以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
まず、本実施の形態において使用する化合物について説明する。
<有機第1アミン>
有機第1アミンは、下記式(3)で表される有機第1アミンが好ましく使用される。
式中、R1は、炭素数1〜22の飽和脂肪族基又は炭素数6〜22の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基を示し、該基は、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてもよく、nは、1〜10の整数を示す。
式(3)において、好ましいR1としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン又はジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。なお「由来の基」とは、その化合物からn個の水素原子を除いた構造の基を示す(ここで、nは式(3)中のnと同義である)。
式(3)で表される有機第1アミンとしては、好ましくはnが2以上の有機第1ポリアミンが使用され、更に好ましくはnが2又は3である有機第1ジアミンが使用される。
有機第1アミンの例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、アリルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、メチルアニリン、ビニルアニリン等の芳香族アミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(各異性体)、シクロヘキサンジアミン(各異性体)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(各異性体)等の脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン(各異性体)、トルエンジアミン(各異性体)4,4’−メチレンジアニリン等の芳香族ジアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアニリン等のポリアミンを挙げることができる。中でも、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(各異性体)、シクロヘキサンジアミン(各異性体)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族ジアミン、トリス(アミノエチル)アミン(各異性体)等の脂肪族トリアミン、アミノエチルアルコール(各異性体)等のアルコールアミン等が好ましく使用され、中でも、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンがより好ましい。
<ヒドロキシ化合物:アルコール>
ヒドロキシ化合物としては、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物であり、アルコールの場合は、下記式(4)で表される化合物である。
式中、R2は、a個のヒドロキシ基で置換された炭素数1〜50の脂肪族基、又は、a個のヒドロキシ基及び芳香族基で置換された炭素数7〜50の脂肪族基、を示し、aは、1〜3の整数を示す。
R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、ヘキシルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、ジブチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
このようなR2を有するアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ピナコール、グリセロール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール、メトキシエタノール、ブチルセロソルブ等を挙げることができる。
また、R2としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることもできる。
このようなR2を有するアルコールの具体例としては、フェニルメタノール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノール、フェニルペンタノール、フェニルヘキサノール、フェニルヘプタノール、フェニルオクタノール、フェニルノナノール等を挙げることができる。
上述のアルコールのうち、工業的な使用を考えれば、アルコール性ヒドロキシ基(該ヒドロキシ化合物を構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するヒドロキシ基)を1又は2個有するアルコールが、一般に低粘度であるため好ましく、更に好ましくは該アルコール性ヒドロキシ基が1個である、モノアルコールである。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルアルコールが好ましい。
<ヒドロキシ化合物:芳香族ヒドロキシ化合物>
ヒドロキシ化合物が、芳香族ヒドロキシ化合物である場合は、該ヒドロキシ化合物は、下記式(5)で表される化合物である。
式中、環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にb個のヒドロキシ基で置換された芳香族基を含有する、6〜50の炭素原子を含む有機基を表し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、bは1〜6の整数を表す。
好ましくは環Aが、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であり、より好ましくは環Aが、ベンゼン環を少なくとも1つ含有する構造である。
環Aの芳香族基に結合するヒドロキシ基は環Aの芳香族基の炭素原子に結合したヒドロキシ基であって、該ヒドロキシ基の数は1〜6の整数で、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、更に好ましいのは1個(すなわち、b=1)である。より好ましくは該芳香族性ヒドロキシル基が1個である、芳香族モノヒドロキシ化合物である。
具体的には、フェノール、メチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、オクチルフェノール(各異性体)、ノニルフェノール(各異性体)、クミルフェノール(各異性体)、ジメチルフェノール(各異性体)、メチルエチルフェノール(各異性体)、メチルプロピルフェノール(各異性体)、メチルブチルフェノール(各異性体)、メチルペンチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、エチルプロピルフェノール(各異性体)、エチルブチルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)、ジクミルフェノール(各異性体)、トリメチルフェノール(各異性体)、トリエチルフェノール(各異性体)、ナフトール(各異性体)等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、該芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を1つ有する化合物が好ましい。該芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を2つ以上有する芳香族ヒドロキシ化合物であっても、芳香族ヒドロキシ化合物として使用することが可能であるが、該ヒドロキシ基が1つのものは一般的に低粘度であるため該ヒドロキシル基は1つであることが好ましい。
<チオウレイド基を有する化合物>
チオウレイド基を有する化合物は、有機第1アミンとチオ尿素を使用してイソチオシアネートを製造するいくつかの方法において製造される化合物である。
チオウレイド基を有する化合物は、例えば下記式(6)で表される化合物である。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、nは、上記式(3)で定義した整数を表す。
好ましいチオウレイド基を有する化合物としては、N−フェニルウレア、N−(メチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジメチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジエチルフェニル)ウレア(各異性体)、N−(ジプロピルフェニル)ウレア(各異性体)、N−ナフチルウレア(各異性体)、N−(メチルナフチル)ウレア(各異性体)、N−ジメチルナフチルウレア(各異性体)、N−トリメチルナフチルウレア(各異性体)、N,N’−フェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチルフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−メシチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ビフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−ジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−プロピレンジフェニレンジウレア(各異性体)、N,N’−オキシ−ジフェニレンジウレア(各異性体)、ビス(ウレイドフェノキシエタン)(各異性体)、N,N’−キシレンジウレア(各異性体)、N,N’−メトキシフェニルジウレア(各異性体)、N,N’−エトキシフェニルジウレア(各異性体)、N,N’−ナフタレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチルナフタレンジウレア(各異性体)、N,N’−エチレンジウレア、N,N’−プロピレンジウレア(各異性体)、N,N’−ブチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ペンタメチレンジウレア(各異性体)、N,N’−ヘキサンメチレンジウレア(各異性体)、N,N’−デカメチレンジウレア(各異性体)等のN−脂肪族ジウレア;N,N’,N’’−ヘキサメチレントリウレア(各異性体)、N,N’,N’’−ノナメチレントリウレア(各異性体)、N,N’,N’’−デカメチレントリウレア(各異性体)等のN−脂肪族トリウレア;N,N’−シクロブチレンジウレア(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシルジウレア(各異性体)、3−ウレイドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルウレア(シス及び/又はトランス体)、メチレンビス(シクロヘキシルウレア)(各異性体)等の置換されたN−環式脂肪族ポリウレアが挙げることができる。
<N−置換−O−置換チオカルバメート>
N−置換−O−置換チオカルバメートは、後述するいくつかのイソチオシアネートを製造する方法のうち、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とを使用して製造される化合物である。ヒドロキシ化合物としてアルコールを使用した場合は、下記式(7)で表されるN−置換−O−置換チオカルバメートである。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、R3は、アルコールに由来する基であって、アルコールから、該アルコールの飽和炭素原子に結合している1つのヒドロキシ基を除いた残基であり、nは上記式(3)で定義した整数を表す。
N−置換−O−置換チオカルバメートの具体的な構造は、使用する有機第1アミン及びアルコールの種類によって決まるため、全てを列挙することはできないが、例えば、以下の化合物が挙げられる。
N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸メチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸エチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸プロピルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸ブチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸ペンチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸ヘキシルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸ヘプチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸オクチルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸ノニルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸デシルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ドデシルエステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸オクタデシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸メチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸エチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸プロピルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ブチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ペンチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ヘキシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ヘプチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸オクチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ノニルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸デシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸ドデシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸オクタデシルエステル)(各異性体);
3−(メトキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸メチルエステル(各異性体)、3−(エトキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸エチルエステル(各異性体)、3−(プロピルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸プロピルエステル(各異性体)、3−(ブチルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ブチルエステル(各異性体)、3−(ペンチルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ペンチルエステル(各異性体)、3−(ヘキシルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ヘキシルエステル(各異性体)、3−(ヘプチルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ヘプチルエステル(各異性体)、3−(オクチルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸オクチルエステル(各異性体)、3−(ノニルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ノニルエステル(各異性体)、3−(デシルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸デシルエステル(各異性体)、3−(ドデシルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸ドデシルエステル(各異性体)、3−(オクタデシルオキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸オクタデシルエステル(各異性体);
トルエン−ジ(チオカルバミン酸メチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸エチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸プロピルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ブチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ペンチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ヘキシルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ヘプチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸オクチルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ノニルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸デシルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸ドデシルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸オクタデシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸メチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸エチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸プロピルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ブチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ペンチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ヘキシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ヘプチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸オクチルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ノニルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸デシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸ドデシルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸オクタデシルエステル)(各異性体);
N−フェニルチオカルバミン酸メチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸エチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸プロピルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸ブチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸ペンチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ヘキシルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸ヘプチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸オクチルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸ノニルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸デシルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸ドデシルエステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸オクタデシルエステル(各異性体)、N−ジメチルチオフェニルカルバミン酸メチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸エチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸プロピルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ブチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ペンチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ヘキシルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ヘプチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸オクチルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ノニルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸デシルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸ドデシルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸オクタデシルエステル(各異性体)。
