JP6975715B2 - 複合体およびリチウムイオン二次電池用負極、並びに複合体の製造方法 - Google Patents

複合体およびリチウムイオン二次電池用負極、並びに複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合体およびリチウムイオン二次電池用負極、並びに複合体の製造方法に関するものである。具体的には、本発明は、繊維状炭素ナノ構造体と、スズの微粒子とを含む複合体に関するものである。また、本発明は、当該複合体を備えるリチウムイオン二次電池用負極、および当該複合体の製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、リチウムイオン二次電池の更なる高性能化を目的として、電極などの電池部材の改良が検討されている。具体的には、集電体上に、理論容量の高いスズを含有する負極活物質を含む負極活物質層を備えてなる負極が検討されている(例えば、特許文献1および2参照)。そして特許文献1および2に記載された負極によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化しつつ、充放電した際の負極活物質のクラックの発生や集電体からの脱離を抑制して、良好なサイクル特性を確保することができると報告されている。
特開2015−43309号公報 特許第5275702号
ここで、上記従来の技術では、理論容量の高いスズを含有する負極活物質を用いることでリチウムイオン二次電池の高容量化が図られている。しかしながら、上記従来の技術を用いても、スズを含有する負極活物質を用いた場合に、負極活物質の膨張および収縮に起因するサイクル特性低下を十分に抑制することはできなかった。すなわち、上記従来の技術には、リチウムイオン二次電池の高容量化を実現しつつ、サイクル特性を更に向上させるという点で改善の余地があった。
そこで、本発明は、上述した改善点を有利に解決する手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するべく、鋭意検討を行った。そして、本発明者は、繊維状炭素ナノ構造体と、平均粒子径が所定の値以下であり且つスズからなる微粒子とを含む複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合体は、繊維状炭素ナノ構造体と、平均粒子径が10μm以下であるスズ微粒子を含むことを特徴とする。繊維状炭素ナノ構造体、および平均粒子径が上記値以下のスズ微粒子を含む複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池の容量を高めると共にサイクル特性を十分に向上させることができる。
なお、本発明において、「スズ微粒子」とは、スズで構成され、粒子径が100μm以下である粒子を指す。そして、本発明において、スズ微粒子の粒子径は、例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)等でスズ微粒子を観察し、当該スズ微粒子の外縁上の2点を結ぶ線分の長さのうち最大の長さを測定することで得られる。また、本発明において、スズ微粒子の「平均粒子径」は、無作為に選択した100個のスズ微粒子の粒子径の平均値として算出することができる。
ここで、本発明の複合体は、前記繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素マトリックスの内部に、前記スズ微粒子が存在する構造を有することが好ましい。スズ微粒子が繊維状炭素ナノ構造体で構成される炭素マトリックスの内部に存在すれば、繊維状炭素ナノ構造体からのスズ微粒子の脱離が抑制され、そして、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「炭素マトリックスの内部」とは、炭素マトリックスの最表面以外の内側の部分をいい、そして、「繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素マトリックスの内部に微粒子が存在する」ことは、例えばFE−SEM等で複合体の断面を観察した際に、繊維状炭素ナノ構造体で構成される炭素マトリックスに埋没した状態のスズ微粒子が存在していることから確認することができる。
そして、本発明の複合体において、前記繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブを含むことが好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
更に、本発明の複合体において、前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
そして、本発明の複合体は、リチウムイオン二次電池負極用として用いることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層を備え、前記負極活物質層が上述した複合体であることを特徴とする。上述した複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池の容量を高めると共に、サイクル特性を十分に向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合体の製造方法は、上述した何れかの複合体を製造する方法であって、前記繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素膜に、スズ含有化合物を含むめっき液を用いてめっき処理を行う工程を含むことを特徴とする。スズ含有化合物を含むめっき液を用いて炭素膜にめっき処理を行えば、スズ微粒子の微粒子を含む上述した何れかの複合体を、効率良く製造することができる。
ここで、本発明の複合体の製造方法において、前記めっき液は、更に、ポリエーテル系界面活性剤と、水とを含むことが好ましい。このようなめっき液を用いれば、スズ微粒子を含む上述した何れかの複合体を、一層効率良く製造することができる。また、得られる複合体を用いたリチウムイオン二次電池用負極によれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
そして、本発明の複合体の製造方法において、前記炭素膜の密度が0.01g/cm3以上1.80g/cm3以下であることが好ましい。密度が上述の範囲内である炭素膜を用いれば、得られる複合体の強度を確保すると共に、当該複合体を用いたリチウムイオン二次電池用負極によれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
本発明の複合体によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができるリチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
