JP6967860B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
この可変圧縮比機構は、制御軸を電動モータからなる電動アクチュエータによって回転駆動することで、内燃機関のピストンの上死点位置を変化させる機構である。
このため、可変圧縮比機構を制御する制御装置は、目標値に到達した圧縮比を維持する場合も、電動アクチュエータによって反力に抗するトルク(保持トルク)を発生させる必要がある。
更に、制御装置がCAN(Controller Area Network)などの車内通信回線に接続され、この車内通信回線を介して外部装置から可変機構の目標値を受けて可変機構を制御するシステムの場合、通信異常時には、内部メモリに予め記憶されている故障用目標値に可変機構を制御するよう構成される場合がある。
このとき、制御装置は、通信正常時と同様に、制御量が目標値に収束した後も保持トルクを発生し続けるように電動アクチュエータを制御するため、内燃機関が停止している状態で電動アクチュエータへの通電が継続され、電動アクチュエータで多くの電力が無駄に消費されることになる。
そして、内燃機関の停止中に電動アクチュエータの駆動が継続されると、電動アクチュエータによる電力消費によってバッテリが消耗し、内燃機関の始動性が低下するという問題が生じる。
図1は、車両用内燃機関の一態様を示す。
図1の車両用内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2内に形成されたシリンダボア3内に設けられたピストン4と、吸気ポート5及び排気ポート6が形成されるシリンダヘッド10と、吸気ポート5,排気ポート6の開口端を開閉する1気筒当たりそれぞれ1対の吸気バルブ7,7及び排気バルブ8,8と、を備えている。
そして、燃焼室14は、ピストン4の冠面4aとシリンダヘッド10の下面との間に形成される。点火プラグ15は、燃焼室14を形成するシリンダヘッド10の略中央に配置される。
また、内燃機関1は、ピストン4の上死点位置(燃焼室容積)を変更することで機械圧縮比を可変とする可変圧縮比機構23を備えている。可変圧縮比機構23は、内燃機関1の動作特性(ピストン4の上死点位置)を電動アクチュエータによって可変とする可変機構の一例である。
クランクシャフト9は、複数のジャーナル部9aとクランクピン部9bとを備え、シリンダブロック2の主軸受に、ジャーナル部9aが回転自在に支持される。
クランクピン部9bは、ジャーナル部9aから偏心し、ここにロアリンク11が回転自在に連結される。
アッパリンク12は、下端側が連結ピン25によりロアリンク11の一端に回動可能に連結され、上端側がピストンピン26によりピストン4に回動可能に連結される。
詳しくは、制御シャフト29は、回転可能に内燃機関本体(シリンダブロック2)に支持されていると共に、その回転中心から偏心している偏心カム部29aを有し、この偏心カム部29aにコントロールリンク27の下端部が回転可能に嵌合する。
上記のような複リンク式ピストン−クランク機構を用いた可変圧縮比機構23においては、制御シャフト29が電動アクチュエータ30によって回動されると、偏心カム部29aの中心位置、つまり、内燃機関1の本体(シリンダブロック2)に対する相対位置が変化する。
つまり、上死点におけるピストン4の位置は内燃機関1の動作特性であり、可変圧縮比機構23は、車両用内燃機関の動作特性を電動アクチュエータによって可変とする可変機構の一態様である。
このため、可変圧縮比機構23の駆動制御においては、目標値に到達した圧縮比を維持させる場合も、電動アクチュエータ30によって反力に抗するトルク(保持トルク)を発生させる必要がある。
エンジンコントローラ31A及びVCRコントローラ31Bは、プロセッサ(CPU)やメモリを含んで構成されるマイクロコンピュータをそれぞれ備える。また、エンジンコントローラ31A及びVCRコントローラ31Bは、車内通信回線を構成するCAN(Controller Area Network)51に接続されていて、エンジンコントローラ31AとVCRコントローラ31Bとは相互通信可能に構成される。
VCRコントローラ31Bは、外部装置であるエンジンコントローラ31Aから送られた目標値のデータを読み込み、また、制御シャフト29の角度位置(制御量)を検出する角度センサ29Aの出力信号を読み込む。
