JP6966136B1 - 梯子を3次元可動に保持する足場構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子として提供する。【解決手段】作業現場において作業者のための足場を梯子40として提供する足場構造物10は、(a)4本の支柱50であって、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対であるものと、(b)それら両側の支柱対により、それぞれ、上下方向にスライド可能に支持される左右1対の上下スライダ60,60であって、各支柱対ごとに、それに属する2本の支柱を互いに連結するものと、(c)それら1対の上下スライダのそれぞれにより、両側において前後方向にスライド可能に支持される前後スライダ70であって、前記両側の支柱対を互いに連結するものと、(d)その前後スライダにより、左右方向にスライド可能に支持される左右スライダ80と、(e)その左右スライダに設けられ、梯子40を保持するホルダ90とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、作業現場において作業者のための足場を梯子として実現する技術に関するものであり、特に、その梯子を足場空間内において3次元可動に保持することを可能にする技術の改良に関するものである。
作業現場において作業者が高所作業を行うことが必要である場合がある。ここに、「高所」という用語は、例えば、地表面から2m以上の場所を意味する。この場合、作業者は、地上より浮上した位置に登って空中で本番作業を行うことが必要となる。
このような高所作業を可能にするために、無資格または有資格の作業者が作業現場に足場を一時的に設置する(仮設する、架設する、設営する)ことが既に行われている。
ここに、「足場」という用語は、作業者が足を置ける場所すなわちスペースそのものを意味する場合もあれば、その場所を地上から浮上した空中位置において確保するために使用される構造物すなわち足場構造物を意味する場合もある。
このように、「足場」という用語は多義的であるが、その用語の2つの意味をあえて区別することが必要でない限り、「足場」という用語は、出願書類中、その用語が出現するそれぞれの場所の文脈に応じて解釈される。
現場において足場を用いて行われる一連の作業は、一般に、現場において足場を、必要に応じて組立を行った後に、設置する設置作業と、その足場を用いて本番作業として行われる高所作業と、その本番作業の終了後、前記足場を、必要に応じて解体を行った後に、撤去する撤去作業とに分解される。
ここに、「本番作業」は、例えば、軽作業と重作業とに分類される。
軽作業は、作業者が足場に持ち込む資材、道具等が軽量物であるか、作業対象物に対する実質的な物理的変形を伴わない行為(例えば、点検、修理ないしは補修、シーリングないしは防水処理、外壁洗浄・清掃、窓清掃、塗装、塗り替えなど)を行うものである。
軽作業が行われる作業対象物の例としては、概して平面を成す作業対象面を有するものや、概して曲面を成す対象面を有するものがある。概して平面を成す作業対象面を有する作業対象物の例としては、低層建物の外壁、立て看板の表示面などがあり、また、概して曲面を成す作業対象面を有する作業対象物の例としては、小型船舶(例えば、漁船、プレジャーボート)の船底などがある。
一方、重作業は、作業者が足場に持ち込む資材、道具等が重量物であるか、作業対象物に対する大規模な物理的変形(例えば、組付け、加工など)を行うものである。
また、「作業対象物」も、例えば、それの高さ寸法により、低層対象物(または小型対象物)、中層対象物(または中型対象物)および高層対象物(または大型対象物)に分類される。
具体的には、例えば、作業対象物が建築物である場合には、1−2階建て、すなわち、例えば、高さの上限が5mである対象物が「低層対象物」に分類される。また、3−5階建てが「中層対象物」に分類される。また、6階以上のものが「高層対象物」に分類される。ただし、「低層対象物」という用語は、1−4階建て、すなわち、例えば、高さの上限が10または12mである対象物も含まれるように定義される場合もある。
ところで、上述の「足場構造物」として、例えば、実際の作業対象物の幾何学(例えば、サイズおよび形状)に応じて個別化する(カスタマイズする)ことを必要としない汎用品としての、簡易な構成を有する小型の足場構造物(例えば、足場という用途に特化されない通常の梯子や脚立、足場という用途に特化される脚立であって後述するもの)がある。
ここに、「簡易な構成を有する小型の足場構造物」としては、移動式足場や脚立足場がある。
移動式足場は、それの下部にキャスタ(転動体)を有するとともに、浮上した作業床に作業者が登るための梯子を組み込んでいる。一方、脚立足場は、浮上した作業床に作業者が登るための梯子を踏み板として組み込んでいる。
ここで、移動式足場および脚立足場を対比するに、移動式足場も脚立足場も、作業床を1階層においてのみ、かつ、昇降しない固定部材として有するうえに、足場材が小型であるため、高所での作業に適していない可能性がある。
また、脚立足場は、それ自体、足場設置面上において水平方向に移動不能である。そのため、いちいち脚立足場を足場設置面から持ち上げてその脚立足場を水平に移動させて改めて足場設置面上に設置しない限り、作業者は、定位置にある脚立足場において、作業対象物のうちの作業領域に対して部分的ないしは局所的な作業しか行うことができない。
これに対し、移動式足場は、それ自体、足場設置面上において水平方向に移動可能である。そのため、別の作業者が移動式足場を水平移動させることを条件に、本番作業の作業者は、移動式足場の水平移動により、作業対象物のうちの作業領域に対して水平方向に連続した作業を行うことができる。
しかし、移動式足場は、それ自体、高さ方向には移動不能である。そのため、作業者は、高さ方向に連続した作業を行うことができない。すなわち、作業者は、同じ高さ方向位置において、作業対象物のうちの作業領域に対して部分的ないしは局所的な作業しか行うことができないのである。
前述の「足場構造物」としては、さらに、例えば、実際の作業対象物の幾何学に応じて個別化するために現場での組立を必要とする、より大型であって高所作業に適した足場構造物もある。
ここに、「より大型であって高所作業に適した足場構造物」としては、例えば、昇降可能な作業床を有する形式の足場構造物と、各々、昇降不能である複数階層の作業床を有する形式の足場構造物とがある。
ここに、「昇降可能な作業床を有する形式の足場構造物」としては、例えば、可搬式ゴンドラや昇降式足場がある。可搬式ゴンドラは、低所または高所に設置される巻上機(または巻取ウインチ)によって吊り下げられて昇降させられる。一方、昇降式足場は、昇降用マストを有し、その昇降用マストに案内されつつ作業床が上下動させられる。
これに対し、「各々、昇降不能である複数階層の作業床を有する形式の足場構造物」としては、例えば、高所作業用足場構造物がある。
この高所作業用足場構造物は、例えば、作業者が歩行できるスペース(足の接地面、足場)を提供するための作業床(例えば、複数階層の作業床か、昇降可能な作業床)、および、その作業床を支持するための支柱や土台などの足場材によって構成される。
この高所作業用足場構造物は、一般に、現場において組み立てて設置され、本番作業の終了後、現場において解体して現場から撤去される。このように、この足場構造物は、仮設の構造物として使用される。
いくつかの特許文献には、種々の方式の足場構造物が開示されている。
例えば、特許文献1には、足場として利用される可動梯子が開示されている。この可動梯子によれば、作業者は、自ら前記梯子上を上下移動して、作業者自身の瞬間的な作業位置を上下方向に変更し、それにより、作業を2次元的な目標作業領域(例えば、垂直面)に対して上下方向に連続的に行うことが可能である。
さらに、同文献には、前記梯子の上端に車輪が設けられる一方、作業対象面のうち、前記梯子の上端に水平方向に対向する部位には、前記車輪が走行するためのレールが左右方向に延びるように設けられることも開示されている。そのレールに沿った前記車輪の走行により、作業者は、自ら当該足場上を左右移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を左右方向に変更することが可能である。これにより、作業者は、作業を2次元的な目標作業領域(例えば、垂直面)に対して左右方向に連続的に行うことが可能である。
よって、同文献に開示されている技術によれば、上述の2種類の移動すなわち上下移動および左右移動の組合せにより、作業者は、作業者自身の瞬間的な作業位置を2次元的に変更し、それにより、2次元的な目標作業領域(例えば、垂直面)を全面的にカバーすることが可能となる。
特許文献2には、洞道内への昇降に用いられる可動梯子が開示されている。この可動梯子は、それの一対の縦棒のうちの一方を垂直に延びる揺動軸として、その揺動軸回りに揺動可能である。
特許文献3には、前述の昇降用足場の一例が開示されている。