そして、本発明の複合体の製造方法によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる複合体を、効率良く製造することができる。
表面に細孔を有する試料のt−プロットの一例を示すグラフである。 実施例で得られた複合体A断面のFE−SEM写真である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の複合体は、繊維状炭素ナノ構造体と、スズ微粒子が複合化された材料である。そして、本発明の複合体は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極の作製に用いることができる。また、本発明の複合体は、本発明の複合体の製造方法を用いて製造することができる。
(複合体)
本発明の複合体は、少なくとも、繊維状炭素ナノ構造体と、平均粒子径が10μm以下であるスズ微粒子を含み、前記繊維状炭素ナノ構造体と前記スズ微粒子以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。
そして、本発明の複合体はスズ微粒子を含んでいるため、本発明の複合体をリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層として用いれば、スズ微粒子が負極活物質として働きリチウムイオン二次電池を高容量化することができる。加えて、本発明の複合体中のスズ微粒子は、平均粒子径が10μm以下であるため、リチウムイオン二次電池の充放電によりスズ微粒子が膨張および収縮を繰り返した場合であっても、スズ微粒子にかかる応力が十分に小さい。そのため、負極活物質であるスズ微粒子の、クラックの発生や、集電体からの脱離が抑制され、リチウムイオン二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、複合体の導電性などの物性を高めて、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、CNTのみからなるものを用いてもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物を用いてもよい。
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用する場合、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を一層向上させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を一層高める観点から、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すものが好ましい。
ここで、一般に、吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。そして、t−プロットの取得に用いられる窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。なお、通常、吸着温度が一定であれば、繊維状炭素ナノ構造体に吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。また、横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
そして、t−プロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。即ち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する試料の典型的なt−プロットを図1に示す。表面に細孔を有する試料では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、図1に示すようにt−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、本発明で用いる好適な繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットは、図1に示すように、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となり、上に凸な形状を示す。かかるt−プロットの形状は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示しており、その結果として、繊維状炭素ナノ構造体は、優れた特性を発揮すると推察される。
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0を満たす範囲にあることが更に好ましい。t−プロットの屈曲点の位置が上記範囲であると、繊維状炭素ナノ構造体の特性が更に向上するため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性をより一層高めることができる。
ここで、「屈曲点の位置」とは、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。S2/S1が0.05以上0.30以下であれば、バンドルの形成を十分に抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体の特性を更に向上させることができるので、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を一層向上させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、600m2/g以上1400m2/g以下であることが好ましく、800m2/g以上1200m2/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m2/g以上540m2/g以下であることが好ましい。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt−プロットから求めることができる。具体的には、図1に示すt−プロットにより説明すると、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、および、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
