JP6966050B2 - 凍結保存のための方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生物学的試料の凍結保存のための氷を含まない方法、そのような方法で使用するための組成物、使用するための組成物を含むパッケージ、および新規な方法によって保存された試料に関する。
凍結保存は、試料を例えば−80℃、−136℃または−196℃のような非常に低い温度に冷却し、長期間維持することを含む生物学的試料の保存に使用される技術である。生物学的試料を低温に冷却することによって、そうでなければ試料を劣化させることになる化学的または酵素的反応の速度は、試料がもはや劣化しないか、または非常に遅い速度でしか分解しない程度まで減速される。結果として、生物学的試料は、長期間にわたり保存することができ、次いで、使用および/または分析のために必要とされるような周囲温度に戻すことができる。
しかしながら、冷却プロセスは生物学的試料に有害な影響を及ぼし、これらの技術の全てに本質的な制限はあるものの、これらの影響を緩和するために、凍結保存に対する多くの技術が開発されている。従来の凍結保存技術は、制御された冷却を含み、氷結晶の形成をもたらす。代替の氷を含まない技術であるガラス化は、冷却時の氷結晶の形成を回避し、代わりに非晶質ガラスへの水の固化を伴う。
凍結保存プロセス中の生物学的試料への損傷は、主として冷却/凍結段階および加温段階中に起こる。溶液効果、細胞外氷形成、細胞内氷形成、膜効果、溶質毒性および脱水は、いずれも試料の損傷につながる。これらの影響のいくつかは、凍結保存サイクル中に既知の保護効果を有する化合物を導入することによって低減させることができる。凍結保存時において保護効果を与える化合物は、凍結保護剤または凍結保護添加剤(CPA)と称される。
生物学的試料が凍結保存時に遭遇し得る様々なストレスがあり、これらのストレスおよびそれらの細胞レベルへの影響の例には、i)温度の低下−それは膜の脂質相の変化および/または細胞骨格の解重合を潜在的に引き起こす可能性がある、ii)溶質濃度における増加、例えば溶液中の溶質の濃度は、溶媒の一部が凍結するにつれて増加する−それは浸透圧性収縮をもたす可能性がある、iii)イオン濃度の上昇−それは膜タンパク質の可溶化を含む膜への直接的影響を有し得る、iv)脱水−それは脂質二重層の不安定化を引き起こす可能性がある、v)塩の沈殿および共晶形成−それはメカニズムは十分に理解されていないが、細胞の損傷を引き起こす可能性がある、vi)ガス泡の形成−それは機械的損傷を引き起こす可能性がある、vii)粘度の増加−それは浸透作用を含む拡散プロセスに影響を及ぼす可能性がある、viii)pHの変化−それはタンパク質等の変性を引き起こす可能性がある、およびix)細胞が密に詰まること−それは膜を損傷する可能性がある。したがって、これらの様々なストレスへの生物学的試料の曝露を最小限に抑える凍結保存技術が必要とされている。
標準的な凍結保存技術(時として、従来の、または平衡凍結保存と称される)において、細胞またはバイオマスは、制御された速度にて、冷凍庫、またはMr Frosty(登録商標)またはCellCoolのような、より安価なデバイスのいずれかで特定の速度で冷却される。試料温度がその平衡融点を下回ると、氷が形成され始め(核生成)、氷結晶が核形成点から試料全体に広がり、多くの場合、修復不可能な損傷を引き起こす。氷形成プロセスが進行するにつれて、細胞などの生物学的試料は、氷の間の溶質−高密度チャネルに濃縮され、これらのチャネル自体が(ガラス化によって)固化するまで濃縮され、試料は指定の保存温度で保存される。
これらの氷が存在する凍結保存技術は、起こり得る直接的な氷の損傷のために、組織および器官の保存には一般的に不適切であると考えられている。簡単に言えば、氷結晶は細胞の間で拡大したり、細胞内にて成長したりして、組織マクロ構造の破壊、ひいては組織の機能を破壊する可能性がある。実際のところ、いくらかの細胞外氷は器官や組織で支えられるが、細胞内の氷はほとんどの場合は細胞にとって致命的である。今日までに、氷が存在する系で成功裏に凍結保存された哺乳動物の唯一の器官は羊の卵巣であり、これらは、ほとんどの器官または実際に組織工学的構築物よりもはるかに小さい(非特許文献1)。
従来の凍結保存は多数の用途に対して実績のある技術ではあるが、その用途は、一般に、細胞または小さな凝集体の懸濁液に限定される。組織、器官、または多細胞生物のような体積が1mmを超える生検試料では、氷での損傷に起因して凍結および解凍時に許容できない損傷が材料に生じる。
ガラス化は、平衡凍結保存とは対照的に、氷を含まない(ice−free)凍結保存技術である。冷却時の氷の成長を回避するために、ガラス化において様々なメカニズムが利用されている。ガラス化は、ガラス化/凍結保存媒体中にある試料を、氷結晶を形成させることなく、そのガラス化/凍結保存媒体のガラス転移温度(Tg)未満にすることに依存する。ガラス転移温度より低い温度では、系の粘度が増加し、最終的に溶媒/媒質(medium)が固化して、生物学的試料が非晶質固体ガラス化/凍結保存媒体の低温マトリックス内に存在する安定な試料を送達する。
ガラス化による凍結保存は、通常、凍結保存媒体を含む凍結保護剤(CPA)を冷却前に生物学的試料に添加することを伴い、それは媒体および試料の水性成分の凍結温度を低下させ、また試料の水性成分の粘度を増加させ、それにより、平衡凍結点以下の冷却中の氷結晶の形成は回避され、液体と固体状態との間の移行は結晶化を伴わない。しかしながら、生物学的試料のガラス化は、典型的には急速冷却、例えば10,000℃/分以上の冷却速度を必要とし、これは本質的に非常に小さい試料サイズへのアプローチを制限する。典型的には、ガラス化試料は、1mm以下の内径を有するストロー中に提示される。より大きな試料については、ガラス化を得ることは非常に困難である。
ガラス化は、急速冷却と高圧の同時適用との組み合わせによっても達成され得るが、これは高コストを伴い、熟練したオペレータを必要とする。冷却前のガラス化プロセスにおいてジメチルスルホキシド(DMSO)のような高濃度の溶質を添加することは有用であるが、得られた溶液の生物学的試料への毒性が多くの場合観察される一方で、これらの高粘度液体を複雑な組織へ灌流/拡散させることは難しい。
少量の液体中の哺乳類の胚および卵母細胞のガラス化(氷を含まない凍結保存)は、細胞の生存能力および機能を保持するのに有効であることが実証されている。しかしながら、広範な研究にもかかわらず、より大きな生物学的試料のガラス化は、加温時に生存能力および機能を保持することが実証されておらず、主として、これは、十分に迅速に冷却/加温速度を達成し、氷核形成を回避し、凍結保護剤の毒性を最小限に抑えることが実際には困難であるという結果となるように思われる。
多くの組織および組織工学によって作製された器官は、患者または培養物から取り出した後に保存可能期間がない。これは、これらの材料を使用する技術の浪費および損害につながり、従って、そのようなジャストインタイム製造は、通常、組織工学によって作製された構築物にとって実現可能ではない。従って、より良好な保存のための方法、例えば本明細書に記載の方法が必要とされる。
Campbellら、Human Reproduction、2014年8月、第29巻、第8号、1749−1763頁
本発明の目的は、生体試料、特に既存の技術で凍結保存することができない組織または組織構築物などの試料の保存に適した改良された氷を含まない凍結保存技術を提供することである。本発明の目的は、本明細書に記載の方法において凍結保存媒体として使用するための組成物を提供することでもある。
第1の態様において、本発明は、凍結保存媒体(cryopreservation medium)としての非ニュートン流体の使用を含む、生物学的試料の凍結保存のための方法を提供する。
