JP6966254B2 - ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤、およびセメント組成物 - Google Patents

ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤、およびセメント組成物 Download PDF

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本発明は、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む無機粒子用添加剤に関する。本発明は、また、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤およびセメント組成物に関する。
リビング重合は、構造制御されたポリマーを合成することができる重合であり、次のような特徴を有する(非特許文献1参照)。
1.重合反応を開始するとモノマーが一定濃度以下になるまで重合が進行する。
2.重合率に比例して数平均分子量が増加する。
3.ポリマー分子(活性種)の数は一定で、重合率には関係しない。
4.分子量は、化学量論的に制御される。
5.通常の重合反応よりも狭い分子量分布のポリマーが得られる。
6.引き続いてモノマーを添加することで、再び重合反応を進めることができ、ブロックコポリマーを得ることもできる。
7.定量的な収率で、ポリマー鎖末端を変性することができる。
リビングラジカル重合として、RAFT(reversible addition−fragmentation chain transfer)重合(特許文献1参照)、MADIX(macro−molecular design via interchange of xanthates)重合(特許文献2参照)、ATRP(atom transfer radical polymerization)(非特許文献2参照)、NMP(nitroxide−mediated polymerization)(特許文献3参照)、TERP(organotellurium−mediated living radical polymerization)(非特許文献3参照)が知られている。ここで、МADIX重合はRAFT重合と同じ可逆連鎖移動機構であるので、本明細書中では統一的にRAFT重合という名称を用いる。
ATRPは、遷移金属錯体による触媒反応であり、遷移金属が2種類の異なる酸化状態をとりながら重合が進行する。開始剤にはハロゲン化アルキルを用いるのが一般的である。遷移金属錯体の遷移金属としては、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Re、Os等を用いることができるが、Cuを用いる方法が最も一般的である。例えば、Cuをその核とする遷移金属錯体としては、Cuと窒素含有配位子からなる触媒が挙げられる。CuはCu1+とCu2+の2種類の酸化状態をとる。ATRPの難点は、空気中で不安定なハロゲン化アルキルを用いること、大量の触媒を使うことであり、触媒を除去するための精製工程と廃棄物の発生がポリマーの生産コストを高くしてしまう。
NMPは、ラジカル開始剤、モノマー、そして中間ポリマーラジカル種をトラップするニトロキシドラジカルの組み合わせを必要とする。NMPの難点は、単一の分子から、重合を開始する反応性ラジカルと安定なニトロキシドラジカルの両方を供給することのできる汎用開始剤の合成の困難さにある。その点で、NMPは汎用性が最も低い。
TERPは、有機テルル化合物を用いる重合法で、ドーマント種と言われる休眠状態の反応種と活性種の平衡反応による。有機金属を用いるため、完全脱水の雰囲気が必要で取扱いに注意を要する。
RAFT重合では、適切な連鎖移動剤(RAFT剤)の存在下で、置換モノマーの一般的なフリーラジカル重合にRAFT平衡に関わる反応が加わる。RAFT重合の利点としては、ラジカル重合で重合可能な大部分のモノマーの重合反応を制御できること、モノマーや溶媒中の保護されていない官能基(例えば、−OH、−NR、−COOH、−CONR、−SOH)に対して許容性が高く、水またはプロトン性溶媒中でも重合が可能であること、反応条件の適用範囲が広いこと、競合する技術と比較して利用しやすく安価であることが挙げられる。
RAFT剤としては、ジチオエステル類(−(C=S)−S−、特許文献1参照)、ジチオカルバマート類(>N−(C=S)−S−、特許文献4参照)、トリチオカルボネート類(−S−(C=S)−S−、特許文献5、6参照)、キサンタート類(−O−(C=S)−S−、特許文献4、7参照)等のチオカルボニルチオ基(−(C=S)−S−)を有する化合物が挙げられ、可逆的な連鎖移動反応によってリビング性を発現する。
RAFT剤は、代表的には、ラジカル重合開始剤の存在下で、ごく少量の生長ラジカルとほとんどの割合を占めるドーマント種(チオカルボニルチオ基を末端にもつポリマー)からなる平衡状態を確立することでリビング重合を進行させる(非特許文献4参照)。
ブテニルアルキレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル(BAPP)なる特定のモノマーを用いたRAFT重合によって、セメント用添加剤として使用し得るポリカルボン酸系共重合体を合成できることが最近報告されている(非特許文献5参照)。
しかし、非特許文献5に記載のポリカルボン酸系共重合体は、BAPPのアルキレン部のために共重合体の疎水性が高いため、疎水会合によりセメント粒子を凝集させ、セメント組成物の粘性を上げてしまうという点で、セメント用添加剤用途への適性には疑問が残る。
一般に、ポリカルボン酸系共重合体をセメント用添加剤として十分に機能させるためには、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための該ポリカルボン酸系共重合体の使用量をできる限り低減できることが重要である。また、ポリカルボン酸系共重合体をセメント用添加剤として十分に機能させるためには、作業性向上等のために、セメント組成物とする場合の粘性をできる限り低減できることが重要である。さらに、ポリカルボン酸系共重合体を用いたセメント組成物が所定の圧縮強度を有することが求められる。
さらに、ポリカルボン酸系共重合体をセメント組成物に使用する際には消泡剤と併用する場合があるところ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物が望まれている。
特表2000−515181号公報 特表2002−512653号公報 米国特許第4581429号公報 特表2002−508409号公報 特表2003−522816号公報 特表2008−508384号公報 特表2002−512653号公報 Roderic P. Quirk and Bumjae Lee, Experimental Criteria for Living Polymerizations, Polymer International 27 (1992) 359−367. M.Kato, M.Kamigaito, M.Sawamoto, and T. Higashimura, Macromolecules 28 (1995) 1721−1723. 山子茂, 中村泰之, リビングラジカル重合2. 重合機構と方法2, 日本ゴム協会紙, 82 (2009) 363−369. A.Favier, M.−T.Charreyre, Experimental Requirements for an Efficient Control of Free−Radical Polymerizations via the Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer (RAFT) Process, Macromolecular Rapid Communications 27 (2006) 653−692. Binbin Yu, Zhong Zeng, Qinyu Ren, Yang Chen, Mei Liang, Huawei Zou, Journal of Molecular Structure 1120 (2016) 171−179.
