以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力装置12と、ディスプレイ13と、装置本体100とを備える。超音波プローブ11は、後述する装置本体100が備える送受信回路110と通信可能に接続される。また、入力装置12、及びディスプレイ13は、装置本体100が備える各種の回路と通信可能に接続される。
超音波プローブ11は、被検体Pの体表面に接触され、超音波の送受信を行う。例えば、超音波プローブ11は、複数の圧電振動子(振動子とも言う)を有する。これら複数の圧電振動子は、送受信回路110から供給される送信信号に基づいて、超音波を発生させる。発生した超音波は、被検体Pの体内組織において反射され、反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。超音波プローブ11は、複数の圧電振動子にて受信した反射波信号を、送受信回路110へ送る。このように、超音波プローブ11は、超音波を送信して反射波を受信する。
なお、第1の実施形態では、超音波プローブ11は、被検体P内の2次元領域を走査(2次元走査)する1Dアレイプローブであってもよいし、被検体P内の3次元領域を走査(3次元走査)するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであってもよい。また、超音波プローブ11は、リニアプローブ、コンベックスプローブ及びセクタプローブであってもよい。
入力装置12は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等に対応する。入力装置12は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100の各回路に対して適宜転送する。
ディスプレイ13は、操作者が入力装置12を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データに基づく画像(超音波画像)等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波信号に基づいて、超音波画像データを生成する装置である。図1に示すように、装置本体100は、例えば、送受信回路110と、Bモード処理回路120と、ドプラ処理回路130と、画像生成回路140と、画像メモリ150と、記憶回路160と、処理回路170とを有する。送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、画像生成回路140、画像メモリ150、記憶回路160、及び処理回路170は、互いに通信可能に接続される。
送受信回路110は、超音波プローブ11による超音波の送受信を制御する。例えば、送受信回路110は、送信回路111と受信回路112とを有し、後述する処理回路170の指示に基づいて、超音波プローブ11が行う超音波送受信を制御する。
送信回路111は、送信波形データを作成し、作成した送信波形データから超音波プローブ11が超音波を送信するための送信信号を生成する。そして、送信回路111は、超音波プローブ11に送信信号を印加することで、超音波がビーム状に集束された超音波ビームを送信させる。
受信回路112は、超音波プローブ11が受信した反射波信号に所定の遅延時間を与えて加算処理を行うことで、反射波信号の受信指向性に応じた方向から反射成分が強調された反射波データを生成し、生成した反射波データをBモード処理回路120及びドプラ処理回路130に送信する。
例えば、受信回路112は、アンプ回路(適宜「Amp」と記載する)、A/D(Analog/Digital)変換器(適宜「ADC」と記載する)、直交検波回路(適宜「IQ」と記載する)等を有する。アンプ回路は、反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。
そして、直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(以下、IQ信号と記載する)を反射波データとして、バッファに格納する。
このような送受信回路110において、送信回路111は、超音波プローブ11が有する複数の振動子を制御して平面波の超音波を送信或いは拡散波の超音波(平面波の超音波送信に類似する広範囲に渡る超音波)を送信させる。例えば、送信回路111は、処理回路170の制御により、平面波の超音波を超音波プローブ11に送信させたり、拡散波の超音波を超音波プローブ11に送信させたりする。
ここで、例えば、超音波プローブ11としてリニアプローブを用いたリニアスキャン時に平面波送信を行う場合には、送信回路111は、開口内の振動子群で同時刻に超音波を送信させる。また、例えば、超音波プローブ11としてコンベックスプローブを用いたコンベックススキャン時に拡散波送信を行う場合にも同様に、送信回路111は、開口内の振動子群で同時刻に超音波を送信させる。また、例えば、超音波プローブ11としてセクタプローブを用いたセクタスキャン時に拡散波送信を行う場合には、送信回路111は、送信遅延制御を行って拡散波の超音波を送信させる。
図2は、セクタプローブを用いたセクタスキャン時に拡散波送信を行う場合の送信遅延制御を説明するための図である。図2では、x軸上に8つの振動子を示す。図2に示すように、送信回路111は、振動子の後方に仮想の送信フォーカス位置(0,z0)を設定して、振動子後方から波面が伝播しているかのような送信遅延制御を行って拡散波送信を行う。図2の例では、送信回路111は、仮想の送信フォーカス位置(0,z0)から角度θの範囲において同心円状に超音波が拡散するような送信遅延制御を行って、開口幅Dの8つの振動子から拡散波の超音波を送信させる場合を示す。
そして、受信回路112は、超音波を送信した複数の振動子で同時に反射波信号を受信する超音波走査を超音波プローブ11に実行させる。そして、受信回路112は、超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波信号から複数チャネルの受信信号を生成する。なお、以下では、送信回路111に平面波の超音波を送信或いは拡散波の超音波を送信させて、かつ、受信回路112に超音波を送信した複数の振動子で同時に反射波信号を受信させる超音波走査のことを、「全ラスタ並列同時受信」と呼ぶ。なお、全ラスタ並列同時受信では、超音波プローブ11が有する複数の振動子の全てを同時に使用するものに限定されるものではない。例えば、超音波プローブ11が有する複数の振動子をブロックに分け、ブロック単位で振動子を使用して全ラスタ並列同時受信の超音波走査を行うようにしてもよい。
更に、送信回路111は、処理回路170の制御により、フレーム間のデータ列をドプラデータ列として使用する超音波走査(以下、「高フレームレート用超音波走査」と記載する)を超音波プローブ11に実行させる(特許第3724846号公報,特開2014−42823号公報を参照)。例えば、送信回路111は、処理回路170の制御により、第1走査範囲内の移動体の運動に関する情報を取得する第1超音波走査を超音波プローブ11に実行させ、第2走査範囲内の組織形状の情報を取得する第2超音波走査として当該第2走査範囲を分割した複数の分割範囲それぞれの超音波走査を、第1超音波走査の間に時分割で超音波プローブ11に実行させる。なお、高フレームレート用超音波走査を利用した血流映像法のことを「高フレームレート法」と呼ぶ。
Bモード処理回路120は、受信回路112が反射波信号から生成した反射波データに対して各種の信号処理を行う。Bモード処理回路120は、受信回路112から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点(観測点)ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路120は、生成したBモードデータを画像生成回路140へ送る。
また、Bモード処理回路120は、高調波成分を映像化するハーモニックイメージングを行うための信号処理を行なう。ハーモニックイメージングとしては、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や組織ハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)が知られている。また、コントラストハーモニックイメージングや組織ハーモニックイメージングには、スキャン方式として、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)、「Pulse Subtraction法」や「Pulse Inversion法」と呼ばれる位相変調(PM:Phase Modulation)、AMとPMとを組み合わせることで、AMの効果及びPMの効果の双方が得られるAMPMが知られている。
ドプラ処理回路130は、受信回路112から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、ドプラ処理回路130は、移動体の運動情報として、平均速度、分散値、パワー値等を各サンプル点で抽出したドプラデータを生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。ドプラ処理回路130は、生成したドプラデータを画像生成回路140へ送る。
画像生成回路140は、Bモード処理回路120やドプラ処理回路130が生成したデータから超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成したBモードデータから、反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成したドプラデータから、移動体情報(血流情報)を表すドプラ画像データを生成する。このドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。すなわち、画像生成回路140は、血流情報から血流画像を生成する。