具体的には、この昇降用足場は、テレスコピックに伸縮可能な支柱であって上下方向に延びるものと、足場としてのゴンドラ式の作業台であって前記支柱によって案内されつつワイヤ巻取機構によって上下動させられるものとを有する。それら支柱と作業台との共同により、作業者は、自ら当該足場上で上下移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を上下方向において変更することが可能である。
この昇降用足場は、さらに、前記支柱の下端に設けられた車輪であって接地させられるものを有する。この車輪の転動により、作業者は、自ら当該足場上で左右移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を左右方向に変更することが可能である。
この昇降用足場は、さらに、前記支柱の上端から、垂直の作業対象面に向かって前後方向に延びるビーム(横架材)であって伸縮可能なものと、そのビームの先端に設けられた車輪であって前記作業対象面に接触して転動させられるものとを有する。そのビームの伸縮により、作業者は、自ら当該足場上で前後移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を前後方向において変更することが可能である。
特開平10−061172号公報 特開2011−247078号公報 特開2001−248295号公報
本発明者は、前述の小型の足場構造物および前述の高所作業用足場構造物について研究を行い、その結果、それら2種類の足場構造物は、二極化された足場構造物の市場を構築するにすぎず、それらの中間に位置付けられる足場構造物のニーズを満たすことができないことに気が付いた。
例えば、目標作業として軽作業が選択され、かつ、作業対象物として低層のものが選択される現場において、前述の小型の足場構造物を用いて作業者のための足場を提供すれば、当該足場構造物の設置作業が簡単であるため、そのための工期も工費も少ないという利点がある。
しかし、この小型の足場構造物を用いる場合には、当該足場構造物の同じ設置位置において作業者が作業できる面積が狭い。そのため、作業者は、当該足場構造物の各設置位置において、作業対象物の全作業領域に対し、部分的な作業しか行うことができない。その結果、その部分的な作業が終了するごとに、当該足場構造物を移動させるという余分な作業が追加される。そのため、本番作業中に、作業者の負担が増し、本番作業のための期間が延びて費用が嵩むおそれがある。
これに対し、軽作業が低層作業対象物に対して行われる上述の現場において、前述の高所作業用足場構造物を用いて作業者のための足場を提供すれば、当該足場構造物の定位置において作業者が作業できる面積が広い。そのため、作業者は、当該足場構造物の定位置において、作業対象物の全作業領域に対し、全面的な作業を行うことができる。よって、本番作業の工期および工費が削減できるという利点があるかもしれない。
しかし、上述の現場においてこの高所作業用足場構造物を用いる場合には、足場の設置・撤去のための工期および工費が、低層対象物に対して軽作業として行われる本番作業のための工期および工費の割に過大である。さらに、この高所作業用足場構造物のサイズが大きすぎて現場に設置できない場合もあるという不都合もある。
本発明者は、さらに、前記研究の成果として次のような知見も得た。
すなわち、本発明者は、特に、作業者が低層の作業対象物に対して軽作業を行うという種類の現場においては、設置および撤去作業のための期間および費用の削減のために、足場構造物の構成簡易化および部品点数の削減が重要であることに気が付いたのである。
本発明者は、さらに、本番作業のための期間および費用の削減のために、足場構造物が、作業者のための足場として梯子を提供し、かつ、本番作業中に作業者がその梯子を足場空間内において3次元的に移動させることを可能にする構造を有することが重要であることに気が付いた。
このような事情を背景とし、本発明は、作業現場において作業者のための足場を梯子として実現するとともに、その梯子を足場空間内において3次元可動に保持することを可能にする技術を提供することを課題としてなされたものである。
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子として提供するために仮設される足場構造物であって、
平面視において正方形または長方形の4つの頂点位置にそれぞれ配置される4本の支柱であって、各々、上下方向に延びるように足場設置面に設置されるとともに、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対であるものと、
左右1対の上下スライダと、
前後スライダと、
左右スライダと、
その左右スライダに設けられ、前記梯子を保持するホルダと
を含み、
前記左右1対の上下スライダは、
各側の支柱対ごとに、それに属する2本の支柱により、それぞれ、上下方向にスライド可能に支持される左右1対の上下スライド部と、
前後方向に延びるとともに、前記左右1対の上下スライド部を互いに連結する前後部材と
を含み、
前記前後スライダは、
各側において、対応する上下スライダのうちの前記前後部材により前後方向にスライド可能に支持される左右1対の前後スライド部と、
左右方向に延びるとともに、前記左右1対の前後スライド部を互いに連結する左右部材と
を含み、
前記左右スライダは、前記左右部材により左右方向にスライド可能に支持される足場構造物が提供される。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子として提供するために仮設される足場構造物であって、
平面視において正方形または長方形の4つの頂点位置にそれぞれ配置される4本の支柱であって、各々、上下方向に延びるように足場設置面に設置されるとともに、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対であるものと、
それら両側の支柱対により、それぞれ、上下方向にスライド可能に支持される左右1対の上下スライダであって、各支柱対ごとに、それに属する2本の支柱を前後方向に互いに連結するものと、
それら1対の上下スライダのそれぞれにより、両側において前後方向にスライド可能に支持される前後スライダであって、前記両側の支柱対を左右方向に互いに連結するものと、
その前後スライダにより、左右方向にスライド可能に支持される左右スライダと、
その左右スライダに設けられ、前記梯子を保持するホルダと
を含む足場構造物。
(2) 作業者は、前記1対の上下スライダ、前記前後スライダおよび前記左右スライダを選択的に用いることにより、前記ホルダを、前記梯子を保持している梯子保持状態にあるか否かを問わず、上下方向、前後方向および左右方向に選択的に移動させ、それにより、作業者が自ら当該足場構造物および前記梯子上を移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を3次元的に変更することが可能である(1)項に記載の足場構造物。
(3) 前記梯子保持状態において、作業者は、自ら前記梯子上を上下移動することにより、作業者自身の瞬間的な作業位置を上下方向に変更することが可能である(2)項に記載の足場構造物。
(4) 各支柱は、前記1対の上下スライダを上下移動可能に案内する上下ガイドとして機能し、
各上下スライダは、前記前後スライダを前後移動可能に案内する前後ガイドとして機能し、
前記前後スライダは、前記左右スライダを左右移動可能に案内する左右ガイドとして機能する(1)ないし(3)項のいずれかに記載の足場構造物。
(5) 各支柱は、パイプとして構成され、
各側の上下スライダは、
各々、上下方向に延びる前後1対の上下パイプであって、それぞれの内周面において、対応する片側の支柱対に属する2本の支柱にそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものと、
前後方向に延びる前後パイプであって、対応する側の1対の上下パイプを互いに連結するものと
を含み、
前記前後スライダは、
左右方向に延びる左右部材と、
その左右部材の両端においてそれぞれ前後方向に延びる左右1対の前後パイプであって、それぞれの内周面において、前記1対の上下スライダにおける左右1対の前後パイプにそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものと
を含み、
前記左右スライダは、左右方向に延びる左右部材を有し、その左右部材は、前記前後スライダにおける左右部材にスライド可能に支持される(1)ないし(4)項のいずれかに記載の足場構造物。
(6) 当該足場構造物は、相対変位可能に互いに係合させられる複数の構造部材を含み、
それら構造部材は、前記梯子に登っている作業者から外力を受けると、弾性的なたわみおよび/またはねじりが発生し、それらたわみおよび/またはねじりが発生すると、前記複数の構造部材のうち互いに係合させられるものの間に、隙間が減少する向きおよび/または摩擦力が増加する向きの相対変位が発生し、
その相対変位により、前記複数の構造部材間の相対変位が制限または阻止され、それにより、前記1対の上下スライダ、前記前後スライダおよび前記左右スライダのうち少なくとも1つがセルフロックし、そのセルフロックにより、作業中における前記梯子の上下方向位置、前後方向位置および左右方向位置のうち対応するものが安定化する(1)ないし(5)項のいずれかに記載の足場構造物。
