以下に、図面を用いて本発明に係る電動機の冷却構造の一実施形態につき、詳細に説明する。以下では、車両として、内燃機関と2台の回転電機(電動機)、機械式オイルポンプ、電動式オイルポンプ等を搭載するハイブリッド車両について述べるが、これは説明のための例示に過ぎない。
図1は、本発明に係る電動機の冷却構造が用いられた車両制御システムの一実施形態の構成を示す図であり、ハイブリッド車両についての車両制御システム10の構成を示す。この車両制御システム10は、ハイブリッド車両に搭載される動力装置14を含む。
動力装置14は、内燃機関であるエンジン(図示しない)と、MG1として示される第1回転電機18、及び、MG2として示される第2回転電機20と、これらの間に設けられる動力伝達機構16と、を含む。
第1回転電機18と第2回転電機20は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、電力が供給されるときはモータとして機能し、制動時あるいはエンジンで駆動される時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。ここでは、第1回転電機18及び第2回転電機20のいずれか一方を主としてバッテリ(図示しない)の充電のための発電機、他方を主として車両走行用としての駆動モータとして用いる。
例えば、第1回転電機18はエンジンにより駆動されて発電し、発電された電力をバッテリに供給する発電機として用いられる。また、第2回転電機20は車両走行に用いられ、力行時にはバッテリから電力の供給を受けて、モータとして機能して車両の車軸を駆動し、制動時には発電機として機能して制動エネルギを回生し、バッテリに供給できる。以下では、第1回転電機18を発電機、第2回転電機20をモータとして用いるものとして説明を行う。
動力伝達機構16は、ハイブリッド車両に供給する動力をエンジンの出力と第1回転電機18及び第2回転電機20の出力との間で分配する機能を有する機構である。動力伝達機構16としては、エンジンの出力軸、第1回転電機18及び第2回転電機20の出力軸、車軸への出力軸のそれぞれに接続される遊星歯車機構を用いることができる。エンジンの出力軸は、動力伝達機構16とエンジンとを接続するとともに、接続軸を介して機械式オイルポンプ42の駆動軸に接続され、機械式オイルポンプ42の駆動に用いられる。
充放電可能なバッテリ(電源)への充電は、例えば、エンジンによって第1回転電機18を駆動し、第1回転電機18によって発電される電力を供給することで行われる。バッテリは、例えば、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池で構成することができる。組電池は、単電池または電池セルと呼ばれる端子電圧が1Vから数Vの電池を複数個組み合わせて、上記の所定の端子電圧を得るようにしたものである。バッテリとしては、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池等の二次電池の他に、大容量キャパシタ等を用いることができる。
ケース体24は、動力伝達機構16、第1回転電機18及び第2回転電機20を内部に含む筐体であり、トランスアクスルとも呼ばれるものである。ケース体24の内部空間には、動力伝達機構16、第1回転電機18及び第2回転電機20の可動部分の潤滑、並びに、動力伝達機構16、第1回転電機18及び第2回転電機20の冷却を行うためのオイルが貯留される。冷媒の機能を兼ね備えるオイルとしては、例えば、ATFと呼ばれる潤滑油を用いることができる。
冷却システム12は、被冷却対象としての第1回転電機18及び第2回転電機20の冷却に用いるオイルを循環供給する冷却回路として、機械式オイルポンプ42を含む第1供給路28と、電動式オイルポンプ44を含む第2供給路30とを有する。機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44は、それぞれがケース体24の内部空間に冷媒としてのオイルを循環供給する。
機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44は、オイルが貯留されたオイルパン(図示しない)から、ストレーナ58を介してオイルを吸入するように構成される。具体的には、ケース体24の下方側に設けられたストレーナ58に冷媒取込み路38が接続され、冷媒取込み路38は、ストレーナ58の下流側において、機械式オイルポンプ42側と電動式オイルポンプ44側とに分岐する。即ち、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44は、ストレーナ58に対して並列に接続されている。