なお、VCRコントローラ31Bは、角度センサ29Aの出力信号に基づき検出した制御シャフト29の角度位置から実圧縮比を求め、この実圧縮比と目標圧縮比とを比較して操作量を演算することができ、また、角度センサ29Aの出力信号に基づき検出した制御シャフト29の角度位置と、目標圧縮比から求めた目標角度位置とを比較して操作量を演算することができる。
なお、エンジンコントローラ31A及びVCRコントローラ31Bの双方が、角度センサ29Aの出力信号を入力する構成とすることができる。
上記の各種センサとして、クランクシャフト9の所定角度位置で角度信号POSを出力するクランク角センサ32、内燃機関1の吸入空気流量QAを検出するエアーフローセンサ33、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)ACCを検出するアクセル開度センサ34、内燃機関1が搭載される車両の走行速度VSPを検出する車速センサ35、吸気カムシャフト24の所定角度位置で角度信号CAMを出力するカム角センサ36、内燃機関1の冷却水の温度TWを検出する水温センサ37、内燃機関1の排気中の酸素濃度に基づき空燃比AFを検出する空燃比センサ42、内燃機関1のノッキングによる振動を検出するノックセンサ43、内燃機関1の吸気温度TAを検出する吸気温センサ44などを内燃機関1に設けてある。
VCRコントローラ31Bは、プロセッサ(CPU)やメモリを含んで構成されるマイクロコンピュータ61、外部のバッテリ70から電力供給を受けてマイクロコンピュータ61に電源供給する電源IC62、セルフシャットダウン機能を有した電源供給制御回路(電源供給手段)63などを備える。
電源供給制御回路63は、内燃機関1の電源スイッチ(エンジンスイッチ、イグニッションスイッチ)71の操作状態を示すスイッチ信号と、マイクロコンピュータ61の出力信号(電源供給制御信号)とを入力し、電源供給制御回路63の出力は、イネーブル信号ENとして電源IC62に入力される。
そして、電源供給制御回路63は、電源スイッチ71がオン側に操作されていることを示すスイッチ信号が入力されているときに、イネーブル信号ENをアクティブとし、電源IC62からマイクロコンピュータ61に電源投入させる。
つまり、電源供給制御回路63は、電源スイッチ71がオン側に操作されていることを示すスイッチ信号が入力されている状態、及び/又は、マイクロコンピュータ61が電源投入要求信号を出力する状態で、イネーブル信号ENをアクティブとし、電源IC62からマイクロコンピュータ61に電源投入させる。
なお、エンジンコントローラ31Aも、VCRコントローラ31Bと同様に、電源スイッチ71がオフ側に操作された後に電源供給を自己遮断する機能を有することができる。
ここで、電源供給制御回路63に入力されるスイッチ信号が、電源スイッチ71がオン側に操作されていることを示すレベルに固着する異常が発生している状態で、電源スイッチ71がオフ側に操作されてエンジンコントローラ31Aへの電源供給が遮断されると、VCRコントローラ31Bは通信異常として、故障時用目標値に可変圧縮比機構23を制御するフェイルセーフ処理を実施することになる。
そこで、VCRコントローラ31Bのマイクロコンピュータ61は、通信異常時のフェイルセーフ処理において、内燃機関1が運転中であるか停止しているかを判断し、内燃機関1の停止状態では可変圧縮比機構23の電動アクチュエータ30への通電(電動アクチュエータ30の駆動制御)を停止させる処理を実施する。
図3のフローチャートは、VCRコントローラ31Bのマイクロコンピュータ61による通信異常時のフェイルセーフ処理(制御手段)の一態様(第1実施例)を示す。
マイクロコンピュータ61は、ステップS101で、CAN51を介したエンジンコントローラ31Aとの通信に異常が発生したか否かを判断する。
なお、マイクロコンピュータ61は、ステップS102での電動アクチュエータ30の制御において、実際の圧縮比が目標値に到達した後も内燃機関1の反力に抗するトルク(保持トルク)を発生させるように電動アクチュエータ30への通電を制御する。