一方、ヒドロキシ化合物として芳香族ヒドロキシ化合物を使用した場合は、下記式(8)で表されるN−置換−O−置換チオカルバメートである。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、Arは、芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基であって、芳香族ヒドロキシ化合物から、該芳香族ヒドロキシ化合物の芳香環に結合している1つのヒドロキシ基を除いた残基であり、nは、上記式(1)で定義した整数を表す。
上記式(8)で表されるN−置換−O−置換チオカルバメートの具体的な構造は、使用する有機第1アミン及び芳香族ヒドロキシ化合物の種類によって決まるため、全てを列挙することはできないが、例えば、下記化合物が挙げられる。
N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸フェニルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(チオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)(各異性体);
N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸フェニルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(チオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(チオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)(各異性体);
3−(フェノキシチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸フェニルエステル、3−((メチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((エチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((プロピルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ブチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ペンチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ヘキシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ヘプチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((オクチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ノニルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル(各異性体)、3−((デシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ドデシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((オクタデシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジメチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジメチルフェノキシ)エステル(各異性体)、3−((ジエチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジプロピルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジブチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジペンチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジヘキシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジヘプチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジオクチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジノニルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジデシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジドデシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル(各異性体)、3−((ジオクタデシルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル(各異性体);
トルエン−ジ(チオカルバミン酸フェニルエステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ジ(チオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、トルエン−ビス(チオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)(各異性体);
N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸フェニルエステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(チオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)(各異性体)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(チオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)(各異性体);
N−フェニルチオカルバミン酸フェニルエステル、N−フェニルチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸フェニルエステル、N−フェニルチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−フェニルチオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル(各異性体);
N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸フェニルエステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(デシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル(各異性体)、N−ジメチルフェニルチオカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル(各異性体)。
<イソチオシアネート>
本実施の形態の方法で製造されるイソチオシアネート、本実施の形態の組成物に好ましく含有されるイソチオシアネートは、下記式(9)で表される化合物である。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、nは、上記式(3)で定義した数を表す。
式(9)において、好ましいR1としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン又はジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。なお「由来の基」とは、その化合物からn個の水素原子を除いた構造の基を示す。ここで、nは式(3)中のnと同義である。
イソチオシアネートの例としては、ブチルイソチオシアネート、オクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート等の脂肪族イソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソチオシアネート)(各異性体)、シクロヘキサンジイソチオシアネート(各異性体)、3−イソチオシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソチオシアネート等の脂肪族ジイソチオシアネート;フェニレンジイソチオシアネート(各異性体)、トルエンジイソチオシアネート(各異性体)4,4’−メチレンジ(フェニルイソチオシアネート)等の芳香族ジイソチオシアネート、ポリビニルイソチオシアネート、ポリアリルイソチオシアネート、ポリビニル(フェニルイソチオシアネート)等のポリイソチオシアネートを挙げることができる。中でも、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソチオシアネート)(各異性体)、シクロヘキサンジイソチオシアネート(各異性体)、3−イソチオシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソチオシアネート等の脂肪族ジイソチオシアネートが好ましく使用され、中でも、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソチオシアネート)、3−イソチオシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソチオシアネートがより好ましい。
[イソチオシアネートを製造する方法]
イソチオシアネートを製造する方法について説明する。本実施の形態の方法では、有機第1アミンとチオ尿素を原料としてイソチオシアネートを製造するが、いくつかの好ましい方法がある。以下、これらの方法について説明する。
<第1の方法>
第1の方法は、下記工程(1)及び工程(2)を含む方法である。
工程(1):有機第1アミンとチオ尿素とを反応させてチオウレイド基を有する化合物及びアンモニアを製造する工程。
工程(2):該チオウレイド基を有する化合物を熱分解して、生成するイソチオシアネートとアンモニアとを分離する工程。
工程(1)は、有機第1アミンとチオ尿素とを反応させてチオウレイド基を有する化合物及びアンモニアを製造する工程であり、下記式(10)で表される反応を行う工程である。
なお、上記式(10)では単官能の有機第1アミンを用いた場合の反応を記述しているが、多官能の有機第1アミンを用いる場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲であるとよい。チオ尿素の使用量が少ない場合は複雑に置換したチオカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、過剰量のチオ尿素を使用することが好ましいが、あまりに過剰のチオ尿素を使用すると、返って、複雑に置換したチオカルボニル化合物が生成しやすくなったり、未反応のチオ尿素が残存し、チオ尿素の分離回収(後述する)に大きな労力する場合が生じる。そのため、チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で、好ましくは1.1倍〜10倍、より好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
反応温度は、使用する有機第1アミンとチオ尿素との反応性にもよるが、100℃〜300℃の範囲が好ましい。100℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったり、あるいは、複雑に置換したチオカルボニル化合物が増加したりする。一方、300℃よりも高い温度では、チオ尿素が分解したり、ヒドロキシ化合物が脱水素変性したり、あるいは、生成物であるN−置換−O−置換チオカルバメートの分解反応や変性反応等が生じやすくなる。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜280℃の範囲、更に好ましくは140℃〜250℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.1kPa〜1.5MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
当該工程(1)の反応は液相で行うことが好ましい。しかしながら、チオ尿素の融点は185℃であり、設定される反応条件において有機第1アミンとチオ尿素のみでは液相とならない場合もある。そのような場合には、溶媒を使用することが好ましい。
好ましく使用される溶媒としては、例えば、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。また、上記したヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)を反応溶媒として使用することも好ましい。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。例えば、生成するアンモニアを除去する工程(後述する)、有機第1アミンを精製する工程、チオ尿素を溶媒へ溶解する工程、溶媒を分離する工程、副生成物等を焼却したり廃棄する工程など、当該業者、当該エンジニアが想定できる範囲の工程や装置を付加して構わない。
工程(2)は、工程(1)で製造したチオウレイド基を有する化合物を熱分解して、生成するイソチオシアネートとアンモニアとを分離する工程であり、下記式(11)で表される反応を行う工程である。
なお、上記式(11)では単官能の有機第1アミンに由来するチオウレイド基を有する化合物を用いた場合の反応を記述しているが、多官能のチオウレイド基を有する化合物を使用する場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
反応温度は、使用するチオウレイド化合物の熱分解反応性にもよるが、150℃〜350℃の範囲が好ましい。150℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったりする。一方、350℃よりも高い温度では、チオウレイド化合物の変性反応が生起する場合がある。このような観点から、より好ましい温度は170℃〜320℃の範囲、更に好ましくは190℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。また、当該反応では、生成するアンモニアとイソチオシアネートとの反応速度が速いことから、生成するアンモニアを系外に素早く除去することが好ましく、アンモニアの除去を蒸留にて行うことを想定すると減圧、常圧が好ましく、更に減圧が好ましい。具体的には、0.1kPa〜80kPa(絶対圧)、より好ましくは1kPa〜50kPaの範囲である。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。
<第2の方法>
第2の方法は、下記工程(I)を含む方法である。
工程(I):有機第1アミンとチオ尿素とを反応させて、生成するイソチオシアネートとアンモニアとを分離する工程。
工程(I)の反応は、下記式(12)で表される。
なお、上記式(12)では単官能の有機第1アミンを用いた場合の反応を記述しているが、多官能の有機第1アミンを使用する場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
上記式(12)で表される反応は、上述した式(10)及び式(11)で表される反応を組み合わせた方法、あるいは、同時に行った別法でもあり、有機第1アミンとチオ尿素との反応を上記式(11)で表されるチオウレイド基を有する化合物の分解反応が生起する温度で行い、かつ、イソチオシアネートと共に生成するアンモニアを反応系より抜き出すことによって実施することができる。
チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲であるとよい。チオ尿素の使用量が少ない場合は複雑に置換したチオカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、過剰量のチオ尿素を使用することが好ましいが、あまりに過剰のチオ尿素を使用すると、返って、複雑に置換したチオカルボニル化合物が生成しやすくなったり、未反応のチオ尿素が残存し、チオ尿素の分離回収(後述する)に大きな労力する場合が生じる。そのため、チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で、好ましくは1.1倍〜10倍、より好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
反応温度は、使用する化合物の反応性にもよるが、150℃〜350℃の範囲が好ましい。150℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったりする。一方、350℃よりも高い温度では変性反応が生起する場合がある。このような観点から、より好ましい温度は170℃〜320℃の範囲、更に好ましくは190℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。また、当該反応は、生成するアンモニアを反応系より抜き出すことによって達成されることから、アンモニアの除去を蒸留にて行うことを想定すると減圧、常圧が好ましく、更に減圧が好ましい。具体的には、0.1kPa〜80kPa(絶対圧)、より好ましくは、1kPa〜50kPaの範囲である。
当該工程(I)の反応は液相で行うことが好ましいが、チオ尿素の融点は185℃であり、設定される反応条件において有機第1アミンとチオ尿素のみでは液相とならない場合もある。そのような場合には、溶媒を使用することが好ましい。
好ましく使用される溶媒としては、例えば、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。また、上記したヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)を反応溶媒として使用することも好ましい。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。例えば、生成するアンモニアを除去する工程(後述する)、有機第1アミンを精製する工程、チオ尿素を溶媒へ溶解する工程、溶媒を分離する工程、副生成物等を焼却したり廃棄する工程など、当該業者、当該エンジニアが想定できる範囲の工程や装置を付加して構わない。
<第3の方法>
第3の方法は、下記工程(A)〜工程(C)を含む方法である。
工程(A):有機第1アミンとチオ尿素とを反応させてチオウレイド基を有する化合物とアンモニアを製造する工程。
工程(B):該チオウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを反応させて、N−置換−O−置換チオカルバメート及びアンモニアを製造し、該アンモニアを分離する工程。
工程(C):該N−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解して、イソチオシアネートを製造する工程。
工程(A)は、有機第1アミンとチオ尿素とを反応させてチオウレイド基を有する化合物及びアンモニアを製造する工程であり、上述した工程(1)と同様の反応である。
工程(B)は、工程(A)のチオウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを反応させて、N−置換−O−置換チオカルバメート及びアンモニアを製造し、該アンモニアを分離する工程であり、下記式(13)で表される反応を行う工程である。
なお、上記式(13)では単官能の有機第1アミンに由来するチオウレイド基を有する化合物と単官能のヒドロキシ化合物を用いた場合の反応を記述しているが、多官能のチオウレイド基を有する化合物、及び/又は、多官能のヒドロキシ化合物を使用する場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
ヒドロキシ化合物の量は、チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲であるとよい。ヒドロキシ化合物の使用量が少ない場合は目的とする反応が進行しにくくなり副反応が生起する傾向が大きくなるため、過剰量のヒドロキシ化合物を使用することが好ましいが、あまりに過剰のヒドロキシ化合物を使用すると、反応器が大きくなったり必要な熱量が大きくなったりして生産効率の低下を招く場合がある。そのため、ヒドロキシ化合物の量は、チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基に対して化学量論比で、好ましくは2倍〜80倍、より好ましくは3倍〜50倍の範囲である。
該ヒドロキシ化合物は、工程(A)で溶媒として用いるヒドロキシ化合物をそのまま使用してもよいし、工程(A)で別の溶媒を使用した場合は、該溶媒を除去したのち、あるいは、該溶媒を除去せずに、ヒドロキシ化合物を新たに添加してもよい。