第1供給路28は、機械式オイルポンプ42と、空冷式オイルクーラ(以下「クーラ」と称する。)50と、第1逆止弁54と、MG1供給管36と、第1冷却管32とを含んで構成されている。
機械式オイルポンプ42は、駆動軸がエンジンの出力軸に接続される機械式冷媒ポンプであり、エンジンが動作するときに駆動される。すなわち、エンジンの動力によって車両が走行すると、機械式オイルポンプ42は送出口からオイルを送出する。機械式オイルポンプ42から送出されたオイルは、動力伝達機構16及び第1回転電機18に供給されて潤滑油として機能するとともに、第1供給路28を介して、第1回転電機18及び第2回転電機20の冷媒として機能する。機械式オイルポンプ42は、エンジンの始動に伴って駆動を開始し、エンジンが停止すると駆動を終了する。
第1逆止弁54は、機械式オイルポンプ42とクーラ50との間に設けられ、機械式オイルポンプ42の送出口側でのオイルの逆流を防止する機能を有する。機械式オイルポンプ42が送出したオイルは、第1逆止弁54を通過してクーラ50へ圧送される。
分岐点Pは、機械式オイルポンプ42とクーラ50との間で、オイルの流路がクーラ50側と第1回転電機18側とに分岐するポイントである。機械式オイルポンプ42から送出されたオイルは、分岐点Pにおいて第1回転電機18及び動力伝達機構16側に圧送されると、クーラ50を経由せずに第1回転電機18と動力伝達機構16とに供給される。一方、分岐点Pにおいてクーラ50側に圧送されたオイルは、クーラ50内に流入する。
クーラ50はケース体24の外部に設けられているため、第1供給路28内を圧送されるオイルは、一旦ケース体24の外部を流通してクーラ50で外気と熱交換されてから再びケース体24の内部に戻ることになる。
第1供給路28には、第1供給路28内のオイルの油圧を調整する2つのリリーフ弁40が設けられている。各リリーフ弁40は、供給口が第1供給路28に接続され、かつ排出口がケース体24内部に向けて開口している。例えば、2つのリリーフ弁40のリリーフ圧は異なる大きさに設定されている。第1供給路28内のオイルが過剰である場合や、第1供給路28内の圧力がリリーフ圧を超過している場合は、リリーフ圧の超過レベルに応じて、その超過分のオイルが各リリーフ弁40を通じてケース体24内部に排出されるように構成されている。
第1供給路28は、クーラ50の下流側にある分岐点Qで、第1回転電機18に冷媒を供給するMG1供給管36側と、被冷却対象である第2回転電機20に冷媒を供給する第1冷却管32側とに分岐する。MG1供給管36は、ケース体24の内部に設けられている流路であって、第1回転電機18の上方に設けられ、後述する吐出孔から第1回転電機18へ冷媒を吐出する。また、第1冷却管32は、ケース体24の内部に設けられている流路であって、被冷却対象である第2回転電機20の上方に設けられ、第2回転電機20へ冷媒を吐出する。これにより、クーラ50で空冷されたオイルは、第1回転電機18及び第2回転電機20のそれぞれに冷媒として供給される。
第2供給路30は、電動式オイルポンプ44と、水冷クーラ52と、第2逆止弁56と、第2冷却管34とを含んで構成されている。
電動式オイルポンプ44は、電動モータ48によって駆動し、制御装置46によって駆動制御される電動式冷媒ポンプである。制御装置46は、電動式オイルポンプ44を制御することができる周知の電子制御装置により構成され、電動モータ48を制御することによって電動式オイルポンプ44を駆動制御する。制御装置46は、ハイブリッド車両搭載に適したコンピュータで構成することができる。制御装置46は、ハイブリッド車両に搭載される他の制御装置、例えば、冷却システム12の各要素を制御する制御装置、或いは、車両全体の制御を行う統合制御装置の一部であってもよい。
水冷クーラ52は、オイルと冷却水との間で熱交換を行う熱交換器である。なお、水冷クーラ52はケース体24の外部に設けられているため、ケース体24の内部に設けられたストレーナ58に吸入され、第2供給路30内を圧送されるオイルは、一旦ケース体24の外部に出て、電動式オイルポンプ44と水冷クーラ52を介して、再びケース体24の内部に戻ることになる。