本発明の課題は、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量を低減でき、セメント組成物とする際に粘性を低減でき、さらに、優れた圧縮強度を有しかつ消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得る、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む無機粒子用添加剤を提供することにある。また、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤およびセメント組成物を提供することにある。
本発明の実施形態による無機粒子用添加剤は、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む。該ポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体であって、該ポリカルボン酸系共重合体がリビング重合により得られたものである。
Figure 0006966254
(一般式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の数であり、xは0〜2の整数である。)
Figure 0006966254
(一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
一つの実施形態においては、上記一般式(1)中のRがメチル基である。
一つの実施形態においては、上記リビング重合がRAFT重合である。
一つの実施形態においては、上記RAFT重合で用いるRAFT剤が、ジチオエステル、トリチオカルボネート、ジチオカルバメート、キサンタンから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する。
一つの実施形態においては、上記ポリカルボン酸系共重合体の分散度が1.0〜1.8である。
一つの実施形態においては、上記ポリカルボン酸系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の質量平均分子量Mwが100000以下である。
一つの実施形態においては、上記無機粒子用添加剤はセメント用添加剤である。
本発明の実施形態によるセメント組成物は、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とセメントとを含む。該ポリカルボン酸系共重合体は、上記のとおりである。
本発明によれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量を低減でき、セメント組成物とする際に粘性を低減でき、さらに、優れた圧縮強度を有しかつ消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得る、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む無機粒子用添加剤を提供することができる。また、上記と同様の効果を実現し得る、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤およびセメント組成物を提供することができる。
GPCチャートにおけるベースラインの引き方を示す説明図である。
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。また、本明細書中で「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えてもよく、逆に、本明細書中で「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。
A.無機粒子用添加剤
本発明の実施形態による無機粒子用添加剤は、ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む。
A−1.ポリカルボン酸系共重合体
本発明の実施形態に用いられるポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体である。
日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において報告された「ICH Q3D:医薬品の金属不純物ガイドライン(案)」によると、金属不純物のうちリスクアセスメントが必要な金属不純物としてクラス1にAs、Pb、Cd、Hg、クラス2AにV、Mo、Se、Co、クラス2BにAg、Au、Tl、Pd、Pt、Ir、Os、Rh、Ru、クラス3にSb、Ba、Li、Cr、Cu、Sn、Niが挙げられている。
リビング重合においては、Mo、Co、Pd、Pt、Os、Rh、Ru、Cu、Niなどの重金属が使われることがあるが、これらはリスクアセスメントが必要な重金属として上記ガイドラインに挙げられており、今後ますます使用量の低減が求められる。
重金属以外にも、リビング重合でしばしば使用されるテルルは、化合物の急性毒性や生殖毒性が高いことが多く、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists)でも許容濃度が定められており、重金属同様、使用量の低減が求められている。
ポリカルボン酸系共重合体は、重金属およびテルルの含有量が少ない方が好ましい。具体的には、ポリカルボン酸系共重合体の固形分中の重金属およびテルルの合計量が、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下であり、特に好ましくは1ppm以下であり、最も好ましくは0.1ppm以下である。ポリカルボン酸系共重合体中の重金属およびテルルの合計量が上記範囲内にあれば、例えば、上記2つの基準等の点から好ましい。ここで言う重金属とは、上記ガイドラインで各クラスに挙げられている元素すべてを指す。
ポリカルボン酸系共重合体中の重金属量の測定は、ICP−MSを用いて行うのが一般的であるが、この測定方法に限定はされない。ICP−MSにより分析を行う際はポリマーサンプルを溶媒で希釈して測定を行う。用いる溶媒はポリマーが溶解し、かつ、金属を含まないものであることが必須である。
ポリカルボン酸系共重合体は、リビング重合により得られたものとすれば、環境毒性の高いことで知られる重金属やテルル化合物などを少量用いるだけで製造することができ、環境負荷を低くすることが可能となる。
なお、ポリカルボン酸系共重合体は、リビング重合の中でも、後述するようなRAFT(Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer)重合により得られたものとすれば、重金属やテルルを含む触媒を必要としないため、系中に重金属が混入するというおそれがない。すなわち、RAFT重合は、本発明に用いられるポリカルボン酸系共重合体を得るのに最も適した重合法のひとつといえる。
ポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
Figure 0006966254
Figure 0006966254
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、下記式で表される。
Figure 0006966254
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
Figure 0006966254
一般式(1)および一般式(I)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)および一般式(I)中、Rは、好ましくはメチル基である。Rがメチル基であることにより、本発明の効果がより発現され得る。
一般式(1)および一般式(I)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。