本発明はまた、少なくとも1つの応力を適用することによって本明細書にて使用される凍結保存媒体の粘度の調節を含む凍結保存のための方法に関する。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、氷を含まない方法である。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの応力(stress)を用いて、凍結保存媒体のずり減粘(shear thinning)(すなわち粘度を低下させる)を行うことができる。ずり減粘を行うために使用される応力は、本明細書では、ずり減粘応力と称される。本発明の方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの応力を用いて、凍結保存媒体のずり増粘(shear thickenining)(すなわち粘度を増大させる)を行うことができる。ずり増粘をもたらすために使用される応力は、本明細書ではずり増粘応力と称される。いくつかの実施形態では、同方法は、2つ以上の応力を連続的に適用すること、すなわち1つずつを順に適用することを含むことができる。いくつかの実施形態では、同方法は、第1の非ニュートン流体挙動を生成するために第1の応力を一定期間適用し、次いで第2の非ニュートン流体挙動を生成するために第1の応力の大きさを変更することを含む。いくつかの実施形態では、同方法は、第1のずり減粘応力および第2のずり増粘応力を適用することを含むことができる。いくつかの実施形態では、応力は、機械的手段、音波的手段、磁気的手段または電磁気的放射手段または複数のこれらの手段の組み合わせによって同時にまたは逐次的に適用される。
いくつかの実施形態では、凍結保存媒体の平衡融点から40℃までの温度でずり減粘応力が適用され、試料、例えば組織試料または工学的に作製された組織構築物において、凍結保護剤(CPA)の灌流および/または拡散が促進される。いくつかの実施形態では、冷却が開始される前に、または冷却が開始されると同時に、ずり増粘応力が適用される。
一般に、実施形態における冷却速度は100℃/分未満である。いくつかの好ましい実施形態では、冷却速度は50℃/分未満、例えば20℃/分未満、例えば10℃/分未満、例えば5℃/分未満、または約1℃/分である。
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、本明細書に記載の方法によって試料を保存し、すなわち凍結保存するステップと、試料をそのガラス転移点まで加温するステップと、ガラス転移温度以下またはガラス転移温度にて、試料の温度がその凝固点を上回るまでずり増粘応力を適用するステップと、を含む。
いくつかの実施形態において、本発明に従う方法は、凍結乾燥のための試料を調製するために使用され得る。そのような実施形態では、上記および本明細書に詳述された方法を用いて試料をガラス化した後、試料を凍結乾燥させる、すなわち凍結乾燥装置に取り出し、水またはその大部分が除去される。これにより、有利には、凍結乾燥が従来の方法によって可能な方法と比較して、より効果的に行うことができる。これにより、凍結乾燥のコストを有利に低減することができ、または凍結乾燥によって得られる生成物を改善することができる。
本発明はまた、非ニュートン流体特性を有する凍結保存媒体組成物、ならびにこのような媒体の使用を含む方法に関する。
一般に、本発明に従う凍結保存媒体組成物は、同凍結保存媒体組成物に非ニュートン特性を付与する目的にて平均粒子サイズが10μm以下の粒状材料を含む。凍結保存媒体に非ニュートン特性を与えることができる10μm以下の平均粒子サイズを有する粒状材料は、非ニュートン添加剤(NNA)と称される。
好ましい実施形態では、非ニュートン流体凍結保存媒体は、10μm以下の平均粒子サイズを有する2重量%〜約60重量%の粒状材料、すなわちNNAを含み、残りの質量はCPAおよび水である。例えば、54gのNNAおよび合計で46gの水およびCPAを含む凍結保存媒体は、54wt%のNNAおよび合計で46wt%の水およびCPAを含む凍結保存媒体組成物と称することができる。疑念を避けるために、%wtまたはwt%は、組成物全体における等価および平均重量パーセントである。したがって、本発明に従う凍結保存媒体100gの量は、2g〜60gの非ニュートン添加剤を含む。いくつかの好ましい実施形態では、凍結保存媒体組成物は、2重量%〜55重量%のNNA、例えば5重量%〜40重量%または10重量%〜35重量%のNNAを含む。いくつかの実施形態では、NNAは1μm以下の粒子サイズ、例えば1〜100nmのサイズのナノ粒子を有する。いくつかの実施形態では、粒状NNA材料は、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、アルミナ、石英、酸化鉄、合成ポリマーまたは生物学的に誘導されたポリマー、またはこれらの材料の2つ以上の混合物から選択される。NNAが材料の混合物である場合、これは、ずり減粘挙動およびずり増粘挙動の両方を伴う凍結保存媒体を提供するために有利に利用され得る。いくつかの好ましい実施形態では、生物学的に誘導されるポリマーNNAは、天然デンプンまたはその誘導体、例えばヒドロキシエチルデンプンである。いくつかの実施形態では、NNAはシリカ、例えばシリカボールである。いくつかの実施形態では、NNAは酸化鉄、例えば酸化鉄ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、NNAは、ポリマーマトリックス中にカプセル化された酸化鉄などの強磁性材料である。
いくつかの好ましい実施形態では、非ニュートン流体凍結保存媒体は水溶液または懸濁液である。
いくつかの実施形態において、非ニュートン流体凍結保存媒体は、溶媒の40重量%(40wt%)までの量にて、例えば10重量%〜40重量%の量にて凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、C−Cアルコール、1,2−イソプロピルジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グルコース、単糖類、二糖類(スクロース、トレハロース、ラクトース)、多糖類(ラフィノース、デキストラン)、フィコール(ficoll)(登録商標)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリジン、またはこれらの作用剤の2つ以上の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド、グリセロール、グルコース、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、またはこれらのCPAの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施形態において、非ニュートン流体凍結保存媒体は、10重量%以上の水、例えば30重量%以上、40重量%以上または50重量%の水を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用するための本発明の凍結保存媒体は、非ニュートン添加剤としてのHESを含む。いくつかの実施形態において、凍結保存媒体は、40重量%〜60重量%の量のHES(ヒドロキシエチルデンプン)を含み、ずり増粘特性が望ましい好ましい場合、組成物は、48重量%〜54重量%のHESを含む。