画像メモリ150は、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、及び画像生成回路140により生成されたデータを記憶するメモリである。例えば、画像メモリ150は、画像生成回路140により生成された超音波画像データを、被検体Pの心電波形に対応付けて記憶する。
記憶回路160は、各種データを記憶する記憶装置である。例えば、記憶回路160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路160に記憶されるデータは、図示しないインタフェース部を介して、外部装置へ転送することができる。
また、記憶回路160は、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、及び画像生成回路140により生成されたデータを記憶する。例えば、記憶回路160は、操作者により指定された所定心拍分の超音波画像データを記憶する。
処理回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力装置12を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路160から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づいて、送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、及び画像生成回路140等の処理を制御する。また、処理回路170は、画像メモリ150が記憶する超音波画像データをディスプレイ13に表示させる。例えば、処理回路170は、画像メモリ150が記憶するBモード画像データをディスプレイ13に表示させる。また、処理回路170は、画像メモリ150が記憶するドプラ画像データをディスプレイ13に表示させる。
例えば、処理回路170は、送信回路111及び受信回路112を制御して、全ラスタ並列同時受信を超音波プローブ11に実行させる。すなわち、処理回路170は、送信回路111に平面波の超音波を送信或いは拡散波の超音波を送信させて、かつ、受信回路112に超音波を送信した複数の振動子で同時に反射波信号を受信させる。また、例えば、処理回路170は、送信回路111を制御して、高フレームレート用超音波走査を超音波プローブ11に実行させる。すなわち、処理回路170は、第1走査範囲内の移動体の運動に関する情報を取得する第1超音波走査を超音波プローブ11に実行させ、第2走査範囲内の組織形状の情報を取得する第2超音波走査として当該第2走査範囲を分割した複数の分割範囲それぞれの超音波走査を、第1超音波走査の間に時分割で超音波プローブ11に実行させる。また、例えば、処理回路170は、送信回路111及び受信回路112を制御して、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法を超音波プローブ11に実行させる。
なお、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路160に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
このように構成される超音波診断装置1では、超音波を用いて血流を映像化する手法(カラードプラ法)は広く一般的に使用されている。ここで、Bモード像は60dBもの広いダイナミックレンジの信号を表示するが、血流像の場合は20dB程度の狭い範囲の信号を表示する。このため、例えば、平面波送信或いは拡散波送信を行って1回の送信で超音波フレーム内の全受信ラスタで反射波信号をリアルタイムに受信する超音波走査(全ラスタ並列同時受信)を行った場合、Bモード像では明らかに方位方向の分解能低下が認められるが、血流像では方位方向の分解能の低下はあまり認められない。
このように、血流像においては方位方向の分解能低下は大きな問題にならないので、平面波或いは拡散波送信による血流表示は、多くの場合で有用な臨床画像を提供できる可能性がある。しかしながら、全ラスタ並列同時受信では、心臓の弁や壁といった鏡面反射体(強反射体)からの信号が血流像の中にアーティファクトになって現れる場合がある。
図3及び図4は、鏡面反射体によるアーティファクトの一例を示す図である。図3及び図4では、血流情報をパワー表示した場合の一例を示す。図3では、コンベックスプローブを用いて拡散波送信を行って、肝臓の血流信号を表示した画像の一例を示す。図3では、円弧状にアーティファクトAF−1及びAF−2が発生している。図4ではセクタプローブを用いて拡散波送信を行って心臓の血流信号を表示した画像を示す。図4では、図3と同様に円弧状にアーティファクトAF−3及びAF−4が発生している。
ところで、このような円弧状のアーティファクトの低減を試みる方法が開示されている。例えば、非特許文献1に記載の第1の方法では、MTIフィルタのカットオフ周波数をBモードの心臓の動きに応じて変化させることで、円弧状のアーティファクトを低減させる。
この第1の方法では、円弧状のアーティファクトが発生するのは弁等の強反射体が高速に移動する時相であり、この時相はMTIフィルタのカットオフ周波数を上げることでアーティファクトの発生を抑圧している。しかし、カットオフ周波数を上げることは血流信号も抑圧することになり、血液の流れの観察や2次元速度ベクトルの計算に支障がある場合がある。また、MTIフィルタのカットオフ周波数を上げても、円弧状のアーティファクトを完全には除去することはできない。
また、非特許文献2に記載の第2の方法は、複数の方向から平面波を送信して位置補正後にコヒーレントに加算することで通常の送信フォーカスと同等以上の性能を得るものであり、至極まっとうな方法である。しかし、第2の方法では、複数の送信を行うためにフレームレートが低下するという問題がある。更に、受信信号を加算するということはドプラ信号に対してLPF(Low Pass Filter)を掛けることになるので、高流速の血流が除去されてしまうという問題がある。この2つの問題は、目視で血液の流れを観察したり、2次元速度ベクトルを計算したりする上では看過できない問題である。
なお、サイドローブ低減という目的に対しては、MV(Minimum Variance)法、APES(Amplitude and Phase Estimation)法、PCI(Phase Coherence Imaging)法といったアダプティブビームフォーミングの技術が知られている。しかし、MV法,APES法,PCI法といったアダプティブビームフォーミングを試みてみたが、円弧状のアーティファクトはほとんど低減しなかった。
このようなことから、例えば、図3及び図4に示すような、平面波或いは拡散波送信を行って全ラスタ並列同時受信で血流表示を行った際に発生するアーティファクトを除去することが望まれる。そこで、以下では、強反射体から発生するサイドローブの対策方法について説明する。
まず、図5を用いて、第1の実施形態に係る受信回路112及びドプラ処理回路130の構成例について説明する。図5は、第1の実施形態に係る受信回路112及びドプラ処理回路130の構成例を示す図である。振動子は、送信回路111から供給される送信信号に基づいて、超音波を発生させる。発生した超音波は、被検体Pの体内組織において反射され、反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。振動子は、受信した反射波信号を、受信回路112へ送る。なお、図5では、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明する。
送信回路111は、処理回路170の制御により、フレーム間のデータ列をドプラデータ列として使用する超音波走査を超音波プローブ11に実行させる(特許第3724846,特開2014−42823号公報を参照)。そして、受信回路112は、超音波プローブ11に超音波を送受信させるごとに1フレームをスキャンして1フレーム分の受信信号を生成する。
また、送信回路111は、超音波プローブが有する複数の振動子を制御して超音波を送信させる。例えば、送信回路111は、超音波プローブ11が有する複数の振動子を制御して平面波の超音波を送信或いは拡散波の超音波を送信させる。そして、受信回路112は、超音波を送信した複数の振動子で同時に反射波信号を受信する超音波走査を超音波プローブ11に実行させる。
図5に示すように、受信回路112は、N個の振動子(振動子−1、・・・振動子−N)に接続される。なお、各振動子は、各チャネルに対応する。また、図5に示すように、受信回路112は、振動子−1により受信された反射波信号を処理するためのサブ回路として、アンプ回路201−1(図5中ではAmpと記載)と、A/D変換器202−1(図5中ではADCと記載)と、直交検波回路203−1(図5中ではIQと記載)とを有する。同様に、受信回路112は、振動子−Nにより受信された反射波信号を処理するためのサブ回路として、アンプ回路201−N(図5中ではAmpと記載)と、A/D変換器202−N(図5中ではADCと記載)と、直交検波回路203−N(図5中ではIQと記載)とを有する。
ここで、アンプ回路201−1とアンプ回路201−Nとを区別しない場合には、アンプ回路201と記載し、A/D変換器202−1とA/D変換器202−Nとを区別しない場合には、A/D変換器202と記載し、直交検波回路203−1と直交検波回路203−Nとを区別しない場合には、直交検波回路203と記載する。すなわち、受信回路112には、アンプ回路201とA/D変換器202と直交検波回路203とが、振動子(チャネル)ごとに設けられる。なお、上述したように、アンプ回路201は、反射波信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。また、A/D変換器202は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。直交検波回路203は、反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路203は、変換したI信号及びQ信号をドプラ処理回路130に送る。また、直交検波回路203は、変換したI信号及びQ信号をビームフォーマー204に送る。
