以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、各部材の個数、形状または寸法を省略、単純化または誇張することで、図示した構成全体を模式化している場合があるが、これは実施の形態の理解を容易にするためであり、したがって、本発明は、図示されたとおりの内容に限定して解釈されるべきではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1として、生体装着可能な医療器具、より具体的には、被検者からの生体情報の測定に用いる医療用センサに、本発明を適用した場合について説明する。本実施の形態では、医療用センサとして、心電図の測定に用いる生体電極を例にとって説明する。
[全体構成]
図1は、本実施の形態に係る生体電極100の構成を示す分解斜視図である。なお、本実施の形態において、「上面」とは、生体電極100の被検者への貼り付け面と反対の方向に向かう面を意味し、「下面」とは、生体電極100の被検者への貼り付け面の方向に向かう面を意味する。
図1において、生体電極100は、主として、基材110と、電極部120と、導電ゲル層130と、円板状不織布140と、環状不織布150と、セパレータ160とを有する。円板状不織布140の下面には、粘着剤を含む粘着剤層141が設けられており、環状不織布150の下面にも、粘着剤を含む粘着剤層151が設けられている。
基材110および電極部120はそれぞれ細長く延伸した延伸部分を有しており、この延伸部分は、被検者から検出された心電図信号を記録装置(図示せず)に伝送するリード線として機能する。
基材110は、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephtalate)などの膜状のフィルム材料から成り、上面と下面の一対の面を有する。基材110の下面には電極部120が設けられており、基材110は、生体電極100のセンサ部およびリード線としての中核を成す。なお、基材110の上面には、電極部120への電磁波および静電気対策としてシールド膜を形成してもよい。
電極部120は、銀−塩化銀(Ag−AgCl)などの材料から成り、基材110の下面と導電ゲル層130との間に配置される。電極部120は、導電ゲル層130から伝ってきた心電図信号を検出して、記録装置(図示せず)に伝送する。
導電ゲル層130は、導電性、粘着性、吸湿膨張性を有するゲルの層である。導電ゲル層130は、その上面側ゲル部131と基材110の下面との間に電極部120を介在させつつ、基材110の下面に接着されている。また、導電ゲル層130は、自身の粘着力と円板状不織布140に塗布された粘着剤層141の粘着力とによって、円板状不織布140の下面に接着されている。導電ゲル層130の表面積は基材110の表面積よりも大きく、導電ゲル層130は、基材110の周縁部からはみ出した領域を有している。また、導電ゲル層130は、自身の粘着力によってその下面側ゲル部132が被検者の装着部位である胸部に接着するとともに、円板状不織布140に塗布された粘着剤層141の粘着力と環状不織布150に塗布された粘着剤層151の粘着力とによって(あるいは、環状不織布150に塗布された粘着剤層151のみの粘着力によって)、その下面側ゲル部132の胸部への接着位置が確実に固定される。導電ゲル層130は、生体電極100の使用時には、被検者の心臓の活動によって発生する微小な起電力である心電図信号(心臓の電気興奮)を電極部120に伝える。
なお、導電ゲル層130は、必ずしも粘着性を有しなくてもよく、その場合、導電ゲル層130は、生体電極100の装着時、胸部に接着せずに接触するだけである。
導電ゲル層130の上面側ゲル部131と下面側ゲル部132との間には、導電ゲル層130の形状を維持するために、上面側ゲル部131および下面側ゲル部132と略同一の表面積を有する極めて薄い網目状の不織布である中間基材133が設けられている。より具体的には、導電ゲル層130は、中間基材133の一方の面の側(表側)から中間基材133の他方の面の側(裏側)にゲルを染み出させて形成される。したがって、導電ゲル層130は、上面側ゲル部131および下面側ゲル部132、ならびに中間基材133が一体となって形成されており、これらが分離することはない。つまり、上面側ゲル部131および下面側ゲル部132が中間基材133に対して移動することはない。
円板状不織布140は、生体電極100の各部材を被覆してこれらを保護する。すなわち、円板状不織布140は、生体電極100の各部材を被覆するとともに、生体電極100が被検者に装着されたときには被検者の装着部位を被覆する、被覆材として機能する。円板状不織布140には、多数の通気用細孔(図示せず)が空けられており、これらの細孔を通じて被検者の発汗などにより導電ゲル層130が吸収した水分を外気に蒸散させる。
環状不織布150は、導電ゲル層130の下面側ゲル部132から、ゲル層130の一部分を露出させ残余の部分を被覆する。より具体的には、環状不織布150は円状の開口部152を有し、開口部152を通じて導電ゲル層130の一部分を露出させつつ、円板状不織布140との間に導電ゲル層130を挟み込んで固定する。環状不織布150の上面は、円板状不織布140に塗布された粘着剤層141により、円板状不織布140の下面に接着されている。また、環状不織布150は、その下面に塗布された粘着剤層151によって生体電極100を被検者の胸部に貼り付ける。
