欠陥又は不連続部を示すデータが、仮想溶接部を事前に定めることによって又は仮想溶接プロセスの一部として仮想現実溶接シミュレータシステム(例えば、仮想現実アーク溶接(VRAW)システム)を使用して仮想溶接部を作ることによって、仮想溶接部の定義の一部として保存され得る。VRAWシステムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカ、空間トラッカによって空間的に追跡されることができる少なくとも一つの模擬溶接ツール、及びプログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された少なくとも一つの表示装置、を有する。システムは、仮想現実空間で、実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性を有する溶接パドルをシミュレートすることができる。システムはまた、シミュレートされた溶接パドルを実時間で表示装置に表示することもできる。シミュレートされた溶接パドルの実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性は、表示されたとき、模擬溶接ツールの使用者に実時間の視覚フィードバックを提供し、使用者が実時間視覚フィードバックに応じて実時間で溶接手技(テクニック)を調整する又は持続することを可能にする(すなわち、使用者が正確に溶接することを学ぶことを助ける)。表示された溶融パドルは、使用者の溶接手技並びに選択された溶接プロセス及びパラメータに基づいて現実世界で形成されるであろう溶融パドルの描写である。パドルを見ることによって(例えば、形状、色、スラグ、サイズ、積み重ねられたダイム)、使用者は、良好な溶接を行うために彼の手技を修正することができ、行われる溶接部のタイプを決定することができる。パドルの形状は銃又は棒の動きに反応する(responsive)。本明細書において用いられる場合、用語「実時間(real-time)」は、使用者が現実世界の溶接シナリオにおいて認識及び経験するのと同じ方法で、シミュレートされた環境の時間で認識すること及び経験することを意味する。さらに、溶接パドルは、重力を含む物理的環境の影響に反応し、使用者がオーバーヘッド溶接及び様々なパイプ溶接角度を含む様々な位置での溶接を現実的に練習することを可能にする(例えば、1G、2G、5G、6G)。このような実時間仮想溶接シナリオは、仮想溶接部を代表するデータの生成をもたらす。
図1は、実時間仮想現実環境におけるアーク溶接トレーニングを提供するシステム100のシステムブロック図の一つの例示的な実施形態を示す。システム100は、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(PPS)110を含む。PPS110は、仮想溶接部の3D動画のレンダリングを提供するためのレンダリングエンジンとして構成されるハードウェア及びソフトウェアを提供する。PPS110はまた、仮想溶接部の試験及び検査を実行するための分析エンジンとして構成されるハードウェア及びソフトウェアを提供する。図1のシステムの状況において、仮想溶接部は、溶接ビード又は溶接継手を形成するためにシミュレートされた溶接プロセスを通過した溶接クーポンの結果として生じるシミュレーションである。
システム100はPPS110に動作可能に接続された空間トラッカ(ST)120を更に含む。システム100はまた、PPS110に動作可能に接続される物理的な溶接ユーザーインターフェース(WUI)130並びにPPS110及びST120に動作可能に接続されるフェースマウント表示装置(FMDD)140(図9A−9C参照)を含む。しかし、幾つかの実施形態はFMDDを備えなくてもよい。システム100は更に、PPS110に動作可能に接続された観察者表示装置(ODD)150を含む。システム100はまた、ST120及びPPS110に動作可能に接続された少なくとも一つの模擬溶接ツール(MWT)160を含む。システム100は、テーブル/スタンド(T/S)170及びT/S170に取り付けられることができる少なくとも一つの溶接クーポン(WC)180を更に含む。本発明の一つの代替的な実施形態によれば、模擬ガス容器が設けられ(図示せず)、シールドガスの供給源をシミュレートし、調整可能な流量調整器を有する。
図2は、図1のシステム100の、組み合わせたシミュレートされた模擬溶接コンソール135(溶接電源ユーザーインターフェースをシミュレートする)及び観察者表示装置(ODD)150の一つの例示的な実施形態を示す。物理的WUI130はコンソール135の前方部分に存在し、様々なモード及び機能の使用者選択のためのノブ、ボタン、及びジョイスティックを備える。ODD150は、本発明の一つの実施形態に従って、コンソール135の上部に取り付けられる。MWT160は、コンソール135の側部に取り付けられたホルダに支えられている。内部では、コンソール135はPPS110、及びST120の一部を保持する。
図3は、図2の観察者表示装置(ODD)150の一つの例示的な実施形態を示す。本発明の一つの実施形態によれば、ODD150は、液晶ディスプレイ(LCD)装置である。他の表示装置も同様に可能である。例えば、ODD150は、本発明の他の実施形態による、タッチスクリーンディスプレイであり得る。ODD150は、PPS110から映像(video)(例えばSVGAフォーマット)及び表示情報を受信する。
図3に示されるように、ODD150は、位置、ワークへの先端、溶接角度、移動角度、及び移動速度を含む様々な溶接パラメータ151を示す第一の使用者場面を表示することができる。これらのパラメータは、グラフィカルな形で実時間に選択されるとともに表示されることができ、適切な溶接手技を教示するために使用される。さらに、図3に示されるように、ODD150は、例えば、不適切な溶接サイズ、不十分なビード配置、凹ビード、余盛、アンダーカット、ポロシティ、融合不良、スラグ巻込、過剰なスパッタ、オーバーフィル及び溶落ち(メルトスルー)を含むシミュレートされた溶接不連続部の状態152を表示することができる。アンダーカットは、溶接部又は溶接根に隣接したベース金属に溶け込んだ溝であり溶接金属によって充填されないままにされる。アンダーカットは、しばしば不適切な溶接の角度に起因する。ポロシティは、凝固中のガスの閉じ込めによって形成される空洞型の不連続部であり、アークをクーポンから遠くに動かし過ぎることによってしばしば引き起こされる。このようなシミュレートされた溶接不連続部の状態は、シミュレートされた溶接クーポンを使用して仮想溶接部を形成するために、シミュレートされた溶接プロセス中にシステム100によって生成される。
また、図3に示されるように、ODD150は、メニュー、動作、視覚的キュー、新しいクーポン及びエンドパスを含む使用者選択部153を表示することができる。これらの使用者選択部は、コンソール135の使用者ボタンに結び付けられる。使用者が、例えばODD150のタッチスクリーン又は物理的WUI130を介して、様々な選択を行うとき、表示された特徴は、選択された情報及び使用者への他のオプションを提供するために変化し得る。さらに、ODD150は、溶接工と同じ角度の視界で、又は例えば指導者によって選択された様々な異なる角度で、FMDD140を装着している溶接工が見る視界を表示し得る。ODD150は、破壊/非破壊試験及び仮想溶接部の検査を含む、様々なトレーニング目的のために指導者及び/又は実習生によって見られ得る。例えば、視野は、指導者による視覚的な検査を可能にするために、完成した溶接部の周りに回転され得る。本発明の一つの代替的な実施形態によれば、システム100からの映像は、例えば、遠隔観察及び/又は批評のためにインターネットを介して、離れた場所に送られ得る。さらに、音声が、実習生と離れた指導者との間の実時間音声通信を可能にするために提供され得る。
図4は、物理的溶接ユーザーインターフェース(WUI)130を示す図2のシミュレートされた溶接コンソール135の前部の一つの例示的な実施形態を示す。WUI130は、ODD150に表示された使用者選択部153に対応する一連のボタン131を含む。ボタン131は、ODD150に表示された使用者選択部153の色に対応するように色を付けられる。ボタン131の一つが押されたとき、信号が対応する機能を作動させるためにPPS110に送られる。WUI130はまた、様々なパラメータ及びODD150に表示された選択部を選択するために使用者によって使用されることができるジョイスティック132を含む。WUI130は、ワイヤ送給速度/アンペアを調整するためのダイヤル又はノブ133、及びボルト/トリムを調整するためのもう一つのダイヤル又はノブ134を更に含む。WUI130はまた、アーク溶接プロセスを選択するためのダイヤル又はノブ136を含む。本発明の一つの実施形態によれば、3つのアーク溶接プロセスが選択可能であり、ガスシールド及び自己シールドプロセスを含むフラックスコアードアーク溶接(FCAW)、ショートアーク、軸方向スプレー、STT及びパルスを含むガス金属アーク溶接(GMAW)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、及びE6010、E6013、及びE7018電極を含む被覆アーク溶接(SMAW)を含む。WUI130は、溶接極性(polarity)を選択するためのダイヤル又はノブ137を更に含む。本発明の一つの実施形態によれば、交流(AC)、正の直流(DC+)、及び負の直流(DC−)を含む3つのアーク溶接極性が選択可能である。
図5は、図1のシステム100の模擬溶接ツール(MWT)160の一つの例示的な実施形態を示す。図5のMWT160は、プレートとパイプ溶接のための棒溶接ツールを模し(シミュレートし)、ホルダ161及び模擬的に作成(シミュレート)された棒電極162を含む。MWD160のトリガが、選択されたシミュレートされる溶接プロセスを作動させるために、信号をPPS110に伝達するために使用される。シミュレートされた棒電極162は、例えば現実世界のパイプ溶接でのルートパス溶接手順中又はプレートを溶接するときに生じる抵抗フィードバックをシミュレートするために、触覚抵抗先端部163を含む。使用者がシミュレートされた棒電極162をルートからあまりに離れて後方に動かすと、使用者は、低い抵抗を感じる又は感知することができ、したがって、現在の溶接プロセスを調整する又は維持するために使用されるフィードバックを得る。
棒溶接ツールが、仮想溶接プロセス中、シミュレートされた棒電極162を引っ込める、図示されないアクチュエータを組み込んでもよいことが企図されている。すなわち、使用者が仮想溶接動作に従事するとき、ホルダ161とシミュレートされた棒電極162の先端部との間の距離は、電極の消費をシミュレートするために減少する。消費速度、すなわち棒電極162の引っ込みは、PPS110によって、より具体的には、PPS110によって実行されるコード化された指令によって制御され得る。シミュレートされた消費速度はまた、使用者の手技にも依存する。システム100は異なる種類の電極を用いた仮想溶接を容易にするので、棒電極162の消費速度又は減少は、システム100で使用される溶接手順及び/又はシステム100の設定で変化し得ることが、ここでは特筆すべきである。
本発明の他の実施形態に従って、例えば、銃を通って供給されるワイヤ電極を有する携帯型半自動溶接銃をシミュレート(模擬)するMWDを含む、他の模擬溶接ツールも可能である。さらに、本発明の他の幾つかの実施形態によれば、システム100ではツールは現実のアークを実際に作り出すために使用されないのだが、使用者の手でツールの実際の感覚をより良くシミュレートするために、現実の溶接ツールがMWT160として使用され得る。また、シミュレータ100のシミュレートされた研磨モードで使用するための模擬研磨ツールが提供され得る。同様に、例えば、酸素燃焼及びプラズマ切断で使用されるような、シミュレータ100のシミュレートされた切断モードでの使用のための、模擬切断ツールが提供され得る。さらに、模擬ガスタングステンアーク溶接(GTAW)トーチ又は溶加材がシミュレータ100での使用のために提供され得る。
図6は、図1のシステム100のテーブル/スタンド(T/S)170の一つの例示的な実施形態を示す。T/S170は、調整可能なテーブル171、スタンド又はベース172、調整可能なアーム173及び垂直な支柱174を含む。テーブル171、スタンド172及びアーム173は、垂直な支柱174にそれぞれ取り付けられる。テーブル171及びアーム173はそれぞれ、垂直な支柱174に対して、上方に、下方に及び回転して手動で調整されることができる。アーム173は、様々な溶接クーポン(例えば溶接クーポン175)を保持するために使用され、使用者は、トレーニング時、テーブル171にその腕を置くことができる。垂直な支柱174は、使用者がアーム173及びテーブル171が支柱171のどこに垂直に位置するかを正確に知ることができるように、位置情報でインデックスを付けられる。この垂直位置情報は、WUI130及びODD150を使用する使用者によってシステムに入力され得る。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、テーブル171及びアーム173の位置は、予めプログラムされた設定を介して、又は使用者による指令によりWUI130及び/又はODD150を介して、PSS110によって自動的に設定され得る。このような代替実施形態では、T/S170は、例えば、モータ及び/又はサーボ機構を含み、PPS110からの信号指令はモータ及び/又はサーボ機構を作動させる。本発明の更なる代替実施形態では、テーブル171及びアーム173の位置及びクーポンの種類がシステム100によって検出される。このように、使用者は、ユーザーインターフェースを介して位置情報を手動で入力する必要はない。このような代替実施形態では、T/S170は位置及び向きの検出器を含み、位置及び向きの上方を提供するためにPPS110に信号指令を送信し、WC175は位置検出センサ(例えば、磁場を検出するためのコイルセンサ)を含む。使用者は、本発明の実施形態に従って、調整パラメータが変化すると、ODD150でT/S170の調整のレンダリングを見ることができる。
図7Aは、図1のシステム100のパイプ溶接クーポン(WC)175の一つの例示的な実施形態を示す。WC175は、溶接されることになるルート176を形成するように一緒に配置される二つの6インチ直径のパイプ175’及び175’’をシミュレートする。WC175は、WC175の一方の端部に接続部177を含み、WC175がアーム173に正確且つ反復可能な方法で取り付けられることを可能にする。図7Bは、図6のテーブル/スタンド(TS)170のアーム173に取り付けられた図7AのパイプWC175を示す。WC175がアーム173に取り付けられることができる正確且つ反復可能な方法は、WC175の空間的な校正が工場で一回のみ実行されることを可能にする。そして、現場では、システム100がアーム173の位置を伝えられる限り、システム100は、仮想環境においてWC175に対してMWT160及びFMDD140を追跡することができる。WC175が取り付けられるアーム173の第一の部分は、図6に示されるように、アーム173の第二の部分に対して傾けられることができる。これは、使用者が幾つかの異なる向き及び角度のいずれかのパイプでパイプ溶接を練習することを可能にする。
図8は、図1の空間トラッカ(ST)120の一つの例示的な実施形態の様々な要素を示す。ST120は、システム100のPPS110と動作可能にインタフェース接続することができる磁気トラッカである。ST120は、磁気源121及びソースケーブル、少なくとも一つのセンサ122及び付随するケーブル、ディスク123のホストソフトウェア、電源124及び付随するケーブル、USB及びRS−232ケーブル125、並びにプロセッサトラッキングユニット126を含む。磁気源121は、ケーブルを介してプロセッサトラッキングユニット126に動作可能に接続されることができる。センサ122は、ケーブルを介してプロセッサトラッキングユニット126に動作可能に接続されることができる。電源124は、ケーブルを介してプロセッサトラッキングユニット126に動作可能に接続されることができる。プロセッサトラッキングユニット126は、USB又はRS−232ケーブル125を介してPPS110に動作可能に接続されることができる。ディスク123のホストソフトウェアは、PPS110にロードされることができ、ST120とPPS110との間の機能的な通信を可能にする。