本発明の凍結保存媒体が非ニュートン添加剤としてHESを含む実施形態では、凍結保存媒体が5重量%〜20重量%のCPA、例えば10重量%〜15重量%のCPAを含むことが好ましい。そのような組成物におけるCPAは、単一のCPAまたは2つ以上のCPAの組み合わせ、例えば2つのCPAであってもよい。いくつかの実施形態では、HESを含む組成物はまた、単一のCPAとしてDMSOを含むか、或いは、DMSOとスクロース、グルコース、グリセロール、ラフィノース、フルクトース、トレハロースまたはラクトースから選択されるCPAとの組み合わせ、或いは、スクロース、グルコース、グリセロール、ラフィノース、フルクトース、トレハロースまたはラクトースの組み合わせも含む。スクロース、グルコース、グリセロール、ラフィノース、フルクトース、トレハロースまたはラクトースと組み合わせて、或いは、スクロース、グルコース、グリセロール、ラフィノース、フルクトース、トレハロースまたはラクトースから選択される2つ以上のCPAと組み合わせてDMSOを使用する組成物において、他のCPAに対するDMSOの重量比は1:2〜2:1である。したがって、一実施形態では、本発明は、48〜54重量%のHESと、5重量%〜20重量%のCPA、またはCPAと水との組み合わせ、例えば48〜54重量%のHES、10重量%〜15重量%のCPA、またはCPAと水との組み合わせと、を含む組成物の凍結保存媒体を提供する。いくつかの実施形態では、組成物のCPA成分は、5重量%のDMSOおよび10重量%のスクロース、グルコース、グリセロール、ラフィノース、フルクトース、トレハロースまたはラクトースである。いくつかの実施形態では、50重量%のHESおよび40重量%までのCPAを含有する凍結保存媒体組成物が提供され、残りは水である。
さらなる態様において、本発明は、本発明に従う凍結保存媒体を含むパッケージを提供する。いくつかの実施形態では、容器は、アンプルまたは輸液バッグなどのような密閉されたパッケージである。いくつかの実施形態では、パッケージは無菌パッケージである。いくつかの実施形態において、パッケージは、再構成のために、水を含まないおよび/または溶媒を含まない形態で提供される。
更なる態様では、本発明は、凍結保存媒体に非ニュートン流体特性を与えるために、10mm以下の平均粒子サイズを有する粒状材料の使用に関する。いくつかの実施形態では、使用する粒状材料は、デンプンまたは例えばヒドロキシエチルデンプンのようなデンプン誘導体、シリカ、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、石英、酸化鉄またはポリ塩化ビニル若しくはポリスチレンのような合成ポリマーである。いくつかの実施形態では、使用のための粒状材料は、ヒドロキシエチルデンプン、酸化鉄またはシリカから選択される。
さらなる態様において、本発明は、本明細書および上記に記載された方法に従って保存された試料、例えば組織試料または組織工学によって作製された構築物を提供する。
本発明をよりよく理解できるように、以下の図を参照する。
ずり速度の関数としてのHES、DMSOおよび水を含む様々な凍結保存媒体のずり減粘挙動およびずり増粘挙動を示す。 室温でのずり速度の関数としての、HES、凍結保護剤の選択されたもの、および水を含む様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 25℃および0℃における様々な凍結保存媒体のずり増粘挙動を示す。 50重量%のHES、15重量%のCPAおよび35重量%のHOを含有する凍結保存媒体組成物のずり増粘挙動における温度の影響を示す。 種々のSiO含有水溶液のずり減粘挙動を示す。 CaO含有凍結保存媒体組成物のずり減粘挙動を示す。
本発明の方法では、凍結保存媒体の非ニュートン流体特性を利用して、凍結保存プロセスの相に対して適切な凍結保存媒体の粘度を調節する、即ち、(ずり増粘を介して)増大させる、(ずり減粘を介して)減少させる。凍結保護剤(CPA)コロイド溶液は、当初、有機組織に灌流および/または拡散させるのに数分かかる可能性があり、ある程度のずり応力を誘発すると、この粘度(すなわち、凍結保護剤コロイド溶液または凍結保存媒体の粘度)を低下させて灌流時間を短縮することができるので、凍結保存媒体の粘度を低減させることは有利であり得る。CPA毒性は時間依存性であるので、潅流状態の間の総毒性は、灌流時間の短縮の関数として減少する。
本明細書に記載されているようなずり応力を適用することによって凍結保存媒体の粘度を増加させることが有利に使用され、水の凝固点未満の温度まで冷却しながら試料中の氷の結晶の形成を回避し、従って、氷の結晶の成長を実質的にまたは完全に排除することができる。この粘度調節効果は解凍サイクル時においても等しく重要である。その理由は、増大した粘度にて加熱することは、凍結保存プロセスのこの段階での氷結晶化の可能性を回避するか、または少なくとも実質的に低減するからである。
好都合なことに、いくつかの非ニュートン流体、例えば本発明のいくつかの凍結保存媒体は、第1の大きさ(amplitude)またはタイプのずり応力の適用時にずり減粘され、第1の大きさまたはタイプのずり応力の適用時にはずり増粘される。結果として、本発明は、凍結保存プロセスにおけるずり減粘およびずり増粘の二重の利点が、単一の凍結保存サイクルにおいて利用され得る、そのような方法で使用するための凍結保存方法および凍結保存媒体を包含する。
非ニュートン流体特性を利用することによって凍結保存媒体の粘度を増加させるもう1つの有利な特徴は、当技術分野のガラス化方法で使用される冷却速度よりもはるかに低い冷却速度を適用することができ、したがって組織試料および最新の技術を形成する方法で凍結保存することができない構築物の実際の凍結保存をもたらす。
さらに、凍結保存媒体の非ニュートン流体特性を利用することにより、凍結保護剤または凍結保護添加剤(CPA)の量を減少させることができ、および/またはCPAを試料中に灌流および/または拡散させるのに要する時間を短縮することができ、これは、凍結保存プロセス中にCPAが生体試料に及ぼすいかなる毒性効果をも有利に低減させることができる。凍結保存媒体の粘度を低下させることは、細胞内および細胞外ドメイン中の平衡イオンまたは溶質濃度をシフトさせることによって、および/または細胞膜を横切るイオン/溶質輸送を加速することによって、従って、平衡が得られる速度を加速することによって、細胞膜を横切る流体の輸送を潜在的に改善し得る。
凍結保存媒体の粘度の調節は、外部応力を加えて非ニュートン特性を誘導することによって行うことができる。非ニュートン特性の誘導は、ずり増粘またはずり減粘、音の増音または減音、または電磁場の肥厚または薄化、例えば磁気の肥厚または薄化によって達成することができる。いくつかの好ましい非ニュートン流体は、低周波数応力に曝されると粘度が低下し、高周波応力に応答して粘度が増加する。上記および本明細書中のずり減粘およびずり増粘についての言及は、機械的、音波的、磁気的または電磁放射線によって加えられる応力を意味することができる。
ずり力(shear forces)は、例えば、振動(震動)、攪拌(かき回す)、圧力波または他の機械的手段によって付与され得る。例えば、ロッドを凍結保存媒体に浸し、次にロッドを回転させることにより、円筒容器の凍結保存媒体中の生物学的試料に順にずり力を適用することができる。ずり力を試料に加えることができる構成の別の例は、凍結保存媒体中の生物学的試料を2つの平行なプレートの間に置いて、これらのプレートのうちの一方または両方を他方に対して平行に移動することを含む。ずり増粘は、流体へ応力を適用することによって流体の粘度が増加する非ニュートン挙動である。ずり減粘は、ずり応力下で粘度が低下する流体の非ニュートン挙動である。ずり減粘またはずり増粘を受ける流体は、溶液または懸濁液、例えばコロイド懸濁液であり得る。例えば、ずり増粘流体凍結保存媒体は、シリカのような微粒子を含有する懸濁液、コロイド溶液/懸濁液または溶液それ自体であってもよい。この機構(すなわち、実質的に氷を含まない凍結保存法を送達するために、凍結保存媒体の非ニュートン流体特性を利用する凍結保存の本発明の方法)は、CPAがシリコーン、HES、ガラスなどの硬質シェルコロイドでスパイクされるシステムのみに区別されるものではない。電磁場により誘導される粘度の変化、音および/または光により誘導させる粘度の変化を可能にする材料を用いたスパイクも可能である。このリストは網羅的なものではない。
従って、本発明の方法は、改善された灌流/拡散を可能にし、その結果、ずり応力を利用して粘度を低下させることによりCPA毒性を低減させ、その後、異なる大きさまたはタイプのずり応力の利用を使用して、凍結保存媒体の粘度を増大させ、当技術分野における氷を含まない凍結保存技術に使用される冷却速度よりもはるかに低い冷却速度での氷を含まない凍結保存を可能にする。