ビームフォーマー204は、ビームフォーミング機能を実行する。すなわち、ビームフォーマー204は、直交検波回路203により変換された各チャネルのI信号及びQ信号を用いた整相加算処理により、反射波データを生成する。ビームフォーマー204は、生成した反射波データをBモード処理回路120に出力する。
ドプラ処理回路130は、振動子−1により受信された反射波信号に対する処理を実行するサブ回路として、メモリ131−1とMTIフィル132−1とを有する。また、ドプラ処理回路130は、振動子−Nにより受信された反射波信号に対する処理を実行するサブ回路として、メモリ131−NとMTIフィルタ132−Nとを有する。ここで、メモリ131−1とメモリ131−Nとを区別しない場合には、メモリ131と記載し、MTIフィルタ132−1とMTIフィルタ132−Nとを区別しない場合には、MTIフィルタ132と記載する。なお、MTIフィルタのことをフィルタ処理回路とも言う。また、ドプラ処理回路130は、ビームフォーマー133と自己相関回路134と算出回路135とを有する。
メモリ131は、各チャネルの複数フレーム分の受信信号をメモリに保持する。なお、メモリ131は、各チャネルの複数フレーム分の受信信号を格納可能な容量を有するものとする。
MTIフィル132は、MTIフィルタ機能を実行する。血流表示を行うためのスキャンには種々の方法があるが、ここでは高フレームレート法について説明する。すなわち、MTIフィルタ132は、組織由来の信号を抑圧するフィルタをフレーム間で掛けて第1の血流信号を抽出する。例えば、1回の送信で全ラスタ並列同時受信を行って得られた1フレームの画像をメモリ131に数フレーム分記憶しておき、フレーム間でフィルタ処理を行うことによって組織からの信号を除去する。言い換えると、MTIフィル132は、フレーム間のデータ列をドプラデータ列としてフィルタ処理を行う。MTIフィル132は、これらのフィルタ処理をチャネル毎に行う。ここで、MTIフィル132は、静止又は動きの小さい信号を除去するフィルタ処理を行う。例えば、MTIフィル132は、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタでもよいし、特開2014−158698号公報にて開示されているような主成分分析によるフィルタでもよい。
補正回路300は、強反射体から発生するサイドローブを抑圧する補正処理を実行する。なお、補正回路300の詳細については後述する。ビームフォーマー133は、ビームフォーミング機能を実行する。すなわち、ビームフォーマー133は、補正回路300による補正処理後の各チャネルの反射波信号を用いた整相加算処理により、反射波データを生成する。ビームフォーマー133は、生成した反射波データを自己相関回路134に出力する。
自己相関回路134は、ビームフォーマー133により生成された反射波データを用いて、自己相関演算を行い、算出回路135は、血流信号の速度(V)、パワー(P)、分散(T)を推定する。すなわち、算出回路135は、第2の血流信号から血流情報を算出する。
ところで、平面波或いは拡散波送信で全ラスタ並列同時受信を行って血流表示を行った場合に、強反射体から発生するサイドローブの発生の機序については、解明されていなかった。また、本出願人は、特願2015−181125及び特願2015−181126で、円弧状アーティファクトの原因を回路の飽和と推定してアーティファクトを低減する方法を提案した。しかし、その後の調査により、回路が飽和していなくても円弧状アーティファクトが発生する場合があり、回路が飽和するとアーティファクトがより顕著になるということを突き止めた。そこで、平面波或いは拡散波送信で全ラスタ並列同時受信を行って血流表示を行った場合に、強反射体から発生するサイドローブの発生の機序について説明し、次いで強反射体から発生するサイドローブの対策方法について説明する。
まず、強反射体から発生するサイドローブを抑圧する補正処理の説明に先立って、アーティファクトの発生機序を説明する。ここでは、アーティファクトの発生機序を説明するために、MTIフィルタ132を通過後の信号とアーティファクトの関係について説明する。図6から図9は、アーティファクトの発生機序を説明するための図である。
図6では、セクタプローブで拡散波を送信した場合に、心臓内にアーティファクトが現れている画像を示す。なお、図6に示す各画像はすべて対数圧縮を行って表示している。
図6では、左側から順にCH−B画像、CH−血流画像、BF後−B画像、BF後−血流画像、SC後−B画像、SC後−血流画像を示す。
CH−B画像は、直交検波回路203により出力された各チャネルの信号の振幅を画像化したものである。CH−血流画像は、MTIフィルタ132を通過後の信号の振幅を画像化したものである。なお、CH−B画像及びCH−血流画像では、横方向がチャネル方向を示し、縦方向が深さ(時間)を示す。また、CH−血流画像は、対数圧縮後の画像でもよいが、対数圧縮前の振幅の画像を使用した方が後述の直線検出の感度が高いので好適である。
BF後−B画像は、ビームフォーマー204によりビームフォーミングされた後の信号を画像化したものである。BF後−血流画像は、ビームフォーマー133によりビームフォーミングされた後の信号を画像化したものである。SC後−B画像は、ディスプレイ13用に信号を座標変換した後のBモード画像であり、SC後−血流画像は、ディスプレイ13用に信号を座標変換した後の血流画像である。
ここで、図6のSC後−B画像において囲んだ領域6aは、心臓の弁を示す。また、図6のSC後−血流画像において囲んだ領域6bには円弧状のアーティファクトが発生している。また、SC後−血流画像において、SC後−B画像の領域6aに対応する領域を領域6cで示す。図6のSC後−B画像とSC後−血流画像とを見比べると、SC後−血流画像において見える円弧状のアーティファクトと、SC後−B画像において囲んだ領域6aとが重なる位置関係にある。このため、SC後−血流画像において囲んだ領域6bに見える円弧状のアーティファクトは、SC後−血流画像において囲んだ領域6cの心臓の弁が原因であることが分かる。
また、図6のCH−血流画像には、チャネル方向に水平な線6dが表示されている。ここで、CH−B画像には、CH−血流画像において見られる線を観察できないことから、図6のCH−血流画像における線6dは、MTIフィルタ132を通過した信号である。すなわち、図6のCH−血流画像における線6dは、移動体に由来する信号である。また、図6のSC後−B画像から、この移動体が心臓の弁であると特定できる。
図6のCH−血流画像において表示される線が常にチャネル方向に水平な直線であるかを別の画像で検証した例について説明する。図7では、図6と同様に、セクタプローブで拡散波を送信した場合に、心臓内にアーティファクトが現れている画像を示す。なお、図7で示す画像はすべて対数圧縮を行って表示している。また、図7では、図6と同様に、左側から順にCH−B画像、CH−血流画像、BF後−B画像、BF後−血流画像、SC後−B画像、SC後−血流画像を示す。図7に示すCH−B画像、CH−血流画像、BF後−B画像、BF後−血流画像、SC後−B画像、SC後−血流画像は、図6に示すCH−B画像、CH−血流画像、BF後−B画像、BF後−血流画像、SC後−B画像、SC後−血流画像と同様であるので、詳細な説明を省略する。
図7のSC後−B画像において、画像のセンターから左右にほぼ対称な位置に強輝度の心臓壁7a及び心臓壁7bがある。また、図7のSC後−血流画像において囲んだ領域7cには円弧状のアーティファクトが発生している。また、SC後−血流画像において、SC後−B画像の領域7bに対応する領域を領域7dで示す。SC後−血流画像において見える円弧状のアーティファクトと、SC後−B画像における右側の心臓壁7bとが重なる位置関係にある。このため、SC後−血流画像における円弧状のアーティファクトは、右側の心臓壁7bの部分が原因であることが分かる。
また、図7のCH−血流画像において、チャネル方向に水平な線7eが表れている。ここで、SC後−血流画像において、左側の心臓壁はほとんど見えないので、図7のCH−血流画像におけるチャネル方向に水平な線7eは、右側の心臓壁からの反射エコーが原因で現れていることが分かる。
一方、図7のCH−B画像において、領域7fで示す右肩下がりの信号が現れている。SC後−B画像において、左側の心臓壁7a付近の信号強度は周囲より高いから、CH−B画像の領域7fで見える右肩下がりの信号は、左側の心臓壁7aが原因であることが分かる。SC後−B画像で左側の心臓壁7aの位置にある反射源から各チャネルで受信するエコー信号は、左側のチャネルは反射源からの距離が短いので早く反射波を受信し、右側のチャネルは反射源からの距離が長いので遅れて反射波受信することになるので、CH−B画像の領域7fの様に右肩下がりの信号になるのは自然である。
また、図7のSC後−B画像において、左側の心臓壁7aと対称の位置にある右側の心臓壁7bの位置にある反射源からのエコー信号では、右側のチャネルは反射源からの距離が短いので早く反射波を受信し、左側のチャネルは反射源からの距離が長いので遅れて反射波受信することになり、左肩下がりの信号になるはずである。しかしながら、SC後−B画像において、右側の心臓壁7bの位置にある反射源からのエコー信号が、図7のCH−血流画像では、異常なことに水平の直線状になっている。
上述した説明では、反射源からの受信エコーを、DAS(delay and sum)ビームフォーマーで想定しているような点反射体から発生する球面波と考えてきた。通常の送信フォーカスを掛けた場合には、主に送信ビーム上からエコーが返ってくる。したがって、反射源からの受信エコーを点反射体から発生する球面波と考えるのは自然である。また、平面波を送信する場合或いは拡散波を送信する場合であっても、散乱体や点反射体からのエコーはある1点からエコーが球面波で帰ってくると考えてよい。
