以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、モータ制御装置が画像形成装置に設けられる場合について説明するが、モータ制御装置が設けられるのは画像形成装置に限定されるわけではない。例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置等にも用いられる。
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるシート搬送装置を有するモノクロの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
以下に、図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿給送装置201、読取装置202及び画像印刷装置301を有する。
原稿給送装置201の原稿積載部203に積載された原稿は、給紙ローラ204によって1枚ずつ給紙され、搬送ガイド206に沿って読取装置202の原稿ガラス台214上に搬送される。更に、原稿は、搬送ベルト208によって一定速度で搬送されて、排紙ローラ205によって不図示の排紙トレイへ排紙される。読取装置202の読取位置において照明209によって照明された原稿画像からの反射光は、反射ミラー210、211、212からなる光学系によって画像読取部111に導かれ、画像読取部111によって画像信号に変換される。画像読取部111は、レンズ、光電変換素子であるCCD、CCDの駆動回路等で構成される。画像読取部111から出力された画像信号は、ASIC等のハードウェアデバイスで構成される画像処理部112によって各種補正処理が行われた後、画像印刷装置301へ出力される。前述の如くして、原稿の読取が行われる。即ち、原稿給送装置201及び読取装置202は、原稿読取装置として機能する。
また、原稿の読取モードとして、第1読取モードと第2読取モードがある。第1読取モードは、一定速度で搬送される原稿の画像を、所定の位置に固定された照明系209及び光学系によって読み取るモードである。第2読取モードは、読取装置202の原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を、一定速度で移動する照明系209及び光学系によって読み取るモードである。通常、シート状の原稿の画像は第1読取モードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿の画像は第2読取モードで読み取られる。
画像印刷装置301の内部には、シート収納トレイ302、304が設けられている。シート収納トレイ302、304には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ302にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ304にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
シート収納トレイ302に収納された記録媒体は、給紙ローラ303によって給送されて、搬送ローラ306によって停止状態のレジストレーションローラ308へ送り出される。また、シート収納トレイ304に収納された記録媒体は、給紙ローラ305によって給送されて、搬送ローラ307及び306によって停止状態のレジストレーションローラ308へ送り出される。
読取装置202から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置311に入力される。また、感光ドラム309は、帯電器310によって外周面が帯電される。感光ドラム309の外周面が帯電された後、読取装置202から光走査装置311に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置311からポリゴンミラー及びミラー312、313を経由し、感光ドラム309の外周面に照射される。この結果、感光ドラム309の外周面に静電潜像が形成される。なお、感光ドラムの帯電には、例えば、コロナ帯電器や帯電ローラを用いた帯電方法が用いられる。
続いて、静電潜像が現像器314内のトナーによって現像され、感光ドラム309の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム309に形成されたトナー像は、感光ドラム309と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器315によって記録媒体に転写される。この転写タイミングに合わせて、レジストレーションローラ308は転写位置への記録媒体の搬送を開始する。
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト317によって定着器318へ送り込まれる。
定着器318は、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bを有する。定着ローラ318aは、トナー像を加熱及び加圧によって記録媒体に定着させる。搬送ローラ318bは、定着ローラ318aによってトナー像が定着された記録媒体を下流側へ搬送する。
上述のようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319、324によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器318によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ319、搬送ローラ320、及び反転ローラ321によって、反転パス325へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ322、323によって再度レジストレーションローラ308へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ319、324によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
また、第1面に画像形成された記録媒体がフェースダウンで画像形成装置100の外部へ排紙される場合は、定着器318を通過した記録媒体は、排紙ローラ319を通って搬送ローラ320へ向かう方向へ搬送される。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ320のニップ部を通過する直前に搬送ローラ320の回転が反転することによって、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ324を経由して、画像形成装置100の外部へ排出される。
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、158、センサ類159、ACドライバ160、シート検出器700と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが記憶される。
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、センサ類159からの信号を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。
高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器310、現像器314、転写帯電器315等)に必要な電圧を供給する。