なお、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いる場合、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTの開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が0.5nm以上であれば、複合体を調製する際、複数の繊維状炭素ナノ構造体間に空間が十分に確保される。そのため、繊維状炭素ナノ構造体とスズ微粒子が良好に複合化した複合体とすることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が15nm以下であれば、複合体の導電性などの物性を高めることができる。従って、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が上述の範囲内であれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径」は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が600m2/g以上であれば、複合体の導電性などの物性を高めることができる。また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m2/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の過度な密集を抑制して、繊維状炭素ナノ構造体と微粒子が良好に複合化した複合体を得ることができる。従って、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上述の範囲内であれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
そして、上述した性状を有する繊維状炭素ナノ構造体(特には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体)は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、上述したスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm3以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、繊維状炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm3以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
<スズ微粒子>
本発明の複合体は、上述した繊維状炭素ナノ構造体に加え、平均粒子径が10μm以下であるスズ微粒子を含む。スズ微粒子は、本発明の複合体をリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層として用いた場合、リチウムイオンを吸蔵および放出する負極活物質としての役割を果たす。そして、負極活物質としてのスズ微粒子と、上述した繊維状炭素ナノ構造体が導通可能な状態で結合することで、複合体は負極活物質層として良好に機能し、リチウムイオン二次電池の容量およびサイクル特性の向上に資することができる。
また、スズ微粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体、長方形、板状(六角板状など)、柱状、棒状(六角棒状など)が挙げられる。
スズ微粒子の平均粒子径は、10μm以下であることが必要であり、5μm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。スズ微粒子の平均粒子径が10μmを超えると、二次電池に優れたサイクル特性を発揮させることができない。ここで、スズ微粒子の平均粒子径は、スズ微粒子の調製方法や調製条件を変更することにより調整することができる。例えば、スズ微粒子の調製に、後述するめっき処理を用いる本発明の複合体の製造方法を使用すれば、粒子径の小さいスズ微粒子を容易に析出させることができる。
なお、リチウムイオン二次電池におけるサイクル特性などの特性向上という観点からは、スズ微粒子の平均粒子径はできるだけ小さいことが好ましく、その下限は特に限定されないが、スズ微粒子の平均粒子径は、例えば10nm以上とすることができる。
そして、本発明の複合体において、少なくとも一部のスズ微粒子は、繊維状炭素ナノ構造体で構成される炭素マトリックスの内部に存在することが好ましく、スズ微粒子の大部分、例えば90%以上が炭素マトリックスの内部に存在すること(すなわち、炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子の割合が90%以上であること)がより好ましい。そして、炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子の割合は、100%であることが更に好ましい。炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子は、複合体表面に存在するスズ微粒子に比して、リチウムイオン二次電池の充放電を繰り返した場合であっても、集電体上の負極活物質層から脱離し難い。従って、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が存在する複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
なお、本発明において、「炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子の割合」は、例えばFE−SEM等で複合体の断面を観察して全スズ微粒子と炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子の数を数え、全スズ微粒子に占める炭素マトリックスの内部に存在するスズ微粒子の割合(%)として算出することができる。
<その他の成分>
複合体は、上述した繊維状炭素ナノ構造体およびスズ微粒子以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されず、例えば、複合体形成に用いる炭素膜の調製や、一般的な負極活物質層の調製の際に使用しうる既知の添加剤(分散剤、負極用結着材など)が挙げられる。なお、複合体中に占めるその他の成分の割合は、複合体中の固形分(残留溶媒を除く)の質量を100質量%として、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
(複合体の製造方法)
上述した本発明の複合体を製造する方法は、特に限定されないが、繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素膜に、スズ含有化合物を含むめっき液を用いてめっき処理を行う本発明の複合体の製造方法を使用することが好ましい。本発明の複合体の製造方法によれば、炭素膜中にスズ微粒子を容易に析出させて、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。
<炭素膜>
