、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化される。また、コイルAには磁束が発生しないので、第1磁極部22aは、第3磁極部22cと同じS極となる。それにより、ロータ21のN極と第1磁極部22a、第3磁極部22cのS極が引き合って、ロータ21は反時計回りにさらに約60度回転する。
次に、モータ20に分割駆動パルスSP13を供給すると、コイルAのコイル端子O1は0V、コイル端子O2は−Vになり、コイルBのコイル端子O3は−V、O4は0Vとなる。これにより、コイルAのO1からO2に駆動電流が流れ、コイルBのO4からO3に駆動電流が流れる。
その結果、図4(e)に示すように、コイルAとコイルBの両方に同じ向きの磁束が発生して(共に右向きの矢印)、第1磁極部22aと第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化される。それにより、ロータ21のN極と第3磁極部22cのS極が引き合って、ロータ21は反時計回りにさらに約60度回転し、ロータ21は、静止位置0度(図4(b)参照)から180度(1ステップ)逆回転し、ロータ21のN極は静止位置180度になる。
次に、ロータ21のN極が静止位置180度から更に逆転(反時計回り)するときのモータ駆動パルスO1〜O4とロータ21の回転動作について、図5を用いて説明する。図5(a)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置180度から逆転するためのモータ駆動パルスO1〜O4の波形であり、図5(b)は、ロータ21のN極が静止位置180度である状態を示し、図5(c)〜図5(e)は、モータ駆動パルスO1〜O4によるロータ21の回転動作を示している。
図5(a)に示すように、ロータ21のN極が180度のとき、モータ駆動パルスO1〜O4は、ロータ21を1ステップ(180度)逆転させるために三つの分割駆動パルスSP21、SP22、SP23で構成される。分割駆動パルスSP21、SP22、SP
23の電位は、0V(VDD)と−V(たとえば−1.5V)で構成される。
この分割駆動パルスSP21〜SP23をモータ20のコイルA、コイルBに順次供給する。まず、分割駆動パルスSP21を供給すると、コイルAのコイル端子O1は0V、コイル端子O2は−V、コイルBのコイル端子O3、O4は共に0Vとなる。これにより、コイルAのO1からO2に駆動電流が流れ、コイルBには駆動電流が流れない。
その結果、図5(c)に示すように、コイルAに磁束が発生して(右向き矢印)、第1磁極部22aがN極、第3磁極部22cがS極に磁化される。また、コイルBには磁束が発生しないので、第2磁極部22bは、第3磁極部22cと同じS極となる。それにより、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合って、ロータ21は反時計回りに約60度回転する。
次に、モータ20に分割駆動パルスSP22を供給すると、コイルAのコイル端子O1、O2は共に0Vになり、コイルBのコイル端子O3は0V、O4は−Vとなる。これにより、コイルAには駆動電流が流れず、コイルBのO3からO4に駆動電流が流れる。
その結果、図5(d)に示すように、コイルBに磁束が発生して(左向き矢印)、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化される。また、コイルAには磁束が発生しないので、第1磁極部22aは、第3磁極部22cと同じN極となる。それにより、ロータ21のS極と第1磁極部22a、第3磁極部22cのN極が引き合って、ロータ21は反時計回りにさらに約60度回転する。
次に、モータ20に分割駆動パルスSP23を供給すると、コイルAのコイル端子O1は−V、コイル端子O2は0Vになり、コイルBのコイル端子O3は0V、O4は−Vとなる。これにより、コイルAのO2からO1に駆動電流が流れ、コイルBのO3からO4に駆動電流が流れる。
その結果、図5(e)に示すように、コイルAとコイルBの両方に同じ向きの磁束が発生して(共に左向き矢印)、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化される。それにより、ロータ21のS極と第3磁極部22cのN極が引き合って、ロータ21は反時計回りにさらに約60度回転し、ロータ21は、静止位置180度(図5(b)参照)から180度(1ステップ)逆回転し、ロータ21のN極は元の静止位置0度になる。
なお、モータ20の正転駆動(時計回り)は、モータ駆動パルスO1〜O4の各分割駆動パルスの駆動電流の方向を変えることで実現できるが、よく知られているので説明は省略する。このように、2コイルステップモータは、三つの分割駆動パルスによって、逆転駆動と正転駆動が可能であり、逆転と正転の駆動が同一タイミングの駆動波形であるので、逆転と正転の駆動スピードが等しく、且つ、高速駆動ができる特徴を有する。
[外部磁界によって影響を受ける2コイルステップモータの説明:図6]
次に、図3〜図5を用いて説明したモータ20に対して、外部から磁界が加わった場合にロータ21の静止位置がどのように影響を受けるかについて、図6を用いて説明する。
図6(a)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置0度にある場合に、N極の外部磁界Nがモータ20に対して図面上で左方向から加わった場合のロータ21の位置を示している。
この場合、図6(a)に示すように、ロータ21のN極は、外部磁界Nに対して反発し
、ロータ21のS極は、外部磁界Nに対して引き合うので、ロータ21は図示するように、N極が静止位置0度から図面上で右方向に数十度の位置まで回転して静止する。
また、図6(b)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置180度にある場合に、外部磁界Nがモータ20に対して図面上で左方向から加わった場合のロータ21の位置を示している。
この場合、図6(b)に示すように、ロータ21のN極は、外部磁界Nに対して反発し、ロータ21のS極は、外部磁界Nに対して引き合うので、ロータ21は図示するように、N極が静止位置180度から図面上で右方向に数十度の位置まで回転して静止する。
また、図6(c)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置0度にある場合に、外部磁界Nがモータ20に対して図面上で右方向から加わった場合のロータ21の位置を示している。
この場合、図6(c)に示すように、ロータ21のN極は、外部磁界Nに対して反発し、ロータ21のS極は、外部磁界Nに対して引き合うので、ロータ21は図示するように、N極が静止位置0度から図面上で左方向に数十度の位置まで回転して静止する。
また、図6(d)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置180度にある場合、外部磁界Nがモータ20に対して図面上で右方向から加わった場合のロータ21の位置を示している。
この場合、図6(d)に示すように、ロータ21のN極は、外部磁界Nに対して反発し、ロータ21のS極は、外部磁界Nに対して引き合うので、ロータ21は図示するように、N極が静止位置180度から図面上で左方向に数十度の位置まで回転して静止する。なお、外部磁界Nの影響によるロータ21の回転角度は、外部磁界Nの磁界の強さに応じて変化することは当然である。
このように、モータ20に対して外部磁界Nが加わった場合、外部磁界Nの励磁方向とロータ21の極性によって、ロータ21に対する影響は、図6(a)〜図6(d)に示すように、4つのパターンがあることが理解できる。なお、第1実施形態においては、外部磁界Nが図面上の上下方向から加わる場合は想定しない。
[第1実施形態の外部磁界の検出動作についての説明:図7]
次に、モータ20を用いた外部磁界Nの検出動作について、図7を用いて説明する。なお、前述した外部磁界Nが影響する4つのパターンのうち、図6(a)で示したロータ21のN極が静止位置0度にあり、外部磁界Nが図面上の左方向から加わった場合を例として説明する。
図7(a)は、モータ20のロータ21のN極が静止位置0度にあるとき、外部磁界Nが図面上の左方向から加わった場合の状態を示している。図7(a)に示すように、ロータ21はN極が図面上で右方向に数十度の位置まで回転するので、ロータ21のN極から出た磁束Φは、N極に近接している第2磁極部22bを通る。この磁束Φを第2磁極部22b(コイルB側)に下向きの破線の矢印Φで示す。この第2磁極部22bを通過した磁束Φは、第1磁極部22aと第3磁極部22cに、ほぼ1/2ずつに分かれて通り、ロータ21のS極に至る。
第1磁極部22a(コイルA側)を通る磁束を上向きの破線の矢印−Φ/2として示し、第3磁極部22cを通る磁束を同じく、上向きの破線の矢印−Φ/2として示す。なお
、磁束の向きが図面上で下向きの場合は磁束をプラス(表記せず)とし、磁束の向きが図面上で上向きの場合は磁束をマイナス(表記“−”)とする。この磁束の表記は後述する図9でも同様である。
次に図7(b)は、外部磁界Nの有無を検出するために、コイルA、Bの両方に所定位置パルスAP(図示せず)を供給したときのロータ21の回転状態と各磁極に発生する磁束を示している。ここで、コイルA、Bに所定位置パルスAPが供給されると、第1磁極部22aと第2磁極部22bは共に、図示するように下向きの実線の矢印で示す磁束Φ/2が発生する。また、第3磁極部22cは、第1磁極部22aと第2磁極部22bの二つの磁束Φ/2を合わせた上向きの実線の矢印で示す磁束−Φが通過する。
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bはS極に励磁され、第3磁極部22cはN極に励磁される。この結果、ロータ21のN極は、外部磁界Nによって静止位置0度から右方向に数十度回転していたが(図7(a)参照)、所定位置パルスAPによってロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合い、ロータ21のS極は、第3磁極部22cのN極と引き合う。この磁極の引き合いによってロータ21は回転し、矢印で示すように、ロータ21のN極は所定位置である静止位置0度に戻る。