次に、反射源が鏡面反射体である場合の受信エコーについて検討する。図8では、リニアプローブでのリニアスキャン時に平面波の送信波面が鏡面反射体に対して垂直に入射して反射する場合を示す。図8では、破線で送信波面を示し、実線で受信波面を示す。送信波面が鏡面反射体に垂直に入射して反射すると、実線で示すように平面波で反射する。ここで、鏡面反射体の表面を多数の点反射体の集合として置き換えても、ホイヘンスの原理から波面の先端は直線になると理解できる。なお、厳密には鏡面反射体の端部で送信波面が回折するが、ここでは送信波面の回折を無視する。
このような平面波の受信信号は、各チャネルで同一時刻(深さ)にエコーが入力されるから、図6のCH−血流画像や図7のCH−血流画像に現れるような、各チャネルの信号画像がチャネル方向に水平な直線のパターンになる。つまり、チャネル方向に水平な直線は、平面波を送信した場合に、鏡面反射体からの反射エコーが球面波ではなく、平面波であることに起因する。鏡面反射は、角度がわずかでも異なると反射方向が変わるので、定常的にアーティファクトが発生するのではなく、ちょうど角度が合った一瞬だけアーティファクトを発生する。これは実際の現象と一致する。なお、セクタプローブでのセクタスキャン時に拡散波を送信する場合も、座標変換する前の状態で考えれば、図8に示す、リニアプローブでのリニアスキャン時に平面波を送信する場合と同様に考えることができる。
なお、通常の送信フォーカスを行っている場合には、仮に上述の鏡面反射体からのアーティファクトが発生したとしても問題が顕在化しない。図9では、通常の送信フォーカスを行っている場合を示す。図9に示す通常の超音波送信では、超音波の受信ラスタと同じラスタ上に送信フォーカスを掛けて、1送信につき1ラスタで受信する。つまり送信と受信の双方によってフォーカスが掛かるために、送受音場のサイドローブレベルは低く、ほぼラスタ上にある反射体の反射波信号だけを受信する。このような場合、鏡面反射体からの信号は送信ビーム内にしか広がらないので、仮にアーティファクトが見えたとしても並列同時受信数内のラスタ(通常1〜4)にしか現れない。一方で、図8に示すように、全ラスタ並列同時受信では、同一の送信ビームなので全ラスタに影響が及び、円弧状のアーティファクトが発生する。
このように、平面波を送信した際に、鏡面反射体からの反射エコーが平面波である場合に、各チャネルの信号画像においてチャネル方向に水平な直線パターンのアーティファクトが発生する。そこで、第1の実施形態では、ドプラ処理回路130は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。或いは、ドプラ処理回路130は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。
以下では、第1の実施形態に係るドプラ処理回路130の処理の詳細について説明する。より具体的には、MTIフィルタ132によるフィルタ処理後の信号に対する第2の血流信号抽出処理について説明する。図10から図13は、第1の実施形態を説明するための図である。図10では、セクタプローブで拡散波を送信した場合に、心臓内にアーティファクトが現れている画像を示す。なお、図10で示す画像はすべて対数圧縮を行って表示している。
図10では、左側から順にCH−血流画像、CH−血流画像(直線検出)、CH−血流画像(直線抽出)、CH−血流画像(補正後)、SC後−血流画像(未補正)、SC後−血流画像(補正後)を示す。図10のCH−血流画像の画像は図6及び図7のCH−血流画像と同一である。なお、以下に示すCH−血流画像は、横方向にCH(チャネル)方向を取って、縦方向に深さ(時間)を取る。また、以下の図で示すCH−血流画像は見やすいように対数圧縮を行って表示しているが、補正回路300で生成するCH−血流画像は対数圧縮を行わない振幅信号を使用するものとする。
補正回路300は、複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧する。例えば、補正回路300は、第1の血流信号からCH−血流画像を生成する。ここで、補正回路300は、各MTIフィルタ132から出力された、チャネル毎の第1の血流信号の振幅を取って、CH−血流画像を生成する。
そして、補正回路300は、CH−血流画像から所定方向の成分を検出する。例えば、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタを掛ける。ここで、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタとして、以下(式1)に示す係数行列を畳み込む。
補正回路300は、ソーベルフィルタを掛けることにより、図10のCH−血流画像(直線検出)を得る。続いて、補正回路300は、CH−血流画像(直線検出)に適切な閾値処理をして2値化した結果を縦方向に膨張処理のモフォロジー・フィルタを掛けてつながりを改善する。これにより、補正回路300は、図10のCH−血流画像(直線抽出)を得る。なお、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するのにソーベルフィルタを使用する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正回路300は、特定の傾きの直線を検出する公知の手法を使用することができる。
そして、補正回路300は、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧する。図11を用いて、補正回路300による抑圧処理を説明する。図11では、横軸に入力値を示し、縦軸に出力値を示す。図11に示すように、補正回路300は、図10のCH−血流画像(直線抽出)において、入力値がα未満の場合は入力値を出力するが、入力値がα以上の信号に対しては抑圧する。たとえば入力値を1/4(−12dB)にする。すなわち、補正回路300は、入力値に応じて抑圧値を変えるように制御する。これにより、アーティファクトが発生する位置により画像のゲイン変化の不自然さを低減することができる。このような抑圧処理により、補正回路300は、図10のCH−血流画像(補正後)を得る。図10のCH−血流画像(補正後)では、補正回路300は、検出した領域の振幅値を−12dBで抑圧した場合を示す。
ビームフォーマー133は、複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。ビームフォーマー133は、DASによりビームフォーミングを行う。
なお、ビームフォーマー133によるビームフォーミングに続いて、自己相関回路134は、ラグが0及び1の自己相関演算を行う。そして、算出回路135は、血流信号の速度・分散・パワーを血流情報として計算する。これらの信号は、図1の画像生成回路140で座標変換されて画像メモリ150に保存される。そして、処理回路170は、血流画像をディスプレイ13に表示させる。例えば、処理回路170は、図10のSC後−血流画像(補正後)に示す、座標変換後の血流信号のパワー画像をディスプレイ13に表示させる。なお、各MTIフィルタ132から出力された、チャネル毎の第1の血流信号をビームフォーミングして、血流情報を計算した血流画像を、図10のSC後−血流画像(未補正)に示す。言い換えると、図10のSC後−血流画像(未補正)は、MTIフィルタ132によるフィルタ処理後の信号に対する第2の血流信号抽出処理を行わずに、生成した血流画像である。SC後−血流画像(未補正)とSC後−血流画像(補正後)とを比較した場合、SC後−血流画像(未補正)で見られるアーティファクトがSC後−血流画像(補正後)では消えていることが分かる。また、SC後−血流画像(補正後)では、直線を抽出した領域を0にするのではなく1/4の振幅(−12dB)にしているのでつながりも自然である。
図12では、セクタプローブで拡散波を送信した場合に、心臓内にアーティファクトが現れている画像の別例を示す。図12では、動きが大きいクラッタ成分に由来する信号を含んだフレームを示す。なお、図12で示す画像はすべて対数圧縮を行って表示している。図12では、図10と同様に、左側から順にCH−血流画像、CH−血流画像(直線検出)、CH−血流画像(直線抽出)、CH−血流画像(補正後)、SC後−血流画像(未補正)、SC後−血流画像(補正後)を示す。
図12のCH−血流画像の画像は図6及び図7に示すCH−血流画像と同様にして生成される。なお、以下に示すCH−血流画像は、横方向にチャネル方向を取って、縦方向に深さ(時間)を取る。また、以下の図で示すCH−血流画像は見やすいように対数圧縮を行って表示しているが、補正回路300で生成するCH−血流画像は対数圧縮を行わない振幅信号を使用するものとする。
補正回路300は、第1の血流信号から図12に示すCH−血流画像を生成する。ここで、補正回路300は、各MTIフィルタ132から出力された、チャネル毎の第1の血流信号の振幅を取って、CH−血流画像を生成する。ここで、図12のCH−血流画像の輝度がかなり明るくなっている。このような場合は、SC後−血流画像(未補正)でモーションアーティファクトが多い画像になってしまう問題があるのと同時に、横流れの大きいサイドローブの多い画像になる。
MTIフィルタ132を通過した後の組織の消え残りは動きやスペックルの位相変化によってチャネル毎に大きく変化する場合がある。このような場合に、例えば1つのチャネルだけに振幅の大きな信号が残ると、DASによるビームフォーミング後には大きなサイドローブになる。このように弁や壁のように反射強度が大きくて動きが大きい組織からの信号であって、MTIフィルタ132を通過した後の消え残りの信号の振幅が大きい場合には、SC後−血流画像(未補正)において、問題が発生する。そこで、DASによるビームフォーミング前に振幅を低減する、高輝度を抑える処理を実行することで、モーションアーティファクトを低減するとともに、サイドローブを低減するという2つの効果が期待できる。