本発明に従う例示的な凍結保存方法は、低温に冷却する前に非ニュートン流体特性を有する本明細書に記載の凍結保存媒体中に保存すべき試料を入れることと、次いで、
i)凍結保存媒体が試料に灌流できるようにするのに十分な第1の時間、ずり減粘応力を適用することと;
ii)凍結保存媒体の粘度を増加させるためにずり増粘応力を適用することと;
iii)試料をガラス転移温度以下の温度に冷却することと;
iv)ずり増粘応力を除去することと;そして
v)得られたガラス化試料を低温で保存することと、を含む。
冷却中にずり増粘応力が加えられる本明細書に記載の方法では、ずり増粘応力は、一般に、凍結保存媒体のガラス転移温度付近の温度で除去される。例えば、凍結保存媒体のガラス転移温度より僅かに高い温度でずり応力を除去することが可能であり、それは、氷核形成に対する効果は、応力の除去時に直ちに消散しないからである。それにも関わらず、これらの方法では、試料がガラス転移温度以下に冷却されるまでずり増粘応力を維持することが一般に好ましい。
本発明に従う代替的な凍結保存方法は、低温に冷却する前に非ニュートン流体特性を有する本明細書に記載の凍結保存媒体中に保存すべき試料を入れることと、次いで、
i)ずり増粘応力を加えて凍結保存媒体の粘度を上昇させることと;
ii)試料をガラス転移温度以下の温度に冷却することと;
iii)ずり増粘応力を除去することと;そして
iv)得られたガラス化試料を低温で保存することと、を含む。
本発明に従う代替的な凍結保存方法は、低温に冷却する前に非ニュートン流体特性を有する本明細書に記載の凍結保存媒体中に保存すべき試料を入れることと、次いで、
i)凍結保存媒体が試料に灌流できるようにするのに十分な第1の時間、ずり減粘応力を適用することと;
ii)試料をガラス転移温度以下の温度に冷却することと、そして
iii)得られたガラス化試料を低温で保存することと、を含む。
本発明に従う方法は、加温ステップ、すなわち低温凍結保存試料を採取し、氷核形成がもはや不可能になるまで、ガラス転移温度より低い、ガラス転移温度にて、またはガラス転移温度よりも高い温度にて、例えば、その平衡凝固点またはその付近でずり増粘応力を加えることをさらに含んでいてもよい。凍結保存媒体のガラス転移温度にて、またはガラス転移温度以下で、すなわち試料が完全にガラス化した状態にあるときに、ずり増粘応力を開始することが一般的には好ましいが、ずり増粘応力を加える前に、温度をガラス転移温度より上に数度だけ上昇させることが可能である。ずり増粘応力が、加温ステップにおいて氷核形成が最も起こりやすい温度範囲、例えば−80℃〜0℃の温度範囲、または−80℃から平衡凝固点の範囲で適用されることを確実にすることが重要である。加温速度は、好ましくは1分当たり10℃未満、例えば1分当たり1℃である。
本発明に従う代替的な凍結保存方法は、低温に冷却する前に非ニュートン流体特性を有する本明細書に記載の凍結保存媒体中に保存すべき試料を入れることと、次いで、
i)試料をガラス転移温度以下の温度に冷却することと;
ii)得られたガラス化試料を低温で保存することと;
iii)試料をその平衡凝固点以上に加温することと、を含み、
前記凍結保存媒体のガラス転移温度より低い、ガラス転移温度にて、またはガラス転移温度よりも僅かに高い温度で開始されるずり増粘応力が、加温の間に前記試料に適用されることを特徴とする。
本発明に従う方法は、1分当たり100℃以下、例えば50℃/分、好ましくは10℃/分未満、例えば1分/分の冷却速度で実施することができる。
本発明の方法におけるずり減粘応力またはずり増粘応力は、機械的手段、音波的手段、磁気的手段または電磁的放射手段によって適用することができる。
所与の生物学的系のための十分な灌流の際に、コロイド状懸濁液の粘度は、固体様の特性を示すまで極めて急速に増加させることができる。これには、低温生物学における現在の限界を克服する2つの大きな利点がある。
1.溶液の見かけの毒性は大幅に低下する−これは、溶液の高い粘度のために分子拡散が大きく減少するためである。毒性は毒素の代謝に関連しているので、毒性は細胞膜の周りの拡散速度の低下によって減少する。
2.CPAコロイドの粘度の増大によって氷の形成が阻害される。このシステムは、凍結保存の伝統的な氷形成方法と比較して、比較的少ない水しか含まない。これにより、氷が形成される温度および個々の核生成事象の可能性が低下する。ずり応力によって引き起こされる粘度の増加は、氷の形成を抑制し、氷の損傷を防止する。
システムの温度はTg(ガラス転移温度)以下まで下げられる。この時点で、ずり応力は、安定したガラス化(アモルファス固体)状態でシステムで停止することができる。システムを解凍するには、十分なずり応力が加えられ、システムが温められる。これは、現在の最先端の解凍装置が直面する問題を克服する:
1.上記のメカニズムにより氷形成が抑制される。これは、急速な加温速度を必要とすることなく、加温時の氷形成を停止させる。
2.上記のメカニズムにより毒性が低下する。粘度を低下させるために適切なずり力(shear−force)を適用することによりCPAウォッシュアウト時の毒性も最小限に抑えられ、それによって細胞のウォッシュアウト時間が増大する。
3.現在のガラス化技術と比較して、必要とされる比較的低い冷却および加温速度により、熱応力および熱分解が回避される。
ずり歪みの適用下で粘度が増加する材料は、時としてダイラタント材料と称される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法での使用には、ダイラタント凍結保存媒体、または複数のダイラタント凍結保存媒体が好ましい。
そうでなければニュートン流体特性を本質的に示す、すなわち適用応力下で粘度が変化しない媒体の挙動を調節する添加剤の規定量を添加することにより、非ニュートン特性を凍結保存媒体に付与することができる。非ニュートン挙動を付与するために使用できる添加物の種類は、本明細書では非ニュートン添加剤(NNA)と称される。NNAは、典型的には、得られるNNA含有凍結保存媒体の総質量100g当たり2重量%〜60重量%の量で凍結保存媒体に添加される。任意の適切なNNAを本方法において使用してもよいが、実際の目的のために、NNAは、本技術の条件下で保存される試料に対して実質的な毒性作用を及ぼさないことに基づいて選択される。2重量%〜60重量%の特定の範囲のNNAの混合物も同様に使用することができる。
一般的に言えば、任意の適切な無機および有機粒子をNNAとして使用することができる。典型的には、NNAの平均粒子サイズ、すなわち平均最長直線寸法は、10μm以下、例えば5μm以下、好ましくは1μm以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子NNAが好ましい。本明細書で使用するナノ粒子という用語は、1〜100nmの平均粒子サイズを有する粒子を指す。より小さい粒子は、NNAの非ニュートン効果を有利に増加させることができ、従って、より大きな粒子よりも凍結保存媒体中でより低い割合で適用することができる。
いくつかの実施形態において、NNAは、有機NNA、例えば、デンプン誘導体のような生物学的に誘導されたポリマー、またはポリスチレンまたはポリ塩化ビニルのような合成ポリマーであり得る。デンプン誘導体であるNNAの好ましい例には、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、小麦デンプンおよび他の植物由来デンプンなどの天然デンプンおよびヒドロキシエチルデンプン(HES)などの半合成デンプンが含まれる。ヒドロキシエチルデンプンでは、複数のヒドロキシルエチル置換基が、デンプンポリマー骨格を構成するグルコースモノマーのヒドロキシル基に導入される。したがって、場合によっては、ヒドロキシエチルデンプン(HES)は、ポリマー中のグルコース単位10個あたり平均して1個のグルコースヒドロキシル基がヒドロキシエチル基で置換されていてもよいデンプンであり、ヘタデンプンでは典型的には置換度はグルコース単位10個あたり通常7〜8個のヒドロキシルである。HESデンプンの生体適合性は周知であり、したがって、いくつかの実施形態では、組織試料および作製された組織構築物の凍結保存のために、ヒドロキシエチルデンプンの使用が好ましい。45重量%〜55重量%のHES、例えば48重量%〜54重量%のHESを含む凍結保存媒体は、特に有利な非ニュートン特性を有することが証明されている。