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、搬送ローラ318bを駆動するモータM2を制御する。また、モータ制御装置158は、CPU151aから出力された指令に応じて、定着ローラ318aを駆動するモータM1を制御する。なお、図2においては、画像形成装置のモータとしてモータM1、M2のみが記載されているが、実際には、画像形成装置には3個以上のモータが設けられている。また、1個のモータ制御装置が複数個のモータを制御する構成であっても良い。更に、図2においては、モータ制御装置が2個しか設けられていないが、実際には、3個以上のモータ制御装置が画像形成装置に設けられている。
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器318に含まれる。
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成動作の進行状況、原稿読取装置201及び画像印刷装置301におけるシート材のジャムや重送等に関する情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。
前述の如くして、システムコントローラ151は画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。なお、シート検出器700については後述する。
[モータ制御装置]
次に、本実施形態におけるモータ制御装置について説明する。本実施形態におけるモータ制御装置は、ベクトル制御を用いてモータを制御する。
<ベクトル制御>
まず、図3及び図4を用いて、本実施形態におけるモータ制御装置157がベクトル制御を行う方法について説明する。なお、モータ制御装置158の構成は、モータ制御装置157の構成と同様であるため、説明を省略する。また、以下の説明におけるモータには、モータの回転子の回転位相を検出するためのロータリエンコーダなどのセンサは設けられていないが、ロータリエンコーダなどのセンサが設けられていてもよい。
図3は、A相(第1相)とB相(第2相)との2相から成るステッピングモータ(以下、モータと称する)M2と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。図3では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸であるα軸と、B相の巻線に対応した軸であるβ軸とが定義されている。また、図3では、回転子402に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、回転子402の回転位相は角度θによって表される。ベクトル制御では、回転子402の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、ベクトル制御では、巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分であって、回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とが用いられる。
ベクトル制御とは、回転子の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、回転子の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する方法もある。
図4は、モータM2を制御するモータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
図4に示すように、モータ制御装置157は、ベクトル制御を行う回路として、位相制御器502、電流制御器503、座標逆変換器505、座標変換器511、モータの巻線に駆動電流を供給するPWMインバータ506等を有する。座標変換器511は、モータM2のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、α軸及びβ軸で表される静止座標系からq軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、巻線に流れる駆動電流は、回転座標系における電流値であるq軸成分の電流値(q軸電流)とd軸成分の電流値(d軸電流)とによって表される。なお、q軸電流は、モータM2の回転子402にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータM2の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当し、回転子402のトルクの発生には寄与しない。モータ制御装置157は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。この結果、モータ制御装置157は、回転子402にかかる負荷トルクに応じてq軸電流を制御することによって、回転子402が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、ベクトル制御においては、図3に示す電流ベクトルの大きさは、回転子402にかかる負荷トルクに応じて変化する。
モータ制御装置157は、モータM2の回転子402の回転位相θを後述する方法により決定し、その決定結果に基づいてベクトル制御を行う。CPU151aは、モータM2の回転子402の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、指令位相θ_refをモータ制御装置157へ出力する。なお、指令位相θ_refは、搬送ローラ318bの周速度の目標速度に対応するモータM2の回転子の目標速度に基づいて設定される。
減算器101は、位相決定器513から出力された、モータM2の回転子402の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差Δθを演算して出力する。
位相制御器502は、偏差Δθを周期T(例えば、200μs)で取得する。位相制御器502は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から取得する偏差Δθが小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から取得する偏差Δθが0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、P制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、I制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間積分に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、D制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間変化に比例する値に基づいて制御する制御方法である。本実施形態における位相制御器502は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、位相制御器502は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しても良い。なお、回転子402に永久磁石を用いる場合、通常は巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、これに限定されるものではない。
モータM2のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、電流検出器507、508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。なお、電流検出器507、508が電流を検出する周期は、例えば、位相制御器502が偏差Δθを取得する周期T以下の周期(例えば、25μs)である。