図13では、横軸に入力値を示し、縦軸に出力値を示す。図13に示すように、補正回路300は、図12のCH−血流画像において、入力値がα以上である信号について、予め決められた方法で入力値を抑圧した出力値を出力する。すなわち、補正回路300は、入力値に応じて抑圧値を変えるように制御する。これにより、アーティファクトが発生する位置により画像におけるゲイン変化の不自然さを低減することができる。このような抑圧処理により、補正回路300は、図12のCH−血流画像の振幅を低減する。更に、この高輝度を抑える処理により、補正回路300は、直線を検出する際の閾値を、最大値に対する所定の割合とすることが可能になり、処理をロバスト最適化できる。
図12のSC後−血流画像(未補正)において、心腔内に見える円弧状のアーティファクトは、弁が原因である。しかし、CH−血流画像(直線抽出)において、弁に対応する部分に直線を検出していない。SC後−血流画像(補正後)では、SC後−血流画像(未補正)と比較してアーティファクトが低減している。このアーティファクトの低減は、直線を検出して抑圧したことによる効果ではなく、高輝度の信号を抑圧する処理により得られる効果である。このように、各チャネルのMTIフィルタ132の出力値が大きい信号を抑圧することで、サイドローブを低減したり、アーティファクトを低減したりすることができる。また、図12のSC後−血流画像(未補正)において、画像下部の心臓壁のモーションアーティファクトによる高輝度な部分も、高輝度を抑える処理によって輝度が低下し、モーションアーティファクトを大幅に低減している。
図14は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。なお、図14では、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明する。図14に示すステップS1は、送信回路111により実現されるステップである。ステップS1では、送信回路111は、超音波プローブ11に平面波又は拡散波の超音波を送信させる。
ステップS2は、受信回路112により実現されるステップである。ステップS2では、受信回路112は、反射波信号を受信して受信信号を生成する。受信回路112は、生成した受信信号をドプラ処理回路130に出力する。これにより、各チャネルの受信信号は、各振動子に対応するメモリ131に格納される。なお、受信回路112は、ビームフォーマー204を介して、生成した受信信号をBモード処理回路120に出力する。
ステップS3及びステップS4は、MTIフィルタ132により実現されるステップである。ステップS3では、MTIフィルタ132は、各チャネルの受信信号をメモリ131から取得する。例えば、MTIフィルタ132−1は、振動子−1に対応するメモリ131−1から受信信号を取得し、MTIフィルタ132−Nは、振動子−Nに対応するメモリ131−Nから受信信号を取得する。
ステップS4では、MTIフィルタ132は、第1の血流信号を抽出する。例えば、MTIフィルタ132は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出する。
ステップS5では、ドプラ処理回路130は、第2の血流信号抽出処理を実行する。図15は、第1の実施形態に係るドプラ処理回路による第2の血流信号抽出処理の手順を示すフローチャートである。なお、図15に示す処理は、図14に示すステップS5の処理に対応する。
図15に示すステップS101からステップS104は、補正回路300により実現されるステップである。ステップS101では、補正回路300は、第1の血流信号からCH−血流画像を生成する。ここで、補正回路300は、各MTIフィルタ132から出力された、チャネル毎の第1の血流信号の振幅を取って、CH−血流画像を生成する。
ステップS102では、補正回路300は、振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧する。例えば、補正回路300は、CH−血流画像の入力値が所定の閾値以上である信号について、所定の比率を入力値に掛けて抑圧した出力値を出力する。言い換えると、補正回路300は、複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧する。
ステップS103では、補正回路300は、所定方向の成分を検出する。例えば、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタをCH−血流画像に掛ける。ここで、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタとして、上記(式1)に示す係数行列を畳み込む。そして、補正回路300は、この出力に適切な閾値処理をして2値化した結果を縦方向に膨張処理のモフォロジー・フィルタを掛けてつながりを改善する。
ステップS104では、補正回路300は、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧する。ステップS105では、ビームフォーマー133は、複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。
ステップS105は、ビームフォーマー133により実現されるステップである。ビームフォーマー133は、DASによりビームフォーミングを行う。すなわち、ビームフォーマー133は、複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧した後に、所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。なお、補正回路300は、図15に示す、ステップS102の処理、或いは、ステップS103及びステップS104の処理のいずれか一方を省略してもよい。すなわち、ビームフォーマー133は、複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。或いは、ビームフォーマー133は、複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。
図14に戻る。ステップS6は、算出回路135により実現されるステップである。ステップS6では、算出回路135は、第2の血流信号から血流情報を算出する。例えば、算出回路135は、血流情報として、血流信号の速度(V)、パワー(P)、分散(T)を推定する。
ステップS7は、画像生成回路140により実現されるステップである。ステップS7では、画像生成回路140は、血流情報から血流画像を生成する。ステップS8は、処理回路170により実現されるステップである。ステップS8では、処理回路170は、血流画像をディスプレイ13に表示させる。
ここで、超音波走査のフレームレートが6000fpsであり、表示レートが60fpsの場合、リアルタイムでディスプレイ13に表示される情報は、超音波走査したフレームのうち僅かなフレームになる。このようなことから、処理回路170は、心臓の血液の流れを観察する場合には、超音波走査をフリーズした後に6000fps或いは1/10に間引いた600fpsの情報をスローで再生する。こうすることで、操作者は、血液の流れを目視で観察することができる。このように、スローで再生する場合は、6000fpsもしくは600fpsの画像が必要になる。この場合、処理回路170は、リアルタイムで必要なフレーム数の画像を生成してもよいし、メモリ131に1心拍分のデータを保存しておいて、フリーズ後に1心拍分の画像を生成するようにしてもよい。
なお、処理回路170は、超音波走査をフリーズした後にスローモーション表示を行う代わりに、超音波の送受信を実行中は、1心拍に要する時間に所定の係数を掛けた時間で、1心拍分の血流画像をディスプレイ13に表示させるようにしてもよい。例えば、処理回路170は、特開2001−178723号公報に開示されているような方法でスキャン時に1心拍をN心拍の時間を掛けて表示することでN倍のスローモーション表示を行う。
また、処理回路170は、血流画像間でスペックルの動きを追跡することにより血液の流れを示す2次元ベクトルを特定し、特定した2次元ベクトルをディスプレイ13に表示させるようにしてもよい。例えば、処理回路170は、6000fpsもしくは間引いた600fpsの画像から相互相関法によって血液のスペックルの動きを追跡して血液の流れを2次元ベクトル表示する。
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。或いは、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。この結果、第1の実施形態によれば、平面波或いは拡散波送信を送信した場合に、鏡面反射体によるアーティファクトを低減することができる。この結果、アーティファクトによる影響の少ない血流画像をディスプレイ13に表示させることができる。
また、第1の実施形態では、MTIフィルタ132によるフィルタ処理後のCH−血流画像において、水平方向の直線となる信号を抑圧する。この結果、第1の実施形態によれば、鏡面反射による送信サイドローブを低減することができる。
また、第1の実施形態では、MTIフィルタ132によるフィルタ処理後のCH−血流画像で振幅の大きい信号を抑圧する。この結果、第1の実施形態によれば、強反射体による送信サイドローブを低減することができる。
また、散乱体からの散乱エコーの場合にはCH−血流画像では明瞭な線となって現れない。CH−血流画像において明瞭な直線が現れるのは鏡面反射エコーのみである。このため、上述した実施形態は、血流像においては有効に機能する。なお、上述した実施形態は、Bモード像においては適応が難しい場合がある。
また、MV法、APES法、PCI法では、受信遅延後で加算前の信号に対してアダプティブビームフォーミングを行う。しかし、鏡面反射体からの信号は平面波なので球面波を想定した通常の受信遅延では位相が揃わない。このため、MV法、APES法、PCI法では鏡面反射によるアーティファクトを低減できない。