次に図7(c)は、所定位置パルスAPの供給が終了した後のロータ21の回転状態と各磁極に発生する磁束を示している。ここで、モータ20に影響する磁界は、再び、外部磁界Nのみとなるので、ロータ21は、外部磁界Nの影響を受けて図7(a)と同様に、N極が図面上で右方向に矢印で示すように数十度の位置まで回転する。
これにより、ロータ21のN極から出た磁束Φは、再びN極に近接している第2磁極部22bを通る。また、第2磁極部22bを通過した磁束Φは、第1磁極部22aと第3磁極部22cにほぼ1/2ずつに分かれて通り、それぞれ磁束−Φ/2となってロータ21のS極に至る。
このように、ロータ21のN極が所定位置の静止位置0度にある場合、左方向からの外部磁界Nが加わると、ロータ21は数十度右回転状態となるが、所定位置パルスAPの印加によって、ロータ21のN極は所定位置の静止位置0度に戻り、所定位置パルスAPの終了によって、再び外部磁界Nの影響で数十度右回転状態となるのである。この所定位置パルスAPの終了後に、ロータ21が再び外部磁界Nの影響で回転が戻る動きを検出することで、外部磁界Nの有無や励磁方向を判定することが本発明の特徴である。
なお、所定位置パルスAPを出力したときのロータ21の磁界方向(図7(b)参照)と、所定位置パルスAPを出力せず、且つ、外部磁界Nがない場合のロータ21の磁界方向(N極が静止位置0度:図3参照)が同一方向(平行)となるように、所定位置パルスAPを出力する。
また図示しないが、ロータ21のN極が静止位置180度にあるときは、所定位置パルスAPのコイルA、Bに対する電流方向を反転させて、所定位置パルスAPを出力したときのロータ21のN極が平行(すなわち、静止位置180度)になるようにする。このように、ロータ21の磁界方向(N極が0度または180度)に対応して所定位置パルスAPよるロータ21の磁界方向が平行となるようにすることで、所定位置パルスAP終了後のロータ21の回転から外部磁界Nを検出できるのである。
[誘起電流検出回路と判定回路による外部磁界の検出動作の説明:図8]
次に、前述の図7で示したモータ20による外部磁界Nの検出動作(ロータ21のN極
が静止位置0度、外部磁界Nが左からの場合)について、誘起電流検出回路16と判定回路4の視点から図8のタイミングチャートを用いて説明する。なお、図1の構成図、図2の回路図、図7の動作図を参考とする。
図8に示すように、外部磁界Nを検出するために、所定位置パルスAPが、所定のパルス幅でモータ20のコイルA、Bの両方に供給される。これにより、モータ20の各磁極が励磁され、ロータ21のN極は、所定位置の静止位置0度に一時的に戻される(図7(b)参照)。
所定位置パルスAPの供給が所定時間後のタイミングT1で終了すると、ロータ21は、外部磁界Nの影響を受けて再び右方向に数十度回転する(図7(c)参照)。このロータ21が再び外部磁界Nの影響を受けて回転することで、コイルAを通る磁束は、磁束Φ/2(図7(b)参照)から磁束−Φ/2(図7(c)参照)へと変化する。また、コイルBを通る磁束は、磁束Φ/2(図7(b)参照)から磁束Φ(図7(c)参照)へと変化する。
図8に示す誘起電流IC1は、コイルAの磁束Φ/2から磁束−Φ/2に変化する磁束によって誘起されたコイルAの誘起電流である。また、図8に示す誘起電流IC2は、コイルBの磁束Φ/2から磁束Φに変化する磁束によって誘起されたコイルBの誘起電流である。ここで、誘起電流IC1は、磁束の変化がΦ/2から−Φ/2であって、絶対値で磁束Φという大きな変化によって発生する。また、誘起電流IC2は、磁束の変化がΦ/2からΦであって、絶対値で磁束Φ/2という小さな変化によって発生する。また、コイルAとコイルBの磁束の変化の方向は反対である。
従って、図8に示すように、誘起電流IC1は、所定位置パルスAPの終了直後のタイミングT1からマイナス方向に大きく発生する。また、誘起電流IC2はプラス方向に小さく発生する。なお、破線で示すVthは、後述する判定回路4の閾値を表している。
一方、検出パルス発生回路14(図1参照)は、制御回路3からの制御信号CN3によって、タイミングT1の直後から、図8に示すように、誘起電流検出パルスCPを出力する。この誘起電流検出パルスCPは、たとえば、0.5mS毎に出力されるパルス幅が狭いサンプリングパルスである。この誘起電流検出パルスCPは、誘起電流検出回路16のトランジスタTP1〜TP4(図2参照)のそれぞれのゲートGに供給されて、検出抵抗R1〜R4が、誘起電流検出パルスCPのタイミングで、コイルA、Bの各コイル端子O1〜O4に接続するように動作する。
これにより、たとえば、図8で示すコイルAのコイル端子O2には、誘起電流検出パルスCPのタイミングで検出抵抗R2が接続される。また、同様に、図8で示すコイルBのコイル端子O3には、誘起電流検出パルスCPのタイミングで検出抵抗R3が接続される。
この動作によって、コイルAから誘起電流IC1が発生すると、誘起電流検出パルスCPのタイミングで検出抵抗R2に電流が流れて、コイル端子O2は、誘起電流IC1の大きさに応じたパルス状の電圧波形が生じる。同様に、コイルBから誘起電流IC2が発生すると、誘起電流検出パルスCPのタイミングで検出抵抗R3に電流が流れて、コイル端子O3は、誘起電流IC2の大きさに応じたパルス状の電圧波形が生じる。
このパルス状の電圧波形を誘起パルス信号CSと称し、各検出抵抗R1〜R4によって発生する電圧波形を誘起パルス信号CS1〜CS4と称する。すなわち、誘起パルス信号CS1〜CS4は、各検出抵抗R1〜R4が接続されるコイル端子O1〜O4からの信号
である(図2参照)。
判定回路4(図1参照)は、誘起パルス信号CS1〜CS4を入力し、内部に有する所定の閾値Vthと比較して、パルス状の誘起パルス信号CS1〜CS4が閾値Vthを超えたならば、検出信号DS1〜DS4を制御回路3に対して出力する。すなわち、検出信号DS1〜DS4は、4つの誘起パルス信号CS1〜CS4に対応した信号である。
図8に示す例では、前述したように、コイルAに発生する誘起電流IC1が大きいので、誘起電流検出パルスCPの2番目と3番目のタイミングで、誘起電流IC1は、判定回路4の閾値Vthを超えたことを示している。
これにより、誘起電流IC1の大きさに応じて発生するコイル端子O2からのパルス状の波形、すなわち、誘起パルス信号CS2は、誘起電流検出パルスCPの2番目と3番目のタイミングで、判定回路4の閾値Vthを超えた信号となる。
ここで、判定回路4の閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS2の頭に丸印を付け、閾値Vthを超えていない他の誘起パルス信号CS2の頭には×印を付けて、分かりやすく表現した。判定回路4は、前述したように、閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS2を入力すると、判定結果として図示するように、パルス状の検出信号DS2を誘起電流検出パルスCPのタイミングに同期して2つ出力する。
また、図8に示すように、コイルBに発生する誘起電流IC2は小さく、また、電流方向も反対なので、誘起電流IC2が判定回路4の閾値Vthを超えることはない。これにより、誘起電流IC2の大きさに応じて発生するコイル端子O3のパルス状の波形、すなわち、誘起パルス信号CS3は、閾値Vthを超えることがなく、誘起パルス信号CS3の頭はすべて×印となる。従って、判定回路4から検出信号DS3は出力されない。
制御回路3は、判定回路4からの検出信号DSを入力し、検出信号DSから外部磁界Nの状況を判定して駆動パルスSPを選択し、モータ20を駆動制御する。なお、モータ20の駆動動作の詳細は後述する。
このように、外部磁界Nの検出は、モータ20に所定位置パルスAPを供給した後に、二つのコイルA、Bで発生する誘起電流IC1、IC2を検出することで実行される。また、図7、図8で示した検出動作は、ロータ21のN極が静止位置0度で外部磁界Nが左からの場合を条件としたが、他の条件である図6(b)〜図6(d)の三つのパターンについても、誘起電流ICが発生するコイルや誘起電流ICの電流方向は異なるが、基本的な検出動作は同様であるので詳細な説明は省略する。
[外部磁界が存在しない場合の検出動作についての説明:図9]
次に、外部磁界が存在しない場合に、モータ20を用いた外部磁界の検出動作について、図9を用いて説明する。なお、説明の前提として、ロータ21のN極が静止位置0度にある場合とする。
図9(a)は外部磁界Nが存在しないときのモータ20のロータ21の位置を示している。ここで、外部磁界Nが存在しなければ、ロータ21は磁界の影響を受けないので、ロータ21のN極は静止位置0度にある。
次に図9(b)は、外部磁界Nの有無を検出するために、コイルA、Bに所定位置パルスAPを供給したときの、ロータ21の回転状態と各磁極に発生する磁束を示している。ここで、各磁極で発生する磁束は、前述した図7(b)と同様であるので説明は省略する
。
所定位置パルスAPによって、第1磁極部22aと第2磁極部22bはS極に励磁され、第3磁極部22cはN極に励磁される。この結果、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合い、ロータ21のS極は、第3磁極部22cのN極と引き合うので、図示するように、ロータ21のN極は静止位置0度の状態で動かない。
次に図9(c)は、所定位置パルスAPの供給が終了した後のロータ21の回転状態を示している。ここで、モータ20に影響する磁界は、外部磁界Nのみとなるが、外部磁界Nは存在しないので、ロータ21は回転せず、ロータ21のN極は静止位置0度に留まっている。
このように、外部磁界Nが存在しないか、ロータ21を回転させるほど強くない場合は、ロータ21のN極は静止位置0度、または180度(図5(b)参照)に留まるので、モータ20に所定位置パルスAPを供給しても、ロータ21が回転することがない。従って、図示しないが、コイルA、Bからの誘起電流IC1、IC2は共に発生せず、誘起パルス信号CSが判定回路4の閾値Vthを超えることがなく、検出信号DSは出力されない。
制御回路3は、判定回路4からの検出信号DSが入力されない場合は、外部磁界Nが存在しないと判定し、駆動パルス発生回路11を制御して通常の駆動パルスSPを選択してモータ20を駆動する。