反応温度は、使用する化合物にもよるが、100℃〜300℃の範囲が好ましい。100℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったりする。一方、300℃よりも高い温度では、チオウレイド基を有する化合物の変性反応が生起する傾向が大きくなる。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜280℃の範囲、更に好ましくは140℃〜250℃の範囲である。
当該工程で行う反応(上記した反応(13))では、目的とするN−置換−O−置換カルバメートとともにアンモニアを副生するが、該アンモニアはN−置換−O−置換カルバメートとの反応性が高い。したがって、N−置換−O−置換カルバメートの収率を高めるためには、可能な限り、副生するアンモニアを系外に除去しながら反応を行う必要がある。好ましくは、反応液中のアンモニア濃度が1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下となるようにアンモニアを除去する。その方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などを行うことができる。例えば、反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒又はヒドロキシ化合物の沸騰下で行うこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.1kPa〜1.5MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
当該反応において溶媒を使用することもできる。好ましく使用される溶媒としては、例えば、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。また、過剰に使用するヒドロキシ化合物を反応溶媒として使用することも好ましい。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。
工程(C)は、工程(B)のN−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解して、イソチオシアネートを製造する工程であり、下記式(14)で表される反応を行う工程である。
なお、上記式(14)では単官能の有機第1アミンに由来するN−置換−O−置換チオカルバメートの反応を記述しているが、多官能のN−置換−O−置換チオカルバメートを使用する場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
反応温度は、使用するN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応性にもよるが、150℃〜350℃の範囲が好ましい。150℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったりする。一方、350℃よりも高い温度では、N−置換−O−置換チオカルバメートの変性反応が生起する場合がある。このような観点から、より好ましい温度は170℃〜320℃の範囲、更に好ましくは190℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。また、当該反応では、生成するヒドロキシ化合物とイソチオシアネートとの反応速度が速いことから、生成するヒドロキシ化合物を系外に素早く除去することが好ましく、ヒドロキシ化合物の除去を蒸留にて行うことを想定すると減圧、常圧が好ましく、更に減圧が好ましい。具体的には、0.1kPa〜80kPa(絶対圧)、更に好ましくは、1kPa〜50kPaの範囲である。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。
<第4の方法>
第4の方法は、下記工程(a)及び工程(b)を含む方法である。
工程(a):有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とを反応させて、N−置換−O−置換チオカルバメート及びアンモニアを製造し、該アンモニアを分離する工程。
工程(b):該N−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解して、イソチオシアネートを製造する工程。
工程(a)は、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とを反応させてN−置換−O−置換チオカルバメート及びアンモニアを製造し、該アンモニアを分離する工程であり、下記式(15)で表される反応を行う工程である。
なお、上記式(15)では単官能の有機第1アミンと単官能のヒドロキシ化合物を用いた場合の反応を記述しているが、多官能の有機第1アミン、及び/又は、多官能のヒドロキシ化合物を使用する場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲であるとよい。チオ尿素の使用量が少ない場合は複雑に置換したチオカルボニル化合物等が生成しやすくなるため、過剰量のチオ尿素を使用することが好ましいが、あまりに過剰のチオ尿素を使用すると、返って、複雑に置換したチオカルボニル化合物が生成しやすくなったり、未反応のチオ尿素が残存し、チオ尿素の分離回収(後述する)に大きな労力する場合が生じる。そのため、チオ尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で、好ましくは1.1倍〜10倍、より好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
ヒドロキシ化合物の量は有機第1アミンのアミノに対して化学量論比で1倍〜100倍の範囲であるとよい。ヒドロキシ化合物の使用量が少ない場合は目的とする反応が進行しにくくなり副反応が生起する傾向が大きくなるため、過剰量のヒドロキシ化合物を使用することが好ましいが、あまりに過剰のヒドロキシ化合物を使用すると、反応器が大きくなったり必要な熱量が大きくなったりして生産効率の低下を招く場合がある。そのため、ヒドロキシ化合物の量は有機第1アミンのアミノに対して化学量論比で、好ましくは2倍〜80倍、より好ましくは3倍〜50倍の範囲である。
反応温度は、使用する化合物にもよるが、100℃〜300℃の範囲が好ましい。100℃より低い温度では、反応が遅かったり、反応がほとんど起こらなかったりする。一方、300℃よりも高い温度では、チオウレイド基を有する化合物の変性反応が生起する傾向が大きくなる。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜280℃の範囲、更に好ましくは140℃〜250℃の範囲である。
当該工程で行う反応では、目的とするN−置換−O−置換カルバメートとともにアンモニアを副生するが、該アンモニアはN−置換−O−置換カルバメートとの反応性が高い。したがって、N−置換−O−置換カルバメートの収率を高めるためには、可能な限り、副生するアンモニアを系外に除去しながら反応を行う必要がある。好ましくは、反応液中のアンモニア濃度が1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下となるようにアンモニアを除去する。その方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などを行うことができる。例えば、反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒又はヒドロキシ化合物の沸騰下で行うこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧で行うことができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.1kPa〜1.5MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
当該反応において溶媒を使用することもできる。好ましく使用される溶媒としては、例えば、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。また、過剰に使用するヒドロキシ化合物を反応溶媒として使用することも好ましい。
当該反応を実施する際に使用する反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが槽型及び/又は塔型の反応器が好ましく使用される。
具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316又はSUS316Lが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。
工程(b)は、上述した工程(C)と同様の方法である。
<N−置換−O−置換カルバメート製造時のアンモニアの回収>
第2の方法の工程(B)及び第3の方法の工程(a)において、副生するアンモニアを分離するが、その方法について説明する。
工程(B)及び工程(a)において、アンモニアとともに、ヒドロキシ化合物の一部又は全部と、N−置換−O−置換チオカルバメートを除くチオカルボニル基を有する化合物の一部又は全部を気相成分として分離し、該気相成分を用いて下記工程(Y)を行う。
工程(Y):アンモニアとヒドロキシ化合物とチオカルボニル基を有する化合物を含む気相成分を凝縮器に導入して、ヒドロキシ化合物及びチオカルボニル基を有する化合物を凝縮する工程。
当該工程において、ヒドロキシ化合物、N−置換−O−置換チオカルバメートを除くチオカルボニル基を有する化合物(本実施の形態において、単に「チオカルボニル基を有する化合物」と称する)及び反応で副生するアンモニアを含有する気相成分を、凝縮器に導入し、ヒドロキシ化合物の一部又は全部と、チオカルボニル基を有する化合物の一部又は全部とを凝縮する。
本実施の形態で、凝縮器で凝縮される「チオカルボニル基を有する化合物」とは、工程(B)及び工程(a)の反応において使用又は生成するチオカルボニル基を有する基であって、目的化合物であるN−置換−O−置換チオカルバメートを除く化合物であり、原料として使用したチオ尿素そのもの(未反応物、及び/又は、有機第1アミンに対して過剰に使用した場合の過剰分)、チオ尿素とヒドロキシ化合物とが反応した化合物、同種の又は異種のチオ尿素が反応した化合物が含まれる。チオカルボニル基を有する化合物について、その全てを同定することは難しいが、具体的な化合物としては、原料として使用したチオ尿素、チオカルバミン酸エステルや、イソチオシアン酸、ジチオビウレット、トリチオシアヌル酸等が挙げられる。チオカルボニル基を有する化合物は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、紫外分光法等の方法によって該化合物に含有されるチオカルボニル基を検出する方法によって定量することができるし、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の方法によって、生成している化合物を具体的に分析する方法によって定量することもできる。これらの、チオカルボニル基を有する化合物は、融点が高いものが多く、析出しやすい傾向がある。
工程(Y)において、凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物の量(T)に対する、凝縮されるヒドロキシ化合物の量(H)の比(H/T)が1以上であることが好ましい。凝集されるチオカルボニル基を有する化合物の量(T)とは、該凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物中に含まれる、チオカルボニル基の数の合計を表し、凝集されるヒドロキシ化合物の量(H)とは、該凝集されるヒドロキシ化合物の数を表す(H)。即ち、比(H/T)は、チオカルボニル基とヒドロキシ化合物の化学量論比と言い換えてよい。
凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物、及び、凝集されるヒドロキシ化合物を定量する方法としては、凝集前のガス成分、あるいは凝集された液を公知の様々な方法で分析して得ることができ、ガス成分の分析値及び/又は凝集液の分析値のいずれを用いてもよい。例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、(近)赤外分光法、紫外分光法等の方法を用いることができる。凝集された液中には、該凝集過程でイソチオシアネート基とヒドロキシ化合物とが反応した成分も含まれる場合があり、例えば、N−置換−O−置換チオカルバメートが挙げられる。このような場合には、該N−置換−O−置換チオカルバメートを構成するカルバメート基は、チオカルボニル基とヒドロキシ化合物とから形成されているものとして、上記の量にそれぞれ加算して計算する。
凝縮操作において、凝縮されるヒドロキシ化合物の量を、該凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物の量に対して、1以上とすることによって、凝縮器において、これらの混合物を均一の液体混合物とすることができる。凝縮して得られる混合物の取り扱いが容易となるだけでなく、凝縮器への固体成分の付着・蓄積等の問題の発生を回避できる。また、後述するように、凝縮器から回収されるアンモニアに含有されるチオカルボニル基を有する化合物を、特定量以下とするためにも有効である。凝縮されるヒドロキシ化合物の、凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物に対する量は、より好ましくはH/Tが2以上、更に好ましくは3以上である。凝縮されるヒドロキシ化合物の、凝縮されるチオカルボニル基を有する化合物に対する量を上記の範囲とするために、温度や圧力のコントロールによってヒドロキシ化合物の蒸発量を調整し、かつ、凝縮器の温度をコントロールすることによってヒドロキシ化合物の凝縮量を調整することができる。また、該凝縮液を液相成分として取り扱うために、該ヒドロキシ化合物が固化しない温度で保持されることが好ましい。
また、凝縮されるヒドロキシル化合物の量の、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する比(H/T)は、特に制限されないが、例えば100以下であってよく、50以下であってもよい。この場合でも本発明の効果は十分に奏される。
凝縮器より、凝縮されない成分としてアンモニアを含む混合気体が回収されるが、該混合気体に含有される、チオカルボニル基を有する化合物は特定量以下とする。具体的には、該アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基(−C(=S)−)の数が、アンモニア分子の数に対する比で、1以下であり、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.1以下であり、更に好ましくは0.02以下である。該アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物の量を特定の範囲とする理由は、該凝縮器より該アンモニアを移送するためのラインにおける固体成分の付着及び蓄積を回避するためである。
アンモニアを移送するラインに付着及び蓄積する固体成分の全てを同定することはできないが、本発明者らが検討した結果、その多くは、チオカルボニル基を有する化合物であることが判明した。このような固体成分の付着及び蓄積を回避する方法として、アンモニアを移送するラインを加熱し、チオカルボニル基を有する化合物を分解する方法も考えられるが、本発明者らの検討では、単に加熱するだけでは、分解生成物(例えばイソシアン酸)が重合したり、該分解生成物が、他のチオカルボニル基を有する化合物と反応したりする場合が多く、固体成分の付着及び蓄積を完全に回避することは難しかった。また、単にラインを加熱した場合は、特に、アンモニアを移送するラインの出口(大気等に接触する部分)で、該アンモニア中に含有されるチオカルボニル基を有する化合物やそれらの分解生成物が急激に冷やされて固化し、固体成分の付着及び蓄積が著しくなる場合が多いことがわかった。本発明者らは、この課題について鋭意検討した結果、驚くべきことに、該アンモニアに含有されるチオカルボニル基を有する化合物を、上記した特定の量以下とすることで、固体成分の付着及び蓄積の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。このような効果を奏するメカニズムは明らかではないが、本発明者らは、ラインへの付着や蓄積は、チオカルボニル基を有する化合物そのものや、該チオカルボニル基を有する化合物の分解及び/又は重合生成物によって引き起こされると推測していて、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基を特定の濃度以下とすることで、該チオカルボニル基を有する化合物そのものの付着や、該化合物の分解及び/又は重合の反応速度が著しく低下するためであると考えている。
「チオカルボニル基を有する化合物」とは、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物との反応において使用するチオカルボニル基を有する基であり、原料として使用した該チオ尿素そのもの(未反応物、及び/又は、有機第1アミンに対して過剰に使用した場合の過剰分)、該チオ尿素とヒドロキシ化合物が反応した化合物、同種の又は異種のチオ尿素が反応した化合物が含まれる。チオカルボニル基を有する化合物について、その全てを同定することは難しいが、具体的な化合物としては、原料として使用したチオ尿素、チオカルバミン酸エステルや、副生するイソチオシアン酸、ジチオビウレット、トリチオシアヌル酸等が挙げられる。N−置換−O−置換チオカルバメートの製造条件にもよるが、上記した化合物の中でも、チオ尿素、イソチオシアン酸及びチオカルバミン酸エステルは、アンモニア中に含有される場合が多く量も多いことから、注意が必要である。本発明者らが検討したところでは、アンモニア中のこれらの化合物の量を、上記した好ましい範囲にコントロールすれば、概ね、アンモニアを移送するラインのへの固体成分の付着及び蓄積の問題は回避される。
アンモニア中のチオカルボニル基を有する化合物を定量する方法としては、公知の様々な方法を行うことができ、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、(近)赤外分光法、紫外分光法等の方法を用いることができる。具体的には、例えば、ガスクロマトグラフィーに該アンモニアを気体のまま導入して測定してもよい(アンモニアを移送するラインをガスクロマトグラフィーに直接接続して測定してもよいし、例えばテドラーバッグ等の気体を捕集するための袋や容器に捕集したアンモニアガスを、例えばガスタイトシリンジ等でガスクロマトグラフィーに注入して測定してもよい)。また、例えば、該アンモニアに含有されるチオカルボニル基を有する化合物(A)を、水、有機溶媒等に吸収させたのち、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、(近)赤外分光法、紫外分光法等の方法によって測定することもできる。これらの方法のなかでも、質量分析装置を具備したガスクロマトグラフィーに該アンモニアを気体のまま導入し、チオカルボニル基を有する化合物を同定し、該チオカルボニル基を有する化合物の量と、該チオカルボニル基を有する化合物に含有されるチオカルボニル基の数との積の総和をもって、該アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物の量とする方法が好ましく実施される。
ここで例示した方法での定量限界以下の量含有されている、チオカルボニル基を有する化合物は、アンモニア中の濃度が極めて低いことから、該アンモニアの移送ラインへの固体成分の付着及び蓄積に影響する場合はほとんどないことから、該「チオカルボニル基を有する化合物の量」に算入されなくても影響はなく、無視しうる。
上述の、凝縮器によって凝縮された、ヒドロキシ化合物と、チオカルボニル基を有する化合物との混合物は、反応器の内部に循環させて、工程(B)又は工程(a)の反応に再利用してもよいし、該混合物を回収して、ヒドロキシ化合物及び/又はチオカルボニル基を有する化合物を、工程(A)、工程(B)又は工程(a)の反応に再利用してもよい。
凝縮成分の再利用の際、ヒドロキシ化合物と、チオカルボニル基を有する化合物とに含有されるアンモニア量は、5000ppm以下とすることが好ましい。5000ppmよりも多くのアンモニアを含有していても再利用できるが、上述したように、工程(B)及び工程(a)の反応はアンモニアを副生する平衡反応であり、当該反応を効率よく進めるためには、生成物であるアンモニアを系外に除去することが必要である。再利用するヒドロキシ化合物とチオカルボニル基を有する化合物に含有されるアンモニアがあまりに多いと、該反応におけるアンモニアの抜き出し量が多くなり、単位時間あたりに抜き出し可能なアンモニア量(該反応器の能力や反応条件等に依存する)を超えてアンモニアが導入されて反応液中のアンモニア濃度を好ましい範囲(上述した範囲)にまで低下させることができず、N−置換−O−置換チオカルバメートの収率が低下する場合がある。したがって、該反応に再利用するヒドロキシ化合物とチオカルボニル基を有する化合物に含有されるアンモニア量は少ない方が好ましいが、該アンモニア量を極限まで少なくするには多大な労力を要する。このような観点から、ヒドロキシ化合物と、チオカルボニル基を有する化合物とに含有されるアンモニア量は、より好ましくは3000ppm以下、更に好ましくは2000ppm以下である。
上述したように、チオカルボニル基を有する化合物として様々な化合物が回収される場合があるが、ヒドロキシ化合物と、チオカルボニル基を有する化合物との混合物が、これらの化合物を含んでいても、該凝縮成分の再利用には差し支えない。
<チオウレイド基を有する反応を行う工程におけるアンモニアの分離>
上記した工程(1)及び工程(A)は、有機第1アミンとチオ尿素を反応させてチオウレイド基を製造する工程であるが、当該工程ではアンモニアが副生する。本発明者が検討したところ、上記した反応(7)は平衡が大きく生成側に偏っており、アンモニアの除去を行わなくても、当該工程の目的化合物であるチオウレイド基を有する化合物を高収率で得ることができる。しかしながら、次工程(工程(1)の場合は工程(2)、工程(A)の場合は工程(B))はアンモニアの除去が必要な工程であることから、次工程でのアンモニア除去量を低減する面から、当該工程(工程(1)又は工程(A))においてアンモニアを除去する工程(工程(X))を行うことは好ましい。