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態では、リニアプローブで平面波送信を行った場合や、セクタプローブで拡散波送信を行った場合に、鏡面反射体に平面波が垂直に入射する場合を示した。かかる場合、受信信号のチャネル方向に水平な直線成分が、血流画像におけるアーティファクトの原因となった。ところで、リニアプローブで平面波送信を行った場合に、鏡面反射体に斜めに平面波が入射する場合がある。そこで、鏡面反射体に斜めに平面波が入射した場合を図16に示す。図16は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図16では、超音波プローブ11が有する振動子のうち12個の振動子を示す。また、図16では、鏡面反射体が振動子のチャネル方向に対して、傾いている場合を示す。図16では、破線で送信波面を示し、実線で受信波面を示す。図16に示すように、鏡面反射体に斜めに平面波が入射した場合、受信波面は、振動子のチャネル方向に対して、傾いた波面となる。ここで、斜めに反射した波面を受信開口内の受信チャネルで受信できない場合には、アーティファクトの問題は発生しない。しかし、斜めに反射した波面を受信開口内の受信チャネルで受信できる場合には、アーティファクトの問題が発生する。
例えば、斜めに反射した波面が受信開口内にある場合、CH−血流画像における鏡面反射体からの信号は斜めの直線となる。このため補正回路300は、チャネル方向に水平な直線だけを検出するのではなく、ある範囲の傾きを持った直線を検出するようにする。すなわち、補正回路300は、所定方向の成分として、チャネル方向に対する傾きが所定の範囲内の直線となる成分を抽出する。具体的には、補正回路300は、直線検出方向の異なる複数のソーベルフィルタを掛けて結果の論理和を取る。なお、補正回路300は、特定の傾きの直線を検出する公知の手法を用いてもよい。そして、補正回路300は、抽出した成分を第1の血流信号から抑圧する。
上述の第1の実施形態の実現手段として、ハードウエアで行う方式でも、ソフトウエアで行う方式でも良い。例えば、第1の実施形態をソフトウエアで実現する場合、受信回路の後段であってドプラ処理回路の前段に、MTIフィルタ132と、補正回路300と、ビームフォーマー133とに対応する機能を有するビームフォーマーを配置する。このビームフォーマーは、例えば、処理回路とメモリとを有し、例えば、記憶回路160が記憶するプログラムを読み出すことで、MTIフィルタ132と、補正回路300と、ビームフォーマー133とに対応する機能を実行する。
以上の説明では受信回路およびドプラ処理回路はハードウエアで構成されているように記述したが、すべてをハードウエアで行わないで、一部をソフトウエアで行ってもよい。具体的には、図5において、MTIフィルタ132、補正回路300、ビームフォーマー133、自己相関回路134及び算出回路135による処理をソフトウエアで行ってもよい。
また、ソフトウエアでビームフォーミングを行うことで、ドプラ処理回路130は、チャネル毎に同一のハードウエアを持つ必要がなくなる。ソフトウエアはCPUあるいはDSPあるいはGPUのいずれの上で動作してもよい。また、ソフトウエアでビームフォーミングを行う場合に最も負荷の大きい処理は、ビームフォーマー133により実現される処理である。
ここで、全ラスタ並列同時受信で得られるフレームレートを6000fpsとする。また、画像生成回路140で画像を構成してディスプレイ13で表示するレートを60fpsとする。かかる場合、ビームフォーマーは、ビームフォーミングを60fpsで行えば良い。これによってビームフォーミングの処理を1/100に低減することができる。すなわち、ビームフォーマーは、1フレームをスキャンする周期よりビームフォーミングを行う周期を長く設定する。
ここで、受信回路内でビームフォーミングしてドプラ処理回路に受信信号を出力する従来技術では、ビームフォーミングのレートはフレームレートと同じ6000fpsである必要がある。なお、従来技術では、各チャネルの受信信号をビームフォーミングしているので、ドプラ処理回路は1つの受信信号を処理する1系統である。
一方、第1の実施形態のドプラ処理回路130は、チャネル数に対応する受信信号を処理する複数系統である。例えば、チャネル数を100とした場合、従来技術に比べてMTIフィルタ132の処理は100倍の時間が必要になる。しかし、ビームフォーマーを配置して第1の実施形態のドプラ処理回路130をソフトウエアで実現する場合、ビームフォーミングの処理を1/100に低減することができるので、処理時間を1/100に短縮できる。したがって、ビームフォーマーを配置することで、チャネル毎にMTIフィルタ132の処理を行ったとしても、従来技術に比べて、処理負荷を軽減できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、血流のチャネル画像から鏡面反射で発生するチャネル方向に水平な直線を検出した。ところで、心腔内の血流信号と弁からの鏡面反射信号とが混在している場合には、CH−血流画像から直線を検出するのが困難な場合がある。
このようなことから、第2の実施形態として、第1の血流信号(CH−血流画像ではなくIQ信号)をチャネル方向にフーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで血流信号と鏡面反射信号とを分離して直線を検出しやすくする場合について説明する。
なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成は、補正回路300の一部の機能が異なる点を除いて、図1に示した第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明する。また、第1の実施形態と同様に、送信回路111は、処理回路170の制御により、フレーム間のデータ列をドプラデータ列として使用する超音波走査を超音波プローブ11に実行させる。また、送信回路111は、超音波プローブ11が有する複数の振動子を制御して平面波の超音波を送信或いは拡散波の超音波を送信させる。そして、受信回路112は、超音波を送信した複数の振動子で同時に反射波信号を受信する超音波走査を超音波プローブ11に実行させる。
図17は、第2の実施形態を説明するための図である。図17で示す画像はすべて対数圧縮を行って表示している。図17では、左側から順にCH−血流画像、FFT−血流画像、FFT−血流画像(直線検出)、FFT−血流画像(直線抽出)、FFT−血流画像(補正後)、CH−血流画像(補正後)、SC後−血流画像(未補正)、SC後−血流画像(補正後)を示す。なお、以下に示すFFT−血流画像は横方向にチャネル方向を取って、縦方向に深さ(時間)を取る。また、以下の図で示すCH−血流画像は見やすいように対数圧縮を行って表示しているが、補正回路300で生成するCH−血流画像は対数圧縮を行わない振幅信号を使用するものとする。
補正回路300は、各MTIフィルタ132からチャネル毎の第1の血流信号(IQ信号)を取得する。そして、補正回路300は、各MTIフィルタ132から出力されたチャネル毎の第1の血流信号(IQ信号)をチャネル方向にフーリエ変換してFFT−血流画像(第1の変換信号とも言う)を生成する。なお、補正回路300は、各MTIフィルタ132から取得したチャネル毎の第1の血流信号から、CH−血流画像を生成しなくてもよいが、図17には参照用としてCH−血流画像を図示している。
続いて、補正回路300は、FFT−血流画像から所定方向の成分を検出する。ここで、例えば、補正回路300は、所定方向の成分として、チャネル方向に対する傾きが所定の範囲内の直線となる成分を第1の変換信号から抽出する。より具体的には、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタを掛ける。チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタとして、上記(式1)に示す係数行列を畳み込む。補正回路300は、ソーベルフィルタを掛けることにより、図17のFFT−血流画像(直線検出)を得る。続いて、補正回路300は、FFT−血流画像(直線検出)に適切な閾値処理をして2値化した結果を縦方向に膨張処理のモフォロジー・フィルタを掛けてつながりを改善する。これにより、補正回路300は、図17のFFT−血流画像(直線抽出)を得る。なお、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するのにソーベルフィルタを使用する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正回路300は、特定の傾きの直線を検出する公知の手法を使用することができる。
そして、補正回路300は、FFT−血流画像において所定方向の成分を抑圧する。すなわち、補正回路300は、抽出した成分を第1の変換信号から抑圧する。これにより、補正回路300は、図17のFFT−血流画像(補正後)を得る。なお、補正回路300は、図11で説明した抑圧処理と同様にして、FFT−血流画像において所定方向の成分を抑圧する。続いて、補正回路300は、FFT−血流画像(補正後)を逆フーリエ変換(IFFT:Inverse FFT)した信号について、振幅をチャネル方向に画像化したCH−血流画像(補正後)を得る。
ビームフォーマー133は、第1の変換信号において所定方向の成分を抑圧した後に、逆フーリエ変換してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。ここで、図17のSC後−血流画像(未補正)はCH−血流画像をビームフォーミングして座標変換した画像であり、SC後−血流画像(補正後)は、CH−血流画像(補正後)をビームフォーミングして座標変換した画像である。SC後−血流画像(補正後)では、弁のアーティファクトが除去されていることが分かる。