広範囲の完全合成ポリマーをNNAとして使用することができ、いくつかの有利な実施形態では、強磁性材料のような機能性コアを組み込むことができる。したがって、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニルまたは同様の生体適合性ポリマーのようなポリマーの粒子をNNAとして使用することができる。他の実施形態では、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレンまたは類似の生体適合性ポリマーなどのポリマーを使用して、例えば、酸化鉄などの強磁性材料をコーティングして、調節する、例えばずり応力または磁場の変化に応答して凍結保存媒体の粘度を増加または減少させることができるNNAを送達してその生物学的適合性を確実にするか、改善することができる。例えば、強誘電体NNAの粒子は、印加された磁場の影響を受けて直線的または前後に移動することができ、したがって媒体の粘度を急速に増加させることができ、これにより、安定した氷を含まない冷却が適用され、試料がガラス化を受ける段階にて、同試料をガラス転移温度(Tg)よりも低くすることができる。
無機NNAも本発明の方法における使用に適している。無機NNAの例としては、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、アルミナ、石英、酸化鉄などの強磁性材料、各種粘土などが挙げられる。シリカは、規定された粒子サイズおよび純度で容易に得ることができ、かつ水に適合するので、特に好ましいNNAである。酸化鉄もまた、例えばナノ粒子の形態にて、生体適合性かつ生体内用途での使用に適しているので、好ましいNNAである。酸化鉄は、磁場を印加することによってずり増粘応力またはずり減粘応力の適用を可能にする。酸化鉄は、マグネタイトFeまたはマグヘマイトFeの形態であり得る。
NNAを含むばかりでなく、本発明の方法において使用される凍結保存媒体は、凍結保護剤(CPA)も含む。凍結保存にCPAを使用することはよく知られている。CPAは、凍結保存プロセスにおいて生物学的試料が受けるいくつかのストレスを緩和するために使用される。本発明の方法における使用に適したCPAは水溶性であり、一般に水と安定な水素結合を形成する。水分子と安定な水素結合を形成するCPAの能力は、凍結保存媒体の凝固点を低下させる。
CPAの役割は多様であり、その使用の状況と濃度に依存する。例えば、低分子量のCPAは、冷却プロセスの間に細胞に入り、冷却中に氷核形成が起こる傾向を減少させる。高分子量のCPAは、通常、細胞膜を横切ることはなく、従って、細胞外環境においてその効果を発揮する。細胞外液の凝固点を低下させる際に、CPAは細胞からの過剰な水の流出を防止し、それによって細胞の最小臨界容積を超える細胞の収縮を防止することができる。細胞収縮を減少させることにより、CPAは細胞内液の過濃縮(hyperconcentration)を減弱させ、それによってタンパク質の沈殿を阻害することができる。理想的には、CPAは、その保護効果を発揮するのに十分な速度で生物学的試料に灌流させることができ、10,000℃/分の冷却速度が一般的である従来技術のガラス化方法と比較して、本発明の方法のゆっくりとした冷却速度は、凍結保存プロセスの冷却段階の間における漸進的灌流を可能にするので有利である。CPAはまた、細胞に有毒であり得る凍結プロセス中の過剰な塩濃度の発生を防ぐことができる。例えば、溶液中で溶質の相対濃度は、溶解している溶媒が凝固(凍結)するにつれて増加する。
任意の適切なCPAまたはCPAの組み合わせが、本発明の方法において使用され得る。本発明の方法において単独でまたは組み合わせて使用することができる周知のCPAの例は、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、C〜Cアルコール、1,2−イソプロピルジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グルコース、単糖類、二糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ラクトース)、多糖類(例えば、ラフィノース、デキストラン)、フィコール(ficoll)(登録商標)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリジンである。CPAの選択は、凍結保存される試料の性質にある程度依存するであろう。したがって、細胞膜を横切るCPAの伝達は、タンパク質試料を保存する場合には重要な考慮事項ではないが、細胞、組織および工学的に作製された組織構築物の保存のためには、これがより大きな要因となる。同様に、CPAが試料に灌流/拡散する能力が、単離された細胞と比べて組織試料にとってより重要であることは、当業者には明らかであろう。
典型的には、本発明の方法における凍結保存媒体中のCPAの濃度または複数のCPAの濃度の合計は、50重量%以下、通常は40重量%以下、例えば10重量%〜40重量%である。10重量%以下のCPAの濃度では、氷核形成がより重要な因子になる。
本発明の方法において使用することができる凍結保護剤の例としては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、1,2−イソプロピルジオール、1,2−プロパンジオール、グリセロール、エチレングリコールのようなアルコール、ホルムアミド、アセタミドおよびジメチルスルホキシドである細胞膜を横切ることができる低分子量(Mr<400)のCPA、および、単糖類(例えばグルコース)、二糖類(例えばスクロース、トレハロース、ラクトース)、多糖類(ラフィノース、デキストラン)、フィコール(ficoll)(登録商標)、ポリエチレングリコールポリビニルピロリジノンおよびウシ胎児血清のような高分子量および/または非浸透型(non−penetrating)のCPAが含まれる。特に好ましいCPAは、DMSO、グリセロール、グルコース、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールである。
典型的には摂氏数百度の範囲内にあり、多くの場合10,000℃/分のオーダーである、技術水準の氷を含まないガラス化方法。上述したように、本発明の方法で使用される冷却速度は、当該技術の氷を含まないガラス化方法の冷却速度よりもはるかに遅く、毎分100℃以下、例えば毎分50℃以下、好ましくは毎分10℃以下、例えば1℃/分〜10℃/分、または1℃/分である。これらの比較的ゆっくりとした冷却速度の使用は、当技術分野の氷を含まないガラス化方法で保存できるものよりもはるかに大きい試料の凍結保存を有利に可能にする。最終的には、正確な冷却速度は、試料のサイズおよび組成の関数であるが、上記に概説した速度は、本明細書に記載の凍結保存技術の適切な作業範囲であることが判明している。
本発明の氷を含まない方法は広い適用範囲を有し、大きすぎて当該技術分野の方法で氷を含まない凍結保存を受けることのできない試料に対して特に有利である。例えば、多くの組織および組織工学によって作製された器官は、宿主生物/患者/培養物から除去された後の貯蔵寿命がないか、または極端に制限されている(典型的には数時間以内)。貯蔵寿命が限られていると、過剰な廃棄につながり、このような試料を使用するコストが大幅に増加する。その結果、ジャストインタイムの製造は、通常、組織工学によって作製された構造物では実現可能ではない。したがって、本発明の方法は、幹細胞に基づく複合組織構築物などの組織工学によって作製された構築物に基づく再生医療の開発に大きな利点を提供する。このような構築物は、本発明の方法で保存することができ、これにより、組織工学によって作製された試料を保存して「在庫のある(off the shelf)」状態で使用することができ、その結果、そのような試料に基づく治療的介入の経済性および利用可能性が根本的に改善される。