(7) 各側の上下スライダは、対応する側における前後パイプの下方においてそれに対して平行に延びるとともに、対応する側における前後1対の上下パイプを互いに連結する前後部材を含み、
その前後部材は、前後方向に延びるガイド・レールを定義しており、
前記前後スライダは、
左右方向に延びる左右部材と、
その左右部材の両端においてそれぞれ前後方向に延びる左右1対の前後パイプと、
前記左右部材の両端においてそれぞれ少なくとも下方に延びる左右1対の垂下部材と、
それら1対の垂下部材の下端にそれぞれ設けられた左右1対の転動体と
を含み、
各側の転動体は、対応するガイド・レール上を転動して前後移動することが可能であり、よって、作業者は、前記前後スライダがセルフロックしない状態で、前記前後スライダを、前記転動体によって低減された摩擦抵抗のもとに、前後移動させることが可能である(1)ないし(6)項のいずれかに記載の足場構造物。
(8) 当該足場構造物は、前記4本の支柱のうち平面視において後側に位置する2本の支柱によって定義される基準平面において作業者の作業対象物に対向し、
その作業対象物は、平面視において、前記基準平面に対して凸または凹に湾曲した曲面を有し、
作業者は、前記前後スライダを、平面視において、作業者自身の瞬間的な作業位置が前記作業対象物の前記曲面に倣って変化するように、左右方向位置に応じて異なる移動量で前後移動させることが可能である(1)ないし(7)項のいずれかに記載の足場構造物。
(9) 前記左右スライダは、前記前後スライダにおける左右部材の中心線またはそれに対して平行な軸線回りに揺動可能であるように、前記前後スライダにおける左右部材によって支持され、それにより、作業者が前記梯子の傾角を調整することが可能である(1)ないし(8)項のいずれかに記載の足場構造物。
(10) 当該足場構造物は、前記4本の支柱のうち平面視において後側に位置する2本の支柱によって定義される基準平面において作業者の作業対象物に対向し、
前記ホルダは、前記梯子を前記基準平面に対し、前記梯子が上端において下端におけるより前記基準平面から水平方向に離れた後傾姿勢で保持することが可能である(1)ないし(9)項のいずれかに記載の足場構造物。
(11) 前記梯子が前記ホルダによって前記後傾姿勢で保持されている状態において、フレキシブルであるとともに有端または無端である少なくとも1本の連続体であって概して水平方向に延びるものが、前記梯子と、前記基準平面を構成する2本の支柱のうちの少なくとも一方またはそれから延び出すエクステンション部材のうちの少なくとも一つとに張り掛けられ、それにより、前記梯子が前記後傾姿勢で固定される(10)項に記載の足場構造物。
図1は、本発明の例示的な一実施形態に従う足場構造物を例示的な作業対象物と共に概念的に示す斜視図である。 図2は、図1に示す足場構造物において、その足場構造物によって3次元可動に支持される梯子に作業者が登っている状態で、その作業者から足場設置面まで荷重が負荷される経路を概念的に表す系統図である。 図3は、図1に示す足場構造物を方位の用例と共に示す正面図である。 図4は、図1に示す足場構造物を方位の用例と共に示す側面図である。 図5は、図1に示す足場構造物を方位の用例と共に示す平面図である。 図6(a)は、図1に示す1対の上下スライダから片側の上下スライダを取り出して示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)に示す例示的な前後部材を取り出して示す斜視図である。 図7(a)は、図1に示す前後スライダを取り出して示す斜視図であり、同図(b)は、その前後スライダのうちの左右構造体を示す断面図であり、同図(c)は、その前後スライダにとっての補助的要素としての転動体を示す断面図である。 図8(a)は、図1に示す前後スライダをアンロック状態で示す側面断面図であり、同図(b)は、その前後スライダをセルフロック状態で示す側面断面図である。 図9は、図1に示す左右スライダを取り出して示す斜視図である。 図10(a)は、図9に示す左右スライダをそれが梯子を直立姿勢で保持する状態で示す断面図であり、同図(b)は、前記左右スライダをそれが梯子を後傾姿勢で保持する状態で示す断面図であり、同図(c)は、前記左右スライダをそれが梯子を前傾姿勢で保持する状態で示す断面図である。 図11(a)は、図1に示す足場構造物が、梯子を図10(b)に示す後傾姿勢で保持する場合に、その梯子をその後傾姿勢で固定するために、連続体が、梯子と、当該足場構造物の4本の支柱のうち後側に位置する2本の支柱とに張り掛けられる様子を例示的に示す斜視図であり、同図(b)は、側面図である。 図12は、図1に示す足場構造物に関連して行われる複数の例示的な作業を示す工程図である。 図13(a)−(b)は、作業者が図1に示す足場構造物を用いて梯子を少なくとも左右方向と上下方向とに移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業を時系列的に示す2つの正面図である。 図14(a)は、作業者が図1に示す足場構造物を用いて梯子を少なくとも左右方向に移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業を説明するための平面図であり、同図(b)は、作業者が図1に示す足場構造物を用いて梯子を少なくとも左右方向と前後方向とに移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業を説明するための平面図である。
以下、本発明のさらに具体的な例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の例示的な一実施形態に従う足場構造物10が、例示的な作業対象物20と共に、概念的に斜視図で示されている。この足場構造物10は、作業対象物20を有する作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子40として提供するために作業現場に仮設される。作業対象物20は、高さが約4mまたは約5mを超えないというように、低層に分類される。
梯子40は、よく知られているように、複数本の横桟41(図11参照。)がそれぞれの両端において左右1対の縦棒42,42(同図参照。)によってそれぞれ連結されることによって構成されている。梯子40は、伸縮式でもよいし、固定式でもよい。また、梯子40は、個々の種類の足場構造物10に専用のものであっても、すべての種類の足場構造物10に共用される汎用品であってもよい。
足場構造物10は、平面視において正方形または長方形の4つの頂点位置にそれぞれ配置される4本の支柱50,50,50,50を有する。各支柱50は、上下方向に延びるように足場設置面(例えば、地盤面、地表面、接地面、支持面など)に設置される。各支柱50の一例は、丸パイプとして構成される。4本の支柱50,50,50,50のうち、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱50,50は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対(以下、それらを「両側の支柱対」と総称することもある。)である。
足場構造物10は、さらに、それら左側の支柱対および右側の支柱対により、それぞれ、上下方向(X方向)にスライド可能に支持される左右1対の上下スライダ60,60を有する。それら上下スライダ60,60は、各側の支柱対ごとに、それに属する2本の支柱50,50を前後方向に互いに連結し、それにより、それら2本の支柱50,50を前後方向に拘束してそれらの間の前後方向間隔を規定する。
足場構造物10は、さらに、それら1対の上下スライダ60,60のそれぞれにより、両側において前後方向(Z方向)にスライド可能に支持される前後スライダ70を有する。その前後スライダ70は、前記両側の支柱対を左右方向に互いに連結し、それにより、それら2本の支柱50,50を左右方向に拘束してそれらの間の左右方向間隔を規定する。
足場構造物10は、さらに、その前後スライダ70により、左右方向(Y方向)にスライド可能に支持される左右スライダ80と、その左右スライダ80に設けられ、梯子40を保持するホルダ90とを有する。
この足場構造物10によれば、作業者は、1対の上下スライダ60,60、前後スライダ70および左右スライダ80を選択的に用いることにより、ホルダ90を、梯子40を保持している梯子保持状態にあるか否かを問わず、上下方向、前後方向および左右方向に選択的に移動させ、それにより、作業者が自ら足場構造物10および梯子40上を移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を3次元的に変更することが可能である。
さらに、この足場構造物10によれば、作業者は、前記梯子保持状態において、自ら梯子40上を上下移動することにより、作業者自身の瞬間的な作業位置を上下方向に変更することが可能である。