セパレータ160は、水分を通さない例えば樹脂製のフィルムから成り、使用前における導電ゲル層130および粘着剤層141、151(あるいは、導電ゲル層130および粘着剤層151)の各下面(各表面)に密閉状態で貼り付けられ、生体電極100の非使用時におけるこれらの乾燥を防止して粘着力の低下を防止する。生体電極100の使用時、セパレータ160が、導電ゲル層130および粘着剤層141、151(あるいは、導電ゲル層130および粘着剤層151)の表面から剥がされ、この表面が被検者の胸部に貼り付けられることで、生体電極100は、被検者に装着される。
以上、生体電極100の全体構成について説明した。
なお、上記説明では、本実施の形態の生体電極100は、導電ゲル層130と粘着剤層141、151が胸部に接触し得る構成となっているが、環状不織布150の外周の径が円板状不織布140と同径であれば、生体電極100の使用中、導電ゲル層130とともに胸部に接触する表層を構成するのは粘着剤層151のみであり、環状不織布150の外周の径が円板状不織布140よりも小径であれば、生体電極100の使用中、導電ゲル層130とともに胸部に接触する表層を構成するのは粘着剤層141、151の両方である。また、生体電極100が、環状不織布150を用いない構成を採用する場合は、導電ゲル層130とともに胸部に接触する表層を構成するのは粘着剤層141のみである。
[要部構成]
次いで、生体電極100の要部構成について説明する。なお、ここでは、導電ゲル層130と粘着剤層151とが、生体電極100の使用中に生体(つまり被検者)に接触する表層を構成する場合を例にとって説明する。
図2は、本実施の形態に係る生体電極100の要部を模式的に示す断面図である。
前述したとおり、生体電極100の使用中に生体に接触する表層は、導電ゲル層130および粘着剤層151を含む。本実施の形態では、これらの層のうち、粘着剤層151のみが、抗ヒスタミン物質AHを含有する。すなわち、粘着剤層151は、粘着剤に抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含む。粘着剤層151を構成する粘着剤に抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、被覆材としての円板状不織布140の領域のうち、導電ゲル層130の周囲で粘着剤層151が配置された外周領域において、その全体に抗ヒスタミン物質AHを均等に分散させることができる。
抗ヒスタミン物質AHとしては、例えばステビア発酵エキスまたはその油溶性成分などが挙げられる(例えば、特許文献2、3参照)。
粘着剤層151において抗ヒスタミン物質AHは、マイクロカプセルに封入され、粒子として粘着剤に混合されていることが好ましい。マイクロカプセルの一例としては、例えばリポソームなどが挙げられる。リポソームは、細胞膜の脂質二重膜を模してリン脂質の膜を幾重にも重ねた構造を持つ25〜1000nm径のマイクロカプセルである。なお、上記粒子には、抗ヒスタミン物質AHに加えて保湿成分(例えば加水分解コラーゲンなど)なども封入されていてもよい。
[効果]
粘着剤層151に含まれる抗ヒスタミン物質AH、特に粘着剤層151の表面付近に含まれる抗ヒスタミン物質AHは、粘着剤層151内で少しずつ流動することができ、生体電極100の使用中に徐々に、粘着剤層151の表面を通じて被検者の胸部の皮膚に、粘着剤層151中の水分とともに浸透する。皮膚に浸透した抗ヒスタミン物質AHは、皮膚内で抗ヒスタミン作用を発揮する。抗ヒスタミン物質AHが時間をかけて少しずつ粘着剤層151から皮膚に浸透することができるため、抗ヒスタミン作用を長時間持続させることができ、生体電極100の使用中、被検者の装着部位に痒みが生じることを抑制することができる。皮膚に浸透した後、抗ヒスタミン物質AHをマイクロカプセルから徐々に染み出させる方法を採用する場合は、抗ヒスタミン作用を一層長時間持続させることができる。また、生体電極100の装着前に、痒みを抑える手当を追加で行う必要がない。
特に、一部の抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス油溶性成分(トリテルペンなど))をリポソームに封入して粘着剤層151に混ぜ合わせ、残りの抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス)をリポソームに封入せずに粘着剤層151に混ぜ合わせた場合は、後者による抗ヒスタミン作用を短時間で発揮させ、前者による抗ヒスタミン作用を遅れて発揮させることができ、長時間にわたり抗ヒスタミン作用の程度を一定に保つことができるようになる。
また、本実施の形態では、抗ヒスタミン物質AHは、生体電極100の使用中に生体に接触する表層のうち、粘着剤層151に含有される。粘着剤層151は、皮膚にしっかりと貼り付くことで、その部位に痒みを発生させやすい部分である。このように、痒みを発生させやすい部分に直接、抗ヒスタミン物質AHを含有させることで、痒みの発生をより確実に抑制することが期待できる。
また、本実施の形態では、導電ゲル層130に含有させる抗ヒスタミン物質AHの量を0とすることにより、導電ゲル層130の機能上最重要な特性である導電性への影響を確実に回避することができる。
なお、本実施の形態においては、抗炎症物質として、抗炎症作用の一種として抗ヒスタミン作用を発揮する抗ヒスタミン物質AHを例に挙げたが、抗炎症作用を発揮する物質であれば、抗ヒスタミン物質AHとは異なる物質であっても採用可能である。
また、本実施の形態では、医療用センサとして、心電図の測定に用いる生体電極100を例に挙げたが、生体情報の測定に用いる医療用センサであれば、生体電極100とは異なるセンサであっても採用可能である。生体電極100とは異なるもので採用可能な医療用センサとしては、例えば、被検者の体表面に装着されて被検者の呼吸波形の測定などに用いるインピーダンス電極や、被検者の指、耳または鼻などに装着されて被検者のSpO2の測定などに用いるパルスオキシメータなどが挙げられる。