一般式(1)および一般式(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1)および一般式(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、好ましくは2〜200の数であり、より好ましくは5〜200の数であり、さらに好ましくは8〜100の数であり、特に好ましくは20〜70の数であり、最も好ましくは40〜60の数である。nが上記範囲内にあることにより、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量を低減でき、セメント組成物とする際に粘性を低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
一般式(1)および一般式(I)中、xは0〜2の整数である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物;であり、好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
一般式(2)および一般式(II)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表す。−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩であり、より好ましくは、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩である。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合は、好ましくは30質量%〜99質量%であり、より好ましくは40質量%〜95質量%であり、さらに好ましくは50質量%〜90質量%であり、特に好ましくは60質量%〜85質量%であり、最も好ましくは70質量%〜80質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(II)の含有割合は、好ましくは1質量%〜70質量%であり、より好ましくは5質量%〜60質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜50質量%であり、特に好ましくは15質量%〜40質量%であり、最も好ましくは20質量%〜30質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいてもよい。
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な単量体である。単量体(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(III)の含有割合は、好ましくは0質量%〜50質量%であり、より好ましくは0質量%〜40質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜30質量%であり、特に好ましくは0質量%〜20質量%であり、最も好ましくは0質量%〜10質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合などは、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合などとしてもよい。すなわち、例えば、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)との合計の質量の含有割合を、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合として扱ってよい。
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位の含有比率を求める場合には、構造単位がカルボキシル基の塩を有する場合には、カルボキシル基の酸部分を全てナトリウム塩に換算して計算を行う。
ポリカルボン酸系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の質量平均分子量Mwは、好ましくは100000以下であり、より好ましくは3000〜70000であり、さらに好ましくは5000〜40000であり、特に好ましくは7500〜35000であり、最も好ましくは10000〜30000である。ポリカルボン酸系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の質量平均分子量Mwが上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、ポリカルボン酸系共重合体を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体は、分散度(Mw/Mn)が、好ましくは1.0〜1.8であり、より好ましくは1.0〜1.6であり、さらに好ましくは1.0〜1.4であり、特に好ましくは1.0〜1.3であり、最も好ましくは1.0〜1.2である。分散度(Mw/Mn)が上記のように非常に狭いものであれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、ポリカルボン酸系共重合体を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体は、リビング重合により得られたものであり、好ましくは、RAFT(Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer)重合により得られたものである。ポリカルボン酸系共重合体をRAFT重合により得られたものとすれば、該ポリカルボン酸系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比率で計算される分散度Mw/Mnを低くすることが可能となる。そして、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量を低減でき、セメント組成物とする際に粘性を低減できる、ポリカルボン酸系共重合体を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
ポリカルボン酸系共重合体をリビング重合(好ましくは、RAFT重合)により得られたものとすれば、上記のように、ポリカルボン酸系共重合体の分散度を狭くすることが可能となる。
ポリカルボン酸系共重合体を得るために採用し得るRAFT重合で用いるRAFT剤は、開裂点となるRAFT活性部位と、この活性部位と結合しRAFT剤の活性を変化させるいくつかの置換基とからなる。RAFT活性部位としては、好ましくは、ジチオエステル、トリチオカルボネート、ジチオカルバメート、キサンタンから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する。
RAFT活性部位として、ジチオエステル構造を含むRAFT剤は一般式(3)、トリチオカルボネート構造を含むRAFT剤は一般式(4)、ジチオカルバメート構造を含むRAFT剤は一般式(5)、キサンタン構造を含むRAFT剤は一般式(6)のように表される。式(3)〜(6)中のZ1、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、YがRAFT剤の活性を変化させる置換基である。
Figure 0006966254
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置換基Z、Z、Z、Z、Zとしては、水素原子、またはアルキル基やアリール基などからなる炭化水素基が好ましい。これらの置換基の炭素鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよく、途中や末端に環状構造や不飽和結合を有していてもよい。また、これらの置換基は、炭素鎖中にN、O、Si、P、Sなどの複素原子を含んでいてもよいし、炭素鎖上にN、O、Si、P、S、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)などを含む任意の置換基を有していてもよい。これらの置換基は、親水性の観点から、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、カルバモイル基、オキソ酸基(スルホン基、ホスホン基、ホスフィン基など)およびオキソ酸エステルなどの極性官能基を有するものがより好ましく、極性官能基1つ当たりの炭素原子数が15以下であるものがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルへキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、ビニル基、アリル基、イソプレニル基、フェニル基、ベンジル基、および、これらの官能基中の任意の水素原子を上記の上記極性官能基やアルキル基などで1つ以上置換してできる置換基、任意の原子間に上記の複素原子を挿入してできる置換基などが挙げられる。