図1に示すように、この足場構造物10においては、立設された複数本の支柱50によって1対の上下スライダ60,60が支持され、それら上下スライダ60,60によって前後スライダ70が支持され、その前後スライダ70に左右スライダ80が支持され、その左右スライダ80によって梯子40が支持される。
換言するに、この足場構造物10においては、左右両側の支柱対にそれぞれ、左右1対の上下スライダ60が横架され、さらに、それら左右1対の上下スライダ60,60に前後スライダ70が横架され、さらに、その前後スライダ70に左右スライダ80が支持され、さらに、その左右スライダ80に梯子40が保持されるというように、支柱50、上下スライダ60、前後スライダ70、左右スライダ80および梯子40が互いに直列連鎖的に連携させられる。
さらに、この足場構造物10においては、各支柱50が、1対の上下スライダ60,60を上下移動可能に案内する上下ガイドとして機能し、また、各上下スライダ60が、前後スライダ70を前後移動可能に案内する前後ガイドとして機能し、また、前後スライダ70が、左右スライダ80を左右移動可能に案内する左右ガイドとして機能する。
図2には、足場構造物10において、その足場構造物10によって3次元可動に支持される梯子40に作業者が登っている状態で、その作業者から足場設置面まで荷重が負荷ないしは伝達される経路が概念的に系統図で表されている。
同図に示すように、本実施形態においては、梯子40に作業者が乗っている状態では、作業者の重量が、梯子40、左右スライダ80、前後スライダ70および1対の上下スライダ60,60を順に経て、足場設置面に伝達される。
1対の上下スライダ60,60、前後スライダ70および左右スライダ80は、それらの順に、それぞれのスライダ60,70,80が負担する荷重、すなわち、それぞれのスライダ60,70,80が重力に抗して支持する荷重(それぞれのスライダ60,70,80に発生する抗力)が増加し、ひいては、それぞれのスライダ60,70,80に発生する摩擦力すなわち摺動抵抗が増加して各スライダ60,70,80のスライドすなわち摺動が困難となる。
図3には、足場構造物10が方位の用例と共に正面図で示されている。同図に示すように、左右1対の支柱50,50は、それらの下端において足場設置面に接地されるか、地中に埋設されるか、または地中に(別の杭を用いるなどして)打ち込まれることによって支持され、一方、それらの上端においては、任意選択的に、同図に示すように、左右に延びる左右連結部材100によって互いに連結される。
図4には、足場構造物10が方位の用例と共に側面図で示されている。同図に示すように、前後1対の支柱50,50は、それらの下端において足場設置面に接地されるか、地中に埋設されるか、または地中に(別の杭を用いるなどして)打ち込まれることによって支持され、一方、それらの上端においては、任意選択的に、前後に延びる前後連結部材102によって互いに連結される。
図5には、足場構造物10が方位の用例と共に平面図で示されている。
この足場構造物10のサイズは、高さが約4m、横幅が約6m、奥行きが約3mである。
<上下スライダ>
図6(a)には、1対の上下スライダ60,60のうちの一方が代表的に斜視図で示されている。
各側の上下スライダ60は、各々、上下方向に延びる前後1対の上下パイプ110,110であって、それぞれの内周面において、対応する片側の支柱対に属する2本の支柱50,50にそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものを有する。
各側の上下スライダ60は、さらに、前後方向に延びる前後パイプ112であって、対応する側の1対の上下パイプ110,110を互いに連結するものと、その前後パイプ112の下方においてそれに対して平行に延びるとともに、対応する側における前後1対の上下パイプ110,110を互いに連結する前後部材114とを有する。
各上下パイプ110は、対応する支柱50の断面形状と同種または相似である断面形状(例えば、丸パイプに角パイプを組み合わせるというように、異種の断面形状でも可)を有する。例えば、支柱50が丸パイプまたは丸棒であれば、各上下パイプ110も丸パイプとして構成され、また、支柱50が角パイプまたは角棒であれば、各上下パイプ110も角パイプとして構成される。
本実施形態においては、前後パイプ112が丸パイプとして構成されるが、他の断面形状を有するパイプまたは棒として構成されてもよい。
さらに、本実施形態においては、上下スライダ60の、各支柱50に対する相対スライドが、パイプ嵌合構造、すなわち、小径のパイプが大径のパイプ内に少なくとも軸方向に摺動可能に嵌合される構造によって実現される。
本実施形態においては、各側の前後部材114が、ガイド・レール(前後方向に延びる案内部材)として機能するために、リップ溝形鋼として構成される。よって、前後部材114(以下、「ガイド・レール」ともいう。)は、同図(b)に示すように、ウェブ115と、1対のフランジ116,116と、各フランジ116の先端から内向きに突き出して隙間を隔てて対向する1対のリップ118,118とを有する。前後部材114は、一対のリップ118,118において上を向く姿勢で、1対の上下パイプ110,110間に介在させられる。
後に詳述するように、前後スライダ70および左右スライダ80は、いずれも、各スライダ70,80が支持する荷重(自重および他の物体の重量)が抗力として作用して摩擦力が発生する水平方向摺動面を有するため、梯子40に作業者が乗っている状態では、作業者および梯子40の合計重量に応答する摩擦力に連動してセルフロックし、それにより、前後スライダ70および左右スライダ80の予定外の前後移動および左右移動が阻止される。
これに対し、上下スライダ60は、それが支持する荷重が抗力として摩擦力が発生する水平方向摺動面を有しないため、梯子40に作業者が乗っている状態では、作業者および梯子40ならびに前後スライダ70および左右スライダ80の合計重量に応答するセルフロックは発生しない。
そのため、上下スライダ60には、各支柱50上において任意の上下方向位置に一時的に固定するために、落下防止対策が講じられる。その落下防止対策としては、例えば、上下パイプ110の下端より下方に、ストッパを各支柱50に着脱可能に装着するという対策や、各支柱50の外周面にめねじを形成し、その外周面より大径のナットを各支柱50のめねじに上下動可能に螺合し、そのナットをストッパとして機能させるという対策がある。
ここに、各支柱50に着脱可能に装着される「ストッパ」としては、丸パイプ材に、その丸パイプ材の任意の軸方向位置に着脱可能に取り付けられるパイプ・ストッパと称される市販の取付金具がある。その取付金具は、各々、概して半円環状を成す2つのC字状部材を有し、それら2部材の結合状態において、全体として概してリング状を成し、丸パイプ材の外周面に一致する内周面を有し、一方、それら2部材の分離状態において、それら2部材が丸パイプ材から取り外される。
<前後スライダ>
図7(a)に斜視図で示すように、前後スライダ70は、左右方向に延びる左右構造体120と、その左右構造体120の両端においてそれぞれ前後方向に延びる左右1対の前後パイプ122,122であって、それぞれの内周面において、1対の上下スライダ60,60における左右1対の前後パイプ112,112にそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものとを有する。
各前後パイプ122は、対応する前後パイプ112の断面形状と同種または相似である断面形状(例えば、丸パイプに角パイプを組み合わせるというように、異種の断面形状でも可)を有する。例えば、前後パイプ112が丸パイプまたは丸棒であれば、各前後パイプ122も丸パイプとして構成され、また、前後パイプ112が角パイプまたは角棒であれば、各前後パイプ122も角パイプとして構成される。
本実施形態においては、前後パイプ122が丸パイプとして構成されるが、他の断面形状を有するパイプまたは棒として構成されてもよい。
さらに、本実施形態においては、前後スライダ70の、各前後パイプ112に対する相対スライドも、上下スライド60と同様に、前述のパイプ嵌合構造によって実現される。
図7(a)には斜視図で、同図(b)には縦断面図でそれぞれ示すように、左右構造体120は、本実施形態においては、複合部材として構成されており、具体的には、左右構造体120は、左右方向に延びる丸パイプとして構成される上段パイプ130と、左右方向に延びる角パイプとして構成される中段パイプ132と、概して左右方向に延びる丸パイプとして構成される下段パイプ134とが、同一垂直面内において上下方向に接合されて構成されている。
上段パイプ130の上面は、図10を参照して後述するように、左右スライダ80とのスライド面を提供する。中段パイプ132は、上段パイプ130を下方から支持してその上段パイプ130を補強するように機能する。下段パイプ134は、中段パイプ132を下方から支持してその中段パイプ132を補強するために上に凸のアーチ状を成している。
図7(a)に示すように、上段パイプ130と中段パイプ132とは、同軸に延びる直線領域においてほぼ全面的に接合されるのに対し、中段パイプ132と下段パイプ134とは、軸方向における中央位置においてのみ接合される。