工程(X):チオウレイド基を有する化合物とアンモニアとを分離する工程。
当該工程(X)は、工程(1)又は工程(A)と同時に行ってもよいし、工程(1)、工程(A)の後に行ってもよいし、工程(1)又は工程(A)と同時に行い、工程(1)又は工程(A)の後に行ってもよい。
アンモニアを除去する方法は特に限定されないが、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法等を行うことができる。例えば、反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒又はヒドロキシ化合物の沸騰下で行うこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
[N−置換−O−置換チオカルバメートの移送用及び貯蔵用組成物]
本実施形態の移送用及び貯蔵用組成物は、N−置換−O−置換チオカルバメートとヒドロキシ化合物とを含み、該N−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート基当量に対する、ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比が1〜100の範囲である。
一般的に、N−置換−O−置換チオカルバメートは、N−置換−O−置換チオカルバメートを構成するカルバメート基によって分子間で水素結合を形成しやすい。そのため、N−置換−O−置換チオカルバメートは高い融点を有する場合が多い。このようなN−置換−O−置換チオカルバメートを移送する場合は、例えば、固体のN−置換−O−置換チオカルバメートを粉砕したり、ペレット状に加工する等の賦形化処理を行ったものを移送する方法、あるいは、N−置換−O−置換チオカルバメートの融点よりも高い温度に加熱して該N−置換−O−置換チオカルバメートを液体状として移送する方法が採られる。
賦形化処理を行ったものを移送する場合、N−置換−O−置換チオカルバメートの形状にばらつきが多くなるために、移送ラインの閉塞を招く場合がある。そのため、一定量のN−置換−O−置換チオカルバメートを安定的に移送するために煩雑な装置を必要としたり、該N−置換−O−置換チオカルバメートの形状をある範囲に揃える工程を必要とする場合が多い。
一方、N−置換−O−置換チオカルバメートを液体状として移送する場合には、移送中の固化を防止することも考慮して、N−置換−O−置換チオカルバメートの融点よりも高い温度に加熱する必要がある。このような高温下でN−置換−O−置換チオカルバメートを保持した場合、所望しない場所でN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応が生起してイソチオシアネートが生成したり、N−置換−O−置換チオカルバメートの熱変性反応を生起する場合が多い。特に、該N−置換−O−置換チオカルバメートは、例えば、N−置換−O−置換カルバメートの場合に比べて熱分解温度が低いため、該N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解によってイソチオシアネート基が生成しやすい。
本実施形態の組成物は、上記のような問題を解決するものであり、該組成物を移送又は貯蔵する際、組成物中のN−置換−O−置換チオカルバメートの熱変性反応を抑制して、N−置換−O−置換チオカルバメートを安定に保持することができるという効果を奏する。該組成物が、N−置換−O−置換チオカルバメートの熱変性反応を抑制する効果を奏する機構については明らかではないが、該組成物を構成するヒドロキシ化合物が、N−置換−O−置換チオカルバメートのチオウレタン結合(−NHC(=S)−O−)と水素結合を形成することにより、チオウレタン結合同士が近接しにくい状態を形成するため、例えば、下記式(16)で表されるチオウレイレン基を有する化合物を形成する反応を生起しにくいのではないかと、本発明者らは推測している。
なお、上記式(16)では単官能のN−置換−O−置換チオカルバメートの反応を記述しているが、多官能のN−置換−O−置換チオカルバメートの場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
本実施形態の組成物を構成する成分、及び、各成分の構成比は、以下の通りである。
(ヒドロキシ化合物)
ヒドロキシ化合物は、アルコール又は芳香族ヒドロキシ化合物を含有する。好ましいアルコールとしては、上記式(4)で表される化合物を用いることができる。また、好ましい芳香族ヒドロキシ化合物としては上記式(5)で表される化合物を用いることができる。
(N−置換−O−置換チオカルバメート)
本実施形態の組成物に係るN−置換−O−置換チオカルバメートは、上記式(7)及び(8)で表される化合物である。
本実施形態に係るN−置換−O−置換チオカルバメートの製造方法は特に限定されず、種々の公知の方法を用いることができる。N−置換−O−置換チオカルバメートの好ましい製造方法の一つとしては、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とを反応させて得られるN−置換−O−置換チオカルバメートを挙げることができ、上述した種々のN−置換−O−置換チオカルバメートの製造方法(第3の方法の工程(A)及び工程(B)、第4の方法の工程(a))で得られるN−置換−O−置換チオカルバメートを好ましく使用される。
また、上記の方法によって製造されるN−置換−O−置換チオカルバメート以外にも、例えば、N−置換−O−置換チオカルバメートとヒドロキシ化合物とを反応させて、該N−置換−O−置換チオカルバメートのエステル基を該ヒドロキシ化合物に由来するエステル基へと変換する、エステル交換反応を行って製造される、N−置換−O−置換チオカルバメートを使用することもできる。
(チオ尿素誘導体類)
本実施形態の組成物は、チオ尿素(H2N−C(=S)−NH2)、N−無置換−O−置換チオカルバメート、チオ炭酸エステル、チオウレイド基を有する化合物、ジチオビウレット(H2N−C(=S)−NH−C(=S)−NH2)及びジチオビウレット誘導体(ジチオビウレット基(−NHCSNHCSNH2)を末端に有する化合物)から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「チオ尿素誘導体類」と称する)を更に含むことができる。
ここで、ジチオビウレット誘導体は、N−置換−O−置換チオカルバメートが、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とを反応させて得られたものである場合、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物との反応において生成する、有機第1アミンに由来する化合物である。
チオウレイド基を有する化合物は、上記したように、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とからN−置換−O−置換チオカルバメートを製造する際に、有機第1アミンとチオ尿素との反応によって製造される化合物であってもよい(第3の方法の工程(A))。具体的には、上記式(4)で表される化合物である。
一般的に、移送用及び貯蔵用組成物がチオ尿素誘導体類を含有する場合、これらの化合物は活性な水素を有しているため、N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解時に生成するイソチオシアネートと反応して、高分子量体を生成して反応器に付着したり、固化する問題を引き起こすことがある。また、これらのチオ尿素誘導体類は、それ自身の熱分解反応によってアンモニアやイソチオシアン酸等の熱分解生成物を発生し、イソチオシアネートとの反応によって不溶性の高分子量体を生成させる場合もある。
しかしながら、本発明者らは、チオ尿素誘導体類を特定量含有する組成物が、移送及び貯蔵に際して、N−置換−O−置換チオカルバメートの変性反応の抑制に寄与することを見出した。また、本発明者らは、該組成物を用いてイソチオシアネートを製造すると、イソチオシアネートの収率を高める効果があることを見出した。このような効果は、これまで知られておらず、驚くべきことである。このような効果を発現する機構については明らかではないが、本発明者らは、該組成物を移送する際及び貯蔵する際には、チオ尿素誘導体類が、微量に混入する水や酸素をトラップしてN−置換−O−置換チオカルバメートの変性反応を抑制しているのではないかと推測している。さらに、本発明者らは、該組成物を用いてイソチオシアネートを製造する際には、チオ尿素誘導体類が、N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解触媒として働くためではないかと推測している。
したがって、本実施形態のN−置換−O−置換チオカルバメートの移送用及び貯蔵用組成物の好ましい態様として、N−置換−O−置換チオカルバメートが、有機第1アミンとチオ尿素とヒドロキシ化合物とから製造されるN−置換−O−置換チオカルバメートであり、該組成物が、N−置換−O−置換チオカルバメート及びヒドロキシ化合物に加え、チオ尿素、チオ炭酸エステル、N−無置換−O−置換チオカルバメート、チオウレイド基を有する化合物、ジチオビウレット及びジチオビウレット誘導体から選ばれる少なくとも1種を更に含むことができる。
本実施形態の組成物において、N−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート基当量に対する、ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比率は、1〜100の範囲である。上記のような機構を推定した場合、該組成物に含有される、N−置換−O−置換チオカルバメートやチオ尿素誘導体類の濃度は低い方が好ましいため、ヒドロキシ基はカルバメート基に対して大過剰である方が好ましいが、一方で、余りに過剰のヒドロキシ化合物を使用すると、N−置換−O−置換チオカルバメートの移送効率が低下したり、貯蔵の際の貯槽が大きくなりすぎる場合がある。また、該組成物を使用して、イソチオシアネートの製造を行うと、大過剰に存在するヒドロキシ化合物と、生成するイソチオシアネートとの逆反応が生起しやすくなり、イソチオシアネートの生成効率を低下させる場合もある。以上の点を考慮すると、ヒドロキシ基のカルバメート基に対する比は、より好ましくは1.5〜50、更に好ましくは3〜20である。
N−置換−O−置換チオカルバメートが、有機第1アミンとチオ尿素と芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて得られるN−置換−O−置換チオカルバメートである場合、本実施形態の組成物に含まれるチオ尿素誘導体の量、すなわち、チオ尿素の分子数V、N−無置換−O−置換チオカルバメートの分子数W、チオ炭酸エステルの分子数X、ジチオビウレットの分子数Y及びジチオビウレット誘導体の末端ジチオビウレット基の数Zの合計の数(V+W+X+Y+Z)は、N−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート基の数に対して、0.0001〜0.05であることが好ましい。
上記したように、N−置換−O−置換チオカルバメートの安定化や、イソチオシアネートの収率向上のためには、該組成物には、チオ尿素誘導体類がある程度の量が含有されていることが好ましい。しかしながら、一方で、余りに多くのチオ尿素誘導体類が含有されると、熱分解時に生成するイソチオシアネートとの反応によって、高分子量体を生成して反応器に付着したり、固化する場合がある。したがって、上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)は、N−置換−O−置換チオカルバメートに対して、好ましくは0.0001〜0.03、より好ましくは0.0001〜0.01の範囲である。上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)は、公知の方法で求めることができる。例えば、該組成物をガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等の方法によって分析し、該組成物に含有される成分を同定、定量して求めることができる。なお、範囲の下限を、0.0001としているが、これは、本発明者らが、ガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーとを使用して、上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)を求めた際の検出下限界を基準に設定している。
本実施形態の組成物には、上記した化合物(N−置換−O−置換チオカルバメート、ヒドロキシ化合物、チオ尿素誘導体類)以外の成分を含むことができる。そのような成分は、分子鎖中にチオウレイレン基(−NHCSNH−)を有する化合物、N−置換−O−置換チオカルバメートのフリース転位体(カルバメート基が芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基である場合に限る)、水、アルコール、不活性ガス(例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガス、アンモニアガス等)等である。
なお、本実施形態の説明において、チオウレイレン基(−NHCSNH−)をチオウレイン基と称する場合がある。
これらの成分の含有量に特に制限はないが、貯蔵温度等により所望でない副反応が生じるようであれば、随時その量を調整することが好ましい。特に注意すべき成分としては、酸素、アンモニア、水、酸化性物質、還元性物質である。本実施形態の貯蔵用組成物は窒素原子を含む化合物を含有しており、また芳香族ヒドロキシ化合物は酸素によって酸化されて変性し、着色等の現象が見られる場合が多い。また、当該組成物が引火性組成物となる場合が殆どであるため、当該技術領域でおこなわれる通常の有機化学物質の保管・貯蔵と同様に、公知の方法で酸素ガスを管理してよい。例えば窒素パージする等の方法で、貯槽の気相酸素濃度を、例えば酸素濃度を10%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下に管理する。気相部を窒素などの不活性ガスで流通させる場合は、不活性ガス中の酸素濃度を10ppm以下に管理する。
本実施形態の組成物は、好ましくはアンモニアを1〜1000ppm、より好ましくは1〜300ppm、更に好ましくは1〜100ppm、より一層好ましくは1〜50ppm、最も好ましくは1〜10ppm含有する。
本実施形態の組成物は、触媒等に由来する金属成分を含まないことが好ましい。本発明者らが検討した結果、該金属成分は、N−置換−O−置換チオカルバメートが変性する反応を生起しやすくする効果があることを見出した。したがって、該金属成分は、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは600ppm以下、更に好ましくは200ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
アンモニアは平衡を考慮すれば、従来の技術にも知られているように少ない方がよいが、驚くべきことに少量の存在で、組成物中の金属成分等によって、該N−置換−O−置換チオカルバメートが変性する反応を抑制するという効果を奏する。
上記したアンモニア量は、移送及び貯蔵開始時のアンモニア量であって、上記説明のように、移送及び貯蔵中に該触媒成分の抑制する効果によって消費される場合がある。該移送及び貯蔵用組成物を製造した際に、あるいは、調整した際に,あるいは貯蔵槽に入れた際に,あるいは移送を開始する際に、上記したアンモニア量とした移送用及び組成物が好ましい。アンモニア量の調整方法は、液相に窒素などの不活性ガスをパージさせる等の公知の方法でおこなってよい。
さらに上記したように該組成物中に含まれる金属成分は、以下に示す触媒成分に由来する金属成分であってもよい。金属成分として、ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属、亜鉛、鉄族金属の化合物が挙げられる。具体的には、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4(ここでXは、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基である)で表されるルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物;(CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等で表される有機スズ化合物;CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等の銅族金属の化合物;Zn(acac)2等の亜鉛の化合物;Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等の鉄族金属の化合物等である。Buはブチル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。
水濃度は、水分が多い場合、該組成物が均一とならない現象を引き起こす場合があるため、組成物の組成にもよるが、該組成物中に10質量%以下、好ましくは1質量%以下、該組成物をN−置換−O−置換チオカルバメートの原料として使用する場合には、水が多く存在すると水に由来する副反応が起こる場合があるため、更に好ましくは100ppm以下で管理する。水の管理方法は脱水剤、乾燥剤を用いたり、減圧、加圧又は常圧で蒸留したり、不活性ガスを液相にパージさせて水を同伴させて抜き出す等の公知の方法で行ってよい。酸化性物質、還元性物質が存在すると、ヒドロキシ化合物の変性を引き起こす場合があるので、公知のヒドロキシ化合物の管理方法でこれら物質を管理する。酸化性物質とは、有機酸、無機酸等のブレンステッド酸、ルイス酸を指し、還元性物質とは、有機塩基、無機塩基等のブレンステッド塩基、ルイス塩基、水素ガスを指す。還元性物質は、上記したアンモニアや、チオ尿素、該組成物を構成する化合物等、該組成物に由来する化合物を除く。
本実施形態の組成物を貯蔵及び移送する条件は、特に制限はないが、高温ではN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応が非常に起こりやすい条件となる場合がある。貯蔵期間にもよるが、貯蔵時はマイナス40℃〜280℃の範囲、流動性や安定性が損なわれる場合は、0℃〜260℃、更に好ましくは40℃〜260℃であるが、該組成物の使用用途や貯蔵期間、組成物の取り扱い性に応じて管理してよい。移送時の温度も貯蔵時の温度の範囲内で行うが、該組成物をイソチオシアネート製造用の原料として使用し、N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応器へ移送する際には、一般的に反応温度まで予熱して該熱分解反応器に移送するため、該熱分解反応工程の条件や該熱分解反応器に付帯する機器によって安全に移送できることを確認して移送を実施すれば構わない。通常、−40℃〜280℃の範囲、流動性や安定性が損なわれる場合は、0℃〜260℃、更に好ましくは40℃〜260℃である。上記したように該組成物の使用用途や移送時間、組成物の取り扱い性に応じて管理してよい。移送時の圧力も特に制限はないが、減圧条件から加圧条件で貯蔵してもよい。減圧下で保存する際には、ヒドロキシ化合物が留去される場合があるので、組成物中のN−置換−O−置換チオカルバメートとヒドロキシ化合物の比率が前記した範囲となるよう管理する。貯蔵及び移送する際の貯蔵容器や配管等にも特に制限はない。可燃性有機物であることを考慮し、取り扱う該組成物の引火点に留意して、取り扱う地域の法規に従った容器を選択する。材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。該組成物の貯槽や移送用設備は、その他のポンプ類、温調設備、計装設備など、必要に応じて公知の設備を付帯してよい。
本実施形態のN−置換−O−置換チオカルバメートの移送用及び貯蔵用組成物は、N−置換−O−置換チオカルバメートと、ヒドロキシ化合物と、チオ尿素誘導体類とを、上記した範囲の組成となるように混合して調製してもよいし、N−置換−O−置換チオカルバメートの製造において得られる、N−置換−O−置換チオカルバメートを含有する組成物を基に、上記した組成となるように、ヒドロキシ化合物やチオ尿素誘導体類を、添加及び/又は除去して調製してもよい。
本実施形態の移送用及び貯蔵用組成物は、特にイソチオシアネートの製造において好適に使用することができる。具体的には、移送用及び貯蔵用組成物を、熱分解反応器に移送して、該組成物に含有されるN−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解反応に付し、イソチオシアネートを製造することができる。
(イソチオシアネートの製造方法)
本実施形態のイソチオシアネートの製造方法は、上述の移送用及び貯蔵用組成物に含まれるN−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解反応してイソチオシアネートを得る工程を備える。N−置換−O−置換チオカルバメートを熱分解反応する方法、反応条件等は特に限定されず、例えば、特許第2089657号公報に記載の方法を用いることができる。また、上述した工程(C)及び工程(b)と同様の方法も好ましく使用できる。
<チオウレイド基を有する化合物の移送用及び貯蔵用組成物>
本実施形態のチオウレイド基を有する化合物の移送用及び貯蔵用組成物は、チオウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを含み、該チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基当量に対する、ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比が1〜100の範囲である、チオウレイド基を有する化合物の移送用及び貯蔵用組成物である。