とZは、共有結合でつながれていてもよく、この場合、RAFT活性部位のN原子を含む環状構造となる。具体的には、4‐クロロ-3,5-ジメチルピラゾール基などがその例として挙げられる。
置換基Y、Y、Y、Yとしては、水素原子、またはアルキル基やアリール基などからなる炭化水素基が好ましい。これらの置換基の炭素鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよく、途中や末端に環状構造や不飽和結合を有していてもよい。また、これらの置換基は、炭素鎖中にN、O、Si、P、Sなどの複素原子を含んでいてもよいし、炭素鎖上にN、O、Si、P、S、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)などを含む任意の置換基を有していてもよい。これらの置換基は、親水性の観点から、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、カルバモイル基、オキソ酸基(スルホン基、ホスホン基、ホスフィン基など)およびオキソ酸エステルなどの極性官能基を有するものがより好ましく、極性官能基1つ当たりの炭素原子数が15以下であるものがさらに好ましい。また、これらの置換基は、RAFT活性部位S原子との接続末端が、2級または3級の炭素原子であるほうが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n‐ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、2‐エチルへキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、ビニル基、アリル基、イソプレニル基、フェニル基、ベンジル基、および、これらの官能基中の任意の水素原子を上記の上記極性官能基やアルキル基などで1つ以上置換してできる置換基、任意の原子間に上記の複素原子を挿入してできる置換基などが挙げられる。
一般式(4)において、ZとYは同じ置換基でもよいが、ZとYが異なる置換基を有するものが好ましく、RAFT活性部位と結合している炭素原子上の置換基の種類が異なるものがより好ましく、RAFT活性部位と結合している炭素原子の水素原子との結合数が異なるものがさらに好ましい。左右対称または、左右類似の構造であれば、RAFT活性部位のS−Z結合とS−Y結合の活性が同程度のものとなり、RAFT活性部位の両側で重合反応が起こり、制御が困難になる。ZとYが異なる置換基を有する場合は、RAFT活性部位片側でしか重合が進まず、重合体の構造を制御しやすい。
、Z、Z、Z、Z、Y、Y、Y、Yの中に1つ以上の別のRAFT活性部位が含まれていてもよい。
ポリカルボン酸系共重合体を得るために用い得るRAFT剤としては、RAFT活性部位にトリチオカルボネート構造を有するものが特に好ましい。RAFT活性部位にトリチオカルボネート構造を有するRAFT剤の置換基Z、Yのうち、少なくとも一つの構造の一部には、極性が高い官能基を含むことが好ましい。このような置換基を有するRAFT剤は分子極性が比較的高く、極性溶媒中、特に、水中で均一に分散しやすく、より低分散度のポリマーを得ることができる。具体的には、2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、2−(ドデシルチオカルボニルチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4−シアノ−4−(エチルスルファニルチオカルボニルスルファニル)ペンタン酸などが好ましい。
ポリカルボン酸系共重合体を得るために採用し得るRAFT重合の条件としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な条件を採用し得る。
RAFT重合の条件としては、例えば、下記のような条件が好ましく挙げられる。
(溶媒)
ポリカルボン酸系共重合体を得るための重合工程(共重合工程)は、溶液重合や塊状重合などの通常の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができる。その際には任意の適切な溶媒を採用し得るが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、原料モノマー及び得られる重合体の溶解性の観点から、水および炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも、水が脱溶剤工程を省略できる点でより好ましい。
(重合濃度)
RAFT重合の際の全単量体成分の使用量は、他の原料を含む全原料に対して、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは25質量%〜80質量%であり、特に好ましくは30質量%〜60質量%であり、最も好ましくは35質量%〜40質量%である。RAFT重合の際の全単量体成分の使用量が上記範囲内にあれば、重合率が向上し得るとともに、生産性が向上しやすく、2分子停止反応などの副反応が起こりにくい。
(RAFT剤の添加量)
RAFT重合において、全単量体のモル数に対するRAFT剤の添加モル数の比率としては、好ましくは1000分の1〜5分の1であり、より好ましくは500分の1〜10分の1であり、さらに好ましくは250分の1〜15分の1であり、特に好ましくは130分の1〜20分の1であり、最も好ましくは120分の1〜40分の1である。全単量体のモル数に対するRAFT剤の添加モル数の比率が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量をより低減でき、セメント組成物とする際に粘性をより低減できる、ポリカルボン酸系共重合体を提供することができる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を実現し得るポリカルボン酸系共重合体を得ることができる。
(重合開始剤の種類)
RAFT重合の重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤や過酸化物などが挙げられる。