第2逆止弁56は、水冷クーラ52と第2冷却管34との間に設けられ、電動式オイルポンプ44の送出口側でのオイルの逆流を防止する機能を有する。電動式オイルポンプ44が送出したオイルは、水冷クーラ52及び第2逆止弁56を通過して、第2冷却管34に圧送される。
第2冷却管34は、ケース体24の内部に設けられている流路であって、被冷却対象である第2回転電機20の上方に設けられ、第2回転電機20へ冷媒としてのオイルを吐出する。これにより、水冷クーラ52で水冷されたオイルが第2回転電機20に供給される。
本実施形態に係る冷却システム12は、被冷却対象である第2回転電機20を効果的に冷却するために、冷却性能がそれぞれ異なるクーラ50で冷却したオイルと水冷クーラ52で冷却したオイルとを別経路で圧送し、それぞれ異なる第1冷却管32及び第2冷却管34から、第2回転電機20に供給できる。このように、冷却システム12には、第2回転電機20に至る複数の冷却経路が形成されている。
ここで、第2回転電機20の上方には、機械式オイルポンプ42から第1供給路28を通じて供給されたオイルが圧送される第1冷却管32と、電動式オイルポンプ44から第2供給路30を通じて供給されたオイルが圧送される第2冷却管34とが互いにおおよそ並行に若しくはおおよそ並列して設けられており、第1冷却管32内をオイルが流れる方向と第2冷却管34内をオイルが流れる方向とは互いに逆方向である。すなわち、第1冷却管32と第2冷却管34とは互いに逆向きに並設されており、かつ、第1冷却管32内をオイルが流れる方向は、第2冷却管34内をオイルが流れる方向に対して対向しており、若しくは第1冷却管32内をオイルが流れる方向は、第2冷却管34内をオイルが流れる方向と反対方向である。
なお、第1供給路28及び第2供給路30は、全体を管状部材により構成することができるが、一部または全部を、ケース体24に孔を開けることにより形成された流路としてもよい。
以下、図面を参照しながら、第2回転電機20を冷却する構造について詳しく説明する。図2及び図3は、本実施形態に係る電動機の冷却構造の構成を示す図であり、第2回転電機20の冷却構造90の構成を示す図である。図2は第2回転電機20の回転軸線に直交する断面、特にステータ60の断面が示され、図3は第2回転電機20の回転軸線を含むステータ60の断面が示されている。また、図4は、本実施形態に係る電動機の冷却構造による冷媒の吐出状態を示す図であり、冷却構造90によるオイルの吐出状態を示す図である。図4(a)は図2に示すA−A線におけるステータ60と第1冷却管32の部分断面図であり、図4(b)は図2に示すB−B線におけるステータ60と第2冷却管34の部分断面図である。
図2において、第2回転電機20は、円筒または円環形状のステータ60と、ステータ60の円筒形状と同軸に配置される円柱または円板形状のロータ62を有する。ロータ62の中心を回転軸64が貫通している。この回転軸64は、第2回転電機20が電動機として動作するときには回転力を外部に出力するための出力軸として機能し、また第2回転電機20が発電機として動作するときには外部からの回転力を入力するための入力軸として機能する。第2回転電機20は、例えば、図示するように回転軸64を横にした状態で使用される。
ステータ60は、内周に周方向に沿って凹凸が交互に配列されたステータコア66を含む。ステータコア66の内周に設けられた凹部分にはコイル導線が収められ、このコイル導線が凸部分を巻くことによりコイル68が形成されている。コイル68に電力を供給することにより、ステータ60の内側の空間に回転する磁界が形成される。言い換えれば、電力を供給したときにステータ60の内側の空間に回転磁界が形成されるように、コイル68がステータコア66に巻回されている。
ステータコア66内周の凸部分はティース、凹部分はスロットとも呼ばれる。ステータコア66の軸方向端面の近傍領域では、複数のコイル導線が複雑に束ねられている。このコイル導線の束ねられた部分がコイルエンド70である。コイルエンド70は、上記のようにコイル導線が複雑に束ねられ、導線間には隙間が空いた部分があるが、全体として断面が方形の円環形状であり、ステータコア66の円筒の端面に隣接して位置する。図2において、コイルエンド70は、束ねられた個々の導線を描かず、簡略化した円環形状にて示されている。