一般的に、チオウレイド基を有する化合物は、チオウレイド基によって分子間で水素結合を形成しやすい。そのため、チオウレイド基を有する化合物は高い融点を有する場合が多い。このようなチオウレイド基を有する化合物を移送する場合は、例えば、固体のチオウレイド基を有する化合物を粉砕したり、ペレット状に加工する等の賦形化処理を行ったものを移送する方法、あるいは、チオウレイド基を有する化合物の融点よりも高い温度に加熱して該チオウレイド基を有する化合物を液体状として移送する方法が採られる。
賦形化処理を行ったものを移送する場合、チオウレイド基を有する化合物の形状にばらつきが多くなるために、移送ラインの閉塞を招く場合がある。そのため、一定量のチオウレイド基を有する化合物を安定的に移送するために煩雑な装置を必要としたり、該チオウレイド基を有する化合物の形状をある範囲に揃える工程を必要とする場合が多い。
一方、チオウレイド基を有する化合物を液体状として移送する場合には、移送中の固化を防止することも考慮して、チオウレイド基を有する化合物の融点よりも高い温度に加熱する必要がある。このような高温下でチオウレイド基を有する化合物を保持した場合、所望しない場所でチオウレイド基を有する化合物の熱分解反応が生起してイソチオシアネートやアンモニアが生成したり、チオウレイド基どうしが縮合してチオウレイレン基を生成する等、所望しないチオウレイド基を有する化合物の熱変性反応を生起する場合が多い。
本実施形態の組成物は、上記のような問題を解決するものであり、該組成物を移送又は貯蔵する際、組成物中のチオウレイド基を有する化合物の熱変性反応を抑制して、チオウレイド基を有する化合物を安定に保持することができるという効果を奏する。該組成物が、チオウレイド基を有する化合物の熱変性反応を抑制する効果を奏する機構については明らかではないが、該組成物を構成するヒドロキシ化合物が、チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基と水素結合を形成することにより、チオウレイド基同士が近接しにくい状態を形成するため、例えば、下記式(17)で表されるチオウレイド基を有する化合物を形成する反応を生起しにくいのではないかと、本発明者らは推測している。
なお、上記式(17)では単官能のチオウレイド基を有する化合物の反応を記述しているが、多官能の場合においても同様の反応が進行することは当業者にとっては容易に理解できる。
本実施形態の組成物を構成する成分、及び、各成分の構成比は、以下の通りである。
(ヒドロキシ化合物)
ヒドロキシ化合物は、アルコール又は芳香族ヒドロキシ化合物を含有する。好ましいアルコールとしては、上記式(4)で表される化合物を用いることができる。また、好ましい芳香族ヒドロキシ化合物としては上記式(5)で表される化合物を用いることができる。
(チオウレイド基を有する化合物)
本実施形態の組成物に係るチオウレイド基を有する化合物は、上記式(6)で表される化合物である。
本実施形態に係るチオウレイド基を有する化合物の製造方法は特に限定されず、種々の公知の方法を用いることができる。チオウレイド基を有する化合物の好ましい製造方法の一つとしては、有機第1アミンとチオ尿素とを反応させて得られるチオウレイド基を有する化合物を挙げることができ、上述した種々のチオウレイド基を有する化合物の製造方法(第1の方法の工程(1)、第3の方法の工程(A))で得られるチオウレイド基を有する化合物を好ましく使用される。
上記の方法によって製造されるチオウレイド基を有する化合物以外にも、例えば、チオウレイレン基を有する化合物とチオ尿素との反応によってチオウレイレン基をチオウレイド基に変換する反応をおこなって製造される化合物を使用することもできる。
これらの方法において、例えば、有機第1アミンとチオ尿素との反応をヒドロキシ化合物存在下で行う場合等、反応条件や使用する化合物によっては、チオウレイド基を有する化合物以外に、N−置換−O−置換チオカルバメートを生成する場合もあるが、本実施の形態の組成物にN−置換−O−置換チオカルバメートが含まれていても構わない。
(チオ尿素誘導体類)
本実施形態の組成物は、チオ尿素(H2N−C(=S)−NH2)、N−無置換−O−置換チオカルバメート、チオ炭酸エステル、ジチオビウレット(H2N−C(=S)−NH−C(=S)−NH2)及びジチオビウレット誘導体(ジチオビウレット基(−NHCSNHCSNH2)を末端に有する化合物)から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「チオ尿素誘導体類」と称する)を更に含むことができる。
ここで、ジチオビウレット誘導体は、チオウレイド基を有する化合物が、有機第1アミンとチオ尿素とを反応させて得られたものである場合、該反応において生成する、有機第1アミンに由来する化合物である。
一般的に、該移送用及び貯蔵用組成物がチオ尿素誘導体類を含有する場合、これらの化合物は活性な水素を有しているため、チオウレイド基を有する化合物と反応して、高分子量体を生成して反応器に付着したり、固化する問題を引き起こすことがある。また、これらのチオ尿素誘導体類は、それ自身の熱分解反応によってアンモニアやイソチオシアン酸等の熱分解生成物を発生して不溶性の高分子量体を生成させる場合もある。
しかしながら、本発明者らは、チオ尿素誘導体類を特定量含有する組成物が、移送及び貯蔵に際して、ウレイド基を有する化合物との変性反応の抑制に寄与することを見出した。また、本発明者らは、該組成物を用いてN−置換−O−置換チオカルバメートを製造すると、N−置換−O−置換チオカルバメートの収率を高める効果があることを見出した。このような効果は、これまで知られておらず、驚くべきことである。このような効果を発現する機構については明らかではないが、本発明者らは、該組成物を移送する際及び貯蔵する際には、チオ尿素誘導体類が、微量に混入する水や酸素をトラップしてチオウレイド基を有する化合物の変性反応を抑制しているのではないかと推測している。
したがって、本実施形態のチオウレイド基を有する化合物の移送用及び貯蔵用組成物の好ましい態様として、チオウレイド基を有する化合物が、有機第1アミンとチオ尿素とから製造されるチオウレイド基を有する化合物であり、該組成物が、チオウレイド基を有する化合物及びヒドロキシ化合物に加え、チオ尿素、チオ炭酸エステル、N−無置換−O−置換チオカルバメート、ジチオビウレット及びジチオビウレット誘導体から選ばれる少なくとも1種を更に含むことができる。
本実施形態の組成物において、チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基当量に対する、ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比率は、1〜100の範囲である。上記のような機構を推定した場合、該組成物に含有される、チオウレイド基を有する化合物やチオ尿素誘導体類の濃度は低い方が好ましいため、ヒドロキシ基はチオウレイド基に対して大過剰である方が好ましいが、一方で、余りに過剰のヒドロキシ化合物を使用すると、チオウレイド基を有する化合物の移送効率が低下したり、貯蔵の際の貯槽が大きくなりすぎる場合がある。以上の点を考慮すると、ヒドロキシ基のチオウレイド基に対する比は、より好ましくは1.5〜50、更に好ましくは3〜20である。
チオウレイド基を有する化合物が、有機第1アミンとチオ尿素とを反応させて得られるチオウレイド基を有する化合物である場合、本実施形態の組成物に含まれるチオ尿素誘導体の量、すなわち、チオ尿素の分子数V、N−無置換−O−置換チオカルバメートの分子数W、チオ炭酸エステルの分子数X、ジチオビウレットの分子数Y及びジチオビウレット誘導体の末端ジチオビウレット基の数Zの合計の数(V+W+X+Y+Z)は、N−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート基の数に対して、0.0001〜0.05であることが好ましい。
上記したように、チオウレイド基を有する化合物の安定化や、イソチオシアネートの収率向上のためには、該組成物には、チオ尿素誘導体類がある程度の量が含有されていることが好ましい。しかしながら、一方で、余りに多くのチオ尿素誘導体類が含有されると、熱分解時に生成するイソチオシアネートとの反応によって、高分子量体を生成して反応器に付着したり、固化する場合がある。したがって、上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)は、チオウレイド基を有する化合物に対して、好ましくは0.0001〜0.03、より好ましくは0.0001〜0.01の範囲である。上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)は、公知の方法で求めることができる。例えば、該組成物をガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等の方法によって分析し、該組成物に含有される成分を同定、定量して求めることができる。なお、範囲の下限を、0.0001としているが、これは、本発明者らが、ガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーとを使用して、上記の合計の数(V+W+X+Y+Z)を求めた際の検出下限界を基準に設定している。
本実施形態の組成物には、上記した化合物(チオウレイド基を有する化合物、ヒドロキシ化合物、チオ尿素誘導体類)以外の成分を含むことができる。そのような成分は、分子鎖中にチオウレイレン基(−NHCSNH−)を有する化合物、N−置換−O−置換チオカルバメートのフリース転位体(カルバメート基が芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基である場合に限る)、水、アルコール、不活性ガス(例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガス、アンモニアガス等)等である。
なお、本実施形態の説明において、チオウレイレン基(−NHCSNH−)をチオウレイン基と称する場合がある。
これらの成分の含有量に特に制限はないが、貯蔵温度等により所望でない副反応が生じるようであれば、随時その量を調整することが好ましい。特に注意すべき成分としては、酸素、アンモニア、水、酸化性物質、還元性物質である。本実施形態の貯蔵用組成物は窒素原子を含む化合物を含有しており、また芳香族ヒドロキシ化合物は酸素によって酸化されて変性し、着色等の現象が見られる場合が多い。また、当該組成物が引火性組成物となる場合が殆どであるため、当該技術領域でおこなわれる通常の有機化学物質の保管・貯蔵と同様に、公知の方法で酸素ガスを管理してよい。例えば窒素パージする等の方法で、貯槽の気相酸素濃度を、例えば酸素濃度を10%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは100ppm以下に管理する。気相部を窒素などの不活性ガスで流通させる場合は、不活性ガス中の酸素濃度を10ppm以下に管理する。
本実施形態の組成物は、好ましくはアンモニアを1〜1000ppm、より好ましくは1〜300ppm、更に好ましくは1〜100ppm、より一層好ましくは1〜50ppm、最も好ましくは1〜10ppm含有する。
本実施形態の組成物は、触媒等に由来する金属成分を含まないことが好ましい。本発明者らが検討した結果、該金属成分は、N−置換−O−置換チオカルバメートが変性する反応を生起しやすくする効果があることを見出した。したがって、該金属成分は、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは600ppm以下、更に好ましくは200ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
アンモニアは平衡を考慮すれば、従来の技術にも知られているように少ない方がよいが、驚くべきことに少量の存在で、組成物中の金属成分等によって、該N−置換−O−置換チオカルバメートが変性する反応を抑制するという効果を奏する。
上記したアンモニア量は、移送及び貯蔵開始時のアンモニア量であって、上記説明のように、移送及び貯蔵中に該触媒成分の抑制する効果によって消費される場合がある。該移送及び貯蔵用組成物を製造した際に、あるいは、調整した際に、あるいは貯蔵槽に入れた際に、あるいは移送を開始する際に、上記したアンモニア量とした移送用及び組成物が好ましい。アンモニア量の調整方法は、液相に窒素などの不活性ガスをパージさせる等の公知の方法で行ってもよい。
さらに上記したように該組成物中に含まれる金属成分は、以下に示す触媒成分に由来する金属成分であってもよい。金属成分として、ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属、亜鉛、鉄族金属の化合物が挙げられる。具体的には、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4(ここでXは、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基である)で表されるルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物;(CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等で表される有機スズ化合物;CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等の銅族金属の化合物;Zn(acac)2等の亜鉛の化合物;Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等の鉄族金属の化合物等である。Buは、ブチル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。
水濃度は、水分が多い場合、該組成物が均一とならない現象を引き起こす場合があるため、組成物の組成にもよるが、該組成物中に10質量%以下、好ましくは1質量%以下、該組成物をN−置換−O−置換チオカルバメートの原料として使用する場合には、水が多く存在すると水に由来する副反応が起こる場合があるため、更に好ましくは100ppm以下で管理する。水の管理方法は脱水剤、乾燥剤を用いたり、減圧、加圧又は常圧で蒸留したり、不活性ガスを液相にパージさせて水を同伴させて抜き出す等の公知の方法で行ってよい。酸化性物質、還元性物質が存在すると、ヒドロキシ化合物の変性を引き起こす場合があるので、公知のヒドロキシ化合物の管理方法でこれら物質を管理する。酸化性物質とは、有機酸、無機酸等のブレンステッド酸、ルイス酸を指し、還元性物質とは、有機塩基、無機塩基等のブレンステッド塩基、ルイス塩基、水素ガスを指す。還元性物質は、上記したアンモニアや、チオ尿素、該組成物を構成する化合物等、該組成物に由来する化合物を除く。
本実施形態の組成物を貯蔵及び移送する条件は、特に制限はないが、高温ではチオウレイド基を有する化合物の熱分解反応が非常に起こりやすい条件となる場合がある。貯蔵期間にもよるが、貯蔵時はマイナス40℃〜280℃の範囲、流動性や安定性が損なわれる場合は、0℃〜260℃、更に好ましくは40℃〜260℃であるが、該組成物の使用用途や貯蔵期間、組成物の取り扱い性に応じて管理してよい。移送時の温度も貯蔵時の温度の範囲内で行うが、該組成物をN−置換−O−置換チオカルバメート製造用の原料として使用し、N−置換−O−置換チオカルバメートを製造する反応器に移送する際には、一般的に反応温度まで予熱して該反応器に移送するため、該反応工程の条件や該熱分解反応器に付帯する機器によって安全に移送できることを確認して移送を実施すれば構わない。通常、−40℃〜280℃の範囲、流動性や安定性が損なわれる場合は、0℃〜260℃、更に好ましくは40℃〜260℃である。上記したように該組成物の使用用途や移送時間、組成物の取り扱い性に応じて管理してよい。移送時の圧力も特に制限はないが、減圧条件から加圧条件で貯蔵してもよい。減圧下で保存する際には、ヒドロキシ化合物が留去される場合があるので、組成物中のチオウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物の比率が前記した範囲となるよう管理する。貯蔵及び移送する際の貯蔵容器や配管等にも特に制限はない。可燃性有機物であることを考慮し、取り扱う該組成物の引火点に留意して、取り扱う地域の法規に従った容器を選択する。材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。該組成物の貯槽や移送用設備は、その他のポンプ類、温調設備、計装設備など、必要に応じて公知の設備を付帯してよい。
本実施形態のチオウレイド基を有する化合物の移送用及び貯蔵用組成物は、チオウレイド基を有する化合物と、ヒドロキシ化合物と、チオ尿素誘導体類とを、上記した範囲の組成となるように混合して調製してもよいし、チオウレイド基を有する化合物の製造において得られる、チオウレイド基を有する化合物を含有する組成物を基に、上記した組成となるように、ヒドロキシ化合物やチオ尿素誘導体類を、添加及び/又は除去して調製してもよい。
本実施形態の移送用及び貯蔵用組成物は、特にN−置換−O−置換チオカルバメートの製造及び該チオウレイド基を有する化合物の熱分解によるチオイソシアネートにおいて好適に使用することができる。具体的には、移送用及び貯蔵用組成物を、N−置換−O−置換チオカルバメートを製造する反応器に移送してヒドロキシ化合物との反応を行うことでN−置換−O−置換チオカルバメートを製造したり、該組成物を熱分解反応器に移送して、該組成物に含有されるウレイド基を有する化合物を熱分解反応に付し、イソチオシアネートを製造することができる。
[イソチオシアネート組成物]
本実施形態のイソチオシアネート組成物は、イソチオシアネートと、下記式(1)及び式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物とを含有する。
上記式(1)及び(2)で表される基を有する化合物を全て挙げることは難しいが、該組成物に含まれるイソチオシアネートに由来する化合物と同種であることが好ましい。上記イソチオシアネートは、上記式(1)及び(2)で表される基のいずれも有しない化合物である。例えば、イソチオシアネートが上記式(9)で表される化合物である場合、上記式(1)及び(2)で表される基を有する化合物は、下記式(18)で表される化合物であってもよい。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、nは、上記式(3)で定義した数を表し、x、y、zは、各々独立に、0からnの整数を表し、n−z−y、n−x−yは、いずれも0以上の数である。
なお、上記式(18)において、yが0である場合は、下記式(19)で表される化合物を表す。
式中、R1は、上記式(3)で定義した基を表し、nは、上記式(3)で定義した数を表しxは、上記式(18)で定義した数を表す。
本発明者らは、驚くべきことに、上記式(1)又は(2)で表される基を有する化合物を含有するイソチオシアネート組成物が貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。上記式(1)又は(2)で表される基を有する化合物がこのような効果を奏する機構は明らかではないが、本発明者らは、上記式(1)又は(2)で表される基を有する化合物に含まれる活性水素(ここでは窒素原子に結合している水素原子)が、貯蔵中にわずかに混入する水、酸素、二酸化炭素等をトラップすることによって、これらの化合物によるイソチオシアネートの劣化を防ぐためではないかと推測している。
これらの化合物が含有される好ましいイソチオシアネート組成物は、イソチオシアネート組成物の全質量を基準として、97重量%以上のイソチオシアネートを含み、該組成物に含まれるイソチオシアネート基の全量に対して、上記式(1)及び(2)で表される基の合計が、0.1モルppm以上1.0×104モルppm以下であるイソチオシアネート組成物である。
上記したように、貯蔵中に混入する水、酸素等の影響を排除するためには、上記式(1)及び(2)で表される基を有する化合物は、当該組成物に多く含有されることが好ましいが、一方で、あまりに多く含まれると、該基自体がイソチオシアネート基に作用してかえって当該組成物の安定性を低下させる原因となる場合がある。このような観点から、上記式(1)及び(2)で表される基の合計は、好ましくは、0.1モルppm以上1.0×104モルppm以下であり、より好ましくは、0.3モルppm以上5.0×103モルppm以下であり、更に好ましくは0.5モルppm以上3.0×103モルppm以下であり、一層好ましくは1.0モルppm以上1.0×103モルppm以下である。
また、窒素原子に結合している水素原子が効果を奏する点から、チオカルバメート基も同様の効果を奏する場合が多い。チオカルバメート基を有する化合物が含有される場合は、該チオカルバメート基は、該組成物に含まれるイソチオシアネート基の全量に対して、0.1モルppm以上1.0×104モルppm以下であることが好ましい。
当該組成物に含有される基は、公知の方法によって定量することができ、例えば、赤外線分光光度計、近赤外分光光度計、1H−NMR(例えば、イソチオシアネート基、上記式(1)又は(2)で表される基に隣接するメチレン鎖等の水素原子に相当するピークの積分比から算出する)、13C−NMR(例えば、イソチオシアネート基、上記式(1)又は(2)で表される基の硫黄原子と結合しているチオカルボニル基の炭素に相当するピークの積分比)から算出する)等によって官能基を直接的あるいは間接的に定量する方法や、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーによって該組成物に含有される化合物をそれぞれ定量し、該量比を基に官能基の比率を算出する方法を用いることができる。
なお、本実施の形態のイソチオシアネート組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない程度の溶媒を含有していてもよく、公知の安定剤や触媒等が含まれていても差し支えない。