アゾ系開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製の商品名「VA−044」など)、2,2’−アゾビス[2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物(和光純薬工業株式会社製の商品名「VA−046B」など)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬工業株式会社製の商品名「VA−061」など)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−50」など)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物(和光純薬工業株式会社製の商品名「VA−057」など)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製の商品名「VA−086」など)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−501」など)、2,2’−アゾビス(4‐メトキシ−2,4‐ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−70」など)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−65」など)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−59」など)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−40」など)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製の商品名「VF−096」など)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製の商品名「VAm−110」など)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−601」など)などが挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド(日本油脂株式会社製の商品名「パーブチルH−69」など)、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(日本油脂株式会社製の商品名「パーオクタH」など)などが挙げられる。
(RAFT剤と重合開始剤の比率)
RAFT重合においては、少量の重合開始剤で重合反応を開始する。重合開始剤の量が少量過ぎると、初期ラジカル濃度が低いために重合反応がうまく進まず、逆に多量過ぎると、初期ラジカル濃度が高くなりフリーラジカル重合が同時に進行し分散度の狭い共重合体が得られなくなる。過酸化水素のように重合開始剤1分子の開裂から1つのラジカルしか発生しない重合開始剤では、RAFT剤のモル数に対する重合開始剤のモル数の比率としては、好ましくは20モル%〜80モル%であり、より好ましくは30モル%〜70モル%であり、さらに好ましくは35モル%〜65モル%であり、特に好ましくは40モル%〜60モル%であり、最も好ましくは45モル%〜55モル%である。和光純薬工業株式会社製の商品名「V−50」のようなアゾ系開始剤を用いた場合は、重合開始剤1分子の開裂から2つのラジカルが発生するため、RAFT剤のモル数に対する重合開始剤のモル数の比率としては、好ましくは10モル%〜40モル%であり、より好ましくは15モル%〜35モル%であり、さらに好ましくは17モル%〜32モル%であり、特に好ましくは20モル%〜30モル%であり、最も好ましくは22モル%〜28モル%である。
(重合温度)
RAFT重合において、重合温度は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等により適宜定められるが、下限として、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、上限として、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
(単量体添加方法)
各単量体の反応容器への投入方法としては、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法のいずれでもよい。好適な投入方法としては、具体的には、単量体(a)と単量体(b)の全部とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全部とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りとをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法などが挙げられる。また、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入質量比を連続的又は段階的に変化させて、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との比率が同一ポリマー鎖の中で連続的または段階的に変化するように重合してもよい。なお、重合開始剤や連鎖移動剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
(溶存酸素濃度)
RAFT重合において、所定の分子量のポリカルボン酸系共重合体を再現性よく得るには、共重合反応を安定に進行させることが必要であることから、溶液重合を行う場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。この溶存酸素濃度は、より好ましくは0.01ppm〜4ppmであり、さらに好ましくは0.01ppm〜2ppmであり、特に好ましくは0.01ppm〜1ppmである。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが好ましい。上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
(pH調整)
得られたポリカルボン酸系共重合体は、そのままでも本発明の無機粒子用添加剤の必須成分として用いられるが、取り扱い性の観点から、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率の向上のため、pH5未満で共重合反応を行い、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の一価金属及び二価金属の水酸化物および炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質の1種または2種以上を用いて行うことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
ポリカルボン酸系共重合体がRAFT重合により得られたものである場合、該ポリカルボン酸系共重合体の構造として、重合直後には主鎖の末端部に、重合で使用したRAFT剤由来の構造(RAFT活性部位および活性部位のS原子と結合していた置換基)が必ず残るという特徴を有する。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、溶液の形態でそのまま使用してもよいし、粉体化して使用してもよい。
無機粒子用添加剤の固形分中におけるポリカルボン酸系共重合体の含有割合は、好ましくは45質量%〜99.98質量%であり、より好ましくは70質量%〜99.95質量%であり、さらに好ましくは85質量%〜99.92質量%であり、特に好ましくは90質量%〜99.9質量%である。
A−2.消泡剤
消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を用いることができる。本発明の実施形態によれば、上記のような特定のポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを組み合わせて用いることにより、優れた圧縮強度を有しかつ消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を得ることができる。消泡剤としては、例えば、オキシアルキレン系消泡剤、オキシアルキレン系以外の消泡剤が挙げられる。
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等;が挙げられる。
オキシアルキレン系以外の消泡剤としては、例えば、鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤が挙げられる。
無機粒子用添加剤の固形分中における消泡剤の含有割合は、好ましくは0.02質量%〜70質量%であり、より好ましくは0.05質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは0.08質量%〜6質量%であり、特に好ましくは0.1質量%〜4質量%である。