[外部磁界の検出動作の条件についての説明:図10]
次に、モータ20に加わる外部磁界Nの検出動作のまとめについて、図10を用いて説明する。外部磁界Nの検出は、外部磁界Nの励磁方向とロータ21の極性から、前述の図6で示したように検出条件としては4つのパターンがある。しかし、外部磁界Nが存在しない場合もあるので、図10は外部磁界Nが存在しない条件も含めて、全ての検出条件をまとめて記述した表である。
図10に示すように、外部磁界Nは、モータ20に対して、左方向から加わる場合(図6(a)、図6(b))と、右方向から加わる場合(図6(c)、図6(d))、及び、外部磁界Nが存在しない(弱い)場合の3通りがある。
また、ロータ21の極性(磁界方向)は、N極が静止位置0度にある場合(図6(a)、図6(c))と静止位置180度にある場合(図6(b)、図6(d))の2通りがある。
ここで、コイルAによって外部磁界Nが検出され、ロータ21のN極が静止位置0度の場合は、外部磁界Nは左方向から加わっている。すなわち、前述した図7、図8で示した検出条件の場合である。また同様にコイルAによって外部磁界Nが検出され、ロータ21のN極が静止位置180度のときは、外部磁界Nは右方向から加わっている。
また、コイルBによって外部磁界Nが検出され、ロータ21のN極が静止位置0度のときは、外部磁界Nは右方向から加わっている。また同様にコイルBによって外部磁界Nが検出され、ロータ21のN極が静止位置180度のときは、外部磁界Nは左方向から加わっている。また、コイルA、Bの両方で検出できない場合は、ロータ21の極性に係わらず外部磁界Nは存在しない。
このように、本実施形態のモータ20は二つのコイルを有しており、二つのコイルが対となって誘起電流を検出することで、外部磁界Nの影響によるロータ21の回転状態を高精度に検出できる。
制御回路3は、モータ20を駆動制御しているので、ロータ21の極性、すなわち、N極が静止位置0度にあるか180度にあるかを常に把握している。従って、制御回路3は、外部磁界検出動作によって、コイルAとBのどちらに誘起電流ICが発生したのか、または、コイルAとBの両方で検出できなかったのかによって、図10で示すように外部磁界Nの有無と励磁方向を判断できるのである。
[外部磁界検出動作及びステップモータ駆動動作のフローチャートの説明:図11]
次に、第1実施形態のモータ20による外部磁界Nの検出動作フローと、外部磁界Nの検出結果に基づいて行うモータ20の駆動動作フローの概略を図11のフローチャートを用いて説明する。ステップモータ駆動機構1の構成は図1を参照する。なお、説明の前提として、本実施形態のステップモータ駆動機構1が、指針を有するアナログ式電子時計に組み込まれ、モータ20によって指針(図示せず)が時刻を表示する構成とする。
図11に示すように、ステップS1でステップモータ駆動機構1の制御回路3は、内部の計時カウンタ(図示せず)を参照して運針タイミングか否かを判定する。たとえば、秒を進める秒送りカウンタが“00”か否かを判定する。ここで、運針タイミングであれば(すなわち、秒送りカウンタが“00”で判定Y)、次のステップS2に進む。また、運針タイミングでなければ(判定N)、ステップS1を繰り返す。
次に、ステップS1で判定Yの場合、ステップS2で制御回路3は、制御信号CN2によって所定位置パルス発生回路12を制御して所定位置パルスAPを出力し、パルス選択回路13を経てドライバ回路15からモータ20に対して所定位置パルスAPを供給する。なお、所定位置パルスAPは、前述したように、所定位置パルスAPを出力していないときのロータ21の磁界方向と平行になる電流方向のパルスをコイルA、Bの両方に供給する。
具体的には、図9(b)の状態又は図9(b)の逆極性の印加状態である。
次に、ステップS3で制御回路3は、所定位置パルスAPの終了後、直ちに、検出パルス発生回路14を制御して誘起電流検出パルスCPを出力する。ドライバ回路15と誘起電流検出回路16は、誘起電流検出パルスCPを入力し、誘起電流検出パルスCPのタイミングでコイルA、Bからの誘起電流IC1、IC2を検出し、誘起パルス信号CS1〜CS4を出力する。
次に、ステップS4で判定回路4は、誘起パルス信号CS1〜CS4を入力し、所定閾値Vthと比較して、検出信号DS1〜DS4を出力する。制御回路3は、検出信号DS1〜DS4を入力して、コイルA、Bから誘起電流IC1、IC2が発生したか否か、すなわち、検出信号DS1〜DS4の有無を判定する。ここで、コイルA、Bから誘起電流が発生していれば(判定Y)、次のステップS5に進む。また、コイルA、Bから誘起電流が発生していなければ(判定N)、ステップS6に進む。
次に、ステップS4で判定Y(誘起電流あり)の場合、ステップS5で制御回路3は、外部磁界Nの励磁方向の判断を行う。この外部磁界Nの励磁方向の判断は、前述した図10に基づいて実行される。すなわち、誘起電流ICがコイルAとBのどちらで検出されたのかの情報と、制御回路3が把握しているロータ21の極性(磁界方向)の情報によって、検出された外部磁界Nの励磁方向が判断される。
次に、ステップS7で制御回路3は、ステップS5で判断された外部磁界Nの励磁方向が、ロータ21の回転方向に対して反発する方向か否かを判定する。ここで、反発する方向であれば(判定Y)で、次のステップS8に進む。また、反発しない方向(引き合う方向:判定N)であれば、ステップS9に進む。(外部磁界Nの励磁方向に対する駆動パルスについては、後述の図12〜16で説明する。)
次に、ステップS7で判定Y(反発する方向)の場合、ステップS8で制御回路3は、駆動パルス発生回路11を制御して大きな駆動パルスSPを選択し、次のステップS10に進む。
また、ステップS7で判定N(引き合う方向)の場合、ステップS9で制御回路3は、駆動パルス発生回路11を制御して小さい駆動パルスSPを選択し、ステップS10に進む。
また、前述したステップS4で判定N(誘起電流なし)の場合、ステップS6で制御回路3は、駆動パルス発生回路11を制御して通常の駆動パルスSPを選択し、ステップS10に進む。
次に、ステップS10で制御回路3は、選択された駆動パルスSPをドライバ回路15によってモータ20に供給し、外部磁界Nに対応した駆動力でモータ20を駆動する。その後、ステップS1に戻り、次の運針タイミングを判定する。
このように、本実施形態は、モータ20を駆動する直前に、所定位置パルスAPを出力し(ステップS2)、外部磁界Nを検出するので、外部磁界Nが時間経過と共に変動しても、外部磁界Nに素早く対応したステップモータの駆動を実現できる。
[ロータの回転方向が外部磁界に対して反発する場合の駆動動作の説明:図12、図13]
次に、ロータ21の駆動回転方向が外部磁界Nの励磁方向に対して反発する極性の場合のモータ20の駆動動作について、図12、図13を用いて説明する。この駆動動作は、前述した図11のフローチャートでのステップS8とS10の動作である。また、説明の条件として、外部磁界Nの励磁方向が左からで、ロータ21のN極は静止位置0度であり、ロータ21の回転方向は逆回転(反時計回り)であるとする。
図12(a)は、ロータ21の回転方向が外部磁界Nに対して反発する場合のモータ駆動パルスO1〜O4の駆動波形であり、図12(b)、図12(c)及び図13(a)〜図13(c)は、モータ20の駆動状態を示している。
図12(a)に示すように、モータ駆動パルスO1〜O4は、3つの分割駆動パルスSP1、SP2、SP3に分かれている。先頭の分割駆動パルスSP1は、駆動力を大きくするために長いパルス幅を有している。また、次の分割駆動パルスSP2は、駆動力が通常であって中程度のパルス幅である。また、最後の分割駆動パルスSP3は、駆動力が小さくて十分なので短いパルス幅である。
図12(b)は、モータ20のロータ21が静止位置0度であるときに、外部磁界Nがモータ20の左方向から加えられた場合の状態を示している。この状態は、前述した図6(a)と同じであり、ロータ21のN極は外部磁界Nに対して反発し、ロータ21のS極は外部磁界Nに対して引き合うので、ロータ21は図示するように、N極が静止位置0度から図面上で右方向に数十度回転して静止している。
図12(c)は、モータ20に大きい駆動パルスの先頭の分割駆動パルスSP1が供給
されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、長いパルス幅の分割駆動パルスSP1がコイルAに供給されるので(図12(a)参照)、コイルA側の第1磁極部22aがS極に、第2磁極部22bと第3磁極部22cがN極に励磁される。
この結果、ロータ21は、外部磁界Nによって静止位置0度から右方向に数十度回転していたが(図12(b)参照)、ロータ21のN極は、この位置から第1磁極部22aのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第2磁極部22bと第3磁極部22cのN極と引き合う。これにより、ロータ21は、矢印で示すように右方向数十度の位置から逆回転(反時計回り)して、左方向に約90度回転する。
このとき、ロータ21のN極は左方向からの外部磁界Nに反発し、また、S極も外部磁界Nの引き付けに反発する方向なので、逆回転させるには、大きい駆動力が必要であり、このために、先頭の分割駆動パルスSP1は、パルス幅が長いのである。
次に、図13(a)は、二番目の分割駆動パルスSP2が供給されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、中程度のパルス幅の分割駆動パルスSP2がコイルBに供給されるので(図12(a)参照)、コイルB側の第2磁極部22bがN極に、第1磁極部22aと第3磁極部22cがS極に励磁される。
この結果、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第3磁極部22cのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第2磁極部22bのN極と引き合うので、矢印で示すように、ロータ21のN極は120度位の位置まで逆回転した状態になる。このときの回転動作は、外部磁界Nの影響が少ないので、分割駆動パルスSP2は、通常のパルス幅で十分である。