炭素膜は、複数本の繊維状炭素ナノ構造体を膜状に集合させてなる繊維状炭素ナノ構造体の集合体よりなる。
<<炭素膜の調製>>
複数本の繊維状炭素ナノ構造体を膜状に集合させて炭素膜を得る方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法:
(i)複数本の繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含む分散液から溶媒を除去することにより製膜する方法
(ii)基材上に略垂直方向に成長させて得られた繊維状炭素ナノ構造体の集合体を基材に倒伏させ、その後必要に応じて圧縮することにより製膜する工程
が挙げられる。中でも、(i)の方法が好ましい。(i)の工程を経て得られた炭素膜は、密度が疎となり易く、めっき処理においてめっき液が浸透し易い。そのため、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。そして、当該複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。以下、(i)の方法を例に挙げて炭素膜の調製方法について詳述する。
[分散液]
炭素膜の調製に用いる分散液としては、特に限定されることなく、既知の分散処理方法を用いて繊維状炭素ナノ構造体の集合体を溶媒に分散させてなる分散液を用いることができる。具体的には、分散液としては、繊維状炭素ナノ構造体と、溶媒とを含み、任意に分散剤などの分散液用添加剤を更に含有する分散液を用いることができる。
―分散液中の成分―
繊維状炭素ナノ構造体としては、「複合体」の項で上述した繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。
また、分散液の溶媒(繊維状炭素ナノ構造体の分散媒)としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
更に、分散液に任意に配合される分散液用添加剤としては、特に限定されることなく、分散剤などの分散液の調製に一般に使用される添加剤が挙げられる。
なお、例えばろ過により分散液から溶媒を除去する際にろ紙が目詰まりするのを防止する観点、および、得られる複合体の物性(例えば、導電性)の低下を抑制する観点からは、分散剤などの分散液用添加剤の添加量は少量であることが好ましい。
そして、分散液の調製に用いる分散剤としては、繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、前述した溶媒に溶解可能であれば、特に限定されることなく、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
ここで、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。
そして、これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
―分散液の性状―
そして、分散液は、1mm以上の凝集体が目視で確認されないことが好ましい。また、分散液中の繊維状炭素ナノ構造体は、粒度分布計で測定した際のメジアン径(平均粒子径)の値が150μm以下となるレベルで分散していることが好ましい。分散液中で繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させれば、溶媒を除去して得られる炭素膜の密度むらが抑制される。そして密度むらの少ない炭素膜には、めっき液が満遍なく浸透し易く、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。そして、当該複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
また、分散液の固形分濃度は、繊維状炭素ナノ構造体の種類にもよるが、0.001質量%以上20質量%以下が好ましい。固形分濃度が0.001質量%未満の場合、溶媒を除去して得られる炭素膜の量が少なくなり、製造効率を十分に高めることができない虞がある。また、固形分濃度が20質量%超の場合、分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性が低下する虞があると共に、分散液の粘度が増加し、流動性が低下する。
―分散液の調製―
なお、分散液として、繊維状炭素ナノ構造体の集合体を溶媒に分散させてなる市販の分散液を用いてもよいが、炭素膜の調製に先んじて分散液調製工程を実施して調製した分散液を用いることが好ましい。中でも、溶媒中で繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した分散液を使用し、炭素膜の密度むらを抑制して導電性などの物性に優れる複合体を得る観点からは、分散液としては、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液をキャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供して得た分散液を用いることがより好ましい。
具体的には、上述した溶媒に対して上述した繊維状炭素ナノ構造体と任意の分散液用添加剤とを添加してなる粗分散液を、以下に詳細に説明するキャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して得た分散液を用いることが好ましい。
キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、例えば超音波ホモジナイザー、ジェットミルおよび高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
繊維状炭素ナノ構造体の分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、粗分散液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は20W以上500W以下が好ましく、100W以上500W以下がより好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
また、ジェットミルを用いる場合、処理回数は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく、100回以下が好ましく、50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa以上250MPa以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
さらに、高剪断撹拌を用いる場合には、粗分散液に対し、高剪断撹拌装置により撹拌および剪断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上4時間以下が好ましく、周速は5m/秒以上50m/秒以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