無機粒子用添加剤の固形分中におけるポリカルボン酸系共重合体と消泡剤との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは75質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%である。
無機粒子用添加剤におけるポリカルボン酸系共重合体と消泡剤との含有比(ポリカルボン酸系共重合体/消泡剤)(質量比)は、好ましくは1/2〜5000/1であり、より好ましくは10/1〜2000/1であり、さらに好ましくは15/1〜1000/1であり、特に好ましくは30/1〜750/1である。
A−3.追加成分
無機粒子用添加剤は、任意の適切な追加成分を含んでいてもよい。追加成分としては、例えば、セメント混和剤として使用され得る分子中にスルホン基を有するスルホン酸系分散剤、A−1記載のポリカルボン酸系共重合体以外のポリカルボン酸系分散剤、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、硬化遅延剤、早強剤・促進剤、AE剤、ひび割れ低減剤、界面活性剤、防水材、防錆剤、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などが挙げられる。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
水溶性高分子物質としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等が挙げられる。
高分子エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等が挙げられる。
硬化遅延剤としては、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体が挙げられる。
早強剤・促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩等が挙げられる。
AE剤としては、例えば、樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等が挙げられる。
防水剤としては、例えば、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等が挙げられる。
ひび割れ低減剤としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテル等が挙げられる。
無機粒子用添加剤の固形分中における追加成分の含有割合は、好ましくは0質量%〜50質量%であり、より好ましくは0質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜1質量%であり、特に好ましくは0質量%〜0.1質量%である。
無機粒子用添加剤における追加成分の種類、組み合わせ、配合量等は目的に応じて適切に設定され得る。
B.セメント用添加剤
1つの実施形態においては、無機粒子用添加剤はセメント用添加剤であり得る。
C.セメント組成物
本発明の実施形態によるセメント組成物は、A−1項に記載のポリカルボン酸系共重合体と、A−2項に記載の消泡剤と、セメントと、を含む。セメント組成物は、実用的には、水および骨材をさらに含む。セメント組成物は、必要に応じてA−3項に記載の追加成分をさらに含んでいてもよい。
セメント組成物は、A−1項〜A−3項に記載の各成分をセメント用添加剤(B項)として含んでいてもよい。
セメント組成物中のセメント用添加剤の含有量は、セメントに対して、固形分で、好ましくは0.001質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.005質量%〜5質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜3質量%であり、特に好ましくは0.05質量%〜2質量%であり、最も好ましくは0.1質量%〜1質量%である。本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、上記のように、セメント組成物とした場合に所望の流動性を達成するための使用量を低減できるという効果を発現できる。さらに、優れた圧縮強度を有し、かつ、消泡剤の種類によらず所定の圧縮強度を有するセメント組成物を得ることができる。
セメント組成物中のポリカルボン酸系共重合体の含有量は、セメントに対して、固形分で、好ましくは0.02質量%〜5質量%であり、より好ましくは0.05質量%〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.13質量%〜0.2質量%である。
セメント組成物中の消泡剤の含有量は、セメントに対して、固形分で、好ましくは0.00001質量%〜1質量%であり、より好ましくは0.00002質量%〜0.1質量%であり、さらに好ましくは0.00005質量%〜0.01質量%であり、特に好ましくは0.0001質量%〜0.008質量%である。
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
セメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、セメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏、膨張材(例えば、エトリンガイト系、石炭系)が添加されていてもよい。セメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m〜185kg/mであり、使用セメント量が250kg/m〜800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m〜175kg/mであり、使用セメント量が270kg/m〜800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.12〜0.65である。このように、セメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
セメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
セメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調製すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
<質量平均分子量Mwおよび分子量分布Mw/Mnの測定条件>
質量平均分子量および分子量分布は下記の測定条件で測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製、TSKgelガードカラム(内径6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径7.8mm×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
GPC標準サンプル:GLサイエンス製のポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470)
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
測定温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
標準サンプル注入量:100μL(濃度0.1質量%の溶離液溶液)
解析法:得られたRIクロマトグラム(GPCチャート)において、図1の例に示すように、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線(図1の例における直線L)で結び、ポリマーを検出・解析した。ただし、モノマーピークがポリマーピークに重なって測定された場合(図1の例においてMがモノマーピーク)、モノマーとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割して(図1の例における直線a、b)ポリマー部とモノマー部(図1の例における斜線部)を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ダイマー以上のオリゴマーが検出された場合はポリマー部に含めた。