A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、図3に示す電流ベクトルの位相θeを用いて次式によって表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義される。また、Iは電流ベクトルの大きさを示す。
iα=I*cosθe (1)
iβ=I*sinθe (2)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511と誘起電圧決定器512に入力される。
座標変換器511は、次式によって、静止座標系における電流値iα及びiβを回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ (3)
iq=−sinθ*iα+cosθ*iβ (4)
座標変換器511は、変換された電流値iqを減算器102に出力する。また、座標変換器511は、変換された電流値idを減算器103に出力する。
減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
また、減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器503に出力する。
電流制御器503は、PID制御に基づいて、入力される偏差がそれぞれ小さくなるように駆動電圧Vq及びVdを生成する。具体的には、電流制御器503は、入力される偏差がそれぞれ0になるように駆動電圧Vq及びVdを生成して座標逆変換器505に出力する。即ち、電流制御器503は、生成手段として機能する。なお、本実施形態における電流制御器503は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器503は、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
座標逆変換器505は、電流制御器503から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=cosθ*Vd−sinθ*Vq (5)
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (6)
座標逆変換器505は、逆変換されたVα及びVβを誘起電圧決定器512及びPWMインバータ506に出力する。
PWMインバータ506は、フルブリッジ回路を有する。フルブリッジ回路は座標逆変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM信号によって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをモータM2の各相の巻線に供給することによって、モータM2を駆動させる。即ち、PWMインバータ506は、モータM2の各相の巻線に電流を供給する供給手段として機能する。なお、本実施形態においては、PWMインバータはフルブリッジ回路を有しているが、PWMインバータはハーフブリッジ回路等であっても良い。
次に、回転位相θの決定方法について説明する。回転子402の回転位相θの決定には、回転子402の回転によってモータM2のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧Eα及びEβの値が用いられる。誘起電圧の値は誘起電圧決定器512によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、A/D変換器510から誘起電圧決定器512に入力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器505から誘起電圧決定器512に入力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
Eα=Vα−R*iα−L*diα/dt (7)
Eβ=Vβ−R*iβ−L*diβ/dt (8)
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。巻線レジスタンスR及び巻線インダクタンスLの値は使用されているモータM2に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
誘起電圧決定器512によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器513に出力される。
位相決定器513は、誘起電圧決定器512から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータM2の回転子402の回転位相θを決定する。
θ=tan^−1(−Eβ/Eα) (9)
なお、本実施形態においては、位相決定器513は、式(9)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、位相決定器513は、ROM151b等に記憶されている、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
前述の如くして得られた回転子402の回転位相θは、減算器101、座標逆変換器505、座標変換器511に入力される。
モータ制御装置157は、上述の制御を繰り返し行う。
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置157は、指令位相θ_refと回転位相θとの偏差が小さくなるように回転座標系における電流値を制御するベクトル制御を行う。ベクトル制御を行うことによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。
[定着器の構成]
図5は、本実施形態における定着器の構成を説明する図である。図5に示すように、定着ローラ318aはステッピングモータ(以下、モータと称する)M1によって駆動され、モータM1はモータ制御装置158によって制御される。また、定着ローラ318aに隣接する搬送ローラ318bはモータM2によって駆動され、モータM2はモータ制御装置157によって制御される。
本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、定着ローラ318aの円周の長さ(周長)π*Rよりも短い値に設定される。なお、Rは定着ローラの直径である。
また、本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、画像形成装置100において搬送が許容されているシートのうち、搬送方向におけるシートの長さが最少であるシートの長さよりも短い値に設定される。
シート検出器700は後述する方法により、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したか否かを検出し、検出結果をCPU151aに出力する。CPU151aは、当該検出結果に基づいて、シートの搬送に異常が生じたか否か(シートが定着ローラに巻きついたか否か)を判定する。
<シートが定着ローラに巻き付いたか否かを判定する構成>
以下に、シートが定着ローラに巻きついたか否かを判定する構成について説明する。本実施形態では、以下の構成が適用されることによって、画像形成装置の大型化を抑制する。
{シートの先端を検知する方法}
以下に、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したか否かをシート検出器700が判定する(検出する)方法を説明する。本実施形態では、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したか否かがフォトセンサ等のセンサで判定されるのではなく、モータ制御装置157から出力される信号に基づいて判定される。なお、シート検出器700は、例えば、検出結果を所定の時間周期(例えば、偏差Δθが入力される周期)で出力する。