なお、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
解砕効果が得られる分散処理は、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる点で有利である。
この解砕効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させることができる。
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
ここに、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体をさらに分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、粗分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10〜400MPa、好ましくは50〜250MPa)の粗分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の粗分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液の流速が低下すると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散する。そして、終端部から、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、繊維状炭素ナノ構造体の分散液として流出することになる。
なお、粗分散液の背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで粗分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、粗分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に繊維状炭素ナノ構造体の分散液を大気圧に開放した際に、分散液中に気泡が発生するのを抑制できる。
また、この分散器は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。というのは、分散器でせん断力を与えられて高温になった粗分散液を冷却することにより、粗分散液中で気泡が発生するのをさらに抑制できるからである。
なお、熱交換器等の配設に替えて、粗分散液を予め冷却しておくことでも、繊維状炭素ナノ構造体を含む溶媒中で気泡が発生することを抑制できる。
上記したように、この解砕効果が得られる分散処理では、キャビテーションの発生を抑制できるので、時として懸念されるキャビテーションに起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷、特に、気泡が消滅する際の衝撃波に起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる。加えて、繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、繊維状炭素ナノ構造体を均一かつ効率的に分散させることができる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)などがある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
[溶媒の除去]
分散液から溶媒を除去する方法としては、特に限定されることなく、乾燥やろ過などの既知の溶媒除去方法を用いることができる。中でも、効率的に溶媒を除去する観点からは、溶媒除去方法としては、減圧乾燥、真空乾燥またはろ過を用いることが好ましい。更に、容易かつ迅速に溶媒を除去する観点からは、溶媒除去方法としては、ろ過を用いることが好ましく、減圧ろ過を用いることが更に好ましい。迅速かつ効率的に溶媒を除去すれば、一度分散させた繊維状炭素ナノ構造体が再び凝集するのを抑制し、得られる炭素膜の密度むらを抑制することができる。
ここで、分散液中の溶媒は完全に除去する必要はなく、溶媒の除去後に残った繊維状炭素ナノ構造体が集合体(炭素膜)としてハンドリング可能な状態であれば、多少の溶媒が残留していても問題はない。
<<炭素膜の性状>>
得られる炭素膜の厚みは、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが更に好ましい。炭素膜の厚みが2μm以上であれば、得られる複合体の強度を確保することができる。一方、炭素膜の厚みが200μm以下であれば、めっき処理の際に、めっき液が炭素膜の厚み方向中心部まで容易に浸透し、炭素マトリックスの内部に微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。そして、当該複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
また、炭素膜の密度は、0.01g/cm3以上であることが好ましく、0.10g/cm3以上であることがより好ましく、0.50g/cm3以上であることが更に好ましく、また、1.80g/cm3以下であることが好ましく、1.50g/cm3以下であることがより好ましく、1.20g/cm3以下であることが更に好ましい。炭素膜の密度が0.01g/cm3以上であれば、得られる複合体の強度を確保することができる。一方、炭素膜の密度が1.80g/cm3以下であれば、めっき処理の際にめっき液が炭素膜の厚み方向中心部まで容易に浸透し、炭素マトリックスの内部に微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。そして、当該複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
なお、本発明において、「炭素膜の密度」は、炭素膜の質量、面積および厚みを測定し、炭素膜の質量を体積(面積×厚み)で除して求めることができる。
<めっき処理>
上述した炭素膜に対して、めっき液を用いて電解めっき処理または無電解めっき処理、好ましくは電解めっき処理を施すことにより、炭素膜表面および/または炭素膜内部に微粒子を析出させて、複合体を得ることができる。
<<めっき液>>
めっき処理に用いるめっき液は、溶媒中に、スズ含有化合物を含み、任意に、めっき液用添加剤(溶解補助剤およびノニオン系界面活性剤、並びにその他めっき液に一般に添加される添加剤)を更に含む。
[スズ含有化合物]