以下、本実施の形態の変形例について、本実施の形態の内容との相違点を中心に説明する。
(実施の形態1の変形例1)
図3は、実施の形態1に係る生体電極100の変形例1の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例では、生体電極100の使用中に生体に接触する表層のうち、導電ゲル層130のみが、抗ヒスタミン物質AHを含有する。すなわち、導電ゲル層130は、導電性などを有するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含む。導電ゲル層130を構成するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、被覆材としての円板状不織布140の領域のうち、導電ゲル層130が配置された中央領域において、その全体に抗ヒスタミン物質AHを均等に分散させることができる。
導電ゲル層130に含まれる抗ヒスタミン物質AH、特に導電ゲル層130の表面付近に含まれる抗ヒスタミン物質AHは、導電ゲル層130内で少しずつ流動することができ、生体電極100の使用中に徐々に、導電ゲル層130の表面を通じて被検者の胸部の皮膚に、導電ゲル層130中の水分とともに浸透する。よって、この変形例1も上記の実施の形態1と同様に、医療従事者に余計な手間をかけさせることなく、生体電極100の使用中に被検者の装着部位に痒みが生じることを抑制することができる。
導電ゲル層130を構成するゲルは、粘着剤層151を構成する粘着剤と比べて一般的に、粘性が低いため、抗ヒスタミン物質AHは、粘着剤層151の内部よりも導電ゲル層130の内部のほうが流動しやすい。また、導電ゲル層130のほうが粘着剤層151よりも、水分が皮膚に浸透しやすい。よって、粘着剤層151内に抗ヒスタミン物質AHを含有させるよりも導電ゲル層130内に抗ヒスタミン物質AHを含有させるほうが、抗ヒスタミン物質AHを皮膚に浸透しやすくすることができる。
また、本変形例では、粘着剤層151に含有させる抗ヒスタミン物質AHの量を0とすることにより、粘着剤層151の機能上最重要な特性である粘着性への影響を確実に回避することができる。外周領域において粘着性を確実に確保できるので、生体電極100全体としての剥がれにくさを維持することができる。
(実施の形態1の変形例2)
図4は、実施の形態1に係る生体電極100の変形例2の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例は、実施の形態1の構成と変形例1の構成とを組み合わせた構成である。すなわち、抗ヒスタミン物質AHは、生体電極100の使用中に生体に接触する表層を構成する、導電ゲル層130にも粘着剤層151にも含有される。
この場合、実施の形態1の構成で得られる効果と変形例1の構成で得られる効果とをいずれも実現することができる。例えば、本変形例では、導電ゲル層130が配置された中央領域からも、その周囲で粘着剤層151が配置された外周領域からも、抗ヒスタミン物質AHを皮膚に浸透させることができる。
なお、本変形例において、導電ゲル層130内の抗ヒスタミン物質AHの濃度は、粘着剤層151内の抗ヒスタミン物質AHの濃度よりも、図示されているように低くてもよいし、それとは逆に高くてもよいし、同等でもよい。各領域における濃度については、望まれる特性に基づいて決定すればよい。
(実施の形態1の変形例3)
図5は、実施の形態1に係る生体電極100の変形例3の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例は、中央領域の表層において抗ヒスタミン物質AHを含有させる点で、実施の形態1の変形例1と共通するが、導電ゲル層130に混ぜ合わせる代わりに、抗ヒスタミン物質含有材料から成る抗ヒスタミン物質含有材料層171を導電ゲル層130の表面全体に塗布している点で、実施の形態1の変形例1と相違する。
すなわち、本変形例では、抗ヒスタミン物質AHは、導電ゲル層130の表面全体に被着されている。このように、抗ヒスタミン物質含有材料層171が導電ゲル層130の表面全体に塗布されているので、本変形例の抗ヒスタミン物質含有材料層171は、導電ゲル層130のゲルと同様に、少なくとも導電性を有する材料を含むことが必要である。
本変形例では、抗ヒスタミン物質AHを、表層の厚さ方向において分散配置させずに、表層の表面付近に集中配置させることができるため、皮膚への浸透を容易にすることができる。
本変形例の構成は、実施の形態1の構成あるいはその変形例1、2の構成と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態1の変形例4)
図6は、実施の形態1に係る生体電極100の変形例4の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例は、抗ヒスタミン物質含有材料から成る抗ヒスタミン物質含有材料層172を用いる点で、実施の形態1の変形例3と共通するが、導電ゲル層130の表面全体に塗布する代わりに、粘着剤層151の表面全体に塗布している点で、実施の形態1の変形例3と相違する。
すなわち、本変形例では、抗ヒスタミン物質AHは、粘着剤層151の表面全体に被着されている。このように、抗ヒスタミン物質含有材料層172が粘着剤層151の表面全体に塗布されているので、本変形例の抗ヒスタミン物質含有材料層172は、粘着剤層151の粘着剤と同様に、少なくとも粘着性を有する材料を含むことが必要である。