なお、以下の説明において、モータ制御装置157、158は、CPU151aから出力された指令位相θ_refに基づいて位相フィードバック制御を行うが、指令位相θ_refはモータM1、M2の目標速度に基づいてCPU151aによって生成される。なお、実際には、CPU151aはモータ制御装置157及び158の各々に対してパルス信号を出力しており、パルスの数が指令位相に対応し、パルスの周波数が目標速度に対応する。また、目標速度は、ローラの周速度の目標値に基づいて決定される。
図6は、定着ローラ318aの周速度V1及び搬送ローラ318bの周速度V2を示すタイムチャートである。図6(a)は、定着ローラ318aの周速度V1を示す図である。また、図6(b)は、搬送ローラ318bの周速度V2を示す図である。
本実施形態では、搬送ローラ318bの周速度V2がVP2となるようにモータM2が制御され、定着ローラ318aの周速度V1がVP1となるようにモータM1が制御される。なお、搬送ローラ318bの周速度VP2は定着ローラ318aの周速度VP1よりもΔV大きい値である。即ち、搬送ローラ318bは定着ローラ318aよりもΔV速い周速度で回転する。
このように、搬送ローラ318bの周速度が定着ローラ318aの周速度よりも速い周速度に設定されることによって、搬送ローラ318bと定着ローラ318aとの間で記録媒体が撓んでしまうことを防止することができる。この結果、搬送ローラ318bと定着ローラ318aとの間で記録媒体が撓むことに起因して定着後の記録媒体が定着ローラに接し、画像が乱れてしまうことを防止することができる。
また、搬送ローラ318bの周速度が定着ローラ318aの周速度よりも速い周速度に設定されることによって、後述するように、シートを検出する精度が、搬送ローラ306と搬送ローラ307とが同じ周速度で回転する場合よりも向上する。なお、速度差ΔVは、周速度V1で回転する搬送ローラ307によって搬送されるシートの表面を搬送ローラ306がスリップしたとしてもシートに定着された画像にダメージが与えられないような速度差に設定される。なお、本実施形態においては、例えば、搬送されるシートの種類が厚紙である場合の周速差ΔVは薄紙である場合の周速差ΔVと同じ周速差である。
図7は、搬送ローラ318bを駆動するモータM2を制御するモータ制御装置157から出力された偏差Δθを示す図である。なお、図7においては、偏差Δθが負の値であることは回転位相θが指令位相θ_refよりも遅れていることを意味し、偏差Δθが正の値であることは回転位相θが指令位相θ_refよりも進んでいることを意味する。しかしながら、偏差Δθの極性と回転位相θ及び指令位相θ_refの関係は、これに限定されるわけではない。例えば、回転位相θが指令位相θ_refよりも遅れている場合は偏差Δθが正の値であり、回転位相θが指令位相θ_refよりも進んでいる場合は偏差Δθが負の値である構成でもよい。
本実施形態では、周速度VP1で回転する定着ローラ318aによってシートが搬送される。また、CPU151aは、予め決められた画像形成装置100の動作シーケンスによって設定された時刻t0で搬送ローラ318bの駆動を開始する。なお、定着ローラ318aの周速度VP1はシートが搬送される搬送速度である。また、搬送ローラ318bの周速度V2は、周速度VP1よりもΔV大きい周速度VP2に設定される。また、搬送ローラ318bの駆動が開始される時刻t0は、定着ローラ318aによって搬送されているシートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでに搬送ローラ318bの周速度がVP2に到達するように設定される。
シートが搬送ローラ307と搬送ローラ306との両方によって搬送される際に搬送ローラ306にかかるトルクは、搬送ローラ306が搬送ローラ307と同じ周速度で回転する場合より搬送ローラ306が搬送ローラ307より速い周速度で回転する場合のほうが大きい。これは、搬送ローラ306が搬送ローラ307より速い周速度で回転する場合、搬送ローラ306は、搬送ローラ307にニップされているシートを下流側へ引っ張るからである。搬送ローラ306にかかる負荷トルクが大きくなると、搬送ローラ306を駆動するモータM2の回転子の回転位相θが指令位相θ_refよりも遅れることに起因して、偏差Δθの絶対値が大きくなる。具体的には、例えば、図7に示すように、搬送ローラ306によるシートの搬送が開始される(シートが搬送ローラ306にニップされる)時刻t1において、偏差Δθの絶対値は増大する。このように、搬送ローラ306を搬送ローラ307よりも速い速度で駆動させることによって、シートの先端が搬送ローラ306のニップ部にニップされるときの負荷トルクの変動幅を大きくさせることができる。
本実施形態においては、搬送ローラ318bによるシートの搬送が開始されたか(シートが搬送ローラ318bにニップされたか)否かを判定するための偏差Δθの閾値(所定値)として閾値Δθthが設定されている。
シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth以上になったか否かを判定する。シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth以上になると、搬送ローラ318bによるシートの搬送が開始された(シートが搬送ローラ318bにニップされた)ことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。なお、シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth未満である場合、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達していないことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。
なお、本実施形態では、画像形成装置100において搬送され得るシートの種類のうち、当該シートが搬送される際に搬送ローラに生じる負荷変動が最も小さいシートの種類に基づいて閾値Δθthが設定される。具体的には、例えば、画像形成装置100において搬送され得るシートの種類が厚紙、普通紙、薄紙である場合、厚紙の先端が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動は、普通紙や薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動よりも大きい。また、普通紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動は、薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動よりも大きい。したがって、閾値Δθthは、薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動に基づいて設定される。
閾値Δθthは、例えば、搬送ローラ318bのニップ部に薄紙(シート)がニップされていない状態であって且つ搬送ローラ318bが定速回転している状態において想定される偏差Δθの絶対値より大きい値に設定される。また、閾値Δθthは、薄紙(シート)が定着ローラ318aと搬送ローラ318bとによって搬送されることによって増大する偏差Δθの絶対値の最大値(ピーク値)より小さい値に設定される。即ち、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth以上になることは、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したことを意味する。
以上のように、本実施形態では、シートの搬送方向における下流側の搬送ローラ318bを上流側の定着ローラ318aよりも速い速度で駆動させる。この結果、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部にニップされるときの負荷トルクの変動幅を比較的大きくすることができる。その結果、シートの検出を高精度に行うことができる。
