JP6971045B2 - アンクル、調速脱進機、ムーブメント及び時計 - Google Patents
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Description
しかしながら、仮にアンクルハコの側面上で摩耗粉が発生した場合には、アンクルハコの側面上で潤滑油と摩耗粉とが混ざり合うことで、潤滑油の粘度が増加するおそれがある。そのため、所望の潤滑性能を得ることが難しかった。
さらに、本態様では、凹部内に摩耗粉を収容できるため、アンクルハコの側面上に潤滑油を供給したとしても、潤滑油と摩耗粉がアンクルハコの側面上で混ざり合うのを抑制できる。これにより、潤滑油の粘度上昇を抑制し、長期に亘って摩耗量を低減できる。
この構成によれば、凹部がアンクルハコの側面以外の部分においても開口していることで、アンクルハコの側面上で発生した摩耗粉が凹部を通過してアンクルから排出される。これにより、アンクルハコの側面と振り石との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。
この構成によれば、凹部がアンクルハコの側面において摺動領域以外の部分に形成されている場合に比べてアンクルハコの側面上で発生した摩耗粉を速やかに凹部内に収容できる。これにより、アンクルハコの側面上で摩耗粉が滞留するのを確実に抑制できる。
この構成によれば、側面における第1方向に直交する方向(振り石の摺動方向に直交する方向)において、振り石と側面との接触面積を低減できる。また、振り座がアンクルハコの側面上を摺動する際において、振り座と凹部の開口縁との引っ掛かりを抑制できる。これにより、アンクルハコの側面上において、振り石がスムーズに摺動することになるので、動作信頼性の更なる向上を図ることができる。
この構成によれば、摺動領域のうち振り石との摺動面との摺動により摺動面上に発生した摩耗粉は、逃げ面の凹部内に収容される。この場合、摺動面上に凹部が開口していないので、摺動面上を振り石がスムーズに摺動することになる。これにより、動作信頼性の向上を図ることができる。
本発明の一態様に係るムーブメントは、上記態様の調速脱進機を備えている。
本発明の一態様に係る時計は、上記態様のムーブメントを備えている。
この構成によれば、上記態様のアンクルを備えているため、長期に亘って計時精度に優れた、動作信頼性の高い調速脱進機、ムーブメント及び時計を提供できる。
(第1実施形態)
[時計]
図1は、時計1の外観図である。なお、以下に示す各図では、図面を見やすくするため、時計用部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計用部品を簡略化して図示している場合がある。
図1に示すように、本実施形態の時計1は、ムーブメント2や文字板3、各種指針4〜6等が時計ケース7内に組み込まれて構成されている。
図2は、ムーブメント2を表側から見た平面図である。
図2に示すように、ムーブメント2は、ムーブメント2の基板を構成する地板21に複数の歯車体等が回転可能に支持されて構成されている。なお、以下の説明では、地板21に対して時計ケース7のカバーガラス12側(文字板3側)をムーブメント2の「裏側」と称し、ケース蓋側(文字板3側とは反対側)をムーブメント2の「表側」と称する。また、以下で説明する各歯車体は、何れもムーブメント2の表裏面方向を軸方向として設けられている。
巻真19を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車31が回転する。きち車31の回転により丸穴車32及び角穴車33が順に回転し、香箱車34に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
ぜんまいの復元力により香箱車34が回転すると、香箱車34の回転により二番車41、三番車42及び四番車43が順に回転する。香箱車34、二番車41、三番車42及び四番車43は、表輪列を構成する。
図3は、ムーブメント2のうち、調速脱進機51を含む部分(図2のIII−III線に相当する部分)の断面図である。
図3に示すように、ムーブメント2には、調速脱進機51が搭載されている。調速脱進機51は、てんぷ52、がんぎ車53及びアンクル54を有している。
てん真61は、地板21とてんぷ受65との間で、第1軸線O1回りに回動可能に支持されている。てん真61は、ひげぜんまい63から伝えられた動力によって第1軸線O1回りに一定の振動周期で往復回動する。
一方、振り座67の小つば67bにおいて、第1軸線O1回りの周方向で振り石68に対応する位置にはツキガタ66が形成されている。ツキガタ66は、小つば67bの一部が第1軸線O1における径方向の内側に窪んで形成されている。
図4に示すように、がんぎ車53は、がんぎ真71と、がんぎかな72と、がんぎ歯車73と、を有している。
がんぎかな72は、がんぎ真71に形成されている。がんぎかな72は、上述した四番車43(図2参照)に噛合している。すなわち、がんぎ車53は、四番車43の回転に伴い第2軸線O2回りに回転する。
がんぎ歯車73は、がんぎ真71におけるがんぎかな72に対して裏側に位置する部分に固定されている。がんぎ歯車73には、第2軸線O2の径方向に突出する歯部73aが、第2軸線O2回りの周方向で間隔をあけて複数形成されている。