図6及び8を参照すると、ST120の磁気源121はアーム173の第一の部分に取り付けられる。磁気源121は、アーム173に取り付けられたWC175を包含する空間を含む磁界を源121の周りに作り出し、そのことが3Dの空間基準座標系を確立する。T/S170は、磁気源121によって作られた磁界を歪ませないように、大部分は非金属(非鉄金属及び非導電性)である。センサ122は、3つの空間方向に沿って直交して整列された3つの誘導コイルを含む。センサ122の誘導コイルは、3方向それぞれの磁界の強さをそれぞれ測定し、プロセッサトラッキングユニット126にその情報を提供する。結果として、システム100は、WC175がアーム173に取り付けられるとき、WC175の任意の部分が磁界によって確立された3D空間基準座標系に対してどこにあるかを知ることができる。センサ122は、MWT160又はFMDD140に取り付けられ得るので、MWT160又はFMDD140が空間及び向きの両方を3D空間基準座標系に対してST120によって追跡されることを可能にする。二つのセンサ122が提供されるとともにプロセッサトラッキングユニット126に動作可能に接続されるとき、MWT160及びFMDD140の両方が追跡され得る。このように、MWT160及びFMDD140はそれぞれ3D基準座標系に対して追跡されるので、システム100は、仮想WC、仮想MWT、及び仮想T/Sを仮想現実空間に作ることができ、仮想WC、仮想MWT、及び仮想T/SをFMDD140及び/又はODD150に表示することができる。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、(複数の)センサ122はプロセッサトラッキングユニット126と無線でインタフェース接続することができ、プロセッサトラッキングユニット126はPPS110と無線でインタフェース接続することができる。本発明の他の代替的な実施形態によれば、例えば、加速度計/ジャイロスコープベースのトラッカ、光学トラッカ(アクティブ又はパッシブ)、赤外線式トラッカ、音響式トラッカ、レーザトラッカ、高周波トラッカ、慣性トラッカ、拡張現実ベースのトラッキングシステムを含む、他の種類の空間トラッカ120がシステム100で使用され得る。他の種類のトラッカも同様に可能であり得る。
図9Aは、図1のシステム100のフェースマウント表示装置140(FMDD)の一つの例示的な実施形態を示す。図9Bは、図9AのFMDD140がどのように使用者の頭に固定されるかの図解である。図9Cは、溶接ヘルメット900に組み込まれた図9AのFMDD140の一つの例示的な実施形態を示す。FMDD140は、有線手段を介して又は無線でPPS110及びST120に動作可能に接続する。ST120のセンサ122は、本発明の様々な実施形態に従って、FMDD140に又は溶接ヘルメット900に取り付けられることができ、FMDD140及び/又は溶接ヘルメット900がST120によって作られた3D空間基準座標系に対して追跡されることを可能にする。
本発明の一つの実施形態によれば、FMDD140は、2D及び面順次映像モードで流れるようなフルモーションの映像を届けることができる二つのハイコントラストSVGAの3DのOLEDマイクロディスプレイを含む。仮想現実環境の映像は、FMDD140に提供されるとともに表示される。ズーム(例えば2倍)モードが提供され、使用者が、例えばチーターレンズ(cheater lens)をシミュレートすることを可能にしてもよい。
FMDD140は、二つのイヤホンスピーカ910を更に含み、使用者がシステム100によって作られたシミュレートされた溶接に関連する及び環境の音を聞くことを可能にする。FMDD140は、本発明の様々な実施形態に従って、有線又は無線手段を介してPPS110に動作可能にインタフェース接続し得る。本発明の一つの実施形態によれば、PPS110は、FMDD140に立体映像を提供し、使用者に拡張された奥行感覚を提供する。本発明の一つの代替的な実施形態によれば、使用者は、メニューを呼び出すとともに選択し、FMDD140にオプションを表示するために、MWT160上の制御装置(例えばボタン又はスイッチ)を使用することができる。これは、例えば、使用者が間違えた場合、幾つかのパラメータを変化させた場合、又は溶接ビード軌跡の一部をやり直すために少し後退する場合に、使用者が容易に溶接をリセットすることを可能にし得る。
図10は、図1のシステム100のプログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(PPS)110のサブシステムブロック図の一つの例示的な実施形態を示す。PPS110は、本発明の一つの実施形態に従って、中央処理ユニット(CPU)111及び二つのグラフィック処理ユニット(GPU)115を含む。二つのGPU115は、本発明の一つの実施形態に従って、実時間の溶融金属の流動性並びに熱吸収及び放散特性を有する溶接パドル(溶接溶融池としても知られる)の仮想現実シミュレーションを提供するようにプログラムされる。
図11は、図10のPPS110のグラフィック処理ユニット(GPU)115のブロック図の一つの例示的な実施形態を示す。各GPU115は、データ並列アルゴリズムの実装をサポートする。本発明の一つの実施形態によれば、各GPU115は、二つの仮想現実視界を提供することができる二つの映像出力118及び119を提供する。映像出力の二つは、FMDD140に送られることができ、溶接工の視点をレンダリングし、第三の映像出力はODD150に送られることができ、例えば、溶接工の視点又は他の視点をレンダリングする。残りの第四の映像出力は、例えばプロジェクタに送られ得る。両方のGPI115は、同じ溶接物理学計算を実行するが、同じ又は異なる視点から仮想現実環境をレンダリングし得る。GPU115は、コンピュータ統一デバイスアーキテクチャ(CUDA)116及びシェーダ117を含む。CUDA116は、業界標準プログラミング言語を通じてソフトウェア開発者がアクセス可能であるGPU115の計算エンジンである。CUDA116は、並列コアを含み、本明細書において記述される溶接パドルシミュレーションの物理モデルを動かすために使用される。CPU111は、実時間溶接入力データをGPU115のCUDA116に提供する。シェーダ117は、シミュレーションの全ての映像を描画すること及び塗ることを担当する。ビード及びパドルの映像は、後述される溶接ピクセル変位マップの状態によって駆動される。本発明の一つの実施形態によれば、物理モデルは、約毎秒30回の速度で動くとともに更新される。仮想破壊/非破壊試験及び検査シミュレーション中、GPU115は、シミュレートされた溶接プロセス中に作られる仮想溶接部の3D動画レンダリングを提供するために、レンダリングエンジンとして働く。さらに、CPU111は、仮想溶接部に存在し得る様々な欠陥及び不連続部に関する、仮想溶接部の試験分析を提供するための分析エンジンとして働く。
図12は、図1のシステム100の機能ブロック図の一つの例示的な実施形態を示す。図12に示されるようなシステム100の様々な機能ブロックは、主として、PPS110で動作するソフトウェア指令及びモジュールによって実装される。システム100の様々な機能ブロックは、物理インタフェース1201、トーチ及びクランプモデル1202、環境モデル1203、音声コンテンツ機能1204、溶接音1205、スタンド/テーブルモデル1206、内部アーキテクチャ機能1207、校正機能1208、クーポンモデル1210、溶接物理学1211、内部物理学調整ツール(微調整器)1212、グラフィカルユーザーインターフェース機能1213、グラフ化機能1214、実習生レポート機能1215、レンダラ1216、ビードレンダリング1217、3Dテクスチャ1218、視覚的キュー機能1219、採点及び許容度機能1220、許容度エディタ1221、及び特殊効果1222を含む。レンダラ1216、ビードレンダリング1217、3Dテクスチャ1218並びに採点及び許容度機能1220は、本発明の実施形態に従って、仮想破壊/非破壊試験及び検査中並びにシミュレートされた溶接プロセス中に用いられる。
内部アーキテクチャ機能1207は、例えば、ファイルの読み込み、情報の保持、スレッドの管理、物理学モデルをオンにする、及びメニューを動作させることを含む、システム100のプロセスのより高レベルのソフトウェアロジスティクスを提供する。内部アーキテクチャ機能1207は、本発明の実施形態では、CPU111で作動する。PPS110への幾つかの実時間入力は、アーク位置、銃位置、FMDD又はヘルメット位置、銃のオン/オフ状態、及び接触された状態(はい/いいえ)を含む。
グラフィカルユーザーインターフェース機能1213は、溶接シナリオ、試験シナリオ、又は検査シナリオを設定するために、使用者がODD150を通じて物理的ユーザーインターフェース130のジョイスティック132を使用することを可能にする。本発明の一つの実施形態によれば、溶接シナリオの設定は、言語の選択、使用者名の入力、練習プレート(すなわち、溶接クーポン)の選択、溶接プロセス(例えば、FCAW、GMAW、SMAW)及び付随する軸方向スプレー、パルス、又はショートアーク法の選択、ガスの種類及び流量の選択、棒電極の種類(例えば6010又は7018)の選択並びにフラックスコアードワイヤの種類(例えばセルフシールド、ガスシールド)の選択を含む。溶接シナリオの設定はまた、T/S170のテーブル高さ、アーム高さ、アーム位置、及びアーム回転の選択を含む。溶接シナリオの設定は、環境(例えば、仮想現実空間のバックグラウンド環境)の選択、ワイヤ送給速度の設定、電圧レベルの設定、電流量の設定、極性の選択、及び特定の視覚的キューをオン又はオフにすることを更に含む。同様に、仮想試験又は検査シナリオの設定は、言語の選択、使用者名の入力、仮想溶接部の選択、破壊又は非破壊試験の選択、インタラクティブツールの選択、及び動画の斜視図の選択を含み得る。
シミュレートされた溶接シナリオ中、グラフ化機能1214は、使用者パフォーマンスパラメータを集め、使用者パフォーマンスパラメータを(例えば、ODD150での)グラフィック形式での表示のためにグラフィカルユーザーインターフェース機能1213に提供する。ST120からのトラッキング情報は、グラフ化機能1214に入る。グラフ化機能1214は、単純な分析モジュール(SAM)及びウィップ/ウィーブ分析モジュール(WWAM)を含む。SAMは、溶接移動角度、移動速度、溶接角度、位置、及び先端からワークの距離を含む使用者溶接パラメータを、それらの溶接パラメータをビードテーブルに保存されたデータと比較することによって分析する。WWAMは、ダイム間隔、ウィップ時間、及びパドル時間を含む、使用者ウィッピングパラメータを分析する。WWAMはまた、ウィーブの幅、ウィーブの間隔、及びウィーブ時間を含む使用者ウィービングパラメータを分析する。SAM及びWWAMは、生の入力データ(例えば、位置及び向きのデータ)をグラフ化のために機能的に使用可能なデータに翻訳する。SAM及びWWAMによって分析された各パラメータに対して、許容度ウィンドウが、許容度エディタ1221を使用してビードテーブルに入力される最適又は理想的な設定ポイントの周りのパラメータ限度によって定められ、採点及び許容度機能1220が実行される。
許容度エディタ1221は、材料の使用、電気の使用、及び溶接時間を概算する溶接メータを含む。さらに、幾つかのパラメータが許容度の外にあるとき、溶接不連続部(すなわち、溶接欠陥)が生じ得る。如何なる溶接不連続部の状態も、グラフ化機能1214によって処理され、グラフィック形式でグラフィカルユーザーインターフェース機能1213を介して提示される。このような溶接不連続部は、不適切な溶接サイズ、不十分なビード配置、凹ビード、余盛、アンダーカット、ポロシティ、融合不良、スラグ巻込、オーバーフィル、溶落ち及び過剰なスパッタを含む。本発明の一つの実施形態によれば、不連続部のレベル又は量は、特定の使用者パラメータが最適又は理想の設定ポイントからどれくらい離れているかに依存する。シミュレートされた溶接プロセスの一部として生成されるこのような溶接不連続部は、仮想溶接部に関連する仮想破壊/非破壊及び検査プロセスへの入力として使用される。
異なるパラメータ限度が、例えば、溶接初心者、溶接熟練者、及び展示会の人等の異なる種類の使用者に対して予め定められ得る。採点及び許容度機能1220は、特定のパラメータに関して使用者がどれくらい最適値(理想)に近かったかに依存するとともに溶接部に存在する不連続部又は欠陥のレベルに依存する数の採点を提供する。最適値は現実世界のデータから得られる。採点及び許容度機能1220から及びグラフ化機能1214からの情報は、指導者及び/又は実習生のために、パフォーマンスレポートを作るために、実習生レポート機能1215によって使用され得る。
システム100は、仮想溶接動作の結果を分析し、表示することができる。結果を分析することによって、システム100が、溶接パス中にいつ及び溶接継手に沿ってどこで、使用者が溶接プロセスの許容可能な限度から外れたかを決定できることになる。得点は使用者のパフォーマンスに起因し得る。一つの実施形態では、得点は、許容範囲を通る模擬溶接ツール160の位置、向き及び速度における偏差の関数であり得る。この許容範囲は、理想溶接の手の動き(パス)から限界又は許容できない溶接動作に広がり得る。範囲の任意の勾配が、使用者のパフォーマンスを採点するために選ばれるようなシステム100に組み込まれ得る。採点は数値的に又は英数字で表示され得る。加えて、使用者のパフォーマンスは、時間及び/又は溶接継手に沿った位置で、どれくらい近くで模擬溶接ツールが溶接継手を横切ったかを図式的に示して表示され得る。移動角度、ワーク角度、速度、溶接継手からの距離等のパラメータは、測定され得るものの例であるが、任意のパラメータが採点目的のために分析され得る。パラメータの許容範囲は、現実世界の溶接データから取られるので、どのように使用者が現実世界で実行するかに関する正確なフィードバックを提供する。他の実施形態では、使用者のパフォーマンスに対応する欠陥の分析もまた組み込まれ得るとともにODD150に表示され得る。本実施形態では、どの種類の不連続部が仮想溶接動作中にモニタされた様々なパラメータの測定から生じたかを示すグラフが描かれ得る。閉鎖はODD150で見ることができないが、欠陥は使用者のパフォーマンスの結果として依然として起こり得、この結果は対応して表示され、すなわち、グラフ化され、そしてまた試験され(例えば曲げ試験を介して)、検査され得る。
視覚的キュー機能1219は、FMDD140及び/又はODD150に重ねられた色及び指標を表示することによって使用者に即座のフィードバックを提供する。視覚的キューは、位置、先端からワークへの距離、溶接角度、移動角度、移動速度、及びアーク長さ(例えば棒溶接に関して)を含む溶接パラメータ151のそれぞれに提供され、使用者の溶接手技のある側面が予め定められた限度又は許容度に基づいて調整されるべきである場合、使用者に視覚的に指摘する。視覚的キューはまた、例えば、ウィップ/ウィーブ手技及び溶接ビード「ダイム」間隔のために提供され得る。視覚的キューは、独立して又は任意の所望の組合せで設定され得る。
校正機能1208は、現実世界の空間(3D基準座標系)内の物理的構成要素を仮想現実空間内の仮想構成要素と一致させる能力を提供する。それぞれの異なる種類の溶接クーポン(WC)は、WCをT/S170のアーム173に取り付け、所定のポイント(例えば、WCの3つのくぼみによって示される)においてST120に動作可能に接続された校正スタイラスでWCに触れることによって、工場で校正される。ST120は、所定のポイントでの磁界の強さを読み取り、PPS110に位置情報を提供し、PPS110は、校正(すなわち、現実世界の空間から仮想現実空間への変換)を実行するために位置情報を使用する。
任意の特定の種類のWCがT/S170のアーム173に非常に厳しい許容限度内で同じ反復可能な方法で適合する。したがって、いったん特定のWCの種類が校正されると、このWCの種類は再び校正される必要はない(すなわち、特定の種類のWCの校正は1回だけの事象である)。同じ種類のWCは交換可能である。校正は、溶接プロセス中に使用者によって知覚された物理的なフィードバックが仮想現実空間で使用者に表示されるものと一致することを確実にし、シミュレーションがより現実的に見えるようにする。例えば、使用者が実際のWC180の角の近くでMWT160の先端をスライドさせる場合、使用者は、使用者が実際の角の近くを先端がスライドすることを感じながら、FMDD140で仮想WCの角の近くを先端がスライドすることを見る。本発明の一つの実施形態によれば、MWT160は、予め位置決めされたジグに置かれ、既知のジグ位置に基づいて、同様に校正される。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、例えばクーポンの角に、センサを有する「スマート」クーポンが提供され得る。ST120は、システム100が「スマート」クーポンが現実世界の3D空間内のどこにあるか連続的に知ることができるように、「スマート」クーポンの角を追跡することができる。本発明の更なる代替的な実施形態によれば、ライセンスキーが溶接クーポンを「アンロック」するために提供される。特定のWCが購入されるとき、ライセンスキーが提供され、使用者がライセンスキーをシステム100に入力し、そのWCに関連付けられたソフトウェアをアンロックすることを可能にする。本発明の他の実施形態によれば、特殊な規格外の溶接クーポンが部品の現実世界のCAD図面に基づいて提供され得る。使用者は、部品が実際に現実世界で製造される前でさえ、CAD部品を溶接するトレーニングをすることができ得る。