<ICP−MS測定>
ICP−MSは下記の測定条件で測定した。
装置:Agilent Technologies ICP質量分析装置7700型
測定条件:RFパワー:1500W、ネブライザポンプ:0.10rps、キャリアガス:0.70L/min
<モルタル試験>
試験に使用した材料及びモルタルの配合は、太平洋普通ポルトランドセメント900g、強さ試験用ISO標準砂1350g、各共重合体と消泡剤(MA404)とを含むイオン交換水270gである。消泡剤の添加量は、各共重合体の固形分添加量に対して固形分で1%であった。室温20℃、相対湿度55%の下、下記の混練方法でホバートミキサーにより4分間機械練りしてモルタルを調製し、上部内径70mm、下部内径:100mm、高さ60mmの金属製のフローコーンに得られたモルタルを詰めた。次に、注水から5.5分後にフローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を直行する2方向について測定し、この平均をモルタルフロー値とした。
<混練方法>
各バッチのモルタルの練混ぜは練混ぜ機(ホバート・ジャパン株式会社、ミキサーN50)を使用する。練混ぜ機の操作は,次のように行う。練り鉢にセメントを加え、各重合体と消泡剤とを含む水を加える。次に練混ぜ機をすぐに低速で始動させ、30秒後に,次の30秒間で砂を加える。練混ぜ機を高速にし,その後30秒練り混ぜる。練混ぜ機を90秒間休止する。休止の最初の15秒間に,練り鉢に付着したモルタルをかき落とす。高速で60秒間練混ぜを続ける。
<圧縮強度試験>
セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材として大井川水系産陸砂および君津産山砂を9:1の比率で混合した砂、粗骨材として青海産砕石、混練水として水道水を用いた。セメント:573kg/m、水:170kg/m、実施例または比較例の無機粒子用添加剤を所定量で混合し(後述の表7)、強制練りミキサーを用いて60秒混練した後、さらに、細骨材:737kg/m、粗骨材:866kg/mを加えてさらに90秒混練することでコンクリート組成物とした。このコンクリート組成物の細骨材率(細骨材/細骨材+粗骨材)(容積比)は47%、水/セメント比(質量比)は0.30であった。なお、コンクリート組成物の温度が試験温度(約20℃)となるように、材料、強制練りミキサー、測定器具類を上の記試験温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の試験温度雰囲気下で行った。
混練後、フロー値および空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、1日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:100mm×200mm
供試体養生(1日):温度約20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間実施
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
なお、フロー値および空気量の測定は、日本工業規格(JIS−A−1101、1128)に準拠して行った。
〔合成例1〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール147部、アクリル酸12.5部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−50」)0.0807部、連鎖移動剤として2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸0.303部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、共重合体(1)の水溶液からなるセメント用添加剤(1)を得た。得られた共重合体(1)の物性を表1に示した。また、モルタル試験の結果を表3に示した。
〔合成例2〜8〕
3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコールとアクリル酸との組成比A(質量比)を表1のように変え、重合開始剤および連鎖移動剤の量を単量体成分の総モル数に対する各剤のモル比率が合成例1と同じになるように変えた以外は合成例1と同様に行い、共重合体(2)〜(8)の水溶液からなるセメント用添加剤(2)〜(8)を得た。得られた共重合体(2)〜(8)の物性を表1に示した。また、モルタル試験の結果を表3に示した。
Figure 0006966254
〔比較合成例1〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水94.5部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール200部、アクリル酸0.361部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で窒素置換しながら60℃に昇温した後、そこへ重合開始剤である過酸化水素2.00%水溶液11.0部を添加し、アクリル酸16.6部をイオン交換水40.2部に溶解させた液を3時間、連鎖移動剤である3−メルカプトプロピオン酸0.652部を3.5時間、還元剤であるL−アスコルビン酸0.285部をイオン交換水36.5部に溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、共重合体(C1)の水溶液からなるセメント用添加剤(C1)を得た。得られた共重合体(C1)の物性を表2に示した。また、モルタル試験の結果を表3に示した。
〔比較合成例2〜8〕
3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコールとアクリル酸との組成比A(質量比)を表2のように変え、重合開始剤、還元剤および連鎖移動剤の量を単量体成分の総モル数に対する各剤のモル比率が比較合成例1と同じになるように変えた以外は比較合成例1と同様に行い、共重合体(C2)〜(C8)の水溶液からなるセメント用添加剤(C2)〜(C8)を得た。得られた共重合体(C2)〜(C8)の物性を表2に示した。また、モルタル試験の結果を表3に示した。
Figure 0006966254
Figure 0006966254
〔合成例9〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水240部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール139部、アクリル酸18.8部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製の商品名「V−50」)0.436部、2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸1.64部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温した。その後、3時間引き続いて、70℃に温度を維持して重合反応を完結させ、共重合体(9)の水溶液からなるセメント用添加剤(9)を得た。得られた共重合体(9)の物性を表4に示した。また、モルタル試験の結果を表6に示した。
〔合成例10〜17〕
連鎖移動剤の量を表4のように変え、重合開始剤の量を合成例9の重合開始剤と連鎖移動剤の量の比率と同じになるように変えた以外は合成例9と同様に行い、共重合体(10)〜(17)の水溶液からなるセメント用添加剤(10)〜(17)を得た。得られた共重合体(10)〜(17)の物性を表5に示した。また、モルタル試験の結果を表6に示した。
Figure 0006966254