本変形例では、実施の形態1の変形例3と同様、抗ヒスタミン物質AHを、表層の厚さ方向において分散配置させずに、表層の表面付近に集中配置させることができるため、皮膚への浸透を容易にすることができる。
本変形例の構成は、実施の形態1の構成あるいはその変形例1、2の構成と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態1の変形例5)
図7は、実施の形態1に係る生体電極100の変形例5の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例は、抗ヒスタミン物質含有材料層173を粘着剤層151の表面に塗布している点で、実施の形態1の変形例4と共通するが、粘着剤層151の表面全体ではなくその表面の一部に塗布している点で、実施の形態1の変形例4と相違する。
すなわち、本変形例では、抗ヒスタミン物質AHは、粘着剤層151の表面の一部に被着されている。このように、抗ヒスタミン物質含有材料層173が粘着剤層151の表面の一部に塗布されているので、本変形例の抗ヒスタミン物質含有材料層173は、粘着剤層151の粘着剤と同様に、少なくとも粘着性を有する材料を含むことが好ましいが、表面の全体を覆っているわけではないので、抗ヒスタミン物質含有材料層173が粘着性を有する必要性は、実施の形態1の変形例4の抗ヒスタミン物質含有材料層172に比べれば低い。
本変形例では、実施の形態1の変形例3、4と同様、抗ヒスタミン物質AHを、表層の厚さ方向において分散配置させずに、表層の表面付近に集中配置させることができるため、皮膚への浸透を容易にすることができる。
本変形例の構成は、実施の形態1の構成あるいはその変形例1、2の構成と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態1の変形例6)
図8(a)は、実施の形態1に係る生体電極100の第6変形例の要部の底面を模式的に示す底面図であり、図8(b)は、そのVIII-VIII線断面図である。
本変形例は、抗ヒスタミン物質含有材料層174を導電ゲル層130の表面に塗布している点で、実施の形態1の変形例3と共通するが、導電ゲル層130の表面全体ではなくその表面の一部に塗布している点で、実施の形態1の変形例3と相違する。
すなわち、本変形例では、抗ヒスタミン物質AHは、導電ゲル層130の表面の一部に被着されている。このように、抗ヒスタミン物質含有材料層174が導電ゲル層130の表面の一部に塗布されているので、本変形例の抗ヒスタミン物質含有材料層174は、導電ゲル層130のゲルと同様に、少なくとも導電性を有する材料を含むことが好ましいが、表面の全体を覆っているわけではないので、抗ヒスタミン物質含有材料層174が導電性を有する必要性は、実施の形態1の変形例3の抗ヒスタミン物質含有材料層171に比べれば低い。
なお、本変形例では、抗ヒスタミン物質含有材料層174が環状に配置されているが、配置の態様は、例えば斑点状など、異なる態様であってもよい。
本変形例の構成は、実施の形態1の構成あるいはその変形例1、2、4、5の構成と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態1の変形例7)
図9(a)は、実施の形態1に係る生体電極100の第7変形例の要部の底面を模式的に示す底面図であり、図9(b)は、そのIX-IX線断面図である。
本変形例は、抗ヒスタミン物質含有材料層175を中央領域の表層において用いている点で、実施の形態1の変形例1、3、6と共通するが、導電ゲル層130に混ぜ合わせたり導電ゲル層130の表面に塗布したりする代わりに、導電ゲル層130内に埋設している点で、実施の形態1の変形例1、3、6と相違する。
本実施例の抗ヒスタミン物質含有材料層175は、抗ヒスタミン物質AHを練り込んだ繊維の紐をメッシュ状に編み込んだ部材である。このような抗ヒスタミン物質AHを含有する部材の使用は、導電ゲル層130内に埋設する代わりに粘着剤層151内に埋設してもよいが、抗ヒスタミン物質AHがより流動しやすい導電ゲル層130内に埋設するほうが、抗ヒスタミン物質AHの皮膚への到達を早くすることができる点で有利である。
なお、図9においては、抗ヒスタミン物質含有材料層175が導電ゲル層130の最深部に埋設されているが、最深部以外の位置に埋設されてもよい。また、形状はメッシュ状でなくてもよく、導電ゲル層130内での抗ヒスタミン物質含有材料層175の配置は、導電ゲル層130の特性、特に導電性を阻害しない限り、どのように配置されてもよい。抗ヒスタミン物質含有材料層175が導電ゲル層130と同様の特性、特に導電性を有してもよいことは、言うまでもない。
また、本実施の形態1において例示されているように、導電ゲル層130が中間基材133(図1参照)を有している場合には、この中間基材133を、抗ヒスタミン物質含有材料層175としてもよい。この場合、部品点数の増大を回避することができる。
(実施の形態1の他の変形例)
上記した本実施の形態および各変形例においては、抗ヒスタミン物質AHの濃度を異ならせる領域が径方向において区分けされているが、区分けの仕方については種々変更して実施することができる。例えば、被覆材の領域を横断する帯状の領域において抗ヒスタミン物質AHを含有させ、残余の領域においては抗ヒスタミン物質AHを含有させないようにしてもよい。