音声コンテンツ機能1204及び溶接音1205は、幾つかの溶接パラメータが許容限度内であるか許容限度外であるかに依存して変化する特定の種類の溶接音を提供する。音は、様々な溶接プロセス及びパラメータに合わせられる。例えば、MIGスプレー溶接プロセスでは、使用者がMWT160を正しく配置しないとき、パチパチという音(crackling sound)が提供され、MWT160を正しく配置されるとき、シューという音(hissing sound)が提供される。ショートアーク溶接プロセスでは、規則的なパチパチという音又は油で揚げるような音が適切な溶接手技に対して提供され、アンダーカットが発生しているときシューという音が提供され得る。これらの音は、正しい溶接手技及び正しくない溶接手技に対応する現実世界の音を模倣している。
高い忠実さの音声コンテンツが、本発明の様々な実施形態に従って、様々な電子的及び機械的手段を使用して実際の溶接の現実世界の録音から取り込まれ得る。本発明の一つの実施形態によれば、音の知覚された音量及び方向は、MWT160とWC180との間のシミュレートされたアークに対する使用者の頭の位置、向き、及び距離(使用者がST120によって追跡されるFMDD140を装着していると仮定する)に依存して修正される。音は、使用者に例えば、FMDD140のイヤホンスピーカ910を介して又はコンソール135又はT/S170に配置されたスピーカを介して提供され得る。
環境モデル1203は、仮想現実空間の様々な背景シーン(静止及び移動する)を提供するために提供される。このような背景環境は、例えば、屋内の溶接場、屋外のレーストラック、ガレージ等を含むことができ、動いている車、人、鳥、雲、及び様々な環境音を含み得る。背景環境は、本発明の実施形態に従って、相互作用するものであり得る。例えば、使用者は、環境が溶接に関して適切(例えば、安全)であることを確実にするために、溶接を始める前に、背景領域を調査しなければならないかもしれない。仮想現実空間において、例えば、銃、棒電極を備えたホルダ等を含む様々なMWT160をモデル化するトーチ及びクランプモデル1202が提供される。
仮想現実空間において、例えば、平らなプレートクーポン、T継手クーポン、突合せ継手クーポン、グルーブ溶接クーポン及びパイプクーポン(例えば、2インチ直径パイプ及び6インチ直径パイプ)を含む様々なWC180をモデル化するクーポンモデル1210が提供される。仮想現実空間において、調整可能テーブル171、スタンド172、調整可能アーム173及び垂直な支柱174を含むT/S170の様々な部品をモデル化するスタンド/テーブルモデル1206が提供される。仮想現実空間において、溶接ユーザーインターフェース130、コンソール135及びODD150の様々な部品をモデル化する物理インタフェースモデル1201が提供される。再び、溶接ビード、溶接継手、プレートへのパイプ溶接、プラグ溶接、又は重ね溶接を形成するためにシミュレートされた溶接プロセスを経由した溶接クーポンの、結果として生じるシミュレーションは、システム100に関して仮想溶接部としてここでは知られる。溶接クーポンは、これらのシナリオのそれぞれをサポートするように提供され得る。
本発明の一つの実施形態によれば、仮想現実空間での溶接パドル又は溶融池のシミュレーションは、シミュレートされた溶接パドルが実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性を有する場合に達成される。本発明の一つの実施形態によれば、溶接パドルシミュレーションの中心部分には、GPU115で実行される溶接物理学機能1211(物理モデルとしても知られる)がある。溶接物理学機能は、動的な流動性/粘性、固体性、熱勾配(熱吸収及び熱放散)、パドル跡、及びビード形状を正確にモデル化するために、二重移動層技術を利用し、本明細書において図14A−14Cに関してより詳細に説明される。
溶接物理学機能1211は、加熱された溶融状態から冷却された凝固状態まで全ての状態において溶接ビードをレンダリングするために、ビードレンダリング機能1217と通信する。ビードレンダリング機能1217は、仮想現実空間において実時間で溶接ビードを正確且つ現実的にレンダリングするために、溶接物理学機能1211からの情報(例えば、熱、流動性、変位、ダイム間隔)を使用する。3Dテクスチャ機能1218は、シミュレートされた溶接ビードの上に追加的なテクスチャ(例えば、焼け(スコーチング)、スラグ、粒粒(グレイン))を重ねるために、ビードレンダリング機能1217にテクスチャマップを提供する。例えば、スラグは、溶接プロセス中及び溶接プロセスの直後に溶接ビードの上にレンダリングされて示されることができ、次に下にある溶接ビードを見せるために取り除かれ得る。レンダラ機能1216は、スパーク、スパッタ、スモーク、アークの輝き、ヒューム及びガス、並びに例えばアンダーカット及びポロシティ等の幾つかの不連続部を含む特殊効果モジュール1222からの情報を使用して、様々な非パドルの特定の特性をレンダリングするために使用される。
内部物理調整ツール1212は、様々な溶接物理学パラメータが様々な溶接プロセスに対して定められ、更新され、且つ修正されること可能にする微調整器である。本発明の一つの実施形態によれば、内部物理調整ツール1212は、CPU111で動作し、調整又は更新されたパラメータはGPU115にダウンロードされる。内部物理調整ツール1212を介して調整され得るパラメータの種類は、溶接クーポンに関連するパラメータ、溶接クーポンをリセットする必要なしにプロセスが変えられることを可能にする(第二のパスを行うことを可能にする)プロセスパラメータ、全シミュレーションを再設定すること無しに変えられ得る様々なグローバルパラメータ、及び他の様々なパラメータを含む。
図13は、図1の仮想現実トレーニングシステム100を使用するトレーニングの方法1300の実施形態のフローチャートである。方法は次のように進む:ステップ1310では、溶接手技に従って溶接クーポンに対して模擬溶接ツールを動かす;ステップ1320では、仮想現実システムを使用して三次元空間における模擬溶接ツールの位置及び向きを追跡する;ステップ1330では、シミュレートされた模擬溶接ツールが、シミュレートされた模擬溶接ツールから放出されるシミュレートされたアークの近くにシミュレートされた溶接パドルを形成することによって、シミュレートされた溶接ビード材料をシミュレートされた溶接クーポンの少なくとも一つのシミュレートされた表面にデポジットする(置く)ときに、仮想現実空間における模擬溶接ツール及び溶接クーポンの実時間仮想現実シミュレーションを示す仮想現実溶接システムのディスプレイを見る;ステップ1340では、シミュレートされた溶接パドルの実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性を、ディスプレイで見る;ステップ1350では、シミュレートされた溶接パドルの実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性を見ることに応じて、溶接手技の少なくとも一つの側面を実時間で修正する。
方法1300は、どのように使用者が仮想現実空間で溶接パドルを見ることができ、実時間の溶融金属の流動性(例えば、粘性)及び熱放散を含む、シミュレートされた溶接パドルの様々な特性を見ることに応じて溶接手技を修正することができるかを示す。使用者はまた、実時間のパドル跡及びダイム間隔を含む他の特性を見るとともに反応し得る。溶接パドルの特性を見るとともに反応することは、大抵の溶接動作が実際に現実世界で実行されるやり方である。GPU115で動く溶接物理学機能1211の二重移動層モデリングは、このような実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性が正確にモデル化されるとともに使用者に示されることを可能にする。例えば、熱放散は、凝固時間(すなわち、溶接ピクセルが完全に凝固するのにどのくらいの時間がかかるか)を決定する。
さらに、使用者は、同じ又は異なる(例えば、第二の)模擬溶接ツール及び/又は溶接プロセスを用いて仮想溶接部の溶接ビード材料の上に第二のパスを行い得る。このような第二のパスシナリオでは、シミュレートされた模擬溶接ツールが、シミュレートされた模擬溶接ツールから放出されるシミュレートされたアークの近くに第二のシミュレートされた溶接パドルを形成することによって、第一のシミュレートされた溶接ビード材料と融合する第二のシミュレートされた溶接ビード材料を被覆するとき、シミュレーションは、シミュレートされた模擬溶接ツール、溶接クーポン、及び元のシミュレートされた溶接ビード材料を仮想現実空間に示す。同じ又は異なる溶接ツール又はプロセスを用いる追加的なその次のパスが同様の方法で行われ得る。第二又はその次のパスいずれにおいても、本発明の幾つかの実施形態によれば、前の溶接ビード材料、新しい溶接ビード材料、及び、場合によって下にあるクーポン材料のいずれかの組合せから、新しい溶接パドルが仮想現実空間において形成されるとき、前の溶接ビード材料は、被覆される新しい溶接ビード材料と融合され、従って結果として生じる仮想溶接部を変更する。このようなその次のパスは、例えば、前のパスによって形成された溶接ビードの修理をするために実行される、大きいすみ肉又はグルーブ溶接を行うために必要とされ得る、又は、パイプ溶接で行われるようなホットパス及びルートパス後の一つ又はそれ以上のすみ肉及びキャップパスを含み得る。本発明の様々な実施形態によれば、溶接ビード及びベース材料は、軟鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル基合金又は他の材料を含み得る。
図14A−14Bは、本発明の一つの実施形態による、溶接要素(溶接ピクセル)変位マップ1420の概念を示す。図14Aは、平らな上面1410を有する平らな溶接クーポン(WC)1400の側面を示す。溶接クーポン1400は、現実世界では、例えば、プラスチック部品として存在し、また仮想現実空間では、シミュレートされた溶接クーポンとして存在する。図14Bは、溶接ピクセルマップ1420を形成する溶接要素(すなわち、溶接ピクセル)のグリッド又はアレイに分割されたシミュレートされたWC1400の上面1410の表示を示す。各溶接ピクセル(例えば、溶接ピクセル1421)は、溶接クーポンの上面1410の小さい部分を定める。溶接ピクセルマップは、表面解像度を定める。可変チャンネルパラメータ値が各溶接ピクセルに割り当てられ、各溶接ピクセルの値が、シミュレートされた溶接プロセス中に仮想現実溶接空間において実時間で動的に変化することを可能にする。可変チャンネルパラメータ値は、チャンネルパドル(Puddle)(溶融金属の流動性/粘性変位)、熱(Heat)(熱吸収/放散)、変位(Displacement)(固体変位)、及び追加のもの(Extra)(例えば、スラグ、グレイン、スコーチング、新地金等の様々な更なる状態)に対応する。これらの可変チャンネルは、パドル、熱、追加のもの、及び変位それぞれに関して、PHEDとここでは称される。
図15は、図1のシステム100においてシミュレートされる図14の平らな溶接クーポン(WC)1400のクーポン空間及び溶接空間の一つの例示的な実施形態を示す。ポイントO、X、Y及びZは、ローカル3Dクーポン空間を定める。一般的に、各クーポンの種類は、3Dクーポン空間から2D仮想現実溶接空間へのマッピングを定める。図14の溶接ピクセルマップ1420は、仮想現実内の溶接空間にマッピングする値の2次元のアレイである。使用者は、図15に示されるようにポイントBからポイントEに溶接することになる。ポイントBからポイントEへの軌跡線は、図15の3Dクーポン空間及び2D溶接空間の両方に示される。
クーポンの各種類は、溶接ピクセルマップにおける各場所の変位の方向を定める。図15の平らな溶接クーポンに関して、変位の方向は溶接ピクセルマップの全ての場所において同じである(すなわちZ方向)。溶接ピクセルマップのテクスチャ座標が、マッピングを明らかにするために、3Dクーポン空間及び2D溶接空間の両方において、S、T(時々U、Vと呼ばれる)として示される。溶接ピクセルマップは、溶接クーポン1400の長方形面1410にマッピングされるとともに溶接クーポン1400の長方形面1410を示す。
図16は、図1のシステム100においてシミュレートされる角(T継手)溶接クーポン(WC)1600のクーポン空間及び溶接空間の一つの例示的な実施形態を示す。角WC1600は、3Dクーポン空間において、二つの面1610及び1620を有し、これらは図16に示されるように2D溶接空間にマッピングされる。この場合もまた、ポイントO、X、Y及びZは、ローカル3Dクーポン空間を定める。溶接ピクセルマップのテクスチャ座標は、マッピングを明らかにするために、3Dクーポン空間及び2D溶接空間の両方において、S、Tとして示される。使用者は、図16に示すようにポイントBからポイントEに溶接することになる。ポイントBからポイントEへの軌跡線は、図16の3Dクーポン空間及び2D溶接空間の両方に示される。しかし、変位の方向は、3Dクーポン空間に示されるように線X’−O’に向かい、図16に示されるように反対側の角を向かう。
図17は、図1のシステム100においてシミュレートされるパイプ溶接クーポン(WC)1700のクーポン空間及び溶接空間の一つの例示的な実施形態を示す。パイプWC1700は、3Dクーポン空間において、曲面1710を有し、これは図17に示されるように2D溶接空間にマッピングされる。この場合もまた、ポイントO、X、Y及びZは、ローカル3Dクーポン空間を定める。溶接ピクセルマップのテクスチャ座標は、マッピングを明らかにするために、3Dクーポン空間及び2D溶接空間の両方において、S、Tとして示される。使用者は、図17に示すように湾曲した軌跡に沿ってポイントBからポイントEに溶接することになる。ポイントBからポイントEへの軌跡曲線及び線は、図17の3Dクーポン空間及び2D溶接空間それぞれに示される。変位の方向は、線Y−Oから離れる(すなわち、パイプの中心から離れる)。図18は、図17のパイプ溶接クーポン(WC)1700の一つの例示的な実施形態を示す。パイプWC1700は、非鉄金属、非導電性のプラスチックで作られ、一体となってルート継手1703を形成する二つのパイプピース1701及び1702をシミュレートする。T/S170のアーム173に取り付けるためのアタッチメントピース1704も示される。
テクスチャマップが幾何学形状の長方形の表面領域にマッピングされ得るのと同様の方法で、溶接可能な溶接ピクセルマップが、溶接クーポンの長方形表面にマッピングされ得る。溶接可能なマップの各要素は、写真の各要素がpixel(ピクセル)と呼ばれること(picture element(画素)の短縮)と同じ感覚でwexel(溶接ピクセル)と呼ばれる。ピクセルは、色(例えば、赤、緑、青、他)を定める情報のチャンネルを含む。溶接ピクセルは、仮想現実空間において溶接可能な面を定める情報のチャンネル(例えば、P、H、E、D)を含む。
本発明の一つの実施形態によれば、溶接ピクセルのフォーマットは、4つの浮動小数点数を含むチャンネルPHED(パドル、熱、追加のもの、変位)としてまとめられる。追加のもののチャンネルは、例えば、溶接ピクセルの場所にスラグがあるかどうか等、溶接ピクセルに関する論理的情報を格納するビットのセットとして扱われる。パドルチャンネルは、溶接ピクセルの場所での任意の液状金属に関する変位値を格納する。変位チャンネルは、溶接ピクセルの場所での任意の凝固金属に関する変位値を格納する。熱チャンネルは、溶接ピクセルの場所での熱の大きさを与える値を格納する。このように、クーポンの溶接可能な部分は、溶接されたビードに起因する変位、液体金属に起因する揺らめく表面の「パドル」、熱に起因する色等、を示すことができる。これらの効果の全ては、溶接可能な表面に適用される頂点及びピクセルシェーダによって実現される。本発明の一つの代替的な実施形態によれば、溶接ピクセルはまた、例えば、溶接ピクセルへの熱入力に起因して、溶接シミュレーション中に変化し得る、特定の冶金学的性質を組み込み得る。このような冶金学的性質は、溶接部の仮想試験及び検査をシミュレートするために使用され得る。