ロータ62は、全体として円筒形状若しくは円環形状であり、ステータ60の内周、特にステータ60のティース先端との間にわずかな隙間をもって配置される。ロータ62は、ステータ60のコイル68により形成される回転磁界と相互作用して回転するように、例えば、その外周面または外周面近傍に永久磁石が埋設されている。また、ロータ62の周方向にリラクタンスの異なる部分を設け、これと回転磁界とが相互作用することにより、ロータ62が回転するように構成されることもできる。回転軸64は、ロータ62と一体に回転するようロータ62に対して固定されている。
ここで、ステータコア66内周に設けられた凹部分であるスロット内のコイル導線において発生した熱は、周囲のステータコア66に流れるが、コイルエンド70では周囲に熱の良導体がなく、温度が上昇しやすい。このため、コイルエンド70の効率的な冷却が望まれる。オイルによる冷却は、一般に液体が気体よりも熱伝導性が良いため、効率的な冷却が期待できる。また、ステータ60の上方からオイルをかけ、オイルがコイルエンド70を伝って流れる際に熱を奪うようにすることにより、コイルエンド70をオイルに浸す場合に比べてオイルの使用量を少なくすることができる。
本実施形態の冷却構造90では、上述の通り、第2回転電機20の冷却に用いるオイルを搬送する冷却経路として2つの系統が設けられている。即ち、本実施形態の冷却構造90では、第2回転電機20の上方において互いに略並列若しくは略並行に配置された第1冷却管32及び第2冷却管34からオイルを供給することで、コイルエンド70を含む第2回転電機20の冷却を行う。
第2冷却管34は、第1冷却管32に対して反対方向若しくは逆向きに並設されている。すなわち、第2冷却管34は、一例として、第1冷却管32と互いにおおよそ並列若しくはおおよそ並行に設けることができ、第2冷却管34とステータコア66との距離は、一例として、第1冷却管32とステータコア66との距離とほぼ同じに設けることができる。
(電動機の冷却構造の概略の説明)
以下、図3、図4(a)(b)を用いて、電動機の冷却構造の概略を説明する。図3、図4(a)(b)に、第1冷却管32の構造及び第1冷却管32によるオイルの吐出状態を示す。図3において、第1冷却管32は、被冷却対象であるステータコア66の上方に、回転軸64に平行に配置される。第1冷却管32は筒形状、例えば円筒形状の側壁72と、第1冷却管32の一端若しくは終端または末端を塞ぐように設けられた端壁74を有する。図4(a)に示すように、端壁74は第1冷却管32内を紙面右側から紙面左側に向かう矢印の方向に流れるオイルの流れ方向下流側の終端または末端である。側壁72には、第2回転電機20の近傍面に端壁74から近い順に吐出孔76、77、78が設けられる。吐出孔の個数は冷却する対象や目的に応じて任意であるが、本実施形態では、第1冷却管32の長さ方向に沿って3個の吐出孔76、77、78が設けられる。3個の吐出孔76、77、78のうち吐出孔76、78が、ステータコア66の両側の被冷却対象であるコイルエンド70の近傍位置に配置され、吐出孔77がステータコア66の外周の近傍位置に配置される。どの吐出孔がどの冷却対象を冷却するかなどは任意である。これにより、第1冷却管32に送り込まれたオイルは、図4(a)において横向き矢印で示すように、第1冷却管32の開放端(図4(a)の右側)から端壁74に向かって第1冷却管32内を流れ、各吐出孔76、77、78から第2回転電機20に向けて吐出される。前記した開放端は図1において説明した機械式オイルポンプ42から送出されたオイルがクーラ50を経由して第1冷却管32の内部を圧送されてきた側であり、オイルの流れ方向上流側に該当する。そして、前述した通り、端壁74がオイルの流れ方向下流側に該当する。
図4(b)に、第2冷却管34の構造及び第2冷却管34によるオイルの吐出状態を示す。第2冷却管34は、ステータコア66の上方に、回転軸64に平行に配置される。第2冷却管34は筒形状、例えば円筒形状の側壁72と、第2冷却管34の一端若しくは終端または末端を塞ぐように設けられた端壁74を有する。端壁74は第2冷却管34内を紙面左側から紙面右側に向かう矢印の方向に流れるオイルの流れ方向下流側の終端または末端である。