また、上記した本実施の形態および各変形例においては、導電ゲル層130の領域および粘着剤層151の領域の少なくともいずれかに対して、抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせたり、抗ヒスタミン物質含有材料層171〜175を被着または埋設したりしているが、抗ヒスタミン物質AHは、表層の領域のうち少なくとも一部分に含有されていればよい。すなわち、例えば、表層の領域を、導電ゲル層130の領域と、粘着剤層151の領域と、これらのいずれとも異なる領域とに区分けし、そのいずれとも異なる領域に、抗ヒスタミン物質含有材料層を設けてもよい。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について説明する。
[全体構成]
図10は、本実施の形態に係る生体電極200の構成を示す分解斜視図である。なお、本実施の形態において、「上面」とは、生体電極200の被検者への貼り付け面と反対の方向に向かう面を意味し、「下面」とは、生体電極200の被検者への貼り付け面の方向に向かう面を意味する。
図10において、生体電極200は、主として、基材210と、電極部220と、導電ゲル層230と、銀膜240と、カーボン膜250と、レジスト膜260と、不織布270と、セパレータ280とを有する。
基材210、電極部220、銀膜240、カーボン膜250、レジスト膜260は、それぞれ細長く延伸した延伸部分を有しており、この延伸部分は、被検者から検出された心電図信号を記録装置(図示せず)に伝送するリード線として機能する。
基材210は、PETなどの膜状のフィルム材料から成り、上面と下面の一対の面を有する。基材210は、その下面に電極部220が設けられ、その上面に銀膜240、カーボン膜250、レジスト膜260が設けられており、生体電極200のセンサ部およびリード線としての中核を成す。
電極部220は、銀−塩化銀(Ag−AgCl)などの材料から成り、基材210の下面と導電ゲル層230との間に配置される。電極部220は、導電ゲル層230から伝ってきた心電図信号を検出して、記録装置(図示せず)に伝送する。
導電ゲル層230は、導電性、粘着性、吸湿膨張性を有するゲルの層である。導電ゲル層230は、その上面側ゲル部231と基材210の下面との間に電極部220を介在させ、かつ基材210の下面を覆った状態で、自身の粘着力によって基材210に接着される。導電ゲル層230の表面積は基材210の表面積よりも大きく、導電ゲル層230は、基材210の周縁部からはみ出した領域、具体的には不織布270と同一領域を有している。導電ゲル層230は、自身の粘着力と不織布270の下面に塗布された粘着剤層271の粘着力とによって、不織布270の下面に接着されている。また、導電ゲル層230は、自身の粘着力によってその下面側ゲル部232が被検者の胸部に接着されてその位置が固定される。導電ゲル層230は、生体電極200の使用時には、被検者の心臓の活動によって発生する微小な起電力である心電図信号(心臓の電気興奮)を電極部220に伝える。
導電ゲル層230の上面側ゲル部231と下面側ゲル部232の間には、導電ゲル層230の形状を維持するために、極めて薄い網目状の不織布である中間基材233が設けられている。
銀膜240は、基材210の上面の電極部220の対向位置に、例えば印刷形成によって設けられている。銀膜240は、生体電極200の外部で発生する電磁波を遮蔽して、電磁波による電極部220へのノイズの影響を軽減する。銀膜240は極めて小さい電気抵抗値を有し、生体電極200における静電気(帯電)を防止する。
カーボン膜250は、基材210の上面に、銀膜240を被覆するように、つまり銀膜240の上面と側面を完全に覆うように、例えば印刷形成によって設けられている。カーボン膜250は、銀膜240よりも大幅に大きい電気抵抗値(1000倍程度)を有しており、銀膜240と同様に、電磁波を遮蔽して電極部220へのノイズの影響を軽減する。また、カーボン膜250は、銀膜240を被覆することにより、銀膜240が酸素や硫黄などの他の物質と化学的に結合して劣化するのを防止する。なお、カーボン膜250の代わりに、アルミや銅などの導電性材料の膜を形成してもよい。
基材210の上面において、銀膜240の印刷面積はカーボン膜250の印刷面積よりも大幅に小さい。より具体的には、銀膜240は、基材210の上面の電極部220の対向位置に極めて細い細線状に印刷されており、カーボン膜250は、銀膜240を被覆して基材210の上面に塗りつけるように印刷されている。これにより、銀膜240が有する極めて高い電磁波の遮蔽能力と静電気防止能力をカーボン膜250に享受させることができる。つまり、カーボン膜250は、自身が単体で有するもの以上の電磁波の遮蔽能力と静電気防止能力を発揮することができる。このように、銀膜240とカーボン膜250は、基材210の上面に設けられた、電極部220の高性能な導電性シールド膜として機能する。
レジスト膜260は、銀膜240とカーボン膜250から成るシールド膜を封止する。すなわち、レジスト膜260は、基材210の上面に、銀膜240とカーボン膜250から成るシールド膜の上面と側面を完全に覆って設けられている。レジスト膜260は、非導電性の絶縁膜であり、基材210の上面の側からの銀膜240およびカーボン膜250、ひいては電極部220への電気的導通を遮断する。
不織布270は、生体電極200の各部材を被覆してこれらを保護する。すなわち、不織布270は、生体電極200の各部材を被覆するとともに、生体電極200が被検者に装着されたときには被検者の装着部位を被覆する、被覆材として機能する。不織布270には、多数の通気用細孔(図示せず)が空けられており、これらの細孔を通じて被検者の発汗などにより導電ゲル層230が吸収した水分を外気に蒸散させる。また、不織布270は、その下面に塗布された粘着剤から成る粘着剤層271によって、生体電極200を被検者の胸部に貼り付ける。