スズ含有化合物としては、めっき処理を経て、炭素膜表面および/または炭素膜内部に、これら化合物に由来してスズ微粒子(スズめっき)を析出させることが可能であれば特に限定されない。スズ含有化合物としては、特に限定されるものではないが、ピロリン酸スズ、リン酸スズ、硫酸スズ(II)、硫酸スズ(IV)、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、および酢酸スズ(IV)、並びにこれらの水和物などが挙げられる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、めっき液中におけるスズ含有化合物の濃度は、スズ微粒子を析出させることが可能であれば特に限定されず、適宜調整することができるが、例えば、0.01mol/L以上3.0mol/L以下であることが好ましい。
[溶解補助剤]
溶解補助剤は、上述したスズ含有化合物の、溶媒(例えば水)への溶解性を確保する目的で添加される。このような溶解補助剤は、上述したスズ含有化合物以外のイオン性化合物であり、例えば、ピロリン酸金属塩、リン酸金属塩、硫酸金属塩、金属塩化物、酢酸金属塩などが挙げられる。そして、溶解補助剤としてのイオン性化合物を用いる場合、溶解補助剤中に含まれる陰イオン成分は、スズ含有化合物中に含まれる陰イオン成分と同一であることが好ましい。例えば、スズ含有化合物としてピロリン酸スズを用いる場合は、溶解補助剤としてピロリン酸金属塩(ピロリン酸カリウムなど)を用いることが好ましい。
なお、スズ含有化合物の溶解性を十分に向上させる観点から、めっき液中における溶解補助剤の濃度は、スズ含有化合物の濃度の2倍以上であることが好ましい。また、めっき液中における溶解補助剤の濃度の上限は特に限定されないが、通常スズ含有化合物の濃度の100倍以下である。そして、めっき液中における溶解補助剤の濃度は、例えば、0.04mol/L以上12.0mol/L以下であることが好ましい。
[ノニオン系界面活性剤]
めっき液は、ノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン系界面活性剤を含むめっき液は、ノニオン系界面活性剤が繊維状炭素ナノ構造体との親和性に優れるためと推察されるが、炭素膜内部に容易に浸透することができる。そのため、ノニオン系界面活性剤を含むめっき液を用いれば、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が存在する複合体を効率良く得ることができる。そして、当該複合体を負極活物質層として用いれば、リチウムイオン二次電池に一層優れたサイクル特性を発揮させることができる。
そして、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエーテル系界面活性剤、アルキルフェノール系界面活性剤、ポリエステル系界面活性剤、ソルビタンエステルエーテル系界面活性剤、アルキルアミン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、複合体の物性を高めてリチウムイオン二次電池のサイクル特性をより一層向上させる観点からは、ポリエーテル系界面活性剤が好ましい。ポリエーテル系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体が挙げられる。これらの中でもポリエチレングリコールが特に好ましい。なお、ノニオン系界面活性剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ノニオン系界面活性剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上であることが好ましく、また20000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましく、5000以下であることが更に好ましく、4000以下であることが特に好ましい。ノニオン系界面活性剤の重量平均分子量が上述の範囲内であれば、金属と繊維状炭素ナノ構造体を一層良好に複合化することができ、複合体の物性を更に高めることができる。
なお、ノニオン系界面活性剤の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めることができる。
[その他のめっき液用添加剤]
めっき液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したスズ含有化合物、溶解補助剤、およびノニオン性界面活性剤以外に、光沢剤などの既知のめっき液用添加剤を含有していてもよい。
[めっき液の製造方法]
めっき液は、上述した成分を水などの既知の溶媒中に溶解または分散させることにより調製することができる。
<<めっき処理の方法>>
炭素膜にめっき処理を施す方法は、スズ微粒子を析出させうる方法であれば特に限定されない。例えば、電解めっき処理を行う場合、陰極として、炭素膜のみを使用してもよいし、基板表面にカーボンテープ等を介して炭素膜を接着してなる積層体を使用してもよい。中でも、陰極としては、炭素膜内部へのめっき液の浸透を容易として、炭素マトリックスの内部に微粒子が存在する複合体を効率良く製造する観点からは、炭素膜のみからなる陰極を使用することが好ましい。また、炭素膜の両側に、この炭素膜と接しないように二枚の陽極を配置した状態で電解めっき処理を行うことで、炭素膜の両面から炭素膜の内部にかけて、微粒子を満遍なく析出させることもできる。
まためっき処理としては、電解めっきに限らず、無電解めっきを採用することもできる。電解めっきの場合、直流めっきに限定されることはなく、電流反転めっき法やパルスめっき法も採用することができる。
なお、めっき処理中、例えばスターラー等でめっき液を撹拌してもよい。
そして炭素膜にめっき処理を行うに際し、めっき液中に炭素膜を浸漬させてからめっき処理を開始(例えば、電解めっき処理の場合においては通電を開始)するまでの待ち時間(めっき処理前待ち時間)を設けるのが好ましい。めっき処理前待ち時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上である。めっき処理前待ち時間が5分以上であれば、炭素膜表面がめっき液に十分に濡れた状態(炭素膜表面とめっき液とが馴染んだ状態)となり、炭素膜内部にまで、めっき液の浸透を促すことができる。また、めっき処理前待ち時間は、処理の効率等を考慮すれば、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下とすることができる。
さらに、電解めっき処理の場合、通電量は、炭素膜のサイズ(面積および厚み)に応じて適宜調整することができ、通電量を適切に調整することで、炭素膜内部にスズ微粒子を好適な状態で担持させることができる。
なお、めっき処理時間は、特に限定されないが、通常10分以上である。
(リチウムイオン二次電池用負極)