本発明の一つの実施形態によれば、変位マップ及びパーティクルシステムが使用され、粒子は互いに相互作用し得るとともに変位マップと衝突し得る。粒子は、仮想動的流体粒子であり、溶接パドルの液体挙動を提供するが、直接レンダリングされない(すなわち、直接視覚的に見られない)。代わりに、変位マップに対する粒子の効果のみが視覚的に見られる。溶接ピクセルへの熱入力は、近くの粒子の運動に影響を及ぼす。パドル及び変位を含む溶接パドルをシミュレートするのに関わる二つのタイプの変位がある。パドルは「一時的」であり、粒子及び熱が存在する間しか続かない。変位は「永久的」である。パドル変位は、急速に変化する(例えば、揺らめく)溶接の液体金属であり、変位の「上に」あると考えられ得る。粒子は、仮想表面変位マップ(すなわち、溶接ピクセルマップ)の一部をオーバーレイする(覆う)。変位は、最初のベース金属及び凝固した溶接ビードの両方を含む不変の固体金属を表す。
本発明の一つの実施形態によれば、仮想現実空間でシミュレートされた溶接プロセスは、次のように動く:粒子が細い円錐のエミッタ(シミュレートされたMWT160のエミッタ)から流れる。粒子は、溶接ピクセルマップによって定められる表面であるシミュレートされた溶接クーポンの表面と最初の接触をする。粒子は、互いに及び溶接ピクセルマップと相互作用し、実時間で蓄積する。溶接ピクセルがエミッタに近いほど多くの熱が加えられる。熱は、アークポイントからの距離及びアークから入力される熱の時間の量に依存してモデル化される。いくつかのビジュアル(例えば、色等)が熱によって駆動される。溶接パドルが、十分な熱を有する溶接ピクセルに対して仮想現実空間に描かれる又はレンダリングされる。十分熱いところはどこでも、溶接ピクセルマップは液体になり、パドル変位をこれらの溶接ピクセルの場所に対して「上げ」させる。パドル変位は、各溶接ピクセルの場所における「最も高い」粒子をサンプリングすることによって決定される。エミッタが溶接軌跡に沿って動くとき、残された溶接ピクセルの場所は冷える。熱は特定の速度で溶接ピクセルの場所から除去される。冷却閾値に達するとき、溶接ピクセルマップは凝固する。このように、パドル変位は、変位(すなわち凝固したビード)に徐々に変換される。追加される変位は、全高が変化しないように、除去されるパドルと同等である。粒子の寿命は、凝固が完了するまで存続するように微調整又は調整される。システム100でモデル化される幾つかの粒子の特性は、引力/斥力、速度(熱に関連する)、減衰(熱放散に関連する)、方向(重力に関連する)を含む。
図19A−19Cは、図1のシステム100の二重変位(変位及び粒子)パドルモデルの概念の一つの例示的な実施形態を示す。溶接クーポンは、少なくとも一つの面を有して仮想現実空間でシミュレートされる。溶接クーポンの面は、固体変位層及びパドル変位層を含む二重変位層として仮想現実空間でシミュレートされる。パドル変位層は、固体変位層を変更することができる。
本明細書において記述されるように、「パドル」は、パドル値が粒子の存在によって上げられた溶接ピクセルマップの領域によって定められる。サンプリングプロセスは図19A−19Cに表される。溶接ピクセルマップの部分が、7つの隣接する溶接ピクセルを有して示される。現在の変位値は、所与の高さ(すなわち、各溶接ピクセルに対する所与の変位)の陰影のない長方形の棒1910によって表される。図19Aでは、粒子1920が、現在の変位レベルと衝突し積み重ねられた丸い陰影のない点として示される。図19Bでは、「最も高い」粒子高さ1930が、各溶接ピクセルの場所でサンプリングされる。図19Cでは、陰影付き長方形1940が、どれくらいのパドルが粒子の結果として変位の上部に加えられたかを示す。溶接パドル高さは、パドルが熱に基づいて特定の液化速度で加えられるので、サンプリングされた値に即座に設定されない。図19A−19Cに示されていないが、パドル(陰影付き長方形)が徐々に縮むとともに変位(陰影のない長方形)が正確にパドルに代わるように下から徐々に伸びるので、凝固プロセスを可視化することが可能である。このように、実時間の溶融金属の流動特性は、正確にシミュレートされる。使用者が特定の溶接プロセスを練習するとき、使用者は、仮想現実空間で実時間の溶接パドルの溶融金属の流動特性及び熱放散特性を観察することができるとともに、彼の溶接手技を調整又は維持するためにこの情報を使用することができる。
溶接クーポンの面を表す溶接ピクセルの数は固定される。さらに、流動性をモデル化するためにシミュレーションによって生成されるパドル粒子は、本明細書において記述されるように、一時的である。したがって、ひとたび初期パドルが、システム100を使用するシミュレートされた溶接プロセス中に、仮想現実空間に生成されると、溶接ピクセルに加えてパドル粒子の数は比較的一定のままの傾向がある。これは、処理されている溶接ピクセルの数が固定され、パドル粒子は同様の割合で作られるとともに「破壊される」(すなわちパドル粒子は一時的である)ため溶接プロセス中に存在するとともに処理されているパドル粒子の数は比較的一定のままの傾向があるためである。したがって、PPS110の処理負荷は、シミュレートされる溶接セッション中、比較的一定のままである。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、パドル粒子は、溶接クーポンの表面内又は同表面の下で生成され得る。このような実施形態では、変位は、未加工(すなわち溶接されていない)クーポンの元の表面の変位に対して正又は負であるようにモデル化され得る。このように、パドル粒子は、溶接クーポンの表面に蓄積し得るだけでなく、溶接クーポンを貫通もし得る。しかし、溶接ピクセルの数は依然として固定され、作られるとともに破壊されるパドル粒子は依然として比較的一定である。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、粒子をモデル化する代わりに、パドルの流動性をモデル化するためにより多くのチャンネルを有する、溶接ピクセル変位マップが提供され得る。或いは、粒子をモデル化する代わりに、高密度なボクセル(voxel)マップがモデル化され得る。或いは、溶接ピクセルマップをモデル化する代わりに、サンプリングされるとともに決して消えない粒子のみがモデル化され得る。しかし、このような代替実施形態は、システムに対して比較的一定の処理負荷を提供しないかもしれない。
さらに、本発明の一つの実施形態によれば、吹き抜け又はキーホールが材料を取り除くことによってシミュレートされる。例えば、使用者がアークを同じ場所にあまりにも長い間保持する場合、現実世界では、材料は燃え尽き、穴をもたらす。このような現実世界の吹き抜けは、溶接ピクセルデシメーション技術によってシステム100でシミュレートされる。溶接ピクセルによって吸収される熱の量がシステム100によって高過ぎると決定される場合、その溶接ピクセルは、燃え尽きているとしてフラグを付けられる又は指定され得るとともに、そのようにレンダリングされる(例えば穴としてレンダリングされる)。しかし、続いて、溶接ピクセル再構成が、最初に燃え尽きた後に材料が追加されて戻される特定の溶接プロセス(例えばパイプ溶接)について発生し得る。概して、システム100は、溶接ピクセルデシメーション(材料を取り除くこと)及び溶接ピクセル再構成(すなわち、材料を追加して戻すこと)をシミュレートする。さらに、ルートパス溶接における材料の除去が、システム100において適切にシミュレートされる。
さらに、ルートパス溶接における材料の除去が、システム100において適切にシミュレートされる。例えば、現実世界では、ルートパスの研磨がその後の溶接パスの前に実行され得る。同様に、システム100は、仮想の溶接継手から材料を除去する研磨パスをシミュレートし得る。除去される材料は溶接ピクセルマップに対する負の変位としてモデル化され得ることが明確に理解されるであろう。すなわち、研磨パスは、システム100によってモデル化される材料を除去し、変更されたビード輪郭をもたらす。研磨パスのシミュレーションは自動的であり得る。つまり、システム100は材料の所定の厚さを除去し、これはルートパス溶接ビードの表面にそれぞれ考慮され得る。
一つの代替的な実施形態において、実際の研磨ツール、又はグラインダがシミュレートされることができ、模擬溶接ツール160又は他の入力装置の作動によってオン及びオフになる。研磨ツールは現実世界のグラインダに類似するようにシミュレートされ得ることが留意される。本実施形態において、使用者は、研磨ツールをその動きに応じて材料を除去するためにルートパスに沿って操作する。使用者は過度に材料を除去することが許容され得ることが理解されるであろう。上述と同様の方法で、使用者が過度に材料を研磨する場合、(上述された)穴又は他の欠陥が結果として生じ得る。さらに、ハードリミット又はストップが、使用者が過度に材料を除去することを防ぐために又は過度に材料が除去されるときに示すために、実装され得る、すなわちプログラムされ得る。
ここに記載された不可視の「パドル」粒子に加えて、システム100はまた、本発明の一つの実施形態に従って、アーク、炎、及び火花効果を表現するために、3つの他の種類の可視粒子を使用する。これらの種類の粒子は、いずれの種類の他の粒子とも相互に作用しないが、変位マップのみと相互に作用する。これらの粒子はシミュレートされた溶接面と衝突するが、それらは互いに相互に作用しない。本発明の一つの実施形態によれば、パドル粒子のみが互いに相互に作用する。火花粒子の物理的性質は、火花粒子が飛び回るとともに仮想現実空間において輝く点としてレンダリングされるように設定される。
アーク粒子の物理的性質は、アーク粒子がシミュレートされたクーポン又は溶接ビードの表面に衝突し、しばらく留まるように設定される。アーク粒子は、仮想現実空間において大きく、ぼやけた青白いスポットとしてレンダリングされる。任意の種類の視覚映像を形成するために、重ね合わせられる多くのこのようなスポットが必要である。最終結果は、青い端部を持つ白く輝く光輪である。
炎粒子の物理的性質は、上方にゆっくり上がるようにモデル化される。炎粒子は、中間サイズのぼやけた黄赤色のスポットとしてレンダリングされる。任意の種類の視覚映像を形成するために、重ね合わせられる多くのこのようなスポットが必要である。最終結果は、赤い端を持つ橙赤色の炎のぼんやりした形のものであり、上方に上がり次第に消える。他の種類の非パドル粒子が、本発明の他の実施形態に従って、システム100に実装され得る。例えば、煙粒子がモデル化され得るとともに炎粒子と同様の方法でシミュレートされ得る。
シミュレートされた可視化の最終ステップは、GPU115のシェーダ117によって提供される(図11参照)、頂点及びピクセルシェーダによって扱われる。頂点及びピクセルシェーダは、パドル及び変位、並びに熱に起因して変えられる表面の色及び反射率、等に用いられる。前述のPHED溶接ピクセルフォーマットの追加のもの(E)チャンネルは、溶接ピクセル毎に使用される追加の情報の全てを含む。本発明の一つの実施形態によれば、追加の情報は、非未加工ビット(真=ビード、偽=未加工スチール)、スラグビット、アンダーカット値(この溶接ピクセルにおけるアンダーカットの量、ゼロはアンダーカットが無いことに等しい)、ポロシティ値(この溶接ピクセルにおけるポロシティの量、ゼロはポロシティが無いことに等しい)、及びビードが凝固する時間をエンコードするビード跡値を含む。未加工スチール、スラグ、ビード、及びポロシティを含む異なるクーポン映像に関連付けられた一連の画像マップがある。これらの画像マップは、バンプマッピング及びテクスチャマッピングの両方のために使用される。これらの画像マップのブレンディングの量は、ここに記載された様々なフラグ及び値によって制御される。
ビード跡効果は、1D画像マップ及び所与の一片のビードが凝固する時間をエンコードする溶接ピクセル当たりのビード跡値を使用して達成される。ひとたび熱いパドル溶接ピクセルの場所がもはや「パドル」と呼ばれるのに十分熱くなくなると、時間がその場所において保存され「ビード跡」と呼ばれる。最終結果は、シェーダコードが、ビードが置かれた方向を表現するその独特の外観をビードに与える「さざ波」を描くために1Dテクスチャマップを使用することができる。本発明の一つの代替的な実施形態によれば、システム100は、シミュレートされた溶接パドルが溶接軌跡に沿って動かされる際に、シミュレートされた溶接パドルの実時間の流動状態から凝結への移行に起因する実時間溶接ビード跡特性を有する溶接ビードを、仮想現実空間でシミュレートすることができるとともに表示することができる。
本発明の一つの代替的な実施形態によれば、システム100は、使用者に溶接機械の問題解決(トラブルシュート)をする方法を教えることができる。例えば、システムの問題解決モードは、使用者がシステムを正しく設定すること(例えば、正しいガス流量、正しい電源コード接続、等)を確かにするために使用者をトレーニングし得る。本発明の他の代替的な実施形態によれば、システム100は、溶接セッション(又は少なくとも溶接セッションの一部、例えば、Nフレーム)を記録し、再生することができる。トラックボールが映像のフレームを通じてスクロールするために設けられることができ、使用者又は指導者が溶接セッションを批評することを可能にする。再生は、選択可能な速度でも(例えば、最高速度、半分の速度、1/4の速度)提供され得る。本発明の一つの実施形態によれば、分割スクリーン再生が提供されることができ、二つの溶接セッションが、例えばODD150で、並べて見られることを可能にする。例えば、「良い」溶接セッションが、比較目的で「悪い」溶接セッションの隣で見られ得る。
視覚的試験及び検査
本発明の一つの実施形態は、仮想溶接部の仮想の試験及び検査のためのシステムを有する。システムは、コード化された指令を実行することができるプログラム可能なプロセッサベースのサブシステムを含む。コード化された指令は、レンダリングエンジン及び分析エンジンを含む。レンダリングエンジンは、シミュレートされた試験の前の三次元(3D)仮想溶接部、シミュレートされた試験下の仮想溶接部の3D動画、及びシミュレートされた試験の後の3D仮想溶接部のうちの少なくとも一つをレンダリングするように構成される。分析エンジンは、3D仮想溶接部のシミュレートされた試験を実行するように構成される。シミュレートされた試験は、シミュレートされた破壊試験及びシミュレートされた非破壊試験のうちの少なくとも一つを含んでもよい。分析エンジンは、合否条件及び欠陥/不連続特性のうちの少なくとも一つについて、シミュレートされた試験の前の三次元(3D)仮想溶接部、シミュレートされた試験下の仮想溶接部の3D動画、及びシミュレートされた試験の後の3D仮想溶接部のうちの少なくとも一つの検査を実行するように更に構成される。システムはまた、シミュレートされた試験の前の三次元(3D)仮想溶接部、シミュレートされた試験下の仮想溶接部の3D動画、及びシミュレートされた試験の後の3D仮想溶接部のうちの少なくとも一つを表示するための、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された少なくとも一つの表示装置を含む。システムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続され、少なくとも一つの表示装置上で、シミュレートされた試験の前の三次元(3D)仮想溶接部、シミュレートされた試験下の仮想溶接部の3D動画、及びシミュレートされた試験の後の3D仮想溶接部のうちの少なくとも一つの、少なくとも向きを操作することに適するように構成されたユーザーインターフェースを更に含む。プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムは、中央処理ユニット及び少なくとも一つのグラフィック処理ユニットを含んでもよい。少なくとも一つのグラフィック処理ユニットは、コンピュータ統一デバイスアーキテクチャ(CUDA)及びシェーダを含んでもよい。分析エンジンは、エキスパートシステム、サポートベクターマシン(SVM)、ニューラルネットワーク及び一つ以上の知的エージェントのうちの少なくとも一つを含んでもよい。分析エンジンは、溶接コードデータ又は溶接標準データを使用して、シミュレートされた試験の前の三次元(3D)仮想溶接部、シミュレートされた試験下の仮想溶接部の3D動画、及びシミュレートされた試験の後の3D仮想溶接部のうちの少なくとも一つを分析してもよい。分析エンジンはまた、仮想溶接部を検査するために、ユーザーインターフェースを使用して、使用者によってアクセス及び操作され得る、プログラムされた仮想検査ツールを含んでもよい。