セパレータ280は、水分を通さない例えば樹脂製のフィルムから成り、使用前における導電ゲル層230の下面に密着状態で貼り付けられ、生体電極200の非使用時におけるこれらの乾燥を防止して粘着力の低下を防止する。生体電極200の使用時、セパレータ280が、導電ゲル層230の表面から剥がされ、この表面が被検者の胸部に貼り付けられることで、生体電極200は、被検者に装着される。
以上、生体電極200の全体構成について説明した。
なお、本実施の形態では、不織布270の径と導電ゲル層230の径とが同一である。よって、生体電極200の使用中、胸部に接触するのは、導電ゲル層230のみである。すなわち、本実施の形態は、導電ゲル層130とは別に被検者に接着する粘着剤層を設けない点で、実施の形態1と相違する。したがって、本実施の形態の導電ゲル層230には、実施の形態1で説明した粘着剤層151の粘着剤と同程度の粘着性が求められる。
[要部構成]
次いで、生体電極200の要部構成について説明する。
図11は、本実施の形態に係る生体電極200の要部を模式的に示す断面図である。
前述したとおり、生体電極200の使用中に生体に接触する表層は、導電ゲル層230のみである。本実施の形態では、この導電ゲル層230が、抗ヒスタミン物質AHを含有する。抗ヒスタミン物質AHの詳細については、実施の形態1と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
すなわち、導電ゲル層230は、導電性などを有するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含む。導電ゲル層230を構成するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、被覆材としての不織布270の領域全体において、抗ヒスタミン物質AHを均等に分散させることができる。
[効果]
導電ゲル層230に含まれる抗ヒスタミン物質AH、特に導電ゲル層230の表面付近に含まれる抗ヒスタミン物質AHは、導電ゲル層230内で少しずつ流動することができ、生体電極200の使用中に徐々に、導電ゲル層230の表面を通じて被検者の胸部の皮膚に、導電ゲル層230中の水分とともに浸透する。皮膚に浸透した抗ヒスタミン物質AHは、皮膚内で抗ヒスタミン作用を発揮する。抗ヒスタミン物質AHが時間をかけて少しずつ導電ゲル層230から皮膚に浸透することができるため、抗ヒスタミン作用を長時間持続させることができ、生体電極200の使用中、被検者の装着部位に痒みが生じることを抑制することができる。皮膚に浸透した後、抗ヒスタミン物質AHをマイクロカプセルから徐々に染み出させる方法を採用する場合は、抗ヒスタミン作用を一層長時間持続させることができる。また、生体電極200の装着前に、痒みを抑える手当を追加で行う必要がない。
特に、実施の形態1でも説明したように、一部の抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス油溶性成分(トリテルペンなど))をリポソームに封入して導電ゲル層230に混ぜ合わせ、残りの抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス)をリポソームに封入せずに導電ゲル層230に混ぜ合わせた場合は、後者による抗ヒスタミン作用を短時間で発揮させ、前者による抗ヒスタミン作用を遅れて発揮させることができ、長時間にわたり抗ヒスタミン作用の程度を一定に保つことができるようになる。
また、本実施の形態では、抗ヒスタミン物質AHは、生体電極200の使用中に生体に接触する表層全体に含有されるので、被検者の装着部位全体に対して抗ヒスタミン作用を発揮することができる。
以下、本実施の形態の変形例について、本実施の形態の内容との相違点を中心に説明する。
(実施の形態2の変形例1)
図12は、実施の形態2に係る生体電極200の変形例1の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例では、導電ゲル層230(図10、11参照)が、外周領域側(外周側導電ゲル層230a)と中央領域側(中央側導電ゲル層230b)とに分割されており、これらのうち、外周側導電ゲル層230aのみが、抗ヒスタミン物質AHを含有する。なお、外周側導電ゲル層230aおよび中央側導電ゲル層230bは、導電性、粘着性、吸湿膨張性を有するゲルを含む点では互いに同一である。すなわち、外周側導電ゲル層230aは、導電性などを有するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含む。中央領域を残し外周領域のみにおいて、ゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、外周領域においては抗ヒスタミン作用の発揮を優先させ、中央領域においては導電性および粘着性への影響回避を優先させることができる。
ちなみに、外周側導電ゲル層230aおよび中央側導電ゲル層230bの形成方法としては、例えば、外周側導電ゲル230aの外周部分だけでなく中央側導電ゲル層230bとの境界となる環状部分にも土手を設け、最初に、外周領域において外周側導電ゲル層230aの原液を流し込んでゲル化させ、そして土手を外し、中央領域において中央側導電ゲル層230bの原液を流し込んでゲル化させる。
例えばこのような方法で外周側導電ゲル層230aおよび中央側導電ゲル層230bを形成すると、これらの境界には別の部材が介在せず互いに密着することになるため、予め外周側導電ゲル層230aのみに抗ヒスタミン物質AHを含有させていても、時間の経過に伴って抗ヒスタミン物質AHを、中央側導電ゲル層230bが配置された中央領域内に拡散させることができる。よって、実際には、中央領域においても抗ヒスタミン作用を発揮させることができる。