本発明はまた、本発明の方法において凍結保存媒体として使用するための組成物を提供する。
本発明の凍結保存媒体組成物は、10wt%〜40wt%の凍結保護剤(CPA)と、平均最長平均直線寸法が10μm以下の生体適合性の粒状材料である2wt%〜60wt%の非ニュートン添加剤(NNA)と、を含む水溶液または懸濁液である。いくつかの実施形態では、凍結保存媒体は、10wt%〜40wt%の凍結保護剤(CPA)と、平均最長平均直線寸法が10μm以下である生体適合性粒状材料である2wt%〜60wt%の非ニュートン添加剤(NNA)と、を含むデンプンを含まない水溶液または懸濁液である。本明細書で使用される「デンプンを含まない(starch free)」という用語は、デンプンまたは任意の半合成デンプン誘導体(例えばヒドロキシエチルデンプン)を含有しない組成物を指す。
非ニュートン添加剤は、平均最長平均直線寸法が10μm以下の有機または無機粒状材料である。いくつかの実施形態では、非ニュートン添加剤は、平均最長平均直線寸法が1μm以下である。いくつかの実施形態では、非ニュートン添加剤は、ナノ粒子の形態であり、例えば平均最長平均直線寸法が1〜100nmの酸化鉄粒子である。
NNAとして使用される粒状材料は、一般に、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、アルミナ、石英、酸化鉄、合成ポリマーまたはこれらの材料の2種以上の生物学的に誘導されたポリマー混合物を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、生物学的に誘導されるポリマーは、天然デンプンまたはその誘導体、例えばヒドロキシエチルデンプンである。いくつかの実施例では、粒状材料はシリカ、例えばシリカボールである。いくつかの実施例では、粒状材料は、酸化鉄、任意選択にて酸化鉄ナノ粒子である。実施例では、粒状材料は、ポリマーマトリックス中に封入された強磁性材料である。
いくつかの実施例では、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、C−Cアルコール、1,2−イソプロピルジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グルコース、単糖類、二糖類(スクロース、トレハロース、ラクトース)、多糖類(ラフィノース、デキストラン)、フィコール(ficoll)(登録商標)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリジンまたはこれらの作用剤の2種以上の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施例では、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド、グリセロール、グルコース、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、またはこれらのCPAの2種以上の組み合わせから選択される。いくつかの好ましい実施例では、凍結保護剤はジメチルスルホキシドを含む。
したがって、本発明は、生物製剤(生体試料)の凍結保存中に毒性を低減し、熱ストレスを低減し、氷形成を阻害するスマート材料(smart material)を提供する。グリセロール、ジメチルスルホキシド、糖、アルコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールなどの凍結保存に使用されるスパイク(spiking)化学物質(CPA)は、非ニュートン流体特性によって生物学的試料を凍結保存する方法が凍結保存を達成するために使用される溶液の粘度を増加および/または減少させることによって利用されるので、シリカボール、ナノ粒子、HES、および/またはSiOなどの小さな(<10μm)固体粒子とともに使用することができる。
スマート材料は、使用される任意の(スパイク)化学物質(CPA)が温度依存性細胞膜安定化効果を有すると記録され、細胞内の氷の可能性を低減し、水性溶液の凝固点を抑制し、氷形成の可能性を低減し、水性溶液の平衡融点を低下させ、低温ショックまたは低温に関連する損傷を低減させ、または任意の他の凍結保存に関連する障害から保護し、またはこれらの任意の組み合わせを達成する。
使用される固体粒子は、ずり増粘および/またはずり減粘、音の増音および/または減音、または電磁場の肥厚(thickening)および/または薄化(thinning)、電磁放射線の肥厚および/または薄化によって非ニュートン挙動を誘発する。或いは、任意の他の非ニュートン機構、またはこれらの組み合わせ。
本発明はまた、凍結保存媒体に非ニュートン流体特性を付与するために、10μm以下の平均粒子サイズを有する粒状材料の使用に関する。この用途に適した粒状材料の例は、デンプンまたはデンプン誘導体(例えばヒドロキシエチルデンプン)、シリカ、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、アルミナ、石英、酸化鉄または合成ポリマー(例えばポリ塩化ビニルまたはポリスチレン)である。
非ニュートン添加剤は、パッケージ、例えば無菌パッケージ、任意選択にて規定量の水および/またはCPAで再構成するための必要量のCPAとの組み合わせで提供することができる。本明細書および上記で説明した凍結保存媒体は、本明細書および上記に記載した凍結保存法で使える状態にあるパッケージ、例えば無菌パッケージとして供給することができる。パッケージ(例えば、無菌パッケージ)は、使用可能な状態で保存して、新鮮な試料が入手可能になるとすぐに凍結保存を実施することが可能であり、それにより凍結保存の成功率を改善することができる。
当業者には理解されるように、上記した方法または組成物の各要素の好ましい実施形態は、自由に組み合わせることができる。そのような組み合わせは、例えば、凍結保存媒体の成分の好ましい組成範囲および性質、または方法の好ましいステップを特徴とする実施形態を提供する。したがって、本明細書で特定される粒子サイズ、分子同一性および組成範囲(重量%)を有する非ニュートン添加剤は、本発明の方法における使用のために好ましい組成物を与えるための水溶液として、例えば無菌パッケージの形態にて、使用のための製品として提供するために、凍結保護剤の組成範囲および分子同一性と自由に組み合わせることができる。
本発明のさらなる実施形態は、以下の番号を付与された条項に記載されている。
1.生物製剤の凍結保存時に毒性を低減し、熱ストレスを低減し、氷形成を抑制するスマート材料。グリセロール、ジメチルスルホキシド、糖、アルコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとして凍結保存に使用されるスパイク化学物質は、非ニュートン流体特性によって生物学的試料を凍結保存する方法が凍結保存を達成するために使用される溶液の粘度を増加および/または減少させることによって利用されるので、シリカボール、ナノ粒子、HES、および/またはSiOなどの小さな(<10μm)固体粒子とともに使用することができる。
2.1であるとして、そこにおいて、使用される任意の化学物質は、温度依存性細胞膜安定化効果を有すると記録され、細胞内の氷の可能性を低減し、水性溶液の凝固点を抑制し、氷形成の可能性を低減し、水性溶液の平衡融点を低下させ、低温ショックまたは低温に関連する損傷を低減させ、または任意の他の凍結保存に関連する障害から保護し、またはこれらの任意の組み合わせを達成する。