本発明の他の実施形態は、仮想溶接試験及び検査シミュレータを有する。シミュレータは、レンダリングされた3D仮想溶接部に対する、一つ又はそれ以上のシミュレートされた破壊試験及び非破壊試験を実行するための手段を含む。シミュレータはまた、レンダリングされた3D仮想溶接部に対する一つ又はそれ以上のシミュレートされた破壊試験及び非破壊試験の結果を分析するための手段を含む。シミュレータは、少なくとも3D仮想溶接部のシミュレートされた試験の後に、レンダリングされた3D仮想溶接部を検査するための手段を更に含む。シミュレータはまた、3D仮想溶接部をレンダリングするための手段を含んでもよい。シミュレータは、一つ又はそれ以上のシミュレートされた破壊試験及び非破壊試験を実行する間に仮想溶接部の3D動画をレンダリングするための手段を更に含んでもよい。シミュレータはまた、仮想溶接部の3D動画の向きを表示及び操作するための手段を含んでもよい。シミュレータは、3D仮想溶接部のシミュレートされた試験前、試験中及び試験後に3D仮想溶接部を検査するための手段を更に含んでもよい。
本発明の更なる実施形態は、仮想現実空間内のレンダリングされたベースライン仮想溶接部の品質を評価する方法を有する。方法は、ベースライン仮想溶接部を、ベースライン仮想溶接部の少なくとも一つの特性を試験するように構成された第一のコンピュータシミュレートされた試験にかけるステップを含む。方法はまた、第一の試験に応じて、第一の試験された仮想溶接部をレンダリングし、第一の試験データを生成するステップを含む。方法は、第一の試験された仮想溶接部及び第一の試験データを、少なくとも一つの特性に関する第一の試験された仮想溶接部の少なくとも一つの合否状態を決定するように構成された、コンピュータシミュレートされた分析にかけるステップを更に含む。第一のコンピュータシミュレートされた試験は、現実世界の破壊試験又は現実世界の非破壊試験をシミュレートしてもよい。方法は、仮想現実空間内にベースライン仮想溶接部を再レンダリングするステップ、ベースライン仮想溶接部を、ベースライン仮想溶接部の少なくとも一つの他の特性を試験するように構成された第二のコンピュータシミュレートされた試験にかけるステップ、第二の試験に応じて、第二の試験された仮想溶接部をレンダリングし、第二の試験データを生成するステップ、及び、第二の試験された仮想溶接部及び第二の試験データを、少なくとも一つの他の特性に関する第二の試験された仮想溶接部の少なくとも一つの他の合否状態を決定するように構成された、コンピュータシミュレートされた分析にかけるステップ、を更に含んでもよい。第二のコンピュータシミュレートされた試験は、現実世界の破壊試験又は現実世界の非破壊試験をシミュレートしてもよい。方法は、レンダリングされた第一の試験された仮想溶接部の表示されたバージョンを手動で検査するステップを更に含んでもよい。方法はまた、レンダリングされた第二の試験された仮想溶接部の表示されたバージョンを手動で検査するステップを含んでもよい。
仮想現実空間内に形成された完成された仮想溶接部は、本発明の一つの実施形態に従って、溶接欠陥に関して分析されることができ、決定は、このような溶接部が標準的な工業試験を合格するであろうか又は落ちるであろうかに関して行われ得る。特定の欠陥は、溶接部内の特定の場所内における特定の種類の失敗を生じさせ得る。欠陥又は不連続部を示すデータは、仮想溶接部を事前に定めることによって又は仮想溶接プロセスの一部として仮想現実溶接シミュレータシステム(例えば、仮想現実アーク溶接(VRAW)システム)を使用して仮想溶接部を作ることによって、仮想溶接部の定義の一部として保存される。
また、任意の特定の試験の合否に関する基準は、例えば、AWS溶接標準のような、予め定められた溶接コード及び標準に基づいて演繹的に知られる。本発明の一つの実施形態によれば、動画が作られて、仮想溶接部のシミュレートされた破壊試験又は非破壊試験を可視化することを可能にする。同じ仮想溶接部は、多くの異なる方法で試験されることができる。仮想溶接部の試験及び検査は、仮想現実溶接シミュレータシステム(例えば、仮想現実アーク溶接(VRAW)システム)上で行われてもよい。VRAWシステムは、本明細書において後に詳細に記述される。仮想溶接部の検査は、スタンドアローン仮想溶接検査(VWI)システム上で行われてもよい。VWIシステムは、本明細書において後に詳細に記述される。
VRAWシステムは、使用者が、あたかも使用者が実際に溶接をしているかのように溶接シナリオをシミュレートすることによって、実時間で仮想溶接部を作ることを可能にすることができる。また、VRAWシステムは、結果として生じるデータの全てを保存することができ、そのデータは欠陥及び不連続部を含めて仮想溶接部を定義する、VRAWシステムは更に、仮想溶接部の材料試験及び検査だけでなく、仮想溶接部の仮想破壊及び仮想非破壊の試験及び検査を実行することができる。スタンドアローンVWIシステムは、予め定められた仮想溶接部又はVRAWシステムを使用して作られた仮想溶接部を入力することができ、仮想溶接部の仮想検査を実行することができる。三次元仮想溶接部又は部分は、本発明の一つの実施形態に従い、コンピュータ支援設計(CAD)モデルから得られてもよい。したがって、試験及び検査は、特定の部品の不規則な形状に対してシミュレートされ得る。本出願の一つの実施形態によれば、VRAWシステムはまた、予め定められた仮想溶接部の仮想検査を実行することができる。例えば、VRAWシステムは、予め作られた仮想溶接部を含んでもよく、実習生は、良好な溶接はどのように見えるだろうかを学習するためにその予め作られた仮想溶接部を参照してもよい。
様々な種類の溶接不連続部及び欠陥は、不適切な溶接サイズ、不十分なビード配置、凹ビード、余盛、アンダーカット、ポロシティ、融合不良、スラグ巻込、過剰なスパッタ、オーバーフィル、割れ及び溶落ち又はメルトスルーを含み、これらは全て当技術分野で良く知られている。例えば、アンダーカットは、しばしば不適切な溶接の角度に起因する。ポロシティは、凝固中のガスの閉じ込めによって形成される空洞型の不連続部であり、アークを溶接部から遠くに動かし過ぎることによってしばしば引き起こされる。他の問題は、不適切なプロセス、充填剤、ワイヤサイズ又は手技に起因して生じ得る。これらの全てはシミュレートされ得る。
実行され得る様々な種類の破壊試験は、ルート曲げ試験、面曲げ試験、側屈試験、引張又はプル試験、破断試験(例えば、切込み破断試験又はT継手破断試験)、衝撃試験及び硬度試験を含み、これらは全て当技術分野で良く知られている。これらの試験の多くのために、溶接部から一片(ピース)が切り離され、そのピースに対して試験が実行される。例えば、ルート曲げ試験は、溶接ルートが、指定された曲げ半径の凸面上にあるように、溶接部からの切断片(カットピース)を曲げる試験である。側屈試験は、溶接の横断面の側面が、指定された曲げ半径の凸面上にあるように、溶接部を曲げる試験である。面曲げ試験は、溶接面が、指定された曲げ半径の凸面上にあるように、溶接部を曲げる試験である。
更なる破壊試験は引張又はプル試験である。引張又はプル試験において、溶接部からの切断片は、溶接部が破断するまで引っ張られるか又は引き伸ばされ、その溶接部の弾性限界及び引張強度を試験する。他の破壊試験は、破断試験である。破断試験の一つの種類は、互いに対して90度で一体に溶接されてT継手を形成する二つの部分を有する溶接部に対する試験である。その試験において、一方の部分は、他方の部分に向かって折り曲げられ、溶接部が破断するか否かが決定される。溶接部が破断した場合は、内部の溶接ビードが検査され得る。衝撃試験は、溶接部の衝撃に耐える能力を決定するために、衝撃要素が様々な温度で溶接部内に押し入れられる試験である。溶接部は、静的な荷重下で良好な強度を有するかも知れないが、高速度の衝撃を加えられた場合に破損するかも知れない。例えば、振り子装置が、下方に振れ動いて溶接部に衝突するように(場合によって溶接部を破壊する)、使用されてもよく、シャルピー衝撃試験と呼ばれる。
更なる破壊試験は硬度試験である。硬度試験は、溶接継手における押込み(indentation)又は侵入(penetration)に抵抗する溶接部能力を試験する。溶接部の硬度は、溶接継手がどのように熱影響部内で冷えるかに部分的に基づく、溶接継手において結果として生じる冶金学的性質に依存する。硬度試験のうちの二つの種類は、ブリネル試験及びロックウェル試験である。両方の試験は、硬い球形又は鋭いダイアモンドポイントのいずれかを有する圧子(ペネトレータ)を使用する。圧子は、標準化された荷重で溶接に当てられる。荷重が取り除かれたときに、侵入が測定される。試験は、取り囲む金属内のいくつかの点において実行されてもよく、潜在的な割れの良い指標である。破壊試験の更なる種類はパイプに対する曲げ試験である。パイプに対する曲げ試験において、溶接されたパイプは、パイプの4つの四半分のそれぞれから一片を取り出すように切断される。ルート曲げ試験がそれらのピースのうちの二つに対して実行され、面曲げが他の二つのピースに対して実行される。
実行され得る様々な種類の非破壊試験は、放射線透過試験及び超音波試験を含む。放射線透過試験において、溶接部はX線にさらされ、試験され得る溶接継手のX線画像が生成される。超音波試験において、溶接部は超音波エネルギーにさらされ、溶接継手の様々な性質が、反射された超音波から得られる。幾つかの種類の非破壊試験のために、溶接部は、X線又は超音波の曝露を(仮想的に)受けさせられ、内部のポロシティ、スラグ巻込及び溶け込みの欠如のような欠陥が使用者に対して視覚的に示される。他の種類の非破壊試験は染色浸透剤又は液体浸透剤であり、それらは、仮想現実的な方法でシミュレートされ得る。溶接部は染色材料をかけられ、次いで溶接部は現像薬にさらされ、例えば、裸眼では見えない表面の割れが存在するかどうかが決定される。更なる非破壊試験は磁気粒子試験である。磁気粒子試験もまた、割れを検出するために使用され、仮想現実的な方法でシミュレートされ得る。溶接部の表面下の小さな割れは、溶接部への不適切な熱入力によって作られ得る。本発明の一つの実施形態によれば、移動速度及び他の溶接プロセスパラメータが、仮想現実環境内で追跡され、溶接部への熱入力、従って、溶接部の表面近くの割れの決定のために使用される。その溶接部の表面近くの割れは、仮想非破壊試験を使用して検出され得る。
さらに、シミュレートされた構造物内の溶接部のシミュレーションが実行され得る。例えば、VRAWシステムの使用者によって作られた仮想溶接継手を有する仮想溶接部は、試験のための橋の仮想シミュレーションに組み込まれ得る。仮想溶接部は、例えば、橋の重要な構成要素に対応してもよい。橋は、壊れる前の最後の百年間に特化してもよい。試験は、溶接部が壊れるかどうかを調べるために、継時的に(すなわち、仮想時間)橋を観察することを伴い得る。例えば、溶接部が不十分な品質である(すなわち、受け入れられない不連続部又は欠陥を有する)場合には、シミュレーションは、45年後に崩壊する橋の動画を示してもよい。
図1乃至図19Cは、仮想現実空間内で、仮想現実アーク溶接(VRAW)システム100の一つの実施形態を開示する。VRAWシステム100は、使用者(溶接工)による仮想溶接部の形成を含む実時間の溶接シナリオ、及びその溶接部に関連する様々な欠陥及び不連続部特性をシミュレートすることができ、そしてまた、仮想溶接部の試験及び検査をシミュレートすること及び効果を観察するための試験下の仮想溶接部の動画を表示することができる。VRAWシステムは、溶接部の精巧な仮想レンダリングを作ることができ、仮想溶接部の様々な特性を溶接コードに比較する、仮想レンダリングの複雑な分析を実行することができる。
仮想検査は、多数の異なる方法のいずれでも及び/又はそれらの組合せでVRAWシステムに実装され得る。本発明の一つの実施形態によれば、VRAWシステムは、エキスパートシステムを含み、一連のルールによって動かされる。エキスパートシステムは、問題に対する答えを提供すること又は通常は一人又はそれ以上の人間の熟練者(エキスパート)が相談される必要があり得る不確実さを明らかにすることを試みるソフトウェアである。エキスパートシステムは、特定問題領域において最も一般的であり、従来のアプリケーション及び/又は人工知能の部分フィールドである。広範囲の方法が、熟練者のパフォーマンスをシミュレートするために使用され得る。しかし、多くに共通することは、1)主題専門家(SME)の知識(例えば、認定された溶接検査員の知識)を保存するためにいくつかの知識表現形式論を使用する知識データベースの作成、及び2)SMEからその知識を集め、その形式論に従ってそれを集成する(codifying)プロセスである。それは知識工学と呼ばれる。エキスパートシステムは学習コンポーネントを有しても有しなくてもよいが、第三の共通の要素は、ひとたびシステムが開発されると、それは、人間のSMEと同じ現実世界の問題解決事態に置かれることによって、典型的には人間の作業者の補助として又はいくつかの情報システムの補足として、試されることである。
本発明の他の実施形態によれば、VRAWシステムは、サポートベクターマシンを含む。サポートベクターマシン(SVMs)は、分類及び回帰のために使用される一連の関連する教師あり学習方法である。一組のトレーニング例を与えられると、それぞれは二つのカテゴリのうちの一つに属するものとして印を付けられ、SVMトレーニングアルゴリズムは、新たな例が一方のカテゴリ又は他方(例えば、特定の欠陥及び不連続部に関する合否カテゴリ)に含まれるかを予測するモデルを構築する。直感的には、SVMモデルは、別々のカテゴリの例が可能な限り広い明確な隙間によって分けられるようにマッピングされた、空間内の複数の点としての複数の例の表示である。新たな例は、その後同じ空間内にマッピングされ、その隙間のどちら側に含まれるかに基づいて一つのカテゴリに属することを予測される。
本発明の更に他の実施形態によれば、VRAWシステムは、新しいシナリオを学習させられるとともに新しいシナリオに適合させられることができるニューラルネットワークを含む。ニューラルネットワークは、相互接続する人工的なニューロン(生物学的なニューロンの性質を模倣するプログラミング構成)で作り上げられる。ニューラルネットワークは、生物学的なニューラルネットワークの理解を得るため又は必ずしも現実の生物学的なシステムのモデルを作ることなく人工知能の問題を解決するためのいずれに使用されてもよい。本発明の一つの実施形態によれば、ニューラルネットワークは、仮想溶接部データから欠陥及び不連続部を入力し、合否データを出力すると考えられる。
本発明の様々な実施形態によれば、知的エージェントは、実習生がより多くの練習を必要とする領域に関して実習生にフィードバックを提供するため又は実習生の学習を向上させるために教育カリキュラムをどのように修正するかに関して指導者又は教員にフィードバックを提供するために利用され得る。人工知能において、知的エージェントは、通常はソフトウェアに実装される自立した存在であり、それは環境を観察するとともに環境に対して働きかけ、目標達成に向かってその働きを方向付ける。知的エージェントは、目標(例えば、溶接実習生又は溶接教員に対して適切なフィードバックを提供する目標)を達成するために知識を学習及び使用することが可能であり得る。
本発明の一つの実施形態によれば、VRAWシステムを使用して作られた溶接部の仮想レンダリングは、システムの破壊/非破壊試験部分にエクスポートされる。システムの試験部分は、(破壊試験のための)仮想溶接部の切断部分を自動的に生成でき、それらの切断部分を、VRAWシステムの試験部分内の複数の可能な試験の一つに投入することができる。複数の試験のそれぞれは、特定の試験を示す動画を生成することができる。VRAWシステムは、試験の動画を使用者に対して表示することができる。動画は、使用者によって生成された仮想溶接部が試験を合格するか否かを使用者に明確に示す。非破壊試験のために、溶接部は、X線又は超音波の曝露を(仮想的に)受けさせられ、内部のポロシティ、スラグ巻込及び溶け込みの欠如のような欠陥が使用者に対して視覚的に示される。
例えば、仮想曲げ試験にかけられる仮想溶接部は、特定の種類の欠陥が仮想溶接部の溶接継手で生じる場所で破断することが動画で示され得る。他の例として、仮想曲げ試験にかけられる仮想溶接部は、溶接部が完全に破壊しないとしても、曲がること及び割れが入ることを動画で示されてもよく、又は、相当量の欠陥を示し得る。同じ仮想溶接部が、同じ切断部分(例えば、切断部分はVRAWシステムによって再構成又は再レンダリングされ得る)又はその仮想溶接部の異なる切断部分を使用して、異なる試験のために何度も繰り返して試験され得る。本発明の一つの実施形態によれば、仮想溶接部は、例えば、金属の種類及び特定の選択された破壊/非破壊試験において要因として含められる引張り強さ等の、冶金学的性質で標識される。アルミニウム及びステンレスのような溶接金属を含む様々な一般的なベース溶接金属が、本発明の一つの実施形態に従い、シミュレートされる。