{シートが定着ローラに巻き付いたか否かを判定する方法}
図8は、搬送ローラ318bの制御方法を説明するフローチャートである。以下に、図8を用いて、搬送ローラ318bの制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aによって実行される。
まず、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータM2の駆動を開始する。この結果、搬送ローラ318bの駆動が開始される。なお、enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータM2の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置はCPU151aから出力される指令に基づいてモータM2の制御を行う。
次に、S1001において、CPU151aは、定着ローラ318aの周速度がVP1で回転するようにモータM1を制御する指示をモータ制御装置158に出力する。この結果、モータ制御装置158は定着ローラ318aが周速度VP1で回転するようにモータM1を制御する。また、CPU151aは、搬送ローラ318bが定着ローラ318aの周速度VP1よりもΔV大きい周速度VP2で回転するようにモータM2を制御する指示をモータ制御装置157に出力する。この結果、モータ制御装置157は搬送ローラ318bが周速度VP2で回転するようにモータM2を制御する。
S1002において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθthより小さい値から閾値Δθth以上の値に変化すると、即ち、シート検出器700からシートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したことを示す信号がCPU151aに入力されると、処理はS1003に進む。
S1003において、印刷ジョブが終了する場合は、S1008において、CPU151aは搬送ローラ318b、定着ローラ318aの駆動を停止し、このフローチャートの処理を終了する。
また、S1002において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth未満である場合、即ち、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達していないことを示す信号がシート検出器700からCPU151aに入力されると、処理はS1004に進む。
S1004において、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから所定時間T1が経過していない場合は、処理は再びS1002に戻る。
また、S1004において、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になることなく所定時間T1が経過した場合は、処理はS1005に進む。
S1005において、CPU151aは、定着ヒータ161に電力を供給しないようにACドライバ160を制御する。この結果、定着ヒータ161による定着器の加熱が停止される。
その後、S1006において、CPU151aは、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動を停止する。
なお、所定時間T1は、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始するタイミングからシートが搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでにかかる時間よりも長い時間である。更に、所定時間T1は、当該タイミングから、レジストレーションローラ308のニップ部から定着ローラ318aのニップ部までの距離と定着ローラ318aの円周の長さπ*Rとを足し合わせた距離シートが搬送されるまでの時間よりも短い時間である。
その後、S1007において、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、定着ローラ318aへのシートの巻き付き、遅延ジャム等)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。このように、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから所定時間T1が経過したか否かが判断されることによって、シートが正常に搬送されているか否かを検出することができる。
以上のように、本実施形態では、フォトセンサ等のセンサではなくモータ制御装置157から出力される信号に基づいてシートの検出が行われる。この結果、画像形成装置の大型化及びコストの増大を抑制することができる。
また、本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、定着ローラ318aの円周の長さπ*R(Rは定着ローラの直径である)よりも短い値に設定される。また、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから偏差Δθの絶対値が閾値Δθthよりも小さい状態が所定時間T1継続すると、CPU151aは、定着ヒータへの電力供給の停止、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動の停止を行う。そして、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、定着ローラ318aへのシートの巻き付き、遅延ジャム等)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。この結果、記録媒体が貼り付いた定着ローラが1回転した後に当該記録媒体を定着ローラから取り除く場合よりも、容易に記録媒体を定着ローラから取り除くことができる。
なお、本実施形態では、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth未満である状態が、レジストレーションローラが転写位置へのシートの搬送を開始してから所定時間T1継続したら、定着ヒータへの電力供給が停止され、シートの搬送が停止されたが、この限りではない。例えば、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth未満である状態が、シートが搬送ローラ318bの上流側の所定位置に到達してから所定時間継続したら、定着ヒータへの電力供給が停止され、シートの搬送が停止される構成でもよい。なお、所定時間は、シートが当該所定位置に到達するタイミングからシートが搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでにかかる時間よりも長い時間である。更に、所定時間は、当該タイミングから、レジストレーションローラ308のニップ部から定着ローラ318aのニップ部までの距離と定着ローラ318aの円周の長さπ*Rとを足し合わせた距離シートが搬送されるまでの時間よりも短い時間である。
〔第2実施形態〕
画像形成装置100の構成が第1実施形態と同様である部分については説明を省略する。
第1実施形態では、搬送ローラ318bを駆動するモータは定着ローラ318aを駆動するモータとは異なるモータであった。即ち、第1実施形態では、搬送ローラ318b及び定着ローラ318aはそれぞれ独立して駆動され、搬送ローラ318bを駆動するモータに関する信号に基づいて、シートが定着ローラに巻き付いたか否かが判定された。
本実施形態では、搬送ローラ318bを駆動するモータが定着ローラ318aを駆動するモータと同じモータである構成において、シートが定着ローラに巻き付いたか否かが判定される方法について説明する。