本実施形態においては、上段パイプ130と中段パイプ132とがいずれも、丸パイプとして構成されるのではなく、上段パイプ130は丸パイプとして、中段パイプ132は角パイプとして、すなわち、水平で平坦な上面を有する構造部材として構成されている。
よって、本実施形態によれば、上段パイプ130と中段パイプ132とがいずれも丸パイプとして構成される場合より、各パイプの製造ばらつきや組付けばらつきの影響を受けることなく、上段パイプ130と中段パイプ132とが、同軸に延びる直線領域においてほぼ全面的に接合されることが確保される。
本実施形態においては、中段パイプ132をその下方から補強するために下段パイプ134が存在し、それら中段パイプ132と下段パイプ134との間に複数本の垂下部材140が左右方向に離散的に介在させられている。各垂下部材140は、それより上方に位置する上段パイプ130および中段パイプ132から作用する垂直力を軸力として受ける部材として作用する。
それら垂下部材140のうち、最も外側の2本の垂下部材140L,140Rが、それぞれ、上段パイプ130の両端またはそれぞれの近傍から垂下している。
<セルフロック機構>
図8(a)には、前後スライダ70がアンロック状態で示されており、同図(b)には、セルフロック状態で示されている。
同図(a)および(b)に概念的に示すように、上下スライダ60の前後パイプ112(以下、説明の便宜上、「不動パイプ112」と称する。)と前後スライダ70の前後パイプ122(以下、説明の便宜上、「スライダ122」と称する。)とは、無負荷状態と負荷状態とに切り換わる。
同図(a)に示すように、無負荷状態は、不動パイプ112およびスライダ122が梯子40の重量は負担するが作業者の重量は負担しない状態として定義される。この無負荷状態においては、梯子40の重量が不動パイプ112およびスライダ122にそれぞれ集中荷重として作用する。
これに対し、同図(b)に示すように、負荷状態は、不動パイプ112およびスライダ122がそれぞれ、梯子40の重量および作業者の重量の双方を負担する状態として定義される。この負荷状態においては、梯子40の重量と作業者の重量との双方が、不動パイプ112およびスライダ122にそれぞれ集中荷重として作用する。
不動パイプ112は、負荷状態において、無負荷状態におけるより、たわみが大きく、湾曲も大きくなる。
これに対し、スライダ122は、例えば、(a)不動パイプ112より長さが短い(例えば、不動パイプ112の有効長さの約2分の1、約3分の1などである)という理由と、(b)不動パイプ112が一対の支柱50,50によって両端支持(両端固定支持または両端可動支持)されるのに対してスライダ122は両端支持状態にないという理由とのために、負荷に応じて発生する最大曲げモーメントが小さく、よって、負荷の有無を問わず、スライダ122は、実質的に弾性変形せず、直線性が実質的に維持されると推測される。
よって、同図(a)に概念的に示すように、無負荷状態においては、不動パイプ1120のたわみが小さいため、不動パイプ112の外周面とスライダ122の内周面との間に隙間が残っている。その結果、両者間の摩擦力が小さく、スライダ122が、不動パイプ112に対し、回転方向にも軸方向にもスライド可能である状態、すなわち、アンロック状態にある。
その「アンロック状態」においては、作業者が梯子40を前後移動させることが可能である。
これに対し、同図(b)に概念的に示すように、負荷状態においては、不動パイプ112のたわみが、無負荷状態より大きいため、不動パイプ112の外周面とスライダ122の内周面との間に残っている隙間が減少する。その結果、両者間の摩擦力が増加し、スライダ122が、不動パイプ112に対し、回転方向にも軸方向にも全くスライドしないかまたはスライドが困難である状態、すなわち、セルフロック状態に移行する。
ここに、「セルフロック状態」は、不動パイプ112とスライダ122との間の摩擦力によってスライダ122が不動パイプ112に固着(ロック)する状態を意味する。また、その「セルフロック状態」においては、作業者が梯子40を前後移動させることが不可能であるかまたは困難である。
以上要するに、本実施形態においては、主として不動パイプ112の力作用状態が負荷状態にあるか無負荷状態にあるかに応じ、不動パイプ112とスライダ122との間に有効な摩擦力(スライダ122が不動パイプ112に固着するために必要な大きさの摩擦力)が選択的に発生し、それに機械的にないしは自動的に連動して、左右スライダ80および梯子40がセルフロック(変位阻止)状態とアンロック(変位許可)状態とに切り換わるのである。
よって、本実施形態においては、この足場構造物10が、相対的に軸移動可能に互いに係合させられる複数の構造部材として不動パイプ112とスライダ122とを含み、それら構造部材は、梯子40に登っている作業者から外力を受けると、弾性たわみが発生する。その弾性たわみが発生すると、前記複数の構造部材のうち互いに係合させられるものの間に、隙間が減少する向きおよび/または摩擦力が増加する向きの相対変位が発生する。
その相対変位により、前記複数の構造部材間の相対軸移動が制限または阻止され、それにより、前後スライダ70がセルフロックし、そのセルフロックにより、作業中における梯子の前後方向位置が安定化する。
本実施形態においては、上述のセルフロックの原因事象として、互いに係合する複数の構造部材間に発生する弾性たわみが選択されているが、これに代えてまたはこれに加えて、それら構造部材間に発生する弾性ねじりを選択してもよい。
<任意選択的な付属品としての転動体>
図7(a)に斜視図で示すように、最も外側の2本の垂下部材140の下部にそれぞれ、前後スライダ70にとっての補助的要素(補助スライダ)としての転動体150が任意選択的な付属品として装着されている。ただし、同図には、左側の転動体150のみが代表的に示されている。
ところで、本実施形態においては、1基の足場構造物10において、セルフロック機能が発動されていない限り、作業者が梯子40を上下移動、前後移動および左右移動を選択的に行うことが可能である。
それら3種類の移動を使用頻度に関して比較すると、通常の作業現場においては、それら3種類の移動のうち、左右移動が必須であるうえに使用頻度が他より高いのに対し、上下移動および前後移動は選択的であるうえに使用頻度が他より低い。しかし、後に図14(b)を参照して詳述するように、特殊な作業現場においては、前後移動の使用頻度が、通常の作業現場における前後移動の使用頻度よりも、上下移動の使用頻度よりも高い可能性がある。
一方、作業者は、梯子40の左右移動を行うために、梯子40の重量および左右スライダ80の重量(前後スライダ70より横寸法も高さ寸法も短いうえに構造も単純であるため、かなり軽量である)に起因する摩擦力に打ち勝てばよいのに対し、梯子40の前後移動を行うためには、左右移動に必要な荷重に、左右スライダ80の重量を加算したものに打ち勝たなければならない。そのため、前後スライダ70を前後移動させるために作業者が前後スライダ70に付加すべき力が増加し、作業者の負担が増す。
そこで、本実施形態においては、前後移動の使用頻度が通常の作業現場におけるより高い場合を想定し、そのような場合であっても作業者が梯子40を小さい力で簡単に前後移動させることを可能にするために、前後スライダ70に左右両側にそれぞれ、摺動抵抗を低減させるために転動体150,150が装着されている。
各側の転動体150は、対応する前記ガイド・レール上を転動して前後移動することが可能である。よって、作業者は、前後スライダ70がセルフロックしない状態で、その前後スライダ70を、転動体150,150によって低減された摩擦抵抗のもとに、前後移動させることが可能である。
図7(a)および(c)に示すように、左側および右側の転動体150,150は、いずれも、フレーム152の前後にそれぞれ車輪対154,154が装着されることによって構成される。同図(c)に断面図で示すように、垂下部材140とフレーム152との間に、両者間の高さ方向距離を調整するための高さ調節機構160が装着されている。その高さ調節機構160により、各車輪の接地面(トレッド下面)の、上段パイプ130の中心線の高さ位置に対する相対位置が調節される。
同図(c)に示すように、前後の車輪対154,154に属する複数の車輪のそれぞれは、前記ガイド・レールとして機能する前後部材114のウェブ115の内面(車輪のトレッド下面が接地する面)に接地させられる。
高さ調節機構160により、前後の車輪対154,154のそれぞれのトレッド下面と上段パイプ130の中心線との間の高さ方向距離が、上下スライダ60のうちの前後パイプ112(図6(a)参照)の中心線と、前後部材114のウェブ115の内面(車輪が接地する面、車輪が転動する面、車輪が走行する面)との間の高さ方向距離に一致するように調節される。
これにより、前後の車輪対154,154のそれぞれのトレッド下面と前後部材114のウェブ115の内面(ガイド・レール)との間に、適度な摩擦力が発生しないという事象も、過大な摩擦力が発生するという事象も発生せずに済む。