本発明の一つの実施形態によれば、バックグラウンドで動作するエキスパートシステムが、VRAWシステムのディスプレイのウィンドウにポップアップし得るとともに、何故溶接部が試験に落ちたか(例えば、溶接継手のこれらの特定のポイントにポロシティが多過ぎる)及びどの特定の(複数の)溶接標準に適合していなかったかを使用者に(例えばテキストメッセージ及び/又は図形を介して)示してもよい。本発明の他の実施形態によれば、VRAWシステムは、本試験を特定の溶接標準に結びつける外部ツールへのハイパーテキストリンクを有し得る。さらに、使用者は、彼らのトレーニングをサポートするための文字、写真、映像、及び図を含む知識データベースへのアクセスを有し得る。
本発明の一つの実施形態によれば、特定の破壊/非破壊試験の動画は、使用者が試験中にVRAWシステムのディスプレイで三次元的な方法でレンダリングされた仮想溶接部を回転するように動かし、試験を様々な角度及び視点から見ることができるように、試験によって修正された仮想溶接部の3Dレンダリングである。特定の試験の同じ3Dレンダリングされた動画が、同じ使用者に対して又は多数の使用者に対して最大のトレーニング効果を可能にするように、何度も繰り返して再生されてもよい。
本発明の一つの実施形態によれば、レンダリングされた仮想溶接部及び/又は試験下の仮想溶接部の対応する3Dレンダリングされた動画は、溶接部の検査を実行するために及び/又は(例えば、認定された溶接検査員になるために)使用者が溶接検査のトレーニングをするために、システムの試験部分にエクスポートされ得る。システムの検査部は、教示モード及びトレーニングモードを含む。
教示モードでは、仮想溶接部及び/又は試験下の仮想溶接部の3Dレンダリングされた動画が表示されるとともに、溶接実習生と共に採点者(指導者)によって見られる。指導者及び溶接実習生は、仮想溶接部を見るとともに相互に作用することができる。指導者は、仮想溶接部の欠陥及び不連続部を発見することをどれくらい上手く実習生が行ったかの(例えば、採点方法を介して)決定を行うこと及び、表示された仮想溶接部と相互に作用する(異なる視点から見ること等)ことによって、どれくらい上手く溶接実習生が行ったか及び何を溶接実習生が失敗したかを溶接実習生に示すことができる。
トレーニングモードでは、システムは、溶接検査員実習生に仮想溶接部に関する様々な質問を行い、溶接検査員実習生が質問に対する回答を入力することを可能にする。システムは、質問の最後で溶接検査員実習生に評価を提供し得る。例えば、システムは、最初にある仮想溶接部に関して溶接検査員実習生にサンプルの質問を提供し得るとともに、次に試験モード中に評価されることになる他の仮想溶接部に関して溶接検査員実習生に時限質問を提供するように進み得る。
システムの検査部はまた、溶接検査員実習生又は指導者が欠陥を検出することを助け、予め定められた溶接標準と比べられる仮想溶接部の幾つかの測定を行う幾つかのインタラクティブツールを提供し得る(例えば、ルート溶接の溶け込みを測定し、測定値を必要とされる標準的な溶け込みと比較する、仮想ゲージ)。溶接検査員実習生の評価はまた、溶接検査員実習生が溶接を評価するために適切なインタラクティブツールを使用したか否かを含んでもよい。本発明の一つの実施形態によれば、システムの検査部分は、評価(すなわち採点)に基づいて、どの領域に溶接検査員実習生が支援を必要としているかを決定し、溶接検査員実習生に検査を練習するためのより典型的なサンプルを提供する。
前述したように、知的エージェントは、実習生がより多くの練習を必要とする領域に関して実習生にフィードバックを提供するため又は実習生の学習を向上させるために教育カリキュラムをどのように修正するかに関して指導者又は教員にフィードバックを提供するために利用され得る。人工知能において、知的エージェントは、通常はソフトウェアに実装される自立した存在であり、それは環境を観察するとともに環境に対して働きかけ、目標達成に向かってその働きを方向付ける。知的エージェントは、目標(例えば、溶接実習生又は溶接教員に対して適切なフィードバックを提供する目標)を達成するために知識を学習及び使用することが可能であり得る。本発明の一つの実施形態によれば、知的エージェントによって認識され働きかけられる環境は、例えば、VRAWシステムによって生成された仮想現実環境である。
さらに、様々なインタラクティブ検査ツールは、試験にかけられる前の仮想溶接部、試験にかけられた後の仮想溶接部、又は両方に使用され得る。様々なインタラクティブ検査ツール及び手法は、本発明の一つの実施形態に従って、様々な溶接プロセス、金属の種類、及び溶接標準の種類に適するように構成される。スタンドアローンVWIシステムでは、インタラクティブ検査ツールは、例えば、キーボード及びマウスを使用して操作され得る。VRAWシステムでは、インタラクティブ検査ツールは、例えば、ジョイスティック及び/又はコンソールパネルを介して操作され得る。
前述したように、スタンドアローン仮想溶接検査(VWI)システムは、予め定められた仮想溶接部又はVRAWシステムを使用して作られた仮想溶接部を入力することができ、仮想溶接部の仮想検査を実行することができる。しかし、VRAWシステムと違い、VWIシステムは、本発明の幾つかの実施形態によれば、シミュレートされた仮想溶接プロセスの一部として仮想溶接部を作ることができなくてもよく、その溶接部の仮想破壊/非破壊試験を実行できても、できなくてもよい。
図20は、スタンドアローン仮想溶接検査(VWI)システム2000の一つの例示的な実施形態を示す。VWIシステム2000は、溶接部に関連する様々な特性に起因する効果を観察するために仮想溶接部の検査をシミュレートし、検査下の仮想溶接部の動画(アニメーション)を表示することができる。一つの実施形態では、VWIシステム2000は、図1のPPS110と同様の、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(PPS)2010を含む。VWIシステム2000は、PPS2010に動作可能に接続された、図1のODD150と同様の、観察者表示装置(ODD)2050を更に含む。VWIシステム2000はまた、PPS2010に動作可能に接続された、キーボード2020及びマウス2030を含む。
図20のシステム2000の第一の実施形態では、PPS2010は、仮想溶接部の3D動画レンダリングを提供するためのレンダリングエンジンとして構成されるハードウェア及びソフトウェアを提供する。PPS2010はまた、仮想溶接部の試験及び検査を実行するための分析エンジンとして構成されるハードウェア及びソフトウェアを提供する。PPS2010は、仮想溶接部を代表するデータを入力することができるとともに、入力データで作動するPPS110のレンダリングエンジンを使用して、検査のために仮想溶接部の動画の3Dレンダリングを生成することができる。仮想溶接部データは、「予め準備された」(すなわち、予め定められた)仮想溶接部(例えば、別のコンピュータシステムを使用して生成される)であってもよく、又は、仮想現実溶接シミュレータシステム(例えば前述のVRAWシステム)を使用して作られた仮想溶接部データであってもよい。
さらに、本発明の拡張された実施形態によれば、PPS2010は、VRAWシステムのものと同様に、VWIシステム200が仮想破壊/非破壊試験を入力仮想溶接部に対して実行し、試験の動画を表示することを可能にする、高度な分析/レンダリング/動画能力を含む。
本発明の一つの実施形態によれば、VRAWシステムを使用して作られた溶接部の仮想レンダリングはVWIシステムにエクスポートされる。VWIシステムの試験部分は、仮想溶接部の切断部分を自動的に生成でき、それらの切断部分(又は切断されていない仮想溶接部自体)を、VWIシステムの試験部分内の複数の可能な破壊試験及び非破壊試験の一つに投入することができる。複数の試験のそれぞれは、特定の試験を示す動画を生成することができる。VWIシステムは、試験の動画を使用者に対して表示することができる。動画は、使用者によって生成された仮想溶接部が試験を合格するか否かを使用者に明確に示す。
例えば、仮想曲げ試験にかけられる仮想溶接部は、特定の種類の欠陥が仮想溶接部の溶接継手で生じる場所で破断することが動画で示され得る。他の例として、仮想曲げ試験にかけられる仮想溶接部は、溶接部が完全に破壊しないとしても、曲がること及び割れが入ることを動画で示されてもよく、又は、相当量の欠陥を示し得る。同じ仮想溶接部が、同じ切断部分(例えば、切断部分はVWIシステムによって再構成され得る)又はその仮想溶接部の異なる切断部分を使用して、異なる試験のために何度も繰り返して試験され得る。本発明の一つの実施形態によれば、仮想溶接部は、例えば、金属の種類及び特定の選択された破壊/非破壊試験において要因として含められる引張り強さ等の、冶金学的性質で標識される。
本発明の一つの実施形態によれば、バックグラウンドで動作するエキスパートシステムが、VWIシステムのディスプレイのウィンドウにポップアップし得るとともに、何故溶接部が試験に落ちたか(例えば、溶接継手のこれらの特定のポイントにポロシティが多過ぎる)及びどの特定の(複数の)溶接標準に適合していなかったかを使用者に(例えばテキストメッセージ及び/又は図形を介して)示してもよい。本発明の他の実施形態によれば、VWIシステムは、本試験を特定の溶接標準に結びつける外部ツールへのハイパーテキストリンクを有し得る。
本発明の一つの実施形態によれば、特定の破壊/非破壊試験の動画は、使用者が試験中にVWIシステムのディスプレイで三次元的な方法でレンダリングされた仮想溶接部を回転するように動かし、試験を様々な角度及び視点から見ることができるように、試験によって修正された仮想溶接部の3Dレンダリングである。特定の試験の同じ3Dレンダリングされた動画が、同じ使用者に対して又は多数の使用者に対して最大のトレーニング効果を可能にするように、何度も繰り返して再生されてもよい。
図20のVWIシステム2000のより単純で複雑でない実施形態において、PPS2010は、VRAWシステムによって生成された仮想破壊又は非破壊試験の動画化された3Dレンダリングを入力し、検査目的のために動画を表示することができる。PPS2010は、仮想溶接部の検査を実行するための分析エンジンとして構成されるハードウェア及びソフトウェアを提供する。しかし、このより単純な実施形態では、PPS2010は仮想溶接部の3D動画レンダリングを提供するためのレンダリングエンジンとして構成されたハードウェア及びソフトウェアを提供せず、分析エンジンは仮想溶接部の検査をサポートすることに限られる。レンダリング及び試験は、他の所(例えばVRAWシステム)で行われ、このような実施形態のVWIシステムに入力される。このようなより単純な実施形態では、PPS2010は、仮想検査を実行するために及び溶接検査に関してトレーニングするためにソフトウェアでプログラムされた、標準的な、既成のパーソナルコンピュータ又はワークステーションであり得る。
前述のように、仮想検査は、多数の異なる方法のいずれでも及び/又はそれらの組合せでVWIシステムに実装され得る。本発明の一つの実施形態によれば、VWIシステムは、エキスパートシステムを含み、一連のルールによって動かされる。本発明のもう一つの実施形態によれば、VWIシステムは、サポートベクターマシンを含む。本発明の更なる実施形態によればVWIシステムは、新しいシナリオを学習させられるとともに新しいシナリオに適合させられることができるニューラルネットワーク、及び/又は、実習生がより多くの練習を必要とする領域に関して実習生にフィードバックを提供する、又は実習生の学習を向上させるために教育カリキュラムをどのように修正するかに関して指導者又は教員にフィードバックを提供する知的エージェントを含む。さらに、使用者は、彼らのトレーニングをサポートするための文字、写真、映像、及び図を含む知識データベースへのアクセスを有し得る。
本発明の一つの実施形態によれば、レンダリングされた仮想溶接部及び/又は試験下の仮想溶接部の対応する3Dレンダリングされた動画は、溶接の検査を実行するために及び/又は(例えば、認定された溶接検査員になるために)使用者が溶接検査のトレーニングをするために、VWIシステムに入力され得る。システムの検査部は、教示モード及びトレーニングモードを含む。
教示モードでは、仮想溶接部及び/又は試験下の仮想溶接部の3Dレンダリングされた動画が表示されるとともに、溶接実習生と共に採点者(指導者)によって見られる。指導者及び溶接実習生は、仮想溶接部を見るとともに相互に作用することができる。指導者は、仮想溶接部の欠陥及び不連続部を発見することをどれくらい上手く実習生が行ったかの(例えば、採点方法を介して)決定を行うこと及び、表示された仮想溶接部と相互に作用する(異なる視点から見ること等)ことによって、どれくらい上手く溶接実習生が行ったか及び何を溶接実習生が失敗したかを溶接実習生に示すことができる。
トレーニングモードでは、システムは、溶接検査員実習生に仮想溶接部に関する様々な質問を行い、溶接検査員実習生が質問に対する回答を入力することを可能にする。システムは、質問の最後で溶接検査員実習生に評価を提供し得る。例えば、システムは、最初にある仮想溶接部に関して溶接検査員実習生にサンプルの質問を提供し得るとともに、次に評価されることになる他の仮想溶接部に関して溶接検査員実習生に時限質問を提供するように進み得る。
システムの検査部分はまた、溶接検査員実習生又は指導者が欠陥を検出することを助け、予め定められた溶接標準と比べられる仮想溶接の幾つかの測定を行う幾つかのインタラクティブツールを提供し得る(例えば、ルート溶接の溶け込みを測定し、測定値を必要とされる標準的な溶け込みと比較する、仮想ゲージ)。溶接検査員実習生の評価はまた、溶接検査員実習生が溶接を評価するために適切なインタラクティブツールを使用したか否かを含んでもよい。本発明の一つの実施形態によれば、システムの検査部分は、評価(すなわち採点)に基づいて、どの領域に溶接検査員実習生が支援を必要としているかを決定し、溶接検査員実習生に検査を練習するためのより典型的なサンプルを提供する。
さらに、様々なインタラクティブ検査ツールは、試験にかけられる前の仮想溶接部、試験にかけられた後の仮想溶接部、又は両方に使用され得る。様々なインタラクティブ検査ツール及び手法は、本発明の一つの実施形態に従って、様々な溶接プロセス、金属の種類、及び溶接標準の種類に適するように構成される。スタンドアローンVWIシステム2000では、インタラクティブ検査ツールは、例えば、キーボード2020及びマウス2030を使用して操作され得る。インタラクティブ検査ツールの他の例は、のど厚の測定を実行するためのパルムグレンゲージ、脚長サイズを決定するための仮想すみ肉ゲージ、凸面測定又はアンダーカットの測定を実行するための仮想VWACゲージ、割れの長さを測定するための仮想スライドノギス、割れの幅を測定するための仮想マイクロメータ、及び検査用に溶接部の一部を拡大するための仮想拡大レンズを含む。他の仮想インタラクティブツールも同様に、本発明の様々な実施形態に従って、可能である。
図21は、仮想現実空間のレンダリングされたベースライン仮想溶接部の品質を評価するための、方法2100の例示的な実施形態のフローチャートを示す。ステップ2110では、ベースライン仮想溶接部がレンダリングされる(又は再びレンダリングされる、すなわち再レンダリングされる)。例えば、使用者は、仮想部分で溶接手技を練習し、使用者の溶接能力を代表するベースライン仮想溶接部をレンダリングするために、VRAWシステム100を用い得る。本明細書において用いられる場合、用語「仮想溶接部」は、仮想溶接部分全体又は、多くの溶接試験で使用されるような、それらの仮想切断部分を指し得る。
ステップ2120では、ベースライン仮想溶接部は、ベースライン仮想溶接部の(複数の)特性を試験するように構成されたコンピュータシミュレートされた試験(例えば、破壊仮想試験又は非破壊仮想試験)にかけられる。コンピュータシミュレートされた試験は、例えば、VRAWシステム又はVWIシステムによって実行され得る。ステップ2130では、シミュレートされた試験に応じて、試験された仮想溶接部がレンダリングされ(例えば、破壊試験に起因するベースライン仮想溶接部の変更)、付随する試験データが生成される。ステップ2140では、試験された仮想溶接部及び試験データがコンピュータシミュレートされた分析にかけられる。コンピュータシミュレートされた分析は、仮想溶接部の(複数の)特性に関する試験された仮想溶接部の合否状態を決定するように構成される。例えば、決定は、試験後の(複数の)特性の分析に基づいて、仮想溶接部が曲げ試験を合格したか否かに関して行われ得る。