なお、可変圧縮比機構23において圧縮比の可変範囲(換言すれば、電動アクチュエータの位置)はストッパで制限され、前記故障時目標値は、ストッパ位置で規定される最大圧縮比と最小圧縮比との間の中間値、つまり、最大圧縮比及び最小圧縮比の双方からずれた圧縮比(換言すれば、電動アクチュエータの位置がストッパから離れた位置)である。
ここで、電動アクチュエータ30の駆動再開中ではない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS105に進む。
そして、故障時目標値に収束した履歴がない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS106へ進み、故障時目標値と実圧縮比との差(制御エラー)の絶対値、換言すれば、故障時目標角度と角度センサ29Aが検出した実角度との差の絶対値が設定値α以下であるか否かを判断することで、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した状態であるか否かを判断する。
実際の圧縮比が故障時目標値に収束していない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS107を迂回して本ルーチンを終了させ、電動アクチュエータ30を駆動させて実圧縮比を故障時目標値に制御する。
マイクロコンピュータ61は、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴を保存すると、次回にステップS105に進んだときに、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴があると判断して、ステップS108に進む。
更に、マイクロコンピュータ61は、ステップS110へ進み、通信異常発生の判定を確定させる。
例えば、電源スイッチ71のオン操作状態で電源供給制御回路63に入力されるスイッチ信号が正常であるときに、CAN51を介したエンジンコントローラ31Aとの通信に異常が発生して圧縮比の目標値が故障時目標値に設定された場合、内燃機関1は運転されているから、電動アクチュエータ30の駆動を停止すると可変圧縮比機構23は内燃機関1の反力を受け、実圧縮比は故障時目標値からずれることになる。
一方、電源供給制御回路63に入力されるスイッチ信号が電源スイッチ71のオン操作状態を示すレベルに固着する異常が発生した場合、エンジンコントローラ31Aへの電源供給が電源スイッチ71のオフ操作に基づき遮断されることで、VCRコントローラ31Bはエンジンコントローラ31Aとの間で通信が行えない通信異常状態となり、VCRコントローラ31Bは、圧縮比の目標値を故障時目標値とするフェイルセーフ処理に移行することになる。
したがって、マイクロコンピュータ61は、電動アクチュエータ30の駆動を停止しても実圧縮比が故障時目標値付近を維持する場合は、内燃機関1が停止状態であることを推定でき、このときに電動アクチュエータ30を停止状態(通電遮断状態)に保持することで、内燃機関1の停止状態で電動アクチュエータ30が電力消費してバッテリ70を消耗させてしまうことを抑制できる。
時刻t1にて通信異常が発生すると、マイクロコンピュータ61は、圧縮比の目標値を内部メモリに予め記憶されている故障時目標値とし、この故障時目標値に実圧縮比を近づけるように電動アクチュエータ30を制御する。
電動アクチュエータ30の駆動を停止させた時刻t3以降で、実圧縮比が故障時目標値付近を維持していれば、マイクロコンピュータ61は、内燃機関1が停止状態であると推定し、電動アクチュエータ30を駆動停止状態(通電停止状態)に維持させる。
図5のフローチャートは、VCRコントローラ31Bのマイクロコンピュータ61による通信異常時のフェイルセーフ処理の別の態様(第2実施例)を示す。
なお、図5のフローチャートに示すフェイルセーフ処理は、図3のフローチャートに示すフェイルセーフ処理に対して、通信異常を確定させる処理が異なり、また、内燃機関1が停止状態であると推定されるときにVCRコントローラ31Bを省電力モードに移行させる点が異なる。
そして、通信異常がない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS202へ進み、エンジンコントローラ31Aから送信された目標値と角度センサ29Aによる検出結果とに基づき電動アクチュエータ30の操作量を演算し、演算した操作量を電動アクチュエータ30に出力することで実圧縮比を目標値に近づける、通常制御(通信正常時制御)を実施する。