3.1であるとして、そこにおいて、使用される固体粒子が、ずり増粘および/またはずり減粘、音の増音および/または減音、または電磁場の肥厚および/または薄化、電磁放射線の肥厚および/または薄化によって非ニュートン挙動を誘発する。或いは、任意の他の非ニュートン機構、またはこれらの組み合わせ。
4.1および3であるとして、そこにおいて、使用される粒子は分子、イオンであり、固体状体ではないか、均一組成ではないか、またはこれらの任意の組み合わせである。
5.1,2,3および4であるとして、そこにおいて、非ニュートン材料が2つ以上の成分からなり、2に記載されたものの組合せであるか、3に記載されたものの組合せであるか、4に記載されたものの組合せであるか、またはこれらの任意の組み合わせであるかのいずれかである。
本発明がよりよく理解されるように、本発明に従う凍結保存媒体およびそれらの非ニュートン流体挙動の多くの実施例が本明細書で提供される。当業者であれば、非ニュートン性添加剤が組み込まれたCPAの水溶液を含むこれらの凍結保存媒体および類似の凍結保存媒体を、本明細書および特に添付の特許請求の範囲に記載の本発明の方法に使用できることを理解するであろう。
25%の水、25%のDMSOおよび50%のHES(全て重量)の溶液を調製した。この溶液を攪拌棒を用いて完全に混合するまで攪拌した。次に、この混合物を、同心円筒測定装置を用いてRheoLab QCレオメーター(Anton−Paar、Graz、Austria)に加えた。0.01/s〜2/sのずり速度で溶液の粘度を測定した。ずり速度<0.5/sを増加させると、混合物はずり減粘が増加することが判明した。0.5/sと1/sとの間の臨界点において、混合物の挙動はずり増粘に顕著に変化した。水中に50重量%のHESを含有する溶液においても同様の挙動が見られた。
ずり応力下での凍結保存媒体の流体挙動における非ニュートン添加剤の影響をパラメータ化するために、多数の追加の実験を行った。
非ニュートン添加剤を含む凍結保存媒体中のずり減粘およびずり増粘効果
種々の凍結保護剤および水と組み合わせて非ニュートン添加剤としての種々の量のHESを含む凍結保存媒体の非ニュートン挙動を研究した。この研究から得られる結果、即ち10重量%のDMSOと、HES(ヒドロキシエチルデンプンの54重量%(組成物A)、50重量%(組成物B)、および45重量%(組成物C)と、残りの水と、を含む3成分凍結保存媒体(表1を参照)の室温での粘度に対するずり速度の影響は、図1に示されている。この研究では、DG42測定システムおよびRheoCompassソフトウェアに連結された市販のAnton Paar RheolabQCレオメーターを用いて、ずり力を凍結保存媒体に適用した。
Figure 0006966050
これらの実験では、非ニュートン凍結保存媒体試料の候補を、床から上方に突出する2つの同軸円筒壁によって画定されたチャンバ内に置いた。その回転を駆動するモータ、すなわちレオメーターに連結された中空シリンダを、その後、チャンバ内に配置された試料に浸漬した。次に中空シリンダを測定した速度、ずり速度γ、で回転させ、ずり応力を回転速度とその回転速度を達成するのに必要なトルクとを比較することによって測定した。ずり速度は、中空シリンダの運動の速度を中空シリンダとチャンバのエッジとの間のギャップで割ったものによって定義された。試料中の中空シリンダの回転を達成するのに必要なトルクを記録し、溶液の粘度を決定するために使用することができた。従って、ずり速度の変動の関数としての粘度の変化を確立することができる。
図1から分かるように、54重量%HES/10重量%DMSO/36重量%HOの系(A)では、ずり速度を10−4−1から約0.5s−1まで増加させると、溶液のずり減粘が起こった(この範囲にわたって1000倍を超える係数(factor)によって粘度が低下することが観察された)。同じ試料では、ずり速度を室温で約1s−1から約6s−1に増加させると、一方では、凍結保存媒体の粘度が10倍増加した(すなわちずり増粘効果)。粘度が10倍増加した後、レオメーターは最大トルクに達したので、測定を終了した。定性的には、凍結保存媒体の固化はこの段階で起こり、例えば、金属棒で媒体を叩くと固体が存在することが示された。従って、媒体の正確な粘度を明示的に測定することはできないが、凍結保存媒体の固体性質は、粘度が10mPa.sを超える状態であろう。
このように、単一の試料におけるずり減粘挙動およびずり増粘挙動は、試料が受けるずり速度(ひいてはずり応力)を変えることによってのみ達成され得ることが実証された。ずり増粘挙動は組成物BおよびCについても観察された。この試験から、45重量%〜54重量%のHESは非ニュートン挙動を示し、粘度変化のスケールは50重量%以上でより顕著であると思われる。
凍結保護剤の関数としてのずり増粘効果の変化
凍結保護剤が室温でずり増粘挙動に影響を及ぼすかどうかを決定するために実験を行ったが、この試験からのデータを図2に示す。ずり増粘挙動は、試験中のすべての凍結保存媒体、50%HES(非ニュートン添加剤)、10%凍結保護剤および40%水(%は重量による)、について観察された。凍結保存媒体中の凍結保護剤(CPA)は、スクロース(組成物2A)、グリセロール(組成物2B)、グルコース(組成物2C)およびDMSO(組成物2D)であった。ずり増粘挙動は全ての凍結保存媒体で観察されたが、ずり増粘の程度は個々の組成物の関数として、すなわちCPAの関数として変化した。したがって、非ニュートン添加剤の使用は、観察された絶対ずり増粘効果が組成物中に存在するCPAの関数としてある程度変化するにもかかわらず、CPAの性質とは独立した非ニュートン流体特性を有する凍結保存媒体を提供することができることが明らかであった。室温では、有意なずり増粘を達成するために、>100s−1の比較的高いずり速度が必要となり得る。
HES、CPAおよびHOを含有する組成物の凍結保存媒体を含む種々の非ニュートン添加剤におけるずり増粘に対する温度の影響
次に、非ニュートン挙動が温度の関数として変化するかどうかを確かめるために実験を行った。その理由は、意図された適用において、非ニュートン挙動が低温で現れることが不可欠であるからである。図3はこれらの試験からのデータを示しており、非ニュートン効果が低温で存在するだけでなく、実際には温度の低下が非ニュートン効果を高め、臨界ずり速度(ずり増粘が最初に明らかになる速度)を低下させることが直ちに明らかとなった。この実験で評価した凍結保存媒体の組成を以下の表2に示す。
Figure 0006966050
50%HES/10%CPA/40%HO組成(重量%)を有する本発明に従う非ニュートン添加剤を含む凍結保存媒体の結果を図3a〜fに示す。明らかなように、そして予想されたように、温度の低下は試料の粘度を増加させる。予想外に、この実験から、適用ずり応力に起因するずり増粘が、室温で同じ組成物(例えば、0℃対約25℃)で得られたものと比較して、より低い温度で大きく増強されたことも明らかであった。増強は、低温での効果のスケールおよび低温での効果を開始するのに必要な臨界ずり速度の低下の両方に現れた。評価された全ての凍結保存媒体において、温度の低下に対するずり増粘のこの増大が見出されたので、これは一般的な効果であると思われる。低減された温度でのずり増粘の増強のこれまでに知られていないこの効果は、室温で必要とされるよりもはるかに低いずり応力で高度に粘性の凍結保存媒体が達成できるという点で重要である。したがって、0℃で特定の粘度または特定の粘度上昇を達成するのに必要なずり応力は、室温で必要とされる粘度に比べて低下するので、本発明に従う凍結保存技術では、さもなければ期待されるものよりも低いずり応力が使用できる。有利には、これは、100s−1未満のずり速度が本発明に従う方法において使用され得、これらの方法によって保存された試料が、この方法の間、より低いずり応力にさらされ得ることを意味する。その結果、室温より低い温度でずり増粘応力を開始することによって、凍結保存のための試料が受ける可能性のあるあらゆるずり応力に関連する損傷が低減または排除される。室温で観察される効果に基づく非ニュートン凍結保存技術での使用に不適当と思われる凍結保存媒体組成物は、実際には0℃における非ニュートン効果が考慮される場合には生存可能であるという点で、低温でのずり増粘の予期しない増強もまた重要である。