次に、図13(b)は、三番目の分割駆動パルスSP3が供給されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、短いパルス幅の分割駆動パルスSP3が、コイルAとBの両方に供給されるので(図12(a)参照)、コイルA側の第1磁極部22aとコイルB側の第2磁極部22bの両方がN極に、第3磁極部22cがS極に励磁される。
この結果、ロータ21のN極は、第3磁極部22cのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bのN極と引き合う。これにより、ロータ21のN極は、矢印で示すように、静止位置180度付近まで逆回転する。このときのロータ21の回転動作は、外部磁界Nも利用できるので、分割駆動パルスSP3は、駆動力が小さい短いパルス幅、又は出力しなくても十分である。
次に、図13(c)は、モータ駆動パルスO1〜O4が終了したあとのロータ21の回転状態を示している。ここで、ロータ21のN極は、左方向からの外部磁界Nに反発し、ロータ21のS極は、外部磁界Nと引き合う。これにより、ロータ21のN極は、矢印で示すように、静止位置180度から逆転方向に数十度回転した位置となる。
このように、外部磁界Nが左方向から加わった状態で、N極が静止位置0度にあるロータ21を逆回転させる場合は、最初の回転動作が外部磁界Nの励磁方向とロータ21の回転方向が反発する極性なので、先頭の分割駆動パルスSP1は大きな駆動力が必要となる。
[ロータの回転方向が外部磁界に対して引き合う場合の駆動動作の説明:図14、図15]
次に、ロータ21の駆動回転方向が外部磁界Nの励磁方向に対して引き合う極性の場合のモータ20の駆動動作について、図14、図15を用いて説明する。この駆動動作は、
前述した図11のフローチャートでステップS9とS10の動作である。また、説明の条件として、外部磁界Nの励磁方向が左からで、ロータ21のN極は静止位置0度であり、ロータ21の回転方向は正回転(時計回り)であるとする。
図14(a)は、ロータ21の回転方向が外部磁界Nに対して引き合う場合のモータ駆動パルスO1〜O4の駆動波形であり、図14(b)、図14(c)及び図15(a)〜図15(c)は、モータ20の駆動状態を示している。
図14(a)に示すように、モータ駆動パルスO1〜O4は、3つの分割駆動パルスSP4、SP5、SP6に分かれている。先頭の分割駆動パルスSP4は、駆動力が小さくて十分なので短いパルス幅である。また、次の分割駆動パルスSP5は、駆動力が通常であって中程度のパルス幅である。また、最後の分割駆動パルスSP6は、駆動力が小さくて十分なので短いパルス幅である。
図14(b)は、モータ20のロータ21が静止位置0度であるときに、外部磁界Nがモータ20の左方向から加えられた場合の状態を示している。この状態は、前述した図12(b)と同じであり、ロータ21は図示するように、N極が静止位置0度から図面上で右方向に数十度回転して静止している。
図14(c)は、モータ20に小さい駆動パルスの先頭の分割駆動パルスSP4が供給されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、短いパルス幅の分割駆動パルスSP4が、コイルBに供給されるので(図14(a)参照)、コイルB側の第2磁極部22bがS極に、第1磁極部22aと第3磁極部22cがN極に励磁される。
この結果、ロータ21は、すでに外部磁界Nの影響で静止位置0度から右方向に数十度回転しているが(図14(b)参照)、ロータ21のN極は、この位置から第2磁極部22bのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第1磁極部22aと第3磁極部22cのN極と引き合う。これにより、ロータ21は、矢印で示すように、正回転(時計回り)でわずかに進むだけである。従って、先頭の分割駆動パルスSP4は、駆動力の小さなパルスで十分である。
次に、図15(a)は、二番目の分割駆動パルスSP5が供給されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、中程度のパルス幅の分割駆動パルスSP5が、コイルAに供給されるので(図14(a)参照)、コイルA側の第1磁極部22aがN極に、第2磁極部22bと第3磁極部22cがS極に励磁される。
この結果、ロータ21のN極は、第2磁極部22bと第3磁極部22cのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第1磁極部22aのN極と引き合う。これにより、ロータ21は、矢印で示すように、さらに正回転してN極の位置は240度付近(図3参照)となる。このときの回転動作は、外部磁界Nの影響が少ないので、分割駆動パルスSP2は、通常のパルス幅で十分である。
次に、図15(b)は、三番目の分割駆動パルスSP6が供給されたときのロータ21の回転状態を示している。ここで、短いパルス幅の分割駆動パルスSP6が、コイルAとBの両方に供給されるので(図14(a)参照)、コイルA側の第1磁極部22aとコイルB側の第2磁極部22bの両方がN極に、第3磁極部22cがS極に励磁される。
この結果、ロータ21のN極は、第3磁極部22cのS極と引き合い、また、ロータ21のS極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bのN極と引き合う。これにより、ロータ21のN極は、矢印で示すように、静止位置180度付近まで正回転する。このときの
ロータ21は、駆動パルスSP6が終了すると、外部磁界Nによって逆転方向に戻されるので、分割駆動パルスSP6は、駆動力が小さい短いパルス幅、又は出力しなくても十分である。
次に、図15(c)は、モータ駆動パルスO1〜O4が終了したあとのロータ21の回転状態を示している。ここで、ロータ21のN極は、左方向からの外部磁界Nに反発し、ロータ21のS極は、外部磁界Nと引き合う。これにより、ロータ21は逆転方向にわずかに戻されることになり、矢印で示すように、ロータ21のN極は静止位置180度から逆転方向に数十度回転した位置となる。
このように、外部磁界Nが左方向から加わった状態で、N極が静止位置0度にあるロータ21を正回転させる場合は、最初の回転動作は、外部磁界Nの励磁方向とロータ21の回転方向が引き合う極性なので、先頭の分割駆動パルスSP4は小さい駆動力で十分である。
以上のことから、図12(a)で示した大きい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4と、図14(a)で示した小さい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4の違いは、先頭の分割駆動パルスのパルス幅だけが異なる。すなわち、大きい駆動力のモータ駆動パルスも、小さい駆動力のモータ駆動パルスも、2番目と3番目の分割駆動パルスの駆動力(パルス幅)は同一でよい。
また、外部磁界Nが存在しない場合は、前述の図4、図5で示した駆動パルスが一般的である。すなわち、三つの分割駆動パルスのパルス幅は同じであり、通常の駆動力を有する中程度のパルス幅で構成される。
また、ロータ21の回転方向が外部磁界Nに反発する場合に供給する大きい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4は、外部磁界Nがない場合に選択されるモータ駆動パルスO1〜O4よりも駆動力が大きいことを意味する。また、ロータ21の回転方向が外部磁界Nと引き合う場合に供給する小さい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4は、外部磁界Nがない場合に選択されるモータ駆動パルスO1〜O4よりも駆動力が小さいこと、又は出力しないを意味する。
なお、大きい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4は、前述したように、先頭の分割駆動パルスPS1のパルス幅のみが長いだけであり、3番目の分割駆動パルスSP3のパルス幅は短くて良いので、トータルの駆動電力は、外部磁界Nが存在しない場合の通常のモータ駆動パルスO1〜O4と同等である。
また、小さい駆動力のモータ駆動パルスO1〜O4は、先頭の分割駆動パルスPS4と3番目の分割駆動パルスSP6のパルス幅の両方が短いパルス幅なので、トータルの駆動電力は、外部磁界Nが存在しない場合の通常のモータ駆動パルスO1〜O4より少なくできる。また、外部磁界Nが存在しない場合の通常のモータ駆動パルスO1〜O4は、外部磁界Nが加わることを想定して駆動力に余裕を持たせる必要がない。これにより、通常のモータ駆動パルスO1〜O4のパルス幅を短くして低電力化ができる。
従って、本実施形態によれば、外部磁界Nに影響されることなく、モータ20の駆動電力を全体的に少なくでき、エネルギーロスが少ない低電力駆動が可能となる。
[外部磁界とロータ回転との反発/引き合いによる駆動パルスの選択の説明:図16]
次に、モータ20に加わる外部磁界Nの励磁方向とロータ21の回転方向が、反発する極性か引き合う極性かによって選択されるモータ駆動パルスO1〜O4のまとめについて
、図16を用いて説明する。
図16(a)は、外部磁界Nがモータ20の左方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置0度であり、ロータ21の回転方向が逆回転(反時計回り)である場合を示している。すなわち、前述した図12、図13と同じ条件である。このとき、ロータ21のN極は外部磁界Nと反発し、ロータ21のS極は外部磁界Nと引き合うので、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置0度に対して図面上で右方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように逆回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性となるので、図12(a)で示したような大きい駆動パルスが必要である。