<セルフロックの解除>
作業者は、梯子40を前後移動させるために前後スライダ70のセルフロックを解除しなければならない。そのために、作業者は、自重が前後スライダ70に作用しない位置、例えば、上下スライダ60の前後パイプ(不動パイプ)112のうち前後スライダ70の前後パイプ(スライダ)122によって覆われていない部分上の位置、足場設置面上の位置などに一時的に退避することが必要である。
前後スライダ70がセルフロックしない状態において、作業者または別の作業者は、前後スライダ70ひいては梯子40を小さい力で前後移動させることが可能である。
または別の作業者
<左右スライダ>
図9には、左右スライダ80が斜視図で示されている。また、図10には、左右スライダ80が、梯子40を、側面視において、傾倒可能に保持する様子が状態(保持姿勢、保持モード)別に断面図で示されている。
具体的には、左右スライダ80が、図10(a)の断面図には、梯子40を直立姿勢で保持する状態で示され、同図(b)の断面図には、梯子40をそれの上端において作業対象面から遠ざかる後傾姿勢で保持する状態で示され、同図(c)の断面図には、梯子40をそれの上端において作業対象面に接近する前傾姿勢で保持する状態で示されている。
左右スライダ80は、左右方向に延びる左右部材170を有する。その左右部材170は、前後スライダ70における左右構造体120のうちの上段パイプ130に接触する状態でスライド可能すなわち摺動可能に支持される。
本実施形態においては、左右部材170が溝形チャンネルとして構成されている。よって、左右部材170は、図10(a)に示すように、ウェブ172と、一対のフランジ174,174とを有する。この左右部材170は、それの開放面が下を向く姿勢、すなわち、ウェブ172の内面において上段パイプ130の外周面のうちの上部に接触する姿勢で、前後スライダ70に対して相対的に配置されている。
本実施形態においては、左右スライダ80の左右部材170が、前後スライダ70の上段パイプ130の外周面のうちの上部のうちの軸方向領域に接触する状態で、側面視において、その軸方向接触領域を中心に、前後に揺動可能に支持される。
したがって、この足場構造物10は、梯子40を、上下軸(X)、前後軸(Z)および左右軸(Y)に沿って3次元並進運動および左右軸(X)回りの回転運動というように4自由度運動を行い得るように保持する。
さらに、作業者は、梯子40に沿った自らの上下移動により、梯子40上の昇降可能であるという事実も併せて考慮すると、この足場構造物10は、梯子40を5自由度運動を行い得るように保持することになる。
本実施形態においては、左右部材170が、開放面を有するC字状断面の溝形チャンネルとして構成されており、それにより、左右部材170が前後スライダ70に分離可能に装着されている。
しかし、これに代えて、左右部材170を上段パイプ130より大径の丸パイプとして構成し、上段パイプ130とパイプ嵌合構造を実現するようにしてもよい。この変形例によれば、左右部材170が上段パイプ130に分離不能に装着されるとともに、垂直面上において、上段パイプ130回りにがたなく円滑に揺動可能となる。その結果、作業者が梯子40の傾角を調整することが可能となる。
<セルフロック機構>
作業者が梯子40に乗っている負荷状態においては、梯子40および作業者の合計重量が左右スライダ80に作用するから、その左右スライダ80と前後スライダ70の上段パイプ130との間の摩擦力が大きい。よって、左右スライダ80はセルフロックして同じ左右方向位置に固定される。
<セルフロックの解除>
これに対し、作業者が梯子40に乗っていない無負荷状態、すなわち、作業者が前後スライダ70の上段パイプ130のうち左右スライダ80によって覆われていない部分に退避しているかまたは足場設置面上の位置に退避している状態においては、梯子40の重量しか左右スライダ80に作用しないから、その左右スライダ80と前後スライダ70の上段パイプ130との間の摩擦力が小さい。
この無負荷状態においては、左右スライダ80がセルフロックせず、よって、作業者または別の作業者は、左右スライダ80ひいては梯子40を小さい力で左右移動させることが可能である。
<梯子用のホルダ>
図9に示すように、左右スライダ80は、さらに、左右部材170の前側フランジ174の外面に装着された一対のホルダ90,90を有する。それらホルダ90,90は、それらに適用可能な複数種類の梯子40の一対の縦棒42,42(図11(a)参照)間の間隔についての複数の寸法バリエーションに適合する間隔を隔てて配置される。
図10に示すように、各ホルダ90は、概して角筒状を成す筒部180と、それの下端面を閉塞する底板182とを有する。その底板182の内面すなわち上向き面に、使用する梯子40の下端が接触状態で支持される。同図に示すように、各ホルダ90は、筒部180の後面において左右スライダ80の左右部材170の前側フランジ174の外面に装着される。
同図(a)に示すように、梯子40の直立姿勢においては、梯子40が、4本の支柱50,50,50,50のうち後側の2本の支柱50,50によって定義される基準平面に正対する。ここに、「基準平面」は、図1,図10および図11にそれぞれ示す作業対象面に対して概して平行である。
これに対し、同図(b)および(c)には、梯子40の非直立姿勢が示されている。具体的には、同図(b)に示すように、梯子40の後傾姿勢においては、梯子40が、基準平面に対し、梯子40の上端において下端におけるより基準平面より遠ざかる。また、同図(c)に示すように、梯子40の前傾姿勢においては、梯子40が、基準平面に対し、梯子40の上端において下端におけるより基準平面に接近する。
通常、梯子40は、非直立姿勢で使用される。図10(b)に示す梯子40の後傾姿勢は、図11(a)−(b)に概念的に示すように、フレキシブルであるとともに有端または無端である少なくとも1本の連続体(例えば、ワイヤ、ロープ、ケーブル、チェーンなど)200を、概して水平方向に延びるように、後側の2本の支柱50,50の外面と梯子40の前面(作業対象物20から見れば、梯子40の背面)とに張り掛けることによって実現される。
少なくとも1本の連続体200の一例は、複数本の連続体200であり、それら連続体200は、例えば、互いに異なる高さレベルに配置される。
少なくとも1本の連続体200の別の例は、少なくとも1本の有端である連続体200であり、その有端の連続体200は、概して水平方向に延びるとともに梯子40の一対の縦棒42,42においてそれぞれ終端を有するように梯子40と後側の2本の支柱50,50とに張り掛けられる。
図11(a)には、足場構造物10が梯子40を図10(b)に示す後傾姿勢で保持する場合に、その梯子40をその後傾姿勢で固定するために、連続体200が、梯子40と、当該足場構造物20の後側の2本の支柱50,50とに張り掛けられる様子が例示的に斜視図で示されており、同図(b)は、その様子が側面図で示されている。
図示しないが、連続体200は、自身の長さを調節し、それにより、梯子40の傾角および/または連続体200のテンションを調節する長さ調節機構を有する。その長さ調節機構の例としては、荷締めベルト・ユニットまたはラッシングベルト・ユニットがある。
後側の2本の支柱50,50のそれぞれの側面に、各段の連続体200の高さ位置を規定するための複数の位置規定具210(例えば、J字状のフック)が恒久的にまたは着脱可能に装着されている。それら位置規定具210は、各高さレベルごとに各支柱50に装着される。左右1対の位置規定具210により、張り掛けられる1本の連続体200の経路が規定される。
これに対し、図10(c)に示す梯子40の前傾姿勢は、例えば、梯子40をそれの上端が作業対象面に突き当たるまで傾倒させることによって実現してもよい。
ここで、梯子40を後傾姿勢で使用する場合の特徴と前傾姿勢で使用する場合の特徴とを比較する。
図10(b)および図11に示すように、梯子40の後傾姿勢においては、梯子40の上向き面が作業者の背面および両足を支持する。よって、このように作業者が梯子40に背を向けて梯子40に登っているとき、作業者の両手は、梯子40から解放可能であるため、作業者は両手を使って高所作業を行い得る。
一方、図10(c)に示すように、梯子40の前傾姿勢においては、梯子40の上向き面が作業者の両手両足を支持する。そのため、この姿勢では、作業者が両手を梯子40から完全に解放すると、梯子40上での作業者の姿勢が安定しないため、作業者の両手を高所作業に使用することは困難である。
さらに、梯子40を前傾姿勢で使用する場合には、梯子40が、それの上端において、作業対象物20の作業対象面にもたれかかるために、そのの作業対象面の一部が梯子40によって邪魔される。そのため、作業者は、梯子40を左右方向にずらして作業領域を確保することを余儀なくされる。
これに対し、梯子40を後傾姿勢で使用する場合には、梯子40が、それの上端において、作業対象物20の作業対象面にもたれかかることが不要となる。よって、その作業対象面の一部が梯子40によって邪魔されずに済む。その結果、作業者は、作業領域を確保するために梯子40を左右方向に移動させることが必要になるとしても、その頻度が減少し、作業性が向上する。