〔比較合成例9〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水90.4部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール191部、アクリル酸0.345部を仕込み、300rpmで攪拌下、反応装置内を500mL/分で窒素置換しながら60℃に昇温した後、そこへ重合開始剤である過酸化水素2.00%水溶液15.0部を添加し、アクリル酸25.5部をイオン交換水22.6部に溶解させた液を3時間、連鎖移動剤である3−メルカプトプロピオン酸3.75部を3.5時間、還元剤であるL−アスコルビン酸0.389部をイオン交換水51.1部に溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、共重合体(C9)の水溶液からなるセメント用添加剤(C9)を得た。得られた共重合体(C9)の物性を表5に示した。また、モルタル試験の結果を表6に示した。
〔比較合成例10〜15〕
連鎖移動剤の量を表5のように変えた以外は比較合成例9と同様に行い、共重合体(C10)〜(C15)の水溶液からなるセメント用添加剤(C10)〜(C15)を得た。得られた共重合体(C10)〜(C15)の物性を表5に示した。また、モルタル試験の結果を表6に示した。
Figure 0006966254
Figure 0006966254
〔実施例1〕
合成例3で得られた共重合体(3)150部および消泡剤(マイクロエア404(MA404)、BASFジャパン株式会社製:ポリアルキレングリコール誘導体)4部を混合し、組成物を調製した。共重合体(3)の配合量が0.150%/C(セメント)となるようにして、上記の手順で圧縮強度試験用試料を作成し、および、1日後の圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。
〔比較例1−1〕
参考合成例3で得られた共重合体(C3)155部および消泡剤(マイクロエア404(MA404)、BASFジャパン株式会社製:ポリアルキレングリコール誘導体)4部を混合し、組成物を調製した。共重合体(C3)の配合量が0.155%/C(セメント)となるようにして、上記の手順で圧縮強度試験用試料を作成し、および、1日後の圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。
〔比較例1−2および1−3〕
表7に示す配合で組成物を調製し、および、圧縮強度試験用試料を作成した。得られた圧縮強度試験用試料の1日後の圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。なお、表中のAE剤はポゾリス社製「MA202」であり、表中の配合量は固形分濃度である。
〔実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−3〕
表7に示す配合で組成物を調製し、および、圧縮強度試験用試料を作成した。得られた圧縮強度試験用試料の1日後の圧縮強度を測定した。結果を表7に示す。
Figure 0006966254
表7における実施例1と比較例1−1〜1−3との比較から明らかなように、本発明の実施例の無機粒子用添加剤は、特定のポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを組み合わせて用いることにより、比較例の無機粒子用添加剤に比べて1日後の圧縮強度が顕著に高いセメント組成物(実施例ではコンクリート組成物)を実現できることがわかる。建設現場における生コンクリートの打設の場合では、1日後などの早期強度が高いほど次工程の打設を早く開始できるため、工期を短縮することができる。また、プレキャスト工法による2次製品を製造する場合にも、早期強度が高いほど脱型までの時間を短縮できるため、生産効率を高めることができる。そのため数%の強度向上であっても、その工業的な意義は非常に大きい。
さらに、表7における実施例2−1〜2−3と比較例2−1〜2−3との比較から明らかなように、本発明の実施例の無機粒子用添加剤は、AE剤を加えて良質な空気を導入した場合であっても、比較例の無機粒子用添加剤に比べて1日後の圧縮強度が有意に高いコンクリート組成物を実現できることがわかる。さらに、本発明の実施例の無機粒子用添加剤は、消泡剤の種類によらずそのような優れた圧縮強度を維持し得ることがわかる。
本発明のポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含む無機粒子用添加剤、代表的にはセメント用添加剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に好適に用いられる。

Claims (5)

  1. ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とを含むセメント用添加剤であって、
    該ポリカルボン酸系共重合体が、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体であって、
    該ポリカルボン酸系共重合体がRAFT重合により得られたものであり、
    該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)が、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である、セメント用添加剤。
    Figure 0006966254
    (一般式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の数であり、xは0〜2の整数である。)
    Figure 0006966254
    (一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH)zCOOM基を表し、−(CH)zCOOM基は−COOX基または他の−(CH)zCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
  2. 前記RAFT重合で用いるRAFT剤が、ジチオエステル、トリチオカルボネート、ジチオカルバメート、キサンタンから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項に記載のセメント用添加剤
  3. 前記ポリカルボン酸系共重合体の分散度が1.0〜1.8である、請求項1または2に記載のセメント用添加剤
  4. 前記ポリカルボン酸系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の質量平均分子量Mwが100000以下である、請求項1からまでのいずれかに記載のセメント用添加剤
  5. ポリカルボン酸系共重合体と消泡剤とセメントとを含むセメント組成物であって、
    該ポリカルボン酸系共重合体が、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体であって、
    該ポリカルボン酸系共重合体がRAFT重合により得られたものであり、
    該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)が、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である、セメント組成物。
    Figure 0006966254
    (一般式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の数であり、xは0〜2の整数である。)
    Figure 0006966254
    (一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH)zCOOM基を表し、−(CH)zCOOM基は−COOX基または他の−(CH)zCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
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