一方、通信異常が生じていてエンジンコントローラ31Aから目標値のデータを取得できない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS204へ進み、可変圧縮比機構23の目標値として、内部メモリに予め記憶されている故障時目標値(所定の中間値)を設定する。
ここで、電動アクチュエータ30の駆動再開中ではない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS206に進む。
そして、故障時目標値に収束した履歴がない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS207へ進み、故障時目標値と実圧縮比との差(制御エラー)の絶対値が設定値α以下であるか否かを判断することで、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した状態であるか否かを判断する。
一方、実際の圧縮比が故障時目標値に収束している場合(制御エラーの絶対値が設定値α以下である状態が設定時間以上継続している場合)、マイクロコンピュータ61は、ステップS208へ進み、電動アクチュエータ30の駆動(通電)を停止するとともに、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴を保存する。
マイクロコンピュータ61は、ステップS209で、故障時目標値と実圧縮比との差の絶対値が設定値β(β>α)よりも大きくなったか否かを判断する。
また、マイクロコンピュータ61は、実際の圧縮比が故障時目標値付近に維持されている場合、ステップS210に進んで、電動アクチュエータ30の駆動を停止させてからの経過時間が設定時間に達したか否かを判断する。
更に、マイクロコンピュータ61は、ステップS212にて、通電再開カウンタの値をインクリメントし、また、VCRコントローラ31Bの省電力モードを解除し通常モードに復帰させる。
そして、マイクロコンピュータ61は、通電再開カウンタの値が設定値未満であれば本ルーチンをそのまま終了させ、通電再開カウンタの値が設定値以上になると、ステップS214に進んで、通信異常発生の判定を確定させる。
マイクロコンピュータ61は、ステップS215で、電動アクチュエータ30の駆動を再開させてから所定時間が経過したか否かを判断し、駆動継続時間が所定時間に達するまでは、ステップS216を迂回して本ルーチンを終了させることで、電動アクチュエータ30を駆動させて実圧縮比を故障時目標値に制御する処理を継続させる。
ステップS216の処理によって、マイクロコンピュータ61は、本ルーチンの次回実行時に、ステップS205からステップS206、更に、ステップS207に進むことになり、電動アクチュエータ30の駆動を再度停止させ、駆動停止状態で実圧縮比が変化するか否かを監視することになる。
ここで、通電再開カウンタの値が設定値以上になっている場合は、内燃機関1が運転中であってエンジンコントローラ31Aと通信できない状態が継続していることを示すので、マイクロコンピュータ61は、ステップS214に進んで通信異常発生の判定を確定させる。
図6のフローチャートは、VCRコントローラ31Bのマイクロコンピュータ61による通信異常時のフェイルセーフ処理の別の態様(第3実施例)を示す。
なお、図6のフローチャートに示すフェイルセーフ処理は、図3のフローチャートに示すフェイルセーフ処理に対して、スイッチ信号がオン側に固着している異常を確定させる処理を実施する点、及び、スイッチ信号の固着異常が確定されているときに、VCRコントローラ31Bを省電力モードに移行させる点が異なる。
そして、通信異常がない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS302へ進み、通信が再開した直後であるか否か、つまり、エンジンコントローラ31Aとの通信に異常が発生していた状態から通信が正常に戻ったタイミングであるか否かを判断する。