さらに、本実施形態においては、図11に示すように、連続体200が有端であるものとされており、それにより、次の特有な効果が得られる。
本実施形態においては、各段(各垂直レベル、各高さレベル)ごとに、1本の連続体200(複数本の連続体200の直列組合体でも可)が、平面視において、一対の支柱50,50の背後(例えば、作業対象面の手前)を通過する姿勢で、一対の支柱50,50に対して相対的に少なくとも左右方向にスライド可能に接触する。
よって、本実施形態においては、作業者が梯子40を左右方向に移動させると、それに連れて、1本の連続体200が水平方向に一体的に移動(周回)し、その一体的移動に伴い、1本の連続体200が一対の支柱50,50の外面上を左右方向にスライドする。すなわち、1本の連続体200は、一対の支柱50,50の周りを梯子40の横移動に連れて回るのである。
図11に例示するように、本実施形態によれば、梯子40と連続体200との一体性(一体運動性)のおかげで、梯子40が意に反して、連続体200上をスライドして左右方向に傾斜し、やがては転倒することが阻止される。その結果、使用中の梯子40の姿勢安定性が向上し、ひいては、作業安全性が向上する。
よって、本実施形態によれば、一対の支柱50,50間の左右方向領域全域内の任意の位置、特に、各支柱50の近傍の左右方向端位置に梯子40の左右方向位置を変更して高所作業をしても、梯子40の姿勢安定性が確保される。
なお、本実施形態においては、連続体200が、概して水平方向に延びるように梯子40と後側の2本の支柱50,50とに張り掛けられる。
これに対し、作業者による左右方向作業領域をそれら支柱50,50の外側(側方)に拡大することが必要である場合には、それら支柱50,50のうちの少なくとも一方に、それから側方に延び出すエクステンション部材(例えば、パイプ材)を装着し、そのうえで、連続体200を、概して水平方向に延びるように梯子40と、前記エクステンション部材の先端またはそれの近傍と、他方の支柱50とに張り掛けてもよい。
<全体的な作業工程>
図12には、足場構造物10に関連して行われる複数の例示的な作業が工程図で示されている。
<1.組立・設置作業>
作業者は、1基または複数基である必要数の足場構造物10を分解状態で作業現場に搬入した後、まず、第1の工程において、各足場構造物10の設置場所を選定する。その後、作業者は、各足場構造物10を現場で組み立て、続いて、その完成状態にある各足場構造物10を、選定された設置場所に設置する。
足場構造物10は、例えば、梯子40と、パイプ群としての4本の支柱50,50,50,50、1本の左右連結部材100および1本の前後連結部材102と、1対の上下スライダ60,60と、1基の前後スライダ70と、1基の左右スライダ80と、上段および中段の(2本の)連続体200,200と、後側の2本の支柱50,50に取り付けられる4個の位置規定具210とを含む複数の個別部品の集まりとして分解された状態で現場に搬入される。
ただし、3種類のスライダ60,70,70のうち少なくとも1対の上下スライダ60,60は、前後スライダ70との組付けを可能とするため、それぞれ、1対の上下パイプ110,110と、1本の前後パイプ112と、1本の前後部材114(ガイド・レール)とを含む複数の個別部品の集まりとして分解された状態で現場に搬入される。
本実施形態においては、搬送および保管の便宜上、設置されるべき足場構造物20が分解状態で現場に搬入されるが、完成状態で現場に搬入し、組立作業なしで現場に設置してもよい。この場合には、設置完了までの時間が短縮し、さらに、撤去作業に必要な時間も短縮する。
足場構造物10の設置に際し、作業者は、4本の支柱50,50,50,50を足場設置面に立設する。このとき、作業者は、4本の支柱50,50,50,50を、平面視において、所定の間隔で、かつ、側面視において、互いに平行に、かつ、いずれも鉛直方向に延びるように足場設置面に設置する。
本実施形態においては、4本の支柱50,50,50,50が所定の間隔で、かつ、互いに平行に、かつ、いずれも鉛直方向に延びるように足場設置面に設置されれば、その足場設置面が水平面であるか斜面であるかを問わず、1対の上下スライダ60,60がそれぞれ水平姿勢で、それら支柱50に対して相対的に上下移動させられることが保証される。
本実施形態においては、上下スライダ60が支柱50に対して軸方向移動可能かつ任意の軸方向位置に停止可能に係合させられる。よって、本実施形態によれば、各スライダ60,70,80の動作特性が、足場設置面の傾斜の影響に対して鈍感となり、安定化する。
<2.本番作業>
図13(a)−(b)には、作業者が足場構造物10を用いて梯子40を少なくとも左右方向と上下方向とに移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業が時系列的に2つの正面図で示されている。
作業者は、足場構造物10の設置が完了すると、まず、ステップS1において、目標の作業対象物20の作業対象面に対し、作業者自身の瞬間的な複数の作業位置(以下、単に「作業位置」ともいう。)のうち最初のもの(例えば、図13(a)参照。)を設定する。
続いて、作業者は、梯子40を最初の作業位置に位置決めする。このとき、作業者は、梯子40に対し、上下移動、前後移動および左右移動を選択的に行い、それにより、梯子40を最初の作業位置に到達させる。
次に、作業者は、ステップS2において、今回の作業位置において、本番作業(高所作業、軽作業)を、作業対象面のうち今回の作業位置に対応する部分領域に対して部分的に行う。複数の作業位置についての複数の部分作業の集まりによって作業対象面が全面的にカバーされる。
続いて、作業者は、ステップS3において、今回の作業位置が、同じ作業対象面についての最後の作業位置(例えば、図13(b)参照。)であるか否かを判定する。
今回の作業位置は、最後の作業位置ではないから、その後、作業者は、ステップS4において、作業位置を変更する。
作業位置が変更される際にそれがたどり得る経路は、複数種類存在する。図13に示す例においては、一方向の左右移動と、一方向の上下移動と、逆方向の左右移動とが順に行われ、それにより、作業対象面が全面的に2次元的に走査される。
具体的には、同図(a)に示すように、上下スライダ60が下段位置にある状態で、作業者は、左右スライダ80を用いて梯子40を一方向に左右移動させつつ、作業対象面のうちの下段作業帯域に対して連続的に本番作業を行う。
下段作業帯域についての本番作業が終了すると、作業者は、同図(b)に示すように、上下スライダ60を上段位置に上昇させ、その状態で、左右スライダ80を用いて梯子40を逆方向に左右移動させつつ、作業対象面のうちの上段作業帯域に対して連続的に本番作業を行う。
図14(a)には、作業者が足場構造物10を用いて梯子40を少なくとも左右方向に移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業が平面図で示されており、また、同図(b)には、作業者が足場構造物10を用いて梯子40を少なくとも左右方向と前後方向とに移動させつつ作業者が行う例示的な本番作業が平面図で示されている。
同図(a)に例示するように、作業対象面が平面である場合には、本番作業に先立ち、梯子40を前後移動させて最初の前後方向位置に位置決めした後、本番作業中、特別な事情がない限り、梯子40の再度の前後移動は不要である。
これに対し、同図(b)に例示するように、作業対象面が、平面視において、作業者に向かって凸となる非平面(例えば、曲面、段差を有する表面、断面が急変する表面)である場合には、本番作業に先立ち、梯子40を前後移動させて最初の前後方向位置に位置決めした後、本番作業中、梯子40を、各回の作業位置が正対する作業対象面の前後方向位置に追従するように前後移動させることが必要である。
その後、作業者は、ステップS2において、今回の作業位置において、本番作業を作業対象面のうち今回の作業位置に対応する部分領域に対して部分的に行う。
ステップS1−S4の実行が反復された結果、ステップS3において、今回の作業位置が最後の作業位置であると判定されるに至ると、今回の本番作業が終了する。
本実施形態において、「本番作業」は、軽作業を意味する。その軽作業は、作業者が足場に持ち込む資材、道具等が軽量物であるか、作業対象物20に対する実質的な物理的変形を伴わない行為(例えば、点検、修理ないしは補修、シーリングないしは防水処理、外壁洗浄・清掃、窓清掃、塗装、塗り替えなど)を行うものである。
軽作業が行われる作業対象物20の例としては、概して平面を成す対象面を有するものや、概して曲面を成す対象面を有するものがある。概して平面を成す対象面を有する作業対象物20の例としては、低層建物の外壁、立て看板の表示面などがあり、また、概して曲面を成す対象面を有する作業対象物20の例としては、小型船舶(例えば、漁船、プレジャーボート)の船底などがある。
<3.解体・撤去作業>
作業者は、使用済の足場構造物10を複数の部品に解体し、それら部品を現場から搬出することにより、足場構造物10を現場から撤去する。