[定着器の構成]
図9は、本実施形態における定着器の構成を説明する図である。図9に示すように、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bはモータM2によって駆動され、モータM2はモータ制御装置157によって制御される。
本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、定着ローラ318aの円周の長さπ*R(Rは定着ローラの直径である)よりも短い値に設定される。
また、本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、画像形成装置100において搬送が許容されているシートのうち、搬送方向におけるシートの長さが最少であるシートの長さよりも短い値に設定される。
シート検出器700は、第1実施形態において説明した方法により、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したか否かを検出し、検出結果をCPU151aに出力する。CPU151aは、当該検出結果に基づいて、シートが定着ローラに巻きついたか否かを判定する。
なお、本実施形態では、搬送ローラ318bの周速度V2が定着ローラ318aの周速度V1よりもΔV大きくなるように、例えば、ギア等でモータM2から搬送ローラ318bに伝達される回転力が調整される。
このように、搬送ローラ318bの周速度が定着ローラ318aの周速度よりも速い周速度に設定されることによって、搬送ローラ318bと定着ローラ318aとの間で記録媒体が撓んでしまうことを防止することができる。この結果、搬送ローラ318bと定着ローラ318aとの間で記録媒体が撓むことに起因して定着後の記録媒体が定着ローラに接し、画像が乱れてしまうことを防止することができる。
また、搬送ローラ318bの周速度が定着ローラ318aの周速度よりも速い周速度に設定されることによって、第1実施形態において説明したように、シートを検出する精度が、搬送ローラ306と搬送ローラ307とが同じ周速度で回転する場合よりも向上する。
図10は、モータ制御装置157から出力された偏差Δθを示す図である。なお、図10においては、偏差Δθが負の値であることは回転位相θが指令位相θ_refよりも遅れていることを意味し、偏差Δθが正の値であることは回転位相θが指令位相θ_refよりも進んでいることを意味する。しかしながら、偏差Δθの極性と回転位相θ及び指令位相θ_refの関係は、これに限定されるわけではない。例えば、回転位相θが指令位相θ_refよりも遅れている場合は偏差Δθが正の値であり、回転位相θが指令位相θ_refよりも進んでいる場合は偏差Δθが負の値である構成でもよい。
本実施形態においては、定着ローラ318aによるシートの搬送が開始されたか(シートが定着ローラ318aにニップされたか)否かを判定するための偏差Δθの閾値として閾値Δθth1(所定値)が設定されている。また、搬送ローラ318bによるシートの搬送が開始されたか(シートが搬送ローラ318bにニップされたか)否かを判定するための偏差Δθの閾値として閾値Δθth2が設定されている。
シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になったか否かを判定する。シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になると、定着ローラ318aによるシートの搬送が開始された(シートが定着ローラ318aにニップされた)ことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。なお、シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1未満である場合、シートの先端が定着ローラ318aのニップ部に到達していないことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。
偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になると、次に、シート検出器700は偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2以上になったか否かを判定する。シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2以上になると、搬送ローラ318bによるシートの搬送が開始された(シートが搬送ローラ318bにニップされた)ことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。なお、シート検出器700は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2未満である場合、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達していないことを示す信号をCPU151aに検出結果として出力する。
なお、本実施形態では、画像形成装置100において搬送され得るシートの種類のうち、当該シートが搬送される際に搬送ローラに生じる負荷変動が最も小さいシートの種類に基づいて閾値Δθth1及びΔθth2が設定される。具体的には、例えば、画像形成装置100において搬送され得るシートの種類が厚紙、普通紙、薄紙である場合、厚紙の先端が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動は、普通紙や薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動よりも大きい。また、普通紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動は、薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動よりも大きい。したがって、閾値Δθth1及びΔθth2は、薄紙が搬送される際に排紙ローラに生じる負荷変動に基づいて設定される。
閾値Δθth1は、例えば、定着ローラ318aのニップ部に薄紙(シート)がニップされていない状態であって且つ定着ローラ318aが定速回転している状態において想定される偏差Δθの絶対値より大きい値に設定される。また、閾値Δθth1は、薄紙(シート)が定着ローラ318aのニップ部にシートがニップされることによって増大する偏差Δθの絶対値の最大値(ピーク値)より小さい値に設定される。即ち、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になることは、シートの先端が定着ローラ318aのニップ部に到達したことを意味する。
また、閾値Δθth2は、例えば、搬送ローラ318bのニップ部に薄紙(シート)がニップされていない状態であって且つ搬送ローラ318bが定速回転している状態において想定される偏差Δθの絶対値より大きい値に設定される。また、閾値Δθth2は、薄紙(シート)が定着ローラ318aと搬送ローラ318bとによって搬送されることによって増大する偏差Δθの絶対値の最大値(ピーク値)より小さい値に設定される。即ち、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2以上になることは、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したことを意味する。
以上のように、本実施形態では、シートの搬送方向における下流側の搬送ローラ318bを上流側の定着ローラ318aよりも速い速度で駆動させる。この結果、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部にニップされるときの負荷トルクの変動幅を比較的大きくすることができる。その結果、シートの検出を高精度に行うことができる。