一方、通信が再開したタイミング(通信異常から正常に復帰したタイミング)であるとき、マイクロコンピュータ61は、ステップS303へ進み、通信再開時にエンジンコントローラ31Aから取得した圧縮比の目標値が故障時目標値であるか否かを判断する。
一方、マイクロコンピュータ61は、ステップS303で、エンジンコントローラ31Aから取得した目標値が故障時目標値でなく内燃機関1の運転条件に応じた通常の目標値であると判断すると、ステップS305に進んで、スイッチ信号のオン固着故障の判定を確定させる。
したがって、マイクロコンピュータ61は、通信再開時にエンジンコントローラ31Aから取得した圧縮比の目標値が故障時目標値であるか機関運転条件に応じた通常の目標値であるかを判断することで、CAN51や通信回路などは正常であるもののVCRコントローラ31Bにおけるスイッチ信号のオン固着故障状態でエンジンコントローラ31Aが作動停止したことで通信不能になっていたか、CAN51や通信回路などの通信系の異常が発生したかを判別できる。
これにより、整備作業者は、VCRコントローラ31Bにおける通信故障又はスイッチ信号のオン固着故障の発生を認識することが可能であり、通信異常の原因を切り分けできることで、メンテナンス作業を効率良く行える。
通信異常の発生が診断され、かつ、スイッチ信号のオン固着故障の判定が確定されている状態では、マイクロコンピュータ61は、電源スイッチ71のオフ操作によってエンジンコントローラ31Aへの電源供給が遮断され、内燃機関1が停止している状態であると推定できる。
マイクロコンピュータ61は、ステップS307での省電力モードへの移行処理後にステップS308へ進み、また、ステップS306でスイッチ信号のオン固着故障の判定が確定されていないと判断した場合もステップS308に進む。
次いで、マイクロコンピュータ61は、ステップS309へ進み、電動アクチュエータ30の駆動を一旦停止させた後に、圧縮比を故障時目標値に制御するための電動アクチュエータ30の駆動を再開させている状態であるか否かを判断する。
マイクロコンピュータ61は、ステップS310で、電動アクチュエータ30の駆動制御によって実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴があるか否かを判断する。
実際の圧縮比が故障時目標値に収束していない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS312を迂回して本ルーチンを終了させ、電動アクチュエータ30を駆動(通電)させて実圧縮比を故障時目標値に制御する。
マイクロコンピュータ61は、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴を保存すると、次回にステップS310に進んだときに、実際の圧縮比が故障時目標値に収束した履歴があると判断して、ステップS313に進む。
そして、故障時目標値と実圧縮比との差の絶対値が設定値β以下で、実際の圧縮比が故障時目標値付近に維持されている場合、マイクロコンピュータ61は、内燃機関1の停止状態を推定し、ステップS314を迂回して本ルーチンを終了させ、電動アクチュエータ30の駆動停止状態(通電停止状態)を継続させる。
図7において、時刻t11で通信異常が発生すると、マイクロコンピュータ61は、圧縮比の目標値を、エンジンコントローラ31Aから取得した目標値から内部メモリに記憶されている故障時目標値に切り替える。
ここで、マイクロコンピュータ61は、通信再開時にエンジンコントローラ31Aから取得した目標値が故障時目標値とは異なる場合(正常時の目標値である場合)、スイッチ信号のオン固着故障によって通信異常になっていて、電源スイッチ71のオン操作に伴って起動したエンジンコントローラ31Aが通常の目標値を出力したと判断する。
図8のフローチャートは、VCRコントローラ31Bのマイクロコンピュータ61による通信異常時のフェイルセーフ処理の別の態様(第4実施例)を示す。
なお、図8のフローチャートに示すフェイルセーフ処理は、図6のフローチャートに示したフェイルセーフ処理に対して、スイッチ信号がオン側に固着している異常が確定している通信異常時に、マイクロコンピュータ61が、圧縮比の目標値として内燃機関1の始動時目標値を設定する点が異なる。