本実施の形態のイソチオシアネート組成物は貯蔵安定性に優れ、例えば、高温多湿な環境下での保存に際して従来にない効果を奏する。
以上に示した、本実施の形態のイソチオシアネートの製造方法、イソチオシアネートの製造に係る組成物は、簡便なイソチオシアネートの製造に効果を奏し、また、本実施の形態のイソチオシアネート組成物は貯蔵安定性に優れる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
(1)高速液体クロマトグラフィー分析方法
(i)分析条件
装置:高速液体クロマトグラフィーLC−10AT(日本国、島津社製)
カラム:Inertsil−ODS、粒径5μm、カラム径4.6mm、長さ150mm(日本国、ジーエルサイエンス社製)
温度:40℃
溶離液:A液 アセトニトリル、B液 0.3重量%リン酸水溶液
流量:A液とB液の和で1.0mL/分
グラジエント:
測定開始時、A液:5体積%/B液:95体積%
測定開始15分後、A液:15体積%/B液:85体積%
測定開始20分後、A液:15体積%/B液:85体積%
ただし、測定開始時から測定開始15分後までは、A液は毎分10/15体積%ずつ増加し、B液は毎分10/15体積%ずつ減少する。
検出器:紫外線検出器(測定波長:210nm)
分析試料注入量:10μL
(ii)高速液体クロマトグラフィー分析試料
サンプル100mgと内部標準物質として1,1−ジエチル尿素10mgとを1.5gの酢酸に溶解させて分析試料とした。
(2)ガスクロマトグラフィー分析方法
装置:日本国、島津製作所社製、GC−14B
カラム:Porapack N
直径3mm、長さ3m、SUS製
カラム温度:60℃
注入口温度:120℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:40mL/分
検出器:TCD(熱伝導度検出器)
(i)ガスクロマトグラフィー分析サンプル
テドラーバッグに捕集したガスサンプルを、ガスタイトシリンジにてガスを採取し注入した。
(ii)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(3)GC−MS分析方法
装置:日本国、島津製作所社製 GC17AとGCMS−QP5050Aを接続した装置
カラム:米国、アジレントテクノロジーズ社製 DB−1
長さ30m、内径0.250mm、膜厚1.00μm
カラム温度:50℃で5分間保持後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温
200℃で5分間保持後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温
注入口温度:300℃
インターフェース温度:300℃
(i)GC−MS分析サンプル
テドラーバッグに捕集したガスサンプルを、ガスタイトシリンジにてガスを採取し注入した。
(ii)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。なお、検出下限界は、サンプル中の濃度に換算して約1ppmである。
以下の文中で「アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基」の量について言及するが、この量は以下の手順によって算出した量である。
i)該アンモニアを含有する気体について、上記した方法でGC−MS分析を行う。
ii)GC−MSによって検出される化合物1分子に含有されるチオカルボニル基の個数を求める。
iii)GC−MSによって検出される、各々の化合物の量(単位はmmolとする)と、該化合物に含有されるチオカルボニル基の数を掛け合わせた総和(単位はmmolとする)を算出し、該総和を「アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基」の量とする。したがって、該量には、GC−MSにおける検出下限界以下の量のチオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基の量は算入されないが、これらの算入されないチオカルボニル基の総量はごく少量であるため、本実施例での、「アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基」とアンモニアの量比に関する議論には何ら支障をきたさない。
[実施例1]第1の方法によるオクチルイソチオシアネートの製造
工程(1−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
オクチルアミン3.9gとチオ尿素4.6gとメシチレン140gを内容積が500mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを110℃に加熱したオイルバスに浸漬し、撹拌しながら内容物の加熱を行った。12時間加熱後、溶液を採取し高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対してオクチルチオ尿素が収率95%で生成していた。溶液中のアンモニア濃度は15ppmであった。
工程(1−2):チオウレイド基を有する化合物の熱分解
工程(1−1)で得られた反応液を、トラップ球を備えるガラスチューブに入れ、内部を20kPaに減圧し、予め250℃に加熱しておいたガラスチューブオーブンで加熱した。トラップ球に回収した液体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルイソチオシアネートがオクチルアミンに対して収率83%で得られた。
[実施例2]
工程(2−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
ヘキサメチレンジアミン5.3gとチオ尿素13.9gとベンジルエーテル320gを内容積が1Lのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法を行った。ヘキサメチレンジアミンに対してヘキサメチレンジチオウレイドが収率93%で生成していた。溶液中のアンモニア濃度は10ppmであった。
工程(2−2):チオウレイド基を有する化合物の熱分解
工程(2−1)で得られた反応液を使用して、実施例1の工程(1−2)と同様の方法を行った。トラップ球に回収した液体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートがヘキサメチレンジアミンに対して収率80%で得られた。
[実施例3]
工程(3−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
イソホロンジアミン22.5gとチオ尿素63.5gとフェノール1260gを内容積が3Lのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法を行った。イソホロンジアミンに対してイソホロンジチオウレイドが収率88%で生成していた。溶液中のアンモニア濃度は3250ppmであった。
工程(3−2):アンモニアの除去
工程(3−1)の反応後、該フラスコに真空ポンプを接続し、該フラスコ内を1kPaとした。50℃のオイルバスに該フラスコを浸漬し1時間加熱したところ、溶液中のアンモニア濃度は5ppmであった。
・工程(3−3):チオウレイド基を有する化合物の熱分解
工程(3−2)で得られた反応液を使用した以外は、実施例1の工程(1−3)と同様の方法を行った。トラップ球に回収した液体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、イソホロンジイソチオシアネートがイソホロンジアミンに対して収率78%で得られた。
[実施例4]
工程(4−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
アニリン90.5gとチオ尿素236gとジベンジルエーテル2460gを内容積が5Lのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした以外は、実施例1の工程(1−1)と同様の方法を行った。アニリンに対してフェニルチオ尿素が収率91%で生成していた。溶液中のアンモニア濃度は20ppmであった。
・工程(4−2):チオウレイド基を有する化合物の熱分解
薄膜蒸発器(神鋼環境ソリューション製、伝熱面積0.1m2)のオイルジャケットに250℃のオイルを循環させ、内部を1kPaに減圧した。工程(4−1)で得られた反応液を該薄膜蒸発器に供給し熱分解を行った。トラップ球に回収した液体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、イソホロンジイソチオシアネートがイソホロンジアミンに対して収率81%で得られた。
[実施例5]第2の方法によるオクチルイソチオシアネートの製造
工程(5−1):イソチオシアネートの製造
オクチルアミン3.9gとチオ尿素4.6gとメシチレン123gを内容積が500mLのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とし、該フラスコにジムロート冷却器を取り付けた。該冷却器には約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコを、内容物を撹拌しながら、180℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ還流が始まった。その状態で3時間加熱を行い、反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率75%でオクチルイソチオシアネートが得られた。
[実施例6]
工程(6−1):イソチオシアネートの製造
アリルアミン塩酸塩5.8gとチオ尿素7.0gとアニソール310gを内容積が1Lのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とし、該フラスコにジムロート冷却器を取り付けた。該冷却器には約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコを、内容物を撹拌しながら、180℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ還流が始まった。その状態で3時間加熱を行い、反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、アリルアミン塩酸塩に対して収率72%でアリルイソチオシアネートが得られた。
[実施例7]
工程(7−1):イソチオシアネートの製造
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン7.8gとチオ尿素10.2gとメシチレン210gを使用した以外は、実施例5の工程(5−1)と同様の方法を行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンに対して収率70%で4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネートが得られた。
[実施例8]第3の方法によるオクチルイソチオシアネートの製造方法
工程(8−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
オクチルアミン3.9gとチオ尿素4.6gと2−エチルへキシルアルコール30gを内容積が100mLのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを、予め150℃に加熱したオイルバスに浸漬し、撹拌しながら5時間加熱した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率95%でオクチルチオウレイドが得られた。溶液中のアンモニア濃度は20ppmであった。
工程(8−2):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
工程(8−1)で得られた反応液に2−エチルヘキシルアルコール90gを更に加えて、該フラスコにジムロート冷却器を取り付け、該冷却器に約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコの内容物を撹拌しながら、予め200℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ、還流が始まった。この状態で加熱を5時間行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率83%でN−オクチルチオカルバミン酸2−エチルヘキシルが得られ、オクチルアミンに対して収率8%でオクチルイソチオシアネートが生成していた。
工程(8−3):オクチルイソチオシアネートの製造
工程(8−2)の反応液をロータリーエバポレーターで減圧蒸留して、2−エチルヘキシルアルコールを留去した。トラップ球を備えたガラスチューブに残留液を入れて内部を10kPaに減圧し、250℃に加熱したガラスチューブオーブンで加熱した。トラップ球に回収した液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率51%でオクチルイソチオシアネートが得られ、N−オクチルチオカルバミン酸2−エチルヘキシルを収率22%で回収した。
[実施例9]
工程(9−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
図1に示す装置を使用した。ヘキサメチレンジアミン5.3kgとチオ尿素13.9kgと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール133.0kgを攪拌槽101に投入し、内部を窒素雰囲気とした。攪拌槽101を150℃で5時間加熱した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率93%でヘキサメチレンジチオウレイドが得られた。溶液中のアンモニア濃度は4500ppmであった。
工程(9−2):アンモニアの除去
攪拌槽101を100℃にし、内部を真空ポンプで2kPaに減圧した。3時間後、溶液中のアンモニア濃度は20ppmであった。
・工程(9−3):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
ヘリパックNo.3を充填した蒸留塔102の内部を4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールで全還流状態とした。蒸留塔上部の温度は240℃、凝縮器103の温度は100℃であった。ライン14を閉止すると同時にライン10を通じて工程(9−3)の反応液を供給した。ライン11からは濃度調整のために4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを供給した。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの量の比は5であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は0.5であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンアミンに対して収率81%でN,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)が得られ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率3%でヘキサメチレンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(9−4):ヘキサメチレンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107(神鋼環境ソリューション社製、伝熱面積0.1m2)を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22よりヘキサメチレンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。
貯槽112に回収したヘキサメチレンジイソチオシアネートを分析したところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートとアミノヘキシルチオ尿素、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む組成物であり、アミノヘキシルチオ尿素の濃度は15モルppm、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの濃度は150wtppmであった。ヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率はヘキサメチレンジアミンに対して75%であった。
上記工程(9−1)〜工程(9−4)を繰り返し100日間連続的に運転したのち、ライン12の開放検査を行ったところ、ライン12内部への付着は観測されなかった。
[実施例10]
工程(10−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
実施例(9−1)と同様の方法を行った。
工程(10−2):アンモニアの除去
実施例(9−2)と同様の方法を行った。
工程(10−3):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
ヘリパックNo.3を充填した蒸留塔102の内部を4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールで全還流状態とした。蒸留塔上部の温度は210℃、凝縮器103の温度は100℃であった。ライン14を閉止すると同時にライン10を通じて工程(10−2)の反応液を供給した。ライン11からは濃度調整のために4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを供給した。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの量の比は4.5であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は1.2であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンアミンに対して収率81%でN,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)が得られ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率3%でヘキサメチレンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(10−4):ヘキサメチレンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22よりヘキサメチレンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。
貯槽112に回収したヘキサメチレンジイソチオシアネートを分析したところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートとアミノヘキシルチオ尿素、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む組成物であり、アミノヘキシルチオ尿素の濃度は0.1モルppm未満(分析装置の検出限界よりも低い)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの濃度は90wtppmであった。ヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率はヘキサメチレンジアミンに対して68%であった。
上記工程(10−1)〜工程(10−4)を繰り返し連続的に運転したところ、88日目にライン12が閉塞した。
[実施例11]
工程(11−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
実施例(9−1)と同様の方法を行った。
工程(11−2):アンモニアの除去
実施例(9−2)と同様の方法を行った。
工程(11−3):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
ヘリパックNo.3を充填した蒸留塔102の内部を4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールで全還流状態とした。蒸留塔上部の温度は240℃、凝縮器103の温度は100℃であった。ライン14を閉止すると同時にライン10を通じて工程(11−2)の反応液を供給した。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの量の比は0.9であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は1.2であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンアミンに対して収率81%でN,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)が得られ、ヘキサメチレンジアミンに対して収率3%でヘキサメチレンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(11−4):ヘキサメチレンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22よりヘキサメチレンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。
貯槽112に回収したヘキサメチレンジイソチオシアネートを分析したところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートとアミノヘキシルチオ尿素、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む組成物であり、アミノヘキシルチオ尿素の濃度は1.2モル%、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの濃度は650ppmであった。ヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率はヘキサメチレンジアミンに対して80%であった。