図16(b)は、外部磁界Nがモータ20の左方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置0度であり、ロータ21の回転方向が正回転(時計回り)である場合を示している。すなわち、前述した図14、図15と同じ条件である。このとき、ロータ21のN極は外部磁界Nと反発し、ロータ21のS極は外部磁界Nと引き合うので、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置0度に対して右方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように正回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して引き合う極性となるので、図14(a)で示したような小さい駆動パルスで十分である。
図16(c)は、外部磁界Nがモータ20の左方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置180度であり、ロータ21の回転方向が逆回転(反時計回り)である場合を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置180度に対して右方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように逆回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して引き合う極性となるので、小さい駆動パルスで十分である。
図16(d)は、外部磁界Nがモータ20の左方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置180度であり、ロータ21の回転方向が正回転(時計回り)である場合を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置180度に対して右方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように正回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性となるので、大きい駆動パルスが必要である。
図16(e)は、外部磁界Nがモータ20の右方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置0度であり、ロータ21の回転方向が逆回転(反時計回り)である場合を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置0度に対して左方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように逆回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して引き合う極性となるので、小さい駆動パルスで十分である。
図16(f)は、外部磁界Nがモータ20の右方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置0度であり、ロータ21の回転方向が正回転(時計回り)である場合を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置0度に対して図面上で左方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように正回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性となるので、大きい駆動パルスが必要である。
図16(g)は、外部磁界Nがモータ20の右方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置180度であり、ロータ21の回転方向が逆回転(反時計回り)である場合
を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置180度に対して左方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように逆回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性となるので、大きい駆動パルスが必要である。
図16(h)は、外部磁界Nがモータ20の右方向から加わり、且つ、ロータ21のN極が静止位置180度であり、ロータ21の回転方向が正回転(時計回り)である場合を示している。このとき、ロータ21のN極は、外部磁界Nから離れる方向、すなわち、静止位置180度に対して左方向に数十度回転する。この状態で、ロータ21を矢印で示すように正回転させようとすると、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して引き合う極性となるので、小さい駆動パルスで十分である。
また、外部磁界Nが存在しない場合は、前述したように、ロータ21の極性や回転方向に関係なく、通常の駆動力を有する駆動パルスを供給すれば良い。
このように、モータ20を駆動する駆動パルスSPの選択は、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性か引き合う極性かによって決定される。すなわち、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して反発する極性であれば大きい駆動力の駆動パルスを選択し、外部磁界Nの励磁方向がロータ21の回転方向に対して引き合う極性であれば小さい駆動力の駆動パルスを選択するとよい。
以上のように、第1実施形態によれば、2コイルステップモータ自身によって、外部磁界の有無と励磁方向を検出できるので、別部品としての磁気センサーが不要であり、部品点数が少ない小型のステップモータ駆動機構を提供できる。また、ステップモータ自身で外部磁界を検出するので、別部品による検出とは異なり、ステップモータに影響を及ぼす外部磁界を確実に高精度に検出できる。この結果、外部磁界に応じたモータ駆動を実現でき、エネルギーロスが少ない低電力駆動が可能となる。また、外部磁界の影響が抑制されて駆動ミスのない安定したモータ駆動を実現できる。また、外部磁界に応じたモータ駆動を実現することで耐磁性が向上し、本実施形態のステップモータ駆動機構を組み込む電子時計等の耐磁性能を向上できる。
[第2実施形態]
[第2実施形態のステップモータ駆動機構の構成説明:図17]
次に、第2実施形態のステップモータ駆動機構50の構成について、図17を用いて説明する。図17に示すように、ステップモータ駆動機構50は、複数の2コイルステップモータ70、80(以下、「モータ70、80」という)を有している。このモータ70、80は、第1実施形態のモータ20(図3参照)と同様の構成であるので、説明は省略する。
ステップモータ駆動機構50は、発振回路2、制御回路3を有しているが、これらの回路構成も第1実施形態と同様であるので同一符号として説明は省略する。また、判定回路66は、第1実施形態の判定回路4と同じ機能であるが、入力する誘起パルス信号CSと比較する内部の所定閾値を複数有している特徴がある。
また、ステップモータ駆動機構50は、モータ70、80のための駆動回路60を有している。駆動回路60は、モータ70、80を駆動する二つのドライバ回路61、62と、モータ70、80のそれぞれの誘起電流を検出する二つの誘起電流検出回路63、64、及び、検出パルス発生回路65を有している。
二つのドライバ回路61、62の回路構成は同一であり、また、二つの誘起電流検出回
路63、64の回路構成も同一である。これらの回路は、第1実施形態の駆動回路10の各回路構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、駆動回路60は、駆動パルス発生回路11、所定位置パルス発生回路12、及び、パルス選択回路13を有するが、第1実施形態の駆動回路10の各回路構成と同様であるので、同一符号として説明は省略する。
[第2実施形態の二つのモータの配置説明:図18]
次に、ステップモータ駆動機構50の二つのモータ70、80の配置について、図18を用いて説明する。なお、説明の前提として、ステップモータ駆動機構50が、指針によって時刻を表示するアナログ式電子時計に組み込まれた場合を想定する。たとえばモータ70は秒針を駆動する秒モータであり、モータ80は分針と時針を駆動する分時モータとして機能する。
図18は、ステップモータ駆動機構50を組み込んだ電子時計90の内部の概略配置図である。図18に示すように、電子時計90は、外装91によって覆われており、外装91の端部には、時刻等を修正するリューズ92が配置される。外装91の内部には、ステップモータ駆動機構50の二つのモータ70、80が配置される。また、制御IC93、水晶振動子94、電池95等が配置されている。
制御IC93は、電子時計90の制御回路で構成されるが、制御IC93の内部にステップモータ駆動機構50の発振回路2、制御回路3、駆動回路50等(図17参照)を含んでもよいし、または、別のICチップで構成してもよい。
2つのモータ70、80は、図示するように、90度の傾きをもって配置される。これにより、モータ70は、図面上でX軸方向からの外部磁界Nxを検出することができ、また、モータ80は、図面上でY軸方向からの外部磁界Nyを検出できる。すなわち、ステップモータ駆動機構50の2つのモータ70、80は、配置の角度を異ならせることで、検出できる外部磁界方向が異なる。
2つのモータ70、80のこのような配置によって、第1実施形態では一軸方向の外部磁界Nだけしか検出できなかった問題を解消することができる。すなわち、モータ70では、Y軸方向からの外部磁界Nyの検出は難しいが、モータ80を90度の傾きをもって配置することで可能となる。同様に、モータ80では、X軸方向の外部磁界Nxの検出は難しいが、モータ70を配置することで可能となる。
[第2実施形態による外部磁界の検出動作についての説明:図19]
次に、第2実施形態の誘起電流検出回路63、64と判定回路66による外部磁界Nの検出動作について、図19のタイミングチャートを用いて説明する。
図19に示すように、外部磁界Nを検出するために、所定位置パルスAPが、モータ70、80の各コイルA、Bに供給される。これにより、第1実施形態と同様に、モータ70、80の各磁極が励磁され、各ロータのN極は、所定位置に一時的に戻される。