第2冷却管34の側壁72には、第2回転電機20の近傍面に吐出孔79、80、81が設けられる。吐出孔の個数は冷却する対象や目的に応じて任意であるが、本実施形態では、第2冷却管34の長さ方向に沿って3個の吐出孔79、80、81が設けられる。吐出孔79、81が、ステータコア66の両側のコイルエンド70の近傍位置に配置され、吐出孔80がステータコア66の外周の近傍位置に配置される。どの吐出孔がどの冷却対象を冷却するかなどは任意である。これにより、第2冷却管34に送り込まれたオイルは、図4(b)において矢印で示すように、第2冷却管34の開放端(図4(b)の左側)から端壁74に向かって第2冷却管34内を流れ、各吐出孔79、80、81から第2回転電機20に向けて吐出される。前記した開放端は図1において説明した電動式オイルポンプ44から送出されたオイルが水冷クーラ52を経由して第2冷却管34の内部を圧送されてきた側であり、オイルの流れ方向上流側に該当する。そして、前述した通り、端壁74がオイルの流れ方向下流側に該当する。
(本願発明の前提となる構成の説明)
次に、本願発明が成立する前提となる、電動機の冷却構造について説明する。図5は、本発明に係る電動機の冷却構造の説明図である。第1冷却管32の3つの吐出孔76、77、78と第2冷却管34の3つの吐出孔79、80、81のそれぞれが、第1冷却管32及び第2冷却管34の管軸方向と垂直に点線で表された方向若しくは第2回転電機20の軸方向と垂直に点線で表された方向において、同一位置(以下、「基準位置Y」と称する。)にあって、吐出孔の位置を水平方向にずらしていない場合を示している。なお、図2において説明した通り、第1冷却管32と第2回転電機20との距離は第2冷却管34と第2回転電機20との距離と同じであるが、理解を容易にするため、図5ではそれぞれの距離を異ならせている。
次に、第1冷却管32の互いに隣接する3つの吐出孔76、77、78同士の間隔はそれぞれ同一とし、第2冷却管34の互いに隣接する3つの吐出孔79、80、81同士の間隔もそれぞれ同一とする。すなわち、図5において、互いに隣接する3つの基準位置Yの間隔はそれぞれ同一とする。
次に、図5において、第1冷却管32内をZ1方向に流れてきたオイルは、その圧送されてきた圧力に応じて、吐出孔76、77、78からそれぞれ方向a若しくは圧力が高まるにつれて方向bの方向に吐出される。ここでは、最高圧力がかけられたオイルが吐出孔76、77、78から吐出する方向をbとする。また、第2冷却管34内をZ2方向に流れてきたオイルは、その圧送されてきた圧力に応じて、吐出孔79、80、81から方向a’若しくは圧力が高まるにつれて方向b’の方向に吐出される。ここでは、最高圧力がかけられたオイルが吐出孔79、80、81から吐出する方向をb’とする。
第1冷却管32内を流れてきたオイルと第2冷却管34内を流れてきたオイルはそれぞれの吐出孔から放射状に吐出されることがあるので、第1冷却管32の吐出孔76、77、78から方向aに吐出されたオイルと第2冷却管34の吐出孔79、80、81から方向a’に吐出されたオイルとが干渉し合い、衝突し合って混ざり合い、それぞれのオイルが本来有する冷却能力を充分に発揮できなくなる。
上記の現象は、例えば、第2回転電機20の出力が増加した場合、或いは、第2回転電機20の温度が上昇した場合、第2回転電機20の冷却効果を更に高める目的で、電動式オイルポンプ44の制御装置46が、電動式オイルポンプ44から圧送されるオイルの流量を増加させる場合にも生じ得る。その結果、図5に示す冷却構造90の例において、第1冷却管32内を流れるオイルの流量及び圧力が増加し、第1冷却管32の吐出孔76、77、78からのオイルの吐出方向がb方向にずれ、かつ第2冷却管34の吐出孔79、80、81からのオイルの吐出方向もb’方向にずれた場合、それぞれのオイルが干渉し合い、衝突し合って混ざり合うため、それぞれのオイルが本来有する冷却能力を十分に発揮できなくなる。
ここで、第1冷却管32の吐出孔76と第2冷却管34の吐出孔79の基準位置Y、第1冷却管32の吐出孔77と第2冷却管34の吐出孔80の基準位置Y、第1冷却管32の吐出孔78と第2冷却管34の吐出孔81の基準位置Yをそれぞれ固定位置としたとき、吐出孔76から最小圧力で吐出されたオイルが第2回転電機20に着地する着地点を破線で下した位置をY11とし、吐出孔77から最小圧力で吐出されたオイルが第2回転電機20に着地する着地点を破線で下した位置をY12とし、吐出孔78から最小圧力で吐出されたオイルが第2回転電機20に着地する着地点を破線で下した位置をY13とする。
次に、第1冷却管32の端壁74の位置をY21とする。