上記工程(11−1)〜工程(11−4)を繰り返し連続的に運転したところ、30日目に凝縮器103が閉塞した。
[実施例12]
工程(12−1):チオウレイド基を有する化合物の製造
図1に示す装置を使用した。2,4−トルエンジアミン3.8kgとチオ尿素9.5kgと2−フェニルエタノール63.0kgを使用した以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法を行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2,4−トルエンジアミンに対して収率95%で2,4−トルエンジウレイドが得られた。溶液中のアンモニア濃度は53ppmであった。
工程(12−2):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
蒸留塔102の内部を2−フェニルエタノールで全還流状態とした。蒸留塔上部の温度は200℃、凝縮器103の温度は50℃であった。ライン14を閉止すると同時にライン10を通じて工程(12−1)の反応液を供給した。ライン11からは濃度調整のために2−フェニルエタノールを供給した。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、2−フェニルエタノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する2−フェニルエタノールの量の比は15であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は0.05であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2,4−トルエンジアミンに対して収率82%で2,4−トルエンジ(チオカルバミン酸(2−エチルフェニル))が得られた。
工程(12−3):2,4−トルエンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22より2,4−トルエンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。2,4−トルエンジイソチオシアネートの収率は2,4−トルエンジアミンに対して72%であった。
上記工程(12−1)〜工程(12−3)を繰り返し120日間連続的に運転したのち、ライン12の開放検査を行ったところ、ライン12内部への付着は観測されなかった。
[実施例13]第4の方法によるオクチルイソチオシアネートの製造方法
工程(13−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
オクチルアミン3.9gとチオ尿素4.6gと2−エチルへキシルアルコール120gを内容積が500mLのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコにジムロート冷却器を取り付け、該冷却器に約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコの内容物を撹拌しながら、予め200℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ、還流が始まった。この状態で加熱を5時間行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率75%でN−オクチルチオカルバミン酸2−エチルヘキシルが得られ、オクチルアミンに対して収率8%でオクチルイソチオシアネートが生成していた。
工程(13−2):オクチルイソチオシアネートの製造
工程(13−1)の反応液をロータリーエバポレーターで減圧蒸留して、2−エチルアルコールを留去した。トラップ球を備えたガラスチューブに残留液を入れて内部を10kPaに減圧し、250℃に加熱したガラスチューブオーブンで加熱した。トラップ球に回収した液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、オクチルアミンに対して収率45%でオクチルイソチオシアネートが得られ、N−オクチルチオカルバミン酸2−エチルヘキシルを収率20%で回収した。
[実施例14]
工程(14−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
図1に示す装置を使用した。イソホロンジアミン4.1kgとチオ尿素7.3kgと2.6−キシレノール72.0kgを攪拌槽101に投入し、内部を窒素雰囲気として50℃で混合し均一溶液とした。
蒸留塔102の内部を2,6−キシレノールで全還流状態とした。蒸留塔上部の温度は200℃、凝縮器103の温度は50℃であった。ライン14を閉止すると同時にライン10を通じて攪拌槽101の混合液を供給した。ライン11からは濃度調整のために、2,6−キシレノールを供給した。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、2,6−キシレノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する2,6−キシレノールの量の比は7であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は0.3であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、イソホロンアミンに対して収率77%で3−((2,6−ジメチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルが得られ、イソホロンジアミンに対して収率1%でイソホロンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(14−2):イソホロンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22よりイソホロンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。
貯槽112に回収したイソホロンジイソチオシアネートを分析したところ、イソホロンジイソチオシアネートと3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,6−キシレノールを含む組成物であり、3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの濃度は8モルppm、2,6−キシレノールの濃度は100wtppmであった。イソホロンジイソチオシアネートの収率はイソホロンジアミンに対して72%であった。
上記工程(14−1)〜工程(14−2)を繰り返し120日間連続的に運転したのち、ライン12の開放検査を行ったところ、ライン12内部への付着は観測されなかった。
[実施例15]
工程(15−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
蒸留塔上部の温度を180℃とした以外は、実施例14の工程(14−1)と同様の方法を行った。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、2,6−キシレノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する2,6−キシレノールの量の比は7.2であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は1.1であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、イソホロンアミンに対して収率77%で3−((2,6−ジメチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルが得られ、イソホロンジアミンに対して収率1%でイソホロンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(15−2):イソホロンジイソチオシアネートの製造
工程(14−1)で得た反応液の代わりに工程(15−1)で得た反応液を使用した以外は、実施例14の工程(14−2)と同様の方法を行った。
貯槽112に回収したイソホロンジイソチオシアネートを分析したところ、イソホロンジイソチオシアネートと3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,6−キシレノールを含む組成物であり、3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの濃度は8モルppm、2,6−キシレノールの濃度は100wtppmであった。イソホロンジイソチオシアネートの収率はイソホロンジアミンに対して72%であった。
上記工程(15−1)〜工程(15−2)を繰り返し連続的に運転したところ、35日目にライン12が閉塞した。
[実施例16]
工程(16−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
ライン11より2,6−キシレノールを供給しなかった以外は実施例14の工程(14−1)と同様の方法を行った。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、2,6−キシレノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する2,6−キシレノールの量の比は0.9であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は0.4であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、イソホロンアミンに対して収率77%で3−((2,6−ジメチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルが得られ、イソホロンジアミンに対して収率1%でイソホロンジイソチオシアネートが生成していた。
工程(16−2):イソホロンジイソチオシアネートの製造
工程(14−1)で得た反応液の代わりに工程(16−1)で得た反応液を使用した以外は、実施例14の工程(14−2)と同様の方法を行った。
貯槽112に回収したイソホロンジイソチオシアネートを分析したところ、イソホロンジイソチオシアネートと3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,6−キシレノールを含む組成物であり、3−(アミノチオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの濃度は8モルppm、2,6−キシレノールの濃度は100wtppmであった。イソホロンジイソチオシアネートの収率はイソホロンジアミンに対して72%であった。
上記工程(16−1)〜工程(16−2)を繰り返し連続的に運転したところ、34日目に凝縮器103が閉塞した。
[実施例17]
工程(17−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
図1に示す装置を使用した。2,4−トルエンジアミン3.8kgとチオ尿素9.5kgと2−フェニルエタノール63.0kgを使用した以外は、実施例14の工程(14−1)と同様の方法を行った。
凝縮器103で凝縮され、貯槽104に回収された凝縮液を分析したところ、該凝縮液は、チオ尿素、チオビウレット、アンモニア、2−フェニルエタノールを含有し、チオカルボニル基を有する化合物の量に対する2−フェニルエタノールの量の比は13であった。
ライン12より回収される、アンモニアを含む気体を分析したところ、該アンモニアはチオ尿素とイソチオシアン酸を含有し、アンモニア分子の数に対するチオカルボニル基の数の比は0.1であった。
貯槽106に回収した反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2,4−トルエンジアミンに対して収率78%で2,4−トルエンジ(チオカルバミン酸(2−エチルフェニル))が得られた。
工程(17−2):2,4−トルエンジイソチオシアネートの製造
薄膜蒸発器107を予め280℃に加熱し、貯槽106に回収した反応液を、ライン16を経由した供給した。生成した気体成分を、ライン18を通じて蒸留塔108に供給し、該蒸留塔108にて蒸留分離を行った。蒸留塔108の中段に設けたライン22より2,4−トルエンジイソチオシアネートを抜き出し、貯槽112に回収した。2,4−トルエンジイソチオシアネートの収率は2,4−トルエンジアミンに対して70%であった。
上記工程(17−1)〜工程(17−2)を繰り返し90日間連続的に運転したのち、ライン12の開放検査を行ったところ、ライン12内部への付着は観測されなかった。
[実施例18]
下記式(20)で表されるN−置換−O−置換チオカルバメートとフェノールとを含む組成物(N−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート当量に対するフェノールのヒドロキシ基当量の比が50)を、10LのSUS製貯蔵容器に容量の約1/2程度入れ、窒素置換し、日本国岡山県倉敷市児島地区の貯蔵環境で800日間貯蔵した。貯蔵期間中、該容器は約40℃(おおむね30℃〜50℃でコントロールされる)の温水循環ジャケットで保温した。貯蔵後、該組成物を分析したところ、該N−置換−O−置換チオカルバメートは貯蔵前に対して98mol%含まれていた。また、該貯蔵物を使用してN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応を行ったところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートが、熱分解反応前のN−置換−O−置換チオカルバメートに対して収率92%で得られた。
[実施例19〜38、比較例1〜2]
実施例18と同様の方法により貯蔵を行った結果を表1及び2に示す。
表中、「N−置換−O−置換チオカルバメート」は該組成物に含有されるN−置換−O−置換チオカルバメートを表し、「ROH」は該組成物に含有されるヒドロキシ化合物を表し、「当量比」はN−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート当量に対するヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比を表し、「貯蔵収率」は貯蔵前に対するN−置換−O−置換チオカルバメートの収率(mol%)を表し、「NCS収率」は、該N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解によってイソチオシアネートを製造する際の、熱分解前のN−置換−O−置換チオカルバメートに対するイソチオシアネートの収率を表す。また、チオ尿素、N−無置換−O−置換チオカルバメート等が含まれる場合には、「その他」の欄に示し、当該欄に記載した数値はN−置換−O−置換チオカルバメートのカルバメート当量に対する当該化合物の当量の比を表す。
なお、比較例2は、ヒドロキシ化合物の代わりにナフタレンを使用し、その量がN−置換−O−置換チオカルバメートのチオカルバメート基に対して50当量であることを示す。
[実施例39]
実施例9の工程(9−3)で得られた反応液を分析したところ、該反応液に含まれる4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールのヒドロキシ基は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)のチオカルバメート基に対して16等量であり、イソチオシアネート基は0.03等量であった。該反応液を、実施例18と同様の方法で貯蔵した。貯蔵後、該組成物を分析したところ、該N−置換−O−置換チオカルバメートは貯蔵前に対して95mol%含まれていた。また、該貯蔵物を使用してN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応を行ったところ、ヘキサメチレンジイソチオシアネートが、熱分解反応前のN−置換−O−置換チオカルバメートに対して収率91%で得られた。
[実施例40]
実施例14の工程(14−1)で得られた反応液を分析したところ、該反応液に含まれる2,6−キシレノールのヒドロキシ基は、3−((2,6−ジメチルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルのチオカルバメート基に対して16等量であり、イソチオシアネート基は0.013等量であった。該反応液を、実施例18と同様の方法で貯蔵した。貯蔵後、該組成物を分析したところ、該N−置換−O−置換チオカルバメートは貯蔵前に対して98mol%含まれていた。また、該貯蔵物を使用してN−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解反応を行ったところ、イソホロンジイソチオシアネートが、熱分解反応前のN−置換−O−置換チオカルバメートに対して収率90%で得られた。
[実施例41]
下記式(21)で表されるチオウレイド基を有する化合物とフェノールとを含む組成物(チオウレイド基を有する化合物のチオウレイド量に対するフェノールのヒドロキシ基当量の比が55)を、10LのSUS製貯蔵容器に容量の約1/2程度入れ、窒素置換し、日本国岡山県倉敷市児島地区の貯蔵環境で800日間貯蔵した。貯蔵期間中、該容器は約40℃(おおむね30℃〜50℃でコントロールされる)の温水循環ジャケットで保温した。貯蔵後、該組成物を分析したところ、該チオウレイド基は貯蔵前に対して95mol%含まれていた。
[実施例42〜59、比較例3〜4]
実施例41と同様の方法により貯蔵を行った結果を表3及び4に示す。
表中、「チオウレイド基を有する化合物」は該組成物に含有されるチオウレイド基を有する化合物を表し、「ROH」は該組成物に含有されるヒドロキシ化合物を表し、「当量比」はチオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基当量に対するヒドロキシ化合物のヒドロキシ基当量の比を表し、「貯蔵収率」は貯蔵前に対するチオウレイド基を有する化合物の収率(mol%)を表す。また、チオ尿素、N−無置換−O−置換チオカルバメート等が含まれる場合には、「その他」の欄に示し、当該欄に記載した数値はチオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基当量に対する当該化合物の当量の比を表す。
なお、比較例4は、ヒドロキシ化合物の代わりにテトラリンを使用し、その量がチオウレイド基を有する化合物のチオウレイド基に対して70当量であることを示す。
[実施例60]
下記式(22)で表されるイソチオシアネートと下記式(23)で表される化合物とを混合し、10LのSUS製貯蔵容器に容量の約1/2程度入れ、窒素置換し、日本国岡山県倉敷市児島地区の貯蔵環境で800日間貯蔵した。貯蔵期間中、該容器は約40℃(おおむね30℃〜50℃でコントロールされる)の温水循環ジャケットで保温した。貯蔵後、該組成物を分析したところ、該チオウレイド基は貯蔵前に対して90mol%含まれていた。
[実施例60〜66、比較例5]
実施例60と同様の方法により貯蔵を行った結果を表5に示す。
表中、「貯蔵収率」は貯蔵前に対するイソチオシアネートの収率(mol%)を表す。
[実施例67]
工程(67−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
図2に示すような反応装置にて、N−置換−O−置換チオカルバメートの製造を行った。
ヘキサメチレンジアミン330gと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール8510gとチオ尿素463gを混合し原料溶液を調製した。充填材(ヘリパックNo.3)を充填した、内径20mmの充填塔(反応器)202を240℃に加熱し、内部の圧力を約20kPaとした。充填塔202の上部に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を導入し、運転条件が安定したのち、原料溶液を約1.0g/minで導入し、反応液を、充填塔202の最底部に具備したライン4を経由して貯槽205に回収した。充填塔202の最上部に具備したライン2より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器203で凝縮して得られる成分を貯槽204に回収した。貯槽205に回収した反応液は4.69kgであった。該反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含有し、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約85%であった。
一方、貯槽204に回収した成分について1H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとチオ尿素の混合物であり、チオ尿素の含有量は約286g(3.77mol)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの含有量は4.05kg(19.6mol)であった。また、貯槽204の上部に具備したライン5より、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、100分間あたりのアンモニア回収量は0.871g(51mmol)であった。また、該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有されるカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基の量は0.002mmolであった。
上記工程(67−1)を継続して行ったところ、運転時間が380日を超過してもアンモニア排出ラインの閉塞は観測されなかった。