そして、通信異常がない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS402へ進み、通信が再開した直後であるか否か、つまり、エンジンコントローラ31Aとの通信に異常が発生していた状態から通信が正常に戻ったタイミングであるか否かを判断する。
ここで、マイクロコンピュータ61は、通信が正常であることを継続して判断している場合、本ルーチンをそのまま終了させる。
そして、マイクロコンピュータ61は、ステップS403で、エンジンコントローラ31Aから取得した目標値が故障時目標値であると判断すると、ステップS404に進んで、通信異常の判定を確定させる。
また、通信異常が生じていてエンジンコントローラ31Aから目標値のデータを取得できない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS401からステップS406へ進み、スイッチ信号のオン固着故障の判定が確定されているか否かを判断する。
次いで、マイクロコンピュータ61は、ステップS408へ進み、通信異常によってエンジンコントローラ31Aから目標値を取得できない状態で内部生成する目標値として、内燃機関1の始動時に適した圧縮比である始動時目標値を設定する。
なお、始動時目標値及び故障時目標値は、いずれもマイクロコンピュータ61の内部メモリに予め記憶されている値であって圧縮比の可変範囲の中間値である。
ここで、電動アクチュエータ30の駆動再開中ではない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS411へ進み、電動アクチュエータ30の駆動制御によって実際の圧縮比が目標値に収束した履歴があるか否かを判断する。
実際の圧縮比が目標値に収束していない場合、マイクロコンピュータ61は、ステップS413を迂回して本ルーチンを終了させ、電動アクチュエータ30を駆動させて実圧縮比を目標値に制御する。
マイクロコンピュータ61は、実際の圧縮比が目標値に収束した履歴を保存すると、次回にステップS411に進んだときに、実際の圧縮比が目標値に収束した履歴があると判断して、ステップS414に進む。
そして、目標値と実圧縮比との差の絶対値が設定値β以下で、実際の圧縮比が目標値付近に維持されている場合、マイクロコンピュータ61は、内燃機関1が運転停止中であると推定し、ステップS415を迂回して本ルーチンを終了させ、電動アクチュエータ30の駆動停止状態(通電停止状態)を継続させる。
車両用内燃機関の動作特性を電動アクチュエータによって可変とする可変機構であって、内燃機関の運転によって動作特性を変化させる反力を受ける内燃機関用可変機構は、可変圧縮比機構23に限定されない。
ここで、電動式の可変バルブタイミング機構の場合、可変とされる内燃機関の動作特性は機関バルブの開弁期間の位相であり、電動式の可変動弁機構の場合、可変とされる内燃機関の動作特性は最大バルブリフト量及び作動角(開弁期間)である。
また、可変機構を制御する制御装置のフェイルセーフ処理は、内燃機関の動作特性を可変機構によって目標値に収束させてから電動アクチュエータの駆動を停止させる処理に限定されず、制御装置は、通信異常が発生したときに内燃機関の動作特性が所定範囲内の値であれば電動アクチュエータの駆動を停止させ、その後の動作特性の変化を監視し、内燃機関が運転中であるか否かを推定することができる。
また、可変機構を制御する制御装置は、動作特性の変化に基づき内燃機関が運転中であるか否かを判断した結果に基づき、動作特性の目標値を切り替えることができる。
また、可変機構を制御する制御装置は、内燃機関の運転が停止しているか運転しているかの推定結果を示す信号を、他の装置にCANなどの車内通信回線に介して送信することができる。
内燃機関の制御装置は、その一態様として、電動アクチュエータの位置をストッパで制限される範囲内で変更することで車両用の内燃機関の動作特性を可変とする可変機構であって、前記内燃機関の運転によって前記電動アクチュエータの位置を変化させる反力を受ける可変機構を制御する制御装置であって、前記電動アクチュエータの駆動を停止している状態で前記電動アクチュエータの位置が前記ストッパから離れた位置から変化しない場合は前記電動アクチュエータの駆動を停止状態に保持し、前記電動アクチュエータの駆動を停止している状態で前記電動アクチュエータの位置が前記ストッパから離れた位置から変化した場合は前記電動アクチュエータの駆動を再開させる制御手段を備える。