第2冷却管34の吐出孔79を基準位置Yに固定し、第1冷却管32の吐出孔77をZ1方向にずらしていった場合に、吐出孔79から最高圧力でb’方向に吐出されたオイルと、吐出孔77から最高圧力でb方向に吐出されたオイルとが、第2回転電機20に着地する着地点において互いに干渉しない限界である最大のずらし位置を破線で下した位置をY22とする。
第2冷却管34の吐出孔80を基準位置Yに固定し、吐出孔80から最高圧力でb’方向に吐出されたオイルと吐出孔78から最高圧力でb方向に吐出されたオイルとが第2回転電機20に着地する着地点において互いに干渉しない限界である最大のずらし位置を破線で下した位置をY23とする。
このとき、Y11−Y21の網目領域は、吐出孔76の位置をZ1方向に移動させたとしても、吐出孔76から吐出したオイルが他のオイルと干渉しない間隙またはギャップ領域(非干渉領域)であり、Y12−Y22の網目領域は、吐出孔77の位置をZ1方向に移動させたとしても、吐出孔77から吐出したオイルが吐出孔79から吐出したオイルと干渉しない間隙またはギャップ領域(非干渉領域)であり、Y13−Y23の網目領域は、吐出孔78の位置をZ1方向に移動させたとしても、吐出孔78から吐出したオイルが吐出孔80から吐出したオイルと干渉しない間隙またはギャップ領域(非干渉領域)である。
以上の前提を考慮に入れた上で、本願発明に係る電動機の冷却構造について、以下の実施例において説明する。
以下に、本願発明に係る電動機の冷却構造の実施例1について、図5を考慮に入れながら、図6を用いて説明する。
本実施例1に係る電動機の冷却構造では、図6に示すように、第2回転電機20を冷却する冷媒としてのオイルを供給する供給管として、第1冷却管32に加えて、内部を流れるオイルの向き(矢印Z2)が第1冷却管32の内部を流れるオイルの向き(矢印Z1)と対向するように構成された第2冷却管34を設けている。
ここで、第1冷却管32の内部を流れるオイルを第1のオイルと称し、第2冷却管34の内部を流れるオイルを第2のオイルと称する。
図6は本発明に係る電動機の冷却構造の実施例1を示す図であり、電動機の冷却構造を構成する第1冷却管32の構造及び第1のオイルの吐出状態を示す。第1冷却管32はその内部をZ1方向に第1のオイルが圧送される。第1冷却管32は、筒形状、例えば円筒形状の側壁72と、筒の一端若しくは終端(左端)を塞ぐように設けられた端壁74とを有する。第1冷却管32の側壁72に、長さ方向に沿って3個の吐出孔76、77、78が設けられる。吐出孔76、78が、ステータコア66の両側のコイルエンド70の近傍位置に配置され、吐出孔77がステータコア66の外周の近傍位置に配置される。これにより、第1冷却管32の図6の右端の開放端から送り込まれた第1のオイルは、内部をZ1方向に圧送され、圧送される圧力が弱い場合は吐出孔76、77、78のそれぞれから矢印aの方向に吐出され、圧送される圧力が強まるにつれて吐出孔76、77、78を通じてそれぞれ矢印aから矢印bに方向を変えて吐出される。
第2冷却管34は、第1冷却管32と同様の構成を有するが、第2冷却管34の内部を圧送される第2のオイルの流れる向きを示すZ2方向が、第1冷却管32の内部を圧送される第1のオイルの流れる向きを示すZ1方向と逆向き若しくは反対方向である。第2冷却管34は、筒形状、例えば円筒形状の側壁72と、筒の一端若しくは終端(右端)を塞ぐように設けられた端壁74とを有する。第2冷却管34の側壁72に、長さ方向に沿って3個の吐出孔79、80、81が設けられる。吐出孔79、81が、ステータコア66の両側のコイルエンド70の近傍位置に配置され、吐出孔80がステータコア66の近傍位置に配置される。これにより、第2冷却管34の図6の左端の開放端から送り込まれた第2のオイルは、内部をZ2方向に圧送され、圧送される圧力が弱い場合は吐出孔79、80、81からそれぞれ矢印a’の方向に吐出され、圧送される圧力が強まるにつれて吐出孔79、80、81を通じてそれぞれ矢印a’から矢印b’に方向を変えて吐出される。
実施例1に係る電動機の冷却構造においては、第1冷却管32と第2冷却管34はおおよそ同等の構造を有しており、第1冷却管32において、第1冷却管32の端壁74から最も近い吐出孔76までの距離をXとすると、第2冷却管34において、第2冷却管34の端壁74から最も近い吐出孔81までの距離もXである。第1冷却管32に設けられた複数の互いに隣接する吐出孔76と吐出孔77、吐出孔77と吐出孔78同士の間隔は、第2冷却管34に設けられた複数の互いに隣接する吐出孔79と吐出孔80、吐出孔80と吐出孔81同士の間隔とおおよそ同等とする。