上述した本発明の複合体は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極の作製に用いることができる。具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層を備え、前記負極活物質層が本発明の複合体である。本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層として本発明の複合体を用いているので、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、本発明の複合体が負極活物質層として機能し得れば特に限定されず、負極活物質層としての複合体のみで構成されている負極であってもよいし、集電体上に負極活物質層としての複合体が配置された負極であってもよい。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用負極が、集電体上に負極活物質層としての複合体が配置された負極である場合、負極活物質層は、集電体に接して配置されていてもよいが、負極活物質層は、接着層などの他の層を介して集電体上に配置されていてもよい。
集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料からなる集電体を用い得る。中でも、負極の集電体としては、銅からなる薄膜が好ましい。
また、集電体と負極活物質層の間に任意に配置される接着層は、電気伝導性が確保され、且つ集電体と負極活物質層を接着可能であれば特に限定されない。接着層は、例えば、導電性カーボン等の導電材と、結着材とを含む層であることが好ましい。
そして、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は特に限定されない。例えば、負極活物質層と集電体の間に接着層が存在するリチウムイオン二次電池用負極は、複合体の一方の表面に、導電材と、結着材と、溶剤とを含む接着層用ペーストを塗布する工程、接着層用ペーストが塗布された複合体の表面に集電体を積層する工程、および、接着層用ペースト中の溶剤を乾燥などにより除去する工程を経て製造することができる。
(リチウムイオン二次電池)
上述した本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、リチウムイオン二次電池に組み込んで使用される。具体的には、リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータを備え、前記負極を本発明のリチウムイオン二次電池用負極とする。なお、正極、電解液、およびセパレータは、いずれも既知のものを使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極を備えるリチウムイオン二次電池は、高容量であると共に、十分に優れたサイクル特性を発揮する。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価は、以下の方法を使用して行った。
<サイクル特性>
製造したリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。次に、25℃の環境下で、4.4V、0.1Cの充電、2.75V、0.1Cの放電にて充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。その後、さらに、25℃の環境下で、同様の充放電の操作を繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。そして、サイクル前後での容量維持率ΔC(%)=C1/C0×100を算出し、下記の基準で評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率ΔCが90%以上
B:容量維持率ΔCが85%以上90%未満
C:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
D:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
(実施例1)
<単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の合成>
実施例において用いる単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を、国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法により調製した(以下、「繊維状炭素ナノ構造体A」という)。なお、金属触媒の鉄薄膜層の厚みは2nmとした。
得られた繊維状炭素ナノ構造体Aは、BET比表面積が1050m2/g(未開口状態)、平均直径(Av)が3.3nmであった。また、繊維状炭素ナノ構造体Aを、ラマン分光光度計での測定において、単層CNTに特長的な100〜300cm-1の低波数領域におけるラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、未開口状態におけるtプロットは上に凸な形状を示し、その屈曲点は0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあり、全比表面積S1と内部比表面積S2との比は0.05≦S2/S1≦0.30を満たしていた。
<炭素膜の調製>
繊維状炭素ナノ構造体Aを400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。湿式ジェットミル(株式会社常光製、JN−20)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体Aをメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液Aを得た。なお、得られた分散液Aの性状を評価したところ、分散液A中の繊維状炭素ナノ構造体Aのメジアン径(平均粒子径)は24.1μmであった。得られた分散液Aをキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、厚みが40μm、密度が0.85g/cm3である炭素膜Aを得た。
<複合体Aの作製>
上述した炭素膜Aを陰極、純スズ板を陽極として、スズめっき浴中で以下の条件で電解めっきを行うことで複合体Aを作製した。なお、陽極としての純スズ板は、陰極としての炭素膜Aの表裏両側に、それぞれ1枚ずつ合計2枚を、炭素膜Aとは接しないように配置した。
[スズめっきのめっき液組成(溶媒:水)]
スズ含有化合物:ピロリン酸スズ(Sn227)、濃度0.25mol/L
溶解補助剤:ピロリン酸カリウム(K427)、濃度1.0mol/L
ノニオン系界面活性剤:ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)、濃度0.002mol/L
光沢剤:ホルムアルデヒド、濃度0.005mol/L
[電析条件]