また、CH−血流画像から直線を抽出するより、FFT−血流画像から直線を抽出する方が容易である。具体的には、セクタプローブで拡散波送信を行った第1の血流信号をチャネル方向にフーリエ変換すると、ビームフォーミングしたかのような信号が得られる。エコー源が十分遠距離にある場合には、フラウンホッファー近似が成立して、開口分布のフーリエ変換によってエコー源分布が得られる。エコー源が十分遠距離でない場合でもフーリエ変換によって、CH−血流画像よりもエコー源分布が得られる。これによってCH−血流画像では広く分布していた血流信号を、FFT−血流画像のようにエコー源分布に近い領域に限定することができる。一方、鏡面反射信号は平面波で帰ってくるためにフーリエ変換によってエコー源分布像は得られず、位相はチャネル間で変化しているので全周波数領域にまたがって直線の画像になる。なお、チャネル方向のフーリエ変換によってエコー源分布に近い画像が得られるのはセクタプローブで拡散波送信を行った場合のみで、リニアプローブで平面波送信を行った場合にはエコー源分布に近い画像は得られない。
次に、第2の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を説明する。第2の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順は、図14のステップS5に示す第2の血流信号抽出処理の手順が異なる点を除いて、図14に示す処理の手順と同様である。このため、以下では、第2の実施形態に係る第2の血流信号抽出処理について説明する。図18は、第2の実施形態に係るドプラ処理回路による第2の血流信号抽出処理の手順を示すフローチャートである。なお、図18に示す処理は、図14に示すステップS5の処理に対応する。
図18に示すステップS201からステップS205は、補正回路300により実現されるステップである。ステップS201では、補正回路300は、第1の血流信号をチャネル方向にFFT変換して第1の変換信号を生成する。ここで、補正回路300は、各MTIフィルタ132から出力された、チャネル毎の第1の血流信号をチャネル方向にFFT変換する。これにより、補正回路300は、図17に示すFFT−血流画像を得る。
ステップS202では、補正回路300は、所定方向の成分を検出する。例えば、補正回路300は、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタを第1の変換信号に掛ける。ここで、チャネル方向に水平な直線を検出するソーベルフィルタとして、上記(式1)に示す係数行列を畳み込む。これにより、補正回路300は、第1の変換信号として、図17に示すFFT−血流画像(直線検出)を得る。そして、補正回路300は、この出力に適切な閾値処理をして2値化した結果を縦方向に膨張処理のモフォロジー・フィルタを掛けてつながりを改善する。これにより、補正回路300は、図17に示すFFT−血流画像(直線抽出)を得る。
ステップS203では、補正回路300は、第1の変換信号において所定方向の成分を抑圧する。例えば、補正回路300は、図17に示すFFT−血流画像(補正後)を得る。ステップS204では、補正回路300は、所定方向の成分を抑圧した第1の変換信号をチャネル方向にIFFTする。これにより、補正回路300は、FFT−血流画像(補正後)を逆フーリエ変換した信号について、振幅をチャネル方向に画像化したCH−血流画像(補正後)を得る。
ステップS205は、ビームフォーマー133により実現されるステップである。ステップS205では、ビームフォーマー133は、図17に示すCH−血流画像(補正後)をビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。ビームフォーマー133は、DASによりビームフォーミングを行う。なお、補正回路300は、ステップS201の処理に先立って、図15に示すステップS102の抑圧処理を更に実行してもよい。
上述したように、第2の実施形態では、第1の血流信号をチャネル方向にフーリエ変換することで血流信号と鏡面反射信号とを分離して直線を検出しやすくする。この結果、第2の実施形態によれば、例えば、心腔内の血流信号と弁からの鏡面反射信号とが混在している場合にも、CH−血流画像から直線を検出することが可能になる。これにより、第2の実施形態では、強反射体によるアーティファクトを低減することができる。
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、第1の血流信号をチャネル方向にフーリエ変換して、直線部分の信号を抑圧してから逆フーリエ変換してDASのビームフォーミングを行う場合について説明した。ところで、1回の平面波あるいは拡散波を送信して得られた各チャネルの受信信号を時間方向とチャネル方向の2次元信号とみなして2次元フーリエ変換を行って、2次元周波数空間で座標変換を行った後に2次元逆フーリエ変換を行うことでビームフォーミングが可能であることが知られている(参考文献1「Garcia et al, "Stolt's f-k migration for plane wave ultrasound imaging", IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, 2013, Vol.60, No.9, pp.1853-1867」及び参考文献2「米国特許第6685641号明細書」)。
このようなことから、チャネル方向にフーリエ変換したのなら、更に深さ(時間)方向にフーリエ変換して2次元周波数空間(k空間とも呼ぶ)でビームフォーミングを行った方が効率的である。そこで、第3の実施形態では、チャネル方向にフーリエ変換した後に更に深さ(時間)方向にフーリエ変換してビームフォーミングする場合について説明する。
なお、第3の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成は、ドプラ処理回路の一部の構成が異なる点を除いて、図1に示した第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成と同様である。このため、以下では、第3の実施形態に係るドプラ処理回路の構成について説明する。
図19は、第3の実施形態に係る受信回路112及びドプラ処理回路130の構成例を示すブロック図である。なお、図19に示す受信回路112の構成は、図5に示す受信回路112の構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、図19では、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明する。
ドプラ処理回路130は、図5に示すドプラ処理回路130と同様に、振動子−1により受信された反射波信号に対する処理を実行するサブ回路として、メモリ131−1とMTIフィル132−1とを有し、振動子−Nにより受信された反射波信号に対する処理を実行するサブ回路として、メモリ131−NとMTIフィル132−Nとを有する。なお、メモリ131−1とメモリ131−Nとを区別しない場合には、メモリ131と記載し、MTIフィルタ132−1とMTIフィルタ132−Nとを区別しない場合には、MTIフィル132と記載する。
補正回路400は、強反射体から発生するサイドローブを抑圧する補正処理を実行する。すなわち、第3の実施形態に係る補正回路400は、第1の血流信号をチャネル方向にフーリエ変換して第1の変換信号を生成し、第1の変換信号から所定方向の成分を抑圧する。ここで、補正回路400は、所定方向の成分として、チャネル方向に対する傾きが所定の範囲内の直線となる成分を第1の変換信号から抽出し、抽出した成分を第1の変換信号から抑圧する。
続いて、第3の実施形態に係る補正回路400は、第1の変換信号から所定方向の成分を抑圧した後に、深さ方向に更にフーリエ変換して第2の変換信号を生成する。ここで、第1の血流信号を2次元フーリエ変換して得られたk空間のチャネル方向にフーリエ変換した軸をkx軸とし、時間方向にフーリエ変換した軸をkt軸とする。エコー分布のk空間はkx軸とkz軸であるので、kx−kt座標からkx−kz座標への座標変換が必要である。このため、第3の実施形態に係る補正回路400は、第2の変換信号を2次元周波数空間で座標変換を行う。
そして、第3の実施形態に係る補正回路400は、第2の変換信号を2次元周波数空間で座標変換を行った後に、チャネル方向及び深さ方向に逆フーリエ変換することで第2の血流信号を生成する。言い換えると、補正回路400は、第2の変換信号を座標変換した後に2次元逆フーリエ変換(2D−IFFT)することでビームフォーミングされた信号を得る。
なお、自己相関回路134は、ビームフォーマー133により生成された反射波データを用いて、自己相関演算を行い、算出回路135は、血流信号の速度(V)、パワー(P)、分散(T)を推定する。
次に、第3の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を説明する。第3の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順は、図14のステップS5に示す第2の血流信号抽出処理の手順が異なる点を除いて、図14に示す処理の手順と同様である。このため、以下では、第3の実施形態に係る第2の血流信号抽出処理について説明する。図20は、第3の実施形態に係るドプラ処理回路による第2の血流信号抽出処理の手順を示すフローチャートである。なお、図20に示す処理は、図14に示すステップS5の処理に対応する。
図20に示すステップS301からステップS306は、補正回路400により実現されるステップである。なお、図20に示すステップS301からステップS303の処理は、図18に示すステップS201からステップS203の処理と同様である。
ステップS304では、補正回路400は、所定方向の成分を抑圧した第1の変換信号を深さ方向にFFTする。これにより、補正回路400は、第2の変換信号を得る。そして、ステップS305では、補正回路400は、第2の変換信号をk空間で座標変換を行う。続いて、補正回路400は、ステップS306では、第2の変換信号を座標変換した後に2D−IFFTする。なお、補正回路400は、ステップS301の処理に先立って、図15に示すステップS102の抑圧処理を更に実行してもよい。