実施例1は、上記のようにおおよそ同様に形成された第1冷却管32の第2冷却管34に対する位置関係に関して考案したものであり、図6のように、第2冷却管34に設けられた各吐出孔79、80、81の管軸方向、すなわち第2のオイルの流れ方向Z2において、設けられた基準位置をそれぞれYとするとき、第1冷却管32に設けられた各吐出孔76、77、78を、基準位置Yに対し、第1冷却管32内を流れる第1のオイルの流れ方向Z1の下流側に移動させたY1の位置にずらしている。
若しくは、実施例1は、第1冷却管32と第2冷却管34がおおよそ同様に形成されている場合であって、第2冷却管34の各吐出孔79、80、81の基準位置Yに対し、第1冷却管32の各吐出孔76、77、78の位置がそれぞれY1となるよう、第1冷却管32を第2冷却管34に対して第1のオイルの流れ方向Z1の下流側に前進させて配置したということもできる。
このとき、各Y1の位置は、図5において説明した間隙またはギャップ領域(非干渉領域)S1,S2,S3にある。
この場合、YとY1との距離は、それぞれの吐出孔76、77、78について等しくすることも可能であるし、端壁74と各吐出孔76との位置関係、第1のオイルまたは第2のオイルの圧力や吐出孔76からの吐出角度等の状況に応じて、それぞれ異ならせる変形例も可能である。つまり、Y1の位置は、図5で説明した間隙またはギャップ領域(非干渉領域)S1,S2,S3の範囲内であれば、どこでも設けることができる。
このような構成とすることにより、第1冷却管32を流れる第1のオイルの圧送圧力と第2冷却管34を流れる第2のオイルの圧送圧力がどのように設定されていても、第1冷却管32の吐出孔76、77、78から吐出された第1のオイルと第2冷却管34の吐出孔79、80、81から吐出された第2のオイルとが干渉することが防止され、若しくは衝突し合って混ざり合うということが防止されるため、それぞれのオイルが本来有する冷却性能を充分に発揮することができる。また、冷媒の供給安定性を向上でき、第2回転電機20の冷却性能を向上でき、ひいては、ハイブリッド車両の動力性能向上を実現することが可能となる。
以下に、本願発明に係る電動機の冷却構造の実施例2について、図7を用いて説明する。
本実施例2に係る電動機の冷却構造では、図7に示すように、第2回転電機20の構成、第2回転電機20と第1冷却管32との距離、第2回転電機20と第2冷却管34との距離は、実施例1と同様である。
図7は本発明に係る電動機の冷却構造の実施例2を示す図であり、電動機の冷却構造90を構成する第1冷却管32及び第2冷却管34の構造及びオイルの吐出状態を示す。
実施例2に係る電動機の冷却構造において、前述した実施例1と異なる点は、第1冷却管32の端壁74から最も近い吐出孔76までの距離をX1し、第2冷却管34の端壁74から最も近い吐出孔81までの距離をXとするとき、X1≠Xであり、具体的には、一例として、X1<Xに設計されている。第1冷却管32に設けられた複数の互いに隣接する吐出孔76と吐出孔77、吐出孔77と吐出孔78同士の間隔は、第2冷却管34に設けられた複数の互いに隣接する吐出孔79と吐出孔80、吐出孔80と吐出孔81同士の間隔とおおよそ同等とする。
実施例2は、図7のように、第2冷却管34に設けられた各吐出孔79、80、81の管軸方向、すなわち第2のオイルの流れ方向Z2において、第2冷却管34の各吐出孔79、80、81が設けられた基準位置をそれぞれYとするとき、第1冷却管32における各吐出孔76、77、78の位置を、基準位置Yに対し、第1冷却管32内を流れる第1のオイルの流れ方向Z1の下流側に移動させたY1の位置にずらしている。
すなわち、実施例2では、第2冷却管34の各吐出孔79、80、81の基準位置Yに対し、第1冷却管32の各吐出孔76、77、78の位置がY1となるよう、第1冷却管32において最も端壁74に近い吐出孔76を端壁74からX1(<X)の位置に設けることにより、第1冷却管32の各吐出孔76、77、78のそれぞれの位置を、第2冷却管34の各吐出孔79、80、81の基準位置Yに対して、第1冷却管32内を流れる第1のオイルの流れ方向Z1の下流側Y1だけずらしたということもできる。