(実施の形態2の変形例2)
図13は、実施の形態2に係る生体電極200の変形例2の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例では、実施の形態2の変形例1とは逆に、中央側導電ゲル層230bのみが、抗ヒスタミン物質AHを含有する。すなわち、中央側導電ゲル層230bは、導電性などを有するゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含む。外周領域を残し中央領域のみにおいて、ゲルに抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、中央領域においては抗ヒスタミン作用の発揮を優先させ、外周領域においては導電性および粘着性への影響回避を優先させることができる。外周領域での粘着性を確実に確保できるので、生体電極200全体としての剥がれにくさを維持することができる。
また、実施の形態2の変形例1と同様、外周側導電ゲル層230aおよび中央側導電ゲル層230bをその境界に別の部材を介在させずに互いに密着させて形成する場合は、予め中央側導電ゲル層230bのみに抗ヒスタミン物質AHを含有させていても、時間の経過に伴って抗ヒスタミン物質AHを、外周側導電ゲル層230aが配置された外周領域内に拡散させることができる。よって、実際には、外周領域においても抗ヒスタミン作用を発揮させることができる。
(実施の形態2の変形例3)
図14は、実施の形態2に係る生体電極200の変形例3の要部を模式的に示す断面図である。
本変形例は、実施の形態2の変形例1、2の構成を組み合わせた構成である。すなわち、抗ヒスタミン物質AHは、生体電極200の使用中に生体に接触する表層を構成する、外周側導電ゲル層230aにも中央側導電ゲル層230bにも含有される。
この場合、実施の形態2の変形例1、2の構成で得られる効果をいずれも実現することができる。例えば、本変形例では、中央側導電ゲル層230bが配置された中央領域からも、その周囲で外周側導電ゲル層230aが配置された外周領域からも、抗ヒスタミン物質AHを皮膚に浸透させることができる。
なお、本変形例において、中央側導電ゲル層230b内の抗ヒスタミン物質AHの濃度は、外周側導電ゲル層230a内の抗ヒスタミン物質AHの濃度よりも、図示されているように低くてもよいし、それとは逆に高くてもよい。なお、これらの濃度が互いに等しくてもよいが、この場合は、例えば中央側導電ゲル層230bと外周側導電ゲル層230aとで粘着力を異ならせるなど、何らかの特性を異ならせると有利である。各領域の抗ヒスタミン物質AHの濃度が互いに等しくない場合においても、各領域の粘着力を異ならせてもよいことは、言うまでもない。各領域における抗ヒスタミン物質AHの濃度については、望まれる特性に基づいて決定すればよい。
(実施の形態2の他の変形例)
実施の形態1の変形例3〜6として記載したような、抗ヒスタミン物質含有材料層を導電ゲル層230上に被着させる構成や、実施の形態1の変形例7として記載したような、抗ヒスタミン物質AHを含有する部材を導電ゲル層230内に埋設する構成は、実施の形態2に係る生体電極200の変形例として採用可能である。
また、上記した本実施の形態および各変形例においては、抗ヒスタミン物質AHの濃度を異ならせる領域が径方向において区分けされているが、区分けの仕方については種々変更して実施することができる。例えば、被覆材の領域を横断する帯状の領域において抗ヒスタミン物質AHを含有させ、残余の領域においては抗ヒスタミン物質AHを含有させないようにしてもよい。
また、上記した本実施の形態および各変形例においては、導電ゲル層230の領域の少なくとも一部分に対して、抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせたり、抗ヒスタミン物質含有材料層を被着または埋設したりしているが、抗ヒスタミン物質AHは、表層の領域のうち少なくとも一部分に含有されていればよい。すなわち、例えば、表層の領域を、導電ゲル層230の領域と、これとは異なる領域とに区分けし、導電ゲル層230の領域とは異なる領域に、抗ヒスタミン物質含有材料層を設けてもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3として、生体情報の測定に用いる医療用センサとともに生体装着可能な医療用センサ補助具、より具体的には、吸着型の生体電極の吸盤部を覆って当該生体電極に取り付けられる生体電極カバーに、本発明を適用した場合について説明する。
図15(a)は、本実施の形態に係る生体電極300の構成を示す斜視図であり、図15(b)は、本実施の形態に係る生体電極カバー350の構成を示す斜視図であり、図15(c)は、生体電極300に生体電極カバー350を取り付けた状態を示す斜視図である。なお、本実施の形態において、「上面」とは、生体電極300の被検者への装着時に被検者の体表面と反対の方向に向かう面を意味し、「下面」とは、生体電極300の被検者への装着時に被検者の体表面の方向に向かう面を意味する。
図15(a)において、生体電極300は、把持部310と、電極部320と、リード線接続部330と、を有する。
