JP6976393B2 - 熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法 - Google Patents
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Description
図1は、本技術に係る熱伝導性シート1の一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、バインダ樹脂2と、鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー3と、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー4とを含有し、第1の熱伝導性フィラー3と第2の熱伝導性フィラー4とがバインダ樹脂2に分散している。また、熱伝導性シート1は、熱伝導性シート1の厚み方向Bと面方向Aとで、比誘電率及び熱伝導率が異なる、すなわち、熱伝導性シート1は、厚み方向Bと面方向Aとで比誘電率及び熱伝導率が異方性を有する。このように、熱伝導性シート1は、熱伝導率とともに比誘電率がコントロールされているため、例えばシールドやアンテナの分野において新たな応用が期待できる。以下、熱伝導性シート1の構成要素について説明する。
バインダ樹脂2は、第1の熱伝導性フィラー3と第2の熱伝導性フィラー4とを熱伝導性シート1内に保持するためのものである。バインダ樹脂2は、熱伝導性シート1に要求される機械的強度、耐熱性、電気的性質等の特性に応じて選択される。バインダ樹脂2としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂の中から選択することができる。
第1の熱伝導性フィラー3は、鱗片状の熱伝導性フィラーであってもよく、繊維状の熱伝導性フィラーであってもよく、鱗片状の熱伝導性フィラーと繊維状の熱伝導性フィラーとを併用してもよい。
第2の熱伝導性フィラー4は、上述した第1の熱伝導性フィラー3以外の熱伝導性フィラーである。第2の熱伝導性フィラー4は、非鱗片状かつ非繊維状であり、例えば、球状、粉末状、顆粒状、扁平状等の熱伝導性フィラーが挙げられる。第2の熱伝導性フィラー4の材質は、本技術の効果を考慮して、熱伝導性シート1の絶縁性を確保できる材料が好ましく、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコニア、炭化ケイ素などが挙げられる。第2の熱伝導性フィラー4は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する。
工程Aでは、第1の熱伝導性フィラー3と第2の熱伝導性フィラー4とをバインダ樹脂2に分散させることにより熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する。熱伝導性シート形成用の樹脂組成物は、第1の熱伝導性フィラー3と、第2の熱伝導性フィラー4と、バインダ樹脂2との他に、必要に応じて各種添加剤や揮発性溶剤とを公知の手法により均一に混合することにより調製することができる。
工程Bでは、調製された熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する。成形体ブロックの形成方法としては、押出成形法、金型成形法などが挙げられる。押出成形法、金型成形法としては、特に制限されず、公知の各種押出成形法、金型成形法の中から、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の粘度や熱伝導性シートに要求される特性等に応じて適宜採用することができる。
工程Cでは、成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る。スライスにより得られるシートの表面(スライス面)には、第1の熱伝導性フィラー3が露出する。スライスする方法としては特に制限はなく、成形体ブロックの大きさや機械的強度により公知のスライス装置(好ましくは超音波カッタ)の中から適宜選択することができる。成形体ブロックのスライス方向としては、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に第1の熱伝導性フィラー3が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60〜120度であることが好ましく、70〜100度の方向であることがより好ましく、90度(垂直)の方向であることがさらに好ましい。成形体ブロックのスライス方向は、特に制限はなく、熱伝導性シート1の使用目的等に応じて適宜選択することができる。
本技術に係る熱伝導性シートは、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすためにそれらの間に配された構造の電子機器(サーマルデバイス)とすることができる。電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導性シートとを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有していてもよい。
シリコーン樹脂33体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)20体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)20体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。得られた成形体ブロックの長さ方向に直交する方向に、成形体ブロックを超音波カッターで1mm厚のシート状にスライスすることにより、鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂37体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)20体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)20体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂60体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)20体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)10体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)10体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂35体積%と、炭素繊維(D50が150μm)23体積%と、球状アルミナ粒子(D50が3μm)42体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと、100℃のオーブンで6時間加熱させて成形体ブロックを形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、炭素繊維がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂33体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)20体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)20体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。バーコーターを用いて1mm厚のシートを作製し、60℃のオーブンで30分硬化することで、未硬化状のグリーンシートを得て、当該シートを積層させ50mm×50mmの積層体を形成させ、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。得られた成形体ブロックを超音波カッターで1mm厚のシート状にスライスすることにより、鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂33体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)20体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)20体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を形成した。ダイヘッド(開口部:高さ1mm×スリット幅0.5mm)を用いて50mm×50mmの積層体を調整し、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。得られた成形体ブロックを超音波カッターで1mm厚のシート状にスライスすることにより、鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂60体積%と、球状の窒化ホウ素(D50が25μm)20体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)10体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)10体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂60体積%と、球状の窒化ホウ素(D50が50μm)20体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.2μm)10体積%と、球状アルミナ粒子(D50が2μm)10体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを得た。
シリコーン樹脂60体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)40体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを得た。
ASTM−D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cm2をかけて熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の実効熱伝導率(W/m・K)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。表1中、「厚み方向」及び「面方向」とは、熱伝導性シートにおける実効熱伝導率の測定方向を表す。また、シートにおいて炭素繊維や鱗片状の窒化ホウ素が配向させられている方向が「厚み方向」であり、厚み方向の角度を90度変えた方向が「面方向」であるとも換言できる。
JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。
Claims (18)
- バインダ樹脂と、鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、
当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる、熱伝導性シート。 - 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素を含有する、請求項1に記載の熱伝導性シート。
- 上記第2の熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウム粒子と、球状のアルミナ粒子とを含有する、請求項1又は2記載の熱伝導性シート。
- 上記第1の熱伝導性フィラーの平均粒径が20〜100μmである、請求項2又は3に記載の熱伝導性シート。
- 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20〜35体積%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
- 上記球状のアルミナ粒子の平均粒径が1〜3μmである、請求項3に記載の熱伝導性シート。
- 上記球状のアルミナ粒子の含有量が10〜25体積%である、請求項3又は6に記載の熱伝導性シート。
- 上記窒化アルミニウム粒子の平均粒径が1〜5μmである、請求項3、6又は7に記載の熱伝導性シート。
- 上記窒化アルミニウム粒子の含有量が10〜25体積%である、請求項3、6〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
- 上記第1の熱伝導性フィラーが、炭素繊維を含有し、
上記第2の熱伝導性フィラーが、球状のアルミナ粒子を含有する、請求項1に記載の熱伝導性シート。 - 上記第1の熱伝導性フィラーの配向方向における熱伝導率が、上記第1の熱伝導性フィラーの非配向方向における熱伝導率の2倍以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
- 鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る工程Cとを有する、熱伝導性シートの製造方法。 - 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法又は金型成形法により成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法により成形体ブロックを形成し、
上記工程Cでは、上記成形体ブロックをシート状にスライスする際のスライス方向が、上記押出成形法の押出し方向に対して60〜120度である、請求項12又は13に記載の熱伝導性シートの製造方法。 - 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から未硬化状態のグリーンシートを作製し、該グリーンシートを積層させることで上記成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、バーコーターを用いて上記グリーンシートを作製する、請求項15に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、ダイヘッドを用いて得られたシートを積層させることで上記成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。
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