所定位置パルスAPの供給がタイミングT2で終了すると、その直後から誘起電流検出パルスCPが出力される。以降の検出動作は、第1実施形態の検出動作と同様であるので、検出動作の詳細な説明は省略するが、本実施形態では、外部磁界Nの強度が弱い場合と強い場合の2通りを説明する。
ここで一例として、モータ70に対してX軸方向から弱い外部磁界Nx(図18参照)が加わったとすると、タイミングT2直後から、モータ70のコイルAから誘起電流IC
a(実線で示す)が出力する。なお、判定回路66は、前述したように、複数の閾値Vth1、Vth2を有し、Vth1<Vth2の関係がある。
ここで、誘起電流ICaは、誘起電流検出パルスCPの2番目と3番目のタイミングで、閾値Vth1を超えている。しかし、誘起電流ICaは、閾値Vth2を超えてはいない。これにより、誘起電流ICaの大きさに応じて発生するパルス状の電圧波形、すなわち、誘起パルス信号CS2aは、誘起電流検出パルスCPの2番目と3番目のタイミングで閾値Vth1を超えた信号となり、誘起パルス信号CS2aの頭に丸印を付けて示した。
ここで、誘起電流ICaが閾値Vth1を超えたが閾値Vth2を超えていない外部磁界Nの領域を領域Z2と称する。また、閾値Vth2を超えた外部磁界Nの領域を領域Z3、閾値Vth1を超えていない外部磁界Nの領域を領域Z1と称する。
誘起電流ICaが領域Z2である場合は、モータ70、80を駆動するモータ駆動パルスを外部磁界Nに応じて選択することが望ましく、前述した第1実施形態で説明したような動作フロー(図11参照)によって、モータ駆動パルスを適切に選択するとよい。
また、モータ70に対してX軸方向から強い外部磁界Nx(図18参照)が加わったとすると、タイミングT2直後から、モータ70のコイルAから大きな誘起電流ICb(破線で示す)が出力する。これは、外部磁界Nxが強いので、ロータ21が大きく回転するからである。これにより、誘起電流ICbは、誘起電流検出パルスCPの2番目のタイミングで、閾値Vth2を超えている。よって、この場合の外部磁界Nxは領域Z3である。
これにより、誘起電流ICbの大きさに応じて発生するパルス状の電圧波形、すなわち、誘起パルス信号CS2bは、誘起電流検出パルスCPの2番目のタイミングで閾値Vth2を超えた信号となり、このタイミングの誘起パルス信号CS2bの頭に黒丸を付けて示した。
外部磁界Nが領域Z3である場合は、外部磁界Nが強いので、モータ駆動パルスの選択だけではモータ70、80を駆動できない可能性がある。すなわち、外部磁界Nが非常に強い場合は駆動力が大きい駆動パルスを供給しても、ロータがステップ送りできない場合がある。従って、外部磁界Nが領域Z3の場合は、モータ70、モータ80の両方の駆動を停止し、外部磁界Nが領域Z2、または領域Z1になった時点で、まとめて駆動するとよい。
また、図示はしないが、誘起電流ICが領域Z1の場合は、外部磁界Nが弱いので、駆動パルスは通常のパルスを選択するとよい。
以上のように、第2実施形態によれば、複数のモータ70、80を有しており、各モータの配置角度を90度異ならせることで、X方向とY方向の両方の外部磁界を検出できる。これにより、外部磁界検出の死角がなくなるので、外部磁界の検出精度が向上する。
また、一方のモータで検出した外部磁界Nの影響を考慮して、他方のモータの駆動に反映させることができる。すなわち、前述したように、一方のモータで強い外部磁界Nを検出した場合は、両方のモータ駆動を一時的に停止する等の制御ができるのである。
なお、判定回路66は、前述した第1実施形態の判定回路4と同様に、一つの閾値Vthのみを有してもよい。また、第1実施形態の判定回路4が、第2実施形態の判定回路6
6と同様に、複数の閾値Vth1、Vth2を有して、領域に分けた制御を行ってもよい。また、二つのモータ70、80が検出する外部磁界方向の角度差は90度に限定されず、任意の角度で配置してよい。
さらに、第2実施形態では外部からの印加磁界方向、印加磁界強度を検出できることから磁気方位計として用いても良い。
[第3実施形態]
[第3実施形態のステップモータ駆動機構の構成説明:図20]
次に、第3実施形態のステップモータ駆動機構100の構成と、駆動機構に含まれる1コイルステップモータ110の構成について、図20を用いて説明する。図20に示すように、ステップモータ駆動機構100は、発振回路2、制御回路3、判定回路4、駆動回路10、及び、1コイルステップモータ110(以下、「モータ110」という)を有している。
ここで、発振回路2、制御回路3、判定回路4、駆動回路10の各構成は、第1実施形態のステップモータ駆動機構1の構成(図1参照)と同様であるので、同一符号を付して説明は省略する。なお、駆動回路10内部のドライバ回路15と誘起電流検出回路16は、モータ110が1コイルタイプであるので、一つのコイル(たとえば、コイルA)を駆動し、一つのコイルからの誘起電流を検出する構成でよい。
次に、モータ110の構成について、図20を用いて説明する。なお、1コイルステップモータの構成は公知であるが、本実施形態を理解する上で必要であるので概略を説明する。
図20に示すように、モータ110は、ロータ111、ステータ112、コイル113などによって構成される。ロータ111は2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極に着磁されている。ステータ112とコイル113は、それぞれ一つで構成される。ステータ112は、軟磁性材により成り、ロータ111を囲む磁極部112a、112bがスリットで分割されている。また、磁極部112a、112bが結合している基部112eにコイル113が巻装されている。コイル113はコイル端子O1、O2を有している。
また、ステータ112の磁極部112a、112bの内周面の対向する所定の位置に、凹状のノッチ112h、112iが形成されている。このノッチ112h、112iによって、ステータ112の電磁的安定点(直線Aで示す)に対してロータ111の静的安定点(静止時の磁極の位置:斜線Bで示す)がずれることになる。このずれによる角度差を初期位相角θiと称し、この初期位相角θiは、ロータ111が所定の方向に回転しやすいように癖付けするためであり、一般に数十度の角度である。なお、1コイルステップモータの駆動方法は、広く知られているので説明は省略する。
このように、第3実施形態のステップモータ駆動機構100は、小型でシンプルな構造の1コイルステップモータで構成されるので、第1実施形態のステップモータ駆動機構1と比較して小型軽量である特徴を有している。
[第3実施形態の外部磁界が左方向からの場合の検出動作についての説明:図21]
次に、外部磁界Nがモータ110の左方向から加わった場合の外部磁界Nの検出動作について、図21を用いて説明する。なお、図21以降のモータ110は、ロータ111とステータ112だけを図示して説明する。図21(a)は、前述した図20と同様であり、外部磁界が存在しない場合のモータ110の状態を示している。すなわち、ロータ111の極性が静的安定点B上にあり、一例としてロータ111のN極は図面上で回転中心の
斜め左下、S極は回転中心の斜め右上に位置している。
次に、図21(b)は、モータ110に対して、外部磁界Nが図面上の左方向から加わった場合の状態を示している。ここで、ロータ111のN極は外部磁界Nに反発し、ロータ111のS極は外部磁界Nと引き合うので、ロータ111は矢印のように回転し、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ直交する方向となる。なお、このときのロータ111の回転角は、外部磁界Nの強さに依存する。
次に、図21(c)は、外部磁界Nを検出するために、コイル113(図20参照)に所定位置パルスAPを供給したときの、ロータ111の回転状態を示している。ここで、コイル113に所定位置パルスAPが供給されると、ステータ112の左側の磁極部112aがS極に励磁され、右側の磁極部112bがN極に励磁される。
これにより、ロータ111のN極は、磁極部112aのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112bのN極と引き合う。この結果、ロータ111は、図示するように矢印の方向(時計回り)に回転し、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行となる。
このように、第3実施形態のモータ110は、外部磁界Nが存在せず、所定位置パルスAPが供給されていないときのロータ111の磁界方向(静的安定点B上:図21(a)参照)と、所定位置パルスAPが供給されたときのロータ111の磁界方向(図21(c)参照)とは、異なっているという特徴を有している。
次に、図21(d)は、所定位置パルスAPの供給が終了したあとのロータ111の回転状態を示している。ここで、モータ110に影響する磁界は、再び外部磁界Nのみとなるので、ロータ111は、外部磁界Nの影響を受けて、矢印の方向(反時計回り)に回転し、ロータ111の磁界方向は、再び電磁的安定点Aにほぼ直交する方向となる。すなわち、ロータ111は、図21(b)と同じ磁界方向に戻ることになる。
よって、所定位置パルスAPの供給を終了したあと、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行の状態(図21(c)参照)から、再び電磁的安定点Aにほぼ直交する位置(図21(d)参照)まで回転する。すなわち、ロータ111は約90度大きく回転する。
このように、第3実施形態のモータ110は、左方向から外部磁界Nが加わると、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ直交となるが、所定位置パルスAPの印加によって、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ平行となる。そして、所定位置パルスAPの終了によって、再び外部磁界Nの影響で電磁的安定点Aにほぼ直交する。この所定位置パルスAPの終了後に、ロータ111が再び外部磁界Nの影響で回転が戻る動きを検出することで、外部磁界Nの有無や励磁方向を検出することができる。