上述したように、第3の実施形態では、第1の血流信号をチャネル方向にフーリエ変換し、更に深さ(時間)方向にフーリエ変換して2次元周波数空間でビームフォーミングを行なう。この2次元フーリエ変換によるビームフォーミングは、平面波或いは拡散波を送信した場合には最も演算量が少ない。この結果、第3の実施形態では、ビームフォーミング処理を効率化できる。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
上述した実施形態では、超音波走査中に補正処理を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ドプラ処理回路130において、補正回路300及びビームフォーマー133は、超音波の送受信を実行中は、第1の血流信号をビームフォーミングして血流情報を生成し、フリーズ後に、ビームフォーミングした第2の血流信号から血流情報を生成するようにしてもよい。図21を用いて、その他の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を説明する。
図21は、その他の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。図21に示すステップS401からステップS404の処理は、図14に示すステップS1からステップS4の処理に対応する。なお、図21では、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明する。
ステップS405は、ビームフォーマー133により実現されるステップである。ステップS405では、ビームフォーマー133は、第1の血流信号をビームフォーミング処理する。かかる場合、補正回路300は、MTIフィルタ132から受付けた第1の血流信号をビームフォーマー133に受け渡す。
ステップS406は、算出回路135により実現されるステップである。ステップS406では、算出回路135は、ビームフォーミング処理後の第1の血流信号から血流情報を算出する。例えば、算出回路135は、血流情報として、血流信号の速度(V)、パワー(P)、分散(T)を推定する。
ステップS407は、画像生成回路140により実現されるステップである。ステップS407では、画像生成回路140は、血流情報から血流画像を生成する。ステップS408及びステップS409は、処理回路170により実現されるステップである。ステップS408では、処理回路170は、血流画像をディスプレイ13に表示させる。かかる場合、強反射体から発生するサイドローブを抑圧する補正処理を実行していないので、ディスプレイ13に表示される血流画像には、円弧状のアーティファクトが発生する場合がある。
ステップS409では、処理回路170は、フリーズを受け付けたか否かを判定する。ここで、処理回路170は、フリーズを受け付けたと判定しなかった場合(ステップS409、No)、ステップS409の判定処理を繰り返す。一方、処理回路170は、フリーズを受け付けたと判定した場合(ステップS409、Yes)、ステップS410の第2の血流画像抽出処理をドプラ処理回路130に実行させる。なお、ステップS410の第2の血流画像抽出処理は、図15、図18及び図20で説明したいずれかの処理手順にて実行される。すなわち、ドプラ処理回路130は、各チャネルの複数フレーム分の受信信号をメモリに保持し、フリーズ後に保持した受信信号を読み出して第2の血流信号を抽出する。
図21に示すステップS411からステップS413の処理は、図14に示すステップS6からステップS8の処理と同様である。かかる場合、強反射体から発生するサイドローブを抑圧する補正処理を実行するので、円弧状のアーティファクトが抑制された血流画像がディスプレイ13に表示される。なお、処理回路170は、フリーズ後に血流画像をスローモーションでディスプレイ13に表示させるようにしてもよい。
このように、その他の実施形態では、超音波走査中はアーティファクトを抑圧する処理は行わないで、血流画像を生成する。ここで、超音波診断装置1は、MTIフィルタ132によって、ビームフォーミング前の受信信号に対して、組織由来の信号を抑圧するフィルタをフレーム間で掛けて第1の血流信号を抽出し、この第1の血流信号から生成した血流情報に基づいて、血流画像を生成する。或いは、超音波診断装置1は、ビームフォーミング後の受信信号に対して、MTIフィルタ132を掛けて第1の血流信号を抽出し、この第1の血流信号から生成した血流情報に基づいて、血流画像を生成する。そして、超音波診断装置1は、超音波走査をフリーズした後に、メモリ131からデータを読み出して、アーティファクトを抑圧する処理を実行して、第2の血流信号を抽出し、この第2の血流信号から生成した血流情報に基づいて、血流画像を生成する。そして、超音波診断装置1は、生成した血流画像をスローモーションでディスプレイ13に表示させる。これにより、ソフトウエアによってビームフォーミング処理を行う場合、ビームフォーミング処理の負荷を大幅に低減することもできる。
また、上述した実施形態では、送信回路111は、超音波プローブが有する複数の振動子を制御して平面波或いは拡散波の超音波を送信する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、映像化する領域が狭い場合には、送信フォーカスを掛けて超音波を送信してもよい。図22は、その他の実施形態を説明するための図である。図22では、超音波プローブ11と、超音波プローブ11の全振動子を用いた場合に映像化可能な領域R1と、実際に映像化の対象とする領域R2とを示す。ここで、例えば、超音波プローブ11の全振動子を用いて映像化する際に、映像化可能な領域R1に対して実際に映像化の対象とする領域R2が狭い場合には、送信回路111は、図22中の破線で示すように送信フォーカスを掛けてもよい。すなわち、送信回路111は、超音波プローブが有する複数の振動子を制御して送信フォーカスを掛けて超音波を送信させる。
また、上述した実施形態では、高フレームレート法に、全ラスタ並列同時受信を適用する超高速フレームレート法において、血流画像を表示する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、高フレームレート法を使用せずに、全ラスタ並列同時受信を使用する場合にも適用可能である。
また、上述した実施形態で説明した超音波診断装置にて実行される処理は、超音波診断装置以外の他の装置で実行されてもよい。例えば、各チャネルのビームフォーミング前の信号は、受信回路112からバスを介して記憶回路160にて記憶される。そして、超音波診断装置以外の他の装置は、例えば、超音波のスキャン停止後に各チャネルのビームフォーミング前の信号を読み出して、上述した第1の実施形態から第3の実施形態に記述するいずれかの方法で第2の血流信号を抽出して血流情報を算出し、血流情報から血流画像を生成して、ディスプレイ13に表示させるようにしてもよい。
例えば、画像処理装置は、取得部と、抽出部と、算出部と、制御部とを備える。取得部は、超音波プローブが有する複数の振動子を制御して超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。ここで、例えば、取得部は、超音波を送信して反射波を受信する超音波プローブが有する複数の振動子を制御して平面波の超音波或いは拡散波の超音波を送信させ、超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。或いは、取得部は、超音波を送信して反射波を受信する超音波プローブが有する複数の振動子を制御して送信フォーカスを掛けて超音波を送信させ、超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。抽出部は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち所定方向の成分を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。算出部は、第2の血流信号から血流情報を算出する。制御部は、血流情報から血流画像を生成して、表示部に表示させる。或いは、画像処理装置は、取得部と、抽出部と、算出部と、制御部とを備える。取得部は、超音波プローブが有する複数の振動子を制御して超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。ここで、例えば、取得部は、超音波を送信して反射波を受信する超音波プローブが有する複数の振動子を制御して平面波の超音波或いは拡散波の超音波を送信させ、超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。或いは、取得部は、超音波を送信して反射波を受信する超音波プローブが有する複数の振動子を制御して送信フォーカスを掛けて超音波を送信させ、超音波を送信した複数の振動子で同時に受信させた反射波から生成された複数チャネルの受信信号を取得する。抽出部は、ビームフォーミング前に各チャネルの受信信号から組織由来の信号を抑圧して複数チャネルの第1の血流信号を抽出し、抽出した複数チャネルの第1の血流信号のうち振幅が所定の閾値以上の信号を抑圧してからビームフォーミングすることで第2の血流信号を抽出する。算出部は、第2の血流信号から血流情報を算出する。制御部は、血流情報から血流画像を生成して、表示部に表示させる。
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウエアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した画像処理方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、アーティファクトを低減した血流画像を得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。