図11は、搬送ローラ318bの制御方法を説明するフローチャートである。以下に、図11を用いて、搬送ローラ318bの制御について説明する。このフローチャートの処理は、CPU151aによって実行される。
まず、CPU151aからモータ制御装置157にenable信号‘H’が出力されると、モータ制御装置157はCPU151aから出力される指令に基づいてモータM2の駆動を開始する。この結果、搬送ローラ318bの駆動が開始される。なお、enable信号とは、モータ制御装置157の稼働を許可又は禁止する信号である。enable信号が‘L(ローレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を禁止する。即ち、モータ制御装置157によるモータM2の制御は終了される。また、enable信号が‘H(ハイレベル)’である場合は、CPU151aはモータ制御装置157の稼働を許可して、モータ制御装置はCPU151aから出力される指令に基づいてモータM2の制御を行う。
次に、S2001において、CPU151aは、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bが回転するようにモータM2を制御する指示をモータ制御装置157に出力する。この結果、モータ制御装置157は定着ローラ318a及び搬送ローラ318bが回転するようにモータM2を制御する。
S2002において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1より小さい値から閾値Δθth1以上の値に変化すると、即ち、シート検出器700からシートの先端が定着ローラ318aのニップ部に到達したことを示す信号がCPU151aに入力されると、処理はS2003に進む。
S2003において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2より小さい値から閾値Δθth2以上の値に変化すると、即ち、シート検出器700からシートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達したことを示す信号がCPU151aに入力されると、処理はS2004に進む。
S2004において、印刷ジョブが終了する場合は、S2005において、CPU151aは搬送ローラ318b、定着ローラ318aの駆動を停止し、このフローチャートの処理を終了する。
また、S2003において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2未満である場合、即ち、シートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達していないことを示す信号がシート検出器700からCPU151aに入力されると、処理はS2006に進む。
S2006において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になってから所定時間T2が経過していない場合は、処理は再びS2003に戻る。
また、S2006において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になってから偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2以上になることなく所定時間T2が経過した場合は、処理はS2007に進む。
S2007において、CPU151aは、定着ヒータ161に電力を供給しないようにACドライバ160を制御する。この結果、定着ヒータ161による定着器の加熱が停止される。
その後、S2008において、CPU151aは、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動を停止する。
なお、所定時間T2は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になってからシートが搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでにかかる時間よりも長い時間である。更に、所定時間T2は、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になってから定着ローラ318aの円周の長さπ*R分シートが搬送されるまでの時間よりも短い時間である。
その後、S2009において、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、定着ローラ318aへのシートの巻き付き、遅延ジャム等)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。
また、S2002において、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1未満である場合、即ち、シートの先端が定着ローラ318aのニップ部に到達していないことを示す信号がシート検出器700からCPU151aに入力されると、処理はS2010に進む。
S2010において、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから所定時間T3が経過していない場合は、処理は再びS2002に戻る。
また、S2010において、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になることなく所定時間T3が経過した場合は、CPU151aは、処理をS2011に進める。
S2011において、CPU151aは、定着ヒータ161に電力を供給しないようにACドライバ160を制御する。この結果、定着ヒータ161による定着器の加熱が停止される。
その後、S2012において、CPU151aは、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動を停止する。
なお、所定時間T3は、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始するタイミングからシートが定着ローラ318aのニップ部に到達するまでにかかる時間よりも長い時間である。更に、所定時間T3は、当該タイミングからシートの先端が搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでの時間よりも短い時間である。
その後、S2013において、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、遅延ジャム)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。
以上のように、本実施形態では、フォトセンサ等のセンサではなくモータ制御装置157から出力される信号に基づいてシートの検出が行われる。この結果、画像形成装置の大型化及びコストの増大を抑制することができる。
また、本実施形態では、定着ローラ318aのニップ部から搬送ローラ318bのニップ部までの距離Lは、定着ローラ318aの円周の長さπ*R(Rは定着ローラの直径である)よりも短い値に設定される。
レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1よりも小さい状態が所定時間T3継続すると、CPU151aは、定着ヒータへの電力供給を停止し、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動を停止する。そして、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、遅延ジャム)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。この結果、記録媒体が貼り付いた定着ローラが1回転した後に当該記録媒体を定着ローラから取り除く場合よりも、容易に記録媒体を定着ローラから取り除くことができる。