ステップ2150では、試験された仮想溶接部を検査するか否かの決定が使用者によって行われる。決定が検査をしない場合、次に、ステップ2160において、他の試験を実行するか否かの決定が行われる。他の試験を実行するように決定が行われる場合、次に方法は、ステップ2110に戻り、以前の試験が仮想溶接部で行われなかったかのように、ベースライン仮想溶接部が再レンダリングされる。このように、多くの試験(破壊及び非破壊)が同じベースライン仮想溶接部で実行され得るとともに様々な合否条件について分析され得る。ステップ1250において、決定が検査することである場合、次に、ステップ2170において、試験された仮想溶接部(すなわち試験後の仮想溶接部)が使用者に表示され、使用者は、試験された仮想溶接部の様々な特性を検査するために、試験された仮想溶接部の向きを操作し得る。ステップ2180では、使用者は、検査に役立てるために、プログラムされた検査ツールにアクセスし得るとともに、試験された仮想溶接部にプログラムされた検査ツールを適用し得る。例えば、使用者は、ルート溶接部の溶け込みを測定し測定値を必要な標準的な溶け込みと比較する仮想ゲージにアクセスし得る。検査後、再びステップ2160では、他の試験を実行するか否かの決定が行われる。他の試験が行われないことになる場合、次に方法は終了する。
例として、仮想溶接部2200の同じ切断部分が、図22−24にそれぞれ示されるように、シミュレートされた曲げ試験、シミュレートされた引張又はプル試験、及びシミュレートされた切込み破断試験にかけられ得る。図22を参照すると、溶接継手2210を有する仮想溶接部2200の真っ直ぐに切った部分がシミュレートされた曲げ試験にかけられる。曲げ試験は、溶接部の延性、溶接溶込み、融合、(破断面の)結晶構造、及び強さ等の様々な溶接特性を見つけ出すために実行され得る。曲げ試験は、溶接金属、溶接継手及び熱影響部の品質を決定するのに役立つ。曲げ試験中の金属の如何なる割れも、融合不良、溶け込み不良又は割れを生じさせ得る他の状況を示す。金属の伸張は、溶接部の延性を示すのに役立つ。破断面は溶接部の結晶構造を明らかにする。大きい結晶は、不完全な溶接手順又は溶接後の不適切な熱処理を示す傾向がある。良質な溶接部は小さい結晶を有する。
図23を参照すると、曲げ試験後、同じ溶接継手2210を有する仮想溶接部2200の同じまっすぐな切断部分が、再レンダリングされ得るとともに、シミュレートされたプル試験にかけられ得る。プル試験(引張試験)は溶接継手の強さを見つけるために実行され得る。シミュレートされた試験では、仮想溶接部2200は、一方の端部で保持されるとともに、他方の端部で仮想溶接部2200が破断するまで引っ張られる。溶接部2200が破断する引張荷重又は引く力が決定され、合否決定のために標準的な測定値と比較され得る。
図24を参照すると、プル試験後、同じ溶接継手2210を有する仮想溶接部2200の同じまっすぐな切断部分が、再レンダリングされ得るとともに、シミュレートされた切込み破断試験にかけられ得る。シミュレートされた切込み破断試験は、溶接された突合せ継手の溶接金属が、例えば、スラグ巻込、ブローホール、融合不良、及び酸化金属等の内部欠陥を有するか否かを決定するために実行される。図24に示されるように、溶接継手2210の各側部にスロットが切り込まれる。仮想溶接部2200は、二つの支持部をまたいで配置され、スロットの間の溶接部2210の部分が破壊するまでハンマで叩かれる。溶接部2210の内部金属は、欠陥について検査され得る。欠陥は、合否決定のために標準的な測定値を比較され得る。
拡張された教育及びトレーニング
一つの実施形態は、仮想現実アーク溶接システムを提供する。システムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカ、空間トラッカによって空間的に追跡されるように構成された少なくとも一つの模擬溶接ツール、及び使用者がシステムに情報を入力すること及び選択を行うことの一つ又はそれ以上を実行することを可能にするように構成された、少なくとも一つのユーザーインターフェースを含む。システムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続され、外部の通信基盤にアクセスするように構成された、通信コンポーネントを更に含む。さらに、仮想現実溶接システムは、通信コンポーネントを使用して外部の通信基盤を介し、使用者の要求に応じて、溶接教育及び理論に関する、一つ又はそれ以上の予め特定されたインターネット上のウェブサイトに使用者を導くように構成されている。使用者の要求は、使用者、人間である溶接指導者、又はプログラム可能なプロセッサベースのサブシステム上に構成された知的エージェントのうちの一人若しくは一つ又はそれ以上によって促されてもよい。システムは、一つ又はそれ以上の音声変換装置を更に含んでもよく、その音声変換装置は、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続され、通信コンポーネントを使用して外部の通信基盤を介し、使用者と離れた場所の溶接指導者との間の音声通信を容易にするように構成されてもよい。システムは、一つ又はそれ以上の映像装置を更に含んでもよく、その映像装置は、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続され、通信コンポーネントを使用して外部の通信基盤を介し、使用者と離れた場所の溶接指導者との間の視覚的通信を容易にするように構成されてもよい。仮想現実溶接システムは、通信コンポーネントを使用して外部の通信基盤を介し、離れた場所の遠隔装置からの命令を受信するように更に構成されてもよく、その命令は、仮想現実溶接システムの問題解決(トラブルシューティング)又は仮想現実溶接システムの設定変更のうちの一つ又はそれ以上を指示するように構成されてもよい。遠隔装置は、例えば、携帯型モバイル装置、デスクトップ型パーソナルコンピュータ装置又は離れた使用者によって操作されるサーバーコンピュータのうちの一つを含んでもよい。外部の通信基盤は、例えば、インターネット、セルラー電話ネットワーク又は衛星通信ネットワークのうちの一つを含んでもよい。
図25は、実時間仮想現実環境でのアーク溶接トレーニングを提供するシステム2500のシステムブロック図の第二の例示的な実施形態を示す。システム2500は、図1のシステム100に類似する。しかし、図25のシステム2500は、通信コンポーネント(CC)2510、音声変換器2520(例えば、スピーカ)及び2530(例えば、マイクロホン)、映像装置2540(例えば、カメラ)並びに知的エージェント2550を含む、追加的な要素を含む。
CC2510は、例えば、ケーブルモデム、無線ルータ又は3G若しくは4Gのセルラー通信モジュールのうちの一つ又はそれ以上であってもよく、外部の通信基盤(例えば、インターネット)へのアクセス及び接続を提供する。一つの実施形態によれば、CC2510はまた、インターネット上のウェブサイトのアクセスを容易にすることに役立つウェブブラウザを提供してもよい。図26は、どのように図25の仮想現実アーク溶接システム2500が外部の通信基盤2600を介して遠隔装置2610にインタフェース接続し得るかを示すシステムブロック図を示す。遠隔装置2610は、離れた使用者によって操作され、例えば、無線モバイル装置、デスクトップ型パーソナルコンピュータ又はサーバーコンピュータであり得る。
仮想現実溶接システムの使用者(例えば、溶接実習生)がシミュレートされた溶接手順を実行しているときに、使用者は、正しく溶接手順を実行することのいくつかの側面に関して困難を経験するか又は混乱し得る。一つの実施形態によれば、使用者は、ユーザーインターフェース(例えば、WU130又はODD150)を介して、溶接教育及び理論に関する、複数の予め特定されたインターネット上のウェブサイトのうちの一つに誘導されることを要求し得る。
システム2500は、CC2510を使用して選択されたウェブサイトに自動的にアクセスし、例えば、ODD150又はFMDD140上に、使用者に対して、対応する主要ウェブページを表示することができる。ひとたび主要ウェブページに至れば、使用者は、ユーザーインターフェースを介して、そのウェブサイトに関連付けられた他のウェブページを選択することができる。一つの実施形態によれば、特定されたウェブサイト及び関連付けられたウェブページは、溶接実習生によって経験される共通の問題(例えば、溶接ツールの向き、電極からワークピースへの距離、溶接ツール移動速度等)に取り組むために特に設計される。このようにして、使用者は、現在のシミュレートされた溶接手順に関する彼の困難又は混乱を軽減するための回答を迅速かつ容易に発見し得る。
一つの代替手段として、使用者を観察する溶接指導者は、使用者がいくらかの特定の困難又は問題を有していることを理解する可能性があり、結果として、使用者が複数の予め特定されたウェブサイトのうちの一つに導かれることを要求してもよい。一つの更なる代替手段として、PPS110上に構成された知的エージェント(IA)2550は、使用者が何かを理解していないか又はシミュレートされた溶接手順のいくつかの側面を正しく実行していないことを自動的に検出してもよい。一つの実施形態によれば、知的エージェントは、通常はソフトウェアに実装される自立した存在であり、それは環境を観察するとともに環境に対して働きかけ、目標達成に向かってその働きを方向付ける。知的エージェントは、目標(例えば、溶接実習生又は溶接教員に対して関連性の深いフィードバックを提供する目標)を達成するために知識を学習及び使用することが可能であり得る。本発明の一つの実施形態によれば、知的エージェントによって認識され働きかけられる環境は、例えば、VRAWシステム2500によって生成された仮想現実環境である。
IA2550は続いて、そのシミュレートされた溶接手順を中断し、その問題を使用者に通知し、使用者を助けるために複数の予め特定されたウェブサイトのうちの適切なウェブサイトに使用者を自動的に導いてもよい。そのウェブサイトは、文書による指導、図面による指導、映像による指導又はインターネット接続を通じて供給され得る如何なる他の種類の適切な指導形式を提供してもよい。
一つの例として、IA2550は、使用者が適切な角度で模擬溶接ツールを保持していないことを検出してもよく、例えば、「あなたは、適切な角度で模擬溶接ツールを保持することに課題があるようです。これから私は、現在の溶接手順に関してその溶接ツールのための適切な向きの映像を見せるウェブサイトにあなたをご案内します。」と言うメッセージを使用者に対して表示してもよい。システム2500は、CC2510を使用して、IA2550が誘導するウェブサイトにアクセスすることに進んでもよい。システムは、使用者の代わりに映像を自動的に選択及び上映さえ成し得る。代替的に、使用者は、ひとたびそのウェブサイトに至れば映像を選択及び上映してもよい。
一つの実施形態によれば、図25に示されるように、システムは、スピーカ2520、マイクロホン2530及びビデオカメラ2540を含む。それらは、仮想現実アーク溶接システム2500の使用者と離れた場所にいる溶接指導者との間の通信(communication)を容易にするために使用されてもよい。溶接指導者は、例えば、携帯型モバイル装置又はデスクトップ型パーソナルコンピュータを介してインターネットに接続されてもよい。通信は、CC2510を使用した、外部の通信基盤2600を通じた実時間のものであってもよく、溶接実習生がシミュレートされた溶接プロセスを実行している間に、溶接指導者が実時間で溶接実習生(使用者)に指導を与えることを可能にする。
一つの実施形態によれば、マイクロホン2530は使用者の声から音波を受け取り、ビデオカメラ2540は実時間で使用者のビデオ画像を提供する。PPS110は、使用者の声及びビデオ画像をデジタルデータに変換するように構成されており、デジタルデータは、CC2510を使用して外部の通信基盤2600を通じ、溶接指導者に伝えられ得る。同様に、溶接指導者の声は、CC2510を使用して外部の通信基盤2600を通じて溶接指導者の声を代表するデジタルデータを受信した後、そしてPPS110がそのデジタルデータを、スピーカ2520を駆動する電気信号に変換した後に、スピーカ2520を通じて聞かれることができる。さらに、溶接指導者のビデオ画像は、例えば、CC2510を使用して外部の通信基盤2600を通じて溶接指導者のビデオ画像を代表するデジタルデータを受信した後、そしてPPS110がそのデジタルデータを、ODD150上に表示される電気信号に変換した後に、ODD150上で見られ得る。
一つの実施形態によれば、遠隔装置2610の使用者は、外部の通信基盤2600を通じて遠隔装置から仮想現実溶接システム2500に命令を送信し得る。命令は、CC2510を通してPPS110によって受信される。遠隔装置の使用者は、例えば、仮想現実溶接システム2500の遠隔での問題解決を容易にするための命令を送信してもよい。例えば、システム技術者は、幾つかの診断手順が仮想現実溶接システム上で作動されることを命令し得る。PPS110は、診断手順の結果を遠隔装置2610に送り返し得る。さらに、遠隔装置の使用者は、仮想現実溶接システム2500の設定を変更するための命令を送信してもよい。例えば、離れた場所で遠隔装置を使用する溶接指導者は、外部の通信基盤2600を通じて設定を変更することによって、仮想現実溶接システムに溶接実習生のための溶接シナリオを設定し得る。変更され得る他の設定は、例えば、テーブル173及びアーム173の位置、ワイヤ送給速度、電圧レベル、電流量、極性及び特定の視覚的キューをオン又はオフにすることを含む。
他の実施形態は、仮想現実アーク溶接システムを提供する。システムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカ、空間トラッカによって空間的に追跡されるように構成された少なくとも一つの模擬溶接ツール、及びプログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された少なくとも一つの表示装置、を含む。システムは、仮想現実環境内で、使用者による少なくとも一つの模擬溶接ツールの操作に反応し且つ実時間の溶融金属の流動性及び熱放散特性を有する溶接パドルをシミュレートし、シミュレートされた溶接パドルを実時間で少なくとも一つの表示装置に表示するように構成されている。システムは、シミュレートされた溶接パドルの少なくとも一つの特性が、少なくとも一つの特性の理想的な量から所定量以上外れる場合に、理想的な溶接パドルの画像をシミュレートされた溶接パドルの上に重ね、表示するように更に構成されている。シミュレートされた溶接パドルの少なくとも一つの特性は、形状、色、スラグ、サイズ、粘度、熱放散、パドル跡及びダイム間隔のうちの一つ以上を含み得る。様々な実施形態によれば、理想的な溶接パドルの画像は、半透明な、ゴースト画像又は不透明(opaque)な画像であってもよい。システムは、シミュレートされる溶接プロセスの少なくとも第一の部分の間、理想的な溶接パドルの半透明なゴースト画像を、シミュレートされた溶接パドルの上に重ね、表示するように更に構成されてもよい。
図27は、仮想溶接プロセス中にシステム100を使用して作られている、表示された仮想溶接部2700の一つの例示的な実施形態を示し、シミュレートされた溶接パドル2710を示す。一つの実施形態によれば、シミュレートされた溶接パドルは、例えば、形状、色、スラグ、サイズ、流動性/粘度、熱放散、パドル跡及びダイム間隔のような、様々な特性を有し得る。特定の溶接プロセスに関して、これらの特性は、理想的な溶接パドルについては特定の予め定められた範囲又は値に理想的に一致する。
一つの例として、図27において、シミュレートされた溶接パドル2710の幾つかの特性は、シミュレートされた溶接パドル2710の形状が幅が広過ぎ、表示された熱放散特性が不適切であるという点で、その仮想溶接プロセスに関する理想的な溶接パドルから外れている。このような逸脱は、例えば、模擬溶接ツールの不十分な使用者の技術に起因し得る。したがって、一つの実施形態によれば、理想的な溶接パドルの画像は、シミュレートされた溶接プロセスの間、シミュレートされた溶接パドル2710の上に実時間で重ねられ且つ表示され、使用者が彼の手技を修正してシミュレートされた溶接パドル2710を理想的な溶接パドルにより正確に一致させることを誘導及び奨励し得る。
一つの実施形態によれば、仮想現実アーク溶接システムのPPS110は、シミュレートされた溶接パドルの複数の特性に関連する値を管理し、それらの値を特定の溶接プロセスに関する理想的な値の組と比較する。仮想現実溶接システムは、シミュレートされた溶接パドルの少なくとも一つの特性が、少なくとも一つの特性の理想的な値から所定量以上外れる場合に、理想的な溶接パドルの画像をシミュレートされた溶接パドルに重ね、表示するように構成されている。