別の好ましい態様では、前記制御手段は、前記電動アクチュエータの駆動を再開させてから所定時間が経過したときに前記電動アクチュエータの駆動を再度停止させる。
更に、別の好ましい態様では、前記制御手段は、前記電動アクチュエータの駆動を再開させるときに、前記可変機構を、内部メモリに格納された異常時用の目標値に制御する。
更に、別の好ましい態様では、前記制御手段は、前記電動アクチュエータの駆動を停止させた状態が所定時間継続したときに、前記制御装置を省電力モードに切り替える。
更に、別の好ましい態様では、前記制御手段は、前記車内通信回線による通信が異常で前記スイッチ信号の異常が確定しているときに、前記電動アクチュエータの駆動によって前記可変機構を前記内燃機関の始動用の目標値に制御する。
別の好ましい態様では、前記電動アクチュエータの駆動を再開させてから所定時間が経過したときに前記電動アクチュエータの駆動を再度停止させるステップを更に含む。
Claims (3)
- 車両に搭載される内燃機関が備える可変圧縮比機構を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記可変圧縮比機構は、電動アクチュエータによって回動される制御シャフトの角度位置をストッパで制限される範囲内で変更することで、前記内燃機関のピストンの上死点位置を変更して機械圧縮比を可変とする機構であって、前記内燃機関の運転によって前記制御シャフトの角度位置を変化させる反力を受け、
前記制御装置は、
前記制御シャフトの角度位置の目標値を前記制御装置に向けて送信する外部装置と車内通信回線を介して相互に通信可能に接続され、
前記電動アクチュエータへの通電を制御して前記制御シャフトの角度位置を制御する制御手段と、
前記車内通信回線を介した前記外部装置との通信に異常が生じたときに用いる前記目標値であって、前記ストッパから離れた位置である異常時用目標値を格納したメモリと、
を備え、
前記制御手段は、
前記外部装置と通信可能であるか通信不能であるかに基づき、前記外部装置との通信が正常であるか異常であるかを判断し、
前記外部装置との通信が正常であるときは、前記外部装置から取得した前記目標値と前記制御シャフトの角度位置の検出値との比較に基づき前記電動アクチュエータへの通電を制御し、
前記外部装置との通信に異常が生じたときは、前記メモリから前記異常時用目標値を取得し、前記異常時用目標値と前記検出値との比較に基づき前記電動アクチュエータへの通電を制御し、
前記異常時用目標値に基づき前記電動アクチュエータへの通電を制御したときに、前記異常時用目標値と前記検出値との偏差の絶対値が第1所定値以下になると前記電動アクチュエータへの通電を停止し、
通電停止後に前記偏差の絶対値が前記第1所定値よりも大きい第2所定値を超えたときは前記内燃機関が運転中であると判断して前記電動アクチュエータへの通電を再開させて前記制御シャフトの角度位置を前記異常時用目標値に制御し、
通電停止後に前記偏差の絶対値が前記第2所定値以下である場合、前記内燃機関が停止状態であると判断して前記電動アクチュエータの通電停止状態を継続させる、
内燃機関の制御装置。 - 前記外部装置は、前記内燃機関の点火及び燃料噴射を制御するエンジンコントローラであり、
前記制御装置は、前記可変圧縮比機構を制御する可変圧縮比機構用コントローラであり、
前記制御手段は、
前記電動アクチュエータへの通電を再開させてから所定時間が経過した後に前記偏差の絶対値が前記第1所定値以下であると前記電動アクチュエータへの通電を再度停止させ、
前記電動アクチュエータへの通電再開を設定回数繰り返したときに、前記エンジンコントローラによる点火及び燃料噴射の制御によって前記内燃機関は運転中であって前記エンジンコントローラとの間で通信の異常が継続していると判断して、前記エンジンコントローラとの通信の異常を確定する、
請求項1記載の内燃機関の制御装置。 - 前記制御手段は、
前記電動アクチュエータの通電停止状態が所定時間継続したときに、省電力モードに移行する、
請求項1記載の内燃機関の制御装置。
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