また、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1以上になってから偏差Δθの絶対値が閾値Δθth2よりも小さい状態が所定時間T2継続すると、CPU151aは、定着ヒータへの電力供給を停止し、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動を停止する。そして、CPU151aは、シートの搬送に異常(例えば、定着ローラ318aへのシートの巻き付き、遅延ジャム等)が生じたことを、操作部152に設けられた表示部に表示してユーザに知らせる。この結果、記録媒体が貼り付いた定着ローラが1回転した後に当該記録媒体を定着ローラから取り除く場合よりも、容易に記録媒体を定着ローラから取り除くことができる。
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、レジストレーションローラ308が転写位置へのシートの搬送を開始してから偏差Δθの絶対値が閾値未満である状態が所定時間継続したら、定着ヒータへの電力供給が停止され、定着ローラ318a及び搬送ローラ318bの駆動が停止されたが、この限りではない。
なお、本実施形態では、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1未満である状態が、レジストレーションローラが転写位置へのシートの搬送を開始してから所定時間T3継続したら、定着ヒータへの電力供給が停止され、シートの搬送が停止されたが、この限りではない。例えば、偏差Δθの絶対値が閾値Δθth1未満である状態が、シートが搬送ローラ318bの上流側の所定位置に到達してから所定時間継続したら、定着ヒータへの電力供給が停止され、シートの搬送が停止される構成でもよい。なお、所定時間は、シートが当該所定位置に到達するタイミングからシートが搬送ローラ318bのニップ部に到達するまでにかかる時間よりも長い時間である。更に、所定時間は、当該タイミングから、レジストレーションローラ308のニップ部から定着ローラ318aのニップ部までの距離と定着ローラ318aの円周の長さπ*Rとを足し合わせた距離シートが搬送されるまでの時間よりも短い時間である。
第1実施形態及び第2実施形態におけるシート検出器700の機能をCPU151aが有する構成であってもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、周速差ΔVは、搬送されるシートの種類(紙種)に拘わらず所定の値に設定されたが、この限りではない。例えば、ユーザによって設定された紙種に応じて周速差ΔVが設定されてもよい。なお、厚紙に対応する周速差ΔVは薄紙に対応する周速差ΔV及び普通紙に対応する周速差ΔVより小さくてもよい。また、普通紙に対応する周速差ΔVは薄紙に対応する周速差ΔVより小さくてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、紙種に拘わらず偏差Δθの閾値Δθthは所定の値であったが、閾値Δθthは紙種ごとに設定されてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、搬送ローラ318bの駆動が開始される時刻t0は、画像形成装置100の動作シーケンスによって予め定められているが、この限りではない。例えば、CPU151aからモータ制御装置に出力されるパルス数に基づいて搬送ローラ306の駆動が開始される構成であってもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、偏差Δθに基づいてシートの検出が行われたが、この限りではない。例えば、座標変換器511から出力される電流値iqの変化に基づいてシートの検出が行われてもよい。具体的には、例えば、電流値iqが閾値Δθthに対応する閾値iqthより大きくなったら、シートの先端が搬送ローラ306のニップ部に到達したと判断される構成であってもよい。なお、指令位相θ_refと位相決定器513によって決定された回転位相θとの偏差に基づいて決定されたq軸電流指令値(目標値)iq_refの変化に基づいてシートの検出が行われてもよい。また、静止座標系の電流値iα又はiβの振幅(大きさ)の変化に基づいてシートの検出が行われてもよい。
なお、電流値iq、電流値iq_ref及び静止座標系の電流値iα又はiβの振幅は、本発明におけるモータの回転子にかかる負荷トルクに対応するパラメータに対応する。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、下流側の搬送ローラを駆動するモータの回転速度が制御されることによって、下流側の搬送ローラと上流側の搬送ローラとの周速度に差がつけられたが、この限りではない。例えば、上流側の搬送ローラを駆動するモータの回転速度が制御されることによって、下流側の搬送ローラと上流側の搬送ローラとの周速度に差がつけられてもよい。また、上流側の搬送ローラを駆動するモータと下流側の搬送ローラを駆動するモータとの両方の回転速度が制御されることによって、下流側の搬送ローラと上流側の搬送ローラとの周速度に差がつけられてもよい。
第1実施形態及び第2実施形態が適用されるのは、ベクトル制御によるモータ制御に限らない。例えば、回転位相や回転速度をフィードバックする構成を有するモータ制御装置であれば本実施形態は適用される。
第1実施形態及び第2実施形態における感光ドラム309、転写帯電器315等は画像形成手段に対応する。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、画像を熱によってシートに定着させる回転体として定着ローラ318aが用いられているが、例えば、回転体として定着ベルトが用いられてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、負荷を駆動するモータとしてステッピングモータが用いられているが、DCモータ等の他のモータであっても良い。また、モータは2相モータである場合に限らず、3相モータ等の他のモータであっても第1実施形態、第2実施形態を適用することができる。
また、第1実施形態及び第2実施形態におけるベクトル制御では、位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、回転子402の回転速度ωをフィードバックしてモータを制御する構成であっても良い。具体的には、図12に示すように、モータ制御装置内部に速度決定器514を設け、速度決定器514が位相決定器513から出力された回転位相θの所定期間における変化量に基づいて回転速度ωを決定する。なお、速度の決定には、以下の式(10)が用いられるものとする。
ω=dθ/dt (10)
そして、CPU151aは回転子の目標速度を表す指令速度ω_refを出力する。更に、モータ制御装置内部に速度制御器500を設け、速度制御器500が回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する構成とする。このような速度フィードバック制御を行うことによって、モータを制御する構成であっても良い。このような構成の場合、シートの検知は、例えば、回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差Δωに基づいて、本実施形態において説明した方法で行われる。なお、指令速度ω_refは、搬送ローラ306の周速度の目標速度に対応するモータM2の回転子の目標速度である。
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、回転子として永久磁石が用いられているが、これに限定されるものではない。