このとき、各Y1の位置は、図5において説明した間隙またはギャップ領域(非干渉領域)S1,S2,S3にある。
この場合、YとY1との距離は、それぞれの吐出孔76、77、78について等しくすることも可能であるし、端壁74と各吐出孔76との位置関係、第1のオイルまたは第2のオイルの圧力や吐出孔76からの吐出角度等の状況に応じて、それぞれ異ならせることも可能である。つまり、Y1の位置は、図5で説明した間隙またはギャップ領域(非干渉領域)S1,S2,S3の範囲内であれば、どこでも設けることができる。
このような構成とすることにより、第1冷却管32を流れる第1のオイルの圧送圧力と第2冷却管34を流れる第2のオイルの圧送圧力がどのように設定されていても、第1冷却管32の吐出孔76から吐出された第1のオイルと第2冷却管34の吐出孔76から吐出された第2のオイルとが干渉することが防止され、若しくは衝突し合って混ざり合うということが防止され、それぞれのオイルが本来有する冷却性能を充分に発揮することができる。また、冷媒の供給安定性を向上でき、第2回転電機20の冷却性能を向上でき、ひいては、ハイブリッド車両の動力性能向上を実現することが可能となる。
以上、本実施形態の冷却構造90では、第1冷却管32へのオイルの圧送を機械式オイルポンプ42を用いて行う一方、第2冷却管34へのオイルの圧送は電動式オイルポンプ44を使用して行っており、それぞれのオイルポンプが異なっている。このように各冷却経路で異なるオイルポンプを使用すると、一方の冷却経路に送出されるオイルの流量または圧力が増加した場合に、他方の冷却経路に送出されるオイルの流量または圧力を独立して制御することができる。これにより、第2回転電機20に対するオイルの吐出範囲を、冷却性能の観点でより望ましい範囲に調整でき、その結果、第2回転電機20の冷却性能向上を実現することができる。
本実施形態の冷却構造90では、第1冷却管32及び第2冷却管34の内部を流れるオイルの向きが対向していることから、結果として、第2回転電機20に対するオイルの吐出範囲のずれは平均化される。その結果、第1冷却管32を単独で用いる冷却構造に比較して、オイルの流量及び圧力が増加した場合における第2回転電機20の冷却性能向上を実現することができる。
また、本実施形態では、第1冷却管32及び第2冷却管34の一方に対して機械式オイルポンプ42を用いてオイルを圧送し、他方に対して電動式オイルポンプ44を用いてオイルを圧送している。そのため、回転電機に高負荷がかかる条件下において、負荷量に応じてオイルの圧送量が増加する機械式オイルポンプ42により、回転電機に対する冷媒の吐出量を増やして回転電機の冷却性能を向上させるとともに、オイルの圧送量が負荷量に依存しない電動式オイルポンプ44により、電動式オイルポンプ44から圧送される冷媒の吐出方向を適宜調整して、回転電機に対する冷媒の吐出範囲を、冷却性能の観点で最適なものとすることができる。
さらに、本実施形態では、機械式オイルポンプ42により、発電機として用いる第1回転電機18にオイルを供給するMG1供給管36、及び、モータとして用いる第2回転電機20にオイルを供給する第1冷却管32の両者にオイルを圧送している。第1回転電機18は、エンジンの駆動に応じて負荷量が増加し、温度も上昇するところ、同じようにエンジンの駆動に応じて冷媒の圧送量が増加する機械式オイルポンプ42によりMG1供給管36にオイルを供給することで、第1回転電機18を冷却するオイルを第1回転電機18の負荷量に応じた量で供給できる。
さらに、本実施形態では、第1冷却管32に冷媒を供給する第1供給路28がクーラ50を含み、第1冷却管32に送出される冷媒がクーラ50により冷却される一方、第2冷却管34に冷媒を供給する第2供給路30が水冷クーラ52を含み、第2冷却管34に送出される冷媒が水冷クーラ52により冷却される。このように、第1冷却管32または第2冷却管34の一方に送出される冷媒をクーラ50により冷却し、他方に送出される冷媒を水冷クーラ52により冷却することで、冷却特性が異なるクーラ50と水冷クーラ52とで冷却された冷媒を回転電機に独立して供給可能となり、第2回転電機20に必要となる冷却を適切に実施することができる。
また、上述の実施形態では、第1冷却管32及び第2冷却管34のそれぞれが1本ずつ配置された構成について説明したが、第1冷却管32及び第2冷却管34のいずれか一方または両方が、2本以上の管で構成されていてもよい。