図3a〜fに示された結果はまた、特定のCPAが、他のものよりも温度の関数として、ずり増粘においてより強い増強をもたらすことを明らかにした。糖CPA(グルコース、フルクトース、ラクトース、ラフィノースおよびスクロース)を含有する組成物は、対応するDMSO含有凍結保存媒体(図3d)で生成されたものよりも、温度の関数としてずり増粘においてより強い増強をもたらす。これは、凍結保存のために最適化された粘度プロファイルを提供するために、2つのCPAの組み合わせを使用する可能性をもたらす。例えば、凍結保存媒体中に5重量%のDMSOおよび10重量%の糖CPAを使用する(図3h)と、低温(糖CPAに由来する)での優れたずり増粘特性と、良好な細胞浸透性(DMSOに由来する)とを備えた組成物を与える。
ずり増粘に対する温度の影響
ずり増粘効果の温度依存性をさらに検査するために、50重量%HES/15重量%CPA/35重量%HO凍結保存媒体のずり増粘を−9℃から50℃までの温度の関数として評価した実験を行った。この実験の結果を図4に示す。この実験では、CPAはDMSOとスクロースの1:2混合物(すなわち、5重量%のDMSOおよび10重量%のスクロース)であった。図4から分かるように、ずり増粘効果に対する温度の影響は、溶液の凍結温度付近で最も顕著であり、約−7℃〜−9℃であるこの場合、この時点で、0.01s−1以下のずり速度で少なくとも2または3桁の大きさの粘度の増大が達成された。したがって、低温での非常に低いずり応力を用いて大幅に増加した粘度を送達することができる凍結保存媒体が得られることが実証された。ある範囲の糖/DMSO混合物を用いて、類似の温度依存性のずり増粘挙動がもたらされた。
シリカおよび炭酸カルシウムを含む凍結保存媒体組成物のずり減粘
上記のように、非ニュートン添加剤は、粘性凍結保存媒体にずり減粘性を付与するのに有用であり得る。表3の水性SiO組成物の非ニュートン流体特性を評価し、顕著なずり減粘が観察された(図5を参照)。表4の炭酸カルシウム/CPA/水組成物でも同様の結果が得られた(図6を参照)。
Figure 0006966050
Figure 0006966050

Claims (15)

  1. 生物学的試料の凍結保存のための方法であって、凍結保存媒体として非ニュートン流体を使用することを含み、
    前記凍結保存媒体の粘度を低減して生物学的試料に前記凍結保存媒体を灌流するために第1のずり応力を付与するステップと、
    前記凍結保存媒体の粘度を増大するために第2のずり応力を付与するか、または前記第1のずり応力の大きさを調整するステップと、をさらに含み、
    前記第1のずり応力及び前記第2のずり応力は、前記凍結保存媒体が収容されたチャンバ内に浸漬された物体を回転することによって、前記物体の表面と前記チャンバの内面との相対速度によってもたらされるずり速度によって制御され、
    前記凍結保存媒体の粘度が、前記ずり速度が所定の値よりも小さい場合に低減され、前記ずり速度が所定の値よりも大きい場合に増大される、方法。
  2. 請求項1に記載の生物学的試料の凍結保存のための方法において、機械的手段、音波的手段、磁気的手段または電磁界手段によるずり応力を前記凍結保存媒体に付与することにより同凍結保存媒体の粘度を調節するステップをさらに含む、方法。
  3. 前記凍結保存媒体の粘度を低減するために第1のずり応力を付与するステップの後に、前記第1のずり応力を取り除くステップさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記凍結保存媒体の粘度を増大するためにずり応力を付与するステップの後に、前記試料のガラス転移温度以下の温度に同試料を冷却しつつ前記ずり応力を維持するステップ含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記試料は、50℃/分以下の速度にて冷却される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 冷却された試料をそのガラス転移温度以下の温度に維持するステップをさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記凍結保存媒体は、10μm以下の平均粒子サイズを有する粒状材料である20重量%〜60重量%の非ニュートン添加剤を含む水溶液または懸濁液である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記非ニュートン添加剤として使用される粒状材料は、シリカ(SiO)、ガラス、二酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、石英、酸化鉄、合成ポリマーまたは生物学的に誘導されたポリマー、或いはこれらの材料の2つ以上の混合物から選択される請求項7に記載の方法。
  9. 前記凍結保存媒体は、10重量%〜40重量%の凍結保護剤を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、C−Cアルコール、1,2−イソプロピルジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グルコース、単糖類、スクロース、トレハロースおよびラクトースを含む二糖類、ラフィノースおよびデキストランを含む多糖類、フィコール(登録商標)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリジン、またはこれらの作用剤の2つ以上の組み合わせからなる群より選択される請求項9に記載の方法。
  11. 前記非ニュートン添加剤はヒドロキシエチルデンプン(HES)である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記凍結保存媒体は、45重量%〜55重量%のHESを含む、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法によって凍結保存された試料を再構成するための方法において、前記凍結保存された試料をそのガラス転移点まで加温するステップと、前記試料がその凝固点を越えるまで、前記ガラス転移温度以下の温度、または前記ガラス転移温度にてずり増粘応力を付与するステップと、を含む、方法。
  14. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法によって試料を凍結保存することと、その後凍結乾燥によってその試料から水分を除去することとを含む、試料を凍結保存するための方法。
  15. 凍結保存媒体に非ニュートン流体特性を付与するための、10μm以下の平均粒子サイズを有する粒状材料の使用であって、前記凍結保存媒体がずり応力を付与することによって前記凍結保存媒体の粘度を増大または低減するように構成され、
    前記凍結保存媒体の粘度を低減するために第1のずり応力を付与するステップと、
    前記凍結保存媒体の粘度を増大するために第2のずり応力を付与するか、または前記第1のずり応力の大きさを調整するステップと、を含み、
    前記第1のずり応力及び前記第2のずり応力は、前記凍結保存媒体が収容されたチャンバ内に浸漬された物体を回転することによって、前記物体の表面と前記チャンバの内面との相対速度によってもたらされるずり速度によって決定され、
    前記凍結保存媒体の粘度が、前記ずり速度が所定の値よりも小さい場合に低減され、前記ずり速度が所定の値よりも大きい場合に増大される、
    粒状材料の使用。
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