アンクル54は、てんぷ52とがんぎ車53との間を接続している。具体的に、アンクル54は、アンクル真81と、アンクル体82と、一対のつめ石83と、剣先85と、を備えている。
図3に示すように、アンクル真81は、アンクル受75との間で第3軸線O3回りに回動可能に支持されている。
アンクルビーム91は、第3軸線O3の径方向に沿って延在している。アンクルビーム91の延在方向における中央部には、上述したアンクル真81が固定されている。アンクルビーム91における延在方向の両端部には、上述したつめ石83がそれぞれ取り付けられている。各つめ石83は、アンクル54の往復回動に伴いがんぎ車53の歯部73aに交互に係合する。
図5、図6に示すように、上述したアンクルハコ105の各側面110,111には、側面110,111上でそれぞれ開口する凹部120が形成されている。凹部120は、図6に示す表裏面方向に沿う断面視で矩形状に形成されている。図5に示すように、凹部120は、第1方向及び表裏面方向に直交する第2方向(側面110,111の法線方向)から見た側面視で円形状に形成されている。なお、凹部120の開口部(側面110,111上に位置する部分)の直径は、5〜10μm程度に形成されている。但し、凹部120の開口部での直径は、摩耗粉の粒径(例えば、1〜2μm程度)よりも大きく、側面110,111における摺動領域の第1方向での長さ(例えば、60μm程度)よりも小さければ適宜変更が可能である。
次に、上述した実施形態における時計1の作用を説明する。以下の説明では、主に調速脱進機51の作用について説明する。
本実施形態の時計1では、図3、図4に示すてんぷ52の第1軸線O1回りの往復回動により、振り石68がアンクルハコ105に係脱する。具体的に、振り石68がアンクルハコ105から脱出している状態において、てんぷ52が第1軸線O1回りの一方に回動すると、振り石68がアンクルハコ105内に進入する。アンクルハコ105内に進入した振り石68は、アンクルハコ105内において側面110,111のうち一方の摺動面(例えば、第2側面110)に接触する。振り石68は、てんぷ52の一方への回動に伴い第2側面110上を第1方向に摺動することで、アンクル54が第3軸線O3回りの一方へ押圧される。これにより、アンクル54が第3軸線O3回りの一方に回動する。
この構成によれば、側面110,111上で発生した摩耗粉を凹部120内で収容することができる。これにより、摩耗粉が側面110,111上で滞留するのを抑制し、側面110,111と振り石68との摺動抵抗を長期に亘って良好に維持できる。これにより、長期に亘って優れた計時精度を維持できる。
次に、上述した実施形態の各変形例について説明する。
上述した実施形態では、凹部120が側面視円形状に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。凹部は、例えば溝状であっても構わない。この場合、凹部は側面110,111上のみで開口していてもよく、側面110,111に加えて側面110,111以外の面(側面110,111を含む少なくとも二面)で開口していても構わない。
逃げ面240bは、摺動領域240のうち表裏面方向の両端部にそれぞれ位置している。逃げ面240bは、摺動面240aにおける表裏面方向の両端部から表裏面方向の外側に向かうに従い、クワガタ100,101の厚さが増加する方向に傾斜している。各逃げ面240bには、凹部245が形成されている。凹部245は、表裏面方向に延在するとともに、第1方向に間隔をあけて複数形成されている。
例えば、上述した実施形態では、凹部の断面視形状が矩形状に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば図15に示す三角形状の凹部260や、図16に示す台形状の凹部261、図17に示す逆台形状の凹部262、図18に示す半円形状の凹部263等、適宜変更が可能である。但し、凹部は、開口部の寸法が最大になるように形成した方が、摩耗粉が収容され易くなる。
2…ムーブメント
51…調速脱進機
52…てんぷ
53…がんぎ車
54…アンクル
68…振り石
100…クワガタ
101…クワガタ
105…アンクルハコ
110…第2側面(側面)
111…第3側面(側面)
120,200,210,220,245,250,260,261,262,263…凹部
230…摺動領域
240…摺動領域
240a…摺動面
240b…逃げ面
Claims (4)
- てんぷの振り石が係脱するアンクルハコの側面に、少なくとも前記側面上で開口する凹部が複数形成され、
前記凹部は、前記側面を含む二面以上で開口し、
前記振り石は、前記側面の面内方向のうち第1方向に沿って摺動し、
前記凹部は、前記側面における前記第1方向に沿う前記振り石の摺動領域に形成され、
前記側面の法線方向に前記アンクルハコを貫通し、
前記法線方向から見た側面視で円形状の貫通孔の直径は、5〜10μmであることを特徴とするアンクル。 - 請求項1に記載のアンクルと、
往復回動可能に構成されるとともに、前記アンクルハコに係脱可能な振り石を有するてんぷと、
回転可能に構成されるとともに、前記アンクルのつめ石が係脱可能ながんぎ車と、を備えていることを特徴とする調速脱進機。 - 請求項2に記載の調速脱進機を備えていることを特徴とするムーブメント。
- 請求項3に記載のムーブメントを備えていることを特徴とする時計。
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