図28は、シミュレートされた溶接パドル2710の画像の上に重ねられた理想的な溶接パドル2810の画像と共に、図27の表示された仮想溶接を示す。図28において、理想的な溶接パドル2810の幅は、シミュレートされた溶接パドル2710の幅よりも狭いように見え、理想的な溶接パドル2810にわたる灰色の変化する濃淡(shades)によって示されるような理想的な溶接パドル2810の表示された熱勾配は、その仮想溶接プロセスに関する適切な熱放散の代表である。表示された理想的な溶接パドル2810は、一つの実施形態によれば、半透明であり得る。そのため、使用者は、理想的な溶接パドル2810を通してシミュレートされた溶接パドル2710をなお見ることができ、使用者が彼の溶接手技を修正したときに、シミュレートされた溶接パドル2710の特性が理想的な溶接パドル2810の特性にどのように近づくかを、使用者が理解することを可能にする。
代替的に、表示された理想的な溶接パドル2810は、一つの代替的な実施形態に従い、シミュレートされた溶接パドル2710の少なくとも一部分が覆われるように、不透明であってもよい。このような代替的な実施形態において、理想的な溶接パドル2810は断続的に表示され、使用者が、完全なシミュレートされた溶接パドル2710を断続的に見て、使用者が彼の溶接手技を修正したときに、シミュレートされた溶接パドル2710の特性が理想的な溶接パドル2810の特性にどのように近づいているかを決定することを可能にする。
一つの実施形態によれば、理想的な溶接パドル2810の画像は、半透明であろうと不透明であろうと、シミュレートされた溶接パドル2710の上に重ねられた、実際に実時間で動く映像であってもよく、例えば、理想的な溶融金属の流動性及び熱放散特性を示す。したがって、理想的な溶接パドルに関して本明細書において用いられる場合、用語“画像”は、単一の静的画像又は動的映像を参照し得る。
一つの更なる実施形態は、仮想現実アーク溶接システムを提供する。システムは、コード化された指令を実行することができるプログラム可能なプロセッサベースのサブシステムを有する。コード化された指令は、仮想現実溶接システム上に使用者によって作られた仮想溶接部の三次元(3D)レンダリングを生成するように構成されたレンダリングエンジン、を含む。コード化された指令は、3D仮想溶接部のシミュレートされた試験を実行し、対応する試験データを生成するように構成された分析エンジン、を更に含む。コード化された指令はまた、少なくとも試験データに基づいて、使用者のために推奨される修正行動を生成するように構成されている、少なくとも一つの知的エージェント(IA)、を含む。推奨される修正行動は、変えられるべき使用者の溶接手技、使用者によって復習されるべき、仮想現実溶接システム上に保存されたトレーニング資料、使用者によって完了されるべき、カスタマイズされたトレーニング計画、及び使用者によって変えられるべき、仮想現実溶接システムの設定、のうちの一つ又はそれ以上を含み得る。
一つの実施形態によれば、知的エージェントは、通常はソフトウェア(コード化された指令は)に実装される自立した存在であり、それは環境を観察するとともに環境に対して働きかけ、目標達成に向かってその働きを方向付ける。知的エージェントは、目標(例えば、溶接実習生又は溶接教員に対して関連性の深いフィードバックを提供する目標)を達成するために知識を学習及び使用することが可能であり得る。本発明の一つの実施形態によれば、知的エージェントによって認識され働きかけられる環境は、例えば、VRAWシステム2500によって生成された仮想現実環境である。
一つの例として、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムの分析エンジンは、仮想現実溶接システム2500を使用して溶接実習生によって作られたような仮想溶接部の3Dレンダリングに対するシミュレートされた曲げ試験を実行し得る。例えば、図22を参照すると、溶接継手2210を有する仮想溶接部2200の真っ直ぐに切った部分がシミュレートされた曲げ試験にかけられ得る。曲げ試験は、溶接部の延性、溶接溶込み、融合、(破断面の)結晶構造、及び強さ等の様々な溶接特性を見つけ出すために実行され得る。曲げ試験は、溶接金属、溶接継手及び熱影響部の品質を決定するのに役立つ。曲げ試験中の金属の如何なる割れも、融合不良、溶け込み不良又は割れを生じさせ得る他の状況を示す。金属の伸張は、溶接部の延性を示すのに役立つ。破断面は溶接部の結晶構造を明らかにする。大きい結晶は、不完全な溶接手順又は溶接後の不適切な熱処理を示す傾向がある。良質な溶接部は小さい結晶を有する。シミュレートされた曲げ試験の間、試験データは分析エンジンによって生成される。
一つの実施形態によれば、知的エージェント2550は、曲げ試験が不十分な溶接品質の特定の側面を明らかにする場合に、使用者のために推奨される修正行動を生成するように構成される。知的エージェント2550は、シミュレートされた曲げ試験の間に生成された試験データ、並びに、他のデータ(例えば、模擬溶接ツールの向きのような、仮想溶接部が作られた仮想溶接プロセスの間に実時間で収集されたデータ)を、修正行動を生成するために使用してもよい。例えば、知的エージェント2550は、溶接実習生の溶接手技に対する変更箇所を生成してもよく、溶接実習生は、彼の溶接手技を改善するためにその変更箇所を練習することができる。溶接実習生の溶接手技に対する変更箇所は、例えば、実習生が模擬溶接ツールの溶接電極の末端を保持する模擬溶接クーポンからの距離及び実習生が模擬溶接ツールを保持する模擬溶接クーポンに対する角度を含み得る。他の溶接手技変更箇所も同様に推奨され得る。
その上に又は代替的に、知的エージェント2550は、仮想現実アーク溶接システム2500上に保存された特定のトレーニング資料に溶接実習生を誘導してもよい。トレーニング資料は、例えば、スライドショーの提示及び溶接プロセスの特定の側面に取り組む映像を含み得る。様々な実施形態に従い、他の種類のトレーニング資料も同様に可能である。また、知的エージェント2550は、使用者によって完了されるべき、カスタマイズされたトレーニング計画を生成してもよい。例えば、知的エージェントは、実習生が溶接溶け込みの適切な量を達成することに課題を有していることを決定し得る。結果として、知的エージェントは、一つ又はそれ以上の種類の溶接クーポン及びシミュレートされた溶接プロセスに関する適切な溶接溶け込みを達成するために、仮想現実溶接システム上で実習生に特定の溶接手技を練習させる、トレーニング計画を生成し得る。
最後に、知的エージェントは、溶接実習生が仮想溶接部の品質を向上するために仮想現実溶接システムに適用すべき、変更された設定を生成し得る。変更された設定は、溶接実習生が、例えば、模擬溶接クーポンの位置、テーブル/スタンド(T/S)の位置、仮想現実溶接システムの電流量設定、仮想現実溶接システムの電圧設定又は仮想現実溶接システムのワイヤ送給速度設定を変更するように誘導し得る。他の様々な実施形態に従い、他の設定側面も同様に変更され得る。
一つの実施形態によれば、知的エージェントによって生成された推奨事項は、仮想現実溶接システムの表示装置上で溶接実習生に対して提示され得る。一つの代替的な実施形態によれば、仮想現実溶接システムは印刷装置にインタフェース接続してもよく、その推奨事項は使用者のために印刷されてもよい。さらに、仮想現実溶接システムは、溶接実習生を彼のトレーニングにおいて補助するための、溶接記号を有する、様々な溶接手順の仕様書及び青写真を保存及び表示するように構成され得る。
一つの実施形態によれば、仮想現実溶接システムは、溶接実習生が仮想現実溶接システムを使用したトレーニングプログラムを通して上達するに従って、溶接実習生の上達を追跡し、トレーニングプログラムにおけるその実習生の位置を呼び出すように構成される。トレーニングプログラムは、複数の溶接手順及び/又はトレーニングモジュールを含み得る。例えば、仮想現実溶接システムは、溶接実習生が彼自身を仮想現実溶接システムに対して識別する(identify)ための手段を提供し得る。このような識別は、例えば、使用者バッジ又は識別カード(身分証明書)のスキャニング(例えば、バーコードスキャニング若しくは磁気帯スキャニング)、実習生の生体スキャニング(例えば、網膜スキャニング)又は実習生の識別番号の手動入力のような、様々な良く知られた技術の一つを使って達成され得る。様々な実施形態によれば、仮想現実溶接システムは、その識別技術に適応するように構成される。例えば、仮想現実溶接システムは、一体化されたバーコードスキャナ又は網膜スキャナを有し得る。
ひとたび実習生が識別されると、仮想現実溶接システムは、その溶接実習生が止めたトレーニングプログラムの部分を記憶装置から呼び出し得る。その部分は、例えば、仮想現実トレーニングシステムの最後の溶接設定及び作られた最後の仮想溶接部を含む。さらに、仮想現実溶接システムは、今までに溶接実習生が完了した過去の溶接手順及びトレーニングモジュールを保存し、溶接実習生が完了した手順及びモジュールの経歴を呼び出して表示することを可能にするように構成され得る。このようにして、多数の実習生が、仮想現実溶接システムに各溶接実習生の上達を別々に追跡及び記憶させながら、異なる時間に、同じ仮想現実溶接システムを使用し得る。
一つの他の実施形態は、方法を提供する。方法は、仮想現実溶接システムの一つ又はそれ以上の表示装置上に、使用者に対して仮想溶接環境を表示するステップであり、仮想溶接環境は、仮想現実溶接システムによって生成され、仮想溶接環境内の一つ又はそれ以上の安全でない状況をシミュレートする、表示するステップ、を含む。方法は、使用者が仮想現実溶接システムのユーザーインターフェースを介して仮想現実溶接システムに対して一つ又はそれ以上の安全でない状況を正確に特定した後に、使用者が仮想現実溶接システムを使用して仮想溶接動作の実行を続けることを可能にするステップ、を更に含む。方法は、使用者が仮想現実溶接システムに対して一つ又はそれ以上の安全でない状況を正確に特定したことに応じて、仮想溶接環境から一つ又はそれ以上の安全でない状況を除去するステップ、を更に含んでもよい。方法はまた、仮想現実溶接システムを使用して使用者によって実行される溶接動作の間に、仮想溶接環境内に一つ又はそれ以上の新たな安全でない状況を導入するステップであり、一つ又はそれ以上の新たな安全でない状況は、仮想現実溶接システムによって自動的に導入される、導入するステップを含んでもよい。方法は、仮想現実溶接システムを使用して使用者によって実行される溶接動作の間に、仮想溶接環境内に一つ又はそれ以上の新たな安全でない状況を導入するステップであり、一つ又はそれ以上の新たな安全でない状況は、仮想現実溶接システムによって、溶接指導者からの命令に応じて導入される、導入するステップを更に含んでもよい。
一つの実施形態によれば、仮想溶接環境内の安全でない状況は、例えば、ヒューム曝露の危険を示す不適切に配置された排気フード、出火の危険を示す溶接ワークピースの近くの木製構造物、電撃の危険を示す緩い又は弱いワークピースへの溶接ケーブル接続、滑りの危険を示すワークピースの近くの水、爆発の危険を示すしっかりと固定されていない溶接ガスシリンダ、及び電撃の危険及び/又はヒューム曝露の危険を示す過剰に制限された溶接領域を含み得る。様々な他の実施形態に従い、他の種類の安全でない状況も同様に可能である。
一つの例として、仮想現実溶接システムの表示装置上に仮想溶接環境を見ている使用者は、ヒューム曝露の危険を示す不適切に配置された排気フードを観察し得る。一つの実施形態によれば、使用者は、仮想現実溶接システムのユーザーインターフェースを使用して表示装置上の不適切に配置された排気フードの上にカーソルを置き、その排気フードを選択し得る。このようにして、使用者は、不適切に配置された排気フードの安全でない状況を、仮想現実溶接システムに対して特定する。安全でない状況のシステムに対する特定に基づいて、システムは、仮想溶接環境内の排気フードを適切に配置し得る。不適切に配置された排気フードがただ一つの安全でない状況であった場合は、その後使用者は、仮想現実溶接システムを使用して仮想溶接動作の実行を続けることができる。様々な他の実施形態に従い、安全でない状況を仮想現実溶接システムに対して特定する他の方法も同様に可能である。さらに、一つの実施形態によれば、仮想現実溶接システムは、使用者がユーザーインターフェースを介して仮想現実環境内の排気フードを適切に配置することを可能にするように構成され得る。
使用者が仮想溶接動作を実行するときに、システムは、新たな安全でない状況を仮想溶接環境内に時折導入し得る。代替的に、溶接指導者は、仮想現実溶接システムのユーザーインターフェースを使用して、新たな安全でない状況を導入するようにシステムに命令し得る。一つの例として、使用者が仮想溶接動作を実行しているときに、ワークピースへの溶接ケーブル接続が目に見えるように緩くなってもよい。所定の期間内に使用者が仮想溶接動作を中止及び新たな安全でない状況をシステムに対して特定しない場合は、システムは、使用者が新たな安全でない状況を特定できなかったことの表示を使用者に提供してもよく、仮想溶接プロセスを停止してもよい。このようにして、使用者(例えば、溶接実習生)は、溶接環境内の安全でない状況に気が付くことを学習し得る。
一つの更なる実施形態は、方法を提供する。方法は、溶接プロセスのために仮想現実溶接システムに複数の溶接パラメータを設定するステップであり、溶接パラメータのうちの少なくとも一つは、溶接プロセスに関して不適切に設定される、設定するステップ、を含む。方法はまた、使用者が、設定された複数の溶接パラメータを有する仮想現実溶接システムを使用して仮想溶接動作を実行し、仮想溶接部を作るステップ、を含む。方法は、使用者が、仮想現実溶接システムの少なくとも一つの表示装置上で仮想溶接部を観察し、少なくとも一つの不適切に設定された溶接パラメータを、少なくとも観察に基づいて特定することを試みるステップ、を更に含む。複数の溶接パラメータの設定は、溶接指導者によって実行され得る。代替的に、複数の溶接パラメータの設定は、仮想現実溶接システムによって自動的に実行され得る。方法はまた、使用者が、少なくとも一つの不適切に設定された溶接パラメータを適切な設定に変更することを試みるステップを含み得る。仮想現実溶接システム又は溶接指導者のうちの一方は、使用者が少なくとも一つの不適切に設定された溶接パラメータを適切な設定に変更した場合に、使用者に通知し得る。
一つの実施形態によれば、複数の溶接パラメータはワイヤ送給速度、電圧レベル、電流量及び極性を含んでもよく、それらは、溶接ユーザーインターフェース上でそれぞれ設定可能である。様々な他の実施形態に従い、他の設定可能な溶接パラメータも同様に可能であり得る。一つの例として、ワイヤ送給速度は、特定の溶接プロセスに関して高過ぎるか又は低過ぎるように不適切に設定され得る。同様に、電圧レベル及び/又は電流量は、特定の溶接プロセスに関して高過ぎるか又は低過ぎるように不適切に設定され得る。さらに、極性は、特定の溶接プロセスに関して反対に不適切に設定され得る。一つ又はそれ以上の溶接パラメータを不正確に設定することは、欠陥及び不連続部を有する作られた仮想溶接部に結果し得る。例えば、電流量を低過ぎる設定にすることは、(仮想溶接クーポンによって代表される)ワークピースへの溶け込みの欠如に結果し得る。
したがって、一つの実施形態によれば、使用者は、欠陥及び不連続部について、結果として生じる仮想溶接部を観察し得る。使用者は、観察を補助するために、前述したような仮想破壊試験又は仮想非破壊試験を仮想溶接部に対して実行することさえ望み得る。使用者の仮想溶接部の観察及び溶接パラメータと溶接欠陥及び不連続部との間の関係の使用者の知識に基づき、使用者は、不適切に設定された一つ又はそれ以上の溶接パラメータを特定し得る。使用者は、一つ又はそれ以上の不適切に設定された溶接パラメータを、使用者が適切な設定であると信じるものに変更し、先の欠陥又は不連続部が生じないことを望みつつ、仮想溶接部を再び作ることに進んでもよい。一つの実施形態によれば、仮想現実溶接システムは、(例えば、システムの表示装置上に使用者へのメッセージを表示することによって、)パラメータが選択された溶接プロセスに関していまや適切に設定されていることを、使用者に通知するように構成される。
本出願の特許請求の範囲に記載された主題がいくつかの実施形態を参照して記載されているが、様々な変更が行われ得るとともに均等物が特許請求の範囲に記載された主題の範囲から離れることなしに置き換えられ得ることが当業者には理解されるであろう。加えて、多くの変更が特定の状況又は材料を特許請求の範囲に記載された主題の教示に適合させるために、その範囲から離れることなしに行われ得る。したがって、特許請求の範囲に記載された主題は開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲に記載された主題は添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全ての実施形態を含むことが意図される。