電析モード:電流規制法
電流密度:0.05A/dm2
通電量:96C
めっき処理前待ち時間:30分
得られた複合体Aの断面をFE−SEMにて観察したところ、炭素マトリックスの内部にスズ微粒子が均一に析出している様子が観察された(図2参照)。なお、スズ微粒子の平均粒子径は50nmであった。また、スズ微粒子の90%以上が炭素マトリックスの内部に存在することを確認した。
<負極の作製>
上述のようにして得られた厚み40μmの複合体Aの片面に、導電材としての導電性カーボンを含む導電性カーボンペースト(接着層用ペースト)を塗布した。次いで、この塗布面に集電体としての厚み20μmの銅箔を載せ、負極活物質層としての複合体Aと集電体としての銅箔が接着層により接着してなる負極Aを得た。
<正極の作製>
正極活物質としてのLiCoO2(体積平均粒子径D50:12μm)を100質量部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、「HS−100」)を2質量部、正極用結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、「#7208」)を固形分相当で2質量部、およびN−メチルピロリドンを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
上述のようにして得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚み20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、厚みが80μmのプレス後の正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極と、両面に接着層を有するセパレータと、上記で得られた負極Aとを、この順に積層すると共にこれらを接着することで、積層体を得た。得られた積層体を捲回機により捲回して、捲回体を得た。この捲回体を、60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とした。次いで、得られた扁平体を、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、アルミ包材外装に、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価したところ、A評価であった。
(比較例1)
複合体Aに替えてスズ板を用いた以外は、負極Aと同様にして負極Bを得た。
そして、負極Aに替えて負極Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。そして、得られたリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価したところ、D評価であった。
(比較例2)
負極Aに替えて、以下のようにして作製した負極Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。そして、得られたリチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価したところ、C評価であった。
<負極Cの作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100質量部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1質量部、および、固形分濃度が68質量%となる量の水を混合した後、更に25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水を加え、25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、上述した粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5質量部、およびイオン交換水を加え、最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
上述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚み20μmの銅箔の上に塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極Cを得た。
上述した結果から、繊維状炭素ナノ構造体と、平均粒子径が10μm以下であるスズ微粒子を含む複合体を負極活物質層として用いた実施例1では、比較例1および2に比して、リチウムイオン二次電池に優れたサイクル特性を発揮させ得ることが分かる。また、実施例1では、負極活物質としてスズ微粒子を用いているので、高容量のリチウムイオン二次電池を得ることができた。
本発明の複合体によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができるリチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる。
そして、本発明の複合体の製造方法によれば、リチウムイオン二次電池を高容量化すると共に、当該リチウムイオン二次電池に十分に優れたサイクル特性を発揮させることができる複合体を、効率良く製造することができる。

Claims (7)

  1. 繊維状炭素ナノ構造体と、
    平均粒子径が10μm以下であるスズ微粒子を含み、
    前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示し、
    そしてリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層用である、複合体。
  2. 前記繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素マトリックスの内部に、前記スズ微粒子が存在する構造を有する、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブを含む、請求項1または2に記載の複合体。
  4. 負極活物質層を備え、前記負極活物質層が請求項1〜3の何れかに記載の複合体である、リチウムイオン二次電池用負極。
  5. 請求項1〜3の何れかに記載の複合体を製造する方法であって、前記繊維状炭素ナノ構造体を含む炭素膜に、スズ含有化合物を含むめっき液を用いてめっき処理を行う工程を含む、製造方法。
  6. 前記めっき液は、更に、ポリエーテル系界面活性剤と、水とを含む、請求項5に記載の複合体の製造方法。
  7. 前記炭素膜の密度が0.01g/cm以上1.80g/cm以下である、請求項5または6に記載の複合体の製造方法。
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