[外部磁界が左方向からの場合の検出動作タイミングチャートの説明:図22(a)]
次に、図21で示したように、外部磁界Nがモータ110の左方向から加わった場合の各回路の検出動作を図22(a)のタイミングチャートで説明する。図22(a)に示すように、外部磁界Nを検出するために、所定位置パルスAPが、モータ110のコイル113に供給される。これにより、前述した図21(c)で示したように、モータ110のステータ112が励磁され、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行となる。
所定位置パルスAPの供給がタイミングT3で終了すると、ロータ111は、外部磁界
Nの影響を受けて回転し、ロータ111の磁界方向は、再び電磁的安定点Aにほぼ直交する方向となる(図21(d)参照)。
ロータ111が再び外部磁界Nの影響を受けて回転することで、ステータ112に磁束が発生し、この磁束の変化によって、コイル113に図22(a)に示す誘起電流ICが発生する。この誘起電流ICは、前述したように、所定位置パルスAPの終了でロータ111が大きく約90度回転するので、電流値が大きく、且つ、発生時間も長い。
検出パルス発生回路14(図1参照)は、タイミングT3の直後から誘起電流検出パルスCPを出力する。以降の検出動作は、第1実施形態の検出動作と同様であるので、検出動作の詳細な説明は省略するが、ここでは、誘起電流検出パルスCPの1番目から4番目のタイミングで、誘起電流ICが判定回路4の閾値Vthを超えた例を示している。
これにより、誘起電流ICの大きさに応じて発生するコイル端子O1のパルス状の電圧波形、すなわち、誘起パルス信号CS1は、誘起電流検出パルスCPの1番目から4番目のタイミングで、判定回路4の閾値Vthを超えた信号となる。
ここで、判定回路4の閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS1の頭に○印を付け、閾値Vthを超えていない誘起パルス信号CS1の頭には×印を付けて、分かりやすく表現した。判定回路4は、図示しないが、閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS1に同期して検出信号DSを出力する。制御回路3は、判定回路4からの検出信号DSを入力し、その信号の数を計数する。図22(a)で示す例では、検出信号DSの個数は4個として計数される。
なお、検出信号DSを計数するということは、コイル113に発生する誘起電流ICが閾値Vthを超えている出力時間を計数することに等しい。従って、図22(a)で示す例では、制御回路3は検出信号DSの出力時間を”4”として計数し記憶する。
検出信号DSの出力時間が”4”と多いのは、前述したように、所定位置パルスAPの終了によって、ロータ111が大きく約90度回転したからである。本実施形態は、誘起電流ICが閾値Vthを超えている出力時間の長さ(すなわち検出信号DSの個数)に応じて、外部磁界Nの状況を判定し、モータ110を駆動する駆動パルスを選択して外部磁界Nに応じた最適な駆動を実現する。
なお、制御回路3は、検出信号DSの個数を計数するのではなく、検出信号DSの先頭の信号から最後の信号まで(図22(a)の例では誘起電流検出パルスCPの1番目から4番目まで)の経過時間を計測して、その値を検出信号DSの出力時間としてもよい。
[検出した左方向からの外部磁界Nに応じたモータの駆動動作の説明:図22(b)]
次に、図21及び図22(a)で示した外部磁界Nの検出結果に応じたモータ110の駆動動作について、図22(b)を用いて説明する。説明の条件として、外部磁界Nがモータ110の左方向から加わっているときにロータ111を逆転駆動(反時計回り)する場合である。なお、この場合のモータ駆動は、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して引き合う極性である。
ここで、制御回路3は、前述したように、検出信号DSの出力時間を”4”と計数したので、外部磁界Nが左方向から加わっており、且つ、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して引き合う極性である判定して、外部磁界Nが無と判定されたときの駆動パルスよりも小さい駆動パルス(パルス幅:小)をモータ110に供給する。
この小さい駆動パルスの供給によって、モータ110のステータ112は、図22(b)に示すように磁化される。これにより、ロータ111の磁界方向は図21(d)に示す位置であったが、ロータ111のN極は、磁極部112bのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112aのN極と引き合う。この結果、ロータ111は矢印で示すように逆回転して、ロータ111のN極は静的安定点Bの図面上の斜め右上まで回転する。
このように、ロータ111は、図21(d)の位置(電磁的安定点Aに直交)から図22(b)の位置まで回転するが、モータ110の左方向から加わっている外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向(逆転方向)に対して引き合う極性であると理解できる。また、このときのロータ111の回転角度は、1ステップ(180度)よりも小さい角度となるので、駆動パルスの駆動力が小さくても十分に駆動できるのである。
[第3実施形態の外部磁界が右方向から場合の検出動作についての説明:図23]
次に、外部磁界Nがモータ110の右方向から加わった場合の外部磁界Nの検出動作について、図23を用いて説明する。図23(a)は、前述した図20と同様であり、外部磁界が存在しない場合で、ロータ111の極性が静的安定点B上にあり、ロータ111のN極は図面上で斜め左下、S極は斜め右上に位置している。
次に、図23(b)は、モータ110に対して、外部磁界Nが図面上の右方向から加わった場合の状態を示している。ここで、ロータ111のN極は外部磁界Nに反発し、ロータ111のS極は外部磁界Nと引き合うので、ロータ111は矢印のように回転し、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ平行となる。
次に、図23(c)は、外部磁界Nを検出するために、コイル113に所定位置パルスAPを供給したときの、ロータ111の回転状態を示している。ここで、コイル113に所定位置パルスAPが供給されると、ステータ112の左側の磁極部112aがS極に励磁され、右側の磁極部112bがN極に励磁される。
これにより、ロータ111のN極は、磁極部112aのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112bのN極と引き合う。この結果、ロータ111は、図23(b)の位置から動かず、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行のまま保持される。
このように、1コイルステップモータでは、所定位置パルスAPが供給されたときのロータ111の磁界方向は、外部磁界Nが存在せず、且つ、所定位置パルスAPが供給されていないときのロータ111の磁界方向(静的安定点B上:図23(a)参照)とは異なっている。
次に、図23(d)は、所定位置パルスAPの供給が終了したあとのロータ111の回転状態を示している。ここで、モータ110に影響する磁界は、再び外部磁界Nのみとなるが、ロータ111は、所定位置パルスAPによって回転していないので、所定位置パルスAPが終了しても動かない。従って、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行のまま維持される。
このように、第3実施形態のモータ110は、右方向から外部磁界Nが加わると、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ平行となるが、その状態で所定位置パルスAPが供給されても、ロータ111は回転しない。従って、所定位置パルスAPが終了してもコイル113からの誘起電流は、ほとんど発生しない。
[外部磁界Nが右方向からの場合の検出動作タイミングチャートの説明:図24(a)]
次に、図23で示したように、外部磁界Nがモータ110の右方向から加わった場合の各回路の検出動作を図24(a)のタイミングチャートで説明する。図24(a)に示すように、外部磁界Nを検出するために、所定位置パルスAPが、モータ110のコイル113に供給される。これにより、前述した図23(c)で示したように、モータ110のステータ112が励磁されるが、ロータ111は回転せず、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行のまま保持される。
所定位置パルスAPの供給がタイミングT4で終了すると、ロータ111は、外部磁界Nの影響のみとなるが、ロータ111は回転せず磁界方向は変化しない(図23(d)参照)。ロータ111が回転しないので、コイル113に対して磁束の変化が発生せず、従って、コイル113による誘起電流ICは、ほとんど発生しない。
検出パルス発生回路14(図1参照)は、タイミングT4の直後から誘起電流検出パルスCPを出力する。以降の検出動作は、第1実施形態の検出動作と同様であるので、検出動作の詳細な説明は省略するが、誘起電流ICは、ほとんど発生しないので、誘起パルス信号CS1が判定回路4の閾値Vthを超えることがない。従って、判定回路4からは検出信号DSは出力せず、制御回路3は検出信号DSの個数を0個、すなわち、検出信号DSの出力時間を”0”として記憶する。
ここで、検出信号DSの出力時間が最小の”0”であるのは、前述したように、この条件では、所定位置パルスAPの終了によって、ロータ111がほとんど回転しないからである。
[検出した右方向からの外部磁界Nに応じたモータ駆動動作の説明:図24(b)]
次に、図23及び図24(a)で示した外部磁界Nの検出結果に応じたモータ110の駆動動作について、図24(b)を用いて説明する。説明の条件として、外部磁界Nがモータ110の右方向から加わっているときにロータ111を逆回転駆動する場合である。なお、この場合のモータ駆動は、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して反発する極性である。