把持部310は、生体電極300を把持する際に摘むことができる部材であり、例えばゴム製の中空の球体である。その下部には、筒状体が連設されており、この筒状体に、電極部320が連結される。電極部320は、導電性を有する例えば金属製の椀状(より詳しくは椀を伏せた形状)の電極である。電極部320の頂部には、把持部310の筒状体に挿入可能な筒状体が設けられている。筒状体の挿入により電極部320を把持部310に連結させると、電極部320の内部空間が把持部310の内部空間と連通する。よって、生体電極300を被検者に装着する際、予め生体電極300の把持部310を押し潰した状態で摘んだまま電極部320(またはここに被せた生体電極カバー350の下面部360(図15(b)参照))を被検者の装着部位である胸部に密着させて把持部310を手放すと、把持部310がその弾性復元力により膨らむに伴って、胸部の皮膚が電極部320内に吸い込まれ、これにより生体電極300が皮膚に吸着する。
リード線接続部330には、電極部320を通じて被検者から検出される心電図信号を記録装置(図示せず)に伝送するリード線(図示せず)が接続される。
図15(b)において、生体電極カバー350は、中央に開口(図示せず)を有する下面部360と中央に開口371を有する上面部370とを有する中空円錐台形状の外周に柱状の把持部380が突設された構成を有する。生体電極カバー350は、導電性および柔軟性(可撓性)を有する材料で一体に形成されている。
把持部380を摘むとともに、把持部380と対向する側の開口371の縁を摘んで、両者を引き離すことで開口371を広げると、開口371を通じて生体電極カバー350の内部空間に電極部320を収容することで電極部320に生体電極カバー350を被せることができる(図15(c)参照)。すなわち、生体電極カバー350の上面部370は、生体電極取付部として機能する。
そして、生体電極カバー350においては、上面部370に開口371が設けられており、さらに下面部360にも開口(図示せず)が設けられているため、生体電極カバー350を生体電極300の電極部320に被せた状態のままでも、上記と同様の方法で、生体電極300を皮膚に吸着させることができる。このとき、生体電極カバー350の下面部360は、生体電極300の使用中に生体に接触する表層として機能する。
本実施の形態において、生体電極カバー350は、例えばウレタン系樹脂多孔体に、抗ヒスタミン物質AH(図16参照)を混ぜ合わせた電解ゲルを染み込ませた材料から成る。抗ヒスタミン物質AHの詳細については、実施の形態1、2と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
生体電極カバー350は、導電性および柔軟性(可撓性)を有する材料に抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせた材料を含んで構成される。このようにして生体電極300に取付可能な生体電極カバー350の本体に抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせることにより、生体電極300の使用中に生体に接触する表層を構成する下面部360全体において、抗ヒスタミン物質AHを均等に分散させることができる。
下面部360に含まれる抗ヒスタミン物質AH、特に下面部360の表面付近に含まれる抗ヒスタミン物質AHは、生体電極カバー350本体内に染み込んだ電解ゲル内で少しずつ流動することができ、生体電極300の使用中に徐々に、下面部360の表面を通じて被検者の胸部の皮膚に、電解ゲル中の水分とともに浸透する。皮膚に浸透した抗ヒスタミン物質AHは、皮膚内で抗ヒスタミン作用を発揮する。抗ヒスタミン物質AHが時間をかけて少しずつ生体電極カバー350の下面部360から皮膚に浸透することができるため、抗ヒスタミン作用を長時間持続させることができ、生体電極300の使用中、被検者の装着部位に痒みが生じることを抑制することができる。皮膚に浸透した後、抗ヒスタミン物質AHをマイクロカプセルから徐々に染み出させる方法を採用する場合は、抗ヒスタミン作用を一層長時間持続させることができる。また、生体電極300の装着前に、痒みを抑える手当を追加で行う必要がない。
特に、実施の形態1、2でも説明したように、一部の抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス油溶性成分(トリテルペンなど))をリポソームに封入して生体電極カバー350の本体に混ぜ合わせ、残りの抗ヒスタミン物質AH(例えばステビア発酵エキス)をリポソームに封入せずに生体電極カバー350の本体に混ぜ合わせた場合は、後者による抗ヒスタミン作用を短時間で発揮させ、前者による抗ヒスタミン作用を遅れて発揮させることができ、長時間にわたり抗ヒスタミン作用の程度を一定に保つことができるようになる。
また、本実施の形態では、抗ヒスタミン物質AHは、生体電極300の使用中に生体に接触する表層全体に含有されるので、被検者の装着部位全体に対して抗ヒスタミン作用を発揮することができる。
なお、生体電極カバー350の下面部360のみにおいて、あるいは下面部360において局所的に、抗ヒスタミン物質AHを混ぜ合わせてもよい。
また、本実施の形態では、医療用センサ補助具として、生体電極を補助する生体電極カバー350を例に挙げたが、医療用センサを補助する機能をもつ器具であれば、生体電極カバー350とは異なるものであっても採用可能である。生体電極カバー350とは異なるもので採用可能な医療用センサ補助具としては、例えば、心音マイクとともに被検者の体表面に貼り付け可能な両面テープ材などが挙げられる。
以上、本発明についてその好ましい実施の形態および変形例を挙げて説明してきたが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形が当業者によって可能であることは明らかである。