工程(67−2):N−置換−O−置換チオカルバメートの熱分解によるイソチオシアネートの製造
図3に示す装置を使用してイソチオシアネートの製造を行った。
薄膜蒸留装置302を300℃に加熱し、該薄膜蒸留装置内の圧力を約1.3kPaとした。実施例67で貯槽205に回収した反応液を貯槽301に投入し、ライン30を介して、約1800g/hrで該薄膜蒸留装置に供給した。該薄膜蒸留装置302の底部に具備されたライン32より液体成分を抜き出し、貯槽303に回収した。貯槽303に回収した液体成分は、ライン33を経て、再度、薄膜蒸留装置302に供給した。薄膜蒸留装置302の上部に具備されたライン31より、ヘキサメチレンジイソチオシアネートと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む気体成分を抜き出した。該気体成分を蒸留塔204に導入し、ヘキサメチレンジイソチオシアネートと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを蒸留分離した。4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む高沸成分の一部は、蒸留塔304の底部に具備されたライン36を経て貯槽303に戻し、一部は、リボイラー308を経て再び蒸留塔304に供給し、残りは、貯槽309に回収した。蒸留塔304の塔頂部より、ライン34を介してヘキサメチレンジイソチオシアネートを含有する気相成分を抜き出し、コンデンサー305で凝縮し、該凝縮液の一部は蒸留塔304に戻した。貯槽307には、凝縮液が得られた。該凝縮液を1H−NMR及びガスクロマトグラフィーで分析したところ、該凝縮液は、ヘキサメチレンジイソチオシアネートを99wt%含有する溶液であった。ヘキサメチレンジアミンに対するヘキサメチレンジイソチオシアネートの収率は78%であった。
[実施例68]
工程(68−1):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
2,4−トルエンジアミン210gと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール9220gとチオ尿素325gを混合して原料溶液とし、充填塔202を240℃に加熱し、内部の圧力を約52kPaとし、凝縮器を120℃に保持して、原料溶液を約1.0g/minで導入した以外は、実施例67の工程(67−1)と同様の方法を行った。得られた反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、該反応液は、トルエン−2,4−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含有し、2,4−トルエンジアミンに対する収率は、約83%であった。
また、貯槽204の上部に具備したライン25より、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、100分間あたりのアンモニア回収量は0.624g(38mmol)であった。該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有されるカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基の量は、0.02mmolであった。
上記工程(68−1)を継続して行ったところ、運転時間が380日を超過してもアンモニア排出ラインの閉塞は観測されなかった。
[実施例69]
工程(69−1):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン350gと4−フェニルフェノール3100gとチオ尿素391gを混合して原料溶液とし、充填塔202を240℃に加熱し、内部の圧力を約26kPaとし、凝縮器を約150℃に保持して、原料溶液を約1.2g/minで導入した以外は、実施例67の工程(67−1)と同様の方法を行った。得られた反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−((4−フェニルフェノキシ)チオカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルを含む溶液であり、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約83%であった。
また、貯槽204の上部に具備したライン25より、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、100分間あたりのアンモニア回収量は1.8g(106mmol)であった。該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有されるカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基の量は、0.51mmolであった。
上記工程(69−1)を継続して行ったところ、運転時間が380日を超過してもアンモニア排出ラインの閉塞は観測されなかった。
工程(69−2):N−置換チオカルバミン酸エステルの熱分解によるイソチオシアネートの製造
薄膜蒸留装置202を220℃に加熱し、該薄膜蒸留装置内の圧力を約1.3kPaとし、実施例67で貯槽205に回収した反応液の代わりに、実施例69の工程(69−1)で貯槽205に回収した反応液を約660g/hrで該薄膜蒸留装置に供給した以外は、実施例67の工程(67−2)と同様の方法を行った。
貯槽307に得られた凝縮液を1H−NMR及びガスクロマトグラフィーで分析したところ、該凝縮液は、イソホロンジイソチオシアネートを99wt%含有する溶液であり、3−(アミノメチル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対するイソホロンジイソチオシアネートの収率は73%であった。
[実施例70]
工程(70−1):チオカルバミン酸エステルの製造
工程(70−1)では、図4に示す反応装置を使用した。
チオ尿素3.48kgと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール48.5kgの混合液を貯槽401に投入した。充填材(ヘリパックNo.3)を充填した、内径20mmの充填塔402を150℃に加熱し、内部の圧力を30kPaとした。貯槽401より、チオ尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの混合物を充填塔402にフィードし、反応液を、充填塔402の最底部に具備したライン42を経由して貯槽406に回収した。充填塔402の塔頂部よりライン41を経て気相成分を凝縮器403に導入し、凝縮液を充填塔402に還流し、気体のアンモニアをライン43より排出した。貯槽406に回収した反応物を、液体クロマトグラフィーで分析したところ、該反応物は、チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)を21wt%含有する混合物であった。
工程(70−2):チオウレイド基を有する化合物の製造
工程(70−2)では引き続き図4に示す装置を使用した。
ライン46を閉止した状態で、貯槽406の混合物を120℃に加熱した攪拌槽409に投入した。攪拌槽409を攪拌している状態で、ヘキサメチレンジアミン1.83kgを、貯槽407よりライン45を経て、攪拌槽409に、約20g/minの速度で供給した。ヘキサメチレンジアミンの供給が終了したのち、約10時間攪拌し、反応液をサンプリングした。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサメチレンジチオウレアを含有し、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は95%であった。ライン47を開き、該反応液を、ライン47を経て貯槽410に移送した。
工程(70−3):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
工程(70−3)では引き続き、図4に示す装置を使用した。
充填材(ヘリパックNo.3)を充填した、内径40mmの充填塔411を240℃に加熱し、内部の圧力を26kPaとし、凝縮器を90℃に保持した。充填塔411に具備したライン48より、工程(70−2)で得た反応液を約5g/分でフィードした。反応初期は非定常状態のため、サンプルを廃棄した。定常状態となったのちフィードした反応液は約43.3kgであった。充填塔411の最底部に具備したライン51を経由して貯槽416に回収した。充填塔411の最上部に具備したライン49より気相成分を、約85℃に保持された凝縮器413で凝縮し、得られる液相成分を、気液分離器413を経て、貯槽414に回収した。貯槽416に回収した反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む組成物であった。また、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)のヘキサメチレンジアミンに対する収率は約83%であった。一方、貯槽414に回収した成分について1H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとチオ尿素とチオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)の混合物であり、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの含有量は1.57kg(7.67mol)、チオ尿素の含有量は約41.9g(0.55mol)、チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)の含有量は1.33kg(5.33mol)であった。
気液分離器413よりライン50を経て、排出されたアンモニアをテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、100分間あたりのアンモニア回収量は2.07g(0.12mol)であった。また、該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有されるカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基の量は、0.032mmolであった。
上記工程(70−1)〜工程(70−3)を継続して行ったところ、運転時間が380日を超過してもアンモニア排出ラインの閉塞は観測されなかった。
[実施例71]
工程(71−1):ウレイド基を有する化合物の製造
工程(71−1)では、図5に示す装置を使用した。
ライン63を閉止した状態で、2,4−ジ−tert−アミルフェノール31.3kgとチオ尿素4.36kgを、120℃に加熱した貯槽601で混合し、該混合液を、120℃に加熱した攪拌槽603(容量80L、バッフル付き)へ移送した。攪拌槽603を攪拌している状態で、ヘキサメチレンジアミン1.66kgを、貯槽602よりライン62を経て、攪拌槽603に、約20g/minの速度で供給した。ヘキサメチレンジアミンの供給が終了したのち、約10時間攪拌した。ライン63を開き、反応液を、ライン63を経て貯槽604に移送した。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサンジチオウレアを含有し、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約84%であった。
工程(71−2):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
工程(71−2)では引き続き、図5に示す装置を使用した。
充填材(ヘリパックNo.3)を充填した、内径40mm、高さ4000mmの充填塔605を240℃に加熱し、内部の圧力を26kPaとした。充填塔605に具備したライン64より、工程(71−1)で得た反応液を約3.5g/分でフィードした。反応初期は非定常状態のため、サンプルを廃棄した。定常状態となったのちフィードした反応液は約30.8kgであった。充填塔605の最底部に具備したライン66を経由して貯槽610に回収した。充填塔605の最上部に具備したライン65より気相成分を、約60℃に保持された凝縮器606で凝縮し、得られる液相成分を、気液分離器608を経て、貯槽609に回収した。得られた反応液を、液体クロマトグラフィー及び1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(2、4−ジ−tert−アミルフェニル)エステル)を含有する組成物であり、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(2、4−ジ−tert−アミルフェニル)エステル)のヘキサメチレンジアミンに対する収率は約74%であった。一方、貯槽609に回収した成分について1H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、2,4−ジ−tert−アミルフェノールとチオ尿素とチオカルバミン酸(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)の混合物であり、2,4−ジ−tert−アミルフェノールの含有量は約4.23kg(18.1mol)、チオ尿素の含有量は約0.55kg(7.2mol)、チオカルバミン酸(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)の含有量は約0.58kg(2.1mol)であった。また、気液分離器608よりライン67を経て、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、100分間あたりのアンモニア回収量は4.56g(0.268mol)であった。また、該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有されるカルボニル基を有する化合物に含まれるカルボニル基の量は、0.053mmolであった。
上記工程(71−1)〜工程(71−2)を継続して行ったところ、運転時間が380日を超過してもアンモニア排出ラインの閉塞は観測されなかった。
[比較例6]
工程(F−1):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
工程(F−1)では図2に示すような反応器を使用した。
ヘキサメチレンジアミン1.21kgと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール42.9kgとチオ尿素2.94kgを混合し、原料溶液を調製した。充填塔202を240℃に加熱し、内部の圧力を40kPaとした。リボイラーの温度は260℃であった。充填塔202の上部に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を導入し、運転条件が安定したのち、原料溶液を約1.6g/分で導入し、反応液を、充填塔202の最底部に具備したライン4を経由して貯槽205に回収した。充填塔202の最上部に具備したライン2より気相成分を回収し、約190℃に保持された凝縮器203で凝縮して得られる成分を貯槽204に回収した。運転条件が安定したのち10時間超過したところで、貯槽204に回収した成分を採取し、1H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとチオ尿素の混合物であり、チオ尿素の含有量は約25.5g(0.42mol)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの含有量は83.1g(0.40mol)であった。貯槽204の上部に具備したライン5より、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、10分間あたりのアンモニア回収量は0.24g(14.4mmol)であった。また、該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基の量は16.2mmolであった。貯槽205に得られた反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含有し、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)のヘキサメチレンジアミンに対する収率は約78%であった。当該反応を継続して行ったところ、運転条件が安定したのち34日を超過したところでライン5が閉塞し、N−置換チオカルバミン酸エステルの製造を行うことができなくなった。
[比較例7]
工程(G−1):N−置換チオカルバミン酸エステルの製造
リボイラーの温度を255℃とした以外は、比較例6の工程(F−1)と同様の方法を行った。運転条件が安定したのち10時間超過したところで、貯槽204に回収した成分を採取し、1H−NMR及び13C−NMR測定を行ったところ、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとチオ尿素の混合物であり、チオ尿素の含有量は約25.5g(0.42mol)、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールの含有量は72.1g(0.35mol)であった。貯槽104の上部に具備したライン5より、アンモニアを含有する気体が排出された。該気体をテドラーバッグに回収し、該気体をガスタイトシリンジにてガスクロマトグラフィーに注入して、該気体成分の分析を行った。その結果、10分間あたりのアンモニア回収量は0.24g(14.4mmol)であった。また、該気体をGC−MSにより分析したところ、該アンモニアに含有される、チオカルボニル基を有する化合物に含まれるチオカルボニル基の量は12.1mmolであった。貯槽205に得られた反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含有し、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(チオカルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)のヘキサメチレンジアミンに対する収率は約78%であった。当該反応を継続して行ったところ、運転条件が安定したのち70日を超過したところで凝縮器203が閉塞し、N−置換チオカルバミン酸エステルの製造を行うことができなくなった。
[実施例71]2−イソチオシアナートエチルメタクリレート
工程(71−1)
2−アミノエチルアルコール1.8gとチオ尿素4.6gと2−エチルへキシルアルコール120gを内容積が500mLのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコにジムロート冷却器を取り付け、該冷却器に約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコの内容物を撹拌しながら、予め200℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ、還流が始まった。この状態で加熱を5時間行った。
工程(71−2):イソチオシアネートの製造
工程(71−1)の反応液をロータリーエバポレーターで減圧蒸留して、2−エチルヘキシルアルコールを留去した。トラップ球を備えたガラスチューブに残留液を入れて内部を10kPaに減圧し、250℃に加熱したガラスチューブオーブンで加熱した。トラップ球に回収した液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2−アミノエチルアルコールに対して収率40%で2−ヒドロキシエチルイソチオシアネートが得られた。
[実施例72]
工程(72−1)2−イソチオシアネートエチルメタクリレートの製造方法
2−ヒドロキシエタノールエチルメタクリレート1.0gとテトラヒドロフラン100gを内容量200mlのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを氷浴に浸漬、攪拌させながら、冷却後、メタクリル酸クロリド1.3gとトリエチルアミン1.2gを加えた。その後、室温にて2時間攪拌後、該フラスコの内容物を分液ロートに移し、炭酸水素ナトリウム水溶液と1N塩酸と水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで減圧蒸留した。濃縮物を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、2−ヒドロキシエチルイソチオシアネートに対して収率97%で2−イソチオシアネートエチルメタクリレートが得られた。
[実施例73]
工程(73−1):N−置換−O−置換チオカルバメートの製造
トリス(2−アミノエチル)アミン2.2gとチオ尿素6.9gと2−ブトキシエタノール160gを内容積が500mLのフラスコに仕込み、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコにジムロート冷却器を取り付け、該冷却器に約5℃の冷却水を循環させた。該フラスコの内容物を撹拌しながら、予め200℃に加熱したオイルバスに浸漬したところ、還流が始まった。この状態で加熱を8時間おこなった。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、トリス(2−アミノエチル)アミンに対して収率70%でトリス[O−(2−ブトキシエチル)−N−エチルチオカルバミン酸]アミンが得られた。
工程(73−2):トリス(2−イソチシアネートエチル)アミンの製造
工程(73−1)の反応液をロータリーエバポレーターで減圧蒸留して、2−エチルアルコールを留去した。トラップ球を備えたガラスチューブに残留液を入れて内部を10kPaに減圧し、250℃に加熱したガラスチューブオーブンで加熱した。トラップ球に回収した液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、トリス(2−アミノエチル)アミンに対して収率40%でトリス(2−イソチシアネートエチル)アミンが得られた。