ここで、制御回路3は、前述したように、検出信号DSの出力時間を”0”と計数したので、外部磁界Nが右方向から加わっており、且つ、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して反発していると判定して、外部磁界Nが無と判定されたときの駆動パルスよりも大きい駆動パルス(パルス幅:大)をモータ110に供給する。
この大きい駆動パルスの供給によって、モータ110のステータ112は、図24(b)に示すように磁化される。これにより、ロータ111の磁界方向は図23(d)に示す位置であったが、ロータ111のN極は、磁極部112bのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112aのN極と引き合う。この結果、ロータ111は矢印で示すように逆回転して、ロータ111のN極は静的安定点Bの図面上の斜め右上まで回転する。
このように、ロータ111は、図23(d)の位置(電磁的安定点Aに平行)から図24(b)の位置まで回転するが、モータ110の右方向から加わっている外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向(逆転方向)に対して反発する極性であると理解できる。また、このときのロータ111の回転角度は、1ステップ(180度)よりも大きい角度となるので、駆動力の大きい駆動パルスが必要である。
[第3実施形態の外部磁界が無い場合の検出動作についての説明:図25]
次に、外部磁界Nが存在しない場合の外部磁界Nの検出動作について、図25を用いて説明する。図25(a)は、外部磁界Nが存在しない場合のロータ111の状態を示して
おり、ロータ111の磁界方向は静的安定点B上にあり、ロータ111のN極は図面上で斜め左下、S極は斜め右上に位置している。
次に、図25(b)は、外部磁界Nを検出するために、コイル113に所定位置パルスAPを供給したときの、ロータ111の回転状態を示している。ここで、コイル113に所定位置パルスAPが供給されると、ステータ112の左側の磁極部112aがS極に励磁され、右側の磁極部112bがN極に励磁される。
これにより、ロータ111のN極は、磁極部112aのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112bのN極と引き合う。この結果、ロータ111は、図示するように矢印の方向(時計回り)に回転し、ロータ111の磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行となる。
次に、図25(c)は、所定位置パルスAPの供給が終了したあとのロータ111の回転状態を示している。ここで、所定位置パルスAPの供給が終了すると、モータ110に影響する磁界はなくなるので、ロータ111は、矢印の方向(反時計回り)に回転して元の静的安定点Bに戻り、N極は図面上で斜め左下、S極は斜め右上に位置する。すなわち、所定位置パルスAPの供給の終了によって、ロータ111は初期位相角θi(図20参照)に相当する角度(数十度)だけ回転する。
このように、第3実施形態のモータ110は、外部磁界Nが存在しない場合、ロータ111の磁界方向は静的安定点B上となるが、所定位置パルスAPの印加によって、ロータ111の磁界方向は電磁的安定点Aにほぼ平行となる。そして、所定位置パルスAPの終了によって、再び外部磁界Nの影響で静的安定点B上となる。この所定位置パルスAPの終了後に、ロータ111が再び外部磁界Nの影響で回転が戻る動きを検出することで、外部磁界Nの有無や励磁方向を検出することができる。
[外部磁界Nが無い場合の検出動作タイミングチャートの説明:図26(a)]
次に、図25で示したように、外部磁界Nが存在しない場合の各回路の検出動作を図26(a)のタイミングチャートで説明する。図26(a)に示すように、外部磁界Nを検出するために、所定位置パルスAPが、モータ110のコイル113に供給される。これにより、前述した図25(b)で示したように、モータ110のステータ112が励磁され、ロータ111が回転して磁界方向は、電磁的安定点Aにほぼ平行となる。
所定位置パルスAPの供給がタイミングT5で終了すると、ロータ111は回転し、ロータ111の磁界方向は、再び静的安定点B上となる(図25(c)参照)。ロータ111が再び回転することで、コイル113に対して磁束の変化が発生し、コイル113に図26に示す誘起電流ICが発生する。この誘起電流ICは、前述したように、ロータ111の回転角が数十度と比較的小さいので、中程度の電流値であり、また発生時間も比較的短い。
検出パルス発生回路14(図1参照)は、タイミングT5の直後から誘起電流検出パルスCPを出力する。以降の検出動作は、第1実施形態の検出動作と同様であるので、検出動作の詳細な説明は省略するが、ここでは、誘起電流検出パルスCPの2番目のタイミングで、誘起電流ICが判定回路4の閾値Vthを超えた例を示している。
これにより、誘起電流ICの大きさに応じて発生するコイル端子O1のパルス状の電圧波形、すなわち、誘起パルス信号CS1は、誘起電流検出パルスCPの2番目のタイミングで、判定回路4の閾値Vthを超えた信号となる。
ここで、判定回路4の閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS1の頭に○印を付け、閾値Vthを超えていない誘起パルス信号CS1の頭には×印を付けて、分かりやすく表現した。判定回路4は、図示しないが、閾値Vthを超えた誘起パルス信号CS1に同期して検出信号DSを出力する。
制御回路3は、判定回路4からの検出信号DSを入力し、その信号の数を計数する。図26(a)で示す例では、検出信号DSの個数は1個として計数される。制御回路3は、前述したように、計数した検出信号DSの個数を出力時間”1”として記憶する。
なお、検出信号DSの出力時間が”1”と少ないのは、前述したように、所定位置パルスAPの終了によって、ロータ111が回転した角度が小さく、数十度だけだからである。
[外部磁界Nが無いと判断した場合のモータ駆動動作の説明:図26(b)]
次に、図25及び図26(a)で示した外部磁界Nの検出結果に応じたモータ110の駆動動作について、図26(b)を用いて説明する。説明の条件として、外部磁界Nが存在せず、ロータ111を逆回転駆動する場合である。
ここで、制御回路3は、前述したように、検出信号DSの出力時間を”1”と計数したので、外部磁界Nは存在しないと判定して、通常の大きさの駆動パルス(パルス幅:中)をモータ110に供給する。
この通常の大きさの駆動パルスの供給によって、モータ110のステータ112は、図26(b)に示すように磁化される。これにより、ロータ111の磁界方向は図25(c)に示す位置であったが、ロータ111のN極は、磁極部112bのS極と引き合い、ロータ111のS極は、磁極部112aのN極と引き合う。この結果、ロータ111は逆回転して、ロータ111のN極は静的安定点Bの図面上の斜め右上まで回転する。
すなわち、ロータ111は、図25(c)の位置(静的安定点B)から図26(b)の位置まで180度回転する。このときのロータ111の回転角度は、通常のステップ角と同じなので、通常の駆動力の駆動パルスを供給すればよい。
[第3実施形態の外部磁界Nに応じたモータ駆動動作のまとめ:図27]
次に、第3実施形態の外部磁界Nに応じたモータ110に対する駆動動作のまとめについて、図27を用いて説明する。図27は、制御回路3がモータ110のロータ111の極性(磁界方向)と、誘起電流ICに応じた検出信号DSの個数と、を条件に、外部磁界Nの有無と励磁方向を判定し、モータ駆動パルスO1〜O4をどのように選択するかをまとめた表である。
図27に示すように、ロータ111のN極が静的安定点Bの図面上で斜め左下にある場合(表の上側)は、検出信号DSが0個ならば外部磁界Nは右方向から加わっている。従って、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して反発する極性となるので、大きい駆動パルスが必要となる(図24参照)。
また、検出信号DSが1又は2個ならば、外部磁界Nは存在しない。従って、駆動パルスは通常パルスとなる(図26参照)。また、検出信号DSが3個以上ならば外部磁界Nが左方向から加わっている。従って、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して引き合う極性となるので、小さい駆動パルスで十分である(図22参照)。
また、ロータ111のN極が静的安定点Bの図面上で斜め右上にある場合(表の下側)
は、詳細に説明していないが、ロータ111の極性が逆になるので、検出信号DSが3個以上ならば外部磁界Nが右方向から加わっている。従って、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して引き合う極性となるので、小さい駆動パルスで十分である。
また、検出信号DSが1又は2個ならば、外部磁界Nは存在しない。従って、駆動パルスは通常パルスとなる。また、検出信号DSが0個ならば外部磁界Nは左方向から加わっている。従って、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して反発する極性となるので、大きい駆動パルスが必要となる。
ここで、ロータ111の極性は制御回路3が常に把握しているので、制御回路3は、誘起電流ICの検出による検出信号DSの個数の情報から、外部磁界Nの有無と励磁方向が判定できることが図27から理解できる。この結果、制御回路3は、外部磁界Nの励磁方向がロータ111の回転方向に対して反発か引き合うかを判断でき、モータ110に対して適切な駆動パルスを供給できるのである。
以上のように、第3実施形態による1コイルステップモータを用いた外部磁界Nの検出では、外部磁界Nの有無と励磁方向に応じて誘起電流ICの大きさや出力時間の長さが異なって検出される。これにより、誘起電流ICが所定の閾値Vthを超える時間(検出信号DSの出力時間)に応じて、外部磁界Nの有無と励磁方向を判断し、外部磁界Nに応じて最適な駆動パルスを選択できる。この結果、外部磁界Nに影響されることなく、低電力で安定したモータ駆動を実現する小型軽量のステップモータ駆動機構を提供できる。