<実施形態による効果>
本実施形態によれば、足場構造物10が前述の小型の足場構造物と前述の高所作業用足場構造物との中間に位置付けられるというように、低層の作業対象物20に適した新規の分類に属する足場構造物20が提供される。
さらに、本実施形態によれば、一対の上下スライダ60,60および前後スライダ70が、梯子40の上下移動および前後移動という機能に加えて、4本の支柱50,50,50,50を互いに連結するとともにそれら支柱50に目標のジオメトリー(相対位置関係)を提供する機能を有する。
その結果、本実施形態によれば、それら支柱50を連結するための専用部品を完全に省略できるか、または、完全に省略できないとしてもその部品点数を削減することが容易となる。よって、本実施形態によれば、足場構造物10の組立および解体が容易となり、その結果、足場構造物10の設置および撤去作業のための期間および費用の削減が容易となる。
さらに、本実施形態によれば、足場構造物10が、作業者のための足場として梯子40を提供し、かつ、本番作業中に作業者が梯子40を足場空間内において3次元的に移動させることが可能である。その結果、本実施形態によれば、足場空間内における梯子40の移動自由度が向上し、本番作業の効率が向上し、ひいては、本番作業のための期間および費用の削減が容易となる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

Claims (11)

  1. 作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子として提供するために仮設される足場構造物であって、
    平面視において正方形または長方形の4つの頂点位置にそれぞれ配置される4本の支柱であって、各々、上下方向に延びるように足場設置面に設置されるとともに、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対であるものと、
    左右1対の上下スライダと、
    前後スライダと、
    左右スライダと、
    その左右スライダに設けられ、前記梯子を保持するホルダと
    を含み、
    前記左右1対の上下スライダは、
    各側の支柱対ごとに、それに属する2本の支柱により、それぞれ、上下方向にスライド可能に支持される左右1対の上下スライド部と、
    前後方向に延びるとともに、前記左右1対の上下スライド部を互いに連結する前後部材と
    を含み、
    前記前後スライダは、
    各側において、対応する上下スライダのうちの前記前後部材により前後方向にスライド可能に支持される左右1対の前後スライド部と、
    左右方向に延びるとともに、前記左右1対の前後スライド部を互いに連結する左右部材と
    を含み、
    前記左右スライダは、前記左右部材により左右方向にスライド可能に支持される足場構造物。
  2. 作業者は、前記1対の上下スライダ、前記前後スライダおよび前記左右スライダを選択的に用いることにより、前記ホルダを、前記梯子を保持している梯子保持状態にあるか否かを問わず、上下方向、前後方向および左右方向に選択的に移動させ、それにより、作業者が自ら当該足場構造物および前記梯子上を移動することなく、作業者自身の瞬間的な作業位置を3次元的に変更することが可能である請求項1に記載の足場構造物。
  3. 前記梯子保持状態において、作業者は、自ら前記梯子上を上下移動することにより、作業者自身の瞬間的な作業位置を上下方向に変更することが可能である請求項2に記載の足場構造物。
  4. 各支柱は、前記1対の上下スライダを上下移動可能に案内する上下ガイドとして機能し、
    各上下スライダは、前記前後スライダを前後移動可能に案内する前後ガイドとして機能し、
    前記前後スライダは、前記左右スライダを左右移動可能に案内する左右ガイドとして機能する請求項1ないし3のいずれかに記載の足場構造物。
  5. 作業現場において作業者のための足場を3次元可動型の梯子として提供するために仮設される足場構造物であって、
    平面視において正方形または長方形の4つの頂点位置にそれぞれ配置される4本の支柱であって、各々、上下方向に延びるように足場設置面に設置されるとともに、前後方向に隣り合うように対を成す2対の支柱は、それぞれ、左側の支柱対および右側の支柱対であるものと、
    左右1対の上下スライダと、
    前後スライダと、
    左右スライダと、
    その左右スライダに設けられ、前記梯子を保持するホルダと
    を含み、
    各側の上下スライダは、
    各々、上下方向に延びる前後1対の上下パイプであって、それぞれの内周面において、対応する片側の支柱対に属する2本の支柱にそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものと、
    前後方向に延びるとともに、対応する側の1対の上下パイプを互いに連結する前後部材
    を含み、
    前記前後スライダは、
    左右方向に延びる左右部材と、
    その左右部材の両端においてそれぞれ前後方向に延びる左右1対の前後パイプであって、それぞれの内周面において、前記1対の上下スライダにおける左右1対の前後部材にそれぞれの外周面においてスライド可能に嵌合されるものと
    を含み、
    前記左右スライダは、左右方向に延びる左右部材を有し、その左右部材は、前記前後スライダにおける左右部材にスライド可能に支持される足場構造物。
  6. 当該足場構造物は、相対変位可能に互いに係合させられる複数の構造部材を含み、
    それら構造部材は、前記梯子に登っている作業者から外力を受けると、弾性的なたわみおよび/またはねじりが発生し、それらたわみおよび/またはねじりが発生すると、前記複数の構造部材のうち互いに係合させられるものの間に、隙間が減少する向きおよび/または摩擦力が増加する向きの相対変位が発生し、
    その相対変位により、前記複数の構造部材間の相対変位が制限または阻止され、それにより、前記1対の上下スライダ、前記前後スライダおよび前記左右スライダのうち少なくとも1つがセルフロックし、そのセルフロックにより、作業中における前記梯子の上下方向位置、前後方向位置および左右方向位置のうち対応するものが安定化する請求項1ないし5のいずれかに記載の足場構造物。
  7. 各側の上下スライダは、対応する側における前後部材の下方においてそれに対して平行に延びるとともに、対応する側における前後1対の上下パイプを互いに連結する第2の前後部材を含み、
    その第2の前後部材は、前後方向に延びるガイド・レールを定義しており、
    前記前後スライダは、
    前記左右部材と、
    前記左右1対の前後パイプと、
    前記左右部材の両端においてそれぞれ少なくとも下方に延びる左右1対の垂下部材と、
    それら1対の垂下部材の下端にそれぞれ設けられた左右1対の転動体と
    を含み、
    各側の転動体は、対応するガイド・レール上を転動して前後移動することが可能であり、よって、作業者は、前記前後スライダがセルフロックしない状態で、前記前後スライダを、前記転動体によって低減された摩擦抵抗のもとに、前後移動させることが可能である請求項5に記載の足場構造物。
  8. 当該足場構造物は、前記4本の支柱のうち平面視において後側に位置する2本の支柱によって定義される基準平面において作業者の作業対象物に対向し、
    その作業対象物は、平面視において、前記基準平面に対して凸または凹に湾曲した曲面を有し、
    作業者は、前記前後スライダを、平面視において、作業者自身の瞬間的な作業位置が前記作業対象物の前記曲面に倣って変化するように、左右方向位置に応じて異なる移動量で前後移動させることが可能である請求項1ないし7のいずれかに記載の足場構造物。
  9. 前記左右スライダは、前記前後スライダにおける左右部材の中心線またはそれに対して平行な軸線回りに揺動可能であるように、前記前後スライダにおける左右部材によって支持され、それにより、作業者が前記梯子の傾角を調整することが可能である請求項1ないし8のいずれかに記載の足場構造物。
  10. 当該足場構造物は、前記4本の支柱のうち平面視において後側に位置する2本の支柱によって定義される基準平面において作業者の作業対象物に対向し、
    前記ホルダは、前記梯子を前記基準平面に対し、前記梯子が上端において下端におけるより前記基準平面から水平方向に離れた後傾姿勢で保持することが可能である請求項1ないし9のいずれかに記載の足場構造物。
  11. 前記梯子が前記ホルダによって前記後傾姿勢で保持されている状態において、フレキシブルであるとともに有端または無端である少なくとも1本の連続体であって概して水平方向に延びるものが、前記梯子と、前記基準平面を構成する2本の支柱のうちの少なくとも一方またはそれから延び出すエクステンション部材のうちの少なくとも一つとに張り掛けられ、それにより、前記梯子が前記後傾姿勢で固定される請求項10に記載の足場構造物。
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